以下、典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ装置の構成について説明するブロック図である。図2は、OCT光学系について説明する概略図である。
光コヒーレンストモグラフィ装置(以下、OCTデバイスと記載)1は、OCT光学系(干渉光学系)100によって取得された検出信号を処理する。本実施形態において、OCTデバイス1は、OCT光学系100によって撮影された画像を表示手段(例えば、モニタ)75上で観察する。例えば、OCTデバイス1は、OCT光学系と、CPU(制御部)70と、マウス(操作部)76と、メモリ(記憶部)72と、モニタ75と、から構成され、各部はバス等を介してCPU70と電気的に接続されている。なお、以下の説明においては、被検体として被検眼の眼底をOCTデバイス1によって撮影する場合を例に挙げて説明する。もちろん、OCTデバイス1としては、種々の生体を撮影することができる。例えば、耳、鼻、各種臓器等が挙げられる。また、例えば、OCTデバイス1としては、被検眼の前眼部を撮影するものであってもよい。
制御部70は、メモリ72に記憶されている演算プログラム及び各種制御プログラム等に基づいて各部の動作を制御する(詳細は後述する)。なお、制御部70、操作部76、メモリ72、モニタ75として、市販のPC(パーソナルコンピュータ)が持つ演算処理部、入力部、記憶部、表示部を用い、市販のPCに各種プログラムをインストールするようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、OCTデバイス1として、OCT光学系100と、各部と、が一体となった装置を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、OCTデバイス1としては、OCT光学系100を備えていない構成であってもよい。この場合、OCTデバイスは、別途設けられたOCT光学系等と接続され、OCT信号又はOCT画像データを受信し、受信した情報に基づいて、各種演算処理を行う。
例えば、本実施形態において、OCT光学系100は、正面観察光学系200を含む。もちろん、OCT光学系と、正面観察光学系200が一体となった構成でなくてもよい。OCT光学系100は、眼底Efに測定光を照射する。OCT光学系100は、眼底Efから反射された測定光と,参照光との干渉状態を受光素子(検出器120)によって検出する。OCT光学系100は、眼底Ef上の撮像位置を変更するため、眼底Ef上における測定光の照射位置を変更する照射位置変更ユニット(例えば、光スキャナ108、固視標投影ユニット300)を備える。制御部70は、設定された撮像位置情報に基づいて照射位置変更ユニットの動作を制御し、検出器120からの受光信号に基づいて断層画像を取得する。
<OCT光学系>
OCT光学系100について説明する。OCT光学系100は、いわゆる眼科用光断層干渉計(OCT:Optical coherence tomography)の装置構成を持ち、被検眼Eの断層画像を撮像する。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー(光分割器)104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。そして、OCT光学系100は、測定光学系106によって測定光を眼Eの眼底Efに導き,また、参照光を参照光学系110に導く。その後、眼底Efによって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器120に受光させる。
検出器120は、測定光と参照光との干渉信号を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度(スペクトル干渉信号)が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって複素OCT信号が取得される。
例えば、フーリエドメインOCTにおいて、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって取得された複素OCT信号における振幅の絶対値を算出することによって、所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。光スキャナ108によって走査された測定光の各走査位置における深さプロファイルを並べることによって、OCT画像データ(断層画像データ)が取得される。さらに、測定光を二次元的に走査することによって、三次元OCT画像データ(三次元断層画像データ)を取得してもよい。また、三次元OCT画像データから、OCT正面(Enface)画像(例えば、深さ方向に関して積算された積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さ方向におけるXY各位置での輝度データ、網膜表層画像、等)が取得されてもよい。
また、時間の異なる同じ位置(同一の部位)における少なくとも2つ以上のOCT信号からモーションコントラストデータが取得される。すなわち、少なくとも2つ以上の複素OCT信号が、解析処理されることで、モーションコントラストデータが取得される。例えば、複素OCT信号から機能OCT信号が取得される。光スキャナ108によって走査された測定光の各走査位置における機能OCT信号を並べることによって、機能OCT画像データが取得される。さらに、測定光をXY方向に二次元的に走査することによって、三次元機能OCT画像データ(三次元モーションコントラストデータ)を取得される。また、三次元機能OCT画像データから、OCT機能正面(Enface)画像(例えば、ドップラー正面(Enface)画像、信号画像データスペックルバリアンス正面画像)が取得される。なお、各画像データは、画像データであってもよいし、信号データであってもよい。なお、モーションコントラストデータの詳細については後述する。
例えば、フーリエドメインOCTとしては、Spectral-domain OCT(SD-OCT)、Swept-source OCT(SS-OCT)が挙げられる。また、例えば、Time-domain OCT(TD-OCT)であってもよい。SD-OCTの場合、光源102として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器120には、干渉光を各周波数成分(各波長成分)に分光する分光光学系(スペクトロメータ)が設けられる。スペクトロメータは、例えば、回折格子とラインセンサからなる。SS-OCTの場合、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器120として、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源102は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
光源102から出射された光は、カップラー104によって測定光束と参照光束に分割される。そして、測定光束は、光ファイバーを通過した後、空気中へ出射される。その光束は、光スキャナ108、及び測定光学系106の他の光学部材を介して眼底Efに集光される。そして、眼底Efで反射された光は、同様の光路を経て光ファイバーに戻される。
光スキャナ108は、眼底上で二次元的に(XY方向)に測定光を走査させる。光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構50によって任意に調整される。
これにより、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の位置に走査される。これにより、眼底Ef上における撮像位置が変更される。光スキャナ108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
<正面観察光学系>
正面観察光学系200は、被検眼の正面画像データを取得する。なお、正面画像データは、画像データであってもよいし、信号データであってもよい。例えば、正面観察光学系200は、眼底Efの正面画像を得るために設けられている。正面観察光学系200は、例えば、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底上で二次元的に走査させる光スキャナと、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用走査型レーザー検眼鏡(SLO)の装置構成を持つ。
なお、正面観察光学系200の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、例えば、赤外光を用いて被検体を撮影する赤外撮影光学系であってもよい。また、例えば、OCT光学系100が、正面観察光学系200を兼用してもよい。すなわち、正面画像データ(以下、正面画像と記載)は、二次元的に得られた断層画像(OCT正面画像)を形成するデータを用いて取得されるようにしてもよい。
なお、正面観察光学系200がOCTデバイス等と一体となった構成でなくてもよい。この場合、例えば、別途設けられた正面観察光学系200によって取得された正面画像データが、OCTデバイス等によって受信される。
<固視標投影ユニット>
固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナによって走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、固視標投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
