詳細な説明
本開示は、本明細書で免疫増強剤mRNA構築物または免疫増強剤mRNA、例としては、化学修飾mRNA(mmRNA)と呼ばれる、目的の抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするmRNA構築物などの組成物を提供する。本開示の免疫増強剤mRNAは、例えば、目的の抗原に対する抗原特異的応答が刺激されるように、I型インターフェロン経路シグナル伝達を活性化すること、NFκB経路シグナル伝達を刺激すること、またはその両方によって免疫応答を増強する。本開示の免疫増強剤mRNAは、免疫増強剤mRNAが投与される対象において内因性抗原に対する免疫応答を増強するか、または免疫増強剤mRNAと共に対象に投与される外因性抗原(例えば、免疫増強剤mRNAまたは免疫増強剤mRNAとは別に処方され投与される目的の抗原をコードするmRNA構築物と共処方され同時投与される目的の抗原をコードするmRNA構築物)に対する免疫応答を増強する。
驚くべきことに、本開示の免疫増強剤mRNA(例えば、構成的に活性なSTINGポリペプチドをコードするmRNA)または免疫増強剤mRNAの組み合わせの対象への投与は、サイトカイン産生(例えば、炎症性サイトカイン産生)を刺激し、抗原特異的CD8+エフェクター細胞応答を刺激し、抗原特異的CD4+ヘルパー細胞応答を刺激し、エフェクターメモリーCD62LloT細胞集団を増大させ、目的の抗原に対する抗原特異的抗体産生を刺激することが発見された。
実施例に詳細に記載されるように、免疫増強剤mRNA構築物(または免疫増強剤mRNAの組み合わせ)の投与は、抗原に応答して、1つ以上のサイトカイン(例えば、IFN−γ、TNFα及び/またはIL−2)についてICSによって陽性であるCD8+T細胞の割合を増大させ、全T細胞集団のうちのCD8+T細胞の割合を増大させることが見出された(例えば、実施例5及び図8〜12)。注目すべきことに、これらの効果は、1つ以上のサイトカインについてICSによって陽性の抗原特異的CD8+T細胞のさらに高い割合がインビボで最大7週間維持されたため、耐久性であった(図11)。免疫増強剤mRNA構築物(または免疫増強剤mRNAの組み合わせ)の投与は、エフェクターメモリーCD62LloT細胞集団を増大させること(例えば、実施例5、6、及び実施例19)、及びこの効果は経時的に維持されること(実施例19及び図44)も見出された。重要なことに、抗原特異的T細胞応答及びmRNAワクチンに対する抗体応答の増強もまた、非ヒト霊長類において実証された(例えば、実施例12及び図28〜31)。
細菌ワクチンの状況では、免疫増強剤mRNA構築物の投与は、インビボで抗原特異的抗体応答を増大させることによって細菌ワクチンに対する体液性応答を増強することが示されている(例えば、実施例7及び図17)。
がんワクチンの状況では、免疫増強剤mRNA構築物の投与は、がんのネオエピトープに対する頑強で耐久性のある免疫応答をもたらすことが示され(実施例6)、そして発がん性ウイルスワクチンによる予防的及び治療的ワクチン接種において腫瘍増殖を強力に阻害することが示された(実施例10)。例えば、HPVワクチン接種と一緒の免疫増強剤mRNAの投与は、インビボでのHPV発現腫瘍細胞の増殖の予防(図19)において有効であり(単独でまたはチェックポイント阻害剤と組み合わせて)、及び免疫増強剤mRNAと一緒に(単独でまたはチェックポイント阻害剤と組み合わせて)HPVワクチンを用いた治療的ワクチン接種(すなわち、腫瘍チャレンジの後)は、インビボでHPV発現腫瘍の退行を誘導するのに有効であった(図20)。注目すべきことに、治療用ワクチンと共に免疫増強剤mRNAを投与することはまた、インビボで大きな確立された腫瘍を阻害することにおいて有効性を示した(図21)。
個別化がんワクチンの状況では、免疫増強剤mRNA構築物の投与は、クラスI及びクラスII MCH応答の両方を誘導する個別化がんワクチン(コンカテマー)をコードするmRNAに対する抗原特異的T細胞応答及び抗体応答を増強することが示されている(例えば、実施例20及び図45〜53)。免疫増強剤mRNAの投与はまた、様々な形式(モノマー及びコンカテマー)のKRASがん抗原をコードするmRNAに対する免疫応答を増強することも見出された(例えば、実施例13及び図32〜36)。
I型インターフェロン誘導因子及びNFκB活性化因子をコードする免疫増強剤mRNA(例えば、実施例14及び図37)の組み合わせ、ならびにTLRの下流で機能する細胞内シグナル伝達経路の構成要素をコードする免疫増強剤mRNAの組み合わせ(例えば、実施例15及び図38)が抗原特異的T細胞応答を増強することもまた実証された。アダプタータンパク質(例えば、STINGまたはMAVS)、NFκB活性化剤(例:IKKβ)、インフラマソームの誘導因子(例えば、カスパーゼ1/4)及びネクロトソームの誘導因子(例えば、MLKL)をコードする免疫増強剤mRNAの追加の組み合わせはまた、抗原特異的T細胞応答を増強することが示されている。驚くべきことに、アダプタータンパク質をコードするmRNA(例えば、STING)とネクロトソームの誘導因子をコードするmRNA(例えば、MLKL)との組み合わせは、MLKL単独をコードするmRNAと比較して高い活性を示した(例えば、実施例16及び図39〜40)。90日目の結果によって、免疫増強効果が持続的であったことが実証されている(例えば、実施例18及び図41)。
意外にも、免疫増強剤(Ag:IP)比に対する抗原の大部分にわたる免疫増強剤(例えば、STING)をコードするmRNAの添加は、抗原単独と比較して抗原特異的T細胞応答を改善することが見出された(例えば、実施例20)。応答性の幅は予想外であった。試験した6つの抗原(エピトープ)のうち4つについて、免疫増強剤をコードするmRNAの抗原への添加は、抗原単独よりも一貫してより高いT細胞応答を生じた。かくして、免疫原性を改善するために、抗原対免疫増強剤の比に広い釣鐘曲線があることが発見された。
試験した全ての抗原にわたって免疫増強剤(例えば、STING)をコードするmRNAを添加すると、抗原単独と比較して抗原に対する免疫応答が増強されることも発見された。ほとんどの場合、免疫増強の少なくとも2倍の増大が見られ、そして特定の抗原については、免疫増強のさらに一層の増強が生じた(例えば、5倍超、10倍超、20倍超、30倍超、50倍超、または75倍超の増強)(例えば、実施例21)。
したがって、本開示は、1つ以上のmRNA構築物(例えば、1つ以上のmmRNA構築物)を含む組成物を提供し、ここで1つ以上のmRNA構築物は、目的の抗原(複数可)をコードし、同じまたは別々のmRNA構築物では、目的の抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、本開示は、単独でまたは目的の抗原をコードするmRNAと組み合わせて免疫応答を増強する、免疫増強剤mRNAを含むナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子を提供する。本開示はまた、本明細書に記載の任意のmRNAまたはナノ粒子、例えば、本明細書に記載の任意のmRNAを含む脂質ナノ粒子を含む薬学的組成物も提供する。
別の態様では、本開示は、ネクロトーシスまたはパイロトーシスなどの免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする1つ以上のmRNA構築物(例えば、1つ以上のmmRNA構築物)を含む組成物を提供する。そのようなmRNA構築物を、本開示の免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせて使用して、インビボでの内因性抗原の放出を増強し、それによって内因性抗原に対する免疫応答を刺激し得る。いくつかの態様では、本開示は、免疫原性細胞死誘導mRNAを単独でまたは免疫増強剤mRNAと組み合わせて含む、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子を提供する。本開示はまた、本明細書に記載の任意のmRNAまたはナノ粒子、例えば、本明細書に記載の任意のmRNAを含む脂質ナノ粒子を含む薬学的組成物を提供する。
他の態様では、本開示は、対象に免疫増強剤mRNA構築物を単独で(内因性抗原のために)投与することによって、または目的の抗原(複数可)をコードする1つ以上のmRNA、及び目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするmRNA、またはそれらの脂質ナノ粒子、またはそれらの薬学的組成物を投与することによって、目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強して、その結果目的の抗原に対する免疫応答が、対象において増強される方法を提供する。免疫応答を増強する方法は、例えば、対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激するため、対象において病原体に対する免疫原性応答を刺激するため、または対象においてワクチンに対する免疫応答を増強するために使用されてもよい。
免疫増強剤mRNA
本開示の一態様は、目的の1つ以上の抗原に対する免疫応答を刺激または増強するポリペプチドをコードするmRNAに関する。目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するそのようなmRNAは、本明細書において、免疫増強剤mRNA構築物または免疫増強剤mRNA、例としては、化学修飾mRNA(mmRNA)と呼ばれる。本開示の免疫増強剤は、対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強する。増強された免疫応答は、細胞性応答、体液性応答、またはその両方であり得る。本明細書中で使用される場合、「細胞性」免疫応答とは、T細胞を含むかまたはそれによって媒介される免疫応答を包含することを意図し、一方、「体液性」免疫応答とは、B細胞を含むかまたはそれによって媒介される免疫応答を包含することを意図する。免疫増強剤は、例えば、以下によって免疫応答を増強し得る、
(i)I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること;
(ii)NFκB経路シグナル伝達を刺激すること;
(iii)炎症反応を刺激すること;
(iv)サイトカイン産生を刺激すること;または
(v)樹状細胞の発達、活性または動員を刺激すること;及び
(vi)(i)〜(vi)のいずれかの組み合わせ。
本明細書で使用される場合、「I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること」とは、I型インターフェロンシグナル伝達経路の1つ以上の構成要素の活性化(例えば、そのような構成要素のリン酸化、二量体化などの改変であって、それによって経路を活性化するための改変)、インターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)からの転写の刺激、及び/またはI型インターフェロン(例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−ε、IFN−κ及び/またはIFN−ω)の産生もしくは分泌の刺激を包含するものとする。本明細書中で使用される場合、「NFκB経路シグナル伝達を刺激すること」とは、NFκBシグナル伝達経路の1つ以上の構成要素の活性化(例えば、そのような構成要素のリン酸化、二量体化などの改変であって、それによって経路を活性化するための改変)、NFκB部位からの転写を刺激すること、及び/またはその発現がNFκBによって調節される遺伝子産物の産生を刺激することを包含するものとする。本明細書中で使用される場合、「炎症反応を刺激すること」とは、炎症性サイトカイン(限定するものではないが、I型インターフェロン、IL−6及び/またはTNFαを含む)の産生を刺激することを包含するものとする。本明細書中で使用される場合、「樹状細胞の発達、活性または動員を刺激すること」とは、樹状細胞の成熟、増殖及び/または機能的活性を直接的または間接的に刺激することを包含するものとする。
特定の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、例えば、免疫増強剤の非存在下での抗原に対する免疫応答に比べて、または抗原に対する免疫応答を増強する低分子アゴニストに比べて、目的の抗原に対する免疫応答を何倍も増強する。例えば、様々な実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、目的の抗原に対する免疫応答を、例えば、免疫増強剤mRNA構築物の非存在下での抗原に対する免疫応答と比較して、または例えば、抗原に対する免疫応答の低分子アゴニストの存在下での抗原に対する免疫応答と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、またはそれ以上増強する。いくつかの実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、目的の抗原に対する免疫応答を、例えば、免疫増強剤mRNA構築物の非存在下での抗原に対する免疫応答と比較して、または例えば、抗原に対する免疫応答の低分子アゴニストの存在下での抗原に対する免疫応答と比較して、0.3〜1000倍、1〜750倍、5〜500倍、7〜250倍、または10〜100倍増強する。免疫増強剤構築物の倍数増強は、当該技術分野において公知の標準的な方法を用いて(例えば、実施例に記載されるように)測定され得る。例えば、炎症性サイトカイン(例えば、IFN−γ及び/またはTNF−α)を発現する抗原特異的T細胞のレベルは、実施例に記載されるように、例えば、細胞内染色(ICS)またはELISpot分析によって評価され得る。
いくつかの態様では、本開示は、例えば、適応免疫を誘導すること(例えば、I型インターフェロン産生を刺激することにより)、炎症応答を刺激すること、NFκBシグナル伝達を刺激すること、及び/または対象における樹状細胞(DC)の発達、活性もしくは動員を刺激することによって、それを必要とする対象において免疫応答を刺激または増強する(例えば、その対象における免疫応答を増強する)ポリペプチドをコードするmRNAを提供する。いくつかの態様では、それを必要とする対象への免疫増強剤mRNAの投与は、対象において、細胞性免疫(例えば、T細胞媒介性免疫)、体液性免疫(例えば、B細胞媒介性免疫)、または細胞性免疫及び体液性免疫の両方を増強する。いくつかの態様では、免疫増強剤mRNAの投与は、サイトカイン産生(例えば、炎症性サイトカイン産生)を刺激するか、抗原特異的CD8+エフェクター細胞応答(細胞性免疫)を刺激するか、抗原特異的CD4+ヘルパー細胞応答を刺激するか、エフェクターメモリーCD62LloT細胞集団を増大するか、B細胞活性を刺激するか、または抗原特異的抗体産生を刺激し、これには前述の応答の組み合わせを包含する。いくつかの態様では、免疫増強剤mRNAの投与は、サイトカイン産生(例えば、炎症性サイトカイン産生)を刺激し、抗原特異的CD8+エフェクター細胞応答を刺激する。いくつかの態様では、免疫増強剤mRNAの投与は、サイトカイン産生(例えば、炎症性サイトカイン産生)を刺激し、抗原特異的CD4+ヘルパー細胞応答を刺激する。いくつかの態様では、免疫増強剤mRNAの投与は、サイトカイン産生(例えば、炎症性サイトカイン産生)を刺激し、エフェクターメモリーCD62LloT細胞集団を増大する。いくつかの態様では、免疫増強剤mRNAの投与は、サイトカイン産生(例えば、炎症性サイトカイン産生)を刺激し、B細胞活性を刺激するか、または抗原特異的抗体産生を刺激する。
一実施形態では、免疫増強剤は、抗原特異的CD8+エフェクター細胞応答(細胞性免疫)を増大させる。例えば、免疫増強剤は、CD8+T細胞増殖及びCD8+T細胞サイトカイン産生を含むがこれらに限定されない、抗原特異的CD8+エフェクター細胞活性の1つ以上の指標を増大し得る。例えば、一実施形態では、免疫増強剤は、抗原特異的CD8+T細胞によるIFN−γ、TNFα及び/またはIL−2の産生を増大させる。様々な実施形態では、免疫増強剤は、抗原に応答してCD8+T細胞サイトカイン産生(例えば、IFN−γ、TNFα及び/またはIL−2産生)を(免疫増強剤の非存在下におけるCD8+T細胞サイトカイン産生と比較して)少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%または少なくとも40%または少なくとも45%または少なくとも50%増大し得る。例えば、処置された対象から得られたT細胞を、目的の抗原を用いてインビトロで刺激してもよく、CD8+T細胞サイトカイン産生をインビトロで評価し得る。CD8+T細胞サイトカイン産生は、限定するものではないが、サイトカイン産生の分泌レベルの測定(例えば、ELISAまたは上清中のサイトカイン量を決定するための当該技術分野で公知の他の適切な方法による)及び/またはサイトカインの細胞内染色(ICS)について陽性であるCD8+T細胞の割合の決定、を含む当該技術分野で公知の標準的な方法によって決定できる。例えば、IFN−γ、TNFα及び/またはIL−2の発現のためのCD8+T細胞の細胞内染色(ICS)は、当該技術分野において公知の方法(例えば、実施例を参照のこと)によって実行され得る。一実施形態では、免疫増強剤は、抗原に応答して、1つ以上のサイトカイン(例えば、IFN−γ、TNFα及び/またはIL−2)についてICSにより陽性であるCD8+T細胞の割合を(免疫増強剤の非存在下でサイトカイン(複数可)に関してICSにより陽性であるCD8+T細胞の割合と比較して)、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%または少なくとも40%または少なくとも45%または少なくとも50%増大する。
さらに別の実施形態では、免疫増強剤は、免疫増強剤の非存在下でのCD8+T細胞の割合と比較して、全T細胞集団(例えば、脾臓T細胞及び/またはPBMC)のうちのCD8+T細胞の割合を増大させる。例えば、免疫増強剤は、全T細胞集団のうちのCD8+T細胞の割合を、免疫増強剤の非存在下でのCD8+T細胞の割合と比較して、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%または少なくとも40%または少なくとも45%または少なくとも50%増大し得る。全T細胞集団のうちのCD8T+細胞の全割合は、蛍光活性化細胞選別(FACS)または磁気活性化細胞選別(MACS)を含むがこれらに限定されない当該技術分野において公知の標準的な方法によって決定され得る。
別の実施形態では、免疫増強剤は、免疫増強剤の非存在下における腫瘍容積と比較して、免疫増強剤の存在下におけるインビボでの腫瘍容積の減少によって決定されるように、腫瘍特異的免疫細胞応答を増大させる。例えば、免疫増強剤は、腫瘍容積を、免疫増強剤の非存在下での腫瘍容積と比較して、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%または少なくとも40%または少なくとも45%または少なくとも50%低下し得る。腫瘍容積の測定は、当該技術分野において十分に確立されている方法によって決定され得る。
別の実施形態では、免疫増強剤は、例えば、免疫増強剤の非存在下での抗原特異的抗体産生と比較して、抗原特異的抗体産生量を増大させることによって、B細胞活性(体液性免疫応答)を増大させる。例えば、免疫増強剤は、抗原特異的抗体産生を、免疫増強剤の非存在下での抗原特異的抗体産生と比較して、少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%または少なくとも40%または少なくとも45%または少なくとも50%増大し得る。一実施形態では、抗原特異的IgG産生が評価される。抗原特異的抗体産生は、試料(例えば、血清試料)中の抗原特異的抗体(例えば、IgG)のレベルを測定する、ELISA、RIAなどを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で十分確立された方法によって評価され得る。
別の実施形態では、免疫増強剤はエフェクターメモリーCD62LloT細胞集団を増大させる。例えば、免疫増強剤は、CD8+T細胞のうちのCD62LloT細胞の総%を増大し得る。他の機能のうちでも、エフェクターメモリーCD62LloT細胞集団は、リンパ球輸送において重要な機能を有することが示されている(例えば、Schenkel,J.M.及びMasopust,D.(2014)Immunity 41:886〜897を参照のこと)。様々な実施形態では、免疫増強剤は、抗原に応答してCD8+T細胞のうちのエフェクターメモリーCD62LloT細胞の総割合を(免疫増強剤の非存在下でのCD8+T細胞集団のうちのCD62LloT細胞の総割合と比較して)少なくとも5%または少なくとも10%または少なくとも15%または少なくとも20%または少なくとも25%または少なくとも30%または少なくとも35%または少なくとも40%または少なくとも45%または少なくとも50%増大し得る。CD8+T細胞のうちのエフェクターメモリーCD62LloT細胞の総割合は、蛍光活性化細胞選別(FACS)または磁気活性化細胞選別(MACS)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の標準的な方法によって決定され得る。
目的の抗原に対する免疫応答を増強する免疫増強剤mRNA構築物の能力は、長期間、例えば、90日間もの期間にわたって増強された免疫原性が観察されることで、耐久性があることが示されている。したがって、様々な実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、または少なくとも3ヶ月、またはそれ以上の期間、抗原特異的免疫応答を増強し得る。
免疫増強剤mRNA構築物が目的の抗原に対する免疫応答を増強する能力は、当該分野で公知のマウスモデル系において評価され得る。一実施形態では、イムノコンピテントなマウスモデル系が使用される。一実施形態では、マウスモデル系は、C57/Bl6マウスを含む(例えば、実施例に記載されるように、目的の抗原に対する抗原特異的CD8+T細胞応答を評価するため)。別の実施形態では、マウスモデル系は、BalbCマウスまたはCD1マウスを含む(例えば、抗原特異的抗体応答などのB細胞応答を評価するために)。
いくつかの実施形態では、本開示の免疫増強剤ポリペプチドは、少なくとも1つのToll様受容体(TLR)の下流で機能し、それによって免疫応答を増強する。したがって、一実施形態では、この免疫増強剤はTLRではなく、受容体自体の下流のTLRシグナル伝達経路内の分子である。
いくつかの実施形態では、このポリペプチドはI型インターフェロン(IFN)応答を刺激する。免疫増強剤としての使用に適しているI型IFN応答を刺激するポリペプチドの非限定的な例としては、STING、MAVS、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、TBK1、IKKα、IKKi、MyD88、TRAM、TRAF3、TRAF6、IRAK1、IRAK4、TRIF、IPS−1、RIG−1、DAI及びIFI16が挙げられる。I型インターフェロン(IFN)応答を刺激するポリペプチドの具体例は、以下にさらに記載される。
別の実施形態では、ポリペプチドは、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激するポリペプチドの非限定的な例としては、STING、c−FLIP、IKKβ、RIPK1、Btk、TAK1、TAK−TAB1、TBK1、MyD88、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TAB2、TAB3、TRAF6、TRAM、MKK3、MKK4、MKK6及びMKK7が挙げられる。NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激するポリペプチドの具体例は以下にさらに記載される。
別の実施形態では、ポリペプチドは細胞内アダプタータンパク質である。一実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、I型IFN応答を刺激する。別の実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。細胞内アダプタータンパク質の非限定的な例としては、STING、MAVS及びMyD88が挙げられる。細胞内アダプタータンパク質の具体例は以下にさらに記載される。
別の実施形態では、ポリペプチドは、胞内シグナル伝達タンパク質である。一実施形態では、このペプチドは、TLRシグナル伝達経路の細胞内シグナル伝達タンパク質である。一実施形態では、この細胞内シグナル伝達タンパク質は、I型IFN応答を刺激する。別の実施形態では、細胞内シグナル伝達タンパク質は、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。細胞内シグナル伝達タンパク質の非限定的な例としてはMyD88、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TRAF3、TRAF6、TAK1、TAB2、TAB3、TAK−TAB1、MKK3、MKK4、MKK6、MKK7、IKKα、IKKβ、TRAM、TRIF、RIPK1、及びTBK1が挙げられる。細胞内シグナル伝達タンパク質の具体例は、以下にさらに記載される。
別の実施形態では、ポリペプチドは転写因子である。一実施形態では、この転写因子はI型IFN応答を刺激する。別の実施形態では、この転写因子はNFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。転写因子の非限定的な例としては、IRF3またはIRF7が挙げられる。転写因子の具体例は以下にさらに記載される。
別の実施形態では、ポリペプチドはネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与している。タンパク質がネクロトーシス自体を媒介するか、またはネクロトーシスの媒介及び/またはネクロトソーム形成においてさらなる分子と関与する場合、ポリペプチドは、ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に「関与している」。ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与するポリペプチドの非限定的な例としては、MLKL、RIPK1、RIPK3、DIABLO及びFADDが挙げられる。ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与するポリペプチドの具体例は、以下にさらに記載される。
別の実施形態では、ポリペプチドは、パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与している。ポリペプチドは、タンパク質がそれ自体でパイロトーシスを媒介するか、またはパイロトーシスの媒介及び/またはインフラマソーム形成においてさらなる分子と関与する場合、パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に「関与する」。パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与するポリペプチドの非限定的な例としては、カスパーゼ1、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ11、GSDMD、NLRP3、Pyrinドメイン及びASC/PYCARDが挙げられる。パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与するポリペプチドの具体例は、以下にさらに記載される。
いくつかの実施形態では、免疫増強剤をコードする本開示のmRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基を含み得る。適切な修飾は、以下にさらに考察される。
いくつかの実施形態では、免疫増強剤をコードする本開示のmRNAは、脂質ナノ粒子に処方される。一実施形態では、脂質ナノ粒子はさらに、目的の抗原をコードするmRNAを含む。一実施形態では、脂質ナノ粒子を対象に投与して、その対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強する。適切なナノ粒子及び使用方法は、以下でさらに考察される。
別の実施形態では、本開示は、2つ以上の免疫増強剤mRNAの組み合わせを含む組成物を提供する。2つ以上の免疫増強剤mRNAは、同じ種類の免疫増強剤(例えば、I型インターフェロン(IFN)応答を刺激する2つ以上の免疫増強剤)であってもよいし、または異なる種類の免疫増強剤であってもよい。したがって、一実施形態では、本開示は、対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強する第1のポリペプチドをコードする第1のメッセンジャーRNA(mRNA)、対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強する第2のポリペプチドをコードする第2のmRNA、及び、必要に応じて対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強する第3のポリペプチドをコードする第3のmRNA(及び必要に応じて、免疫増強剤をコードする第4、5、6またはそれ以上のmRNA)を含む組成物を提供し、
ここでこの免疫応答は、以下:
(i)I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること;
(ii)NFκB経路シグナル伝達を刺激すること;
(iii)炎症反応を刺激すること;
(iv)サイトカイン産生を刺激すること;または
(v)樹状細胞の発達、活性または動員を刺激すること;及び
(vi)(i)〜(vi)のいずれかの組み合わせ、
によって特徴付けられる細胞性免疫応答または体液性免疫応答を含む。
いくつかの実施形態では、第1、第2及び/または必要に応じて第3のポリペプチド(及び必要に応じて第4、5、6またはそれ以上のポリペプチド)は、少なくとも1つのToll様受容体(TLR)の下流で機能し、それによって免疫応答を増強する。
組み合わせ組成物の様々な実施形態では:
(i)第1のポリペプチドは、I型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、そして第2のポリペプチドは、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激するか;
(ii)第1のポリペプチドは、I型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、そして第2のポリペプチドはネクロトーシスもしくはネクロトソーム形成に関与するか;
(iii)第1のポリペプチドは、I型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、そして第2のポリペプチドは、パイロトーシスもしくはインフラマソーム形成に関与するか;
