JP2000236892A - 高分子化合物微粒子及びその製造方法 - Google Patents

高分子化合物微粒子及びその製造方法

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JP2000236892A
JP2000236892A JP11039955A JP3995599A JP2000236892A JP 2000236892 A JP2000236892 A JP 2000236892A JP 11039955 A JP11039955 A JP 11039955A JP 3995599 A JP3995599 A JP 3995599A JP 2000236892 A JP2000236892 A JP 2000236892A
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acid
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Yuji Kawabata
祐司 川畑
Takeshi Imamura
剛士 今村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 in situで製造することのできる高機能な高
分子化合物を提供することを目的とする。 【解決手段】 微生物由来の高分子化合物微粒子(10
1)であって、その組成が半径方向に異なっている(1
03、105)ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半径方向に高分子
組成が変化した高分子化合物微粒子及びその製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】高分子材料は現代の産業や生活に不可欠
のものであり、安価軽量であること、成形性がよいこと
などから家電品の筐体をはじめ包装材や緩衝材、あるい
は繊維材料など多岐にわたって使用されている。一方、
これら高分子材料の安定な性質を利用して、高分子の分
子鎖にいろいろな機能を発現する置換基を配して、液晶
材料やコート剤などの各種機能材料も得られている。こ
れら機能材料は構造材料としての高分子よりも付加価値
が高いため、少量生産でも大きな市場ニーズが期待でき
る。このような高分子機能材料はこれまで高分子の合成
プロセスの中で、あるいは合成した高分子を置換基で修
飾することにより合成化学的に得られている。高分子機
能材料の基本骨格となる高分子はほとんどの場合、石油
化学により合成的に得られている。ポリエチレン、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレ
ン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、などが典型
的な例である。
【0003】一方、近年の環境保護に対する認識の高ま
りとともに、微生物に高分子化合物を製造させる研究が
活発に行われてきており、また実用化されている。具体
的には例えば脂肪族ポリエステル(商品名:バイオポー
ル;モンサント社製)、味の素社製のセルロース、多糖
フィルム(商品名:プルラン;林原商事社製)などが微
生物由来の高分子化合物として知られている。また市販
されている生分解性プラスチックの他の例としては、ダ
イセル化学工業(商品名セルグリーン)、昭和高分子
(商品名ビオノーレ)、日本触媒(商品名ルナーレS
E)、島津製作所(商品名ラクティ)、三井東圧化学
(商品名レイシア)、あるいはカーギル(商品名エコプ
レイ)などが挙げられる。また、ポリビニルアルコール
ではクラレ(商品名ポバール)、多糖では日本合成化学
工業(商品名マタービー)、チッソ(商品名ノボン)、
日本コーンスターチ(商品名エバーコーン)、ダイセル
化学工業(商品名セルグリーン)、日本触媒(商品名ル
ナーレZT)、あるいはアイセロ化学(商品名ドロンCC)
などが挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この様に、環境保護の
観点から微生物を用いて製造される高分子化合物に対し
ては、従来の高分子化合物の代替を目的としてより多く
の機能性が求められることが予想される。
【0005】ところで本願発明者らは、高分子化合物に
大きな付加価値を与える為の一つの要素技術として高分
子化合物微粒子の径方向にその組成を変化させる技術に
ついて着目してきた。このように高分子化合物微粒子の
径方向の組成を段階的に、或いは連続的に変化させるこ
とによって高分子化合物微粒子に複数の機能性を担持さ
せることができる。このような微粒子の具体的な用途と
しては、例えば高分子化合物に薬剤成分を内包させた
り、高分子化合物に内包させた薬剤が外部に徐放される
ような治療薬等が挙げられる。
【0006】特開平05-009132では生分解性高分子に有
機合成的に気体あるいは薬剤を内包させた微粒子が開示
されている。この方法では、内包されたガス成分が生体
内の超音波造影剤として働き、また薬剤により治療効果
を得ることができる。さらに、特開平05-221855では乳
酸とグリコール酸の共重合体を合成し、これに薬理活性
をもつペプチドを内包させた微粒子が開示されている。
生体内に入れられた微粒子は徐々に分解されペプチド成
分が少しずつ溶解するため、持続性のある投薬が可能で
ある。いずれの提案も生分解性高分子はin vitroで微粒
子化され、これに種々の機能が付加されている。しかし
かかる高分子微粒子をin situで合成することが
できれば、その製造コストを大幅に低減できることが予
想される。そこで本発明の目的は、in situで製造する
ことのできる高機能な高分子化合物を提供することにあ
る。また本発明は、径方向に組成の異なる高分子化合物
微粒子の効率的な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すること
のできる高分子化合物微粒子の一実施態様は、微生物由
来の高分子化合物微粒子であって、その組成が半径方向
に異なっていることを特徴とする。
【0008】また上記目的を達成することのできる高分
子化合物微粒子の製造方法は、半径方向に異なる組成を
有する高分子化合物微粒子の製造方法であって、in sit
uで高分子化合物微粒子を合成可能な微生物を、該高分
子化合物の原料となる化合物を栄養として含む培地で培
養し、該微生物の細胞内に該高分子化合物微粒子を製造
させる工程を有し、該栄養の濃度及び組成の少なくとも
一方を該培養工程の中で変化させることを特徴とする。
【0009】即ち本発明者らの種々の検討の結果、微生
物を利用して、in situで高分子化合物微粒子を
合成する過程において、微生物に与える栄養素の種類や
濃度を連続的あるいは段階的に変化させることにより、
該高分子化合物微粒子の組成を径方向に、連続的あるい
は段階的に変化させることができるとの知見を得た。ま
たこのようにして合成した高分子化合物微粒子をそのま
まの形状・性状を維持しつつ微生物体外に取り出すこと
ができるとの知見をも同時に得た。本発明はかかる知見
