JP2000144899A - 溶接構造物およびその製造方法 - Google Patents

溶接構造物およびその製造方法

Info

Publication number
JP2000144899A
JP2000144899A JP32360398A JP32360398A JP2000144899A JP 2000144899 A JP2000144899 A JP 2000144899A JP 32360398 A JP32360398 A JP 32360398A JP 32360398 A JP32360398 A JP 32360398A JP 2000144899 A JP2000144899 A JP 2000144899A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welded
welding
fatigue strength
base material
welded portion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP32360398A
Other languages
English (en)
Inventor
Hisashi Ito
久 伊藤
Tetsuya Nakamura
哲也 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NKK Corp, Nippon Kokan Ltd filed Critical NKK Corp
Priority to JP32360398A priority Critical patent/JP2000144899A/ja
Publication of JP2000144899A publication Critical patent/JP2000144899A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Bridges Or Land Bridges (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】溶接部6の疲労強度が最適化されるとともに、
解析・設計が簡単でかつ過剰品質を招くこともない溶接
構造物およびその製造方法を提供する。 【解決手段】溶接ビードの形状を無視または条件に対応
して単純化した有限要素モデルを用い、かつ溶接部6と
その近傍の補剛板4等の母材部に重み付けを付加して有
限要素法により溶接構造物を解析・設計し、溶接部6と
母材部の疲労強度を均等化して疲労強度に関する最適化
された構造を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁、船舶、高層
建築物、その他の構造物であって、少なくともその一部
に溶接部を備えた溶接構造物、およびこの溶接構造物を
製造する方法に関する。さらに特定すれば、本発明は疲
労強度に対する溶接部および各部の構成を最適化した溶
接構造物およびこのような溶接構造物を製造する方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、橋梁、船舶、高層建築物、そ
の他の構造物の設計には、それぞれの構造物に適用され
る公的な規則や示方書に従うことに加えて、強度計算を
詳細に行うために、有限要素法による解析がなされ、各
部の応力レベルが適切になるように設計がなされてい
る。また、繰り返し荷重の作用する構造物では、各部の
疲労強度についても、適切に配慮することが必要であ
る。
【0003】このような疲労強度の配慮は、溶接部のあ
る溶接構造物については特に必要がある。すなわち、溶
接部は、たとえばその溶接ビード止端部に曲率半径の小
さい凹部が存在し、また他の部分にも曲率半径の小さい
凹部が形成されやすく、このような部分には応力集中が
生じる。したがって、疲労強度について考慮するには、
このような溶接部分の応力を解析する必要がある。ま
た、溶接部分には、上記のような形状の問題の他に、溶
接の際の熱の影響により、材質上の問題もあり、このよ
うな材質上の問題による疲労強度の低下等にも考慮を払
う必要がある。
【0004】上記のような溶接構造物を有限要素法によ
り解析・設計する場合には、たとえばモデル化する要素
のサイズを、上記のような溶接ビード止端部およびその
近傍部分では0.1mm単位の細かいメッシュに分割す
ることにより、この止端部の曲率半径の小さい凹部の応
力を解析することができる。しかし、このような方法に
より応力を解析すると、メッシュの分割および解析に膨
大な時間と労力を必要とし、実用的ではない。
【0005】また、上記のような方法で解析すると、た
とえばモデル化された溶接ビード止端部の曲率半径を小
さくする程、集中応力の解析値が大きくなって無限大に
近付いてしまう傾向があり、また実際の溶接ビードでは
モデル化したビードの形状とは異なる形状となる場合が
あり、モデルによる解析と実物との乖離が大きくなると
いう問題もある。
【0006】上記のような問題に対応するために、従来
