JP2001055589A - 低品位炭の改質方法 - Google Patents

低品位炭の改質方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】含水量が低減し発熱量が向上すると共に輸送・
貯蔵安定性に係わる自然発火性が改善され、しかも炭酸
ガスの発生を軽減できる改質炭を得ることができ、かつ
付加価値の高い軽質留分を効率良く製造することができ
る、工業的に有利な低品位炭の改質方法を提供する。 【解決手段】低品位炭を400℃〜450℃の温度で液
相熱分解させて改質炭と軽質油状留分を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低品位炭の改質方
法に関し、詳しくは亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭などの
低品位炭の発熱量を増大させると共に自然発火性を抑制
し輸送・貯蔵性が安定であり、しかも炭酸ガスの発生が
軽減し、地球環境保全に適合した改質炭を得ることがで
き、更には化学原料等として有用な軽質油状留分を高収
量で得ることのできる、低品位炭の改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、地球上における亜瀝青炭、褐
炭、亜炭、泥炭などの低品位炭の賦存埋蔵量は無煙炭、
瀝青炭等の高品位炭のそれと同程度あるいはそれ以上と
言われているが、高品位炭に比較してその利用地域が限
定され、生産地に比較的近い場所でわずかに使用されて
いるに過ぎず、その有効利用があまり進んでいない。こ
れは、低品位炭が20〜30%場合によっては50%以
上の水分・揮発分を含むためエネルギー効率に直接関係
する発熱量が低く、エネルギーの利用効率が低いのが主
な原因であるが、引火温度が低く、しかも細孔により比
表面積が大きいため風化や輸送・貯蔵中の形態変化によ
り自然発火を起こしやすいため、長距離輸送に不向きで
あり、また貯蔵安定性に問題があること等にも起因して
いる。従って、低品位炭の含水率の削減と発熱量の向上
並びに自然発火性の低減化技術の開発が要請されてい
る。
【0003】また、この種の低品位炭の改質プロセスに
おいては、油状成分としてタール状物質などの付加価値
の低い副生成物が形成される例があるに過ぎず、高付加
価値のベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、ク
レゾールなどの軽質油状留分の生産量が少なく、商業化
のための改質プロセスのコスト低減策として、付加価値
の高い副生成物の向上技術が望まれている。
【0004】一方、周知のように、石炭は鉄鋼用原料と
してまた電力発生用エネルギーとして使用され、原料炭
及び一般炭を併せて我が国では毎年1000トン近くが
消費されているが、この石炭燃焼特に低品位炭の燃焼に
伴う炭酸ガスの発生が地球温暖化および大気汚染の原因
の一つとも言われており、その早急な対策が急務とされ
ている。
【0005】このような諸問題を解消するために、低品
位炭の改質技術として、従来より、低品位炭をガス化又
はスチーム存在下で改質する乾式熱分解法並びに低品位
炭を液相で脱水する液相処理法等が提案されている。前
者の乾式熱分解法としては、低品位炭に低圧飽和蒸気
を接触させると共に回転式の熱交換器により120〜1
30℃の間接加熱によって水分を蒸発させて改質炭を得
る方法(スチームドライヤー法)、低品位炭を三段の
振動流動床に接触させて乾燥、毛細管水の除去を行い水
分を蒸発させて改質炭を得る方法(シンコール法)、
低品位炭を回転円盤型のグリッドに導入した後熱ガスを
吹き込み熱分解させて乾燥炭とタールを得る方法(LF
C法)、低品位炭をまず高圧下260℃以下で飽和水
蒸気と接触させて脱水を行い、ついで340〜430℃
に昇温させて高品位の改質炭を得、かつ脱水炭の細孔に
生成したタールを吸着させて自然発火を抑制する方法
(K−Fuel法)等があり、また後者の液相処理法と
しては、低品位炭を石油系軽質留分と重質油からなる油
に添加したスラリー液を150〜200℃の温和な条件
で加熱して水分を蒸発・脱水させ、かつ脱水炭の細孔に
上記重質油を吸着させて自然発火を抑制する方法(UB
C法)等が知られている。
