JP2000263259A - パルスレーザ表面処理方法およびその装置 - Google Patents

パルスレーザ表面処理方法およびその装置

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JP2000263259A
JP2000263259A JP11076358A JP7635899A JP2000263259A JP 2000263259 A JP2000263259 A JP 2000263259A JP 11076358 A JP11076358 A JP 11076358A JP 7635899 A JP7635899 A JP 7635899A JP 2000263259 A JP2000263259 A JP 2000263259A
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pulse
surface treatment
laser
treatment method
pulse laser
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JP11076358A
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English (en)
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Katsuaki Ohashi
克明 大橋
Shuichi Ashitachi
修一 蘆立
Kiyoshi Kurosawa
潔 黒澤
Yukimoto Okazaki
幸基 岡崎
Masayo Nakane
昌代 中根
Kazuhito Motoyoshi
和仁 本吉
Atsushi Takada
淳 高田
Hironobu Kimura
博信 木村
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Toshiba Corp
Tokyo Electric Power Co Holdings Inc
Original Assignee
Toshiba Corp
Tokyo Electric Power Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】屋外に設置されている金属製設備の膜厚の厚い
酸化物および塗装でも、簡単かつ確実に除去するパルス
レーザ表面処理方法を提供する。 【解決手段】表面に酸化物6が形成された鋼製の構造部
材4にパルスレーザ光2を照射するパルスレーザ表面処
理方法において、パルス幅が5ns程度のNd−YAG
レーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいず
れかを、パルスエネルギー密度250mJ/cm〜1
1000mJ/cm、ピークパワー密度70MW/c
〜2200MW/cmの条件で照射する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、送電線鉄塔などの
屋外設置型の金属製設備の酸化物(錆)の除去方法およ
び装置に関し、特に上記金属製設備の酸化物をパルスレ
ーザ光を用いて除去するパルスレーザ表面処理方法およ
びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、送電線用鉄塔など屋外に設置さ
れている金属製設備は、厳しい環境条件下に晒されるた
め、母材鋼板の表面に防錆のための溶融亜鉛メッキが施
されており、また必要な場合には、航空障害標識などの
塗装も施されている。ところが、このようなメッキや塗
装が経年変化により劣化した場合は、塗装ないしは再塗
装作業が必要になる。
【0003】このような塗装ないしは再塗装を施す際に
は、溶融亜鉛メッキの表面に発生した酸化物および残存
する塗装の除去をいかに的確に行なうかが、再塗装時期
の延長化に極めて重要な影響を与える。ところが、現状
においては、酸化物および塗装の除去はケレン作業と呼
ばれ、金ブラシなどで人手により行なわれている。しか
しながら、このような除去方法では、手間がかかる上
に、酸化物や残存塗装を完全に除去することが困難であ
った。
【0004】また、鉄塔の鋼板が錯綜した部分には、金
ブラシなどが挿入しにくく、このような部分の酸化物や
残存塗装が簡単に除去できる方法の実現が強く要請され
ていた。例えば、米国特許第4756765号には、炭
酸ガスレーザーによる赤外線レーザ光を照射して塗装を
除去する方法が提案されており、近時、これを実現する
ための装置も市販されている。
【0005】また、屋外に設置されている金属製設備の
酸化物が簡単に除去できる方法として、特開平9−25
3876号公報には光ファイバを介して金属製設備の表
面にレーザー光を照射する方法が提案され、研究開発が
進められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記米国特
許で提案されている塗装の除去方法は、レーザ光の光源
にパルス動作の炭酸ガスレーザを用い、航空機などの除
去対象物を屋内に持ち込んで、塗装を除去する方法であ
る。しかしながら、このような除去方法を屋外設置型の
金属製設備に適用しようとすると、炭酸ガスレーザのエ
ネルギー伝送が、光ファイバで行えないので、例えば屋
外に設置されている送電線鉄塔の塗装除去に適用するこ
とができなかった。
【0007】また、例えば赤錆のように錆の種類によっ
ては、錆が局部的に厚くなり不均一に錆が形成される。
したがって、特開平9−253876号公報に開示され
た屋外設置型金属製設備の錆の除去方法では、レーザ光
を照射する時のエネルギー密度が低い範囲に限定されて
いるため、このエネルギー密度のレーザ光を金属製設備
の表面に照射した際、上記のように厚い膜厚の錆(酸化
物)は金属製設備の表面に残留する場合があり、錆を確
実に除去することができないという可能性があった。
【0008】本発明は上述した事情を考慮してなされた
もので、屋外に設置されている金属製設備の膜厚の厚い
酸化物および塗装でも、簡単かつ確実に除去可能なパル
スレーザ表面処理方法およびその装置を提供することに
ある。
【0009】また、本発明の他の目的とするところは、
屋外に設置されている金属製設備を長期間に亘って腐食
から保護することの可能なパルスレーザ表面処理方法お
よびその装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明に対応するパルスレーザ表面処理方
法は、表面に酸化物が形成された鋼製の構造部材にパル
スレーザ光を照射するパルスレーザ表面処理方法におい
て、パルス幅が5ns程度のNd−YAGレーザの基本
波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれかを、パル
スエネルギー密度250mJ/cm〜11000mJ
/cm、ピークパワー密度70MW/cm〜220
0MW/cmの条件で照射することを特徴とする。
【0011】請求項1の発明によれば、酸化物の形成部
分と鋼母材との反射率の相違から、酸化物の形成部分に
多くの光エネルギーが吸収されるため、酸化物が微細な
破片となって選択的に除去される。
【0012】また、レーザ照射強度が、膜厚の厚い酸化
物の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与えない
範囲であるため、膜厚の厚い酸化物が選択的に除去され
る。
【0013】次に、請求項1の発明に対応するパルスレ
ーザ表面処理方法によるレーザ照射強度の数値限定理由
を説明する。
【0014】パルス幅が5ns程度のNd−YAGレー
ザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれか
の場合、パルスエネルギー密度が250mJ/cm
満またはピークパワー密度が70MW/cm未満の条
件で照射すると、厚い膜厚の酸化物では鋼製の構造部材
の表面に酸化物が残留することとなり、酸化物を確実に
除去することができない。
【0015】一方、パルスエネルギー密度が11000
mJ/cmを超えた場合またはピークパワー密度が2
200MW/cmを超えた場合には、鋼母材に著しい
損傷を与えることとなり、鋼母材の健全性を確保するこ
とができない。
【0016】以下の各請求項に係る発明も、請求項1の
発明の数値限定理由と同様にそれぞれのパルス幅でパル
スエネルギー密度またはピークパワー密度がその数値未
満の条件で照射すると、厚い膜厚の酸化物では鋼製の構
造部材の表面に酸化物が残留する一方、パルスエネルギ
ー密度またはピークパワー密度がその数値を超えると、
鋼母材に著しい損傷を与えることとなる。
【0017】請求項2の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、表面に酸化物が形成された鋼製の構造部
材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表面処理方
法において、パルス幅が10ns程度のNd−YAGレ
ーザの基本波を、パルスエネルギー密度300mJ/c
〜1400mJ/cm、ピークパワー密度20M
W/cm〜90MW/cmの条件で照射することを
特徴とする。
【0018】請求項2の発明によれば、レーザ照射強度
が、酸化物の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を
与えない範囲であるため、酸化物が選択的に除去され
る。
【0019】請求項3の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、表面に酸化物が形成された鋼製の構造部
材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表面処理方
法において、パルス幅が100ns程度のNd−YAG