(iv)第1のポリペプチドは、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激し、そして第2のポリペプチドは、ネクロトーシスもしくはネクロトソーム形成に関与するか;
(v)第1のポリペプチドが、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激し、そして第2のポリペプチドが、パイロトーシスもしくはインフラマソーム形成に関与するか;
(vii)第1のポリペプチドがI型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、第2のポリペプチドがNFκB媒介炎症誘発性応答を刺激し、そして第3のポリペプチドがネクロトーシスもしくはネクロトソーム形成に関与するか;または
(viii)第1のポリペプチドがI型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、第2のポリペプチドが、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激し、そして第3のポリペプチドが、パイロトーシスもしくはインフラマソーム形成に関与する。
免疫増強剤のこれらのカテゴリーのそれぞれの適切な非限定的な例は、上に列挙されており、そして以下にさらに詳細に記載される。列挙された免疫増強剤の全ての組み合わせが企図される。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドはI型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、STING、MAVS、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、TBK1、IKKα、IKKi、MyD88、TRAM、TRAF3、TRAF6、IRAK1、IRAK4、TRIF、IPS−1、RIG−1、DAI及びIFI16からなる群より選択され;第2のポリペプチドは、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激し、STING、c−FLIP、IKKβ、RIPK1、Btk、TAK1、TAK−TAB1、TBK1、MyD88、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TAB2、TAB3、TRAF6、TRAM、MKK3、MKK4、MKK6、及びMKK7からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、構成的に活性なIRF3であり、第2のポリペプチドは、構成的に活性なIKKβである。いくつかの実施形態では、この組成物は構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードするmRNAをさらに含む(すなわち、この組成物は、構成的に活性なIRF3、構成的に活性なIRF7ポリペプチド及び構成的に活性なIKKβをコードするmRNAを含む)。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、I型インターフェロン(IFN)応答を刺激し、STING、MAVS、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8、IRF9、TBK1、IKKα、IKKi、MyD88、TRAM、TRAF3、TRAF6、IRAK1、IRAK4、TRIF、IPS−1、RIG−1、DAI及びIFI16からなる群より選択され;第2のポリペプチドは、ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与し、そしてMLKL、RIPK1、RIPK3、DIABLO及びFADDからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは構成的に活性なSTINGであり、第2のポリペプチドはMLKLポリペプチドである。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激し、STING、c−FLIP、IKKβ、RIPK1、Btk、TAK1、TAK−TAB1、TBK1、MyD88、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TAB2、TAB3、TRAF6、TRAM、MKK3、MKK4、MKK6、及びMKK7からなる群より選択され;そして、第2のポリペプチドは、パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与し、そしてカスパーゼ1、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ11、GSDMD、NLRP3、Pyrinドメイン及びASC/PYCARDからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、構成的に活性なIKKβであり、第2のポリペプチドはカスパーゼ−1ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、この組成物はさらにカスパーゼ−4ポリペプチドをコードするmRNAを含む(すなわち、この組成物は構成的に活性なIKKβ、カスパーゼ−1ポリペプチド及びカスパーゼ−4ポリペプチドをコードするmRNAを含む)。
いくつかの実施形態では、2つ以上の免疫増強剤をコードする本開示の組み合わせ組成物は、1つ以上の修飾核酸塩基を含む1つ以上のmRNAを含む。適切な修飾は、以下にさらに考察される。
いくつかの実施形態では、2つ以上の免疫増強剤をコードする本開示の組み合わせ組成物は、脂質ナノ粒子に処方される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、目的の抗原をコードするmRNAをさらに含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、対象に投与されて、対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強する。適切なナノ粒子及び使用方法は、以下でさらに考察される。
I型インターフェロンを刺激する免疫増強剤mRNA
いくつかの態様では、本開示は、I型インターフェロン経路シグナル伝達をシミュレートまたは増強し、それによってI型インターフェロン(IFN)産生を刺激または増強することによって、目的の抗原に対する免疫応答を刺激または増強するポリペプチドをコードする免疫増強剤mRNAを提供する。抗腫瘍または抗微生物適応免疫の誘導を成功させるには、I型IFNシグナル伝達が必要であることが確認されている(例えば、Fuertes、M.B.et al.,(2013)Trends Immunol.34:67−73を参照のこと)。I型IFN(IFN−α、IFN−β、IFN−ε、IFN−κ及びIFN−ωを含む)の産生は、ウイルス感染などの微生物感染の排除において、ある役割を果たす。宿主細胞DNA(例えば、損傷を受けた細胞または死にかけている細胞に由来する)は、I型インターフェロン産生を誘導し得ること、及びI型IFNシグナル伝達経路は、適応抗腫瘍免疫の発生において、ある役割を果たすこともまた認識されている。しかし、多くの病原体及びがん細胞は、I型インターフェロン応答を減少または阻害するための機構を進化させてきた。したがって、それを必要とする対象におけるI型IFNシグナル伝達経路の活性化(刺激及び/または増強を含む)は、本開示の免疫増強剤mRNAを対象に提供することによって、保護免疫を提供するためのワクチン反応の増強の場合と同様に、がん及び病原性感染症の処置を含む、広範な種々の臨床状況において対象における免疫応答を刺激または増強する。
I型インターフェロン(IFN)は、典型的にはウイルス感染の際に複数の異なる細胞型において急速に産生され、そして多種多様な効果を有することが知られている炎症誘発性サイトカインである。インビボでのI型IFN産生の標準的な結果は、抗菌細胞プログラムの活性化、ならびに先天性免疫応答及び適応的免疫応答の発達である。I型IFNは、感染した細胞及び隣接する細胞において、感染性物質、特にウイルス性病原体の蔓延を制限する細胞固有の抗菌状態を誘導する。I型IFNはまた、抗原提示及びナチュラルキラー細胞機能を促進するために、先天性免疫細胞活性化(例えば、樹状細胞の成熟)を調節する。I型IFNはまた、高親和性抗原特異的T細胞及びB細胞応答、ならびに免疫学的記憶の発達を促進する(Ivashkiv and Donlin(2014)Nat Rev Immunol14(1):36−49)。
I型IFNは、樹状細胞(DC)を活性化し、そして自己分泌シグナル伝達を介してそれらのT細胞刺激能力を促進する(Montoya et al.,(2002)Blood 99:3263−3271)。I型IFN曝露は、ケモカイン受容体及び接着分子(例えば、流入領域リンパ節へのDC移動を促進するため)、共刺激分子、ならびにMHCクラスI及びクラスII抗原提示の発現を増大させることによってDCの成熟を促進する。I型IFN曝露後に成熟するDCは、防御的T細胞応答を効果的に初回刺激し得る(Wijesundara et al.,(2014)Front Immunol 29(412)及びその中の引用文献)。
I型IFNは、T細胞受容体シグナル伝達と比較したI型IFNシグナル伝達のタイミングに大きく依存して、T細胞活性化、増殖、分化及び生存の促進または阻害のいずれかを行い得る(Crouse et al.,(2015)Nat Rev Immunol15:231−242)。初期の研究では、MHC−I発現が、複数の細胞型においてI型IFNに応答してアップレギュレートされることが明らかになり(Lindahl et al.,(1976),J Infect Dis 133(Suppl):A66−A68;Lindahl et al.,(1976),Proc Natl Acad Sci USA 17:1284−1287)、これは、最適なT細胞刺激、分化、増殖及び細胞溶解活性のための必要条件である。I型IFNは、CD8T細胞に対して強力な同時刺激効果を発揮し、CD8T細胞の増殖及び分化を増強し得る(Curtsinger et al.,(2005)J Immunol174:4465−4469;Kolumam et al.,(2005)J Exp Med 202:637−650)。
T細胞に対する効果と同様に、I型IFNシグナル伝達は、曝露のタイミング及び状況に応じて、B細胞応答に対して正及び負の両方の効果を有する(Braun et al.,(2002)Int Immunol 14(4):411〜419;Lin et al.,(1998)187(1):79−87)。未成熟B細胞の生存及び成熟は、I型IFNシグナル伝達によって阻害され得る。未成熟B細胞とは対照的に、I型IFN曝露は、ウイルス感染後または実験的免疫後のB細胞活性化、抗体産生及びアイソタイプスイッチを促進することが示されている(Le Bon et al.,(2006)J Immunol 176:4:2074−2078;Swanson et al.,(2010)J Exp Med 207:1485−1500)。
STING、インターフェロン調節性因子、例えば、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8、及びIRF9、TBK1、IKKi、MyD88、MAVS及びTRAMを含む、I型IFN経路シグナル伝達に関与する多数の構成要素が確認されている。I型IFN経路シグナル伝達に関与するさらなる構成要素としては、IKKα、TRAF3、TRAF6、IRAK−1、IRAK−4、TRIF、IPS−1、TLR−3、TLR−4、TLR−7、TLR−8、TLR−9、RIG−1、DAI及びIFI16が挙げられる。
したがって、一実施形態では、免疫増強剤mRNAは、I型IFN経路シグナル伝達に関与する前述の構成要素のいずれかをコードする。
STINGをコードする免疫増強剤mRNA
本開示は、構成的に活性な形態のSTINGを免疫増強剤として含む、STINGをコードするmRNA(mmRNAを含む)を包含する。STING(STimulator of INterferon Genes;膜貫通タンパク質173(TMEM173)、IRF3活性化のメディエータ(MITA)、メチオニン−プロリン−チロシン−セリン(MPYS)、及びER IFN刺激剤(ERIS)としても公知)は、379アミノ酸であり、I型IFN及び炎症誘発性サイトカインを含む免疫応答遺伝子の転写を制御するシグナル伝達分子として機能する小胞体(ER)内在性膜貫通タンパク質である(Ishikawa&Barber、(2008)Nature 455:647−678;Ishikawa et al.,(2009)Nature 461:788〜792;Barber(2010)Nat Rev Immunol15(12):760〜770)。
STINGは、DNAの細胞質ゾル検出を、TBK1/IRF3/I型IFNシグナル伝達軸に連結するシグナル伝達アダプターとして機能する。STINGのシグナル伝達アダプター機能は、環状ジヌクレオチド(CDN)の直接感知を通して活性化される。CDNの例としては、環状ジ−GMP(グアノシン5’−一リン酸)、環状ジ−AMP(アデノシン5’−一リン酸)及び環状GMP−AMP(cGAMP)が挙げられる。当初偏在性の細菌性二次メッセンジャーとして特徴付けられたCDNは、STINGとの直接相互作用を介してTBK1/IRF3/I型IFNシグナル伝達軸を活性化する、あるクラスの病原体関連分子パターン分子(PAMP)を構成することが現在知られている。STINGは、細菌由来のCDN及び/または宿主タンパク質環状GMP−AMPシンターゼ(cGAS)由来のCDNを含む、細胞のサイトゾル中の異常なDNA種及び/またはCDNを感知し得る。cGASタンパク質は、細胞質ゾル中のDNAの検出に応答してcGAMPを産生するDNAセンサーである(Burdette et al.,(2011)Nature 478:515−518;Sun et al.,(2013)Science 339:786〜791;Diner et al.,(2013)Cell Rep 3:1355−1361;Ablasser et al.,(2013)Nature 498:380−384)。
CDNに結合すると、STINGは、二量体化し、TANK結合キナーゼ1(TBK1)との複合体の形成を促進する立体構造変化を受ける(Ouyang et al.,(2012)Immunity 36(6):1073−1086)。この複合体は、核周囲ゴルジに転位し、それがエンドリソソーム区画へのTBK1の送達をもたらし、そこでそれはIRF3及びNF−κB転写因子をリン酸化する(Zhong et al.、(2008)Immunity 29:538−550)。最近の研究では、STINGが、TBK1によるIRF3のリン酸化を特異的に促進するようにTBK1及びIRF3の両方に結合することによって足場として機能することが示された(Tanaka&Chen、(2012)Sci Signal 5(214):ra20)。IRF3依存性、IRF7依存性及びNF−κB依存性のシグナル伝達経路の活性化は、抗病原体及び/または抗腫瘍活性を促進する、サイトカイン及びI型IFNなどの他の免疫応答関連タンパク質の産生を誘導する。
多くの研究が、体液性及び細胞性免疫応答を誘発するための潜在的なワクチンアジュバントまたは免疫調節剤としてのSTINGのCDNアゴニストの使用を検討している(Dubensky et al.,(2013)Ther Adv Vaccines 1(4):131−143、及びその中の引用文献)。初期の研究では、CDN c−di−GMPの投与が、インビボでStaphylococcus aureus感染を減弱させ、マウス感染モデルにおいて回収された細菌細胞の数を減少させたがc−di−GMPは、インビトロで細菌細胞に対して観察可能な阻害または殺菌効果を示さず、細菌細胞の減少が宿主の免疫系への影響によるものであることが示唆されている(Karaolis et al.,(2005)Antimicrob Agents−Chemother 49:1029−1038;Karaolis et al.,(2007)Infect Immun 75:4942−4950)。最近の研究は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)産生がんワクチン(STINGVAXと呼ばれる)を用いて処方された合成CDN誘導体分子が、GM−CSFワクチン単独による免疫と比較してがんの治療動物モデルにおいてインビボで抗腫瘍効果を高めることを示し(Fu et al.,(2015)Sci Transl Med 7(283):283ra52)、CDNが強力なワクチンアジュバントであることを示唆している。
ヒトTMEM173遺伝子にマッピングされた多型から生じる変異体STINGタンパク質は、機能獲得型または構成的に活性な表現型を示すことが記載されている。インビトロで発現させた場合、変異体STING対立遺伝子は、I型IFNの誘導を強力に刺激することが示された(Liu et al.,(2014)N Engl J Med 371:507−518;Jeremiah et al.,(2014)J Clin Invest 124:5516−5520;Dobbs et al.,(2015)Cell Host Microbe 18(2):157−168;Tang&Wang,(2015)PLoS ONE 10(3):e0120090;Melki et al.,(2017)J Allergy Clin Immunol In Press;Konig et al.,(2017)Ann Rheum Dis 76(2):468−472;Burdette et al.,(2011)Nature 478:515−518)。
本明細書に記載の免疫増強剤として使用するための変異体ヒトSTINGアイソフォームを含む、構造的に活性な形態のSTINGをコードするmRNA(化学修飾mRNA(mmRNA)を含む)が本明細書に提供される。変異体ヒトSTINGアイソフォームを含む、STINGの構成的に活性な形態をコードするmRNA(例えば、mmRNA)は、本明細書の配列表に記載されている。本明細書で使用される変異体ヒトSTINGポリペプチドのアミノ酸残基ナンバリングは、Genbankアクセッション番号NP_938023として当該技術分野で入手可能な379アミノ酸残基の野生型ヒトSTING(アイソフォーム1)に使用されるものに相当する。
したがって、一態様では、本開示は、アミノ酸残基155位に変異、特にV155M変異体などのアミノ酸置換を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNA(例えば、mmRNA)を提供する。一実施形態では、mRNA(例えば、mmRNA)は、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、STING V155M変異体は、配列番号199、1319または1320に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。一実施形態では、mRNA(例えば、mmRNA)は、miR122結合部位を含む、配列番号209に示される3’UTR配列を含む。
他の態様では、本開示は、アミノ酸置換などの、アミノ酸残基284に変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。残基284の置換の非限定的な例としては、R284T、R284M及びR284Kが挙げられる。特定の実施形態では、変異ヒトSTINGタンパク質は、R284T変異として、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号200もしくは配列番号1442に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。特定の実施形態では、変異体ヒトSTINGタンパク質は、R284M変異を有し、例えば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号201もしくは配列番号1443に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。特定の実施形態では、変異ヒトSTINGタンパク質は、R284K変異を有し、例えば、配列番号4もしくは224に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号202、225、1444もしくは1466に示すヌクレオチド配列によりコードされる。
他の態様では、本開示は、N154S変異のようなアミノ酸置換などの、アミノ酸残基154に変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。特定の実施形態では、変異体ヒトSTINGタンパク質は、N154S変異を有し、例えば、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号203もしくは配列番号1445に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
さらに他の態様では、本開示は、アミノ酸残基147に変異、例えば、V147L変異などのアミノ酸置換を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。特定の実施形態では、V147L変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号204もしくは配列番号1446に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
他の態様では、本開示は、E315Q変異のようなアミノ酸置換などの、アミノ酸残基315に変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。特定の実施形態では、E315Q変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号205もしくは配列番号1447に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
他の態様では、本開示は、R375A変異のようなアミノ酸置換などの、アミノ酸残基375に変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。特定の実施形態では、R375A変異を有する変異ヒトSTINGタンパク質は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するか、または配列番号206もしくは配列番号1448に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
他の態様では、本開示は、前述の変異のうちの1つ以上または2つ、3つ、4つもしくはそれ以上の組合せを有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。したがって、一態様では、本開示は、V147L、N154S、V155M、R284T、R284M、R284K、E315Q及びR375A、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、V155MとR284T;V155MとR284M;V155MとR284K;V155MとV147L;V155MとN154S;V155MとE315Q;及びV155MとR375Aからなる群より選択される変異の組合せを有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。
他の態様では、本開示は、V155M、ならびに以下の変異:R284T;R284M;R284K;V147L;N154S;E315Q;及びR375Aのうちの1、2、3またはそれ以上を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、V155M、V147L及びN154S変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、V155M、V147L及びN154S変異、ならびに必要に応じてアミノ酸284で変異を有する、変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。さらに他の態様では、本開示は、V155M、V147L及びN154S変異、ならびにR284T、R284M及びR284Kから選択されるアミノ酸284で変異を有する、変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、V155M、V147L、N154S、及びR284T変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、V155M、V147L、N154S、及びR284M変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、V155M、V147L、N154S及びR284K変異を有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。
他の実施形態では、本開示は、アミノ酸残基147、154、155及び必要に応じて284で変異の組み合わせ、特にアミノ酸置換、例えば、V147L、N154S、V155M及び必要に応じてR284Mを有する変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。特定の実施形態では、この変異体ヒトSTINGタンパク質は、V147N、N154S及びV155M変異、例えば、配列番号9に示されるか、または配列番号207もしくは配列番号1449に示されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、変異体ヒトSTINGタンパク質は、R284M、V147N、N154S及びV155Mの変異、例えば、配列番号10に示されるか、または配列番号208もしくは配列番号1450に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。
別の実施形態では、本開示は、アミノ酸137〜379からなる構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドなどの、全長379アミノ酸の野生型タンパク質の構成的に活性な短縮型である変異体ヒトSTINGタンパク質をコードするmRNAを提供する。
免疫調節因子(IRF)をコードする免疫増強剤mRNA
本開示は、免疫増強剤としてのIRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8、及びIRF9などのインターフェロン調節因子(Interferon Regulatory Factors)をコードするmRNA(mmRNAを含む)を提供する。IRF転写因子ファミリーは、先天性免疫応答の間にI型インターフェロン(IFN)の産生をもたらす遺伝子発現の調節に関与している。今日までに9つのヒトIRFが同定されており(IRF−1〜IRF−9)、各ファミリーメンバーはそれらのN末端結合ドメイン(DBD)内で広範な配列相同性を共有している(Mamane et al.,(1999)Gene 237:1−14;Taniguchi et al.,(2001)Annu Rev Immunol 19:623−655)。IRFファミリー内で、IRF1、IRF3、IRF5、及びIRF7は、I型IFN遺伝子転写の正の調節因子として特に関与している(Honda et al.,(2006)Immunity 25(3):349−360)。IRF1は、I型IFN遺伝子プロモーターを活性化することが発見された最初のファミリーメンバーであった(Miyamoto et al.,(1988)Cell 54:903−913)。IRF1は、I型IFN遺伝子発現に関与していることが研究により示されているが、ウイルス感染IRF1−/−マウス線維芽細胞において、I型IFNの正常な誘導が観察され、分配性を示唆している(Matsuyama et al.,(1993)Cell 75:83−97)。IRF5はまた、ウイルスまたはTLRアゴニストによるI型IFN誘導には不必要であることが示された(Takaoka et al.,(2005)Nature 434:243−249)。
したがって、いくつかの態様では、本開示は、免疫増強剤としてのヒトIRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8、及びIRF9の構成的に活性な形態をコードするmRNAを提供する。いくつかの態様では、本開示は、構成的に活性な形態のヒトIRF3及び/またはIRF7をコードするmRNAを提供する。
先天性免疫応答の間に、IRF−3はI型IFNの早期誘導において重要な役割を果たす。IRF3転写因子は、構成的に発現され、潜在的形態で細胞の核と細胞質の間を往復し、リン酸化の前に主に細胞質ゾルに局在する(Hiscott(2007)J Biol Chem 282(21):15325−15329;Kumar et al.,(2000)Mol Cell Biol 20(11):4159−4168)。TBK−1(TANK結合キナーゼ1;T2K及びNAKとしても公知である)及び/またはIKKε(誘導性IκBキナーゼ;IKKiとしても知られる)によるC末端のセリン残基のリン酸化の際に、IRF3は細胞質から核に転位する。(Fitzgerald et al.,(2003)Nat Immuno 4(5):491−496;Sharma et al.,(2003)Science 300:1148−1151;Hemmi et al.,(2004)J Exp Med199:1641−1650)。IRF3の転写活性は、これらのリン酸化及び転座事象によって媒介される。IRF3活性化のモデルは、C末端リン酸化が、ホモ及び/またはヘテロ二量体化を促進するIRF3のコンホメーション変化(例えば、IRF7を有する;Honda et al.,(2006)Immunity 25(3):346〜360を参照のこと)、核局在化、ならびに転写活性化補助因子CBP及び/またはp300との会合(Lin et al.,(1999)Mol Cell Biol 19(4):2465−2474)を誘導することを提案する。不活性なIRF3は構成的に核内外を往復するが、リン酸化IRF3タンパク質は、CBP及び/またはp300と会合したままであり、核内に保持され、IFN及び他の遺伝子の転写を誘導する(Kumar et al.,(2000)Mol Cell Biol)。20(11):4159−4168)。