に基づきなされたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施態様にかか
る高分子化合物微粒子101の模式的断面図である。高
分子化合物微粒子101は、基本的には例えばヒドロキ
シアルカノエートを主成分とする高分子化合物によって
形成されている。しかしその組成は図1に示す様に領域
103及び105とで異なっている。具体的には中心領
域103がポリ-3-ヒドロキシ酪酸(以降「P-(3HB)」と
略)、周囲領域105がポリ-3-ヒドロキシ吉草酸(以降
「P−(3HV)」と略)で構成されている。そしてこ
の高分子化合物微粒子は、例えばBurkholderia cepacia
KK01(FERM BP−4235)をピルビン酸ナトリウムを含む
培地中で所定の時間培養し、次いで該微生物を吉草酸ナ
トリウムナトリウムを含む培地中で所定時間培養するこ
とによって得ることができる。
【0011】本発明の最大の特徴事項の内の一つは、微
生物の代謝反応を利用した高分子材料の合成において、
高分子の生合成時に高分子の原料となる栄養素の組成を
連続的あるいは段階的に変化させることにより、微粒子
の半径方向において高分子の平均的な組成が連続的ある
いは段階的に変化した高分子微粒子複合材を合成でき、
またこれを微生物からその形状及び性状を維持しつつ、
微生物から単離することで、マイクロメートルオーダー
の均一な粒径をもつ高分子化合物微粒子や所望の粒径分
布をもつ生分解性の高分子化合物微粒子を製造する点に
ある。
【0012】(微生物)半径方向に組成の異なる高分子
化合物微粒子をin situで製造させる微生物とし
ては、培地に含まれる栄養を利用してin situで
高分子化合物微粒子を合成する能力を有していれば、そ
の属種は特に制限されるものではない。例えば、Saccha
romyces, Hansenula, Candida, Micrococcus, Staphylo
coccus,Streptococcus, Leuconostoa, Lactobacillus,
Corynebacterium, Arthrobacter, Bacillus, Clostridi
um, Norcardia, Rhodococcus, Rhodospirillum rubrum,
Neisseria, Escherichia, Enterobacter, Serratia, Ac
hromobacter, Aeromonas, Alcaligenes, Flavobacteriu
m, Acetobacter, Moraxella, Nitrosomonas, Nitrobact
er, Thiobacillus, Glumonobacter, Pseudomonas, Xant
homonas, Burkholderia, Vibrio, Comamonas, Proteus
vulgarisなどの細菌、糸状菌、酵母などから適宜選択し
て用いることができる。また、より高い高分子合成能力
をもつ微生物を人為的な変異や遺伝子操作などにより作
製したものを用いてもよい。さらに、Synechococcus s
p., Anabaena variabilisなどの藻類も利用可能であ
る。例えば、遺伝子組み換え等により微生物内で大量に
合成された高分子微粒子複合材がほぼその細胞を大きさ
に匹敵する場合、微生物種を選択することにより微粒子
の形状を規定することができる。
【0013】(高分子化合物微粒子組成)上記したよう
な微生物内で合成される高分子化合物微粒子は、用いる
微生物及び培地に含ませる栄養によっても異なるが、例
えば微生物としてBurkholderia cepacia KK01(FERM BP
−4235)をピルビン酸ナトリウムを含む培地で培養する
ことによってP−(3HB)をin situで合成で
き、また培地の栄養を吉草酸ナトリウムに変えた場合に
はP−(HV)をin situで合成できる。
【0014】Burkholderia cepacia KK01以外にも、例
えばRalstonia eutropha TB64株(FERM P-16980)、Alcal
igenes sp. TL2株(FERM P-14642)、Pseudomonas putida
(ATCC23289)、Alcaligenes latus(ATCC29712)、Aeromo
nas cavie(ATCC13137)、Bacillus megateruim(ATCC1156
1)、Comamonas acidovorans(ATCC9355)などでも上記の
高分子化合物微粒子をin situで合成可能であ
る。
【0015】また培地中の栄養を3−ヒドロキシプロピ
オン酸とした場合には、上記の微生物内においてポリ-3
-ヒドロキシプロピオン酸を合成でき、更に培地中の栄
養を5−クロロ吉草酸ナトリウムとすることで、ポリ-5
-クロロ-3-ヒドロキシ吉草酸をin situで合成可
能である。
【0016】またポリ-3-ヒドロキシプロピオン酸の3
位の炭素に結合した水素を炭素鎖で置換した高分子のホ
モポリマーあるいはこれら高分子の共重合体、ポリ-4-
ヒドロキシ吉草酸、またはポリ-4-ヒドロキシ吉草酸の
5位の炭素に結合した水素を炭素鎖で置換した高分子の
ホモポリマーあるいはこれら高分子の共重合体もins
ituで合成可能である。より具体的には、ポリ-3-ヒ
ドロキシプロピオン酸、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリ-
3-ヒドロキシ吉草酸、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸などで
ある。このほか、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ
ブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ
エチレンスクシネートなどの脂肪族ポリエステル、デン
プン、酢酸セルロース、キトサンなどの多糖、ポリビニ
ルアルコール、ポリグルタミン酸、オリプレニルフェノ
ールなどのホモポリマーやこれらの共重合体、あるいは
これらを基本骨格として炭素鎖を側鎖に有する高分子で
ある。炭素鎖としては炭素数1〜10の直鎖、末端に二
重結合を有する炭素数1〜10の直鎖、末端にカルボキ
シル基を有する炭素数1〜10の直鎖、末端にハロゲン
基を有する炭素数1〜10の直鎖、末端に芳香環を有す
る炭素数1〜10の直鎖、あるいは末端に発色団を有す
る炭素数1〜10の直鎖などが挙げられる。
【0017】更に、微生物内で合成される高分子微粒子
複合材の形状と性状は上記のような微生物の種類のほか
に、高分子の生合成時の環境条件によって制御される。
例えば、アエロモナス・キャビエという微生物がもつ高
分子重合酵素の遺伝子のクローニングを行ない、この遺
伝子をアルカリゲネス・ユートロファスという重合遺伝
子欠損株に導入した微生物では、栄養素である炭素源の
種類や濃度により効率的に共重合ポリエステルを合成す
ることが知られている(現代化学、1998年1月、「微生
物がつくり、微生物が分解する環境にやさしいプラスチ
ック」)。また、金属イオンなどのミネラル成分や温
度、圧力などの培養条件によって、微生物が合成する高
