JP2001153353A - 燃焼装置内で発生する有害物質の濃度分布の予測方法および予測方法の記録媒体 - Google Patents

燃焼装置内で発生する有害物質の濃度分布の予測方法および予測方法の記録媒体

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JP2001153353A
JP2001153353A JP33407399A JP33407399A JP2001153353A JP 2001153353 A JP2001153353 A JP 2001153353A JP 33407399 A JP33407399 A JP 33407399A JP 33407399 A JP33407399 A JP 33407399A JP 2001153353 A JP2001153353 A JP 2001153353A
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Masayuki Taniguchi
正行 谷口
Kenji Yamamoto
研二 山本
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Hitachi Ltd
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Babcock Hitachi KK
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】簡便な方法で、実用燃焼器から排出されるNO
x,CO,未燃焼成分等の微量有害成分の排出濃度を予
測する。 【解決手段】燃焼装置内を2次元又は3次元の複数のセ
ルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装置の設計上の固有
データと運転情報を入力条件として各セル毎にガスの流
動計算、固体および/あるいはガスの化学反応計算およ
び放射伝熱量計算を収束するまで繰り返して燃焼装置内
の温度分布とガス組成分布を求め、さらに火炉内の有害
物質の濃度分布を求める燃焼装置内の有害物質濃度分布
予測方法において、微量成分の生成、消滅に関わるラジ
カル濃度を、当該セル中でのCO濃度、可燃物質濃度の
総和、可燃物質の酸化速度、COの濃度変化速度、CO
2、H2O等の燃焼生成物の生成速度、固体中の燃料が
気相中に放出される速度、可燃性元素の酸化数の変化速
度、酸素の消費速度、反応による熱発生速度、当該セル
の気相空気比、温度等で表現し、当該セル中での燃焼N
Ox、CO微量未燃焼物質の化学反応速度を計算し、燃
焼装置で出口での濃度を予測する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃焼装置内で発生
する有害物質を予測する方法である。本発明は、微粉炭
焚ボイラ、LNGおよび油焚ボイラ、ごみ焼却炉から発
生する有害物質の予測に好適である。また本発明は、流
動層ボイラ、火花点火機関(ガソリンエンジン)、ディ
ーゼルエンジン、ガスタービンエンジンから発生する有
害物質の予測にも好適である。
【0002】
【従来の技術】微粉炭ボイラやごみ焼却炉から排出され
る有害物質の濃度を計算で予測する試みがなされてい
る。例えば、第35回日本伝熱シンポジウム講演論文集
75−76ぺージ(1998年5月)および第8回廃棄
物学会研究発表会講演論文集509−511ページ(1
997年)に記載の文献では、ごみ焼却炉から排出され
るCO濃度を予測している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの予測
方法では、主に反応モデルの問題により、普遍的な計算
ができない嫌いがある。CO濃度が高いときには、従来
モデル(例えばProceeding of 14th International Sym
pojium on Combustion 987−1003ページ(1973年)に記
載のモデル)により、CO濃度を予測することが可能で
あるが、CO濃度が数十〜数百ppmと低いときには、
実験値と合わない場合が多く、また大型で複雑な燃焼炉
内で発生する有害物質の濃度の予測計算には多くの時間
が費やされる嫌いがあった。
【0004】本発明はこれに鑑みなされたもので、その
目的とするところは、少ない計算負荷でも高い精度でN
Ox,CO等の有害物質の濃度分布を予測することがで
き、かつ大型で複雑な燃焼炉内で発生する有害物質の濃
度を短時間で計算することが可能であり、さらに本発明
の予測方法を用いることで、低NOx微粉炭燃焼装置お
よびごみ焼却装置の設計と試運転段階での調整を迅速に
実施できるこの種の濃度分布予測方法を提供することに
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、燃焼
装置内を2次元または3次元の複数のセルに分割し、燃
料を燃焼させる燃焼装置の設計上の固有データと運転情
報を入力条件として各セル毎にガスの流動計算、固体お
よび/あるいはガスの化学反応計算、および放射伝熱量
計算、を収束するまで繰り返して燃焼装置内の温度分布
とガス組成分布を求め、さらに火炉内の有害物質の濃度
分布を求める、燃焼装置内の有害物質濃度分布予測方法
において、個々のセルでの燃焼状態を数値で表現し、前
記数値に基づいて当該セル中に存在するラジカルの濃度
求め、前記ラジカルの濃度に基づいて当該セルでの化学
反応計算を実施するようになし所期の目的を達成するよ
うにしたものである。
【0006】なお、ここでラジカルとは、具体的には、
H,O,OH,およびHO2等の過酸化ラジカルおよび
CH,CH2,CH3等の炭化水素ラジカルおよびNH
