JP3317656B2 - 光部品の波長分散測定装置 - Google Patents

光部品の波長分散測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信システムの
研究、開発および設計の段階で行われる光部品の波長分
散特性の測定に係わり、特に分散値の絶対量が小さい光
部品を精度よく測定する光部品の波長分散測定装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】光の群速度が周波数又は波長によって変
化する現象である波長分散の測定は以下の点から必要と
されている。まず、光パルスをビットの0又は1で表す
場合、伝送容量を向上させるために、光パルスの幅を細
くする。しかし、波長分散のある光ファイバに光パルス
を通過させると、スペクトルの一部は相対的に早く進
み、別の一部は相対的に遅れて進み、結果的にパルスの
形は崩れてしまうという問題が発生する。この波長分散
の影響はパルス幅を細くすればするほど大きくなる。
【0003】この場合、波長分散がきわめて小さい光フ
ァイバを使用することにより波長分散の影響を少なくし
て光伝送を行うことも可能であるが、将来の光通信では
さらに細い光パルスをより広い波長帯域に亘って使用す
ることが考えられているので、そのような小さい波長分
散を精度よく決定することが必要である。また、そのよ
うな細い光パルスを広い波長帯域に亘って使用するとき
には、光ファイバだけでなく、伝送経路上に存在するレ
ンズ、光増幅器、光アイソレータ等のさまざまな光部品
が有する波長分散特性も無視できなくなるので、それら
の波長分散特性を測定し、伝送経路に与える影響を把握
しておく必要がある。
【0004】一方、光パルスを圧縮する場合や、光ソリ
トン等の特殊なパルスを使用する場合には、波長分散が
存在する部分を積極的に利用しており、波長分散特性を
知っておくことは重要である。
【0005】従来の波長分散特性の測定方式の例とし
て、特公平2−33971号公報に掲載されたものがあ
る。以下その内容を要約して説明する。この測定方式
は、光源から出射された光を単一モード光ファイバに入
射し、この単一モード光ファイバから出射された光を光
電変換器で光電変換し、この光電変換器からの出力を光
源の励起電流に帰還するようにループを構成する。そし
て、光源から出射された光の波長を変化させたときのル
ープの発振周波数の変化から単一モード光ファイバの波
長分散を求めている。
【0006】この測定方式を図7に基づいて説明する。
すなわち、光源である狭スペクトル幅の半導体レーザ1
から出射された光を被測定光部品2に入射し、被測定光
部品2から出射された光を光検知器3によって光の強度
に比例した電気信号に変換する。この電気信号を帯域通
過用のフィルタ4を介して増幅器5によって増幅し、振
幅制限器6とコンデンサ7とを介して前述の半導体レー
ザ1に印加する。そして、この電気信号で半導体レーザ
1の励起電流を制御することによってループを構成す
る。
【0007】途中、半導体レーザ1から出射された光を
ビームスプリッタ(図示せず)で一部分岐させ、波長計
8によって出射光の波長を測定する。半導体レーザ1は
恒温装置(図示せず)によって一定の温度に保たれ、直
流電源9より直流バイアス電流が供給され、さらに前述
の増幅された電気信号がこの直流バイアス電流に重畳さ
れる。
【0008】このとき、半導体レーザ1から出射された
光が電気信号となって半導体レーザ1に帰還するループ
は一種の発振器となり、このループを光および電気信号
が周回するときの周期に相当する周波数を基本周波数と
して発振が生じる。前述の増幅された電気信号を一部分
岐させ、周波数カウンタ10等でこの発振周波数を測定
する。この技術では発振周波数と基本周波数は一致する
ので、このようにして、被測定光部品2を含むループの
基本周波数が測定されたことになる。
【0009】次に、恒温装置で保たれる温度を温度制御
器によって変更すると、半導体レーザ1によって出射さ
れる光の波長が変化するので、その波長を測定する。こ
こで被測定光部品2に波長分散、すなわち通過する光の
波長によって群速度が異なる性質があると、波測定光部
品2の光学的距離(=物理的な長さ×屈折率 以下、光
学長という)が変わるので基本周波数も変化する。この
技術では変化した発振周波数を測定することにより、変
化した基本周波数を測定したことになる。
【0010】ある波長λに対する基本周波数をfとする
と、基本周波数fは理論的には次式のように表される。 f=1/(τ+T) …(1) ここで、τは被測定光部品2を光が通過する群遅延時
間、Tは上記ループ中の被測定光部品2以外の部分を光
および電気信号が通過する群遅延時間である。
【0011】次に、波長をλからλ+Δλに変えたとき
に基本周波数がfからf+Δfへ変化したとし、(1) 式
と同様に表すと、次のようになる。 f+Δf=1/(τ+Δτ+T) …(2) ここでΔτは、被測定光部品2を波長λ+Δλの光が通
過する時間が波長λの光に対してどれだけ遅れるかを表
す、群遅延時間差と呼ばれる量である。
【0012】(2) −(1) の操作を行うと、 Δf≒−Δτ/(τ+T)2 =−Δτ×f2 …(3) となる。したがって、fおよびΔfを測定することによ
り、 Δτ≒−Δf/f2 …(4) この(4) 式より、群遅延時間差Δτが計算される。
【0013】波長分散Dは単位長さあたりの群遅延時間
差Δτを波長で微分したものである。被測定光部品2の
物理的な長さをLとすると、波長分散Dは近似的に、 D≒Δτ/(L×Δλ)=−Δf/(f2 ×L×Δλ) …(5) で表される。上式より、f、Δf、LおよびΔλを測定
することにより被測定光部品2の波長分散Dが計算され
る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来技術においてもまだ解消すべき次のような課題が
ある。すなわち、被測定光部品に対する波長分散の測定
精度の問題が挙げられる。この従来技術において波長分
