JP2001088305A - 記録装置 - Google Patents

記録装置

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JP2001088305A
JP2001088305A JP2000305982A JP2000305982A JP2001088305A JP 2001088305 A JP2001088305 A JP 2001088305A JP 2000305982 A JP2000305982 A JP 2000305982A JP 2000305982 A JP2000305982 A JP 2000305982A JP 2001088305 A JP2001088305 A JP 2001088305A
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JP
Japan
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ink
heating resistor
thin film
resistor
heating
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Application number
JP2000305982A
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English (en)
Inventor
Masao Mitani
正男 三谷
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】熱エネルギーを利用してインク液滴を飛翔させ
る記録装置であって、インク吐出周期の大きな短縮効果
を奏する新たな方式の記録ヘッドの提供を課題とする。 【解決手段】インク溜めと、インク吐出口と、前記イン
ク溜めと前記インク吐出口とを連通するインク流路と、
このインク流路端部に形成され、前記インク溜め側に向
かって拡がる空間と、この空間に設けられる第1の発熱
抵抗体とを有する記録装置を提供する。この記録装置
は、さらに、前記インク流路内の前記インク吐出口近傍
に設けられた第2の発熱抵抗体を有するものであっても
よい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを利
用してインク液滴を記録媒体に向けて飛翔させる形式の
記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パルス加熱によってインクの一部を急速
に気化させ、その膨張力によってインク液滴をオリフィ
スから吐出させる方式のインクジェット記録装置は特開
昭48−9622号公報、特開昭54−51837号公
報等によって開示されている。
【0003】このパルス加熱の最も簡便な方法は発熱抵
抗体にパルス通電することであり、その具体的な方法が
社団法人、日本工業技術振興協会主催のハードコピー先
端技術研究会(1992年2月26日開催)、またはHe
wlett-Packard-Journal,Aug.1988で発表されている。こ
れら従来の発熱抵抗体の共通する基本的構成は、図20
に示すように、薄膜抵抗体13と薄膜導体14を酸化防
止層15で被覆し、この上に該酸化防止層15のキャビ
テーション破壊を防ぐ目的で、耐キャビテーション層1
6、17を1〜2層被覆するというものであった。
【0004】このように複雑な構成としなければならな
い最大の原因は薄膜抵抗体13にある。すなわち、従来
より該薄膜抵抗体として使用できる程度に比抵抗が大き
く、耐熱性、耐パルス性に富む材料としてはTaAl、
HfB2 など多くの材料が知られ、また利用されている
が、これらは全て酸化雰囲気中で加熱すると焼損してし
まうため、厚さ数μmのSiO2 やSi3 4 酸化防止
層15で被覆しなければならなかった。前記薄膜抵抗体
をインク中で使用しても、インク中の溶存空気によって
酸化されてしまうので事情は同じである。
【0005】また、インク中でのパルス加熱で発生する
気泡が急激に消滅する際、キャビテーションが発生する
が、該キャビテーションは酸化防止層15にクラックを