2,NH,N,CN,NCO,HCO等である。共通し
た特徴は、分子または原子中に不対電子を持つことであ
る。
【0007】また本発明は、燃焼装置内を2次元または
3次元の複数のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装
置の設計上の固有データと運転情報を入力条件として各
セル毎にガスの流動計算、固体および/あるいはガスの
化学反応計算、および放射伝熱量計算、を収束するまで
繰り返して燃焼装置内の温度分布とガス組成分布を求
め、さらに火炉内の有害物質の濃度分布を求める、燃焼
装置内の有害物質濃度分布予測方法において、個々のセ
ルでの燃焼状態を数値で表現し、前記数値に基づいて化
学反応計算に使用する総括化学反応速度定数の少なくと
もひとつを求め、当該セルでの化学反応計算を実施する
ことを特徴とする、燃焼炉内で発生する有害物質の濃度
分布の予測方法である。
【0008】また、本発明は、燃焼装置内を2次元また
は3次元の複数のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼
装置の設計上の固有データと運転情報を入力条件として
各セル毎にガスの流動計算、固体および/あるいはガス
の化学反応計算、および放射伝熱量計算、を収束するま
で繰り返して燃焼装置内の温度分布とガス組成分布を求
め、さらに火炉内の有害物質の濃度分布を求める、燃焼
装置内の有害物質濃度分布予測方法において、個々のセ
ルが、火炎からどの程度はなれているかを数値で表現
し、表現された前記数値にしたがって、化学反応の計算
を実施することを特徴とする、燃焼装置内で発生する有
害物質の濃度分布の予測方法である。
【0009】また本発明は、燃焼装置内を2次元または
3次元の複数のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装
置の設計上の固有データと運転情報を入力条件として各
セル毎にガスおよび/あるいはの流動計算、固体および
/あるいはガスの化学反応計算、および放射伝熱量計
算、を収束するまで繰り返して燃焼装置内の温度分布と
ガス組成分布を求め、さらに火炉内の有害物質の濃度分
布を求める、燃焼装置内の有害物質濃度分布予測方法に
おいて、個々のセル中に火炎があるかないかを判定し、
火炎があるときとないときで、化学反応の計算方法を変
更することを特徴とする、燃焼装置内で発生する有害物
質の濃度分布の予測方法である。
【0010】火炎があるかないかの判定手段、火炎から
どの程度はなれているかを表現する数値、および、燃焼
状態を表わす数値とは、具体的には、CO濃度、可燃物
質濃度の総和、可燃物質の酸化速度、COの濃度変化速
度、酸素の消費速度、固体中の燃料が気相中に放出され
る速度、可燃性元素の酸化数の変化速度、当該セル中で
の反応による熱発生速度、当該セルの気相空気比、のい
ずれかの関数である。
【0011】予測する有害物質は、具体的には、NO
x,CO,未燃炭化水素、ダイオキシン類、クロロベン
ゼン類、クロロフェノール類、アルデヒド類等である。
【0012】また、本発明は、以上の予測方法を記録し
た、燃焼炉内で発生する有害物質の濃度分布の予測方法
の記録媒体である。
【0013】一般に、燃焼の化学反応のほとんどには、
ラジカルが関与する。燃焼過程で発生する有害物質をで
きるだけ正確に予測するには、ラジカルを考慮した素反
応モデルによる計算が望ましい。しかし、この計算では
膨大な数の反応を考慮しなければならない。大型の乱流
燃焼場でこのような計算を実施するのは実用上不可能で
あるため、従来は、ラジカルを考慮しない、総括反応モ
デルを用いていた。ただ、このため、予測精度が悪くな
り、微量の有害物質の濃度分布を予測するのは難しかっ
た。しかし、微量の有害物質の排出濃度が、燃焼装置の
価値を左右するため、計算負荷が小さく、かつ精度の高
い予測方法が求められていた。
【0014】これに対して発明者らは、火炎中のラジカ
ル濃度と、その場での燃焼状態を表わす種々の物理量と
の関連性を検討した。その結果、多くの場合、CO濃
度、可燃物質の濃度の総和、可燃物質の酸化速度、CO
の濃度変化速度、固体中の燃料が気相中に放出される速
度、可燃性元素の酸化数の変化速度、酸素の消費速度、
反応による発熱速度等の燃焼状態を表わす物理量とラジ
カル濃度との間に相関が認められることを見い出した。
【0015】これらの物理量は燃焼反応が活発である火
炎中と、燃焼反応も大部分が終了した火炎下流側では数
値が異なる。このため、計算対象の領域が火炎である
か、火炎下流側であるかを判断する指標になる。微量の
有害物質の濃度は火炎下流側でも変化する。ただ、火炎
中と火炎下流側では、濃度変化の速度が異なる。この原
因は主に、火炎中と火炎下流側ではラジカル濃度が異な
ることによる。さらに、この関係を用いてラジカル濃度
を近似計算することで、総括反応モデルを用いても、ラ
ジカル濃度の大小を考慮した計算が可能であることを見
い出した。本発明の方法を用いることで、大型の乱流燃
焼場を対象とした場合でも、ラジカル濃度を考慮した計
算が可能であり、かつ微量の有害物質の濃度分布の予測
精度も向上させることができるのである。
【0016】
【発明の実施の形態】〔実施例1〕本発明により燃焼装
置内で発生する有害物質を予測する方法を、微粉炭燃焼
装置を例にとり説明する。図1は、その燃焼状態を計算
するアルゴリズムの一例であり、図2は、対象の微粉炭
ボイラの全体構成図である。
【0017】本システムは、本体として火炉1を備えて
おり、この火炉1内には炉壁に沿って伝熱管(図示省
略)が配置されている。また、火炉1の出口2側には、
複数の蒸発器3が配置されている。これら熱交換器(伝
熱管と蒸発器を含めた総称)には、給水器(図示省略)
