JP2000238700A - 人工衛星の分離姿勢安定装置 - Google Patents

人工衛星の分離姿勢安定装置

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JP2000238700A
JP2000238700A JP11043234A JP4323499A JP2000238700A JP 2000238700 A JP2000238700 A JP 2000238700A JP 11043234 A JP11043234 A JP 11043234A JP 4323499 A JP4323499 A JP 4323499A JP 2000238700 A JP2000238700 A JP 2000238700A
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克彦 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数箇所にわたり結合された人工衛星の姿勢
を安定させながら分離し、また、ニューテーション運動
が発生しても人工衛星の姿勢を安定させながら分離する
姿勢安定装置を得る。 【解決手段】 衛星分離方向Xsへの人工衛星分離時
に、プッシュロッド206の端部にボールジョイント2
09を介して回転自在に連結する摩擦パッド210が、
子機100の作用面108aを押圧し、子機100の機
体軸である第1機体軸方向X1に垂直な摩擦力を発生さ
せ、親機200と子機100に発生する相対並進運動お
よび相対回転運動を制限する摩擦力を与える。また、親
機200と子機100に相対並進運動および相対回転運
動を制限する拘束力を与えてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、宇宙空間で二機
の人工衛星体からなる人工衛星を分離し、姿勢を安定さ
せる人工衛星の分離姿勢安定装置に関するもので、特
に、結合部をクランプバンドを用いて締め上げることに
より結合された人工衛星の分離姿勢安定装置に関する。
また、人工衛星の分離等に伴う外乱により人工衛星の姿
勢が大きく変動する場合に、人工衛星のスピン軸まわり
にスピン運動を与えジャイロ剛性を確保するとともに、
スピン軸を進行目標軸方向に漸近させニューテーション
運動を減衰させる人工衛星の分離姿勢安定装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来の人工衛星の分離姿勢安定装置の例
として、特開昭58−191700号公報に示された宇
宙飛行体の分離装置が知られている。図26はこの公報
に示されている従来の宇宙飛行体の分離装置の一実施例
を示す概略図である。図において、2はロケットまたは
宇宙船等の親機、1は親機2に対する子機であって、人
工衛星等の宇宙飛行体である、3は親機2の一面に設け
られ表面に螺旋状の突起を備え、親機2と機械的に結合
している螺旋状ガイド、4は子機1の一面に形成され螺
旋状の溝を備え、螺旋状ガイド3と嵌合する嵌合部、5
はスプリング、6は親機2と子機1を機械的に固定して
おくための固定具である。
【0003】このような従来の分離姿勢安定装置におい
ては、先ず固定具6が解除されるとスプリング5の伸展
力により子機1には図26の矢印a方向に分離力が作用
する。このとき螺旋状ガイド3、並びに嵌合部4から、
円周方向にも分力が作用するため、子機1は矢印bの向
きにスピン運動を開始する。最終的に螺旋状ガイド3と
嵌合部4とが完全に離れた時には、子機1には十分な回
転運動が与えられており、子機1はスピンが掛けられた
安定した姿勢で親機2から分離される。
【0004】ここで、固定具6としては例えばクランプ
バンドを用いたバンド式結合装置を使用することが可能
であり、実開昭63−187705号公報に示されたバ
ンド式結合装置が知られている。図27は、この公報で
引用された従来のバンド式結合装置を示す断面図であ
り、図28は図27におけるXXVIII-XXVIII線に沿った
断面図である。図27および図28において、21は例
えば人工衛星等の宇宙飛行体等の子機10の一部であっ
て、端部に外向きのフランジ26を有する円筒状結合
部、22は、例えば宇宙船等の親機20の一部であっ
て、端部に外向きのフランジ23を有する円筒状結合
部、28はクランプバンドである。クランプバンド28
は、ばね鋼板等で製作された帯状のバンド25と、この
バンド25の中央部、両端部にそれぞれ固定された弧状
の挟圧駒24、27を備えている。バンド25の両端部
に固定された挟圧駒27の端部には、外方へ突出するタ
ブ29が形成されている。また、30は2個のクランプ
バンド28のバンド25同士を結合するための連結ボル
ト、31は連結ボルト30と係合した分離ナットであ
る。分離ナット31には、爆薬(図示せず)が装填さ
れ、この爆薬が起爆すると分離ナット31に内蔵された
ナット分割機構(図示せず)により分離ナット31が縦
割りに分割される。
【0005】このような従来のバンド式結合装置におい
ては、バンド25の両端部に取付けられた挟圧駒27に
連結ボルト30を挿通し、これに分離ナット31をねじ
込んでバンド25同士を緊締するとともに、バンド25
に固定された挟圧駒24、27により円筒状結合部2
1、22の端部外周に形成されたフランジ26、23の
外周部を両側面から挟圧することにより親機と子機を結
合する。
【0006】人工衛星分離時には、親機と子機との結合
部円周上の複数箇所、図27においては、両側に設けら
れた分離ナット31の爆薬が起爆され分離ナット31が
分割される。すなわち、連結ボルト30と分離ナット3
1からなる連結ボルト部33、34の切断により、クラ
ンプバンド28の緊締が解かれクランプバンド28をフ
ランジ22、26から解放する。
【0007】また、従来の人工衛星の分離姿勢安定装置
の例として、特開昭61−143299号公報に示され
たスピンしている機体の姿勢制御方法および姿勢制御装
装置が知られている。図29はこの公報に示されている
従来のスピンしている機体の姿勢制御方法および姿勢制
御装置の一実施例を示す概略斜視図である。図30はこ
の従来例のサイドジェット装置の噴射方向とトルクの方
向との関係を示す線図である。図31はこの従来例のサ
イドジェット装置の噴射弁の配置を示す平面図である。
図29において、60は機体、40乃至42はレートセ
ンサ、43は演算装置、44はサイドジェット装置であ
る。サイドジェット装置44には4個の噴射ノズル45
乃至48が備わっている。
【0008】機体60は、あらかじめ別の装置により、
図のXB−XBで表されるロール軸(スピン軸)まわりに
一定の角速度ωsで回転させられている。レートセンサ
40乃至42はそれぞれ機体の主軸方向に沿って取り付
けられており、その軸方向の機体60の角速度が測定さ
れる。またこの測定値から演算装置43を介して、機体
60のオイラー角が計算される。これらの値からニュー
テーション角および機体60の角運動量ベクトルと進行
目標軸方向とのなす角を計算し、両者の和および差の絶
対値を求める。機体60の姿勢制御においては、これら
の絶対値の平均を評価関数とし、サイドジェット装置4
4によってこの評価関数を最小にする方向に一定の大き
さのトルクを付加することで、機体60の姿勢を進行目
標軸方向に収束させる。
【0009】ここで、機体60は角速度ωsで回転して
いるため、図30に示すようにいずれかのノズルの噴射
方向、図ではノズル45が評価関数を最小にする方向e
oと直角をなした時に瞬間的に噴射することにより、機
体60の姿勢を制御する。
【0010】また、機体60にゆっくりスピンをかけな
がら、スピン軸を進行目標軸方向に向ける場合には、図
31に示すようなサイドジェット装置のノズル配置を用
いる。姿勢制御トルクを発生しない場合には、ノズル4
9乃至52を全部噴射して、スピン軸のXB軸まわりに
のみトルクを発生し、ゆっくりとスピンを加速する。図
31において、矢印YB、ZBは、スピン軸であるXB
に対して垂直なYB軸、ZB軸を表し、かつYB軸、ZB
は互いに垂直である。姿勢制御トルクを発生する場合に
は、いずれかのノズルが適当な位置にきた時に、対向す
るノズルの噴射を瞬間的に止める。例えばノズル49の
噴射を止めると、ノズル51によりZB軸まわりの制御
トルクを発生することが可能で、これにより機体の姿勢
を制御することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のバン
ド式結合装置を用いて結合された人工衛星の分離姿勢安
定装置においては、固定具6として使用されるバンド式
結合装置を人工衛星から解放する際に、例えば親機、子
機の二機の人工衛星体の結合部円周上の複数箇所、図2
7の場合においては、円周上の対向する2箇所に配置さ
れた連結ボルト30と分離ナット31からなる連結ボル
ト部の切断タイミングによって、バンド25が挟圧駒2
7を介して、円筒状結合部21、22のフランジ26、
23を緊締する力である初期のバンド張力(締めつけ
カ)、並びに連結ボルト部の切断時間差等に依存した力
積が外乱としてバンド式結合装置から人工衛星に作用
し、分離後の人工衛星の姿勢安定性が保たれないという
問題点があった。
【0012】図32は、図27に示したバンド式結合装
置において、連結ボルト部33の連結ボルト30の切断
