【発明の詳細な説明】
ホジキン病関連分子とその利用法関連出願
本出願は、共に係属中であり、かつここに参考文献として合体させる、199
5年6月7日出願の出願番号第08/479,328号の一部継続出願である1
996年1月3日出願の出願番号第08/580,980号の一部継続出願であ
る、1996年5月10日出願の出願番号第08/644,116号の一部継続
出願である。発明の分野
本発明は、対象の分子を同定する方法に関する。特に好適な実施例に於いて、
本発明は、ガン(メラノーマや腎ガン、等)、ホジキン病、自己免疫疾患、等の病
状に関連する分子の同定に関する。提示されるペプチド等の本発明の方法の結果
発見される単離分子も本発明の一部を構成する。これらの分子には、とりわけ、
タンパク質含有分子、これらをコードする単離核酸分子、及び前記タンパク質含
有分子に特異的に結合する抗体、が含まれる。便宜上、ここに記載される方法を
、「血清学的フィッシング」と称する。背景及び従来技術
感染、ガン、自己免疫疾患、等の多くの病状がある種の分子の不適切な発現に
よって特徴付けられるということがほぼ確定されている。従って、これらの分子
は、特定の病的又は異常状態に対する「マーカー」として役立つ。それらの診断
用「標的」、即ち、これらの異常状態を診断するために同定される物質、としての
利用法に加えて、これらの分子は、診断および/又は治療剤を製造するのに利用
可能な試薬として役立つ。これの非限定的な具体例の一つは、特定のマーカーに
対して特異的な抗体の産生のためのガンマーカーの利用である。更に別の非限定
的具体例は、MHC分子と複合体を形成するペプチドの、異常細胞に対する細胞
溶解性T細胞の生成のための利用である。
もちろん、このような物質の調製は、これらを生成するのに使用される試薬源
を
前提としている。細胞からの精製は、これを行うための一つの手間のかかる、し
かも非常に確実性の低い方法である。別の好適な方法は、特定のマーカーをコー
ドする核酸分子を単離し、その後、その単離されたコード分子を使用して所望の
分子を発現させる方法である。
これまで、たとえばヒトの腫瘍中に於けるそのような抗原を検出するために二
つの方法が使用されてきた。これらを、遺伝学的アプローチ及び生化学的アプロ
ーチと称する。前記遺伝学的アプローチは、たとえば、ここに参考文献として合
体させるデ・プレーン(DePlaen)他,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA85:2275(1988)によって例示されている。このアプ
ローチに於いて、腫瘍から得られたcDNAライブラリーのプラスミドの数百の
プールを、COS細胞等の受容細胞、又は、その特定の抗原の発現についてテス
トされる腫瘍細胞細胞ラインの抗原陰性バリアント、にトランスフェクトする。
たとえば、その両方をここに参考文献として合体させるフォーク(Falk)他
,Nature351:290(1991)とカワカミ(Kawakami)他
,Nature369:69(1994)とに例示されている前記生化学的アプ
ローチは、腫瘍細胞のMHC−I分子に結合するペプチドの酸による溶離と、そ
の後の逆相高速液体クロマトグラフィー(R−HPLC)に基づく。抗原ペプチ
ドは、それらが抗原プロセッシングに於いて欠陥を有する変異体細胞ラインの空
のMHC−I分子に結合し、細胞溶解性Tリンパ球の特異的反応を誘発した後に
同定される。これらの反応には、CTL増殖、TNF放出、及びMTTアッセイ
において測定可能な標的細胞の溶解、または51Cr放出試験が含まれる。
抗原の分子特定に対するこれらの二つのアプローチには以下の欠点がある。先
ず、それらは非常に手間と時間がかかり、高コストである。第2に、それらは、
予め規定された特異性を有する細胞溶解性T細胞ライン(CTL)の確立に依存
する。第3に、それらの対象とする症状又は疾病の原因についてのイン・ヴィヴ
ォでの関連性は、そのT細胞レパートリーに依っては、それぞれのCTLがそれ
ぞれの疾病を有する患者からのみならず、健康な個体からも得ることが出来るこ
とから、まだ証明されていない。
抗原の同定と分子定義とに対する前記二つの公知のアプローチに存在する問題
点
は、これら両方の方法が、これまで、ヒトの腫瘍に於いて非常にわずかな数の新
しい抗原しか特定し得ていないという事実によって最もよく示されている。たと
えば、ファン・デア・ブルッゲン(van der Bruggen)他,Sc
ience 254:1643−1647(1991);ブリチャード(Bri
chard)他,J.Exp.Med.178:489−495(1993);
クーリ(Coulie)他,J.Exp.Med.180:35−42(199
4)カワカミ(Kawakami)他,Proc.Natl.Acad.Sci
:USA91:3515−3519(1994)を参照。
腫瘍関連抗原の検出に使用することが可能であるのみならず、なんらかの異常
又は病理状態に関連する分子の判定にも使用可能な方法を利用可能とすることが
望まれる。このような方法は、更に、そのような分子の同定を容易にし、これに
よって、それを、たとえば、抗体、細胞溶解性T細胞などの生成に使用すること
も可能にするものであろう。
従って、本発明の目的は、疾病の分子診断において有用な、ヒトの組織、特に
腫瘍細胞、中の抗原の簡便な検出及び分子キャラクタライゼーションおよび/又
は感染性、自己免疫性、及び悪性疾患の免疫療法及び遺伝子療法のための方法及
び試薬を開発することにある。本発明を以下の開示に於いて記載する。図面の簡単な説明
図1は、本発明のアプローチの原理を示している。
図2は、患者の血清の1:100希釈液に反応する腎細胞クリア(clear)
ガンのcDNA由来の陽性クローンを有するニトロセルロースメンブランを図示
している。
図3は、腎細胞ガン、正常腎臓、及びその他のヒトの組織中に於けるクローンH
OM−RCC−313のノザンブロット分析を棒グラフで示している。
図4は、HOM−RCC−313をコードする遺伝子の翻訳領域を示している。
それは、配列番号4でもある。好適実施例の詳細な説明
以下の開示は、血清学的フィッシングと称される方法を記載するものである。
この方法に於いて、病理状態を患う患者から細胞サンプルを採取する。前記細胞
は、好ましくは、その病状を例示するものである。たとえば、もしも患者がメラ
ノーマを有する場合、前記細胞はメラノーマ細胞である。もしも患者が神経障害
を患っている場合、前記細胞は、好ましくは、その疾患細胞のサンプルである。
このアプローチは、疾患細胞が問題のタンパク質含有分子、即ち、問題の病理状