を介して水または蒸気が供給され、各熱交換器からは火
炉1での燃焼にともなって蒸気が発生し、この蒸気が蒸
気タービン(図示省略)に供給されるようになってい
る。
【0018】さらに、火炉1の炉壁には、複数のバーナ
4、アフターエアポート5が配置されている。この図2
では、バーナ4、アフターエアポート5は火炉前壁18
に設置されているが、火炉後壁19にも設置されること
がある。バーナ4、アフターエアポート5には、図示し
ない空気流量調節器を介してブロワ(押し込み送風器)
6から空気7が供給される。石炭は、貯炭場(図示省
略)から石炭ミル8に供給され、粉砕される。粉砕され
た石炭は、気流で搬送される。1次空気と微粉炭9はバ
ーナ4へ送られ、火炉1内で着火、燃焼する。
【0019】図3は、微粉炭ボイラに設置されるバーナ
4の一例を示したものである。バーナ4は同軸の三重管
で構成され、中央の配管中を1次空気と微粉炭9が流れ
る。濃度調節器15で微粉炭の濃度分布を調整した後、
火炉1内へ噴出される。1次空気と微粉炭9の噴出口の
外周側には、保炎器16が設置される。外側の配管中を
2次空気10と3次空気11が流れる。2次空気10
は、2次空気取り入れ口12より流入し、旋回器13を
経て火炉1内へ噴出される。3次空気11は、旋回器1
4を経て、火炉1内へ噴出される。バーナの中心軸上に
は、起動用のオイルガン17が設けられることがある。
【0020】火炉内での燃焼状態は、以下の方法で予測
する。まず、火炉1の形状、バーナ4の形状および位置
等の火炉設計上の固有のデータを入力する。次に、燃料
量、空気量、炭種情報等の運転情報を入力し、燃焼状態
を計算する。
【0021】インプットデータ(S1、S2)が計算機
(図示省略)に入力されると、内臓されている予測プロ
グラムに基づいてステップS3−S11の処理を繰り返
して実行し、各処理結果から火炉1内の温度分布、ガス
組成分布、NOxやCO等の有害物質濃度分布を予測演
算する。
【0022】この予測演算を実行するに際して、火炉1
内を二次元(高さ×奥行き)または三次元(高さ×奥行
き×幅)の複数の要素(計算上設定されたセル)に分割
する。火炉1を複数のセルに分割した例は、特開平9−
133321の公報に記載されている。なお、バーナ近
傍に関しては、バーナ中心軸を回転軸とした、円筒座標
系のセルに分割することもある。そして、各セルについ
て、セル間相互の影響を考慮して、各セル毎のガス流速
を求める流動計算(S3)、主要成分反応計算(S
4)、有害物質反応計算(S5)、放射伝熱計算(S
6)、収束判定(S7)を実行する。
【0023】S3−S7の計算では、各計算結果がセル
毎にお互いに影響する。したがって、各計算結果が収束
した値となるまで各計算を順次繰り返す必要がある。各
計算結果が収束した値を示すと判定された(S7)なら
ば、各計算結果から、火炉内の主要ガス組成分布、流速
分布、温度分布、有害物質濃度分布(S8)を求める。
なお、流動計算(S3)、主要成分反応計算(S4)、
放射伝熱計算(S6)は、特開平9−133321の公
報に記載されている方法を用いるとよい。
【0024】なお、有害物質の濃度は通常ppmオーダ
ーかそれ以下である。有害物質の反応が、温度分布や主
要成分の濃度分布に与える影響は無視できることが多
い。計算時間を短縮するには、まず、有害物質の反応計
算(S5)を省略して、温度分布、流速分布、主要ガス
組成分布を計算し、収束解が得られた後に、あらためて
有害物質の反応計算(S5)を実施する方法も有効であ
る。
【0025】〔実施例2〕次に、ごみ焼却炉に適用した
場合の例について説明する。図4は、そのごみ焼却炉の
概略構成を示す一例である。焼却炉は、一次燃焼室27
と二次燃焼室28とから構成される。大型の設備では、
焼却炉の下流側にボイラ29が設置されることもある。
ごみ22は、ホッパ21より投入され、一次燃焼室27
へ供給される。一次燃焼室27の下部には火格子が設置
される。火格子は、乾燥火格子23、主燃焼火格子2
4、後燃焼火格子25に大別される。
【0026】ごみ22は、まず乾燥火格子23へ送る。
引き続き、主燃焼火格子24、後燃焼火格子25へごみ
22を移動させ、燃焼させる。乾燥火格子23では、ご
み22を乾燥させる。ごみ22中の可燃物質の一部は、
ここで気体になる。ごみ22中の可燃物質の多くは、主
燃焼火格子24で燃焼する。主燃焼火格子24で燃え残
った可燃物質を、後燃焼火格子25で酸化させる。不燃
物質は燃焼灰回収部31より回収する。燃焼(一次)空
気30は、各々の火格子の下部から分割して供給する。
燃焼(一次)空気30はごみ層32のすき間を通過し、
一次燃焼室27へ流れる。燃焼(一次)空気30の一部
は、ごみ層32中で、可燃物質と反応する。
【0027】一次燃焼室27では、ごみ層32から発生
した可燃物質と燃焼(一次)空気30による気相燃焼が
生じる。一部の可燃物質は、一次燃焼室27出口でも残
留し、二次燃焼室28へ流入する。二次燃焼室28入口
付近から二次空気26を噴出し、一次燃焼室27出口で
残留した可燃物質を、二次燃焼室28中で燃焼させる。
【0028】ごみ焼却炉を対象とした場合も、一次燃焼
室27と二次燃焼室28を二次元(高さ×奥行き)また
は三次元(高さ×奥行き×幅)の複数の要素(計算上設
定されたセル)に分割し、前述した図1の方法にしたが
って、CO等の有害物質濃度を予測する。
【0029】なお、ごみ焼却炉の場合、ごみ層32中
と、その下流側の一次燃焼室27、二次燃焼室28と
で、燃焼現象が異なる。ごみ層32では、セル内の空間
の多くを固体が占める。ここでは、水分の蒸発、可燃物
質の熱分解と、固体表面での燃焼反応が主に生じる。そ
の下流側の一次燃焼室27、二次燃焼室28では、セル
