JP3617591B2 - Tig溶接方法及びtig溶接材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超高張力鋼材の溶接時に使用されるTIG溶接方法及びTIG溶接材料に関し、特に、溶接金属の強度及び靱性を高めることができるTIG溶接方法及びTIG溶接材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
TIG溶接は、不活性ガス雰囲気中で使用される溶接方法であり、フラックスを使用する必要がなく、高品質の溶接金属を確保することができるものであるので、近時、種々の分野で使用されている。特に、超高張力鋼材をTIG溶接する場合には、溶接後に溶接部に溶体化熱処理及び焼戻し熱処理を施すことによって、高強度の溶接金属を得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の溶接材料を使用して、特に強度が高い被溶接物をTIG溶接により接合する場合には、高い靱性を有する溶接金属を得ることができないという問題点がある。また、従来の溶接材料を使用したTIG溶接においては、溶接部に熱処理を施さないと、溶接金属の強度及び靱性を高めることができないので、得られる溶接構造物の脆性破壊に対する安全性が低下する。従って、熱処理を施すことができない溶接構造物に関しては、強度を高めるための補修等ができないという問題点もある。一方、熱処理が可能である溶接構造物に関しても、高強度の溶接金属を得るために、溶接後に溶体化熱処理及び焼戻し熱処理を施すと、溶接構造物の製造コストが著しく増大する。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、強度を高めるための熱処理が不要であり、溶接のままの状態で高強度及び高靱性の溶接金属を得ることができると共に、溶接性を向上させることができ、これにより、高品質の溶接構造物を低コストで得ることができるTIG溶接方法及びTIG溶接材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るTIG溶接方法は、Arガス及びHeガスからなる群から選択された少なくとも1種のガスと、ガス全体積あたり0.15体積%以下のN2ガスとを含有するシールドガスを使用して、C:0.08乃至0.14重量%、Si:0.01乃至0.15重量%、Mn:0.01乃至0.40重量%、Ni:8.0乃至10.0重量%、Cr:0.70乃至1.50重量%、Mo:0.70乃至1.50重量%、Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%、Al:0.002乃至0.020重量%、Cu:0.07乃至0.40重量%、N:40重量ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、Pが0.008重量%以下、Sが0.008重量%以下、Tiが0.010重量%以下、Bが5重量ppm以下、Caが50重量ppm以下、Mgが50重量ppm以下、Oが40重量ppm以下、Hが2重量ppm以下に規制された溶接材料によりTIG溶接することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る他のTIG溶接方法は、Arガス及びHeガスからなる群から選択された少なくとも1種のガスを含有し、N2ガスを含有しないシールドガスを使用して、C:0.08乃至0.14重量%、Si:0.01乃至0.15重量%、Mn:0.01乃至0.40重量%、Ni:8.0乃至10.0重量%、Cr:0.70乃至1.50重量%、Mo:0.70乃至1.50重量%、Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%、Al:0.002乃至0.020重量%、Cu:0.07乃至0.40重量%、N:150重量ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、Pが0.008重量%以下、Sが0.008重量%以下、Tiが0.010重量%以下、Bが5重量ppm以下、Caが50重量ppm以下、Mgが50重量ppm以下、Oが40重量ppm以下、Hが2重量ppm以下に規制された溶接材料によりTIG溶接することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るTIG溶接材料は、C:0.08乃至0.14重量%、Si:0.01乃至0.15重量%、Mn:0.01乃至0.40重量%、Ni:8.0乃至10.0重量%、Cr:0.70乃至1.50重量%、Mo:0.70乃至1.50重量%、Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%、Al:0.002乃至0.020重量%、Cu:0.07乃至0.40重量%、N:150重量ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、Pが0.008重量%以下、Sが0.008重量%以下、Tiが0.010重量%以下、Bが5重量ppm以下、Caが50重量ppm以下、Mgが50重量ppm以下、Oが40重量ppm以下、Hが2重量ppm以下に規制されたことを特徴とする。
