本発明に係る接着剤積層体は、第一の熱可塑性樹脂を含む第一の接着剤層と、ナノ粒子を含み、光の照射により変質する分離層と、第二の熱可塑性樹脂を含む第二の接着剤層と、がこの順に積層されている構成である。
上記構成によれば、分離層にナノ粒子を含んでいるため、接着剤積層体は、高い接着性及び耐熱性を備えることができる。このため、所望の処理を行なうときに分離層が破損することを防止することができ、支持体から基板が剥がれることを防止することができる。また、接着剤積層体の分離層は熱可塑性樹脂を含まない。このため、基板と支持体とを分離した後、基板を洗浄液により洗浄したときに、基板に付着した分離層と接着剤層との残渣を好適に除去することができる。また、分離層は可視光線によって好適に変質させることができるため、放射エネルギーを照射することで分離層を分解する場合よりも、基板と支持体とを分離するときに発生するパーティクルの発生を抑制することができる。
また、上記構成によれば、接着剤積層体の接着剤層は第一及び第二の熱可塑性樹脂を用いているため、光硬化型接着剤を用いた場合よりも、基板と支持体とを分離した後の接着層の残渣を洗浄によって好適に除去することができる。
<接着剤積層体>
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る接着剤積層体について説明する。
図1の(a)に示すように、一実施形態に係る接着剤積層体10は、第一の熱可塑性樹脂を含む第一の接着剤層1と、ナノ粒子を含み、光の照射により変質する分離層2と、第二の熱可塑性樹脂を含む第二の接着剤層3と、がこの順に積層されている。
接着剤積層体10は、図1の(c)に示すように基板20とサポートプレート30とを接着固定するために用いられる。
基板20としては、例えば、ウエハ基板、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板などの任意の基板を使用することができる。また、一実施形態において、基板20における接着剤層3が形成される側の面には回路が形成されている。ここで、基板20に形成された回路が立体的である場合、基板20には凹凸などによる段差が形成されている。
サポートプレート30は、基板20を支持する支持部材であり、基板20の薄化、搬送、実装などのプロセス時に、基板20の破損又は変形を防止するために必要な強度を有していればよい。以上の観点から、サポートプレート30は、例えば、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるものが挙げられる。
〔第一の接着剤層〕
第一の接着剤層1は、第一の熱可塑性樹脂を含む接着剤により形成される層であり、基板積層体50においてサポートプレート30を接着固定するために用いられる(図1の(c))。
第一の接着剤層1の厚さは、貼り付けの対象となる基板20及びサポートプレート30の種類、貼り付け後の基板20に施される処理などに応じて適宜設定すればよいが、0.5μm以上、50μm以下の範囲内であることが好ましく、0.5μm以上、20μm以下の範囲内であることがより好ましく、1μm以上、10μm以下の範囲内であることが最も好ましい。第一の接着剤層1の膜厚が、0.5μm以上、50μm以下の範囲内であれば、第一の接着剤層1によってサポートプレート30を接着剤積層体10に好適に接着固定することができる。また、分離層2に光を照射するときに、第一の接着剤層1を介して光を好適に透過させることができ、分離層2に好適に光を吸収させることができることができる。
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマーなどの、当該分野において公知の種々の接着剤が、本発明に係る第一の接着剤層1を構成する接着剤として使用可能である。以下、本実施の形態における第一の接着剤層1が含有する樹脂の組成について説明する。
第一の接着剤層1が含有する第一の熱可塑性樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂など、又はこれらを組み合わせたものなどが挙げられる。
接着剤のガラス転移温度(Tg)は、上記樹脂の種類や分子量、及び接着剤への可塑剤などの配合物によって変化する。上記接着剤に含有される樹脂の種類や分子量は、基板及び支持体の種類に応じて適宜選択することができるが、接着剤に使用する樹脂のTgは−60℃以上、200℃以下の範囲内が好ましく、−25℃以上、150℃以下の範囲内がより好ましい。接着剤に使用する樹脂のTgが−60℃以上、200℃以下の範囲内であることによって、冷却に過剰なエネルギーを要することなく、好適に第一の接着剤層1の接着力を低下させることができる。また、第一の接着剤層1のTgは、適宜、可塑剤や低重合度の樹脂などを配合することによって調整してもよい。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば、公知の示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することができる。
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基などが挙げられる。また、当該スチレン単位の含有量は、14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易且つ迅速に第一の接着剤層を除去することができる。また、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上記の範囲内であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGMEなど)、酸(フッ化水素酸など)、アルカリ(TMAHなど)に対して優れた耐性を発揮する。
なお、エラストマーには、後述する(メタ)アクリル酸エステルをさらに混合してもよい。
また、スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、また、より好ましくは40重量%以下である。
重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、また、より好ましい範囲は150,000以下である。
エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、種々のトリブロック樹脂を用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、及び、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製)、SeptonV9475(株式会社クラレ製))、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレンブロックコポリマー(SEEPS−OH:末端水酸基変性)などであって、スチレン単位の含有量及び重量平均分子量が上述の範囲内であるものを用いることができる。