態に特異的に関連する分子の最良のソースである可能性が非常に高いことから、
保証される。
尚、病理状態を代表する細胞が、本発明の方法に於いて使用可能な唯一の細胞
であるというわけではない。たとえば、細胞の分化と成熟に関連するような細胞
「マーカー」を確認することが非常に重要である。ここで例として造血幹細胞が
想起される。同様に、本発明は、たとえば、特異的リガンドに対する受容体分子
の単離も考慮する。実際に、この方法を使用して、問題となるどのような分子の
存在についてもアッセイすることができる。
次に選択された細胞を使用して、相補的DNA(即ち、cDNA)のライブラ
リーを作成する。この方法は、当業者にとって周知であり、ここで繰り返す必要
はない。それは、もちろん、もしもタンパク質が細胞によって発現されるならば
、メッセンジャーRNA(mRNA)が存在するはずであるという確立された事
実に基づくものである。これらのmRNA分子は、長命ではなく、不安定である
ので、作業するには非実用的である。cDNAが使用された場合に分子にもたら
される安定性がこの方法にとって非常に有用である。
cDNAが作られると、それを使用してベクターライブラリーを構築する。簡
単に説明すると、cDNAの分子を受容するように、キャリアベクターを、切断
や接続等によって処理する。ベクターの選択は、当業者はそのような多数の具体
例を周知であることから、様々なものであってよい。
特に好適であるのは、ウィルスベースのベクターである。真核細胞の場合、レ
トロウィルス又はアデノウィルスをベースとしたベクターが好適である。このよ
うなベクターは、長い末端反復配列(‘LTR’)、プロモーター(たとえば、C
MVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター)、エンハンサ
ー、等の、ウィルスゲノムの全部又は一部を含む。宿主細胞が原核細胞である場
合は、細菌ウィ
ルス、即ち、ファージ、が好ましい。このようなベクターの具体例は、たとえば
ラムダファージに基づくベクターである。いずれの場合に於いても、ベクターは
、一以上のウィルスのエルメントを含むものであってよい。
その結果得られたベクターは、真核細胞又は原核細胞のいずれであってもよい
宿主細胞にトランスフェクト又はトランスフォームされる。
トランスフェクション又はトランスフォーメーションに通常使用されるどのよ
うな細胞もこの方法に使用することができる。好適な材料は、大腸菌の菌株、C
HO−1等のCHO細胞、COS−7等のCOS細胞、等を含む。同様に、たと
えば、サッカロミセス属などの酵母細胞や、シュードモナスアエルギノーザ等の
シュードモナス属細菌、バチルスバクテリア、周知の昆虫宿主細胞Spodop tera frugiperda、等もすべて使用可能である。
一旦、受容細胞がベクターを受容すると、外来性のタンパク質含有分子を発現
させるべく、それらを培養する。ここで「タンパク質含有」という言葉を使用す
る理由は、原核生物はタンパク質のみを発現するのに対して、真核細胞は、たと
えば、糖タンパク質や、リポタンパク質等を産生するべく、翻訳後にタンパク質
を修飾する能力があることがよく知られているからである。又、ここで使用され
る「タンパク質含有」という言葉は、MHC分子によって提示されるペプチド等
のペプチドをも含むものであると銘記されなければならない。
下記のプロセスは、上述したプロセスとは独立して行われるものであり、本発
明の二つの態様間において何ら時間的関係は意図されていない。
ガン等の病状や、たとえば自己免疫疾患に於いて、その病状に関連する分子に
対するなんらかの免疫反応がある。この反応は、抗体応答、B細胞の増殖、特異
的T細胞亜集団の増殖、サイトカイン産生の増加、等を含みうる。応答に関連す
る分子と細胞とは、血清等の患者の体液中に見つけることができる。免疫応答物
は、それが組換えによって作られたものであれ、成いは自己によって作られたも
のであれ、問題の分子と反応する。問題はそれらを見つけることである。具体例
が示すように、これはユニークな方法で行われる。先ず、体液、又は、対象とな
るその他のサンプルを、トランスフェクション又はトランスフォーメーションに
使用されるものと同じ宿主細胞のサンプルと反応させる。この第1工程において
、宿主細胞は、トラン
スフェクト又はトランスフォームされていない。この作用は、標的分子に対して
ではなく宿主細胞に対して特異的な免疫性の結合パートナーを除去(Strip
)することにある。この工程が必要である理由は、前述したように、宿主細胞は
、それに対して患者がなんらかの時点において免疫応答を発生するものである可
能性があるからである。この第1除去工程(Stripping)によってこれ
らの免疫成分を除去する。
次に第2除去工程を行う。この工程に於いて、前に除去されたサンプルを、今
回は、上述したものと同じ宿主細胞であって、但し今度は患者からのcDNAを
含まないキャリアベクターでトランスフェクト又はトランスフォームされた宿主
細胞のサンプルと反応させる。この第2除去工程を行う理由は、本発明者等によ
ってなされこれまで文献に報告されていない観察に基づくものである。ファージ
、ウィルス、等のベクターとして使用される材料は、これらが自然に細胞に感染
するが為に有用である。従って、ヒトの下部腸に生息する大腸菌にラムダファー
ジを感染させる。従来に於いては、大腸菌に対する免疫応答が、これらの感染性
物質に対する応答を含むということは考慮されていなかった。従って、本出願人
等は、前述した二つの除去工程を行うことによって、前例のない程度にまで妨害
免疫成分を除去する驚くべき可能性を達成したのである。前述したように、第1
工程は、トランスフェクト又はトランスフォームされていない宿主細胞に対する
ものである。第2工程は、前述したように、cDNAのキャリアとして使用され
るベクターと免疫学的に同等なベクターであって、cDNAを坦持していないベ
クターをトランスフェクト又はトランスフォームされた宿主細胞に対するもので
ある。
これらの除去工程のそれぞれを、複数の互いに類似した、但し異なる手順を使
用して行うことが特に好ましい。たとえば、後述する実験は、固相カラム上での
吸収と、その後のニトロセルロースペーパー上での吸収を示している。本出願人
等は、なぜこのように二つの類似してはいるが異なるプロトコールを使用するこ
とによってここに記載されている結果がもたらされるのかということに関してい
かなる理論にも限定されることを望まない。以後、「サンプルに接触させる」と
いう表現を使用する場合にはいつでも、これは、一つの接触工程のみに限定され
るものではなく、一つ以上の、検査対象のサンプルから妨害結合パートナーを除