レーザの基本波を、パルスエネルギー密度380mJ/
cm〜1000mJ/cm、ピークパワー密度5M
W/cm〜13MW/cmの条件で照射することを
特徴とする。
【0020】請求項3の発明によれば、レーザ照射強度
が、酸化物の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を
与えない範囲であるため、酸化物が選択的に除去され
る。
【0021】請求項4の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、表面に酸化物が形成された亜鉛メッキ鋼
製構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表
面処理方法において、パルス幅が5ns程度のNd−Y
AGレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波の
いずれかを、パルスエネルギー密度200mJ/cm
〜4000mJ/cm、ピークパワー密度60MW/
cm〜1000MW/cmの条件で照射することを
特徴とする。
【0022】請求項4の発明によれば、酸化物の形成部
分と亜鉛メッキ材との反射率の相違から、酸化物の形成
部分に多くの光エネルギーが吸収されるため、酸化物が
微細な破片となって選択的に除去される。また、レーザ
照射強度が、酸化物の除去加工が可能で、亜鉛メッキ材
に著しい損傷を与えない範囲であるため、酸化物が選択
的に除去される。
【0023】請求項5の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、表面に酸化物が形成された亜鉛メッキ鋼
製構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表
面処理方法において、パルス幅が10ns程度のNd−
YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度300
mJ/cm〜1400mJ/cm、ピークパワー密
度20MW/cm〜90MW/cmの条件で照射す
ることを特徴とする。
【0024】請求項5の発明によれば、レーザ照射強度
が、酸化物の除去加工が可能で、亜鉛メッキ材に著しい
損傷を与えない範囲であるため、酸化物が選択的に除去
される。
【0025】請求項6の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、表面に酸化物が形成された亜鉛メッキ鋼
製構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表
面処理方法において、パルス幅が100ns程度のNd
−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度38
0mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパワー
密度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照射す
ることを特徴とする。
【0026】請求項6の発明によれば、レーザ照射強度
が、酸化物の除去加工が可能で、亜鉛メッキ材に著しい
損傷を与えない範囲であるため、酸化物が選択的に除去
される。
【0027】請求項7の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、表面に亜鉛メッキが施された鋼製の構造
部材にパルスレーザ光を照射することを特徴とする。
【0028】請求項7の発明によれば、亜鉛メッキと鋼
母材との反射率の相違から、亜鉛メッキに多くの光エネ
ルギーが吸収されるため、亜鉛メッキが微細な破片とな
って選択的に除去される。
【0029】請求項8の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、請求項7に記載のパルスレーザ表面処理
方法において、パルス幅が5ns程度のNd−YAGレ
ーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれ
かを、パルスエネルギー密度500mJ/cm〜40
00mJ/cm、ピークパワー密度140MW/cm
〜1000MW/cmの条件で照射することを特徴
とする。
【0030】請求項8の発明によれば、レーザ照射強度
が、亜鉛メッキの除去加工が可能で、鋼母材に著しい損
傷を与えない範囲であるため、亜鉛メッキが選択的に除
去される。
【0031】請求項9の発明に対応するパルスレーザ表
面処理方法は、請求項7に記載のパルスレーザ表面処理
方法において、パルス幅が10ns程度のNd−YAG
レーザの基本波を、パルスエネルギー密度300mJ/
cm〜1400mJ/cm 、ピークパワー密度20
MW/cm〜90MW/cmの条件で照射すること
を特徴とする。
【0032】請求項9の発明によれば、レーザ照射強度
が、亜鉛メッキの除去加工が可能で、鋼母材に著しい損
傷を与えない範囲であるため、亜鉛メッキが選択的に除
去される。
【0033】請求項10の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、請求項7に記載のパルスレーザ表面処
理方法において、パルス幅が100ns程度のNd−Y
AGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度380m
J/cm〜1000mJ/cm、ピークパワー密度
5MW/cm〜13MW/cmの条件で照射するこ
とを特徴とする。
【0034】請求項10の発明によれば、レーザ照射強
度が、亜鉛メッキの除去加工が可能で、鋼母材に著しい
損傷を与えない範囲であるため、亜鉛メッキが選択的に
除去される。
【0035】請求項11の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、表面に合成樹脂塗装による塗装が施さ
れた鋼製の構造部材にパルスレーザ光を照射することを
特徴とする。
【0036】請求項11の発明によれば、合成樹脂塗装
と鋼母材との反射率の相違から、合成樹脂塗装に多くの
光エネルギーが吸収されるため、合成樹脂塗装が微細な
破片となって選択的に除去される。
【0037】請求項12の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、請求項11に記載のパルスレーザ表面
処理方法において、合成樹脂塗料はエポキシ系塗料,ポ
リウレタン系塗料,ビニエステル樹脂塗料もしくはこれ
らを重畳した塗料であることを特徴とする。
【0038】請求項13の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、請求項11に記載のパルスレーザ表面
処理方法において、パルス幅が5ns程度のNd−YA
Gレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のい
ずれかを、パルスエネルギー密度200mJ/cm
4000mJ/cm、ピークパワー密度60MW/c
〜1000MW/cmの条件で照射することを特
徴とする。
【0039】請求項13の発明によれば、レーザ照射強
度が、合成樹脂塗装の除去加工が可能で、鋼母材に著し
い損傷を与えない範囲であるため、合成樹脂塗装が選択
的に除去される。
【0040】請求項14の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、請求項11に記載のパルスレーザ表面
処理方法において、パルス幅が10ns程度のNd−Y
AGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度300m
J/cm〜1400mJ/cm、ピークパワー密度
20MW/cm〜90MW/cmの条件で照射する
ことを特徴とする。
【0041】請求項14の発明によれば、レーザ照射強
度が、合成樹脂塗装の除去加工が可能で、鋼母材に著し
い損傷を与えない範囲であるため、合成樹脂塗装が選択
的に除去される。
【0042】請求項15の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、請求項11に記載のパルスレーザ表面
処理方法において、パルス幅が100ns程度のNd−
YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度380
mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパワー密
度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照射する
ことを特徴とする。
【0043】請求項15の発明によれば、レーザ照射強
度が、合成樹脂塗装の除去加工が可能で、鋼母材に著し
い損傷を与えない範囲であるため、合成樹脂塗装が選択
的に除去される。
【0044】請求項16の発明に対応するパルスレーザ
表面処理方法は、請求項1〜15のいずれかに記載の表
面処理方法を施工した後、施工部の表面に合成樹脂塗装
を施すことを特徴とする。
【0045】請求項16の発明によれば、酸化物,亜鉛
メッキあるいは合成樹脂塗装が確実に除去された後、合
成樹脂塗装を施すため、塗装と下地との密着強度が強
く、塗装の持ちがよい。
【0046】請求項17の発明に対応するパルスレーザ
表面処理装置は、パルスレーザ発振器と、このパルスレ
ーザ発振器から出射されるパルスレーザ光を集光する集
光光学系を有する光ファイバ導光装置と、この光ファイ
バ導光装置で集光したパルスレーザ光を入光して伝送す
るための光ファイバと、この光ファイバから出射される
パルスレーザ光を集光して対象部材の表面に照射する集
光光学系を有する加工ヘッドとを備えたことを特徴とす
る。
【0047】請求項17の発明によれば、パルスレーザ
