JP2000008053A - 燃料油用清浄剤組成物とこれを用いた燃料油およびそれを用いてエンジンのノズル清浄性を向上させる方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 厳しい環境にさらされる軽油などに使用した
ばあいにも、少量の添加で充分な清浄効果がえらえる燃
料油用清浄剤組成物をうる。 【解決手段】 アルキルコハク酸誘導体またはアルケニ
ルコハク酸誘導体にポリアミンを反応させた化合物およ
びＨＬＢが４〜１４の非イオン界面活性剤を含有するこ
とを特徴とする燃料油用清浄剤組成物を燃料油に加えて
使用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンや燃焼装
置に用いられるガソリン、軽油、ジェット燃料などの燃
料油用清浄剤組成物、これを用いた燃料油およびそれを
用いてエンジンのノズル清浄性を向上させる方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】燃料油は、加熱や燃焼にともなう酸化な
どで劣化物が生成しやすく、エンジンや燃焼装置のいろ
いろな部分に生成した劣化物が沈着残留し、燃料と空気
の混合物の流れを妨げたり、燃料の噴射の流れを妨げた
りし、エンジンの効率を損う問題がある。

【０００３】たとえばディーゼルエンジンのばあい、燃
料噴射ノズルが燃焼室に配置されているため、高温高圧
下の厳しい環境にさらされ、ノズル噴孔部に燃料油の酸
化劣化物が沈着し、燃料噴射率に変化が生じやすい。そ
の結果、白煙が発生したり、エンジン出力が低下した
り、さらにはノッキングが起こりやすくなるなど種々の
悪影響が生じるという問題がある。

【０００４】従来の清浄機能を付与するための燃料油添
加剤には、劣化を抑えるための酸化防止剤や生じた酸化
劣化物の沈殿を防止する分散剤、清浄分散剤などが利用
されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、コハク
酸イミド、コハク酸エステル、アミド化合物、スルホン
酸塩などの清浄分散剤を、厳しい環境にさらされる軽油
などに用いても少量では充分な清浄効果がえられず、多
量の添加が必要である。

【０００６】また、劣化防止のための酸化防止剤では、
既に蓄積された付着・沈着物の除去ができないため、清
浄剤としての性能が低い。

【０００７】さらに、一般的な低分子量界面活性剤から
なる分散剤には、単独で沈着物を除去する能力がほとん
どない。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記のごとき
課題を解決するためになされたものであり、アルキルコ
ハク酸誘導体またはアルケニルコハク酸誘導体にポリア
ミンを反応させた化合物およびＨＬＢが４〜１４の非イ
オン界面活性剤を含有することを特徴とする燃料油用清
浄剤組成物（請求項１）、ＨＬＢが４〜１４の非イオン
界面活性剤がエーテル型であり、疎水性基の炭素数が１
４〜２２の飽和または不飽和の炭化水素基である請求項
１記載の組成物（請求項２）、ＨＬＢが４〜１４の非イ
オン界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステル型であり、
疎水性基の炭素数が１２〜２２の飽和脂肪族炭化水素基
である請求項１記載の組成物（請求項３）、請求項１、
２または３記載の燃料油用清浄剤組成物を添加した燃料
油（請求項４）、および請求項１、２または３記載の燃
料油用清浄剤組成物を添加した燃料油を使用することに
よりエンジン燃料噴射ノズルの清浄性を向上させる方法
（請求項５）に関する。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明の燃料油用清浄剤組成物に
は、燃料油の劣化による付着・沈着物の分散性の高い清
浄分散剤であるアルキルコハク酸誘導体またはアルケニ
ルコハク酸誘導体にポリアミンを反応させた化合物（以
下、炭化水素基含有コハク酸誘導体のポリアミン反応物
ともいう）および燃料油の酸化劣化物がエンジン燃料噴
射ノズルに付着・沈着することを抑制する機能の高い特
定の非イオン界面活性剤が含有される。これらの成分が
併用されることにより、ノズル清浄性が良好な清浄剤組
成物がえられる。

【００１０】前記アルキルコハク酸誘導体またはアルケ
ニルコハク酸誘導体にポリアミンを反応させた化合物と
は、炭素数４０〜２００程度の飽和または不飽和の炭化
水素基と連結基としてコハク酸イミド基、コハク酸アミ
ド基、コハク酸イミド−アミド基などを有するポリアミ
ン反応物のことである。

【００１１】前記炭化水素基としては、たとえばポリブ
テン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリα−オレ
フィンなどからの基があげられる。