【0006】しかしながら、前者の乾式熱分解法は、
水分含量を低減することが出来るものの、含酸素成分の
分解効率が悪く、高発熱量化・炭酸ガスの除去が充分で
はなく、また自然発火対策としてブリケット化を必要と
するなどの問題点があり、また乾式熱分解法及び
は、主に高沸点のタール状油状成分が副生するだけで、
付加価値の高い前記ベンゼン、トルエン、キシレン、フ
ェノール、クレゾールなどの軽質留分の副生量が低く、
また自然発火対策として加湿酸化処理を行うため、改質
炭に含酸素成分が再注入される結果となり、高発熱量化
・炭酸ガスの除去効果が充分に発揮されないという問題
点がある。乾式熱分解法は、2段階プロセスであるた
め操業条件が複雑となり、また自然発火対策として脱水
炭の細孔に熱分解生成したタールを吸着させて自然発火
を抑制するものであるから、タール中に含まれる含酸素
成分が改質炭に再注入される結果となり、高発熱量化・
炭酸ガスの除去効果が充分に発揮されないという問題点
がある。また、付加価値の高い前記ベンゼン、トルエ
ン、キシレン、フェノール、クレゾールなどの軽質油状
留分が生成しないため、経済効率が低いという難点があ
る。また後者の液相処理法は、水分含量を低減すること
が出来るものの、低温処理のため含酸素成分の分解効率
が悪く、高発熱量化・炭酸ガスの除去が充分ではなく、
また、消費された溶剤を補給するためにアスファルトの
ような重質油の添加を必要とし、更には付加価値の高い
前記ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、クレ
ゾールなどの軽質油状留分が生成しないなど、経済的な
工業的規模の生産には不向きである等の多くの問題点を
有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を全て克服し、含水量が低減し発熱量が向上
すると共に輸送・貯蔵安定性に係わる自然発火性が大幅
に改善され、しかも炭酸ガスの発生を軽減でき、地球環
境保全に適合した改質炭を得ることができ、更には付加
価値の高い軽質油状留分を効率良く製造することができ
る、工業的に有利な低品位炭の改質方法を提供すること
を目的とする。
【0008】本発明者は、上記課題を解決するため鋭意
検討した結果、意外なことに低品位炭を特定の温度で液
相熱分解する方法が上記課題に対して有効であることを
見い出し本発明を完成する至った。即ち、本発明によれ
ば、低品位炭を400℃〜450℃の温度で液相熱分解
させることにより改質炭と軽質油状留分を得ることを特
徴とする低品位炭の改質方法が提供される。
【0009】本発明でいう、低品位炭とは、炭素含有量
の比較的少ない石炭のことであって、亜瀝青炭、褐炭、
亜炭、泥炭を意味する。この低品位炭を液相熱分解をさ
せるに当たってはその分解効率を高めるために予め10
0mm以下好ましくは50mm以下の粒径の微粉炭とし
ておくことが望ましい。また水分含有量が多い場合には
予備粉砕のために予め乾燥させておくことが望ましい。
【0010】粉砕され、必要により乾燥されたた低品位
炭は溶剤によりスラリー化される。溶剤としては低品位
炭をスラリー化できるものであれば何れも使用でき、例
えば、パラフィン類(アルカン系、シクロアルカン系を
含む)、パラフィン系灯油、軽油、潤滑油留分あるいは
エンジン廃油などの使用後の廃油などが挙げられる。こ
れらの溶剤の中でも、パラフィン類特にt−デカリンな
どの軽質パラフィン類は反応後の固液分離特性或いは触
媒活性が極めて良好であり、好ましく使用される。溶剤
の使用量は特に制約されないが、通常、低品位炭1重量
部に対して〜2重量部好ましくは1〜1.5重量部程度
とするのがよい。
【0011】スラリー化された低品位炭は次いで好まし
くは窒素ガス雰囲気下の密封容器中に導入され液相熱分
解反応に供される。熱分解温度は含酸素成分の分解性、
軽質油状留分の収量の増大等を考慮して400〜450
℃好ましくは420〜440℃とする。なお、本発明で
いう、軽質油状留分とは沸点が60〜220℃の留分を
意味し、このような成分としては、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレ
ゾール等の含酸素化合物が挙げられる熱分解温度が40
