JP2000212228A - 糖含有感熱応答性共重合体及びその製造方法 - Google Patents

糖含有感熱応答性共重合体及びその製造方法

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豊 常盤
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哲造 戸谷
Takao Raku
隆生 楽
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生分解構造のある感熱応答性ポリマーおよび
その製造方法を提供する。 【解決手段】 下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1はアルキレン基、Xは糖化合物から1個の
水酸基が除かれた糖残基を示す)で表される構造単位お
よび下記一般式(2) 【化2】 (式中、R2は水素又はメチル基を示し、R3は低級アル
キル基を示す)で表される構造単位からなり、構造単位
(1)を1〜99モル%含有する共重合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生分解構造を有す
る新規な感熱応答性共重合体及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、糖鎖が細胞問の認識、情報伝達に
重要な役割を果たしていることが解明されたのを受け
て、糖鎖を使用した医薬品、機能性材料の開発が進んで
いる。また、感熱応答性高分子であるポリ(N−イソプ
ロピルアクリルアミド)は水溶液中で温度変化に対して
明確な曇点を示すため、物質表面の改質、物質の精製、
ドラッグデリバリーの制御などの用途に期待されてい
る。
【0003】現在までに、N−イソプロピルアクリルア
ミドとN−アクリロキシスクシンイミド[J.Control R
elease、45:95-101(1997)]、N−イソプロピルアクリル
アミドとビニルピロリドン[J.Appl.Polym.Sci.,64:177
5-1784(1997)]などの共重合体が報告されているが、こ
れらのコポリマーは生分解性がないポリアクリルアミド
骨格からなっており、生体や環境を汚染する危険性があ
る。また、このN−イソプロピルアクリルアミドと重合
性の糖エステルを共重合させた例はいままでに報告され
ていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、生分解構造のある感熱応答性ポリマーおよびそ
の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ジカルボン酸ビ
ニルエステルが糖に結合した重合性の糖エステルと、N
−イソプロピルアクリルアミドとをアゾ系のラジカル重
合開始剤の存在下に共重合させることにより、生分解性
のあるポリビニルアルコール骨格を持っ糖含有ポリマー
を合成することに成功して、本発明を完成するに至っ
た。即ち、本発明によれば、下記一般式(1)
【化5】 (式中、R1はアルキレン基、Xは糖化合物から1個の
水酸基が除かれた糖残基を示す)で表される構造単位お
よび下記一般式(2)
【化6】 (式中、R2は水素又はメチル基を示し、R3は低級アル
キル基を示す)で表される構造単位からなり、構造単位
(1)を1〜99モル%含有する共重合体が提供され
る。また、本発明によれば、下記一般式(3)
【化7】 (式中、R1はアルキレン基、Xは糖化合物から1個の
水酸基が除かれた糖残基を示す)で表される重合性糖エ
ステルと下記一般式(4)
【化8】 (式中、R2は水素又はメチル基を示し、R3は低級アル
キル基を示す)で表される重合性アクリルアミドを、溶
媒中で重合開始剤存在下にラジカル重合させることを特
徴とする前記共重合体の製造方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の共重合体の合成に用いる
重合性の糖エステルは、前記一般式(3)で表される。
アルキレン基R1としては特に制限はないが、通常、炭
素数1〜18、好ましくは炭素数2〜8の直鎖または分
岐鎖アルキレン、例えば、エチレン、トリメチレン、プ
ロピレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメ
チレン基などが挙げられる。また、糖残基Xを与える糖
化合物も特に制限はないが、例えば、グルコース、フル
クトース、マンノース、ガラクトース等の単糖、スクロ
ース、マルトース、セロビオース、ラクトース、ラフィ
ノース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マル
トペンタオース、サイクロデキストリン等のオリゴ糖、
デンプン、セルロース、キチン、キトサン、マンナン、