発生させ易く、ひいては薄膜抵抗体13の焼損事故につ
ながる恐れがある。そこで、上記問題点を解決する目的
で、約0.4μmの厚さのTa薄膜を耐キャビテーショ
ン層16として用いるのが一般的である。
【0006】このように、従来の発熱抵抗体は厚くて熱
容量の大きい2層の保護層(薄膜抵抗体の50〜100
倍)を通してインクをパルス加熱(パルス幅5〜10μ
s)しなければならないので、加熱の時間が遅れてしま
う不都合があったと同時に、気泡の消滅時においてもな
お、発熱抵抗体表面は高い温度を保ったままとなり、不
要な気泡(弱いながらも)を再発生させてしまってい
た。これは、当然のことながらインクの安定な吐出の障
害となり、吐出周期の短縮の隘路になっている。
【0007】一方、前記構成の発熱抵抗体を用いつつ、
吐出周期の短縮の試み(特開昭61−106259号公
報、特開昭62−240558号公報)がなされている
が、前者は原理的にも吐出周期の短縮につながらず、後
者は隣接ノズルへの影響が大きいクロストークの問題を
解決できないので、いずれの方法も実用化されていない
のが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記種々の問題を抱え
ている従来の発熱抵抗体を抜本的に改善するには、水性
インク中での使用に耐え得る耐酸化性、耐キャビテーシ
ョン性及び耐電食性に富む薄膜抵抗体材料、および水性
インク中での使用に耐え得る薄膜導体材料を開発するほ
かに、インク吐出周期の大きな短縮効果を奏する新たな
方式の記録ヘッドが望まれている。
【0009】そこで、本発明は、熱エネルギーを利用し
てインク液滴を飛翔させる記録装置であって、インク吐
出周期の大きな短縮効果を奏する新たな方式の記録ヘッ
ドを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的は、インク溜め
と、インク吐出口と、前記インク溜めと前記インク吐出
口とを連通するインク流路と、このインク流路端部に形
成され、前記インク溜め側に向かって拡がる空間と、こ
の空間に設けられる第1の発熱抵抗体とを有することを
特徴とする記録装置によって達成される。
【0011】また、上記記録装置は、前記インク流路内
の前記インク吐出口近傍に設けられた第2の発熱抵抗体
を有することが好ましい。その際、前記第1の発熱抵抗
体は、前記第2の発熱抵抗体と同一であるとよい。ま
た、前記第1の発熱抵抗体は、前記第2の発熱抵抗体と
異なってもよい。
【0012】また、前記第1の発熱抵抗体および前記第
2の発熱抵抗体の少なくとも一方は、Cr−Si−O3
元合金およびTa−Si−O3元合金よりなる群から選
ばれる少なくとも1種の3元合金薄膜抵抗体を有するも
のであることが好ましい。さらに、前記第1の発熱抵抗
体および前記第2の発熱抵抗体の少なくとも一方は、前
記3元合金薄膜抵抗体に加え、さらにNi、Moおよび
Wよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属薄膜導
体を有するものであることが好ましい。また、前記発熱
抵抗体は、インク流路の方向に対して非対称形状になっ
ているものであってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の記録装置について
添付図面を用いて説明する。
【0014】図1は、パルス加熱によってオンデマンド
記録するインクジェットプリントヘッドに使用される発
熱抵抗体Hの断面図である。
【0015】発熱抵抗体Hは、ガラス基板1上にCr−
Si−SiO合金薄膜抵抗体3およびNi薄膜導体4、
4´によって構成され、ガラス基板1の上に、特開昭5
8−84401号公報に開示され、1982年SanD
iegoで開催されたElectronics Components Confere
nce にて発表されたCr−Si−SiO合金薄膜抵抗体
3が約700Åの厚さで形成され、この上に厚さ約20
00ÅのNi薄膜導体4、4´が積層された後、フォト
エッチングによって、例えば幅、長さ共に約40μmの
発熱抵抗体Hが所定の形状に形成された構成となってい
る。発熱抵抗体Hは、図20に示す従来の発熱抵抗体に
対して酸化防止層15および耐キャビテーション層16