IRF3とは対照的に、IRF7は、ほとんどの細胞で低い発現レベルを示すが、I型IFN媒介シグナル伝達によって強く誘導され、これによってIRF3は主にIFN遺伝子の早期誘導に関与すること、及び、IRF7は後期に関与するという考えが支持される(Sato et al.,(2000)Immunity 13(4):539−548)。I型IFN受容体へのリガンド結合は、IRF9、STAT1、及びSTAT2からなり、IRF7遺伝子の誘導に関与しているIFN刺激遺伝子因子3(ISGF3)と呼ばれるヘテロ三量体転写活性化因子の活性化をもたらす(Marie et al.,(1998)EMBO J17(22):6660−6669)。IRF3と同様に、IRF7は、そのC末端領域のセリンリン酸化後に細胞質と核との間で分配することができ、それによってその二量体化及び核移行が可能になる。IRF7は、IRF3とホモ二量体またはヘテロ二量体を形成し、そしてこれらの異なる二量体のそれぞれは、I型IFN遺伝子ファミリーメンバーに異なって作用する。IRF3は、IFN−α遺伝子よりもIFN−β遺伝子の活性化においてより強力であるが、IRF7は、IFN−α及びIFN−β遺伝子の両方を効率的に活性化する(Marie et al.,(1998)EMBO J17(22):6660−6669)。
本明細書に記載の免疫増強剤として使用するための変異体ヒトIRF3及び変異体ヒトIRF7アイソフォームを含む、構成的に活性な形態のIRF3及びIRF7をコードするmRNAが、本明細書に提供される。変異体ヒトIRF3及びIRF7アイソフォームを含む、構成的に活性な形態のIRF3及びIRF7をコードするmRNAは、本明細書の配列表に記載されている。本明細書中で使用される変異体ヒトIRF3ポリペプチドのアミノ酸残基ナンバリングは、Genbankアクセッション番号NP_001562として当該技術分野で入手可能な427アミノ酸残基野生型ヒトIRF3(アイソフォーム1)に使用されるものに相当する。本明細書中で使用される変異体ヒトIRF7ポリペプチドのアミノ酸残基ナンバリングは、Genbankアクセッション番号NP_001563として当該分野で入手可能な503アミノ酸残基野生型ヒトIRF7(アイソフォームa)に使用されるものに相当する。
したがって、いくつかの態様では、本開示は、例えば、アミノ酸残基396に変異、例えば、S396D変異などのアミノ酸置換などを有する、例えば、配列番号12のアミノ酸に示されるか、または配列番号211もしくは配列番号1463に示されるヌクレオチド配列によってコードされるような変異を有する、構成的に活性である、変異体ヒトIRF3タンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、mRNA構築物は、S396D変異、例えば、配列番号11のアミノ酸配列に示されるか、または210もしくは配列番号1452に示されるヌクレオチド配列によりコードされるような変異を含む、構成的に活性なマウスIRF3ポリペプチドをコードする。
他の態様では、本開示は、構成的に活性な変異体ヒトIRF7タンパク質をコードするmRNAを提供する。一態様では、本開示は、1つ以上の点突然変異(野生型と比較してアミノ酸置換)を含む構成的に活性なIR7タンパク質をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、タンパク質の短縮型(野生型と比較してアミノ酸欠失)を含む構成的に活性なIR7タンパク質をコードするmRNAを提供する。さらに他の態様では、本開示は、1つ以上の点突然変異(野生型と比較したアミノ酸欠失及びアミノ酸置換の組み合わせ)も含む短縮型のタンパク質を含む構成的に活性なIR7タンパク質をコードするmRNAを提供する。
ヒトIRF7の野生型アミノ酸配列(アイソフォームa)は、配列番号212または配列番号1454に示されるヌクレオチド配列によりコードされる配列番号13に記載されている。野生型配列と比較して、点突然変異、欠失、またはその両方を含む一連の構成的に活性型のヒトIRF7を調製した。一態様では、本開示は、以下の変異:S475D、S476D、S477D、S479D、L480D、S483D及びS487D、ならびにそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードしている免疫増強剤mRNA構築物を提供する。他の態様では、本開示は、配列番号213または配列番号1455に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号14のアミノ酸配列に示されるように、変異S477D及びS479Dを含む構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードするmmRNAを提供する。別の態様では、本開示は、配列番号214または配列番号1456に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号15のアミノ酸配列に示される、変異S475D、S477D及びL480Dを含む構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、配列番号215または配列番号1457に示されるヌクレオチド配列によりコードされる、配列番号16のアミノ酸配列に示される、変異S475D、S476D、S477D、S479D、S483D及びS487Dを含む構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードするmRNAを提供する。別の態様では、本開示は、配列番号216または配列番号1458に示されるヌクレオチド配列によりコードされる、配列番号17のアミノ酸配列に示される、アミノ酸残基247〜467の欠失(すなわち、アミノ酸残基1〜246及び468〜503を含む)を含む構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードするmRNAを提供する。さらに他の態様では、本開示は、アミノ酸残基247〜467の欠失を含み(すなわち、アミノ酸残基1〜246及び468〜503を含み)、配列番号217または配列番号1459に示されるヌクレオチド配列によりコードされる、配列番号18のアミノ酸配列に示される、変異S475D、S476D、S477D、S479D、S483D及びS487Dをさらに含む、構成的に活性なIRF7ポリペプチドをコードするmRNAを提供する。
他の態様では、本開示は、配列番号218または配列番号1460に示されるヌクレオチド配列によりコードされる配列番号19のアミノ酸配列(例えば、制御の目的で使用される)に示されるように、残基152〜246の欠失を含む(すなわち、アミノ酸残基1〜151及び247〜503を含む)短縮型IRF7不活性「ヌル」ポリペプチド構築物をコードするmRNAを提供する。他の態様では、本開示は、配列番号219または配列番号1461に示されるヌクレオチド配列によりコードされる(例えば、制御の目的で使用される)、配列番号20のアミノ酸配列に示されるように、残基1〜151の欠失を含む(すなわち、アミノ酸残基152〜503を含む)短縮型IRF7不活性「ヌル」ポリペプチド構築物をコードするmRNAを提供する。
I型IFNを活性化する追加の免疫増強剤mRNA
上記のSTING及びIRF mRNA構築物に加えて、本開示は、I型IFNシグナル伝達経路の活性化を通して免疫応答を増強するための免疫増強剤として使用され得るI型IFNシグナル伝達経路のさらなる構成要素をコードするmRNA構築物を提供する。例えば、一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、MyD88タンパク質をコードする。MyD88は、IRF7の上流でシグナル伝達することが当該分野において公知である。一態様では、本開示は、1つ以上の点突然変異を有する変異型MyD88タンパク質などの構成的に活性なMyD88タンパク質をコードするmmRNAを提供する。一態様では、本開示は、それぞれ、配列番号134(配列番号1409または配列番号1480に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)及び135に記載のL265P置換を有する変異体ヒトまたはマウスMyD88タンパク質をコードするmRNAを提供する。
別の態様では、免疫増強剤mRNA構築物はMAVS(ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達)タンパク質をコードする。MAVSは、IRF3/IRF7の上流でシグナル伝達することが当該分野において公知である。MAVSは、二本鎖RNAウイルスに対する防御的インターフェロン応答において重要であることが実証されている。例えば、MAVSを欠くロタウイルス感染マウスが産生するのは、MAVSを有するマウスよりも有意に少ないIFN−β及び増大した量のウイルスである(Broquet、A.H.et al.(2011)J.Immunol.186:1618−1626)。さらに、MAVSを通じたRIG−1またはMDA5シグナル伝達は、ロタウイルス感染細胞によるIFN−β産生の活性化に必要であることが示されている(Broquet et al.,前出)。MAVSはまた、MDA5と共に媒介される、コクサッキーBウイルスに対するI型インターフェロン応答に重要であることが示されている(Wang、J.P.ら(2010)J.Virol.84:254−260)。さらにまた、異なるクラスの受容体が細胞内のRNA及びDNAセンシングに関与しているが、下流のシグナル伝達構成要素は、物理的及び機能的に相互接続されており、インターフェロン応答を含む効率的な抗ウイルス応答の増強において、RIG−1/MAVS RNA感知とcGAS−STING DNA感知経路との間にクロストークがあることが示されている(Zevini,A.et al.(2017)Trends Immunol.38:194−205)。一態様では、本開示は、1つ以上の点突然変異を有する変異MAVSタンパク質などの構成的に活性なMAVSタンパク質をコードするmRNAを包含する。別の態様では、本開示は、過剰発現されている野生型MAVSタンパク質を包含する。一態様では、本開示は、配列番号1387に示されるMAVSタンパク質をコードするmRNAを提供する。配列番号1387のMAVSタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1413及び配列番号1484に示される。
別の態様では、免疫増強剤mRNA構築物は、TRAM(TICAM2)タンパク質をコードする。TRAMは、IRF3の上流でシグナル伝達することが当該技術分野において公知である。一態様では、本開示は、1つ以上の点突然変異を有する変異体TRAMタンパク質などの構成的に活性なTRAMタンパク質をコードするmmRNAを包含する。別の態様では、本開示は、過剰発現されている野生型TRAMタンパク質を包含する。一態様では、本開示は、配列番号136に示されるマウスTRAMタンパク質をコードするmRNAを提供する。配列番号136のTRAMタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1410または配列番号1481に示される。
さらに他の態様では、本開示は、構成的に活性な形態のTBK1またはIKKiを含む、TANK結合キナーゼ1(TBK1)または誘導性IκBキナーゼ(IKKεとしても公知のIKKi)をコードする免疫増強剤mRNA構築物を、免疫増強剤として提供する。TBK1及びIKKiは、IRF3及びIRF7をリン酸化し、それによってI型IFNシグナル伝達経路においてIRF3及びIRF7の上流で作用するウイルス活性化キナーゼの構成要素であることが実証されている(Sharma,S.et al.(2003)Science 300:1148−1151)。TBK1及びIKKiは、I型IFN遺伝子ならびにIFN誘導性遺伝子の発現を誘導する転写因子(例えば、IRF3/7及びNF−κB)のリン酸化及び活性化に関与している(Fitzgerald,K.A.et al.,(2003)Nat Immunol 4(5):491〜496)。
したがって、一態様では、本開示は、変異体ヒトTBK1アイソフォームを含む、構成的に活性な形態のTBK1を含む、TBK1タンパク質をコードする免疫増強剤mRNA構築物を提供する。さらに他の態様では、免疫増強剤mRNA構築物は、変異体ヒトIKKiアイソフォームを含む、構成的に活性な形態のIKKiを含むIKKiタンパク質をコードする。
炎症反応を刺激する免疫増強剤mRNA
他の態様では、本開示は、炎症反応を刺激することによって免疫反応を増強する免疫増強剤mRNA構築物を提供する。炎症反応を刺激する因子の非限定的な例としては、STAT1、STAT2、STAT4、及びSTAT6が挙げられる。したがって、本開示は、構成的に活性な形態を含む、これらの炎症誘導タンパク質のうちの1つまたは組み合わせをコードする免疫増強剤mRNA構築物を提供する。
本明細書に記載の免疫増強剤として使用するための変異体ヒトSTAT6アイソフォームを含む、構成的に活性な形態のSTAT6をコードするmRNAが、本明細書に提供される。変異体ヒトSTAT6アイソフォームを含む、STAT6の構成的に活性な形態をコードするmRNAは、本明細書中の配列表に示される。本明細書中で使用される変異体ヒトSTAT6ポリペプチドについてのアミノ酸残基ナンバリングは、Genbankアクセッション番号NP_001171550.1として当該分野で入手可能な847アミノ酸残基野生型ヒトSTAT6(アイソフォーム1)について使用されるナンバリングに相当する。
一実施形態では、本開示は、S407D、V547A、T548A、Y641F、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸変異を含む構成的に活性なヒトSTAT6構築物をコードするmRNA構築物を提供する。別の実施形態では、このmRNA構築物は、配列番号137に示される配列などの、V547A及びT548A変異を含む構成的に活性なヒトSTAT6構築物をコードする。別の実施形態では、このmRNA構築物は、配列番号138に示される配列などの、S407D変異を含む構成的に活性なヒトSTAT6構築物をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号139に示される配列などの、S407D、V547A及びT548A変異を含む構成的に活性なヒトSTAT6構築物をコードする。別の実施形態では、このmRNA構築物は、配列番号140に示される配列のような、V547A、T548A及びY641Fの変異を含む、構成的に活性なヒトSTAT6構築物をコードする。
NFκBシグナル伝達を刺激する免疫増強剤mRNA
他の態様では、本開示は、免疫応答の刺激に関与することが公知であるNFκBシグナル伝達を刺激することによって免疫応答を増強する免疫増強剤mRNA構築物を提供する。NFκBシグナル伝達を刺激するタンパク質の非限定的な例としては、STING、c−FLIP、IKKβ、RIPK1、Btk、TAK1、TAK−TAB1、TBK1、MyD88、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TAB2、TAB3、TRAF6、TRAM、MKK3、MKK4、MKK6、及びMKK7が挙げられる。したがって、本開示の免疫増強剤mRNA構築物は、これらのNFκB経路誘導タンパク質のうちのいずれかを、例えば、構成的に活性な形態でコードし得る。
NFκBシグナル伝達を刺激することによって免疫応答を増強する免疫増強剤mRNA構築物として役立ち得る適切なSTING構築物は、I型IFNを活性化する免疫増強剤mRNA構築物に関するサブセクションにおいて上記に記載されている。
NFκBシグナル伝達を刺激することによって免疫応答を増強する免疫増強剤mRNA構築物として役立ち得る、適切なMyD88構築物は、I型IFNを活性化する免疫増強剤mRNA構築物に関するサブセクションにおいて上記に記載されている。
一実施形態では、本開示は、c−FLIP(細胞カスパーゼ8(FLICE)様阻害タンパク質)タンパク質(CASP8及びFADD様アポトーシス調節剤としても公知である)、例としては、構成的に活性なc−FLIPをコードするNFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤mRNA構築物を提供する。本明細書に記載の免疫増強剤として使用するための変異体ヒトc−FLIPアイソフォームを含む、構成的に活性な形態のc−FLIPをコードするmmRNAが本明細書に提供される。変異体ヒトc−FLIPアイソフォームを含む、構成的に活性な形態のc−FLIPをコードするmmRNAは、本明細書の配列表に記載されている。本明細書で使用される変異体ヒトc−FLIPポリペプチドのアミノ酸残基ナンバリングは、Genbankアクセッション番号NP_003870として当該技術分野で入手可能な480アミノ酸残基の野生型ヒトc−FLIP(アイソフォーム1)に使用されるナンバリングに相当する。
一実施形態では、mRNAは、配列番号141に示される配列を有するものなど、2つのDEDドメイン(p20ドメイン及びp12ドメイン)を含むc−FLIP長(L)アイソフォームをコードする。別の実施形態では、このmRNAは、配列番号142に示される配列を有するような2つのDEDドメインを含む、アミノ酸1〜227をコードするc−FLIP短(S)アイソフォームをコードする。別の実施形態では、mRNAは、配列番号143に示される配列を有するものなど、アミノ酸1〜198をコードするc−FLIP p22切断産物をコードする。別の実施形態では、mRNAは、配列番号144に示される配列を有するものなど、アミノ酸1〜376をコードするc−FLIP p43切断産物をコードする。別の実施形態では、mRNAは、配列番号145に示される配列を有するものなど、アミノ酸377〜480をコードするc−FLIP p12切断産物をコードする。上記で考察されるc−FLIPタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1398〜1402及び1469〜1473に示される。
別の実施形態では、NFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤mRNA構築物は、構成的に活性なIKKα mRNA構築物または構成的に活性なIKKβ mRNA構築物をコードする。一実施形態では、構成的に活性なヒトIKKβポリペプチドは、配列番号146に示す配列などのS177E及びS181Eの変異を含む。別の実施形態では、構成的に活性なヒトIKKβポリペプチドは、配列番号147に示される配列などの、S177A及びS181Aの変異を含む。別の実施形態では、mRNA構築物は、構成的に活性なマウスIKKβポリペプチドをコードする。一実施形態では、構成的に活性なマウスIKKβポリペプチドは、配列番号148に示す配列などのS177E及びS181Eの変異を含む。別の実施形態では、構成的に活性なマウスIKKβポリペプチドは、配列番号149に示される配列などのS177A及びS181Aの変異を含む。配列番号146のタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1414及び配列番号1485に示される。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号150(ヒト)(配列番号151または配列番号28に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)または配列番号154(マウス)(配列番号155または配列番号1429に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)に示されるような配列を有するものなど、PEST変異を含む構成的に活性なヒトまたはマウスIKKαポリペプチドをコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号152(ヒト)(配列番号153または配列番号1397に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)または配列番号156(マウス)(配列番号157または配列番号1430に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)に示されるような配列を有するものなど、PEST変異を含む構成的に活性なヒトまたはマウスIKKβポリペプチドをコードする。
別の実施形態では、本開示は、受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(RIPK1)タンパク質をコードするNFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤mRNA構築物を提供する。免疫原性細胞死を誘導するRIPK1構築物をコードするDNA構築物の構造は、当該分野で記載されており、例えば、Yatim、N.et al.(2015)Science 350:328−334またはOrozco,S.et al.(2014)Cell Death Differ.21:1511−1521に記載されており、そして活性なNFκBシグナル伝達もまた本明細書中に示される適切なRNA構築物の設計において使用され得る(実施例を参照のこと)。一実施形態では、mRNA構築物は、配列番号158(ヒト)または161(マウス)に示される配列を有するものなど、ヒトまたはマウスRIPK1ポリペプチドのRIPK1アミノ酸1〜555、ならびにIZドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、配列番号159(ヒト)または配列番号162(マウス)に示される配列を有するものなど、ヒトまたはマウスのRIPK1ポリペプチドのRIPK1アミノ酸1〜555、ならびにEE及びDMドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、配列番号160(ヒト)または163(マウス)に示される配列を有するものなど、ヒトまたはマウスのRIPK1ポリペプチドのRIPK1アミノ酸1〜555、ならびにRR及びDMドメインをコードする。上記のRIPK1ポリペプチドをコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1403〜1408及び1474〜1479に示される。
さらに別の実施形態では、NFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤mRNA構築物は、Btk(E41K)ポリペプチド(例えば、配列番号173に示すORFアミノ酸配列をコードする)などの変異体BtkポリペプチドなどのBtkポリペプチドをコードする。
さらに別の実施形態では、NFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤mRNA構築物は、構成的に活性なTAK1などのTAK1タンパク質をコードする。
さらに別の実施形態では、NFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤mRNA構築物は、構成的に活性なTAK−TAB1などのTAK−TAB1タンパク質をコードする。一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、配列番号164に示される配列を有するような、ヒトTAK−TAB1タンパク質をコードする。配列番号164のTAK−TAB1タンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1411または配列番号1482に示される。
細胞内アダプタータンパク質をコードする免疫増強剤mRNA
一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、細胞内アダプタータンパク質である。細胞内アダプター(シグナル伝達アダプタータンパク質とも呼ばれる)は、シグナル伝達経路の主要タンパク質に付属するタンパク質である。アダプタータンパク質は、タンパク質結合パートナーを互いに連結し、そしてより大きなシグナル伝達複合体の作製を容易にする様々なタンパク質結合モジュールを含む。これらのタンパク質は、それ自体が固有の酵素活性を欠いている傾向があるが、代わりにタンパク質複合体の形成を促進する特定のタンパク質間相互作用を媒介する。
一実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、I型IFN応答を刺激する。別の実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。
一実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、変異体ヒトSTINGアイソフォームを含む、STINGポリペプチドの構成的に活性な形態などのSTINGタンパク質である。STINGは、先天性免疫シグナル伝達を促進する小胞体アダプターとして当該分野で確立されており、そしてNFκB媒介性転写経路及びIRF3/IRF7媒介性転写経路の両方を活性化して、I型IFNの発現を誘導することが示されている(例えば、Ishikawa,H.及びBarber,G.H.(2008)Nature 455:674−678を参照のこと)。例えば、STINGは、二本鎖DNA(例えば、ウイルスDNA)によるcGAS及びIFI16の活性化に続く、TBK1の活性化(NFκB媒介及びIRF3/IRF媒介転写の上流)においてアダプタータンパク質として作用する。STINGをコードする適切なmRNA構築物は、I型インターフェロンを活性化する免疫増強剤のセクションにおいて、上記に詳細に記載されている。
別の実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、変異体ヒトMAVSアイソフォームを含む、構成的に活性な形態のMAVSポリペプチドなどのMAVSタンパク質である。MAVSはまた、当該技術分野においてVISA(ウイルス誘導シグナル伝達アダプター)、IPS−1またはCardifとしても公知である。MAVSは、二重鎖RNA(例えば、二重鎖RNAウイルス)による細胞質RNAヘリカーゼRIG−1及びMDA5の活性化に続くTBK1の活性化(NFκB媒介及びIRF3/IRF媒介転写の上流)において細胞内アダプタータンパク質として作用することが当該技術分野において確立されている。MAVSをコードする適切なmRNA構築物は、I型インターフェロンを活性化する免疫増強剤のサブセクションにおいて上記に詳細に記載されている。
別の実施形態では、細胞内アダプタータンパク質は、変異体ヒトMyD88アイソフォームを含む、MyD88ポリペプチドの構成的に活性な形態などのMyD88タンパク質である。MyD88は、I型IFN応答及びNFκB媒介炎症誘発性応答を活性化するためにTLRによって使用される細胞内アダプタータンパク質として当該分野で確立されている(例えば、O’Neill、L.A.et al.(2003)J.Endotoxin Res.9:55−59を参照のこと)。MyD88をコードする適切なmRNA構築物は、I型IFN応答を活性化する免疫増強剤に関するサブセクションにおいて上記に詳細に記載されている。
細胞内シグナル伝達タンパク質をコードする免疫増強剤mRNA
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされているポリペプチドは、細胞内シグナル伝達タンパク質である。本明細書中で使用される場合、「細胞内シグナル伝達タンパク質」とは、シグナル伝達経路に関与するタンパク質を指し、そして典型的には酵素活性(例えば、キナーゼ活性)を有する。一実施形態では、このポリペプチドは、TLRシグナル伝達経路の細胞内シグナル伝達タンパク質である(すなわち、このポリペプチドは、TLR媒介シグナル伝達の伝達において機能するがTLR自体ではない細胞内分子である)。一実施形態では、細胞内シグナル伝達タンパク質は、I型IFN応答を刺激する。別の実施形態では、細胞内シグナル伝達タンパク質は、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。細胞内シグナル伝達タンパク質の非限定的な例としては、MyD88、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TRAF3、TRAF6、TAK1、TAB2、TAB3、TAK−TAB1、MKK3、MKK4、MKK6、MKK7、IKKα、IKKβ、TRAM、TRIF、RIPK1、及びTBK1が挙げられる。細胞内シグナル伝達タンパク質の具体例は、I型インターフェロンを活性化するかまたはNFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤に関するサブセクションに記載されている。
転写因子をコードする免疫増強剤mRNA
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされているポリペプチドは、転写因子である。転写因子は、少なくとも1つの配列特異的DNA結合ドメインを含み、そしてmRNAへの遺伝子(複数可)の転写速度を調節するように機能する。一実施形態では、転写因子は、I型IFN応答を刺激する。別の実施形態では、転写因子は、NFκB媒介炎症誘発性応答を刺激する。転写因子の非限定的な例としては、IRF3またはIRF7が挙げられる。IRF3及びIRF7構築物の具体例は、I型インターフェロンを活性化する免疫増強剤についてのサブセクションに記載されている。
ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与するポリペプチドをコードしている免疫増強剤mRNA
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与している。タンパク質がネクロトーシス自体を媒介するか、またはネクロトーシスの媒介及び/またはネクロトソーム形成におけるさらなる分子と関与する場合、ポリペプチドは、ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に「関与する」。ネクロトーシスまたはネクロトソーム形成に関与するポリペプチドの非限定的な例としては、MLKL、RIPK1、RIPK3、DIABLO及びFADDが挙げられる。
RIPK1をコードする適切なmRNA構築物は、NFκBシグナル伝達を活性化する免疫増強剤のセクションにおいて上記に詳細に記載されている。
