JP2001074724A - 分子拡散を用いた反応法およびその装置 - Google Patents

分子拡散を用いた反応法およびその装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 検出対象の溶液と試薬との反応をpH値(A)
で行い、この反応により生じた反応物質の検出を別のp
H値(B)で行う反応系では、反応後にpH調整の操作が
不可欠であるため、リアルタイムの測定が困難である。 【解決手段】 前記反応系に対し、Y字をなすマイクロ
流路を用いて溶液と試薬とを合流させ、合流後に分子拡
散によって両液を次第に混合するようにしたので、pH
調整を行うことなく、上記の反応および反応後の検出が
可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試薬と反応させる
反応法に関し、特に反応後のpH調整を省くことのでき
る反応法に関する。
【0002】
【従来の技術】大気中に含まれる特定ガスの濃度を測定
するためには、 特定ガスをガス吸収溶液に吸収させる気液吸収部、 ガス吸収溶液に吸収された特定ガスを、後記の検出部
で検出可能な物質に変化させる化学反応部、 その反応物質の濃度を大気中の特定ガス濃度として測
定する検出部、が必要となる。
【0003】本出願人は、このような化学分析システム
を、μTAS(Micro/MiniaturizedTotal Analysis Syst
em)の技術を適用して小型化、マイクロ化する研究を行
っている。その一環として、上記の気液吸収部の構成を
マイクロ化した「ガス検出センサ」なるものを先に提案
しており、ここに引用してその構成を簡単に述べる。
【0004】図1に示すように、このガス検出センサ1
は樹脂性のベース部10の上面に、液体は通さないが気
体は自由に透過させる性質を持つ多孔質ガラス板20が
貼り付けられている。ベース10部のサイズは例えば縦
横それぞれ36mmで高さは1mmである。そのベース部1
0の上面には、ほぼ6角形状をなし、深さ150μmで
底面が平坦な凹部の形状をなすガス吸収室11が形成さ
れる。そのガス吸収室11に幅および高さが150μm
の短冊状の島12を150μmの間隔で複数個配列して
いる。
【0005】島12の延在方向にあるガス吸収室11の
頂点11a、11bから当該ベース10の端面に至る通
路11c、11dが形成されている。図示されるよう
に、ガス吸収室11は一方側にずれた位置にあり、長い
方の通路11dにおいては途中で直交方向に分岐した通
路11eが形成されている。これらの通路径はいずれも
100μmである。これらの通路11c、11d、11
eのベース端面部がそれぞれガス吸収溶液注入口13、
溶液取出口14、試薬注入口15となる。
【0006】溶液注入口13から供給されたガス吸収溶
液は、ガス吸収室11を通過する間に多孔質ガラス板2
0通じて大気中のガスが吸収され、そのガス吸収溶液中
のガスは、試薬注入口15よりの試薬と反応して検出可
能な物質に化学変化する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで大気中のNO
2濃度を検出するには試薬として 2,3-Diaminonaphthale
ne が用いられる。(株) 同仁化学の試薬データによれ
ば、次の化学式に示すように、ガス吸収溶液に吸収され
たNO2の亜硝酸イオン(NO2 -)と反応してナフタレン
トリアゾールの蛍光性付加体を形成することが記されて
いる。
【0008】
【化1】化学式
【0009】又、前記試薬データによると、2,3-Diamin
onaphthalene とNO2 -の反応条件について詳細に検討
されており、反応はpH=2以下で最も速く、室温で5
分と短時間であり、生成した付加体は、pH=10以上
で最も効率よく蛍光を発する。検出限界は旧来の Gries
s 法では数μMであるが 2,3-Diaminonaphthalene では
数十nMと50〜100倍高感度である。
【0010】つまり、上記試薬による化学反応は、酸性
下でないと反応しないため、ガス吸収溶液に試薬を混合
した時にpH3以下となるようにその試薬を調整する必
要があり、しかも、この反応で生じた付加体はアルカリ
性もしくは中性溶液下でないと蛍光を発しないため、前
記反応の終了後にpH6以上になるようにアルカリ溶液
(NaOH)を滴下する操作が必要となる。これらの一連
の作業を図2に示す。
【0011】このようにNO2測定のように、試薬との
反応後の測定時にpH調整の作業が必要となるものにあ
っては、Y字流路にさらにもう一流路加える必要があ
り、さらに強アルカリの添加は材質上好ましくない。
【0012】従って本発明は上述した課題を解決するこ
とを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の分子拡散を用い
た反応法は、検出対象の溶液と試薬との反応に適したp
H値(A)があり、前記反応により生じた反応物質の測定
時に別のpH値(B)が要求される一連の反応を行なうた
めの反応法において、検出対象の溶液と試薬を混合した
ときに最終的にpHがBとなるように前記2液のpHを
それぞれ調節しておき、前記2液を所定内径を有するY
字流路を用いて合流させ、合流した2液が直線状の流路
を流れる間に分子拡散によって2液が次第に混合し、そ
の混合過程で生じる適したpH値下で2液を反応させる
ことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】アルカリ性の溶液(pH=10.
