JP2001074891A - 放射線同位体製造装置および方法 - Google Patents

放射線同位体製造装置および方法

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JP2001074891A
JP2001074891A JP24967499A JP24967499A JP2001074891A JP 2001074891 A JP2001074891 A JP 2001074891A JP 24967499 A JP24967499 A JP 24967499A JP 24967499 A JP24967499 A JP 24967499A JP 2001074891 A JP2001074891 A JP 2001074891A
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reaction
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radionuclide
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Takuro Honda
琢郎 本多
Mamoru Kamoshita
守 鴨志田
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Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 中性子を基点とする核反応によってフッ素1
8を製造した際に、フッ素18を短時間で分離・精製す
ることを可能とする。 【解決手段】 リチウム6を含む溶液に中性子を照射
し、その吸収反応によりトリチウムを生成するととも
に、トリチウムと溶液中の酸素16の反応によりフッ素
18を生成する反応容器が設けられている。そして、分
離装置201には、陰イオン交換膜204と水素イオン
透過膜205が設けられ、反応容器からの溶液を回収管
206を介して取り込んで、溶液中のフッ素18を陰イ
オン交換膜204を用いて分離するとともに、溶液中の
トリチウムイオンを水素イオン透過膜205を用いて分
離する。このとき、溶液で未反応のリチウム6を含む、
分離装置201内の溶液を戻り管212を介して反応容
器へ戻し再循環させる。また、分離装置201で分離さ
れたフッ素18は回収管209を介して分離タンク21
0へ送って回収する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療・診断や放射
線計測用の放射性同位元素(RI)において、消滅ガン
マ線を利用した、診断・計測等に使用される放射性同位
体の製造装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】放射性崩壊で陽電子を放出する核種は、
陽電子が電子と反応して発生する消滅ガンマ線を利用し
た放射線計測Positron Emission Tomography(以下、P
ETという)に用いられる。この原理を応用した医療診
断は、ガン検診の有力な方法のみならず、医学・生物学
の研究上においても組織内の代謝をリアルタイムで調べ
ることができる等、今後ますます発展が期待される放射
線計測方法である。
【0003】一方で、陽電子を放出する放射性同位元素
は一般に半減期が短いことが知られており、製造から使
用までの崩壊による減衰が問題となる。実際の候補とし
てあげられるのは、半減期20分の炭素11(11C)や
半減期約2時間のフッ素18(18F)等がある。特に、
フッ素18は炭素11に比べ半減期が比較的長く、それ
を標識したある種の糖がガン検診に非常に有効で、その
利用価値が急速に高まっている。
【0004】これまでフッ素18を製造する一般的な方
法として、陽子等の荷電粒子を加速器で加速し標的核
(例えば、酸素18)に当てて、核変換によりフッ素1
8を製造する方法が知れている。しかしながら、加速器
の建設は一般にまだ高価で運転コストが掛かる上、その
維持・管理は医療関係者や一般研究者にとって容易では
ない。このため、現在では放射性同位元素製造専用の加
速器を、被験者の居る病院等でなく、離れた別の施設に
何台か設置し、そこで作られた放射性同位元素を必要な
場所まで運搬して使用している。
【0005】また、これに替わるフッ素18の製造方法