一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)である。MLKL構築物は、DAMPの放出を特徴とするネクロトーシスによる細胞死を誘導する。一実施形態では、mRNA構築物は、ヒトまたはマウスMLKLのアミノ酸1〜180をコードする。MLKL、またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、それぞれ配列番号1327及び1328に示されるアミノ配列を含むヒトまたはマウスMLKLのアミノ酸1〜180をコードする。配列番号1327のMLKLタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1412及び配列番号1483に示されている。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIPK3)である。一実施形態では、mRNA構築物は、それ自体と多量体化する(ホモオリゴマー化)RIPK3ポリペプチドをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK1と二量体化するRIPK3ポリペプチドをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3のキナーゼドメイン及びRHIMドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3のキナーゼドメイン、RIPK3のRHIMドメイン、及び2つのFKBP(F>V)ドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3ポリペプチド(例えば、RIPK3のキナーゼドメイン及びRHIMドメインを含む)及びIZドメイン(例えば、IZ三量体)をコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3ポリペプチド(例えば、RIPK3のキナーゼドメイン及びRHIMドメインを含む)及び1つ以上のEEまたはRRドメイン(例えば、2×EEドメインまたは2×RRドメイン)をコードする。さらに、免疫原性細胞死を誘導するRIPK3構築物をコードするDNA構築物の構造は、例えば、Yatim,N.(2015)Science 350:328−334またはOrozco,S.et al.(2014)Cell Death Differ.21:1511−1521にさらに記載されており、適切なRNA構築物の設計に使用され得る。RIPK3をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1329〜1344及び1379に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。配列番号1339のRIPK3ポリペプチドをコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1415及び配列番号1486に示される。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、低いpIを有する直接IAP結合タンパク質(DIABLO)(SMAC/DIABLOとしても公知である)をコードする。本明細書の実施例に記載されているように、DIABLO構築物は、サイトカインの放出を誘導する。一実施形態では、本開示は、配列番号165に示される配列(当該技術分野でGenbankアクセッション番号NP_063940.1として開示される239アミノ酸ヒトDIABLOアイソフォーム1前駆体に相当する)を有するような野生型ヒトDIABLOアイソフォーム1配列をコードするmRNA構築物を提供する。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号166に示される配列を有するものなど、S126L突然変異を含むヒトDIABLOアイソフォーム1配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号167に示される配列を有するような、ヒトDIABLOアイソフォーム1のアミノ酸56〜239をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトDIABLOアイソフォーム1のアミノ酸56〜239をコードし、配列番号168に示される配列を有するようなS126L変異を含む。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号169に示される配列(当該技術分野でGenbankアクセッション番号No.NP_001265271.1として開示されている195アミノ酸のヒトDIABLOアイソフォーム3に相当)を有するような、野生型ヒトDIABLOアイソフォーム3配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号170に示される配列を有するような、S82L突然変異を含むヒトDIABLOアイソフォーム3配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号171に示される配列を有するような、ヒトDIABLOアイソフォーム3のアミノ酸56〜195をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、配列番号172に示される配列を有するような、ヒトDIABLOアイソフォーム3のアミノ酸56〜195をコードし、S82L変異を含む。配列番号169のDIABLOポリペプチドをコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1416及び配列番号1487に示されている。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、FADD(デスドメインを有するFas関連タンパク質)である。FADDをコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1345〜1351に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。FADDタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1417〜1422及び1488〜1493に示される。
パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与するポリペプチドをコードしている免疫増強剤mRNA
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされているポリペプチドは、パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与している。ポリペプチドは、タンパク質がそれ自体でパイロトーシスを媒介するか、またはパイロトーシスの媒介において、及び/またはインフラマソーム形成においてさらなる分子と関与する場合、パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に「関与する」。パイロトーシスまたはインフラマソーム形成に関与するポリペプチドの非限定的な例としては、カスパーゼ1、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ11、GSDMD、NLRP3、Pyrinドメイン及びASC/PYCARDが挙げられる。
一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、カスパーゼ1である。一実施形態では、カスパーゼ1ポリペプチドは、自己活性化カスパーゼ−1ポリペプチド(例えば、配列番号175〜178に示される任意のORFアミノ酸配列をコードする)であり、これは、プロIL1β及びプロIL18のそれぞれの成熟型への切断を促進し得る。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされているポリペプチドは、カスパーゼ−4またはカスパーゼ−5またはカスパーゼ−11である。様々な実施形態では、カスパーゼ−4、−5、または−11構築物は、(i)全長の野生型カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、またはカスパーゼ−11;(ii)全長カスパーゼ−4、−5または−11に加えてIZドメイン;(iii)N末端が欠失したカスパーゼ−4、−5または−11に加えてIZドメイン;(iv)全長カスパーゼ−4、−5または−11に加えてDMドメイン;または(v)N末端が欠失したカスパーゼ−4、−5または−11に加えてDMドメインをコードし得る。N末端欠失型カスパーゼ−4及びカスパーゼ−11の例は、アミノ酸残基81〜377を含む。N末端欠失型カスパーゼ−5の例は、アミノ酸残基137〜434を含む。カスパーゼ−4をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1352〜1356に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。カスパーゼ−5をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1357〜1361に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。カスパーゼ11をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1362〜1366に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。
一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、ガスデルミンD(GSDMD)である。一実施形態では、mRNA構築物は、野生型ヒトGSDMD配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトGSDMDのアミノ酸1〜275をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトGSDMDのアミノ酸276〜484をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、野生型マウスGSDMDをコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、マウスGSDMDのアミノ酸1〜276をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、マウスGSDMDのアミノ酸277〜487をコードする。GSDMDをコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1367〜1372に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされているポリペプチドは、NLRP3である。NLRP3をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1373または1374に示されるORFアミノ酸配列をコードする。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物によってコードされるポリペプチドは、CARD(ASC/PYCARD)を含むアポトーシス関連スペック様タンパク質、またはドメインなどのその断片である。一実施形態では、このポリペプチドは、Pyrin B30.2ドメインである。別の実施形態では、このポリペプチドは、V726A変異を含むPyrin B30.2ドメインである。Pyrin B30.2ドメインをコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1375または1376に示されるORFアミノ酸配列をコードする。ASCをコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1377または1378に示されるORFアミノ酸配列をコードする。
追加の免疫増強剤mRNA
本開示は、追加の免疫増強剤mRNA構築物を提供する。いくつかの実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、SOC3ポリペプチドをコードする(例えば、配列番号174に示されるORFアミノ酸配列をコードする)。
さらに他の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、DC産生、活性または動員の刺激など、樹状細胞(DC)活性を調節するタンパク質をコードする。DC動員を刺激するタンパク質の非限定的な例はFLT3である。したがって、一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、FLT3タンパク質をコードする。
免疫増強剤mRNA構築物は、典型的には、ポリペプチドコード配列に加えて、mRNA構築物について本明細書中に記載されるような他の構造特性(例えば、本明細書に記載の修飾核酸塩基、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、miR結合部位(複数可)、ポリAテール)を含む。適切なmRNA構築物構成要素は、本明細書に記載のとおりである。
mRNAを含む目的の抗原
本開示の免疫増強剤mRNAは、免疫応答の増強が望まれる任意の種類の抗原と組み合わせて有用であり、これには、腫瘍抗原または病原体抗原などの目的の抗原に対する免疫応答を増強するために、少なくとも1つの目的の抗原をコードするmRNA配列(同一または別個のmRNA構築物上)と組み合わせることが含まれる。したがって、本開示の免疫増強剤mRNAは、例えば、mRNAワクチン応答を増強し、それによって遺伝的アジュバントとして作用する。一実施形態では、目的の抗原(複数可)は腫瘍抗原である。別の実施形態では、目的の抗原(複数可)は病原体抗原である。様々な実施形態では、病原体抗原(複数可)は、ウイルス、細菌、原生動物、真菌及び寄生生物からなる群より選択される病原体由来であり得る。
一実施形態では、抗原は、インサイチュで放出される腫瘍抗原または病原体抗原などの内因性抗原である。あるいは、抗原は外因性抗原である。外因性抗原は、免疫増強剤mRNA構築物と同時投与されてもよいし、あるいは、免疫増強剤mRNA構築物の前または後に投与されてもよい。外因性抗原は、免疫増強剤mRNA構築物と共処方されてもよいし、あるいは、免疫増強剤mRNA構築物とは別に処方されてもよい。一実施形態では、外因性抗原は、免疫増強剤をコードするものと同じまたは異なるmRNA構築物のいずれかであるmRNA構築物(例えば、mmRNA構築物)によってコードされる。他の実施形態では、抗原は、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、多糖類または脂質であってもよい。
一実施形態では、目的の抗原(複数可)は、腫瘍抗原である。一実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍ネオエピトープ、例えば、腫瘍抗原由来の変異体ペプチドを含む。一実施態様では、腫瘍抗原は、Ras抗原である。がんにおけるRas変異の包括的な調査は、当該技術分野において記載されている(Prior,I.A.et al.(2012)Cancer Res.72:2457−2467)。したがって、がんに関連する少なくとも1つの変異を含むRasアミノ酸配列は、目的の抗原として使用され得る。一実施形態では、腫瘍抗原は、変異体KRAS抗原である。変異体KRAS抗原は、ある種の治療剤に対する獲得耐性に関与している(例えば、Misale,S.et al.,(2012)Nature 486:532−536;Diaz,L.A.et al.,(2012)Nature 486:537−540を参照のこと)。さらに、少なくとも1つの変異型RASペプチド及び代謝拮抗化学療法剤を含む抗腫瘍ワクチンが、当該技術分野において記載されている(その全体の内容が参照により本明細書に明白に組み込まれる、米国特許第9,757,439号)。したがって、米国特許第9,757,439号に記載されている任意の変異体RASペプチドを、例えば、本開示の免疫増強剤と組み合わせて本開示の抗原として使用し、それによってRas腫瘍抗原に対する抗腫瘍免疫応答を増強し得る。
一実施形態では、変異KRAS抗原は、G12D、G12V、G13D及びG12C、ならびにそれらの組み合わせから選択される1つ以上の変異を有するアミノ酸配列を含む。変異体KRAS抗原の非限定的な例としては、配列番号95〜106及び131〜132に示されるアミノ酸配列のうちの1つ以上を含む抗原が挙げられる。一実施形態では、変異体KRAS抗原は、G12D、G12V、G13D、及びG12Cから選択される変異を含む1つ以上の変異体KRAS15量体ペプチドであり、それらの非限定的な例は、配列番号95〜97に示される。別の実施形態では、変異体KRAS抗原は、G12D、G12V、G13D及びG12Cから選択される変異を含む1つ以上の変異体KRAS 25量体ペプチドであり、その非限定的な例は、配列番号98〜100及び131に示される。別の実施形態では、変異体KRAS抗原は、G12D、G12V、G13D及びG12Cから選択される変異を含む1つ以上の変異体KRAS 3×15量体ペプチド(15量体ペプチドの3コピー)であり、それらの非限定例は、配列番号101〜103に示される。別の実施形態では、変異体KRAS抗原は、G12D、G12V、G13D及びG12Cから選択される変異を含む1つ以上の変異体KRAS 3×25量体ペプチド(25量体ペプチドの3つのコピー)であり、その非限定的な例は、配列番号104〜106及び132に示される。別の実施形態では、変異体KRAS抗原は、G12D、G12V、G13D及びG12Cの変異を含む25量体のペプチドの100量体のコンカテマーペプチド(すなわち、配列番号98、99、100及び131の100量体のコンカテマー)である。したがって、一実施形態では、変異体KRAS抗原は、配列番号98、99、100、及び131をコードするmRNA構築物を含む。変異体KRAS抗原、そのアミノ酸配列、及びそれをコードするmRNA配列のさらなる説明は、その全体の内容が、参照により本明細書に明確に組み込まれている米国特許出願公開第62/453,465号に開示される。いくつかの実施形態では、変異体KRAS抗原は、配列番号1321または1322に示されるヌクレオチド配列によってコードされるG12D、G12V、G13D及びG12Cの変異を含む25量体のペプチドの100量体のコンカテマーペプチドである。
一実施形態では、腫瘍抗原は、免疫増強剤も含む(すなわち、腫瘍抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドもコードする)mRNA構築物によってコードされる。そのような構築物の非限定的な例としては、配列番号107〜130に示されるアミノ酸配列のうちの1つをコードするKRAS−STING構築物が挙げられる。KRAS−STING構築物をコードするヌクレオチド配列の非限定的な例は、配列番号220〜223に示される。
さらに別の実施形態では、腫瘍抗原は発がん性ウイルス抗原である。一実施形態では、発がん性ウイルスは、ヒトパピローマウイルス(HPV)であり、HPV抗原(複数可)は、E6及び/またはE7抗原である。HPV E6抗原の非限定的な例としては、配列番号36〜72に示されるアミノ酸配列を含むものが挙げられる。HPV E7抗原の非限定的な例としては、配列番号73〜94に示されるアミノ酸配列を含む抗原が挙げられる。他の実施形態では、HPV抗原は、E1、E2、E4、E5、L1もしくはL2タンパク質、またはそれらの抗原性ペプチド配列である。適切なHPV抗原は、PCT出願第PCT/US2016/058314号にさらに記載されており、その全内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
別の実施形態では、腫瘍抗原は、mRNAがんワクチンによってコードされている。適切なmRNAがんワクチンは、PCT出願第PCT/US2016/044918号に詳細に記載されており、その全内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
さらに別の実施形態では、腫瘍抗原は、インサイチュでの腫瘍細胞の破壊時に放出される腫瘍抗原などの内因性腫瘍抗原である。免疫応答が細胞内構成要素に対して刺激され得るように、細胞内構成要素の放出をもたらすインビボでの細胞死をもたらす天然の機構が存在することが当該技術分野において確認されている。そのような機構は、本明細書において免疫原性細胞死と呼ばれ、そしてネクロトーシス及びパイロトーシスを含む。したがって、一実施形態では、本開示の免疫増強剤mRNA構築物は、内因性免疫原性細胞死が生じて1つ以上の内因性腫瘍抗原が放出され、それによって腫瘍抗原に対する免疫応答を増強するような条件下で腫瘍を有する対象に投与される。一実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物は、対象における腫瘍細胞の免疫原性細胞死を刺激する「実行型mRNA構築物」をコードする第2のmRNA構築物と共に腫瘍を有する対象に投与される。実行型mRNA構築物の例としては、MLKL、RIPK3、RIPK1、DIABLO、FADD、GSDMD、カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−11、Pyrin、NLRP3及びASC/PYCARDをコードする構築物が挙げられる。実行型mRNA構築物、及び免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせたそれらの使用は、その全内容が参照により本明細書に明確に組み込まれる米国特許出願第62/412,933号にさらに詳細に記載されている。
一実施形態では、目的の抗原(複数可)は、病原体抗原である。一実施形態では、病原体抗原は、ウイルス抗原を含む。一実施形態では、ウイルス抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原である。一実施形態では、HPV抗原は、E6またはE7抗原である。HPV E6抗原の非限定的な例としては、配列番号36〜72に示されるアミノ酸配列を含む抗原が挙げられる。HPV E7抗原の非限定的な例としては、配列番号73〜94に示されるアミノ酸配列を含む抗原が挙げられる。他の実施形態では、HPV抗原は、E1、E2、E4、E5、L1もしくはL2タンパク質、またはそれらの抗原性ペプチド配列である。適切なHPV抗原は、PCT出願第PCT/US2016/058314号にさらに記載されており、その全内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。別の実施形態では、ウイルス抗原は、単純ヘルペスウイルス(HSV)抗原、例えば、HSV−1またはHSV−2抗原である。例えば、ウイルス抗原は、HSV(HSV−1またはHSV−2)糖タンパク質B、糖タンパク質C、糖タンパク質D、糖タンパク質E、糖タンパク質I、ICP4またはICP0抗原であり得る。適切なHSV抗原は、PCT出願第PCT/US2016/058314号にさらに記載されており、その全内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
一実施形態では、病原体抗原は細菌性抗原である。一実施形態では、細菌抗原は多価抗原である(すなわち、抗原は、異なるエピトープを含む複数の抗原性ペプチドなどの複数の抗原性エピトープを含む)。一実施形態では、細菌抗原は、クラミジア(Chlamydia)抗原、例えば、MOMP、OmpA、OmpL、OmpFまたはOprF抗原である。適切なクラミジア(Chlamydia)抗原は、PCT出願第PCT/US2016/058314号にさらに記載されており、その全内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
一実施形態では、病原体抗原は、免疫増強剤も含む(すなわち、腫瘍抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドもコードする)mRNA構築物によってコードされる。
目的の抗原(複数可)をコードするmRNA構築物は、典型的には、抗原をコードする配列に加えて、mRNA構築物について本明細書に記載されるような他の構造特性(例えば、本明細書に記載の修飾核酸塩基、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、miR結合部位(複数可)、ポリAテール)を含む。適切なmRNA構築物構成要素は、本明細書に記載のとおりである。
オンコウイルス
一実施形態では、免疫増強剤構築物は、発がん性ウイルス(オンコウイルス)由来の1つ以上の抗原に対する免疫応答を増強するために使用される。ウイルス感染は、全てのヒトのがんのかなりの割合の原因である。世界中の全てのヒトのがんの約12%がウイルスの病因を有すると推定されている(Parkin(2006)Int J Cancer118:3030−3044)。「オンコウイルス」という用語は、がんを引き起こし得るDNA及び/またはRNAゲノムを有する任意のウイルスを指し、そして「腫瘍ウイルス」または「がんウイルス」という用語と同義的に使用され得る。世界保健機関(World Health Organization)の国際癌研究機関(International Agency for Research on Cancer(IARC))は、7つのヒト癌ウイルスを、グループ1の生物学的発癌物質として認めており、これに関しては、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、高リスクヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びカポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)(Bouvard et al.,(2009)Lancet Oncol 10:321−322)を含む「ヒトにおける十分な発現性の証拠」がある。メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)は、グループ2Aの生物学的発癌物質としてIARCによって分類されている最近発見された癌ウイルスである(Feng et al.,(2008)Science 319(5866):1096−1100)。
病原性ウイルス(例えば、ポリオ、インフルエンザ)を標的とするワクチンの経済的に不利な集団に到達するための安全性、有効性、及び能力の優れた記録によって、オンコウイルスを標的とする予防及び治療ワクチン接種戦略の開発及び実施への努力が促された(Schiller and Lowy(2010)Ann Rev Microbiol 64:23−41)。したがって、一態様では、免疫増強剤構築物を使用して、発がん性ウイルスの1つ以上の目的の抗原に対する免疫応答を増強し得る。例えば、発がん性ウイルス由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される、化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及び抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、その対象における発がん性ウイルス抗原(複数可)に対する免疫応答を刺激してもよい。発がん性ウイルス、及びそれによって発がん性ウイルスに対する免疫応答を増強するための免疫増強剤構築物と組み合わせて使用するためのその適切な抗原の非限定的な例は、以下にさらに記載される。
A.ヒトパピローマウイルス(HPV)
一実施形態では、癌ウイルス抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)由来である。子宮頸癌は、世界中で女性が罹患している4番目に最も一般的な悪性腫瘍である(Wakeham and Kavanagh(2014)Curr Oncol Rep16(9):402)。ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染は、子宮頸癌のほぼ全ての症例に関連し、そして陰茎、膣、外陰、肛門及び口腔咽頭を含む他のいくつかの癌を引き起こす原因である(Forman et al.,(2012)Vaccine 30 Suppl 5:F12−23;Maxwell et al.,(2016)Annu Rev Med 67:91−101)。現在までに、300以上のパピローマウイルスが同定され配列決定されており、その中には発がん性に応じて分類されている200種類以上のHPVが含まれている。子宮頸癌の発症と「高リスク」HPVタイプによる感染との間の関連は十分に確立されており、子宮頸部スクリーニング中のHPV DNA試験及び予防ワクチンの開発の理論的根拠を提供する(Egawa et al.,(2015)Viruses 7(7):3863−3890)。高リスクHPV型のうち、HPV16及びHPV18は、子宮頸癌症例の約70%に関与する主要なパピローマウイルス型である(Walbomers et al.,(1999)J Pathol 189(1):12〜19;Clifford et al.,(2002)Bri J Cancer 88:63−73)。
子宮頸癌及び他の泌尿生殖器悪性腫瘍の病因としてのHPVの同定は、ワクチン接種及びHPV感染を標的とする他の治療戦略を通して、HPV関連がんによって引き起こされる罹患率及び死亡率を軽減する機会を提供した(zur Hausen(2002)Nat Rev Cancer2(5):342−350)。HPVウイルス粒子のメジャーキャプシドタンパク質L1を標的とする予防HPVワクチンが存在する(Harper et al.,(2010)Discov Med 10(50):7−17;Kash et al.,(2015)J Clin Med 4(4):614−633)。これらのワクチンは、感染していない人々がHPV感染を獲得するのを防ぎ、さらに以前に感染した患者が再感染するのを防いだ。しかし、現在利用可能なHPVワクチンは、確立されたHPV感染及びHPV関連病変を処置または解消することはできない(Ma et al.,(2012)Expert Opin Emerg Drugs17(4):469−492)。治療用HPVワクチンは、既存のHPV感染及び関連疾患を解消するための潜在的な処置アプローチである。ウイルス粒子に対する中和抗体を生成し得る予防用HPVワクチンとは異なり、治療用HPVワクチンは、感染細胞を特異的に標的とし殺傷するように細胞媒介性免疫応答を刺激し得る。
多くのHPV感染症は、無症候性のままであって免疫系によって解消されるが、持続性HPV感染症が発症する可能性があり、この感染症はさらに低悪性度または高悪性度の子宮頸部上皮内腫瘍及び/または子宮頸癌に進展し得る(Ostor(1993)Int J Gynecol pathol 12(2):186−192;Ghittoni et al.,(2015)Eccancermedicalscience 9:526)。HPVウイルスDNAは、多くのHPV関連病変及びがんの宿主のゲノムに組み込まれている。この組み込みは、初期(E1、E2、E4、及びE5)及び後期(L1及びL2)遺伝子の欠失をもたらし得る。組み込みプロセス中のL1及びL2の欠失は、HPV関連がんに対する予防ワクチンの使用を妨げる。さらに、E2は、HPVがん遺伝子E6及びE7に対する負の調節因子である。組み込み中のE2の欠失は、E6及びE7の発現の増大をもたらし、そしてHPV関連発がん性に寄与すると考えられる。癌タンパク質E6及びE7は、HPV関連悪性腫瘍の開始及び維持に必要であり、そして形質転換細胞において発現される。E6及びE7を標的とする治療用HPVワクチンは、自己抗原に対する免疫寛容の問題を回避し得る理由は、これらのウイルスコード化発癌タンパク質が、人体にとって外来タンパク質であるからである。これらの理由から、HPV癌タンパク質E6及びE7は、治療用HPVワクチンの理想的な標的として働く。