のタイミングが、連結ボルト部34の連結ボルト30の
切断のタイミングよりも相対的に早く片切れの状態とな
った場合に、バンド式結合装置から人工衛星に作用する
接触力を模式的に示したものである。図において、53
はクランプバンド、54は人工衛星、55はクランプバ
ンド53と人工衛星54の接触部分でクランプバンド5
3から人工衛星54に作用する接触力である。連結ボル
ト30の切断タイミングに時間差が存在すると、図に示
すようにクランプバンド53は片側の連結ボルト部34
のみが結合した片切れの状態となり、初期に与えられた
クランプバンド53のバンド張力は、切断箇所から波動
となって人工衛星結合部円周上を伝播しながら解放され
る。その結果、例えばクランプバンド53の解放中の図
に示すような状況では、人工衛星54には図中矢印cで
示す向きにこの接触力に起因する力積が作用し、これが
二機の人工衛星体それぞれに分配され姿勢外乱として作
用する。
【0013】また、上述した特開昭58−191700
号公報では、人工衛星に螺旋状ガイド3並びに嵌合部4
を設け、分離に際し人工衛星にスピン運動を与えること
で人工衛星の姿勢安定性を確保していたが、螺旋状ガイ
ド3と嵌合部4との噛み合わせやそれらの間の摩擦力に
より分離が完結しない可能性があるという欠点があっ
た。
【0014】一方、上述したスピンしている機体の姿勢
制御方法および姿勢制御装置においては、例えば前者の
実施例では、ニューテーション運動を減衰させるための
姿勢制御装置の他に機体にスピンを与えるための装置が
別途必要であり、重量やコストの面で問題点があった。
また後者の実施例では、機体にスピンをかける場合、並
びに機体の姿勢を制御する場合で、ノズルの選択および
その噴射手法に対する切替えが必要であり、サイドジェ
ット装置を構成する各ノズルの噴射を制御するアルゴリ
ズムが複雑になるという欠点があった。
【0015】この発明は、このような課題を解決するた
めになされたもので、人工衛星結合部外周上の複数箇所
にわたり配置された連結ボルト部の切断タイミングに時
間差が存在しても衛星の姿勢を安定に分離可能で、さら
に人工衛星にスピン運動等の姿勢安定のための付加的な
運動並びにその運動を実現するための付加的な姿勢制御
装置を用いることなしに、結合している二機の人工衛星
体間で安定な分離を実現可能とする人工衛星の分離姿勢
安定装置を得ることを目的とする。
【0016】またこの発明は、人工衛星の分離等に伴う
外乱により人工衛星にニューテーション運動が発生して
もスピン軸を進行目標軸方向に漸近させることが可能
で、さらに外乱等に対する姿勢安定性を確保するために
スピンの加速を行なってジャイロ剛性を確保する際に、
スピンの加速に要する以外の特別な姿勢制御装置並びに
複雑な姿勢制御アルゴリズムを用いることなしに、人工
衛星の姿勢安定を実現可能とする人工衛星の姿勢安定装
置を得ることを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】この発明に係る人工衛星
の分離姿勢安定装置は、第1および第2の人工衛星体の
それぞれの結合部の周方向に設けられた複数の結合部材
により、第1人工衛星体と第2人工衛星体とを分離可能
な状態で結合する人工衛星の分離姿勢安定装置におい
て、第1人工衛星体と第2人工衛星体とを分離する方向
である衛星分離方向への人工衛星分離時に、衛星分離方
向に対して垂直な軸方向に発生する相対並進運動、およ
び第1人工衛星体と第2人工衛星体とのそれぞれの質量
中心を通り、この垂直な軸と衛星分離方向に互いに垂直
な軸周りに発生する相対回転運動を制限する摩擦力ある
いは拘束力を与えるものである。
【0018】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第2人工衛星体に、プッシュロッドと、プ
ッシュロッドを第2人工衛星体の機体軸方向である第2
機体軸方向に押し出す押し出し力を発生するプッシャ
と、プッシュロッドの端部に回転自在に連結する摩擦パ
ッドとを備え、第1人工衛星体に、摩擦パッドが押圧
し、第1人工衛星体の機体軸方向である第1機体軸方向
に垂直な作用面を備え、摩擦パッドが作用面に押し出し
力を作用させ、摩擦パッドと作用面との間に第1機体軸
方向に垂直な摩擦力を発生させるものである。
【0019】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第2人工衛星体に、プッシュロッドと、プ
ッシュロッドを第2機体軸方向に押し出す押し出し力を
発生するプッシャとを備え、第1人工衛星体に、プッシ
ュロッドが押圧し、プッシュロッドが係合する凹部を有
する作用面を備えたものである。
【0020】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第2人工衛星体に、プッシュロッドと、プ
ッシュロッドを第2機体軸方向に押し出す押し出し力を
発生するプッシャと、第2機体軸方向の第1人工衛星体
に向かって先細に延びたテーパ面を有する凸部とを備
え、第1人工衛星体に、プッシュロッドが押圧し、第1
機体軸方向に垂直な作用面と、凸部に対向して設けら
れ、第1機体軸方向の第2人工衛星体に向かって広がる
テーパ面を有し、凸部に案内される凹部を備えたもので
ある。
【0021】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第2人工衛星体に、プッシュロッドと、プ
ッシュロッドを第2機体軸方向に押し出す押し出し力を
発生するプッシャとを備え、第1人工衛星体に、プッシ
ュロッドが押圧し、第1機体軸方向に垂直な作用面と、
プッシュロッドが貫通し、案内されるプッシュロッド貫
通部とを備えたものである。
【0022】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第2人工衛星体に、プッシュロッドと、第
2人工衛星体の質量中心を通る第2機体軸方向を中心軸
として、中心軸に対して外側に向いた放射方向に、プッ
シュロッドを押し出す押し出し力を発生するプッシャと
を備え、第1人工衛星体に、プッシュロッドが押圧し、
第1機体軸方向に垂直な作用面を備えたものである。
【0023】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第1人工衛星体に、プッシュロッドが貫通
し、案内されるプッシュロッド貫通部とを備えたもので
ある。
【0024】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第1人工衛星体のスピン軸方向の角運動量
を増加させる角運動量増加手段と、第1人工衛星体の進
行目標軸方向に対する第1人工衛星体のスピン軸姿勢を
検出する姿勢検出手段と、姿勢検出手段から得られた姿
勢値に基づく評価関数計算手段と、評価関数計算手段か
ら得られた評価値に基づき、角運動量増加手段の作動す
るタイミングを生成するタイミング生成手段とを備え、
人工衛星分離時に、ニューテーション運動をする第1人
工衛星体のスピン軸方向を進行目標軸方向に漸近させる
ように角運動量増加手段を作動させるものである。
【0025】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、第1人工衛星体のスピン軸方向の角運動量
を増加させる角運動量増加手段と、第1人工衛星体のス
ピン軸に直交する平面内の角速度を検出する角速度検出
手段と、角速度検出手段から得られた角速度に基づく位
相計算手段と、位相計算手段から得られた位相値に基づ
き、角運動量増加手段の作動するタイミングを生成する
タイミング生成手段とを備え、人工衛星分離時に、ニュ
ーテーション運動をする第1人工衛星体のスピン軸方向
を進行目標軸方向に漸近させるように角運動量増加手段
を作動させるさせるものである。
【0026】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置は、結合部材が、分離時に第1、第2人工衛星
体から離脱し、分離姿勢安定装置が、第2人工衛星体
に、第1、第2人工衛星体から離脱した結合部材を受け
止め収容する結合部材収容部を備えたものである。
【0027】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は、この発明
の実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示
す、第1の人工衛星体である人工衛星の子機100から
みた断面図であり、図2は、図1のII-II線に沿った断
面図である。
【0028】図1において、第1の人工衛星体である人
工衛星の子機100および第2の人工衛星体である人工
衛星の親機200は、それぞれの円筒状結合部121、
202が、端部に外向きのフランジ126、223(図
2参照)を有し、バンド式結合装置により、分離可能な
状態で結合されている。このバンド式結合装置は、子機
100のフランジ126、親機200のフランジ223
の周方向に、設けられた2つの結合部材であるによりク
ランプバンド28により子機100と親機200を結合
する。クランプバンド28は、例えば、ばね鋼板で製作
された帯状のバンド25と、このバンド25の中央部、
両端部にそれぞれ固定された弧状の挟圧駒24、27を