去するように構成さ
れた複数の好ましくは互いに異なる接触プロトコールをも意味する、ことが銘記
されるべきである。
これらの除去工程を、cDNAライブラリーを作成するのに使用する諸工程と
、完全に独立して行うことが可能であると理解されるであろう。たとえば、もし
もある抗原についてのテストが、第0日に行われる場合、サンプルの除去工程は
、その前日、その前の週、等に行うことができる。更に、将来での使用のために
、ドナー又は患者からの除去済み(Stripped)サンプルを「バンク」す
ることも可能である。
使用されるサンプルは、好ましくは血清であるが、必ずしもそれに限られるも
のではない。免疫性(immunogenic)結合パートナーを含むどのよう
なサンプルも使用することができる。
本方法の次の工程に於いて、cDNAを坦持し、異種タンパク質を発現する、
溶解され、トランスフェクトされた細胞を、前述した二回除去されたサンプルに
接触させる。このサンプルは、前記異種タンパク質に対して特異的な免疫成分の
みを含み、それらに対して結合するはずである。この結合は、細胞可溶化液を、
たとえば、活性化フィルターペーパー、固相カラム、等との接触によって予め固
定化しておくことによって容易になるが、当該技術に於いて、問題の分子の同定
のために多数の様々な形態のアッセイが利用可能であることが認識されているた
め、この固相結合は必ずしも必要なものではない。
前記免疫成分が標的分子に結合すると、更にもう一つの工程を行うことが望ま
しいが、これは必ずしも行わなくてもよい。この追加工程は、たとえば、同定可
能なラベルを坦持した抗−IgGなどの、第1の免疫成分に対するなんらかの結
合パートナーの使用を含むものである。前記ラベルは、色素、酵素、金粒子、放
射性標識、あるいはイムノアッセイに於いて使用される標準的ラベルのどのよう
なものであってもよい。
同定が行われた後、標的分子を残して、前記免疫成分を除去する。次に、その
標的分子を、当該技術におけるなんらかの標準的方法を使用して調べる。
当業者は、前記方法に依れば、問題の分子と結合する免疫成分の単離も結果的
に達成されることを理解するであろう。従って、本発明の別態様に於いて、たと
えば、
問題の分子に対する特異的結合パートナーである、抗体を単離することができる
。
本発明に依って同定および単離可能な更に別の免疫成分は、前記同定された分
子に由来するペプチドと、これらのペプチドが結合して複合体を形成するMHC
分子とからなる複合体に対して特異的な、細胞溶解性T細胞(以下、「CTL」
と称する)である。CTL応答は、MHC分子と、一般に約8−12アミノ酸長
であり、但し最も好ましくは9又は10アミノ酸長であるペプチドとからなる複
合体の、循環T細胞の表面上のT細胞レセプター(“TCR”)による同定を含
むものであることがほぼ受け入れられている。TCRは、これらの複合体に結合
することによって反応し、これらの複合体に対して特異的なCTLの増殖を含む
一連の反応を、いわば「開始」させる。本発明の方法と、更に別の工程とを使用
することによってこのようなCTLを生成および/又は単離することができる。
後述する具体例と、更に当該開示内容とに於いて指摘されているように、問題
の抗原をコードするcDNAを容易に同定することができる。cDNAが同定さ
れると、これを、既にその表面上に所望のMHC分子を提示している宿主細胞か
、もしくは、これらのMHC分子をコードするDNAをトランスフェクトされた
宿主細胞をトランスフェクトするために使用する。問題の分子に対するcDNA
が発現され、分子は、HLA分子等の、MHC分子によって提示される抗原ペプ
チドへとプロセッシングされる。前記複合体に対して向けられるCTLは、自己
リンパ球等の、リンパ球から得られる。反応細胞集団から、次に、限界希釈法の
周知技術を使用して、長期(long−term)CTLクローンが得られる。
陽性CTL応答が観察されると、そのCTLに対して提示される特異的ペプチド
を、たとえば、予め同定されたCTLクローンの特異性のスクリーニング、等の
確立された方法を使用して同定する。あるいは、潜在的MHC−結合モチーフを
同定するため、問題の分子の配列を研究し、そして、それらのペプチドについて
、まず、関連MHC分子に対する結合について分析し、もしMHC−結合に関し
て陽性であれば、次にそれらが、ペプチドMHC複合体を認識するCTLを生成
させる能力について分析する、という、より最近に記載された方法を使用するこ
とも可能である。もちろん、前記ペプチドは、周知技術を使用して、前記細胞か
ら溶離させ、配列決定することも可能である。
尚、当業者に於いては、問題の分子の発現から、逆にそれを発現した単数又は
複
数の特定の宿主細胞に関連付けることが可能であることも理解されるであろう。
これを行うに当たって、問題の分子を発現したcDNAを取出し、それを配列決
定する、等を行うことができる。当該方法のこの態様は、本発明の別の特徴を構
成するものである。
本発明の具体的実施例は、以下の例から理解されるであろう。図1はこの方法
を模式的に示している。例1
ヒト組織からのcDNAライブラリーを確立するために腎明細胞ガンの0.5
ugからトータルRNAを得、そして参考文献として本出願にその内容を合体さ
せる、チョムジンスキー(Chomzynski),J.Analyt.Bioc
hem.162:156−159(1987)の方法に従って、確立した。mR
NAをオリゴ−dT−セルロースによってトータルRNAから抽出した。ファー
ストストランドcDNAの合成は、ガブラー(Gubler)およびホフマン(
Hoffmann),Gene 25:263(1983)に記載されている方
法によって、RNaseHとDNAポリメラーゼIを使用して達成した。cDN
Aにクレノウ酵素を適用し、EcoRI制限酵素部位を有するアダプターをT4
DNAリガーゼを使用してcDNAの末端に結合させた(フェレッティ エル(
Ferretti L)および(スガメレッラ ヴィ(Sgamerella V
),Nucl.Acids Res.9:3695(1981))。酵素XhoI
での制限酵素消化の後、様々な長さのcDNA分子をSephacryl400
を使用して分離し、そしてλZAPIIファージベクターにトランスフェクトし
た(ショート(Short)他,Nucleic Acids Res.16:
7583(1988))。ライゲーションの後、組換えファージDNAを、パッキ
ング抽出液によりファージ中にパッケージングし、そして大腸菌細菌のトランス
フェクションに使用した。ライブラリーの力価(タイター)測定の結果は、1.
