JP2000288082A - 精子洗浄濃縮用チューブおよび精子洗浄濃縮方法 - Google Patents
精子洗浄濃縮用チューブおよび精子洗浄濃縮方法Info
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Abstract
精子洗浄濃縮方法および精子洗浄濃縮用チューブを提供
する。 【解決手段】 本発明の精子洗浄濃縮用チューブは、開
放端11と細経化された底部12を有するガラス製チュ
ーブ1と、このチューブ1の開放端11に装着されるゴ
ム袋2を含んでなる。ここで、細経底部12には折切を
容易にするための脆弱部13を設けてもよい。
Description
精子を洗浄し濃縮して、医学的生殖介助(assisted rep
roduction technology :ART)に資するための精子
洗浄濃縮用チューブ、およびそれを用いた精子洗浄濃縮
方法に関する。
0%は特発性造精機能障害による精液所見不良症例であ
る。男性不妊に対する治療法は、外科的療法、造精機能
賦活を目的とした薬物療法、ARTに大別される。精索
静脈瘤における高位結紮術、精路通過障害における精管
−精管吻合術などの外科的療法は、泌尿器科領域におい
て成績が得られている。しかし、これらの症例の大半を
占める精液所見不良症例では、薬物療法の有効率は高い
とは言えず、治療に苦慮している。そのため、男性不妊
に対する治療にはARTが応用されている。ARTは広
義には配偶子の形成、受精、着床、妊娠維持を医学的に
補助して不妊治療を行うことである。実際には子宮腔内
人工授精(intrauterin insemination :IUI)から体
外受精または胚移植(in vitro fertlization embryo t
ransfer : IVF−ET)、さらには顕微受精(micro-
insemination)に至る人工的な授精による不妊治療を指
す場合が多い。
内、卵管と雌性生殖路を遡上する過程においてその数を
減じ、最終的に受精の場である卵管膨大部に到達するの
は、10匹程度と考えられている。精液所見の悪化は受
精の場に到達する精子数の減少である。このためART
の研究と治療は2つの方向を目指している。1つはでき
るだけ少ない精子数で受精を可能とするため、雌性生殖
路における精子遡上過程をバイパスして精子を卵子のよ
り近くに送り届けようとする授精法の改良である。IU
Iは子宮頚管をバイパスし、IVF−ETでは卵を体外
に取り出してインビトロで受精させ、さらに卵細胞質精
子注入(intra-cytoplasma sperm injection:ICS
I)では、卵子の細胞質に一匹の精子を穿刺することに
より受精をもバイパスしてしまう。他法では、射精精液
を洗浄、濃縮してより多くの精子を授精に供しようとす
る試みがある。
ある。機能的には精子は先体、頭部、中片−尾部の3つ
に分類され、頭部は染色体を収納し、中片−尾部はエネ
ルギー代謝と精子運動を行い、先体は卵への接着、融合
に関する。従来、人工的な授精に供する精子の調製は、
成熟した正常形態を有する前進運動精子の選別を目的と
しており、主に中片−尾部の機能に着目したものであ
る。射精直後の精子は潜在的な授精能を有しているにす
ぎず、雌性生殖路またはインビトロで数時間培養するこ
とにより、キャパシテーション(capacitation)、先体
反応(acrosome reaction )等の生理的、形態的変化を
経て授精が可能となる。IVF−ETでは、媒精に要す
る精子濃度が低いことから、乏精子症、精子無力症の切
札と考えられたが、精液所見不良症例では、あらかじめ
運動精子が低くては授精が成立しないことが臨床的にも
明らかとなり、従来から妊孕性(女性を妊娠させる能
力)の指標とされてきた精子濃度、運動率(中片−尾部
機能)とともに、先体反応誘起能を含む先体機能を把握
することも重要であることが示唆された。さらに重度の
精液所見不良症例に対してICSIが導入されたことに
より、今後は、染色体の評価を含めさらに詳細に精子機
能を把握することが重要となってくる。また、授精法の
高度化は媒精に供する精子数を減じたが、卵、胚の体外
操作を要するとともに、精子調製に際しても雌性生殖路
で行われる精子の選別、生理的変化をインビトロで代行
する必要を生じ、授精法の高度化に対応したより高度な
精子精製法の確立が不可欠となっている。
