JP3670379B2 - 被印刷体保持装置並びにそれを用いた孔版印刷方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、押圧式孔版印刷において、印刷後、被印刷体から孔版原紙を剥離する際に被印刷体を保持するに好適な被印刷体保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基台と、該基台に一端をヒンジ接続された押圧板と、該押圧板に対向させて基台上に設けられた印刷用紙載置台と、孔版原紙を押圧板と印刷用紙載置台との間に支持する孔版原紙支持手段とを備えてなる手動式の押圧式孔版印刷装置は、簡易な孔版印刷装置として事務用あるいは家庭用に最も普及している。
【0003】
かかる押圧式孔版印刷装置においては、印刷インキが載置された製版済み孔版原紙をその印刷インキ載置面側が押圧板に対向するように孔版原紙支持手段に支持させ、印刷用紙を印刷用紙載置台上に配置し、押圧板を押し下げることによって被印刷体と孔版原紙とを相互に密着させるとともに、該押圧板により孔版原紙上の印刷インキに押圧力を加えて印刷インキを被印刷体に転移させて印刷を行なう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のような押圧式孔版印刷装置を用いて孔版印刷を行う際に生じる一つの不便は、押圧板を孔版原紙に押し付けて印刷インキを被印刷体に転移させた後、孔版原紙を印刷用紙から引き離そうとする際、印刷用紙が印刷インキの粘着性によって孔版原紙に付着したまま印刷用紙載置台から持ち上げられてしまう事である。
【0005】
かかる欠点を解消するために、従来、印刷用紙載置台の印刷用紙載置面をシリコンゴム、ウレタンゴム、生ゴム等の弾性体からなるシートから構成し、その表面を印刷用紙に対して粘着性を有するように粘着処理し、その粘着性によって印刷用紙を印刷用紙載置台上に保持しつつ孔版原紙を剥離できるようにすることも行われている。
【0006】
しかし、この粘着処理されたシートは、印刷を重ねる度に印刷用紙の紙粉等により次第に粘着性が落ちてしまい、結局は印刷用紙が印刷インキの粘着性によって孔版原紙に付着したまま印刷用紙載置台から持ち上げられてしまうようになり、連続的に印刷するには不向きである。
【0007】
また、印刷インキとして熱溶融性インキを使用して印刷を行う時は、熱溶融性インキを溶融させるためのヒーターの温度で印刷用紙載置台が暖められ、この熱の影響で粘着処理されたシートの粘着性が弱まり、結局、印刷用紙が印刷インキの粘着性によって孔版原紙に付着したまま印刷用紙載置台から持ち上げられてしまうという欠点を有する。
【0008】
また、上記粘着性シートの粘着性が高すぎると、印刷後、印刷用紙を印刷用紙載置台から引き剥がす際、印刷用紙が粘着力によって変形しカールしてしまうという欠点も有する。
【0009】
一方、粘着力に依存しない剥離方法として、孔版原紙支持手段と印刷用紙載置台との間に印刷用紙の外周を押さえる枠を設け、印刷時には印刷用紙を押さえるとともに、孔版原紙を印刷用紙から剥離する際には両者のセパレータとして使用することも行われているが、全ベタ等のインキ転移量の多い原稿の場合、印刷面のサイズが大きいと、やはり印刷インキの粘着性によって孔版原紙に付着したまま印刷用紙が印刷用紙載置台から持ち上げられてしまう。また、枠により印刷面全面に印刷することができない。
【0010】
本発明は、連続印刷時や加熱時でも印刷用紙等の被印刷体の保持力が低下せず、印刷面のサイズが大きくても被印刷体の十分な保持力を発揮することができる被印刷体保持装置を提供することにより、孔版印刷後、被印刷体と孔版原紙を容易に剥離できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記目的は、通気性の被印刷体保持面を備えた発泡弾性体からなる被印刷体保持装置であって、該発泡弾性体の前記被印刷体保持面以外の面はその圧縮時に排気専用弁を介した排気を許容される以外気密性とされ、該発泡弾性体が圧縮された後に形状を回復する際、前記被印刷体保持面が被印刷体を吸引保持できるようにしたこと特徴とする被印刷体保持装置によって達成される。
