JP2001023813A - 磁束フロー抵抗磁石およびビッター板の製造方法 - Google Patents
磁束フロー抵抗磁石およびビッター板の製造方法Info
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Abstract
した新概念の低温抵抗磁石を提供する。 【解決手段】 Y系またはBi系高温超伝導体の線材、テ
ープまたは板材を、磁束フロー抵抗状態下で用いる。
Description
束フロー状態下で使用する低温抵抗磁石に関し、特にハ
イブリッド磁石用水冷磁石の代替としての内挿磁石や核
融合実験装置の強磁場磁石などの用途に供して好適なも
のである。
超伝導磁石とその内側に内挿される大電力の水冷磁石と
を組み合わせたハイブリッド磁石と呼ばれる装置が、30
Tクラスの定常強磁場を実現させている。また近年で
は、強磁場化がさらに進み、水冷磁石の電力をこれまで
の一般的な10MWから20〜30MWへとまるで小さな発電所並
みの電力設備にまで増強して、40T程度の強磁場発生装
置が建設されている状況にある。
よって強磁場を発生させる方法をとり、20kAから40kAの
大電流によって通電が行われる。この時、抵抗発熱が20
MWないし30MWの大電力を消費することになる。また、こ
の水冷磁石には 500 MPaほどの巨大な電磁力が作用する
ため、素材として機械的強度の高い材料が用いられてい
る。ここに、上記のような大電力を軽減するためには、
低抵抗の材料を使用しなければならないが、高導電率で
高強度の材料の開発は極めて難しい。
軽減しようとする試みがなされており、その方法の一つ
として、液体窒素や液体ネオンによる浸漬冷却が採用さ
れている。純度の高い銅を液体窒素温度 (77K)まで冷
却すると、抵抗は1/10 まで1桁小さくなり、さらに液
体ヘリウム温度(4.2K)では1/100まで2桁減少する
が、高純度銅では機械的な強度が望めない。これに対
し、高強度材料は一般にマトリックス中に不純物を多量
に含むために、温度を下げても抵抗の減少はあまり望め
ない。従って、高強度材料をいわゆる低温抵抗磁石(CR
YOGENIC RESISTIVE MAGNET)に適用しても電力の大幅な
節約にはならないことになる。
場を発生できる超伝導磁石では、超伝導状態の抵抗ゼロ
の性質が活用されている。超伝導体を用いて発生できる
磁場は、その上部臨界磁場によって制限され、実用化さ
れているニオブ3スズ超伝導磁石の場合は22T程度が限
界となっている。しかも、大口径の超伝導磁石の場合に
は、大きな電磁力が発生し、電磁力に対するニオブ3ス
ズの機械的な弱点のために、発生磁場は15T程度までに
抑制されている。そのため、内側に組み合わせた大電力
の水冷磁石の助けを借りて30Tを越える強磁場発生を行
っているのである。
やY系の高温超伝導体は、バルク応用として電流リード
に適用され、実用化されてきた。特に、発明者らは、こ
の電流リードを用いることによって、小型の冷凍機で冷
却できる液体ヘリウムフリー超伝導磁石を世界に先駆け
て開発したが、この実現には高温超伝導電流リードが不
可欠の構成要素となっている。しかしながら、この高温
超伝導電流リードを除くと、未だに高温超伝導体の本格
的な応用に成功していないのが現状である。
る線材作製技術によってkm長さの長尺化が可能になった
が、従来型超伝導線材を超える強磁場領域での応用には
強度の面で解決しなければならない多くの課題が残され
ている。また、高温超伝導体においては、磁束状態の基
礎物理的な課題として特性そのものに大きな注目がなさ
れ、従来の超伝導体の磁束状態とは著しく異なる振る舞
いが明らかにされてきている。例えば、従来の超伝導体
で見られた明繚な相転移である上部臨界磁場やそれと密
接に関係する臨界電流密度の定義が困難となっている。
本的には、応用上重要な臨界電流を担うピンポテンシャ
ルが存在していることが分かっている。問題は、その応
用上の境界が不明なままであることにある。高温超伝導
体においては、これまでの臨界電流決定基準に見直しが
必要で、特に高温では物理的には抵抗状態にあり、これ