法により調製条件が異なる。すなわちIUIでは、先ず
精子濃縮が求められ、IVF−ETでは、必要とする精
子濃度は減少するが、運動精子の選別、精漿、細菌の除
去など、さらに高度な処理が要求される(精子洗浄濃縮
法)。精子の調製は遠心分離による方法と精子自身の運
動により分離する方法の2つに大別される。遠心分離に
よる方法は、初期にはショ糖重合体フィコールを、現在
では修飾コロイドシリカゲル、またはパーコール(Perc
oll)を用いた密度勾配遠心法を用いている。授精の方
法に応じて、精子濃縮を目的とした単層パーコール法、
クッション法、運動精子の選別が可能な多層パーコール
法、攪拌密度勾配法等が採用されている。また、精子自
身の運動に基づいた分離法としては、スイムアップ法
(Swim up )が汎用されており、精液所見が不良な症例
に対しては、スイムアップ法の変法であるスイムダウン
法(Swim down )がある。
度勾配法の操作の煩雑性を避けるため、等張化80%パ
ーコールに直接、精液を層積し、精液とパーコール層を
攪拌することにより、連続密度勾配を作製して遠心分離
する方法である。運動精子は沈澱中に濃縮される。精子
はその形成、成熟の過程で細胞質を失い、運動性を有す
る成熟精子は細胞質を有する細菌、未成熟精子等に比し
て密度が高い。パーコール密度勾配遠心分離法はこの原
理に基づき、成熟運動精子を精漿または細菌から分離す
るものである。
パーコール密度勾配遠心分離法では、遠心分離後に上清
をピペット等で除去しているため、遠心管内壁に付着し
た精漿、細菌が沈澱中に濃縮された精子に流下して再汚
染するという欠点を有している。また、沈澱が0.1〜
0.2mlと多いためパーコールの残留量も多くなると
いう欠点も有している。また、子宮腔内に洗浄した精子
を注入する配偶者間人工授精(AIH)では、パーコー
ルを除去するため、培養液等で沈澱を再度希釈して低速
で遠心分離する必要があった。そして、この際、精子回
収率が低く(精子濃度の低下)、運動率の低下が起こ
り、精子精製の障害となっている。また、射精精液には
下着の繊維などが混入しており、これには細菌が付着し
ているため、遠心分離後沈澱に混入した繊維により精子
が細菌汚染されるという問題があった。また、市販のパ
ーコールは研究用グレードであり、エンドトキシンレベ
ルが高いため、これを精子洗浄に用い、パーコールに懸
濁した精子をIVF−ETにおける胚培養系に直接添加
することはできなかった。
れたもので、細菌による汚染やパーコールの残留の無い
精子洗浄濃縮方法および精子洗浄濃縮用チューブを提供
することを目的とする。また、本発明は精子回収率が高
く、運動率の低下を生ずることの無い精子洗浄濃縮方法
および精子洗浄濃縮用チューブを提供することを目的と
する。また、本発明は、エンドトキシンを効率的に除去
することのできる精子洗浄濃縮方法および精子洗浄濃縮
用チューブを提供することを目的とする。
を解決するために鋭意検討の結果、遠心管の底部を細径
化して、遠心分離により精子が細径底部に濃縮されるよ
うにし、遠心分離後、遠心管内部を陰圧状態に保った状
態で、細径底部を折切すれば、上清が流下するのを防ぐ
ことができることに想到し、本発明を完成した。すなわ
ち本発明は、開放端と細径化された底部を有してなるチ
ューブと、該チューブの開放端に装着されたゴム袋を含
んでなる精子洗浄濃縮用チューブである。ここで、細径
底部には折切を容易にするための脆弱部を設けてもよ
い。また、本発明は、密度勾配担体を前記の精子洗浄
濃縮用チューブのガラス製チューブに入れ、同量のハ
ンクス(HANKS)液または生食を加えて希釈した精
液をシリンジに吸引し、工程の精液を除去フィルタ
ー上に静かに排出して、該除去フィルターで精液中の繊
維やゼラチン様塊、尿酸結石を除去し、濾過された精液
を前記ガラス製チューブ中の密度勾配担体に層積し、
精液の全量が密度勾配担体に層積された後、精液と密度
勾配担体との界面の両側部分を攪拌して界面を無くし、
工程のチューブを遠心分離し、遠心分離後、該ガ
ラス製チューブの開放端にゴム袋を潰した状態にして装
着した後、ガラス製チューブの細径された底部を折切し
て洗浄濃縮された精子を含む沈殿および密度勾配担体を
回収し、次いで密度勾配担体層を可及的に除去して沈
澱のみとするとの各工程を含んでなる精子洗浄濃縮方法
