JP3723358B2 - 光変調装置及び光変調器の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光変調装置及び光変調器の制御方法に係わり、特に、電圧対光出力特性が周期的に変化する光変調器の動作点が温度変化や経年変化により変動しても、該動作点変動を安定に補償できる光変調装置及び光変調器の制御方法に関する。より具体的に言えば、本発明は、時分割多重あるいは波長多重方式の光伝送システムに使用する光送信機におけるマッハッエンダ型光変調器(MZ型光変調器)の動作点案定化制御方式に関するものである。
近年、急激な情報量の増加に伴い、光通信システムの大容量化・長距離化が望まれてきている。現在は、伝送速度 10 Gb/sの光増幅中継システムが実用化されつつある。今後、更なる大容量化が必要とされ、時分割多重(TDM)方式、波長多重(WDM)方式の両面からの研究開発が進められている。
【0002】
【従来の技術】
・直接変調方式
光通信システムにおける電気−光変換回路としては、強度変調−直接検波方式(直接変調方式)が最も簡易な方式である。この方式は、半導体レーザに流れる電流をデータ信号の“0”、“1”により直接オン/オフして光の発光/消光を制御するものである。しかし、レーザ自身を直接オン/オフすると半導体の性質で光信号に波長変動(チャーピング)が生じる。波長変動はデータ伝送速度(ビットレート)が速くなる程、悪影響を与える。これは波長が違うと伝搬速度が変化するという波長分散の性質がファイバにあるためであり、直接変調により波長変動が生じると伝搬速度の遅速が生じ、ファイバを伝搬する間に波形が崩れ、長距離伝送、高速伝送が困難となる。
【0003】
・外部変調方式
このため、2.5G、 10Gbpsの高速伝送では、レーザダイオードを連続的に発光させ、このレーザダイオードから発生した光を外部変調器でデータの”1”,”0”によりオン/オフする外部変調方式が行われている。外部変調器としては、マッハツェンダ型光変調器(MZ型光変調器)が主流を占めている。図32はマッハツェンダ型光変調器の説明図であり、(a)は概略構成図、(b)は変調動作説明図である。
図中、1は1Gbps以上の長距離伝送に用いられる分布帰還型型半導体レーザ(DFB-LD)、2はMZ型光変調器、3a、3bは光ファイバである。MZ型変調器2は透明なLiNbO3基板上に、(1) レーザダイオード1からの光信号を導く入力光導路2aと、(2) 分岐光導路2b,2cと、(3) 変調光を出力する出力光導路2dが形成されると共に、(4) 分岐した両側の光導路2b,2cの光信号に位相変調を与える二つの信号電極2e,2fと、(5) 一方の信号電極2eにNRZの電気駆動信号を入力する信号入力端子2gが形成されている。
【0004】
データの"1", "0"により信号電極2e,2fに印加する電圧を制御すれば、光導路2e、2fに屈折率差が発生して各光導路の光信号間の光波の位相が変化する。例えば、データが"0"であれば、光導路2e、2fの光信号間の光波の位相差が1800になるように制御し、データが"1"であれば、光導路2e、2fの光信号間の光波の位相差が00となるように制御する。このようにすれば、各光導路2e,2fの光信号を重ね合わせることにより入力光をデータの"1", "0"により変調(発光/消光)して出力できる。
MZ型光変調器1の電極間印加電圧と光出力特性は(b)に示すように印加電圧に応じて周期的に変化する特性を有している。Aは発光の頂点、Bは消光の頂点であり、1周期の電圧幅は2Vπである。従って、データが"1"のとき信号電極2e,2f間に振幅Vπの電圧を入力することにより発光し、データが"0"のとき信号電極2e,2間に電圧0を入力することにより消光する。
【0005】
以上のMZ型光変調器は、送信光の波長変動が小さいという利点があるが、基板材質のLiNb03の温度変化、長時間の電界印加、経時変化に伴って、基板自体が分極化し、基板表面に電荷が滞留して信号電極間のバイアス電圧が変動する。このため、MZ型光変調器の電圧対光出力特性が図33の理想曲線aから左右に変動して曲線b,cに示すようになる問題が生じる。すなわち、MZ型光変調器の動作点が時間的に変動(ドリフト)し、光のオン/オフレベルが符号間干渉を起こす問題が生じる。
【0006】
・NRZ変調方式におけるバイアス制御方法
そこで、従来は動作点を安定にするために、曲線が右に移動したらバイアス電圧をその分増加し、曲線が左に移動したらバイアス電圧をその分減少する制御を行っている。すなわち、電気駆動信号に低周波信号を重畳して動作点の変動量及び変動方向を検出し、フィードバックによりバイアス電圧を制御する補償方法(以後Automatic bias control(ABC)方法と呼ぶ)が提案されている(特開平3-251815号公報参照)。図34は現状の変調器動作点補償方法を実現する光変調器動作点安定化回路の構成図、図35は動作点安定化の原理説明図である。
【0007】
図34において、1は半導体レーザ(DFB-LD)、2はMZ型光変調器(LN光変調器)、3a、3bは光ファイバ、4は駆動回路であり、NRZ電気信号(データ信号)を入力され、MZ型光変調器2の電圧対光出力特性の発光の頂点Aとそれに隣接する消光の頂点B間の振幅(=Vπ)を有する電気駆動信号SDを発生するもの、5は低周波数f0例えば1KHz程度の低周波信号を発生する低周波発振器、6は該低周波信号を駆動信号SDに重畳する低周波重畳回路、7は光変調器から出力する光信号を分岐する光分岐器、8は光変調器から出力される光信号を電気信号に変換するフォトダイオード等の受光器(PD)、9はアンプ、10は位相比較器であり、光変調器2から出力する光信号に含まれる周波数f0の低周波信号成分と、該低周波信号成分と低周波発振器5から出力する低周波信号の位相差θを検出して出力するもの、11は位相比較器10の出力信号を整流するローパスフィルタ(LPF)、12は信号電極に印加するバイアス電圧を制御して前記位相差θが零となるようにするバイアス供給回路である。
低周波重畳回路6はMZ型光変調器2の駆動信号を低周波数f0の信号で振幅変調し、受光器8は光変調器2の出力光を電気信号に変換し、位相比較器10は駆動信号に与えた低周波信号と光信号に含まれる低周波信号成分との位相比較を行い、バイアス供給回路12は位相差θが零となるように信号電極に印加するバイアス電圧を制御する。
【0008】
MZ型光変調器の最適な動作点は、駆動信号SDの波形の両レベルが最大及び最小の出力光電力を与える点A,B(図35)である。このとき、MZ型光変調器2の電圧対光出力特性に変動がない理想の状態(曲線a)では、駆動信号SDに低周波数f0の信号SLFが重畳されていても、出力光の上下の包絡線ELU,ELLにはf0成分が含まれず、f0の2倍の周波数成分が現れる。
一方、特性曲線がaからbあるいはcに示すように左または右にずれると(動作点が左右にずれると)、光出力の上下包絡線ELU,ELLが共に同位相で変調された信号となり、かつ、f0成分を含む信号となる。又、特性曲線bと特性曲線cとでは出力光の上下の包絡線ELU,ELLの位相が反転する。
以上より、駆動信号にかけた低周波信号SLFと光信号中に含まれる低周波信号成分の位相を比較することにより、動作点の変動方向を検出することができ、該位相差が零となるようにバイアス電圧制御を行うことができる。
【0009】
・光デュオバイナリ変調方式
時分割(TDM)方式によって大容量化を図る場合、波長分散(GVD)が伝送距離を制御する要因になる。分散耐力はデータ伝送速度(ビットレート)の二乗に反比例するために、10 Gb/sシステムにおいて約800ps/nmであった分散耐力が、40 Gb/sシステムにおいては、1/16の約50 ps/nmと厳しくなる。波長分散による波形劣化を低減する方法の一つとして、光デュオバイナリ変調方式が考えられている (例えば A.J.Price et al.,"Reduced bandwidth optical digital intensity moudulation with improved chromatic dispersion tolerance",Electron.Lett.,vol.31,No.1,pp.58-59,1995)。
【0010】
光デュオバイナリ方式はNRZ変調方式に比べ、光信号スペクトルの帯域幅を約半分にして波長分散による影響を低減する。例えば、10Gb/s NRZ信号における光信号スペクトルの帯域幅は周波数にして10GHz、波長にして0.2nmあるが、10Gb/s デュオバイナリ信号における光信号スペクトルの帯域幅は周波数にして5GHz、波長にして0.1nmと半減する。波長により光の伝搬速度が異なるから光信号スペクトルの帯域幅が大きい程伝搬速度の変化幅が大きくなり、長距離伝送による波形の崩れが大きくなる。従って、光デュオバイナリ方式により光信号スペクトルの帯域幅を小さくできれば速度変動幅が小さくなり分散耐力が増大する。
【0011】