として、中性子を基点とした方法がある。リチウム水溶
液又はリチウムと酸素を含む溶液、或いはリチウム化合
物を入れた容器に、中性子源により中性子を放射する。
容器内には中性子のエネルギを減速させる減速材を配置
し(例えば、容器に水(減速材)を入れてリチウムを溶
解する)、中性子を熱エネルギ領域まで減速させる。こ
のエネルギ領域では、中性子とリチウム6(6Li)の核
反応の反応確率(反応断面積)は非常に大きく、この反
応でトリチウム(3H)とα粒子を生成する。天然のリ
チウムには、約7%のリチウム6が含まれている。反応
で出てくるトリチウムは、約2.7MeVのエネルギを持っ
て放出される。トリチウムは水の中を減速していき、減
速材として選んだ物質に含まれる酸素原子16(16O)
と核反応を起こしてフッ素18(18F)を生成する。そ
の時、同時に発生した中性子を更にリチウムと反応させ
て、上記の反応経路を引き起こしてフッ素18の生成率
を増大させている。
【0006】また、Jourunal of Nuclear Science and
Technology, 1 (1964) 183の文献によれば、日本原子力
研究所で最初の原子炉JRR−1を用いて、固体の炭酸
リチウム(Li2CO3)に中性子を2時間照射し、前記
の反応を用いてフッ素18を生成する実験を実施したこ
とが開示されている。ここでは、照射後の試料は酸で溶
解した後に中和液を作り、アルミナカラムを用いたクロ
マトグラフィによってフッ素18を吸着・分離してい
る。そして、吸着・分離されたフッ素18をアルカリ溶
液で溶離してフッ素18(イオンとして)を単体として
取り出すことに成功している。一連の実験では、1gの
炭酸リチウム当たり約0.1mCiのフッ素18を製造す
ることに成功した。しかし、照射終了後、試料からフッ
素18を単体分離するのに約1.5時間も要している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】中性子とリチウム6の
反応を基点とする従来の方法では、固体試料のリチウム
化合物に中性子を照射して前記反応を固体の中で起こす
ため、照射後のフッ素18の単体分離には試料の溶解等
前処理が必要で時間がかかっていた。半減期の短いフッ
素18を利用するには、最終製品(例えば、標識薬剤)
として出来上がるまでの時間が短ければ短いほど放射性
能強度が低下せず好都合である。それは、最終製品の生
産率の向上とコストの低減に大きく影響を与える。
【0008】フッ素18のように半減期の短い放射性物
質の生成では、照射時間がある程度長くなると、それ以
上生成量は増えずある飽和値に達する。これは、半減期
が短いために放射性崩壊による核種の減少量と、核反応
よる核種の生成量がある時間で釣り合った状態になるか
らである。このため、これら短半減期核種の製造の場合
は、反応体系、照射強度を決めてしまうと、その反応装
置の最大生成量が決まってしまい、あとは照射後その核
種を単離して最終製品として提供するまでの時間で最終
的なその核種の収率が決まってしまう。したがって、い
かに照射後の分離・精製プロセスの時間短縮がこの技術
の大きな鍵の一つとなっている。
【0009】本発明の目的は、中性子を基点とする核反
応によってフッ素18を製造する際に、フッ素18を短
時間で分離・精製することができる放射性同位体製造装
置および方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の放射線同位体製造装置は、核反応により放
射性核種を生成し該放射性核種を含む溶液が満たされた
反応容器と、装置本体内に陰イオン交換膜と水素イオン
透過膜が設けられ、前記反応容器からの溶液を取り込ん
で、溶液中の放射性核種を前記陰イオン交換膜を用いて
分離するとともに、溶液中の水素同位体イオンを前記水
素イオン透過膜を用いて分離する分離装置と、未反応の
核種を含む、前記分離装置内の溶液を前記反応容器へ戻
して再循環させる再循環手段と、前記分離装置で分離さ
れた放射性核種を回収する回収手段とを備えている。
【0011】また、より具体的には本発明の放射線同位
体製造装置は、リチウム6を含む溶液に中性子を照射
し、その吸収反応によりトリチウムを生成するととも
に、前記トリチウムと溶液中の酸素16の反応によりフ
ッ素18を生成する反応容器と、装置本体内に陰イオン
交換膜と水素イオン透過膜が設けられ、前記反応容器か
