JP2000221154A - 銀/ハロゲン化銀参照電極、その製造方法およびイオン選択性電極 - Google Patents

銀/ハロゲン化銀参照電極、その製造方法およびイオン選択性電極

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JP2000221154A
JP2000221154A JP11024142A JP2414299A JP2000221154A JP 2000221154 A JP2000221154 A JP 2000221154A JP 11024142 A JP11024142 A JP 11024142A JP 2414299 A JP2414299 A JP 2414299A JP 2000221154 A JP2000221154 A JP 2000221154A
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Masaaki Terajima
正明 寺嶋
Toshifuru Ito
敏古 伊藤
Osamu Seshimoto
修 瀬志本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銀/ハロゲン化銀参照電極の作製において使
用される酸化剤の影響が塩化銀層に対して少ない銀/ハ
ロゲン化銀参照電極の製造方法、その銀/ハロゲン化銀
参照電極およびイオン選択性電極を提供すること。 【解決手段】 非導電性支持体、銀層およびハロゲン化
銀層をこの順に有する銀/ハロゲン化銀参照電極であっ
て、ハロゲン化銀層がハロゲン化物の存在下に、過酸化
物によって銀層の表面を酸化することによって該表面上
に形成された層である銀/ハロゲン化銀参照電極。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料中の特定イオ
ン活量を測定するための、銀/ハロゲン化銀参照電極、
その製造方法およびその銀/ハロゲン化銀参照電極から
なるイオン選択性電極に関する。
【0002】
【従来の技術】生物液体試料(血液、尿、唾液、髄液
等)や液体(水道水、河川水、下水、産業排水等)の液
滴量を用い、その中に含まれる特定のイオン活量(イオ
ン濃度)を定量分析するイオン活量測定方法およびその
測定器具が実用化されている(特公平5−28341号
公報)。その方法は、互いに電気的に分離された一対の
銀/塩化銀電極の最上部にイオン選択性膜を備えたシー
ト状イオン選択性電極のそれぞれのイオン選択性膜表面
に、被検液および参照液を滴下し、次いでブリッジによ
り両液体を互いに電気的に導通させた状態において、各
イオン選択性電極間の電位差を測定することにより、被
検液中の特定イオン活量を測定する方法である。上記の
測定器具については、特開昭56−6148号公報、特
開昭58−211648号公報等に記載がある。
【0003】イオン選択性電極の多くは、内部参照電極
として上記のように銀/塩化銀電極を利用している。銀
/塩化銀電極は、非導電性支持体、非導電性支持体上に
銀を被覆してなる銀層および該銀層を重金属塩等の酸化
剤で酸化して形成する塩化銀層とからなる。イオン選択
性電極を用いてイオン活量を測定するには、一対のイオ
ン選択性電極間の電位差を測定する必要がある。このた
め、イオン選択性電極の導電部位(銀/塩化銀電極にお
いては銀層)の端部に電気接続用領域が設けられる。
【0004】特開昭56−33537号公報には、銀/
塩化銀電極において、銀層の一部に被覆したクロム層、
ニッケル層、あるいはクロムとニッケルとの合金層によ
って銀層との直接電気的接触を改善している。即ち、プ
ローブを塩化銀層を通過させて銀層と接触させると、銀
層が酸化反応の際に望ましくない反応(例えば、銀の腐
食等)を受けるために良好な電気的接触が得られなかっ
た。そこで、銀層の一部に導電性の高い、例えばクロム
層を設け、クロム層を有しない銀層のみを酸化して塩化