備えている。バンド25の両端部に固定された挟圧駒2
7の端部には、外方へ突出するタブ29が形成されてい
る。また、対向する2つのタブ29は、2個のクランプ
バンド28のバンド25同士を結合するための連結ボル
ト30が挿通され、分離ナット31が連結ボルト30と
係合している。分離ナット31には、爆薬(図示せず)
が装填され、この爆薬が起爆すると分離ナット31に内
蔵されたナット分割機構(図示せず)により分離ナット
31が縦割りに分割される。
【0029】親機200と子機100は、バンド25の
両端部に取付けられたタブ29に連結ボルト30を挿通
し、これに分離ナット31をねじ込んでバンド25同士
を緊締するとともに、バンド25に固定された挟圧駒2
4、27により円筒状結合部121、202の端部外周
に形成されたフランジ126、223の外周部を両側面
から挟圧することにより結合される。
【0030】図2において、親機200の円筒状結合部
202の内周面202aには、円筒状のプッシャ207
を固定する固定具211が設けられ、内周面202aに
固定されている。プッシャ207から細長の円柱棒であ
るプッシュロッド206がX 2方向に子機100に向か
って延びている。プッシュロッド206の先端には、ボ
ールジョイント209を介して円錐台形状の摩擦パッド
210が設けられている。これらの固定具211,プッ
シャ207,プッシュロッド206、ボールジョイント
209、摩擦パッド210は、これらを一組として、図
1に示すように、円周上に均等に4つ配置されている。
【0031】図3は、プッシャ207、プッシュロッド
206、ボールジョイント209、摩擦パッド210、
固定具211の構造の詳細を示す側面図である。図にお
いて、プッシャ207は、両側から挟持する三角形状の
平板である2つの側板211aと四角形状の平板である
底板211bとからなる固定具211の底板211b上
に配置され、固定されている。プッシャ207の内部に
は、円筒状穴が設けられ、コイルスプリングからなる分
離ばね209が圧縮され、軸方向ばね力を保持した状態
で配設されている、プッシュロッド206の一端には、
円筒状のピストン206aが設けられ、分離ばね209
と接触している。この分離ばね209が、図示しない解
除機構により解放されると、押し出し力を発生し、プッ
シュロッド206を親機200の機体軸方向である第2
機体軸方向X2に押し出す。
【0032】プッシュロッド206の他端には、ボール
ジョイント209が設けられ、プッシュロッド206に
固定されている。また、ボールジョイント209は、摩
擦パッド210にも固定されている。ここで、ボールジ
ョイント209は、球形状をした端部ともったボールス
タッドとこの球形状の部分と球面で接触する凹部をもっ
たシートを備えたもので、例えば、シートをプッシュロ
ッド206に固定し、ボールスタッドを摩擦パッド21
0に固定することで、摩擦パッド210の中心軸210
cをボールジョイント209の球形状の部分を中心に任
意の方向に向けることができるものであり、これによ
り、摩擦パッド210は、プッシュロッド206に回転
自在に連結されることになる。
【0033】摩擦パッド210は、円錐台形状の本体部
210bの底面に、例えば、自動車用のブレーキ摩擦材
である焼結合金からなり、摩擦係数の高い摩擦面210
dを有する焼結パッド210aが固着されている。ま
た、摩擦パッド210の本体部210bとプッシュロッ
ド206の端部の間には、これらに端部が固定されたコ
イルスプリング208が放射状に均等に4本配置され、
子機100に接触していない状態では、摩擦パッド21
0が第2機体軸方向X2に向くように、ばね力が調整さ
れている。
【0034】図2に戻って、子機100の円筒状結合部
121の内周面121aには、摩擦パッド210が押圧
し、子機100の機体軸方向である第1機体軸方向X1
に対して垂直な作用面108aを有する中空円板状の受
圧板108が設けられている。
【0035】次に、この発明の実施の形態である人工衛
星の分離姿勢安定装置の作用を説明する。子機100と
親機200との結合状態において、X1、X2方向と一致
し、子機100と親機200とを分離する方向である衛
星分離方向XSへ、親機200から子機100を分離す
る時には、親機200と子機100との間の分離ナット
31が分割される。すなわち、連結ボルト30と分離ナ
ット31からなる連結ボルト部33、34の切断によ
り、クランプバンド28の緊締が解かれクランプバンド
28をフランジ126、223から解放する。
【0036】この際、2ヶ所の連結ボルト部33、34
が切断される時期である切断タイミングにずれが生じる
場合がある。例えば、図1において、左側の連結ボルト
部33の切断タイミングが右側の連結ボルト部34の切
断タイミングよりも相対的に早く、クランプバンド28
が片切れの状態となった場合、子機100並びに親機2
00には、クランプバンド28が子機100と親機20
0とを結合させておく力である接触力に起因する力積が
それぞれ図4に示す矢印f、gの方向に作用する。その
結果、連結ボルト部33、34の切断直後には、子機1
00と親機200は、それぞれ、衛星分離方向XSに対
して垂直な軸方向XT方向である矢印f、gの方向に相
対並進運動を始める。また、同時に、子機100と親機
200のそれぞれの質量中心を通り、衛星分離方向XS
および垂直な軸方向XTに共に垂直な軸XU周りである矢
印h、j方向に相対回転運動を始める。
【0037】このような連結ボルト部33、34の切断
直後には、右側の連結ボルト部34はまだ切断されてお
らず、またそこにはクランプバンド28の子機100と
親機200とを結合させておく力である接触力は、解放
されていないため、その付近のフランジ126、223
は、挟圧駒27によってしっかりと把持されている。し
たがって、子機100と親機200、図4に示すように
右側の連結ボルト部34が設けられている配置点Pであ
たかも回転ヒンジにより結合されているような運動を行
なう。
【0038】図5はこの時の人工衛星の子機100と親
機200との結合部分の断面図を示している。摩擦パッ
ド210はボールジョイント209を介してプッシュロ
ッド206の先端に取り付けられているため、図に示す
ように子機100と親機200との間で相対姿勢誤差が
生じ、第1機体軸方向X1と第2機体軸方向X2との方向
が一致しなくても、摩擦パッド210がボールジョイン
ト209を中心に回転し、焼結パッド210a(図3参
照)の摩擦面210dが作用面108aに対して全面で
接触する。プッシュロッド206、ボールジョイント2
09を介してプッシャ207から受けた押し出し力を摩
擦パッド210は作用面108aに作用させ、摩擦パッ
ド210と作用面108aとの間に第1機体軸方向X1
に垂直な摩擦力を発生させる。このように、摩擦パッド
210の摩擦面210dが作用面108aに対して全面
で接触するので、子機100と親機200との間で相対
姿勢誤差が生じ、第1機体軸方向X1と第2機体軸方向
2とが一致しなくても、第1機体軸方向X1と第2機体
軸方向X2とが一致している場合と同じ接触面積を確保
することができる。このため、第1機体軸方向X1に垂
直な摩擦力が十分発生するので、子機100と親機20
0との相対並進運動および相対回転運動を制限し、減衰
させることができる。
【0039】その結果、人工衛星は、子機100と親機
200とに分離されても、クランプバンドの解放に伴う
力積に対し相対運動を起こさないので、衛星分離方向X
S方向には、子機100と親機200とに分離され相対
変位していくものの、他の方向については、あたかも1
機の人工衛星であるかのような運動を行ないながら分離
する。このように、衛星分離方向XS方向以外には、あ
たかも1機の人工衛星として運動を行なうため、見かけ
上質量、慣性モーメントは、子機100、親機200の
それぞれの単体の場合よりも大きくなり、外乱等に対す
る姿勢安定性を増大させることが可能で、安定な姿勢を
保ったまま人工衛星を分離することができる。また、摩
擦パッド210と作用面108aとの間に発生する摩擦
力は、衛星分離方向XS方向の人工衛星の分離運動自体
を妨げず、衛星分離方向XSに垂直な方向の相対並進運
動並びに軸XUまわりの相対回転運動の減衰に有効であ
る。
【0040】なお、この実施例では、摩擦パッド210
の摩擦面210dの摩擦力を発生させるのに、自動車用
のブレーキ摩擦材を用いたが、これに限定するものでは
なく、温度変化に対する摩擦係数の特性が安定している
のであれば他の材質等であっても良い。
【0041】実施の形態2.図6は、この発明の別の実
施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示す断面
図である。図6では、子機100の受圧板108の作用
面108bの形状、プッシュロッド256が作用面10
8bに直接接触する点が図2と異なる。図において、図
1乃至5と同一もしくは同等の部材および部位には、同
一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】図6において、プッシャ207から延びた
プッシュロッド256は、半球状の形状をなした先端部
256aを備えている。一方、子機100の円筒状結合
部121の内周面121aには、子機100の機体軸方