発振器から出射したパルスレーザ光は、光ファイバ導光
装置を介して光ファイバの一端からその内部に導入さ
れ、この光ファイバ内部を伝送し、光ファイバの他端か
ら出射し、加工ヘッド内部の集光光学系を介して対象部
材に照射され、対象部材の表面の酸化物、亜鉛メッキあ
るいは合成樹脂塗装が除去される。
【0048】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
添付図面を参照して説明する。
【0049】[第1実施形態]図1は本発明に係るパル
スレーザ表面処理方法の第1実施形態による表面処理状
態を示す概略構成図であり、表面処理装置の施工部の概
略的な構成を示している。
【0050】この表面処理装置の施工部は、光ファイバ
1と、この光ファイバ1から出射されたパルスレーザ光
2を集光する集光光学系としての集光レンズ3とから構
成され、この集光レンズ3によって集光されたパルスレ
ーザ光2は鋼製の構造部材4に照射され、この構造部材
4おける鋼母材5の表面には酸化物6が形成されてい
る。
【0051】ここで、光ファイバ1としては、例えば石
英製コアのSI型ファイバが使用される。また、集光レ
ンズ3には、例えば凸レンズや複数のレンズを組み合わ
せて収差を小さくした結像レンズなどが使用される。
【0052】また、本実施形態においては、パルスレー
ザ光2の照射条件を次のように規定している。すなわ
ち、パルス幅が5ns程度のNd−YAGレーザの基本
波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれかを、パル
スエネルギー密度250mJ/cm〜11000mJ
/cm、ピークパワー密度70MW/cm〜220
0MW/cmの条件で照射する。そして、望ましくは
パルスエネルギー密度が250mJ/cm〜1000
0mJ/cm、ピークパワー密度が70MW/cm
〜2000MW/cmに設定される。
【0053】次に、本実施形態の作用を説明する。
【0054】光ファイバ1の端部からはパルスレーザ光
2が発散して出射される。このパルスレーザ光2は、集
光レンズ3により収束されて、表面に酸化物6が形成さ
れた送電線鉄塔部材などの鋼製の構造部材4の表面に照
射される。すると、酸化物6の形成部分と鋼母材5との
反射率の相違から、酸化物6の形成部分に多くの光エネ
ルギーが吸収されるため、酸化物6が微細な破片となっ
て選択的に除去される。
【0055】また、本発明者らは、パルス幅が3.5n
s(半値幅)のNd−YAGレーザの基本波、2倍高調
波もしくは3倍高調波のいずれかを用いて、SS400
材および表面に赤錆が形成されたSS400材に照射実
験を行った。その結果、赤錆の除去加工に対するレーザ
強度閾値は約250mJ/cmであった。また、SS
400材に対しては、除去加工のレーザ強度閾値は約1
000mJ/cmであり、約10000mJ/cm
までは著しい損傷を受けないと評価された。
【0056】したがって、パルスレーザ光2の照射条件
を上記のように規定すれば、レーザ照射強度が、酸化物
6の除去加工が可能で、鋼母材5に著しい損傷を与えな
い範囲であるため、厚い膜厚の酸化物6の選択的除去が
可能である。
【0057】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、鋼製の構造部材4の表面に不均一に形成された厚い
膜厚の酸化物6でも簡単かつ確実に除去することができ
る。また、酸化物6と鋼母材5との反射率の相違を利用
して酸化物6を選択的に除去するため、酸化物6の取り
残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0058】なお、本実施形態では、パルスレーザ光2
を光ファイバ1で伝送する場合について説明したが、パ
ルスレーザ光2を反射ミラーを使用して空間伝送する場
合においても、伝送の容易さは光ファイバ1を使用した
場合に較べてやや劣るものの、同様の作用、効果を得る
ことができる。
【0059】また、レーザ光は伝送が容易で、狭隘部の
施工も可能なため、高所で複雑な形状を有する送電線鉄
塔の構成部材に対しても、簡単で高品質な表面処理を施
すことができる。
【0060】[第1変形例]次に、第1実施形態の第1
変形例について説明する。この変形例では、第1実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が10ns程度のN
d−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度3
00mJ/cm〜1400mJ/cm、ピークパワ
ー密度20MW/cm〜90MW/cmの条件で照
射する。
【0061】次に、第1変形例の作用を説明する。
【0062】本発明者らは、パルス幅が16ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、表面に赤
錆が形成されたSS400材に照射実験を行った。その
結果、約300mJ/cm〜約1400mJ/cm
の範囲で、下地のSS400母材に著しい損傷を与える
ことなく赤錆が除去されることを確認した。したがっ
て、パルスレーザ光2の照射条件を上記のように規定す
れば、レーザ照射強度が、酸化物6の除去加工が可能
で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲であるため、
厚い膜厚の酸化物6の選択的除去が可能である。
【0063】以上説明したように、第1変形例によれ
ば、鋼製の構造部材4の表面に不均一に形成された厚い
膜厚の酸化物6を簡単かつ確実に除去することができ
る。また、酸化物6を選択的に除去するため、酸化物6
の取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0064】[第2変形例]次に、第1実施形態の第2
変形例について説明する。この変形例では、第1実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が100ns程度の
Nd−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度
380mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパ
ワー密度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照
射する。
【0065】次に、第2変形例の作用を説明する。
【0066】本発明者らは、パルス幅が80ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、表面に赤
錆が形成されたSS400材に照射実験を行った。その
結果、約380mJ/cm〜約1000mJ/cm
の範囲で、下地のSS400母材に著しい損傷を与える
ことなく赤錆が除去されることを確認した。したがっ
て、パルスレーザ光2の照射条件を上記のように規定す
れば、レーザ照射強度が、酸化物6の除去加工が可能
で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲であるため、
厚い膜厚の酸化物6の選択的除去が可能である。
【0067】以上説明したように、第2変形例によれ
ば、鋼製の構造部材4の表面に不均一に形成された厚い
膜厚の酸化物6でも簡単かつ確実に除去することができ
る。また、酸化物6を選択的に除去するため、酸化物6
の取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0068】[第2実施形態]図2は本発明に係るパル
スレーザ表面処理方法の第2実施形態による表面処理状
態を示す概略構成図であり、表面処理装置の施工部の概
略的な構成を示している。なお、前記第1実施形態と同
一または対応する部分には同一の符号を付して説明す
る。
【0069】この表面処理装置の施工部は、光ファイバ
1と、この光ファイバ1から出射されたパルスレーザ光
2を集光する集光光学系としての集光レンズ3とから構
成され、この集光レンズ3によって集光されたパルスレ
ーザ光2は、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの表面に照
射される。この構造部材4aには亜鉛メッキ材7が被着
形成され、この亜鉛メッキ材7の表面に酸化物6が形成
されている。
【0070】ここで、光ファイバ1としては、例えば石
英製コアのSI型ファイバが使用される。また、集光レ
ンズ3には、例えば凸レンズや複数のレンズを組み合わ
せて収差を小さくした結像レンズなどが使用される。
【0071】また、本実施形態においては、パルスレー
ザ光2の照射条件を次のように規定している。すなわ
ち、パルス幅が5ns程度のNd−YAGレーザの基本
波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれかを、パル
スエネルギー密度200mJ/cm〜4000mJ/
cm、ピークパワー密度60MW/cm〜1000
MW/cmの条件で照射する。
【0072】次に、本実施形態の作用を説明する。
【0073】光ファイバ1の端部からはパルスレーザ光
2が発散して出射される。このパルスレーザ光2は、集
光レンズ3により収束されて、表面に酸化物6が形成さ
れた、送電線鉄塔部材などの亜鉛メッキ鋼製の構造部材
4aの表面に照射される。すると、酸化物6の形成部分
と亜鉛メッキ材7との反射率の相違から、酸化物6の形
成部分に多くの光エネルギーが吸収されるため、酸化物
6が微細な破片となって選択的に除去される。
【0074】また、本発明者らは、パルス幅が3.5n
s(半値幅)のNd−YAGレーザの基本波、2倍高調
波もしくは3倍高調波のいずれかを用いて、亜鉛メッキ
を施したSS400材および表面に白錆が形成された亜
鉛メッキSS400材に対して照射実験を行った。その
結果、白錆の除去加工に対するレーザ強度閾値は約20