内の空間の多くを気体が占める。ここでは、気相燃焼反
応が主に生じる。したがって、ごみ層32中とその下流
側では、セルの分割方法を変更するのがよい。
【0030】〔実施例3〕次に、有害物質の反応の計算
方法を詳しく説明する。ここでは、CO濃度を予測する
一例が示されている。COの代表的な酸化反応モデルと
して、Proceedingof 14th International Sympojium on
Combustion 987−1003ページ(1973年)に記載のモデ
ルがある。
【0031】このモデルでは、COの酸化反応は式
(1)で表わされる。このときのCO濃度の変化速度は
式(2)で表わされる。
【0032】
【化1】
【0033】式2中のko1は、総括反応速度定数であ
る。総括反応速度定数は、化学反応式を反応の出発物質
と最終生成物質の関係で記述したときの、反応速度定数
である。この、総括反応速度定数は、対象とする系の温
度や物質の濃度によっては適用できないことがある。必
ずしも普遍的な物理量ではない。
【0034】一方、化学反応の実現象を記述したものを
素反応と呼ぶ。CO酸化の代表的な素反応は式(3)で
あり、この反応によるCO濃度の変化速度は式(4)で
表わされる。
【0035】
【化2】
【0036】ほとんどの素反応には、OH等のラジカル
が関与する。ここで式(4)中のke3は素反応の速度
定数である。この速度定数は、計測した実験に誤りがな
い限り、普遍的な物理量である。燃焼場で重要な素反応
については、「Combustion Chemistry」 Ed by W.C.Gar
diner Jr. Springer New York(1984年発行)の文献等
にまとめられている。
【0037】したがって、素反応を用いて反応計算を実
施した方が、正確な解が期待できる。ただし、この計算
では、膨大な量の反応を考慮して計算しなければならな
い。したがって、乱流や対流、放射伝熱等、反応計算以
外にも膨大な計算量が必要な、実用燃焼炉の計算には適
さない。このため、実用燃焼炉の計算には、総括反応モ
デルと総括反応速度定数が用いられている。
【0038】Proceeding of 14th International Sympo
jium on Combustion 987−1003ページ(1973年)の文献
には、CO酸化反応の実験結果も記載されている。式
(1)および式(2)で表わされる総括反応モデルを用
いて、CO濃度の変化過程を計算した。図5は温度の変
化(実験値)を、図6はCO濃度の変化(実験値と計算
値)を表わす。CO濃度が1000ppm以上のとき
は、計算値と実験値は一致する。CO濃度がそれ以下の
ときには合わない。
【0039】図7は、素反応モデルを用いて計算した結
果である。CO濃度が高いときも低いときも、計算値と
実験値は一致する。
【0040】発明者らは、素反応モデルによる計算結果
と、総括反応モデルによる計算結果を詳細に比較するこ
とで、実験結果と総括反応モデルによる計算結果がずれ
る原因を解明した。図8を用いてその原因を説明する。
この図8には、燃焼場でのラジカル濃度の一般的な変化
が示されている。火炎中でラジカル濃度は急激に増加
し、熱平衡濃度の数倍〜数百倍になる。例えばOHラジ
カルの場合、式(5)の反応等で濃度が増加する。火炎
中では、ラジカルの増加と減少がバランスするため濃度
変化は少ないが、火炎の下流側(火炎後流)ではラジカ
ル濃度は熱平衡値へ向かって減少する。これは、火炎後
流式(5)等のラジカル増加反応がほとんど生じなくな
り、式(6)で表わされるような3分子によるラジカル
再結合反応のみが生じるためである。
【0041】
【化3】 H+O2⇒O+OH …(5) H+OH+M⇒H2O+M …(6) COは、OHにより酸化されるため、雰囲気温度が同じ
でもOH濃度が少なくなれば、COの酸化速度は小さく
なるはずである。しかし、式(2)の総括反応モデルに
は、火炎後流でOH濃度が減少することを表現する項が
ない。これが、実験結果と一致しない原因である。した
がって、総括反応モデルの速度定数中に、火炎後流でO
H濃度が減少することを表現する項が含まれていれば、
実験結果を再現できるはずである。
【0042】発明者らは、さらに検討を進めた結果、多
くの場合、計算対象のセル中のラジカル濃度と、計算対
象のセル中での燃焼状態を表わす物理量、例えば、CO
濃度、可燃物質の濃度の総和、可燃物質の酸化速度、C
Oの濃度変化速度、酸素の消費速度、固体中の燃料が気
相中に放出される速度、可燃性元素の酸化数の変化速
度、反応による発熱速度等との間に相関が認められるこ
とを見い出した。これらの物理量は、火炎中では大き
く、火炎後流では小さくなる。さらに、計算対象のセル
中での気相空気比と温度も考慮すれば、比較的簡単な方
法で、計算対象のセル中のラジカル濃度、または、ラジ
カル濃度が熱平衡値に対してどの程度ずれているかを近
似計算できることを見い出した。なお、気相空気比につ
いては、例えば特開平9−133321の公報等に詳し
く記載されている。
【0043】本発明のCO酸化モデルの一例を以下説明
する。本発明のモデルは、式(7)で表わされる。総括
反応速度定数(k01)は式(8)のように、基本項
(kb)とラジカル補正項(α)の積で表わされる。
【0044】
【化4】
【0045】基本項(kb)は、OH濃度が熱平衡値の
ときの反応速度定数を表わす。ラジカル補正項(α)
は、OH濃度が熱平衡値の何倍であるかを表わす項であ
り、火炎中と火炎後流では値が異なる。本発明の総括反
応モデルには、OH濃度が変化することを考慮した項が
含まれる点で、従来のモデルと異なる。
【0046】ここで、ラジカル補正項(α)は式(9)
で表わされる値をとる。
【0047】
