JP4173324B2 - アクセルペダル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクセルペダルに反力を付加するアクセルペダル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の装置として、特開平11−78595号公報に開示されたものが知られている。この公報記載の装置は、アクセルペダルの回動軸にモータを連結し、車間距離や曲線路の曲率半径などの走行環境に応じた反力をモータを介してアクセルペダルに付加し、走行環境に適した車速の設定を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アクセルペダルはドライバのかかとを支点にして踏み込まれるのに対し、アクセルペダルの回動軸はアクセルペダルよりも上方に設けられるのが一般的である。そのため、足の踏み込みの軌跡とアクセルペダルの回動の軌跡にずれが生じ、アクセルペダルの踏み込み量が変化するとドライバの反力の感じ方も変化し、ドライバが反力を正確に感じることは難しかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によるアクセルペダル装置は、車体に対して回動軸を支点に回動可能に設けられるペダルレバーと、ドライバが踏み込み操作するペダル部材と、ペダル部材の操作量に拘わらず、ペダルレバーを介してペダル部材に自車両もしくは自車両周囲のリスク度に応じた大きさの反力を付加する反力付加装置と、ペダル部材の踏み込み操作量に拘わらず、反力付加装置による反力に対抗してドライバの足裏から前記ペダル部材に作用する力の着力点の位置が一定となるように、ペダル部材をペダルレバーにスライド可能に支持するスライド支持機構とを備え、ペダルレバーにはペダル部材をスライド可能に支持する支持部材が取り付けられ、この支持部材と前記ペダル部材の間に介装され、ペダル部材に押圧して前記ペダル部材のスライドを禁止する押圧部材をさらに備えたものである。
【0005】
【発明の効果】
本発明によれば、ペダルレバーに対してペダル部材を回動可能あるいはスライド可能に設けたので、アクセルペダルの踏み込み量に拘わらず、ドライバの足裏とペダルとの力の着力点を一定に保つことができ、反力付加手段により付加された反力をドライバは正確に感じることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図10を参照して本発明によるアクセルペダル装置の第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置を有する反力制御装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、この反力制御装置1を搭載する車両の構成図である。
【0007】
まず、反力制御装置1の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、先行車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、先行車までの車間距離と相対速度を検出する。検出した車間距離及び相対速度はコントローラ50へ出力される。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg 程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。車速センサ20は、自車両の走行車速を車輪の回転数などから検出し、コントローラ50へと出力する。
【0008】
コントローラ50は、車速センサ20からの自車速と、レーザレーダ10からの車間距離、相対速度入力から、自車前方に走行する先行車両までの接近度合を算出し、現在の自車の走行状況を推定する。さらにその走行状況が将来どのように変化するかを推定して、アクセルペダル反力制御装置60へ反力指令値を出力する。
【0009】
アクセルペダル反力制御装置60は、ストロークセンサ71で検出されたアクセルペダル80の操作量に応じて、アクセルペダル反力を制御するサーボモータ70で発生させるトルクを制御する。サーボモータ70ではアクセルペダル反力制御装置60の指令値に応じて、発生させるトルクを制御してドライバがアクセルペダル80を操作する際に発生する反力を任意に制御することができる。
【0010】