【００１２】前記ポリアミンとしては、エチレンジアミ
ン、プロピレンジアミン、１，４−ブタンジアミン、ペ
ンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエ
チレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエ
チレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンまたはこ
れらの混合物などがあげられる。

【００１３】前記炭化水素基、連結基、ポリアミンは、
一般に燃料油用清浄剤に使用されるものであれば使用し
うる。

【００１４】前記ＨＬＢが４〜１４の非イオン界面活性
剤としては、エーテル型のばあい、脂肪族高級アルコー
ル類（たとえば牛脂、抹香鯨油を原料とした炭素数１４
〜２２の飽和または不飽和の脂肪族高級アルコール）の
エチレンオキシド付加重合物、アルキルフェノール類の
エチレンオキシド付加重合物などがあげられる。前記疎
水性基の炭素数が１４未満または２２をこえると清浄性
が充分向上しない。また、ソルビタン脂肪酸エステル型
のばあい、疎水性基の炭素数が１２未満または２２をこ
えると清浄性が充分向上しない。これらは単独で使用し
てもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。

【００１５】前記非イオン界面活性剤の親水基と疎水性
基とのバランスの目途となるＨＬＢは４〜１４であるも
のが燃料油劣化物の燃料噴射ノズルへの付着・沈着の抑
制にすぐれ、かつ、炭化水素基含有コハク酸誘導体のポ
リアミン反応物との清浄性の相乗効果の点から好まし
く、ＨＬＢ６〜１２であるのがさらに好ましい。ＨＬＢ
が４未満になると清浄性が充分向上せず、１４をこえて
も同様に清浄性は充分向上しない。

【００１６】前記非イオン界面活性剤の水酸基価、分子
量などにはとくに限定はなく、ＨＬＢが４〜１４の範囲
内になるようなエチレンオキシドの付加モル数などによ
って決定される。

【００１７】前記のごとき非イオン界面活性剤の具体例
としては、たとえばステアリルアルコールのエチレンオ
キシド２〜７モル付加物、オレイルアルコールのエチレ
ンオキシド２〜７モル付加物、ノニルフェノールのエチ
レンオキシド２〜１０モル付加物、ソルビタンのモノオ
レエート、モノステアレート、モノラウレートなどがあ
げられる。

【００１８】本発明の清浄剤組成物における炭化水素基
含有コハク酸誘導体のポリアミン反応物および非イオン
界面活性剤の使用割合については、本発明の清浄剤組成
物が加えられる燃料油の種類によって異なるため一概に
規定することはできないが、一般に炭化水素基含有コハ
ク酸誘導体のポリアミン反応物１００部（重量部、以下
同様）に対して非イオン界面活性剤５〜１００部、さら
には１０〜５０部が清浄性の相乗効果の点から好まし
い。

【００１９】本発明の清浄剤組成物は、炭化水素基含有
コハク酸誘導体のポリアミン反応物および非イオン界面
活性剤のみを含有するものであってもよいが、必要に応
じて溶剤、各種添加剤などを含有してもよい。

【００２０】本発明の清浄剤組成物を加えることにより
清浄性が改善される燃料油としては、ガソリン、軽油、
ジェット燃料、加熱油などの炭化水素からなる燃料油が
あげられる。とくに軽油は燃料油の中でも沸点が高く、
高温高圧条件下にさらされ付着・沈着物が生成残留しや
すいことや、ディーゼルエンジンが自動車以外、船舶、
機関車、農耕機械、発動機など多岐にわたる使用環境下
で使用され、異物の混入も多いため、軽油への清浄剤組
成物を加えることは有効である。

【００２１】本発明の清浄剤組成物は、燃料油に溶媒で
希釈、溶解したものを添加してもよいし、各成分を別々
に加えて溶解し、清浄剤組成物を含む燃料油として使用
してもよいし、自動車などの燃料タンクへの給油時に清
浄剤組成物をそのまま、または溶剤で希釈したものを投
入して使用してもよい。