<制御部>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部70のCPUは、各構成100~300の各部材など、装置全体の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、装置全体の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
制御部70には、不揮発性メモリ(記憶手段)72、操作部(コントロール部)76、および表示部(モニタ)75等が電気的に接続されている。不揮発性メモリ(メモリ)72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、OCTデバイス1、及び、OCT光学系100に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ72として使用することができる。メモリ72には、OCT光学系100による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、メモリ72には、OCTデバイス1を使用することを可能にする眼底解析プログラムが記憶されている。また、メモリ72には、走査ラインにおける断層画像データ(OCT画像データ)、三次元断層画像データ(三次元OCT画像データ)、正面画像データ(眼底正面画像データ)、断層画像データの撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作部76には、検者による各種操作指示が入力される。
操作部76は、入力された操作指示に応じた信号を制御部70に出力する。操作部74には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。
モニタ75は、装置本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、モニタ75は、タッチパネルであってもよい。なお、モニタ75がタッチパネルである場合に、モニタ75が操作部として機能する。モニタ75には、OCT光学系100によって撮影された断層画像データおよび正面画像データを含む各種画像が表示される。
<信号処理方法>
本実施形態におけるOCT信号からモーションコントラストデータを取得するための演算処理方法について説明する本実施形態において、モーションコントラストデータを取得するために、制御部70は、同じ位置において、時間の異なる少なくとも2フレームの干渉信号(OCT信号)を取得する。
本実施形態において、制御部70は、ドップラー位相差法に関する処理と、ベクトル差分法に関する処理と、を行うことによって、複数のOCT信号からモーションコントラストデータ(例えば、機能OCT画像データ)を取得する。複素OCT信号を処理する方法としては、例えば、複素OCT信号の位相差を算出する方法、複素OCT信号のベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法などが考えられる。本実施形態では、位相差とベクトル差分を掛け合わせる方法を例に説明する。
初めに、制御部70は、OCT光学系100によって取得されたOCT信号をフーリエ変換する。制御部70は、フーリエ変換によって、複素OCT信号が得られる。複素OCT信号は、実数成分と虚数成分とを含む。
血流信号を得るには、時間が異なる同じ位置の画像を比較することが必要である。このため、制御部70は、画像情報を基に画像の位置合わせをすることが好ましい。イメージのレジストレーションは、同じ場面の複数のイメージを揃えて配置するプロセスである。イメージの位置がずれる原因として、例えば、撮影中の被検眼の動き(例えば、固視微動、調節微動、拍動等)等が考えられる。なお、フレーム間の位置合わせをしても、同じ画像内でAスキャンライン間に位相ずれが生じる場合がある。したがって、位相補正を行うことが好ましい。なお、レジストレーション及び位相補正の処理は、本実施形態の処理を行いやすくするためのものであり、必須ではない。
次に、制御部70は、同じ位置の少なくとも2つ以上の異なる時間に取得された複素OCT信号に対して、位相差を算出する。制御部70は、S/N比(信号雑音比)が低い領域に存在するランダムな位相差を取り除く。
制御部70は、位相差の小さい部分を取り除く。これは、NFL(神経線維層)などの高反射部からの反射信号を取り除くためである。これによって、高反射部からの信号なのか、血管からの信号なのか、区別し易くなる。本実施形態においては、位相差を算出したフレームが1つ取得される。なお、位相差を算出したフレームが複数ある場合には、制御部70は、上記の処理を施したフレームの信号を加算平均処理し、ノイズを除去するとよりよい。
次いで、制御部70は、複素OCT信号のベクトル差分を算出する。例えば、OCT光学系によって検出された複素OCT信号のベクトル差分を算出する。例えば、複素OCT信号は、複素平面上のベクトルとして表すことができる。そこで、異なる時間における同じ位置での2つの信号を検出し、ベクトル差分を算出することで、被検眼内の造影画像データを生成する。なお、ベクトル差分を画像化する場合、例えば、差分の大きさの他に、位相情報に基づいて画像化を行ってもよい。本実施形態においては、ベクトル差分を算出したフレームが1つ取得される。なお、ベクトル差分を算出したフレームが複数ある場合には、制御部70は、上記の処理を施したフレームの信号を加算平均処理し、ノイズを除去するとよりよい。
制御部70は、ベクトル差分の算出結果に、位相差の算出結果をフィルタとして用いる。なお、本実施形態の説明において、「フィルタを掛ける」とは、例えば、ある数値に重み付けを行うことである。例えば、制御部70は、ベクトル差分の算出結果に、位相差の算出結果を掛けることで重み付けを行う。つまり、位相差の小さい部分のベクトル差分は、弱められ、位相差の大きい部分のベクトル差分は、強められる。これによって、ベクトル差分の算出結果は、位相差の算出結果によって重み付けされる。
なお、本実施形態の処理において、制御部70は、例えば、ベクトル差分の算出結果と、位相差の算出結果を掛け合わせる。これによって、制御部70は位相差の算出結果によって重み付けされた機能OCT画像データを生成する。
ベクトル差分の算出結果と、位相差の算出結果を掛け合わせることによって、それぞれの測定方法のデメリットを打ち消すことができ、上手く血管部の画像データを取得することができる。
制御部70は、各走査ライン毎に上記演算処理を行い、各走査ライン毎に機能OCT画像データを取得する。そして、これらの複数の位置で、機能OCT画像データを取得することによって、疑似的な血管造影画像として用いられる三次元機能OCT正面画像データを取得することができる。
なお、本実施形態においては、制御部70は、モーションコントラストデータを取得するために、ベクトル差分の算出結果と位相差の算出結果とを掛け合わせる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、モーションコントラストデータは、ベクトル差分の算出結果を用いて取得されてもよい。また、例えば、モーションコントラストデータは、位相差の算出結果を用いて取得されてもよい。また、例えば、モーションコントラストデータは、振幅の差分結果、Amplitude-decorrelation、Speckle variance、Phase variance等によって取得されてもよい。
なお、本実施形態においては、制御部70は、2つのOCT信号を用いて、モーションコントラストデータを取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。モーションコントラストデータは、2つ以上のOCT信号によって取得される構成であってもよい。
<撮影動作>
以下、OCTデバイス1を用いた一連の撮影動作について説明する。なお、以下の説明については、三次元機能OCT画像データを取得する場合を例に挙げて説明する。もちろん、本発明に開示の技術は、モーションコントラストデータを取得する際に適用することができる。例えば、機能OCT信号を取得する場合や機能OCT画像データを取得する場合等に適用することができる。
初めに、検者は、固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、操作部76(例えば、図示無きジョイスティック)を用いて、アライメント操作を行う。
例えば、アライメント操作が完了すると、制御部70は、OCT光学系100を制御し、設定された領域に対応する三次元OCT画像データを取得すると共に、正面観察光学系200を制御し、眼底画像データ(眼底正面画像データ)を取得する。そして、制御部70は、OCT光学系100によって三次元OCT画像データ、正面観察光学系200によって眼底画像データを随時取得する。なお、三次元OCT画像データには、XY方向に関して二次元的にAスキャン信号を並べた画像データ、三次元グラフィック画像、などが含まれる。
検者は、正面観察光学系200の眼底正面像を用いて、走査位置を設定する。そして、操作部76から撮影開始の信号が出力されると、制御部70は、光スキャナ108の動作を制御し、撮像領域に対応する走査範囲において測定光をXY方向に二次元的に走査させることにより三次元機能OCT画像データの取得を開始する。なお、走査パターンとして、例えば、ラスタースキャン、複数のラインスキャン、サークル状、屈折のある形状、屈曲のある形状、等が考えられる。