5)と酸性の試薬(pH=1)を所定内径を有するY字流
路を用いて合流させるとき、そのY字流路におけるV字
形状をなす入力流路間の角度を0〜180°(好ましく
は以下の実施例にあるように90°前後)以下にしてお
けば、2液の界面が形成され、流路を流れる過程で分子
拡散によって次第に2液が混合していくものと思われ
る。
【0015】従って試薬はpH値が1から次第に上昇し
てゆく。そのpH値がこの試薬の反応に適したpH値A
に近づけば、試薬は溶液と反応するようになる。ここで
試薬および溶液の流量をうまく設定しておくことによ
り、pHAの前後で試薬と溶液とを100%反応させる
ことができる。この後も前記分子拡散により2液は互い
に混合し、最終的にpH値が、前記反応で生じた生成物
の検出に適したBとなる。上記のpH値の10.5およ
び1は、2液が完全に混合したときにpH値がBとなる
ように選定したものである。
【0016】以下、このY字流路の有効性を以下の実施
例において検証する。
【0017】(実施例1)図3において、反応装置21
は、2枚の透明樹脂板21a(一部破断して描く)、21
bが貼り合わされたものである。それぞれの樹脂板に溝
Qを形成することで図示したようなY字形状の流路をな
し、幅200μm、深さ20μmのマイクロ流路21c
を形成している。22はガス検出センサ1にポンプP1
を通じてガス吸収溶液を供給するためのタンクである。
【0018】22は、0〜50×10-6亜硝酸イオンを
含む3% triehtanolamine 溶液(pH=10.5)を蓄え
るタンクであり、ポンプP1を通じてY字流路21cの
一方の頂部に供給される。23は、蛍光試薬(2,3-Diami
nonaphthalene)の塩酸溶液(pH=1.0)を蓄えるタン
クであり、ポンプP2を通じてY字流路21cの他方の
頂部に供給される。そのY字流路におけるV字形状をな
す入力流路間の角度は90度前後とした。
【0019】24は、マイクロ流路21cにおける直線
状流路の下流部に対して励起光を照射する紫外発光LD
である。25は、励起光の照射により発する蛍光を検出
するための光電子増倍管である。26は前記紫外光LD
を点灯制御すると共に、光電子増倍管25で検出された
蛍光強度を検出する検出器である。27はこの反応装置
22を通過した測定済み溶液を受けとめるためのタンク
である。
【0020】ポンプP1、P2による流量を0.1μl/m
in〜0.4ml/minとした。この流量に従って両タンクか
らの溶液を混合したときの最終pH値が7となるよう
に、各溶液のpH値を前記のごとく定めた。前記励起光
の波長は370nmとし、光電子増倍管25で波長425
nmの蛍光を測定したときの亜硝酸イオン濃度に対する蛍
光強度のデータを図4に示す。
【0021】(実施例2)上記マイクロ流路21cにおけ
る溝Qの断面形状を幅100μm、深さ100μmとし、
その他の条件を実施例1の場合と同じにして行ったとき
の亜硝酸イオン濃度に対する蛍光強度のデータを図5に
示す。
【0022】(実施例3)上記マイクロ流路21cの内径
を500μmとし、その他の条件を実施例1の場合と同
じにして行ったときの亜硝酸イオン濃度に対する蛍光強
度のデータを図6に示す。
【0023】(実施例4)上記マイクロ流路21cの内径
を75μmとし、その他の条件を実施例1の場合と同じ
にして行ったときの亜硝酸イオン濃度に対する蛍光強度
のデータを図7に示す。
【0024】これらの図4〜図6から分かるように、亜
硝酸イオン濃度と蛍光強度とは共に正の相関関係が確認
され、蛍光強度の測定値からタンク22内の塩酸溶液に
含まれる亜硝酸イオン濃度を知ることができる。
【0025】ここで参考のために、図2に示す従来の手
法に倣って、ビーカー内で混合したときにpH2となる
ように調整した2,3-Diaminonaphthaleneの塩酸溶液4m
lと、0〜1.0×10-6亜硝酸イオンを含む3% trie
htanolamine溶液4mlとを混合し、10分間反応させ
てからNaOHを添加してpH7に調整して蛍光測定し
た。このときのデータを図8に示す。この場合も亜硝酸
イオン濃度と蛍光強度とは当然ながら正の相関関係があ