から、有限要素法により構造物の応力解析を行う場合に
は、溶接部分の溶接ビード止端部の形状等を無視する
か、あるいは解析手法の便宜上や精度、構造物の種類、
仕様その他の条件に対応して溶接ビードの形状を適宜簡
略化して解析し、この溶接部分における疲労強度につい
ては経験則や過去のデータの解析等から導き出された対
応を施すことがなされている。
【0007】たとえば、図7ないし図10を参照して、
従来の溶接部分の疲労強度向上の対策の例を示す。図7
は橋梁における主桁21と分配横桁22の交差部分の斜
視図である。上記の主桁21は、上フランジ23、下フ
ランジ24、腹板25から構成され断面H形をなし、ま
た分配横桁22も同様に上フランジ26、下フランジ2
7、腹板28から構成され断面H形をなしている。そし
て、上記の分配横桁22の上フランジ26、下フランジ
27、腹板28は上記の主桁21の腹板25と交差し、
これらの交差部において互いに溶接されている。
【0008】また、上記の交差部において、主桁21の
上フランジ23と分配横桁22の上フランジ26との
間、および主桁21の下フランジ24と分配横桁22の
下フランジ27との間には補剛板30が溶接により取り
付けられている。このような橋梁では、車両の通過等に
より、上記の部材各部に繰り返し応力が作用し、疲労に
よる亀裂等が発生することがある。
【0009】図8は、上記の補剛板30の正面図を示
す。この補剛板30は、主桁21の上フランジ23、腹
板25、分配横桁22の上フランジ26に溶接されてお
り、腹板25と上フランジ23,26との隅部に対応し
てスカラップ34が形成されている。なお、31は溶接
ビードを示す。このような従来から用いられていた補剛
板30は、上記のような繰り返し応力による疲労によ
り、溶接ビード31の止端部に亀裂33が発生し、また
スカラップ34の部分にも亀裂32が発生しやすい傾向
がある。
【0010】上記のような過去の経験およびデータに基
づいて、疲労による亀裂の発生防止の対策を施した補剛
板を図9に示す。この補剛板30aは、上述のように亀
裂が発生しやすいスカラップを廃止したものである。ま
た、亀裂の発生しやすい溶接ビード31の止端部のみを
より高品質の溶接、たとえば開先加工してTIG溶接を
したTIG溶接部分35を形成したものである。なお、
上記の点以外はこの補剛板30aは上記の図8の補剛板
30と同様の構成である。
【0011】また、図10には、疲労による亀裂の発生
防止の対策を施した補剛板の別の例を示す。この補剛板
30bは、開放縁部を凹状に湾曲させた湾曲縁部36と
して構成したものである。このような湾曲縁部36によ
り、この補剛板30bの剛性、特に亀裂が発生しやすい
溶接ビード止端部に対応した部分の剛性が小さくなり、
これによって溶接ビード31の止端部等に生じる応力集
中を緩和し、この部分の疲労による亀裂の発生を防止す
るものである。
【0012】また、上記のような手法とともに、補剛板
の板厚を厚くして溶接部分の応力を低減したり、また溶
接の施工基準のレベルを高くして、基準以下の凹部等の
部分を研削して除去するなどの対策もある。
【0013】上記のような従来の手法は、溶接構造物の
一部について局部的な対策をおこなうものであり、この
溶接構造物の全体の疲労強度に対する最適化をなすもの
ではなかった。このため、溶接構造物の全体の形状、構
造等に無駄が生じるとともに、局部的な対策であるた
め、溶接構造物の溶接部分の全体について必ずしも最適
化がなされているとは言えず、また不必要に過剰品質と
なる場合があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の事情に
基づいてなされたもので、局部的な対策による手法に頼
らず、溶接部分の疲労強度に対してこの全体として最適
化をおこなうことができる溶接構造物およびその製造方
法を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明
の溶接構造物は、考慮すべき荷重条件下において、溶接
ビードの形状を無視または条件に対応して簡略化した場
合に溶接部に作用する溶接部応力値に対して、この溶接
部の近傍の部材に作用する母材部応力値が大きく設定さ
れていることを特徴とするものである。
【0016】このように応力値が設定されている構造物
では、荷重が作用した場合に発生する溶接部の応力が母
材部の応力に対して相対的に低くなる。この溶接部で
は、たとえば溶接ビード止端部等の応力集中等により疲
労強度が低くなる傾向があるが、実際に繰り返し荷重が
作用した場合にこの溶接部の繰り返し応力が相対的に低
下することにより、このような傾向が相殺され、母材部
の疲労強度に対する溶接部の疲労強度が均等化する。よ
って、疲労強度がより最適化された溶接構造物が得られ
る。
【0017】また、このような設定は、溶接部分の局部
的な対策ではなく、溶接構造物全体の対策であるため、
全ての溶接部分における疲労による亀裂の発生等をより
確実に防止することができる。また、溶接施工の品質を