以下、OCTデバイス1を用いた撮影動作について説明する。図3は、本実施形態の撮影について説明するための模式図である。本実施形態において、例えば、撮影開始の信号が出力されると、制御部70は、被検眼眼底上の第1走査領域において、OCT光学系100による複数のOCT信号を取得する。また、制御部70は、第1走査領域におけるOCT光学系100による複数のOCT信号の取得時に、正面観察光学系200によって第1正面画像を取得する。そして、制御部70は、OCT光学系100による第1走査領域における複数のOCT信号の取得以後に、正面観察光学系200によって第2正面画像を取得する。次いで、制御部70は、第1正面画像と、第2正面画像と、の位置ずれを画像処理により検出し、位置ずれの検出結果に基づいて、第1走査領域において取得された複数のOCT信号の良否を判定する。制御部70は、良好であると判定された複数のOCT信号を処理して被検眼眼底におけるモーションコントラストデータを取得する。
<OCT信号取得>
より詳細に説明する。例えば、撮影開始の信号が出力されると、制御部70は、三次元機能OCT画像データを取得するために、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底上で測定光を走査させる。例えば、撮影開始の信号の出力に応じて、制御部70は、設定されたフレームレートにて、OCT信号の取得するため、OCT光学系100を制御する。なお、OCT信号を得るフレームレートは、OCT信号の取得開始前後で変更してもよいし、変更しなくてもよい。
制御部70は、同一の走査領域で複数のOCT信号を取得する。なお、同一の走査領域とは、完全に同一な走査領域である必要はなく、略同一の走査領域で走査されるものであってもよい。このため、制御部70は、眼底上の同一の走査領域での走査を繰り返す。このような複数の走査によって、制御部70は、同一の走査領域における複数のOCT信号を取得できる。
例えば、制御部70は、設定された第1走査領域に関して、光スキャナ108を用いて測定光を複数回走査する。なお、本実施形態においては、第1走査領域として1つの走査位置(第1の走査位置)が設定されている場合を例に挙げて説明する。もちろん、走査領域として、複数の走査位置(例えば、第1の走査位置と第2の走査位置の2つの走査位置)が設定されている構成であってもよい(詳細は後述する)。
図3に示すように、例えば、制御部70は、第1の走査位置(走査ライン)S1に沿ってX方向に測定光を走査させる。このように、XY方向のいずれかの方向(例えば、X方向)に測定光を走査させることを「Bスキャン」と呼ぶ。以下、1フレームのOCT信号とは、1回のBスキャンによって得られたOCT信号として説明する。制御部70は、走査中に検出器120によって検出されたOCT信号を取得する。なお、図3において、Z軸の方向は、測定光の光軸の方向とする。X軸の方向は、Z軸に垂直かつ左右の方向とする。Y軸の方向は、Z軸に垂直かつ上下の方向とする。
1回目の走査が完了すると、制御部70は、1回目と同じ位置で2回目の走査を行う。例えば、制御部70は、図3に示す第1の走査ラインS1に沿って測定光を走査させた後、再び測定光を走査させる。制御部70は、2回目の走査中に検出器120によって検出されたOCT信号を取得する。これによって、制御部70は、同一の走査位置における時間の異なる2フレームのOCT信号を取得することができる。例えば、制御部70は、同一の走査位置において、繰り返しOCT信号を取得し、4フレームのOCT信号を取得する。なお、本実施形態においては、同一の走査位置において、4フレームのOCT信号を取得する構成を例に挙げて説明するが、これに限定されない。同じ位置において、少なくとも2フレームのOCT信号が取得される構成であればよい。例えば、同じ位置での走査を8回繰り返し、時間の異なる連続する8フレームのOCT信号を取得するようにしてもよいし、同じ位置での走査を2回繰り返し、時間の異なる2フレームのOCT信号を取得するようにしてもよい。
なお、1回の走査で、時間の異なる同じ位置のOCT信号を取得することができる場合は、2回目の走査を行わなくてもよい。例えば、所定間隔だけ光軸のずれた2つの測定光を1度に走査させる場合、複数回走査する必要はなく、被検体内の同じ位置における時間の異なるOCT信号を取得することができればよい。すなわち、同じ位置とは、完全に同一な位置である必要はなく、実質的に同じ位置で走査されるものであってもよい。なお、2つの測定光を1度に走査させる場合、2つの測定光の間隔によって任意の血流速度を目標として検出できる。
<正面画像取得>
一方、撮影開始の信号の出力に応じて、制御部70は、設定されたフレームレートにて正面画像を繰り返し得るため、正面観察光学系200を制御する。なお、正面画像を得る際のフレームレートは、取込開始前後で変更してもよいし、変更しなくてもよい。なお、実施形態においては、OCT信号を得る際のフレームレートが、正面画像を得る際のフレームレートの4倍となっている。すなわち、1フレームの正面画像取得する時間で、4フレームのOCT信号を取得することができる。なお、本実施形態において、OCT信号を取得するフレームレート及び正面画像を取得するフレームレートとしては、1フレームの正面画像を取得する間に、少なくとも2つのOCT信号が取得されるように設定されていればよい。
また、例えば、本実施形態において、OCT信号を得る際のフレームレートと、正面画像を得る際のフレームレートとの関係は、少なくとも1つの走査領域での複数のOCT信号の取得が完了されるまでにかかる時間が、1つの正面画像の取得を完了するまでにかかる時間以下となるように、設定されていればよい。例えば、少なくとも1つの走査領域でのモーションコントラストデータを取得するために予め設定されたフレーム数のOCT信号が取得されるように、OCT信号を得る際のフレームレートと、正面画像を得る際のフレームレートが設定されていればよい。
制御部70は、複数のOCT信号が取得されている間、正面画像の取得動作を繰り返す。このような制御により、制御部70は、OCT信号が取得されている間の眼の移動(動き)を監視する。例えば、制御部70は、正面観察光学系200の作動により眼底正面からの反射光を受光する。制御部70は、受光された反射光を処理することにより正面画像を取得する。制御部70は、取得された複数の正面画像を随時メモリ72に記憶させる。以上のように、制御部70は、正面画像の取得とOCT信号の取得を並行させる。
<OCT信号取得と正面画像取得との並行取得>
図4は、OCT信号の取得動作、正面画像の取得動作の関係について説明する図である。図4において、横軸は時間軸(T)である。例えば、制御部70は、撮影開始の信号の出力に応じて、第1正面画像F1の取得を開始する。制御部70は、第1正面画像F1の取得が完了すると、メモリ72に第1正面画像F1を記憶させる。なお、本実施形態においては、撮影開始信号の出力タイミング(取得開始時)T0から時間T1が経過した際に、第1正面画像(1フレームの正面画像)F1の取得が完了しているものとする。すなわち、第1正面画像F1を取得するまでに、時間T1が経過したことを示している。
次いで、制御部70は、第2正面画像F2の取得を開始する。また、第2正面画像F2の取得と並行して、第1の走査ラインS1での複数のOCT信号を取得する。本実施形態においては、OCT信号を取得する際のフレームレートが正面画像を取得する際のフレームレートに対して4倍となっているため、1フレームの正面画像を取得するまでの間に、4フレーム分のOCT信号を取得することができる。例えば、制御部70は、第2正面画像F2を取得する時間T2の間(時間T1~時間T2までの間の時間)に第1の走査ラインS1における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4を取得することができる。制御部70は、第2正面画像F2の取得が完了すると、メモリ72に記憶させる。
<OCT信号の良否判定>
次いで、制御部70は、第1の走査ラインS1で取得した複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の良否(適否)を判定する。図5は、判定処理のフローチャートを示している。なお、本実施形態において、OCT信号の良否の判定は、リアルタイムにて行われる。判定結果は、複数のOCT信号を処理して、モーションコントラストデータを取得するために用いられる。
例えば、制御部70は、正面画像と複数のOCT信号が取得される(A1)毎に判定処理を行う。例えば、制御部70は、取得された正面画像間の位置ずれを検出する(A2)。例えば、位置ずれ検出において、複数のOCT信号の取得時及び複数のOCT信号の取得以後の正面画像が用いられる。なお、本実施形態においては、複数のOCT信号の取得時の正面画像として、複数のOCT信号の取得の前に取得された正面画像が用いられる。もちろん、複数のOCT信号の取得時の正面画像としては、複数のOCTの取得の前に取得された正面画像に限定されない。例えば、複数のOCT信号の取得時の正面画像として、複数のOCTの取得中に取得された正面画像であってもよい。なお、本実施形態においては、複数のOCT信号の取得時の正面画像が取得された後の正面画像であって、複数のOCT信号の取得以後の正面画像として、複数のOCT信号の取得完了と同時に取得が完了された正面画像が用いられる。もちろん、複数のOCT信号の取得以後の正面画像としては、複数のOCT信号の取得完了と同時に取得が完了された正面画像に限定されない。例えば、複数のOCT信号の取得以後の正面画像としては、複数のOCT信号の取得の後(好ましくは、OCT信号の取得完了直後)に取得された正面画像であってもよい。