一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記エラストマーは、トリブロック樹脂であることがより好ましい。ここで、トリブロック樹脂とは、両端がスチレンのブロック重合体であるエラストマーのことを指す。トリブロック樹脂を第一の熱可塑性樹脂として用いることによって、熱安定性の高いスチレン重合体で両末端をブロックすることができ、第一の接着剤層1により高い耐熱性を付与することができる。
また、一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記エラストマーは、水添加スチレンエラストマーであることがより好ましい。エラストマーとして水添加スチレンエラストマーを用いることによって、第一の接着剤層1の熱に対する安定性が向上し、分解や重合などの変質が起こり難くなる。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
より具体的には、エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合などの変質が起こり難くなる。また、熱安定性の高いスチレン重合体で両末端をブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
第一の接着剤層1を構成する接着剤に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、株式会社クラレ製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」などが挙げられる。
第一の接着剤層1を構成する接着剤に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤の全量を100重量部として、50重量部以上、99重量部以下の範囲内が好ましく、60重量部以上、99重量部以下の範囲内がより好ましく、70重量部以上、95重量部以下の範囲内が最も好ましい。これら範囲内にすることにより、耐熱性を維持しつつ、ウエハと支持体とを好適に貼り合わせることができる。
また、エラストマーは、複数の種類を混合してもよい。つまり、第一の接着剤層1を構成する接着剤は複数の種類のエラストマーを含んでいてもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいればよい。また、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であるか、又は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、本発明の範疇である。また、第一の接着剤層1を構成する接着剤において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲内となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤組成物に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、従って14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを重量比1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。また、本発明に係る接着剤組成物に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲内でスチレン単位を含み、且つ、上記の範囲内の重量平均分子量であることが最も好ましい。
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて第一の接着剤層1を形成することが好ましい。光硬化性樹脂以外の樹脂を用いることで、第一の接着剤層1の剥離又は除去の後に、被支持基板の微小な凹凸の周辺に残渣が残ることを防ぐことができる。特に、第一の接着剤層1を構成する接着剤としては、あらゆる溶剤に溶解するものではなく、特定の溶剤に溶解するものが好ましい。これは、基板20に物理的な力を加えることなく、第一の接着剤層1を溶剤に溶解させることによって除去可能となるためである。第一の接着剤層1の除去に際して、強度が低下した基板20からでさえ、基板20を破損させたり、変形させたりせずに、第一の接着剤層1を容易に除去することができる。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)などが挙げられるが、これに限定されない。
樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体などが挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィンなどが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性及び溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性及び柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件などについては、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」及び「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに第一の接着剤層の軟化をさらに抑制することができる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂などが挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジンなどが挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂などが挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。