【化5】 1 ≦ α ≦ αmax …(9) α=1のときは、OH濃度が熱平衡値と等しいことを表
わす。αmaxは、火炎中のOH濃度が熱平衡値の何倍
であるかを表わす。αmaxを決定する方法はいくつか
ある。ひとつは、実験または詳細な素反応計算により火
炎中の平均的なOH濃度を予め求める方法である。この
とき、火炎中のOH濃度、あるいは、OH濃度が熱平衡
値の何倍であるかを表わす数値と気相空気比、温度との
関係をまとめたテーブルデータを予め作成しておき、各
セルでの計算の際にこのデータを読み込む方法がある。
他の方法は、αmaxの値を、気相空気比(SRg)と
温度(T)、あるいはどちらか一方の関数で表現し、近
似計算する方法である。近似式の一例は式(10)であ
る。ここで、BおよびT0は定数である。
【0048】
【化6】 αmax=B exp(T/T0) …(10) α=f1(Xco,T) …(11) αを求めるには、さらに、計算対象のセル中での燃焼状
態を表わす物理量とαとの関係を明確にし、この関係を
テーブルデータとして保存するか、あるいは近似関数で
表現する必要がある。式(11)は、αをCOモル分率
(Xco)と温度(T)との関数で表現した一例であ
る。
【0049】CO濃度とOH濃度の関係について検討し
た例を図9および図11に示す。図9は、素反応モデル
を用い、反応温度を変えてCOとOHの変化を計算した
例である。このときの雰囲気酸素濃度は10%、水の濃
度は10%である。CO,OHともに、時間0sから
0.1sまでの間の変化量が大きい。ただし、その変化
の状態は温度で異なる。図9に示したOH濃度と、OH
平衡濃度との比からαの値を求め、CO濃度との相関関
係を示した。結果を図10に示す。ここでは、αの値を
式(12)により規格化して示した。規格化した数値を
Nαとする。両者の関係は温度で異なり、温度の影響を
考慮する必要がある。
【0050】
【化7】 f5(Nα)=f5(α)/f5(αmax) …(12) 図11は、横軸をCOのモル分率(Xco)と温度の関
数で表現し、これと、Nαとの関係を示したものであ
る。このような整理をすると、温度に依らず、1本の曲
線で近似できる。したがって、Nαの値は、式(13)
の近似関数で表現できる。
【0051】
【化8】 Nα=f7(T,Xco) …(13) 本発明のモデルでCO濃度の変化を再度計算した結果を
図12に示す。実験結果は計算結果を再現する。本発明
のモデルが妥当であることがわかる。
【0052】本発明の方法には、必要な計算精度や可能
な計算時間に応じて、いくつかの変形例がある。最も単
純な方法は、CO濃度により火炎と火炎後流とを判定
し、火炎中と火炎後流で異なる総括反応速度定数を用い
ることである。いくつかの系で検討した結果では、火炎
と火炎後流の境界でのCO濃度は、1000−5000
ppmとするのが適当である。もうひとつの方法は、素
反応計算を簡略化する方法である。具体的には火炎後流
でのラジカル再結合反応のみを詳細に計算する。
【0053】本発明のモデルを用いて、ごみ焼却炉の2
次燃焼室を模擬した系で、COの酸化過程を計算した。
計算では、2次燃焼室を高さ7m、幅2m、奥行き2m
のダクトで模擬した。このダクトを160個のセルに分
割して計算した。ダクトの入口の手前で二次空気26が
噴出されるものとし、ダクト入口の断面平均のガスの質
量分率は、窒素が0.6737kg/kg、酸素が0.
1174kg/kg(モル分率で約10.3%)、水が
0.0898kg/kg、CO2が0.1091kg/
kg、COが0.01kg/kg(モル分率で約1%)
である。
【0054】第35回日本伝熱シンポジウム講演論文集
75−76ページ(1998年5月)および第8回廃棄
物学会研究発表会講演論文集509−511ページ(1
997年)に記載の文献では、RDF焼却炉中のCO濃
度分布の測定結果が示されている。二次燃焼室入口付近
でのCO濃度は約1%である。この結果を基に、ダクト
入口のCO濃度を決めた。入口の平均流速は2m/sと
した。ガスとダクト壁温は一定とした。COの酸化は、
化学反応と乱流混合の両方に律速されるとし、両者の時
定数のうち小さいほうを、CO酸化の時定数として計算
した。乱流混合の次定数は、0.1sとした。
【0055】計算結果の例を図13と図14に示す。ダ
クト入口から出口までの滞留時間は約3.5sである。
CO濃度が1000ppm付近までは、本発明と従来モ
デルの計算結果に差はない。1000ppm以下では、
本発明の計算のほうがCOの減少が遅くなる。また、本
発明では、出口CO濃度に与える温度の影響が強い。本
発明の計算では、温度が1173Kのときは滞留時間を
長くするとCO濃度が低くなる。滞留時間を長くする
と、10ppm以下まで低減できる。一方、温度が10
23Kと低いときには、滞留時間を長くしても、CO濃
度を数百ppmまでしか低減できない。
【0056】日本国内のごみ焼却炉を対象に、ダイオキ
シン類やCO排出濃度と、焼却炉の運転条件の関係を調
査した文献がある。(岡島 重信、京都大学学位論文、
1993年)そのうち、CO濃度と炉内滞留時間の関係
を図15に示す。多くの場合、滞留時間を長くすると、
CO濃度は減少する。ただし、炉出口温度が1073K
以下の場合には、滞留時間を長くしてもCO濃度は変わ
らない。その濃度は数百ppmのオーダである。また、
温度が高いほど、滞留時間延長の効果が顕著であり、1
0ppm以下まで低減可能である。本発明の計算結果で
得られた特徴は、この調査結果の特徴と一致する。
【0057】図16に、CO排出濃度と炉出口温度の関
係が示されている。文献値の調査結果では、平均滞留時
間が約1.4sであり、最大値は約3.5sである。炉
出口酸素濃度の平均値は10.2%であり、最小値は