までの抵抗ゼロの状態にないことが問題になっている。
抵抗ゼロの領域のみでの応用を考えると、高温超伝導体
の有効な臨界電流密度は高温領域で極めて小さいことに
なり、この意味で、高温超伝導体の抵抗ゼロを利用した
パワー応用にはまだ基礎的な課題が残されたままといえ
る。
体の応用として、抵抗ゼロの超伝導状態ではなく、非常
に小さな抵抗状態の応用に着目して開発されたものであ
る。すなわち、本発明は、抵抗ゼロの超伝導状態ではな
く、磁束フロー抵抗状態下での活用を意図した新概念の
低温抵抗磁石を提案するものである。
緯について説明する。磁束状態に対応する電圧状態すな
わち抵抗状態は、従来の超伝導体では非常に鋭い電圧電
流特性を示すために、わずかな電圧発生状態は常伝導伝
播として素早い転移状態となる。超伝導磁石では、これ
をクエンチと呼んで超伝導状態から常伝導状態への非常
に俊敏な状態変化が生じていた。
の転移が緩慢であり、しかも電圧状態が極めて安定して
いることが、最近判明した。すなわち、従来のような臨
界電流の決定基準で求められた値の2倍以上の電流通電
をも安定して繰り返し行えることが判明したのである。
かかる特性には、高温超伝導体の非常に小さい熱伝導率
と、超伝導コア対銀シースの割合がかなり大きい安定化
の銀が関与していると考えられ、従来型超伝導材料では
見られなかった現象である。
伝導磁石に代えて、高温超伝導体の安定な磁束フロー抵
抗状態を活用する抵抗磁石に注目した。すなわち、高温
超伝導体では、理想的な抵抗ゼロの超伝導状態を作り出
すことは困難でも、極めて小さい抵抗状態が安定して得
られるので、この特性を利用すれば、大電流ではある
が、これまでの抵抗磁石に比べると桁違いに小さい電力
で強磁場を発生できる新しい磁石の開発が可能と考えら
れるからである。本発明は、上記の考えに立脚して開発
されたものである。
である。 1.Y系またはBi系高温超伝導体の線材、テープまたは
板材を、磁束フロー抵抗状態下で用いることを特徴とす
る磁束フロー抵抗磁石。
はBi系高温超伝導体を成膜した構造になり、該高温超伝
導体を磁束フロー抵抗状態下で用いることを特徴とする
ビッター型の磁束フロー抵抗磁石。
が10〜60μm である磁束フロー抵抗磁石。
使用温度が 4.2〜30Kである磁束フロー抵抗磁石。
Kである磁束フロー抵抗磁石。
延加工によるテキスチャーを加えることによって、高温
超伝導体の成膜時にテキスチャーに沿って高温超伝導体
のab面を揃えると共に、強磁場による配向効果によっ
て高温超伝導体のc軸を板面垂直方向に揃えることを特
徴とする高温超伝導体ビッター板の製造方法。
に先立ち、高強度板材ディスク表面に、バッファー層と
して銀をライニングしておくことを特徴とする高温超伝
導体ビッター板の製造方法。
はYBa2Cu3O(Y-123)が、またBi系高温超伝導体として
はBi2Sr2CaCu2O8(Bi-2212)やBi2Sr2Ca2Cu3O10(Bi-2223)
等が有利に適合する。一方、高強度板材としては、ハス
テロイやステンレススチール、銅銀合金等が有利に適合
する。
束フロー抵抗状態下で用いることによって、以下のよう
な新しい低抵抗磁石が現実のものとなる。 (1) 磁束フロー抵抗状態は、臨界電流密度の定義で決定
される領域に近いため、その抵抗率は10-10 Ωcm程度で
ある。これに対し、純度のよい銅は、室温で10-6Ωcm程
度の抵抗率で、77Kの低温まで冷却して10-7Ωcm、また
4.2Kでは10-8Ωcmの抵抗率にまで小さくできるため室
温の約1/100になる。一方、高強度材料は、室温で銅の
80%程度の導電率であるので、その抵抗率は10-5Ωcm程
度にすぎず、また 4.2Kに冷却しても10-6Ωcm程度にし
かならない。これらを比較すると、高温超伝導体の磁束
フロー状態では、低温における抵抗値を銅の1/100まで
小さくすることができ、また高強度材料の1/10000まで
も低減することができる。このように、高温超伝導体で
は、理想的な抵抗ゼロの超伝導状態を作り出すことは困
難でも、桁違いに小さい抵抗状態を安定して得ることが
できる。