樹脂(B)の重量平均分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の重量平均分子量が300以上であると、耐熱性が十分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の重量平均分子量が3,000以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好なものとなる。なお、一実施形態における樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性及び剥離速度が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステルなどとを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などであるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基などからなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基などが挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドなどのアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミドなどの脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミドなどのアリール基を有する芳香族マレイミドなどを重合して得られた樹脂が挙げられる。
例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位及び下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
(化学式(2)中、nは0又は1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、及びAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)などを使用することができる。
(希釈溶剤)
第一の接着剤層を形成するときの希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカンなどの直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐状の炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどの環状炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテートなどのエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルなどのモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテルなどのエーテル結合を有する化合物などの多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテルなどの芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
(その他の成分)
第一の接着剤層を構成する接着剤は、本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤及び界面活性剤など、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
〔分離層〕
分離層2は、ナノ粒子を含み、サポートプレート30を介して照射される光を吸収することによって変質する層である。分離層2は、接着剤積層体10において、第一の接着剤層1と第二の接着剤層3との間に設けられる。
一実施形態において、分離層は、支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するナノ粒子を含む層である。本明細書において、分離層が「変質する」とは、分離層をわずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。光を吸収することによって生じる分離層の変質の結果として、分離層は、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。
また、分離層の変質は、吸収した光のエネルギーによるナノ粒子の凝集の解離、(発熱性又は非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化又は官能基の解離(そして、これらにともなう分離層の硬化、脱ガス、収縮又は膨張)などであり得る。分離層の変質は、分離層を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層の変質の種類は、分離層を構成する材料の種類に応じて変化し得る。
なお、分離層2は、ナノ粒子のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、界面活性剤などの添加剤を含んでもよい。
〔ナノ粒子〕
本発明においてナノ粒子とは、微粒子化された顔料のことであり、本明細書中においては平均粒子径が500nmよりも小さい粒子のことを意味する。一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記ナノ粒子は、平均粒子径が5nm以上、100nm以下の範囲内であることが好ましく、平均粒子径が5nm以上、90nm以下の範囲内であることがより好ましく、平均粒子径が10nm以上、80nm以下の範囲内であることが最も好ましい。ナノ粒子の平均粒子径が5nm以上、100nm以下の範囲内であれば、接着剤積層体10を備えた基板積層体50において、基板20に所望の処理を行なっても、接着剤積層体10を構成する分離層2に応力が集中し、分離層2が破損することを防止することができる。このため、基板積層体50において、サポートプレート30から基板20が剥離することを防止することができる。また、分離層2がナノ粒子によって形成されていれば、分離層に熱可塑性樹脂を含まずとも、好適に分離層を形成することができる。
分離層2の厚さは、例えば、0.3μm以上、20μm以下の範囲内であることが好ましく、0.5μm以上、15μm以下の範囲内であることがより好ましく、1μm以上、10μm以下の範囲内であることが最も好ましい。分離層2の厚さが0.3μm以上の範囲内であれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層2に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層2の厚さが、20μm以下の範囲内であれば、接着剤積層体10を用いて接着した基板に所望の処理を行なう場合であっても、接着剤積層体10の分離層2に応力を集中させることを防止することができ、分離層2が破損することを防止することができる。また、接着剤積層体10をフィルム上に形成しても、フィルムの折り曲げにより分離層2が破損することを防止することができる。
また、ナノ粒子は、熱分解温度が300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。ナノ粒子の熱分解温度が300℃以上であれば、分離層2に高い耐熱性を備えることができる。このため、基板積層体50にプラズマ処理、加熱処理を行なうときに分離層2が破損し、サポートプレート30から基板20が剥がれることを防止することができる。