0℃未満であると熱分解反応があまり起こらず、また軽
質油状留分の生成がほとんどみられず、逆に450℃を
超えると、熱分解反応が進みすぎ、また溶剤の消費量が
増大し、更には溶剤の熱分解によってガス状生成物の生
成量が増加するので望ましくない。熱分解圧力に特に制
限はないが、通常0.2〜7MPa好ましくは0.5〜
5MPaとするのが良い。本発明の熱分解反応は無触媒
でも進行するが、脱硫黄触媒、脱窒素触媒などの触媒の
使用を妨げない。このような触媒としては、例えば硫化
鉄、アルミナ担持ニッケル−モリブデン系触媒、アルミ
ナ担持コバルト−モリブデン系触媒、コバルト、ニッケ
ルなどの金属含有天然鉱物系触媒などが挙げられる。
【0012】このような特有な温度範囲で液相熱分解反
応を行うことにより、本発明では、含水量が低減し発熱
量が向上すると共に輸送・貯蔵安定性に係わる自然発火
性が改善され、しかも付加価値の高い軽質留分を効率良
く製造することができ、これに加えて炭酸ガスの発生を
軽減でき、地球環境保全に適合した改質炭を得ることが
できる。
【0013】この場合、前記したように、熱分解温度が
400℃未満であると熱分解反応があまり起こらず、ま
た軽質油状留分の生成がほとんどみられず、逆に450
℃を超えると、熱分解反応が進みすぎ、また溶剤の消費
量が増大し、更には溶剤の熱分解によってガス状生成物
の生成量が増加し、本発明のような顕著な作用効果を呈
することはできない。また従来の、低品位炭を三段の
振動流動床に接触させて乾燥、毛細管水の除去を行い水
分を蒸発させて改質炭を得る方法や低品位炭を回転円
盤型のグリッドに導入した後熱ガスを吹き込み熱分解さ
せて乾燥炭とタールを得る方法では、主に高沸点のター
ル状油状成分が副生するだけで、付加価値の高い前記ベ
ンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、クレゾール
などの軽質留分の副生量が低く、また自然発火対策とし
て加湿酸化処理を行うため、改質炭に含酸素成分が再注
入される結果となり、高発熱量化・炭酸ガスの除去効果
が充分に発揮されない。すなわち、本発明の奏する、含
水量が低減し発熱量が向上すると共に輸送・貯蔵安定性
に係わる自然発火性が改善され、しかも付加価値の高い
軽質留分を効率良く製造することができ、これに加えて
炭酸ガスの発生を軽減でき、地球環境保全に適合した改
質炭を得ることができる、といった作用効果は、低品位
炭の改質方法として、液相熱分解法を採用し、かつ該熱
分解温度を400〜450℃に選定したことによって初
めてもたらされるのである。
【0014】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説
明する。
【0015】実施例1 亜瀝青炭である米国産のバックスキン炭を100メッシ
ュ以下に粉砕・乾燥し原炭とした。その性状を表1に示
す。なお、発熱量はボンブ型熱量計により、また発火点
は市販の熱重量・示差熱分析装置(TG/DTA)を用
い、空気供給量50ml/min及び加熱速度20℃/
minの条件下で算出した。
【0016】つぎに、この原炭22gをt−デカリン5
0gに分散し、200mlの電磁攪拌式オートクレ−ブ
に入れ、窒素初圧2MPa、反応時間1時間、400℃
で液相熱分解した。得られたスラリー状生成物を330
℃、3torrの条件で真空蒸留して改質炭と油状物、
ガス状物に分離した。これらの組成及び改質炭に関して
はその発熱量と発火点も併せて測定した。その結果を表
2及び表3に示す。
【0017】実施例2 液相熱分解温度を420℃とした以外は実施例1と同様
にして行った。その結果を表2及び表3に示す。
【0018】実施例3 液相熱分解温度を440℃とした以外は実施例1と同様
にして行った。その結果を表2及び表3に示す。なお、
実施例3における油状物の成分組成は表4のとおりであ
った。
【0019】比較例1 液相熱分解温度を380℃とした以外は実施例1と同様
にして行った。その結果を表2及び表3に示す。
【0020】比較例2 液相分解温度を460℃とした以外は実施例1と同様に
して改質反応を試みたが、圧力が上がり過ぎて改質試験