あらかじめ設定し、この溶接品質に対応して溶接部応力
値と母材部応力値との比率を設定すれば良いので、この
溶接構造物の溶接部分は上記の品質基準を満足すればよ
く、部分的により高い品質基準の溶接をおこなう必要は
なく、過剰品質を招くこともない。
【0018】また、請求項2に記載の本発明溶接構造物
は、前記の溶接部応力値に対して母材部応力値が1.0
〜5.0倍程度に設定されていることを特徴とするもの
である。
【0019】この溶接部応力値と母材部応力値との比率
がこの範囲にあれば、一般に実用化されているほとんど
の溶接継手を包覆するので、溶接構造物の種類や溶接管
理基準に対応して、疲労強度についての最適化ができ
る。
【0020】また、請求項3に記載の製造方法は、溶接
ビードの形状を無視または条件に対応して簡略化した有
限要素モデルを用い、溶接部に作用する溶接部応力値に
対して、この溶接部の近傍の部材に発生する母材部応力
値に所定の重み付けを付加して有限要素法により溶接構
造物の形状を設計する工程と、上記の設計工程により設
定された形状に従って部材を製造する工程と、上記の部
材を溶接する工程とを具備したものである。
【0021】このような方法によれば、製造すべき溶接
構造物を単純にモデル化することができ、有限要素法に
よる設計作業を簡略化することができるとともに、上記
の重み付けにより溶接構造物の溶接部の疲労強度につい
て設計の最適化を達成することができ、また溶接工程に
おいても、局部的に溶接基準レベルを変更する必要もな
く、製造が容易となり、また過剰品質等の問題もない。
【0022】また、請求項4に記載の製造方法は、前記
の設計工程は、溶接構造物の種類および仕様等に対応し
て溶接管理基準を設定し、この設定された溶接管理基準
に対応して前記の母材部応力値に付加する重み付けの係
数を選択するものであり、また前記の溶接工程は上記の
設定された溶接管理基準に従って施工されるものであ
る。
【0023】したがって、製造すべき溶接構造物の種類
や仕様、たとえば重量の制限、その他の条件に対応し
て、たとえば重量の制限の厳しい場合には、溶接管理基
準を高く設定し、この溶接管理基準に対応して重み付け
の係数を選択することによりたとえば溶接構造物の軽量
化を達成でき、しかもこのような場合でもこの溶接構造
物の溶接部の疲労強度の最適化も達成できる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、図1ないし図5を参照して
本発明の実施形態を説明する。図1には、本発明の溶接
構造物の例を示し、このものは前記のような橋梁の桁部
材の交差部の補剛板の部分である。なお、本発明の説明
と理解を容易にするために、この実施形態は前記の従来
の補剛板と同様な補剛板を例示してあるが、本発明はこ
のようなものには限定されず、その他の任意の溶接構造
物の全部または一部に適用できるものである。
【0025】この構造物の一部は、上フランジ1、下フ
ランジ2、腹板3、およびこれらに溶接された補剛板4
を備えており、この補剛板4の開放縁部には湾曲縁部5
を形成し、その剛性をある程度低下させてある。また、
この補剛板4の上縁部、側縁部、および下縁部は上フラ
ンジ、腹板3、下フランジ2に溶接されている。この溶
接部6は、たとえば隅肉溶接であり、また溶接ビード止
端部、およびその他の仕上げ等を指定した所定の溶接管
理基準に従って溶接されたものである。
【0026】そして、このような溶接構造物は、各部材
および溶接部をモデル化して有限要素法によって応力解
析、および設計されたものである。そして、この有限要
素法により解析・設計された繰り返し荷重による繰り返
し応力は、上記の溶接部分6の溶接ビードの形状、たと
えば止端部の曲率半径等を無視した有限要素モデルによ
り解析した場合に、この溶接ビードに作用する繰り返し
応力の値をσw、この溶接部6の近傍の部材たとえば補
剛板4等の溶接母材部分に作用する繰り返し応力の値を
σmとした場合、 σm/σw = 1.5 に設定されている。
【0027】なお、上記の σm/σw の値は、溶接
部6の溶接管理基準と、この溶接部分に作用する応力の
方向とにより適宜の範囲で設定される。この溶接管理基
準としては、たとえばアーク隅肉溶接、TIG溶接等の
溶接の種類、または開先加工の有無、溶接ビードのパス
数、溶接ビード止端部の半径、止端角(フランクアング
ル)、溶接部のグラインダー仕上げの程度、ショットピ
ーニングやハンマーピーニング等の処理の程度、残留応
力除去熱処理の程度、溶接ビード止端部のアンダーカッ
トの処置具合、溶接施工技術の熟練度による欠陥率の程
度、ガス切断端面のノッチの程度等がある。また、上記
の応力の方向とは、たとえばその溶接箇所に作用する応
力が直応力が支配的であるか、または剪断応力が支配的
であるか、等により設定されるものである。
【0028】一般的には、上記の σm/σw の値
は、上記のような溶接管理基準に対応して 1.0〜
5.0 程度の範囲内で設定され、後述するように、こ