向である第1機体軸方向X1に対して垂直な中空円板状
の受圧板108が設けられている。受圧板108には、
プッシュロッド256が押し当てられ、係合することが
可能な半球状の凹部108cを一面に有する作用面10
8bが設けられている。この凹部108cは、同一の半
径を有し、受圧板108の円周方向および半径方向に、
それぞれ一定の間隔で規則正しく形成されている。
【0043】子機100と親機200との結合状態にお
いて、親機200から子機100を分離する時に、プッ
シャ207が第2機体軸方向X2にプッシュロッド25
6を押し出すと、プッシュロッド256は、凹部108
cに噛み合い、凹部108cを押圧する。これにより、
プッシュロッド256と凹部108cとの間には、子機
100と親機200との相対並進運動および相対回転運
動を制限する摩擦力および拘束力を発生させ、子機10
0と親機200との相対並進運動および相対回転運動を
制限し、減衰させることができる。
【0044】実施の形態3.図7は、この発明の別の実
施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示す、第
1の人工衛星体である人工衛星の子機100からみた断
面図であり、図8は図7のVIII-VIII線に沿った断面図
である。図7および8においては、クランプバンド28
を受け止めるバンドキャッチャ214が設けられている
点が図1および2と異なる。図において、図1乃至5と
同一もしくは同等の部材および部位には、同一符号を付
し、重複する説明は省略する。
【0045】図8において、親機200の円筒状結合部
202の外周面202bには、鉤状の断面を有し、平板
を折り曲げた形状であって、挟圧駒24側に開口した部
材からなる結合部材収容部であるバンドキャッチャ21
4が設けられている。バンドキャッチャ214は、底部
に補強板114aが固着され、端部で補強板114bを
介して外周面202bに固着されている。図7に示すよ
うに、バンドキャッチャ214は、結合部材であるクラ
ンプバンド28の外側に、円周上に4つ均等に配置され
ている。これにより、人工衛星分離時に、子機100、
親機200から離脱した結合部材であるクランプバンド
28を結合部材収容部であるバンドキャッチャ214を
受け止め収容する。
【0046】次に、この発明の実施の形態である人工衛
星の分離姿勢安定装置の作用を説明する。クランプバン
ド28を受け止めるバンドキャッチャ214がない場合
は、図4に示すように、子機100並びに親機200に
は、クランプバンド28が子機100と親機200とを
結合させておく接触力に起因する力積がそれぞれ矢印
f、gの方向に作用する。その結果、子機100と親機
200は、それぞれ、衛星分離方向XSに対して垂直な
軸方向XT方向である矢印f、gの方向に相対並進運動
を始める。また、同時に、子機100と親機200のそ
れぞれの質量中心を通り、衛星分離方向XSおよび垂直
な軸方向XTに共に垂直な軸XU周りである矢印h、j方
向に相対回転運動を始める。このような連結ボルト部3
3、34の切断直後には、右側の連結ボルト部34はま
だ切断されておらず、またそこにはクランプバンド28
の子機100と親機200とを結合させておく力である
接触力は、解放されていないため、その付近のフランジ
126、223は、挟圧駒27によってしっかりと把持
されている。したがって、子機100と親機200機、
図4に示すように右側の連結ボルト部34が設けられて
いる配置点Pであたかも回転ヒンジにより結合されてい
るような運動を行なう。
【0047】しかしながら、クランプバンド28をバン
ドキャッチャ214が受け止めると、クランプバンド2
8は親機200と一体となり、子機100と親機200
とをあわせた運動量は、運動量保存則から保存され、図
9の矢印k、lに示すように子機100並びに親機20
0に、互いに大きさが等しく向きが反対の力積が外乱と
して作用するのと等価的に考えることができる。したが
って、子機100と親機200に作用する力積は向きが
反対となるため、摩擦パッド210と作用面108aと
の間の接触面では、図4の場合と比較してより大きな相
対速度差を生じ、子機100並びに親機200の相対運
動減衰のための摩擦力を効果的に発生させることができ
る。
【0048】実施の形態4.図10は、この発明の別の
実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示す、
人工衛星の子機100からみた断面図であり、図11
は、図10のXI-XI線に沿った断面図である。図10お
よび11において、図1乃至5と同一もしくは同等の部
材および部位には、同一符号を付し、重複する説明は省
略する。
【0049】図11において、親機200の円筒状結合
部202の内部で、フランジ223と固定具211との
間には、外縁が円筒状結合部202の内周面202aか
ら延びた円板状の仕切壁216が設けられている。この
仕切壁216の中心部には、第2機体軸方向X2であっ
て、第1人工衛星体である子機100に向かって先細に
延びたテーパ面215aを有する凸部である相対運動防
止ピン215が設けられている。また、仕切壁216の
プッシャ207に対向する位置には、端部266aが平
坦であるプッシュロッド266が貫通する貫通穴216
aが設けられている。一方、子機100の円筒状結合部
121の内周面121aには、プッシュロッド266が
押圧し、子機100の第1機体軸方向X1に対して垂直
な作用面108dを有する中空円板状の受圧板108が
設けられている。受圧板108の内縁は、相対運動防止
ピン215のテーパ面215aに対向して設けられ、親
機200に向かって広がるテーパ面117aを有し、相
対運動防止ピン215に案内される凹部であるガイド穴
117が設けられている。
【0050】子機100と親機200との結合状態にお
いて、X1、X2方向と一致した衛星分離方向XSへ、親
機200から子機100を分離する時には、プッシュロ
ッド266が作用面108dを押圧する。クランプバン
ド28が解放され、親機200と子機100との結合が
解除されると、子機100と親機200は、衛星分離方
向XSへ分離して、相対変位する。この際、子機100
は、ガイド穴117が相対運動防止ピン215によって
案内される。このとき、子機100と親機200とに相
対並進運動、相対回転運動が作用して衛星分離方向XS
に垂直な方向に変位しようとしても、ガイド穴117と
相対運動防止ピン215との間でこれらの相対並進運
動、相対回転運動を制限する拘束力が働く。このように
して、子機100と親機200との間で衛星分離方向で
あるXS方向以外の相対運動が生じない。
【0051】実施の形態5.図12は、この発明の別の
実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示す、
人工衛星の子機100からみた断面図であり、図13
は、図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。図1
2および13において、図1乃至5と同一もしくは同等
の部材および部位には、同一符号を付し、重複する説明
は省略する。
【0052】図13において、子機100の円筒状結合
部121の内周面121aの端部近傍には、内周面12
1aから延びた円板状の仕切壁118が設けられてい
る。この仕切壁118のプッシャ207に対向する位置
には、端部266aが平坦であるプッシュロッド266
が貫通し、案内されるプッシュロッド貫通部であるガイ
ド穴118aが設けられている。
【0053】子機100と親機200との結合状態にお
いて、X1、X2方向と一致した衛星分離方向XSへ、親
機200から子機100を分離する時には、プッシュロ
ッド266が作用面108aを押圧する。クランプバン
ド28が解放され、親機200と子機100との結合が
解除されると、子機100と親機200とは、衛星分離
方向XSへ分離して、相対変位する。この際、子機は1
00は、ガイド穴118aがプッシュロッド266によ
って案内される。このとき、子機100と親機200と
に相対並進運動、相対回転運動が作用して衛星分離方向
Sに垂直な方向に変位しようとしても、ガイド穴11
8aとプッシュロッド266との間でこれらの相対並進
運動、相対回転運動を制限する拘束力が働く。このよう
にして、子機100と親機200との間で相対姿勢誤差
が生じない。
【0054】実施の形態6.図14は、この発明の別の
実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示す、
人工衛星の子機100からみた断面図であり、図15
は、図14のXV-XV線に沿った断面図である。図14お
よび15において、図1乃至5と同一もしくは同等の部
材および部位には、同一符号を付し、重複する説明は省
略する。
【0055】図14において、子機100の円筒状結合
部121の内周面121aの端部近傍には、内周面12
1aから延びた円板状の受圧板128が設けられてい
る。親機200の円筒状結合部202の固定具211に
は、図1のプッシャ207と同一の内部構造を備えたプ
ッシャ227が、親機200の質量中心241を通る第
2機体軸方向X1を中心軸240として、中心軸240
に対して外側に向いた放射方向にプッシュロッド276