例えば、制御部70は、第1の走査ラインS1において取得された複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の良否を判定する場合、第1の走査ラインS1における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得前の第1正面画像F1及び複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得完了と同時に取得が完了された第2正面画像F2が用いられる。制御部70は、第1正面画像F1と第2正面画像F2の位置ずれを画像処理により検出する。これによって、第1の走査ラインS1において、複数のOCT信号O1,O2,O3,O4が取得されている間における眼の動きを検出することができる。すなわち、複数のOCT信号O1,O2,O3,O4を取得した際に走査位置にずれが生じていたか否かを検出することができる。
次いで、例えば、制御部70は、位置ずれの検出結果に基づいて、第1の走査ラインS1において取得された複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の良否を判定する。例えば、制御部70は、位置ずれ(ずれ量)が許容範囲(例えば、所定の閾値)を満たすか否かを判定する(A3)。例えば、制御部70は、ずれ量が許容範囲を満たす場合(図5におけるYESの場合)、複数のOCT信号が良好であると判定する。また、例えば、制御部70は、ずれ量が許容範囲を満たさない場合(図5におけるNOの場合)、複数のOCT信号が良好でないと判定する。
例えば、制御部70は、複数のOCT信号が良好であると判定された場合に、第1の走査ラインS1において取得した複数のOCT信号O1,O2,O3,O4をメモリ72に記憶させる(A5)。次いで、制御部70は、最終の走査ラインSnまで撮影が完了しているか判定する。すなわち、制御部70は、全走査領域(本実施形態においては、全走査ライン)での撮影が完了したか否かを判定する(A6)。制御部70は、全走査ライン(全走査位置)での撮影が完了していると判定された場合には、撮影を終了する(A9)。また、全走査ラインでの撮影が完了していないと判定された場合には、撮影を続行する。例えば、制御部70は、複数のOCT信号O1,O2,O3,O4を取得する領域を第1走査領域(本実施形態においては、第1の走査ラインS1)とは異なる第2走査領域(本実施形態においては、第2の走査ラインS2)に変更する(A7)。すなわち、制御部70は、第1の走査ラインS1において、複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得を終了し、第1の走査ラインS1において取得した複数のOCT信号O1,O2,O3,O4をメモリ72に記憶させる。そして、制御部70は、第2の走査ライン(第2走査位置)S2における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4(例えば、図4参照)の取得を開始する(A8)。
例えば、制御部70は、光スキャナ108を制御することによって、副走査位置(Y方向の位置)を変更し、第2の走査ラインS2において測定光を主走査方向(X方向)に複数回走査する。なお、走査位置の変更は、Y方向に限定されない。X方向に変更するようにしてもよい。これによって、X方向に広角な撮影をすることができる。もちろん、X方向と、Y方向の双方に変更するような構成であってもよい。図4に示されるように、第2の走査ラインS2における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得時においても、制御部70は、第1の走査ラインS1の場合と同様に、第3正面画像F3を取得する。そして、制御部70は、第2の走査ラインS2において取得された複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の良否を判定する。この場合、判定には、第2の走査ラインS2における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得前の第2正面画像F2及び複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得完了(時間T3時)と同時に取得が完了された第3正面画像F3が用いられる。制御部70は、第2正面画像F2と第3正面画像F3の位置ずれを画像処理により検出し、位置ずれの検出結果に基づいて、第2の走査ラインS2において取得された複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の良否を判定する。
なお、本実施形態においては、複数のOCT信号の良否を判定する場合に、連続して取得された正面画像(例えば、第1正面画像F1と第2正面画像F2等)が判定処理に用いられる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。OCTの判定処理を行うための正面画像としては、走査ラインにおける複数のOCT信号の取得前の正面画像と、複数のOCT信号の取得前の正面画像の後に取得される正面画像であって、複数のOCT信号の取得以後に取得された正面画像と、を用いる構成であればよい。例えば、撮影開始とともに取得された最初の正面画像を基準画像として設定する。そして、各走査位置において、複数のOCT信号が取得されるとともに取得された正面画像と、基準画像と、の位置ずれに基づいて、判定処理を行うようにしてもよい。より詳細には、例えば、第2の走査ラインS2における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4を判定する場合に、第1正面画像F1と、第3正面画像F3が用いられる構成が挙げられる。
第1の走査ラインS1における判定後の動作と同様に、制御部70は、複数のOCT信号が良好であると判定された場合に、複数のOCT信号O1,O2,O3,O4を取得する領域を次の走査位置(走査ライン)に変更する。同様に、制御部70は、OCT信号の取得及び正面画像の取得しながら、判定処理を行い、最終の走査ラインSnまでのそれぞれの走査ラインにおいて測定光を複数回走査することによって、各走査ラインにおける複数のOCT信号を取得していく。すなわち、制御部70は、図3に示すように、測定光をラスタースキャン(横断位置でスキャン)し、各走査ライン(S1~Sn)において、時間の異なる少なくとも2フレーム以上(本実施形態においては、4フレーム)のOCT信号を取得する。これによって、眼底の三次元的な情報を取得することができる。なお、最終の走査位置まで撮影が完了していない場合であっても、検者によって、撮影の中止の操作がされた場合には、その時点で撮影動作を終了させるようにしてもよい。このように、取得した複数のOCT信号の良否を判定し、判定結果に基づいて走査領域の変更をすることによって、各走査領域における複数のOCT信号をより迅速に取得することができる。
一方、例えば、制御部70は、複数のOCT信号が良好でないと判定された場合に、第1の走査ラインS1において複数のOCT信号を再取得する。例えば、制御部70は、第1の走査ラインS1で取得された複数のOCT信号O1,O2,O3,O4及び第1正面画像F1を削除し(A11)、再取得を開始する。制御部70は、第1正面画像F1と第2正面画像F2とのずれ量に基づいて、光スキャナ108を制御し、走査位置を補正する(A12)。例えば、制御部70は、走査位置のずれが補正されるように、光スキャナ108の2つのガルバノミラーを適宜駆動制御する。制御部70は、走査位置の補正後、再度、第1の走査ラインS1において、複数のOCT信号の取得を開始する(A13)。
なお、制御部70は、複数のOCT信号の取得前に、走査位置補正後の正面画像を取得する。すなわち、例えば、複数のOCT信号の再取得時の正面画像を取得する。制御部70は、複数のOCT信号の再取得後、複数のOCT信号の再取得時の正面画像と、複数のOCT信号の再取得完了と同時に取得が完了された正面画像と、位置ずれに基づいて、再取得された複数のOCT信号の良否を判定する。そして、制御部70は、判定結果に基づいて、次の走査位置の走査に移行するか、再度、同一の走査位置における走査を実行するかを決定する。なお、複数回、OCT信号が良好に取得されない場合に、制御部70は、エラー表示(例えば、撮影位置の再設定を促す表示、撮影条件の再調整を促す表示)等を行い、撮影を終了させるようにしてもよい。このように、複数のOCT信号が良好に取得できなかった場合に、再度、複数のOCT信号の取得を行うことによって、各走査領域における複数のOCT信号を精度よく取得することができる。
<モーションコントラストデータの取得>
制御部70は、良好であると判定された複数のOCT信号を処理して被検眼眼底におけるモーションコントラストデータ(本実施形態においては、三次元機能OCT画像データを取得する)を取得する。例えば、制御部70は、次の走査ラインでの複数のOCT信号の取得に移行した場合に、その前までに取得されていた各走査ラインでの複数のOCT信号の演算処理を行う。
例えば、制御部70は、第1の走査ラインS1において、複数のOCT信号を取得した後、第1の走査ラインS1から第2の走査ラインS2に、複数のOCT信号の走査位置(取得位置)を移動する。制御部70は、第2の走査ラインS2において、複数のOCT信号の取得を開始すると、第1の走査ラインS1おいて、取得された複数のOCT信号の演算処理を開始する。すなわち、制御部70は、第2の走査ラインS2におけるOCT信号の取得を実施している間に、第1の走査ラインS1に対応する複数のOCT信号の演算処理を開始し、第1の走査ラインS1における機能OCT画像データの取得を行う。制御部70は、各走査ライン毎に上記処理を行い、各走査ライン毎に複数のOCT信号取得しつつ、各走査ライン毎に機能OCT画像データを取得していく。そして、これらの複数の位置(走査ライン)で、機能OCT画像データを取得することによって、疑似的な血管造影画像(用途として血管造影画像として用いることができる画像)である三次元機能OCT正面画像データを取得することができる。このように、複数のOCT信号の取得中に、モーションコントラストデータを取得する演算を行うことで、より迅速にモーションコントラストデータを取得することができる。なお、本実施形態においては、次の走査ラインでの複数のOCT信号の取得に移行した場合に、その前までに取得されていた各走査ラインでの複数のOCT信号の演算処理を行う構成としているがこれに限定されない。例えば、制御部70は、各走査ラインにおいて、複数のOCT信号をそれぞれ取得した後に、各走査ラインにおける複数のOCT信号の演算処理を開始する構成であってもよい。
