【発明の詳細な説明】
光学的に純粋な(−)−フォテムスチンを用いる 新生物を治療するための方法および組成物 発明の分野
本発明は(−)−フォテムスチンを含む薬学的組成物に関する。別の側面では
、本発明はリンパ腫、黒色腫、神経膠腫および他の脳腫瘍、肺癌、肝臓転移およ
び血液および胃腸管の悪性疾患などの悪性疾患の治療に関する。
発明の背景
ケミカル・アブストラクトの標準的命名法では、フォテムスチンは〔1−〔〔
〔(2−クロロエチル)−ニトロソアミノ〕カルボニル〕アミノ〕エチルホスホ
ン酸ジエチルエステルである。フォテムスチンは1−〔N−(2−クロロエチル
)−N−ニトロソウレイド〕エチルホスホン酸ジエチルエステルとしておよびジ
エチル−1−〔3−(2−クロロエチル)−3−ニトロソウレイド〕エチルホス
ホネートとしても知られている。初期の文献はフォテムスチンをS10036と
呼んでいる。フォテムスチンのラセミ体の調製は米国特許第4,567,169
号に記述されている。この特許は「この発明はこの化合物の光学異性体にも関す
る、、、、」と述べているが、そのような異性体は開示されていない。
フォテムスチンのラセミ体は悪性疾患の黒色腫、一次脳腫瘍や転移脳腫瘍、結
腸直腸癌、軟部組織や骨の肉腫および血液学的悪性疾患を治療するために臨床的
に使用されてきた。〔カセットら,J.Nat'l Cancer Inst.80,1407-1408(1988
)、カセットら,Cancer Res.47,6782-6785(1987)、ジャクイラットら,Proc.
Am.Assoc.Cancer Res. 30, A1088(1989)、ルージャーら,Eur.J.Cancer 2
9A(2),288-9(1993)、カーブラットら,Eur.J.Cancer 29A(1),143-144(19
93)を参照]。これらの臨床研究により、フォテムスチンラセミ体はこれらの癌
を治療するのに臨床的に有用であるが、その使用には骨髄における遅延性の、蓄
積性の毒性が伴うことが明らかにされている。投与量を制限するこの毒性は通常
好中球減少症、白血球減少症および血小板減少症に至る骨髄抑制である。腎臓、
肺臓および肝臓の毒性が観察される頻度はより少ない。フォテムスチンラセミ体
は突然変異原性であると信じられてもいる〔アシュビら,Mutation Res.286, 1
01-109(1993)を参照]。一部のケースでは吐き気が問題である。
フォテムスチンラセミ体の長所を持つが上に列挙した副作用を示さない化合物
を発見することが特に望まれている。
発明の概要
いまや、フォテムスチンの光学的に純粋な(−)異性体が悪性疾患の治療に有
効な薬剤であることが発見された。フォテムスチンの光学的に純粋な(−)異性
体はこの有効な治療を提供する一方、フォテムスチンラセミ体の投与に関連する
一つ以上の害作用を実質的
に減少させる。これらの害作用には好中球減少症、白血球減少症および血小板減
少症、腎毒性、肺毒性および肝毒性、突然変異原性、並びに吐き気などが含まれ
るがこれらに限定されない。
一つの側面では、本発明は悪性疾患を患う哺乳類にその(+)立体異性体を実
質的に含まない(−)−フォテムスチンの治療上有効量を投与することを含む、
悪性疾患治療法に関する。
別の側面では、本発明はその(+)立体異性体を実質的に含まない(−)−フ
ォテムスチン、および薬学的に許容され得る担体を含んで成る薬学的組成物に関
する。
発明の詳細な説明
本発明の組成物および方法に使用される活性な化合物はフォテムスチンの左旋
性または(−)の光学的異性体である。この(−)異性体の絶対立体化学は現在
知られていない。式Iは絶対立体化学が確定されていない1個の鏡像異性体を示
し、ここに提示するものを恣意的にS*とする。
鏡像異性体として純粋なフォテムスチンのグラフ的な表示はメール J.Chem.