したがって、一態様では、免疫増強剤構築物を使用して、目的の1つ以上のHPV抗原に対する免疫応答を増強し得る。例えば、HPV由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びHPV抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、その対象におけるHPV抗原に対する免疫応答を刺激し得る。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びHPV抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのHPV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、HPVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのHPV抗原性ポリペプチドは、E1、E2、E4、E5、E6、E7、L1、及びL2、ならびにそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドは、E1、E2、E4、E5、E6、及びE7から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドは、E6、E7、またはE6とE7の組み合わせである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドは、L1、L2、またはL1とL2の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドはL1である。いくつかの実施形態では、L1タンパク質は、HPV血清型6、11、16、18、31、33、35、39、30、45、51、52、56、58、59、68、73または82から得られる。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドは、L1、L2、またはL1とL2の組み合わせ、及びE6、E7、またはE6とE7の組み合わせである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドは、HPV株であるHPV16型(HPV16)、HPV18型(HPV18)、HPV26型(HPV26)、HPV31型(HPV31)、HPV33型(HPV33)、HPV35型(HPV35)、HPV45型(HPV45)、HPV51型(HPV51)、HPV52型(HPV52)、HPV53型(HPV53)、HPV56型(HPV56)、HPV58型(HPV58)、HPV59型(HPV59)、HPV66型(HPV66)、HPV68型(HPV68)、HPV82型(HPV82)、またはそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドは、HPV株HPV16、HPV18、またはそれらの組み合わせに由来する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原ポリペプチドは、HPV株であるHPV6型(HPV6)、HPV11型(HPV11)、HPV13型(HPV13)、HPV40型(HPV40)、HPV42型(HPV42)、HPV43型(HPV43)、HPV44型(HPV44)、HPV54型(HPV54)、HPV61型(HPV61)、HPV70型(HPV70)、HPV72型(HPV72)、HPV81型、(HPV81)、HPV89型(HPV89)、またはそれらの組み合わせに由来する。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原ポリペプチドは、HPV株であるHPV30型(HPV30)、HPV34型(HPV34)、HPV55型(HPV55)、HPV62型(HPV62)、HPV64型(HPV64)、HPV67型(HPV67)、HPV69型(HPV69)、HPV71型(HPV71)、HPV73型(HPV73)、HPV74型(HPV74)、HPV83型(HPV83)、HPV84型(HPV84)、HPV85型(HPV85)、またはそれらの組み合わせに由来する。
いくつかの実施形態では、ワクチンは、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)のHPVから得られたE1、E2、E4、E5、E6、E7、L1、及びL2タンパク質、またはそれらの組み合わせをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、HPVから得られたE1、E2、E4、E5、E6、及びE7タンパク質、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、または6)のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、HPVから得られたE6及びE7タンパク質から選択される少なくとも1つのポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、HPVから得られたL1もしくはL2タンパク質、またはそれらの組み合わせから選択されるポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、HPVウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルし得る抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのHPVの結合を担う抗原性ポリペプチドをコードする。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるHPV感染を処置及び/または予防する方法に関し、ここで免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHPVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上の組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されているか、または予測されている)が、それを必要とする対象(例えば、HPVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供される。
いくつかの実施形態では、本開示は、HPV感染から生じるか及び/またはその原因として関連するがんを処置及び/または予防する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、HPV感染またはHPV感染から生じる少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における子宮頸癌、陰茎癌、膣癌、外陰癌、肛門癌または口腔咽頭癌のリスクを低減する方法を提供する。これらの方法のそれぞれにおいて、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHPVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上の組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されるか、または推測されている)は、それを必要とする対象(例えば、HPVに感染しているかまたはHPVによる感染の危険性がある人)に提供される。
必要に応じて、HPV感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、HPV及び/またはHPVに感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じるように、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHPVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬を提供される。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HPVウイルス力価の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗HPV抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HPV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
B.B型肝炎ウイルス(HBV)
別の実施形態では、オンコウイルス抗原は、B型肝炎ウイルス(HBV)由来である。B型肝炎ウイルス(HBV)は、Hepadnaviridae科に属する二重鎖DNAウイルスである。ヒトに感染すると、HBVは、B型肝炎を引き起こす。肝炎を生じることに加えて、HBVの感染は、肝硬変及び肝細胞癌の発症をもたらし得る。したがって、別の態様では、免疫増強剤構築物を用いて、目的の1つ以上のB型肝炎ウイルス(HBV)抗原に対する免疫応答を増強してもよい。例えば、HBV由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びHBV抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、その対象のHBV抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。
HBVゲノムは、文字S、C、P、及びXによって画定される4つの重複するオープンリーディングフレーム(すなわち遺伝子)をコードする(Ganem et al.,(2001)Fields Virology 4thed.;Hollinger et al.,(2001)Fields Virology 4thed.)。S遺伝子は、ウイルス表面エンベロープタンパク質、HBsAgをコードし、そして構造的及び機能的にプレS1、プレS2、及びS領域に分けてもよい。HBsAGには、小(S)、中(M)、及び大(L)の3つの形態がある。コアまたはC遺伝子は、プレコア及びコア領域を有する。複数のインフレーム翻訳開始コドンは、S及びC遺伝子の特徴であり、これらは関連するが機能的に異なるタンパク質を生じる。C遺伝子は、翻訳がそれぞれコア領域またはプレコア領域のどちらから開始されるかに応じて、ウイルスヌクレオキャプシドHBcAgまたはB型肝炎e抗原(HBeAg)のいずれかをコードする。コアタンパク質は、キャプシド様構造に自己アセンブルする。プレコアORFは、翻訳産物を感染細胞の小胞体に向かわせるシグナルペプチドをコードし、ここでタンパク質はさらにプロセシングされて分泌HBeAgを形成する。HBeAgの機能は、その機能が持続感染を促進することである免疫寛容に関与しているが、ほとんど特徴付けられていない(Milich及びLiang(2003)Hepatology 38:1075−1086。ポリメラーゼ(pol)は、約800アミノ酸という大きなタンパク質であり、P ORFによってコードされる。Polは、キャプシド形成及びマイナス鎖合成の開始に関与する、末端タンパク質ドメイン;ゲノム合成を触媒する逆転写酵素(RT)ドメイン;及びプレゲノムRNAを分解し、複製を促進する、リボヌクレアーゼHドメインという3つのドメインに機能的に分けられる。HBV X ORFは、シグナル伝達、転写活性化、DNA修復、及びタンパク質分解の阻害など、複数の機能を有する16.5−kdタンパク質(HBxAg)をコードする(Cross et al.,(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90:8078−8082;Bouchard and Schneider(2004)J Virol 78:12725−12734)。ウイルスのライフサイクルにおけるこの活性の機構及びHBxAgの生物学的機能は、ほとんど知られていない。しかし、HBxAgがインビボでの増殖性HBV感染に必要であり、そしてHBVの発がん性の可能性に寄与し得ることは十分に確立されている(Liang(2009)Hepatology 49(Suppl S5):S13−S21)。
効果的な予防ワクチンの入手可能性にもかかわらず、2億4千万人以上の人々が、HBVに慢性感染し続け、毎年50万人超の人々が慢性感染症による肝疾患で死亡している(World Health Organization(2015)Hepatitis B Fact Sheet FS204)。HBV感染に対する現在利用可能な治療選択肢としては、ヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体及びアルファインターフェロン(IFN−α)が挙げられる。しかし、これらの処置にはいくつかの制限がある。ヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体は、ウイルス複製を効果的に抑制するが、感染を排除しない。ヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体による処置が中止されると、ウイルスは、感染者では急速にリバウンドする。さらに、抗ウイルス薬による長期処置は、薬剤耐性変異ウイルスの生成をもたらし得る。ヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体とは対照的に、抗ウイルス活性及び免疫調節活性の両方を有するIFN−αは、一部の患者においてより耐久性のある結果を生じ得る。しかし、IFN−α処置は、しばしば高い発生率の副作用と関連しており、それによってそれは次善の治療選択肢となっている。したがって、HBV関連感染症及び疾患に対する新たな有効な治療法の設計は不可欠である(Reynolds et al.,(2015)J Virol 89(20):10407−10415)。
HBV感染及びその処置は、典型的にはウイルス抗原及び/または抗原に対する抗体の検出によってモニターされる。HBVに感染すると、最初に検出可能な抗原は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)であり、続いてB型肝炎「e」抗原(HBeAg)である。ウイルスの除去は、HBsAgに対する、及び/またはコア抗原(HBcAg)に対する血清中のIgG抗体の出現(セロコンバージョンとしても知られている)によって示される。多数の研究では、ウイルス複製、ウイルス血症のレベル、及びHBV感染個体における慢性状態への進行が、CD4+ヘルパー(TR)及びCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって媒介されるHBV特異的細胞性免疫によって、直接的及び間接的に影響されることが示される。慢性疾患に進行している患者は、急性感染を解消する患者と比較して、HBV特異的T細胞応答がないか、弱いか、または焦点が絞られている傾向がある(例えば、Chisari,1997,J Clin Invest 99:1472−1477;Maini et al,1999,Gastroenterology 117:1386−1396;Rehermann et al,2005,Nat Rev Immunol 2005;5:215〜229;Thimme et al,2001,J Virol 75:3984−3987;Urbani et al.,2002,J Virol 76:12423−12434;Wieland and Chisari,2005,J Virol 79:9369−9380;Webster et al,2000,Hepatology 32:1117−1124;Penna et al,1996,J Clin Invest 98:1185−1194;Sprengers et al,2006,J Hepatol 2006;45:182−189を参照のこと)。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びHBV抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのHBV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、HBVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する、少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのHBV抗原ポリペプチドは、HBsAg(S、MまたはL)、HBcAg、HBeAg、HBxAg、Pol、及びそれらの組み合わせから選択される。
配列決定されたゲノムにわたる群間の相違に基づいて、HBVは、系統発生学的に、単一の個体から単離された推定上の10番目の遺伝子型Jを有する9つの遺伝子型A−Iに分類されている。HBV遺伝子型はさらに少なくとも35のサブ遺伝子型に分類される。遺伝子型の違いは、疾患の重症度、疾患の経過及び合併症の可能性、処置に対する応答、及びおそらくワクチン接種に対する応答に影響を及ぼす(Kramvis et al.,(2005)、Vaccine 23(19):2409−2423;Magnius and Norder,(1995),Intervirology 38(1−2):24−34)。
HBV遺伝子型Aはさらに、サブ遺伝子型A1、A2、A4、及び準サブ遺伝子型A3に分類され、後者の群の配列は、サブ遺伝子型分類の基準を満たさない。HBV遺伝子型Bはさらに、6つのサブ遺伝子型B1、B2、B4〜B6、及び準サブ遺伝子型B3に分類される。最も古いHBV遺伝子型であるHBV遺伝子型Cは、ヒト集団における長期の流行性を反映している、16個のサブ遺伝子型C1〜C16にさらに分類される。HBV遺伝子型Dは、6つのサブ遺伝子型D1〜D6にさらに分類される。HBV遺伝子型Fは、4つのサブ遺伝子型F1〜F4にさらに分類される。遺伝子型Iは、2つのサブ遺伝子型I1及びI2にさらに分類される。さらに、HBVは、血清学によってHBVのエンベロープタンパク質上に存在する抗原性エピトープに基づいて、4つの主要な血清型adr、adw、ayr、及びaywに分類されている(Kramvis(2014)Intervirology 57:141−150)。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのHBV抗原ポリペプチドは、HBV遺伝子型A(例えば、サブ遺伝子型A1〜A4のいずれか)、HBV遺伝子型B(例えば、サブ遺伝子型B1〜B6のいずれか)、HBV遺伝子型C(例えば、サブ遺伝子型C1〜C16のいずれか)、HBV遺伝子型D(例えば、サブ遺伝子型D1〜D6のいずれか)、HBV遺伝子型E、HBV遺伝子型F(例えば、サブ遺伝子型F1〜F4のいずれか)、HBV遺伝子型GまたはHBV遺伝子型I(例えば、サブ遺伝子型I1−I2のいずれか)に由来する。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるHBV感染を処置及び/または予防する方法に関し、ここで、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHBVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上の組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されているか、または予測されている)を、それを必要とする対象(例えば、HBVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、HBV感染に由来するか及び/または原因として関連するがんを処置及び/または予防する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、HBV感染、またはHBV感染から生じる少なくとも1つの症状を軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における肝臓の損傷を軽減するための方法を提供する。これらの方法のそれぞれにおいて、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHBVポリペプチドまたはその免疫原性断片(免疫応答を生じさせることが当業者によって示されるかまたは予測されている)をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上の組成物が、それを必要とする対象(例えば、HBVに感染しているか、またはHBVによる感染の危険性がある人)に提供される。
必要に応じて、HBV感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、HBV及び/またはHBVに感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じる、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHBVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬を提供される。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HBVウイルス力価の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗HBV抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HBV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
いくつかの実施形態では、免疫調節治療用核酸(例えば、メッセンジャーRNA、mRNA)は、少なくとも1つのHBV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、HBVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つの(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、HBsAg、HBcAg、HBeAg、HBxAg、またはPolから選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、暫定的及び/または確認されたHBV遺伝子型及び/または亜遺伝子型から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、暫定的または未割り当てのHBV遺伝子型または亜遺伝子型から選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、HBVウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルし得る抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのHBVウイルスの結合を担う抗原性ポリペプチドをコードする。
C.C型肝炎ウイルス(HCV)
別の実施形態では、癌ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)由来である。C型肝炎ウイルス(HCV)は、主に肝臓に影響を与えるウイルス感染症である、C型肝炎を引き起こす、小さな、エンベロープが付いたプラス鎖の一本鎖RNAウイルスである。したがって、別の態様では、免疫増強剤構築物は、目的の1つ以上のC型肝炎ウイルス(HCV)抗原に対する免疫応答を増強するために使用され得る。例えば、HCV由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びHCV抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象のHCV抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。
HCVのRNAゲノムは、成熟構造及び非構造(NS)タンパク質を産生するために、細胞及びウイルスでコードされたプロテアーゼ及びペプチダーゼによって同時翻訳的にプロセシングされ翻訳後プロセシングされる3010アミノ酸の大きなポリタンパク質をコードする。HCV構造タンパク質には、コア(あるいはCまたはp22)、ならびに2つのエンベロープ糖タンパク質E1及びE2(あるいは、それぞれgp35及びgp70)が挙げられる。非構造(NS)タンパク質としては、NS1(あるいはp7)、NS2(あるいはp23)、NS3(あるいはp70)、NS4A(あるいはp8)、NS4B(あるいはp27)、NS5A(あるいはp56/58)、及びNS5B(あるいはp68)(Ashfaq et al.,(2011)Virol J 8:161)が挙げられる。
全ウイルスゲノムの系統発生分析及び配列分析に基づいて、HCVバリアントは、現在7つの別々の遺伝子型と80を超える確認及び暫定サブタイプに分類されている(Smith et al.,(2014)Hepatology 59(1):318〜327)。国際ウイルス分類学会(The International−Committee for Taxonomy of Viruses)(ICTV)は、参照分離株、確認済み及び暫定的なサブタイプ、未割り当てHCV分離株、アクセッション番号、及びアノテーションされたアラインメントの表を維持し定期的に更新している(http://talk.ictvonline.org/links/hcv/hcv−classification.htm)。HCVサブタイプ1a、1b、2a、及び3aは「流行性サブタイプ」と考えられ、世界的に分布しており、そして高所得国におけるHCV感染の大部分を占める。これらのサブタイプは、感染血液、血液製剤、静脈内薬物使用、及び他の経路によるHCV感染の発見前の数年で急速に広まったと考えられている(Smith et al.,(2005)J Gen Virol 78(Pt2):321−328;Pybus et al.,(2005)Infect Genet Evol 5:131−139;Magiorkinis et al.,(2009)PLoS Med6:e1000198)。他のHCVサブタイプは「流行」株と見なされ、比較的まれであり、より制限された地域で長期間循環している。遺伝子型1と2の風土病株は、主に西アフリカに、3は南アジアに局在し、4は中央アフリカ及び中東に、5は南アフリカに、及び6は東南アジアに局在している(Simmonds(2001)J Gen Virol 82:693:712;Pybus et al.,(2009)J Virol 83:1071〜1082)。今まで、1つのゲノムタイプ7の感染のみが、報告されている(Murphy et al.,(2007)J Clin Microbiol 45:1102−1112)。
チンパンジーは実験的感染に感受性があることが示されているが、HCVは自然にはヒトにしか感染しない(Pfaender et al.,(2014)Emerg Microbes Infect 3:e21)。HCVによる慢性ウイルス感染は、肝硬変、肝疾患、門脈圧亢進症、肝機能の悪化、及び癌(例えば、肝細胞癌、HCC)の主な原因である(Webster et al.,(2015)Lancet 385(9973):1124−1135)。世界中で1億6000万から1億7000万人を超える人々が、C型肝炎に罹患していると推定されており、最終的に年間約35万人が死亡している(Zaltron et al.,(2012)BMC Infect Dis 12(Suppl 2):S2;Lavanchy(2011)Clin Microbiol Infect 17:107−115)。世界的にみて、肝硬変及びHCCの全症例の約4分の1が、HCV感染に起因している。しかし、高い流行性の地域では、HCVは通常、HCC及び肝硬変症例の50%超を占める(Perz et al.,(2006)J Hepatol 45(4):529−538)。慢性感染者は、一般集団と比較して生活の質が低下している(Bezemer et al.,(2012)BMC Gastroenterol 12:11)。
血液及び血液製剤の輸血は、普遍的スクリーニングの実施に先立って、以前はHCV感染の主要な経路であった(Zou et al.,(2010)Transfusion 50(7):1495−1504)。静脈内薬物使用による経皮伝達は現在、先進国における主要な伝達経路である(Cornberg et al.,(2011)Liver Int 31(Suppl 2):30−60;Nelson et al.,(2011)Lancet 378(9791:571−583)。針と注射器交換のプログラム(needle and syringe exchange programmes)(NSP)ならびに麻薬補充療法(OST)などの社会サービスは、薬物を注射する人々(people who inject drugs)(PWID)の間でのHCV感染を効果的に減らし得るが、これらのアプローチは、HCV有病率を低レベルまで低下するのには不十分である場合がある(Turner et al.,(2011)Addition 106(11)1978−1988;Vikermann et al.,(2012)Addition 107(11):1984−1995)。ごく最近では、非常に有効な直接作用型抗ウイルス療法(DAA)が、HCV感染症を処置するために開発され、使用されている(例えば、ボセプレビル、テラプレビル、シメプレビル、ソフォスブビル、リジパスビル、オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビル、ダサブビル、ダクラタスビル、エルバスビル、グラゾプレビル、ベルパタスビル)。多くの患者では、DAAは、持続性ウイルス学的著効(SVR、あるいは、「ウイルス治療」)に繋がり得るので、これらの薬物は、HCVの有病率を低下させるための予防としての処置アプローチの可能性を実証している(Smith−Palmer et al.,(2015)BMC Infect Dis 15:19)。しかし、これらの処置に関する高い金銭的費用及び支払人払い戻し決定の課題によって、現在、それらの広範な使用が制限されている(Martin et al.,(2011)J Hepatol 54(6):1137−1144;Martin et al.,(2012)Hepatology 55(1):49−57;Brennan and Shrank(2014)JAMA 312(6):593−594)。