以上のように、所定の走査領域における、複数のOCT信号取得時の正面画像と複数のOCT信号取得以後の正面画像と、の位置ずれの検出結果に基づいて、所定の走査領域において取得された複数のOCT信号の良否を判定することによって、同一の部位(同一の走査領域)において取得された複数のOCT信号の良否をまとめて判定することができる。このため、取得された複数のOCT信号が良好に撮影されたか否かを容易に確認することができる。これによって、同一の走査領域における複数のOCT信号を容易に精度よく取得することができる。
<変容例>
なお、本実施形態においては、第1正面画像F1の取得完了後に、第1の走査ラインS1における複数のOCT信号の取得を開始させる構成としたがこれに限定されない。撮影開始信号の出力に応じて、第1正面画像F1の取得と並行して、複数のOCT信号の取得を開始させる構成としてもよい。この場合、複数のOCT信号の良否を判定する場合には、第1正面画像F1の取得時に並行して取得された(撮影開始とともに取得された)複数のOCT信号は削除され、第2正面画像F2の取得時に並行して取得された複数のOCT信号より、複数のOCT信号における判定処理が開始される。例えば、第1の走査ラインS1において、8フレームのOCT信号(第1正面画像F1取得時の4フレーム分のOCT信号と第2正面画像F2取得時の4フレーム分のOCT信号)が取得され、第1正面画像F1取得時の4フレーム分のOCT信号が削除される。
なお、本実施形態においては、正面画像取得開始のタイミングと、所定の走査領域における複数のOCT信号取得開始のタイミングと、が同期している構成を例に挙げているがこれに限定されない。所定の走査領域における複数のOCT信号の取得開始動作と正面画像の取得開始動作において、非同期であってもよい。例えば、図6に示されるように、第1正面画像F1の取得中(例えば、時間T1の半分経過後)に、第1の走査ラインS1における複数のOCT信号の取得を開始する。この場合、第1の走査ラインS1における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得時に、第1正面画像F1及び第2正面画像F2の取得がされることになる。すなわち、第1の走査ラインS1における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4に判定処理は、第1正面画像F1及び第2正面画像F2の位置ずれを用いて行われる。また、第2の走査ラインS2における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4の取得は、第2正面画像F2の取得中(例えば、時間T2の半分経過後)に、開始される。第2の走査ラインS2における複数のOCT信号O1,O2,O3,O4は、第2正面画像F2及び第3正面画像F3に基づいて、判定処理が行われる。
なお、本実施形態において、所定の走査領域における複数のOCT信号取得時の1フレームの正面画像と複数のOCT信号取得以後の1フレームの正面画像と、の位置ずれの検出結果に基づいて、所定の走査領域において取得された複数のOCT信号の良否を判定する構成としたがこれに限定されない。例えば、複数のOCT信号を取得している間に、複数の正面画像が取得できる正面観察光学系(例えば、赤外観察光学系)を用いる場合には、複数の正面画像の中から1つの正面画像(例えば、最新の正面画像)を選択して、判定処理を行うようにしてもよい。また、例えば、すべての複数の正面画像をもちいて、複数のOCT信号の判定処理を行ってもよい。
なお、本実施形態においては、第1走査領域として1つの走査位置(第1の走査位置)が設定されている場合を例に挙げているがこれに限定されない。走査領域として、複数の走査位置が設定されている構成であってもよい。例えば、第1走査領域として、第1の走査位置と第2の走査位置と、の2つの走査位置で測定光が走査されるように設定されるようにしてもよい。この場合、例えば、正面画像及びOCT信号の取得のフレームレートが本実施形態で挙げたフレームレートの場合(OCT信号取得のフレームレートが正面画像取得のフレームレートの4倍の場合)には、1フレームの正面画像を取得する間に、第1の走査位置にて2フレームのOCT信号が取得され、第2の走査位置で、2フレームのOCT信号を取得される。すなわち、所定の走査領域(例えば、第1走査領域)における複数のOCT信号取得時の1フレームの正面画像と複数のOCT信号取得以後の1フレームの正面画像と、の位置ずれの検出結果に基づいて判定をする場合に、2つの走査位置における複数のOCT信号の良否をまとめて判定することができる。そして、制御部70は、少なくとも2つ以上(本実施形態においては、2つ)の走査位置に関して取得されたそれぞれの複数のOCT信号を処理して被検眼眼底上の各走査位置におけるモーションコントラストデータをそれぞれ取得する。このように、複数のOCT信号の取得時及び複数のOCT信号取得以後で取得された正面画像間による1回の位置ずれの検出を行う間に、複数の走査位置でのモーションコントラストデータを取得することができるため、より迅速に撮影を完了することができる。
なお、走査領域として、複数の走査位置が設定されている構成である場合に、各走査位置で複数のOCT信号を取得する順序としては任意の順序を行うことができる。例えば、第1走査領域として、第1の走査位置と第2の走査位置と、の2つの走査位置で測定光が走査されるように設定されている場合、第1の走査位置で1フレームのOCT信号を取得した後、第2の走査位置で1フレームのOCT信号を取得する。その後、第1の走査位置において1フレームのOCT信号を取得し、第2の走査位置において1フレームのOCT信号を取得する。すなわち、第1の走査位置と第2の走査位置とで、交互にOCT信号を取得していくことで、2フレームのOCT信号をそれぞれの走査位置で取得する。また、例えば、第1の走査位置と第2の走査位置とで1フレームのOCT信号を取得する場合に、1回の走査の中で、第1の走査位置におけるOCT信号と第2の走査位置におけるOCT信号を同時に取得するようにしてもよい。
なお、本実施形態において、OCT信号が良好でないと判定された場合に、再度、同一の走査領域において、撮影を行う構成としたがこれに限定されない。全走査位置が完了した後に、OCT信号が良好でないと判定された走査領域のOCT信号を再撮影する構成であってもよい。また、OCT信号が良好に取得されていない走査領域を検者に報知するようにしてもよい。この場合、検者は報知された情報に基づいて、再撮影等を実行させるようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、被検眼眼底の位置ずれを検出するために、眼底の正面画像を取得する場合を例に挙げて説明しているがこれに限定されない。例えば、被検眼の前眼部の正面画像を撮影するようにして、前眼部正面画像間での位置ずれに基づいて、眼底での撮影を行う構成としてもよい。
<同一位置での8つ以上のOCT信号に基づくモーションコントラストデータ(例えば、図7参照)>
制御部70は、同じ走査位置に関する8つ以上のOCT信号に基づいてモーションコントラストデータ(以下、MCデータと省略する)を取得してもよい。8つ以上のOCT信号を用いることによって、4つのOCT信号に基づいてMCデータを得る場合と比較して、ノイズが軽減された高画質のMCデータを取得できる。この結果、例えば、被検眼の微細な血管構造を良好に画像化でき、臨床的に有用な画像が得られる。また、例えば、MCデータを用いた解析を精度よく行うことができる。
4つのOCT信号に基づいてMCデータを得る場合、通常、時間的に連続するOCT信号間でMCデータを得ることによって、3つのMCデータが得られる。3つのMCデータを合成する(例えば、加算平均)ことによって、最終的なMCデータが得られる。
これに対し、例えば、少なくとも4つのOCT信号を2回得て少なくとも8つのOCT信号を得る場合、時間的に連続するOCT信号間でMCデータを得ることによって、制御部70は、第1の少なくとも4つのOCT信号による第1の少なくとも3つのMCデータを取得し、第2の少なくとも4つのOCT信号による第2の少なくとも3つのMCデータを取得してもよい。さらに、第1の少なくとも3つのMCデータと、第2の少なくとも3つのMCデータと、を合成して、最終的なMCデータを得てもよい。この結果、3つのMCデータを合成したMCデータを得る場合と比較して、ノイズが軽減された高画質のMCデータを得ることができる。なお、少なくとも4つのOCT信号を3回以上得て、少なくとも12個以上のOCT信号に基づいてMCデータを取得することで、さらなる高画質化が可能である。
少なくとも4つのOCT信号単位で走査制御(信号取得)を行うことによって、少なくとも8つのOCT信号をまとめて取得する場合と比較し、少なくとも4つのOCT信号を取得する方が短時間で済むので、結果として、例えば、被検眼の動きが安定した状態でのMCデータが各走査制御において得られる。したがって、各走査制御でのMCデータに基づくMCデータが取得されることで、例えば、眼の移動による影響が少なく、かつ、ノイズが軽減された高画質のMCデータを取得できる。