銀層を作製し、プローブをクロム層から銀層に接触させ
ることによって良好な電気的接触を達成することができ
る。ここで、銀層を酸化する酸化剤としては、重クロム
酸カリウム(K2Cr27)、過マンガン酸カリウム
(KMnO4)、フェリシアン化カリウム(K3Fe(C
N)6)、クロロクロム酸カリウム(KCrO3Cl)、
酸化バナジウムアンモニウム(NH4VO3)もしくは硝
酸セリウムアンモニウム((NH42Ce(NO36
が用いられている。また、特開昭58−102146号
公報には、重クロム酸カリウムおよび塩酸からなる処理
剤を用いて銀層を酸化する方法が開示されている。
【0005】酸化剤としては、重クロム酸カリウムもし
くは過マンガン酸カリウムが主流である。
【0006】しかし、上記の酸化剤を用いて作製した銀
/塩化銀参照電極上に塩素イオン選択性膜を備えてなる
塩素イオン選択性電極では、一定電位が発生せず、応答
速度も遅くなるという問題点を有する。これは、塩化銀
層中にクロム元素がクロム酸イオンとしてある程度混入
するためと考えられる。また、以下の問題も生じる。ク
ロム酸イオンが混入した結果、生成する重クロム酸銀
(Ag2Cr27)の溶解度は、塩化銀に比較して約1
00倍と大きいため、この重クロム酸銀が溶解し、塩素
イオン選択性膜中に溶出する。ここで、被検液として臭
素イオンを含む液体試料を使用した場合には、上記の銀
イオンは、塩素イオンとよりも臭素イオンと強く結合す
るために、塩素イオン選択性膜中で臭化銀が生成する。
電極は、この臭化銀に由来する臭素イオンを塩素イオン
として認識してしまうため、測定された塩素イオン活量
の値と実際の塩素イオン活量の値との間に誤差を生じ
る。臭素イオンが、ヨウ素イオンであっても同様であ
る。さらに、臭素イオン等の妨害イオンが電極の性能に
及ぼす影響は、時間と共に大きくなる。但し、重クロム
酸カリウム以外の酸化剤を使用した場合に、塩化銀層中
に生成した重金属を含む酸素酸の銀塩の溶解度が、塩化
銀よりも小さければ、銀イオンの溶出は起こらない。ま
た、重金属を含む酸素酸の銀塩の溶解度が塩化銀よりも
大きく、銀イオンがイオン選択性膜中に溶出したとして
も、被検液中に臭素イオン等の妨害イオンが存在しなけ
れば、電極の性能を低下させる影響を及ぼすことはな
い。
【0007】過マンガン酸カリウムを酸化剤として使用
した場合にも、上記と同様に電位が安定しないという欠
点を有する。これは、塩化銀層中に過マンガン酸銀(A
gMnO4)が生成し、一定の電位の発生に悪影響を与
えると考えられる。しかし、重クロム酸カリウムの場合
と異なり、上記のようにイオン選択性膜へ銀イオンが溶
出し、その結果、妨害イオンの影響を受けることは少な
いと考えられる。
【0008】また、前記の酸化剤は、何れも毒性を示す
ため、その取り扱い、使用後の廃液処理等にも問題点を
有する。
【0009】そこで、重クロム酸カリウムや過マンガン
酸カリウム等の重金属の酸素酸塩を酸化剤として使用し
たときに起こる塩化銀への重金属元素を含む酸素酸の銀
塩の混入を避けるため、重金属元素の酸素酸塩以外で、
かつ人体や環境に無害の酸化剤を使用した銀のハロゲン
化方法を開発する必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、銀の
酸化剤として使用したときにその影響が、生成したハロ
ゲン化銀にほとんど出ない酸化剤を用いてハロゲン化銀
を生成させる銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法、そ
の方法によって得られた銀/ハロゲン化銀参照電極を提
供することである。また、その銀/ハロゲン化銀参照電
極からなるイオン選択性電極をも提供し、試料中の特定
のイオンの活量の正確な定量を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者の研究により、
非導電性支持体、銀層およびハロゲン化銀層をこの順に