図3は、第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置の構成を示す正面図(a)、側面図(b)および底面図(c)である。アクセルペダル80は、軸受け85を介して車体に回動可能に支持されたペダルレバー81と、ドライバにより踏み込み操作されるペダル部82とを有する。ペダルレバー81の回動軸81aはサーボモータ70の出力軸70aに連結され、サーボモータ70のトルクがペダルレバー81に伝達される。
【0011】
ペダル部材82は、ベースプレート83と、このベースプレート83上に重なり合うペダルプレート84とを有する。ベースプレート83の回動軸83aは、ペダルレバー81の下端部に設けられた軸受け86に回動可能に支持され、ペダルレバー81とベースプレート83のなす角(図9のθa〜θc)が変更可能となっている。ベースプレート83の上面には回動軸83aと直交する方向にレール83bが設けられ、このレール83bを挟むようにペダルプレート84の下面にはブロック84bが設けられている。ペダルプレート84はレール83b、ブロック84bを介してベースプレート83にスライド可能に支持され、ペダルレバー81の回動軸81aからペダルプレート84までの長さSが変更可能となっている。
【0012】
ベースプレート83とペダルプレート84の間にはスライド方向に沿って引張ばね87が介装されている。引張ばね87の端部はベースプレート83とペダルプレート(ブロック84b)にそれぞれ連結され、引張ばね87のばね力によりベースプレート83に対するペダルプレート84の初期のスライド位置が規制されている。また、軸受け86とベースプレート83の回動軸83aの間にはねじりばね88が介装され、ねじりばね88のばね力によりペダルレバー81に対するベースプレート83の初期の回動位置が規制されている。
【0013】
なお、以上では、ペダル部82がペダル部材を、軸受け86が回動支持手段を、レール83bとブロック84bがスライド支持手段を、サーボモータ70が反力付加手段を、ベースプレート83が第1のペダル部材を、ペダルプレート84が第2のペダル部材をそれぞれ構成する。
【0014】
次に第1の実施の形態による反力制御装置1の作用を説明する。概略の作用としては、以下の通りである。
【0015】
コントローラ50は、先行車両までの車間距離や相対速度、および自車両の走行車速といった走行状況を認識し、走行状況に基づいて先行車までの現在の接近度合(第1のリスク度)と、今後予測される先行車両の動向による自車両への影響度合(第2のリスク度)とをそれぞれ算出する。さらに、コントローラ50は、算出された接近度合と予測影響度合とから将来の走行状況(リスクポテンシャルRP)を予測し、リスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル反力指令値ΔFを算出し、アクセルペダル反力制御装置60へ指令値ΔFを出力する。アクセルペダル反力制御装置60は、指令値ΔFに応じてサーボモータ70を制御することにより、アクセルペダル80のストローク−反力特性を変更する。
【0016】
例えば、図4に示すようなストロークS−ペダル反力F特性において、通常状態、つまり反力制御装置1によるアクセルペダル反力制御を行わない場合の反力特性は、アクセルペダル80を踏み込むときと解放するときにヒステリシスを有する網掛け部分で示される。この特性は、アクセルペダル80に装着される戻りばね(例えばアクセルペダル80の回動軸に設けられるねじりばね)の特性により定まる。なお、サーボモータ70のトルク制御によりヒステリシスを発生させることもできる。
【0017】
反力制御時には、この通常状態の反力特性に対し、ペダル反力Fをアクセルペダル反力指令値ΔF分だけ大きく発生させる。これにより、アクセルペダル80の反力Fは、ストローク位置によらずリスクポテンシャルRPに応じたものとなり、現在および今後予測される走行状況をアクセルペダル反力Fを介してドライバに認識させることができる。
【0018】
以下に、このようなアクセルペダル反力制御を行う場合に、どのようにアクセルペダル反力指令値を決定するかについて、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5は、コントローラ50におけるアクセルペダル反力制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)ごとに連続的に行われる。
【0019】
−コントローラ50の処理フロー(図5)−
まず、ステップS110でレーザレーダ10および車速センサ20によって検出された自車速Vf、先行車までの車間距離D、相対速度Vrおよび先行車速Vaといった走行状態を読み込む。
【0020】