を押し出すように4つ配置されている。また、中心軸2
40には、衛星分離方向に子機100を分離するための
プッシュロッド押し出し力を高めるために、図1のプッ
シャ207と同一の内部構造を備えたプッシャ237が
補強的に設けられている。プッシャ237からプッシュ
ロッド286が延びている。プッシュロッド276の先
端は、プッシュロッド276が押圧し、第1機体軸方向
1に垂直な作用面128aに、端部の全面で接触する
ように作用面128aに平行する平坦面が設けられてい
る。
【0056】次に、この発明の実施の形態である人工衛
星の分離姿勢安定装置の作用を説明する。図4に示すよ
うに、子機100並びに親機200には、クランプバン
ド28が子機100と親機200とを結合させておく接
触力に起因する力積がそれぞれ矢印f、gの方向に作用
する。その結果、子機100と親機200は、それぞ
れ、衛星分離方向XSに対して垂直な軸方向XT方向であ
る矢印a、bの方向に相対並進運動を始める。また、同時
に、子機100と親機200のそれぞれの質量中心を通
り、衛星分離方向XSおよび垂直な軸方向XTに共に垂直
な軸XU周りである矢印h、j方向に相対回転運動を始
める。このように連結ボルト部33、34の切断直後に
は、右側の連結ボルト部34はまだ切断されておらず、
またそこにはクランプバンド28の子機100と親機2
00とを結合させておく力である接触力は、解放されて
いないため、その付近のフランジ126、223は、挟
圧駒27によってしっかりと把持されている。したがっ
て、子機100と親機200は、図4に示すように右側
の連結ボルト部34が設けられている配置点Pであたか
も回転ヒンジにより結合されているような運動を行な
う。
【0057】ここで、一般的に、クランプバンド28が
子機100および親機200から完全に解放されるのに
要する時間は、子機100および親機200とが完全に
分離するのに要する時間に比べて無視できるくらい小さ
い。したがってクランプバンド28が子機100および
親機200から完全に解放された後は、図16に示すよ
うな相対姿勢誤差を伴って分離運動を開始する。この
時、プッシュロッド276から作用面128aを介し
て、子機100および親機200との間にはプッシュロ
ッド276の押し出し力に起因する姿勢安定のための復
元モーメントがそれぞれ矢印q、rのように作用する。
【0058】親機200に対する子機100の相対運動
に着目すると、プッシュロッド276によるこの復元モ
ーメントは、子機100の質量中心141からプッシュ
ロッド276による押し出し力作用線242までの距
離、並びに親機200の中心軸240を挟んで対向する
プッシュロッド276間の押し出し力の差に依存してい
る。図17は、この実施の形態におけるプッシュロッド
276の配置と例えば図13のようなプッシュロッド2
66を第2機体軸方向X2に取り付けたプッシュロッド
276の配置とを比較した模式図である。図において点
B、Cは親機200の中心軸240を挟んで対向するプ
ッシュロッド276のプッシャ227への取り付け点、
点D、Eは対応するプッシュロッド276の押しつけ力
が作用する作用面128a上の作用点である。また、点
Hは、子機100の質量中心141を表し、点Iは質量
中心Hからプッシュロッドの押し出し力作用線242に
垂線を下ろした時の足である。一方、点F、Gは図13
のプッシュロッド266の押しつけ力が作用する作用面
108a上の作用点である。点Jは、質量中心141か
らプッシュロッド266の押し出し力作用線243に垂
線を下ろした時の足である。
【0059】図17に示すように、図13および15の
親機200におけるプッシュロッドのプッシャへの取り
付け点B、Cの位置が同じ場合、質量中心Hから押し出
し力作用線方向までの距離HI、HJは、HI>HJの
関係を有する。また、プッシュロッドの押し出し力がプ
ッシャ取り付け点とプッシュロッド作用点の間の距離に
比例するとすれば、対向するプッシュロッド間の押し出
し力の差BD−CE、BF−CGは、BD−CE>BF
−CGの関係を有する。したがって、図13および15
のプッシュロッドの配置におけるそれぞれの復元モーメ
ントであるHIと(BD−CE)との積、HJと(BF
−CG)との積は、HI×(BD−CE)>HJ×(B
F−CG)の関係を有するので、この実施の形態の分離
姿勢安定装置の方が復元モーメントが大きくなり、子機
100と親機200の相対並進運動、相対回転運動を制
限する拘束力が大きくでき、人工衛星を安定な姿勢で二
機の人工衛星を分離することができる。
【0060】実施の形態7.図18は、この発明の別の
実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置を示す、
人工衛星の子機100からみた断面図であり、図19
は、図18のXVIII-XVIII線に沿った断面図である。図
18および19において、子機100の親機200側端
部近傍に、子機100と親機200の相対並進運動、相
対回転運動を制限する拘束力を発生させる仕切壁138
を設けている点が図14および15と異なり、図14乃
至15と同一もしくは同等の部材および部位には、同一
符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】図18において、仕切壁138は、子機1
00の円筒状結合部121の内周面121aの端部近傍
には、内周面121aから延びた円板状であり、中心部
には、プッシュロッド286が貫通するガイド穴138
bが設けられ、外縁部には、プッシュロッド276が貫
通するガイド穴138aが円周上に均等に4つ設けられ
ている。
【0062】子機100と親機200との結合状態にお
いて、X1、X2方向と一致した衛星分離方向XSへ、親
機200から子機100を分離する時には、子機100
は、ガイド穴138a、138bを貫通するプッシュロ
ッド276、286によって衛星分離方向XSへ案内さ
れる。このとき、子機100と親機200とに相対並進
運動、相対回転運動が作用して衛星分離方向XSに垂直
な方向に変位しようとしても、ガイド穴138a、13
8bとプッシュロッド276、286との間でこれらの
相対並進運動、相対回転運動を制限する拘束力が働く。
このようにして、子機100と親機200との間で衛星
分離方向であるXS方向以外の相対運動が生じない。
【0063】実施の形態8.図20は、この発明の別の
実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置の構成を
信号の流れとともに示すフローチャートである。図にお
いて、324は子機100に取り付けられた姿勢セン
サ、325は姿勢センサの検出値に基づく評価関数を計
算する評価関数計算装置、326はタイミング判定装
置、327は子機100のスピン軸方向の角運動量を増
加させる角運動量増加装置であり、いずれも子機100
に取り付けられている。角運動量増加装置327は、例
えばガスジェット等のスラスタである。
【0064】図21は、子機100におけるスピン軸の
ニューテーション運動を示す模式図であり、子機100
に固定された座標系である機体固定座標系の各座標軸方
向単位ベクトルをXB、YB、ZBで表す。また、説明の
便宜上、各単位ベクトルXB、YB、ZBと方向を同じく
する機体固定座標系の各座標軸をXB軸、YB軸、ZB
と呼ぶ。ここで、XBは人工衛星のスピン軸に一致する
ものとし、スピン軸は、スピン軸XBと呼ぶ。同様に慣
性座標系の各座標軸方向単位ベクトルをXI、YI、ZI
で表し、一般性を失うことなくXIを衛星のスピン軸の
進行目標軸方向と仮定し、進行目標軸方向を進行目標軸
方向XIと呼ぶ。また、説明の便宜上、各単位ベクトル
I、Y I、ZIと方向を同じくする慣性座標系の各座標
軸をXI軸、YI軸、ZI軸と呼ぶ。 慣性座標系(XI
I,ZI)に対する機体固定座標系(XB,YB,ZB
の姿勢をクォータニオン(四元数)qを用いて表現し、
そのベクトル部をqv、スカラー部をqsとする。
【0065】図に示すように、子機100が初期に角運
動量ベクトルHWで表される角運動量を持ち、その方向
がスピン軸XBの方向と一致しない場合、スピン軸XB
角運動量ベクトルHWのまわりを回転し円錐運動するニ
ューテーションと呼ばれる運動が発生する。
【0066】角運動量増加装置327の作動によって、
スピン軸XB方向の角運動量ベクトルが瞬時にHSだけ増
加するものとする。このとき、進行目標軸方向XIと子
機100の全角運動量ベクトルの間のなす角θFは次式
を満足する。 cosθF=(HW+HS)・XI/‖HW+HS‖ 上式において、符号・はベクトル間の内積を表し、符号
‖‖はベクトルの大きさを表す。ここでθFが微小であ
ると仮定すれば(θF≪1) θF≒2√{‖HS‖/(HW・XI+‖HS‖)}×√
(qvy 2+qvz 2) となる。ここでqvy、qvzはそれぞれqvのYI,ZI
成分を表している。すなわち、慣性座標系に対する機体
固定座標系の姿勢がニューテーション運動によって変動
する場合、それに伴ってクォータニオンのスピン軸直交
方向成分の二乗和qvy 2+qvz 2の値も変動するが、角運
動量増加装置327の作動後のθFは、この二乗和の平
方根に比例することが分かる。したがって、この二乗和
が最小となるタイミングで角運動量増加装置327を作