および17を有しておらず、Cr−Si−SiO合金薄
膜抵抗体3がインクと直接接触するように構成されてい
る。このような発熱体抗体Hは、Cr−Si−SiO合
金薄膜抵抗体3のエッチングには沸硝酸系のエッチング
液を用いるため、図2で示すようにガラス基板1の上に
は約1500Åの厚さのTa2 5 熱酸化膜2をガラス
基板1の保護のために、予め形成したものであってもよ
い。
【0016】このような発熱抵抗体Hは、本発明の記録
装置の好適実施例であるプリンタのインクジェットプリ
ントヘッドPに用いられる。インクジェットプリントヘ
ッドPの1つのオリフィスに対応する構成を、図3、図
4に示している。図4は、図3に示されるB−B’断面
を示している。インクジェットプリントヘッドPは、ガ
ラス基板1、隔壁5、天板6、オリフィス(インク吐出
口)7、インク通路8、およびインク溜め9と、発熱抵
抗体Hを用いた吐出用発熱抵抗体10と発熱抵抗体Hを
用いた加圧用発熱抵抗体20とを主に有して構成され
る。すなわち、吐出用発熱抵抗体10は、オリフィス7
の直下のインク通路8の基板1上に設けられ、加圧用発
熱抵抗体20は、インク通路8のの端部に形成され、イ
ンク溜め9側に向かって拡がる空間に設けられ、吐出用
発熱抵抗体10と加圧用発熱抵抗体20は、インク通路
内に直列に接続して同時にパルス加熱する構成となって
いる。
【0017】ここでは、吐出用発熱抵抗体10の約1/
2のエネルギが加圧用発熱抵抗体20に印加されるよ
う、その抵抗値を1/2とし、加圧用発熱抵抗体20に
よるクロストークの発生を抑制している。吐出用発熱抵
抗体10と加圧用発熱抵抗体20との距離は150〜2
50μm程度離れていれば充分であり、加圧用発熱抵抗
体20と側壁端(インク通路端であり、インク溜めに至
近)との距離は100〜150μm、そしてインク通路
はインク溜めに向かって拡げられた空間を有し、通路端
近くにインク溜めを設けることでクロストークを発生さ
せずに吐出インクの高速補充を可能とする構成となって
いる。
【0018】本実施例のように、インク通路8にインク
溜め9側に向かって拡がる空間を形成し、この空間に加
圧用発熱抵抗体20を設けるのは、以下の理由による。
【0019】ここでは、規制された流路内で発生する気
泡の拡大、収縮のシミュレーション結果に基づいて、図
5を用いて説明する。シミュレーションを簡単にするた
め、発熱抵抗体の昇温領域は円形とする。図5(a)で
は、円形発熱抵抗体41のある基板上にインクの動きを
規制するものがない状態での気泡の拡大を一定時間毎に
見たものである。上段が上から見たもの、下段がその側
面図である。図5(b)は、上方への気泡の拡大を規制
する天板を設けた状態、図5(c)は更に側壁を設けた
場合で、現在実用化されているインクジェットプリント
ヘッドの1つはこの方式を採用している。図5(a)〜
(c)のインクの運動空間は発熱抵抗体41に対して対
称であり、気泡の拡大時における周辺へのインクの流出
と収縮時におけるインク流入は発熱抵抗体41を中心と
して対称となっている。
【0020】これに対し、図5(d)に示す非対称空間
内に発熱抵抗体41が置かれた場合、より大きな空間へ
のインクの流出速度が相対的に遅くなる一方、非対称形
状に拡大した減圧気泡の収縮時には、より大きな空間か
らのインクの流入量が多くなることも加わって、気泡の
消滅点はより狭い流路側に移るのである。すなわち、気
泡の拡大、収縮の両時点でインクを一定方向に流す異方
的な力(ポンピング作用)を発生させることができるの
である。
【0021】なお、図5(d)ではインク流路の一方の
側壁を拡げることで非対称空間を形成したが、天板の一
方を拡げたり、基板に溝を設けて拡大空間を形成した
り、これらを組み合わせたりする方法を採用しても同様
の効果が得られる。
【0022】さらに、本実施例では、上記インクを一定
方向に流す異方的な力(ポンピング作用)を利用するこ
とによって、以降に説明するメニスカスの復帰を人工的
に速め、これによって吐出周波数の大幅な改善を行って
いる。
【0023】すなわち、オリフィスからインクを安定に
吐出させる必要条件の1つは、オリフィス先端部に形成
される安定なメニスカスにあることはよく知られてい