ステップS120で、読み込まれた走行状態に基づいて、現在の先行車までの接近度合と、今後の周囲環境変化による自車両への予測影響度合とを算出する。ここでは、先行車までの接近度合として余裕時間TTCを、予測影響度合として車間時間THWを算出する。以下、余裕時間TTCおよび車間時間THWの算出について説明する。
【0021】
余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量である。余裕時間TTCは、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速Vf、先行車速Vaおよび相対車速Vrが一定の場合に、何秒後に、車間距離Dがゼロとなり自車両と先行車両とが接触するかを示す値であり、以下の(式1)により求められる。
【数1】
余裕時間TTC=D/Vr (式1)
【0022】
余裕時間TTCの値が小さいほど、先行車への接触が緊迫し、先行車への接近度合が大きいことを意味している。例えば先行車への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどのドライバが減速行動を開始することが知られている。このように、余裕時間TTCはドライバの運転行動に大きな影響を与えるものであるが、ドライバが感じる先行車との接触へのリスクを余裕時間TTCのみで表すことは困難である。
【0023】
例えば、自車両が先行車に追従して走行している場合、先行車との相対車速Vrは0であり、余裕時間TTCは無限大となる。しかし、車間距離Dが長い場合と短い場合では、ドライバの感じるリスクは異なり、ドライバは車間距離Dが短い場合により大きなリスクを感じる。これはドライバが、想定される将来の先行車の車速変化による余裕時間TTCへの影響量を予測し、その影響が大きいと認識している場合には、より大きなリスクを感じているためであると考えられる。
【0024】
また、(式1)より算出した余裕時間TTCは、相対速度Vrを一定と仮定したが、実際にはΔt秒後の相対速度Vrは変化している可能性がある。例えば、Δt秒後の先行車速Vaを正確には予測することはできず、図6に示すようにばらつきを持って予測される。ここで、Δt秒後の先行車速V2が現在の先行車速V1よりも遅くなったとすると、これに伴って相対車速Vrが変化し、Δt秒後の余裕時間TTCは相対車速Vrが一定の場合に比べて小さい値となり、ドライバが感じるリスクも高くなる。しかし、これを現在の相対車速Vrに基づいて算出した余裕時間TTCから判断することは難しい。
【0025】
そこで、余裕時間TTCとは別に、自車両が先行車に追従走行している場合に、想定される将来の先行車の車速変化による余裕時間TTCへの影響度合、つまり相対車速Vrが変化すると仮定したときの影響度合を算出する。余裕時間TTCへの予測影響度合を示す物理量として、以下の(式2)、(式3)のいずれかで表される車間時間THWを用いる。
【数2】
車間時間THW=D/Va (式2)
【数3】
車間時間THW=D/Vf (式3)
【0026】
車間時間THWは、車間距離Dを先行車速Vaあるいは自車速Vfで除したものであり、先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す。この車間時間THWが大きいほど、周囲環境変化に対する予測影響度合が小さくなる。つまり、車間時間THWが大きい場合には、もしも将来に先行車の車速が変化しても、先行車までの接近度合には大きな影響を与えず、余裕時間TTCはあまり大きく変化しないことを示す。
【0027】
なお、車間時間THWは将来の先行車の車速変化による影響度合を表す値であるので、先行車速Vaを用いた(式2)の方が、自車速Vfを用いた(式3)に比べて、よりドライバの感じるリスクに合致している。ただし、先行車速Vaは、自車速Vfと相対車速Vrとから算出されるため、車速センサ20によって精度よく検出される自車速Vfを用いた(式2)の方が車間時間THWを正確に算出できる。なお、自車両が先行車に追従している場合は、自車速Vf=先行車速Vaであるため、(式2)=(式3)となる。
【0028】
以上、ステップS120において、余裕時間TTCおよび車間時間THWを算出した。つづくステップS130では、ステップS120で算出した余裕時間TTCと車間時間THWとに基づいて、予測される将来状況(リスクポテンシャルRP)を算出する。リスクポテンシャルRPは、以下の(式4)によって表され、先行車に対する接近度合(1/TTC)と将来状況の予測影響度合(1/THW)とを足し合わせて、連続的に表現される物理量である。
【数4】
RP=a/THW+b/TTC (式4)
【0029】
