【発明の詳細な説明】
サイクリンEの構築体および複合体
発明の分野
本発明は、キナーゼ、およびサイクリン、詳しくは、サイクリンEおよびcdk2
とのその複合体の分野に関する。キナーゼは細胞周期の調節に関与する重要な酵
素である。
発明の背景
細胞周期は通常、4期に分けられる:DNA合成(S期)およびG1ならびにG
2と呼ばれるギャップによって分割される有糸分裂(M期)である。細胞周期は
、調節された方法で活性化されるいくつかのSer/Thrタンパク質キナーゼによっ
て同調される。それは、細胞周期を調節するサイクリン依存性キナーゼ(Cyclin
dependent kinase(Cdk))のファミリーのこの進行の活性化および不活性化であ
る。この酵素の機関は、各事象(DNA複製、核エンベロープ崩壊、紡錘体形成、
および染色体分離等)が正確にかつ適切な順に行われることを保証するために慎
重な制御に付される。
各タンパク質キナーゼは触媒性サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)サブユニッ
トおよび調節サイクリンサブユニットからなる。Cdkは触媒性サブユニット(〜3
4kDa)を含有するタンパク質であり、モノマーとしは不活性である。最も特
徴的なCdkは、それらの一過性活性化および同族サイクリンという意味において
、Cdc2、Cdk2、Cdk4およびCdk6である。
Cdkの活性化は、それらがサイクリンと呼ばれる調節サブユニットと特異的に
会合することを必要とする。ヒト細胞において、異なったタイプのサイクリンが
同定されており、これらはタイプA、B、C、DおよびEを含む。サイクリンは
、さらに、サイクリンAおよびBを含む「有糸分裂サイクリン」、およびサイク
リンC、DおよびEを含む「G1サイクリン」に分類することができる。サイク
リンD、E、AおよびBは、それぞれ、細胞周期のG1、G1/S、SおよびG
2/M期において必要とされる。
Cdk活性化は、Cdk活性化キナーゼ(CAK)によるCdk触媒性ドメインのThr161へ
のサイクリン結合およびリン酸化を共に必要とする。これらの残基におけるリン
酸化および脱リン酸化は、Wee1キナーゼおよびCdc25ホスファターゼを含むいく
つかの酵素によって媒介される。
サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)の不活性化は、潜在的にガン治療への期待
されるルートであり、最近の数年間、多大な興味の対象である。これらのキナー
ゼは、真核細胞の周期を制御する現象に関与する酵素のファミリーに属する。
Cdc2およびCdk2は、2つの特に良く理解されたCdkである。細胞中でCdc2の主
要パートナーは、サイクリンBである。サイクリンBレベルは、G2/M移行時
にピークとなり、該タンパク質は有糸分裂の導入に関与する。Cdk2はG1後期に
おいて活性であり、G2の終わりまで活性を保持する。サイクリンEのレベルは
、細胞周期の間にG1/S移行の辺りでピークとなる。
サイクリンタンパク質レベルの減少は、通常の細胞における細胞周期の調節の
重要な局面である。この減少は標的タンパク質の分解により起こると考えられる
。実際、知られているサイクリンのほとんどは、2つのクラスの推定分解モチー
フのうちの一つまたはもう一つの方を含有する。これらのモチーフははっきりと
したアミノ酸配列を含有するタンパク質の領域である。サイクリンAおよびBを
含む有糸分裂サイクリンは、いわゆる「破壊ボックス(destruction box)」を含
有し、一方、サイクリンC、DおよびEを含むG1サイクリンは潜在的「PEST」
モチーフを含有する。
PESTモチーフは特異的組成を有するアミノ酸のストレッチであり、いくつかの
タンパク質においてその存在が、真核細胞の急速な分解を引き起こすことが知ら
れている。サイクリンにおけるこれらのモチーフの突然変異は、かくして、高レ
ベルのサイクリンの異常な持続を生じ、これは腫瘍発生の一因となり得る。
細胞周期進行を媒介するCdk/サイクリン複合体のタンパク質インヒビターが発
見されている。哺乳動物Cdkタンパク質インヒビターは配列同一性に基づき、2
つのカテゴリーに分類される。一つのクラスはp16に関連し、Cdk4およびCdk6の
特異的インヒビターを含む。p21に関連する他方のクラスは、p21、p27およびp57
を含む。
p21に関連するインヒビターはサイクリン依存性キナーゼ阻害性タンパク質(K
ip)として知られている。特定の数字表記なしに用いられる「Kip」は、通常、
タンパク質のファミリーを言う。そのファミリー内のいくつかのタンパク質には
、p27-KIP1またはp21-CIP1のごとき、kip、または、さらにcipの文字を含むより
特別の「名前」を与えることができる。大文字表記は変化してもよい(例えば、k
ip、Kip、KIPまたはcip、Cip、CIP)。KipはCdk4/Cdk6-サイクリンD、Cdk2-サ
イクリンA/サイクリンE、およびCdc2/サイクリンBを含む、種々さまざまの複合
体を阻害する。ヒトp21(Cipl)は164個のアミノ酸のタンパク質をコードし
、ヒトp27(Kipl)は198個のアミノ酸のタンパク質をコードする。
細胞周期調節機能に関係するCdk2/サイクリンE複合体は、重要な研究分野であ
り、この複合体のインヒビターの研究は重要な研究ゴールである。もし可溶性な
らば、Cdk2/サイクリンEの活性複合体を作ることができ、それらはこの複合体の
キナーゼ活性のインヒビターを検出することを意図したin viroスクリーニング
を作成するツールに対する重要な要求を満足し、かつそれらは、該複合体をキャ
ラクタライズし、その特性を解明することを意図した研究を容易にするであろう
。
本明細書に開示した発明は、可溶性かつ活性なCdk2/サイクリンE複合体を産生
するサイクリンEの種々の形態を開示する。
図面の簡単な説明
図1 GST-サイクリンE−PEST*-His6遺伝子のDNA配列。該配列番号付けは
、Koffら(1991)Cell 166:1217-1228の図2において使用されている配列番
号付けとは異なることを特筆する。これは、配列表第1番または配列番号1(ま
たは、SEQ.ID.No.1)をリストする配列である。
図2 GST-サイクリンE-PEST*-His6のアミノ酸配列。これは配列番号2で
ある。
図3 GST-サイクリンE-PEST*-His6のC-末端と野生型サイクリンEとの比較
。点線の上が野生型サイクリンE;点線の下がGST-サイクリンE-PEST*-His6であ
る。番号付けは、野生型サイクリンEについてのKoffら(1991)Cell66:1217
-1228の図2において使用されている配列番号付け同じである。GST-サイクリンE
-PEST*-His6における野生型サイクリンEとの相違点を太文字で示す。野生型サ
イクリンEの推定PEST領域に下線を施す。示した完全長野生型アミノ酸の部分を
配列番号3に供し、配列番号3に対応する完全長野生型DNAを配列番号4に供す
る。完全長GST-サイクリンE-PEST*-His6は、それは図3に示されたC-
末端を含み、配列番号1および2として供される。
図4 アフィニティー精製したGST-サイクリンE-PEST*-His6/Cdk2複合体。
タンパク質調製はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびクーマシー染
色によって視覚化した。レーン1:グルタチオンアフィニティークロマトグラフ
ィーによって精製したGST-サイクリンE(野生型)/Cdk2-HA。レーン2:グルタ
チオンアフィニティークロマトグラフィーによって精製したGST-サイクリンE-PE
ST*-His6/Cdk2-HA。レーン3:固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー
(IMAC)によって精製したGST-サイクリンE-PEST*-His6/Cdk2-HA。レーン4:グル
タチオンアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、およびNHS-LC-ビ
オチン(Pierce)でビオチン化したGST-サイクリンE-PEST*-His6/Cdk2-HA。図の左
側のマーカー、“GST-cycE”および“Cdk2HA”は種々のGST-サイクリンEおよびC
dk2HA種の予想の位置を示す。
図5 GST-サイクリンE-PEST*-His6/Cdk2複合体のキナーゼ活性。50mM トリ
ス-HCl pH7.4、10mM MgCl2、1mM DTT、0.2mM ATP、0.25mCi/ml[γ32P]-ATPおよ
び10ng/μl精製RBタンパク質(QED,Inc.San Diego)中にてサイクリンE/cd
k2複合体をインキュベートすることによって、キナーゼ検定を行った。次いで、
反応生成物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびホスホルイメージング
(PhosphorImaging)によって解析した。レーン1:精製Cdk2-HA単独。レーン2:
グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーによって精製したGST-サイクリ
ンE(野生型)/Cdk2-HA。レーン3:グルタチオンアフィニティークロマトグラ
フィーによって精製したGST-サイクリンE-PEST*-His6/Cdk2-HA。レーン4:固定
化メタルアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって精製したGST-サイク