【００２２】また、本発明の清浄剤組成物は燃料の性能
を向上させる種々の添加剤と併用してもよい。軽油のば
あいには、安定剤としてたとえばエチレングリコール
類、アルコール類、グリセリン類、およびそれらの誘導
体など、防錆剤・腐食防止剤としてたとえばカルボン酸
塩類、スルホン酸塩類、リン酸塩類、アルキルホスフェ
ート類、アミンフォスフェート類、脂肪酸アミン類、脂
肪酸エステル類、およびそれらの誘導体など、消泡剤と
してたとえばポリシリコーン類、エステル類、アルコー
ル類、ポリアクリレート類、およびそれらの誘導体な
ど、酸化防止剤としてたとえばフェニレンジアミンなど
のアミン化合物類、ブチルフェノールなどのアルキルフ
ェノール類、アルキルメルカプタン化合物類、フェニレ
ンサルファイド類、およびそれらの誘導体など、セタン
価向上剤としてたとえばアルキル硝酸エステル類、ペル
オキシド類、およびそれらの誘導体など、潤滑剤として
たとえば高分子脂肪酸グリセライド類、高級アルコール
類、脂肪酸エステル類、不飽和脂肪酸類、不飽和脂肪酸
エステル類、脂肪族アミン類、油脂類、油脂重合物類、
硫化油脂類、およびそれらの誘導体など、金属不活性化
剤としてたとえばモノアミン類、ポリアミン類、アミノ
アルコール類、アミノフェノール類、アントラニル類、
ヒドロキシルアミン類、カルバジド類、リン酸化合物
類、ウレア化合物類、ヒドロキシ酸化合物類、サリチリ
デン化合物類、およびそれらの誘導体など、抗乳化剤と
してたとえばポリシリコーン類、エステル類、有機フッ
素系化合物類、およびそれらの誘導体など、燃焼性促進
剤としてたとえばアルカリ金属系化合物類、アルカリ土
類金属系化合物類、ナフテン酸塩類、スルホン酸塩類、
ポリエチレンエーテルアミン類、ソルビタンエステル
類、有機過酸化物類、およびそれらの誘導体など、低温
流動性向上剤としてたとえばエチレン−酢酸ビニル共重
合体類、エチレン−アルキルアクリレート共重合体類、
塩素化ポリエチレン類、ポリアルキルアクリレート類、
アルケニルコハク酸アミド類およびそれらの誘導体な
ど、染料・識別剤としてたとえばアゾ染料類、クマリン
類、およびそれらの誘導体など、消臭剤としてたとえば
酵素化合物類などがあげられる。

【００２３】本発明の清浄剤組成物を燃料油に加えて用
いるばあいの量としては、燃料油１００部に対して炭化
水素基含有コハク酸誘導体のポリアミン反応物および非
イオン界面活性剤の合計量０．００１〜０．１５部、さ
らには０．０１〜０．０７部が好ましい。加える量が少
なすぎると充分な清浄性がえられず、多すぎると溶解不
良がおこったり、経済性がわるくなる傾向にある。

【００２４】本発明の清浄剤組成物を燃料油、たとえば
軽油に添加し、ディーゼルエンジンの燃料として使用す
ると、燃料噴射ノズル噴孔部が清浄に保たれ、白煙や黒
煙の発生防止や、エンジン出力の維持、さらにはノッキ
ングが防止できる。

【００２５】

【実施例】つぎに、本発明を実施例および比較例に基づ
いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるも
のではない。

【００２６】以下に実施例および比較例で用いた炭化水
素基含有コハク酸誘導体のポリアミン反応物の合成方法
を示す。ただし、この合成方法はとくに限定されるもの
ではなく、公知の技術、知見による方法で合成されたも
のであれば使用しうる。

【００２７】合成例１ 撹拌翼を付帯した加圧できる５００ｍｌのフラスコに、
無水マレイン酸と重量平均分子量９６０のポリブテンを
１．００：０．８５（モル比）の割合で加え、臭化セチ
ルを無水マレイン酸に対し０．００６２当量の存在下、
チッ素加圧中、２５０℃で５時間反応させた。反応物を
１００℃以下に冷却し、エバポレーターに移送し、過剰
の無水マレイン酸を減圧留去し、アルケニルコハク酸誘
導体をえた。

【００２８】つぎに、撹拌翼および脱水トラップを付帯
した１０００ｍｌのセパラブルフラスコにえられたアル
ケニルコハク酸誘導体と溶媒のキシレンとを入れ、さら
にポリアミンとしてテトラエチレンペンタミンを無水マ
レイン酸に対して０．６８当量加えてチッ素中で１４０
℃で５時間加熱および脱水しながら反応させた。冷却
後、生成したスラッジ成分と溶媒に用いたキシレンを濾
別および減圧留去し、アルケニルコハク酸イミドのテト
ラエチレンペンタミン反応物をえた。