8x106の組換え一次クローンであった。cDNAライブラリーの全体を大腸
菌にトランスフェクトし、そして増幅させた。増幅後のcDNAライブラリーの
力価(タイター)は、ml当たり1011プラーク形成単位であった(pfu/m
l)。これらトランスフ
ェクトされた細胞を以下の実験において使用した。例2
前述の本発明によると、免疫性物質の同定は、ネイティブおよび溶菌されたλ
ファージ−トランスフェクションされた大腸菌細菌に由来する抗原に対して向け
られた抗体を完全に除去したヒト血清を使用することによって達成される。この
目的で、血清を吸収によって“除去工程(ストリップ)”した。これについてここ
で記載する。
大腸菌細菌株XLI−Blueを50mlのLB培地で一晩培養した。吸光度
OD600=1.0に達した後、細菌を遠心分離してペレットとし、5mlのリン
酸緩衝食塩水(PBS)中に再懸濁し、そして超音波によって処理し、溶菌液を
得た。細菌溶菌液を活性化セファロースのマトリックスに結合させ、そしてそれ
をカラムに充填しヒト血清の吸収のために使用した。血清をこのカラムに10回
通した。
指数増殖期にある大腸菌XLI−Blue細菌の培養物を遠心分離によってペ
レットとし、組換えインサートを有さない106のλZAPIIファージによっ
て0.01Mの硫酸マグネシウム中にてトランスフェクトさせ、そして5mlの
LB培地中で4時間インキュベートした。トランスフェクトされた細菌の溶菌液
を、前記のトランスフェクトされていない細菌と同じ要領で使用した。前述のヒ
ト血清をカラムに更に10回通した。
血清の除去工程(ディプリーション)を完全にするため、溶菌的(lytic
ally)にトランスフェクトされた大腸菌細菌からの、妨害となる抗体を寒天
プレート上で培養し(10時間、37℃)、そしてそれらのタンパク質をこの培養
工程の後にニトロセルロースメンブランにブロットした。この後、前述の工程に
よって前吸収させておいた血清をブロットされたニトロセルロースメンブランに
移し、吸収工程を5回繰り返した。本発明によって処理した血清は、完全に大腸
菌およびファージ由来の抗原に対する抗体が取り除かれている。例3
これらの実験において、腎ガン−特異的な抗原を以下の工程によって同定した
。大腸菌株XL1−Blueの細菌を、前述のcDNAライブラリー由来の組換
えフ
ァージでトランスフェクトし、プレート当たり4−5x103のプラーク形成単
位(PFU)の密度で、イソプロピルチオガラクトピラノシド(“IPTG”)
を含有するLB培地のプレートに播いた。37℃で12時間のインキュベーショ
ンの後、ニトロセルロースメンブランを、この培養物の上に載置し、そして培養
プレートを更に4時間インキュベートした。この後、前記ニトロセルロースメン
ブランを、5%粉乳を含有するトリス緩衝食塩水(TBS)中で1時間インキュ
ベーションした。前記ニトロセルロースメンブランをTBS中で3回洗浄した後
、例2にしたがって確保した除去工程後の(Stripped)ヒト血清を、T
BS/0.5%粉乳(w/v)中で1:1000に希釈し、そして穏やかに振盪
しながら一晩インキュベートした。ニトロセルロースメンブランとのインキュベ
ーションの後、前記血清を取り出し、更なるテストを行うまで保存しておいた。
血清とのインキュベーションの後、ニトロセルロースメンブランの方はTBS中
で3回洗浄し、そしてポリクローナルアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗−ヒト
IgGとともに1時間インキュベートした。この後、ニトロセルロースメンブラ
ンを、TBS/0.01%Tween−20(v/v)中で繰り返し洗浄した。
この反応は、ニトロブルーテトラゾリウムクロライドおよびブロモクロロ−イン
ドイル(indoyl)−ホスファートを使用してTBS中で進行させた。ヒト
抗体の、発現したタンパク質に対する結合は、ニトロセルロースメンブラン上で
の青色の環状呈色沈着物によって可視化された。血清に対する効果的な前吸収処
理によって、大腸菌およびファージの抗原に対する抗体によってひきおこされる
バックグラウンド反応性による原因でテストの質が損われることなく、メンブラ
ンを37℃で数時間以上展開(develop)しておくことが可能となった。
陽性のクローンを寒天プレート上で位置決定し、トランスフェクションバッフ
ァーに移し、そして第2ラウンドのトランスフェクションおよびサブクローニン
グのために使用した。全部で1.8x106の組換えクローンをスクリーニング
にかけたところ5種類の陽性の反応性クローンが同定された。例4
例3にしたがって得られた陽性クローン、即ち、処理されたヒト血清由来の抗
体
に結合したクローン、をトランスフェクションおよび処理されたヒト血清との反
応性についてのテストのラウンドを繰り返し行うことによって、単クローン性と
し、サブクローニングした。対応するcDNAインサートを有するp−blue
scriptファージミドをλZAPIIファージベクターからinvivoエ
キシジョン(へイ(Hay)およびショート(Short),Strategie
s 5:16−19,1992)によってクローニングし、そして大腸菌SOL
R細菌をトランスフェクションするのに使用した。バーンボイム(Birnbo
im)およびドリー(Doly),J.Nucl.Acids Res.7:15
13(1979)の方法を変更したNaOHでのアルカリ法の後、細菌からプラ
スミドを単離した。組換えプラスミドDNAを古典的なサンガー法(Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 74:5463(1977))にしたがっ
て、M13−フォワードおよびM13−リバースオリゴヌクレオチドを使用して
配列決定した。得られたDNA配列およびその結果得られるアミノ酸配列を、核
酸およびタンパク質データバンク(Gene Bank,EMBL,Swiss
Prot)においてチェックした。cDNAインサートの配列決定を、内部オ
リゴヌクレオチドを使用して続けた。分析によると、前記データバンクにおいて
登録されているいずれの配列ともホモロジーを示さなかった。SK313と称す
る全長のcDNAクローンは、RACE法(Frohman MA,Dush
MK,Martin GR,Proc.Natl.Acad Sci.USA8
5:8998(1988))によつてクローニングしたものであり、5’末端に炭
酸脱水酵素ドメインを有していた。この分子の核酸配列を配列番号1において示