なお、a、bは、接近度合および予測影響度合にそれぞれ適切な重み付けをするためのパラメータであり、a<bとなるように、適切に設定する。パラメータa、bの値は、例えば、車間時間THW、余裕時間TTCの統計から推定されるa=1,b=8程度に設定することが望ましい。
【0030】
なお、上述した(式1)〜(式3)からわかるように、余裕時間TTCは先行車と自車両の相対速度Vrが一定と仮定したときに、何秒後に先行車に接触するかというリスク度であり、車間時間THWは先行車と自車両の相対速度Vrが将来変化すると仮定したときに、自車両が何秒後に先行車が存在した位置に到達するかというリスク度である。余裕時間TTCおよび車間時間THWはそれぞれ現在の自車速Vf、先行車速Vaおよび相対車速Vrから算出されるが、これらを(式4)を用いて足し合わせることにより、将来予測されるリスクポテンシャルRPを推定することができる。
【0031】
リスクポテンシャルRPにより、先行車への追従走行中から先行車への接近中まで、連続的な状況変化に対応して、その状況における接近度合を表現することができる。つまり、リスクポテンシャルRPが大きいほど、ドライバは将来先行車に接近しすぎてしまうかもしれないというリスクを大きく感じていると判断できる。
【0032】
図7に、(式4)で算出されるリスクポテンシャルRPを、車間時間THW−余裕時間の逆数(1/TTC)平面内における、リスクポテンシャルRP値毎の等高線として示す。図7において、横軸は車間時間THW、縦軸は余裕時間TTCの逆数(1/TTC)であり、横軸を右へいくほど、自車両が先行車から離れて走行していることを示し、縦軸を上へ行くほど自車両が先行車に接近し、下へ行くほど先行車から離脱していることを示す。図7において、リスクポテンシャルRPの等高線はそれぞれ右上から左下へなめらかな曲線を描いており、それぞれの等高線の間で、リスクポテンシャルRPの値は連続的に変化している。なお、車間時間THWが小さく、余裕時間の逆数1/TTCが大きい図7の左上ほど、リスクポテンシャルRPの値が高くなっている。つまり、先行車に接近し、その接近度合が高いほど、リスクポテンシャルRPが高い値を示している。また、接近度合1/TTCが同じ値でも、車間時間THWが短くなるほどリスクポテンシャルRPの値は高くなる。
【0033】
ステップS140では、ステップS130で算出されたリスクポテンシャルRPの値に基づいて、以下の(式5)によりアクセルペダル反力指令値ΔFを算出する。
【数5】
ΔF=K・RP (式5)
ここで、Kは適切に定められた定数である。
【0034】
図7に示すように、あらゆる車間時間THWおよび接近度合1/TTCの走行状況において、リスクポテンシャルRPは連続的に示される。(式5)を用いてアクセルペダル反力指令値ΔFを算出し、リスクポテンシャルRPに応じてアクセルペダル反力を制御することにより、先行車への接近度合を連続的にドライバに認識させることが可能となる。
【0035】
つづくステップS150で、ステップS140で算出されたアクセルペダル反力指令値ΔFを、アクセルペダル反力制御装置60へと出力し、今回の処理を終了する。
【0036】
上述したステップS130においては、(式4)を用いて現在の接近度合(1/TTC)と予測影響度合(1/THW)にそれぞれ重み付けをして加算し、リスクポテンシャルRPの値を算出した。これにより、現在の接近度合あるいは予測影響度合が変化した場合でも、リスクポテンシャルRPは連続的に表され、リスクポテンシャルRPの値に応じて設定されるアクセルペダル反力を連続的に変化させることができる。運転者は連続的になめらかに変化するアクセルペダル反力によって走行状況の変化を正確に認識することができる。
【0037】
なお、リスクポテンシャルRPは、以下に示す(式6)によって算出してもよい。
【数6】
RP=max{a/THW、b/TTC} (式6)
【0038】
ここでは、(式6)に示すように、先行車に対する接近度合(TTCの逆数)と将来状況の予測影響度合(THWの逆数)のうち、大きい方の値を選択してリスクポテンシャルRP値とする。なお、a、bは接近度合および予測影響度合にそれぞれ重み付けをするためのパラメータであり、例えばa=1,b=8程度として、a<bとなるように適切に設定する。これにより、先行車への追従走行中から接近中まで連続的な状況変化に対応して、その状況における先行車への接近度合を表現することができる。
【0039】