HCVワクチン接種は、HCV罹患率を低下させるための代替的な処置及び/または予防戦略である。実験的に感染したチンパンジーにおける初期のHCVワクチン研究では、ウイルスエンベロープ糖タンパク質E1(gp35)及びE2(gp72)から構成されるサブユニットワクチンが、相同HCV遺伝子型1aウイルスの効果的に制御及び促進されたクリアランスを引き起こす高効率の体液性応答を惹起することが見出された(Choo et al.,(1994)Proc Nat Acad Sci USA 91(4):1294−1298)。ヒトで行われた第I相試験では、糖タンパク質E1及びE2を含むワクチンが広範囲に反応性の中和抗体を惹起することが証明された(Law et al.,(2013)PLoS ONE 8(3):e59776)。HCVに対するT細胞応答を生じるように設計された代替のワクチン接種アプローチもまた、ヒト第1相試験において試験されており、そして高度に免疫原性であることが示された(Barnes et al.,(2012)Sci Trans Med 4(115):115ra1)。これらの研究によって、体液性の抗体媒介性免疫応答及び/または適応性T細胞媒介性応答の両方が予防的及び/または治療的HCVワクチンの開発のための有望なアプローチであることが実証された。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びHCV抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのHCV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、HCVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのHCV抗原ポリペプチドは、コア(C、p22)、E1(gp35)、E2(gp70)、NS1(p7)、NS2(p23)、NS3(p70)、NS4A(p8)、NS4B(p27)、NS5A(p56/58)、NS5B(p68)、及びそれらの組み合わせから選択される。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるHCV感染を処置及び/または予防する方法に関し、ここで、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHCVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上の組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されているかまたは予測されている)が、それを必要とする対象(例えば、HCVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供される。必要に応じて、HCV感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHCVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬を提供されて、HCVに対する及び/またはHCVに感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じる。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HCVウイルス力価の低下及び/または持続的ウイルス学的応答の確立をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗HCV抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HCV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
いくつかの実施形態では、免疫調節治療用核酸(例えば、メッセンジャーRNA、mRNA)は、少なくとも1つのHCV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、HCVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つの(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、コア(C、p22)、E1(gp35)、E2(gp70)、NS1(p7)、NS2(p23)、NS3(p70)、NS4A(p8)、NS4B(p27)、NS5A(p56/58)、NS5B(p68)、及びそれらの組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、確認されたHCV遺伝子型及び/またはサブタイプ1、1a、1b、1c、1d、1e、1g、1h、1i、1j、1k、1l、1m、1n、2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2i、2j、2k、2l、2m、2q、2r、2t、2u、3、3a、3b、3d、3e、3g、3h、3i、3k、4、4a、4b、4c、4d、4f、4g、4k、4l、4m、4n、4o、4p、4q、4r、4s、4t、4v、4w、5、5a、6、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6n、6o、6p、6q、6r、6s、6t、6u、6v、6w、6xa、6xb、6xc、6xd、6xe、7、または7aから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、暫定HCV遺伝子型及び/またはサブタイプ1f、2g、2h、2n、2o、2p、2s、3c、3f、4e、4h、4i、または4jから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、暫定または未割り当てHCV単離体から選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、HCVウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルすることが可能である抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのHCVの結合を担う抗原性ポリペプチドをコードする。
D.エプスタインバーウイルス(EBV)
別の実施形態では、オンコウイルス抗原は、エプスタインバーウイルス(EBV)由来である。エプスタイン−バーウイルス(EBV)、あるいはヒトヘルペスウイルス4(HHV−4)は、感染性単核球症の病因であり、そしていくつかのヒト癌(例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、乳癌、肝細胞癌、胃/胃癌、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、中枢神経系リンパ腫(CNS)、鼻咽頭癌、多発性硬化症、EBV関連リンパ腫、口腔毛状白板症、びまん性白血病ラージB細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫)を含む多数の良性及び悪性の疾患と関連している(Jha et al.,(2016)Front Microbiol 7(1602)及びその中の引用文献)。EBVは、世界の成人人口の95%超に感染する極めて流行しているウイルスである(Cohen(2000)N Engl J Med 343:481−492)。したがって、別の態様では、免疫増強剤構築物は、目的の1つ以上のエプスタイン−バーウイルス(EBV)抗原に対する免疫応答を増強するために使用され得る。例えば、EBV由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びEBV抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象のEBV抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。
EBVゲノムは、長さ約172kbの線状二重鎖DNA(dsDNA)分子である。EBVゲノムは、その多くは機能が特徴付けられていないままである、約80のウイルスタンパク質をコードする可能性がある。それらの対応する遺伝子産物及び提案された機能を含む特徴付けられたEBV遺伝子としては、既知であれば、BKRF1(EBNA1)[プラスミド維持、DNA複製、転写調節]、BYRF1(EBNA2)[トランス活性化]、BLRF3/BERF1(EBNA3A、あるいはEBNA3)[転写調節]、BERF2a/b(EBNA3B、あるいはEBNA4)、BERF3/4(EBNA3C、あるいはEBNA6)[転写調節]、BWRF1(EBNA−LP、あるいはEBNA5)[トランス活性化]、BNLF1(LMP1)[B細胞生存、抗アポトーシス]、BNRF1(LMP2A/B、あるいはTP1/2)[潜伏期間の維持]、BARF0(A73、RPMS1)、EBER1/2(低分子RNA)[自然免疫の調節]、BZLF1(ZEBRA/Zta/EB1)[トランス活性化、溶解サイクルの開始]、BRLF1[トランス活性化、溶解サイクルの開始]、BILF4[トランス活性化、溶解サイクルの開始]、BMRF1[トランス活性化]、BALF2[DNA結合]、BALF5[DNAポリメラーゼ]、BORF2[リボヌクレオチドレダクターゼサブユニット]、BARF1[リボヌクレオチドレダクターゼサブユニット]、BXLF1[チミジンキナーゼ]、BGLF5[アルカリエキソヌクレアーゼ]、BSLF1[プライマーゼ]、BBLF4[ヘリカーゼ]、BKRF3[ウラシルDNAグリコシラーゼ]、BLLF1(gp350/220)[主要エンベロープ糖タンパク質]、BXLF2(gp85、あるいはgH)[ウイルス−宿主エンベロープ融合]、BKRF2(gp25、あるいはgL)[ウイルス−宿主エンベロープ融合]、BZLF2(gp42)[ウイルス−宿主エンベロープ融合、MHCクラスIIと結合]、BALF4(gp110、あるいはgB)、BDLF3(gp100−150)、BILF2(gp55−78)、BCRF1[ウイルスインターロイキン−10]、及びBHRF1[ウイルスbcl−2類似体](Liebowitz and Kieff(1993)Epstein−Barr virus.In:The Human Herpesvirus.Roizman B,Whitley RJ,Lopez−C,editors,New York,pp.107−172;Li et al.,(1995)J Virol 69:3987−3994;Nolan and Morgan(1995)J Gen Virol 76:1381−1392;Thompson and Kurzrock(2004)Clin Cancer Res 10:803−821;Young and Murray(2003)Oncogene 22:5108−5121)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びEBV抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのEBV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、EBVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。任意の前述のEBVタンパク質を、抗原性EBVポリペプチドとして使用し得る。免疫原性EBVタンパク質及びそれらのエピトープは、当該技術分野において記載されている(例えば、Rajcani J.et al.(2014)Recent Pat.Antiinfect.Drug Discover.9:62−76)。特定の実施形態では、抗原性EBVポリペプチドは、BLLF1(gp350/220)、BZLF1/Zta、EBNA2、EBNA3、EBNA6、LMP1、LMP2A、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
2つの主要なEBV型がヒトに感染することが知られている:EBV−1及びEBV−2(あるいはそれぞれA型及びB型として、またはB95−8株及びAG876株としても公知である)。2つのEBV型は、EBV核抗原であるEBNA−2、EBNA−3A/3、EBNA−3B/4、及びEBNA−3C/6をコードする遺伝子の配列が異なる(Sample et al.,(1990)J Virol 64:4084−4092;Dambough et al.,(1984)Proc Natl Acad Sci USA 81:7632〜7636)。2つの主要なEBV型の中で、広範な株多様性が、臨床試料から単離されたEBVにおいて観察され、それは疾患型及び重症度においてある役割を果たしている場合がある。最初の完全なEBVゲノム配列であるB95−8は、1984年に発表された(Baer et al.,(1984)Nature 310:207−211)。22個の追加のEBVのゲノム配列(AG876、GD1、GD2、HKNPC1、Akata、Mutu、C666−1、M81、Raji、K4123−Mi、及びK4413−Mi)、ならびに鼻咽頭癌臨床試料由来の8個のEBV配列及び1000Genomesプロジェクト由来の3つのEBVゲノムが報告されている(Tsai et al.,(2013)Cell Rep 5:458−470;Dolan et al.,(2006)Virology 350−164−170;Palser et al.,(2015)J Virol 89(10):5222−5237及びその中の引用文献)。最近の報告は、唾液から直接配列決定された最初のEBVゲノムを含む、71の新しいEBVゲノムのゲノム配列を分析した。これらの新しいEBVゲノム配列は、12の以前に公表された株と組み合わせて分析された。この分析によって、EBVゲノムの確立された遺伝子地図(NC_007605)が、異なる地理的位置及び異なる種類の感染からのEBV分離株の代表であることが明らかになった。十分に確立されたEBV1型と2型の分類をこの研究で再検討し、主にEBNA2ならびにEBNA3A、−B、及び−Cの変動によって説明される、主要な変動の形態のままであることがわかった(Palser et al.,(2015)J Virol 89(10):5222−5237)。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのEBV抗原性ポリペプチドは、EBV−1またはEBV−2に由来する。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるEBV感染を治療及び/または予防する方法に関し、ここで、本明細書に記載の1つ以上の組成物であって、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのEBVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含み、免疫応答を生じることが当業者によって示されているかまたは予測されている組成物が、それを必要とする対象(例えば、EBVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供される。必要に応じて、EBV感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのEBVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬を提供されて、EBV及び/またはEBVに感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じる。いくつかの実施形態では、免疫応答は、EBVウイルス力価の低下及び/または持続的ウイルス学的応答の確立をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗EBV抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、EBV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、EBVウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルすることが可能である抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのEBVの結合を担う抗原性ポリペプチドをコードする。
E.ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)
別の実施形態では、癌ウイルス抗原は、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)由来である。ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1、あるいはヒトTリンパ好性ウイルスまたはヒトT細胞白血病リンパ腫ウイルス)は、ヒトにおいて持続感染を確立し得るレトロウイルスである。HTLV−1は、世界中で推定1000万〜2000万人の人々に感染し、そして感染は、ほとんどの人々において無症候性であるが、感染した個人の3%〜5%は非常に悪性かつ治療的に難治性の成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)を発症する(Gessain et al.,(2012)Front Microbiol 3:388;Taylor et al.,(2005)Oncogene 24:6047−6057)。HTLV感染はまた、いくつかの炎症性障害及び免疫媒介性障害、最も顕著にはHTLV関連骨髄腫/熱帯性痙性対麻痺(HAM/TSP)と原因として関連している。HTLV−1感染者の約0.25%〜3.8%が、HAM/TSPを発症する(Yamano and Sato(2012)Front Microbiol 3:389)。HTLV−1のヒトへの感染は、授乳、性交、細胞含有血液構成要素の輸血、ならびに針及び/または注射器の共有(例えば、静脈内薬物使用)によるウイルス感染細胞の移入を必要とする。したがって、別の態様では、免疫増強剤構築物は、目的の1つ以上のヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)抗原に対する免疫応答を増強するために使用してもよい。例えば、HTLV−1由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びHTLV−1抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象のHTLV−1抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。
HTLV−1は、複雑なレトロウイルスであり;全てのレトロウイルス(gag、pol、pro及びenv)に共有される構造タンパク質及び酵素の標準レパートリーに加えて、HTLV−1ゲノムの3’領域(あるいはpX領域と呼ばれる)は、アクセサリー遺伝子tax、rex、p12、p21、p13、p30及びHBZをコードする。ATLの発癌過程にはTax及びHBZが不可欠である(Giam and Semmes(2016)Viruses 8(6):161)。他のレトロウイルスと同様に、伝播後、ウイルス逆転写酵素は、ゲノムウイルスRNAからプロウイルスDNAを生成する。プロウイルスは、ウイルスインテグラーゼによって宿主ゲノムに組み込まれる。その後、HTLV−1感染は、分裂中の細胞を通してのみ広がると考えられ、粒子産生は最小限である。プロウイルスの定量は、プロウイルスの負荷を規定するHTLV−1感染細胞の数を反映する(Concalves et al.,(2010)Clin Microbiol Rev 23(3):577−589)。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びHTLV−1抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのHTLV−1抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、HTLV−1に対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、抗原性HTLV−1ポリペプチドは、gag、pol、pro、env、tax、rex、p12、p21、p13、p30、HBZ、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるHTLV−1感染を処置及び/または予防する方法に関し、ここで、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHTLV−1ポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含み、免疫応答を生じることが当業者によって示されているかまたは予測されている、本明細書に記載の1つ以上の組成物が、それを必要とする対象(例えば、HTLV−1に感染しているまたは感染の危険がある人)に提供される。必要に応じて、HTLV−1感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのHTLV−1ポリペプチドまたは免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬を提供されて、HTLV−1及び/またはHTLV−1に感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じる。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HTLV−1ウイルス力価の低下及び/または持続的ウイルス学的応答の確立をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗HTLV−1抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、HTLV−1感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、HTLV−1ウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルし得る抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのHTLV−1の結合に関与する抗原性ポリペプチドをコードする。
F.カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)
別の実施形態では、上記がんウイルス抗原は、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)由来である。カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、あるいはヒトヘルペスウイルス−8、HHV−8)は、Herpesviridae科のRhadinovirus属に属する二重鎖DNAγ−ヘルペスウイルスである。KSHVは、AIDS患者に一般的に発生するがんであるカポジ肉腫の全ての形態の病因であり、原発性滲出性リンパ腫(PEL;あるいは体腔ベースのリンパ腫、BCBL)、いくつかの種類の多中心性キャッスルマン病(MCD;あるいは、多中心性キャッスルマン病(MCD)関連形質芽球性リンパ腫)及びKSHV炎症性サイトカイン症候群(KICS)と原因として関連する(Chang et al.,(1994)Science 266:1865−1869;Dupin et al.,(1999)Proc Natl Acad Sci USA 96:4546−4551;Boshoff&Weiss(2002)Nat Rev Cancer 2(5):373−382;Yarchoan et al.,(2005)Nat Clin Pract Oncol 2(8):406−415;Cesarman et al.,(1995)N Engl J Med 332(18):1186−1191;Staudt et al.,(2004)Cancer Res64(14):4790−4799;Soulier et al.,(1995)Blood 86:1276−1280;Uldrick et al.,(2010)Clin Infect Dis 51:350−358))。したがって、別の態様では、免疫増強剤構築物を使用して、目的の1つ以上のカポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)抗原に対する免疫応答を増強し得る。例えば、KSHV由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びKSHV抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時にまたは順次)して、対象においてKSHV抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。
KSHVゲノムは、約165kbのdsDNA分子を含み、そしてウイルス株及び単離株にまたがって高度の配列同一性を示す。2つの主要遺伝子領域、K1/VIP(KSHVゲノムの5’末端によってコードされる可変免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフタンパク質)及びK15/LAMP(KSHVゲノムの3’末端によってコードされる潜伏関連膜タンパク質)(ウイルスゲノムの末端に位置する)は、中央ゲノム領域と比較して非常に可変性である(Zong et al.,(1999)J Virol 73:4156−4170;Poole et al.,(1999)73:6646−6660)。
K1遺伝子の配列可変性は、5つの主要なKSHVサブタイプ(A、B、C、D、及びE)の決定をもたらし、ウイルス株にわたってアミノ酸レベルで最大35%の可変性を示した。K15遺伝子の配列分析は、アミノ酸レベルで最大70%異なる、P、M、またはN対立遺伝子と命名されるバリアントを有するKSHV配列のさらなる分類をもたらした(Hayward&Zong(2007)Curr Top Microbiol Immunol 312:1−42)。他の9つのウイルスゲノム遺伝子座(ゲノムの約5.6%)は、さらなる可変性(T0.7/K12、K2、K3、ORF18/19、ORF26、K8、ORF73)、ならびにORF75遺伝子領域内の2つの遺伝子座を、KSHVゲノムの中央の、より保存された領域内に含む。K1/K15の可変性、株の分類、及び9つのORFの変異性に基づいて、既知のKSHVゲノムは現在12の主要な遺伝子型に分類されている(Strahan et al.,(2016)Viruses 8(4):92)。
カポジ肉腫のほぼ全ての症例にKSHVがあり、腫瘍形成にはKSHVの継続的な存在が必要である。KSHVゲノムは、ウイルス複製、ウイルス−宿主相互作用、腫瘍形成、及び免疫抑制及び回避を仲介することが多く知られている約90個のタンパク質をコードする可能性があり(Dittmer&Damania(2013)Curr Opin Virol 3:238−244)、潜在的な治療標的と見なされ得る。対応する遺伝子産物及び/または提案されている機能を含む特徴的なKSHV遺伝子としては、既知であれば、ORFK1(糖タンパク質;KSHV ITAMシグナル伝達タンパク質、KIS)、ORF4(カポジ補体制御タンパク質、KCP;カポシカ(kaposica))、ORF6(ssDNA結合タンパク質)、ORF11(dUTPase関連タンパク質、DURP)、ORFK2(ウイルスインターロイキン6ホモログ、vIL6)、ORF70(チミジレートシンターゼ)、ORFK4(vCCL−2、vMIP−II、MIP−1b)、ORFK4.1(vCCL−3、vMIP−III、BCK)、ORFK5(免疫応答2のモジュレーター、MIR−2;E3ユビキチンリガーゼ)、ORFK6(vCCL−1、vMIP−I、MIP−1a)、PAN(後期遺伝子発現)、ORF16(vBCL2、Bcl2ホモログ)、ORF17.5(足場または集合タンパク質、SCAF)、ORF18(後期遺伝子制御)、ORF34(HIF−1αに結合する)、ORF35(効率的な溶解性ウイルス再活性化に必要)、ORF36(ウイルスセリン/トレオニンプロテインキナーゼ)、ORF37(sox)、ORF38(テグメントタンパク質)、ORF39(糖タンパク質M、gM)、ORF45(テグメントタンパク質;RSK活性化因子)、ORF46(ウラシルデグリコシラーゼ)、ORF47(糖タンパク質L、gL)、ORF50(RTA)、ORFK8(k−bZIP、複製関連タンパク質、RAP)、ORF57(mRNA輸送/スプライシング)、ORF58、ORF59(進化性因子)、ORF60(リボヌクレオタンパク質レダクターゼ)、ORF61(リボヌクレオタンパク質レダクターゼ)、ORFK12(カポシン)、ORF71(vFLIP、ORFK13)、ORF72(vCyclin、vCYC)、ORF73(潜伏関連核抗原1、LANA1)、ORF8(糖タンパク質B、gB)、ORF9(DNAポリメラーゼ)、ORF10(インターフェロン機能の調節因子)、ORFK3(免疫応答の調節因子1、MIR−1;E3ユビキチンリガーゼ)、K5/6−AS、ORF17(プロテアーゼ)、ORF21(チミジンキナーゼ)、ORF22(糖タンパク質H、gH)、ORF23(予測糖タンパク質)、ORF24(複製に必須)、ORF25(メジャーキャプシドタンパク質、MCP)、ORF26(マイナーキャプシドタンパク質;トリプレックス構成要素2、TRI−2)、ORF27(糖タンパク質)、ORF28(BDLF3 EBVホモログ)、ORF29(パッケージングタンパク質)、ORF30(後期遺伝子調節)、ORF31(核及び細胞質)、ORF32(テグメントタンパク質)、ORF33(テグメントタンパク質)、ORF40/41(ヘリカーゼ−プライマーゼ)、ORF42(テグメントタンパク質)、ORF43(ポータルキャプシドタンパク質)、ORF44(ヘリカーゼ)、ORF45.1、ORFK8.1A(糖タンパク質、gp8.1A)、ORFK8.1B(糖タンパク質gp8.1B、ORF52(テグメントタンパク質)、ORF53(糖タンパク質N、gN)、ORF54(dUTPase/免疫調節)、ORF55(テグメントタンパク質)、ORF56(DNA複製)、ORFK9(vIRF1)、ORFK10(vIRF4)、ORFK10.5(vIRF3、LANA2)、ORFK11(vIRF2)、ORF62(トリプレックス構成要素1、TRI−1)、ORF65(小型キャプシドタンパク質;小型キャプソマー相互作用タンパク質、SCIP)、ORF66(キャプシド)、ORF67(核放出複合体)、ORF67.5、ORF68(糖タンパク質)、ORF69(BRLF2核放出)、ORFK14(vOX2)、ORF74(vGPCR)、ORF75(FGARAT)、ORF2(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)、ORF7(ビリオンタンパク質、vGPCR)、ORF48、ORF49(JNK/p38を活性化する)、ORF63(NLRホモログ)、ORF64(デユビキチナーゼ)、ORFK15(LMP1/2)、及びORFK7(アポトーシスのウイルス阻害剤、vIAP)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びKSHV抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのKSHV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、KSHVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。前述の任意のKSHVタンパク質を抗原性KSHVポリペプチドとして使用し得る。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのKSHV抗原性ポリペプチドは、KSHVサブタイプA、KSHVサブタイプB、KSHVサブタイプC、KSHVサブタイプDまたはKSHVサブタイプEに由来する。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるKSHV感染を処置及び/または予防する方法に関し、ここで、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのKSHVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む本明細書に記載の1つ以上の組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されているかまたは予測されている)が、それを必要とする対象(例えば、KSHVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供される。必要に応じて、KSHV感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのKSHVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬(KSHV及び/またはKSHVに感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じる)を提供される。いくつかの実施形態では、免疫応答は、KSHVウイルス力価の低下及び/または持続的ウイルス学的応答の確立をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗KSHV抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、KSHV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、KSHVウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルし得る抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのKSHVの結合を担う抗原性ポリペプチドをコードする。