らの溶液を取り込んで、溶液中のフッ素18を前記陰イ
オン交換膜を用いて分離するとともに、溶液中のトリチ
ウムイオンを前記水素イオン透過膜を用いて分離する分
離装置と、溶液で未反応のリチウム6を含む、前記分離
装置内の溶液を前記反応容器へ戻して再循環させる再循
環手段と、前記分離装置で分離されたフッ素18を回収
する回収手段とを備えたものである。
【0012】中性子とリチウム6の反応を基点とした2
段階の反応を溶液中で行ってフッ素18を生成する反応
経路においては、その溶液から連続的にフッ素18を分
離・回収プロセスが重要である。本発明者らは、既に一
連のフッ素18の生成反応を水溶液中で行いフッ素18
を製造する方法を考え出している。その製造方法で生成
されるフッ素18は、殆どがフッ素イオンの形で溶液中
に溜まっている。したがって、このフッ素イオンを分離
することで、フッ素18を分離・回収することができ
る。
【0013】陰イオンの分離は、陰イオン交換膜を用い
る。この膜は陰イオンだけを選択的に透過する膜のこと
で、既に化学工学の分野には用途に応じて様々なイオン
交換膜が用いられている。フッ素18が生成された溶液
を入れた容器から配管を通じ、陰イオン交換膜を用いた
分離容器に溶液を送る。その配管は弁やポンプを制御し
て流量を調整する。分離容器には、陰イオン交換膜で仕
切られ互いの領域に陰極と陽極が設置される。それらの
電極に電圧をかけることで、陰イオンであるフッ素18
は陽極へ陰イオン交換膜を透過して集められる。水溶液
の抵抗が大きく電圧が高くなる場合は、フッ素の分離に
影響しないイオン、例えば塩素イオンを加えて水溶液の
抵抗を調整する。フッ素イオンが濃縮された溶液は回収
され、薬剤等の製造ラインへ送られる。
【0014】陰極側には水素イオン透過膜を更に設置し
ておく。これは水素イオンを選択的に透過する膜であ
る。陰極側には未反応のリチウムイオン、中性子とトリ
チウム6の反応で生成したトリチウムイオン、水素イオ
ンが集まる。特に、この中で、トリチウムはベータ崩壊
する長半減期放射性物質で、フッ素18の薬剤の中に混
入しないように注意を要する。この水素イオン選択膜を
使うことで、それら水素同位体イオンを選択的に透過さ
せ、トリチウムイオンを分離できる。こうしてリチウム
が分離・除去された陰極側の溶液は貴重なリチウム6を
含んでいるので、反応系に戻し再利用することができ
る。また、トリチウムが回収された溶液は、トレーサと
して利用するか、トリチウムの減衰を待って保管処分す
るか、又は濃度管理を厳重にして廃棄処理される。
【0015】以上のようにして、イオン交換膜を用いた
分離装置を用いれば、一連のフッ素18の分離・精製過
程を連続的に行える。この方法の利点は、イオン交換膜
の溶液の処理量は数10リットル/分程度で、前記従来
例と比べて分離・精製にかかる時間を非常に短縮でき
る。反応容器で使う溶液の量は装置の設計にもよるが、
数百リットルと予想されるので、約10分程度の処理時
間で分離・精製が可能である。分離システムの並列化を
行えば、更に処理速度は向上できるし、それ以上の処理
規模の製造プラントにも対応することができる。
【0016】また、本発明の放射線同位体製造装置で
は、同時に水素イオン透過膜を用いてトリチウムを分離
できるので、循環する水溶液中に蓄積するトリチウムの
濃度を低減できる。例えば、これらの分離装置を2段に
直列に組めば、1段目で分離・精製されたフッ素18を
含む水溶液を、2段目で更に精製することでトリチウム
等の不必要な核種の分離が可能になり、薬剤製造過程の
製品の純度向上も役立つ。さらに、フッ素18を分離後
の溶液は未反応リチウム6が回収されて反応系へ循環さ
れるので、貴重なリチウム6資源の有効利用になりコス
ト低減に役立つ。このような化学処理プラントは、遠隔
で自動運転が可能になるので、人が近くで監視してプラ
ントを操作・運転する必要が無いので、不必要な被ばく
を大幅に低減できる。
【0017】また、上記分離装置の代わりに、クロマト
グラフィを用いてフッ素18を分離・回収することも可
能である。すなわち、本発明の放射線同位体製造装置
は、核反応により放射性核種を生成し該放射性核種を含
む溶液が満たされた反応容器と、複数のカラムと該カラ
ムに対向配置された複数の注入ノズルを有し、前記カラ
ムには放射性核種を吸着するための物質が充填されて、
前記反応容器から取り込んだ溶液を前記注入ノズルから