分子の組成や形状を変化させることが可能である。この
ような高分子は、微生物のエネルギー源や細胞構成材料
源として貯蔵されているものであるから、微生物が貯蔵
を促進するように制御することにより効率的に高分子を
得ることができる。
【0018】(組成の変化のさせ方)高分子化合物微粒
子の組成を径方向に変化させる方法としては、例えば微
生物の培養する培地中に含まれる高分子化合物の原料と
なる物質(栄養)の種類を培養工程の途中で段階的、若
しくは連続的に変化させる方法が挙げられる。また高分
子の生合成時における栄養の濃度、培地中の金属イオン
の種類や濃度、温度や圧力などの培養条件を段階的ある
いは連続的に変化させることにより、微粒子の半径方向
において高分子組成が段階的あるいは連続的に変化させ
ることによっても径方向の組成が変化した高分子化合物
微粒子をin situで合成することができる。
【0019】また本件発明者らはこれまでの研究から、
高分子化合物をin situで合成する微生物を、該
高分子化合物の原料となる栄養と有機色素とを含ませた
培地で培養することによって、有機色素が化学的に結合
してなる高分子化合物をinsituで得られるとの知
見を得ている。そしてこの技術を本発明に適用すること
で、例えば高分子化合物微粒子の表面部分のみが着色し
ているような高分子化合物微粒子をin situで合
成することが可能である。具体的には、先ず上記したよ
うな方法を採用して微生物内に核となる高分子化合物微
粒子を形成させ、次いで該微生物を高分子化合物の原料
としての栄養と有機色素とを含む培地で培養せしめるこ
とによってコアとなる高分子化合物の周囲に着色樹脂が
形成された多重構造の高分子化合物微粒子を合成するこ
とができる。さらに、発色や蛍光などの特性を有する官
能基は、必ずしも微粒子の中心部分に導入する必要はな
い。色材などの目的用途においては、このような官能基
をもつ高分子で微粒子表面を被覆し、むしろ中心部分の
高分子は安価で簡便に合成することがコスト的に望まれ
る場合があるが、上記の技術を採用することによって、
特定の層が着色樹脂で構成されてなるような高分子化合
物微粒子を得ることもでき、かかる高分子化合物微粒子
もまた本発明の、径方向に連続的若しくは段階的に組成
が変化してなる高分子化合物微粒子の一態様である。
【0020】(有機色素)in situで高分子化合
物に結合させることのできる有機色素としては、例えば
β酸化の反応経路より分子内にカルボキシル基を有する
化合物がよい。さらに高分子合成時の立体障害などを考
慮すると発色団とカルボキシル基の間に炭素数1〜5のメ
チレン鎖があるほうが望ましい。また、発色団の光吸収
波長が可視域にあれば、着色した着色高分子化合物が得
られるし、可視域以外に光吸収波長があっても種々の電
子材料として利用することができる。発色団が微生物に
より資化されると高分子鎖への発色団の導入効率が低下
するため、資化困難な発色団構造を有していることが望
ましい。例えば、π電子共役系をもつ構造は一般に微生
物により資化されにくいのでこのような発色団が好まし
い。しかし、β酸化が強く起こる微生物では資化と並行
して直接の高分子合成が起きるので必ずしもこの限りで
はない。
【0021】ここで、高分子に組み込まれる有機色素に
ついては発色団とカルボン酸からなること以外に特に限
定はないが、嵩高い発色団が結合された高分子化合物を
得る場合には、例えばBurkholderia, Alcaligenes, Ral
stoniaそしてPseudomonas属の微生物の使用が好まし
く、具体的には例えばBurkholderia cepacia KK01(FER
M BP−4235)、Ralstonia eutropha TB64株(FERM P−1
6980)、Alcaligenes sp. TL2株(FERM P−14642)等が
挙げられる。また共存させる栄養素としてはピルビン
酸、ノナン酸、オレイン酸等が好ましい。
【0022】(微粒子の取出方法)微生物内で合成され
た高分子微粒子複合材をそのままの形状で取り出すに
は、高分子以外の細胞成分を取り除けばよい。より具体
的には、高分子以外の細胞成分を可溶化する可溶化剤で
処理した後、微粒子を洗浄して可溶化成分を除去し、こ
れを乾燥する。可溶化剤には高分子が変性あるいは溶解
しない有機溶媒を用いることもできるが、高分子微粒子
の形状や性状を変化させないためにはより温和な可溶化
剤、例えば次亜塩素酸ナトリウムなど用いることが望ま
しい。また、可溶化反応を促進する目的で可溶化処理の
前に高分子以外の細胞成分を物理的にあるいは化学的に
破壊してもよい。例えば、タンパク質を変性させるアル
カリで処理する、細胞成分を分解する酵素で処理する、
あるいは加圧破砕や超音波破砕など物理的な処理を行な
ってもよい。さらに、合成した高分子微粒子複合材の凝
集を避けるため、微粒子を構成する高分子の融点以下、
望ましくはガラス転移温度以下で乾燥処理を行なうのが
よい。より具体的には、高分子の融点以下において風
乾、凍結乾燥、あるいは噴霧乾燥等を行なうとよい。
【0023】(棲息空間)高分子化合物微粒子を合成す
る微生物を担体に固定して快適な棲息空間を与えること
によって高分子微粒子の組成や形状を正確に制御するこ
とができる。微生物を固定する担体としては、これまで
医薬品工業や食品工業あるいは排水処理システムなどの
バイオリアクタで利用されている多くの担体を用いるこ
とができる。例えば、多孔質ガラス、セラミックス、金
属酸化物、活性炭、カオリナイト、ベントナイト、ゼオ
ライト、シリカゲル、アルミナ、アンスラサイト、など
の粒子状担体のほか、でんぷん、寒天、キチン、キトサ
ン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリアクリル
アミド、カラギーナン、アガロース、ゼラチン、などの
ゲル状担体、セルロース、グルタルアルデヒド、ポリア
クリル酸、ウレタンポリマーなどの高分子樹脂やイオン
交換樹脂などである。さらに、天然あるいは合成の高分
子化合物、例えば綿、麻、パルプ材、あるいは天然物を
変性した高分子アセテート、ポリエステル、ポリウレタ
ン、なども利用できる。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳述するが、こ
れらは本発明をなんら限定するものではない。
【0025】(実施例1) Burkholderia cepacia KK01株(FERM BP−4235)による
高分子微粒子複合体の合成 はじめに、重量1.0%のピルビン酸ナトリウムを含む200m
lのM9培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/
l,NH4Cl:1.0g/l,pH7.0)を調製した。次に、KK01株(BP-
4235)をこの培地に植菌し、120rpmで振盪しながら30℃
で3日間培養を行った。微生物濃度がおよそ5x108cell/m
lとなったところで遠心分離により微生物を濃縮した。
次に、濃縮した微生物を重量1.0%のピルビン酸ナトリウ
ムを含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.