上記ナノ粒子は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層2に用いた有機系のナノ粒子が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記有機系のナノ粒子を好適に変質させ得る。なお、ナノ粒子は、波長が可視光線の範囲内である光によって変質させることができるものを選択することがより好ましい。
分離層2が含むナノ粒子としては、無機系のナノ粒子及び有機系のナノ粒子を挙げることができる。ここで、無機系のナノ粒子としては、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、及びカーボンなどのナノ粒子を挙げることができる。また、有機系のナノ粒子としては、有機系顔料などのナノ粒子を挙げることができる。
(無機系のナノ粒子)
分離層に用いられるナノ粒子には、無機系のナノ粒子を挙げることができる。ここで、一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記ナノ粒子は、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物又はカーボンであることが好ましい。分離層2が、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物又はカーボンなどのナノ粒子を含むことによって、光を吸収することによって好適に変質することができる。その結果として、分離層2は光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート20を持ち上げるなど)ことによって、分離層2が破壊されて、サポートプレート30と基板20とを分離し易くすることができる。
上記金属又は金属酸化物は、光を吸収することによって変質する構成であればよい。金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、パラジウム、白金、ニッケル、アルミニウム、チタン、及びクロムなどを挙げることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化ニッケル(NiO)、酸化コバルト(Co2O3)、酸化マンガン(Mn2O3及びMn3O4)、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム及びSiO2などを挙げることができる。金属窒化物としては、例えば、窒化チタン及び窒化ガリウムなどを挙げることができる。金属硫化物としては、例えば、硫化亜鉛及び硫化カドミウムなどを挙げることができる。無機系のナノ粒子を分離層に含ませることによって、可視光線である380nm以上、750nm以下の範囲内の光を照射することによって好適に変質する分離層を形成することができる。
なお、分離層2として金属を使用する場合には、分離層2の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力などの条件によっては、レーザの反射や膜への帯電などが起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層2の上下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
(カーボン)
分離層2が含むナノ粒子は、例えば、カーボンを含むナノ粒子であってもよい。ここで、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、カーボンブラック、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブなどであり得る。一実施形態に係る接着剤積層体10では、分離層2に用いられるカーボンのナノ粒子は、カーボンナノチューブであることがより好ましい。分離層2に用いられるナノ粒子がカーボンナノチューブであれば、高い分離性を備えた接着剤積層体を形成することができる
(有機系のナノ粒子)
分離層に用いられるナノ粒子には、有機系のナノ粒子を挙げることができる。一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記ナノ粒子は、有機系顔料であることが好ましい。ここで、有機系顔料は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、インドリン系顔料、シアニン系顔料、メロシアニン系顔料、フラーレン系顔料、多環芳香族系顔料、及びポリジアセチレン系顔料を用いることができる。また、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン及びイソビオラントロン化合物顔料などを挙げることができる。有機系のナノ粒子を分離層に含ませることによって、可視光線である380nm以上、750nm以下の範囲内の光を照射することによって好適に変質する分離層を形成することができる。
〔第二の接着剤層〕
第二の接着剤層3は、第二の熱可塑性樹脂を含む層であり、基板積層体50において基板20を接着固定するために用いられる(図1の(c))。
第二の接着剤層3に用いる第二の熱可塑性樹脂の種類などは、上述した第一の接着剤層1についての説明と同様である。これらの事項は、第一の接着剤層1と第二の接着剤層3とで、互いに異なっていてもよいが、限定すべきではない。ここで、一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記第一の接着剤層1と上記第二の接着剤層3とが、同一の組成であることがより好ましい。
これによって、接着剤積層体の構成を簡素なものにすることができ、接着剤積層体10の製造を簡素化できる。また、基板とサポートプレートとを貼り付けるときの温度条件などを、単一の接着剤層からなる接着フィルムと同じように設定することができる。
一実施形態に係る接着剤積層体10では、上記第二の接着剤層3の膜厚は、10μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましく、15μm以上、150μm以下の範囲内であることがより好ましく、20μm以上、130μm以下の範囲内であることが最も好ましい。第二の接着剤層3の膜厚が、10μm以上、200μm以下の範囲内であれば、基板20に回路による段差が形成されていても、当該基板20の回路による段差を第二の接着剤層3によって埋め込むようにして、接着剤積層体10によって基板20とサポートプレート30とを接着固定することができる。
<接着フィルム>