す。図2は、これらの実験からの陽性クローンを有するニトロセルロースメンブ
ランを示す。例5
これら諸実験を詳細に調べるため、RNAを、チョムジンスキー(Chomz
ynski)およびサッチ(Sacchi),AnalytBiochem.16
2:156(1987)の方法にしたがって、悪性および正常ヒト組織の範囲か
ら単離した。変性の後、トータル単離RNAを1%ホルムアル
デヒドを含有するアガロースゲルで電気泳動によって分離し(ゴールドバーグ (
Goldberg),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5
794(1980))、そして次に周知の方法(シード(Seed),Nucl.A
cids Res.10:1799(1982))によってナイロンメンブランに
ブロットした。前記同定されたクローンの放射能標識したcDNAインサートを
ハイブリダイゼーションのために用いた。ハイブリダイゼーションは、周知の方
法(ジェフリー(Geoffrey)およびバーガー(Berger),Enzy
mol.152:419(1987))にしたがって行った。対応するRNAの存
在は、オートラジオグラフィーおよびX線フィルムを使用して確認した。分析に
よると、クローンHOM−RCC−313のmRNAは、正常の腎臓と比べて、
腎細胞ガン(腎ガン)の19のうち4つにおいて過剰発現していることが示され
た。非常に弱い発現が、結腸粘膜組織および正常の腎臓においてのみ見られた。
その他の組織での発現は示されなかった。例6
本発明に依って同定される抗原に対する抗体の発生率を測定するために、健康
な個体と腫瘍患者とからの血清を分析した。この目的の為に、血清を、上述した
ように処理し、大腸菌及びファージ由来の抗原に対する抗体を除去した。抗原特
異的抗体を検出するために、反応性クローンからのファージを、同じcDNAラ
イブラリーに由来する非反応性ファージと1:10の割合で混合し、上述した要
領で、ヒトのテスト血清中の抗体との反応性についてテストした。前記抗原の同
定に使用された血清を、陽性クローンとして使用した。非反応性ファージを、陰
性コントロールとして使用した。血清サンプルは、もしも予想された割合のファ
ージプラークが陽性の反応を示した場合、抗原反応性抗体について陽性とされた
。クローンHOM−RCC−313によって代表される腎細胞ガン抗原の場合、
一定範囲のヒト血清の分析は、腎細胞ガン患者からの血清のみが、反応性抗体を
含有していることを示した。健康なコントロールと他の腫瘍を有する患者からの
血清は、そのような抗体を含んでいなかった。
クローンHOM−RCC−313のcDNAを、制限酵素EcoRIでの消化
に
よってプラスミドDNAから切出し、アガロースゲル電気泳動によって分離し、
その後、前記ゲルからの抽出を行った。次に、これを使用して、細菌のタンパク
質であるアントラニル酸合成酵素との融合タンパク質を発現するベクターを作っ
た。正確なオープンリーディングフレーム内の関連フラグメントをpATHプラ
スミドベクターにクローニングした(ケルナー(Koerner)他,Meth
.Enzymol.194:477(1991))。記載されているように(スピン
ドラー(Spindler)他,J.Virol.49:132(1984))、
前記プラスミドを大腸菌株BL21にトランスフォーメーションした後、タンパ
ク質発現を誘導させることができた。発現された融合タンパク質を、SDSゲル
電気泳動によって分離し、ゲルから切出し、溶出し、凍結乾燥した。ウサギを、
フロイントアジュバント中に溶解させた100μgの前記凍結乾燥物での皮下注
射によって免疫化した。免疫化は、フロイント不完全アジュバントを使用して2
週間の間隔で3回繰り返された。ウサギから採血し、抗血清を得た。得られた抗
血清から、上述した方法で、大腸菌とファージとに対して反応性の抗体を除去し
、ヒト血清について記載したように、腎ガン抗原に対する反応性をテストした。
反応性は、1:>100,000の希釈で検出した。例7
(i)悪性メラノーマ,(ii)星状細胞腫、及び(iii)ホジキン病、を
患う異なる患者から採取された生検組織を使用して、前述した諸例に記載された
プロトコールに従った。前述の例1−6に詳述した腎ガンの研究によって得られ
たものを含めて、その結果を次の表1に要約する。
異なるインサートの分析によって、メラノーマ細胞は、公知の腫瘍拒絶抗原前
駆体MAGE−1(ここに参考文献として合体させるファン・デア・ブルッゲン
(van der Bruggen)他,Science254:1643−7
(1991)を参照)と、更に一つの新規な抗原とを発現することが示された。
この抗原のcDNA配列の一部を配列番号2に示す。
星状細胞腫の研究が完了した時、観察されたインサートは、以前に記載された
Tegt遺伝子(ここに参考文献として合体させるオールド(Old),Canc
.Res.41:361−375(1981))に対応しているもののようであっ
た。
ホジキン病の研究が完了した時、今まで知られていない抗原が単離され、それ
をコードするcDNAが、標準的方法を使用してライブラリー中に同定された。
この抗原は、新規に観察されたものであり、レクチン様構造を有し、そのcDN
Aの一部が配列番号3に示されている。ビルベ(Bilbe)他,EMBO.J
112103−13(1992)によって記載されているレスチン(rest
in)に対する抗体も観察された。これは中間フィラメント関連タンパク質であ
って、その発現は、ホジキン細胞及びリードーステルンベルグ細胞と、培養され
た単球とに限
られていることが示された。例8
例1−7に記載された抗原に対する抗体の出現に関して更に研究を行った。表
2にこれらのアッセイを要約する。これらの研究に於いて、陽性クローンからの
ファージを、非反応性ファージと混合(比率:1:10)し、次に、これを使用
して細菌(大腸菌)をトランスフェクトした。患者血清の希釈液(1:200)
を、上述したように、固相酵素免疫検定法(ELISA)において使用した。「
HOM−MEL−40」は、前記新規なメラノーマ抗原(配列番号2)を指し、
「HOM−MEL−55」はMAGE−1(ファン・デア・ブルッゲン(van
der Bruggen)他,前述)を指す。「HOM−RCC 3.1.3
.」は、配列番号1の腎ガン抗原である。「HOM−GLO−30.2.1」は
以前に同定された星状細胞腫関連抗原を指し、「HOM−HD−21」は、配列
番号3の新規なレクチン様抗原を指し、「HOM−HD−397」は以前に同定