図36は光デュオバイナリ変調方式による変調部の構成図、図37及び図38は光デュオバイナリ変調方式の原理説明図、図39は各部信号波形図である。
図38において、1は半導体レーザ(DFB-LD)、2はMZ型光変調器であり、両側光導路の光信号にそれぞれ位相変調を与える2つの信号電極と各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する駆動信号入力端子を備えている。
21は40Gb/sの2値のNRZ電気入力信号を符号化するプリコーダ、22はプリコーダ出力を40GHzのクロックで打ち抜いて記憶し、非反転信号D及び反転信号*Dを出力するD-FF(D型フリップフロップ)、23a,23bはD-FFの出力位相を調整する位相調整部、24a,24bは振幅調整部、25a,25bはビットレート(=40Gb/s)の1/4程度の帯域を有する電気の低域透過フィルタ、26a,26bはバイアス調整回路(バイアスティ)、27a,27bは終端器である。プリコーダ21によって符号化された2値のNRZ電気入力信号を低域フィルタ25a,25bを透過することで符号が反転した3値の電気信号S1,S2にし、更に、これらをバイアス調整回路26a,26bを通すことで、相補的な3値の電気駆動信号(プッシュプル信号)S1′,S2′を発生してMZ型光変調器2の2つの対称信号電極に印加する。
【0012】
MZ型光変調器2はその電圧対光出力特性より、光のオン・オフに必要な駆動振幅は一般にVπである(図37(b)参照)。しかし、光デュオバイナリ方式においては、2つの信号電極の各々に振幅Vπでプッシュプル変調(両電極に常に逆符号の電圧が印加する変調)を行う。このため、光変調器2の印加電圧は入力信号S1′,S2′の電圧差(=S1′−S2′)になる。すなわち、光デュオバイナリ変調方式において、MZ型光変調器2はVπの2倍の駆動振幅(=2Vπ)で変調される。また、電圧対光出力特性曲線上の二つの発光の頂点A,Aの間で駆動されるように、バイアス電圧(電気信号の中心電圧)が設定される。
【0013】
以下に、光デュオバイナリ変調方式をより詳細に説明する。
プリコーダ21は図38に示すように、入力信号anを反転するノットゲート21aと、1ビット(25ps)遅延ゲート21bと、前回の出力cn-1と今回の反転入力bnの排他的論理和演算を行って信号cnを出力するEX-ORゲート21cで構成されている。反転信号bn、前回のEX-OR出力信号cn-1及び今回のEX-OR出力信号cnの真理値表を参照すると、
(1) bn="0"ならcn=cn-1(符号不変)
(2) bn="1"ならcn=1−cn-1(符号反転)
となる。
【0014】
さて、低域透過フィルタ25aはビットレートの1/4程度(=10GHz)の帯域しか有しない。このため、連続する2ビットの入力信号cnに着目すると、低域透過フィルタ25aは"0,1"あるいは"1,0"と入力データが高速に変化する場合に追従できず、0レベルと1レベルの中間レベル0.5を出力する。又、入力データが"1,1"と連続する場合にはレベル1.0を出力し、入力データが"0,0"と連続する場合にはレベル0.0を出力する。すなわち、低域フィルタ25aは
(4) プリコーダの出力cnが"0"の連続になる場合("00”符号不変)、低域透過フィルタ25aの出力は0.0レベルになる。
(5) プリコーダの出力cnが"1"の連続になる場合("11”符号不変)、低域透過フィルタ25aの出力は1.0レベルになる。
(6) プリコーダの出力cnの符号が反転する場合(“01”又は“10”)、低域透過フィルタ25aの出力は0.5レベルになる。
【0015】
(1)〜(5)より、低域透過フィルタ25aは、プリコーダ出力の符号が変化しなければ、すなわち、入力データanが"1"であれば、出力dnとしてレベル0.0または+1.0を出力し、入力データanが"0"であればレベル+0.5を出力する。同様に、低域透過フィルタ25bは、入力データanが"1"であれば、出力*dnとしてレベル0.0または-1.0を出力し、入力データanが"0"であればレベル-0.5を出力する。従って、レベル±1.0を±Vπ、レベル±0.5を±Vπ/2とすれば、入力データがanが"1"であれば、MZ型光変調器2の信号電極間に2Vπまたは0が入力し、入力データがanが"0"であれば、MZ型光変調器2の信号電極間にVπが入力する。この結果、図37(b)を参照すると、
▲1▼入力データが anが"1"でMZ型光変調器2の信号電極間に2Vπまたは0が入力すると“1”が出力し(発光)、
▲2▼入力データがanが"0"でMZ型光変調器2の信号電極間にVπが入力すると“0”が出力する(消光)。
【0016】
以上より、各低域透過フィルタ25a、25bの出力信号S1,S2の波形は図39(a)に示すようになり、MZ型光変調期2の出力である光信号は図39(b)に示すようになる。
光デュオバイナリ変調方式は、前述のように従来のNRZ変調方式に比べ、光信号スペクトルの帯域幅が約半分になるという特徴があり、波長分散による影響を低減することができる。
また、光デュオバイナリ変調方式によれば波長多重(WDM)方式において、より高密度にチャネルを配置をすることができる。すなわち、波長多重(WDM)技術によって大容量化を図る場合、光増幅器が増幅できる波長帯域幅が制限要因の一つとなる。しかし、光デュオバイナリ変調方式を用いれば、その光信号スペクトルの狭帯域性を利用することができ、光増幅器の増幅帯域幅内に、より高密度にチャネルを配置することができる。
【0017】
また、光デュオバイナリ変調方式においてはプッシュプル駆動のため波長変動(チャーピング)を減少することができる。チャーピングは光変調器の印加電圧が増大及び減小するときに発生し、波長変動方向は逆になる。しかし、光デュオバイナリ変調方式では互いに相補的な電気信号で各電極を駆動するため、一方の電極で印加電圧が増大すると他方の電極で減小し、又、一方の電極で印加電圧が減小すると他方の電極で増大する。出力光信号の光位相は両電極で起きる光位相の和になるためチャーピングが相殺されて減小する。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
MZ型光変調器は前述のように送信光の波長変動が小さいという利点がある。しかし、基板材質のLiNb03の温度変化や経時変化に伴って、電圧対光出力特性の動作点が時間的に変動(ドリフト)するという問題点がある。
このため、光デュオバイナリ変調方式においても、NRZ変調方式と同様に動作点変動に応じてバイアス電圧を制御する必要がある。しかし、NRZ変調方式による動作点補償方式をそのまま光デュオバイナリ方式に適用すると以下の問題が生じる。図40はNRZ変調方式による動作点補償方式をそのまま光デュオバイナリ方式に適用した場合の説明図である。
【0019】
光デュオバイナリ方式ではNRZ変調方式に比べ駆動電圧が2倍になる。このため、電圧対光出力特性が理想特性aの位置かから左右にずれてb,cになると、低周波変調を受けた変調器の電気駆動信号(変調器駆動電圧)のオン側・オフ側部分EU,ELに対応する光信号の包絡線ELU,ELLが互いに逆位相になって打ち消し合い、低周波数f0の信号成分を検出できなくなる。よって、光デュオバイナリ変調方式を含めた、電圧対光出力特性の二つの発光の頂点または二つの消光の頂点の間で駆動する変調方式において、従来のNRZ変調方式で採用したABC制御方法を適用できない問題が生じる。
また、別の問題として、従来のABC制御方法は、片側駆動構成のマッハツェンダ型光変調器を用いることを想定しており、光デュオバイナリ方式やNRZ方式、RZ方式において両側駆動構成の光変調器を用いる場合の動作点設定に関しても考慮する必要がある。
【0020】
以上から本発明の目的は、電圧対光出力特性の二つの発光の頂点間の振幅電圧または二つの消光の頂点間の振幅電圧で光変調器を駆動する光変調装置において、電圧対光出力特性の変動に伴う動作点変動を補償できるようにすることである。
光デュオバイナリ方式やNRZ方式、RZ方式において両側駆動構成の光変調器を用いる場合において、光変調器の電圧対光出力特性が変動しても動作点を適正位置に制御できるようにすることである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明では、電圧対光出力特性が周期的に変化する特性を備えた光変調器を、該電圧対光出力特性の二つの発光の頂点または二つの消光の頂点の間の振幅を有する電気駆動信号で駆動する際、(1) 所定の低周波信号を該駆動信号に重畳し、(2) 光変調器から出力する光信号に含まれる前記低周波信号成分を低周波信号として検出するフォトダイオードにより検出された該低周波信号に基づいて光変調器の動作点変動を検出し、動作点変動の方向に応じて光変調器の動作点を制御する。この場合、光変調器として、光入力側で分岐し、光出力側で結合する光導路と、分岐した両側の光導路の光信号に位相変調を与える二つの信号電極と、各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する二つの駆動信号入力端子を備えた光変調器、例えばMZ型光変調器を使用する。又、該光変調器の電圧対光出力特性の発光の頂点とそれに隣接する消光の頂点の間の振幅を有し、かつ、互いに相補的な2つの駆動信号を発生し、少なくとも一方の駆動信号に低周波信号を重畳して信号電極に入力して両側電極駆動する。