リンE-PEST*-His6/Cdk2-HA。レーン5:グルタチオンアフィニティークロマトグ
ラフィーによって精製し、およびNHS-LC-ビオチンでビオチン化したGST-サイク
リンE-PEST*-His6/Cdk2-HA。
図6 キナーゼインヒビタータンパク質(p27KIP1)のGST-サイクリンE-PEST*
-His6・Cdk2複合体に対する結合。Y軸(cpm)はカウント/分であり、X軸(
r)は反応番号である。KIPシンチレーションプロキシミティー検定を下
記のごとく行った。反応1:バックグラウンド([Polyak et al.,Cell(1994)Vol
.78,pp.59-66]に開示された最小ドメインごとき3H-mini-p27または125I-GST-p2
1+SPAビーズ、サイクリンE/cdk2複合体は存在せず。)125I-GST-p21構築体はp2
1構築体の放射性125I-型である。非放射性構築体の調製についてその他の点では
、125I-GST-p21と同じである([El-Deiry et al.,"WAF1,a Potential Mediator
of p53 Tumor Suppression",Cell(1993)Vol.75,pp.817-825.]参照)。反応2
:125I-GST-p21+GST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2複合体;反応3:3H-
mini-p27+GST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2複合体。反応4:3H-mini-P27
+過剰mini-p27+GST-サイクリンE-PEST*-His6/Cdk2複合体(コールドコンペティ
ション)。
図7 昆虫細胞中におけるGST-サイクリンE-PEST*-His6-対-野生型GST-サ
イクリンEの安定性。Sf9昆虫細胞を、GST-サイクリンE-PEST*-His6または野生
型GST-サイクリンEのいずれかをコードする組換えバキュロウィルス(baculovir
uses)で感染させた。Y軸(v)は放射能シグナルの体積積分であり、およびX
軸(s)はサンプルの型である。感染細胞を35S-アミノ酸で2時間パルスし、
次いで、冷アミノ酸で追跡した。示した時点(時刻0=パルスの終わり)におい
て細胞を採取し、タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およ
対応するバンド内の放射性シグナルの体積積分を表す。"wt"はGST-サイクリンE(
野生型)を示す;"PEST"はGST-サイクリンE-PEST*-His6を示す。
図8 特定のサイクリンE(29E-395A)のDNA配列。これは配列番号5である。
図9 特定のサイクリンE(29E-395A)のアミノ酸配列。これは配列番号6で
ある。
図10 GroELとの会合に好都合なNaClの存在下における、特定のサイクリンE
(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)のIMAC精製。配列番号8
は配列番号7のアミノ酸配列に対応するDNA配列をリストする。配列番号9は(MR
HHHHHHK)のアミノ酸配列をリストする。配列番号10は配列番号9のアミノ酸配
列に対応するDNA配列をリストする。配列番号11は(SAWRHPQFGG)のアミノ
酸配列をリストする。配列番号12は配列番号11のアミノ酸配列に対応するDN
A配列をリストする。細胞ペレットを20mMトリス、pH8.0、0.5M NaClに再懸濁し
、フレンチプレッシャーセル(French Pressure Cell)を用い処理し、抽出物を
遠心する。次いで、上清を、20mMトリス、pH8.0、0.5M NaClで平衡化したIMAC
カラム上に負荷する。20mMトリス、pH8.0、0.5M NaClに引き続き75mMイミダゾ
ールを加えたバッファーで該カラムを洗浄する。該特定のサイクリンE(29E-395A
)/GroEL複合体を300mMイミダゾールを加えたバッファーを用いて溶出し、画分を
収集し、12%SDS-PAGEを用い解析する。レーン1:フレンチプレスでのプロセシ
ング後の総細胞ライゼート。レーン2:IMAC上に負荷した上清。レーン3:物質
を通るIMACフロー。レーン4:75mMイミダゾール。レーン5〜14:サイクリ
ンE(29E-395A)の300mMイミダゾール溶出由来の画分。レーン15:MWマーカー
。43Kdおよび68Kd間の主要タンパク質バンドはGroELと同定された。43Kd
バンドの少し下の主要タンパク質バンドは特定サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-39
5A)-(SAWRHPQFGG)、配列番号7であると同定された。
図11 GroELとの解離に好都合なNaClの不存在下における、特定サイクリンE
(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)、配列番号7のIMAC精製。該サイクリ
ンE(29E-395A)クローンを前と同様に増殖させ、発現させる。細胞ペレットを50m
Mトリス、pH8.0に再懸濁し、フレンチプレッシャーセルを用いて処理し、抽
出物を遠心する。次いで、上清を、50mMトリス、pH8.0で平衡化したIMACカラ
ム上に負荷する。50mMトリス、pH8.0に引き続き75mMイミダゾールを加えたバ
ッファーで該カラムを洗浄する。該特定のサイクリンE(29E-395A)を300mMイミダ
ゾールを加えたバッファーを用いて溶出する。かく溶出したサイクリンEは不溶
性であり、サイクリンEを含有する画分を収集し、12%SDS-PAGEを用いて解析す
る。レーン1:フレンチプレスでのプロセシング後の総細胞ライゼート。レーン
2:IMAC上に負荷した上清。レーン3:物質を通るIMACフロー。レーン4〜13
:サイクリンE(29E-395A)の300mMイミダゾール溶出由来の画分。レーン15:MW
マーカー。顕著なのは、43Kdおよび68Kd間にGroELバンドが観察されないこ
とである。
図12 ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/Cdk2複合
体(配列番号7/Cdk2複合体)のIMAC精製。細胞ペレットを50mMトリス、pH8.0
に再懸濁し、フレンチプレッシャーセルを用いて処理し、抽出物を遠心する。次
いで、上清を、50mMトリス、pH8.0で平衡化したIMACカラム上に負荷する。50m
Mトリス、pH8.0に引き続き50mMイミダゾールを加えたバッファーで該カラムを
洗浄する。Cdk2を50mMイミダゾールに対して平衡化し、該カラム上に負荷する
。吸光度が約0.25A280になるまで、50mMトリス、pH8.0に引き続き75mMイミダ
ゾールで該カラムを洗浄する。該サイクリンE(29E-395A)/Cdk2複合体を300mMイ
ミダゾールを加えたバッファーを用い溶出し、画分を収集し、12%SDS-PAGEを用
い解析する。レーン1:NaClの不存在下で単離したIAMC精製サイクリンE(29E-39
5A)。レーン3〜10:サイクリンE(29E-395A)/Cdk2複合体の300mMイミダゾール
溶出由来の画分。レーン11:cdk2。レーン14:MWマーカー。
図13 固定化ストレプトアビジンを用いた(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHP
QFGG)/cdk2複合体(配列番号7/Cdk2複合体)の精製。固定化ストレプトアビジ
ンを用いることによって精製した(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/cdk2複
合体(配列番号7/Cdk2複合体)のSDS-PAGE(12%)。レーン1:IMAC精製複合
体。レーン2:非結合画分。レーン3〜5:10mMビオチンで溶出した画分。レー
ン6:分子量マーカー。
図14 (MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/cdk2複合体(配列番号7/Cdk
2複合体)のキナーゼ活性。50μg/mlの最終濃度の複合体(2μl)を、40mMト
リス/pH7.5、10mM MgCl2、1mM DTT、0.1mg/ml BSA、および0.068mg/mlヒスト
ンおよび[33P]ATP(約1μCi)を含有するバッファー15μl中で37℃にて
30分間インキュベートする。37℃にて30分後、10μlのサンプルをホス
ホセルロース紙上にスポットし、1%リン酸で10分間洗浄を2回以上繰り返す
。該紙をアセトンで洗浄し、5分間乾式加熱し、放射能をカウントする。Y軸は
観測cpm。X軸はサイクリンE(29E-395A)/Cdk-2複合体の濃度(μg/ml)を示
す。
図15 シンチレーションプロキシミティー検定(SPA)を用いたp27キナーゼ
阻害性タンパク質(Kip)のミメティックスをスクリーニングする概要。
図16 SPAにおける[3H]Ub-p27最小ドメインの(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAW
RHPQFGG)/cdk2複合体(配列番号7/Cdk2複合体)への結合。200nM[3H]Kipの存在
下における、(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/cdk2複合体(配列番号7/C
dk2複合体)(X軸、nM複合体)の関数としてのSPAカウント(Y軸、観測CPM)。
ストレプトアビジンをコートしたSPAビーズを検定バッファー(30mMHEPES、pH7.