0mJ/cmであった。また、亜鉛メッキSS400
材に対しては、除去加工のレーザ強度閾値は約500m
J/cmであり、約4000mJ/cmまで下地の
SS400材に著しい損傷を与えないと評価された。
【0075】したがって、レーザ照射強度を望ましくは
200mJ/cm〜500mJ/cmの範囲に規定
すれば、亜鉛メッキ材7を損傷させることなく酸化物6
を除去することが可能であり、またレーザ照射強度を望
ましくは500mJ/cm〜4000mJ/cm
範囲に規定すれば、鋼母材5に著しい損傷を与えること
なく、酸化物6および亜鉛メッキ材7を除去可能である
ことが判明した。
【0076】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの表面に形成された
厚い膜厚の酸化物6を簡単かつ確実に除去することがで
きる。また、酸化物6と亜鉛メッキ材7との反射率の相
違を利用して酸化物6を選択的に除去するため、酸化物
6の取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0077】なお、この実施形態では、パルスレーザ光
2を光ファイバ1で伝送する場合について説明したが、
パルスレーザ光2を反射ミラーを使用して空間伝送する
場合においても、伝送の容易さは光ファイバ1を使用し
た場合に較べてやや劣るものの、同様の作用、効果を得
ることができる。
【0078】また、レーザ光は伝送が容易で、狭隘部の
施工も可能なため、高所で複雑な形状を有する送電線鉄
塔の構成部材に対しても、簡単で高品質な表面処理を施
すことができる。
【0079】[第1変形例]次に、第2実施形態の第1
変形例について説明する。この変形例では、第2実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が10ns程度のN
d−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度3
00mJ/cm〜1400mJ/cm、ピークパワ
ー密度20MW/cm〜90MW/cmの条件で照
射する。
【0080】次に、第1変形例の作用を説明する。
【0081】本発明者らは、パルス幅が16ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、表面に白
錆が形成された亜鉛メッキSS400材に照射実験を行
った。その結果、約300mJ/cm〜約1400m
J/cmの範囲で、下地のSS400母材に著しい損
傷を与えることなく白錆が除去されることを確認した。
したがって、パルスレーザ光2の照射条件を上記のよう
に規定すれば、レーザ照射強度が、酸化物6の除去加工
が可能で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲である
ため、厚い膜厚の酸化物6の選択的除去が可能である。
【0082】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの表面に不均一に形
成された厚い膜厚の酸化物6でも簡単かつ確実に除去す
ることができる。また、酸化物6を選択的に除去するた
め、取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0083】[第2変形例]次に、第2実施形態の第2
変形例について説明する。この変形例では、第2実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が100ns程度の
Nd−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度
380mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパ
ワー密度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照
射する。
【0084】次に、第2変形例の作用を説明する。
【0085】本発明者らは、パルス幅が80ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、表面に白
錆が形成された亜鉛メッキSS400材に照射実験を行
った。その結果、約380mJ/cm〜約1000m
J/cmの範囲で、下地のSS400母材に著しい損
傷を与えることなく白錆が除去されることを確認した。
したがって、パルスレーザ光2の照射条件を上記のよう
に規定すれば、レーザ照射強度が、酸化物6の除去加工
が可能で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲である
ため、酸化物6の選択的除去が可能である。
【0086】以上説明したように、第2変形例によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの表面に不均一形成
された厚い膜厚の酸化物6を簡単かつ確実に除去するこ
とができる。また、酸化物6を選択的に除去するため、
取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0087】[第3実施形態]図3は本発明に係るパル
スレーザ表面処理方法の第3実施形態による表面処理状
態を示す概略構成図であり、表面処理装置の施工部の概
略的な構成を示している。
【0088】この表面処理装置の施工部は、光ファイバ
1と、この光ファイバ1から出射されたパルスレーザ光
2を集光する集光光学系としての集光レンズ3とから構
成され、この集光レンズ3によって集光されたパルスレ
ーザ光2は、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの表面に形
成された亜鉛メッキ材7に照射される。
【0089】ここで、光ファイバ1としては、例えば石
英製コアのSI型ファイバが使用される。また、集光レ
ンズ3には、例えば凸レンズや複数のレンズを組み合わ
せて収差を小さくした結像レンズなどが使用される。
【0090】次に、本実施形態の作用を説明する。
【0091】光ファイバ1の端部からはパルスレーザ光
2が発散して出射される。このパルスレーザ光2は、集
光レンズ3により収束されて、送電線鉄塔部材などの亜
鉛メッキ鋼製の構造部材4aの表面に照射される。する
と、亜鉛メッキ材7と鋼母材5との反射率の相違から、
亜鉛メッキ材7の形成部分に多くの光エネルギーが吸収
されるため、亜鉛メッキ材7が微細な破片となって選択
的に除去される。
【0092】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの亜鉛メッキ材7を
簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛メッ
キ材7と鋼母材5との反射率の相違を利用して亜鉛メッ
キ材7を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品
質な除去が可能となる。
【0093】なお、本実施形態では、パルスレーザ光2
を光ファイバ1で伝送する場合について説明したが、パ
ルスレーザ光2を反射ミラーを使用して空間伝送する場
合においても、伝送の容易さは光ファイバ1を使用した
場合に較べてやや劣るものの、同様の作用、効果を得る
ことができる。
【0094】また、レーザ光は伝送が容易で、狭隘部の
施工も可能なため、高所で複雑な形状を有する送電線鉄
塔の構成部材に対しても、簡単で高品質な表面処理を施
すことができる。
【0095】[第1変形例]次に、第3実施形態の第1
変形例について説明する。この変形例では、第3実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が5ns程度のNd
−YAGレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調
波のいずれかを、パルスエネルギー密度500mJ/c
〜4000mJ/cm、ピークパワー密度140
MW/cm〜1000MW/cmの条件で照射す
る。
【0096】次に、第1変形例の作用を説明する。
【0097】本発明者らは、パルス幅が3.5ns(半
値幅)のNd−YAGレーザの基本波、2倍高調波もし
くは3倍高調波のいずれかを用いて、亜鉛メッキを施し
たSS400材に対して照射実験を行った。その結果、
亜鉛メッキ材7の除去加工に対するレーザ強度閾値は約
500mJ/cmであった。また、約4000mJ/
cmまで下地のSS400材に著しい損傷を与えない
と評価された。したがって、パルスレーザ光2の照射条
件を上記のように規定すれば、レーザ照射強度が、亜鉛
メッキ材7の除去加工が可能で、鋼母材5に著しい損傷
を与えない範囲であるため、鋼母材5を損傷することな
く亜鉛メッキ材7を除去することが可能である。
【0098】以上説明したように、第1変形例によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの亜鉛メッキ材7を
簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛メッ
キ材7を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品
質な除去が可能となる。
【0099】[第2変形例]次に、第3実施形態の第2
変形例について説明する。この変形例では、第3実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が10ns程度のN
d−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度3
00mJ/cm〜1400mJ/cm、ピークパワ
ー密度20MW/cm〜90MW/cmの条件で照
射する。
【0100】次に、第2変形例の作用を説明する。