【0008】
前記溶接材料中のN含有量は40重量ppm以下であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本願発明者等が本発明の課題を解決すべく、鋭意実験研究を重ねた結果、TIG溶接により得られる溶接金属の靱性を高めるためには、溶接金属をNiを含有するマルテンサイト組織とすることが有効であることを見い出した。また、本願発明者等は、溶接材料中のSi、Nb、V及びBの含有量を抑制することにより、結晶粒内の脆化を抑制することができ、溶接材料中のMn含有量を抑制することにより、溶接金属の粒界破壊を防止することができることを見い出した。
【0010】
更に、本発明においては、溶接金属をマルテンサイト組織とし、Nb及びVの添加によって炭化物析出強化の効果が得られると共に、Cr及びMoの添加によって固溶強化の効果が得られ、これにより、溶接金属の強度を高めている。特に、Nを添加することによって、このNが有する固溶強化作用により溶接金属の靱性を低下させることなく、溶接金属の強度を著しく高めることができる。なお、このNは溶接材料から添加しても、シールドガスに含有させても、同様の効果を得ることができる。
【0011】
更にまた、本発明においては、スラグを発生させて溶接欠陥の原因となるTi、Ca、Mg及びOの溶接材料中の含有量を抑制すると共に、遅れ割れの原因となるH含有量を低減することにより、溶接性を向上させている。
【0012】
以下、本発明に係るTIG溶接材料の組成限定理由について説明する。
【0013】
C:0.08乃至0.14重量%
Cは溶接金属の強度を上昇させる効果を有する元素である。溶接材料中のC含有量が0.08重量%未満である場合には、靱性が低下することはないが、本発明において対象とする980(N/mm2)以上の引張強さを有する溶接金属を得ることができない。一方、溶接材料中のC含有量が0.14重量%を超えると、溶接金属の凝固割れが発生しやすくなる。従って、溶接材料中のC含有量は0.08乃至0.14重量%とする。
【0014】
Si:0.01乃至0.15重量%
Siは脱酸効果を有する元素である。溶接材料中のSi含有量を0.01重量%未満にしようとすると、溶接材料を製造する際の原料溶解時に溶鋼を脱酸することができず、吹き上げを発生させて溶解作業を困難にする。また、Siはフェライト脆化元素であるが、本発明の組成範囲においては、通常の場合と異なり、溶接材料中のSi含有量が0.15重量を超えるとCTOD値(弾塑性破壊靱性値)が低下する。従って、溶接材料中のSi含有量は0.01乃至0.15重量%とする。
【0015】
Mn:0.01乃至0.40重量%
Mnは脱酸効果を有する元素である。溶接材料中のMn含有量を0.01重量%未満にしようとすると、Siの場合と同様に、溶接材料を製造する際の原料溶解時に、吹き上げを発生させて溶解作業を困難にする。一方、溶接材料中のMn含有量が0.40重量%を超えると、旧オーステナイト粒界が発達して、CTOD値を低下させる。従って、溶接材料中のMn含有量は0.01乃至0.40重量%とする。
【0016】
P:0.008重量%以下,S:0.008重量%以下
P及びSはいずれも延性破壊エネルギーを低下させる元素である。溶接材料中の不可避的不純物としてのP含有量が0.008重量%を超えるか、又は不可避的不純物としてのS含有量が0.008重量%を超えると、溶接金属の靱性が著しく低下する。従って、溶接材料中のP含有量は0.008重量%以下、S含有量は0.008重量%以下とする。
【0017】
Cu:0.07乃至0.40重量%
Cuは溶接材料の防錆用のメッキ成分である。溶接材料中のCu含有量が0.07重量%未満であると、防錆効果を得ることができない。一方、8.0乃至10.0重量%のNiを含有する本発明の溶接材料においては、Cu含有量が0.40重量%を超えると、溶接金属の凝固割れが発生する。従って、溶接材料中のCu含有量は0.07乃至0.40重量%とする。
【0018】
Ni:8.0乃至10.0重量%