5、7.5mM MgCl2、1mM DTT)に再懸濁して、20mg/mlに10倍濃縮した。種々の
量の(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/cdk2複合体(配列番号7/Cdk2複合
体)および0.58μgの([Polyak et al.,Cell,(1994)78:59-66]に開示された
最小ドメインのごとき)[3H]ラベルしたUb-p27最小ドメインを総体積100μlに
て新鮮な検定バッファーに添加した。SPAビーズ(20mg/ml)を検定バッファー中
で2mg/mlに希釈し、100μlを該サンプルに添加した。該検定を氷上で30分間
インキュベートし、該溶液を3mlシンチレーションバイアルに移しPackard Tr
icarb 1900上でカウントした。該SPA活性をカウント毎分(CPM)で表した。Y軸は
カウント毎分(CPM)である。X軸はナノモラー(nM)でのサイクリンE(29E-395
A)/cdk2複合体の濃度である。
発明の概要
本発明は種々のサイクリンE構築体、複合体それらの製法、全ての中間体お酔
いbそれらの製法から生成される産物を含む。
PESTは、PEST-DNA、例えば、サイクリンE-PEST*-His6と称され、図2に示さ
れたポリペプチドをコードする核酸ポリマー、および実質的に同一ポリペプチド
をコードする関連または重複ポリマー、図1に示されたDNA配列を含むサイクリ
ンE-PEST*6と称されたDNA配列、GST-サイクリンE-PEST*-His6と称され、サイ
クリンE-PEST*-His6の核酸ポリマー図2を含み、その5’端がグルタチオンS-
トランスフェラーゼ(GST)をコードする核酸に結合した生物学的組成物を特許
請求する。His6-サイクリンE-PEST*-His6と称され、その5’端がHis6をコー
ド
する核酸に結合した生物学的組成物。
PEST DNAから転写されたアミノ酸を開示する。例えば、サイクリンE-PEST*-Hi
s6と称され、図2に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドおよびその同等
置換体。GST-サイクリンE-PEST*-His6と称され、そのN-末端がグルタチオンS-
トランスフェラーゼ(GST)に結合した図2に示されたアミノ酸配列を含むポリ
ペプチド。Cdk2と密接な会合状態にあるPESTポリペプチド。His6-サイクリンE-
PEST*-His6と称され、そのN-末端がHis6に結合し、所望により複合体またはC
dk2と密接な会合した形態をするポリペプチド。
PEST−PCRオリゴヌクレオチドプライマーを開示し、それは
である。
サイクリンE-PEST*-His6融合プラスミドのごときPESTプラスミド。サイクリ
ンE-PEST*-His6融合プラスミドと称され、サイクリンE-PEST*-His6ポリペプチ
ドをコードし、PCRオリゴヌクレオチド3’プライマーおよび5’プライマーが
存在することを特徴とするPCR反応から産生されたプラスミドから作成され、該
(配列番号13)
であって、該5’プライマーがクローニングサイトおよびサイクリンEの5’端
と同一である核酸を有するサイトを有するオリゴヌクレオチドであり、該PCR反
応は天然サイクリンEを増幅する融合プラスミド。サイクリンEの5’端と同一で
ある核酸を有するサイトが以下の核酸:
である上記の融合プラスミド。該5’プライマーが:
であるクローニングサイトを有する上記の融合プラスミド。該プライマーがクロ
ーニングサイトおよびサイクリンEの5’端と同一である核酸を有するサイトを
有するオリゴヌクレオチドであり、ここに、該核酸配列が:
であって、ここに、下線を引いた核酸は該クローニングサイトであり、下線を引
いていない核酸はサイクリンEの5’端と同一である核酸である前記の融合プラ
スミド。
いくつかのGST/his6-サイクリンE-PEST*-His6融合プラスミドを記載する。
例えば、GST/his6-サイクリンE−PEST*-His6融合プラスミドと称され、PCRオ
リゴヌクレオチド3’プライマーおよび5’プライマーが存在することを特徴と
するPCR反応から産生されたプラスミドから作成されたグルタチオンS-トラン
スフェラーゼ(GST)-サイクリンE-PEST*-His6ボリペプチドまたはHis6-サイク
リンE-PEST*-His6ポリペプチドのいずれかをコードする融合プラスミドであっ
て、該3’プライマーが:
であって、該5’プライマーがクローニングサイトおよびサイクリンEの5’端
と同一である核酸を有するサイトを有するオリゴヌクレオチドであり、該PCR反
応は天然サイクリンEを増幅し、次いで、この産物を融合プラスミドにサブクロ
ーン化し、ここに、該融合プラスミドが該5’末端にGSTまたはHis6コード領域
のいずれかを含有し、該(GST)-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドまたはHi
s6-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドのいずれかをコードする該融合プラ
スミド。該融合プラスミドがHis6-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドをコ
ードするpRSET-A(Invitrogen)から誘導される融合プラスミド、ならびに該融
合プラスミドが(GST)-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドをコードするpGEX
-2T(Pharmacia)から誘導される融合プラスミドを記載する。
組換えPEST-細菌を記載する。例えば、該GST-サイクリンE-PEST*-His6ポリ
ペプチドまたは該His6-サイクリンE-PEST*-His6ポリペプチドのいずれかを含
む該グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-サイクリンE-PEST*-His6融合プ
ラスミドまたはHis6-サイクリンE-PEST*-His6融合プラスミドのいずれかを発
現する細菌。該細菌がGST-サイクリンE融合プラスミドを含有する細菌。該細菌
がHis6-サイクリンE融合プラスミドを含有する細菌。該細菌がE.coli型である
細菌。
組換えPEST-バキュロウィルス、直接型、を記載する。例えば、直鎖状GST/His
6-サイクリンE-PEST*-His6核酸フラグメントをバキュロウィルス導入ベクター
にサブクローン化し、次いで、この産物をバキュロウィルスDNAと共にバキュロ
ウィルス宿主細胞に共トランスフェクトすることによって生成されたバキュロウ
ィルス。該バキュロウィルスDNAがBaculoGoldクリップルドバキュロウィルスDNA
であるバキュロウィルスのごときこの特定の例を記載し、また、例えば、バキュ
ロウィルス導入ベクターがpAcGHLT-CまたはpVL1392のごとき、多くの適当なバキ
ュロウィルス導入ベクターのうちのいくつかおよびそれらの使用を記載する。
PCR反応から産生された組換えPEST-バキュロウィルスを記載する。例えば、Hi
s6-サイクリンE−PEST*-His6または(GST)-サイクリンE−PEST*-His6をコード
するDNAから出発するPCR反応から産生されたPCR産物をサブクローン化すること
によって生成されたバキュロウィルスであって、該PCR産物をバキュロウィルス
導入ベクターにサブクローン化し、該PCR産物を含むバキュロウィルス導入ベク
ターを、バキュロウィルスDNAと共にバキュロウィルス宿主細胞に共トランスフ
ェクトすることを特徴とする該バキュロウィルス。該PCR産物が直鎖状GST-サイ
クリンE−PEST*-His6核酸に由来するバキュロウィルス。該PCR産物が直鎖状His
6-サイクリンE−PEST*-His6核酸に由来するバキュロウィルス。バキュロウィ
ルス導入ベクターがpAcGHLT-CまたはpVL1392であるバキュロウィルス。該バキュ
ロウィルス宿主細胞DNAがPharMingenからのBaculoGoldクリップルドバキュロウ
ィルスDNAであるバキュロウィルス。
(GST)-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドまたはHis6-サイクリンE-
PEST*-His6ポリペプチドを発現する細胞も記載する。例えば、グルタチオンS-
トランスフェラーゼ(GST)-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドまたはHis6-
サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチドのいずれかを発現するバキュロウィルス
を含有する細胞。原核生物、真核生物、昆虫細胞から誘導される細胞、該PCR反
応を直鎖状(GST)-サイクリンE−PEST*-His6DNAまたはHis6-サイクリンE−PES
T*-His6DNAから開始することを特徴とする細胞、該PCR反応を直鎖状(GST)-サイ
クリンE-PEST*-His6DNAから開始することを特徴とする細胞、Sf9またはハイフ
ァイブ型細胞として知られる昆虫型細胞の細胞、哺乳動物から誘導された細胞ま
たは酵母から誘導された細胞を含む種々の細胞型を記載する。