【0101】本発明者らは、パルス幅が16ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、亜鉛メッ
キSS400材に照射実験を行った。その結果、約30
0mJ/cm〜約1400mJ/cmの範囲で、下
地のSS400母材に著しい損傷を与えることなく亜鉛
メッキ材7が除去されることを確認した。したがって、
パルスレーザ光2の照射条件を上記のように規定すれ
ば、レーザ照射強度が、亜鉛メッキ材7の除去加工が可
能で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲であるた
め、亜鉛メッキ材7の選択的除去が可能である。
【0102】以上説明したように、第2変形例によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの亜鉛メッキ材7を
簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛メッ
キ材7を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品
質な除去が可能となる。
【0103】[第3変形例]次に、第3実施形態の第3
変形例について説明する。この変形例では、第3実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が100ns程度の
Nd−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度
380mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパ
ワー密度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照
射する。
【0104】次に、第3変形例の作用を説明する。
【0105】本発明者らは、パルス幅が80ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、亜鉛メッ
キSS400材に照射実験を行った。その結果、約38
0mJ/cm〜約1000mJ/cmの範囲で、下
地のSS400母材に著しい損傷を与えることなく亜鉛
メッキ材7が除去されることを確認した。したがって、
パルスレーザ光2の照射条件を上記のように規定すれ
ば、レーザ照射強度が、亜鉛メッキ材7の除去加工が可
能で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲であるた
め、亜鉛メッキ材7の選択的除去が可能である。
【0106】以上説明したように、第3変形例によれ
ば、亜鉛メッキ鋼製の構造部材4aの亜鉛メッキ材7を
簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛メッ
キ材7を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品
質な除去が可能となる。
【0107】[第4実施形態]図4は本発明に係るパル
スレーザ表面処理方法の第4実施形態による表面処理状
態を示す概略構成図であり、表面処理装置の施工部の概
略的な構成を示している。
【0108】この表面処理装置の施工部は、光ファイバ
1と、この光ファイバ1から出射されたパルスレーザ光
2を集光する集光光学系としての集光レンズ3とから構
成され、この集光レンズ3によって集光されたパルスレ
ーザ光2は、鋼製の構造部材4の表面に形成された合成
樹脂塗料8に照射される。
【0109】ここで、光ファイバ1としては、例えば石
英製コアのSI型ファイバが使用される。また、集光レ
ンズ3には、例えば凸レンズや複数のレンズを組み合わ
せて収差を小さくした結像レンズなどが使用される。
【0110】次に、本実施形態の作用を説明する。
【0111】光ファイバ1の端部からはパルスレーザ光
2が発散して出射される。このパルスレーザ光2は、集
光レンズ3により収束されて、表面に合成樹脂塗装が施
された鋼製の構造部材4の表面に照射される。合成樹脂
塗料8としては、例えばエポキシ系塗料,ポリウレタン
系塗料,ビニルエステル樹脂塗料,あるいはこれらを重
畳した塗料などが挙げられる。また、表面に合成樹脂塗
装が施された鋼製の構造部材4としては、例えば送電線
鉄塔部材などが挙げられる。したがって、合成樹脂塗料
8と鋼母材5との反射率の相違から、合成樹脂塗料8に
多くの光エネルギーが吸収されるため、合成樹脂塗料8
が微細な破片となって選択的に除去される。
【0112】以上説明したように、本実施形態によれ
ば、表面に合成樹脂塗装が施された鋼製の構造部材4の
合成樹脂塗料8を簡単かつ確実に除去することができ
る。また、合成樹脂塗料8と鋼母材5との反射率の相違
を利用して合成樹脂塗料8を選択的に除去するため、取
り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0113】なお、この実施形態では、パルスレーザ光
2を光ファイバ1で伝送する場合について説明したが、
パルスレーザ光2を反射ミラーを使用して空間伝送する
場合においても、伝送の容易さは光ファイバ1を使用し
た場合に較べてやや劣るものの、同様の作用、効果を得
ることができる。
【0114】また、レーザ光は伝送が容易で、狭隘部の
施工も可能なため、高所で複雑な形状を有する送電線鉄
塔の構成部材に対しても、簡単で高品質な表面処理を施
すことができる。
【0115】[第1変形例]次に、第4実施形態の第1
変形例について説明する。この変形例では、第4実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が5ns程度のNd
−YAGレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調
波のいずれかを、パルスエネルギー密度200mJ/c
〜4000mJ/cm、ピークパワー密度60M
W/cm〜1000MW/cmの条件で照射する。
【0116】次に、第1変形例の作用を説明する。
【0117】本発明者らは、パルス幅が3.5ns(半
値幅)のNd−YAGレーザの基本波、2倍高調波もし
くは3倍高調波のいずれかを用いて、ビニルエステル樹
脂塗料を表面に塗布したSS400材、およびエポキシ
系塗料にポリウレタン系塗料を上塗りしたSS400材
に対して照射実験を行った。その結果、これらの合成樹
脂塗料8の除去加工に対するレーザ強度閾値は約200
mJ/cmであった。また、約4000mJ/cm
まで下地のSS400材に著しい損傷を与えないと評価
された。したがって、パルスレーザ光2の照射条件を上
記のような範囲に規定すれば、レーザ照射強度が、合成
樹脂塗料8の除去加工が可能で、鋼母材5に著しい損傷
を与えない範囲であるため、鋼母材5を損傷させること
なく、合成樹脂塗料8を除去することが可能である。
【0118】以上説明したように、第1変形例によれ
ば、表面に合成樹脂塗装を施した鋼製の構造部材4に対
して、表面の合成樹脂塗料8を簡単に除去することがで
きる。また、合成樹脂塗料8を選択的に除去するため、
取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0119】[第2変形例]次に、第4実施形態の第2
変形例について説明する。この変形例では、第4実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が10ns程度のN
d−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度3
00mJ/cm〜1400mJ/cm、ピークパワ
ー密度20MW/cm〜90MW/cmの条件で照
射する。
【0120】次に、第2変形例の作用を説明する。
【0121】本発明者らは、パルス幅が16ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、ビニルエ
ステル樹脂塗料を表面に塗布したSS400材、および
エポキシ系塗料にポリウレタン系塗料を上塗りしたSS
400材に対して照射実験を行った。その結果、約30
0mJ/cm〜約1400mJ/cmの範囲で、下
地のSS400母材に著しい損傷を与えることなく、塗
装が除去されることを確認した。したがって、パルスレ
ーザ光2の照射条件を上記のような範囲に規定すれば、
レーザ照射強度が、合成樹脂塗料8の除去加工が可能
で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲であるため、
合成樹脂塗料8の選択的除去が可能である。
【0122】以上説明したように、第2変形例によれ
ば、表面に合成樹脂塗装を施した鋼製の構造部材4に対
して、表面の合成樹脂塗料8を簡単に除去することがで
きる。また、合成樹脂塗料8を選択的に除去するため、
取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0123】[第3変形例]次に、第4実施形態の第3
変形例について説明する。この変形例では、第4実施形
態において、パルスレーザ光2の照射条件を次のように
規定している。すなわち、パルス幅が100ns程度の
Nd−YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度
380mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパ
ワー密度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照
射する。
【0124】次に、第3変形例の作用を説明する。
【0125】本発明者らは、パルス幅が80ns(半値
幅)のNd−YAGレーザの基本波を用いて、ビニルエ
ステル樹脂塗料を表面に塗布したSS400材、および
エポキシ系塗料にポリウレタン系塗料を上塗りしたSS
400材に対して照射実験を行った。その結果、約38