コイルを、この磁束フロー抵抗型で置き換えることがで
きる。超伝導線材の機械的強度は、通常 100 MPaから 1
50 MPa程度で、超伝導線材で 500 MPaの機械的強度を得
ることは極めて困難であるが、例えば 500 MPa以上の機
械的強度を持つハステロイ板材の上に高温超伝導体を成
膜することによって、上記の目的を達成することができ
る。
ロジェクトに準じるようなY-123の長尺テープを作製す
る研究が実施されている。高温での強磁場応用を考慮し
た場合、Y-123系高温超伝導体しかないからである。I
BADやRABITなどと呼ばれる複雑な真空蒸着の手
法によって単結晶なみに配向したkm級の長尺テープを実
現しようとする気の遠くなるような計画で、多くの研究
者が凌ぎを削っている。磁石を作製に際しては、100Aク
ラスの運転電流でターン数を数1000回から数10000 回と
多くして起磁力を増やすか、数10000Aの大電流によって
数100 程度のターン数で大きな起磁力を実現させるか
の、2つの方法がある。一般的な超伝導磁石では前者を
採用し、水冷磁石では後者を採用している。km級のテー
プを作製するよりは、1枚のビッター枚を作製する方が
遥かに容易であり、かかるの高温超伝導体ビッター板を
磁束フロー抵抗磁石として用いることにより、従来に比
べて水冷磁石を簡便かつ安価に作製することができる。
0Vの電力でビッター水冷磁石が励磁されているが、磁束
フロー抵抗磁石を用いれば21kAで0.25V ほどの電圧レベ
ルで設計できる。電圧レベルのうち、0.2Vは途中のブス
バーにおける電圧ドロップであり、コイルにおけるフロ
ー抵抗損失を0.05V と見込んでいる。従って、パワーと
しては5.25kWと極めて小さくなり、現在の30Tハイブリ
ツド磁石の電力約8MWに対して約1/1500 にまで電力の
節約が可能となる。
石では大電流で磁場を発生するためにコイルのインダク
タンスが極めて小さいことが特徴で、超伝導磁石のイン
ダクタンスの1/10000程度である。このために、磁石の
励磁に大きな電源電圧を必要としない。1V もあれば十
分である。これは、L成分であるからコイルの定常状態
では電力の損失にならない。
使えるが強磁場中では使用できない。Y系も低温端が77
Kでは使用できない。そこで、磁束フロー抵抗コイルの
動作温度を 4.2〜30K程度に設定する。特に好適な動作
温度は20Kである。20K運転の利点は、発明者らが実証
してきたY系の強磁場高温超伝導電流リードが利用でき
ることで、銅電流リードに較べて熱侵入を1/10まで低減
することができる。また、21kAで20K側に対して僅かに
10W 程度の熱負荷にすることができる。
度である。 4.2Kでは通常の冷凍機の冷凍能力は100W程
度しかないが、20Kでは1kWの冷凍能力が得られる。す
なわち、動作温度:20Kにおいて、世界で初めての冷凍
機冷却型の抵抗磁石が実現できるのである。
以上あり、熱的擾乱が加えられた場合に磁束フロー抵抗
コイルの熱的安定性に大きなマージンを持つ。
がc軸に平行に印加された場合、30Tの強磁場まで104A
/cm2以上の値を保てる温度は20K以下である。特に、Y
-123は20Kにおいては30Tまで5×105A/cm2以上の臨界
電流密度を得ることができる。内径:80mm、外径:150m
m 、膜厚:40μm (片側のみ用いて40μm )では7kAの
電流容量が得られ、ビッター枚を3牧重ねて用いるとす
ると、21kAの電流通電が可能である。
のY-123を形成するには、蒸着では困難である。大面積
に厚膜を形成するのに適した成膜プロセスとしては、ス
プレイ法か液相エピタキシャル成長法が有利ある。Y-1
23の臨界電流特性を向上させるためには、結晶粒間の結
合を良好にせねばならないため、単結晶的な膜が必要と
されているが、ビッター板でこの特性を得るために、圧
延テキスチャーと磁場配向制御を用いる。すなわち、ビ
ッター板の円周方向に圧延をかけて加工によるテキスチ
ャーを持たせてY-123のab面をできるだけ揃え、c軸
は磁場による配向効果で板面垂直方向に揃える。発明者