った。
【0026】以上の実施例からわかったように、本発明
のマイクロ流路を持つ反応装置によれば、試薬との反応
が行われ、かつ、反応後のアルカリ添加を行うことな
く、前記反応で生じた生成物を検出できることが判明し
た。
【0027】ついでに、図2のバッチ処理でアルカリ添
加を行わなかったときのデータを図9に示す。 ・図中のA:混合したときにpH2となるように調整し
た2,3-Diaminonaphthaleneの塩酸溶液4mlと、0〜
1.0×10-6亜硝酸イオンを含む3% triehtanolamin
e溶液4mlとを混合し、10分間反応させてからNa
OHを添加せずに蛍光測定したときのデータ。 ・図中のB:混合したときにpH3となるように調整し
た2,3-Diaminonaphthalenetの塩酸溶液4mlと、0〜
1.0×10-6亜硝酸イオンを含む3% triehtanolamin
e溶液4mlとを混合し、10分間反応させてからNa
OHを添加せずに蛍光測定したときのデータ。 ・図中のC:混合したときにpH6となるように調整し
た2,3-Diaminonaphthaleneの塩酸溶液4mlと、0〜
1.0×10-6亜硝酸イオンを含む3% triehtanolamin
e溶液4mlとを混合し、10分間反応させてからNa
OHを添加せずに蛍光測定したときのデータ。このよう
にバッチ法において従来技術ではアルカリ添加なしの場
合はいずれも蛍光測定はできなかった。
【0028】次に本発明のマイクロ流路を持つ反応装置
を用いたガス計測装置の1実施形態を実施例4として図
9に示す。 (実施例5)1は上述したガス検出センサであり、ポンプ
P3を通じてタンク31からガス吸収溶液が供給され
る。本ガス検出装置でNO2濃度を検出する場合には、
上記実施例の場合と同様に3% triehtanolamine 溶液
(pH=10.5)を用いるがこの溶液には亜硝酸イオン
は添加しない。尚、本実施形態では、Y字流路21cの
溝Qとして幅200μm、深さ200μmの形状とした
が管状であってもよい。
【0029】ガス検出センサ1にタンク31より3% t
riehtanolamine 溶液を供給する。供給流量は実施例1
の場合と同じである。3% triehtanolamine 溶液がガ
ス検出センサ1を通過する間に、大気中のNO2ガスが
吸収され亜硝酸イオンの形で溶け込む。その亜硝酸イオ
ンを含む3% triehtanolamine 溶液が反応装置21の
Y字流路21cの一方に供給され、他方にはタンク23
からも2,3-Diaminonaphthalenetの塩酸溶液が供給され
る。この反応装置21における作用は実施例で述べたも
のと同じであるため、検出器26で測定された蛍光強度
から大気中のNO2濃度を知ることができる。
【0030】図10で示したガス検出装置では構成を分
かりやすくするために、ガス検出センサ1と反応装置2
1とを個別のものとしたが、実際の製作にあたってはポ
ンプ等も含めて一つのチップに組み込んでμTAS化を
図る。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、検出対象の溶液と
試薬との反応をpH値(A)で行い、この反応により生じ
た反応物質の検出を別のpH値(B)で行う反応系では、
従来、反応後にpH調整の操作が必要であったが、本発
明では、Y字をなすマイクロ流路を用いて溶液と試薬と
を合流させ、合流後に分子拡散によって両液を次第に混
合するようにしたので、pH調整を行うことなく、上記
の反応および反応後の検出が可能となり、リアルタイム
の測定および装置のマイクロTAS化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 気体センサの分解斜視図
【図2】 従来の測定手順を示した図
【図3】 本発明の分子拡散を用いた反応装置の実施形
態を示した図
【図4】 図3の反応装置で測定した亜硝酸イオン濃度
に対する蛍光強度との関係を示したグラフ図
【図5】 図3の反応装置で測定した亜硝酸イオン濃度
に対する蛍光強度との関係を示したグラフ図
【図6】 図3の反応装置で測定した亜硝酸イオン濃度