【0012】
すなわち、該被印刷体保持装置を用いることにより、印刷インキが載置された製版済み孔版原紙をその印刷インキ載置面側が孔版原紙押圧手段に対向するように孔版原紙支持手段に支持させ、該孔版原紙と上記被印刷体保持装置との間に被印刷体を配置し、該被印刷体と孔版原紙とを孔版原紙押圧手段と被印刷体保持手段との間に挟持して相互に密着させるとともに、孔版原紙押圧手段により孔版原紙上の印刷インキに押圧力を加えて被印刷体に印刷を行なうことにより孔版印刷を行うことができる。
【0013】
かくして、印刷時、被印刷体は被印刷体保持装置の被印刷体保持面に当接してその通気性を阻害するため、孔版原紙押圧手段の押圧力により被印刷体保持装置は排気専用弁から排気を行なうとともに圧縮され、印刷後、上記押圧力が解除されると、被印刷体保持装置はその弾性により元の形状を回復するように膨張しようとするとともに被印刷体保持面に吸引力が及ぼされる。したがって、被印刷体から孔版原紙を剥離する際、この吸引力によって被印刷体は被印刷体保持面によって保持されるので、印刷インキの粘着性によって被印刷体が孔版原紙に付着して被印刷体保持装置から離れてしまうことがない。
【0014】
本発明の被印刷体保持装置で使用される発泡弾性体は、圧力を加えることにより内部から空気を排出して収縮し、加圧を解除した時に内部に空気を取り込みつつ元の形状を回復するように膨張する空気吸排性の多孔質弾性体であればよく、具体的には、スポンジ、軟質ウレタンフォーム等が挙げられる。
【0015】
本発明の被印刷体保持装置の被印刷体保持面は、被印刷体が当接した時に、その通気性が阻害される輪郭を有するものであれば如何なるものであってもよく、具体的には、被印刷体が印刷用紙等の平面上のものであれば被印刷体保持面は平面であればよく、被印刷体が球状の物体であれば被印刷体保持面は該物体の曲面を収容する湾曲形状を備えるものとすることができる。
【0016】
かくして、本発明の被印刷体保持装置は、各種の押圧式孔版印刷装置において使用できることは明らかである。
【0017】
例えば、基台と、該基台に一端をヒンジ接続された押圧板と、該押圧板に対向させて前記基台上に設けられた印刷用紙載置台と、孔版原紙を前記押圧板と前記印刷用紙載置台との間に支持する孔版原紙支持手段とを備えてなる実公昭57―15814号公報等に記載のような手動式の押圧式孔版印刷装置において、印刷用紙載置台として本発明の被印刷体保持装置を、その被印刷体保持面を前記押圧板に対向させて配置して使用することができる。
【0018】
また、可撓性または弾性の少なくとも何れか一方を備えたダイヤフラムを枠体に張設して構成された壁体を備えた圧力チャンバと、該圧力チャンバを減圧する減圧手段と、該圧力チャンバ内に前記ダイヤフラムに対向させて設けられた印刷用紙載置台と、孔版原紙を前記圧力チャンバ内で前記ダイヤフラムと前記印刷用紙載置台との間に支持する孔版原紙支持手段とを備えてなる特開平6―270523号公報等に記載のような減圧式の押圧式孔版印刷装置において、印刷用紙載置台として本発明の被印刷体保持装置を、その被印刷体保持面を上記ダイヤフラムに対向させて配置して使用することもできる。
【0019】
【発明を実施するための形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体例を説明するが、本発明は該具体例に限定されるものではない。
【0020】
図1及び図2は、本発明の被印刷体保持装置Mを、手動式の押圧式孔版印刷装置の基台10の上に載置した状態で示す斜視図であり、図2は図1のII-II′線に沿った断面図である。
【0021】
図1から明らかなように、本発明の被印刷体保持装置Mは長方体の形状を備え、従来の押圧式孔版印刷装置の印刷用紙載置台の代替として使用できるようにされており、その印刷用紙載置面を構成する上面は、印刷用紙4の大きさに符合する B6、A5、B5、A4等の大きさとすることができる。
【0022】