る。すなわち、インクの吐出によって大きく窪んだメニ
スカスが再び元の位置に復帰できて始めて再吐出が可能
となるのである。一方、この大きく窪んだメニスカスを
元の位置に復帰させる力は、インク通路壁とインク間に
働く表面張力を利用することしかできないのが現状であ
る。すなわち、メニスカスが自然に復帰するのを待つし
かないのである。
【0024】一般に、保護層を有する従来の発熱抵抗体
の場合、メニスカスの最大後退時はインク吐出の完了時
点である約30μs後となっている。しかし、前述のよ
うにメニスカスの復帰には表面張力を利用しているた
め、その復帰にはインク吐出の完了時間の約10倍の2
00〜300μsの時間が必要となり、これが吐出周波
数を決定づけているのである。
【0025】メニスカスの復帰時間についてもう少し詳
細に見ることとする。従来のように薄膜抵抗体に設けら
れた厚い保護層の表面温度の上昇は発熱抵抗体自身の昇
温から数μs程度の遅れがある。しかも、気泡発生後、
前記保護層表面が断熱状態になってもなお、保護層表面
は数μsの間昇温を続ける。パルス加熱終了後、基板へ
の熱流出によって発熱抵抗体は冷却されるが、保護層と
薄膜抵抗体下層の断熱層による時定数から評価すると、
気泡の消滅する30μs時点の保護層表面温度はなお1
00〜200℃の高温状態にある。そのため、インクは
再加熱され、弱いながらも気泡が再発生してしまう。こ
の再発泡がメニスカスの復帰に悪影響を与え、復帰時間
を必要以上に長くするのである。
【0026】これに対し保護層を不要とした本実施例の
発熱抵抗体は、1μsという短パルス駆動であって、し
かもインクへの熱伝導の時間的な遅れが全く生じない。
従って、薄膜抵抗体下層の断熱層の厚さも従来の数分の
1の厚さ(SiO2 で1〜2μm)とすることができ、
気泡消滅時の発熱抵抗体の温度は常温近くまで冷却され
る。従って、前述したような気泡の再発生を生ずること
がなくなり、メニスカスの復帰が速くなり、吐出周波数
の向上につながるのである。
【0027】上述したように、本実施例では、吐出用発
熱抵抗体10および加圧用発熱抵抗体20は、発熱抵抗
体Hを用いているが、この発熱抵抗体Hは、従来の発熱
抵抗体のように保護層を必要とせず、Cr−Si−Si
O合金薄膜抵抗体とNi薄膜導体で構成されている。以
降では、Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体が耐酸化
性、耐キャビテーション性および耐電食性に富み、Ni
薄膜導体が、水性インク中で使用に耐え得るものである
ことを説明する。
【0028】図6は、薄膜導体材料の耐電食性評価方法
を、図7は、これを用いて評価した各種金属薄膜の耐電
食特性を示す。
【0029】本評価は、絶縁距離を10μm、厚さを約
1000Åとした金属薄膜を、1分間水中にて直流電圧
を印加し、印加電圧と電食量との関係を調べたものであ
る。インク中ではなくて水中での試験としたのは、既に
使用されているいくつかの水性インクのPHが7.0と
中性だからであり、普遍性があるからである。
【0030】図7の結果から明らかなように、耐食性が
NiまたはTa、W、Mo、AlまたはCrの順に良好
なこと、Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体と積層して
選択ウエットエッチングができること(Taは不可)、
実装技術面からも取り扱いやすいことなどから、Niま
たはW、Moが材料として適し、特に、薄膜導体として
Niが最適材料であることが分かった。
【0031】そこで、Ni薄膜導体の耐食性を更に詳細
に評価した結果を図8に示す。すなわち、20V/10
μm程度の電圧で20〜30分間、連続して印加しても
ほとんど電食しないことが分かる。
【0032】一方、図3及び図4に示すNi薄膜導体
4、4´に印加される電圧と時間について見ると、後述
するようにパルス駆動条件は1μsの印加パルス幅で
0.5〜1W/dotとなる。Cr−Si−SiO合金
薄膜抵抗体3の抵抗値は約2000Ωなので、Ni薄膜
導体4、4´間に印加する電圧は32〜45Vとなる。
また、前記Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体3の長さ