【0022】
低周波信号を駆動信号に重畳する方法としては、
(1) 駆動信号の上下の包絡線の位相が一致するように該駆動信号に低周波信号を重畳する、
(2) 駆動信号の上下の包絡線の振幅が異なるように低周波信号を該駆動信号に重畳する、
(3) 駆動信号の上下の包絡線の周波数が異なるように低周波信号を該駆動信号に重畳する、
(4) 駆動信号の上下の包絡線の位相が異なるように該駆動信号に低周波信号を重畳する、などの方法がある。
【0023】
以上のようにすれば、光変調器から出力する光信号より低周波信号成分を確実に検出でき、しかも、簡単な構成で、変調器の電圧対光出力特性の変動に伴う動作点変動を補償することができる。
【0025】
また、両側駆動構成の光変調器を用いる場合であっても、簡単な構成で、光変調器から出力する光信号より低周波信号成分を検出して、変調器の電圧対光出力特性の変動に伴う動作点変動を補償することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(A)本発明の概略
(a)概略構成
図1は本発明の光変調装置の第1の概略構成図であり、51は半導体レーザ(DFB-LD)、52は電圧対光出力特性が周期的に変化する光変調器(例えばMZ型光変調器)、53は光変調器の電圧対光出力特性の二つの発光の頂点A,Aまたは二つの消光の頂点B,Bの間の振幅2・Vπで駆動する電気駆動信号を生成する駆動信号発生部、54は所定の低周波信号を発生する低周波発振器、55は該低周波信号を駆動信号SDに重畳する低周波重畳部、56は光変調器52から出力される光信号を分岐する光分岐器、57は光変調器から出力される光信号に含まれる前記低周波信号成分を検出し、該低周波信号成分に基づいて光変調器の動作点変動を検出する低周波信号検出部、58は光変調器の動作点変動の方向に応じて該光変調器のバイアス電圧を制御して動作点位置を制御する動作点制御部である。
【0027】
光変調器52を振幅2・Vπの電気信号で駆動する際、低周波重畳部55は駆動信号発生部53から出力する電気駆動信号SDに低周波数信号SLFを重畳する。低周波信号検出部57は、光変調器52から出力する光信号に含まれる該低周波信号成分を検出し、動作点制御部58はこの検出した低周波信号成分に基づいて動作点の変動方向を判別して光変調器52のバイアス電圧を制御する。すなわち、動作点制御部58は変調器に印加する電気駆動信号(変調器駆動電圧)の中心レベルが特性曲線の消光頂点Bのレベルに一致し、電気駆動信号の両側のレベルが特性曲線の二つの発光頂点A,Aに一致するように動作点制御を行う。
【0028】
(b)低周波信号重畳方法
低周波信号を駆動信号に重畳する方法としては、
(1) 駆動信号(入力電気信号)SDの上下の包絡線の位相が一致するように該駆動信号に低周波信号を重畳する第1の方法(図2)、
(2) 駆動信号の上または下のいずれかの包絡線のみ変化するように該駆動信号に低周波信号を重畳する第2の方法(図3)、
(3) 駆動信号の上下の包絡線の振幅が異なるように低周波信号を重畳する第3の方法(図4)、
(4) 駆動信号の上下の包絡線の周波数が異なるように低周波信号を重畳する第4の方法(図5)、
(5) 駆動信号の上下の包絡線の位相が異なるように低周波信号を重畳する第5の方法(図6)、
がある。
【0029】
第1の方法は、図2に示すように、電気駆動信号(変調器駆動電圧)のオン側とオフ側に対応する包絡線EU,ELが同位相になるように低周波変調を行う方法である。MZ型光変調器の最適な動作点は、電気駆動信号の波形の両レベルが最大出力光電力を与える点A,A、中間レベルが最小の出力光電力を与える点Bである。MZ型光変調器2の電圧対光出力特性に変動がない理想の状態(曲線a)では、電気駆動信号に低周波数f0の信号SLFが重畳されても、出力光の上下の包絡線ELU,ELLにはf0成分が含まれず、f0の2倍の周波数成分だけが現れる。
一方、特性曲線がaからb,cに示すように左右にずれると(動作点が左右にずれると)、出力光の上下の包絡線ELU,ELLにf0成分が含まれる。この場合、電気駆動信号のオン側とオフ側の包絡線EU,ELを同位相にしたことにより、図40の場合と異なり、光信号の包絡線ELU,ELLが同位相になる。こにため、f0成分は打ち消されることがなく、確実に検出でき、しかも、出力光の包絡線ELU,ELLの位相は、特性曲線がずれた方向によって反転する。このため、変調器の電圧対光出力特性が理想曲線aから左右にずれて曲線b、cになっても、すなわち、動作点が最適点から変化しても、重畳した低周波数f0の信号成分を検出できる。又、このfO成分の信号の位相は、動作点の変動方向によって180°異なるため、駆動信号に重畳した低周波信号SLFの位相と比較することにより、動作点の変動方向を検出することができる。
【0030】
第2の方法は、図3に示すように、電気駆動信号のオン側のみに低周波変調を行う方法である(オフ側でも良い)。この第2の方法によれば、特性曲線がaからb,cに示すように左右にずれると、出力光の上側の包絡線ELUにのみf0成分が含まれるため確実に低周波信号成分を検出でき、しかも、出力光の包絡線ELUの位相は、ずれた方向によって反転する。このため、変調器の電圧対光出力特性が理想曲線aより左右にずれて曲線b、cになっても、すなわち、動作点が最適点から変化しても、重畳した低周波数f0の信号成分を検出できる。又、このfO成分の信号の位相は、動作点の変動方向によって180°異なるため、駆動信号に重畳した低周波信号SLFの位相と比較することにより、動作点の変動方向を検出することができる。
【0031】
第3の方法は図4に示すように電気駆動信号のオン側とオフ側に対応する包絡線EU,ELの振幅が異なるように振幅変調を行う方法である。電圧対光出力特性曲線がaからb,cに示すように左右にずれると、出力光の上下の包絡線ELU,ELLにf0成分が含まれる。この場合、電気駆動信号のオン側とオフ側の包絡線EU,ELが逆位相であるため、光信号の包絡線ELU,ELLの位相も逆になるが、包絡線EU,ELの振幅が異なるため、光信号の包絡線ELU,ELLの合成信号は0にならず、f0成分を確実に検出できる。しかも、出力光の包絡線ELU,ELLの合成信号の位相は、ずれた方向によって反転する。このため、変調器の電圧対光出力特性が理想曲線aより左右にずれて曲線b、cになっても、すなわち、動作点が最適点から変化しても、重畳した低周波数f0の信号成分を検出できる。又、このfO成分の信号の位相は、動作点の変動方向によって180°異なるため、駆動信号に重畳した低周波信号SLFの位相と比較することにより、動作点の変動方向を検出することができる。
【0032】
第4の方法は図5に示すように電気駆動信号のオン側とオフ側に対応する包絡線EU,ELの低周波変調の周波数f1,f2を異ならせる方法である。電圧対光出力特性曲線がaからb,cに示すように左右にずれると、出力光の上下の包絡線ELU,ELLにf1,f2成分がそれぞれ含まれるため、これら信号成分を確実に検出できる。しかも、出力光の包絡線ELU,ELLの位相は動作点のずれ方向によって反転する。従って、変調器の電圧対光出力特性が理想曲線aより左右にずれて曲線b、cになっても変調器出力光より重畳した周波数f1,f2の信号成分をそれぞれ検出でき、又、これら周波数f1,f2の信号成分の位相は動作点の変動方向によって180°異なるため、動作点の変動方向を検出することができる。
【0033】
第5の方法は図6に示すように、電気駆動信号のオン側とオフ側に対応する包絡線EU,ELの低周波変調の位相を異ならせる方法である。電圧対光出力特性曲線がaからb,cに示すように左右にずれると、出力光の上下の包絡線ELU,ELLにf0成分が含まれる。この場合、電気駆動信号のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの位相をθずらしているため、光信号の包絡線ELU,ELLの合成信号は0にならず、f0成分を確実に検出できる。しかも、出力光の包絡線ELU,ELLの合成信号の位相は、ずれた方向によって反転する。このため、変調器の電圧対光出力特性が理想曲線aより左右にずれて曲線b、cになっても、重畳した低周波数f0の信号成分を検出できる。また、このfO成分の信号の位相は、動作点の変動方向によって反転するため動作点の変動方向を検出することができる。
【0034】
(c)両側駆動型光変調器