5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下におい
て30℃で2日間さらに培養を続け、微生物内でP-(3HB)を
合成させた。
【0026】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量1.0%の吉草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:
6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁
し、30℃で1日間さらに培養を続け、微生物内でポリ-3-
ヒドロキシ吉草酸(P-(3HV))を合成させた。
【0027】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを45℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを15℃で風乾させて高
分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約25mg
であった。
【0028】この高分子微粒子を導電性テープによりア
ルミ製の試料台に固定し、イオンコーターにより金を薄
く蒸着した。走査型電子顕微鏡により高分子微粒子の形
状を観察したところ、真球状の微粒子が見られ、その平
均粒径は0.5±0.2μmであった。また、高分子微粒子以
外の生体成分は完全に除去されていた。
【0029】また、得られた高分子微粒子の融点を示差
走査熱量計で測定したところ、P-(3HB)に相当する177℃
とP-(3HV)に相当する110℃の二つの融点ピークが現れ、
高分子微粒子が2種類の高分子組成からなっていること
がわかった。
【0030】次に、得られた微粒子表面の高分子質量を
飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS IV、C
AMECA製)により測定した。得られたマススペクトルは
標準試料であるP-(3HV)と一致したことから、高分子微
粒子の表面はP-(3HV)で構成されていることがわかっ
た。また、イオンスパッタリングにより高分子微粒子の
表面を削った後にTOF-SIMSによりマススペクトルを測定
した結果、標準試料であるP-(3HB)と一致したことか
ら、高分子微粒子の中心部分はP-(3HB)で構成されてい
ることがわかった。
【0031】さらに、P-(3HB)とP-(3HV)で構成された高
分子微粒子をスクリューキャップ付き10ml試験管に入
れ、クロロホルム2mlと3%wt硫酸−メタノール溶液2mlを
添加して密栓後100℃で3.5時間反応させ、メタノリシス
によりモノマー化した。これに水1mlを加え、10分間激
しく振盪して、下層のクロロホルム層を取り出し、この
クロロホルム層をガスクロマトグラフィーにより分析し
た。得られたクロマトグラムのピークの保持時間が標準
試料であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物およびヒド
ロキシ吉草酸のメチル化化合物の保持時間が同一である
ことから、得られた高分子微粒子がP-(3HB)およびP-(3H
V)から構成されていることを確認した。
【0032】また、上記の可溶化処理において、次亜塩
素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度0.05%)を用いて4
5℃で10時間放置、あるいは次亜塩素酸ナトリウム水溶
液(有効塩素濃度0.5%)を用いて45℃で5時間放置して
も同様な高分子微粒子が得られることを確認した。
【0033】実施例2 Ralstonia eutropha TB64株(FERM P-16980)による高分
子微粒子複合体の合成 茨城県で採取した土壌微生物Ralstonia eutropha TB64
株(寄託中)の菌学的性質を以下に示す。 (1)形態観察 細胞の形 桿菌(0.3-0.5X1.0-2.0mm) 胞子 無 鞭毛 有(周鞭毛) グラム染色性 18時間 陰性 24時間 陰性 36時間 陰性 (2)生理・生化学試験 嫌気下での生育 陰性 カタラーゼ 陽性 オキシダーゼ 陽性 リトマスミルク アルカリ 硝酸塩の還元 陰性 V−P反応 陰性 V−P培地のpH 7.76 カゼインの分解 陰性 ゼラチンの分解 陰性 澱粉の分解 陰性 DNAの分解 陰性 尿素の分解 陰性 Tween20の分解 陰性 Tween40の分解 陰性 Tween60の分解 陰性 Tween80の分解 陰性 チロシンの分解 陽性 有機酸の利用 クエン酸 陽性 プロピオン酸 陽性 酢酸 陽性 フマル酸 陽性 L−リンゴ酸 陽性 コハク酸 陽性 無機窒素源の利用 アンモニウム塩 陽性 硝酸塩 陽性 インドールの生成 陰性 硫化水素の生成 陰性 色素の生成 P agar 陰性 F agar 陰性 King A agar 陰性 King B agar 陰性 NaCl存在下での生育 2% 陽性 5% 陰性 7% 陰性 生育pH 5.0-9.0 生育温度 10℃−40℃ 0.02% アジ化ナトリウム存在下での生育 陰性 0.001% リゾチウム存在下での生育 陽性 OFテスト 陰性 糖からの酸の生成 グルコース 陰性 アラビノース 陰性 フラクトース 陰性 ガラクトース 陰性 マルトース 陰性 ラクトース 陰性 シュークロース 陰性 キシロース 陰性 トレハロース 陰性 グリセロール 陰性 マンニトール 陰性 ソルビトール 陰性 ソルボース 陰性 マンノース 陰性 ラムノース 陰性 アドニトール 陰性 ガスの生成 グルコース 陰性 アラビノース 陰性 キシロース 陰性 マンニトール 陰性 (3)キノン組成分析 キノン分子種 組成比(%) ユビキノン−8 95.4
【0034】はじめに、重量1.0%のピルビン酸ナトリウ
ムを含む200mlのM9培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/
l,NaCl:0.5g/l,NH4Cl:1.0g/l,pH7.0)を調製した。次
に、TB64株をこの培地に植菌し、120rpmで振盪しながら
30℃で2日間培養を行った。微生物濃度がおよそ2x108ce
ll/mlとなったところで遠心分離により微生物を濃縮し
た。次に、濃縮した微生物を重量2.0%のグルコースを含
む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,p
H7.0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下で30℃で2日
間さらに培養を続け、微生物内にP-(3HB)を蓄積させ
た。
【0035】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量2.0%の吉草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:
6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁
し、30℃で1日間さらに培養を続け、微生物内でP-(3HV)
を合成させた。
【0036】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを45℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを15℃で風乾させて高
分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約15mg
であった。
【0037】実施例1と同様にして走査型電子顕微鏡に
より高分子微粒子の形状を観察したところ、真球状の微
粒子が見られ、その平均粒径は0.4±0.1μmであった。
また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除去されて
いた。
【0038】また、得られた高分子微粒子の融点を示差
走査熱量計で測定したところ、P-(3HB)に相当する177℃
とP-(3HV)に相当する110℃の二つの融点ピークが現れ、
高分子微粒子が2種類の高分子組成からなっていること
がわかった。
【0039】次に、実施例1と同様にして微粒子表面の
高分子質量をTOF-SIMにより測定したところ、得られた
マススペクトルは標準試料であるP-(3HV)と一致したこ
とから、高分子微粒子の表面はP-(3HV)で構成されてい
ることがわかった。また、イオンスパッタリングにより
高分子微粒子の表面を削った後にTOF-SIMSによりマスス
ペクトルを測定した結果、標準試料であるP-(3HB)と一
致したことから、高分子微粒子の中心部分はP-(3HB)で
構成されていることがわかった。
【0040】さらに、P-(3HB)とP-(3HV)で構成された高
分子微粒子をスクリューキャップ付き10ml試験管に入
れ、クロロホルム2mlと3%wt硫酸−メタノール溶液2mlを
添加して密栓後100℃で3.5時間反応させ、メタノリシス
によりモノマー化した。これに水1mlを加え、10分間激
しく振盪して、下層のクロロホルム層を取り出し、この
クロロホルム層をガスクロマトグラフィーにより分析し
た。得られたクロマトグラムのピークの保持時間が標準
試料であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物およびヒド
ロキシ吉草酸のメチル化化合物の保持時間が同一である
ことから、得られた高分子微粒子がP-(3HB)およびP-(3H
V)から構成されていることを確認した。
【0041】実施例3 Ralstonia eutropha TB64株(FERM P-16980)による高分
子微粒子複合体の合成 実施例2において、重量2.0%のグルコースにかえて重量
2.5%の1,4-ブタンジオールを用いた以外は実施例2と同
様にして微生物内で高分子微粒子を合成させた。得られ
た高分子微粒子の平均粒径は0.5±0.2μm、重量は20mg
であった。また、TOF-SIMSにより微粒子の表面において
P-(3HV)、微粒子の中心部においてP-(3HB)のマススペク
トルが観測され、栄養源を糖からジオールにかえても同
様な組成の高分子微粒子複合体が得られることがわかっ
た。
【0042】実施例4 Alcaligenes sp. TL2株(FERM P-14642)による高分子微
粒子複合体の合成 はじめに、重量1.5%のピルビン酸ナトリウムを含む200m
lのM9培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/
l,NH4Cl:1.0g/l,pH7.0)を調製した。次に、TL2株(FERM
P-14642)をこの培地に植菌し、120rpmで振盪しながら3