図8に、(式6)で算出されるリスクポテンシャルRPを、車間時間THW−余裕時間の逆数(1/TTC)平面内における、リスクポテンシャルRP値毎の等高線として示す。図8において、図7と同様に横軸は車間時間THW、縦軸は余裕時間TTCの逆数(1/TTC)である。図7に示すように、上述した(式4)を用いてリスクポテンシャルRPを算出する場合、相対速度Vrがマイナスで、先行車が自車両よりも速く、離脱していくようなときには、車間時間THWが同じ値でもリスクポテンシャルRPが非常に小さくなってしまう。これに伴って、アクセルペダル反力指令値ΔFも非常に小さくなる。
【0040】
一方、(式6)で算出されるリスクポテンシャルRP値は、先行車への現在の接近度合(1/TTC)と、将来状況の予測影響度合(1/THW)のうちの大きい方を選択する。そのため、接近度合(1/TTC)がマイナス、すなわち相対車速Vrがマイナスとなったとしても、リスクポテンシャルRP値は、図8に示すように車間時間THWで決まる所定値以下になることはない。なお、車間時間THWは先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間であり、マイナスの値は示さない。これにより、(式6)を用いてリスクポテンシャルRPを算出した場合には、リスクポテンシャルRP値が変動してアクセルペダル反力が急変してしまうことを防止できる。
【0041】
以上のように本実施の形態に係わる反力制御装置では、先行車への現在の接近度合(余裕時間TTC)と将来予測される周囲環境変化による影響度合(車間時間THW)とを算出し、これらにそれぞれ所定の重みをつけてリスクポテンシャルRPを算出した。そして、リスクポテンシャルRPに比例した力をアクセルペダル反力に付加することにより、実際にドライバが感じるリスク度により近い値に基づいてアクセルペダルの反力を制御することが可能となる。先行車への現在の接近度合が大きい場合(余裕時間TTCが小さい場合)、あるいは将来予測される影響度合が大きい場合(車間時間THWが小さい場合)には、リスクポテンシャルRPは大きくなり、リスクポテンシャルRPに比例した大きなアクセルペダル反力が発生する。これにより、先行車までの接近度合が大きくリスクポテンシャルRPが大きいときには、アクセルペダル80を踏んでいるドライバは、アクセルペダル80を解放する方向へ導かれる。
【0042】
具体的には、アクセルペダル反力が増加することにより、ドライバはその増加分からリスクポテンシャルRPが増加していることを認識し、自らの判断でアクセルペダルを良好な状態へと操作(解放)することができる。また、アクセルペダル反力が増加することにより、アクセルペダルを踏んでいるドライバの足が自然に解放側へと戻され、ドライバがあまり気にしなくてもより良好な状態へと導かれる。さらに、アクセルペダル反力が増加することにより、現在アクセルペダルを踏んでいる状態からさらに踏み込む際に必要な踏力が大きくなるため、ドライバがアクセルペダルをさらに踏み込むことによって自車速が増加し、先行車との車間距離が減少することを抑制することができる。
【0043】
さらに、(式4)を用いて算出したリスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル反力指令値ΔFを決定する場合、リスクポテンシャルRPは図7に示すように連続的に変化する。これにより、先行車への接近度合1/TTCおよび車間時間THWに応じた走行状況を、アクセルペダル反力を介してドライバに連続的に伝達して認識させることができる。また、(式6)を用いてリスクポテンシャルRPを算出する場合、リスクポテンシャルRPは図8に示すように変化する。これにより、先行車が離脱し、接近度合1/TTCが非常に小さくなった場合でも、リスクポテンシャルRPは急変しないので、安定したアクセルペダル反力制御を行うことができる。
【0044】
また、余裕時間TTCおよび車間時間THWは、それぞれ比較的容易に計測可能な自車速Vf、先行車速Va、車間距離D等の物理量を用いて算出することができるので、車両用運転操作捕縄装置に搭載する部品点数の増加を抑制することができる。さらに、リスクポテンシャルRPを算出するためのパラメータa、bを設定する際に、余裕時間TTCのパラメータbを車間時間THWのパラメータaよりも大きく設定することにより、将来の周囲環境の変化による影響度合よりも現在の先行車への接近度合を重視してリスクポテンシャルを算出することができる。
【0045】
次に、図9を用いて、第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置の特徴的な動作を説明する。