溶接材料中のNiは、溶接金属をNi基マルテンサイト組織にするための主要成分である。溶接材料中のNi含有量が8.0重量%未満であると、マトリックスの靱性が不足して、CTOD値が低下する。一方、溶接材料中のNi含有量が10.0重量%を超えると、溶接金属中に不安定なオーステナイトが多量に残留して靱性が低下する。従って、溶接材料中のNi含有量は8.0乃至10.0重量%とする。
【0019】
Cr:0.70乃至1.50重量%,Mo:0.70乃至1.50重量%
Cr及びMoはいずれも固溶強化型の元素である。溶接材料中のCr含有量が0.70重量%未満であるか、又はMo含有量が0.70重量%未満であると、本発明において対象とする980(N/mm2)以上の引張強さを有する溶接金属を得ることができない。一方、溶接材料中のCr含有量が1.50重量%を超えるか、又はMo含有量が1.50重量%を超えると、変態点が上昇して結晶粒が大きくなるので、溶接金属の靱性が低下する。従って、溶接材料中のCr含有量は0.70乃至1.50重量%、Mo含有量は0.70乃至1.50重量%とする。
【0020】
Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%
Nb及びVは炭化物析出強化型元素であり、互いに同一の効果を有するので、本発明においては、溶接材料中のNb及びVの一方又は両方の総量で規定する。溶接材料中のNb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量が0.05重量%未満である場合には、溶接金属の靱性が低下することはないが、その強度が低下する。一方、溶接材料中のNb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量が0.40重量%を超えると、析出物による結晶粒内の歪みが大きくなって、溶接金属の靱性が著しく低下する。従って、溶接金属中のNb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量は、0.05乃至0.40重量%とする。
【0021】
Al:0.002乃至0.020重量%
Alは脱酸作用を有する元素である。溶接材料中のAl含有量を0.002重量%未満にしようとすると、Si及びMnと同様に、溶接材料を製造する際の原料溶解時に溶鋼を脱酸することができず、溶解性を著しく低下させる。一方、溶接材料中のAl含有量が0.020重量%を超えると、塊状のスラグが生成されて、溶接性が劣化する。従って、溶接材料中のAl含有量は0.002乃至0.020重量%とする。
【0022】
Ti:0.010重量%以下,Ca:50重量ppm以下,Mg:50重量ppm以下,O:40重量ppm以下
Ti、Ca、Mg及びOは、いずれもTIG溶接時にスラグを発生し、溶接性を劣化させる元素である。溶接材料中のTi含有量が0.010重量%を超える場合、Ca含有量が50重量ppmを超える場合、Mg含有量が50重量ppmを超える場合又はO含有量が40重量ppmを超える場合には、溶接性が劣化する。特に、本発明において規定する溶接材料の組成範囲において、Ca及びMgが上記範囲を超えると、極めて硬いスラグが生成されて、溶接能率が低下する。従って、溶接材料中の不可避的不純物のうち、Tiは0.010重量%以下、Caは50重量ppm以下、Mgは50重量ppm以下、Oは40重量ppm以下に規制する。
【0023】
B:5重量ppm以下
Ni基マルテンサイト組織の溶接金属を形成するために、本発明において規定される溶接材料の組成範囲においては、不可避的不純物としてのBは旧オーステナイト粒界を発達させて、靱性を著しく低下させる元素である。溶接材料中のB含有量が5重量ppmを超えると、溶接金属の靱性が著しく低下する。従って、溶接材料中のB含有量は5重量ppm以下とする。
【0024】
H:2重量ppm以下
溶接金属中の不可避的不純物としてのHは、高強度鋼の遅れ割れ感受性に高い影響を及ぼす元素である。本発明が溶接の対象とする分野において、溶接材料中のH含有量が2重量ppmを超えると、溶接金属の遅れ割れが発生しやすくなる。従って、溶接材料中のH含有量は2重量ppm以下とする。
【0025】
溶接材料中のN:150重量ppm以下(シールドガス中のN 2 ガス:0.15体積%以下)
NはNi基マルテンサイト組織に固溶して、靱性を低下させることなく溶接金属の強度を著しく向上させる元素である。溶接金属中に150重量ppm以下のNが含有されていると、上記効果を十分に得ることができる。溶接金属中のNはシールドガス及び溶接材料から添加されることができるが、シールドガス中にN2ガスが含有されていない場合は、溶接金属中のN含有量が150重量ppmを超えると、強度を向上させる効果が飽和するのみでなく、溶接金属の靱性が低下する。また、シールドガス中にN2ガスが含有されている場合は、シールドガス中のN2ガスの含有量がシールドガス全体積あたり0.15体積%を超えるか、又は溶接材料中のN含有量が40重量ppmを超えると、強度を向上させる効果が飽和するのみでなく、溶接金属の靱性が低下する。従って、シールドガス中にN2ガスが含有されない場合には、溶接材料中に150重量ppm以下のNを含有するものとする。一方、シールドガス中にN2ガスを含有させる場合には、シールドガス中のN2ガス含有量はシールドガス全体積あたり0.15体積%以下とし、溶接材料中のN含有量は40重量ppm以下とする。