の溶接構造物の溶接部分6の疲労強度に関する最適化が
達成される。
【0029】上記のような実施形態の溶接構造物は、繰
り返し応力が作用した場合に、上記の溶接部6の疲労強
度と、この溶接部の近傍の部材、たとえば補剛板4、上
フランジ1、下フランジ2、腹板3等の母材部分の疲労
強度が略等しくなる。したがって、この溶接構造物の溶
接部分6に関して、その疲労強度が最適化された最も合
理的な構造となる。
【0030】次に、上記のような作用および効果につい
て詳述する。まず図2および図3を参照して、本発明に
至るまでに本発明者等がおこなった実験を説明する。図
2には、この実験に用いられた試験片を示す。この試験
片は、溶接構造物の溶接部分の一部を模擬したもので、
鋼板からなるフランジ部11,12と、これらと溶接部
16により溶接された腹板14を備えている。
【0031】そして、この試験片について、有限要素法
により応力解析を行い、この後この試験片に繰り返し荷
重を与えて各部に繰り返し応力を作用させ、各部に発生
する亀裂を観察することにより、各部位の疲労強度を求
めた。
【0032】なお、この実験は、溶接部16の溶接ビー
ドの形状、たとえば止端部の曲率半径等を無視し、有限
要素モデルに含めない有限要素解析を行い、この溶接部
16およびこの近傍の部材11,12,14すなわち母
材部の繰り返し応力を解析した。また、フランジ部1
1,12や腹板14の板厚、溶接部16の溶接ビードの
肉盛りの厚さ等を変え、溶接部および母材部に作用する
繰り返し応力の解析値の比率を変更した各種の試験片に
ついて実験をおこなった。
【0033】図3には、上記の実験の結果を要約して示
す。この図は、繰り返し応力と亀裂発生寿命すなわち疲
労強度との関係を示したものであるが、繰り返し応力の
座標は相対値である。この図から明らかなように、母材
部の疲労強度の特性と、溶接部の疲労強度の特性との間
には、明らかな相関関係があり、この関係は、繰り返し
応力の絶対値が変わっても変化しない。
【0034】母材部の疲労強度は、溶接部の疲労強度に
対して常に1.5倍であり、この値は、溶接部16の溶
接の種類等の溶接管理基準が一定である限り、繰り返し
応力の絶対値を低くして亀裂発生寿命を延長しても、ま
た逆に繰り返し応力の絶対値を高くして亀裂発生寿命を
短縮しても、変化しない。
【0035】上記の図1に示すような溶接構造体は、そ
の溶接部分6と母材部である補剛板4との繰り返し応力
値の比 σm/σw が1.5に設定されているので、
上記の図3に示す特性を相殺し、溶接部分6と補剛板4
の疲労強度が等しくなる。したがって、この図1に示す
ような溶接構造体は、疲労強度が最適化されているもの
である。
【0036】次に、上記のような実験の結果に基づい
て、上記の図1に示すような溶接構造物の疲労強度を最
適化した効果を確認した実験を説明する。図4の(a)
(b)(c)(d)は、試験した溶接構造物の形状を示
す。これらの溶接構造物は、上記の図1に示すものと同
様な構造のものであるが、この図4では簡略化のため左
半分のみ示す。
【0037】図4の(a)(b)は従来と同様な手法に
より製造したもので、これらはいずれも溶接部6と母材
部である補剛板4との有限要素法による繰り返し応力値
の比、σm/σw については特に考慮はされておら
ず、設計後に溶接ビード形状と処理を決定したものであ
る。なお、(b)のものは、溶接ビードの止端部の部分
に開先加工しかつTIG溶接した溶接部分8を形成して
補強したもので、図9に示す従来例のものに相当する。
【0038】また、図4の(c)(d)のものは、本発
明を適用したもので、いずれも溶接部6と母材部である
補剛板4との有限要素法による繰り返し応力値の比、σ
m/σw が1.0以上に設定されているものである。
なお、この補剛板4の繰り返し応力値は、この補剛板4
の湾曲縁部5c,5dの曲率を変更することにより所定
の値に設定したもので、(c)のものは σm/σw
= 2.0、(d)のものは σm/σw = 1.5
に設定されている。
【0039】上記の(a)ないし(d)の試験用溶接構
造物に実際に繰り返し荷重を作用させ、その疲労強度を
確認した結果を図5に示す。なお、この図5注で*を付
したデータは、母材部つまり補剛板4の部分で亀裂破断
したことを示し、その他のデータは溶接部で亀裂破断し
たことを示す。
【0040】この結果から明らかなように、本発明を適
用した溶接構造物はいずれも従来のものより高い疲労強
度を示している。また、本発明の(c)(d)のもの
は、いずれも母材部で破断した場合があり、これは本発
明の(c)(d)のものが溶接部と母材部の疲労強度が
略等しい、つまり疲労強度について最適化された設計で
あることを示している。また、本発明の(d)のもの
は、(c)のものより疲労強度が高く、よって各種の条
件に対応して σm/σw の値に最適値が存在してい
ることを示している。
【0041】次に、上記のような溶接構造体を製造する
方法について説明する。上述のように、本発明の溶接構
造体は、溶接ビードの形状を無視して有限要素法により