以上では光変調器を規定しなかったが、光変調器52として、(1) LiNbO3基板上に形成され、光入力側で分岐し、また、光出力側で結合する光導路52a,52bと、(2) 分岐した両側の光導路の光信号に位相変調を与える二つの信号電極52c,52dと、(3) 各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する二つの駆動信号入力端子52e,52fと、(4) バイアス電圧入力端子52gを備えた両側駆動のLN光変調器(MZ型光変調器)を使用する。
かかる両側駆動の光変調器を使用する場合、駆動信号発生部53は光変調器の電圧対光出力特性の発光の頂点Aとそれに隣接する消光の頂点B間の振幅Vπを有し、かつ、互いに相補的な2つの駆動信号(プッシュプル駆動信号)SD,SD′を発生し、低周波重畳部55は少なくとも一方の駆動信号SDに低周波信号SLFを重畳して信号電極52fに入力し、他方の駆動信号SD′を信号電極52cに入力して両側駆動する。尚、両側駆動型光変調器をNRZ変調方式、RZ変調方式等に用いる場合にも、前述の低周波信号重畳方法を適用できる。
【0035】
(B)実施例
(a)第1実施例
図7は第1実施例の光変調装置の構成図であり、光変調器として両側駆動のLN変調器(MZ型光変調器)を用いると共に、該光変調器に印加する電気駆動信号のオン側とオフ側の包絡線が同位相になるように低周波変調を行う例である。図8は図7の各部の信号波形図である。
図7において、51は半導体レーザ(DFB-LD)、52は電圧対光出力特性が周期的に変化するMZ型光変調器である。このMZ型光変調器52において、52a,52bはLiNbO3基板上に形成され、光入力側で分岐し、また、光出力側で結合する光導路、52c,52dは分岐した両側の光導路の光信号に位相変調を与える2つの信号電極、52e,52fは各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する駆動信号入力端子、52g,52hは信号電極にバイアス電圧を入力するバイアス電圧入力端子である。
【0036】
53は駆動信号発生部であり、光変調器52の電圧対光出力特性(図1参照)の発光の頂点Aとそれに隣接する消光の頂点B間の振幅Vπを有し、かつ、互いに相補的な2つの駆動信号(プッシュプル駆動信号)SD,SD′を発生する。この駆動信号発生部53は、図36のプリコーダ21〜低域透過フィルタ25A,25bまでの回路に相当し、2値の入力データを3値のプッシュプル駆動信号SD,SD′に変換して出力する。駆動信号SDは、入力データが”1”であればVπ又は0、入力データが0であればVπ/2のレベルを有する3値の信号であり、駆動信号SD′は、入力データが”1”であれば−Vπ又は0、入力データが0であれば−Vπ/2のレベルを有する3値の信号である。
【0037】
54は所定の低周波信号SLF、例えば周波数f0=1KHz程度の低周波信号を発生する低周波発振器、55は該低周波信号を一方の駆動信号SDに重畳する低周波重畳回路であり、低周波信号通過用のコイルLと直流カット用のコンデンサC1で構成されている。低周波重畳回路55はバイアスティを用い、光変調器52の入力端で駆動信号SDの中心電圧を周波数f0の低周波信号で変化させている。56はMZ型光変調器52から出力される光信号を分岐する光分岐器、57aは分岐光を電気信号に変換するフォトダイオード等の受光器、57bは受光器出力を増幅する増幅回路、57cは位相比較器であり、低周波発振器54から出力する低周波信号SLFと受光信号に応じた電気信号を入力され、位相比較によって受光信号に含まれる低周波信号を検出し、該検出低周波信号を変調器の動作点変動信号として出力するもの、57dは位相比較器出力を平滑化するローパスフィルタである。受光器57a、増幅回路57b、位相比較器57c及びローパスフィルタ57dは光変調器の動作点変動を検出する図1の低周波信号検出部57を構成する。位相比較の精度を上げるために、増幅回路57bの後段に周波数f0のバンドパスフィルタを挿入することができる。
【0038】
58は光変調器52の動作点変動の方向に応じて信号電極52aに印加するバイアス電圧Vb1を制御して動作点位置を制御するバイアス供給回路(動作点制御部)であり、バイアスティ58aと50Ωの終端器58bで構成されている。バイアスティ58aはバイアス電圧Vb1を光変調器の信号電極52aに供給するためのコイルL及び変調器からの高周波信号を終端器58bに入力するコンデンサCを有している。59は変調器の他方の信号電極52bにバイアス電圧Vb2を供給するL,C構成のバイアスティ、60は終端器、61、62は駆動信号発生部53から出力する駆動信号SD,SD′を光変調器52の各信号電極に入力して駆動する駆動回路である。
第1実施例において光変調器52に印加する変調器駆動電圧の振幅は2・Vπ(電圧対光出力特性の2つの発光の頂点A,A間の電圧)である。このため、駆動回路61,62から出力する互いに反転した振幅Vπの駆動信号(図8の(a),(d)参照)を光変調器52に入力するプッシュプル変調を行う。このプッシュプル変調により光変調信号の波長変動(チャーピング)を零にし、伝送波形劣化を小さくできる。
【0039】
光変調器52の電圧対光出力特性(図1)における横軸電圧は、両電極の電位の絶対値ではなく、両電極の電位差のみに依存している、このため、駆動回路62に対応するバイアス電圧Vb2はバイアスティ59を用いて零(または他の一定電圧)に固定しておき、駆動回路61に対応するバイアス電圧Vb1のみ動作点変動に基づいて制御する(ABC制御)。又、低周波重畳回路55は、駆動回路61から出力する駆動信号のみに低周波発振器54から出力する低周波信号SLF(図8の(b))を用いて低周波振幅変調を行う。
容量C1,C2,C3は、光変調器の信号電極に与えるバイアス電圧をこの位置で遮断するものである。但し、容量C3は低周波信号SLFが透過できるよう、充分大きな値にする必要がある。
【0040】
低周波重畳回路55の出力信号及び駆動回路62の出力信号の中心はそれぞれ信号電極52a,52bのバイス電圧Vb1,Vb2(=0v)に一致するため、その信号波形は図8の(c)および(e)のようになる。この結果、両電極の電位差に相当した図8の(d)-(f)で示した振幅2・Vπを有し、かつ、オン側、オフ側の両包絡線EU,ELが周波数f0の低周波で、しかも、同位相で変調された変調器駆動電圧が光変調器52に印加されることになる。
【0041】
光変調器52の動作点が最適値から変化した場合、光変調器52から出力する光信号中に変化の方向に応じた位相の低周波信号成分が生じるから、以後、該低周波信号成分を打ち消す方向に光変調器のバイアス電圧Vb1を制御する。すなわち、光分岐器56は光変調器52から出力する光信号の一部を分岐し、受光器57aは光信号を光電変換し、増幅回路57bは必要な振幅まで増幅して位相比較器57cに入力する。位相比較器57cは、低周波発振器54から入力する低周波信号SLFと受光信号に応じた電気信号を入力され、位相比較によって受光信号中の低周波信号を抽出してバイアス供給回路58に入力する。バイアス供給回路58は、受光信号中の低周波信号成分が零となる方向にバイアス電圧Vb1を制御する。
以上、図7では駆動回路61のみに低周波重畳を行う方法を示したが、駆動回路61,62から出力する駆動信号に同時に逆位相で同様の低周波振幅変調を行うことも可能である。この場合、図8の(d)-(f)で示す光変調器印加電圧の低周波変調振幅は2倍になる。
【0042】
図9は第1実施例の光変調装置の第1変形例であり、図7と同一部分には同一符号を付している。第1実施例では、光変調器52の入力端で駆動信号SDの中心電圧を周波数f0の低周波信号で変化させているが、信号電極52cに入力するバイアス電圧を周波数f0の低周波信号で変化することもできる。
図9において、第1実施例と異なる点は、
(1) 低周波発振器54の出力とバイアス供給回路58の出力端子を接続してバイアス電圧Vb1を周波数f0の低周波信号で変化する点、
(2) バイアス重畳回路55を介して低周波信号で振幅が変化するバイアス電圧Vb1を光変調器52の信号電極52cに入力している点である。
なお、容量C1,C2,C3は、光変調器の信号電極に与えるバイアス電圧をこの位置で遮断して駆動回路や低周波発振器に入力するの防止するものである。
図9の構成でも各部の信号波形は図10に示すように第1実施例の波形と同じになる。すなわち、振幅2・Vπを有し、オン側、オフ側の包絡線EU,ECが共に周波数f0の低周波で、かつ、同位相で変調された変調器駆動電圧(図10の(d)-(f)参照)が光変調器52に印加する。以後の動作点制御は第1実施例と同じである。
【0043】
図11は第1実施例の光変調装置の第2変形例であり、図7と同一部分には同一符号を付している。第1実施例、第1変形例では、光変調器52における変調信号を与える信号電極とその中心電圧を与えるバイアス電極が共通であったが、電極を駆動信号用とバイアス電圧用に分離して設けることができる。電極を分離することにより、バイアス電圧遮断用の容量C1,C2を省略できる。
図11において、第1実施例と異なる点は、