有する銀/ハロゲン化銀参照電極であって、ハロゲン化
銀層中に重金属元素を含まないことを特徴とする銀/ハ
ロゲン化銀参照電極が上記の課題を解決できることが判
明した。
【0012】銀/ハロゲン化銀参照電極の好ましい態様
は、以下の通りである。 (1)ハロゲン化銀層が、ハロゲン化物の存在下に、過
酸化物によって銀層の表面を酸化することによって該表
面上に形成された層であることを特徴とする銀/ハロゲ
ン化銀参照電極。 (2)過酸化物が過酸化水素であることを特徴とする記
載の銀/ハロゲン化銀参照電極。 (3)ハロゲン化銀層が塩化銀層であることを特徴とす
る銀/ハロゲン化銀参照電極。
【0013】また、非導電性支持体上に銀層を形成し、
次いでハロゲン化物の存在下に、過酸化物によって銀層
の表面を酸化して該表面上にハロゲン化銀層を生成させ
ることを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方
法も前記の課題を解決できることが判明した。
【0014】さらに、非導電性支持体上に、銀層および
ハロゲン化銀層からなる電極層が二個、互いに電気的に
絶縁した状態で形成され、それぞれの電極層の上に電解
質層およびイオン選択性膜が形成され、さらに一方の電
極上のイオン選択性膜の上に被検液付与用開口部を有す
る水不透過性の非導電性部材が、そして他方の電極上の
イオン選択性膜の上に参照液付与用開口部を有する水不
透過性の非導電性部材が配置され、被検液および参照液
を互いに電気的に導通させる架橋部材によって、それぞ
れの開口部が互いに電気的に接続されてなるイオン選択
性電極であって、ハロゲン化銀層中に重金属元素を含ま
ないことを特徴とするイオン選択性電極も前記の課題を
解決できることが判明した。
【0015】
【発明の実施の形態】図1に本発明の代表的なイオン選
択性電極の模式図を示す。非導電性支持体(11)上
に、銀層(22)およびハロゲン化銀層(33)からな
る電極層が二個、互いに電気的に絶縁した状態で形成さ
れている。これが、銀/ハロゲン化銀参照電極となる。
それぞれの電極層の上には、電解質層(44)(塩素イ
オン選択性電極の場合を除く)およびイオン選択性膜
(55)がこの順に設置されている。さらに、一方の電
極層のイオン選択性膜の上には、被検液付与用開口部
(61)を有する水不透過性の非導電性部材(マスク)
(77)が配置され、他方の電極層のイオン選択性膜の
上には、参照液付与用開口部(62)を有する水不透過
性の非導電性部材(マスク)(77)が配置されてい
る。被検液および参照液を互いに電気的に導通させる架
橋部材(88)がそれぞれの開口部を横切るように固定
され、このことによって、それぞれの開口部が互いに電
気的に接続される。
【0016】イオン選択性電極を用いて、被検液のイオ
ン活量を測定するには、イオン選択性電極間の電位差を
測定する必要がある。まず、イオン選択性膜表面の被検
液付与用開口部と参照液付与用開口部とに、それぞれ被
検液および参照液を滴下する。被検液としては、液体試
料であれば何れのものであってもよい。生物液体試料
(血液、尿、唾液、髄液等)や液体試料(水道水、河川
水、下水、産業排水等)を用いることもできる。参照液
としては、後述する実施例で示す標準液Mを用いること
が好ましい。次いで、架橋部材により両溶液を互いに電
気的に導通させた状態において、イオン選択性電極間の
電位差を測定する。このため、イオン選択性電極の導電
部位の両端部に電気接続用領域を設ける。銀/ハロゲン
化銀参照電極においては、導電部位は銀層であり、銀層
の両端部に電気接続用領域が設けられる。
【0017】被検液中の定量すべきイオン活量は、被検
液側に生じた電位(E(被検液))と参照液に生じた電
位(E(参照液))との差によって与えられ、下記式
(I): (I) E(被検液)−E(参照液)=(N/z)×Log(被
検液の活量/参照液の活量) で表される。ここで、Nは、ネルンスト(Nerns