ブルラン、カードラン、キシラン、カラクトマンナン、
グルコマンナン、デキストリン等の多糖およびそれらの
部分加水分解物などが挙げられる。
【0007】本発明で用いられる重合性の糖エステル
は、ジカルボン酸ビニルエステルと糖化合物とを化学的
にエステル結合させるか、あるいは加水分解酵素(もし
くは該酵素を産生する微生物等)を用いて酵素化学的に
(もしくは発酵的に)結合させることにより合成するこ
とができる。酵素法による場合、酵素としてプロテアー
ゼやリパーゼ、特に放線菌由来のプロテアーゼやアルカ
リゲネス属由来のリパーゼが好ましく用いられる。本発
明で用いる前記一般式(4)で表される重合性アクリル
アミドにおいて、R3は低級アルキル基を示すが、その
炭素数は1〜6、好ましくは1〜4である。このような
低級アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピ
ル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、s
ec−ブチル等が挙げられる。
【0008】本発明の共重合体は、例えば下記の方法に
より製造することができる。即ち、上記の糖エステルお
よびN−イソプロピルアクリルアミドを溶媒中に溶解
し、該混合物をラジカル重合開始剤、好ましくはα、
α'−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系の開始剤
の存在下、40〜100℃で3〜96時間反応させるこ
とにより合成される。
【0009】本発明の共重合体は、前記一般式(1)で
表される構造単位および前記一般式(2)で表される構
造単位で表される構造単位からなり、構造単位(1)を
1〜99モル%、好ましくは10〜90モル%で含有す
る。この生分解構造を有する感熱応答性ポリマーを得る
ためには、構造単位(1)と構造単位(2)がそれぞれ
の適当な大きさで連続したブロック、すなわち、生分解
性の糖エステルブロックと感熱応答性ブロックとを有す
るブロック共重合体であることが好ましい。
【0010】本発明の共重合体の分子量には特に制限は
ないが、好ましくは数平均分子量で300〜60000
である。分子量は、共重合体の使用目的に応じて適当な
大きさのものを選択することができる。本発明の共重合
体は使用後または廃棄後に速やかに分解されるために
は、数平均分子量が300〜10000であることが好
ましい。また、重合性糖エステルの組成比率を多くする
ことによって、共重合体の生分解度を増すことができ
る。
【0011】本発明の共重合体は糖分岐構造を有する感
熱応答性高分子であるため、感熱応答性の機能性材料と
して使用することができる。したがって、本発明はま
た、本発明の共重合体を主成分として含有する感熱応答
性材料を提供する。本発明の感熱応答性ポリマーは、イ
ンテリジェント材料、物質精製材料、表面改質材料、ド
ラッグデリバリーシステム制御材料等として用いること
ができるが、各用途に応じて適宜、通常用いられる他の
成分を含有させてよい。
【0012】
【実施例】以下、実施例をあげて本説明をさらに詳細に
説明するが、これらは単なる例示であって、本説明の範
囲を何ら限定するものではない。
【0013】実施例1−5(糖エステル−N−イソプロ
ピルアミド共重合体の合成) モレキュラーシーブス(3A)で十分乾燥させたジメチ
ルホルムアミド(DMF)4ml中に6−O−アジピン
酸ビニルグルコースとN−イソプロピルアクリルアミド
が合わせて3mol/lになるように溶解した。6−O
−アジピン酸ビニルグルコースとN−イソプロピルアク
リルアミドの仕込みモル比率はそれぞれ5:95,1
0:90,15:85,20:80,25:75の割合
でおこなった。ついで、α、α'−アゾビス−イソブチ
ロニトリル40mgを加え、減圧脱気を3回繰り返した
後、該溶液を55℃で24時間加熱した。該反応液をジ
エチルエーテル200ml中に滴下し、沈殿、精製し
て、生成した共重合体を室温で減圧乾燥した。各仕込み
比率で生成した共重合体について、その組成比、並びに
数及び重量平均分子量を表1にまとめた。
【0014】比較例1(N−イソプロピルアミド単独重
合体の合成) N−イソプロピルアクリルアミド1.36gを、モレキ
ュラーシーブス(3A)で十分乾燥させたジメチルホル
ムアミド(DMF)4ml中に溶解した。ついで、α、
α'−アゾビス−イソブチロニトリル40mgを加え、
減圧乾燥を3回繰り返した後、該溶液を55℃で24時
間加熱した。該反応液をジエチルエーテル200ml中
に滴下し、沈殿、精製して、精製した重合体を室温で減
圧乾燥した。該N−イソプロピルアミド単独重合体の組
成比、並びに数および重量平均分子量を表1に併記し
た。
【0015】比較例2(糖エステル単独重合体の合成) 6−O−アジピン酸ビニルグルコース19を、モレキュ