【0026】
【実施例】
以下、本発明に係るTIG溶接材料を使用してTIG溶接を実施した実施例についてその比較例と比較して具体的に説明する。
【0027】
先ず、種々の組成を有する溶接用ワイヤ(溶接材料)を製造し、このワイヤを使用して自動TIG溶接法により試験板をTIG溶接することにより、溶接試験を実施した。図1は本実施例において使用した溶接試験板の形状を示す断面図である。本実施例においては、板厚が32mmである鋼板(材質:HT 980)1を2枚準備し、これらを溶接試験板とした。図1に示すように、各鋼板は、その上面から端面に至る傾斜した斜面1aが形成されていると共に、下面から端面に至る傾斜した斜面1bが形成されており、これにより、2枚の鋼板1が当接するルート面が形成されている。なお、斜面1aにより構成された表面側開先部2aの開先深さは20mm、開先角度は50°であり、斜面1bにより構成された裏面側開先部2bの開先深さは10mm、開先角度は60°である。
【0028】
このように配置された溶接試験板に対して、下記表1に示す条件によってTIG溶接を実施し、溶接作業性を評価した。また、得られた溶接金属から下記表2に示す条件で種々の試験片を採取して、引張試験、衝撃試験及びCTOD(亀裂先端開口変位)試験を実施することにより、永久伸びεを0.2%とした場合の耐力σ0.2(N/mm2)、引張強さσB(N/mm2)、伸びEl(%)、−40℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE−40℃(J)、破面遷移温度vTrs(℃)及び0℃におけるCTOD値(弾塑性破壊靱性値)δat0℃(mm)を測定した。ワイヤの組成を下記表3乃至6に示し、使用したワイヤ記号及びシールドガス組成並びに引張試験、衝撃試験、CTOD試験及び溶接作業性の評価結果を下記表7乃至12に示す。
【0029】
但し、下記表4乃至6に示すワイヤ組成において、tr.は微量であることを示す。また、下記表7乃至12に示す評価結果においては、溶接のままの状態において、引張強さσBが980乃至1670(N/mm2)、降伏強さ(耐力σ0.2)が引張強さの80%以上、伸びElが13%以上、シャルピー吸収エネルギーvE−40℃が47J以上、破面遷移温度vTrsが−40℃以下、0℃におけるCTOD値が0.2mm以上である場合を良好と判断した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
【表8】
【0038】
【表9】
【0039】
【表10】
【0040】
【表11】
【0041】
【表12】
【0042】
上記表3乃至12に示すように、実施例No.1乃至11は、ワイヤの化学組成が適切に規制されているので、溶接後の熱処理を施さない溶接のままの状態で、優れた強度、延性及び靱性を有する溶接金属を得ることができた。
【0043】
一方、比較例No.12はワイヤ中のC含有量が本発明範囲の下限未満であるので、引張強さが低いものとなった。比較例No.13及び16はワイヤ中のC又はCu含有量が本発明範囲の上限を超えているので、初層溶接時に凝固割れが発生した。従って、これらの比較例の試験片については各種評価試験を実施しなかった。比較例No.14及び15は、夫々ワイヤ中のSi含有量及びMn含有量が本発明範囲の上限を超えており、比較例No.17及び18はワイヤ中のNi含有量が本発明の範囲を外れている。また、比較例No.20は、ワイヤ中のCr及びMo含有量が本発明範囲の上限を超えており、比較例No.29及び31は、ワイヤ中のN含有量又はシールドガス中のN2ガス含有量が本発明範囲の上限を超えている。従って、これらはCTOD値が目標値を達成せず、溶接金属の靱性が低いものとなった。
【0044】
比較例No.19はワイヤ中のCr及びMo含有量が本発明範囲の下限未満であり、比較例No.21はワイヤ中のNb及びV含有量が本発明範囲の下限未満であるので、溶接金属の引張強さが低下した。比較例No.22及び23は、ワイヤ中のNb及びVのいずれか一方の含有量が本発明範囲の上限を超えているので、破面遷移温度vTrs及びCTOD値が目標値を達成せず、溶接金属の延性及び靱性が低いものとなった。比較例No.24はSi、Mn、Alが本発明範囲の下限未満であるので、脱酸効果を得ることができず、ワイヤを製造する際に溶解性が不良となって、ワイヤの工業的生産が困難であると判断された。従って、評価試験は実施しなかった。比較例No.25はワイヤ中のB含有量が本発明範囲の上限を超えているので、溶接金属の靱性が低下した。