図中点aは足裏からペダルプレート84に作用する力の着力点であり、点bはドライバの踏み込み操作の支点(足のかかとに相当)である。図9(a)はアクセルペダルの踏み込み初期位置、図9(b)は中間位置、図9(c)はフルストローク位置にそれぞれ対応する。
【0046】
図9(a)の状態からかかとbを支点にしてペダルプレート84を踏み込むと足裏の角度αは徐々に減少し(αa>αb>αc)、ペダルレバー81は回動軸81aを支点に回動する。このとき、ベースプレート83はペダルレバー81に対して回動し、ベースプレート83とペダルレバー81のなす角θが徐々に小さくなる(θa>θb>θc)。これにより足裏の面とペダルの面を常に一致させることができ、足裏面における着力点aの位置をほぼ一定に保つことができる。その結果、ペダルレバー81の回動軸81aから着力点aまでの長さ、すなわちモーメントアームの長さLがペダル踏み込み量に拘わらずほぼ等しくなり(La=Lb=Lc)、サーボモータ70からの反力Fをドライバは正確に感じることができる。
【0047】
これに対して、もしペダルプレート84が回動不能であれば、図10に示すようにペダルの踏み込みに伴い足裏の面とペダルプレートの面にずれが生じ、着力点aの位置が上方(足のつま先側)に移動する。これによりモーメントアームの長さLが短くなり(La>Lb)、ドライバはサーボモータ70からの反力Fをより大きく感じるようになる。その結果、ドライバにリスクが正確に伝わらず、ドライバは誤ってリスクを感じるおそれがある。
【0048】
さらに本実施の形態ではペダルプレート84を踏み込むと、図9に示すように、ペダルプレート84がベースプレート83に対してスライドし、ペダルレバー81の回動軸81aからペダルプレート84までの長さが徐々に長くなる(Sa<Sb<Sc)。これによりペダルプレート84と足裏の接触点の移動が少なくなり、ドライバは反力Fをより感じやすくなる。この場合、ペダルを回動可能のみとする場合には、ペダルプレート84と足裏の接触点の移動を少なくするためにドライバのかかとの位置(点b)を前後方向にずらさなければならないが、スライド可能とすることでかかとの位置を固定したまま接触点の移動を少なくすることができる。また、ペダルプレート84の上面と足裏との間の剪断力が低減され、サーボモータ70からの反力Fを垂直反力としてドライバに及ぼすことができ、ドライバは反力の変化を感じやすい。
【0049】
本発明の第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置によれば、以下のような効果を奏する。
(1) ペダルレバー81に対してベースプレート83を回動可能に設けるようにしたので、ペダル操作量に拘わらず足裏の面とペダルの面を一致させることができ、着力点aの位置を一定に保つことができる。その結果、リスクポテンシャルRPに応じたサーボモータ70からの反力Fをドライバは正確に感じることができ、リスクを正確に認識することができる。
(2) ベースプレート83に対してペダルプレート84をスライド可能に設けるようにしたので、ペダルと足裏との接触点の移動が少なくなり、剪断力を低減することができる。その結果、ドライバは反力をより感じやすくなる。
(3) ペダルレバー81に対して回動可能にベースプレート83を設け、ベースプレート83に対してスライド可能にペダルプレート84を設けるようにしたので、ペダルプレート84を足裏に密着した状態でドライバは踏み込み操作することができ、サーボモータ70からの反力を一層感じやすくなる。
(4) 2枚のプレート83,84を重ね合わせてペダル部82を形成するようにしたので、ペダルレバー81に対し回動とスライドの2つの自由度を容易に得ることができる。
【0050】
−第2の実施の形態−
図11〜14を参照して本発明によるアクセルペダル装置の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、ベースプレート83に対してペダルプレート84をスライド可能に設けたが、第2の実施の形態では、リスクポテンシャルに応じてペダルプレート84のスライドを禁止する。
【0051】
第2の実施の形態が第1の実施と異なるのはペダル部82にスライド制御アクチュエータを付加した点である。図11は第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置の構成を示す図である。なお、図3と同一の箇所には同一の符号を付し、以下ではその相違点を主に説明する。ベースプレート83には、スライド制御アクチュエータとして直動型のソレノイド89が格納されている。ソレノイド89がオフ(消磁)するとソレノイドピン89aの上端面はペダルプレート84の下面から離間し、ソレノイド89がオン(励磁)するとソレノイドピン89aの上端面はペダルプレート84の下面に当接する。