0℃で2日間培養を行った。微生物濃度がおよそ1x108cel
l/mlとなったところで遠心分離により微生物を濃縮し
た。次に、濃縮した微生物を重量1.5%のピルビン酸ナト
リウムを含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaC
l:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下で
30℃で2日間さらに培養を続け、微生物内にP-(3HB)を蓄
積させた。
【0043】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量0.5%のピルビン酸ナトリウムと重量1.0%の5-フ
ェニル吉草酸を含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g
/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、30℃で2日間さ
らに培養を続け、微生物内でP-(3HB)とポリ-5-フェニル
-3-ヒドロキシ吉草酸の共重合体を合成させた。
【0044】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを40℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを-20℃で凍結乾燥さ
せて高分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は
約10mgであった。
【0045】次に、実施例1と同様にして走査型電子顕
微鏡により高分子微粒子の形状を観察したところ、真球
状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.3±0.1μmであ
った。また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除去
されていた。
【0046】また、実施例1と同様にして微粒子表面の
高分子質量をTOF-SIMにより測定した。得られたマスス
ペクトルを解析した結果、微粒子表面の高分子組成はP-
(3HB)とポリ-5-フェニル-3-ヒドロキシ吉草酸の共重合
体(モル比27:1)であることがわかった。また、イオン
スパッタリングにより高分子微粒子の表面を削った後に
TOF-SIMSによりマススペクトルを測定した結果、標準試
料であるP-(3HB)と一致したことから、高分子微粒子の
中心部分はP-(3HB)で構成されていることがわかった。
【0047】実施例5 Pseudomonas putida(ATCC23289)による高分子微粒子複
合体の合成 ATCCのマニュアルに従い、栄養培地(Difco0003)に菌株
を植菌し、120rpmで振盪しながら30℃で2日間培養を行
った。微生物濃度がおよそ3x108cell/mlとなったところ
で遠心分離により微生物を濃縮した。次に、これを重量
1.0%のピルビン酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:6.2g
/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、
窒素源のない条件下で30℃で2.5日間さらに培養を続
け、微生物内にP-(3HB)を蓄積させた。
【0048】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量3.0%の吉草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:
6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁
し、30℃で2日間さらに培養を続け、微生物内にポリ-4-
ヒドロキシ吉草酸(P-(4HV))を合成させた。
【0049】得られた培養液から微生物を遠心分離して
濃縮し、これを重量0.1%のリゾチームを含む水溶液に懸
濁して20℃で5時間放置して細胞膜を化学的に破砕し
た。この後、実施例1と同様にして高分子微粒子を得
た。得られた粉体の重量は約18mgであった。また、実施
例1と同様にして高分子微粒子の形状を観察したとこ
ろ、真球状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.4±0.1
μmであった。さらに、高分子微粒子以外の生体成分は
完全に除去されていた。
【0050】また、実施例1と同様にして微粒子表面の
高分子質量をTOF-SIMにより測定した。得られたマスス
ペクトルを解析した結果、P-(4HV)と同定され、高分子
微粒子の表面部分はP-(4HV)で構成されていることがわ
かった。また、イオンスパッタリングにより高分子微粒
子の表面を削った後にTOF-SIMSによりマススペクトルを
測定した結果、標準試料であるP-(3HB)と一致したこと
から、高分子微粒子の中心部分はP-(3HB)で構成されて
いることがわかった。
【0051】実施例6 Alcaligenes latus(ATCC29712)による高分子微粒子複合
体の合成 ATCCのマニュアルに従い、グルコースを含むミネラル培
地(培養培地1018)に菌株を植菌し、120rpmで振盪しな
がら30℃で3日間培養を行った。微生物濃度がおよそ1x1
08cell/mlとなったところで遠心分離により微生物を濃
縮した。次に、濃縮した微生物を重量2.0%のグルコース
を含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g
/l,pH7.0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下で30℃で
3日間さらに培養を続け、微生物内にP-(3HB)を蓄積させ
た。
【0052】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量2.0%の3-ヒドロキシプロピオン酸を含む培地
(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)
に再度懸濁し、窒素源がない条件下で30℃で2日間さら
に培養を続け、微生物内にP-(3HB)とポリ-(3-ヒドロキ
シプロピオン酸)(P-(3HP))の共重合体を蓄積させた。
【0053】得られた培養液から微生物を遠心分離して
濃縮し、これにpH10の水酸化ナトリウム水溶液に5時間
懸濁して高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。遠
心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り返
して破砕成分を除去し、これを-20℃で凍結乾燥させて
高分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約24
mgであった。また、実施例1と同様にして高分子微粒子
の形状を観察したところ、真球状の微粒子が見られ、そ
の平均粒径は0.5±0.2μmであった。さらに、高分子微
粒子以外の生体成分は完全に除去されていた。
【0054】また、実施例1と同様にして微粒子表面の
高分子質量をTOF-SIMにより測定した。得られたマスス
ペクトルを解析した結果、P-(3HB)とP-(3HP)の共重合体
(モル比7:1)と同定され、高分子微粒子の表面部分は
共重合体で構成されていることがわかった。また、イオ
ンスパッタリングにより高分子微粒子の表面を削った後
にTOF-SIMSによりマススペクトルを測定した結果、標準
試料であるP-(3HB)と一致したことから、高分子微粒子
の中心部分はP-(3HB)で構成されていることがわかっ
た。
【0055】実施例7 Aeromonas cavie(ATCC13137)による高分子微粒子複合体
の合成 ATCCのマニュアルに従い、栄養培地(Difco0003)に菌株
を植菌し、120rpmで振盪しながら30℃で3日間培養を行
った。微生物濃度がおよそ3x108cell/mlとなったところ
で遠心分離により微生物を濃縮した。次に、濃縮した微
生物を重量2.0%のピルビン酸ナトリウムを含む培地(Na
2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再
度懸濁し、窒素源がない条件下で25℃で2日間さらに培
養を続け、微生物内にP-(3HB)を蓄積させた。
【0056】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量2.0%の5-クロロ吉草酸ナトリウムを含む培地
(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)
に再度懸濁し、25℃で2日間さらに培養を続け、微生物
内でP-(3HB)とポリ-5-クロロ−3−ヒドロキシ吉草酸
(P−(5Cl−3HV))の共重合体を合成させた。
【0057】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを40℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを室温で風乾させて高
分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約7mg
であった。
【0058】次に、実施例1と同様にして走査型電子顕
微鏡により高分子微粒子の形状を観察したところ、真球
状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.3±0.1μmであ
った。また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除去
されていた。
【0059】また、実施例1と同様にして微粒子表面の
高分子質量をTOF-SIMにより測定した。得られたマスス
ペクトルを解析した結果、微粒子表面の高分子組成はP-
(3HB)とP-(5Cl-3HV)の共重合体(モル比11:1)であるこ
とがわかった。また、イオンスパッタリングにより高分
子微粒子の表面を削った後にTOF-SIMSによりマススペク
トルを測定した結果、標準試料であるP-(3HB)と一致し
たことから、高分子微粒子の中心部分はP-(3HB)で構成
されていることがわかった。
【0060】実施例8 Bacillus megateruim(ATCC11561)による高分子微粒子複
合体の合成 ATCCのマニュアルに従い、栄養培地(22Bacillus medium
(1/4strength))に菌株を植菌し、120rpmで振盪しながら
26℃で2日間培養を行った。微生物濃度がおよそ2x108ce