t)の定数であり、25℃におけるNは、59.2mV
である。zは、イオン価数である。
【0018】非導電性支持体としては、ガラス、紙、ポ
リエチレンテレフタレート、セルロースエステル、ビス
フェノールAのポリカーボネート、ポリメチルメタクリ
レート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレ
ン、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。ポ
リエチレンテレフタレートもしくはセルロースエステル
を用いることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート
を用いることが特に好ましい。
【0019】非導電性支持体の厚さは、50μm〜1m
mの範囲にあることが好ましく、80〜400μmの範
囲にあることが特に好ましい。
【0020】非導電性支持体上への銀の被覆処理は、浸
漬被覆、ロール被覆、ブラッシュ被覆等により行うこと
が好ましい。銀層の厚さは、0.5〜1μmの範囲にあ
ることが好ましく、0.6〜0.8μmの範囲にあるこ
とがさらに好ましい。
【0021】非導電性支持体上に被覆した銀層の両端部
は、イオン選択性電極の電気接続用領域になるため、ハ
ロゲン化されないように油溶性ポリマーで被覆してお
く。油溶性ポリマーは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリ
デンを主成分とするポリマー組成物であることが好まし
い。ポリマーは、ホモポリマーあるいはコポリマーの何
れであってもよい。コポリマーは、塩化ビニリデンを少
なくとも全体の50モル%、好ましくは80モル%を含
み、これと共重合しうるモノマーからなる。このような
モノマーとしては、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、
メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル、アクリロ
ニトリル、エチレン、プロピレンもしくはビニルエーテ
ルであることが好ましい。また、塩化ビニル−塩化ビニ
リデンコポリマーは、両モノマーの含有率の広い範囲に
渡って用いることができるが、概して塩化ビニリデンの
含有率が約5〜50モル%の範囲にあることが好まし
い。ポリマーの分子量は、約2千〜約20万の範囲にあ
り、約3千〜約10万の範囲にあることが好ましい。
【0022】銀/ハロゲン化銀電極は、ハロゲン化銀層
中に重金属元素を含まない。ハロゲン化銀層は、ハロゲ
ン化物の存在下に、過酸化物によって銀層の表面を酸化
することによって該表面上に形成される層である。銀層
のハロゲン化は、過酸化物およびハロゲン化物を有する
反応槽に、銀を被覆した非導電性支持体を浸漬して行う
ことが望ましい。浸積後、水洗を行い乾燥する。これら
のハロゲン化、水洗および乾燥の一連の工程は、反応
槽、水洗槽および乾燥ゾーンを有する連続自動処理機を
用いて行ってもよい。
【0023】過酸化物としては、過酸化水素を用いるこ
とが好ましい。反応槽中の過酸化水素の濃度は、1〜1
0容量%の範囲にあることが好ましい。過酸化水素は、
反応中、激しく発泡するため、これによって均一な処理
を行うことができる。また、分解して酸素と水になるた
め、銀/ハロゲン化銀参照電極を構成するハロゲン化銀
中に酸化剤由来の重金属元素が含まれることがない。そ
の他に、過酸化物として、アルカリ金属やバリウムのペ
ルオキソ二硫酸塩を用いることもできる。ペルオキソ二
硫酸カリウム(K228)もしくはペルオキソ二硫酸
ナトリウム(Na228)を用いることが好ましい。
【0024】ハロゲン化物としては、ハロゲンイオンを
発生するものであれば何れも用いることができ、ハロゲ
ン化銀の種類に応じて選択することができる。ハロゲン
化銀が塩化銀である場合、塩化ナトリウムを用いること