(1) 低周波発振器54の出力とバイアス供給回路58の出力端子を接続してバイアス電圧Vb1を周波数f0の低周波信号で変化する点、
(2) 電極52c,52dをそれぞれ駆動信号用とバイアス電圧用の電極52c1,52c2;52d1,52d2に分離している点、
(3) 信号用電極52c1,52d1に駆動回路61、62から出力する駆動信号を入力している点、
(4) バイアス重畳回路55を介して低周波信号で振幅が変化するバイアス電圧Vb1を光変調器52のバイアス電圧用電極52c2に入力し、バイアス電圧Vb2(=0)をバイアス電圧用電極52d2に入力し定る点、
(5) 容量C1,C2を削除した点、
である。
【0044】
低周波重畳回路55から出力するバイアス電圧は図8の(c)に示すように低周波信号が重畳した波形となる。又、駆動信号用とバイアス電圧用の電極を別々にした結果、光変調器52には、図12の(a)+(c)-(d)で示す変調器駆動電圧が入力する。この変調器駆動電圧は、振幅2・Vπを有し、オン側、オフ側の包絡線EU,ELが周波数f0の低周波で、かつ、同位相で変調された波形を有している。尚、動作点制御は第1実施例と同じである。
尚、図11では第1変形例(図9)の構成において、電極を駆動信号用とバイアス電圧用に分離した場合であるが、図7の第1実施例の構成において、電極を駆動信号用とバイアス電圧用に分離することもできる。
【0045】
(b)第2実施例
図13は第2実施例の光変調装置の構成図、図14は図13の各部の信号波形図である。第2実施例は第1実施例と低周波信号を重畳する方法が異なるが、図13の第2実施例において図7の第1実施例と同一部分には同一符号を付している。
第1実施例では、光変調器52の入力端に低周波重畳回路55を設け、駆動信号SDの中心電圧を低周波信号で変化させる構成になっているが、第2実施例では駆動回路61,62の利得を低周波信号で変化させることにより、駆動信号を低周波信号で振幅変調する構成になっている。
図13において、51は半導体レーザ(DFB-LD)、52はMZ型光変調器、53は駆動信号発生部で、振幅Vπを有し、かつ、互いに相補的な2つの駆動信号(プッシュプル駆動信号)SD,SD′(図14の(a),(e))を発生する。54は周波数f0の低周波信号SLFを発生する低周波発振器、55′は振幅変調信号発生部で、低周波信号SLFを入力され、位相が1800ずれた2つの振幅変調信号SAM1,SAM2(図14の(c),(f))を発生する。振幅変調信号発生部55′は駆動信号に低周波信号を重畳する低周波重畳手段としての機能を有している。
【0046】
56はMZ型光変調器52から出力する光信号を分岐する光分岐器、57aは受光器、57bは受光器出力を増幅する増幅回路、57cは受光信号に含まれる低周波信号成分を検出し、該低周波信号成分を光変調器52の動作点変動信号として出力する位相比較器、57dは位相比較器出力を平滑化するローパスフィルタ、58は受光信号中の低周波信号成分に基づいて、すなわち、光変調器52の動作点変動に基づいて信号電極52cに印加するバイアス電圧Vb1を制御して動作点位置を制御するバイアス供給回路(動作点制御部)である。61、62は駆動信号発生部53から出力する駆動信号SD,SD′をそれぞれ光変調器52の信号電極52c,52dに入力して駆動する駆動回路であり、ゲイン制御端子を備え、該端子に振幅変調信号発生部55′から振幅変調信号SAM1,SAM2が入力する。容量C1,C2は、変調器の信号電極に与えるバイアス電圧をこの位置で遮断するためのものである。
【0047】
駆動回路61,62に与える振幅変調信号SAM1,SAM2を図14の(c)および(f)に示すように互い反転させることによって、各駆動回路61,62は図14の(d)および(g)に示す駆動信号を出力する。この結果、光変調器52に印加する変調器駆動電圧は両電極52c,52dに与える電位差(図14の(d)-(g))となり、図8の第1実施例と同様の波形となる。従って、以後、第1実施例と同様の動作点制御が行われる。
尚、図14において“1”,“0”は入力電気信号の論理に対応する。プッシュプル駆動のため、駆動信号(d)が“1”の瞬間に駆動信号(g)も“1”になるため、(d)-(g)の包絡線EUはd1-g1となる。同様に、駆動信号(d)が“0”の瞬間に駆動信号(g)も“0”になるため、(d)-(g)の包絡線ELはd0-g0となる。(e)は(a)の反転信号である。
【0048】
図15は第2実施例の光変調装置の変形例であり、図13と同一部分には同一符号を付している。第2実施例では駆動信号を入力する電極とそのバイアス電圧を入力する電極が共通であったが、この変形例では電極を駆動信号用とバイアス電圧用に分離している。電極を分離することにより、信号電極にバイアス電圧が入力しないため、バイアス電圧遮断用の容量を省略できる。
図15において、第2実施例と異なる点は、
(1) 電極52c,52dをそれぞれ駆動信号用とバイアス電圧用の電極52c1,52c2;52d1,52d2に分離している点、
(2) 信号用電極52c1,52d1に駆動回路61、62から出力する駆動信号を入力している点、
(3) バイアス電圧Vb1(=Vb),Vb2(=0)を光変調器52のバイアス電圧用電極52c2に入力し、バイアス電圧Vb2(=0)をバイアス電圧用電極52d2に入力している点、
(4) 容量C1,C2を削除した点、
である。
【0049】
駆動回路61,62に与える振幅変調信号SAM1,SAM2を図16の(c)および(f)に示すように互い反転させることによって、各駆動回路61,62より図16の(d)および(g)に示す駆動信号が出力する。図15の変形例では、駆動信号用とバイアス電圧用の電極を別々にした結果、光変調器52に印加する変調器駆動電圧は両信号電極52c1,52d1に入力する電位差にバイアス電極52c2のバイアス電圧Vb1(=Vb)を加えた値となり、該変調器駆動電圧波形は図16の(d)+(h)-(g)で示すようになり、第2実施例と同様の波形となる。
【0050】
(c)第3実施例
図17は第3実施例の光変調装置の構成図であり、図13の第2実施例と同一部分には同一符号を付している。第2実施例では駆動信号SD,SD′の両方を低周波信号で振幅変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側及びオフ側を同位相の低周波信号で変調する。第2実施例では駆動信号SD,SD′の一方のみ低周波信号で振幅変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側あるいはオフ側の一方のみ低周波信号で変調する。
図17において、図13の第2実施例と異なる点は、周波数f0の低周波信号SLFを振幅変調信号SAM1として駆動回路61のゲイン制御端子に入力し、駆動回路62のゲインは制御していない点である。振幅変調信号SAM1を駆動回路61のゲイン制御端子に入力すると該駆動回路の利得が変化する。この結果、駆動回路61は図18の(c)で示すような駆動信号を出力する。一方、駆動回路62はゲインが一定であるため、バイアス電圧Vb2(=0)を中心とする図18の(e)で示す駆動信号を出力する。この結果、光変調器52に印加する変調器駆動電圧は両電極52c,52dに与える電位差(図18の(c)-(e))となり、図3の原理図で示す波形となる。従って、以後、光変調器52から出力する光信号に含まれる周波数0の低周波信号成分が零となるように動作点制御を行う。
【0051】
(d)第4実施例
図19は第4実施例の光変調装置の構成図であり、図13の第2実施例と同一部分には同一符号を付している。第2実施例では駆動信号SD,SD′を低周波信号SAM1及びその反転信号SAM2でそれぞれ変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側及びオフ側を同位相の低周波信号で変調する。第4実施例では駆動信号SD,SD′を振幅の異なる同一位相の低周波信号SAM1,SAM2により振幅変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側、オフ側を同位相で、振幅の異なる低周波信号で変調する。
【0052】
図19において、図13の第2実施例と異なる点は、
(1) 振幅変調信号発生部55′に変えて、ゲインの異なるアンプで構成した第1、第2の振幅変調信号発生部55a,55bを設け、それぞれに低周波信号SLFを入力した点、
(2) 第1の振幅変調信号発生部55aから出力する振幅変調信号SAM1を駆動回路61のゲイン制御端子に入力し、第2の振幅変調信号発生部55bから出力する振幅変調信号SAM2を駆動回路62のゲイン制御端子に入力した点である。
駆動回路61,62に与える振幅変調信号SAM1,SAM2を図20の(c)および(f)に示すように振幅変えることによって、各駆動回路61,62は図20の(d)および(g)に示す駆動信号を出力する。この結果、光変調器52に印加する変調器駆動電圧は両電極52c,52dに与える電位差(図20の(d)-(g))となり、図4の原理図で示す波形となる。従って、以後、光変調器52から出力する光信号に含まれる周波数0の低周波信号成分が零となるように動作点制御を行う。