解析した溶接部および母材部の応力値を等しくせず、母
材部の応力値を高くしたものである。
【0042】このような特徴は、この溶接構造物を設
計、製造する場合に特に効果がある。すなわち、このよ
うな溶接構造物を有限要素法により解析・設計する場合
に、溶接部の溶接ビードの形状を無視または条件に対応
して簡略化して、溶接ビード形状の詳細を有限要素モデ
ルに含めない有限要素解析を行うとともに、その際にあ
らかじめ溶接部と母材部に上記の比、σm/σw に対
応した所定の重み付けを付加しておくだけでよい。これ
により自動的に溶接部と母材部の繰り返し応力値が上記
の関係となり、かつその他の条件等の解析・設計の手法
には全く変更を加える必要がない。
【0043】図6には、上記のような方法により溶接構
造物を有限要素法により解析・設計して製造する方法の
一実施形態を示す。まず、工程ST1において、製造す
べき溶接構造物の仕様等が設定される。この仕様には、
溶接構造物の軽量化の要求、その他の条件が含まれる。
【0044】次に、工程ST2において、この溶接構造
物の疲労強度を最適化する必要のある部位が選定され
る。また、これと同時に、工程ST3において、溶接構
造物の仕様に対応して溶接管理基準のレベル等が選定さ
れる。すなわち、本発明の溶接構造物は、溶接管理基準
のレベルをより高く、たとえば開先加工してTIG溶接
した場合には、前記の σm/σw の値がより小さく
なり、これは構造物の軽量化に結び付く。よって、たと
えば溶接構造物の軽量化の要求が厳しい場合には、この
溶接管理基準のレベルを高く設定する。
【0045】次に、上記の工程ST2,ST3で設定さ
れたデータを加味し、工程ST4でこの溶接構造物の各
部位の母材部の重み付けの係数を設定する。前述のよう
に、上記の σm/σw の値が設定されれば、有限要
素法により溶接構造物の解析・設計をなす際に、母材部
に所定の重み付けを付加しておくだけで、上記の σm
/σw の値を満足する設計がなされる。そして、工程
ST5において、上記の工程4で設定された重み付けを
付加して有限要素法によりこの溶接構造物の解析・設計
を行う。
【0046】このようにして溶接構造物の細部の形状、
寸法等が設定された後、これに従って工程6において、
溶接構造物を構成する部材および部品を製造する。ま
た、これと同時に、工程ST7において、上記の工程S
T3で設定された溶接管理基準および工程ST5で設定
された条件に従って、実際の溶接作業の溶接作業手順を
設定する。
【0047】そして、工程ST8において、上記の工程
ST7で設定された溶接作業手順に従って部材、部品を
溶接して溶接構造物を製造し、工程ST9において検査
等を行い、この溶接構造物を完成する。
【0048】なお、上記の製造工程は、例示的なもので
あり、実際の溶接構造物の製造の条件等に対応して具体
的な工程は適宜変更されることはもちろんである。たと
えば、上記に示したものは、溶接講構造物の仕様、たと
えば軽量化の条件等に対応して溶接管理基準を選定する
場合を示したが、たとえば固定構造物など軽量化の要求
がなく、溶接管理基準が最初から設定されているもので
は、この工程ST3は必要がない。
【0049】また、上記の製造工程では、溶接に関連し
た部分のみ示したが、実際の溶接構造物ではその他の工
程が加わるものであり、これら他の工程との関係で溶接
の工程も適宜変更されることはもちろんである。
【0050】
【発明の効果】上述の如く本発明の溶接構造物は、溶接
部に作用する溶接部応力値に対して、この溶接部の近傍
の部材に作用する母材部応力値を大きく設定することに
より、母材部の疲労強度と溶接部の疲労強度が均等化す
る。よって、疲労強度がより最適化された溶接構造物が
得られるとともに、過剰品質を招くこともない。
【0051】また、本発明の製造方法は、製造すべき溶
接構造物を単純なモデル化することができ、有限要素法
による設計作業を簡略化することができるとともに、母
材部に適切な重み付けをするだけで溶接部の疲労強度に
ついて設計の最適化を達成することができ、また溶接工
程においても、局部的に溶接基準レベルを変更する必要
もなく、製造が容易となり、また過剰品質等の問題もな
い等、その効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接構造物の一実施形態の正面図。
【図2】疲労強度の特性の実験に使用された試験片の正
面図。
【図3】疲労強度の特性を示す線図。
【図4】溶接構造物の疲労強度の試験に使用された溶接
構造物の正面図。
【図5】各溶接構造物の疲労強度を示す線図。
【図6】本発明の製造方法の一実施形態の工程図。
【図7】従来の橋梁の桁交差部の斜視図。
【図8】従来の橋梁の補剛板の部分の正面図。
【図9】従来の橋梁の別の補剛板の部分の正面図。
【図10】従来の橋梁のさらに別の補剛板の部分の正面
図。
【符号の説明】
1,2 フランジ部 3 腹板 4 補剛板 6 溶接部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の部材を溶接して構成された構造物