Ed.62,114-120(1985)に記載されている。このよう
に、くさび形外観および破線を含む表示は、不確定な絶対立体配置を持つが鏡像
異性体的に純粋な化合物であることを示す。
本発明はその(+)立体異性体を実質的に含まない(−)−フォテムスチンの
治療上有効な量の投与を含んで成る悪性疾患を治療する方法を包含する。
本明細書で使用されるとき、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という
用語は、組成物が少なくとも90重量%の(−)−フォテムスチンを含みそして
10重量%またはそれ以下の(+)フォテムスチンを含むことを意味する。より
好ましい態様では、「(+)異性体を実質的に含まない」という用語は、組成物
が少なくとも99重量%の(−)−フォテムスチンを含みそして1重量%または
それ以下の(+)フォテムスチンを含むことを意味する。最も好ましい態様では
、「(+)立体異性体を実質的に含まない」という用語は、本明細書で使用され
るとき、組成物が99重量%より多くの(−)−フォテムスチンを含むことを意
味する。これらのパーセンテージは組成物中のフォテムスチンの総量に基づいて
いる。「フォテムスチンの実質的に光学的に純粋な(−)異性体」または「実質
的に光学的に純粋な(−)−フォテムスチン」および「フォテムスチンの光学的
に純粋な(−)異性体」および「光学的に純粋な(−)−フォテムスチン」とい
う用語も上述の量により包含される。
本明細書で使用するとき、「悪性疾患を治療する」という用語はこのような状
態を治療し、緩和し、または一時的に和らげ、癌組織の成長を抑制し、そしてこ
のようにして生存時間を増加させること
を意味する。
「治療上有効な量」という用語は、悪性疾患を治療するのに十分な(−)−フ
ォテムスチンの量を指す。(−)−フォテムスチンが活性な悪性疾患には、リン
パ腫、黒色腫、神経膠腫および他の脳腫瘍、肺癌、肝転移および血液や胃腸管の
悪性疾患が含まれる。
本発明の方法はフォテムスチンラセミ体の投与と関連する害作用の同時負担を
減少させる。「害作用(adverse effects)」という用語には、好中球減少症、白
血球減少症および血小板減少症、腎毒性、肺毒性および肝毒性、突然変異原性、
および吐き気などが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の方法では、治療上有効な量を1回で投与することも、また治療上有効
な量の一部、すなわち、幾つかに分けた投与量の一つを投与することもできる。
同様に、本発明の薬学的組成物は(−)−フォテムスチンの治療上有効量を含む
ことも、あるいは治療の有効性を確保するため個々の組成物の幾つかを投与する
ことが必要であることもある。
治療上有効な量を構成する(−)−フォテムスチンの量は治療対象である状態
の重篤度およびその性質によりそして投与経路により変動する。投与サイズおよ
び投与頻度は患者個体の年齢、体重および反応によっても変動することがある。
一般に、本明細書に記載された状態に対する(−)−フォテムスチンの1回投与
の投与量範囲は、静脈内または動脈内注入により約20mg/kgから約150
mg/kgである。1回投与量範囲は約20mg/m2から約80mg/m2であ
ることが好ましい。一般に、投与は数週間の期間(例えば、約2から約8週間)
周期的に(例えば、毎週)行われる。
患者を管理する場合に、治療は低投与量で、おそらく約20mg/m2から約
40mg/m2で開始し、そして患者の全体的反応に依存して約40mg/m2ま
でまたはそれよりも高くまで増加させる。65歳を越えた患者および腎機能や肝
機能に障害を持つ患者は低投与量で投与を開始しそして個々の反応および血液レ
ベルに基づいて滴定されることがさらに推奨される。当分野で熟練した者には明
らかであるように、ケースによっては、これらの範囲を越えた投与量を用いるこ
とが必要になることもある。さらに、臨床医や治療医は個々の患者の反応と関連
させて治療を如何にして何時中断し、調節し、または終了すべきかを知っている
。「癌を抑制するのに十分であるが該害作用を惹起するには不十分な量」という
用語は上述の投与量および投与頻度計画により包含される。
(−)−フォテムスチンの有効投与量を患者に与えるために適当な投与経路が