【００２９】合成例２ 合成例１と同様に反応させた。ただし、ポリブテンは重
量平均分子量１５００のものを用いた。

【００３０】合成例３ 合成例１と同様に反応させた。ただし、ポリブテンは重
量平均分子量５７０のものを用いた。

【００３１】合成例４ 合成例１と同様に反応させた。ただし、用いたポリアミ
ンをジエチレントリアミンとトリエチレンテトラミンに
かえ、それぞれ等モル相当量を入れ、合計のポリアミン
の量を合成例１と同じ当量になるように仕込んだ。

【００３２】合成例５ 合成例１と同様に反応させた。ただし、用いたポリアミ
ンをペンタエチレンヘキサミンにかえた。

【００３３】合成例６ 合成例１と同様にアルケニルコハク酸誘導体反応物をえ
て、つぎにピペリジンを、無水マレイン酸に対し０．６
８当量加えてチッ素中で加熱反応させた。つぎにテトラ
エチレンペンタミンを無水マレイン酸に対し０．６８当
量加えてチッ素中で同様に加熱および脱水しながら反応
させた。冷却後、生成したスラッジ成分と、溶媒に用い
たキシレンを同様に分離し、アルケニルコハク酸アミド
のテトラエチレンペンタミン反応物をえた。

【００３４】実施例１〜１８ 表１に記載のアルケニルコハク酸誘導体のポリアミン反
応物および非イオン界面活性剤を表１に記載の量、割合
になるように軽油中に加えて溶解した。なお、アルケニ
ルコハク酸誘導体のポリアミン反応物の取り扱いを容易
にするため、４０℃の粘度が３２ｍｍ²／Ｓ相当の鉱油
を用いて１．６倍量に希釈した。このため、表１の添加
量は１．６倍に鉱油により希釈された量である。

【００３５】えられた清浄剤組成物を添加した軽油を燃
料油とし、スロットル型ノズルを装着した副室燃焼方式
の直列４気筒ディーゼルエンジンを２４００ｒｐｍ、ト
ルク１２．７ｋｇ・ｍ（負荷率８０％）で１８時間運転
した。

【００３６】運転終了後、燃料噴射ノズルの汚れ具合を
空気流量測定装置を用い、ノズルの針弁を０．００〜
０．６０ｍｍまで引きあげたときの噴孔に流れる空気流
量（ｍｌ／分）を、０．５ｋｇ／ｃｍ²（ゲージ圧）の
空気を用いて測定した。

【００３７】この針弁リフトに対する空気流量を面積計
算し汚れ具合を評価した。つまり、試験後の空気流量面
積が１００％となれば試験前の新品と同様（汚れなし）
であり、空気流量面積が０％となれば完全に詰まったも
のであり、燃料が噴出されないことを意味する。

【００３８】結果を表１に示す。

【００３９】比較例１〜１２ 表２に記載のアルケニルコハク酸誘導体のポリアミン反
応物および非イオン界面活性剤を表２に記載の量使用し
たほかは実施例１と同様にして評価した。

【００４０】結果を表２に示す。

【００４１】

【表１】

【００４２】

【表２】

【００４３】

【発明の効果】本発明の清浄剤組成物を使用すると、燃
料油の酸化劣化物の付着・沈着が非イオン界面活性剤に
より抑制され、炭化水素基含有コハク酸誘導体のポリア
ミン反応物により分散せしめられ、さらに両者により再
付着が防止される。この清浄効果は、従来から用いられ
ている清浄剤に比べて著しく清浄作用が向上している。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルキルコハク酸誘導体またはアルケニ
   ルコハク酸誘導体にポリアミンを反応させた化合物およ
   びＨＬＢが４〜１４の非イオン界面活性剤を含有するこ
   とを特徴とする燃料油用清浄剤組成物。
2. 【請求項２】 ＨＬＢが４〜１４の非イオン界面活性剤
   がエーテル型であり、疎水性基の炭素数が１４〜２２の
   飽和または不飽和の炭化水素基である請求項１記載の組
   成物。
3. 【請求項３】 ＨＬＢが４〜１４の非イオン界面活性剤
   がソルビタン脂肪酸エステル型であり、疎水性基の炭素
   数が１２〜２２の飽和脂肪族炭化水素基である請求項１
   記載の組成物。
4. 【請求項４】 請求項１、２または３記載の燃料油用清
   浄剤組成物を添加した燃料油。
5. 【請求項５】 請求項１、２または３記載の燃料油用清
   浄剤組成物を添加した燃料油を使用することによりエン
   ジン燃料噴射ノズルの清浄性を向上させる方法。