されたレスチン抗原である。レスチンを除いて腫瘍抗原に対する抗体が、比率は異なるものの、同じタイプの
腫瘍を患う患者の血清中にのみ検出されたという事実は、腫瘍の成長が、腫瘍抗
原に対する体液性応答の発生に必須である、ということを示唆している。
健康なコントロール中にレスチンが存在する理由は明らかではない。抗原が別
の抗原に対して類似の配列を有するとか、ドナーが前ガン状態の細胞を有してい
るとか、或いは、抗原が、ウィルス感染、その他の炎症プロセス等の非悪性条件
下に於いて正常細胞中で活性化される、などの理由に依り、それぞれの抗原に対
する免疫寛容が回避されたのかもしれない、と推測される。例9
ここに記載された新規に同定された抗原の発現パターンを調べるために、様々
なヒト組織を使用してノザンブロット分析を行った。
前述したチョムジンスキー(Chomzynski)他の周知のグアニジウム
イソチオシアネート/フェノール/クロロフォルム法を使用して、組織サンプル
(腫瘍及び正常)からRNAを抽出した。RNAの整合性(integrity
)を、フォルマリン/MOPSゲル中での電気泳動によってチェックした。次に
、各レーン当たり40ugのRNAを含むゲルを、ナイロンメンブラン上にブロ
ットした。次に、これらのノザンブロットを、配列番号1、2又は3のcDNA
でプローブした。ハイブリダイゼーションは、32P標識化プローブを用いて42
℃でフォルムアミドと行った。フィルターを1xSSC、0.2%SDSで65
℃で洗浄し、16時間露出させた。これらが、後に定義する「ストリンジェント
な条件」である。露出後、フィルターを取り出し、GAPDHで再びハイブリダ
イズさせた。表3にこれらの結果を要約する。 理解されるように、前記新規なメラノーマ関連抗原は、メラノーマに於いて強
く発現されるが、その他の組織中では発現されない。炭酸脱水酵素様抗原は、腎
細胞ガンの約20%に於いて強く発現されたが、正常腎臓組織に於いては弱く発
現されただけであった。Tegtは、正常脳組織と比較して8/12の星状細胞
腫組織において過剰発現された。ホジキン病に関連するレクチン様分子のmRN
Aは、正常な扁桃腺と比較して疾患を有する扁桃腺に於いて約10倍増加し、こ
れは、過剰発現が自己B細胞応答を誘発するタンパク質によく見られる特徴であ
るかもしれないということを示唆している。例10
HOM−MEL−40配列について更に研究した。標準的遺伝子分析技術を使
用したところ、HOM−MEL40のmRNAの5’領域がチロシンキナーゼ結
合ドメインを有していることが示された。これは、HOM−MEL−40がレセ
プターとして機能しているのかもしれないことを示唆している。前記RNAの3
’部分は、滑液(synovial)腫瘍のSYT−SSXトランスロケーショ
ンに関係していることが知られている分子である、「SSX」のRNA分子と同
一である。例11
更に、HOM−MEL40を研究するために追加の実験を行った。標準式ノザ
ンブロッティング分析によって、精巣を例外として、HOM−MEL40は、正
常組織に於いて発現されないことが示された。これに対して、それは、メラノー
マの50%、前立腺ガンの20%、胃ガンの20%、結直腸がんの26%、肺ガ
ンの12%、胸部及び肝細胞ガンの20%で発現された。それは、更に、胃ガン
の1/10、及び甲状腺ガンの1/5にも見つかった。
追加のウェスタンブロッティング分析を行ったところ、HOM−MEL40に
対する抗体が、テストされた89名のメラノーマ患者の内10名に存在していた
のに対して、49名の健全な男性被験者の内の3名に於いてのみ存在しているこ
とが示された。
更に別の研究に於いて、HLA−A2陽性腫瘍細胞が、HOM−MEL由来の
ノ
ナマーを提示することが観察された。これは、CTLを誘発させるのに有用なH
OM−MEL40特異的ワクチンが可能であることを示唆している。例12
前述の諸例に記載されたファージアッセイは、多数の血清サンプルをスクリー
ニングするには不適である。これを行うために、標準式ウェスタンブロット法の
改変方法を開発した。この改変法は、ここに記載するように、His−tagし
た組換えHOM−MEL40に基づくものである。
HOM−MEL−40を、メラノーマ組織から調製したプラスミドcDNAに
対してpfuポリメラーゼを使用して、20サイクル以上増幅した。使用された
オリゴヌクレオチドプライマーは以下の通りであった。
5’−GCCAAATACTTCTCTAAGGAAGAGTGG−3’(配列
番号5)(センス)
5’−TTCACTGTTGTGAACACTTGCTTTCAC−3’(配列
番号6)(アンチセンス)。
95℃/1分;60℃/1分;72℃/1分;で、ポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)を行い、その後、最終伸長を72℃で10分間行った。その増幅産物を、周
知の技術を使用してゲルで精製し、次に、SmaIで消化され、脱リン酸され、
そしてゲルで精製されたpQE32ベクターにイン・フレームにて結合させた。
これによって、そのN末端に6個のヒスチジン分子から成る「尾部」を有する融
合タンパク質が作り出された。
このコンストラクトを、次に、大腸菌 SG13009(pREP4)株にト
ランスフォームし、その後、カナマイシンとアンピシリンとを含有するプレート
での選抜を行った。個々のコロニーをピックアップし、これらを、2mMのイソ
プロピル チオガラクトシド(IPTG)で誘導をかけることによってスモール
スケールで発現させた。これによって、タンパク質発現をチェックすることが可
能になる。
次に、各クローンにつき、Ni−NTAカラムでのスモールスケールでの精製を
行った。
一つのクローンが、予想された長さのタンパク質を発現するものとして同定さ
れた。このクローンを単離し、周知の方法を使用して配列決定した。それは、H
OM−MEL−40であることが確認された。この同定後、組換えタンパク質の
ラージスケールでの誘導を行った。具体的には、細胞を、2mMのIPTGで誘
導し、5時間後に集菌した。細胞を8Mの尿素、100mMのNa2PO4、10
mMのTris・HCl(pH8)、0.01%のTriton Xから成るバッ
ファーと、一晩混合することによって溶解した。細胞細片を除去し、上清を、予
め平衡化させておいたNi・NTA樹脂にロードした。前述したバッファーの2
容量分、pH8で、次に、前記バッファーの少なくとも10容量分、pH6.3