2以上の型のタンパク質または分子の種々の複合体または密接な会合体も記載
する。例えば、cdk2と共にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-サイクリン
E−PEST*-His6ポリペプチドまたはHis6-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチ
ドを含むタンパク質複合体。
本請求項のいずれかに記載された、サイクリンE−PEST*-His6、GST-サイクリ
ンE−PEST*-His6、His6-サイクリンE−PEST*-His6;DNA、アミノ酸、オリゴ
ヌクレオチドプライマー、融合プラスミド、細菌またはバキュロウィルスのいず
れかの製法も記載する。グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーを用い
る精製グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-サイクリンE-PEST*-His6ポリ
ペプチド/Cdk2複合体またはHis6-サイクリンE−PEST*-His6ポリペプチド/Cdk2
複合体の製法も記載する。
サイクリンE−PEST*-His6、GST-サイクリンE−PEST*-His6、His6-サイクリ
ンE−PEST*-His6;DNA、アミノ酸、オリゴヌクレオチドプライマー、融合プラ
スミド、細菌またはバキュロウィルスのいずれかを、本明細書に記載の方法およ
び製法から産生または生成されるそれらの産物として記載する。
該PEST構築体に加えて、本出願は、本明細書において時にはMSG構築体と言わ
れる種々の構築体を記載する。該MSG構築体はまた、独特のアミノ酸に因み、か
つサイクリンEタンパク質に関連する以前に公開されたアミノ酸の配列を参照し
て呼ばれまたは名付けられる。かくして、「MSG」は(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-
(SAWRHPQFGG)(配列番号7)であることができ、DNA該DNAはそれをコードする。
本明細書に記載したものは29E-395Aと称され、図9または配列番号6に示した
ポリペプチドをコードする核酸ポリマー、および実質的に同一のポリペプチドを
コードする関連または重複ポリマーであり、ここに、MSGは(MRHHHHHHK)-(29E-39
5A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)をコードするDNAである。図8または配列番号
5に示したDNA配列を含む核酸ポリマーおよびその同等体。該ポリペプチド(MRHH
HHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)をコードし、該N−末端配列(M
RHHHHHHK)(配列番号9)および該C−末端配列(SAWRHPQFGG)(配列番号11)を
コードする核酸に結合した核酸。配列表第8番(配列番号8)に示したDNA配列
を含む核酸ポリマーおよびその同等体。
種々のMSGアミノ酸および複合体を記載する。例えば、29E-395Aと称され、図
9または配列表第6番(配列番号6)に示したポリペブチド。以下のアミノ酸(M
RHHHHHHK)(配列番号9)が該N−末端に結合し、以下のアミノ酸(SAWRHPQFGG)
(配列番号11)が該C−末端に結合し、かくして(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SA
WRHPQFGG)(配列番号7)と称されるポリペプチドを供するポリペプチド。Cdk2
またはGroELと密接な会合状態にあるこれらのMSGポリペプチドのいずれか。
ある製法から産生されたMSG/GroEL複合体それ自身を記載する。該複合体が細
菌細胞からのMSG発現後に精製され、細胞溶解および精製の間にNaClが存在する
ことを特徴とするMSGとGroELとの複合体。該複合体が固定化メタルアフィニティ
ークロマトグラフィー(IMAC)または固定化ストレプトアビジンのいずれかを用
いて精製される該複合体。該複合体が固定化メタルアフィニティークロマトグラ
フィー(IMAC)を用いて精製される該複合体。該NaCl濃度が約0.5Mであるこれ
らのGroEL複合体のいずれか。
ある製法から産生されたMSG/Cdk2複合体それ自身を記載する。該複合体が細菌
細胞からのMSG発現後に産生され、引き続いての精製の間にcdk2が存在すること
を特徴とするMSGとcdk2との複合体。該複合体が固定化メタルアフィニティーク
ロマトグラフィー(IMAC)または固定化ストレプトアビジンのいずれかを用いて
精製される該複合体。まず、MSGがカラム上に固定化され、次いで、複合体が該
固定化MSGをcdk2に暴露することによって生成する該複合体。cdk2がバキュロウ
ィルス感染昆虫細胞から発現された組換えcdk2である複合体。
MSG/GroEL複合体を作成する製法を記載する。細菌細胞からMSGを発現させ、引
き続いて、細胞溶解および精製の間にNaClを存在させて、該MSGを精製すること
によるGroELとのMSGの複合体の製法。該複合体を固定化メタルアフィニティーク
ロマトグラフィー(IMAC)または固定化ストレプトアビジンのいずれかを用いて
精製することを特徴とする複合体。該NaC1濃度が約0.5Mである製法を記載する。
該複合体それ自身および該MSG/Cdk2複合体を作成する製法を記載する。細菌細
胞からMSGを発現させ、該精製の間にCdk2を存在させて、それを精製することに
よるMSGとCdk2との複合体の製法。まず、細菌細胞から発現されたMSGをカラム上
に固定化し、MSGとcdk2との複合体が該固定化したMSGをcdk2に暴露することによ
って生成する製法。該複合体を固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー
(IMAC)または固定化ストレプトアビジンのいずれかを用いて精製し、該cdk2が
バキュロウィルス感染昆虫細胞から発現された組換えcdk2であることを特徴とす
る該複合体および製法を記載する。
加えて、MSG;DNA、アミノ酸、オリゴヌクレオチドブライマー、融合プラスミ
ド、細菌およびMSGに関連するバキュロウィルスを、本明細書に記載の方法およ
び製法から産生または生成されるものとして本明細書に記載する。
発明の付随的な詳細および説明定義
本明細書において、名称、略語、記述等は、意味を区別せずに大文字または小
文字のいずれかで書くことができる。あるいは、特記する以外は、大文字と小文
字をいかなる理由においても交換可能に用いることができる。
His6は、6連続ヒスチジンアミノ酸、またはこれらの分子をコードする核
酸をいう。
M.o.iは、感染多重度である。
「天然状態」なる語は、変性していないタンパク質をいう。
本明細書中に記載されるPCRプライマーまたはオリゴヌクレオチドは、当
業者によって構築することができ、あるいはそれらを業者に特別注文することす
らできる。例えば、本明細書中で使用されるプライマーのほとんどは、本発明者
等によって初めて設計され、次いで、Genosys,Texas(Genosys,Biotechnologies
Inc.,1442 Lakefront Circle,Suite 185,The Wood lands,TX 77380)に注文・購
入される。特異的な具体例あるいは一般項目、手法または記載の説明は本発明を
例示するが、断じて限定するものではないと考慮されるべきである。一般的説明
PESTモチーフは、特異的組成を有するアミノ酸のストレッチであり、いくらか
のタンパク質中のその存在は真核細胞の急速崩壊を引き起こすことが知られてい
る。サイクリンにおけるこれらのモチーフの変異は、したがって、高レベルサイ
クリンの異常な持続をもたらすであろうし、これは腫瘍発生の一因となるであろ
う。
ヒト・サイクリンEタンパク質は、該PESTモチーフに類似した領域(アミノ酸
369−385)を含有する。この領域は真のPESTモチーフであるという証明は
、サイクリンEの機能を詳細に調べることにおいて価値があるであろう。該PEST
モチーフを欠損する複合体は、潜在的に腫瘍発生変異をシミュレートするであろ
う。
さらに、そのようなサイクリンE複合体は、また、真核細胞においてより高レ
ベルの組換えサイクリンEタンパク質を産生し、かくして、生産および精製を容
易にすることができる。
p21およびp27の比較は、cdk阻害性活性を保持する高度に保存されたN-末端領
域を示唆する。特に、p21cdk阻害性活性はアミノ酸22ないし71に対応する領
域に現れる。同様に、p27のアミノ酸28ないし79は、Cdk活性をin vitroで阻
害するのに充分である。これらの小ポリペプチドの阻害性活性は、これらKIPの
阻害性活性を小さな有機分子によって模倣することができるという見解を支持す
る。
最近の研究は、サイクリンEおよびCdk2の発現増強はHUT12細胞の腫瘍原性形質
転換において重要であろうということを示唆する。該p21およびp27細胞周期イン
ヒビターの発現増強はサイクリンE/cdk2の活性の阻害をもたらし、その結果、細
胞周期が停止する。これらの結果は、Cdk2/サイクリンEが細胞周期の間、該複合
体調節経路の律速標的であるという仮説を支持する。まとめると、これらの結果
はcdk2/サイクリンEは重要な治療標的であろうことを示唆している。