である。ここで密度勾配担体としては、修飾コロイドシ
リカ、パーコールまたはショ糖重合体、フィコールなど
が例示される。パーコールはエンドトキシンを除去した
のち培養液を添加して等張化した90〜98%濃度のパ
ーコールが好ましい。なお、本発明において、「パーコ
ール」とは、ポリビニルピロリドン被膜をもつコロイド
状シリカゾルを意味する。遠心分離条件は目的に応じ
て、種々選択されるが、一般的には、1.000xgで
20〜30分間である。
ューブについて、図面に基づいて説明する。図1は本発
明の精子洗浄濃縮用チューブの一実施例を示す平面図で
あり、図2は図1のチューブのII−II線断面図である。
図1および図2に示すように、本発明の精子洗浄濃縮用
チューブは、開放端11と細径化された底部12を有す
るガラス製チューブ1と、このチューブ1の開放端11
に装着されたゴム袋2を含んでなる。ここで、細径底部
12には折切を容易にするための脆弱部(カット部)1
3を設けてもよい。
部12を有しており、全体をガラスで形成することによ
り、エンドトキシンなどの有機性汚染物質を不活化する
ために約300℃で1時間の加熱滅菌を可能にしてい
る。また、ガラス製であるため、遠心分離後にアンプル
カットの要領で底部12を折切することができる。チュ
ーブ1のサイズは、開放端11の内径が5〜20mmであ
り、全長が40〜170mmである。底部12のサイズ
は、通常、長さが15〜40mm、内径が2〜7mmで
あり、精子の回収量(通常5〜10μl)に合わせて、
好ましくはチューブ1の底部から10〜30mm前後の
位置にカット部(脆弱部)13が設けられており、容易
に折切できるようにしている。
放端11にはゴム袋2が装着されているが、ゴム袋2は
取り外し可能である。精子の回収に際して、ゴム袋2を
潰れた状態でチューブ1の開放端11に装着すれば、圧
潰を解消した時に、ゴム袋2は弾性により元の状態に回
復してチューブ1の内部に陰圧が生じる。そして陰圧に
より、細径底部12を折切して開放した時に、チューブ
1に収容された折切部分より上にある液(上清)が流下
するのを防ぐことができる。また、精子は遠心による沈
澱により、管底に5〜10μl程度に濃縮されて存在す
るので、パーコール層を可及的に除去して沈澱のみとす
ることができる。目的に応じて培養液で再懸濁すること
もあるが、この場合でも、管径が細いためパーコール混
入を最小限とすることができる。
て、図3を用いて説明する。先ず、精液の受付を行い、
氏名、カルテ番号等の確認および、目視による観察(血
精液症等のチェック)を行う。次に、患者氏名の確認を
行い、精液を5mlディスポシリンジに吸引して精液量
の測定を行った後、シリンジで精液を数回吸入、排出し
て液化ならびに均一化を図る。精液が均一に液化された
ら、これをスライドグラスに滴下して精子数および運動
率を観察する。次に、精液の液化状態およびゲルの混在
を観察する。一方、本発明の精子洗浄濃縮用チューブ1
に90〜98%等張化パーコールを入れる(工程)。
次に、精液に同量のハンクス液または生食を加えてシリ
ンジSで吸入、排出を繰り返して希釈し、この希釈した
精液をシリンジSに吸引して(工程)、チューブ1の
開放端11に挿入した除去フィルターF上に静かに排出
して、除去フィルターFで精液中の繊維やゼラチン様
塊、尿酸結石などを除去し(図3−)、濾過された精
液をパーコールに層積する(工程、図3−)。精液
の全量がパーコールに層積されたら、チューブ1の精液
とパーコールの界面の両側部分、通常両側2cmの範囲
を、例えばL型攪拌棒で攪拌して界面を無くする(工程
、図3−))。
(1.000xg)で20〜30分間遠心分離すると、
遠心分離により、精子はチューブ1下端の細径底部12
に濃縮される(工程、図3−)。遠心分離後、チュ
ーブ1の開放端11にゴム袋2を潰した状態にして装着
した後、細径底部12をカット部13で折切して精子を
回収する(工程、図3−)。ガラス折切時には、折
切時の怪我を防ぐため、専用のチップ(図示していな
い)をチューブ1の下部に装着して注意深く折切するの
が好ましい。回収された精子は管底に10μl程度に濃
縮されているので、パーコール層を可及的に除去して沈
澱のみとする(工程、図3−)。目的に応じて培養
液で再懸濁することもある(図3−)。尚、チューブ
1の上部および上清は廃棄されるが、ゴム袋2は繰り返