らの最近の研究では、Y系およびBi系の高温超伝導体で
はc軸が磁場によって非常に鋭く配向することが確認さ
れている。
ば、完全な抵抗ゼロの超伝導状態を利用できることにな
るが、円周方向のために必ずずれが生じることになる。
しかしながら、このab面のずれは大傾角ではないの
で、かなり大きな臨界電流の値が得られ、臨界電流特性
そのものはブロードな転移をするものと予測できる。つ
まり、磁束フロー状態が見られる領域で電流を通電する
ことになる。
機械的特性が要求され、また成膜中や酸素中での後熱処
理において機械的特性が劣化しないことが重要である。
この点、ハステロイは耐熱性があり、500MPaの設計値を
確保するには十分である。Y-123の成膜に際しては、バ
ッファー層として銀とY123 の比が7:1程度の 0.2mm
厚さの銀をハステロイにライニングし、この銀にも冷間
加工によるテキスチヤー処理を行うことが有利である。
ビッター層間の電気絶縁にはポリイミドが用いられてい
るが、本発明では、ハステロイを酸素中で熱処理した場
合に生成するハステロイの酸化物を良好な絶縁体として
利用することができる。
理すると、次のとおりである。 (1) 超伝導体の抵抗ゼロを活用した超伝導磁石とは異な
り、超伝導体の磁束フロー状態までの輸送電流を利用す
る新概念の超伝導抵抗磁石。 (2) これまでの小電力超伝導磁石と大電力抵抗磁石との
中間に位置する小電力抵抗磁石。 (3) 高温超伝導体の転移が極めて幅広く安定な磁束フロ
ー状態を活用する低温低抵抗磁石で、銅を用いたこれま
での低温抵抗磁石のおよそ1/1000 も小さい低抵抗の実
現。 (4) 大電流で磁場を発生させる磁束フロー抵抗磁石。 (5) 大電流でコイルインダクタンスの小さい磁束フロー
抵抗磁石。 (6) 大電流で低電圧の直流電源を用いる磁束フロー抵抗
磁石。 (7) ビッター型板材に積層された高温超伝導体ビッター
板を用いる磁束フロー抵抗磁石。 (8)20 Kで運転される磁束フロー抵抗磁石。 (9)20 Kで運転されるY系高温超伝導電流リードを用い
た磁束フロー抵抗磁石。 (10)20Kで運転されるY系高温超伝導ビッター板を用い
た磁束フロー抵抗磁石。 (11)20Kで運転される冷凍機冷却型磁束フロー抵抗磁
石。 (12)高強度材としてハステロイを補強に用いるビッター
型磁束フロー抵抗磁石。 (13)ハステロイ板材に銀を堆積させ加工によるテキスチ
ヤーを加えることで高温超伝導体の堆積時にテキスチャ
ーに沿って高温超伝導体のab面が揃う性質を利用する
高温超伝導体ビッター板の作製方法。 (14)高温超伝導体のc軸を強磁場による配向効果を用い
る高温超伝導体ビッター板の作製方法。
Claims (7)
- 【請求項1】 Y系またはBi系高温超伝導体の線材、テ
ープまたは板材を、磁束フロー抵抗状態下で用いること
を特徴とする磁束フロー抵抗磁石。 - 【請求項2】 高強度板材ディスクの表面にY系または
Bi系高温超伝導体を成膜した構造になり、該高温超伝導
体を磁束フロー抵抗状態下で用いることを特徴とするビ
ッター型の磁束フロー抵抗磁石。 - 【請求項3】 請求項2において、高温超伝導体の膜厚
が10〜60μm である磁束フロー抵抗磁石。 - 【請求項4】 請求項1,2または3において、磁石の
使用温度が 4.2〜30Kである磁束フロー抵抗磁石。 - 【請求項5】 請求項4において、磁石の使用温度が20
Kである磁束フロー抵抗磁石。 - 【請求項6】 高強度板材ディスクの円周方向に、圧延
加工によるテキスチャーを加えることによって、高温超
伝導体の成膜時にテキスチャーに沿って高温超伝導体の
ab面を揃えると共に、強磁場による配向効果によって
高温超伝導体のc軸を板面垂直方向に揃えることを特徴
とする高温超伝導体ビッター板の製造方法。 - 【請求項7】 請求項6において、高温超伝導体の成膜
に先立ち、高強度板材ディスク表面に、バッファー層と
して銀をライニングしておくことを特徴とする高温超伝
導体ビッター板の製造方法。
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