【0045】
比較例No.26、27及び30は、ワイヤ中のCa及びMg含有量、O含有量又はAl及びTi含有量が本発明範囲の上限を超えているので、溶接時にスラグが発生した。比較例No.28はワイヤ中のH含有量が本発明範囲の上限を超えているので、引張試験片が試験中に低応力で破断(水素割れ)し、強度及び延性の評価が不可能となった。従って、一部の評価試験は実施しなかった。比較例No.32はワイヤ中のP及びS含有量が本発明範囲の上限を超えているので、溶接金属の強度及び靱性が低下した。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明方法によれば、溶接材料の組成を適切に規定すると共に、所定量のN2ガスを含有するシールドガスを使用してTIG溶接するので、溶接作業性が良好であり、優れた強度、延性及び靱性を有する溶接金属を得ることができる。また、本発明によれば、溶接材料の組成を適切に規定しているので、溶接のままで優れた機械的性質を有する溶接金属を得ることができ、これにより、高品質の溶接構造物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例において使用した溶接試験板の形状を示す断面図である。
【符号の説明】
1;鋼板
2a,2b;開先部
Claims (4)
- Arガス及びHeガスからなる群から選択された少なくとも1種のガスと、ガス全体積あたり0.15体積%以下のN2ガスとを含有するシールドガスを使用して、C:0.08乃至0.14重量%、Si:0.01乃至0.15重量%、Mn:0.01乃至0.40重量%、Ni:8.0乃至10.0重量%、Cr:0.70乃至1.50重量%、Mo:0.70乃至1.50重量%、Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%、Al:0.002乃至0.020重量%、Cu:0.07乃至0.40重量%、N:40重量ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、Pが0.008重量%以下、Sが0.008重量%以下、Tiが0.010重量%以下、Bが5重量ppm以下、Caが50重量ppm以下、Mgが50重量ppm以下、Oが40重量ppm以下、Hが2重量ppm以下に規制された溶接材料によりTIG溶接することを特徴とするTIG溶接方法。
- Arガス及びHeガスからなる群から選択された少なくとも1種のガスを含有し、N2ガスを含有しないシールドガスを使用して、C:0.08乃至0.14重量%、Si:0.01乃至0.15重量%、Mn:0.01乃至0.40重量%、Ni:8.0乃至10.0重量%、Cr:0.70乃至1.50重量%、Mo:0.70乃至1.50重量%、Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%、Al:0.002乃至0.020重量%、Cu:0.07乃至0.40重量%、N:150重量ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、Pが0.008重量%以下、Sが0.008重量%以下、Tiが0.010重量%以下、Bが5重量ppm以下、Caが50重量ppm以下、Mgが50重量ppm以下、Oが40重量ppm以下、Hが2重量ppm以下に規制された溶接材料によりTIG溶接することを特徴とするTIG溶接方法。
- C:0.08乃至0.14重量%、Si:0.01乃至0.15重量%、Mn:0.01乃至0.40重量%、Ni:8.0乃至10.0重量%、Cr:0.70乃至1.50重量%、Mo:0.70乃至1.50重量%、Nb及びVからなる群から選択された1種又は2種の総量:0.05乃至0.40重量%、Al:0.002乃至0.020重量%、Cu:0.07乃至0.40重量%、N:150重量ppm以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記不可避的不純物のうち、Pが0.008重量%以下、Sが0.008重量%以下、Tiが0.010重量%以下、Bが5重量ppm以下、Caが50重量ppm以下、Mgが50重量ppm以下、Oが40重量ppm以下、Hが2重量ppm以下に規制されたことを特徴とするTIG溶接材料。
- 前記Nは40重量ppm以下であることを特徴とする請求項3に記載のTIG溶接材料。
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