散の測定精度を制限している要因には次のようなものが
ある。測定装置における、(1) 各電気部品の周波数特
性、(2) 波長の可変範囲、(3) 周波数カウンタの測定精
度、(4) 各構成部品の調整などである。以下、これらの
要因について個別に説明する。
【0015】先ず、第1の要因である電気部品の周波数
特性の問題点について説明する。すなわち、光検知器
3、帯域通過用のフィルタ4、増幅器5及び振幅制限器
6の周波数特性による誤差の問題である。ここで問題に
なる周波数特性とは電気信号の群遅延の周波数に対する
依存性であり、光部品における波長分散特性に相当する
ものである。具体的には、光源の波長を変化させたとき
の測定において(2)式が成立せず、 f+Δf=1/(τ+Δτ+T+ΔT) …(6) (6) 式で示すように電気信号の群遅延時間差ΔTが発生
し、見掛け上、光の群遅延時間差Δτと電気の群遅延時
間差ΔTは分離できないので誤差の要因となる。被測定
光部品2が長尺の光ファイバの場合などではΔτ》ΔT
となってΔTの影響は無視できるが、被測定光部品2の
波長分散が小さい場合ではΔTの影響が無視できない。
特に、通常の帯域通過用のフィルタ4ではこのΔTの周
波数依存性が大きく、逆に周波数依存性を抑えたフィル
タは阻止域の減衰特性が低下するので発振ループとして
の安定な動作が損なわれる恐れがある、という問題があ
る。
【0016】次に、第2の要因である波長の可変範囲の
問題点について説明する。(5) 式から明らかのように、
2種類の波長の差Δλが大きいほど波長分散の測定精度
は向上する。従来技術の例では、通常は光源として半導
体レーザ1が用いられる。少なくとも2種類の異なった
波長の出力光を得るために、半導体レーザ1の温度を変
化させている。半導体レーザ1は温度を変化させると出
力光の波長も変化する性質を有しているが、波長の可変
範囲は約3〜5nm程度である。
【0017】この可変範囲による波長分散の測定精度の
具体的な値は後述するが、波長の可変範囲の拡大は測定
精度の向上につながる。加えて、波長の可変範囲の狭さ
は、別の観点からも問題になりつつある。すなわち、波
長分散の測定が必要とされる産業分野、たとえば光通信
システムの設計においては、現状では50〜100nm
の波長範囲に亘って波長分散を測定する必要が生じてき
ている。これだけの波長範囲に亘って出力光を変化させ
ることのできる波長可変レーザも存在はしているもの
の、その価格は極めて高く、一般的とはいえない。
【0018】さらに、第3の要因である周波数カウンタ
の測定精度について説明する。具体的な数値を挙げて説
明する。いま、被測定光部品2として長さ100mの光
ファイバを考えると、(1) 式中の光の群遅延時間τはお
よそ500ns程度である。これに対して、電気の群遅
延時間Tは一般的に10ns程度なので、fはほぼτに
依存しておよそ2MHz程度である。また、半導体レー
ザ1の波長可変範囲はおよそ5nm程度である。一方、
現在利用できる周波数カウンタではΔfの測定精度はお
よそ1Hzである。これらの数値を(5) 式に代入する
と、波長分散の測定精度はおよそ0.5psec/nm
/km程度である。
【0019】ところが、現在は零分散ファイバなど波長
分散のきわめて小さいファイバが開発されており、0.
1psec/nm/km以下の測定精度が要求される場
合も少なくない。したがって従来の技術においてはこの
ような光ファイバの波長分散の測定では精度が不足気味
であった。
【0020】さらに、実際には電気的なノイズの影響な
どから、これだけの精度で周波数を測定するためには長
時間に亘って測定したデータを平均化するなどの操作が
必要であり、操作の煩雑化あるいは測定の長時間化はま
ぬがれない。
【0021】最後に、第4の要因である各構成部品に調
整について説明する。例えば、図7に示す従来技術の装
置においては、帯域通過用のフィルタ4、増幅器5およ
び振幅制限器6を用いている。この場合は、それぞれ操
作者が通過帯域、増幅率および振幅制限値を調整しなけ
ればならず、測定の容易性、再現性および客観性を損な
ってしまう。なお、振輻制限器6を用いない別の例もあ
るが、この場合でも帯域通過用のフィルタ4および増幅
器5は必要であり、さらに合成器なとの別の装置が必要
になるので、上記の問題は解決されていない。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明においては以下の構成を採用した。なお、実
施の形態で採用した符号を用いる。本発明の要旨は、少
なくとも2種類の既知の波長で選択的に発振可能なモー
ドロックリングレーザを備え、該モードロックリングレ
ーザのリング中に被測定光部品を挿入することによつて
当該被測定光部品の波長分散特性を測定するための光部
品の波長分散測定装置であって、前記リングに接続され
ていて、モードロック発振を検知する第1の手段3,1
5と、前記の少なくとも2種類の既知の波長のいずれに
おいても一定の繰り返し周波数でモードロック発振が発
生するように前記のモードロックリングレーザの光学長
を調節する第2の手段16と、前記光学長の変化分を検
知する第3の手段15,14とを備え、前記の少なくと
も2種類の既知の波長と、前記第3の手段で検知された
光学長の変化分とに基づいて当該被測定光部品の波長分
散特性を演算することを特徴とする光部品の波長分散測
定装置である。
【0023】すなわち、波長選択手段を備えたモードロ
ックリングレーザのリング中に被測定光部品2を挿入
し、モードロック発振するときのパルスの繰り返し周波
数を一定に保つために必要とされる光学長の変化分を測
定することによって、被測定光部品2の波長分散特性を
求める。
【0024】なお、被測定光部品2が例えば光アイソレ
ータのように複数の種類の光部品で構成されている場合
は、単位長さ当りの量である波長分散の定義は被測定光
部品の分散特性の表現には不便なときがある。よって、
本明細書では光部品全体の群遅延時間差の波長微分を全
分散量と定義して用いる。すなわち、全分散量をDaと