【0053】
(d)第5実施例
図21は第5実施例の光変調装置の構成図であり、図13の第2実施例と同一部分には同一符号を付している。第2実施例では駆動信号SD,SD′を同一の低周波信号SAM1及びその反転信号SAM2でそれぞれ変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側及びオフ側を同位相の低周波信号で変調する。第5実施例では駆動信号SD,SD′を周波数の異なる低周波信号SAM1,SAM2により振幅変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側、オフ側を異なる周波数信号で変調する。
【0054】
図21において、図13の第2実施例と異なる点は、
(1) 周波数f1,f2の低周波信号をそれぞれ発生する第1、第2の低周波信号発生器54a,54bを設けた点、
(2) 周波数f1の低周波信号SLF1を振幅変調信号SAM1として駆動回路61のゲイン制御端子に入力し、周波数f2の低周波信号SLF2を振幅変調信号SAM2として駆動回路62のゲイン制御端子に入力している点、
(3) 低周波発振器54a,54bから出力する低周波信号SLF1,SLF2と受光信号に応じた電気信号をそれぞれ入力され、受光信号に含まれる周波数f1,f2の低周波信号成分を検出して出力する第1、第2の位相比較器57c1.57c2を設けた点、
(4) 第1、第2の位相比較器57c1.57c2から出力する信号を平滑化するローパスフィルタ57d1,57d2を設けた点、
(5) 受光信号に含まれる周波数f1,f2の低周波成分の平均値を演算してバイアス供給回路58に入力する平均化回路57eを設けた点、
(6) バイアス供給回路58は前記平均値が零となるようにバイアス電圧を制御する点である。
【0055】
周波数f1の振幅変調信号SAM1を駆動回路61のゲイン制御端子に入力すると該駆動回路の利得が変化し、駆動回路61は図22の(d)で示すような駆動信号を出力する。又、周波数f2の振幅変調信号SAM2を駆動回路62のゲイン制御端子に入力すると該駆動回路の利得が変化し、駆動回路62は図22の(g)で示すような駆動信号を出力する。この結果、光変調器52に印加する変調器駆動電圧は両電極52c,52dに与える電位差(図22の(d)-(g))となり、図5の原理図で示す波形となる。従って、以後、光変調器52から出力する光信号に含まれる周波数f1,f2の低周波信号成分が零となるように動作点制御を行う。例えば、光変調器52のバイアス点が最適値から変化すると、光信号に低周波数f1,f2の両信号成分が現れ、各信号の位相はバイアス点を最適位置に変化させるための制御の方向を与える。そこで、平均化回路57eにおいて両信号成分の平均値を演算し、該平均値が零なるようにバイアス制御を行うことにより、制御の精度を向上することが出来る。
【0056】
(e)第6実施例
図23は第6実施例の光変調装置の構成図であり、図13の第2実施例と同一部分には同一符号を付している。第2実施例では駆動信号SD,SD′を低周波信号SAM1及びその反転信号SAM2でそれぞれ変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側及びオフ側を同位相の低周波信号で変調する。第6実施例では駆動信号SD,SD′を位相の異なる低周波信号SAM1及びその反転信号SAM2でそれぞれ変調し、これにより変調器駆動電圧のオン側及びオフ側を異なる位相の低周波信号で変調する。
【0057】
図23において、図13の第2実施例と異なる点は、
(1) 周波数f0の低周波信号SLFを所定時間Tだけ遅延する第1の遅延回路71を設け、この遅延回路71から出力する遅延信号を振幅変調信号SAM2として駆動回路62のゲイン制御端子に入力する点、
(2) 低周波信号SLFを第1の遅延回路71の遅延時間の半分(=T/2)、遅延して位相比較器57cに入力する第2の遅延回路72を設けた点、
(3) 位相比較器57cは遅延差T/2の遅延回路72から出力する低周波信号と光信号中の低周波信号成分との位相比較をすることによって光変調器におけるバイアス点の変化の方向を検知する点である。
【0058】
低周波信号SLFを反転して得られる振幅変調信号SAM1を駆動回路61のゲイン制御端子に入力すると該駆動回路の利得が変化する。この結果、駆動回路61は図24の(d)で示すような駆動信号を出力する。又、低周波信号SLFの位相をT遅延した振幅変調信号SAM2を駆動回路62のゲイン制御端子に入力すると該駆動回路の利得が変化し、駆動回路62は図24の(g)で示すような駆動信号を出力する。この結果、光変調器52に印加する変調器駆動電圧は両電極52c,52dに与える電位差(図24の(d)-(g))となり、図6の原理図で示す波形となる。従って、以後、光変調器52から出力する光信号に含まれる周波数f0の低周波信号成分が零となるように動作点制御を行う。
例えば、光変調器52のバイアス点が変動すると、その変化方向に応じた位相遅延であって遅延量T/2の低周波信号成分が光信号中に現れる。よって、遅延差T/2の遅延回路72を介して入力する低周波信号と光信号中の低周波信号を位相比較することによって、光変調器におけるバイアス点の変化の方向を検知することができる。
【0059】
(f)第7実施例
図25は第7実施例の光変調装置の構成図であり、図7の第1実施例と同一部分には同一符号を付している。又、各部の信号波形は図8の第1実施例における信号波形と同じになる。
第1実施例では低周波発振器54で発生した周波数f0と同じ周波数成分を光信号中から検出して動作点制御を行ったが、図2〜図6の原理説明図から分かるように、光変調器の動作点が最適値にあるとき、光信号中に周波数f0の2倍(=2・f0)の低周波信号成分が現われ、該信号成分が最大になる。そこで、第7実施例では、光信号中に含まれるこの周波数2・f0の低周波信号成分を検出し、該信号成分が最大になるように動作点制御を行う。
【0060】
図25に示すように、第1実施例の構成に加えて低周波発振器54から出力する低周波信号SLFの周波数f0を2倍にする逓倍器73を設ける。位相比較器57cは逓倍器73から出力する周波数2・f0の低周波信号と光変調器から出力する光信号に応じた電気信号が入力され、位相比較により光信号中に含まれる周波数2・f0の低周波信号を検出し、バイアス供給回路58は該低周波信号成分が最大になる方向に光変調器の信号電極52cに入力するバイアス電圧を制御する。
【0061】
(g)第8実施例
以上の実施例では、光変調器52の電圧対光出力特性の発光の頂点Aとそれに隣接する消光の頂点B間の振幅Vπを有し、かつ、互いに相補的な2つの駆動信号(プッシュプル駆動信号)SD,SD′を発生して両側駆動型光変調器の2つの信号電極に入力し、これにより光変調器に2・Vπの変調器駆動電圧を印加する。しかし、プッシュプル変調により光変調信号の波長変動(チャーピング)を零にし、伝送波形劣化を小さくする目的であれば、必ずしも光変調器に2・Vπの変調器駆動電圧を印加する必要はない。そこで、第8実施例では振幅Vπ/2の互いに相補的な2つの駆動信号SP,SP′を発生して両側駆動型光変調器の2つの信号電極に入力し、これにより光変調器にVπの変調器駆動電圧を印加してNRZ光信号又はRZ光信号を生成する。
【0062】
図26はかかる本発明の第8実施例の光変調器の構成図、図27は各部信号波形図である。図26において、図7の第1実施例と同一部分には同一符号を付している。第8実施例において図7の第1実施例と異なる点は、
(1) 振幅Vπ/2の互いに相補的な2つの駆動信号SP,SP′を発生するプッシュプル駆動信号発生部74を設けた点、
(2) 低周波重畳回路55において、変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの位相が1800ずれるように駆動信号SPに周波数f0の低周波信号を重畳する点(図27の(c)参照)、
(3) 変調器駆動電圧の振幅をVπにし、かつ、該変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの位相が1800ずれるようにした点(図27の(d)-(f)参照)、である。
【0063】
低周波重畳回路55の出力信号及び駆動回路62の出力信号の中心はそれぞれ信号電極52a,52bのバイス電圧Vb1,Vb2(=0v)に一致する。このため、これら出力信号波形は図27の(d)および(f)のようになる。この結果、両電極の電位差に相当した図27の(d)-(f)で示した振幅Vπを有し、かつ、オン側、オフ側の包絡線EU,ELが周波数f0の低周波で、しかも、1800位相差を持って変調された変調器駆動電圧が光変調器52に印加される。