ll/mlとなったところで遠心分離により微生物を濃縮し
た。次に、濃縮した微生物を重量1.5%のピルビン酸ナト
リウムを含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaC
l:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下で
26℃で2.5日間さらに培養を続け、微生物内にP-(3HB)を
蓄積させた。
【0061】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量2.0%の吉草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:
6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁
し、26℃で2.5日間さらに培養を続け、微生物内にP-(3H
V)を蓄積させた。
【0062】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを40℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを室温で風乾させて高
分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約13mg
であった。
【0063】次に、実施例1と同様にして走査型電子顕
微鏡により高分子微粒子の形状を観察したところ、真球
状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.4±0.2μmであ
った。また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除去
されていた。
【0064】また、得られた高分子微粒子の融点を示差
走査熱量計で測定したところ、P-(3HB)に相当する177℃
とP-(3HV)に相当する110℃の二つの融点ピークが現れ、
高分子微粒子が2種類の高分子組成からなっていること
がわかった。
【0065】さらに、実施例1と同様にして高分子微粒
子の高分子質量をTOF-SIMにより測定した。微粒子表面
および中心部分におけるマススペクトルは、標準試料で
あるP-(3HV)およびP-(3HB)と一致し、微粒子表面および
中心部分はそれぞれP-(3HV)およびP-(3HB)で構成されて
いることがわかった。
【0066】実施例9 Comamonas acidovorans(ATCC9355)による高分子微粒子
の合成 ATCCのマニュアルに従い、栄養培地(Difco0003)に菌株
を植菌し、120rpmで振盪しながら26℃で3日間培養を行
った。微生物濃度がおよそ4x108cell/mlとなったところ
で遠心分離により微生物を濃縮した。次に、濃縮した微
生物を重量1.5%のピルビン酸ナトリウムを含む培地(Na
2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再
度懸濁し、窒素源のない条件下で26℃で3日間さらに培
養を続け、微生物内にP-(3HB)を蓄積させた。
【0067】次に、遠心分離により微生物を濃縮し、こ
れを重量2.0%の吉草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:
6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁
し、26℃で2日間さらに培養を続け、微生物内にP-(3HV)
を合成させた。
【0068】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを40℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを室温で風乾させて高
分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約21mg
であった。
【0069】次に、実施例1と同様にして走査型電子顕
微鏡により高分子微粒子の形状を観察したところ、真球
状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.5±0.2μmであ
った。また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除去
されていた。
【0070】また、得られた高分子微粒子の融点を示差
走査熱量計で測定したところ、P-(3HB)に相当する177℃
とP-(3HV)に相当する110℃の二つの融点ピークが現れ、
高分子微粒子が2種類の高分子組成からなっていること
がわかった。
【0071】さらに、実施例1と同様にして高分子微粒
子の高分子質量をTOF-SIMにより測定した。微粒子表面
および中心部分におけるマススペクトルは、標準試料で
あるP-(3HV)およびP-(3HB)と一致し、微粒子表面および
中心部分はそれぞれP-(3HV)およびP-(3HB)で構成されて
いることがわかった。
【0072】実施例10 Burkholderia cepacia KK01株(FERM BP−4235)による
高分子微粒子複合体の合成 はじめに、重量1.0%のピルビン酸ナトリウムを含む200m
lのM9培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/
l,NH4Cl:1.0g/l,pH7.0)を調製した。次に、KK01株をこ
の培地に植菌し、120rpmで振盪しながら30℃で3日間培
養を行った。微生物濃度がおよそ5x108cell/mlとなった
ところで遠心分離により微生物を濃縮した。次に、濃縮
した微生物を重量1.0%のピルビン酸ナトリウムを含む培
地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.
0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下において30℃で
1.5日間さらに培養を続けた。再度、微生物を遠心分離
により濃縮し、これを重量0.5%のピルビン酸ナトリウム
と0.5%の吉草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:6.2g/
l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に懸濁し、30℃
で1日間培養を続けた。さらに微生物を遠心分離により
濃縮し、これを重量1.0%の吉草酸ナトリウムを含む培地
(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)
に懸濁し、30℃で1日間さらに培養を続けた。
【0073】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを45℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを15℃で風乾させて高
分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は約30mg
であった。
【0074】この高分子微粒子を導電性テープによりア
ルミ製の試料台に固定し、イオンコーターにより金を薄
く蒸着した。走査型電子顕微鏡により高分子微粒子の形
状を観察したところ、真球状の微粒子が見られ、その平
均粒径は0.6±0.2μmであった。また、高分子微粒子以
外の生体成分は完全に除去されていた。
【0075】次に、得られた微粒子の高分子質量をTOF-
SIMSにより測定した。イオンスパッタリングにより高分
子微粒子の表面から中心部分におけるマススペクトルを
測定し解析した結果、表面部分は標準試料であるP-(3H
V)とほぼ一致し、また中間部分はP-(3HB)とP-(3HV)の共
重合体(モル比3:1)から構成されていることがわかっ
た。さらに、中心部分は標準試料であるP-(3HB)と一致
した。これらより、高分子微粒子の組成は微粒子の半径
方向において連続的に変化していることがわかった。
【0076】さらに、P-(3HB)とP-(3HV)で構成された高
分子微粒子をスクリューキャップ付き10ml試験管に入
れ、クロロホルム2mlと3%wt硫酸−メタノール溶液2mlを
添加して密栓後100℃で3.5時間反応させ、メタノリシス
によりモノマー化した。これに水1mlを加え、10分間激
しく振盪して、下層のクロロホルム層を取り出し、この
クロロホルム層をガスクロマトグラフィーにより分析し
た。得られたクロマトグラムのピークの保持時間が標準
試料であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物およびヒド
ロキシ吉草酸のメチル化化合物の保持時間が同一である
ことから、得られた高分子微粒子がP-(3HB)およびP-(3H
V)から構成されていることを確認した。
【0077】また、上記の可溶化処理において、次亜塩
素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度0.05%)を用いて4
5℃で10時間放置、あるいは次亜塩素酸ナトリウム水溶
液(有効塩素濃度0.5%)を用いて45℃で5時間放置して
も同様な高分子微粒子が得られることを確認した。
【0078】実施例11 Ralstonia eutropha TB64株(FERM P-16980)による高分
子微粒子複合体の合成 はじめに、重量1.0%のピルビン酸ナトリウムを含む200m
lのM9培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/
l,NH4Cl:1.0g/l,pH7.0)を調製した。次に、TB64株をこ
の培地に植菌し、120rpmで振盪しながら30℃で3日間培
養を行った。微生物濃度がおよそ5x108cell/mlとなった
ところで遠心分離により微生物を濃縮した。次に、濃縮
した微生物を重量2.0%のグルコースを含む培地(Na2HPO
4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸
濁し、窒素源のない条件下において30℃で1日間さらに
培養を続けた。再度、微生物を遠心分離により濃縮し、
これを重量1.0%のグルコースと1.0%の吉草酸ナトリウム
を含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g
/l,pH7.0)に懸濁し、30℃で1日間培養を続けた。さら
に微生物を遠心分離により濃縮し、これを重量2.0%の吉
草酸ナトリウムを含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.