G.メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)
別の実施形態では、オンコウイルス抗原は、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)由来である。メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)は、Polyomaviridae科の非エンベロープ二重鎖DNAウイルスであり、メルケル細胞癌(MCC)の病因学的因子である。MCCは、まれであるが、高齢、過度のUV曝露、免疫不全、及びMCPyVの存在に関連した、侵攻型の皮膚癌である。米国では、年間約1,500例のMCCが新たに診断されており、比較的まれながんに相当する;しかし、MCCの発生率は過去20年間で3倍になり、年間診断数は5〜10%増大し続けている。その希少性にもかかわらず、MCCは、死亡率が30%を超える最も致命的かつ侵攻性の皮膚癌の1つである(Agelli and Clegg(2003)J Am Acad Dermatol 49:832−841;Becker et al.(2009)Cell Mol Life Sci 66:1−8;Calder and Smoller(2010)Adv Anat Pathol 17:155−161;Hodgson,(2005)J Sur Oncol 89:1−4;Lemos and Nghiem,(2007)J Invest Dermatol 127:2100−2103)。したがって、別の態様では、免疫増強剤構築物は、目的の1つ以上のメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)抗原に対する免疫応答を増強するために使用され得る。例えば、MCPyV由来の目的の抗原(複数可)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なる構築物mmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及びMCPyV抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象におけるMCPyV抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。
MCCは、触覚及び/または触感に関与する機械受容細胞であるメルケル細胞(あるいはメルケル−ランヴィエ細胞または触覚上皮細胞)の悪性形質転換に由来する(Woo et al.,(2016)Trends Cell Biol 25(2):74−81)。MCPyVは、臨床MCC腫瘍標本の80%〜85%に存在する(Feng et al.,(2008)Science 319:1096−1100;Darianis and Hirsch(2013)Virology 437:63−72、及びその中の引用文献)。MCPyVは、今日まで、その天然宿主に腫瘍を引き起こす唯一のヒトポリオーマウイルスであると考えられている(Arora et al.,(2012)Curr.Opin.Virol 2:489−498;Spurgeon and Lambert(2013)Virology 435:118−130)。
MCPyVウイルスDNAは、80%〜85%のMCC腫瘍にクローン的に組み込まれている。プロトタイプウイルス(MCV350)ゲノムは、5387塩基対を含む環状の二重鎖DNA分子である。全てのMCPyV株のゲノムは、平均約5.4キロベースを配列決定した。MCPyVゲノムは、双方向に発現され、ウイルス複製起点を含む非コード調節領域によって隔てられた初期コード領域及び後期コード領域を含む。MCPyV初期領域(あるいは「T抗原遺伝子座」)は、サイズが約3kbであり、感染時に最初に発現される遺伝子をコードする(Feng et al.,(2011)PLoS ONE6:e22468;Feng et al.,(2008)Science 319:1096−1100;Neumann et al.,(2011)PLoS ONE6:e29112)。MCPyV初期領域は、3つのT抗原(タンパク質)を発現する:ラージT抗原(LT)、スモールT抗原(sT)、及び57kT抗原(57kT)(Shuda et al.,(2009)Int J Cancer 125(6):1243−9;Shuda et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(42):16272−7)。3つのT抗原に加えて、MCPyV初期遺伝子座はまた、第4のタンパク質、代替T抗原オープンリーディングフレーム(ALTO)をコードする。ALTOは、LTの200アミノ酸のMUR領域から転写され、そしてマウスポリオーマウイルスのミドルT抗原に進化的に関連しているようである(Carter et al.,(2013)Proc Natl Acad Sci USA 110:12744−12749)。
MCPyVの後期領域は、メジャーキャプシドタンパク質ウイルスタンパク質1(VP1)ならびにマイナーキャプシドタンパク質2及び3(VP2及びVP3)のオープンリーディングフレームをコードする。MCPyVゲノムは、感染後期段階の間に初期のウイルス遺伝子発現を自己調節する可能性が最も高い、後期鎖由来の22ヌクレオチドのウイルスmiRNA(MCV−miR−M1−5p)を発現する(Lee et al.,(2011)J Clin Virol 52(3):272−5;Seo et al.,(2009)Virology 383(2):183−7)。研究によって、ウイルスT抗原の構成的発現がウイルス誘導形質転換に必要であることが支持される(Spurgeon and Lambert(2013)Virology 435(1):118−130及びその中の引用文献)。
いくつかの実施形態では、RNA(例えば、mRNA)ワクチン(例えば、同一または異なるmRNA上に免疫増強剤構築物及びMCPyV抗原構築物を含む)は、少なくとも1つのMCPyV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、MCPyVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのRNA(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのMCPyV抗原ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、ラージT抗原(LT)、スモールT抗原(sT)、57kT抗原(57kT)、オルタナティブT抗原(ALTO)、メジャーキャプシドタンパク質ウイルスタンパク質1(VP1)、マイナーキャプシドウイルスタンパク質2または3(VP2またはVP3)、及びそれらの組み合わせから選択される。
本開示のいくつかの実施形態は、ヒトにおけるMCPyV感染を処置及び/または予防する方法に関し、ここで、本明細書に記載される1つ以上の組成物であって、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのMCPyVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されているかまたは予測されている)は、それを必要とする対象(例えば、MCPyVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供される。
いくつかの実施形態では、本開示は、MCPyV感染に起因するか、及び/または原因として関連するがんを処置及び/または予防する方法に関し、ここで、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのMCPyVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上の組成物(免疫応答を生じることが当業者によって示されるかまたは予測されている)が、それを必要とする対象(例えば、MCPyVに感染しているかまたは感染の危険がある人)に提供される。
必要に応じて、MCPyV感染を予防及び/または処置する医薬を必要とする対象は、免疫増強剤構築物及び少なくとも1つのMCPyVポリペプチドまたはその免疫原性断片をコードする1つ以上の免疫調節治療用核酸を含む医薬(MCPyV及び/またはMCPyVに感染している対象の細胞に対する免疫応答を生じる)を提供される。いくつかの実施形態では、免疫応答は、MCPyVウイルス力価の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、中和抗MCPyV抗体の産生をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答は、MCPyV感染細胞に対する細胞傷害性T細胞応答をもたらす。
いくつかの実施形態では、免疫調節治療用核酸(例えば、メッセンジャーRNA、mRNA)は、少なくとも1つのMCPyV抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片(例えば、MCPyVに対する免疫応答を誘導し得る免疫原性断片)をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つの(例えば、mRNA)ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、ラージT抗原(LT)、スモールT抗原(sT)、57kT抗原(57kT)、オルタナティブT抗原(ALTO)、メジャーキャプシドタンパク質ウイルスタンパク質1(VP1)、マイナーキャプシドウイルスタンパク質2または3(VP2またはVP3)、及びそれらの組み合わせから選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、暫定的及び/または確認されたMCPyV遺伝子型及び/またはサブタイプから選択される(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Martel−Jantin et al.,(2014)J Clin Microbiol 52(5):1687−1690;Hashida et al.,2014 J.Gen.Virol.95:135−141;Matsushita et al.,(2014)Virus Genes 48:233−242;Baez et al.,(2016)Virus Res 221:1−7を参照のこと)。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原性ポリペプチドまたはその免疫原性断片は、割り当てられていないMCPyV分離株から選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染細胞を構造的に修飾する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、MCPyVウイルスキャプシドの一部または全部を形成する抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子に自己アセンブルし得る抗原性ポリペプチドをコードする。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAポリヌクレオチドは、感染している細胞へのMCPyVウイルスの結合を担う抗原性ポリペプチドをコードする。
個別化がんワクチン
いくつかの態様では、本開示は、目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチド(すなわち免疫増強剤)をコードする、1つ以上のmRNA構築物を含む個別化がんワクチンを提供する。いくつかの実施形態では、目的のがん抗原は、同じまたは別々のmRNA構築物のいずれかによってコードされる。いくつかの実施形態では、目的のがん抗原は、対象に特異的である。例えば、目的のがん抗原(例えば、下記のように選択及び/または設計された)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なるmmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。この免疫増強剤及びがん抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象におけるがん抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。免疫増強剤と共に使用するための、がんの対象に特異的な個別化抗原を含む適切ながん抗原が本明細書に記載されている。
例えば、ワクチンは、ネオエピトープと呼ばれる、各対象に特異的な1つ以上のがん抗原をコードするmRNAを含んでもよい。腫瘍細胞内で、または腫瘍細胞によって発現される抗原は、「腫瘍関連抗原」と呼ばれる。特定の腫瘍関連抗原はまた、非癌性細胞において発現されてもよいし、されなくてもよい。多くの腫瘍変異が当該技術分野において周知である。非癌性細胞において発現されないかもしくはほとんど発現されないか、または非癌性細胞における発現が癌性細胞における発現と比較して十分に減少し、ワクチン接種時に誘導される免疫応答を誘導する、腫瘍関連抗原は、ネオエピトープと呼ばれる。ネオエピトープは、体に対して完全に外来性であり、したがって健康な組織に対して免疫応答を生じさせることもなく、免疫系の保護構成要素によって隠されることもないであろう。いくつかの実施形態では、ネオエピトープに基づく個別化ワクチンは、そのようなワクチン製剤が患者の特定の腫瘍に対する特異性を最大にするので望ましい。変異由来のネオエピトープは、点突然変異、タンパク質中の異なるアミノ酸をもたらす非同義的変異;終止コドンが修飾または欠失され、C末端に新規の腫瘍特異的配列を有する、さらに長いタンパク質の翻訳をもたらすリードスルー変異;成熟mRNAにイントロンが含まれるようにするスプライス部位変異、したがってユニークな腫瘍特異的タンパク質配列;2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的配列を有するキメラタンパク質を生じさせる染色体再配列(すなわち、遺伝子融合);新規の腫瘍特異的タンパク質配列を有する新しいオープンリーディングフレームをもたらすフレームシフト変異または欠失;ならびに転座から生じ得る。
個別化されたがんワクチンを作製するための方法は、一般に、例えば、ディープ核酸またはタンパク質シーケンシング技術を用いた変異の同定、例えば、検証ペプチド−MHC結合予測アルゴリズムの適用を用いたネオエピトープの同定、または患者のHLA対立遺伝子に結合し得る候補T細胞エピトープのセットを作製するための他の分析技術を含み、腫瘍に存在する変異、選択されたネオエピトープに対する抗原特異的T細胞の任意の証明、または腫瘍表面上のHLAタンパク質に候補ネオエピトープが結合するという実証、及びワクチンの開発に基づく。
変異を同定するための技術の例としては、限定するものではないが、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角ゲル電気泳動(MADGE)、パイロシーケンシング、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステム、ならびに様々なDNA「チップ」技術、すなわち、Affymetrix SNPチップ、ならびに侵襲的開裂とそれに続く質量分析または固定化パドロックプローブ及びローリングサークル増幅による小シグナル分子の生成に基づく方法が挙げられる。
ディープ核酸またはタンパク質シーケンシング技術は、当該技術分野において公知である。任意の種類の配列分析方法を使用してもよい。例えば、核酸配列決定は、全腫瘍ゲノム、腫瘍エキソーム(タンパク質をコードするDNA)または腫瘍トランスクリプトームに対して行われ得る。リアルタイム単一分子合成による配列決定技術は、それらが配列決定されている鋳型に相補的である新生DNA鎖に組み込まれるので、蛍光ヌクレオチドの検出に依存する。他の迅速なハイスループット配列決定法もまた存在する。タンパク質配列決定を、腫瘍プロテオームに対して行ってもよい。さらに、タンパク質質量分析法を用いて、腫瘍細胞上のMHCタンパク質に結合した変異ペプチドの存在を同定するか、または確認し得る。ペプチドは、腫瘍細胞から、または腫瘍から免疫沈降するHLA分子から酸溶出され得、次いで質量分析法を用いて同定され得る。配列決定の結果は、既知の対照セットと比較されてもよく、または患者の正常組織に対して行われた配列決定分析と比較されてもよい。
いくつかの実施形態では、これらのネオエピトープは、野生型ペプチドよりも高い親和性でクラスI HLAタンパク質に結合するか、及び/または抗腫瘍CD8T細胞を活性化し得る。任意の特定の遺伝子における同一の変異は、腫瘍全体にまれに見出される。
MHCクラスIのタンパク質は、ほとんどの腫瘍細胞を含む身体のほとんど全ての細胞の表面に存在する。MHCクラスIのタンパク質は、通常、内因性タンパク質または細胞内に存在する病原体に由来する抗原を負荷され、そして次に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に提示される。T細胞受容体は、MHCクラスIの分子と複合体を形成したペプチドを認識し、結合し得る。各細胞傷害性Tリンパ球は、特異的なMHC/ペプチド複合体を結合し得る固有のT細胞受容体を発現する。
コンピュータアルゴリズムを使用して、ペプチド提示複合体の形態でクラスIまたはクラスIIのMHC分子によって結合され、次いでこの形態で、Tリンパ球のT細胞受容体によって認識される、T細胞エピトープ、すなわちペプチド配列などの潜在的ネオエピトープを予測し得る。MHCに結合するペプチドを同定するのに有用なプログラムの例としては、例えば、以下が挙げられる:Lonza Epibase,SYFPEITHI(Rammensee et al.,Immunogenetics,50(1999),213〜219)及びHLA_BIND(Parker et al.,J.Immunol.,152(1994)、163−175)。
推定ネオエピトープが選択されると、それらはインビトロ及び/またはインビボアッセイを用いてさらに試験されてもよい。アルゴリズムの予測に基づいて選択されたネオエピトープのリストを改良するために、Elispotアッセイなどの従来のインビトロ実験室アッセイを、各患者からの単離物と共に使用ししてもよい。
いくつかの実施形態では、mRNAがんワクチン及びワクチン接種方法は、特定の変異(ネオエピトープ)及びがん生殖細胞系遺伝子によって発現されるもの(複数の患者に見られる腫瘍に共通の抗原、本明細書において「伝統的がん抗原」または「共有されたがん抗原」と呼ばれる)に基づくエピトープまたは抗原を包含する。いくつかの実施形態では、伝統的な抗原とは、一般にがんまたは腫瘍に、あるいは特定の種類のがんまたは腫瘍に見られることが公知である抗原である。いくつかの実施形態では、伝統的ながん抗原とは、変異していない腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、伝統的ながん抗原は、変異型腫瘍抗原である。
いくつかの実施形態では、ワクチンは、1つ以上の非変異腫瘍抗原をコードするmRNAをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、ワクチンは、1つ以上の変異腫瘍抗原をコードするmRNAをさらに含んでもよい。
多くの腫瘍抗原が当該分野において公知である。いくつかの実施形態では、がんまたは腫瘍抗原は、以下の抗原のうちの1つである:CD2、CD19、CD20、CD22、CD27、CD33、CD37、CD38、CD40、CD44、CD47、CD52、CD56、CD70、CD79、CD137、4−IBB、5T4、AGS−5、AGS−16、アンジオポイエチン2、B7.1、B7.2、B7DC、B7H1、B7H2、B7H3、BT−062、BTLA、CAIX、癌胎児性抗原、CTLA4、Cripto、ED−B、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFL7、EpCAM、EphA2、EphA3、EphB2、FAP、フィブロネクチン、葉酸受容体、ガングリオシドGM3、GD2、グルココルチコイド誘発腫瘍壊死因子受容体(GITR)、gp100、gpA33、GPNMB、ICOS、IGF1R、インテグリンav、インテグリンαvβ、LAG−3、ルイスY、メソテリン、c−MET、MNカルボニックアンヒドラーゼIX、MUC1、MUC16、ネクチン−4、NKGD2、NOTCH、OX40、OX40L、PD−1、PDL1、PSCA、PSMA、RANKL、ROR1、ROR2、SLC44A4、シンデカン−1、TACI、TAG−72、テネイシン、TIM3、TRAILR1、TRAILR2、VEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、及びそれらのバリアント。
本明細書中で使用される場合、抗原決定基としても知られるエピトープは、適切な文脈において免疫系によって、具体的には抗体、B細胞、またはT細胞によって認識される抗原の一部である。エピトープとしては、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープが挙げられる。B細胞エピトープは、特異的抗体産生B細胞による認識に必要とされるペプチド配列である。B細胞エピトープは、抗体によって認識される抗原の特定の領域を指す。エピトープに結合する抗体の部分は、パラトープと呼ばれる。エピトープは、構造及びパラトープとの相互作用に基づいて、立体配座エピトープであってもよいし、または線状エピトープであってもよい。直鎖状または連続的なエピトープは、タンパク質の特定の領域の一次アミノ酸配列によって定義される。抗体と相互作用する配列は、タンパク質上で連続して互いに隣接して位置しており、エピトープは、通常単一のペプチドによって模倣され得る。立体配座エピトープは、天然タンパク質の立体配座構造によって定義されるエピトープである。これらのエピトープは、連続的であってもまたは不連続的であってもよく、すなわちエピトープの構成要素は、折り畳まれた天然タンパク質構造において互いに接近しているタンパク質の異なる部分に位置されてもよい。
T細胞エピトープは、APC上のタンパク質と関連して、特異的T細胞による認識に必要とされるペプチド配列である。T細胞エピトープは、細胞内でプロセシングされ、APCの表面に提示され、そこでそれらは、MHCクラスII及びMHCクラスIを含むMHC分子に結合される。
他の態様では、本発明のがんワクチンは、1つ以上の散在型ユニバーサルII型T細胞エピトープと共に配置された、複数のペプチドエピトープ抗原をコードするmRNAワクチンを含む。ユニバーサルII型T細胞エピトープとしては、限定するものではないが、ILMQYIKANSKFIGI(破傷風毒素;配列番号226)、FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE、(破傷風毒素;配列番号227)、QYIKANSKFIGITE(破傷風毒素;配列番号228)QSIALSSLMVAQAIP(ジフテリア毒素;配列番号229)、及びAKFVAAWTLKAAA(pan−DRエピトープ(PADRE);配列番号230)が挙げられる。いくつかの実施形態では、mRNAワクチンは、同じユニバーサルII型T細胞エピトープを含む。他の実施形態では、mRNAワクチンは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20の異なるユニバーサルII型T細胞エピトープを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のユニバーサルII型T細胞エピトープ(複数可)はあらゆるがん抗原の間に散在している。他の実施形態では、1つ以上のユニバーサルII型T細胞エピトープ(複数可)は、あらゆる2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または100個のがん抗原の間に散在している。
エピトープは、無料または市販のデータベース(Lonza Epibase、例えばアンチトープ)を用いて同定され得る。そのようなツールは、標的抗原タンパク質内の最も免疫原性のエピトープを予測するのに有用である。次いで、選択されたペプチドを合成し、そしてヒトHLAパネルにおいてスクリーニングしてもよく、そして最も免疫原性のある配列を用いて、抗原(複数可)をコードするmRNAを構築する。細胞傷害性T細胞のエピトープをマッピングするための1つの戦略は、タンパク質にわたる各々の公称11量体について4つのC末端ペプチドの等モル混合物を生成することに基づいた。この戦略は全ての可能な活性CTLエピトープを含有するライブラリー抗原を生成するであろう。
ペプチドエピトープは、エピトープにとって妥当な任意の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチドエピトープは、9〜30アミノ酸である。他の実施形態では、長さは9〜22、9〜29、9〜28、9〜27、9〜26、9〜25、9〜24、9〜23、9〜21、9〜20、9〜19、9〜18、10〜22、10〜21、10〜20、11〜22、22〜21、11〜20、12〜22、12〜21、12〜20、13〜22、13〜21、13〜20、14〜19、15〜18、または16〜17アミノ酸である。
個別化されたがんワクチンは、複数のエピトープを含む。いくつかの実施形態では、個別化がんワクチンは、48〜54個の個別化がん抗原をコードする。一実施形態では、個別化がんワクチンは、52個の個別化がん抗原をコードする。いくつかの実施形態では、個別化されたがん抗原の各々は、別々のオープンリーディングフレームによってコードされている。いくつかの実施形態では、個別化がんワクチンは、45以上、46以上、47以上、48以上、49以上、50以上、51以上、52以上、53以上、54以上、または55以上の抗原から構成される。他の実施形態では、個別がんワクチンは、1000以下、900以下、500以下、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、20以下、または100以下のエピトープから構成される。さらに他の実施形態では、個別化がんワクチンは、3〜100、5〜100、10〜100、15〜100、20〜100、25〜100、30〜100、35〜100、40〜100、45〜100、50〜100、55〜100、60〜100、65〜100、70〜100、75〜100、80〜100、90〜100、5〜50、10〜50、15〜50、20〜50、25〜50、30〜50、35〜50、40〜50、45〜50、100〜150、100〜200、100〜300、100〜400、100〜500、50〜500、50〜800、50〜1,000、または100〜1,000のがん抗原を有する。
いくつかの実施形態では、ペプチドエピトープの最適な長さは、以下の手順によって得てもよい:V5タグコンカテマー試験プロテアーゼ部位を合成すること、それをDC細胞に導入すること(例えば、RNAスクイーズ手順を用いること)、細胞を溶解すること、その後、プロテアーゼ部位での切断を評価するために抗V5ウエスタンブロットを実行すること。
RNAスクイーズ技術は、細胞内送達方法であり、それによって様々な材料が広範囲の生細胞に送達され得る。細胞は、急速な機械的変形を引き起こすマイクロ流体構築を受ける。変形は、一時的な膜の破壊及び新たに形成された一時的な孔をもたらす。その後、物質は一時的な孔を介して細胞サイトゾルに受動的に拡散される。この技術は、初代線維芽細胞、胚性幹細胞、及び免疫細胞の宿主など、様々な種類の細胞に使用され得、ほとんどの適用で比較的高い生存率を示し、量子ドットまたはタンパク質などの鋭敏な材料を、その作用を通して、損傷することはない。Sharei et al.,PNAS(2013);110(6):2082−7。