は約40μmとしたので、8〜12V/10μmのパル
ス電圧がNi薄膜導体間に印加されることになる。従っ
て、仮にパルス電圧が10億パルス印加されると、実質
的な電圧印加時間は1μs×10億パルス=17分間と
なり、図8に示す結果から考えると全く問題にならない
条件(電圧裕度で3倍以上、印加エネルギで10倍以
上)であることが分かる。
【0033】そこで、Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗
体3と厚さ約2000ÅのNi薄膜導体4、4´からな
る保護層を有さない発熱抵抗体Hについて、水中にてス
テップアップストレステスト(以下SSTとする)を行
なった。その結果を図9に示す。なお、図9には前記発
熱抵抗体の空気中でのSST結果についても記されてい
る。
【0034】まず、空気中でのSST破壊電力に比べ、
水中での破壊電力が1/2.5と小さいことが分かる。
これは明らかに、水中ではキャビテーションによる破壊
が主因であることを示している。しかし、実際に駆動す
る電力は後述するように0.5〜1W/dotなので、
前述のキャビテーション破壊電力は実駆動電力の10〜
20倍と大きく、耐キャビテーション性に何の問題もな
いことが分かる。しかも、耐電食性についてもインクジ
ェットプリンタに要求される寿命を示すことが推測でき
る。
【0035】そこで、この発熱抵抗体を水性インク中に
浸し、1μs、2W/dotの過電力を10億パルス印
加してみたが、抵抗値には何の変化も認められず、実寿
命の点でもなんら問題のない特性を示した。そして、前
記発熱抵抗体を図10、11に示すインクジェットプリ
ントヘッドに採用して印字性能を評価したところ、既に
市販されている他社のヘッドに比べ、表1に示すような
大幅な特性の向上を得られることが分かった。なお、図
11は、図3と略同様の構成であるが、加圧用発熱抵抗
体20および、インク溜め9に向かって拡がる空間がイ
ンク通路8に設けられていない点が異なる。図11は、
図10に示すB−B’断面を示す断面図である。
【0036】
【表1】
【0037】すなわち、本発明の発熱抵抗体では、ほぼ
同一印字条件で必要印字エネルギが1/30〜1/60
と大幅に小さくなり、吐出周波数が25〜60%も向上
したのである。これは、保護層のない発熱抵抗体による
直接加熱と1μsという超短パルス加熱、並びに気泡の
収縮時には既に発熱抵抗体表面が充分低い温度まで冷さ
れていることによって発熱抵抗体上で再発泡現象が起こ
らず、インクのメニスカスの復帰が速く行われるように
なったことによる。また、必要印字エネルギが数10分
の1と小さくなることも、薄膜抵抗体の50〜100倍
の厚さの保護層を必要とする従来の発熱抵抗体と比較す
ればその理由は明らかである。そしてこの事実は、従来
のヘッドに投入されるエネルギの98〜99%がヘッド
基板とインクの加熱(発泡以外の)に使用されているこ
とを示しており、インクの焦げつき易さやヘッドの温度
制御が不可欠であることなどをよく示している。
【0038】このような、発熱抵抗体Hを吐出用発熱抵
抗体10および加圧用発熱抵抗体20に用いた図3、図
4に示すインクジェットプリントヘッドPに、水性イン
クを満たし、共通電極4´と個別電極4間に0.5〜1
W/dot、1μsのパルス電圧を印加してインクの吐
出特性を評価したところ、吐出周波数を15〜18KH
zまで上げることができた。但し、15KHz以上では
吐出方向の不安定さが見られる場合があり、より高速化
するためには尚一層の改善が必要であることが分かっ
た。しかし、本実施例での15KHz以下の安定した駆
動は従来の技術(3〜4KHz)を大幅に越える高速印
字を達成できることを示し、低電力化と共にヘッドの温
度制御を大幅に簡易化でき、このヘッドを用いたプリン
タ等の高性能化(3〜4倍の高速印字)、低コスト化を
達成できた。
【0039】このように、インク溜め9側に向かって広
がる空間をインク流路8に形成し、この空間内に吐出用
または加圧用の発熱抵抗体を設けるので、発熱抵抗体の
発熱に伴って発生する気泡の拡大と収縮に異方性が生
じ、クロストークを発生させることなくインクを高速に
補充することができる。さらに、Cr−Si−SiO合