本発明はcdk2と共にヒト・サイクリンEの新規な特定の構築体および複合体に関
する。本発明によれば、GST-サイクリンE-PEST*-His6およびcdk2を含む活性タン
パク質キナーゼは、別々に精製してある成分を混合することによってか、あるい
はGST-サイクリンE-PEST*-His6およびCdk2に対する遺伝子を共発現する細胞から
共精製することによって産生し得る。これらの複合体は、互いに密接に会合して
いると言われていろ。該密接会合複合体は特定の酵素特性を有する。もう一つの
具体例において、活性タンパク質キナーゼ複合体はE.coli由来のヒト・サイクリ
ンE(MRHHHHHHK-29E-395A-SAWRHPQFGG)(配列番号7)を用いて産生することもで
きる。サイクリンE(MRHHHHHHK-29E-395A-SAWRHPQFGG)(配列番号7)をアフィニ
ティーマトリックスに固定化し、cdk2の存在下、可溶性複合体として溶出する。
別法として、ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK-29E-395A-SAWRHPQFGG)(配列番号7
)の特定の複合体はバキュロウィルス感染昆虫細胞においてcdk2と共発現し、粗
抽出物から複合体として精製することができる。
本明細書に記載したサイクリンE/cdk2複合体の特定の構築体は活性キナーゼで
あり、キナーゼ活性のインヒビターのスクリーニングに使用し得る。本発明は(
KIPとしても知られる)サイクリン依存性キナーゼインヒビターのp21/p27ファミ
リーのミメティックスを検出する方法にも関する。本発明のもう一つの具体例に
よれば、ビオチン化特定複合体サイクリンE/cdk2複合体はストレプトアビジンコ
ートSPAビーズに吸着され、放射ラベルKIP種が添加される。別法として、該特定
のサイクリンE(MRHHHHHHK-29E-395A-SAWRHPQFGG)/cdk2(配列番号7/cdk2)は、
該特定の構築体のサイクリンEのC-末端におけるストレップタグ(strep tag)
の存在のためにストレプトアビジン-コートSPAビーズに吸着され
る。放射ラベルした(p27のごとき)KIPが該SPAビーズ上でサイクリンE/cdk2特
定複合体に結合する場合、それはカウント/分(またはCPM)として記録されるシ
ンチレーションを生じる。小さな分子量KIPミメティックスの存在下、シンチレ
ーションシグナルの阻害はCPMの減少をもたらすであろう。
本発明はヒト・サイクリンEの新規な特定の構築体および複合体ならびにこれ
らの特定サイクリンE/cdk2複合体を得る方法を含む。詳しくは、本発明は、GST
-サイクリンE-PEST*-His6およびcdk2間の複合体の生産;E.coli発現のヒト・サ
イクリンE(MRHHHHHHK-(29E-395A)-SAWRHPQFGG)(配列番号7)および細菌シャペ
ロニンGroELとの間の、およびE.coli発現のヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK-(29E-
395A)-SAWRHPQFGG)(配列番号7)発現E.coliおよびバキュロウィルス感染昆虫
細胞由来の組換えcdk2との間の複合体の同定を含む。本発明は、複合体のキナー
ゼ活性のインヒビターを同定するための特定サイクリンEとCdk2との可溶性の活
性複合体を得る方法も提供する。
本発明はヒト・サイクリンEの特定の複合体の構築に関する。この開示は組換
えヒト・サイクリンEの2つの独特な形態を記載する。これらのうちの第1番目
のものは本明細書中においてGST-サイクリンE-PEST*-His6と呼ばれ、野生型遺伝
子と比較して4つの位置にてアミノ酸相違を含有し、推定「PEST」分解標的化モ
チーフの崩壊をもたらす(図4)。それはグルタチオンアフィニティークロモト
グラフィーによる精製を容易にする該N-末端上にグルタチオンS-トランスフェラ
ーゼ(GST)タグ、および固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)
による精製を容易にする該ポリペプチドのC-末端上にヘキサヒスチジン(His6
)を含む。
第2番目のサイクリンE構築体は、本明細書中においてサイクリンE(MRHHHHHHK
)-(29E-395A)−(SAWRHPQFGG)(配列番号7)と呼ばれ、29Eないし395Aのアミノ
酸配列を含有する組換えヒト・サイクリンEの切型バージョンを含有し、cdk2に
よって認識され得る。該サイクリンE構築体(29E-395A)は、固定化メタルアフィ
ニティークロマトグラフィー(IMAC)による精製を容易にするN-末端ヒスチジンタ
グ(MRHHHHHHK)(配列番号9)およびストレプトアビジンに対
する結合親和性を有する10個のアミノ酸C-末端タグ(SAWRHPQFGG)(配列番号
11)を所持する。
本発明は、そのキナーゼ活性のインヒビターの調査およびin vitroスクリーニ
ングに有用なGST-サイクリンE-PEST*-His6-cdk2またはサイクリンE(MRHHHHHHK)
-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/cdk2(配列番号7/cdk2)の可溶性の活性複合体を大
量に生成する方法に関する。本発明は、該キナーゼ阻害性タンパク質(Kip)p2
7の放射ラベル化最小ドメインを有するGST-サイクリンE-PEST*-His6-cdk2また
はサイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)/cdk2(配列番号7/cdk2)の
複合体を生成する方法およびKIPミメティックスをスクリーニングするためのこ
の検定システムの有用性にも関する。
一時的なタンパク質−タンパク質相互作用は細胞周期、細胞増殖、代謝経路お
よびシグナル変換のごとき多くの基礎的細胞プロセスを制御することが知られて
いる。そのようなタンパク質−タンパク質相互作用を妨害するであろうインヒビ
ターにつきin vitro高体積スクリーニングを行うことは比較的困難である。スト
レプトアビジンーコートシンチレーションプロキシミティー検定(SPA)に関して
、該タンパク質パートナーの一つを通常、in vitroにてビオチン化する。本発明
のcdk2/ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7/
cdk2)複合体は、10個のアミノ酸C-末端タグが存在するために、固定化スト
レプトアビジンによって直接認識され得る。換言すれば、cdk2/ヒト・サイクリ
ンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)複合体または該cdk2/G
ST-サイクリンE-PEST*-His6複合体のいずれかをビオチン化し、次いでストレプ
トアビジンによって結合し得る。これらの複合体をストレプトアビジンコートSP
Aビーズに吸着し得、放射ラベル化Kipの存在下、該複合体との該Kipの特異的相
互作用のためシンチレーションの増加が観察される。インヒビターによる相互作
用の崩壊はSPAカウントの減少をもたらすであろう。本発明は、KIPミメティック
スを同定することにおけるそのような検定の有用性にも関する。
該特定複合体サイクリン突然変異によって構築した。これらのアミノ酸は該PE
STモチーフのパターンにフィットする領域(アミノ酸369−385)内に存
在する。PESTモチーフは他のタンパク質の標的タンパク質加水分解を担うことが
知られており、サイクリンEの一部としてこの機能を供することが予測されてい
た。
本明細書に記載されたGST-サイクリンE-PEST*-His6構築体をGSTおよびHis6
親和性タグに結合させて、精製および検出を単純化することもできる。該タンパ
ク質を発現システムにおいて、例えば、バキュロウィルス昆虫細胞システムを用
い生成し得、(GSTに対する)グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーま
たは固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)のいずれかによって
精製し得る。
該タンパク質の切型形態(29E-395A)をコードする特定複合体サイクリンE遺伝
子をクローン化し、融合タンパク質としてE.coli中に産生させた。該サイクリン
E構築体(29E-395A)は、固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)
による精製を容易にするためのN-末端ヒスチジンタグ(MRHHHHHHK)(配列番号9
)およびストレプトアビジンに対する結合親和性を有する10個のアミノ酸C-末
端タグ(SAWRHPQFGG)(配列番号11)を所持する。
規定された条件下、粗E.coliライゼートから単離した該融合タンパク質(MRHH
HHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)を予期しない〜60KDタンパク
質と共精製する。この後者のタンパク質はGroEL(哺乳動物60KD熱ショックタ
ンパク質(hsp60)の細菌性相当物)と同定される。かく得られたサイクリンE調
製は可溶性であり、バキュロウィルス感染昆虫細胞から精製した組換えcdk2の存