図2から明らかなように、該被印刷体保持装置Mは、長方体の発泡弾性体6を芯材として、その上面に気密性シートに多数の開口51を設けて通気性とした上部シート5を積層し、その底面には中央に穴81を貫通させた気密性の底部シート8を積層して被覆するとともに、その全側面を気密性の外周シート7で被覆することにより作成されている。そして、ゴム等の粘着性弾性体のシート材からなる排気専用弁9が、その一端部を底部シート8上に固定されて穴81を覆うように付着されている。
【0023】
また、図2に示されるように、この押圧式孔版印刷装置は、基台10に一端をヒンジ(図示せず)で接続されて被印刷体保持装置Mに対向して配置された押圧板1を孔版原紙押圧手段として備え、該押圧板1の下面には孔版原紙支持手段として一対の対向するレール2が設けられている。
【0024】
孔版印刷時は、図2に示されるように、枠体に孔版原紙を張設して構成された孔版原紙ユニット3を用いて、その孔版原紙を製版した後、該孔版原紙の上に印刷インキを載置し、その印刷インキ載置面が押圧板1に対向するように孔版原紙ユニット3の枠体をレール2間に支持させるとともに、被印刷体保持装置Mの上面に該面と同様の大きさの印刷用紙4を配置する。
【0025】
そして、図3に示されるように、押圧板1を矢印Aの方向に押し下げて、被印刷体保持装置Mに載置された印刷用紙4に孔版原紙を密着させ、孔版原紙上の印刷インキに押圧力を加えるとともに発泡弾性体6を圧縮させる。この時、被印刷体保持装置Mの上部シート5と印刷用紙4とが密着し開口51は閉塞されるので、発泡弾性体6の内部の空気は排気専用弁9を押し下げて穴81から排気される。
【0026】
印刷終了後、図4に示されるように、押圧板1を矢印Bの方向に持ち上げると、発泡弾性体6は自身の弾性により圧縮前の形状を回復しようとするが、穴81は排気専用弁9が付着して閉塞されるため発泡弾性体6の内部は負圧となり、上部シート5の開口51に吸引力が作用し、この吸引力によって印刷用紙4が上部シート5上に吸引されて保持されるため、孔版原紙と印刷用紙4の剥離は容易に行われる。
【0027】
上部シート5は、印刷用紙4が載置された時に両者の間に高い密着性が得られるものが好ましく、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、生ゴム等の弾性体からなるものが挙げられる。
【0028】
上部シート5の開口51の形状は、空気が通過可能であり、印刷用紙4と接することにより閉塞されて印刷インキの粘着性に打ち勝って印刷用紙4を吸引する気密性が保持できるものであればよく、図示の円形以外に、スリット状であっても、微細孔であっても構わない。
【0029】
発泡弾性体6は、通気性があり、圧縮による収縮量が周囲と内部で均一であり、所定の範囲内の収縮量において一定の圧力状態が保たれる特性を有する発泡弾性体であることが好ましく、例えば、エバーライトGM(商品名:株式会社ブリジストン製軟質ウレタンフォーム)が挙げられる。
【0030】
外周シート7及び底部シート8は気密性を確保でき、発泡弾性体6の伸縮に影響を及ぼさないものであればよく、シート状又はフィルム状のものの他、発泡弾性体6の表面に充填剤や塗膜を施して形成することもできる。また、上部シート5、外周シート7、底部シート8は一体に形成することもできる。
【0031】
図5は、本発明の別の具体例を示すものであり、被印刷体保持装置Mは、長方体の発泡弾性体6の側面及び底面を気密性の外周シート7及び底部シート8で被覆して構成されており、外周シート7及び底部シート8は一体に形成されている。そして、底部シート8には図1と同様の穴81と排気専用弁9が設けられている。かくして、該発泡弾性体6の上面は被覆せずにそのまま露出させているが、発泡弾性体6の表面はそれ自体微細孔を備えて通気性があるので、そのまま被印刷体保持面として供することができる。また、この被印刷体保持面の周囲を発泡弾性体6よりも硬質の気密性弾性体の枠61で囲むことにより、該枠61がパッキンの作用を行い、被印刷体の保持力が確実にされるので好ましい。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、押圧式孔版印刷の印刷時の押圧力等を利用して圧縮された発泡弾性体の形状復帰時に生じる吸引力を被印刷体に及ぼして被印刷体を保持するようにしたので、連続印刷時や加熱時でも被印刷体の保持力が経時的に低下することがなく、孔版印刷後の被印刷体と孔版原紙の分離を確実に行うことができる。また、被印刷体の裏面全体に吸引力を及ぼすことができるので、印刷面のサイズが大きくても被印刷体に対して十分な保持力を発揮することができ、印刷用紙のような被印刷体にカールのような変形を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被印刷体保持装置の具体例を押圧式孔版印刷装置の基台に載置した状態で示す斜視図である。