採用されるが、非経口(特に静脈内および動脈内)の投与法が好ましい。投与剤
形としては、分散剤、懸濁液、溶液、および同種のものが挙げられる。
本発明の薬学的組成物は、活性成分として(−)−フォテムスチンを含み、そ
して薬学的に許容され得る担体、および必要に応じて他のアジュバント、賦形剤
、または治療用の成分を含む。非経口投
与に適する組成物は必要に応じ通常のアジュバントおよび賦形剤を含む水溶液と
して提供される。このような組成物は薬学の分野で熟練した者に良く知られた方
法で調製される。すべての方法は一つ以上の必要な成分から成る活性成分と担体
とを混せ合わせる工程を含んでいる。
フォテムスチンのラセミ混合物の化学的合成は、上に引用した米国特許第4,
567,169号に記載されている。次いで、フォテムスチンの(−)異性体を
キラル媒体上のクロマトグラフィーにより分割することができる。また、(−)
−フォテムスチンはキラル酸のジアステレオマーエステルの分割結晶化またはク
ロマトグラフィーを用いるフォテムスチンのアミン前駆体の鏡像異性体の分割に
より得ることもできる。当分野で熟練した者に知られた分割の他の標準的方法も
使用することができる。(例えば、E.L.エリール,炭素化合物の立体化学,マ
ックグローヒル(1962)、およびウイルソンおよびロッホミュラー,「分割
剤の表」、Journal of Chromatography 113, 283-302(1975)を参照)。
光学的に純粋なフォテムスチンとフォテムスチンラセミ体の抗新生物剤として
の比活性、比効力および比特異性はイン・ビトロおよびイン・ビボで薬学的研究
により決定することができる。
これらの化合物は国立癌研究所(U.S.A.)により確立されそしてR.I.ゲランら
(Cancer Chemotherapy Reports,第III,3(2)巻,1-87(1972))により出版された
プロトコールに従って腹膜腔内または筋肉内経路で接種された腫瘍細胞を持つマ
ウスの寿命を増加させる
これらの能力についてテストする。
造血毒性は、本発明の化合物の1回投与または数回投与で治療された動物につ
いて、末梢血細胞、骨髄、および骨髄中に含まれる幹細胞の計測により評価する
(ティルおよびマックロッホ,Radiation Res. 14, 213(1961))。最低の細胞濃度
は治療の開始後3日で記録される。この減少の程度を参照として使用するN−N
’−ビス(2−クロロエチル)−N−ニトロソウレア(「BCNU」)の1回投
与で処置した後に測定し〔タングおよびアイゼンブラント,Arch.Pharm. 314,
910(1981)]、そしてフォテムスチンラセミ体と(+)フォテムスチン投与後の
細胞計測と比較する。
肝毒性はロブリュースキーの方法に従って評価する。この方法はフォテムスチ
ンのラセミ体、(+)フォテムスチンおよび(−)フォテムスチンの投与量の腹
膜腔内注射で治療したロング・エバンスラットから得た血清中のピルビン酸グル
タミン酸トランスアミナーゼ活性を測定することにより行う。
突然変異原性はタピエロら(Anticancer Research 9, 1617-1622(1989)]の方
法に従い下記のように評価する。
ヒト肺癌A427およびA549と結腸癌BEおよびHT29はコーンらによ
り記述されたように入手し維持する[(Cancer Chemother.Pharmacol.19,291-
295(1987)およびCancer Res.48,3622-3625(1988)]。ネズミ白血病細胞株P3
88はNCIから入手する。細胞は10%ウシ胎児血清、10-5Mの2−メルカ
プトエタノ
ールおよび標準的抗生物質で補強したRPMI1640培地中で生育し維持する
。すべての培養は5%CO2の加湿雰囲気下で38°で生育させる。細胞の成長
阻害研究は薬物の継続的存在下における指数培養について行う。得られる細胞数
をクールター・カウンター・モデルZBI(クールター・エレクトロニクス、ハ
イアリーア、FL)で測定する。
フォテムスチンのラセミ体、(+)フォテムスチンおよび(−)フォテムスチ
ンは個々に使用直前にエタノールに溶解する。便利な標準的貯蔵溶液は35mM
である。放射性同位元素標識化およびX線照射のために、2.5×105P38