すると(4) 式を用いて近似的に(7) 式で表される。 Da≒Δτ/Δλ=−Δf/(f2 ×Δλ) …(7)
【0025】
【発明の実施の形態】以下本発明における光部品の波長
分散測定装置の実施の形態を説明する。本発明は光部品
の波長分散特性の測定において、モードロックリングレ
ーザを用いたものであり、先ず、リングレーザおよびモ
ードロックリングレーザの概念について説明し、次に個
々の構成要素について説明する。
【0026】光増幅器の出力を光振幅器の入力に戻すリ
ングを構成して光増幅器を駆動させ、出力の一部を取り
出すと、通常のレーザと同様な光出力が得られる。これ
は光増幅器が放出する自然放出光と呼ばれるいわばノイ
ズのような光がリングを周回するうちに光増幅器の出力
限界まで増幅されるからである。このように構成された
装置をリングレーザと呼ぶ。
【0027】上記のリングレーザの発振波長は、光増幅
器の増幅効率が最も高くなる波長に固定されている。リ
ングレーザに波長選択機能を持たせるには、波長選択手
段を上記リング中に設ければよい。こうすると、光増幅
器と波長選択手段のトータルとして増幅効率が最も高く
なる波長でレーザ出力光が得られる。波長選択手段とし
ては通常、波長可変光フィルタが用いられる。このよう
に構成された装置もリングレーザと呼ばれるが、厳密に
は波長可変リングレーザである。
【0028】上記リングレーザ(波長可変リングレーザ
を含む)のリング中に光変調器または非線型光学媒質を
設け、光がリングを周回する周波数(以下、基本周波数
という)かまたはその整数倍の周波数で変調を与える
と、パルス列状の光出力が得られる。このような装置を
モードロックリングレーザと呼び、また、この発振状態
をモードロック発振と呼ぶ。
【0029】ここで、図2を用いてモードロック発振と
光パルス列の関係について説明する。図2(a)は時間
領域における光パルス列波形を示しており、縦軸は光の
強度、横軸は時間である。また、図2(b)は前記光パ
ルス列のフーリエ変換を示しており、縦軸は光のパワ
ー、横軸は光周波数である。
【0030】図2(b)に示されているように、光パル
ス列のフーリエ変換は、中心となる光周波数の周りに側
帯波(モード)と呼ばれる一定の変調周波数間隔の光が
規則的に並ぶ形をしている。また、各モードの位相は一
定の関係を保っている。なお、変調周波数は、時間領域
で見た光パルス列の繰り返し周波数に一致する。
【0031】ところで時間領域の波形とその(位相情報
を含めた)フーリエ変換は1対1の関係にあるので、光
周波数領域において、ある中心光周波数の周りに多くの
モードを発生させて、それらのモード間の位相を一定の
関係を保つように固定させれば、その光を時間領域で見
ると光パルス列になっている。これがモードロック発振
である。モードロック発振を実現させるためには、基本
周波数か又はその整数倍の周波数で光を変調させればよ
い。
【0032】モードロックリングレーザは、さらに、能
動型モードロックリングレーザと受動型モードロックリ
ングレーザとに大別される。能動型と受動型の違いは、
変調のための装置として光変調器を用いるか非線型光学
媒質を用いるかの違いであり、詳細は後述する。
【0033】また、リングレーザ自体では、原理的に
は、そのリング中を伝わる光は右回りと左回りの両方が
同時に存在可能である。しかし、実際には、使用する光
部品の特性上の理由から、とちらか1方向の光のみが存
在するように限定されるのが普通である。
【0034】モードロックリングレーザは通常、光パル
ス列を得る手段として広く利用されている。しかし、本
発明ではモードロックリングレーザを基本周波数を知る
装置として利用する。通常のモードロックリングレーザ
は波長選択手段は必ずしも必要ではないが、本発明で
は、少なくとも2種類の波長で選択的にモードロック発
振させる必要があることから、そのための波長選択手段
は必須の構成要素である。
【0035】また、本発明では、被測定光部品がモード
ロックリングレーザのリング中に挿入される必要があ
る。さらに、本発明では、モードロック発振の繰り返し
周波数を一定に保つようにリングの光学長を可変する手
段がリング中に挿入される必要がある。
【0036】以下、図1を用いてモードロックリングレ
ーザを構成する各装置について説明する。光増幅器11
は入力された光の波長や位相は同一値に保ったままで振
幅を約10倍から1000倍に増幅する装置である。現
状の技術水準では、光増幅器11は大別してファイバア
ンプと半導体アンプの2種類がある。
【0037】ファイバアンプは通常の光ファイバに希土
類元素を添加したもので、励起光と呼ばれる特定の波長
の光を供給することにより入力光の振幅を増幅させる作
用を有する。増幅率は励起光の強さに依存するが、10
00倍以上の増幅率を得ることも可能である。増幅作用
が得られる入力光の波長帯域は、添加される希土類元素
にもよるが、一般に50nm程度である。
【0038】一方、半導体アンプは通常の半導体レーザ
の両端面に無反射膜を蒸着したもので、励起電流を供給
することにより入力光の振幅を増幅させる作用を有す
る。増幅率は励起電流に依存するが、一般に10〜50
倍程度である。しかしながら、増幅作用が得られる帯域
は一般に100nm程度とファイバアンプに対して広
い。
【0039】本発明では、モードロックリングレーザの
光増幅器11としてファイバアンプ、半導体アンプはも
ちろんのこと、光を増幅する作用を有するものであれば
全て、使用することができる。
【0040】本発明では、ある波長λと、この波長λか
ら変化後の波長λ+Δλと、それに対して同じ変調周波
数でモードロック発振させるために必要な光遅延量Δτ
と、から波長分散を求める方式を採用している。したが
って、モードロックリングレーザが少なくとも2種類の
既知の波長で選択的に発振することが必要とされる。
【0041】この波長選択手段としては通常、波長可変
光フィルタ12が用いられる。光フィルタは特定の波長
帯域の光のみを通過させ、他の光を吸収または反射して
通過させない装置である。通過帯域の選択機構として、