在下でのキナーゼ検定において活性である。GroELなしで単離した融合タンパク
質(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)は不溶性である。
組換えcdk2はGroELを代替し得、可溶性、活性cdk2-ヒト・サイクリンE(MRHHHH
HHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)複合体を生成するために使用し得
る。かくして、バキュロウィルス感染昆虫細胞によって生成された組換えcdk
2は、特異的にマトリックス結合組換えヒト・サイクリンEと相互作用するよう
にされる。このマトリックス結合複合体は可溶性の形態で溶出し得、キナーゼ活
性を有し、該キナーゼ阻害性タンパク質(KIP)p27の放射ラベル化最小
ドメインに結合する。p27の最小ドメインに関しては、[Polyak et al.,Cell,(1
994)78:59-66]を参照。組換えcdk2無しで溶出したマトリックス結合ヒト・サイ
クリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)は不溶性である。
全てを含む意図はないが、本明細書に記載する本発明は以下の特徴を含む。
● 本明細書に記載の遺伝子構築体によってコードされたGST-サイクリン
E-PEST*-His6タンパク質はcdk2に結合し、cdk2を活性化し得る。
● 該GST-サイクリンE-PEST*-His6タンパク質は、哺乳動物細胞におい
て、完全長野生型サイクリンEタンパク質よりも長い半減期を有する。
● ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号
7)およびE.coli細胞からのGroELの間に会合がある。
● GroELと会合した可溶性ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(
SAWRHPQFGG)(配列番号7)の驚くべき、予期せぬ、劇的な生産が、天然条件下
、E.coli細胞溶解の間に0.5M NaClを偶発的に使用することによって、引き続い
て固定化メタルアフィニティークロマトフラフィー(IMAC)によって単離すること
によって可能となった。
● ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号
7)にGroELが会合した複合体はcdk2への結合において活性であり、キナーゼ活
性をもたらす。
● バキュロウィルス感染昆虫細胞によって産生された組換えcdk2は特異
的にマトリックス結合ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)
(配列番号7)に結合し、サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(
配列番号7)およびcdk2の可溶性複合体の溶出をもたらす。
● 該cdk2-ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(
配列番号7)複合体はキナーゼ活性検定において活性である。
● 該Cdk2-ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(
配列番号7)複合体は、10個のアミノ酸C-末端タグが存在するために、固定
化されたストレプトアビジンによって直接認識され得る。
● ストレプトアビジンに対して親和性を有する遺伝子工学により作成さ
れたC-末端タグの存在は、cdk2-サイクリンE複合体をビオチン化する必要性を除
去する。
特定構築体の構築、操作および使用の詳細な説明
本発明はヒト・サイクリンEの新規な特定バージョンに関する。本発明によれ
ば、ヒト・サイクリンEの所望する特定バージョンを組換えDNA技術によって生成
し、融合タンパク質として精製される。該融合タンパク質は、該タンパク質をコ
ードする遺伝子情報を導入してある宿主細胞によって産生される。該宿主細胞は
該融合タンパク質を該培地中に分泌することができ、あるいはそれを該細胞中に
貯蔵することができ、それによって該産物を抽出するには、該細胞を確実に破壊
しなければならない。宿主として、E.coli、およびバキュロウィルス感染昆虫
細胞および酵母を共に含むいずれの真核細胞も可能性のある宿主である。
該His6タグを用いた精製に関して、該融合タンパク質を含有する細胞抽出物
を固定化Ni2+を含有するカラムに通す。該固定化金属イオンは該タンパク質をキ
レートする。これが該カラムを通るタンパク質の動きを妨害する。該GST-サイク
リンE−PEST*-His6および該サイクリンE構築体(29E-395A)は共に末端His6タグ
を所持して、固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)による精製
を容易にする。
該GSTタグを用いた該GST-サイクリンE-PEST*-His6タンパク質の精製および固
定化に関して、細胞抽出物をグルタチオンアフィニティーカラム上に通す。加え
て、該サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)特定バ
ージョンは、ストレプトアビジンに対して結合アフィニティーを有する10個の
アミノ酸C-末端タグ(SAWRHPQFGG)(配列番号11)を含む。
規定された条件下、粗E.coliライゼートから単離したヒト組換えヒト・サイ
クリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)をGroEL(哺乳動
物60KD熱ショックタンパク質(hs60)の細菌性相当物)と同定された予期しな
い〜60KDタンパク質と共精製する。かく得られたサイクリンE調製物は可溶性
であり、バキュロウィルス感染昆虫細胞由来の組換えcdk2の存在下、キナーゼ検
定において活性である。GroEL無しで単離したヒト組換え特定サイクリンE(MRHHH
HHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)は不溶性である。
本発明のもう一つの具体例において、組換えcdk2はGroELを代替し得、可溶性
の活性cdk2-組換えヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(
配列番号7)複合体を生成するために使用し得る。この具体例を適用すれば、バ
キュロウィルス感染昆虫細胞によって産生された組換えcdk2を特異的にマトリッ
クス結合組換えヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列
番号7)と相互作用するようにできる。このマトリックス結合複合体は可溶性の
形態で溶出され得、これはサイクリン依存性活性化キナーゼ(CAK)の存在下で刺
激し得るキナーゼ活性を有する。組換えcdk2無しで溶出したマトリックス結
合ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)は不
溶性である。
GroELの解離に好都合の天然条件(すなわち、細胞溶解およびIMAC精製の間、0
.5M NaClが存在しない)は切型サイクリンEを含有する不溶性融合タンパク質を
生成する。従って、細胞溶解および固定化メタルアフィニティークロマトグラフ
ィー(IMAC)による単離の間、天然条件下、0.5M NaClの偶発的な使用が、NaClが
無い条件と比較して、GroELと会合した可溶性ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(2
9E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)を含有する融合タンパク質の驚くべき、
予期せぬ生成の増大をもたらす。該N-末端タグ(MRHHHHHK)(配列番号9)は該融
合タンパク質の固定化を可能にする。この工程はGroELとの共精製につき必須で
あり、今度は、添加cdk2の存在下におけるキナーゼ活性を研究するのに有用な可
溶性複合体の回収を可能にする。同様に、cdk2タンパク質を使用して、固定
化サイクリンEと相互作用し得、このことがキナーゼとして活性な可溶性複合体
の回収を可能にする。
本発明のもう一つの具体例において、該C-末端ストレップタグSAWRHPQFGGを使
用して、ストレプトアビジンコートSPAビーズへの該複合体の固定化を容易にす
る。このことが、SPAベースのスクリーニング検定における使用に先立ってビオ
チン化することによって該融合タンパク質を化学的に修飾する必要を除去する。
本発明によれば、天然条件下、E.coli中で発現したサイクリンE特定構築体、(
MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)は、可溶化のためにパート
ナータンパク質を要求する。本発明者らは、今やこれらの2つの起源を該E.coli
宿主由来のGroELと同定し、組換えcdk2をバキュロウィルス感染昆虫細胞から精
製した。
本発明はcdk2/GST-サイクリンE-PEST*-His6およびcdk2/サイクリンE(MRHHHHH
HK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)の機能性複合体を提供し、これら