0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に懸濁し、30℃で1日間さら
に培養を続けた。
【0079】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを45℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを-20℃で凍結乾燥さ
せて高分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は
約18mgであった。
【0080】次に、実施例10と同様にして走査型電子
顕微鏡により高分子微粒子の形状を観察したところ、真
球状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.4±0.1μmで
あった。また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除
去されていた。
【0081】さらに、実施例10と同様にして微粒子の
高分子質量をTOF-SIMSにより測定した。イオンスパッタ
リングにより高分子微粒子の表面から中心部分における
マススペクトルを測定し解析した結果、表面部分は標準
試料であるP-(3HV)とほぼ一致し、また中間部分はP-(3H
B)とP-(3HV)の共重合体(モル比7:1)から構成されてい
ることがわかった。さらに、中心部分は標準試料である
P-(3HB)と一致した。これらより、高分子微粒子の組成
は微粒子の半径方向において連続的に変化していること
がわかった。
【0082】また、上記の可溶化処理において、次亜塩
素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度0.05%)を用いて4
5℃で10時間放置、あるいは次亜塩素酸ナトリウム水溶
液(有効塩素濃度0.5%)を用いて45℃で5時間放置して
も同様な高分子微粒子が得られることを確認した。
【0083】実施例12 Alcaligenes sp. TL2株(FERM P-14642)による高分子微
粒子複合体の合成 はじめに、重量1.5%のピルビン酸ナトリウムを含む200m
lのM9培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/
l,NH4Cl:1.0g/l,pH7.0)を調製した。次に、TL2株をこ
の培地に植菌し、120rpmで振盪しながら30℃で2日間培
養を行った。微生物濃度がおよそ1x108cell/mlとなった
ところで遠心分離により微生物を濃縮した。次に、濃縮
した微生物を重量1.5%のピルビン酸ナトリウムを含む培
地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.
0)に再度懸濁し、窒素源のない条件下で30℃で2日間さ
らに培養を続けた。再度、微生物を遠心分離により濃縮
し、これを重量1.0%のピルビン酸ナトリウムと重量0.5%
の5-フェニル吉草酸を含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO
4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、30℃で1
日間さらに培養を続けた。さらに微生物を遠心分離によ
り濃縮し、これを重量0.5%のピルビン酸ナトリウムと重
量1.5%の5-フェニル吉草酸を含む培地(Na2HPO4:6.2g/
l,KH2PO4:3.0g/l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、3
0℃で1日間さらに培養を続けた。
【0084】得られた培養液を遠心分離して微生物を濃
縮し、これを次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃
度5%)5mlに再度懸濁した。これを45℃で1時間放置する
ことにより高分子微粒子以外の生体成分を可溶化した。
遠心分離による濃縮と純水による洗浄をさらに3回繰り
返して可溶化成分を除去し、これを-20℃で凍結乾燥さ
せて高分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は
約18mgであった。
【0085】次に、実施例10と同様にして走査型電子
顕微鏡により高分子微粒子の形状を観察したところ、真
球状の微粒子が見られ、その平均粒径は0.4±0.1μmで
あった。また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除
去されていた。
【0086】さらに、実施例10と同様にして微粒子の
高分子質量をTOF-SIMSにより測定した。イオンスパッタ
リングにより高分子微粒子の表面から中心部分における
マススペクトルを測定し解析した結果、表面部分はP-(3
HB)とポリ-5-フェニル-3-ヒドロキシ吉草酸の共重合体
(モル比14:1)、また中間部分も両者の共重合体(モル
比32:1)、また中心部分は標準試料であるP-(3HB)と一
致した。これらより、高分子微粒子の組成は微粒子の半
径方向において連続的に変化していることがわかった。
【0087】実施例13 KK01株による高分子−有機色
素の微粒子複合体の合成 はじめに、実施例1と同様にしてKK01株を増殖・培養
し、微生物内でP-(3HB)を合成させた。次に、遠心分離
により微生物を濃縮し、これを重量1.0%のラウリン酸ナ
トリウムと重量0.05%の1-ピレンブタン酸(フナコシ:F
M-0159-03)を含む培地(Na2HPO4:6.2g/l,KH2PO4:3.0g/
l,NaCl:0.5g/l,pH7.0)に再度懸濁し、窒素源のない条件
下において30℃で2日間さらに培養を続け、微生物内で
高分子を合成させた。
【0088】得られた培養液を実施例1と同様にして、
遠心分離で濃縮、次亜塩素酸ナトリウムで可溶化処
理、、遠心分離による濃縮と純水による洗浄、風乾を経
て、高分子微粒子の粉体を得た。得られた粉体の重量は
約14mgであった。
【0089】実施例1と同様にして走査型電子顕微鏡に
より高分子微粒子の形状を観察したところ、真球状の微
粒子が見られ、その平均粒径は0.4±0.1μmであった。
また、高分子微粒子以外の生体成分は完全に除去されて
いた。
【0090】得られた高分子微粒子を2mgを純水に懸濁
し、その蛍光像を蛍光顕微鏡(ニコン、XF-EFD2)によ
り観察した。その結果、紫外光照射により微粒子表面に
おいてピレンの蛍光である青色蛍光が見られた。これよ
り、少なくとと高分子微粒子の表面の高分子主鎖にピレ
ン基が組み込まれていることがわかった。
【0091】得られた高分子微粒子5mgをクロロホルム3
mlに溶解し、示差屈折計と蛍光検出器を備えたゲルクロ
マトグラフィ(東ソー、HLC-8120)により高分子の分子
量と蛍光特性を測定した。その結果、数平均分子量160,
000、重量平均分子量720,000の高分子と数平均分子量6
2,000、重量平均分子量500,000の2種類の高分子が合成
されていることがわかった。また、後者の高分子につい
て、340nmの光で励起したときに400nmにピレン特有の蛍
光が観測されたことから、高分子主鎖にピレン基が組み
込まれていることがわかった。
【0092】
【発明の効果】本発明により、高分子以外の生体成分を
含まない高純度でかつ真球状の形状が均一な高分子微粒
子において、微粒子の半径方向の高分子の組成が段階的
あるいは連続的に変化した高分子微粒子を合成および取
得することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる高分子化合物微粒子の概略部分
断面図である。
【符号の説明】
101 高分子化合物微粒子 103 高分子化合物微粒子の中心領域 105 高分子化合物微粒子の周囲領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12P 7/62 C12R 1:40) (C12P 7/62 C12R 1:11)

Claims (34)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物由来の高分子化合物微粒子であっ
    て、その組成が半径方向に異なっていることを特徴とす
    る高分子化合物微粒子。
  2. 【請求項2】 ポリヒドロキシアルカノエートを含む高