動させれば、子機100の角運動量ベクトルの方向を進
行目標軸方向XIに漸近させることができる。図22は
この様子を示す模式図である。角運動量ベクトルの増加
分‖HS‖が初期角運動量の大きさ‖HW‖に比べて十分
に大きければ、子機100のスピン軸が進行目標軸方向
Iに最も接近するタイミングで角運動量増加装置32
7を作動させると、角運動量ベクトルと進行目標軸方向
とのなす角は、作動前と作動後で θF<θI (添字Fは作動後、添字Iは作動前) の関係が成立し、角運動量ベクトルを進行目標軸方向X
Iに漸近させることができる。さらにニューテーション
角φについても図に示すように作動前と作動後で φF<φI の関係が成立し、これも同時に減少させることができ
る。その結果、子機100の衛星のスピン軸XBを進行
目標軸方向XIに漸近させることができる。
【0067】図20において子機100に搭載された姿
勢センサ324によって、慣性座標系に対する機体固定
座標系の姿勢(クォータニオン)が検出される。姿勢セ
ンサ324により得られた姿勢値であるクォータニオン
qの値を評価関数計算装置325に入力し、検出された
クォータニオンのスピン軸直交方向成分すなわちqのY
I,ZI軸成分のスカラー量であるqvy、qvzについて、
評価関数計算装置325によって、その二乗和であり、
評価値となるqvy 2+qvz 2の値を計算して評価関数計算
装置325からタイミング判定装置326に出力する。
タイミング判定装置326からこの値が最小になる時期
に、角運動量増加装置327への作動指令信号を出力す
る。すなわち、計算された値qvy 2+qvz 2の最小値の場
合にのみ角運動量増加装置327を作動させ、子機10
0のスピン速度を加速させる。これによって特別な姿勢
制御装置を用いることなしに衛星のスピン軸XBを進行
目標軸方向XIに漸近させるとともに、子機100に衛
星にジャイロ剛性による姿勢安定性を与えることができ
る。
【0068】なお、この実施の形態では、姿勢センサ3
24、評価関数計算装置325、タイミング判定装置3
26、角運動量増加装置327を子機100に搭載し
て、親機200と子機100が分離する際及びその後の
子機100の姿勢を安定させることができるが、これら
のセンサおよび装置を親機200にも同様に搭載すれ
ば、分離する際及びその後の親機200の姿勢を安定さ
せることができる。
【0069】また、この実施の形態では、子機100の
姿勢の表現にクォータニオンを用いたが、これに限定す
るものではなく、例えばオイラー角を用いて同様の効果
を得ることができる。また角運動量増加装置327とし
て、図23に示すように子機100のスピン軸に直交す
る平面内の円周方向に、スラスタ328、329、33
0、331を配置すればよい。
【0070】実施の形態9.図24は、この発明の別の
実施の形態である人工衛星の分離姿勢安定装置の構成を
信号の流れとともに示すフローチャートである。図にお
いて、332は人工衛星スピン軸と直交する二軸に取り
付けられた角速度センサ(例えば、ジャイロ)、333
は角速度センサの検出値に基づく位相計算装置、334
はタイミング判定装置、335は子機100のスピン軸
方向の角運動量を増加させる角運動量増加装置であり、
いずれも子機100に搭載されている。角速度センサ3
32は、例えば、ジャイロであり、角運動量増加装置3
35は、例えばガスジェット等のスラスタであり、その
配置は図23と同様である。
【0071】図25は、子機100のスピン軸に直交す
る角速度成分のYB−ZB平面における位相を示す模式図
である。図21と同様に、機体固定座標系(XB,YB
B)、並びに慣性座標系(XI,YI,ZI)を定める。
子機100の角速度をωで表現し、そのXB、YB、ZB
軸成分をそれぞれωx、ωy、ωzで表す。
【0072】親機200から分離する子機100が、角
運動量増加装置35の作動前に子機100がニューテー
ション運動を行なっている場合、子機100の角速度の
スピン軸直交方向成分は次式で与えられる。 ωy=ωy0cos(Ωt)−ωz0sin(Ωt) ωz=ωy0sin(Ωt)−ωz0cos(Ωt) ここでωy0,ωz0はそれぞれωy,ωzの初期値であり、
tは時刻を表す。これを図25に示すYB―ZB平面で見
れば、角速度成分(ωy,ωz)が原点Oを中心に、速度
Ωで回転しているように見える。
【0073】仮に初期状態で子機100のスピン軸XB
が進行目標軸方向XIと一致しているとすれば、実施の
形態8で示した評価関数値qvy 2+qvz 2の値は、角速度
ωy,ωzを用いて次のように表わされる。 qvy 2+qvz 2=(ωy0 2+ωz0 2)/Ω2×sin2(Ωt
/2) したがって角運動量増加装置335の作動後の進行目標
軸方向XIと子機100の角運動量ベクトルとの間のな
す角は近似的に次式で与えられる。 θF≒2√{‖HS‖/(HW・XI+‖HS‖)}×√
{(ωy0 2+ωz0 2)/Ω2}×|sin(Ωt/2)| すなわちΩt=2nπ(n=1,2,・・・)なるタイ
ミングで角運動量増加装置335を作動させることによ
って、子機100の角運動量ベクトルの方向を進行目標
軸方向XIに漸近させることができる。これは図25の
B―ZB平面で見れば、子機100のスピン軸直交方向
の角速度(ωy,ωz)の位相が、初期値(ωy0,ωz0
の位相と同じになる時である。ここで角運動量ベクトル
の増加分‖HS‖が初期角運動量の大きさ‖HW‖に比べ
て十分に大きければ、スピン軸XBの方向はほぼ衛星の
角運動量ベクトルHW+HSの方向と一致し、ニューテー
ション運動の振幅も同時に減少させることができる。
【0074】図24において、角速度センサ332によ
り子機100のスピン軸直交方向の角速度ωy、ωZが検
出される。次に位相計算装置333によって、検出され
た角速度のYB―ZB平面における位相が計算される。次
に、この計算値に基づきタイミング判定装置334で角
運動量増加装置335の作動信号を生成する。すなわち
計算された位相が初期角速度の位相と同一な場合にのみ
角運動量増加装置335を作動させ、子機100のスピ
ン速度を加速させる。これによって特別な姿勢制御装置
を用いることなしに、子機100のスピン軸XBを進行
目標軸方向XIに漸近させるとともに、子機100にジ
ャイロ剛性による姿勢安定性を与えることができる。
【0075】なお、この実施の形態では、角速度センサ
332、位相計算装置333、タイミング判定装置33
4、角運動量増加装置335を子機100に搭載して、
親機200と子機100が分離する際及びその後の子機
100の姿勢を安定させることができるが、これらのセ
ンサおよび装置を親機200にも同様に搭載すれば、分
離する際及びその後の親機200の姿勢を安定させるこ
とができる。
【0076】
【発明の効果】この発明に係る人工衛星の分離姿勢安定
装置は、第1および第2の人工衛星体のそれぞれの結合
部の周方向に設けられた複数の結合部材により、第1人
工衛星体と第2人工衛星体とを分離可能な状態で結合す
る人工衛星の分離姿勢安定装置において、第1人工衛星
体と第2人工衛星体とを分離する方向である衛星分離方
向への人工衛星分離時に、衛星分離方向に対して垂直な
軸方向に発生する相対並進運動、および第1人工衛星体
と第2人工衛星体とのそれぞれの質量中心を通り、この
垂直な軸と衛星分離方向に互いに垂直な軸周りに発生す
る相対回転運動を制限する摩擦力あるいは拘束力を与え
るので、人工衛星結合部切断タイミングに時間差が存在
しても分離される人工衛星体の姿勢を安定して分離でき
る。また、人工衛星体にスピン運動等の姿勢安定のため
の付加的な運動並びにその運動を実現するための付加的
な姿勢制御装置を用いることなしに、結合している二機
の人工衛星体間で安定して分離できる。
【0077】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第2人工衛星体に、プッシュロッド
と、プッシュロッドを第2人工衛星体の機体軸方向であ
る第2機体軸方向に押し出す押し出し力を発生するプッ
シャと、プッシュロッドの端部に回転自在に連結する摩
擦パッドとを備え、第1人工衛星体に、摩擦パッドが押
圧し、第1人工衛星体の機体軸方向である第1機体軸方
向に垂直な作用面を備え、摩擦パッドが作用面に押し出
し力を作用させ、摩擦パッドと作用面との間に第1機体
軸方向に垂直な摩擦力を発生させるので、摩擦パッドが
作用面に対して全面で接触するので、第1人工衛星体と
第2人工衛星体との間で相対姿勢誤差が生じ、第1機体
軸と第2機体軸との方向が一致しなくても、第1機体軸
と第2機体軸との方向が一致している場合と同じ接触面
積を確保することができる。このため、第1機体軸方向
に垂直な摩擦力が十分発生するので、第1人工衛星体と
第2人工衛星体との間での相対並進運動および相対回転
運動を制限し、減衰させることができる。
【0078】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第2人工衛星体に、プッシュロッド
と、プッシュロッドを第2機体軸方向に押し出す押し出
し力を発生するプッシャとを備え、第1人工衛星体に、
プッシュロッドが押圧し、プッシュロッドが係合する凹
部を有する作用面を備えているので、簡単な構造で、プ