0mJ/cm〜約1000mJ/cmの範囲で、下
地のSS400母材に著しい損傷を与えることなく、塗
装が除去されることを確認した。したがって、パルスレ
ーザ光2の照射条件を上記のような範囲に規定すれば、
レーザ照射強度が、合成樹脂塗料8の除去加工が可能
で、鋼母材5に著しい損傷を与えない範囲であるため、
合成樹脂塗料8の選択的除去が可能である。
【0126】以上説明したように、第3変形例によれ
ば、表面に合成樹脂塗装を施した鋼製の構造部材4に対
して、表面の合成樹脂塗料8を簡単に除去することがで
きる。また、合成樹脂塗料8を選択的に除去するため、
取り残しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0127】[第5実施形態]図5は本発明に係るパル
スレーザ表面処理方法の第5実施形態の作業手順を示す
図である。
【0128】本実施形態においては、図5に示すように
前記第1実施形態〜第4実施形態にて説明した表面処理
方法により、鋼製の構造部材4の表面の酸化物6、亜鉛
メッキ材7、合成樹脂塗料8を除去した後、この除去施
工をした表面に合成樹脂塗装を施すようにしている。
【0129】前記第1実施形態〜第4実施形態にて説明
した表面処理方法においては、上述したように取り残し
の少ない酸化物6,亜鉛メッキ材7,合成樹脂塗料8の
除去が可能である。このため、除去後に施す合成樹脂塗
料8と下地との密着強度が強く、塗装の持ちがよいた
め、長期間に亘って鋼製の構造部材4の腐食を防止する
ことができる。
【0130】[表面処理装置の一実施形態]図6は本発
明に係るパルスレーザ表面処理装置の一実施形態を示す
構成図である。
【0131】この表面処理装置は、図6に示すようにパ
ルスレーザ光2を出射するパルスレーザ発振器9と、こ
のパルスレーザ光2を所望のパルスエネルギー値に調整
する出力調整装置10と、パルスレーザ光2を集光する
集光光学系としての集光レンズ3を備えた光ファイバ導
光装置11と、この光ファイバ導光装置11で集光した
パルスレーザ光2を入光して伝送するための光ファイバ
1とを備えている。
【0132】また、表面処理装置は、この光ファイバ1
から出射されるパルスレーザ光2を集光する集光光学系
としての集光レンズ3およびノズル12を備え筐体13
で保持された加工ヘッド14と、パルスレーザ光2の照
射位置,対象部材15表面に対する照射角度および照射
スポットSの面積を調整する駆動装置16と、パルスレ
ーザ光2の照射により粉塵となった酸化物6などを回収
するフィルタ17と、発生した粉塵をノズル12から吸
引するポンプ18と、ノズル12,フィルタ17および
ポンプ18を繋ぐ配管19とを備えている。
【0133】パルスレーザ発振器9としては、例えばN
d−YAGレーザ、銅蒸気レーザなどが使用される。出
力調整装置10としては、例えばバリアブルアッテネー
タなどが使用される。出力調整装置10がパルスレーザ
発振器9の内部に組み込まれる場合もある。光ファイバ
1としては、例えば石英製コアのSI型ファイバが使用
される。加工ヘッド14に付属する集光レンズ3として
は、例えば凸レンズや複数のレンズを組合せた結像レン
ズなどが使用される。
【0134】次に、本実施形態の表面処理装置の作用を
説明する。
【0135】パルスレーザ発振器9からは、所定の波長
とパルス幅を有するパルスレーザ光2が出射される。但
し、パルス幅をある範囲で調整することができる場合も
ある。パルスレーザ発振器9から出射したパルスレーザ
光2は、出力調整装置10を介して所望のパルスエネル
ギー値に調整される。このパルスレーザ光2は光ファイ
バ導光装置11に設けられた集光レンズ3によって集光
された後、光ファイバ1の一端から内部に導入される。
パルスレーザ光2は光ファイバ1の内部を伝送して他端
から出射する。
【0136】光ファイバ1の他端から出射したパルスレ
ーザ光2は、加工ヘッド14に設けられた集光レンズ3
により集光された後、対象部材15の表面に照射され
る。対象部材15は、例えば表面に酸化物6が形成され
たり、亜鉛メッキ材7や合成樹脂塗装などが施された鋼
製の構造部材4であり、より具体的には、例えば送電線
鉄塔の構造部材4などである。
【0137】加工ヘッド14においては、光ファイバ1
の他端,集光レンズ3およびノズル12が筐体13によ
って固定されており、この筐体13は駆動装置16と連
結されている。この駆動装置16によってパルスレーザ
光2の照射位置,対象部材15表面に対する照射角度お
よび照射スポットSの面積が調整される。対象部材15
の表面はパルスレーザ光2の照射を受け、酸化物6,亜
鉛メッキ材7あるいは合成樹脂塗料8が粉塵となって除
去される。この発生した粉塵は、ポンプ18を駆動する
ことによってノズル12から吸引され配管19を通りフ
ィルタ17で回収される。
【0138】なお、図7に示すように、パルスレーザ光
2の照射スポットSは、駆動装置16によって対象部材
15の表面を重畳しつつ走査され、面処理が施される。
【0139】以上説明したように、本実施形態で説明し
た表面処理装置を使用すれば、上述した第1実施形態〜
第4実施形態の表面処理を施すことが可能となる。した
がって、鋼製の構造部材4の表面に形成された酸化物
6、亜鉛メッキ材7あるいは合成樹脂塗料8に対して、
簡単かつ取り残しの少ない高品質な除去を行うことがで
きる。
【0140】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
記載の発明によれば、表面に酸化物が形成された鋼製の
構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表面
処理方法において、パルス幅が5ns程度のNd−YA
Gレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のい
ずれかを、パルスエネルギー密度250mJ/cm
11000mJ/cm、ピークパワー密度70MW/
cm〜2200MW/cmの条件で照射するので、
鋼製の構造部材の表面に形成された厚い膜厚の酸化物を
簡単かつ確実に除去することができる。また、酸化物と
鋼母材との反射率の相違を利用して酸化物を選択的に除
去するため、酸化物の取り残しの少ない高品質な除去が
可能となる。そして、レーザ照射強度が、酸化物の除去
加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与えない範囲であ
るため、酸化物が選択的に除去される。
【0141】請求項2記載の発明によれば、パルス幅が
10ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パルス
エネルギー密度300mJ/cm〜1400mJ/c
、ピークパワー密度20MW/cm〜90MW/
cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、酸化
物の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与えない
範囲であるため、酸化物が選択的に除去される。したが
って、鋼製の構造部材の表面に形成された酸化物を簡単
に除去することができる。また、酸化物を選択的に除去
するため、酸化物の取り残しの少ない高品質な除去が可
能となる。
【0142】請求項3記載の発明によれば、パルス幅が
100ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パル
スエネルギー密度380mJ/cm〜1000mJ/
cm 、ピークパワー密度5MW/cm〜13MW/
cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、酸化
物の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与えない
範囲であるため、酸化物が選択的に除去される。したが
って、鋼製の構造部材の表面に形成された酸化物を簡単
に除去することができる。また、酸化物を選択的に除去
するため、酸化物の取り残しの少ない高品質な除去が可
能となる。
【0143】請求項4記載の発明によれば、表面に酸化
物が形成された亜鉛メッキ鋼製構造部材にパルスレーザ
光を照射するパルスレーザ表面処理方法において、パル
ス幅が5ns程度のNd−YAGレーザの基本波、2倍
高調波もしくは3倍高調波のいずれかを、パルスエネル
ギー密度200mJ/cm〜4000mJ/cm
ピークパワー密度60MW/cm〜1000MW/c
の条件で照射するので、亜鉛メッキ鋼製構造部材の
表面に形成された厚い膜厚の酸化物を簡単かつ確実に除
去することができる。また、酸化物と亜鉛メッキ材との
反射率の相違を利用して酸化物を選択的に除去するた
め、酸化物の取り残しの少ない高品質な除去が可能とな
る。そして、レーザ照射強度が、酸化物の除去加工が可
能で、亜鉛メッキ材に著しい損傷を与えない範囲である
ため、酸化物が選択的に除去される。
【0144】請求項5記載の発明によれば、パルス幅が
10ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パルス
エネルギー密度300mJ/cm〜1400mJ/c
、ピークパワー密度20MW/cm〜90MW/
cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、酸化
物の除去加工が可能で、亜鉛メッキ材に著しい損傷を与
えない範囲であるため、酸化物が選択的に除去される。
したがって、亜鉛メッキ鋼製構造部材の表面に形成され
た酸化物を簡単に除去することができる。また、酸化物
を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品質な除
去が可能となる。
【0145】請求項6記載の発明によれば、パルス幅が
100ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パル
スエネルギー密度380mJ/cm〜1000mJ/
cm 、ピークパワー密度5MW/cm〜13MW/
cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、酸化
物の除去加工が可能で、亜鉛メッキ材に著しい損傷を与
えない範囲であるため、酸化物が選択的に除去される。
したがって、亜鉛メッキ鋼製構造部材の表面に形成され
た酸化物を簡単に除去することができる。また、酸化物
を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品質な除
去が可能となる。
【0146】請求項7記載の発明によれば、表面に亜鉛
メッキを施された鋼製の構造部材にパルスレーザ光を照
射するので、亜鉛メッキと鋼母材との反射率の相違か
ら、亜鉛メッキに多くの光エネルギーが吸収されるた
め、亜鉛メッキが微細な破片となって選択的に除去され
る。したがって、亜鉛メッキ鋼製構造部材の亜鉛メッキ
層を簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛
メッキと鋼母材との反射率の相違を利用して亜鉛メッキ
を選択的に除去するため、取り残しの少ない高品質な除
去が可能となる。
【0147】請求項8記載の発明によれば、パルス幅が
5ns程度のNd−YAGレーザの基本波、2倍高調波
もしくは3倍高調波のいずれかを、パルスエネルギー密
度500mJ/cm〜4000mJ/cm、ピーク
パワー密度140MW/cm 〜1000MW/cm
の条件で照射するので、レーザ照射強度が、亜鉛メッキ
の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与えない範
囲であるため、亜鉛メッキが選択的に除去される。した
がって、亜鉛メッキ鋼製構造部材の亜鉛メッキ層を簡単
かつ確実に除去することができる。また、亜鉛メッキを
選択的に除去するため、取り残しの少ない高品質な除去
が可能となる。
【0148】請求項9記載の発明によれば、パルス幅が
10ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パルス
エネルギー密度300mJ/cm〜1400mJ/c
、ピークパワー密度20MW/cm〜90MW/
cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、亜鉛
メッキの除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与え
ない範囲であるため、亜鉛メッキが選択的に除去され
る。したがって、亜鉛メッキ鋼製構造部材の亜鉛メッキ
層を簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛
メッキを選択的に除去するため、取り残しの少ない高品
質な除去が可能となる。
【0149】請求項10記載の発明によれば、パルス幅
が100ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パ
ルスエネルギー密度380mJ/cm〜1000mJ
/cm、ピークパワー密度5MW/cm〜13MW
/cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、亜
鉛メッキの除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与
えない範囲であるため、亜鉛メッキが選択的に除去され
る。したがって、亜鉛メッキ鋼製構造部材の亜鉛メッキ
層を簡単かつ確実に除去することができる。また、亜鉛
メッキを選択的に除去するため、取り残しの少ない高品
質な除去が可能となる。
【0150】請求項11記載の発明によれば、表面に合
成樹脂塗料による塗装が施された鋼製の構造部材にパル
スレーザ光を照射するので、合成樹脂塗料と鋼母材との
反射率の相違から、合成樹脂塗料に多くの光エネルギー
が吸収されるため、合成樹脂塗料が微細な破片となって
選択的に除去される。したがって、表面に合成樹脂塗装
が施された鋼製の構造部材の合成樹脂塗装層を簡単かつ
確実に除去することができる。また、合成樹脂塗料と鋼
母材との反射率の相違を利用して合成樹脂塗料を選択的
に除去するため、取り残しの少ない高品質な除去が可能
となる。
【0151】請求項12記載の発明によれば、エポキシ
系塗料,ポリウレタン系塗料,ビニエステル樹脂塗料も
しくはこれらを重畳した塗装が施された鋼製の構造部材
にパルスレーザ光を照射するので、上記塗料と鋼母材と
の反射率の相違から、上記塗料に多くの光エネルギーが
吸収されるため、上記塗料が微細な破片となって選択的
に除去される。したがって、上記の塗装が表面に施され
た鋼製の構造部材の上記塗料を簡単かつ確実に除去する
ことができる。また、上記塗料と鋼母材との反射率の相
違を利用して上記塗料を選択的に除去するため、取り残
しの少ない高品質な除去が可能となる。
【0152】請求項13記載の発明によれば、パルス幅
が5ns程度のNd−YAGレーザの基本波、2倍高調
波もしくは3倍高調波のいずれかを、パルスエネルギー
密度200mJ/cm〜4000mJ/cm、ピー
クパワー密度60MW/cm 〜1000MW/cm
の条件で照射するので、レーザ照射強度が、合成樹脂塗
料の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を与えない
範囲であるため、合成樹脂塗料が選択的に除去される。
したがって、表面に合成樹脂塗装を施した鋼製の構造部
材に対して、表面の合成樹脂塗料を簡単かつ確実に除去
することができる。また、合成樹脂塗料を選択的に除去
するため、取り残しの少ない高品質な除去が可能とな
る。
【0153】請求項14記載の発明によれば、パルス幅
が10ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パル
スエネルギー密度300mJ/cm〜1400mJ/
cm 、ピークパワー密度20MW/cm〜90MW
/cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、合
成樹脂塗料の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を
与えない範囲であるため、合成樹脂塗料が選択的に除去
される。したがって、表面に合成樹脂塗装を施した鋼製
の構造部材に対して、表面の合成樹脂塗料を簡単にかつ
確実に除去することができる。また、合成樹脂塗料を選
択的に除去するため、取り残しの少ない高品質な除去が
可能となる。
【0154】請求項15記載の発明によれば、パルス幅
が100ns程度のNd−YAGレーザの基本波を、パ
ルスエネルギー密度380mJ/cm〜1000mJ
/cm、ピークパワー密度5MW/cm〜13MW
/cmの条件で照射するので、レーザ照射強度が、合
成樹脂塗料の除去加工が可能で、鋼母材に著しい損傷を
与えない範囲であるため、合成樹脂塗料が選択的に除去
される。したがって、表面に合成樹脂塗装を施した鋼製
の構造部材に対して、表面の合成樹脂塗料を簡単かつ確
実に除去することができる。また、合成樹脂塗料を選択
的に除去するため、取り残しの少ない高品質な除去が可
能となる。
【0155】請求項16記載の発明によれば、請求項1
ないし15のいずれかに記載の表面処理方法を施工した
後、施工部の表面に合成樹脂塗装を施すので、酸化物、
亜鉛メッキあるいは合成樹脂塗装が確実に除去された
後、合成樹脂塗装を施すため、塗料と下地との密着強度
が強く、塗装の持ちがよくなる。したがって、長期間に
亘って鋼製の構造部材の腐食を防止することができる。
【0156】請求項17記載の発明によれば、表面処理
装置は、パルスレーザ発振器と、このパルスレーザ発振
器から出射されるパルスレーザ光を集光する集光光学系
を有する光ファイバ導光装置と、この光ファイバ導光装
置で集光したパルスレーザ光を入光して伝送するための
光ファイバと、この光ファイバから出射されるパルスレ
ーザ光を集光して対象部材の表面に照射する集光光学系
を有する加工ヘッドとを備え、請求項1ないし16のい
ずれかに記載の表面処理方法を実施することができる。
したがって、鋼製構造部材の表面の酸化物、亜鉛メッキ
あるいは合成樹脂塗装に対して、簡単でかつ取り残しの
少ない高品質な除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパルスレーザ表面処理方法の第1
実施形態による表面処理状態を示す概略構成図。
【図2】本発明に係るパルスレーザ表面処理方法の第2
実施形態による表面処理状態を示す概略構成図。
【図3】本発明に係るパルスレーザ表面処理方法の第3
実施形態による表面処理状態を示す概略構成図。
【図4】本発明に係るパルスレーザ表面処理方法の第4
実施形態による表面処理状態を示す概略構成図。
【図5】本発明に係るパルスレーザ表面処理方法の第5
実施形態の作業手順を示す図。
【図6】本発明に係る表面処理装置の一実施形態を示す
構成図。
【図7】図6のパルスレーザ表面処理方法の概念を示す
説明図。
【符号の説明】