測定者が手動でダイアル等を動かすもの、パソコン等で
電気的に制御するもの等がある。帯域幅は、1〜3nm
程度が適当である。この波長可変光フィルタ12を光増
幅器11と組み合わせて使用することにより、所望の波
長の光を得ることができる。
【0042】また、本発明の測定目的においては少なく
とも2種類の波長を選択的に設定できればよいので、波
長可変光フィルタ12に限られず通過帯域が固定された
光フィルタを少なくとも2種類用意し(通過帯域は相互
に異なるとする)、それらをスイッチ等で切り替えるよ
うな手段を用意しても、波長選択手段として利用可能で
ある。図1では、波長選択手段として波長可変光フィル
タを使用している。
【0043】波長選択手段である波長可変光フィルタ1
2では、通常、設定されている通過帯域の中心波長を知
る手段が用意されており、後述する例ではこの手段で得
られる波長をモードロック発振の発振波長として使用す
る。波長可変光フィルタ12に通過帯域の中心波長を知
る手段が用意されていない場合、又は、より高精度に発
振波長を知るためには、出力光を一部分岐させて波長計
(図示せず)により発振波長を測定すればよい。
【0044】光変調器は、それを通過する光の強度、周
波数または位相を変化させる装置であり、それぞれ強度
変調器、周波数変調器、位相変調器と区別される。モー
ドロックリングレーザを構成するためには、強度変調器
と位相変調器が特に有用である。図1では光変調器とし
て強度変調器13を使用している。
【0045】これら強度変調器13または位相変調器を
用いたモードロックリングレーザは能動型モードロック
リングレーザと呼ばれる。能動型モードロックリングレ
ーザでは変調器に変調信号を供給する外部の信号源が必
要である。信号源に要求されることは、正弦波信号が出
力されること、およびその周波数が可変であることであ
る。なお、このような項目は特に特別なものでなく、一
般的な信号発生器が利用可能である。正弦波信号の周波
数がリングの基本周波数またはその整数倍のときに、モ
ードロック発振が生じる。
【0046】能動型モードロックリングレーザにおい
て、変調器に供給される変調信号の周波数(以下、変調
周波数と表す)が、リングの基本周波数のときと、その
整数倍であるときとで、理諭的には以後の取り扱いに全
く差は生じない。しかし、一般的には、変調周波数が高
いほど、モードロック発振によつて生じる光パルスのパ
ルス幅が狭くなり、結果として波長分散測定における分
解能が向上する。
【0047】光変調器の代わりに非線型光学媒質を用い
たモードロックリングレーザは受動型モードロックリン
グレーザと呼ばれる。非線型光学媒質とは、通過する光
の強度などによって吸収や屈折率などの特性が変化する
媒質のことをいう。このような媒質を光パルスが通過す
る際は、パルス波形に応じて強度変調または位相変調が
自動的に生じるので、能動型モードロックリングレーザ
における光変調器と同様の効果が得られる。
【0048】受動型モードロックリングレーザでは光パ
ルスが自分自身を変調するので、能動型モードロックリ
ングレーザで必要な外部の変調信号は受動型モードロッ
クリングレーザでは不要である。なお、この場合、光パ
ルス列の繰り返し周波数は自動的にリングの基本周波数
に一致する。
【0049】非線型光学媒質としては、可飽和吸収体が
もっとも一般的に用いられる。可飽和吸収体とは、入射
する光の強度がある程度大きくなると吸収率が小さくな
り(これを吸収が飽和するという)、透過率が大きくな
るような性質を示す物質や装置のことをいう。例えば、
光半導体アンプの励起電流を増幅作用が得られる電流値
以下に抑えることにより、可飽和吸収体として使用でき
る。可飽和吸収体を光パルスが通過するときを考える。
光パルスが入射してしばらくは吸収が大きく、通過する
光の強度は小さい。次に、光パルスが最大強度に近づく
と、吸収が飽和し、通過する光の強度は急激に増大す
る。光パルスが最大強度から減少に転じるときは、これ
と逆の効果が生じて、通過する光の強度は急激に減少す
る。
【0050】したがって、結果的に通過した光パルスは
通過前に比べて幅の狭い鋭いパルスになっている。この
ことは、能動型モードロックリングレーザにおいて光変
調器として強度変調器13を使用した場合と同様の効果
をもたらす。なお、受動型モードロックリングレーザを
用いた装置の具体的な構成は後述する。
【0051】次に、モードロックリングレーザの光学長
を調節する第2の手段(以下、光学長可変手段と表す)
について説明する。光学長可変手段としては光遅延器が
一般的である。光遅延器の構造例を図3に示す。図3
(a)はコーナキューブミラーを用いて光を遅延させる
光遅延器の動作原理図であり、図3(b)は同光遅延器
の概略構成図である。
【0052】この場合、コーナキューブミラーを直線移
動ステージに載せて駆動する方式がある。コーナキュー
ブミラーは3枚の鏡を直角になるように貼り合わせたも
のであり、入射光と出射光とが必ず平行になる性質を有
している。このコーナキューブミラーを光軸と平行に移
動させると出射光は同じところに帰還しながら、光の距
離が変化し、光の遅延量を制御できる。このコーナキュ
ーブミラーを用いた利点は、光が空間を伝播するため波
長分散が無視でき、後述する校正を行わなくても高精度
の測定が可能な点にある。
【0053】光遅延器の実現例としてはコーナキューブ
ミラーを用いたもののほかに、プリズムを用いたもの
や、光導波路の温度伸縮を用いたものもあり、いずれも
本発明に利用することができる。なお、プリズムや光導
波路はそれぞれ固有の波長分散があり、被測定光部品2
の波長分散を高精度に測定する際にはこれらの波長分散
を校正する必要がある。校正の方法については後述す
る。
【0054】モードロックリングレーザのリング中に挿
入される被測定光部品2としては、原理的には光が通過
するものであればどのようなものでも測定可能である。
特に、本発明は基本的に実長または実寸法の小さいもの
の波長分散の測定について優位性を発揮する。具体的に