前記カラムに注入することにより、溶液中の放射性核種
を前記カラム内に吸着して分離するクロマトグラフィ
と、前記カラムで放射性核種が取り除かれ且つ未反応の
核種を含む溶液を前記反応容器へ戻して再循環させる再
循環手段と、前記クロマトグラフィで分離された放射性
核種を回収する回収手段とを備えたものである。
【0018】また、本発明の放射線同位体製造方法は、
核反応で生成された放射性核種を含む溶液を反応容器か
ら分離装置に取り込んで、該分離装置内に設けられたイ
オン交換膜を用いて溶液中の放射性核種を分離して回収
するとともに、前記分離装置内に設けられた水素イオン
透過膜を用いて溶液中の水素同位体イオンを分離して回
収し、さらに未反応の核種を含む、前記分離装置内の溶
液を前記反応容器へ戻して再循環させることである。
【0019】本発明の放射線同位体製造装置を使用する
に際しては、まず本装置を起動するために、溶液供給装
置によりリチウム6を含む溶液が作られ、必要な量、少
なくとも中性子源を覆う量まで反応タンク内に供給され
る。リチウム6を含む水溶液は、例えば、リチウム6を
濃縮した化合物を供給装置の製造タンク内で水に溶かし
て作成する。次に、中性子源により中性子を溶液内に照
射する。この中性子照射を開始する時間は、最終的に薬
剤を被験者に使用する時刻から、生成、分離、合成にか
かる時間を逆算して決められる。中性子源として、慣性
静電閉じ込め核融合(IEC)装置を使うとすれば、決
められた開始時刻の前に真空容器内を真空ポンプにより
真空に排気する。その後、燃料ガス、例えば、重水素を
燃料タンクより真空容器内に入れ、真空ポンプで排気す
ることで内圧を10-3Torr程度に保ちながら、電源によ
り電極に電圧を印加して中性子の照射を開始する。測定
器により溶液内の中性子のフラックスを計測し、決めら
れた中性子フラックスを保つように制御装置を介して、
IEC装置の印加電圧、燃料ガス供給量、排気速度等を
調整する。フッ素18の生成量は、例えば、フッ素18
が発生する消滅ガンマ線をとらえて測定し、生成量が殆
ど飽和値に達すれば分離装置を起動する。分離装置に反
応液を送り電極に電圧を印加して、陰イオン交換膜を透
過してフッ素18が分離される。未反応のリチウム6を
含む溶液は、水素イオン選択膜を通してトリチウムイオ
ン等の水素同位体イオンが分離された後、反応容器内へ
再循環される。その再循環量は、反応液のリチウム濃
度、タンク内の反応液量等から決定される。以上のよう
に本装置を運転することで、連続的にフッ素18を生成
・分離・回収できる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に従って説明する。図1は本発明の放射性同位体製造装
置の構成図である。本発明の放射性同位体製造装置に
は、フッ素18を生成するための反応タンク101と、
生成されたフッ素18を溶液中から分離・回収する分離
装置201とが設けられている。反応タンク101と分
離装置201との間には回収管206が設けられ、反応
タンク101内のフッ素18を含む溶液は回収管206
を介して分離装置201に送られる。また、反応タンク
101と分離装置201との間には戻り212が設けら
れ、フッ素18を分離・回収した後の未反応の溶液は戻
り管212を介して反応タンク101内へ戻され再循環
されるようになっている。
【0021】反応タンク101内には、ここではリチウ
ム化合物を溶解させた反応液102が満たされている。
反応タンク101は腐食性に優れた材料、例えばニッケ
ル合金で形成されており、また中性子の利用効率を上げ
るために内壁又は外壁には中性子反射材が取り付けられ
ている。リチウム化合物は、リチウム6の存在比を上げ
たもの(濃縮リチウム)を溶解して反応回数を向上させ
ることもできる。その溶液の内に中性子を照射して反応
を起こさせるため、中性子源103が保護カバー105
内に設置されている。本実施の形態では、中性子源10
3として、慣性静電閉じこめ核融合(IEC)装置を想
定している。IEC装置は、直径が30cm程度の真空容
器106内に陰極104が設けられ、この陰極104に
数十〜百kVの電圧をかける。そして、中心に形成された
静電ポテンシャル内にイオンと電子が収束したプラズマ
を発生させて、核融合反応を起こして中性子を発生させ
る。
【0022】保護カバー105により中性子源103と
反応液102が直接触れることは無く、中性子源103