光変調器52の動作点が最適値から変化した場合、光変調器52から出力する光信号中に変化の方向に応じた位相の低周波信号成分が生じるから(図35参照)、以後、該低周波信号成分を打ち消す方向に光変調器のバイアス電圧Vb1を制御する。
以上第8実施例によれば、プッシュプル変調により光変調信号の波長変動(チャーピング)を零にし、伝送波形劣化を小さくでき、しかも、バイアス電圧制御により動作点変動を補償することができる。
【0064】
第8実施例では低周波発振器54で発生した周波数f0と同じ周波数成分を光信号中から検出して動作点制御を行ったが、第7実施例(図25参照)と同様に光信号中に含まれる周波数2・f0の低周波信号成分を検出し、該信号成分が最大になるように動作点制御を行うように構成することもできる。
又、以上では、変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの位相が1800ずれるように駆動信号SPに周波数f0の低周波信号を重畳したが、以下のようにすることもできる。すなわち、
(1) 変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELのいずれかの包絡線のみ変化するように駆動信号に低周波信号を重畳する、あるいは、
(2) 変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの振幅が異なるように駆動信号に低周波信号を重畳する、あるいは、
(3) 変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの周波数が異なるように駆動信号に低周波信号を重畳する、あるいは、
(4) 変調器駆動電圧のオン側とオフ側の包絡線EU,ELの位相が異なるように駆動信号に低周波信号を重畳し、
光信号から低周波数f0と同じ周波数成分を検出して動作点制御を行う。これら動作点制御に際しては、第2実施例〜第6実施例の構成を適用することができる。
【0065】
(h)第9実施例
光変調器の電圧対光出力特性は電圧2・Vπを1周期とする周期性を備えている。従って、光変調器の電圧対光出力特性上の駆動範囲を切り換える機能を光変調装置に付加することができる。
例えば、NRZ変調においてVπの駆動振幅で変調を行う場合、図28(a)に示すようにバイアス電圧をVbAとVbBとの間でVπ分シフトさせる機能を光変調装置に付加し、該バイアス電圧のシフトにより、駆動電圧の範囲をAからBに変化させる。この動作点シフトは、両側駆動の光変調器を用いてNRZ信号、RZ信号を生成する第8実施例の光変調装置(図26参照)にも、そのまま適用できる。
【0066】
また、光ディオバイナリ変調等、2・Vπの駆動振幅で変調を行う場合、図28(b)に示すようにバイアス電圧をVbAとVbBの間で2・Vπ分シフトさせる機能を光変調装置に付加し、該バイアス電圧のシフトにより、駆動電圧の範囲をAからBに変化させる。
以上の動作点切替は、波長変動(チャーピング)を伝送に有利な方向に設定する場合や、電圧対光出力特性曲線の形状が適正な範囲を選択する必要がある場合などに適用でき、外部からの切替信号によって意図的に一定電圧分シフトさせることで実現できる。
【0067】
図29は動作点シフト機能を備えた第9実施例の光変調装置の構成図であり、図7の第1実施例と同一部分には同一符号を付している。
動作点切替回路81は外部からの切替信号CSによってバイアス電圧を一定電圧分シフトし、電圧対光出力特性の駆動範囲を切り替えるものである。
動作点リセット回路82は外部からの動作点リセット信号RSにより、強制的にバイアス点を零に設定しなおすものである。(1) システム運用開始時や、(2) システム運用中のバイアス点ドリフトが大きくなって安定化制御された変調器のバイアス電圧が許容範囲以上に大きくなった場合などにおいて、バイアス点をリセットする必要がある。かかる場合、動作点リセット回路82は外部から入力する動作点リセット信号RSにより、強制的にバイアス点を零に設定する。
【0068】
図29では、動作点切替回路81を一定電圧電源(可変電圧電源でも可)とバイアス供給線を切り換えるスイッチ構成で実現し、又、動作点リセット回路82を接地電位(GND)とバイアス供給線を切り換えるスイッチ構成で実現している。しかし、同様の動作点切替機能、動作点リセット機能を実現できれば他の方法でもよい。又、必要に応じて外部から動作点切替信号CSや動作点リセット信号RSを入力し、その信号に従って、動作点切替回路における動作点切替や、動作点リセット回路における動作点リセットを行う。
尚、図29の動作点シフト及び動作点リセットの構成を図26の第8実施例にそのまま適用することができる。
【0069】
(i)受光器の位置
以上の各実施例においては、光変調器の外部に光分岐部56および受光器57aを設けたが、図30(a)に示すように、受光器37aを光変調器52の LiNbO3基板52i内に内蔵させ、光変調器内に生じる放射光強度を検出することで同様の機能を満たすように構成することもできる(ECOC'97vol.2 pp167-170, Y,Kubota et al.,"10Gb/s Ti;LiNb03 Mach-Zehnder modulator with Built-in Monitor Photodiode Chip")。
すなわち、MZ型光変調器52の消光時、分岐光導路52a,52bを伝搬する1800位相のずれた光が結合しても実際には光エネルギーは消えず、光導路の幅でモードの結合が生じ、余剰モードによる放射光が干渉点から光導路の外側に放射する。この放射光は基板を真上から見ると、図30(b)に示すように分岐光導路52a′の延長線方向に放射する。そこで、該延長線方向の所定の位置に孔HLを掘って受光器57aを埋め込み、該受光器に電気配線を行う。このようにすれば、光分岐器や外部の受光器が不要になり構成を簡略化できる。
【0070】
(j)任意の偏波状態の入力光にも対応する構成
光源と光変調器の間のファイバ引回しが長い場合や定偏波構成になっていない場合などでは、光変調器が任意の偏波に対して変調を行えるように構成する必要がある。図31はかかる場合に対応できるMZ型光変調器の構成例であり、52a,52bは光変調器内で二つに分岐された光導路、52c,52dは各光導路中の光信号を変調するための電気信号が入力される電極、91、92は光導波路の中央部に挿入された半波長板であり、孔を掘って複屈折性を持つ材質を光導路中に埋め込み、その幅を複屈折による偏波モード間の行路差が信号波長のλ/2となるようにする。
【0071】
光変調器の光導路における位相変調の効率は光偏波状態のTEモードよりTMモードが良い。TEモード成分とTMモード成分が混じった任意の偏光が入力された場合、TMモード成分は光導路52a,52bの前半(半波長板の前)で位相変調を受けた後、半波長板91,92によってTEモード成分に変換され、光導路の後半(半波長板の後)では位相変調を受けない。逆に、TEモード成分は導波路の前半で位相変調を受けず、半波長板91,92によってTMモード成分に変換され、光導路の後半において位相変調を受ける。
よって、光導路の前半と後半の各々に、必要とされる位相変調量を得るための電極長等の設計を行うことで、任意の偏光が入射した場合においても変調を行うことが可能になる。
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は請求の範囲に記載した本発明の主旨に従い種々の変形が可能であり、本発明はこれらを排除するものではない。
【0072】
【発明の効果】
以上本発明によれば、電圧対光出力特性の二つの発光の頂点または二つの消光の頂点間の振幅2・Vπを有する電気駆動信号で光変調器を駆動する際、簡単な構成で、光変調器から出力する光信号より低周波信号成分を確実に検出でき、この低周波信号成分を用いて光変調器の電圧対光出力特性の変動、すなわち、動作点変動を補償することができる。又、光デュオバイナリ変調方式において本発明の動作点制御方法を適用することにより、波長分散による影響を低減でき、しかも、プッシュプル駆動のため、波長変動(チャーピング)を減少することができる。
【0074】
又、本発明によれば、両側駆動構成の光変調器を用いる場合であっても、簡単な構成で、光変調器から出力する光信号より低周波信号成分を検出して、変調器の電圧対光出力特性の変動に伴う動作点変動を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光変調装置の原理構成図である。
【図2】本発明の第1の原理説明図(電気駆動信号のオン側/オフ側に同位相の低周波変調を行うもの)である。
【図3】本発明の第2の原理説明図(電気駆動信号のオン側のみに低周波変調を行うもの)である。
【図4】本発明の第3の原理説明図(電気駆動信号のオン側/オフ側に異なる振幅の振幅変調を行うもの)である。
【図5】本発明の第4の原理説明図(電気駆動信号のオン側/オフ側に異なる周波数の低周波変調を行うもの)である。
【図6】本発明の第5の原理説明図(電気駆動信号のオン側/オフ側に異なる位相の低周波変調を行うもの)である。