    分子化合物微粒子であって、その組成が半径方向に異な
    っていることを特徴とする高分子化合物微粒子。
  3. 【請求項3】 該高分子化合物微粒子の粒径が0.1μm〜
    5μmである請求項1または2に記載の高分子化合物微
    粒子。
  4. 【請求項4】 該高分子化合物微粒子の組成が半径方向
    に段階的に変化している請求項1または2に記載の高分
    子化合物微粒子。
  5. 【請求項5】 該ポリヒドロキシアルカノエートがポリ
    -3-ヒドロキシプロピオン酸、またはポリ-3-ヒドロキシ
    プロピオン酸の3位の炭素に結合した水素を炭素鎖で置
    換した高分子のホモポリマーあるいはこれら高分子の共
    重合体、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸、またはポリ-4-ヒド
    ロキシ吉草酸の5位の炭素に結合した水素を炭素鎖で置
    換した高分子のホモポリマーあるいはこれら高分子の共
    重合体である請求項2に記載の高分子化合物微粒子。
  6. 【請求項6】 該炭素鎖が炭素数1〜10の直鎖、末端
    に二重結合を有する炭素数1〜10の直鎖、末端にカル
    ボキシル基を有する炭素数1〜10の直鎖、末端にハロ
    ゲン基を有する炭素数1〜10の直鎖、末端に芳香環を
    有する炭素数1〜10の直鎖、あるいは末端に発色団を
    有する炭素数1〜10の直鎖である請求項5に記載の高
    分子化合物微粒子。
  7. 【請求項7】 該ハロゲン基がフッ素、塩素、あるいは
    臭素である請求項6に記載の高分子化合物微粒子。
  8. 【請求項8】 該芳香環がベンゼン環である請求項6に
    記載の高分子化合物微粒子。
  9. 【請求項9】 着色樹脂を含む領域を半径方向の少なく
    とも一部に有する請求項1または2に記載の高分子化合
    物微粒子。
  10. 【請求項10】 半径方向に異なる組成を有する高分子
    化合物微粒子の製造方法であって、in situで高分子化
    合物微粒子を合成可能な微生物を、該高分子化合物の原
    料となる化合物を栄養として含む培地で培養し、該微生
    物の細胞内に該高分子化合物微粒子を製造させる工程を
    有し、該栄養の濃度及び組成の少なくとも一方を該培養
    工程の中で変化させることを特徴とする高分子化合物微
    粒子の製造方法。
  11. 【請求項11】 該微生物の細胞内に生成した該高分子
    微粒子を該高分子以外の生体成分を可溶化する可溶化剤
    と該微生物と接触させ、該高分子以外の生体成分を該微
    生物から取り除き、該高分子を該高分子の融点以下の温
    度で乾燥させる工程を更に有する請求項10に記載の高
    分子化合物微粒子の製造方法。
  12. 【請求項12】 該微生物がBurkholderia cepacia, Ra
    lstonia eutropha,Alcaligenes sp., Alcaligenes latu
    s, Pseudomonas putida, Aeromonas caviae, Bacillus
    megateruim, Comamonas acidovoransのいずれか一つ以
    上である請求項10に記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 該高分子化合物がポリヒドロキシアル
    カノエートを主成分とするものである請求項10に記載
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 該ポリヒドロキシアルカノエートがポ
    リ-3-ヒドロキシプロピオン酸、またはポリ-3-ヒドロキ
    シプロピオン酸の3位の炭素に結合した水素を炭素鎖で
    置換した高分子のホモポリマーあるいはこれら高分子の
    共重合体、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸、またはポリ-4-ヒ
    ドロキシ吉草酸の5位の炭素に結合した水素を炭素鎖で
    置換した高分子のホモポリマーあるいはこれら高分子の
    共重合体である請求項13に記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 該炭素鎖が炭素数1〜10の直鎖、末
    端に二重結合を有する炭素数1〜10の直鎖、末端にカ
    ルボキシル基を有する炭素数1〜10の直鎖、末端にハ
    ロゲン基を有する炭素数1〜10の直鎖、末端に芳香環
    を有する炭素数1〜10の直鎖、あるいは末端に発色団
    を有する炭素数1〜10の直鎖である請求項14に記載
    の製造方法。
  16. 【請求項16】 該ハロゲン基がフッ素、塩素、あるい
    は臭素である請求項15に記載の製造方法。
  17. 【請求項17】 該芳香環がベンゼン環である請求項1
    5に記載の製造方法。
  18. 【請求項18】 該高分子化合物微粒子の粒径が0.1μm
    〜5μmである請求項10に記載の製造方法。
  19. 【請求項19】 該栄養素が糖、有機酸、ヒドロキシ有
    機酸、及びアルカンジオールから選ばれる一つ、または
    これらの混合物である請求項10記載の製造方法。
  20. 【請求項20】 該糖が、グルコース、あるいはフルク
    トースである請求項19に記載の製造方法。
  21. 【請求項21】 該有機酸が酢酸、酪酸、吉草酸、ある
    いはカプロン酸である請求項19に記載の製造方法。
  22. 【請求項22】 該ヒドロキシ有機酸が3-ヒドロキシプ
    ロピオン酸、あるいは4-ヒドロキシ酪酸である請求項1
    9に記載の製造方法。
  23. 【請求項23】 該アルカンジオールが1,3-プロパンジ
    オール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、
    1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オ
    クタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジ
    オール、あるいは1,12-ドデカンジオールである請求項
    19に記載の製造方法。
  24. 【請求項24】 該可溶化剤が次亜塩素酸ナトリウムを
    含む水溶液である請求項11に記載の製造方法。
  25. 【請求項25】 該次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃
    度が0.05〜5%である請求項24に記載の製造方法。
  26. 【請求項26】 該乾燥が風乾あるいは凍結乾燥である
    請求項11に記載の製造方法。
  27. 【請求項27】 該可溶化剤と該微生物との接触に先立
    って、pH9以上のアルカリ水溶液と該微生物とを接触さ
    せる工程を有する請求項11に記載の製造方法。
  28. 【請求項28】 該可溶化剤と該微生物との接触に先立
    って、該生体成分を分解する酵素を含んだ水溶液と該微
    生物とを接触させる工程を有する請求項11に記載の製
    造方法。
  29. 【請求項29】 該酵素がリゾチームである請求項28
    に記載の製造方法。
  30. 【請求項30】 該可溶化剤と該微生物との接触に先立
    って、該微生物を加圧破砕あるいは超音波破砕する工程
    を有する請求項11に記載の製造方法。
  31. 【請求項31】 該高分子化合物微粒子の組成が、半径
    方向に段階的に変化している請求項10の高分子化合物
    微粒子の製造方法。
  32. 【請求項32】 該培地の該栄養の濃度を段階的に変化
    させて、高分子化合物微粒子の組成を半径方向に段階的
    に異ならせる請求項10記載の製造方法。
  33. 【請求項33】 該培地の該栄養の組成を段階的に変化
    せしめて高分子化合物微粒子の組成を半径方向に段階的
    に異ならせる請求項10記載の製造方法。
  34. 【請求項34】 該栄養の組成の内の一つが、該微生物
    が細胞内に取込むことの可能な有機色素である請求項1
    0記載の製造方法。
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