5.8%である。文献値では、炉出口温度が1200K
以下になると、CO濃度の高いデータが多くなる。11
00−1200Kの場合、CO濃度が数ppmのデータ
もある一方、数百ppmとなるデータも多い。炉内の温
度分布、滞留時間、混合状態等のわずかな燃焼条件の違
いにより、CO濃度が敏感に変化しやすい温度条件と考
えられる。1300K以上のときにはCO濃度が100
ppmを超えるデータはない。COを速やかに酸化させ
るのに充分な温度条件と考えられる。一方、1100K
以下のときは、CO濃度が100ppm下回るデータは
ない。この温度条件では、COの酸化が凍結されると考
えられる。
【0058】滞留時間を1.4sと3.5sのときのC
O濃度の計算結果を図16中にラインで示す。滞留時間
が1.4s(文献値の平均滞留時間)のときは、110
0−1200K付近でCO濃度が急激に変化する。13
00K以上では、CO濃度は数十ppm程度である。滞
留時間を長くすると、1100−1200Kの条件で
も、CO濃度は10ppm以下となる。1100−12
00Kの温度条件では、CO濃度が変化しやすい。一
方、1100K以下の条件では、滞留時間を長くしても
CO濃度を100ppm以下にできない。これらの計算
結果の特徴は、文献値の調査結果の特徴を再現する。
【0059】〔実施例4〕微粉炭燃焼場でのNOx濃度
を予測する方法の一例を次に説明する。図17に、本発
明のNOx濃度予測方法における、石炭中の窒素の反応
経路が示されている。石炭に含まれる窒素(Coal−
N)の一部は、熱分解反応により気相中に放出され、V
olatile−Nとなる。Volatile−Nは、
HCN、NH3およびこれらの分子が分解したラジカル
(CN,NCO,NH2,NH,N等)で構成される。
ここでは、Volatile−NをHCNで代表させ
る。Volatile−Nとして放出されなかった石炭
中の窒素は、Char−Nとして、固体中に残留する。
【0060】Volatile−N(HCN)は式(1
4)の反応により酸化され、NOを生成する。一方、V
olatile−N(HCN)は式(15)の反応によ
りNOを還元し、窒素分子を生成する。Volatil
e−N(HCN)は、また、式(16)と式(17)の
反応により、気相中でも生成される。式(16)は、N
Oが炭化水素ラジカル等により還元され、Volati
le−N(HCN)を生成する反応である。
【0061】
【化9】 HCN+OH⇒NO+CH2 …(14) HCN+NO⇒N2+HCO …(15) NO+CH⇒HCN+O …(16) N2+CH⇒HCN+N …(17) ここでは、NOを還元するラジカルを、CHで代表させ
た。本発明のモデルでは、式(15)と式(16)の2
種類のNOの気相還元反応が考慮されている。これは、
反応生成物の観点からみるとNOの気相還元反応は二つ
に大別されることを表現する。ひとつは、式(15)で
代表される反応であり、生成物は安定な窒素分子であ
る。もうひとつは、式(16)で代表される反応であ
り、生成物は、再度NOに酸化されやすい、Volat
ile−N(HCN)である。式(17)は、プロンプ
トNO生成の代表的な反応である。また、図17中には
示していないが、必要であれば、サーマルNO(Zel
dovich NO)の反応を追加する。
【0062】石炭中のチャー(熱分解しなかった可燃物
質)は、式(18),(19),(20)で代表される
反応により酸化され、可燃物質を気相中に放出する。こ
のとき、同時に、Char−Nも気相中に放出される。
気相中に放出されたChar−Nは、NOまたはN2と
なる。
【0063】
【化10】 C(固体)+1/2O2⇒CO …(18) C(固体)+CO2⇒2CO …(19) C(固体)+H2O⇒CO+H2 …(20) C(固体)+NO⇒1/2N2 …(21) 図17中のηは、Char−NからNOが生成される割
合を表わす。チャーはまた、式(21)の反応によりN
Oを還元する。
【0064】ここでは、本発明の計算手法を、式(1
4)、(16)、(17)に適用した。Volatil
e−N(HCN)の濃度変化速度は、式(22)で表わ
される。
【0065】
【化11】
【0066】ここで、VHCNは、石炭の熱分解によ
り、Volatile−N(HCN)が生成される速度
を表わす。〔OH〕e,〔CH〕eはそれぞれ、OH、
CHの熱平衡濃度を表わす。αOH,αCHはそれぞれ、計
算対象のセル中で、OH、CHの濃度が熱平衡値の何倍
であるかを表わす数値である。式(14)、(16)、
(17)の総括反応速度定数はそれぞれ、式(23)、
(24)、(25)で表わされる。
【0067】
【化12】
【0068】ここでは、αOH,αCHを、固体中の燃料が
気相中に放出される速度(W)の関数で表現した(式2
6、27)。固体中の燃料が気相中に放出される速度
(W)とは、石炭の熱分解反応の速度、および、式(1
8),(19),(20)の反応速度の総和である。石
炭の熱分解が終了した後も、式(18),(19),
(20)により可燃物質が気相中に放出されるため、火
炎が形成される。
【0069】本発明のNOx濃度予測方法の効果を検証
した結果を以下に示す。
【0070】図18は、検証に用いた燃焼装置の一例で
ある。燃焼部(反応部)は、長さ800mm、直径50
mmのアルミナ管で構成され、アルミナ管の周囲を電気
炉で加熱した。微粉炭と空気を予め混合した後、燃焼部
(反応部)の上端から供給し、燃焼させた。燃焼部(反
応部)での滞留時間は約1sである。空気に予めNOを
混入した燃焼実験も一部実施した。図19は、炉内の温
度を計算した結果である。供給した微粉炭と空気は、約
15000k/sの速度で加熱される。約0.1−0.