は、分散シフト光ファイバや分散フラット化光ファイバ
などが挙げられる。
【0055】さて、以上で述べた光増幅器11、波長選
択手段である波長可変光フィルタ12、光変調器である
強度変調器13または非線型光学媒質、光学長可変手段
である光遅延器で光が周回するリングを作るように結合
させるには、光ファイバを用いてもよいし、レンズ、ミ
ラー等を用いて空間結合させてもよい。
【0056】また、このリング中に挿入される被測定光
部品2を含めてそれぞれの配置は、原理的には任意の順
番での配置が可能である。但し、実際には各構成要素そ
れぞれの特性に依存して、最適な配置が存在することも
ある。例えば、一般的に光増幅器11の出力には自然放
出光が付加されているので、光増幅器11の直後には波
長選択手段である波長可変光フィルタ12を接続するこ
とが望ましい。また、波長選択手段である波長可変光フ
ィルタ12の直後には、他に条件がなければ、被測定光
部品2と、光変調器である強度変調器13(または非線
型光学媒質)とを比較し、その中で最大許容光入力の大
きい方を接続することが望ましい。
【0057】以上述べてきたように、少なくとも2種類
の既知の波長で選択的に発振可能なモードロックリング
レーザを備え、モードロックリングレーザのリング中に
測定対象である被測定光部品2を挿入している。この構
成にモードロック発振を検知する第1の手段と、光学長
可変手段によって変化した光学長の変化分を検知するた
めの第3の手段とを接続することにより波長分散特性を
測定する装置が完成する。ただし、モードロックリング
レーザとして受動型モードロックリングレーザを使用し
た場合には、後述するように、パルスの繰り返し周波数
を調べる手段が必要である。
【0058】引き続き図1を用いて説明する。図1はモ
ードロックリングレーザとして能動型モードロックリン
グレーザを使用した例である。上述のように、波長選択
手段として波長可変光フィルタ12を用いている。ま
た、光変調器としては強度変調器13を用いている。
【0059】以下、モードロック発振を検知する第1の
手段について説明する。通常は、光検知器3及びそれに
接続されたオシロスコープ15を用いる。ただし、この
手段にもさまざまなものがあり、必ずしも以下の例に限
定されない。
【0060】モードロック発振を検知する第1の手段
は、光増幅器11、波長選択手段である波長可変光フィ
ルタ12、被測定光部品2および光変調器である強度変
調器13または非線型光学媒質である可飽和吸収体とか
ら構成されるリングに接続されている。そして、このリ
ング中の光は一部が取り出され、光検知器3に導かれ
る。光をリングから一部取り出すためには、光ファイバ
で結合した場合は光カプラが利用でき、空間結合の場合
はハーフミラーやビームスプリッタなどが利用できる
(図示せず)。光検知器3の出力信号を通常のオシロス
コープ15などで観察する。モードロック発振している
ときは、上記出力信号は光パルス列に対応してパルス信
号となるので、容易に判別できる。
【0061】オシロスコープ15には、外部トリガ信号
を必要とするものと、必要としないものの2種類があ
る。能動型モードロックリングレーザでは外部の信号源
として信号発生器14が存在するので、この信号を外部
トリガ信号として利用できる。図1の例では、外部トリ
ガ信号を必要とする種類のオシロスコープ15を使用し
た例である。
【0062】また、モードロック発振を検知する他の手
段として、光検知器3およびオシロスコープ15を用い
る代りに、ストリークカメラを用いて光パルス列が発生
しているかどうかを直接観察してもよい(図示せず)。
【0063】次に、光学長可変手段である光遅延器16
によって変化した光学長の変化分を検知する手段を説明
する。後に説明されるように、波長分散の測定に必要と
なるのは、光遅延器16の任意に設定された基準位置に
対する光学長の変化分であり、光学長そのものは必要で
ない。しかし、絶対的な光学長を検知する手段が用意さ
れているなら、それをもとに容易に光学長の変化分を得
ることができる。以下では、光学長を検知する手段が用
意されていないとして、光学長の変化分を検知する手段
について説明する。
【0064】光学長の変化分を検知する手段は、さまざ
まな手段が考えられるが、通常は光遅延器16の機能と
して備わっている。例えば、専用コントローラやパソコ
ンなどから光学長やその変化分を設定することのできる
光遅延器16を用いれば、その設定値を変化させること
は、光学長の変化分を検知したことと同義である。
【0065】また、コーナーキューブミラーが設置され
ている直線移動ステージの移動量を検知する手段が用意
されているような光遅延器16では、光遅延器内では光
が往復しているとみなすことが出来るのでステージの移
動量を2倍にして光学長の変化分を得ることができる。
【0066】光遅延器16にその機能として光学長の変
化分を検知する手段が用意されていない場合は、何らか
の手段によってコーナキューブミラーが設置されている
ステージの移動量を検知すればよい。ステージがステッ
ピングモーターによって駆動される方式ならば、ステー
ジを移動させるためにステッピングモーターに送出した
電気パルス数をカウントすることにより、このパルス数
とステージのギア比とからステージの移動量を知ること
ができる。さらにまた、ステージの移動軸の延長線上に
基準点を設け、この基準点とステージとの間の距離をマ
イクロメータ等で測定する方法もある。これらの方法に
よって得られたステージの移動量を2倍して、光学長の
変化分を検知することができる。
【0067】なお、厳密に光学長やその変化分を求める
ためには、ステージの移動量の2倍に空気の屈折率を乗
じなければならない。しかし、空気の屈折率はおよそ
1.0003程度なので、通常は空気の屈折率を無視し
てもそれによる誤差は0.03%を超えない。
【0068】また、光遅延器16の構成例として、導波
路の温度伸縮を用いた方式も考えられる。この場合も、
光学長の変化分を検知する何らかの手段が光遅延器16
の機能として用意されている場合が一般的である。この