の構造的健全性が保たれている。また、中性子とリチウ
ム6の吸収反応は、中性子のエネルギが低いほど反応確
率が大きいので、中性子源103の周辺をポリエチレン
等の中性子減速材で覆うようにしても良い。
【0023】反応液102の中では中性子とリチウム6
が吸収反応を起こし、約2.7MeVのエネルギを持つトリ
チウムが発生する。そのトリチウムが反応液中を減速す
る過程で水分子中の酸素16と反応しフッ素18を生成
する。生成されたフッ素18の殆どは、溶液中に陰イオ
ンとして存在する。フッ素18イオンを含む溶液は、他
のリチウムイオン6等と共に回収管206を介して分離
装置201へ送られる。
【0024】分離装置201内では陰イオン交換膜を用
いて、フッ素18イオンを分離して回収する。回収され
たフッ素18イオンを含む溶液は、回収管209を介し
て分離タンク(バッファータンク)210へ送られ、図
には記載していないが薬剤合成装置へ搬送される。処理
された溶液は、未反応のリチウム6イオンが残っている
ので、反応に再利用するため戻り管212を介して反応
タンク101へ戻され再循環される。
【0025】以上のようにして、液体中に生成される放
射性物質をその液体から連続して分離・回収することが
できる。このような装置は、フッ素18のような半減期
の短い放射性物質の生産にとって非常に有効である。核
反応による生成から薬剤合成までの時間が短縮でき、最
終製品におけるフッ素18の放射能強度を高く保つこと
ができる。また、連続的処理できるため装置の稼働率も
上がり、生産コストも低減できる。さらに、未反応のリ
チウム6を回収して再利用できるので、濃縮リチウムの
有効利用につながり更にコストを低減できる。
【0026】図2は、分離装置201を詳しく示した図
である。分離装置201の内部には陰極電極202と陽
極電極203が設置されている。また分離装置201内
を仕切るように陰イオン交換膜204と水素イオン選択
透過膜205が設置されている。フッ素18イオンを含
む溶液は、他のイオンと共に回収管206から送られ
る。207はポンプで208は弁である。分離装置20
1内に入った溶液は、両電極202,203間に電圧を
印加することにより、イオンが分離される。フッ素18
イオンは、陰イオン分離膜204を通って陽極側へ移動
する。フッ素18イオンが回収された溶液は回収管20
9から回収されて、他の陰イオンを分離する分離タンク
210より薬剤合成装置へ搬送される。
【0027】分離装置201の処理速度は、イオン交換
膜の特性、膜の実行面積、印加電圧等によるが、一般に
は数十リットル/分の処理が可能である。分離タンク2
10とイオン注入ループ211は必ずしも必要ではない
が、溶液の電気抵抗が大きく印加電圧が高くなりすぎる
場合は、必要があればイオン注入ループ211より電解
液を補給し溶液の電気抵抗を調整することもできる。但
し、注入する電解液はフッ素18イオンの分離に大きく
影響を与えないイオンを含む溶液を選ぶ必要がある。こ
の例では、例えば、塩素イオンを含む溶液を注入し分離
タンク210でフッ素18イオンと分離し、再利用する
注入ループ211を図示している。
【0028】リチウム6イオン等の陽イオンは陰極20
1側へ移動する。さらに、水素イオン選択透過膜205
を設けているため、水素イオン及び未反応のトリチウム
イオンが選択的に分離される。リチウム6イオンを多く
含む分離溶液は回収管212により回収され、バッファ
ータンク213内で異物等を除去された後、戻り配管2
14を介して反応タンク101へ戻され再循環される。
これにより、コスト的に高い濃縮リチウムを有効利用す
ることができ、コストの低減が図れる。
【0029】トリチウムイオンを多く含む溶液は回収管
215を介して回収され、回収タンク216に貯められ
る。これにより、循環する溶液中に未反応のトリチウム
イオンが蓄積するのを防ぐことができる。貯められた容
器に含まれるトリチウムは、トレーサ等の放射性物質、
核融合反応の反応ガス等に再利用するか、放出基準を満
たすように希釈廃棄または崩壊により十分放射能が減衰
するまで保管排気する等の処理が必要である。
【0030】分離装置201内の気相部分は溶液から発
生した気体が発生するため、それを回収する回収管21
7が設けられ、発生する気体を回収している。その中に
は、トリチウム化水素も含まれるので、酸化してトリチ
ウム水として回収する。なお、図2において、220〜