金薄膜抵抗体およびNi薄膜導体を用いて発熱体抗体を
形成するので、水性インク中での投入エネルギを抑え、
1μsという非常に短いパルス駆動の条件で10億パル
ス以上の寿命を持つことができる。しかも、従来の発熱
抵抗体に比べ、必要な印加エネルギは1/30以下と大
幅に低減できる。
【0040】なお、加圧用発熱抵抗体20の形状につい
ての制約は特にないが、図12や図13に示すようなイ
ンク吐出方向に非対称の形状の発熱抵抗体を用いれば、
発熱抵抗体自体に気泡の異方性を生じさせる力が発生す
るため、オリフィス7へインクを押し出す力や、インク
をインク流路8へ送り込む力が更に増幅されることとな
り、より好ましい。
【0041】すなわち、本実施例のような保護層のない
発熱抵抗体10や20を構成する、Cr−Si−SiO
合金薄膜抵抗体21または31(図12や図13)をイ
ンク流路の方向に対して非対称とすることによって気泡
の発生とその拡大に方向性を持たせ、インクへの圧力を
オリフィス7の方向には強く、インク溜め9の方向には
相対的に弱くすることにある。すなわち、Cr−Si−
SiO合金薄膜抵抗体21、31の発熱面温度分布をイ
ンク流路の方向に対して非対称とし、気泡の発生と拡大
を異方的にすることで、インク溜め9の方向への逆流速
度が遅くなり、その分だけインク溜め9方向からのイン
ク供給速度が速くなり、次の吐出に必要なインクを吐出
口付近に速やかに補充することができるようになる。そ
してインクの速やかなる補充は、前述したような吐出周
波数を向上させ、印字速度が遅いというインクジェット
プリンタの弱点を改善できる。
【0042】なお、合金薄膜抵抗体の形状は本実施例に
示した以外であっても非対称であればよい。なお、特開
昭54−39529号公報には薄膜抵抗体の形状が台形
となっている発熱抵抗体が記載されている。しかし、従
来の発熱抵抗体は、薄膜抵抗体の上には厚い保護層があ
るため、保護層を介してインクに伝わる熱は均一なもの
となり、「薄膜抵抗体の台形形状」というメリットを生
かしきれないでいた。本発明は、保護層が不要であるた
め、薄膜抵抗体の非対称形状に反映させて発熱させ気泡
を発生させる点が大きく異なっている。
【0043】本発明は、上記実施例の他に、上記実施例
とほぼ同様の構成を有し、オリフィスの向きがインク通
路と同一方向である点で相違するインクジェットプリン
トヘッドであってもよい。このような例を図14、図1
5に示す。ここで、上記実施例と同一の符号は同じもの
を指す。なお、図15は、図14中のB−B’断面を示
す断面図である。
【0044】本実施例でも、ガラス基板1上には吐出用
発熱抵抗体10と加圧用発熱抵抗体20が形成されてい
る。一方、ガラス等の材料からなる天板6には、インク
流路8と、インク溜め9と、インク流路8の端部がイン
ク溜め9側に向かって拡がるような空間が形成されてい
る。そして、吐出用発熱抵抗体10の位置はオリフィス
7近傍であり、加圧用発熱抵抗体20の位置は前記空間
内であって、双方の発熱抵抗体とも他のインク流路への
干渉を防止するため夫々のインク流路8内に形成されて
いる。
【0045】なお、吐出用発熱抵抗体10、加圧用発熱
抵抗体20には制約は特にないが、Cr−Si−SiO
合金薄膜抵抗体とNi薄膜導体で形成された上述の発熱
抵抗体Hであれば更なる高速印字を達成できる。また、
インク吐出方向に非対称の形状の発熱抵抗体を用いれ
ば、該発熱抵抗体自体に気泡の異方性を生じさせる力が
発生するため、オリフィス7へインクを押し出す力や、
インクをインク流路8へ送り込む力が更に増幅されるこ
ととなり、より好ましい。
【0046】さらに、本発明は、図16、17に示すよ
うなインクジェットプリントヘッドであってもよい。動
作、その他の特性は図14や図15に示される構成とほ
とんど同じであるので省略する。本実施例が図14や図
15の実施例と異なるところは、インク流路8内の空間
を隔壁5を用いて設けた点である。こうすることによっ
て天板となるガラス基板をフォトエッチングによって作
成する工程が簡略化でき、得られる効果は実施例4と同
等という利点がある。しかしこの方法は、インク流路ア
レーのピッチを更に細かくする場合には限界がある。こ
の場合は、図14、図15に示す実施例を本実施例と併