ような手段が用意されていない場合は、実際の長さの変
化分を検知して、これに導波路媒質の屈折率を乗じれば
よい。
【0069】ここで、請求項で述べた一定のパルスの繰
り返し周波数でモードロック発振が発生するようにモー
ドロックリングレーザの光学長を調節することの、能動
型モードロックリングレーザにおける意昧を説明する。
【0070】能動型モードロックリングレーサにおいて
は、パルスの繰り返し周波数は、光変調器の変調周波数
に常に一致する。したがって、能動型モードロックリン
グレーザにおいてパルスの繰り返し周波数を一定に保つ
ということは、光変調器の変調周波数を一定に保持する
ことを意味する。ここで、モードロック発振している能
動型モードロックリングレーザにおいて、光変調器の変
調周波数が一定に保持されたまま、波長が変更された場
合を考える。リングレーザに波長分散があれば、リング
レーザの光学長がわずかながら変化し、よってリングレ
ーザの基本周波数が変化するので、モードロック発振は
発生しなくなるか、発生しても最適な状態ではなくな
る。
【0071】したがって、能動型モードロックリングレ
ーザにおいて、請求項で述べたことは、具体的には、光
変調器の変調周波数を一定の値に保持したまま、波長を
変更しても、モードロック発振を検知する第1の手段に
よってモードロック発振が検知され続けるように、光学
長可変手段である光遅延器の光学長を調節することを意
味している。
【0072】以下、測定の手順について説明する。ま
ず、第1の波長においてモードロック発振を発生させ
る。そのためには、光変調器の変調周波数と光遅延器の
光学長のいずれか一方もしくは両方を調節しながら、モ
ードロック発振を検知する第1の手段を用いて最適な変
調周波数もしくは光学長を決定する。このとき、光変調
器の変調周波数を調節することと光遅延器の光学長を調
節することは理論的には同質の効果を与えるが、発明の
効果で後述するとおり、一般的には光遅延器の光学長を
調節する方がより高い分解能が得られる。モードロック
発振が得られたときの光遅延器の光学長を、以後の測定
のための基準量とするために、[0]と設定する。
【0073】次に、波長選択手段である波長可変光フィ
ルタ12を操作して、モードロックリングレーザの発振
波長を変化させる。このときの出力波長をλ+Δλとす
る。このとき、被測定光部品2を含むモードロックリン
グレーザ全体の波長分散が0でない限り、発振波長変化
に起因してモードロック発振は最適な状態からずれてし
まう。
【0074】本発明では、光変調器の変調周波数を最初
の値に保持したまま、光学長可変手段である光遅延器1
6の光学長を調節する。モードロック発振を検知する第
1の手段によって最適なモードロック発振が検知される
ために必要な光学長の変化分を、光遅延器16などの検
知手段によって検知する。このようにして検知された光
学長の変化分をΔLとする。
【0075】このとき、(2) 式に対応する群遅延時間差
Δτと発振周波数の関係は(8) 式で与えられる。 f=1/(τ+Δτ+ΔL/c+T) …(8) ここで、cは光の速度(299792458m/s)で
ある。(1) 式及び (8)式より、群遅延時間差Δτは(9)
式で導かれる。
【0076】 Δτ=−ΔL/c …(9) したがって、前述した(5) 式に対応して、本実施例
における波長分数Dは(10)式で表される。
【0077】 D≒Δτ/(L×Δλ)=−ΔL/(c×L×Δλ) …(10) 上式より、ΔL、LおよびΔλを測定することにより波
長分散Dが計算される。また、前述した(7) 式に対応し
て、被測定光部品2の全分散量Daは(11)式で表され
る。
【0078】 Da≒Δτ/Δλ=−ΔL/(c×Δλ) …(11) 以上のような測定を行うことにより、従来の技術の課題
で述べられている電気部品の周波数特性による誤差の問
題は、本実施例では発生しない。しかし、光遅延器16
の構成要素としてプリズムなどの波長分散特性を持つ材
料や装置を使用した場合や、光部品の結合に波長分散特
性を持つ光ファイバを使用した場合には、それらの波長
分散特性による誤差が生じる。本実施例ではこのような
誤差を以下に述べる方法で校正して抑制することができ
る。
【0079】(9) 式で得られた群遅延時間差Δτは、被
測定光部品2のみによる群遅延時間差ΔτM と、被測定
光部品2以外の光部品による群遅延時間差ΔτL との和
であると考えられる。そこで被測定光部品2の入射端と
出射端を結合させて被測定光部品2を除いた波長分散測
定装置を構成し、上記と同様の測定を行なう。このとき
も発振周波数は、被測定光部品2を測定したときと同じ
周波数fを保つように、光遅延器16の光学長を調節す
る。
【0080】このときの(9) 式で得られた値は被測定光
部品2以外の光部品による群遅延時間差ΔτL である。
したがって、実際に被測定光部品2を挿入した時に得ら
れた群遅延時間差ΔτからこのΔτL を差し引くことに
より、被測定光部品2のみによる群遅延時間差ΔτM
求められる。この求められた群遅延時間差ΔτM および
(10)式より、被測定光部品2のみの波長分散Dが得られ
る。以上が校正の方法である。
【0081】なお、従来技術において同様に被測定光部
品2の入射端と出力端を短絡させると、全体の光学長が
短くなったことによって本来の測定時より繰り返し周波
数が高くなるので、電気部品に周波数特性が全くない場
合を除いて、被測定光部品2以外の波長分散特性を校正
することができない。
【0082】
【実施例】以下、本発明における光部品の波長分散測定
装置の具体的実施例を説明する。 (第1実施例)図1の測定装置に比較してさらに高精度
に基本周波数を測定するための第1実施例を図4に示
す。
【0083】第1実施例においては、図4に示すよう
に、光検知器3の出力信号を一部分岐させ、低域通過フ
ィルタ17を介してパワーメータ18に導く。低域通過
フィルタ17の通過帯域は、光増幅器11の緩和振動周
波数と呼ばれる周波数であるおよそ数10kHzを通過
させるように設定する。パワーメータ18によって測定