224はポンプ、230〜235は弁である。
【0031】図3は、上記分離装置を組み合わせて用い
た例である。反応タンク301に図2で示したのと同様
な分離装置302及び分離装置303が直列に接続され
ている。フッ素18イオンを含む溶液は、回収管304
を介して一段目の分離装置302に送られる。前記のよ
うなプロセスを経てフッ素18イオンを含む溶液が回収
され、その溶液を二段目の分離装置303へ送る。一
方、未反応のリチウム6イオンを含む溶液は、反応タン
ク301へ戻り管305を介して戻されて再循環され
る。二段目の分離装置303内でも、同様のプロセスを
経てフッ素18イオンが分離・回収される。最終的な回
収溶液は回収管306を介して薬剤合成装置へ搬送され
る。分離装置303において未反応の溶液は戻り管30
7を介して再循環される。
【0032】以上のように分離装置を直列化して用いる
ことで、フッ素18の純度を高めることができ、薬剤合
成過程で不必要な核種の混入防止に有効である。
【0033】図4も、上記分離装置を組み合わせて用い
た例である。この例では、反応タンク401に図2で示
したのと同様な分離装置402及び分離装置403が並
列に接続されている。フッ素18イオンを含む溶液は、
回収管404からそれぞれの回収管408を介して、分
離装置402及び403に送られる。そして、前記のよ
うなプロセスを経てフッ素18イオンを含む溶液が回収
され、最終的な回収溶液は、回収管407を介して薬剤
合成装置へ搬送される。一方、未反応のリチウム6イオ
ンをふくむ溶液は、反応タンク401へ戻り管405及
び406を介して戻され再循環される。
【0034】以上のように分離装置を並列化して用いる
ことで、フッ素18の分離・回収速度を速めることがで
きて、最終薬剤における比放射能、生産量を向上するの
に有効である。また前記のように、回収管407からの
溶液を別の分離装置に直列に接続すれば、フッ素18の
純度を高めることもできる。
【0035】図5は、本発明の放射性同位体製造装置の
運転制御システムを示した図である。501が反応タン
クでリチウム6を含む反応溶液502が満たされてい
る。中性子源503は、保護カバー504内に設置され
る。分離装置505は、回収管506と戻り管507を
介して反応タンク501に接続されている。フッ素18
は分離装置505内で分離・回収され、回収管508よ
り薬剤合成装置へ搬送される。509は反応液502の
溶液供給装置で、本装置を運転する際に、最初の反応液
の製造、供給、運転途中での溶液の補充、成分調整、本
装置保守時の溶液の回収等を行う。溶液供給装置509
は、供給配管514と回収配管515によって反応タン
ク501と接続されている。510が装置全体の制御装
置である。反応タンク501内は計測装置511と計測
器512,513を介して検知されており、必要な情報
を得ることができる。
【0036】先ず、本装置の起動準備では、溶液供給装
置509によりリチウム6を含む溶液が作られ、必要な
量、少なくとも中性子源を覆う量まで反応タンク内に供
給配管514を介して供給される。その供給量は、図に
記載してはないが配管途中に設置された、ポンプと弁を
用いて調整する。リチウム6を含む水溶液は、例えば、
リチウム6を濃縮された化合物を供給装置509の製造
タンク内で水に溶かして作成する。反応液がタンク内に
満たされたところで、中性子源により中性子を溶液内に
照射する。この中性子照射を開始する時間は最終的に薬
剤を被験者に使用する時刻から、生成、分離、合成にか
かる時間を逆算して決められる。例えば、この例では中
性子源として、慣性静電閉じ込め核融合(IEC)装置
を使うとすれば、決められた開始時刻の前に真空容器内
を図示してない真空ポンプにより真空に排気する。その
後燃焼ガス、例えば重水素を燃料タンクより調整弁を開
いて真空容器内に入れて、真空ポンプで排気することで
内圧を10-3Torr程度に保ちながら、電源により電極に
電圧を印加して中性子の照射を開始する。
【0037】中性子の照射が開始されると、測定器51
2により溶液内の中性子のフラックスを計測し、決めら
れた中性子フラックスを保つように制御装置510を介
して、IEC装置の印加電圧、燃料ガス供給量、排気速
度等を調整する。反応液内で反応が進むと、半減期の短
いフッ素18の生成量はある飽和値に達する。その時間
は、フッ素18では2時間程度である。フッ素18の生