し使用できるので、洗浄して保管する。
精液を室温に約30分間放置して液化させ、一般的な精
液所見を観察した後、本発明の方法により精液を洗浄濃
縮して(3000回転/分、20分)、精子濃度、精子
運動および酸性フォスファターゼ活性(Acid P)の測定
を行ったところ、表1の様な結果が得られた。尚、観察
温度は顕微鏡ステージ用透明加温盤を用いて37℃に維
持し、精子濃度はマクラー氏精子算定盤を用いて測定し
た。また、精子運動(運動率、運動速度)は精液10μ
lを、ヒト血清アルブミン処理を行った精子運動観察用
チャンバーに載せて観察し、コンピュータ画像解析装置
(CASA3000、CellSoft社製)を用いて
測定した。また、酸性フォスファターゼ活性測定試薬
(Acid P)は酸性フォスファKIIテストワコー(和光
純薬工業(株)製)を用い、4.6mmoleフェニル
リン酸2ナトリウムを基質として37℃で酸性フォスフ
ァターゼ活性を測定した。
縮後、精子懸濁液は10mlとなるようにハンクス液に再懸
濁した。
ために運動性が悪く受精能力も低いことから、成熟して
細胞質を失った運動性および受精能力の向上した精子の
みを選択的に回収しており、表1からも分かるように精
子濃度は数十倍になっている。また、洗浄により精子運
動率も向上している。精漿除去率の指標として酸性フォ
スファターゼ活性を比較した結果は、原精液と比較して
著しく減少しており、洗浄によりほぼ完全に精漿を除去
し得たと考えられる。
うに、本発明を採用すれば、精子回収率が高く、運動率
の高い精子を選択的に回収することができるので、授精
率を向上させることができる。
を示す平面図である。
況を説明する図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 開放端と細径化された底部を有してなる
ガラス製チューブと、該チューブの開放端に装着される
ゴム袋を含んでなる精子洗浄濃縮用チューブ。 - 【請求項2】 前記細径された底部に折切を容易にする
ための脆弱部を設けてなる精子洗浄濃縮用チューブ。 - 【請求項3】 次の各工程を含んでなる精子洗浄濃縮方
法。 密度勾配担体を、請求項1に記載の精子洗浄濃縮用
チューブのガラス製チューブに入れ、 同量のハンクス(HANKS)液または生食を加え
て希釈した精液をシリンジに吸引し、 工程の精液を除去フィルター上に静かに排出し
て、該除去フィルターで精液中の繊維やゼラチン様塊、
尿酸結石を除去し、濾過された精液を前記ガラス製チュ
ーブ中の密度勾配担体に層積し、 精液の全量が密度勾配担体に層積された後、精液と
密度勾配担体との界面の両側部分を攪拌して界面を無く
し、 工程のガラス製チューブを遠心分離し、 遠心分離後、該ガラス製チューブの開放端にゴム袋
を潰した状態にして装着した後、ガラス製チューブの細
径された底部を折切して洗浄濃縮された精子を含む沈殿
および密度勾配担体を回収し、次いで 密度勾配担体層を可及的に除去して沈澱のみとす
る。 - 【請求項4】前記密度勾配担体が修飾コロイドシリカ、
パーコールまたはショ糖重合体、フィコールである請求
項3記載の精子洗浄濃縮方法。 - 【請求項5】前記密度勾配担体がパーコールである請求
項3記載の精子洗浄濃縮方法。 - 【請求項6】前記パーコールはエンドトキシンを除去し
たのち、培養液を添加して等張化した90〜98%濃度
のパーコールである請求項4または5記載の精子洗浄濃
縮方法。 - 【請求項7】前記パーコールはポリビニルピロリドン被
膜をもつコロイドシリカである請求項4、5または6記
載の精子洗浄濃縮方法。
Priority Applications (1)
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JP2000022004A JP3744298B2 (ja) | 1999-02-02 | 2000-01-31 | 精子洗浄濃縮用チューブおよび精子洗浄濃縮方法 |
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- 2000-01-31 JP JP2000022004A patent/JP3744298B2/ja not_active Expired - Lifetime
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