で洗浄を行った。次に、ここに記載されたバッファーと、更に、250mMのイ
ミダゾールとを使用して、タンパク質を溶出させた。その収率は、1リットルの
細菌培地に付き15ないし40mgのHis−tagしたタンパク質の範囲であ
った。
次に、前記のHis−標識タンパク質を使用して、ウェスタンブロッティング
を行った。これらのアッセイにおいて、内部陰性コントロールとして作用した、
5ugの組換えHis−tagしたタンパク質を、2xSDSサンプルバッファ
ー(0.1M Tris−HCl,pH6.8,0.2Mジチオトレイトール,
4%SDS,0.2%ブロモフェノール・ブルー、20%グリセロール)と混合
し、次に、12%のSDS−PAGEにて電気泳動にかけ、その後、半乾燥トラ
ンスファー(semi−dry transfer)を使用してナイロンメンブ
ランにブロットした。
非特異的な結合をPBS中にて5%の低脂肪ミルクでブロッキングした後(1
時間)、メンブランを、腫瘍患者又は健康なコントロールからの1:100希釈
血清とインキュベートした。次に、ブロットを、一時間、アルカリフォスファタ
ーゼ結合マウス抗−ヒトIgGとインキュベートした。次に、メンブランを、ウ
サギ抗−マウスIgGと(30分間)、抗−アルカリフォスファターゼと、その
後、0.25mg/mlのアルカリフォスファターゼと、継続的にインキュベー
トした。各インキュベーション工程後、メンブランを、TBSと0.1%Twe
enとで広
範囲に洗浄した。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート(
BCIP)と、ニトロブルーテトラゾリウムとによる染色による可視化を行った
。前記血清を、観察者に対してサンプルの状態を隠した状態で、ランダムな順番
で(健康/メラノーマ陽性)分析した。すべての分析は、反復して実施した。
前記ブロッティングは、SDS−PAGEで約24kDの分子量の生成物を示
し、これは、予想アミノ酸配列に基づく、21.6kDの計算上の分子量と一致
する。
上述したイムノブロッティングを、89個のメラノーマサンプルと、6個の卵
巣ガンサンプルと、10個の腎ガンサンプルとに対して行った。これらの内、1
1個のメラノーマサンプルと、1個の卵巣ガンサンプルと、3個の腎細胞ガンサ
ンプルとが陽性であった。結腸直腸、肺、胸部、胃、又は膵臓ガンの患者からの
血清は陰性であった。全部で41名の健康なコントロールも分析され、その内、
3名が陽性であった。次に、前記ウェスタンブロッティングにおいて反応性であ
ったすべての血清と、更に、20個の陰性血清サンプルとを、前述したファージ
アッセイを使用して再評価した。その反応性は、11名のメラノーマ患者の内の
10名と、前記陽性卵巣ガン患者とにおいて確認された。前記腎細胞ガン患者と
健康なコントロールとは、陰性であり、前記ウェスタンブロッティングにおいて
陰性であったすべてのサンプルが陰性であった。
血清標本と腫瘍標本との両方を提供した16名のメラノーマ患者がいた。腫瘍
によるHOM−MEL−40の発現は、サンプル中に於ける抗体反応性と比較可
能であることが判った。下記の表から理解されるように、16名の患者の内の8
名がHOM−MEL−40陽性腫瘍を有していたが、その血清中にその抗原に対
する抗体を有していたのは3名のみであった。HOM−MEL−40陰性腫瘍を
有する患者の血清中には抗体は検出されなかった。例13
例7に於いて観察された結果が注目され、次に、追加の実験を行った。
上述した血清学的分析を、様々なホジキン病細胞サンプルに対して行った。上
述した方法を使用して同定された一つのcDNAクローンを、レスチンに対する
公知のcDNA配列と比較したところ、この公知のcDNAの切断
(truncated)形態に対応するものであることが判った。具体的には、
ここで配列番号7として示される前記切断(切形)cDNAは、カルボキシ末端
が切断されたタンパク質をコードし、α−ヘリックスロッドドメインの破壊をも
たらすものである。このドメインは、フィラメントの形成に重要であることが知
られている。
上述したプロトコールを使用してノザンブロット分析を行ったところ、この分
析は、転写産物がホジキン病関連組織中に於いて特異的に発現され、正常組織に
於いては発現されないものであることを示した。
次に、これらの結果を、転写産物特異的オリゴヌクレオチドを使用した単一細
胞(single cell)RT−PCRを使用して確認した。
組換えによって生成された抗原を使用して作られたポリクローナル抗体血清を
使用して、ウェスタンブロッティングによって、最後の一連の確認実験を行った
。例14
ここに参考文献として合体させるラメンシー(Rammensee)他,Im
munogenetics 41:178−228(1995)には、HLA−
A2.1に結合する多数のペプチドと、同時にCTL増殖を引き起こすいくつか
のペプチドとが開示されている。これらのいくつかは以下の式で表される。
Xaa Leu(Xaa)6(Ile,Leu,Val)(配列番号8)。HO
M−MEL−40の推定アミノ酸配列について、HLA−A2.1バインダー/
CTLスティミュレーターとして作用している可能性のある配列をスクリーニン
グしたところ、下記の配列が見つかった。
Arg Leu Gln Gly Ile Ser Pro Lys Ile(
配列番号9)
Arg Leu Arg Glu Arg Lys Gln Leu Val(
配列番号10)
Lys Ile Gln Lys Ala Phe Asp Asp Ile(
配列番号11)。
これらのペプチドは、周知の技術と、Fmoc保護アミノ酸とを使用して合成さ
れた。次に、これらペプチドを、Sephadex G25と、その後、C−1
8カラムでの逆相HPLCとを使用して精製した。抗原提示に関連するトランス
ポーターが欠失しているT2細胞(デ・マース(DeMars)他,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA82:8183−8187(1985);
スレイター(Slater)他,Immunogenetics 21:235
−241(1990))を、下記のように、ペプチド結合アッセイに使用した。5
x105のT2細胞のサンプルを、100uMのHOM−MEL40ペプチドの
存在下又は不在下で、37℃で4時間インキュベートした。陽性のコントロール
は、EBVLMP2由来ペプチド、即ち、
Cys Leu Gly Gly Leu Leu Thr Met Val(
配列番号12)と、