    であって、少なくともその一部が、考慮すべき荷重条件
    下において溶接ビードの形状を無視または条件に対応し
    て簡略化した場合に溶接部に作用する溶接部応力値に対
    して、この溶接部の近傍の部材に作用する母材部応力値
    が大きく設定されていることを特徴とする溶接構造物。
  2. 【請求項2】 前記の溶接部応力値に対して母材部応力
    値が1.0〜5.0倍程度に設定されていることを特徴
    とする請求項1の溶接構造物。
  3. 【請求項3】 溶接部の溶接ビードの形状を無視または
    条件に対応して簡略化した有限要素モデルを用い、溶接
    部に作用する溶接部応力値に対して、この溶接部の近傍
    の部材に発生する母材部応力値に所定の重み付けを付加
    して有限要素法により溶接構造物の形状を設計する工程
    と、 上記の設計工程により設定された形状に従って部材を製
    造する工程と、 上記の部材を溶接する工程とを具備したことを特徴とす
    る溶接構造物の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記の設計工程は、溶接構造物の種類お
    よび仕様等に対応して溶接管理基準を設定し、この設定
    された溶接管理基準に対応して前記の母材部応力値に付
    加する重み付けの係数を選択するものであり、また前記
    の溶接工程は上記の設定された溶接管理基準に従って施
    工されるものであることを特徴とする請求項3の溶接構
    造物の製造方法。
JP32360398A 1998-11-13 1998-11-13 溶接構造物およびその製造方法 Pending JP2000144899A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32360398A JP2000144899A (ja) 1998-11-13 1998-11-13 溶接構造物およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32360398A JP2000144899A (ja) 1998-11-13 1998-11-13 溶接構造物およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000144899A true JP2000144899A (ja) 2000-05-26

Family

ID=18156566

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32360398A Pending JP2000144899A (ja) 1998-11-13 1998-11-13 溶接構造物およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000144899A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013024008A (ja) * 2011-07-26 2013-02-04 Nippon Steel & Sumitomo Metal 横リブの疲労向上構造およびこれを用いた鋼床版
JP2017150234A (ja) * 2016-02-25 2017-08-31 ヤマダインフラテクノス株式会社 既設の鋼橋の予防保全方法
CN113059291A (zh) * 2021-03-02 2021-07-02 上海建工(江苏)钢结构有限公司 一种y型转换柱结构制作方法
CN115194274A (zh) * 2021-04-09 2022-10-18 株式会社神户制钢所 加强管的制造方法及加强管

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013024008A (ja) * 2011-07-26 2013-02-04 Nippon Steel & Sumitomo Metal 横リブの疲労向上構造およびこれを用いた鋼床版
JP2017150234A (ja) * 2016-02-25 2017-08-31 ヤマダインフラテクノス株式会社 既設の鋼橋の予防保全方法
CN113059291A (zh) * 2021-03-02 2021-07-02 上海建工(江苏)钢结构有限公司 一种y型转换柱结构制作方法
CN115194274A (zh) * 2021-04-09 2022-10-18 株式会社神户制钢所 加强管的制造方法及加强管

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Berge On the effect of plate thickness in fatigue of welds
US20050145306A1 (en) Welded joints with new properties and provision of such properties by ultrasonic impact treatment