【図2】図1のII-II′線に沿った断面図である。
【図3】孔版印刷を行う状態で示す図2と同様の断面図である。
【図4】孔版印刷を行った後の状態で示す図2と同様の断面図である。
【図5】本発明の被印刷体保持装置の別の具体例を示す図2と同様の断面図である。
【符号の説明】
M 被印刷体保持装置
1 押圧板
2 レール
3 孔版原紙ユニット
4 印刷用紙
5 上部シート
51 開口
6 発泡弾性体
7 外周シート
8 底部シート
81 穴
9 排気専用弁
10 基台
Claims (6)
- 通気性の被印刷体保持面を備えた発泡弾性体からなる被印刷体保持装置であって、該発泡弾性体は、該被印刷体保持面以外の面が気密性の被覆材で被覆され、該被覆材を貫通する穴に排気専用弁が設けられており、前記発泡弾性体の前記被印刷体保持面以外の面はその圧縮時に排気専用弁を介した排気を許容される以外には気密性とされ、前記発泡弾性体が圧縮された後に形状を回復する際、前記被印刷体保持面が被印刷体を吸引保持できるようにしたこと特徴とする被印刷体保持装置。
- 前記被印刷体保持面は、前記発泡弾性体に積層された気密性シートからなり、該シートは多数の開口を備えることにより通気性にされている請求項1に記載の被印刷体保持装置。
- 前記被印刷体保持面の周囲は前記発泡弾性体よりも硬質の気密性の枠によって画定されている請求項1に記載の被印刷体保持装置。
- 通気性の被印刷体保持面を備えた発泡弾性体からなる被印刷体保持装置であって、該発泡弾性体の前記被印刷体保持面以外の面はその圧縮時に排気専用弁を介した排気を許容される以外には気密性とされ、該発泡弾性体が圧縮された後に形状を回復する際、前記被印刷体保持面が被印刷体を吸引保持できるようにしたこと特徴とする被印刷体保持装置とその被印刷体保持面に対向して配置された孔版原紙押圧手段との間に、印刷インキが載置された製版済み孔版原紙をその印刷インキ載置面側が孔版原紙押圧手段に対向するように孔版原紙支持手段に支持させ、該孔版原紙と前記被印刷体保持装置との間に被印刷体を配置し、該被印刷体と前記孔版原紙とを前記孔版原紙押圧手段と前記被印刷体保持手段との間に挟持して相互に密着させるとともに、前記孔版原紙押圧手段により前記孔版原紙上の印刷インキに押圧力を加えて前記被印刷体に印刷を行なう孔版印刷方法において、印刷時に前記被印刷体保持装置を圧縮して前記排気専用弁から排気を行い、印刷後に前記被印刷体から前記孔版原紙を剥離する際、前記被印刷体を前記被印刷体保持面によって吸引保持するようにしたことを特徴とする押圧式孔版印刷方法。
- 基台と、該基台に一端をヒンジ接続された押圧板と、該押圧板に対向させて前記基台上に設けられた印刷用紙載置台と、孔版原紙を前記押圧板と前記印刷用紙載置台との間に支持する孔版原紙支持手段とを備えてなる手動式の押圧式孔版印刷装置において、前記印刷用紙載置台として請求項1に記載の被印刷体保持装置がその被印刷体保持面を前記押圧板に対向させて配置されていることを特徴とする押圧式孔版印刷装置。
- 可撓性または弾性の少なくとも何れか一方を備えたダイヤフラムを枠体に張設して構成された壁体を備えた圧力チャンバと、該圧力チャンバを減圧する減圧手段と、該圧力チャンバ内に前記ダイヤフラムに対向させて設けられた印刷用紙載置台と、孔版原紙を前記圧力チャンバ内で前記ダイヤフラムと前記印刷用紙載置台との間に支持する孔版原紙支持手段とを備えてなる減圧式の押圧式孔版印刷装置において、前記印刷用紙載置台として請求項1に記載の被印刷体保持装置がその被印刷体保持面を前記ダイヤフラムに対向させて配置されていることを特徴とする押圧式孔版印刷装置。
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