本発明の一実施形態に係る接着フィルムは、フィルム上に、本発明の一実施形態に係る接着剤積層体10を備えていてもよい。つまり一実施形態に係る接着フィルムでは、予め可撓性フィルムなどのフィルム上に上記何れかの接着剤積層体を形成した後、このフィルム(接着フィルム)を、被加工体に貼り付けて使用する方法(接着フィルム法)を用いてもよい。
上記構成によれば、フィルムに形成された接着剤積層体10を基板20又はサポートプレート30に貼り付けることで基板積層体50を形成することができる。つまり、分離層2と第一及び第二の接着剤層を備えた基板積層体50を簡素なプロセスによって製造することができる。それゆえ、一実施形態に係る接着フィルムを用いれば、高い接着性及び耐熱性を有する接着剤積層体10を備えた基板積層体50を簡素なプロセスによって製造することができる。
接着フィルムは、接着剤積層体10にさらに保護フィルムで被覆して用いてもよい。この場合には、接着剤積層体10上の保護フィルムを剥離し、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねた後、接着剤層から上記フィルムを剥離することによって被加工体上に接着剤積層体10を容易に設けることができる。
したがって、この接着フィルムを用いれば、被加工体の上に直接、第一及び第二の接着剤層、並びに分離層を塗布して接着剤積層体を形成する場合と比較して、膜厚均一性及び表面平滑性の良好な接着剤層を形成することができる。
接着フィルムの製造に使用する上記フィルムとしては、フィルム上に製膜された接着剤積層体10を当該フィルムから剥離することができ、接着剤積層体10をサポートプレートやウエハなどの被処理面上に転写できる離型フィルムであればよく、特に限定されるものではない。例えば、膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、及びポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。上記フィルムには、必要に応じて、転写が容易となるように離型処理が施されていることが好ましい。
また、保護フィルムを用いる場合、保護フィルムとしては、接着剤層から剥離することができる限り限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムが好ましい。また、各保護フィルムは、シリコンをコーティング又は焼き付けしてあることが好ましい。接着剤層からの剥離が容易となるからである。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、15〜125μmが好ましい。保護フィルムを備えた接着フィルムの柔軟性を確保できるからである。
<接着フィルムの製造方法>
本発明の一実施形態に係る接着フィルムの製造方法は、本発明に係る接着フィルムを製造する方法であって、上記第一の熱可塑性樹脂を含んだ上記第一の接着剤層1を積層する第一接着剤層積層工程と、上記ナノ粒子を含んだ上記分離層2を積層する分離層積層工程と、上記第二の熱可塑性樹脂を含んだ上記第二の接着剤層3を積層する第二接着剤層積層工程と、を包含し、上記フィルム上に、上記第一の接着剤層1、上記分離層2及び上記第二の接着剤層3を、この順に積層する方法である。
ここで、第一の接着剤層1、分離層2、及び第二の接着剤層3は、この順に積層されていればよい。つまり、第一接着剤層形成工程及び第二接着剤層形成工程は、いずれを先に行なってもよい。一実施形態として、離型性を備えたフィルム上に、第二接着剤層形成工程により第二の接着剤層3を積層し、分離層積層工程により分離層2を積層し、第一接着剤層積層工程によって第一の接着剤層1を積層し、その後、保護フィルムにより第一の接着剤層1を保護してもよい。この順において、フィルム上に接着剤積層体10を形成すれば、接着フィルムの保護フィルムを剥がした後、第一の接着剤層1をサポートプレート30に貼り付け(図1の(b))、その後、離型性を備えたフィルム剥がすことによって、第二の接着剤層3に基板20を接着し、基板積層体50を形成することができる(図1の(c))。
〔第一接着剤層積層工程〕
第一接着剤層積層工程では、上記第一の熱可塑性樹脂を含んだ上記第一の接着剤層1を積層する。ここで、第一の接着剤層1は、第一の熱可塑性樹脂を含んだ接着剤を、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布などにより塗布することで形成することができる。また、第一の接着剤層1を塗布した後、第一の接着剤層を加熱することによって、第一の接着剤層1から溶剤を除去することが好ましい。なお、第一の接着剤層1を加熱する条件は、第一の熱可塑性樹脂を溶解する溶剤の種類に応じて、適宜調整すればよい。
第一の接着剤層1の膜厚は、貼り付けの対象となる基板20及びサポートプレート30の種類、貼り付け後の基板20に施される処理などに応じて適宜設定すればよいが、上記〔第一の接着剤層〕の項に記載したように、0.5μm以上、50μm以下の範囲内となるように形成すればよい。
〔分離層積層工程〕
分離層積層工程では、上記ナノ粒子を含んだ上記分離層2を積層する。
ナノ粒子を含んだ分離層2は、ナノ粒子を分散した分散液を塗布することによって形成すればよい。ここで、ナノ粒子の分散液に用いられる分散媒は水及び有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテートなどのエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルなどのモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテルなどのエーテル結合を有する化合物などの多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテルなどの芳香族系有機溶剤などが挙げられる。また、PM、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの極性溶媒を用いることもできる。また、ナノ粒子は、表面処理されたものを用いて分散媒に分散してもよい。また、ナノ粒子の分散性を向上させるため、分散剤などを用いて分散してもよい。なお、分離層2は、平均粒子径が5nm以上、100nm以下の範囲内であれば、市販により入手可能な分散液を用いてもよい。
ナノ粒子の分散液には、必要に応じて、界面活性剤などを添加してもよい。これにより、ナノ粒子の分散性を向上させることができる。また、ナノ粒子の分散液に、添加剤として上述した極性溶媒、例えばPGMEなどのプロピレングリコール系の溶剤を添加してもよい。これによって、ナノ粒子の分散液の第一又は第二の接着剤層への濡れ性を向上させてもよい。
分離層2を形成するための方法としては、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布などを挙げることができる。また、第一又は第二の接着剤層の上にナノ粒子の分散液を塗布した後、ナノ粒子の分散液を加熱することによって、分散媒を除去することが好ましい。