が好ましい。塩化ナトリウムの濃度は、50〜150m
Mの範囲にあることが好ましい。
【0025】ハロゲン化銀層は、塩化銀層であることが
好ましい。ハロゲン化銀層の厚さは、銀層の厚さの約1
/3〜1/2の範囲にあることが好ましい。
【0026】電解質層は、銀層とハロゲン化銀層からな
る電極層上に、以下の塩の水溶液を必要に応じ連続塗布
機を用いて塗布することによって形成される。塩は、ハ
ロゲン化銀の組成に依存して、アンモニウム、アルカリ
金属、アルカリ土類金属およびその混合物からなる群よ
り選ばれるカチオンと、ハロゲンイオンとからなること
が好ましい。即ち、ハロゲン化銀と同一のハロゲンイオ
ンおよび検出することを目的とするイオンを含んでいる
ことが好ましい。例えば、塩化銀を有するナトリウムイ
オン選択性電極では、塩化ナトリウムの水溶液を塗布す
ることが好ましい。塩化銀を有するカリウムイオン選択
性電極では、塩化ナトリウムであってもよいが、塩化カ
リウムの水溶液を塗布することがさらに好ましい。塩化
銀を有する塩素イオン選択性電極では、電解質層を設け
る必要がない。電解質層の厚さは、1〜10g/m2
範囲にあることが好ましい。
【0027】イオン選択性膜は、固体膜と液膜とに大別
される。固体膜には、ガラス膜、単結晶膜、難溶性沈殿
膜等が、液膜には、液状イオン交換体膜、ニュートラル
キャリア膜等がある。難溶性沈殿膜は、沈殿を加圧成型
した膜、あるいはシリコーンゴム等のマトリックスを加
えてペレット状に成型した膜である。液膜は、イオン交
換体やニュートラルキャリアの非水溶液そのものである
か、あるいはそれをポリ塩化ビニル等のポリマー膜に含
浸保持させたものである。イオン選択性膜は、測定すべ
きイオンに対応したイオン選択性物質を電解質層上にロ
ール被覆によって形成されることが好ましい。イオン選
択性膜の厚さは、5〜50μmの範囲にあることが好ま
しい。
【0028】水不透過性の非導電性部材(マスク)は、
被検液付与用開口部と参照液付与用開口部とを有する部
材であり、イオン選択性膜と接合される。マスク上に
は、被検液および参照液を互いに電気的に導通させる架
橋部材が接合固定される。接合は、接着剤(感圧接着
剤、感熱接着剤等)、熱融着、あるいは物理的係合材に
より行われることが好ましい。
【0029】被検液と参照液とを互いに電気的に導通さ
せる架橋部材としては、ポリエチレンテレフタレート加
撚糸、メンブレンフィルタ、濾紙、特開昭55−204
99号公報に記載の両面に疎水性有機ポリマー層をラミ
ネートした濾紙等からなる糸ブリッジを好ましく使用す
ることができる。
【0030】被検液付与用開口部と参照液付与用開口部
の大きさは、何れも2〜5μmの範囲にあることが好ま
しい。滴下する標準液および被検液の量は、何れも5〜
15μLの範囲にあることが好ましい。
【0031】本発明のイオン選択性電極を用いるイオン
活量の測定は、例えば塩素イオン活量が、50〜175
ミリ当量/Lの範囲の液体試料について実施するのが好
ましい。カリウムイオン活量およびナトリウムイオン活
量については、それぞれ1〜14ミリ当量/Lの範囲、
75〜250ミリ当量/Lの範囲の液体試料について実
施することが好ましい。
【0032】
【実施例】[実施例1] (1)銀層を有するフィルムの作製 幅が45mm、長さが約150mの長尺状のポリエチレ
ンテレフタレート(PET)フィルム上に、銀を0.8
μmの厚みになるように蒸着した。フィルム上に蒸着さ
れてなる銀層の中央部分を電気的に絶縁して、二つに分
離した銀層を有するフィルムとした。このものを幅方向
に24mmの幅で切断した。
【0033】(2)銀層を有するフィルムの両端子部の
被覆 上記(1)で得られた銀層を有するフィルムの両端に5
mm幅の油溶性ポリマー(フロンマスクMA−1(古藤
産業(株)製))を塗布して乾燥した。
【0034】(3)銀/塩化銀参照電極の作製 メスシリンダーに、30容量%の過酸化水素水(16.