ラーシーブス(3A)で十分乾燥させたジメチルホルム
アミド(DMF)1ml中に溶解した。ついで、α、
α'−アゾビス−イソブチロニトリル10mgを加え、
減圧乾燥を3回繰り返した後、該溶液を55℃で24時
間加熱した。該反応液をアセトン200ml中に滴下
し、沈殿、精製して、精製した重合体を室温で減圧乾燥
した。該糖エステル単独重合体の組成比、並びに数およ
び重量平均分子量を表1に併記した。なお、表中に示し
た成分Aはアジピン酸ビニルグルコースを示し、成分B
はイソプロピルアクリルアミドを示す。
【0016】
【表1】
【0017】試験例1(感熱応答性の評価1) 実施例1〜5で得られた5種の共重合体の水溶液中にお
ける感熱応答性を調べるために吸光度計を用いて透過率
測定を行い、温度変化による曇点を調べた。比較のた
め、比較例1で得られたN−イソプロピルアミド単独重
合体、比較例2で得られた6−O−アジピン酸ビニルグ
ルコース単独重合体についても同様の試験を行った。測
定は0.2wt%の水溶液を使用し、0.2℃/min
の速度で温度を上昇させた。結果を図1に示す。5種の
共重合体は糖エステルブロックの比率が大きくなるにつ
れて、曇点の温度が上昇していることが確認された。
【0018】試験例2(感熱応答性の評価2) 実施例1〜5で得られた5種の共重合体の水溶液中にお
ける感熱応答性を調べるために示差走査熱量計を用いて
示差走査熱量測定を行い、温度変化による結晶化の熱量
変化を調べた。比較のため、比較例1で得られたN−イ
ソプロピルアクリルアミド単独重合体、比較例2で得ら
れた6−O−アジピン酸ビニルグルコース単独重合体に
ついても同様の試験を行った。測定は10wt%の水溶
液を使用し、0.5℃/minの速度で温度を上昇させ
た。結果を図2に示す。N−イソプロピルアミド単独重
合体および5種の共重合体は試験例1の透過率測定によ
る曇点とほぼ同じ温度で吸熱ピークが認められ、糖エス
テルブロックの比率が大きくなるにつれて、吸熱ピーク
の転移点の温度が上昇していることが確認された。各共
重合体と比較例1で得られたN−イソプロピルアミド単
独重合体の転移点を表2にまとめた。
【0019】
【表2】
【0020】
【発明の効果】本発明の糖含有感熱応答性ポリマーは、
共重合組成比を変化させても曇点をシャープに制御する
ことが可能であり、また生分解性構造を有していること
から、高機能性の医薬材料、物質精製材料等として有用
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成比の異なる糖エステル−N−イソプロピル
アクリルアミド共重合体の水溶液の温度と透過率の関係
を示す図である。
【図2】組成比の異なる糖エステル−N−イソプロピル
アクリルアミド共重合体の水溶液の温度と熱量変化の関
係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (74)上記2名の代理人 100074505 弁理士 池浦 敏明 (72)発明者 常盤 豊 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技術 院生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 戸谷 哲造 大阪府高槻市中川町5−21 甲南化工株式 会社内 (72)発明者 楽 隆生 大阪府高槻市中川町5−21 甲南化工株式 会社内 Fターム(参考) 4J100 AG08P AM17Q BA15P BD10P CA04 DA72

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1はアルキレン基、Xは糖化合物から1個の
    水酸基が除かれた糖残基を示す)で表される構造単位お
    よび下記一般式(2) 【化2】 (式中、R2は水素又はメチル基を示し、R3は低級アル
    キル基を示す)で表される構造単位からなり、構造単位
    (1)を1〜99モル%含有する共重合体。
  2. 【請求項2】 下記一般式(3) 【化3】 (式中、R1はアルキレン基、Xは糖化合物から1個の
    水酸基が除かれた糖残基を示す)で表される重合性糖エ
    ステルと下記一般式(4) 【化4】 (式中、R2は水素又はメチル基を示し、R3は低級アル
    キル基を示す)で表される重合性アクリルアミドを、溶
    媒中で重合開始剤存在下にラジカル重合させることを特
    徴とする請求項1記載の共重合体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103333287A (zh) * 2013-06-20 2013-10-02 东华大学 一种raft法合成葡萄糖共聚物的方法
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