2秒後には、壁面温度とほぼ同じ温度に到達する。
【0071】図20は、本発明の方法により、NOx濃
度の時間変化を計算した例である。使用した石炭の分析
値は、揮発分含有率が26.3%、固定炭素含有率が6
0.9%、灰分含有率が12.8%、炭素含有率が7
4.0%、水素含有率が4.8%、酸素含有率が6.0
%、窒素含有率が1.7%、硫黄含有率が0.4%の歴
青炭である。分析値は全て無水条件である。燃焼温度は
1573Kである。図中のSRは、装置入口での空気比
である。図中のボラタイル燃焼領域は、石炭から熱分解
した揮発分が主に燃焼する領域である。入口空気比を変
えて計算したが、いずれの場合もボラタイル燃焼領域で
NOxが急生成する。入口空気比が低いときは、いった
ん生成したNOxが下流側で減少する。入口空気比高い
ときは、NOxの減少がゆるやかであるか、下流側でも
生成が続く。図中の白丸は、入口空気比が0.96のと
きの実験結果である。計算結果は実験結果と一致する。
【0072】図21はCHの濃度変化である。入口空気
比が低いほどCH濃度が高くなり、NOxが還元されや
すいことがわかる。図22はOHの濃度変化である。石
炭の熱分解で放出された揮発分の燃焼により火炎が形成
され、OH濃度が急激に増加する。下流側では、ラジカ
ル再結合反応によりOHは減少し、熱平衡濃度にしだい
に近づく。
【0073】燃焼温度、入口空気比、等を変えて、燃焼
気出口のNOx濃度を計算し、実験結果と比較した。微
粉炭の粒径は、通常、体面積平均径で12.6μmであ
る。図23は燃焼温度の影響である。横軸は気相空気比
で整理した。気相空気比が1.0以上の場合が酸化雰囲
気1.0以下の場合が還元雰囲気である。実験結果の特
徴は以下の2点である。
【0074】1)酸化雰囲気では、燃焼温度が高いとN
Ox濃度も高くなる。
【0075】2)還元雰囲気では、NOx濃度に及ぼす
温度の影響が小さくなる。
【0076】計算結果は実験結果の特徴を再現し、NO
x濃度の絶対値もほぼ一致する。
【0077】図24に粒径の影響が示されている。図中
の粒径は、体面積平均径である。実験結果では、気相空
気比で整理すると、NOx濃度は粒径に影響されなかっ
た。計算結果は実験結果を再現する。
【0078】図25は、図23,24の燃焼条件のとき
の、燃焼器出口の燃焼率である。燃焼率に関しても、計
算結果は実験結果と±3%の範囲で一致する。
【0079】図26と図27に、空気中に予めNOxを
添加したときの影響が示されている。実験結果の特徴は
以下の2点である。
【0080】1)酸化雰囲気では、NOxを添加する
と、燃焼器出口のNOx濃度も高くなる。
【0081】2)還元雰囲気では、NOx添加の影響は
小さくなる。気相空気比が0.8付近では、NOx添加
の影響はない。
【0082】計算結果は、実験結果の特徴をほぼ再現す
る。
【0083】図28と図29に、本発明の効果を、従来
技術と比較して示す。従来技術では、ラジカルの反応が
考慮されていない。例えば、Combustion and flame 93
316−326ページ(1993年)に記載の文献に、従来技術の
例が記載されている。燃焼温度が高く、気相空気比が低
いときに、本発明と従来技術の計算結果に差がみられ
た。従来技術では、燃焼温度が高いときには、気相空気
比を低くしても200ppm程度までしかNOxは低減
されない。還元雰囲気であっても、温度が低いほうがN
Ox濃度は低くなる。これに対して、本発明の方法で
は、燃焼温度が高いときに、NOx濃度が100ppm
以下に低減された。高温の還元雰囲気を形成すること
が、NOxの低減に有利である。
【0084】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明によれ
ば、大型で複雑な燃焼炉内で発生する有害物質の濃度
を、短時間で計算でき、また、本発明の予測方法を用い
ることで、低NOx微粉炭燃焼装置およびごみ焼却装置
の設計と試運転段階での調整を迅速に実施することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の予測方法の燃焼状態を計算するアルゴ
リズムの一実施例を示す図。
【図2】微粉炭ボイラの全体構成を示す線図。
【図3】微粉炭バーナーの一例を示す縦断側面図。
【図4】ごみ焼却炉の概略構成を示す線図。
【図5】COの酸化過程の実験での温度変化を示す特性
図。
【図6】CO濃度変化の実験と、従来の総括反応モデル
による計算結果の比較を示す図。
【図7】CO濃度変化の実験と、素反応モデルによる計
算結果の比較を示す図。
【図8】燃焼場でのラジカル濃度の変化を示す特性図。
【図9】COとOHの濃度変化の計算結果を示す図。
【図10】OH濃度の熱平衡値からのずれと、CO濃度
の関連性を示す特性図。
【図11】温度の影響の補正方法を説明するための図。
【図12】CO濃度変化の実験と、本発明のモデルによ
る計算結果の比較を示す図。
【図13】反応温度が1173Kのときの、本発明の計
算結果と従来の技術の比較を示す図。
【図14】反応温度が1023Kのときの、本発明の計
算結果と従来の技術の比較を示す図。
【図15】ごみ焼却炉から排出されるCOと炉内滞留時
間の関係を示す図。
【図16】ごみ焼却炉から排出されるCOと炉内温度の
関係を示す図。
【図17】本発明のNOx濃度予測方法での、石炭中の
窒素化合物の反応経路を示す図。
【図18】本発明の検証に用いた燃焼装置を示す線図。
【図19】炉内温度の計算結果を示す図。
【図20】本発明のNOx濃度予測方法でNOx濃度の
時間変化を計算した例を示す図。
【図21】CHの濃度変化を計算した例を示す図。
【図22】OHの濃度変化を計算した例を示す図。
【図23】NOx生成濃度に与える、燃焼温度の影響を
示す図。
【図24】NOx生成濃度に与える、粒径の影響を示す
図。
【図25】燃焼装置出口での石炭の燃焼率を示す図。
【図26】空気中にNOを添加したときの、NOx生成
濃度の実験結果を示す図。
【図27】空気中にNOを添加したときの、NOx生成
濃度の計算結果を示す図。
【図28】燃焼温度が1673Kの条件で、本発明のN