67g)(最終濃度:5容量%)および塩化ナトリウム
(100mM)を入れ、精製水で100mLとした。こ
れを0.1Nの塩酸水溶液でpH4.6に調整し、反応
槽に移した。上記(2)の油用性ポリマーで被覆された
銀層を有するフィルムを反応槽に浸積し、室温(約25
℃)で3分間反応を行った。次いで、水洗し、50℃で
乾燥を行い、銀/塩化銀参照電極(1)とした。
【0035】(4)イオン選択性電極の作製 上記(3)で得られた銀/塩化銀参照電極(1)上に、
塩化ナトリウム水溶液を塗布し電解質層を形成した。次
いで、電解質層上に、トリ−n−オクチルメチルアンモ
ニウムクロリドおよびポリビニルブチラールのエタノー
ル溶液を塗布し、塩素イオン選択性膜を形成した。さら
に、被検液付与用開口部と参照液付与用開口部とを有す
る両面テープを、一方の塩素イオン選択性膜上に被検液
付与用開口部が位置し、他方の塩素イオン選択性膜上に
参照液付与用開口部が位置するように接着した。そし
て、開口部間を横切るように糸ブリッジを固定し、塩素
イオン選択性電極(1)とした。同様にして、塩化カリ
ウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液をそれぞれ塗布し
て、カリウムイオン選択性電極(2)、ナトリウムイオ
ン選択性電極(3)を作製した(図1)。
【0036】[実施例2] (A)塩素イオン選択性電極(1)を用いる電位の測定 標準液(標準液L)および参照液(標準液M)を、それ
ぞれ、実施例1で得られた塩素イオン選択性電極(1)
の被検液付与用開口部、標準液付与用開口部に同時点着
し、60秒後に電位計(901型機、オリオン社製)に
より電位を測定した。各標準液の組成については、下記
第1表に示す。但し、PVPK−15は、ポリビニルピ
ロリドンを表す。 第1表 ──────────────────────────────────── 組成 標準液L 標準液M 標準液H ──────────────────────────────────── 塩化ナトリウム 70mM 100mM 140mM 炭酸水素ナトリウム 20mM 30mM 30mM リン酸第二水素カリウム 2.5mM 4mM 6mM PVPK−15 3容量% 3容量% 3容量% グリセリン 2容量% 2容量% 2容量% ────────────────────────────────────
【0037】標準液MおよびHをそれぞれ被検液とした
場合についても、同様にして60秒後の電位を測定し
た。結果を図2に示す。横軸を、被検液中の塩素イオン
活量に対する参照液中の塩素イオン活量の比の対数(L
og[被検液中の塩素イオン活量/参照液中の塩素イオ
ン活量])とし、縦軸を電位とすると、図2の−黒塗り
四角−は、Log[被検液中の塩素イオン活量/参照液
中の塩素イオン活量]値が大きくなる方向に、順にLo
g[標準液L中の塩素イオン活量/標準液M中の塩素イ
オン活量]における電位、Log[標準液M中の塩素イ
オン活量/標準液M中の塩素イオン活量]における電
位、およびLog[標準液H中の塩素イオン活量/標準
液M中の塩素イオン活量]における電位である。Log
[被検液中の塩素イオン活量/参照液中の塩素イオン活
量]値をX、電位をYとすると、これらの関係は、下記
式(II): (II) Y=−45.649×(X)+91.754 で表される。
【0038】図2より、被検液中の塩素イオン活量に対
する参照液中の塩素イオン活量の比の対数と電位との関
係は、良好な直線関係を示したことから、塩素イオン選
択性電極(1)は、ネルンスト(Nernst)の理論
に従った電位の応答をしていることが分かった。
【0039】被検液(標準液L)および参照液(標準液
M)を、前記記載の塩素イオン選択性電極(1)のそれ
ぞれの開口部に同時点着した後、6秒おきに電位を測定
した。測定は、3回づつ行った(後述する図4以降で
は、測定を4回行った場合もある)。また、標準液Mお
よびHをそれぞれ被検液とした場合についても同様にし
て電位の測定を行った。電位測定の結果を図3に示す。
但し、−□−、−△−および−○−は、それぞれ被検液
として、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表
す。
【0040】図3より、何れの被検液おいても、電位の
応答速度が速く、電位が収束していることが分かった。
【0041】(B)カリウムイオン選択性電極(2)を