される低域のパワーは、完全なモードロック発振のとき
に最小になることが知られている(高良ほか、緩和振動
周波数成分抑圧によるモード同期Er添加ファイバレー
ザの安定化法、1995年電子情報通信学会総合大会、
B−1156)。こうして完全なモードロック発振の状
態になるように変調周波数を調整すれば、容易に光学長
の変化分を1μmの精度で測定することができる。な
お、図4のその他の構成は図1の測定装置と全く同様で
ある。
【0084】ところで、従来技術の項目でも述べたよう
に、波長分散は数学的には群遅延時間差の波長に対する
微分で表される。この微分量が直接得られるような波長
分散の測定方法も存在し、その方法を用いてもよいが、
本発明の実施の形態では、直接的に測定されるのは群遅
延時間差である。ここまでに述べられてきた方法は、群
遅延時間差の波長に対する微分を差分に置き換えた近似
式により、かつ、2種類の異なる波長における測定のみ
から波長分散を求める方法である。
【0085】しかし、群遅延時間差(あるいは光学長の
変化分)を測定する波長の数を2種類より多くし、それ
ぞれの波長に対応する光学長の変化分をそれぞれ測定す
れば、近似の精度が向上する。例えば、3種類の波長λ
−Δλ、λおよびλ+Δλにおいて、発振周波数を一定
値fに保つために必要な光遅延器16の光学長の変化分
がそれぞれ、−ΔL1 、0、およびΔL2 と測定された
とする。この3組の測定値を2次関数で近似すれば、波
長λにおける被測定光部品2の波長分散Dは(12)式で計
算される。
【0086】 D≒−(ΔL1 +ΔL2 )/(2×c×L×Δλ) …(12) また、被測定光部品2の全分散量Daは、前述した(11)
式に対応して(13)式で計算される。
【0087】 Da≒−(ΔL1 +ΔL2 )/(2×c×Δλ) …(13) なお、2組の測定がある場合の(10)式または(11)式や、
3組の測定がある場合の(12)式または(13)式、さらに多
数の測定がある場合のそれに対応する計算式によって、
波長分散Dまたは全分散量Daを計算する手段は、測定
後に測定者が計算する方式でもよいが、測定装置にこの
計算手順を組込むことも当然に可能である。
【0088】さらに、モードロック発振を最適な状態に
保持するように光学長可変手段である光遅延器16の光
学長を調節する操作も、測定者が手動で行う力式でもよ
いが、測定装置に組込むことも当然に可能である。
【0089】(第2実施例)図5は受動型モードロック
リングレーザを用いた光部品の波長分散測定装置の第2
実施例である。
【0090】この第2実施例では非線型光学媒質として
可飽和吸収体19を用いている。モードロック発振を検
知する第1の手段としてオシロスコープ15を用いる場
合、外部トリガ信号が利用できないので、外部トリガ信
号を必要としない種類のオシロスコープ15を用いる必
要がある。その他、光学長可変手段および光学長可変手
段によつて変化した光学長の変化分を検知する手段は、
前述した能動型モードロックレーザを利用した図4に示
す第1実施例と同様である。
【0091】請求項に述ベた一定のパルスの繰り返し周
波数でモードロック発振が発生するようにモ一ドロック
リングレーザの光学長を調節することの、受動型モード
ロックリングレーザにおける意味について説明する。
【0092】受動型モードロックリングレーザにおいて
は、パルスの繰り返し周波数は、リングレーザの光学長
の変化に応じて変化する。受動型のモードロックリング
レーザにおいて、最適なモードロック発振している状態
からモードロックリングレーザの光学長がわずかに変化
すると、最適なモードロック発振している状態は保たれ
たまま、パルスの繰り返し周波数が光学長の変化に対応
して変化する。
【0093】したがって、受動型モードロックリングレ
ーザにおいて、請求項で述べたことは具体的には、波長
の変更によつて結果的に生じるパルスの繰り返し周波数
の変化を打消すように、光学長可変手段である光遅延器
の光学長を調節することを意味している。
【0094】このため、受動型モードロックリングレー
ザを利用した第2実施例では、出力光パルスの繰り返し
周波数を測定する手段の追加が必要である。出力光パル
スの繰り返し周波数を測定するためには、光検知器3で
光パルス列を電気信号に変えた後、2分岐させてオシロ
スコープ15等で波形を観察するとともに、周波数カウ
ンタ20等を用いて電気パルス列の繰り返し周波数を測
定すればよい。すなわち、波長を変更したときに、周波
数カウンタ20等で測定される電気パルス列の繰り返し
周波数が一定の値に保たれるように、光学長可変手段で
ある光遅延器16の光学長を調節する。以下、波長分散
の計算方法は実施の形態及び第1実施例における説明と
同じである。
【0095】(第3実施例)図6は受動型モードロック
リングレーザを用いた光部品の波長分散測定装置の第3
実施例である。
【0096】この第3実施例の基本的な構成は図5に示
す第2実施例と同じであるが、相違点として周波数カウ
ンタ20の代りに発振器21と周波数位相比較器22、
そして周波数位相比較器22からの信号を受け、閉回路
の信号と発振器21からの信号との周波数及び位相差を
表示する周波数位相差表示器23が設けられている。な
お、これらの発振器21、周波数位相比較器22及び周
波数位相差表示器23は特別なものではなく、一般に市
販されているものでよい。
【0097】そして、この第3実施例での測定手順は次
のようになる。まず、第2実施例と同様に、モードロッ
ク発振させ、このとき周波数位相差表示器23に表示さ
れる周波数及び位相差が零になるように発振器21の発
振周波数を調整する。次に、波長を変更すると波長分散
によってパルスの繰り返し周波数が変わり、周波数位相
差表示器23に周披数及び位相差が表示される。したが
って、この周披数及び位相差が再び零になるように光遅
延器16の光学長を調整する。以下、波長分散の計算方
法は実施の形態及び第1実施例における説明と同じであ
る。
【0098】なお、第2,第3実施例において、パルス