また、例えば、少なくとも4つのOCT信号の一方に基づくMCデータが良好に取得できなかった場合であっても、少なくとも4つのOCT信号の他方に基づくMCデータによってこれを補うことができ、結果として、良好なMCデータを取得できる。この場合、少なくとも4つのOCT信号の他方に基づくMCデータは、少なくとも3つのMCデータを有するので、ある程度良好な画質を確保できる。この場合、もちろん、4つのOCT信号単位で走査制御を行う場合に限定されず、他の例として、制御部70は、5つ以上のOCT信号単位で走査制御を行い、5つ以上のOCT信号を複数回(例えば、2回、又は3回以上)取得してもよい。
任意選択的には、少なくとも4つのOCT信号単位で走査制御を行う場合、第1の例としては、少なくとも4つのOCT信号単位で走査ラインを変更してもよい。第2の例としては、少なくとも4つのOCT信号単位で、走査位置を補正してもよい。第3の例としては、例えば、少なくとも4つのOCT信号単位で、OCT信号の良否判定を行ってもよい。第4の例としては、例えば、少なくとも4つのOCT信号単位で、観察光学系200の正面画像が1フレーム取得されてもよく、これを用いて、走査位置の補正、良否判定が行われてもよい。第5の例としては、例えば、少なくとも4つのOCT信号を得る毎に、所定の走査停止時間が設けられてもよい。もちろん、少なくとも4つのOCT信号単位で走査制御(信号取得)を行う必要は必ずしもなく、8つ以上のOCT信号をまとめて取得してもよい。
なお、同じ走査位置に関するOCT信号としては、例えば、Bスキャン単位で走査位置が同じOCT信号(例えば、走査ラインが同一のBスキャンOCTデータ)であってもよいし、Aスキャン単位で走査位置が同じOCT信号(例えば、Bスキャンを得る際の走査ラインは異なるが、結果として同一位置のAスキャンOCTデータ)であってもよい。
なお、得られるMCデータとしては、例えば、時間的に異なるBスキャンOCT信号に基づいて得られるBスキャンMCデータであってもよい。MCデータとしては、例えば、異なる走査ラインでのBスキャンMCデータに基づいて得られる正面MCデータ(エンフェイスMCデータ)又は3次元MCデータであってもよい。
同じ走査位置に関するOCT信号としては、厳密に同じ走査位置である必要は必ずしもなく、MCデータが得られる範囲で、同じ走査位置であってもよい。
<走査制御>
4つ以上のOCT信号単位で走査制御を行う場合、制御部70は、例えば、同じ走査位置に関して、第1の少なくとも4つのOCT信号を含む第1のOCT信号群を得るための第1の走査制御と、第2の少なくとも4つのOCT信号を含む第2のOCT信号群を得るための第2の走査制御と、を行ってもよい。
この場合、制御部70は、例えば、同一の走査位置において時間的に異なる少なくとも4つのOCT信号を含む第1のOCT信号群を得るための第1の走査制御を行ってもよい。また、制御部70は、例えば、第1の走査制御による第1のOCT信号群の取得後、第1のOCT信号群と同一の走査位置において時間的に異なる少なくとも4つのOCT信号を含む第2のOCT信号群を得るための第2の走査制御を行ってもよい。
また、制御部70は、例えば、第1の走査制御として、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ少なくとも4回測定光を走査させてもよい。また、制御部70は、例えば、第2の走査制御として、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ少なくとも4回測定光を走査させてもよい。この場合、例えば、予め設定された二次元走査範囲(例えば、矩形領域)を満たす複数の走査ラインに関して、第1の走査制御、第2の走査制御の少なくともいずれが行われてもよい。
なお、複数の走査ラインに関して測定光を走査する場合、制御部70は、第1の走査制御として、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ少なくとも4回測定光を走査させ、第1の走査制御において複数の走査ラインに関する走査を行った後、第2の走査制御として、複数の走査ラインの各々に関してそれぞれ少なくとも4回測定光を走査させてもよい。これによって、同一の走査ラインに関して8回以上の走査を行う場合において、第1の走査制御と第2の走査制御で時間差が設けられることで、例えば、赤血球の停滞等の影響により第1の走査制御時のみでは画像化困難であった毛細血管に関する画像化も可能となる。この場合、第1の走査制御において複数の走査ラインに関する走査を行った後として、制御部70は、第1の走査制御にて全ての走査ラインを走査した後に、第2の走査制御を行ってもよいし、第1の走査制御にて一部の複数の走査ラインを走査した後に、第2の走査制御を行ってもよい。
また、複数の走査ラインに関して測定光を走査する場合、例えば、第1の走査制御と第2の走査制御において、各走査ラインの走査方向及び走査位置が互いに同一であってもよい。これによって、例えば、第1の走査制御と第2の走査制御にて得られたBスキャンMCデータ間の位置合わせを確実に行うことができ、合成されたBスキャンMCデータの高画質化が可能となる。
また、第1の走査制御における副走査方向と、第2の走査制御における副走査方向とが、逆方向であってもよい。副走査方向に関して往復走査が行われることで、第1の走査制御後、隣接した走査ラインにおいて走査が行われるので、例えば、眼の湾曲等によるZ方向におけるOCT信号の変動を抑制できる。
4つ以上のOCT信号単位で走査制御を行う場合、第1の走査制御と第2の走査制御との間で、少なくとも4つのOCT信号を取得する際の時間間隔が異なっていてもよい。これによって、例えば、血流速度の違いに関わらずモーションコントラスト信号を検出できるので、第1の走査制御時のみでは画像化困難であった血管に関する画像化も可能となる。また、第1の走査制御と第2の走査制御との間で、少なくとも4つのOCT信号を取得する際の時間間隔を同じとすることで、同質の画像における高画質化が可能である。
この場合、上記に限定されず、第1の走査制御と第2の走査制御との間で、少なくとも4つのOCT信号を取得する際の走査速度、走査密度、測定光と参照光との光路長差、測定光の偏光状態、の少なくともいずれかが異なってもよい。
なお、光路長差が異なる場合、制御部70は、第1の走査制御においては、測定光と参照光の光路長が一致する深さ位置より被検体の表面が奥側に配置された状態でOCT信号を取得し、第2の走査制御においては、測定光と参照光の光路長が一致する深さ位置より被検体の裏面が前側に配置された状態でOCT信号を取得してもよい。上記手法によれば、例えば、眼底のMCデータを得る場合、網膜側に適したMCデータと、脈絡膜側に適したMCデータとの合成が可能となる。もちろん、制御部70は、第1の走査制御において、測定光と参照光の光路長が一致する深さ位置より被検体の裏面が前側に配置された状態でOCT信号を取得し、第2の走査制御においては、測定光と参照光の光路長が一致する深さ位置より被検体の表面が奥側に配置された状態でOCT信号を取得してもよい。
<OCT信号群の良否判定>
任意選択的には、制御部70は、第1の走査制御にて得られた第1のOCT信号群の良否を各走査ラインに関して判定する第1の判定と、第2の走査制御にて得られた第2のOCT信号群の良否を各走査ラインに関して判定する第2の判定の少なくともいずれかを行ってもよい。これによって、MCデータに不適なOCT信号群によるデータ取得を回避できる。なお、各走査ラインでの判定は、一つの走査ライン単位であってもよいし、複数の走査ライン単位であってもよい。
さらに、良否判定の手法については、正面画像間の位置ずれ、及びOCT信号間の位置ずれの少なくともいずれかを利用してもよい。この場合、位置ずれが許容範囲を満たす場合、良とし、位置ずれが許容範囲から外れる場合、否としてもよい。なお、位置ずれ判定に限らず、OCT信号の画質、又はOCT信号に基づくMCデータの画質によって良否が判定されてもよい。なお、第1の走査制御及び第2の走査制御での良否判定の結果に基づく制御については、前述した実施形態が利用されてもよい。
なお、第1の判定と第2の判定の判定条件が異なってもよく、判定条件を異ならせることで、例えば、所望のOCT信号を取得できる。この場合、例えば、良否判定の条件に関して、一方の判定条件を緩和させることで、再取得の手間が省けるので、撮影時間を短縮化できる。この場合においても、少なくとも4つのOCT信号が確保されているので、一定の画質を確保できる。もちろん、第1の判定と第2の判定の判定条件が同じであってもよい。
なお、制御部70は、第1の判定によって第1のOCT信号群が良好であると判定された走査ラインに関しては、第2の判定の結果に関わらず第2の走査制御を中断し、次の走査ラインに移行可能であってもよい。これにより、第2の走査制御を行う場合であっても、撮影時間の長期化を軽減できる。例えば、第2の走査制御において、ある走査ラインにて第2のOCT信号群を得る際、制御部70は、判定結果として良が得られず、信号取得が完了しない場合であっても、一定時間又は一定の取得回数が経過したら、次の走査ラインに移行してもよい。この場合においても、少なくとも4つのOCT信号が確保されているので、一定の画質を確保できる。
<第3のモーションコントラストデータの取得>
制御部70は、第1の走査制御にて得られた第1のOCT信号群に基づく第1のMCデータと、第2の走査制御にて得られた第2のOCT信号群に基づく第2のMCデータと、に基づいて第3のMCデータを得てもよい。