は抗‐cdk2/サイクリンEスクリーニングの目的に適当である。本発明の方法は調
節(特定サイクリンE)および触媒性サブユニット(cdk2)の両方のサブユニット
を含有する活性複合体を与える。
特定GST-サイクリンE-PEST*-His6構築体の説明
図1および2は、それぞれ、GST-サイクリンE-PEST*-His6に対するDNAおよび
アミノ酸配列を示す。図2は、(推定PEST領域を含む)C-末端にて該GST-サイ
クリンE-PEST*-His6の野生型サイクリンEとの比較を示す。この構築体の概要図
(A)を下に示す。
概要図A
以下のヌクレオチド、RH113を該サイクリンE遺伝子のPCR変異誘発に関する3
’プライマーとして使用した:
このプライマーはヒト・サイクリンEのDNA配列において以下の点変化を生じる:
C1139→T、C1141→G、C1144→G、およびA1150→Go(
この番号付けは[Koff et al.,Cell 66:1217-1228]における図2に準じる。)そ
れは3’ないしC1224の全ヌクレオチドも変異させる。これらの変化はアミ
ノ酸配列に以下の変異をもたらす:T380→I、P381→A、P382→A
、S384→G、および最もC‐末端側の6つのアミノ酸(390〜395)の
6つのヒスチジンとの置換。該プライマーはBglIIサイトも含んで、サブクロ
ーン化を容易にする。
一旦、上記の3’プライマーを選択すれば、いかなる適当な5’プライマーも
使用することができる。該5’プライマーはクローニングサイト、すなわち、切
断またはライゲートサイトを有するべきであり、それはサイクリンEと同一の配
列の一部を有するべきである。以下のオリゴヌクレオチド、KW133を該サイクリ
ンE遺伝子のPCR変異誘発に関する5’プライマーとして使用した:
このプライマーは該サイクリンE遺伝子のコドンの丁度5’側の非コードDNA配
列をBglIIサイトに変化させて、サブクローン化を容易にする。該プライマー
の下線部分は該クローニングサイトを示し、非下線部分はサイクリンEの5’端
と同一である。
次いで、これらのオリゴヌクレオチドをPCR反応に使用し、得られたPCR産物(
または、特定サイクリンEのPCR産物)を、次いで、引き続いての細菌性発現
きいずれかの融合プラスミドにサブクローン化することができるか、あるいはそ
れらを増幅およびバキュロウィルスベクターにサブクローン化するためのテンプ
レートとして使用することができる。
pVLl392のごとき適当なバキュロウィルス導入ベクターにサブクローン化するた
めに、該PCRプライマーを使用する場合、それらは制限サイトおよび付随するヌ
クレオチドを組込んで、該ベクターのGST融合タンパク質を持つオープンリーデ
ィングフレームを保持すべきである。もし、GST融合タンパク質を持つオープン
リーディングフレームが保持されるのであれば、増幅およびサブクローン化に関
していかなる適当なPCRプライマーの組も容認されるであろう。
組換えバキュロウィルスをバキュロウィルス宿主細胞、普通には昆虫細胞の共
トランスフェクションによって生成する。いくつかの適当な細胞系のうちの一つ
はスポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda;Sf)であり、本明細書
において使用されたSf細胞系の一つはSf9であった。上記の導入プラスミド構築
体を持つSf細胞を、マニュアルに準じてBaculoGoldクリップルドバキュロウィル
スDNA(PharMingen)と共に使用した。いずれの適当なバキュロウィルスもBacul
oGoldの代りに使用し得る。得られたウィルスを3回連続のプラーク精製検定か
らの単一プラークを増殖させることによって精製する。
該GST-サイクリンE−PEST*-His6構築体発現に加えて、cdk2も発現させて、該
GST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2の特定複合体を生成すべきである。cdk2を
発現するバキュロウィルスは文献に準じてクローン化し、増殖させることができ
、当業者に知られているであろう。Sf9およびバキュロウィルスの増殖はSummer
s and Smithの手法に従うことができる。
該GST-サイクリンE-PEST*-His6およびcdk2-HAバキュロウィルスの共発現を、
Sf9またはハイファイブ(High Five)細胞(Trichoplusia niから誘導された
BTI-TN-5B1-4)のいずれかにおいて行うことができる。10%ウシ胎児血清、1
00単位/mlナトリウムペニシリンGおよび100ug/ml硫酸ストレプトマイシ
ンを補給したグレース培地(Grace's medium)(GIBCO/BRL)中、28℃にて攪
拌培養で、SF9細胞を106細胞/mlまで増殖させる。InsectExpress培地(Bio Wh
ittaker)を含有する振とうフラスコ中、150rpmにて、ハイファイブ細胞
を106細胞/mlまで増殖させる。細胞を、20の感染多重度にて特定サイ
クリンEバキュロウィルスと共に、10の感染多重度にてcdk2バキュロウィルス
と共に共感染させる。細胞を感染の48〜68時間後に遠心にて収穫する。
グルタチオンアフィニティークロマトグラフィーによる
GST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2の精製
細胞ペレットをリン酸バッファー塩水(PBS)で洗浄し、初期に感染させた1
07細胞毎に1mlの低張溶解バッファー(10mM Hepes,pH7.4/10mM NaCl/1mM E
DTA/0.2ug/mlロイペプシン/0.2ug/mlペプスタチン/0.2ug/mlアプロチニン/0.2mM
AEBSF)中に再懸濁する。細胞を氷上で一時間溶解し、次いで、NaClを添加し、
最終濃度150mMにする。加えて、細胞に氷上で2分間超音波照射する。ライゼ
ートを高速遠心によって透明化する。10容量のライゼートを、1パック
4℃にて1時間混合する。該セファロースを1500rpm、8分間の遠心にて
ペレット化し、10pvのPBSプラス0.2%ノニデット(Nonidet)P-40の添加に
よって洗浄し、10分間振動させた。
該セファロースを1500rpmにて8分間ペレット化し、さらに2回繰り返
して洗浄した。最後の洗浄後、該セファロースを洗浄剤無しのPBS中に再懸濁し
、クロマトグラフィーカラムに負荷し、該PBSを排出した。結合した物質を溶出
するために、グルタチオンセファロース4Bの1mlpv当たり3mlの溶出バ
ッファー(50mMトリス-HCl中15mM還元グルタチオン、pH8)を該カラムに添加し
、1mlずつの画分を収集する。各画分のアリコートをSDS-PAGEおよびクーマシ
ーまたは銀染色によって分析する。
加えて、サンプルをSDS‐PAGEおよび抗‐サイクリンEまたは抗‐cdk2抗体(Up
state Biotechnology Inc.)を用いたウェスターン解析に付す。免疫反応性サイ
クリン/cdk2-HA複合体を含有する画分をプールする。安定化バッファー(10
×:50%グリセロール/10mM DTT/5mM AEBSF/50mM NaF/5mM EGTA)をプールした
物質に1×の最終濃度まで添加し、1mlのアリコートをドライアイス上で凍結
し-80℃にて貯蔵する。
MSG構築体としても知られている
特定サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)
(配列番号7)構築体の説明
本明細書は、特定サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番
号7)構築体を記載または引用する省略法として大文字または小文字のいずれか
で文字MSGを使用することができる。
図8および9は、それぞれ、E.coli中で発現した特定サイクリンEのDNA配列
およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列としてのこの構築体の完全概要図を下
に示す。この概要図(B)は、配列番号7として完全に供されているものの短縮
形である。
概要図B 5’プライマーはEcoRl制限サイトをコードする配列ならびにGlu(29)から出
発するヒト・サイクリンEの5’端をコードする領域を含有していた。
3’プライマーはヒト・サイクリンEの3’端におけるHindIIIサイトをコード
するアンチセンス配列およびストレプトアビジンタグを含有していた。
所望のDNAフラグメントをヒト・サイクリンE遺伝子由来のPCRによって得、Eco
RlおよびHindIIIで制限する。次いで、このフラグメントをEcoRl/HindIIIカット
したpKK223-3に挿入し、E.coli株JM-109に形質転換する。コロニーをアンピシ
リン耐性につき選択し、制限酵素消化および発現によって解析する。クローンS-
18,1を特定ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号
7)の発現に対して選択する。該プラスミドDNAの配列決定を該構築体の確認に
使用した。
0.5M NaClの存在下でIMACによって精製したE.coli発現の特定ヒト・サイクリ
ンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)の研究は、GroEL(E.