用いる電位の測定 実施例1で得られたカリウムイオン選択性電極(2)を
用いる以外は、上記(A)と同様にして被検液として標
準液L、MおよびHをそれぞれ用い、電位の測定を行っ
た。電位測定の結果を図4に示す。但し、−×−、黒塗
り丸−および−□−は、それぞれ被検液として、標準液
L、MおよびHを用いたときの電位を表す。
【0042】(C)ナトリウムイオン選択性電極(3)
を用いる電位の測定 実施例1で得られたナトリウムイオン選択性電極(3)
を用いる以外は、前記(A)と同様にして被検液として
標準液L、MおよびHをそれぞれ用い、電位の測定を行
った。電位測定の結果を図5に示す。但し、−×−、黒
塗り丸−および−□−は、それぞれ被検液として、標準
液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。
【0043】図4および5より、カリウムイオン選択性
電極(2)およびナトリウムイオン選択性電極(3)を
用いた場合にも、塩素イオン選択性電極(1)と同様
に、一定の電位の発生が認められた。また、何れの電極
においても、塩素イオン選択性電極(1)と同様に、被
検液のイオン活量に対する参照液のイオン活量の比の対
数とその電位との関係は、ネルンスト(Nernst)
の理論に従うことが別途確認された(データ非表示)。
【0044】[比較例1]酸化剤として重クロム酸カリ
ウムを用いる以外は実施例1と同様にして、銀/塩化銀
参照電極(II)を得た。但し、反応は、25℃で90
秒間行った。続いて3種類のイオン選択性電極(塩素イ
オン選択性電極(4)、カリウムイオン選択性電極
(5)およびナトリウムイオン選択性電極(6))を作
製した。
【0045】塩素イオン選択性電極(1)を、塩素イオ
ン選択性電極(4)、カリウムイオン選択性電極(5)
およびナトリウムイオン選択性電極(6)のそれぞれに
変える以外は実施例2と同様にした。結果をそれそれ図
6、7および8に示す。但し、図6における−□−、−
△−および−○−は、それぞれ被検液として、標準液
L、MおよびHを用いたときの電位を表し、図7および
8における−×−、−黒塗り丸−および−□−は、それ
ぞれ被検液として、標準液L、MおよびHを用いたとき
の電位を表す。
【0046】図6、7および8より、重クロム酸カリウ
ムを酸化剤として用いて得られた銀/塩化銀参照電極
(II)からなるイオン選択性電極は、過酸化水素を用
いて得られた対応する銀/塩化銀参照電極(I)からな
るイオン選択性電極に比べて、電極の応答性や収束性が
低下することが分かった。特にカリウムイオン選択性電
極においては、電位の収束性に欠けた。このことは、重
クロム酸カリウムによる銀層の酸化によって形成した塩
化銀中に、クロム元素が重クロム酸イオンとして取り込
まれた結果、生成した重クロム酸銀が電極の性能に影響
を及ぼしたと考えられる。実際に取り込まれた量につい
ては、後述する実施例3に示す。
【0047】[比較例2]酸化剤として過マンガン酸カ
リウムを用いる以外は実施例1と同様にして、銀/塩化
銀参照電極(III)を得、続いて塩素イオン選択性電
極(7)を作製した。
【0048】実施例2の塩素イオン選択性電極(1)
を、上記の塩素イオン選択性電極(7)に変える以外
は、実施例2と同様にした。結果を図9に示す。但し、
−□−、−△−および−○−は、それぞれ被検液とし
て、標準液L、MおよびHを用いたときの電位を表す。
【0049】図9より、塩素イオン選択性電極(7)
は、塩素イオン選択性電極(1)に比べて、電位の収束
性が低いことが分かった。
【0050】これは、塩化銀中にマンガン元素が過マン
ガン酸イオンとして混入した結果、生成した過マンガン
酸銀が電極の性能に影響を与えたものと考えられる。実
際の混入の割合については、後述する実施例3に示す。
尚、塩素イオン選択性電極(4)、カリウムイオン選択
性電極(5)、ナトリウムイオン選択性電極(6)およ
び塩素イオン選択性電極(7)についても、被検液のイ
オン活量に対する参照液のイオン活量の比の対数とその
電位との関係は、ネルンスト(Nernst)の理論に
従うことを別途確認した(データ非表示)。
【0051】[実施例3]実施例1、比較例1および比
較例2でそれぞれ得られた銀/塩化銀参照電極(I)、
(II)、(III)について、蛍光X線測定機(SE
A2001、セイコー電子工業(株)製)によって、含
有元素の元素分析を行った。結果を第2表に示す。数字