成量は測定器512を使って測定する。例えば、フッ素
18が発する消滅ガンマ線を捉えて測定し、生成量が殆
ど飽和値に達すれば、分離装置505を起動する。分離
装置に反応液が送られ、フッ素18が分離され、未反応
のリチウム6を含む溶液が再循環される。その処理量
は、分離装置の処理速度で決まり、溶液の回収は回収管
506の途中に設置されたポンプと弁を用いて行う。
【0038】再循環量は、反応液のリチウム濃度、タン
ク内の反応液量等から決定され、戻り配管途中に設置さ
れたポンプ、弁を用いて調整される。一方、反応タンク
内のリチウム6の濃度は、中性子と反応した分だけ低下
するので供給装置509より補充される。理想的には、
反応タンク内のフッ素18の生成量と分離装置505の
フッ素18の処理量が均衡するように、中性子源の強
度、リチウム6濃度、分離処理速度等を制御する。
【0039】以上のように本装置を制御することで、連
続的にフッ素18を生成・分離・回収できる。
【0040】図6は、フッ素18の分離・回収にクロマ
トグラフィを用いた例である。クロマトグラフィには、
例えば、円筒のステンレス容器等に、例えば、アルミナ
粉末を充填したカラム601を用いる。一つのカラムで
分離するのは時間がかかるので、複数のカラム601を
並べて同時に分離し、それぞれのカラム601に吸着さ
れたフッ素18を集める。先ず、反応容器に接続した回
収管602から、フッ素18イオンを含んだ溶液をバッ
ファータンク603に一旦貯める。そこで溶液のpHを
調整するために、酸性又はアルカリ性の溶液を中和剤タ
ンク604から注入し中和する。中和した溶液は、分配
ヘッダ605を介して複数の注入ノズル606からカラ
ム601に同時に流し、カラム内にフッ素18を吸着分
離する。カラムを通過した溶液は、回収ヘッダ615を
介して回収タンク607に集めて、戻り配管608を介
して反応容器へ戻して再循環させる。
【0041】一方、カラム601内に吸着されたフッ素
18を溶離する前に、余分な不純物を取り除くためにカ
ラムと流路を純水タンク609より純水を流して洗浄す
る。その廃液は、廃液タンク610に集めて処理する。
その後、アルカリ溶液、例えば、水酸化ナトリウムを溶
剤タンク611より流す。フッ素18を溶かしたアルカ
リ溶液は、流路を切替弁612で切り替えて回収タンク
613に集められる。そこで再度pHを調整し中和液を
作り回収管614より薬剤合成装置へフッ素18を搬送
する。なお、図6において、616〜618はポンプ、
619〜623は弁、624は流路切替弁である。
【0042】この例では、クロマトグラフィによる吸着
分離なので時間はかかるが、フッ素18が高純度で単体
分離できる点が利点である。また、課題の処理量も、前
記のように多数のカラムを使うことで全体としてある程
度短縮もできる。
【0043】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
生成から分離するまでの時間を短くすることができ、放
射性崩壊によるフッ素18の減衰を低減できる。このた
め、最終製品である放射性薬剤の比放射性能を高めるこ
とができるとともに、崩壊による減損が少ないので、薬
剤の生産量増大およびコストの低減を図ることができ
る。
【0044】また、未反応のリチウム6を再循環させる
ことで、貴重なリチウム6を再利用でき、フッ素18の
生産原料コストの低減につながる。
【0045】さらに、水素イオン透過膜に溶液を通すこ
とで溶液中のトリチウムを分離・除去することが可能
で、フッ素薬剤へのトリチウム混入防止、装置内の放射
能インベントリ低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放射性同位体製造装置の構成図であ
る。
【図2】本発明の放射性同位体製造装置に設置された分
離装置の詳細構成図である。
【図3】分離装置を組み合わせて使用する例を示した図
である。
【図4】分離装置を組み合わせて使用する他の例を示し
た図である。
【図5】本発明の放射性同位体製造装置の運転制御につ
いて説明した図である。
【図6】放射性核種の分離・回収にクロマトグラフィを
用いた例を示した図である。
【符号の説明】