に対する蛍光強度との関係を示したグラフ図
【図7】 図3の反応装置で測定した亜硝酸イオン濃度
に対する蛍光強度との関係を示したグラフ図
【図8】 図2の手順に従って測定した亜硝酸イオン濃
度に対する蛍光強度との関係を示したグラフ図
【図9】 図2に示した手順においてpH調整を省いた
時の亜硝酸イオン濃度に対する蛍光強度との関係を示し
たグラフ図
【図10】 本発明の分子拡散を用いた反応装置に図1
の気体センサを組み合わせたガス濃度検出装置を示した
【符号の説明】
1 ガス検出センサ 21 反応装置 21c マイクロ流路 22,23,27,31 タンク 24 紫外発光LD 25 光電子増倍管 26 検出器 P ポンプ Q 溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小竹 玉緒 徳島県徳島市北常三島町3−12 リベロ 201 Fターム(参考) 2G042 AA01 BB07 BB08 CA01 CB01 DA09 FA11 FA20 GA05 HA03 HA06 HA07 2G054 AA01 CA06 CB01 CE02 CE10 EA03 FA12 FA32 FA50 FB08 GA02 2G058 AA03 BA08 DA01 DA07 GA02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検出対象の溶液と試薬とをpH値(A)で
    反応させてからこの反応により生じた反応物質の検出を
    別のpH値(B)で行う必要のある場合の反応法におい
    て、 検出対象の溶液と試薬を混合したときに最終的にpHが
    Bとなるように前記2液のpHをそれぞれ調節してお
    き、前記2液を所定内径を有するY字流路を用いて合流
    させ、合流した2液が直線状の流路を流れる間に分子拡
    散によって2液が次第に混合し、その混合過程で生じる
    適したpH値下で2液を反応させることを特徴とする分
    子拡散を用いた反応法。
  2. 【請求項2】 検出対象の溶液と試薬とをpH値(A)で
    反応させてからこの反応により生じた反応物質の検出を
    別のpH値(B)で行う必要のある場合の反応装置におい
    て、 所定の内径もしくはこれと同等の断面積を有する流路を
    Y字状に形成し、このY字流路で2液を合流させること
    で上記の反応および反応物質の測定を可能にしたことを
    特徴とする分子拡散を用いた反応装置。
  3. 【請求項3】 上記Y字流路におけるV部のなす角度が
    0°〜180°である請求項2記載の反応装置。
  4. 【請求項4】 上記所定の内径(r)は10μm<r<〜
    5mである請求項2もしくは3に記載の反応装置。
  5. 【請求項5】 上記2液をY字流路に対し0.01μl/m
    in〜1l/minの流量で供給する請求項2〜4のいずれか
    に記載の反応装置。
  6. 【請求項6】 上記検出対象の溶液に、0.01% 〜
    10% dtriehtanolamine 溶液を用い、上記試薬に、
    蛍光試薬(2,3-Diaminonaphthalene)の酸溶液を用い、両
    液を混合したときの最終的なpHが6〜10となるよう
    に前記両液のpHを調整しておき、前記試薬との反応に
    より発生する蛍光の強度から前記 triehtanolamine 溶
    液に含まれていた亜硝酸イオンの濃度を判定する請求項
    2〜5のいずれかに記載の反応装置。
  7. 【請求項7】 気体のみ透過させる多孔質材下に形成し
    た溝にガス吸収溶液を通じることで大気中のガスを前記
    溶液に吸収させる気体検出センサと、 所定の内径もしくはこれと同等の断面積を有する流路を
    Y字状に形成し、このY字流路で2液を合流させること
    で上記の反応および反応物質の測定を可能にした分子拡
    散を用いた反応装置とを組み合わせてなることを特徴と
    するガス濃度検出装置。
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