【0052】
図12は第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置を有する反力制御装置の構成を示すシステム図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付す。図12において、アクセルペダル反力制御装置60は、コントローラ50で算出されたリスクポテンシャルPRに応じた反力指令をサーボモータ70に出力する。さらにアクセルペダル反力制御装置60は、リスクポテンシャルに応じてソレノイド89をオンまたはオフする。
【0053】
図13は、第2の実施の形態に係わるアクセルペダル反力制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。なお、図5と同一の箇所には同一の符号を付し、以下ではそのその相違点を主に説明する。ステップS130でリスクポテンシャルRPを算出するとステップS210に進み、算出したリスクポテンシャルRPが予め定めた所定のリスクポテンシャルRPaより大きいか否かを判定する。RP>RPaと判定されるとステップS220に進み、ソレノイド89をオフする。次いで、ステップS140でリスクポテンシャルRPに応じた反力値ΔFを算出する。一方、ステップS210でRP≦RPaと判定されるとステップS230に進み、ソレノイド89をオンする。
【0054】
なお、以上では、ソレノイド89がスライド禁止手段を、アクセルペダル反力制御装置60がスライド制御手段を、それぞれ構成する。
【0055】
第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置の特徴的な動作を説明する。車両周囲の走行状況の変化によりコントローラ50で算出されるリスクポテンシャルRPが所定値RPaを越えるとソレノイド89はオフする(ステップS220)。これにより図14(a)に示すようにソレノイドピン89aがペダルプレート84の下面から離間し、ペダルプレート84がスライド可能となる。その結果、サーボモータ70からの反力をドライバは正確に感じることができ、自車両のリスクを正しく認識することができる。
【0056】
一方、コントローラ50で算出されるリスクポテンシャルRPが所定値RPa以下になるとソレノイド89はオンする(ステップS230)。これにより図14(b)に示すようにソレノイドピン89aの端部がペダルプレート84の下面に当接し、摩擦力によりペダルプレート84のスライドが禁止される。その結果、ペダルプレート84の操作がペダルレバー81に伝わりやすくなり、アクセルペダルの操作性が向上し、微妙なペダル操作も容易になる。
【0057】
このように第2の実施の形態では、ベースプレート83に直動型のソレノイド89を設け、リスクポテンシャルRPが所定値RPaより大きいときはソレノイド89をオフしてソレノイドピン89aをペダルプレート84から離間させ、リスクポテンシャルRPが所定値RPa以下のときはソレノイド89をオンしてソレノイドピン89aをペダルプレート84に当接させるようにした。これによりリスクポテンシャルRPが大きいときにペダルプレート84のスライドが許容され、ペダルプレート84の回動とあいまってサーボモータ70からの反力をドライバは感じやすくなる。逆に、リスクポテンシャルRPが小さいときはペダルプレート84のスライドが禁止され、アクセルペダルの操作性が向上する。この場合、ペダルプレート84は回動する。
【0058】
本発明の第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置によれば、上述した第1の実施の形態の効果に加えて、さらに以下のような効果を奏する。
(1) ベースプレート83に直動型のソレノイド89を設け、このソレノイドの移動によりペダルプレート84のスライドを禁止するようにしたので、操作性を重視したペダル構成も可能となる。
(2) リスクポテンシャルRPに応じてソレノイド89を移動し、リスクポテンシャルRPが所定値RPa以下のときだけペダルプレート84のスライドを禁止するようにしたので、通常時のペダル操作性を向上しつつ、反力制御時にドライブは適切にリスクを感じることができる。
【0059】