Marquis et al. A guideline for fatigue strength improvement of high strength steel welded structures using high frequency mechanical impact treatment
Huang et al. Fabrication and engineering technology for lightweight ship structures, part 1: distortions and residual stresses in panel fabrication
JP4743112B2 (ja) スポット溶接構造体の疲労寿命予測方法
JP2003149091A (ja) 疲労寿命評価システム
Al-Karawi et al. Fatigue crack repair in welded structures via tungsten inert gas remelting and high frequency mechanical impact
Ravindra et al. Fatigue life prediction of gas metal arc welded crucifrom joints of AA7075 aluminium alloy failing from root region
JP2000144899A (ja) 溶接構造物およびその製造方法
US7703660B2 (en) Method and system for weld bead sequencing to reduce distortion and stress
Bartsch et al. Fatigue strength of cruciform joints with weld imperfections: A comprehensive numerical study
Collette The strength and reliability of aluminium stiffened panels
Öberg et al. Improved productivity by reduced variation in gas metal arc welding (GMAW)
US20220298919A1 (en) Apparatus and method for integral turbine blade repair
Connor et al. Maintenance actions to address fatigue cracking in steel bridge structures
Spicknall et al. Dimensional management in shipbuilding: A case study from the Northrup Grumman ship systems lightweight structures project
Vasu et al. Quantification of weld size parameters for throat failure prevention in a brake flange axle weld subjected to torsional loading with structural stress approach
JP6623926B2 (ja) 溶接構造物の製造方法及び溶接構造物
Stasiuk et al. Analysis of correlation between stresses and fatigue lives of welded steel specimens based on real three-dimensional weld geometry
Nussbaumer et al. On the practical use of weld improvement methods
Karpenko et al. Weld design considerations for bridge girders weld type, quality and cost
Nicoletto et al. Simulation of residual stresses due to SLM fabrication and correlation with directional fatigue behavior of AlSi10Mg
JP2021091002A (ja) 溶接構造部材および溶接構造部材の製造方法
CN115319242B (zh) 阀门唇焊缺陷修复方法
Balasubramanian et al. Fatigue life prediction of load carrying cruciform joints of pressure vessel steel by statistical tools