ッシュロッドと凹部との間に、第1人工衛星体と第2人
工衛星体との間での相対並進運動および相対回転運動を
制限する摩擦力および拘束力を発生させ、第1人工衛星
体と第2人工衛星体との相対並進運動および相対回転運
動を制限し、減衰させることができる。
【0079】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第2人工衛星体に、プッシュロッド
と、プッシュロッドを第2機体軸方向に押し出す押し出
し力を発生するプッシャと、第2機体軸方向の第1人工
衛星体に向かって先細に延びたテーパ面を有する凸部と
を備え、第1人工衛星体に、プッシュロッドが押圧し、
第1機体軸方向に垂直な作用面と、凸部に対向して設け
られ、第1機体軸方向の第2人工衛星体に向かって広が
るテーパ面を有し、凸部に案内される凹部を備えている
ので、凸部に案内されながら、第1人工衛星体を衛星分
離方向に確実に分離できる。また、簡単な構造で、凸部
と凹部との間に、第1人工衛星体と第2人工衛星体との
間での相対並進運動および相対回転運動を制限する拘束
力を発生させ、第1人工衛星体と第2人工衛星体との相
対並進運動および相対回転運動を確実に制限し、減衰さ
せることができる。
【0080】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第2人工衛星体に、プッシュロッド
と、プッシュロッドを第2機体軸方向に押し出す押し出
し力を発生するプッシャとを備え、第1人工衛星体に、
プッシュロッドが押圧し、第1機体軸方向に垂直な作用
面と、プッシュロッドが貫通し、案内されるプッシュロ
ッド貫通部とを備えているので、第1人工衛星体を分離
するプッシュロッドの外周部が、第1人工衛星体と第2
人工衛星体との間での相対並進運動および相対回転運動
を制限する拘束力を発生させるので、別部品を設けなく
ても、第1人工衛星体と第2人工衛星体との相対並進運
動および相対回転運動を確実に制限し、減衰させること
ができる。
【0081】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第2人工衛星体に、プッシュロッド
と、第2人工衛星体の質量中心を通る第2機体軸方向を
中心軸として、中心軸に対して外側に向いた放射方向
に、プッシュロッドを押し出す押し出し力を発生するプ
ッシャとを備え、第1人工衛星体に、プッシュロッドが
押圧し、第1機体軸方向に垂直な作用面を備えているの
で、プッシュロッドの押し出す方向を変えて既存のプッ
シャを配置するだけで、第1人工衛星体と第2人工衛星
体との相対並進運動および相対回転運動を確実に制限
し、減衰させることができる。
【0082】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第1人工衛星体に、プッシュロッド
が貫通し、案内されるプッシュロッド貫通部とを備えて
いるので、第1人工衛星体と第2人工衛星体との相対並
進運動および相対回転運動をさらに確実に制限し、減衰
させることができる。
【0083】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第1人工衛星体のスピン軸方向の角
運動量を増加させる角運動量増加手段と、第1人工衛星
体の進行目標軸方向に対する第1人工衛星体のスピン軸
姿勢を検出する姿勢検出手段と、姿勢検出手段から得ら
れた姿勢値に基づく評価関数計算手段と、評価関数計算
手段から得られた評価値に基づき、角運動量増加手段の
作動するタイミングを生成するタイミング生成手段とを
備え、人工衛星分離時に、ニューテーション運動をする
第1人工衛星体のスピン軸方向を進行目標軸方向に漸近
させるように角運動量増加手段を作動させるので、人工
衛星の分離等に伴う外乱により第1、第2人工衛星体に
ニューテーション運動が発生してもスピン軸を進行目標
軸方向に漸近させることが可能で、さらに外乱等に対す
る姿勢安定性を確保するためにスピンの加速を行なって
ジャイロ剛性を確保する際に、スピンの加速に要する以
外の特別な姿勢制御装置並びに複雑な姿勢制御アルゴリ
ズムを用いることなしに、人工衛星体の姿勢を安定させ
ることができる。
【0084】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、第1人工衛星体のスピン軸方向の角
運動量を増加させる角運動量増加手段と、第1人工衛星
体のスピン軸に直交する平面内の角速度を検出する角速
度検出手段と、角速度検出手段から得られた角速度に基
づく位相計算手段と、位相計算手段から得られた位相値
に基づき、角運動量増加手段の作動するタイミングを生
成するタイミング生成手段とを備え、人工衛星分離時
に、ニューテーション運動をする第1人工衛星体のスピ
ン軸方向を進行目標軸方向に漸近させるように角運動量
増加手段を作動させるので、人工衛星の分離等に伴う外
乱により第1、第2人工衛星体にニューテーション運動
が発生してもスピン軸を進行目標軸方向に漸近させるこ
とが可能で、さらに外乱等に対する姿勢安定性を確保す
るためにスピンの加速を行なってジャイロ剛性を確保す
る際に、スピンの加速に要する以外の特別な姿勢制御装
置並びに複雑な姿勢制御アルゴリズムを用いることなし
に、人工衛星体の姿勢を安定させることができる。
【0085】また、この発明に係る人工衛星の分離姿勢
安定装置によれば、結合部材が、分離時に第1、第2人
工衛星体から離脱し、分離姿勢安定装置が、第2人工衛
星体に、第1、第2人工衛星体から離脱した結合部材を
受け止め収容する結合部材収容部を備えているので、第
1人工衛星体と第2人工衛星体との間での相対並進運動
および相対回転運動を制限する摩擦力および拘束力を高
められ、第1人工衛星体と第2人工衛星体との間での相
対並進運動および相対回転運動をさらに減衰させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の人工衛星の分離姿
勢安定装置を子機100側から見た断面図である。
【図2】 図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1の人工衛星の分離姿
勢安定装置のプッシャ、プッシュロッド、ボールジョイ
ント、摩擦パッド、固定具211の構造の詳細を示す側
面図である。
【図4】 この発明の実施の形態1の人工衛星の分離姿
勢安定装置におけるの親機と子機との分離時に生じる親
機と子機の運動を示す模式図である。
【図5】 この発明の実施の形態1の人工衛星の分離姿
勢安定装置の人工衛星分離時における断面図である。
【図6】 この発明の実施の形態2の人工衛星の分離姿
勢安定装置の断面図である。
【図7】 この発明の実施の形態3の人工衛星の分離姿
勢安定装置を子機100側から見た断面図である。
【図8】 図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【図9】 この発明の実施の形態3の人工衛星の分離姿
勢安定装置におけるの親機と子機との分離時に生じる親
機と子機の運動を示す模式図である。
【図10】 この発明の実施の形態4の人工衛星の分離
姿勢安定装置を子機100側から見た断面図である。
【図11】 図10のXI-XI線に沿った断面図である。
【図12】 この発明の実施の形態5の人工衛星の分離
姿勢安定装置を子機100側から見た断面図である。
【図13】 図12のXIII-XIII線に沿った断面図であ
る。
【図14】 この発明の実施の形態6の人工衛星の分離
姿勢安定装置を子機100側から見た断面図である。
【図15】 図14のXV-XV線に沿った断面図である。
【図16】 この発明の実施の形態6の人工衛星の分離
姿勢安定装置における親機と子機とが完全に分離した後
の親機と子機の運動を示す模式図である。
【図17】 この発明の実施の形態6の人工衛星の分離
姿勢安定装置における親機と子機に生じる復元モーメン
トを示す模式図である。
【図18】 この発明の実施の形態7の人工衛星の分離
姿勢安定装置を子機100側から見た断面図である。
【図19】 図18のXIX-XIX線に沿った断面図であ
る。
【図20】 この発明の実施の形態8の人工衛星の分離
姿勢安定装置の構成を信号の流れとともに示すフローチ
ャートである。
【図21】 この発明の実施の形態8の人工衛星の分離
姿勢安定装置における人工衛星のスピン軸のニューテー
ション運動を示す模式図である。
【図22】 この発明の実施の形態8の人工衛星の分離
姿勢安定装置の角運動量増加装置の作動前と作動後で、
角運動量ベクトル並びにスピン軸が進行目標軸方向に漸
近する様子を示す模式図である。
【図23】 この発明の実施の形態8の人工衛星の分離
姿勢安定装置の角運動量増加装置の配置を示す模式図で
ある。
【図24】 この発明の実施の形態9の人工衛星の分離
姿勢安定装置の構成を信号の流れとともに示すフローチ
ャートである。
【図25】 この発明の実施の形態9の人工衛星の分離
姿勢安定装置の第1人工衛星体のスピン軸に直交する角
速度成分のYB−ZB平面における位相を示す模式図であ
る。
【図26】 従来の人工衛星の分離装置の概略断面図で
ある。
【図27】 従来のバンド式結合装置を示す断面図であ
る。
【図28】 図27のXXVIII-XXVIII線に沿った断面図
である。
【図29】 従来の人工衛星の姿勢制御装置の概略を斜