1 光ファイバ 2 パルスレーザ光 3 集光レンズ(集光光学系) 4 鋼製の構造部材 4a 亜鉛メッキ鋼製の構造部材 5 鋼母材 6 酸化物 7 亜鉛メッキ材 8 合成樹脂塗料 9 パルスレーザ発振器 10 出力調整装置 11 光ファイバ導光装置 12 ノズル 13 筐体 14 加工ヘッド 15 対象部材 16 駆動装置 17 フィルタ 18 ポンプ 19 配管 S 照射スポット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 蘆立 修一 東京都千代田区内幸町一丁目1番3号 東 京電力株式会社内 (72)発明者 黒澤 潔 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 岡崎 幸基 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 中根 昌代 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 本吉 和仁 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 (72)発明者 高田 淳 東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社 東芝本社事務所内 (72)発明者 木村 博信 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株 式会社東芝横浜事業所内 Fターム(参考) 4E068 AH00 CA02 CA03 CA08 CE08 DB15 4K053 PA02 PA08 QA01 SA20 XA50 4K057 DA01 DB02 DB07 DB17 DB20 DD06 DG20 DM40 DN10

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に酸化物が形成された鋼製の構造部
    材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表面処理方
    法において、パルス幅が5ns程度のNd−YAGレー
    ザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれか
    を、パルスエネルギー密度250mJ/cm〜110
    00mJ/cm、ピークパワー密度70MW/cm
    〜2200MW/cmの条件で照射することを特徴と
    するパルスレーザ表面処理方法。
  2. 【請求項2】 表面に酸化物が形成された鋼製の構造部
    材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表面処理方
    法において、パルス幅が10ns程度のNd−YAGレ
    ーザの基本波を、パルスエネルギー密度300mJ/c
    〜1400mJ/cm、ピークパワー密度20M
    W/cm〜90MW/cmの条件で照射することを
    特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  3. 【請求項3】 表面に酸化物が形成された鋼製の構造部
    材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表面処理方
    法において、パルス幅が100ns程度のNd−YAG
    レーザの基本波を、パルスエネルギー密度380mJ/
    cm〜1000mJ/cm、ピークパワー密度5M
    W/cm〜13MW/cmの条件で照射することを
    特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  4. 【請求項4】 表面に酸化物が形成された亜鉛メッキ鋼
    製構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表
    面処理方法において、パルス幅が5ns程度のNd−Y
    AGレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波の
    いずれかを、パルスエネルギー密度200mJ/cm
    〜4000mJ/cm、ピークパワー密度60MW/
    cm〜1000MW/cmの条件で照射することを
    特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  5. 【請求項5】 表面に酸化物が形成された亜鉛メッキ鋼
    製構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表
    面処理方法において、パルス幅が10ns程度のNd−
    YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度300
    mJ/cm〜1400mJ/cm、ピークパワー密
    度20MW/cm〜90MW/cm の条件で照射す
    ることを特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  6. 【請求項6】 表面に酸化物が形成された亜鉛メッキ鋼
    製構造部材にパルスレーザ光を照射するパルスレーザ表
    面処理方法において、パルス幅が100ns程度のNd
    −YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度38
    0mJ/cm 〜1000mJ/cm、ピークパワー
    密度5MW/cm〜13MW/cm の条件で照射す
    ることを特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  7. 【請求項7】 表面に亜鉛メッキが施された鋼製の構造
    部材にパルスレーザ光を照射することを特徴とするパル
    スレーザ表面処理方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載のパルスレーザ表面処理
    方法において、パルス幅が5ns程度のNd−YAGレ
    ーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のいずれ
    かを、パルスエネルギー密度500mJ/cm〜40
    00mJ/cm、ピークパワー密度140MW/cm
    〜1000MW/cmの条件で照射することを特徴
    とするパルスレーザ表面処理方法。
  9. 【請求項9】 請求項7に記載のパルスレーザ表面処理
    方法において、パルス幅が10ns程度のNd−YAG
    レーザの基本波を、パルスエネルギー密度300mJ/
    cm〜1400mJ/cm、ピークパワー密度20
    MW/cm〜90MW/cmの条件で照射すること
    を特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  10. 【請求項10】 請求項7に記載のパルスレーザ表面処
    理方法において、パルス幅が100ns程度のNd−Y
    AGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度380m
    J/cm〜1000mJ/cm、ピークパワー密度
    5MW/cm 〜13MW/cmの条件で照射するこ
    とを特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  11. 【請求項11】 表面に合成樹脂塗料による塗装が施さ
    れた鋼製の構造部材にパルスレーザ光を照射することを
    特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載のパルスレーザ表面
    処理方法において、合成樹脂塗料はエポキシ系塗料,ポ
    リウレタン系塗料,ビニエステル樹脂塗料もしくはこれ
    らを重畳した塗料であることを特徴とするパルスレーザ
    表面処理方法。
  13. 【請求項13】 請求項11に記載のパルスレーザ表面
    処理方法において、パルス幅が5ns程度のNd−YA
    Gレーザの基本波、2倍高調波もしくは3倍高調波のい
    ずれかを、パルスエネルギー密度200mJ/cm
    4000mJ/cm、ピークパワー密度60MW/c
    〜1000MW/cmの条件で照射することを特
    徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  14. 【請求項14】 請求項11に記載のパルスレーザ表面
    処理方法において、パルス幅が10ns程度のNd−Y
    AGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度300m
    J/cm〜1400mJ/cm、ピークパワー密度
    20MW/cm〜90MW/cmの条件で照射する
    ことを特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  15. 【請求項15】 請求項11に記載のパルスレーザ表面
    処理方法において、パルス幅が100ns程度のNd−
    YAGレーザの基本波を、パルスエネルギー密度380
    mJ/cm〜1000mJ/cm、ピークパワー密
    度5MW/cm〜13MW/cmの条件で照射する
    ことを特徴とするパルスレーザ表面処理方法。
  16. 【請求項16】 請求項1ないし15のいずれかに記載
    のパルスレーザ表面処理方法を施工した後、施工部の表
    面に合成樹脂塗装を施すことを特徴とするパルスレーザ
    表面処理方法。
  17. 【請求項17】 パルスレーザ発振器と、このパルスレ
    ーザ発振器から出射されるパルスレーザ光を集光する集
    光光学系を有する光ファイバ導光装置と、この光ファイ
    バ導光装置で集光したパルスレーザ光を入光して伝送す
    るための光ファイバと、この光ファイバから出射される
    パルスレーザ光を集光して対象部材の表面に照射する集
    光光学系を有する加工ヘッドとを備えたことを特徴とす
    るパルスレーザ表面処理装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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