の繰り返し周波数を一定に保つように光遅延器16の光
学長を調節する操作も、測定者が手動で行う方式でもよ
いが、測定装置に組込むことも当然に可能である。
【0099】
【発明の効果】本発明の光部品の波長分散測定装置にお
いては、リングを構成する部分を光のみで構成したの
で、従来技術における光検知器3、帯域通過用のフイル
タ4、増幅器5及び振輻制限器6における電気部品の周
波数応答特性、特に群遅延の周波数に対する依存性によ
る誤差は発生しない。
【0100】なお、本発明では従来技術に対して、波長
可変光フイルタ12や強度変調器13などの光部品が追
加されており、これらが測定上、無視できない波長分散
特性を持っている場合もあるが、その際は校正の項で説
明されている手順に従えば被測定光部品2だけの厳密な
波長分散が求められる。これに対し従来技術では電気信
号の周波数応答特性の問題を回避するのは非常に難し
い。
【0101】次に、本発明では光増幅器11を用いてい
ることにより、従来技術に対して波長の可変範囲が広い
という効果を有している。光増幅器11の説明で述べた
とおり、適当な光フイルタと組み合わせれば、50〜1
00nmの波長の可変範囲が得られる。この特性は、光
通信システムの設計などにおいて十分な可変範囲である
といえる。
【0102】また、(9) 式から明らかのように、波長の
可変範囲が大きいほど、より小さな波長分散も測定でき
るので、本発明では波長分散の分解能が高まっていると
いえる。さらに、被測定光部品2に入射する光電力につ
いても、光増幅器11の利得を調整することにより変更
する事ができるので、より実際の使用条件に近い形での
測定が可能である。
【0103】次に、モードロックリングレーザの変調周
波数は、光の周回の基本周波数にきわめて敏感である。
上記のような手段を用いれば、光学長の変化量ΔLを1
μmの精度で測定することは容易である。この精度に対
応する波長分散の測定精度は、被測定光部品2として長
さ100mの光ファイバを考えた場合、波長変化量Δλ
を従来技術と同じ5nmとして、0.007psec/
nm/kmに達する。この精度は、従来技術の理諭的な
限界をさらに2桁近く上回るものである。
【0104】さらに、本発明は、リング部分をすベて光
で周回させる方式であることによる別の効果も有してい
る。すなわち、従来技術の課題であった電気部の各部品
の調整が不要になり、測定の容易性および客観性(再現
性)が増している。
【0105】また、当然、群遅延特性の測定も可能であ
る。すなわち、少なくとも2つの異なる波長において光
学長の変化量ΔLを測定することにより、(9) 式から群
遅延時間差Δτが計算される。この群遅延測定における
従来技術に対する効果は、波長分散測定における本発明
の従来技術に対する効果と同様の点を指摘することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係わる光部品の波長分
散測定装置を示す図である。
【図2】 モードロック発振と光パルス列の関係を説明
するための図である。
【図3】 コーナキューブミラーを用いた光遅延器の動
作原理及び概略構成を示す図である。
【図4】 本発明の第1実施例に係わる光部品の波長分
散測定装置の概略構成を示す図である。
【図5】 本発明の第2実施例に係わる光部品の波長分
散測定装置の概略構成を示す図である。
【図6】 本発明の第3実施例に係わる光部品の波長分
散測定装置の概略構成を示す図である。
【図7】 従来の光部品の波長分散測定装置の概略構成
を示す図である。
【符号の説明】
2 被測定光部品 3 光検知器 11 光遅延器 12 波長可変光フィルタ 13 強度変調器 14 信号発生器 15 オシロスコープ 16 光遅延器 17 低域通過フィルタ 18 パワーメータ 19 可飽和吸収体 20 周波数カウンタ 21 発振器 22 周波数位相比較器 23 周波数位相差表示器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斉藤 崇記 東京都港区南麻布五丁目10番27号 アン リツ株式会社内 (72)発明者 高良 秀彦 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 川西 悟基 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 猿渡 正俊 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日 本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特公 平2−33971(JP,B2) 米国特許5619320(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01M 11/00 - 11/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも2種類の既知の波長で選択的
    に発振可能なモードロックリングレーザを備え、該モー
    ドロックリングレーザのリング中に被測定光部品を挿入
    することによって当該被測定光部品の波長分散特性を測
    定するための光部品の波長分散測定装置であって、 前記リングに接続されていて、モードロック発振を検知
    する第1の手段(3,15)と、 前記の少なくとも2種類の既知の波長のいずれにおいて
    も一定の繰り返し周波数でモードロック発振が発生する
    ように前記のモードロックリングレーザの光学長を調節
    する第2の手段(16)と、 前記光学長の変化分を検知する第3の手段(15,1
    4)とを備え、 前記の少なくとも2種類の既知の波長と、前記第3の手
    段で検知された光学長の変化分とに基づいて当該被測定
    光部品の波長分散特性を演算することを特徴とする光部
    品の波長分散測定装置。
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