視図である。
【図30】 従来のサイドジェット装置の噴射方向とト
ルクの方向との関係を示す模式図である。
【図31】 従来のサイドジェット装置の噴射弁の配置
を示す模式図である。
【図32】従来のバンド式結合装置を用いた人工衛星の
分離時にクランプバンドが片切れの状態となった場合の
人工衛星に作用する接触力を示す模式図である。
【符号の説明】
28 クランプバンド、100 子機(第1人工衛星
体)、108a、108b、108d 作用面、108
c 凹部、141、241 質量中心、200親機(第
2人工衛星体)、206、266、276、286 プ
ッシュロッド、207、227、237 プッシャ、2
10 摩擦パッド、214 バンドキャッチャ(結合部
材収容部)、215 相対運動防止ピン(凸部)、21
5a テーパ面、216a 貫通穴(プッシュロッド貫
通部)、240 中心軸、324姿勢センサ(姿勢検出
手段)、325 評価関数計算装置、326、334タ
イミング判定装置、327、335 角運動量増加装
置、、XS 衛星分離方向、X1 第1機体軸方向、X2
第2機体軸方向、XB スピン軸、XI 進行目標軸方
向。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1および第2人工衛星体のそれぞれの
    結合部の周方向に設けられた複数の結合部材により、上
    記第1人工衛星体と上記第2人工衛星体とを分離可能な
    状態で結合する人工衛星の分離姿勢安定装置において、 上記第1人工衛星体と上記第2人工衛星体とを分離する
    方向である衛星分離方向への人工衛星分離時に、上記衛
    星分離方向に対して垂直な軸方向に発生する相対並進運
    動、および上記第1人工衛星体と上記第2人工衛星体と
    のそれぞれの質量中心を通り、上記垂直な軸と上記衛星
    分離方向に互いに垂直な軸周りに発生する相対回転運動
    を制限する摩擦力あるいは拘束力を与える人工衛星の分
    離姿勢安定装置。
  2. 【請求項2】 上記分離姿勢安定装置が、 上記第2人工衛星体に、 プッシュロッドと、 上記プッシュロッドを上記第2人工衛星体の機体軸方向
    である第2機体軸方向に押し出す押し出し力を発生する
    プッシャと、 上記プッシュロッドの端部に回転自在に連結する摩擦パ
    ッドとを備え、 上記第1人工衛星体に、 上記摩擦パッドが押圧し、上記第1人工衛星体の機体軸
    方向である第1機体軸方向に垂直な作用面を備え、 上記摩擦パッドが上記作用面に上記押し出し力を作用さ
    せ、上記摩擦パッドと上記作用面との間に上記第1機体
    軸方向に垂直な摩擦力を発生させることを特徴とする請
    求項1記載の人工衛星の分離姿勢安定装置。
  3. 【請求項3】 上記分離姿勢安定装置が、 第2人工衛星体に、 プッシュロッドと、 上記プッシュロッドを上記第2機体軸方向に押し出す押
    し出し力を発生するプッシャとを備え、 第1人工衛星体に、 上記プッシュロッドが押圧し、上記プッシュロッドが係
    合する凹部を有する作用面を備えたことを特徴とする請
    求項1記載の人工衛星の分離姿勢安定装置。
  4. 【請求項4】 上記分離姿勢安定装置が、 第2人工衛星体に、 プッシュロッドと、 上記プッシュロッドを上記第2機体軸方向に押し出す押
    し出し力を発生するプッシャと、 上記第2機体軸方向の第1人工衛星体に向かって先細に
    延びたテーパ面を有する凸部とを備え、 第1人工衛星体に、 上記プッシュロッドが押圧し、上記第1機体軸方向に垂
    直な作用面と、 上記凸部に対向して設けられ、第1機体軸方向の上記第
    2人工衛星体に向かって広がるテーパ面を有し、上記凸
    部に案内される凹部を備えたことを特徴とする請求項1
    記載の人工衛星の分離姿勢安定装置。
  5. 【請求項5】 上記分離姿勢安定装置が、 第2人工衛星体に、 プッシュロッドと、 上記プッシュロッドを上記第2機体軸方向に押し出す押
    し出し力を発生するプッシャとを備え、 第1人工衛星体に、 上記プッシュロッドが押圧し、上記第1機体軸方向に垂
    直な作用面と、 上記プッシュロッドが貫通し、案内されるプッシュロッ
    ド貫通部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の人
    工衛星の分離姿勢安定装置。
  6. 【請求項6】 上記分離姿勢安定装置が、 第2人工衛星体に、 プッシュロッドと、 第2人工衛星体の質量中心を通る上記第2機体軸方向を
    中心軸として、上記中心軸に対して外側に向いた放射方
    向に、上記プッシュロッドを押し出す押し出し力を発生
    するプッシャとを備え、 第1人工衛星体に、 上記プッシュロッドが押圧し、上記第1機体軸方向に垂
    直な作用面を備えたことを特徴とする請求項1記載の人
    工衛星の分離姿勢安定装置。
  7. 【請求項7】 上記分離姿勢安定装置が、 第1人工衛星体に、 上記プッシュロッドが貫通し、案内されるプッシュロッ
    ド貫通部とを備えたこと特徴とする請求項6記載の人工
    衛星の分離姿勢安定装置。
  8. 【請求項8】 上記第1人工衛星体のスピン軸方向の角
    運動量を増加させる角運動量増加手段と、 上記第1人工衛星体の進行目標軸方向に対する第1人工
    衛星体のスピン軸姿勢を検出する姿勢検出手段と、 上記姿勢検出手段から得られた姿勢値に基づく評価関数
    計算手段と、 上記評価関数計算手段から得られた評価値に基づき、上
    記角運動量増加手段の作動するタイミングを生成するタ
    イミング生成手段とを備え、 上記人工衛星分離時に、ニューテーション運動をする上
    記第1人工衛星体の上記スピン軸方向を上記進行目標軸
    方向に漸近させるように上記角運動量増加手段を作動さ
    せることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の
    人工衛星の分離姿勢安定装置。
  9. 【請求項9】 結合部材により、第1人工衛星体と第2
    人工衛星体とを分離可能な状態で結合する人工衛星の分
    離姿勢安定装置において、 上記第1人工衛星体のスピン軸方向の角運動量を増加さ
    せる角運動量増加手段と、 上記第1人工衛星体の進行目標軸方向に対する第1人工
    衛星体のスピン軸姿勢を検出する姿勢検出手段と、 上記姿勢検出手段から得られた姿勢値に基づく評価関数
    計算手段と、 上記評価関数計算手段から得られた評価値に基づき、上
    記角運動量増加手段の作動するタイミングを生成するタ
    イミング生成手段とを備え、 上記人工衛星分離時に、ニューテーション運動をする上
    記第1人工衛星体の上記スピン軸方向を上記進行目標軸
    方向に漸近させるように上記角運動量増加手段を作動さ
    せることを特徴とする人工衛星の分離姿勢安定装置。
  10. 【請求項10】 上記第1人工衛星体のスピン軸方向の
    角運動量を増加させる角運動量増加手段と、 上記第1人工衛星体の上記スピン軸に直交する平面内の
    角速度を検出する角速度検出手段と、 上記角速度検出手段から得られた角速度に基づく位相計
    算手段と、 上記位相計算手段から得られた位相値に基づき、上記角
    運動量増加手段の作動するタイミングを生成するタイミ
    ング生成手段とを備え、 上記人工衛星分離時に、ニューテーション運動をする上
    記第1人工衛星体の上記スピン軸方向を上記進行目標軸
    方向に漸近させるように上記角運動量増加手段を作動さ
    せることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の
    人工衛星の分離姿勢安定装置。
  11. 【請求項11】 結合部材により、第1人工衛星体と第
    2人工衛星体とを分離可能な状態で結合する人工衛星の
    分離姿勢安定装置において、 上記第1人工衛星体のスピン軸方向の角運動量を増加さ
    せる角運動量増加手段と、 上記第1人工衛星体の上記スピン軸に直交する平面内の
    角速度を検出する角速度検出手段と、 上記角速度検出手段から得られた角速度に基づく位相計
    算手段と、 上記位相計算手段から得られた位相値に基づき、上記角
    運動量増加手段の作動するタイミングを生成するタイミ
    ング生成手段とを備え、 上記人工衛星分離時に、ニューテーション運動をする上
    記第1人工衛星体の上記スピン軸方向を上記進行目標軸
    方向に漸近させるように上記角運動量増加手段を作動さ
    せることを特徴とする人工衛星の分離姿勢安定装置。
  12. 【請求項12】 上記結合部材が、分離時に上記第1、
    第2人工衛星体から離脱し、 上記分離姿勢安定装置が、 上記第2人工衛星体に、上記第1、第2人工衛星体から
    離脱した上記結合部材を受け止め収容する結合部材収容
    部を備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれ
    か記載の人工衛星の分離姿勢安定装置。。
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