この場合、制御部70は、例えば、第3のMCデータとして、第1のMCデータと第2のMCデータに基づく合成MCデータを得てもよい。合成MCデータとしては、例えば、各画素に関し、加算平均データを得てもよい。また、加算平均以外の手法としては、各画素に関して、第1のMCデータと第2のMCデータにおける最大値又は最頻値が用いられてもよい。
例えば、制御部70は、第1の走査制御による第1の少なくとも3つのMCデータと、第2の走査制御による第2の少なくとも3つのMCデータとを合成処理してもよい。この場合、制御部70は、第1の少なくとも3つのMCデータを合成処理して第1の合成MCデータを得ると共に、第2の少なくとも3つのMCデータを合成処理して第2の合成MCデータを得てもよい。そして、制御部70は、さらに、第1の合成MCデータと、第2の合成MCデータとを合成処理して、第3のMCデータを取得してもよい。これに限定されず、制御部70は、第1の少なくとも3つのMCデータと、第2の少なくとも3つのMCデータとを一体的に合成して、第3のMCデータを得てもよい。
第1のMCデータと第2のMCデータに基づいて第3のMCデータを得る場合、制御部70は、第1のMCデータと第2のMCデータと、第3の走査制御によって得られたMCデータと、に基づいて、第3のMCデータを得てもよい。第3の走査制御において、制御部70は、例えば、第1のOCT信号群及び第2のOCT信号群と同一の走査位置において時間的に異なる少なくとも4つのOCT信号を含む第3のOCT信号群を少なくとも1回得るための第3の走査制御を行ってもよい。
以下、同じ走査位置に関する8つ以上のOCT信号に基づいてMCデータを得る場合の一例としての実施例を示す。なお、撮影動作に係る他の部分については、前述の説明が採用されうる。
<実施例>
撮影動作の前段階において、検者は、操作部84を操作することによって、MCデータを取得するためのOCT信号のフレーム数を設定してもよい。例えば、少なくとも、フレーム数が4フレームか8フレームを設定可能であってもよい。もちろん、さらに、12フレーム、16フレームが設定可能であってもよい。
<第1の走査制御>
第1の走査制御において、制御部70は、光スキャナ108を制御することによって、各走査ラインに対してそれぞれ測定光を少なくとも4回走査する。制御部70は、各走査ラインに関して、少なくとも4フレームのOCT信号を取得する。
例えば、制御部70は、第1の走査ラインSL1において測定光を主走査方向に少なくとも4回走査する。制御部70は、検出器120からの出力信号に基づいて、第1の走査ラインSL1に対応する少なくとも4フレームのOCT信号を生成する。
第1の走査ラインSL1における少なくとも4回の走査が終了したら、制御部70は、光スキャナ108を制御することによって、第2の走査ラインSL2において測定光を主走査方向に少なくとも4回走査する。制御部70は、検出器120からの出力信号に基づいて、第2の走査ラインSL2に対応する少なくとも4フレームのOCT信号を生成する。
同様に、制御部70は、第3の走査ラインSL3、・・・、第n-1の走査ラインSLn-1、第nの走査ラインSLnそれぞれにおいて測定光を少なくとも4回走査することによって、各走査ラインに対応する少なくとも4フレームのOCT信号を生成する。つまり、第1の走査制御においては、各走査ラインに対して、走査が少なくとも4回行われる。
制御部70は、予め設定された二次元走査範囲SAの走査ラインSLi(i=1~n)に対応する少なくとも4フレームのOCT信号をメモリ72に記憶する。各OCT信号は、静止画像として、各走査ラインに対応付けて記憶されてもよい。この結果、各走査ラインに関して少なくとも4フレームのOCT信号を有する第1の3次元OCTデータが取得される。
<第2の走査制御>
第1の走査制御の終了後、制御部70は、第2の走査制御に移行する。第1の走査制御から第2の走査制御への移行は、自動的に実行されてもよいし、又は、操作部74からのトリガ信号に基づいて実行されてもよい。自動制御は、例えば、時間を短縮できるという点で有効であり、手動制御は、比較的時間を要する第2の走査制御の開始前に、被験者の状態を確認できるという点で有効である。
なお、制御部70は、第1の走査制御にて得られたOCT信号に基づく正面MCデータを表示部75に一旦表示し、画像の良否を検者が確認できるようにしてもよい。これによって、検者は、第2の走査制御に実行することなく、短時間で撮影を終了できると共に、必要あれば、追加の制御を行うことができる。
第2の走査制御において、制御部70は、光スキャナ108を制御することによって、各走査ラインに対してそれぞれ測定光を少なくとも4回走査する。制御部70は、各走査ラインに関して、少なくとも4フレームのOCT信号を取得する。
例えば、制御部70は、第nの走査ラインSLnにおいて測定光を主走査方向に少なくとも4回走査する。制御部70は、制御部70は、検出器120からの出力信号に基づいて、第nの走査ラインSLnに対応する少なくとも4フレームのOCT信号を生成する。
第nの走査ラインSLnにおける少なくとも4回の走査が終了したら、制御部70は、光スキャナ108を制御することによって、第n-1の走査ラインSLn-1において測定光を主走査方向に少なくとも4回走査する。制御部70は、検出器120からの出力信号に基づいて、第n-1の走査ラインSLn-1に対応する少なくとも4フレームのOCT信号を生成する。
同様に、制御部70は、第n-2の走査ラインSLn-2、・・・、第2の走査ラインSL2、第1の走査ラインSL1それぞれにおいて測定光を少なくとも4回走査することによって、各走査ラインに対応する少なくとも4フレームのOCT信号を生成する。つまり、第2の走査制御においても、各走査ラインに対して、走査が少なくとも4回行われる。
制御部70は、予め設定された二次元走査範囲SAの走査ラインSLi(i=1~n)に対応するOCT信号をメモリ72に記憶する。各OCT信号は、静止画像として、各走査ラインに対応付けて記憶されてもよい。この結果、各走査ラインに関して少なくとも4フレームのOCT信号を有する第2の3次元OCTデータが取得される。
ここで、走査範囲SAに関して少なくとも4フレームのOCT信号を複数回得る場合、前述のように、第1の走査制御における副走査方向と、第2の走査制御における副走査方向とを逆方向にしてもよい。これによって、走査ラインの変更を少なくでき、眼の位置ずれによる影響を軽減できる。例えば、OCT信号のZ位置に関して、眼の湾曲による影響を少なくできるので、光路長調整によりZ位置を調整する場合において、少ない調整で済む。もちろん、各副走査方向が同一方向であってもよい。
なお、上記実施例においては、走査範囲SAに関して少なくとも4フレームのOCT信号を2回得る例を示したが、少なくとも4フレームのOCT信号を少なくとも3回以上取得しても良い。例えば、少なくとも4フレームのOCT信号を3回取得することで、少なくとも12フレームのOCT信号を取得してもよい。さらに、少なくとも4フレームのOCT信号を4回取得することで、少なくとも16フレームのOCT信号を取得してもよい。モーションコントラストデータの合成に用いるフレーム数を、さらに増やすことによって、さらなる高画質化が可能となる。例えば、微細な血管構造を確認することが容易となる。なお、第3回目の取得での副走査方向は、第2回目の取得における副走査方向と逆であってもよい。
なお、上記実施例において、制御部70は、第1の走査制御と第2の走査制御における進行状況をモニタ75上でそれぞれ表示してもよい。この場合、例えば、制御部70は、各走査制御に関し、既に走査された走査ライン数と総走査ライン数を表示してもよい(例えば、1/n等)。また、制御部70は、測定光の副走査方向をモニタ75上にて表示するようにしてもよい(例えば、矢印表示)。
<MCデータの取得>
制御部70は、第1の走査制御にて得られた第1の少なくとも4フレームのOCT信号を処理して、第1の少なくとも3フレームのMCデータを取得する。また、第2の走査制御にて得られた第2の少なくとも4フレームのOCT信号を処理して、第2の少なくとも3フレームのMCデータを取得する。ここで、制御部70は、各走査ラインに関して、第1のMCデータを少なくとも3フレーム取得すると共に、第2のMCデータを少なくとも3フレーム取得してもよい。なお、時間的に異なる複数のOCT信号に基づいてMCデータを得る手法については、種々の手法が採用できるので、説明を省略する。なお、少なくとも4フレームのOCT信号を処理して少なくとも3つのMCデータを得る場合、時間的に連続するOCT信号を処理して3つのMCデータを得てもよいし、さらに、時間的に連続しないOCT信号を処理してMCデータを得てもよい。
ここで、制御部70は、同一の走査ラインに関して、第1の少なくとも3フレームのMCデータと、第2の少なくとも3フレームのMCデータと、を合成処理(例えば、加算平均処理、超解像処理等)して、第3のMCデータを取得してもよい。結果として、合成MCデータが、走査ライン毎に取得される。この結果、6フレーム以上のMCデータが合成されることで、高画質のMCデータが取得される。なお、加算平均処理によれば、画像上のノイズが軽減され、かつ、コントラストが優れたMCデータが取得される。この場合、最大値処理、最頻値であってもよい。また、超解像処理によれば、MCデータの解像度を高めることが可能となる。
制御部70は、各走査ラインにて得られた第3のMCデータに基づいて、高画質の正面MCデータ、又は高画質の3次元MCデータを得てもよい。
なお、上記実施例において、同一の走査ラインに関して第1のOCT信号群と第2のOCT信号群を得る場合、これらを連続的に取得するのではなく、各走査ラインSLi(i=1~n)における第1のOCT信号群を取得した後、各走査ラインSLi(i=1~n)における第2のOCT信号群を得ることによって、第1のOCT信号群を取得後、第2のOCT信号群を得るまでに一定時間を確保できる。