〔第二接着剤層積層工程〕
第二接着剤層積層工程では、上記第二の熱可塑性樹脂を含んだ上記第二の接着剤層3を積層する。ここで、第二の接着剤層3は、第二の熱可塑性樹脂を含んだ接着剤を、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布などにより塗布することで形成することができる。また、第二の接着剤層3を塗布した後、第二の接着剤層3を加熱することによって、第二の接着剤層3から溶剤を除去することが好ましい。なお、第二の接着剤層3を加熱する条件は、第二の熱可塑性樹脂を溶解する溶剤の種類及び溶剤の量に応じて、適宜調整すればよい。
第二の接着剤層3の膜厚は、貼り付けの対象となる基板20及びサポートプレート30の種類、貼り付け後の基板20に施される処理などに応じて適宜設定すればよいが、上記〔第二の接着剤層〕の項に記載したように、10μm以上、200μm以下の範囲内となるように形成すればよい。
なお、第一の接着剤層1及び第二の接着剤層3において、同じ熱可塑性樹脂を含む接着剤を用いる場合、まず、第一の接着剤層及び第二の接着剤層に用いる接着剤を調製し、次に当該接着剤の濃度を希釈により調整してもよい。これにより、第一及び第二接着剤積層工程における接着剤層を積層するためのプロセスを簡易化するとこができる。
<接着方法>
図1の(b)を用いて、本発明の一実施形態に係る接着方法についてより詳細に説明する。
図1の(b)に示すように、一実施形態に係る接着方法では、基板20と、光を透過するサポートプレート(支持体)30とを接着する接着方法であって、本発明の一実施形態に係る接着剤積層体10の上記第一の接着剤層1に、上記サポートプレート30を接着する第一接着工程と、上記接着剤積層体10の上記第二の接着剤層3に、上記基板20を接着する第二接着工程と、を包含している。
本発明に係る接着方法は、一例として、本発明に係る接着フィルムを用いることによって実施することができる。
〔第一接着工程〕
図1の(b)に示すように、一実施形態に係る接着方法では、接着剤積層体10における第一の接着剤層1にサポートプレート30を接着する。これによって後の分離工程において、サポートプレート30と膜厚の薄い第一の接着剤層1とを透過して分離層2に光を照射することができる。
第一接着工程では、接着フィルムが備える保護フィルムを剥離し、第一の接着剤層1をサポートプレート30に貼り付ければよい。その後、接着フィルムにおける離型性を備えたフィルム上から加熱ローラを移動させることにより、接着剤積層体10をサポートプレート30の表面に熱圧着させるとよい。このとき、接着フィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラなどのローラでロール状に巻き取れば、保存して再利用することが可能である。
〔第二接着工程〕
図1の(c)に示すように、第二接着工程では、上記接着剤積層体10の上記第二の接着剤層3に、上記基板20を接着する。これより、基板積層体50を形成することができる。
第二接着工程では、本実施形態に係る接着フィルムが備える離型性を備えたフィルムを剥離し、第二の接着剤層3を基板20に貼り付ければよい。その後、例えば、真空条件下において、基板積層体50を加熱しながら、基板積層体50に押圧力を加えることによって基板積層体50を形成すればよい。ここで、加熱条件は、第一及び第二の接着剤層に用いられる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜調整すればよい。また、基板積層体50に加える押圧力は、基板積層体の大きさに応じて適宜調整すればよい。
これによって、接着剤積層体10における第二の接着剤層3は、基板20に回路による段差が形成されていても、当該基板20の回路による段差を第二の接着剤層3によって埋め込むことができる。このため、サポートプレート30と基板20とを接着剤積層体10によって好適に接着することができる。
なお、本発明に係る接着方法は、接着フィルムを用いて基板20とサポートプレート30とを接着する方法に限定されない。つまり、本発明に係る接着方法は、基板又はサポートプレート上に直接、接着剤積層体10を形成することにより実施してもよい。
(他の工程)
第二接着工程を行なった後、基板積層体50における基板20を、グラインダなどによって所望の厚さまで薄化し、続いて、フォトリソグラフィー工程などにより、基板20の表面に所望の回路を形成すればよい。ここで、基板20とサポートプレート30とは、本発明に係る接着剤積層体10によって接着されているため、これらの工程により分離層2が破損することを防止することができる。
<分離方法>
図1の(d)に示すように、本発明の一実施形態に係る分離方法は、本発明に係る接着方法によって接着された基板20とサポートプレート30とを分離する方法であって、上記サポートプレート30と上記基板20とを接着した上記接着剤積層体10の上記分離層2に上記サポートプレート30を介して光を照射することで、上記サポートプレート30と上記基板20とを分離する分離工程を包含している。
これにより、基板積層体50に大きな力を加えなくても、基板20とサポートプレート30とを好適に分離することができる(図1の(e))。従って、サポートプレート30と基板20とを分離するときに、基板20が破損することを防止することができる。
〔分離工程〕
一実施形態に係る分離工程では、サポートプレート30を介して、接着剤積層体10の分離層2に光を照射する。
分離工程において、ナノ粒子を含む分離層2に照射する光としては、上記ナノ粒子が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザなどの固体レーザ、色素レーザなどの液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザなどの気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザなどのレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
また、上記分離工程において、上記サポートプレート30を介して上記分離層2に照射する上記光の波長は、250nm以上、11000nm以下の範囲内であることが好ましく、300nm以上、1100nm以下の範囲内であることがより好ましく、380nm以上、750nm以下の範囲内であることが最も好ましい。サポートプレート30を介して上記分離層2に照射する上記光の波長が、250nm以上、11000nm以下の範囲内であれば、ナノ粒子を含む分離層2を好適に変質させることができる。これにより、基板20とサポートプレート30とを好適に分離することができる。