coli 60kDaシャペロニン)がヒト・サイクリンEのこの切型バージョン(図1
0)と共精製することを示す。天然条件下、細胞溶解および固定化メタルアフィ
ニティークロマトグラフィー(IMAC)による単離の間の偶発的な0.5M NaClの使
用は、GroELと会合した溶解性ヒト・サイクリンE(29E-395A)を含有する融合タン
パク質の予期せぬ生成をもたらす。
これらのタンパク質タンパク質複合体は一つのタンパク質がもう一つのタンパ
ク質と「密接な会合」をしている会合体であるといえるであろう。しばしば、個
々のタンパク質は、他のタンパク質と密接な会合をしていなければ触媒効果を有
しない。このことはGST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2複合体に関して、本明細
書中の始めの方に記載してあり、ここに、それは該複合体または該会合触媒活性
を与える2つのタンパク質の密接な会合体である。同様に、ここでは
(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)ポリマーにつき、
(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)ポリマーがGroELまたはcd
k2と密接な会合している場合、この会合体はその特定の特性を有し、後者の場
合、該特定の特性は溶解性と結合した良好な活性である。本明細書において、会
合または密接な会合は複合体と同義とみなす。
特定ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQPGG)(配列番号7)
のIMAC精製をNaClの不存在下で行う場合には、GroELとサイクリンEとの相互作用
は無い(図11)。しかしながら、GroELが解離に好都合の天然条件、すなわち、
細胞溶解およびIMAC精製の間のNaClの不存在は、GroEL無しの特定サイクリンEを
含有する不溶性タンパク質を生成する。これらの結果により、本発明者らは、可
溶化パートナーが好ましく、この点でGroELがE.coli中で産生された特定複合体
サイクリンEタンパク質の可溶化において重要であると結論した。
特定複合体サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(別名MSG)
または(配列番号7)の固定化および
可溶性MSG/GroELまたは可溶性MSG/Cdk2の単離
本明細書に、特定サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番
号7)を可溶化することにおいて、GraoELを代替するcdk2の使用を説明する。
N-末端タグ(MRHHHHHHK)(配列番号9)は、近傍にヒスチジンが存在するため
に固定化ニッケル上への該タンパク質の固定化を可能にする。この工程はGroEL
との共精製につき必須であり、今度は、cdk2の存在下におけるキナーゼ活性を研
究するのに有用な可溶性複合体の回収を可能にする。GroELとサイクリンEとの相
互作用は0.5M NaClの不存在により妨害され、これがGroEL無しの特定サイクリン
E複合体の固定化を可能にする。
バキュロウィルス感染昆虫細胞由来の精製組換えcdk2を、E.coli中に産生し
た固定化特定ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番
号7)を含有するカラムを通す場合、複合体が該カラム上に形成される。この複
合体をイミダゾールを用いて溶出し、得られたサイクリンE/cdk2複合体は可溶性
である(図12)。同様の条件下、cdk2の不存在下で溶出した特定サイクリンEは
不溶性である。従って、cdk2タンパク質も固定化サイクリンEと相互作用するた
めに使用でき、これがキナーゼとして活性な溶解性複合体の回収を可能にする。
cdk2/ヒト・サイクリンE(MRHHHHHHK-29E-395A-SAWRHPQFGG)
(配列番号7)複合体のストレプトアビジンへの結合
図13は、固定化ストレプトアビジン上のアフィニティークロマトグラフィー
による該複合体の精製を示す。示すごとく、該複合体は該カラムに結合し、精製
し得る。該精製複合体をそのキナーゼ活性につきスクリーニングするために使用
し得る。もう一つの具体例において、該複合体をストレプトアビジンに結合する
ことを要求する検定、例えば、ストレプトアビジンコートビーズに基づくシンチ
レーションプロキシミティー検定(SPA)に使用し得る。
特定サイクリンE-cdk2複合体のキナーゼ活性
興味深いことに、GST-サイクリンE-PEST*−His6/cdk2複合体またはサイクリ
ンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)/cdk2複合体のいずれ
もキナーゼ活性につきサイクリン依存性活性化キナーゼ(CAK)の添加を要求しな
い(図5および14)。これらの結果は、GST-サイクリンE-PEST*−His6/cdk2お
よびサイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)/cdk2複
合体が共に活性であることを示す。サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRH
PQFGG)(配列番号7)/cdk2複合体のキナーゼ活性は、サイクリン依存性活性化
キナーゼ(CAK)の存在によってさらに刺激し得る。
加えて、C-末端ストレップタグを固定化ストレプトアビジンへの結合および溶
解性(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)/cdk2のさらなる精製
のために使用することもできる。これも重要である、なぜならば、それは該複合
体がストレプトアビジンへの結合を要求する検定、例えば、ストレプトアビジン
コートビーズに基づくシンチレーションプロキシミティー検定(SPA)において使
用されることを可能にするからである。
特定サイクリンE/cdk2複合体を用いたキナーゼインヒビタータンパク質(KIP)
との相互作用を検出するための検定
本発明は、キナーゼインヒビタータンパク質(KIP)のp21/p27ファミリーのメン
バーとのそれらの会合を検出するシンチレーションプロキシミティー検定におけ
るGST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2複合体またはサイクリンE(MRHHHHHHK)-(29
E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)/cdk2複合体のいずれかの使用を含む。複
合体をビオチン化し、次いで、ストレプトアビジンコートSPAビーズに吸着させ
る。次いで、放射能ラベルKIP分子を添加し、特定サイクリンE/cdk2-SPAビーズ
複合体との会合がシンチレーションを誘導する。ビオチン化の代替として、特異
的抗体を使用して、該特定サイクリンE/cdk2複合体をSPAビーズに結合させるこ
ともできる。ビオチン化のもう一つの代替として、サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29
E-395A)-(SAWRHPQFGG)(配列番号7)/cdk2上のストレップタグをストレプトア
ビジンコートSPAビーズと組み合わせて使用することもできる。Kipをスクリーニ
ングするためのSPA-ベースKIP検定に対するストレップタグアプローチの概要図
を図15に示す。該ストレップタグをヒト・サイクリンEの切型バージョン(29E-
395A)のC-末端に作成し、次いで、それを組換えcdk2と複合化する。この複合体
は、ヒト・サイクリンEのC-末端におけるストレップタグの存在のためにストレ
プトアビジンコートSPAビーズに結合する。図15に示された実験につき、E.co
li中にてユビキチン融合体として発現されたキナーゼ阻害性タンパク質(Kip)p27
の最小ドメイン(アミノ酸28ないし81)を使用し、”ミニp27”と呼ぶ。
用量-反応実験(図16)は、該特定サイクリンE(MRHHHHHHK)-(29E-395A)-(SA
WRHPQFGG)(配列番号7)/cdk2複合体が約200nMの該複合体にてミニp27(200nM)で
飽和に近づくことを示した。この検定の特性は、冷ミニp27の存在下、[3H]ラベ
ル化ミニp27の置換によって示される。該ラベル化タンパク質のほぼ完全な置換
が約2.0uMの競合するミニp27にて観察される。同様の結果がビオチンラベル化し
たGST-サイクリンE-PEST*-His6/cdk2複合体を用いて得られた(図6)。組換えcd
k2単独、またはSPAビーズに吸着することができないヒト・サイクリンE/cdk2複
合体を陰性対象として使用し、SPAカウントを示さない。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 5/10 C12N 7/00
7/00 C12P 21/02 C
C12P 21/02 C12N 5/00 A
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT
,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,
CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F
I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE
,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,
LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M
X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,
UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 ランク,ケネス・ビー
アメリカ合衆国49071ミシガン州マッタワ
ン、ロビンズウェイ22193番
(72)発明者 エバンズ,デイビッド・ビー
アメリカ合衆国49002ミシガン州ポーテイ
ジ、ヘレン・ストリート2028番