を行うことが出来なかった。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】実施例4 実施例1における原炭を表5の性状を有する亜瀝青炭で
ある太平洋炭に代えた以外は実施例1と同様にして行っ
た。その結果を表6及び表7に示す。
【0026】実施例5 液相熱分解温度を420℃とした以外は実施例4と同様
にして行った。その結果を表6及び表7に示す。
【0027】実施例6 液相熱分解温度を440℃とした以外は実施例4と同様
にして行った。その結果を表6及び表7に示す。なお、
実施例6における油状物の成分組成は表8のとおりであ
った。
【0028】比較例3 液相熱分解温度を380℃とした以外は実施例4と同様
にして行った。その結果を表6及び表7に示す。
【0029】比較例4 液相分解温度を460℃とした以外は実施例4と同様に
して改質反応を試みたが、圧力が上がり過ぎて改質試験
を行うことが出来なかった。
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】以上の結果から、本発明の改質炭の発熱量
は、バックスキン炭の場合、原炭の4,610kcal
/kgから、440℃の分解反応によって7,440k
cal/kgにまで上昇し、また太平洋炭の場合、原炭
の6,300kcal/kgから、440℃の分解反応
によって6,490kcal/kgにまで上昇している
ことが判る。また、原炭の発火温度に関しては、バック
スキン炭は372℃と低いが、本発明の実施例2の42
0℃の分解反応により得られた改質炭では450℃に、
実施例3の440℃の分解反応により得られた改質炭で
は523℃となり、同様に太平洋炭の原炭の発火温度は
398℃であるが、本発明の実施例5の420℃の分解
反応により得られた改質炭では426℃に、実施例6の
440℃の分解反応により得られた改質炭では522℃
となり、何れの場合も原炭に比べその発火温度が何れも
高くなっており、その自然発火性が大幅に改善されてい
ることが判る。
【0035】また、実施例1〜6の方法で得られた改質
炭のH/Cは、原炭の0.90から0.69〜0.79
に減少し、また酸素、窒素、硫黄などの元素の相対含有
量も反応温度の上昇に伴い顕著に低下し、またガス生成
物の炭酸ガス濃度が高くなることから、本発明方法はカ
ルボキシル基などの含酸素官能基が分解し改質炭中の含
酸素成分の含有量が極めて少なくなるので原炭の直接燃
料による炭酸ガスの発生を抑制でき地球環境保全に適合
したプロセスであることが判る。
【0036】更に、本発明の実施例1〜6の液相熱分解
プロセスでは、沸点が60〜220℃のベンゼン、トル
エン、キシレン等の芳香族炭化水素類、フェノール、ク
レゾール等の含酸素化合物からなる軽質油状留分を高収
量で得ることが出来るが、比較例1〜4では、そのよう
な軽質油状留分はほとんど得られないことが判る 。
【0037】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の改質方法
では、低品位炭を原料として、その含水量を低減させ発
熱量を著しく増大できると共に自然発火の危険性を防止
し、貯蔵・長距離輸送に適し、エネルギー効率の高い改
質炭を簡便に得ることができる。 また、本発明方法は
上記の利点に加え、付加価値の高い軽質留分であるベン
ゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、フェ
ノール、クレゾール等の含酸素化合物を効率良く製造す
ることができると共に得られる改質炭はカルボキシル基
などの含酸素官能基の含有量が極めて少ないため、原炭
の直接燃料による炭酸ガスの発生を抑制できるという特
異的な作用を有し、かかる観点からみても地球環境保全
に適合した画期的なプロセスであるということができ
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低品位炭を400℃〜450℃の温度で液
    相熱分解させることにより改質炭と軽質油状留分を得る
    ことを特徴とする低品位炭の改質方法。
  2. 【請求項2】溶剤としてパラフィン類を使用することを
    特徴する請求項1記載の低品位炭の改質方法。
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