101 反応タンク(反応容器) 102 反応液 103 中性子源 201 分離装置 202 陰極電極 203 陽極電極 204 陰イオン交換膜 205 水素イオン選択膜 206,209 回収管(回収手段) 212 戻り管(再循環手段) 210 分離タンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 1/44 C02F 1/44 D 1/469 G21G 1/06 G21G 1/06 C02F 1/46 103 Fターム(参考) 4D006 GA16 HA80 KA33 KA52 KA55 KA56 KA67 KD30 KE03P KE12P MA13 MA14 PA01 PB12 PB27 PB28 PC41 4D024 AB14 BA13 BA17 DB19 4D061 DA10 DB09 DB18 EA02 EA09 EB13 FA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核反応により放射性核種を生成し該放射
    性核種を含む溶液が満たされた反応容器と、装置本体内
    に陰イオン交換膜と水素イオン透過膜が設けられ、前記
    反応容器からの溶液を取り込んで、溶液中の放射性核種
    を前記陰イオン交換膜を用いて分離するとともに、溶液
    中の水素同位体イオンを前記水素イオン透過膜を用いて
    分離する分離装置と、未反応の核種を含む、前記分離装
    置内の溶液を前記反応容器へ戻して再循環させる再循環
    手段と、前記分離装置で分離された放射性核種を回収す
    る回収手段と、を備えた放射線同位体製造装置。
  2. 【請求項2】 リチウム6を含む溶液に中性子を照射
    し、その吸収反応によりトリチウムを生成するととも
    に、前記トリチウムと溶液中の酸素16の反応によりフ
    ッ素18を生成する反応容器と、装置本体内に陰イオン
    交換膜と水素イオン透過膜が設けられ、前記反応容器か
    らの溶液を取り込んで、溶液中のフッ素18を前記陰イ
    オン交換膜を用いて分離するとともに、溶液中のトリチ
    ウムイオンを前記水素イオン透過膜を用いて分離する分
    離装置と、溶液で未反応のリチウム6を含む、前記分離
    装置内の溶液を前記反応容器へ戻して再循環させる再循
    環手段と、前記分離装置で分離されたフッ素18を回収
    する回収手段と、を備えた放射線同位体製造装置。
  3. 【請求項3】 核反応により放射性核種を生成し該放射
    性核種を含む溶液が満たされた反応容器と、複数のカラ
    ムと該カラムに対向配置された複数の注入ノズルを有
    し、前記カラムには放射性核種を吸着するための物質が
    充填されて、前記反応容器から取り込んだ溶液を前記注
    入ノズルから前記カラムに注入することにより、溶液中
    の放射性核種を前記カラム内に吸着して分離するクロマ
    トグラフィと、前記カラムで放射性核種が取り除かれ且
    つ未反応の核種を含む溶液を前記反応容器へ戻して再循
    環させる再循環手段と、前記クロマトグラフィで分離さ
    れた放射性核種を回収する回収手段と、を備えた放射線
    同位体製造装置。
  4. 【請求項4】 核反応で生成された放射性核種を含む溶
    液を反応容器から分離装置に取り込んで、該分離装置内
    に設けられた陰イオン交換膜を用いて溶液中の放射性核
    種を分離して回収するとともに、前記分離装置内に設け
    られた水素イオン透過膜を用いて溶液中の水素同位体イ
    オンを分離して回収し、さらに未反応の核種を含む、前
    記分離装置内の溶液を前記反応容器へ戻して再循環させ
    る放射線同位体製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005505751A (ja) * 2001-06-11 2005-02-24 イースタン アイソトープス インコーポレーテッド F−18フッ化物の製造方法および装置
WO2014021285A1 (ja) * 2012-07-30 2014-02-06 株式会社Quan Japan 核燃料製造装置及び核燃料製造方法
JP2015099117A (ja) * 2013-11-20 2015-05-28 株式会社日立製作所 放射性核種製造装置、放射性核種製造システムおよび放射性核種製造方法

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