8細胞/mlを0.05μCi/mlの(14C)−チミジンか0.5μCi/m
lの(3H)−チミジンを含む培地中で生育させる。20時間標識化した後、培
地を除去し、細胞を冷PBSで洗浄する。10μMの非放射活性チミジンを用い
て4時間標準的チェイス処理を行う。トリチル化細胞を氷上で内部標準として3
00ラドのX線照射に曝す。アルカリ溶出手順はコーンら〔「アルカリ溶出によ
る鎖切断および架橋の測定」、フリーベルグおよびハナウオルト編、「DNA補
修:研究手順の実験室マニュアル、ニューヨーク、デッカー、1:1981、3
79−401頁〕により記述されている。完全生育培地中の薬物の前インキュベ
ーションと細胞毒活性の喪失との関係を決定するため、薬物を10%ウシ胎児血
清を含む培地中に再懸濁しそして1〜500分間37°でインキュベートする。
P388細胞は適当な薬物濃度に達するまで希釈した培地中に再懸濁する。5%
CO2で3日インキュベーションした後、細胞を計測する。
フォテムスチンのラセミ体、(+)フォテムスチンおよび(−)フォテムスチ
ンに接触させられたP388細胞中での一本鎖切断の誘発を比較する。(14C)
−チミジンで20時間標識化された細胞(5×105)を種々の濃度のフォテム
スチンで2時間処理し、そして同数の(3H)−チミジン標識化参照細胞と混合
する。これらの細胞を2.0μm穴サイズのポリカーボネートフィルター上で集
め、プロテイナーゼKの存在下に2%SDS/0.025MのNa4EDTA(
pH9.7)の5mlで溶解する。溶出はコーンにより記述されたようにpH1
2.1で暗所で行う。DNA一本鎖切断の頻度は一次溶出動力学に基づいて計算
される。
DNA−タンパク架橋の誘発は、フォテムスチンのラセミ体、(+)フォテム
スチンまたは(−)フォテムスチンの存在下に種々の時間処理されたP388細
胞中で検討する。(14C)−チミジン−標識化薬物で処理された細胞を600ラ
ドのX線で照射し、(3H)−チミジン標識化参照細胞を300ラドのX線で照
射する。これらの細胞を2.0μm穴サイズのポリカーボネートフィルター上で
集め、プロテイナーゼKの非存在下にpH9.7で溶解する。溶出は上記と同様
である。
等価のDNA損傷を惹起するフォテムスチンラセミ体およびその鏡像異性体の
濃度に接触させた後種々の時間にP388細胞中のDNA−本鎖切断の除去も検
討することができる。最初に2時間の薬物処理に曝された(14C)−チミジン−
標識化細胞を洗浄しそして薬物を含まない培地に再懸濁する。37°で時間を換
えてインキュベートした後、これらの細胞を同数の(3H)−チミジン標識化参
照細胞と混ぜ、ポリカーボネートフィルターの上で集めそしてアルカリ性溶出に
より分析する。
前記のテストは比活性、比効力および比選択性の評価を与えてくれる。白イタチにおける嘔吐
。 実験は成熟雄白イタチで行う。この動物をまずステン
レス−スチール・ケーブル、このケーブルは今度はケージの上部の真鍮製の回り
継ぎ手に結合している、に連結したナイロンジャケットを着るのに適応させる。
馬具−つなぎ輪(tether-harness)に馴れさせた後、各動物のその右側の頸静脈
に外科的にカテーテルを埋め込む。このカテーテルは毎日ヘパリン化食塩水で洗
い流す。薬物研究はこの外科手順の1週間後に行う。くさりに繋がれた動物はそ
れぞれ別の部屋に入れる。
テスト化合物のそれぞれの投与量を評価するために8から11頭の動物が用い
られる。個々の動物の重量を毎週測定しそし48時間よりも大きな間隔で、フォ
テムスチンラセミ体、(+)−フォテムスチンまたは(−)−フォテムスチンの
静注または経口の1回投与を無差別に行う。少なくとも3投与レベルで各テスト
化合物の評価を行う。
テスト物質の投与後30分間、個々の動物を観察する。排除、吐き出しおよび
脱糞のすべてについてその頻度および潜伏を記録する。用量−反応曲線から得ら
れるデータをχ−二乗分析により統計的有意性をテストする。ED50値を各化合
物に対して決定する。この
テストは吐き気(nausea and vomiting)に対する相対的負担の評価を与える。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
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