Ox濃度予測方法と従来方法を比較した結果を示す図。
【図29】燃焼温度が1373Kの条件で、本発明のN
Ox濃度予測方法と従来方法を比較した結果を示す図。
【符号の説明】 1…火炉、2…出口、3…蒸発器、4…バーナ、5…ア
フターエアポート、6…ブロワ、7…空気、8…石炭ミ
ル、9…1次空気と微粉炭、10…2次空気、11…3
次空気、12…2次空気入口、13…旋回器、14…旋
回器、15…濃度調節器、16…保炎器、17…オイル
ガン、18…火炉前壁、19…火炉後壁、21…ホッ
パ、22…ごみ、23…乾燥火格子、24…主燃焼火格
子、25…後燃焼火格子、26…二次空気、27…一次
燃焼室、28…二次燃焼室、29…ボイラ、30…燃焼
(一次)空気、31…燃焼灰回収部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 研二 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株 式会社日立製作所電力・電機開発研究所内 Fターム(参考) 3K003 EA07 EA10 GA05 GA06 HA00 5B049 BB07 EE03 EE43

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃焼装置内を2次元または3次元の複数
    のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装置の設計上の
    固有データと運転情報を入力条件として各セル毎にガス
    の流動計算、固体および/あるいはガスの化学反応計
    算、および放射伝熱量計算、を収束するまで繰り返して
    燃焼装置内の温度分布とガス組成分布を求め、さらに火
    炉内の有害物質の濃度分布を求める、燃焼装置内の有害
    物質濃度分布予測方法において、 個々のセルでの燃焼状態を数値で表現し、前記数値に基
    づいて当該セル中に存在するラジカルの濃度をもとめ、
    得られたラジカルの濃度に基づいて当該セル中での化学
    反応計算を実施することを特徴とする燃焼装置内で発生
    する有害物質の濃度分布の予測方法。
  2. 【請求項2】 燃焼装置内を2次元または3次元の複数
    のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装置の設計上の
    固有データと運転情報を入力条件として各セル毎にガス
    の流動計算、固体および/あるいはガスの化学反応計
    算、および放射伝熱量計算、を収束するまで繰り返して
    燃焼装置内の温度分布とガス組成分布を求め、さらに火
    炉内の有害物質の濃度分布を求める、燃焼装置内の有害
    物質濃度分布予測方法において、 個々のセルでの燃焼状態を数値で表現し、前記数値に基
    づいて化学反応計算に使用する総括化学反応速度定数の
    少なくともひとつをもとめ、当該セルでの化学反応計算
    を実施することを特徴とする燃焼装置内で発生する有害
    物質の濃度分布の予測方法。
  3. 【請求項3】 燃焼装置内を2次元または3次元の複数
    のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装置の設計上の
    固有データと運転情報を入力条件として各セル毎にガス
    の流動計算、固体および/あるいはガスの化学反応計
    算、および放射伝熱量計算、を収束するまで繰り返して
    燃焼装置内の温度分布とガス組成分布を求め、さらに火
    炉内の有害物質の濃度分布を求める、燃焼装置内の有害
    物質濃度分布予測方法において、 個々のセルが、火炎からどの程度はなれているかを数値
    で表現し、表現された前記数値にしたがって、化学反応
    の計算を実施することを特徴とする燃焼装置内で発生す
    る有害物質の濃度分布の予測方法。
  4. 【請求項4】 燃焼装置内を2次元または3次元の複数
    のセルに分割し、燃料を燃焼させる燃焼装置の設計上の
    固有データと運転情報を入力条件として各セル毎にガス
    の流動計算、固体および/あるいはガスの化学反応計
    算、および放射伝熱量計算、を収束するまで繰り返して
    燃焼装置内の温度分布とガス組成分布を求め、さらに火
    炉内の有害物質の濃度分布を求める、燃焼装置内の有害
    物質濃度分布予測方法において、 個々のセル中に火炎があるかないかを判定し、火炎があ
    るときとないときで、化学反応の計算方法を変更するこ
    とを特徴とする燃焼装置内で発生する有害物質の濃度分
    布の予測方法。
  5. 【請求項5】 前記火炎があるかないかの判定手段、火
    炎からどの程度はなれているかを表現する数値、およ
    び、燃焼状態を表わす数値とは、当該セル中でのCO濃
    度、可燃物質濃度の総和、可燃物質の酸化速度、COの
    濃度変化速度、CO2,H2O等の燃焼生成物の生成速
    度、固体中の燃料が気相中に放出される速度、可燃性元
    素の酸化数の変化速度、酸素の消費速度、反応による熱
    発生速度、当該セルの気相空気比、温度のいずれかの関
    数である請求項1から4のいずれかに記載の燃焼装置内
    で発生する有害物質の濃度分布の予測方法。
  6. 【請求項6】 前記予測する有害物質は、NOx,C
    O,未燃炭化水素、ダイオキシン類、クロロベンゼン
    類、クロロフェノール類、アルデヒド類のうち少なくと
    もひとつである請求項1から5のいずれかに記載の燃焼
    装置内で発生する有害物質の濃度分布の予測方法。
  7. 【請求項7】 請求項1から6までのいずれかに記載
    の、燃焼装置内で発生する有害物質の濃度分布の予測方
    法を記録した、燃焼装置内で発生する有害物質の濃度分
    布の予測方法の記録媒体。
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Tomita Emissions Reduction: NOx/SOx Suppression