用してもよい。
【0047】また、本発明は、ポンピング作用を持つ図
5(d)の構成を、吐出用発熱抵抗体に利用したもので
あってもよい。その実施例を、図18、図19に示す。
本実施例は、上記実施例を簡素化したもので、性能的な
差はほとんどないといってよい。
【0048】本実施例の構成からなるヘッドであれば、
上述した保護層なしの発熱抵抗体、保護層を必要とする
従来の発熱抵抗体のいずれを用いても吐出周波数の大幅
な向上(2〜3倍化)が可能であるが、Cr−Si−S
iO合金薄膜抵抗体およびNi薄膜導体構成の発熱抵抗
体Hを用いれば熱効率は約50倍となり、吐出周波数が
更に20〜30%向上する。すなわち、本ヘッドの吐出
周波数も15KHz程度までは安定に稼働させることが
できる。
【0049】但し、前述のように本実施例においても、
インク通路端を拡げて空間を作るだけの側壁厚さが必要
であるが、これはインク通路列の作製可能密度、すなわ
ちドット密度の若干の低下となるので、高密度印字が必
要な場合はオリフィス列を傾斜させて印字する方法を採
用する必要がある。この発熱抵抗体に対しても、上述し
たように、薄膜抵抗体を非対称形状とすることでクロス
トークなどのマージンを増加させることができる。
【0050】なお、上記実施例はいずれも、Cr−Si
−SiO合金薄膜抵抗体を用いた例であるが、Cr−S
i−SiO合金薄膜抵抗体の替わりに、Ta−Si−S
iO合金薄膜抵抗体を用いたものであってもよい。すな
わち、Ta−Si−SiO合金薄膜抵抗体もCr−Si
−SiO合金薄膜抵抗体と同じように非常に硬い材料で
あり、従って耐キャビテーション性に優れた材料である
からである。Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体を、T
a−Si−SiO合金薄膜抵抗体に置き換え、Ni薄膜
導体を用いて、図1に示す発熱抵抗体を作成し、SST
を行なった。
【0051】その結果はCr−Si−SiO合金薄膜抵
抗体の結果(図9)とほぼ同一の特性を示した。僅かな
相違点は、Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体の場合、
抵抗値変化率がマイナス側に変化した後破断するのに対
し、Ta−Si−SiO合金薄膜抵抗体では徐々にプラ
ス側に変化して破断することだけであった。勿論、水性
インク中での寿命試験でも何ら問題となる変化が認めら
れなかったことはいうまでもない。
【0052】また、Ta−Si−SiO合金薄膜抵抗体
を用いた発熱抵抗体で上述の実施例と同様の試作、評価
を行なったが、Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体を用
いた場合とほぼ同様の結果を得られた。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、ポンピング作用を持つ
ヘッド構成とすることにより、インク吐出周期の大幅な
短縮を可能とし、インクジェットプリンタの課題となっ
ていた遅い印字速度を抜本的に改善できる。特に、発熱
抵抗体を保護層を不要とする単純な2層構造とすること
によって、1μSという超短パルス駆動を実現でき、気
泡消滅時において発熱抵抗体が常温近くまで温度低下す
るという冷却効率を達成することができ、インク吐出周
期が大幅に短縮する。更に30〜60倍の熱効率の向上
は消費電力の削減のみに止まらず、ヘッドの温度制御を
容易にして、インク吐出の安定化に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の記録装置を構成するインクジェット
プリントヘッドに用いられる発熱抵抗体の一例の断面図
である。
【図2】 本発明の記録装置を構成するインクジェット
プリントヘッドに用いられる、発熱抵抗体の他の例の断
面図である。
【図3】 本発明の記録装置を構成するインクジェット
プリントヘッドの一例の構成を示す概略断面図である。
【図4】 図3に示すB−B´断面の断面図である。
【図5】 (a)〜(d)は、気泡の発生状態及び消滅
状態を示す模式図である。
【図6】 薄膜導体材料の耐電食特性評価方法を示す概
略斜視図である。
【図7】 各種金属薄膜の耐電食特性を示す図である。