本発明によるアクセルペダル装置は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の変更が可能である。上記実施の形態では、ペダルレバー81に対してペダル部82を回動可能およびスライド可能に設けたが、例えば回動可能のみとする、またはスライド可能のみとすることもできる。したがって、ペダル部材としてのペダル部82はベースプレート83とペダルプレート84から構成されるとは限らない。ペダルプレート84をスライドのみさせる場合、アクセルペダルを踏み込むと足裏の回動に引きずられてペダルプレート84は下方に移動し、図10に示したような着力点aの上方への移動が緩和される。その結果、剪断力を低減するだけでなく、モーメントアームの長さLの変化の抑制にも寄与する。
【0060】
スライド禁止手段として直動型のソレノイド89を用いたが、ソレノイド89以外によりスライドを禁止することもできる。反力付加手段としてサーボモータ70を用いたが、他のアクチュエータを用いて反力を付加することもできる。ねじりばね88によりヒステリシスの特性を得るのではなく、サーボモータの反力制御によりヒステリシスの特性を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置を有する反力制御装置のシステム図。
【図2】図1の反力制御装置を搭載する車両の構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置の構成を示す正面図、側面図および底面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わるアクセルペダルストローク−ペダル反力の関係を示す図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わるアクセルペダル反力制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図6】将来の先行車速のばらつきを示す図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係わる反力制御装置による作用を示す図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係わる反力制御装置による別の作用を示す図。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係わるアクセルペダル装置による作用を示す図。
【図10】回動不能なアクセルペダルを用いた場合の作用を示す図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置の構成を示す正面図、側面図および底面図。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置を有する反力制御装置のシステム図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係わるアクセルペダル反力制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係わるアクセルペダル装置による作用を示す図。
【符号の説明】
50 コントローラ部 60 アクセルペダル反力制御装置
70 サーボモータ 81 ペダルレバー
82 ペダル部 83 ベースプレート
83b レール 84 ペダルプレート
84b ブロック 86 軸受け
89 ソレノイド 89a ソレノイドピン
Claims (2)
- 車体に対して回動軸を支点に回動可能に設けられるペダルレバーと、
ドライバが踏み込み操作するペダル部材と、
前記ペダル部材の操作量に拘わらず、前記ペダルレバーを介して前記ペダル部材に自車両もしくは自車両周囲のリスク度に応じた大きさの反力を付加する反力付加装置と、
前記ペダル部材の踏み込み操作量に拘わらず、前記反力付加装置による反力に対抗してドライバの足裏から前記ペダル部材に作用する力の着力点の位置が一定となるように、前記ペダル部材を前記ペダルレバーにスライド可能に支持するスライド支持機構とを備え、
前記ペダルレバーには前記ペダル部材をスライド可能に支持する支持部材が取り付けられ、
この支持部材と前記ペダル部材の間に介装され、前記ペダル部材に押圧して前記ペダル部材のスライドを禁止する押圧部材をさらに備えることを特徴とするアクセルペダル装置。 - 請求項1に記載のアクセルペダル装置において、
自車両もしくは自車両周囲のリスク度が所定値以下のとき前記ペダル部材のスライドを禁止し、前記リスク度が所定値を越えると前記ペダル部材のスライドを許容するように前記押圧部材を制御するスライド制御手段とを備えることを特徴とするアクセルペダル装置。
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