また、一実施形態に係る分離方法では、分離工程において、サポートプレート30を介して分離層2に照射する光の波長は、可視光線(380nm以上、750nm以下)の範囲内であることがより好ましい。これにより、放射エネルギーを照射することで分離層2を分解する場合よりも、基板20とサポートプレート30とを分離するときに発生するパーティクルの発生を抑制することができる。
<洗浄方法>
図1の(f)に示すように、本発明の一実施形態に係る洗浄方法は、本発明の一実施形態に係る分離方法によってサポートプレート30から分離された基板20を洗浄する方法であって、上記分離工程の後、上記基板20を炭化水素系溶剤Sによって洗浄する洗浄工程を包含している。
これにより、サポートプレート30から分離した基板20における、接着剤及び分離層の残渣を好適に除去することができる。また、洗浄工程において炭化水素系溶剤を用いることによって、エラストマー及び炭化水素系樹脂などを含んだ高い耐熱性を備えた接着剤層の残渣であっても好適に除去することができる。
〔洗浄工程〕
洗浄工程では、基板20を炭化水素系溶剤Sによって洗浄する。洗浄工程では、基板20をスピンさせつつ、スプレー又はディスペンスノズルなどによって基板20に炭化水素系溶剤Sを供給することで基板20を洗浄してもよい。また、炭化水素系溶剤Sに基板20を浸漬することで基板20を洗浄してもよい。
(炭化水素系溶剤)
洗浄工程において用いられる炭化水素系溶剤としては、上記(希釈溶剤)の項において説明した、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、環状炭化水素、テルペン系溶剤などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、本実施形態に係る洗浄方法では、上記炭化水素系溶剤のうち、テルペン系溶剤であるp−メンタン、環状炭化水素であるデカヒドロナフタレンなどを用いることが特に好ましい。ここで、p−メンタン、デカヒドロナフタレンなどは、シス体及びトランス体の比率を調整することによって、接着剤の溶解速度を調整することができる。例えば、p−メンタンのトランス体の比率をシス体の比率より高くすることにより、p−メンタンによる接着剤の溶解速度をより速くすることができる。これにより、p−メンタンの接着剤に対する洗浄性をより高くすることができる。
また、炭化水素系溶剤は、例えば、蒸留などによって炭化水素系溶剤の沸点よりもさらに沸点の高い不純物を除去することが好ましい。これにより、接着剤を洗浄により除去したときに、基板20に高沸点の不純物が残渣として残ることを防止することができる。
<基板積層体>
図1の(c)に示すように、本発明の一実施形態に係る基板積層体50は、光を透過するサポートプレート(支持体)30と、本発明の一実施形態に係る接着剤積層体10と、基板20と、がこの順に積層されている構成である。
上記構成によれば、基板積層体50は、分離層2にナノ粒子を含むことができる。このため、基板積層体50は、高い接着性及び耐熱性を備えることができる。また、基板積層体50の基板20に所望の処理を行なうときに分離層2が破損することを防止することができる。さらに、サポートプレート30から基板20が剥がれることを防止することができる。また、基板積層体50の分離層2は熱可塑性樹脂を含まない。このため、基板20とサポートプレート30とを分離した後、基板20を洗浄液により洗浄したときに、基板20に付着した分離層と接着剤層との残渣を好適に除去することができる。また、基板積層体50が備えている分離層2は可視光線によって好適に変質させることができるため、放射エネルギーを照射することで分離層を分解する場合よりも、基板20とサポートプレート30とを分離するときに発生するパーティクルの発生を抑制することができる。
また、基板積層体50が備えている接着剤積層体10の接着剤層には第一及び第二の熱可塑性樹脂を用いられている。このため、光硬化型接着剤を用いた場合よりも、基板20とサポートプレート30とを分離した後の接着層の残渣を洗浄によって好適に除去することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔接着剤組成物の調製〕
まず、実施例1〜14及び比較例1〜3に使用した接着剤組成物A〜C及びGの調製を行なった。各接着剤組成物に使用した樹脂、添加剤、主溶剤及び添加溶剤を、以下の表1に示す。
接着剤組成物A〜C及びGに用いた樹脂は、株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSeptonV9827(SEBS:スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー)、Septon2002(SEPS:スチレン−イソプレン−スチレンブロック)、ポリプラスチック株式会社製のTOPAS(商品名)TM(シクロオレフィンコポリマー;エチレン−ノルボルネンのコポリマー、Mw=10,000、Mw/Mn=2.08、ノルボルネン:エチレン=50:50(重量比))、旭化成株式会社製のタフテック(商品名)H1051(SEBS;水添スチレン系熱可塑性エラストマー;スチレン含有量42%、Mw=78,000)である。
さらに、接着剤組成物A及びCでは、アクリル系樹脂として、A1(Mw=10,000)を用いた。
A1は、下記の構造を有するランダム重合体である(式中、l/m/n=60/20/20)。
また、熱重合禁止剤(添加剤)としては、BASF社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。また、主溶剤としては、デカヒドロナフタレンを用いた。また、添加溶剤としては、酢酸ブチルを用いた。
まず、上述した樹脂、添加剤、主溶剤及び添加溶剤を用いて、接着剤組成物Aを調製した。具体的には、デカヒドロナフタレン200重量部に対して酢酸ブチル15重量部を配合した溶剤に、70重量部のSeptonV9827(株式会社クラレ製)、20重量部のTOPAS TM(ポリプラスチック株式会社製)、及び10重量部のA1を溶解させ、添加剤としてIRGANOX1重量部、及び、添加溶剤として酢酸ブチル15重量部を添加して30%濃度の接着剤組成物Aを調製した。その後、接着剤組成物Aをデカヒドロナフタレンにより15%濃度にまで希釈した。
他にも、上述した樹脂、添加剤、主溶剤及び添加溶剤を用いて、接着剤組成物B及びCをそれぞれ調製した。また、接着剤組成物Gには、顔料として酸化ニッケルナノ粒子を配合した。接着剤組成物A〜C及びGの組成を以下の表1に示す。
〔分離層組成物の調製〕
次に、実施例1〜14並びに比較例1及び3に使用した分離層組成物D〜F、H及びIを調製した。各分離層組成物に使用した顔料、主溶剤、及び添加剤を、以下の表2に示す。なお、透過率(532nm)は分光光度計(UV3100PK、島津製作所製)により測定し、熱分解500℃重量減少は熱重量測定装置(セイコーインスツルメント社製、製品名「TG−DTA6200」)を用いて500℃における重量減少割合を測定した。