一定時間において、毛細血管における血液の流れがスムーズになる可能性があり、結果として、血管構造の画像化を精密に行うことができる。なお、もちろん、同一の走査ラインに関して第1のOCT信号群と第2のOCT信号群を得る場合、これらを連続的に取得する場合においても、本実施形態の適用は可能である。
<トラッキング>
任意選択的には、制御部70は、例えば、観察光学系200によって取得される正面画像に基づいて光スキャナ108の駆動を制御することによって、各走査ラインにおいて4フレーム以上のOCT信号を得る際の走査位置を補正してもよい。
この場合、制御部70は、例えば、第1の走査制御又は第2の走査制御の少なくともいずれかにおいて、少なくとも1つの走査ラインにおいて4フレーム以上のOCT信号を得る毎に、走査位置を補正してもよい。これによって、少なくとも1つの走査ラインでのOCT信号群の走査位置を一体的に補正できる。
走査位置を補正する場合、例えば、制御部70は、観察光学系200によって取得される正面画像のライブ動画像と予め取得された静止画像(基準画像)との位置ずれを画像処理によって検出してもよい。制御部70は、その検出結果に基づいて光スキャナ108の駆動を制御することによって走査位置を補正してもよい。ここで、制御部70は、第1の走査制御又は第2の走査制御の少なくともいずれかにおいて、正面画像が1フレーム取得される間に、少なくとも1つの走査ラインにおいて4フレーム以上のOCT信号を取得してもよい。
走査位置を補正する場合、制御部70は、例えば、第1の走査ラインでの少なくとも4フレームのOCT信号の取得の際、観察光学系200によって第1の正面画像を基準画像として取得し、第1の走査ラインでのOCT信号の取得以後であって、第1の正面画像の取得後に観察光学系によって第2の正面画像を取得してもよい。制御部70は、第1の正面画像と第2の正面画像との位置ずれを画像処理によって検出し、検出された位置ずれに基づいて走査位置を補正してもよい。
<Aスキャン単位の補正>
任意選択的には、制御部70は、例えば、第1の走査制御にて得られたMCデータと第2の走査制御にて得られたMCデータとの間で合成処理を行う場合、Aスキャン単位でZ方向における位置ずれを画像処理によって補正してもよい。これによって、MCデータ間の位置ズレが精度よく補正され、高画質のMCデータを得ることができる。なお、上記トラッキングを用いて取得されたMCデータに対してAスキャン単位でずれを補正する場合、XY方向に関するずれが予め補正されているので、MCデータ間のずれをより正確に補正できる。
<画像判定>
任意選択的には、制御部70は、観察光学系200によって取得される眼画像に基づいて、少なくとも1つの走査ラインに関して得られる少なくとも4つのOCT信号の良否を判定してもよい。
この場合、制御部70は、例えば、第1の走査制御又は第2の走査制御の少なくともいずれかにおいて、少なくとも1つの走査ラインにおいて4フレーム以上のOCT信号を得る毎に、良否を判定してもよい。これによって、少なくとも1つの走査ラインでのOCT信号群の良否を一体的に判定できる。
良否判定を行う場合、制御部70は、例えば、観察光学系200によって取得されるライブ動画像と予め取得された静止画像(基準画像)との位置ずれを画像処理によって検出してもよい。制御部70は、少なくとも1つの走査ラインに関して少なくとも4つのOCT信号を得た際の位置ずれの検出結果に基づいて、少なくとも4つのOCT信号の良否を判定してもよい。なお、位置ずれの検出手法については、例えば、上記<トラッキング>と同様に、第1の正面画像と第2の正面画像が取得されてもよい。ここで、制御部70は、第1の走査制御又は第2の走査制御の少なくともいずれかにおいて、正面画像が1フレーム取得される間に、少なくとも1つの走査ラインにおいて4フレーム以上のOCT信号を取得してもよい。
良否判定を行う場合、制御部70は、例えば、良と判定された場合、次の走査ラインに移行し、否と判定された場合、当該走査ラインに関するOCT信号を再度取得してもよい。なお、制御部70は、OCT信号の良否判定結果に基づく制御と、走査位置補正とを、組み合わせて行ってもよい。
<変容形態>
以下、本実施形態に係る変容形態を示す。制御部70は、第1の走査制御と第2の走査制御との間で走査範囲の少なくとも一部を重複させ、重複した走査範囲において少なくとも8つのOCT信号を取得してもよい。
この場合、各走査ラインの走査方向及び走査位置が同一の場合に限定されない。例えば、制御部70は、第1の走査制御と第2の走査制御との間で主走査方向及び副走査方向が互いに直交するように走査制御を行ってもよい。その一例として、第1の走査制御においては、主走査方向がX方向、副走査方向がY方向とし、第2の走査制御においては、主走査方向がY方向、副走査方向がX方向であってもよい。この場合、制御部70は、第1の走査制御によるMCデータと、第2の走査制御によるMCデータと、を合成して、合成MCデータを得てもよい。さらに、制御部70は、第1の走査制御にて得られた第1の3次元OCTデータと、第2の走査制御にて得られた第2の3次元OCTデータとの間の相関性を利用して各3次元OCTデータを補正した後、合成MCデータを得るための合成処理を行ってもよい。
なお、上記説明においては、4つ以上のOCT信号を複数回得て8つ以上のOCT信号を得る場合について説明したが、2つ以上のOCT信号を複数回(例えば、2回、又は3回以上)得て4つ以上のOCT信号を得る場合においても、本実施形態の適用可能である。つまり、制御部70は、同じ走査位置に関して、第1の複数のOCT信号を含む第1のOCT信号群を得るための第1の走査制御と、第2の複数のOCT信号を含む第2のOCT信号群を得るための第2の走査制御と、を行ってもよい。なお、2つ以上のOCT信号を複数回得る場合、例えば、任意のタイミングで、信号取得が停止されてもよい。
なお、上記実施形態に記載された各特徴(例えば、装置構成、制御、演算等)について、2つ以上のOCT信号を複数回(例えば、2回、又は3回以上)得る場合においても適用可能であることは言うまでもなく、例えば、上記実施形態において、4つ以上のOCT信号を複数回を得る制御、各走査制御での4つ以上のOCT信号に基づいて第3のMCデータを得る点を、2つ以上のOCT信号を複数回得る、各走査制御での2つのOCT信号に基づいて第3のMCデータを得る構成に置き換えることで、各特徴の実施が可能である。その一例として、(複数走査ラインに関して第1の走査制御及び第2の走査制御を行う場合の制御)、(MCデータ間の位置ずれ補正)、(正面画像に基づく走査位置の補正)、(OCT信号群の良否判定)、(第2の走査制御を中断しての次の走査ラインの移行)、(第1の走査制御と第2の走査制御との間で、複数のOCT信号を取得する際の時間間隔、走査速度、走査密度、測定光と参照光との光路長差、の少なくともいずれかかが異なる)等の技術に関して、2つ以上のOCT信号を複数回(例えば、2回、又は3回以上)得る場合においても適用できることはいうまでもない。
2つ以上のOCT信号を複数回得る場合、例えば、制御部70は、2つのOCT信号を複数回得て4つ以上のOCT信号を得てもよい。この場合、少なくとも、第1の2つのOCT信号に基づいて第1のMCデータが取得され、第2の2つのOCT信号に基づいて第2のMCデータが取得され、これらに基づいて第3のMCデータが取得されてもよい。第1の2つのOCT信号単位で走査制御が行われることで、4つ以上のOCT信号を連続的に取得する場合に比べ、各走査制御を短時間で行うことができる。
2つ以上のOCT信号を複数回得る場合、例えば、制御部70は、3つのOCT信号を複数回得て6つ以上のOCT信号を得てもよい。この場合、少なくとも、第1の3つのOCT信号に基づいて第1の少なくとも2つのMCデータが取得され、第2の3つのOCT信号に基づいて第2の少なくとも2つのMCデータが取得され、これらに基づいて第3のMCデータが取得されてもよい。第1の3つのOCT信号単位で走査制御が行われることで、6つ以上のOCT信号を連続的に取得する場合に比べ、各走査制御を短時間で行うことができる。
また、第1の走査制御と第2の走査制御との間において、同じ走査位置でのOCT信号の取得数が異なってもよい。例えば、一方の走査制御にて、4つ以上のOCT信号を得て、他方の走査制御にて、2つ又は3つのOCT信号を得てもよい。もちろん、取得数について、これに限定されない。
なお、制御部70は、第1の走査制御と第2の走査制御に加え、第3のOCT信号群を少なくとも1回得るための第3の走査制御を行ってもよい。ここで、第3のOCT信号群は、例えば、第1のOCT信号群及び第2のOCT信号群と同一の走査位置において時間的に異なる少なくとも2つのOCT信号を含んでもよい。第3の走査制御によれば、第1のMCデータと第2のMCデータに加え、新たなMCデータが取得でき、これらを組み合わせることで、高画質のMCデータを取得できる。第3のOCT信号群を複数回得ることで、さらなる高画質化が可能である。
なお、本実施形態においては、OCT信号を取得する光コヒーレンストモグラフィ装置を例に挙げて説明したこれに限定されない。本開示の技術は、複数の信号(例えば、波面補償機能付眼底撮像装置によって取得された撮像信号等)からモーションコントラストデータを取得する装置であれば、適用することができる。
なお、本発明においては、本実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う光コヒーレンストモグラフィ演算ソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。