は、蛍光X線の強度(cps)を示す。 第2表 ──────────────────────────────────── 電極 電極 電極 (I) (II) (III) ──────────────────────────────────── 塩素 129.75 140.93 121.33 クロム 0.00 75.36 0.00 マンガン 0.00 0.00 52.09 銀 280.55 288.94 291.28 ────────────────────────────────────
【0052】
【発明の効果】本発明の過酸化水素を酸化剤とする銀/
ハロゲン化銀参照電極の製造方法では、ハロゲン化銀中
への重金属元素の混入を完全に回避することができる。
よって、この銀/ハロゲン化銀参照電極にイオン選択性
膜を付したイオン選択性電極は、優れた電気応答を示
し、生物液体試料等を検体とした場合にも、検体中の特
定イオンの活量を正確に定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的なイオン選択性電極の断面模式図であ
る。
【図2】実施例2の塩素イオン選択性電極(1)を用い
たときの、標準液Lのイオン活量に対する参照液のイオ
ン活量の比の対数(Log[標準液Lのイオン活量/標
準液Mのイオン活量])と電位との関係を示すグラフで
ある。
【図3】実施例2の塩素イオン選択性電極(1)の性能
を示すグラフである。
【図4】実施例2のカリウムイオン選択性電極(2)の
性能を示すグラフである。
【図5】実施例2のナトリウムイオン選択性電極(3)
の性能を示すグラフである。
【図6】比較例1の塩素イオン選択性電極(1)の性能
を示すグラフである。
【図7】比較例1のカリウムイオン選択性電極(2)の
性能を示すグラフである。
【図8】比較例1のナトリウムイオン選択性電極(3)
の性能を示すグラフである。
【図9】比較例2の塩素イオン選択性電極(1)の性能
を示すグラフである。
【符号の説明】
11 非導電性支持体 22 銀層 33 ハロゲン化銀層 44 電解質層 55 イオン選択性膜 61 被検液付与用開口部 62 参照液付与用開口部 77 水不透過性の非導電性部材(マスク) 88 被検液と参照液とを互いに電気的に導通させる架
橋部材

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非導電性支持体、銀層およびハロゲン化
    銀層をこの順に有する銀/ハロゲン化銀参照電極であっ
    て、ハロゲン化銀層中に重金属元素を含まないことを特
    徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極。
  2. 【請求項2】 ハロゲン化銀層が、ハロゲン化物の存在
    下に、過酸化物によって銀層の表面を酸化することによ
    って該表面上に形成された層であることを特徴とする請
    求項1に記載の銀/ハロゲン化銀参照電極。
  3. 【請求項3】 過酸化物が過酸化水素であることを特徴
    とする請求項1に記載の銀/ハロゲン化銀参照電極。
  4. 【請求項4】 ハロゲン化銀層が塩化銀層であることを
    特徴とする請求項1に記載の銀/ハロゲン化銀参照電
    極。
  5. 【請求項5】 非導電性支持体上に銀層を形成し、次い
    でハロゲン化物の存在下に、過酸化物によって銀層の表
    面を酸化して該表面上にハロゲン化銀層を生成させるこ
    とを特徴とする銀/ハロゲン化銀参照電極の製造方法。
  6. 【請求項6】 非導電性支持体上に、銀層およびハロゲ
    ン化銀層からなる電極層が二個、互いに電気的に絶縁し
    た状態で形成され、それぞれの電極層の上に電解質層お
    よびイオン選択性膜が形成され、さらに一方の電極上の
    イオン選択性膜の上に被検液付与用開口部を有する水不
    透過性の非導電性部材が、そして他方の電極上のイオン
    選択性膜の上に参照液付与用開口部を有する水不透過性
    の非導電性部材が配置され、被検液および参照液を互い
    に電気的に導通させる架橋部材によって、それぞれの開
    口部が互いに電気的に接続されてなるイオン選択性電極
    であって、ハロゲン化銀層中に重金属元素を含まないこ
    とを特徴とするイオン選択性電極。
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