まず、表2に示す組成を有する分離層組成物Eを調製した。具体的には、濃度が43%の酸化コバルトナノ粒子(平均粒子径37nm)の純水分散液を酸化コバルトの濃度が17.2%になるように純水で希釈した。次に、当該17.2%の濃度の酸化コバルトナノ粒子の純水分散液100重量部に、PGMEを15重量部配合し、ソフタノール120(株式会社 日本触媒社製)を1%となるように配合し、顔料濃度15%の分離層組成物Eを調製した。また、分離層組成物Dは濃度が35%の酸化ニッケルナノ粒子の純水分散液を酸化ニッケルの濃度が17.2%になるように純水で希釈し、Fは濃度が26%の酸化マンガンナノ粒子の純水分散液を酸化マンガンの濃度が17.2%になるように希釈したこと以外は、分離層組成物Eと同様の手法で分離層組成物D及びFを調製した。分離層組成物Hは金属酸化物 TMブラック#9550(大日精化工業株式会社製)を、分離層組成物Iはカーボンナノチューブ(長さ:1μm、東京化成工業株式会社製)に対してそれぞれPGMEを配合し顔料濃度15%に調製した。
〔接着剤積層体の作製〕
以下の手順により、実施例1の接着剤積層体を作製した。接着剤積層体は、アプリケーターによって25cm×30cmの面積になるように作製した。
まず、ベースフィルムである離型剤付きPETフィルムに、最終膜厚が50μmになるように30%濃度の接着剤組成物Aを塗工し、90℃にて10分間及び145℃にて10分間、オーブンを用いてベークした(第二接着剤層積層工程)。次に、最終膜厚が10μmになるように分離層組成物Dを塗工し、90℃にて10分間及び145℃にて10分間、オーブンを用いてベークした(分離層形成工程)。次に、最終膜厚が5μmになるように15%濃度の接着剤組成物Aを塗工し、90℃にて10分間及び145℃にて10分間、オーブンを用いてベークした(第一接着剤層積層工程)。
他にも、以下の表3に示す条件で実施例2〜14及び比較例1〜3の接着剤積層体を作製した。なお、実施例2〜14では、第二接着剤層積層工程、分離層形成工程、第一接着剤層積層工程の各工程において、オーブンによるベークを、いずれも、90℃にて10分間及び145℃にて10分間の条件で行なった。なお、比較例1の接着剤積層体は、第二の接着剤層を備えない構成であり、比較例2の接着剤積層体は、分離層に接着剤組成物を配合した構成である。また、比較例3の接着剤積層体は、分離層組成物に平均粒子径が500μmの粒子を用いた構成である。
〔基板積層体の作製〕
以下の手順により、実施例1の接着剤積層体を作製した。
100℃、0.2MPaの条件において、ラミネーターを用いて0.5m/minの速度で直径200mmのガラスに実施例1の接着剤積層体をラミネートし、次に、ベースフィルムを剥離した。これにより、ガラスサポートプレート上に実施例1の接着剤積層体を形成した。その後、真空条件において、200℃にて5分間、実施例1の接着剤積層体を形成したガラスサポートプレートをベークした。次に、実施例1の接着剤積層体が形成されたガラスサポートプレートと8インチの半導体ウエハ基板とを重ね合わせ、真空条件を維持した状態において215℃、4000kgの条件で5分間、押圧力を加えた。これにより、実施例1の基板積層体を作製した。また、実施例2〜14及び比較例1〜3の基板積層体も同じ条件により作製した。
〔基板積層体の評価〕
上記により作製された実施例1〜14及び比較例1〜3の基板積層体について以下の評価を行なった。
(貼付性)
基板積層体の作製時において、半導体ウエハ基板とガラスサポートプレートとの間に貼付不良がないものを「○」とし、貼付不良があるものを「×」として、目視により評価を行なった。
(研削性)
DISCO社製バックグラインド装置にて、基板積層体における半導体ウエハ基板の裏面を、厚さが50μmになるまで薄化処理を行なった。その後、ウエハ基板のエッジ部に剥れ又はチッピングがないかを顕微鏡により評価し、剥れ又はチッピングがないものを「○」とし、剥れ又はチッピングがあるものを「×」とした。
(耐熱性)
研削性評価を行なった基板積層体の半導体ウエハ基板に、真空条件下、200℃において10分間、プラズマCVD処理を行なった。その後、基板積層体のエッジ部における接着剤のはみ出し、又はウエハ基板と接着剤積層体の間における未接着部分の有無を評価し、はみ出し又は未接着部分がないものを「○」とし、はみ出し又は未接着部分があるものを「×」とした。
さらに、プラズマCVD処理を行なった基板積層体を、N2雰囲気下、260℃の条件で10分間、オーブンによるベークを行なった。その後、基板積層体のエッジ部における接着剤のはみ出し、又はウエハ基板と接着剤積層体の間における未接着部分の有無を評価し、はみ出し又は未接着部分がないものを「○」とし、はみ出し又は未接着部分があるものを「×」とした。
(レーザ分離性)
耐熱性評価を行なった基板積層体に、532nmの波長のレーザ照射を行ない、サポートプレートと半導体ウエハ基板との分離性の評価を行なった。レーザ照射によって、サポートプレートと基板とを分離することができれば「○」とし、分離することができなければ「×」とした。
(洗浄性)
レーザ分離性評価を行なった基板積層体のウエハ基板を、p−メンタンを洗浄液として用いてスピン洗浄を行なった。その後、接着剤又は分離層の残渣の有無を評価し、残渣がないものを「○」とし、残渣があるものを「×」とした。
(結果)
実施例1〜14及び比較例1〜3の基板積層体における、貼付性、研削性、耐熱性、レーザ分離性、及び洗浄性の評価結果を以下の表4に示す。
表4に示すように、実施例1〜14の接着剤積層体を用いた基板積層体では、基板に対して薄化処理、CVD処理、加熱処理などの所望の処理を行なっても、ウエハ基板の剥れなどを生じることはなかった。また、分離工程においてレーザを照射することによって、基板とサポートプレートとを好適に分離することができた。さらに、洗浄工程において炭化水素系溶剤であるp−メンタンを用いることによって、接着剤及び分離層の残渣を残すことなく、基板を洗浄することができた。
これに対して、第一の接着剤層を備えていない比較例1の接着剤積層体を用いた基板積層体では、サポートプレートにウエハ基板を十分に貼り付けることができなかった。また、分離層に接着剤組成物を配合した比較例2の接着剤積層体を用いた基板積層体では、洗浄性の評価において、接着剤及び分離層の残渣が残り、不十分な結果となった。また、分離層にナノ粒子を用いていない比較例3の接着剤積層体を用いた基板積層体では、研削性評価において、基板積層体のエッジ部の全周において剥れが発生していた。
上記の結果から、本発明に係る接着剤積層体を用いて基板積層体を作製すれば、基板に所望の処理を行なうときに、サポートプレートから基板が剥がれることを好適に防止することができることが確認された。また、レーザ照射により分離したウエハ基板を、接着剤などの残渣を残すことなく好適に洗浄することができることが確認された。