HIV逆転写酵素由来ペプチド、即ち、
Ile Leu Lys Glu Pro Va1 Gly Val(配列番号
13)とであった。
T2細胞上に於けるHLA−A2.1のアップレギュレーションを、抗−HLA
−A2.1特異的モノクローナル抗体(即ち、BB7.2)による標識化と、そ
の後の、FITC結合ヤギ抗−マウス抗体とのインキュベーションとによって測
定した。これらのサンプルを、フローサイトメトリーによって分析した。ここで
HLA−A2.1のアップレギュレーションは、下記の比率によって与えられる
。ペプチドを有するサンプルの平均蛍光強度
ペプチドを有さないサンプルの平均蛍光強度
前記三つのペプチドのそれぞれが、HLA−A2.1に結合することが観察され
、配列番号8が、FACS分析で測定したところ、飛びぬけて強いHLA−A2
.1アップレギュレーションを示した。
上記記載に示されるように、本発明は、免疫反応性物質の判定又は単離の方法
に関する。ここで「免疫反応性物質」とは、それを産出する対象に於いてなんら
かの形の免疫応答を引き起こすすべての物質をいう。この応答は、B細胞応答又
はT細胞応答のいずれに基づくものであってもよい。このような免疫反応性物質
には、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、ペプチド含有複
合体(たとえば、MHC/ペプチド複合体)、抗体、等が含まれる。これらの物質
を測定するために、周知の標準式方法を使用して、対象の細胞からcDNAライ
ブラリーを調製する。次に、cDNAを、真核細胞特異的ウィルスやファージ(
即ち、細菌ウィルス)等の適当なベクターに挿入し、トランスフェクト/トラン
スフォーム用ライブラリーを作成し、その後、これを、宿主細胞に組み込む。こ
れらの宿主細胞を、それらが受取る前記ライブラリーの成分(クローニングされ
たcDNA)を発現するように処理する。次に、これら宿主細胞を溶解し、これ
によって発現された物質を更なる処理のために使用することが可能となる。
次に溶解された材料を、前記免疫反応性物質に対する免疫性結合パートナーを
含むと考えられる「除去済み(stripped)」サンプルに接触させる。ここ
で「免疫性結合パートナー」とは、標的、即ち、前記免疫反応性物質に結合する
すべての免疫系関連物質をいう。このような結合パートナーには、非限定的に、
抗体、T細胞、サイトカイン、リガンド、レセプター、等、更に、これらの分子
の切形部分、相補的核酸分子、等が含まれる。尚、T細胞等のこれらの成分のい
くつかについては、ここに記載されたものを含む追加の工程が必要とされる。
前記除去済みサンプルは、前述したように、(i)トランスフェクトされていな
い、又はトランスフォームされていない宿主細胞と、(ii)関連cDNAを含有
しないベクターでトランスフェクト又はトランスフォームされた宿主細胞、との
両方との
接触によって既に処理されたものである。
前記除去済みサンプルは、発現物質の結合パートナーを同定するのに有用であ
る。というのは、もしも除去されなければ所望の特異的免疫反応を妨害するであ
ろう免疫成分の多くがここに記載された吸収工程によって既に除去されているか
らである。
発現物質の同定後に、それをコードするcDNAの単離を行ってもよい。宿主
細胞のコロニーを含むペトリ皿の上に載置された、ニトロセルロースメンブラン
等のメンブランを貫通して孔を開け、次に、その固相上での位置を決めるために
免疫反応を使用することができる。各コロニーは、限定されたcDNAのトラン
スフェクションに基づくものであり、これによって、関連cDNAの単離と同定
とが容易になる。
本発明は、更に、特定の状態(病状)に関連する分子をコードする配列番号1
、2、3又は7の単離核酸分子にも関する。そのコード物質としての役割に加え
て、これらの分子は、これらcDNA分子(配列番号1、2、3及び7)が抗原
へと翻訳されるmRNAに基づくものであることが判っていることから、関連抗
原を発現する細胞を同定するためのプローブとしても使用可能である。
その相補配列が、配列番号1、2,3又は7のいずれかにハイブリダイズし、
そして配列番号1、2,3又は7によってコードされるタンパク質と同等のタン
パク質をコードする、単離核酸分子も本発明の一部を成す。ここで「ストリンジ
ェントな条件」とは、50μl/cm2の3.5xSSCと、1xデンハルト溶
液と、25mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)で、32P−標識化
プローブを使用して、18時間65℃でハイブリダイゼーションし、その後、4
回洗浄(それぞれの洗浄は、1時間、65℃、2xSSC、0.1%SDS)し
、更に、1.0xSSC、0.2%SDSで30分間最終洗浄する条件と少なく
とも同程度にストリンジェントな条件をいう。前記最終洗浄は、0.5xSSC
ないし0.2xSSC、或いは更に、0.1xSSCに変更することが可能であ
り、SDSは、望ましい場合には、ストリンジェンシーを増加させるべく0.1
%まで低下させてもよい。
本発明は、更に、HLA−A2.1分子に結合し、これによって細胞溶解性T
細胞による溶解を引き起こす、配列番号9、10および11のもののような、腫
瘍抗
原に関連するペプチドを含む。下記の式のペプチドも本発明の一部を成す。即ち
、
Xaa Leu Xaa7(配列番号14)、
ここで、第6番目のアミノ酸酸残基は、Ser,Lys又はPheであり、第9
番目のアミノ酸残基は、Val又はIleである。ペプチド/MCH複合体形成
は非常に特異的なものであることが周知であることから、これらの分子は、又、
非常に簡便に、HLA−A2.1細胞に対するマーカーとしても役立つ。
本発明のその他の特徴は、当業者にとって明らかであり、従ってここで繰り返
す必要はない。
ここに使用された用語及び表現は、記載のための用語であり、限定のためのも
のではなく、このような用語及び表現を使用するに当たって、図示及び記載され
た構成又はその一部の均等物を除外する意図はなく、様々な改変が本発明の範囲
内に於いて可能であると理解される。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 1/21 C12N 1/21
5/10 C12Q 1/68 A
C12Q 1/68 G01N 33/50 P
G01N 33/50 33/53 D
33/53 Y
C12P 21/02 C
// C12P 21/02 21/08
21/08 C12N 5/00 A