【図8】 Ni薄膜導体の耐電食特性を示す図である。
【図9】 本発明の発熱抵抗体のSST特性示す図であ
る。
【図10】 本発明の記録装置を構成するインクジェッ
トプリントヘッドの発熱抵抗体のテストに用いたインク
ジェットプリントヘッドの構成を示す図である。
【図11】 図10に示すB−B´断面の断面図であ
る。
【図12】 Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体の形状
を示す平面図である。
【図13】 Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体の他の
形状を示す平面図である。
【図14】 本発明の記録装置を構成するインクジェッ
トプリントヘッドの構成の他の例を示す概略断面図であ
る。
【図15】 図14に示すB−B´断面の断面図であ
る。
【図16】 本発明の記録装置を構成するインクジェッ
トプリントヘッドの構成の他の例を示す概略断面図であ
る。
【図17】 図16に示すB−B´断面の断面図であ
る。
【図18】 本発明の記録装置を構成するインクジェッ
トプリントヘッドの構成の他の例を示す概略断面図であ
る。
【図19】 図18に示すB−B´断面の断面図であ
る。
【図20】 従来の発熱抵抗体の断面を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 基板 2 Ta2 O5 耐エッチング層 3 Cr−Si−SiO合金薄膜抵抗体 4、4´ 薄膜導体 5 隔壁 6 天板 7 オリフィス 8 インク通路 9 インク溜め

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インク溜めと、インク吐出口と、前記イン
    ク溜めと前記インク吐出口とを連通するインク流路と、
    このインク流路端部に形成され、前記インク溜め側に向
    かって拡がる空間と、この空間に設けられる第1の発熱
    抵抗体とを有することを特徴とする記録装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の記録装置であって、 前記インク流路内の前記インク吐出口近傍に設けられた
    第2の発熱抵抗体を有することを特徴とする記録装置。
  3. 【請求項3】前記第1の発熱抵抗体は、前記第2の発熱
    抵抗体と同一であることを特徴とする請求項2に記載の
    記録装置。
  4. 【請求項4】前記第1の発熱抵抗体は、前記第2の発熱
    抵抗体と異なることを特徴とする請求項2に記載の記録
    装置。
  5. 【請求項5】前記第1の発熱抵抗体および前記第2の発
    熱抵抗体の少なくとも一方は、Cr−Si−O3元合金
    およびTa−Si−O3元合金よりなる群から選ばれる
    少なくとも1種の3元合金薄膜抵抗体を有するものであ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記
    録装置。
  6. 【請求項6】前記第1の発熱抵抗体および前記第2の発
    熱抵抗体の少なくとも一方は、前記3元合金薄膜抵抗体
    に加え、さらにNi、MoおよびWよりなる群から選ば
    れる少なくとも1種の金属薄膜導体を有するものである
    ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
  7. 【請求項7】前記発熱抵抗体は、インク流路の方向に対
    して非対称形状になっていることを特徴とする請求項1
    〜6のいずれかに記載の記録装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100425328B1 (ko) * 2002-06-20 2004-03-30 삼성전자주식회사 잉크 젯 프린트 헤드 및 그 제조방법
JP2013043394A (ja) * 2011-08-25 2013-03-04 Canon Inc インクジェット記録ヘッドおよびインク吐出方法

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