【図7】第1実施例の光変調装置の構成図である。
【図8】図7の各部信号波形図である。
【図9】第1実施例の光変調装置の第1の変形例である。
【図10】図9の各部信号波形図である。
【図11】第1実施例の光変調装置の第2の変形例である。
【図12】図11の各部信号波形図である。
【図13】第2実施例の光変調装置である。
【図14】図13の各部信号波形図である。
【図15】第2実施例の光変調装置の変形例である。
【図16】図15の各部信号波形図である。
【図17】第3実施例の光変調装置である。
【図18】図17の各部信号波形図である。
【図19】第4実施例の光変調装置である。
【図20】図19の各部信号波形図である。
【図21】第5実施例の光変調装置である。
【図22】図21の各部信号波形図である。
【図23】第6実施例の光変調装置である。
【図24】図23の各部信号波形図である。
【図25】第7実施例の光変調装置である。
【図26】第8実施例の光変調装置である。
【図27】図26の各部信号波形図である。
【図28】変調器のバイアス点切り換えの説明図である。
【図29】第9実施例の光変調装置である。
【図30】受光器を基板内に内蔵する場合の説明図である。
【図31】任意の偏波に対しても変調が可能な光変調器の構成図である。
【図32】マッハツェンダ型光変調器の説明図である。
【図33】光変調器の動作点変動による問題点説明図である。
【図34】NRZ変調方式における光変調器動作点安定化回路の構成図である。
【図35】NRZ変調方式における光変調器の動作点安定化回路の原理図である。
【図36】光デュオバイナリ変調方式の変調部の構成例である。
【図37】光デュオバイナリ変調方式の原理説明図である。
【図38】光デュオバイナリ変調方式の別の原理説明図である。
【図39】光デュオバイナリ変調器の各部信号波形図である。
【図40】NRZ変調方式と同様の方式を光デュオバイナリ変調方式に適用した場合の説明図である。
【符号の説明】
51・・半導体レーザ(DFB-LD)52・・光変調器(例えばMZ型光変調器)
53・・駆動信号発生部
54・・低周波発振器
55・・低周波重畳部
56・・光分岐器
57・・低周波信号検出部
58・・動作点制御部
Claims (16)
- 電圧対光出力特性が周期的に変化する特性を備えた光変調器と、該電圧対光出力特性の二つの発光の頂点または二つの消光の頂点の間の振幅で光変調器を駆動する電気駆動信号を生成する駆動信号生成部を備えた光変調装置において、
所定の低周波信号を発生する低周波発振器、
該低周波信号を、低周波信号成分が前記光変調器から出力される光信号に含まれるように、前記駆動信号に重畳する低周波重畳手段、
前記光変調器から出力される光信号に含まれる前記低周波信号成分を低周波信号として検出するフォトダイオードを備え、該フォトダイオードにより検出された該低周波信号に基づいて光変調器の動作点変動を検出する低周波信号検出手段、
前記光変調器の動作点変動の方向に応じて光変調器の動作点を制御する動作点制御手段を、
備えたことを特徴とする光変調装置。 - 前記光変調器は、
光入力側で分岐し、光出力側で結合する光導路と、分岐した両側の光導路の光信号に位相変調を与える二つの信号電極と、各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する二つの駆動信号入力端子を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の光変調装置。 - 2値のデータ信号を3値の電気信号に変換し、該3値の電気信号を光信号に変換する光デュオバイナリ変調を行うこと、
を特徴とする請求項1又請求項2記載の光変調装置。 - 前記低周波重畳手段は、前記駆動信号の中心レベルを前記低周波信号で変化させることにより駆動信号に低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の光変調装置。 - 前記低周波重畳手段は、前記駆動信号の上下の包絡線の位相が一致するように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4記載の光変調装置。 - 前記低周波重畳手段は、前記駆動信号の上下の包絡線の振幅が異なるように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、を特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の光変調装置。
- 前記低周波重畳手段は、前記駆動信号の上下の包絡線の周波数が異なるように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の光変調装置。 - 前記低周波重畳手段は、前記駆動信号の上下の包絡線の位相が異なるように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の光変調装置。 - 光入力側で分岐し、光出力側で結合する光導路と、両側の光導路の光信号に位相変調を与える二つの信号電極と、各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する二つの駆動信号入力端子を備え、かつ、電圧対光出力特性が周期的に変化する特性を備えた光変調器と、該光変調器の電圧対光出力特性の発光の頂点とそれに隣接する消光の頂点の間の振幅を有し、互いに相補的な駆動信号を発生する駆動信号発生部を備えた光変調装置において、
所定の低周波信号を発生する低周波発振器、
該低周波信号を、低周波信号成分が前記光変調器から出力される光信号に含まれるように、前記駆動信号に重畳する低周波重畳手段、
前記光変調器から出力される光信号に含まれる前記低周波信号成分を低周波信号として検出するフォトダイオードを備え、該フォトダイオードにより検出された該低周波信号に基づいて光変調器の動作点変動を検出する低周波信号検出手段、
前記光変調器の動作点変動の方向に応じて光変調器の動作点を制御する動作点制御手段を、
備えたことを特徴とする光変調装置。 - 前記低周波重畳手段は前記信号電極の少なくとも一方の電極に与える駆動信号に低周波信号を重畳し、
前記動作点制御手段は光変調器の動作点変動に基づいて前記一方の信号電極のバイアス電圧を制御して光変調器の動作点を制御し、
他の信号電極に与える駆動信号の電圧中心をアース電圧に固定する手段を設けた、
ことを特徴とする請求項9記載の光変調装置。 - 電圧対光出力特性が周期的に変化する特性を備えた光変調器を、該電圧対光出力特性の二つの発光の頂点または二つの消光の頂点の間の振幅を有する電気駆動信号で駆動する光変調器の制御方法において、
所定の低周波信号を、低周波信号成分が前記光変調器から出力される光信号に含まれるように、前記駆動信号に重畳し、
前記光変調器から出力する光信号に含まれる前記低周波信号成分を低周波信号として検出するフォトダイオードにより検出された該低周波信号に基づいて光変調器の動作点変動を検出し、
動作点変動の方向に応じて光変調器の動作点を制御する
ことを特徴とする光変調器の制御方法。 - 前記光変調器として、光入力側で分岐し、光出力側で結合する光導路と、分岐した両側の光導路の光信号に位相変調を与える二つの信号電極と、各々の信号電極に相補的な駆動信号を入力する二つの駆動信号入力端子を備えた光変調器を使用し、
光変調器の電圧対光出力特性の発光の頂点とそれに隣接する消光の頂点の間の振幅を有し、かつ、互いに相補的な2つの駆動信号を発生し、それぞれを前記各信号電極に入力する、
ことを特徴とする請求項11記載の光変調器の制御方法。 - 前記駆動信号の上下の包絡線の位相が一致するように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、を特徴とする請求項11又は請求項12記載の光変調器の制御方法。
- 前記駆動信号の上下の包絡線の振幅が異なるように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項11は請求項12記載の光変調器の制御方法。 - 前記駆動信号の上下の包絡線の周波数が異なるように該駆動信号に低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項11は請求項12記載の光変調器の制御方法。 - 前記駆動信号の上下の包絡線の位相が異なるように低周波信号を重畳すること、
を特徴とする請求項11は請求項12記載の光変調器の制御方法。
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- 2001-02-02 US US09/773,660 patent/US6362913B2/en not_active Expired - Lifetime
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