ネオエピトープは、強力な免疫応答を促進するために、MHCに最適に結合するように設計され得る。いくつかの実施形態では、各ペプチドエピトープは、抗原性領域及びMHC安定化領域を含む。MHC安定化領域は、MHC中のペプチドを安定化させる配列である。MHC安定化領域は、5〜10、5〜15、8〜10、1〜5、3〜7、または3〜8アミノ酸長であり得る。さらに他の実施形態では、抗原性領域は、5〜100アミノ酸長である。ペプチドは、それらが細胞表面に提示される前に、小胞体内の競合的親和性結合によってMHCクラスIの分子と相互作用する。個々のペプチドの親和性は、そのアミノ酸配列及びアミノ酸配列内の定義された位置における特異的結合モチーフの存在に直接関連している。MHCに提示されているペプチドは、α1/α2ヘテロ二量体(2つの同一でないサブユニットから構成される分子)の中央領域において、ペプチド結合グルーブの底に保持されている。ペプチド結合グルーブの底の残基の配列は、それがどの特定のペプチド残基に結合するかを決定する。
最適な結合領域は、全ての試験された抗原に対する理想的な結合剤を同定するために、標的エピトープの各々についての結合部位中の各アミノ酸における特定のアミノ酸に対する結合部位(MHCポケット)の親和性のコンピュータ支援比較により同定され得る。エピトープのMHC安定化領域は、結合部位についてのデータ点のアミノ酸予測マトリクスを使用して同定され得る。アミノ酸予測マトリクスは、データ点を定義する第1及び第2の軸を有する表である。予測マトリクスは、Singh,H.及びRaghava,G.P.S.(2001),「ProPred:prediction of HLA−DR binding sites」、Bioinformatics,17(12),1236−37)に示されているように生成され得る。
いくつかの実施形態では、MHC安定化領域は、対象の特定のMHCに基づいて設計されている。そのようにして、MHC安定化領域は、各患者に対して最適化され得る。
いくつかの場合には、抗原の各エピトープは、MHC安定化領域を含んでもよい。エピトープ内の全てのMHC安定化領域は、同じであっても異なっていてもよい。MHC安定化領域は、ペプチドのN末端部分にあっても、またはペプチドのC末端部分にあってもよい。あるいは、MHC安定化領域は、ペプチドの中央領域にあってもよい。いくつかの実施形態におけるネオエピトープは、長さが13残基以下であり、通常、約8〜約11残基、特に9または10残基からなる。他の実施形態では、ネオエピトープはより長くなるように設計されてもよい。例えば、ネオエピトープは、対応する各遺伝子産物のN末端及びC末端に向かって2〜5アミノ酸の伸長を有し得る。より長いペプチドの使用は、患者細胞による内因性プロセシングを可能にし得、そしてより効果的な抗原提示及びT細胞応答の誘導をもたらし得る。
ワクチンに含めるために選択されたネオエピトープは、典型的には高親和性結合ペプチドであろう。いくつかの態様では、ネオエピトープは、野生型ペプチドよりも高い親和性でHLAタンパク質に結合する。ネオエピトープは、いくつかの実施形態では、少なくとも5000nM未満、少なくとも500nM未満、少なくとも250nM未満、少なくとも200nM未満、少なくとも150nM未満、少なくとも100nM未満、少なくとも少なくとも50nM未満のIC50を有する。典型的には、IC50<50nMと予測されるペプチドは、一般に中〜高親和性結合ペプチドと考えられ、HLA結合の生化学的アッセイを用いて経験的にそれらの親和性を試験するために選択される。最後に、ヒトの免疫系がこれらの変異した腫瘍抗原に対して効果的な免疫応答を起こし得、それによって正常細胞ではなく腫瘍を効果的に殺傷し得るか否かが決定されるであろう。
所望の活性を有するネオエピトープは、所望のMHC分子に結合して適切なT細胞またはB細胞を活性化するために未修飾ペプチドの生物学的活性の実質的に全部を増大させるかまたは少なくとも実質的に保持しながら、特定の所望の属性、例えば、薬理学的特徴の改善を提供するために必要に応じて修飾されてもよい。例えば、ネオエピトープは、保存的または非保存的のいずれかの置換などの様々な変化を受ける場合があり、そのような変化は、MHC結合の改善など、それらの使用において特定の利点をもたらし得る。保存的置換とは、アミノ酸残基を生物学的及び/または化学的に類似している別のもの、例えば、別の疎水性残基、または別の極性残基と置換することを意味する。この置換は、Gly、Ala;Val、Ile、Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrなどの組み合わせを含む。単一アミノ酸置換の効果はまた、D−アミノ酸を用いて調べられ得る。そのような修飾は、例えば、Merrifield、Science 232:341−347(1986)、Barany&Merrifield,The Peptides,Gross&Meienhofer,eds.(N.Y.、Academic Press).pp.1−284(1979);及びStewart&Young、Solid Phase Peptide Synthesis,(Rockford,Ill.,Pierce),2d Ed.(1984)に記載されるような、周知のペプチド合成手順を用いてなされ得る。
ネオエピトープはまた、例えば、アミノ酸の付加または欠失によって、化合物のアミノ酸配列を伸長または減少させることによって修飾されてもよい。ペプチド、ポリペプチドまたは類似体は、特定の残基の順序または組成を変えることによっても修飾されてもよく、生物活性に必須の特定のアミノ酸残基、例えば、重要な接触部位または保存残基におけるアミノ酸残基は、生物学的活性に悪影響を及ぼすことなく一般には変えられ得ないことが容易に予測される。
典型的には、単一アミノ酸置換を有する一連のペプチドを使用して、結合に対する静電荷、疎水性などの効果を決定する。例えば、一連の正荷電(例えば、LysまたはArg)または負荷電(例えば、Glu)アミノ酸置換が、ペプチドの長さに沿ってなされ、様々なMHC分子及びT細胞またはB細胞受容体に対する異なるパターンの感受性が明らかになる。さらに、Ala、Gly、Pro、または類似の残基などの小さい比較的中性の部分を使用した複数の置換を使用してもよい。置換は、ホモオリゴマーであっても、またはヘテロオリゴマーであってもよい。置換または付加される残基の数及び種類は、本質的な接触点と求められる特定の機能的属性(例えば、疎水性対親水性)との間の必要な間隔に依存する。MHC分子またはT細胞受容体に対する結合親和性の増大もまた、親ペプチドの親和性と比較して、そのような置換によって達成され得る。いずれにしても、そのような置換は、例えば、結合を妨害し得る立体的及び電荷的干渉を避けるために、選択されたアミノ酸残基または他の分子断片を使用するべきである。
ネオエピトープはまた、ネオエピトープ中に2つ以上の残基のアイソスターを含んでもよい。本明細書で定義されるアイソスターは、第1の配列の立体配座が、第2の配列に特異的な結合部位に適合するので、第2の配列を置換し得る2個以上の残基の配列である。この用語は具体的には、当業者に周知のペプチド骨格修飾を包含する。そのような修飾としては、アミド窒素、α、−炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全な置換、伸長、欠失または骨格架橋が挙げられる。一般的には、Spatola,Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,Vol.VII(Weinstein ed.,1983)を参照のこと。
免疫原性を考慮することは、ワクチンに含めるための最適なネオエピトープの選択における重要な構成要素である。免疫原性は、例えば、ネオエピトープのMHC結合能、HLA無差別性、突然変異位置、予測T細胞反応性、実際のT細胞反応性、特定の立体配座及びその結果としての溶媒曝露をもたらす構造、ならびに特定のアミノ酸の表示を分析することによって評価され得る。NetMHC予測アルゴリズムなどの公知のアルゴリズムを使用して、一般的なHLA−A及び−B対立遺伝子に結合するペプチドの能力を予測し得る。MHC結合ペプチドの構造評価は、インシリコ三次元分析及び/またはタンパク質ドッキングプログラムによっても行われ得る。ロゼッタアルゴリズムから得られるような、MHC分子に結合したときの予測エピトープ構造の使用は、エピトープがMHC分子に結合したときのエピトープのアミノ酸残基の溶媒曝露の程度を評価するために使用され得る。T細胞反応性は、インビトロでエピトープ及びT細胞を用いて実験的に評価され得る。あるいは、T細胞反応性は、T細胞応答/配列データセットを用いて評価され得る。
ワクチンに含まれるネオエピトープの重要な要素は、自己反応性の欠如である。エピトープが腫瘍組織に限定されていること、例えば、悪性細胞内の遺伝的変化の結果として生じることを確認するために推定ネオエピトープをスクリーニングしてもよい。理想的には、エピトープは、患者の正常組織に存在すべきではなく、したがって自己に類似のエピトープはデータセットから除外される。
他の態様では、本開示は、対象から試料を単離すること、試料中の複数のがん抗原を同定すること、複数のがん抗原からT細胞エピトープを決定すること、抗原及びこの抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有し、この抗原が少なくとも1つのT細胞エピトープを含むmRNAがんワクチンを調製することによる、mRNAがんワクチンの調製方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法はさらに、対象のMHCに対するT細胞エピトープの結合強度を決定することを包含する。他の実施形態では、この方法は、各エピトープについてのT細胞受容体面(TCR面)を決定すること、及び内因性タンパク質との類似性が低いTCR面を有するエピトープを選択することをさらに包含する。対象のMHCへの結合強度について最適化され得るT細胞エピトープが提供される。いくつかの実施形態では、各エピトープに対するTCR面は、内因性タンパク質との類似性が低い。
例えば、JanusMatrix(Epivax)と呼ばれる、ラージゲノム配列データベースにわたる比較を可能にするためにHLA結合及びTCR対向側の両方からの交差反応性T細胞エピトープを調べる技術は、望ましいTCR面及びMHCに対する結合強度を有するエピトープを同定するために使用され得る。一連のアルゴリズムを単独で、またはJanusMatrixと共に使用して、エピトープ選択を最適化し得る。例えば、EpiMatrixは、保存された標的タンパク質配列に由来する重複する9量体フレームを取り、それらをクラスIまたはクラスII HLA対立遺伝子のパネルに対する潜在的な結合親和性についてスコア付けする;高いスコアを示し、結合すると予測される各フレームごとの対立遺伝子評価は、推定上のT細胞エピトープである。ClustiMerは、EpiMatrixの出力を取り、多数の推定T細胞エピトープを含む9量体のクラスターを同定する。BlastiMerは、以前に同定された配列をBLASTに提出して、ヒトゲノムと類似性を共有するか否かを判断するプロセスを自動化する;任意のそのような類似の配列は、許容されるか、または望まれない自己免疫応答を誘発する可能性が高いであろう。EpiAssemblerは、ConservatrixとEpiMatrixによって同定された保存された免疫原性配列を取り、それらを一緒に結び付けて免疫原性の高いコンセンサス配列を形成する。JanusMatrixは、ヒトゲノムによってコードされる配列との相同性に起因して、望ましくない自己免疫または調節性T細胞応答を潜在的に誘発する可能性がある配列をスクリーニングするために使用され得る。VaccineCADを使用して、候補エピトープを一連のビーズデザインにリンクしながら、リンクプロセスで作製される可能性がある非特異的接合エピトープを最小限に抑える。
本開示による個別化されたがんワクチンを生成するための方法は、組織試料の本明細書に記載されているようなディープ核酸またはタンパク質シーケンシング法などの技術を用いた変異の同定を包含する。いくつかの実施形態では、患者のトランスクリプトームにおける変異の初期同定が行われる。患者のトランスクリプトームからのデータは、発現されている患者特異的及び腫瘍特異的な変異を同定するために、患者のエキソームからの配列情報と比較される。この比較により、ムタノームと呼ばれる推定ネオエピトープのデータセットが生じる。ムタノームは、1患者あたり約100〜10,000の候補変異を含み得る。ムタノームは、ネオ抗原ワクチンの生成のための最適な変異セットを同定するための一連の問い合わせまたはアルゴリズムを用いたデータプロービング分析を受ける。いくつかの実施形態では、mRNAネオ抗原ワクチンを設計及び製造する。次いで、患者をワクチンで処置する。
いくつかの実施形態では、変異同定プロセスの開始から患者処置の開始までの全方法は、2ヶ月未満で達成される。他の実施形態では、全プロセスは、7週間以内、6週間以内、5週間以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内または1週間未満に達成される。いくつかの実施形態では、全方法は30日未満で行われる。
変異同定プロセスは、トランスクリプトーム分析とエキソーム分析の両方、またはトランスクリプトーム分析もしくはエキソーム分析のみを包含し得る。いくつかの実施形態では、トランスクリプトーム分析が、最初に行われ、エキソーム分析が次に行われる。分析は、生物学的試料または組織試料に対して行われる。いくつかの実施形態では、生物学的試料または組織試料は、血液試料または血清試料である。他の実施形態では、試料は組織バンク試料またはB細胞のEBV形質転換である。
mRNAワクチンが合成されると、それは患者に投与される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、最長2ヶ月、最長3ヶ月、最長4ヶ月、最長5ヶ月、最長6ヶ月、最長7ヶ月、最長8ヶ月、最長9ヶ月、最長10か月、最長11か月、最長1年、最長1年半、最長2年、最長3年、または最長4年のスケジュールで投与される。スケジュールは同じでも異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、スケジュールは、最初の3週間は毎週、その後は毎月である。
処置の任意の時点で、ワクチン中の変異が依然として適切であるか否かを決定するために患者を検査する場合がある。その分析に基づいて、ワクチンは、1つ以上の異なる変異を含むように、または1つ以上の変異を除去するように調整しても、または再構成してもよい。
がん関連変異の特定の特性を分析することによって、最適なネオエピトープがmRNAワクチンへの包含のために評価され得るか、及び/または選択され得ることが認識され理解されている。ネオエピトープまたはネオエピトープのセットの特性としては、例えば、患者のRNA−seqまたは他の核酸分析における遺伝子または転写レベルの発現の評価、利用可能なデータベースにおける組織特異的な発現、既知のがん遺伝子/腫瘍抑制因子、バリアントコール信頼度スコア、RNA−seq対立遺伝子特異的発現、保存的対非保存的AA置換、点突然変異の位置(TCRエンゲージメントの増大に関するセンタリングスコア)、点突然変異の位置(示差的HLA結合に関するアンカースコア(Anchoring Score for differential HLA binding))、自己性:患者WESデータとの100%未満のコアエピトープ相同性、8量体−11量体のHLA−A及び−B IC50、15量体−20量体のHLA−DRB1 IC50、非特異性スコア(すなわち、結合すると予測される患者HLAの数)、8量体−11量体のHLA−C IC50、15量体−20量体のHLA−DRB3−5 IC50、15量体−20量体のHLA−DQB1/A1 IC50、15量体−20量体のHLA−DPB1/A1 IC50、クラスI対クラスIIの割合、患者の多様性HLA−A、−B及びDRB1アロタイプカバー、点突然変異対複合体エピトープの割合(例えば、フレームシフト、及び/または疑似エピトープHLA結合スコアを挙げることができる。
いくつかの実施形態では、最適ネオエピトープを同定するために使用されるがん関連変異の特性とは、変異の種類、患者試料中の変異の存在量、免疫原性、自己反応性の欠如、及びペプチド組成の性質に関する特性である。
変異の種類を決定し、推定上のエピトープをワクチンに含めるべきか否かを決定する際の要因として考慮する必要がある。変異の種類は変化し得る。いくつかの場合には、単一のワクチンに複数の異なる種類の変異を含めることが望ましい場合がある。他の場合には、単一の種類の変異がより望ましい場合がある。特定の変異についての値を、重み付けし、そして計算してもよい。
患者試料中の変異の存在量もまたスコア付けされ、推定上のエピトープがワクチンに含まれるべきか否かの決定に織り込まれ得る。非常に豊富な変異はさらに強い免疫応答を促進する場合がある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の個別化mRNAがんワクチンは、がんの処置に使用され得る。
mRNAがんワクチンは、健康な個体またはがんの初期もしくは後期及び/または転移性癌への能動免疫スキームの一部として予防的または治療的に投与され得る。一実施形態では、細胞、組織または対象に提供されるmRNAがんワクチンの有効量は、免疫活性化のため、特に抗原特異的免疫活性化のために十分であり得る。
いくつかの実施形態では、mRNAがんワクチンは、限定するものではないが、伝統的ながんワクチンを含む抗がん治療剤と共に投与されてもよい。mRNAがんワクチン及び抗がん治療薬を組み合わせて、免疫治療反応をさらに増強し得る。mRNAがんワクチン及び他の治療剤は同時に投与されてもよいし、または順次投与されてもよい。他の治療薬が同時に投与される場合、それらは同じまたは別々の製剤で投与されてもよいが、同時に投与される。他の治療剤とmRNAがんワクチンの投与が時間的に離れている場合、他の治療剤は互いに、そしてmRNAがんワクチンと連続して投与される。これらの化合物の投与の間の時間的な隔たりは、およそ数分であってもよく、またはより長く、例えば、数時間、数日、数週、数か月であってもよい。他の治療剤としては、限定するものではないが、抗がん治療薬、アジュバント、サイトカイン、抗体、抗原などが挙げられる。
別の実施形態では、ペプチドエピトープは、2〜100個のペプチドエピトープから構成されるコンカテマーがん抗原の形態である。いくつかの実施形態では、コンカテマーがん抗原は、以下のうちの1つ以上を含む:a)2〜100個のペプチドエピトープには切断感受性部位が点在されている;b)各ペプチドエピトープをコードするmRNAがリンカーなしで互いに直接結合されている;c)各ペプチドエピトープをコードするmRNAが、単一のヌクレオチドリンカーを用いて互いに連結されている;d)各ペプチドエピトープは25〜35個のアミノ酸を含み、中央に位置するSNP変異を含む;e)ペプチドエピトープの少なくとも30%が、対象由来のクラスI MHC分子に対して最も高い親和性を有する;f)少なくとも30%のペプチドエピトープが、対象由来のクラスII MHC分子に対して最も高い親和性を有する;g)ペプチドエピトープの少なくとも50%が、HLA−A、HLA−B及び/またはDRB1に対してIC>500nMという推定結合親和性を有する;h)mRNAは、45〜55ペプチドエピトープをコードする;i)mRNAは、52個のペプチドエピトープをコードする;j)50%のペプチドエピトープが、クラスI MHCに対する結合親和性を有し、50%のペプチドエピトープが、クラスII MHCに対する結合親和性を有する;k)ペプチドエピトープをコードするmRNAは、ペプチドエピトープが疑似エピトープを最小にするように配列されるように配置される、l)ペプチドエピトープの少なくとも30%が、長さ15アミノ酸のクラスI MHC結合ペプチドである;及び/またはm)ペプチドエピトープの少なくとも30%が21アミノ酸長のクラスII MHC結合ペプチドである。
バクテリアワクチン
いくつかの態様では、本開示は、目的の細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチド(すなわち免疫増強剤)をコードする1つ以上のmRNA構築物を含む細菌ワクチンを提供する。いくつかの実施形態では、目的の細菌抗原は、同じまたは別々のmRNA構築物によってコードされている。いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは、免疫応答を増強するポリペプチドをコードする1つ以上のmRNA構築物、及び少なくとも1つの目的の細菌抗原をコードする1つ以上のmRNA構築物を含む。例えば、目的の細菌抗原は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なるmmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及び細菌抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象における細菌抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。免疫増強剤と共に使用するのに適した細菌抗原は本明細書に記載されている。
いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは予防的である(すなわち、感染を予防する)。いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは治療的である(すなわち、感染症を処置する)。いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは、体液性免疫応答(すなわち、目的の細菌抗原に特異的な抗体の産生)を誘導する。いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは、適応免疫応答を誘導する。適応免疫応答は、抗原または免疫原との対抗に応答して起こり、ここで免疫応答は、抗原/免疫原の抗原決定基に特異的である。適応免疫応答の例は、抗原特異的抗体産生の誘導またはTヘルパーリンパ球もしくは細胞傷害性リンパ球の抗原特異的誘導/活性化である。
いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは、防御的、適応免疫応答を誘導し、抗原特異的免疫応答は、抗原による免疫(人工的または天然)に対する反応として対象に誘導され、ここでこの免疫応答は、抗原またはその抗原を含む病理学関連物質によるその後のチャレンジに対して対象を防御し得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細菌ワクチンは、Staphylococcus aureusによる感染症を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細菌ワクチンは、抗生物質耐性Staphylococcus aureusによる感染症を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細菌ワクチンは、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)による感染症を処置するために使用される。
院内感染は、米国の医療システムにとって最も一般的でかつ費用のかかる問題の1つであり、S.aureusがそのような感染の第2の原因である。MRSAは、院内感染した全てのS.aureus感染症の40〜50%を占める。さらに、最近の研究では、S.aureusが補綴インプラント感染の主要な媒介因子でもあることが示されている。S.aureusが宿主の免疫応答を妨げ、持続的感染に発展するのに利用される最も重要な機構の1つは、高度に発達したバイオフィルムの形成によるものである。バイオフィルムは、細菌細胞が水和表面に付着して、多糖類マトリックスに埋め込まれている、微生物由来の集団である。バイオフィルム中の細菌は、それらの増殖、遺伝子発現、及びタンパク質産生において表現型の変化を示す。
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細菌ワクチンは、S.aureusによるバイオフィルム媒介慢性感染の確立を予防する。いくつかの実施形態では、目的の抗原は、S.aureusによって産生されるバイオフィルム中に見出される。そのような抗原の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,265,820号に記載されている。いくつかの実施形態では、細菌ワクチンは、浮遊型の細菌によって発現される少なくとも1つのポリペプチド、及びバイオフィルム型の細菌によって発現される少なくとも1つのポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態では、目的の細菌抗原はS.aureusに由来する。薬剤耐性S.aureusは、ワクチン標的としての候補である多数の表面露出タンパク質、ならびにS.aureusを標的とする抗体を調製するための免疫剤としての候補を発現する。そのような抗原の例は、PCT公開第WO2012/136653号及び同第WO2015/082536号、ならびにRamussen、K.et al.,Vaccine,Vol.34:4602−4609(2016)に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
当業者は、本明細書中に記載される細菌ワクチンのためのmRNAによってコードされ得る異なるS.aureusタンパク質の同一性、数及びサイズが変わり得ることを理解するであろう。例えば、ワクチンは全長ポリペプチドの一部のみをコードするmRNAを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ワクチンは、部分及び全長ポリペプチドの組み合わせをコードするmRNAを含んでもよい。
本明細書に記載の細菌ワクチンに含まれるmRNAによってコードされる浮遊型発現及びバイオフィルム発現のポリペプチドの同一性は、特に限定されないが、それぞれS.aureus株由来のポリペプチドである。いくつかの実施形態では、そのポリペプチドは細菌の表面に露出している。
一実施形態では、細菌抗原は多価抗原である(すなわち、抗原は、コンカテマー抗原などの異なるエピトープを含む複数の抗原性ペプチドなどの複数の抗原性エピトープを含む)。
別の実施形態では、細菌抗原は、Chlamydia抗原、例えば、MOMP、OmpA、OmpL、OmpFまたはOprF抗原である。適切なChlamydia抗原は、PCT出願第PCT/US2016/058314号にさらに記載されており、その全内容は参照により本明細書に明確に組み込まれる。
多価ワクチン
免疫増強剤構築物を多価抗原(すなわち、抗原は、コンカテマー抗原などの異なるエピトープを含む複数の抗原性ペプチドなどの複数の抗原性エピトープを含む)と組み合わせて使用して、それによって多価抗原に対する免疫応答を増強し得る。一実施形態では、多価抗原はがん抗原である。別の実施形態では、多価抗原は、細菌抗原である。例えば、目的の多価抗原(例えば、以下に記載されるように設計される)は、免疫増強剤構築物と同じmmRNA上に提供されるか、または免疫増強剤として異なるmmRNA構築物上に提供される化学修飾mRNA(mmRNA)によってコードされ得る。免疫増強剤及び多価抗原mmRNAを、それを必要とする対象に処方(または共処方)及び投与(同時または順次)して、対象中の多価抗原に対する免疫応答を刺激してもよい。免疫増強剤と共に使用するための、がん抗原及び細菌抗原を含む適切な多価抗原が本明細書に記載されている。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNAワクチンは、2〜100個のペプチドエピトープから構成されるコンカテマー抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmRNAを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のコンカテマーワクチンは、単一のネオエピトープの複数コピー、単一のタイプの変異、すなわち点突然変異に基づく複数の異なるネオエピトープ、様々な変異型に基づく複数の異なるネオエピトープ、ネオエピトープ及び他の抗原、例えば、腫瘍関連抗原またはリコール抗原を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、コンカテマー抗原は、時には、記憶抗原とも呼ばれる、リコール抗原を含んでもよい。リコール抗原とは、以前に個人が遭遇したことがあり、そのために既存の記憶リンパ球がある抗原である。いくつかの実施形態では、リコール抗原は、個体が遭遇した可能性がある、インフルエンザ抗原などの感染性疾患抗原であってもよい。リコール抗原は、より強い免疫応答を促進することを助ける。
ペプチドエピトープに加えて、コンカテマー抗原は1つ以上の標的化配列を有し得る。本明細書中で使用される場合、標的化配列とは、MHCクラスIまたはII決定基内でのプロセシング及び/または提示のためにエンドソームなどの、細胞内区画へのペプチドの取り込みを容易にするペプチド配列を指す。
標的化配列は、コンカテマー抗原のエピトープのN末端及び/またはC末端に、それらに直接隣接するか、または切断感受性部位のリンカーによって隔てられるかのいずれかで存在し得る。標的化配列は、様々な長さ、例えば、4〜50アミノ酸長を有する。
標的化配列は、例えば、エンドソーム標的化配列であってもよい。エンドソーム標的化配列は、インバリアント鎖、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP1,4LAMP2)、及び樹状細胞(DC)−LAMPなどのMHCクラスII Agプロセシング区画に存在することが知られているエンドソームもしくはリソソームタンパク質に由来する配列、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列である。さらに、MHCクラスIシグナルペプチド断片(78bp、分泌シグナル(sec))をコードする例示的な核酸ならびに終止コドン(MHCクラスI輸送シグナル(MITD)、168bp)両方(PBMCから増幅された)を含む膜貫通ドメイン及び細胞質ゾルドメインを使用してもよい(secセンス、5’−aag ctt agc ggc cgc acc atg cgg gtc acg gcg ccc cga acc−3’(配列番号1314);secアンチセンス、5’−ctg cag gga gcc ggc cca ggt ctc ggt cag−3’(配列番号1315);MITDセンス、5’−gga tcc atc gtg ggc att gtt gct ggc ctg gct−3’(配列番号1316);及びMITDアンチセンス、5’−gaa ttc agt ctc gag tca agc tgt gag aga cac atc aga gcc−3’(配列番号1317)。
MHCクラスI提示は、典型的には非効率的なプロセスである(実際に提示されるのは、10,000の分解分子のうちの1つのペプチドのみである)。APCによるCD8T細胞の初回刺激は、不十分な密度の表面ペプチド/MHC I複合体を提供し、弱いレスポンダーが損なわれたサイトカイン分泌及び減少した記憶プールを示すことをもたらす。本明細書に記載の方法は、MHCクラスI提示の効率を増大し得る。MHCクラスI標的化配列としては、MHCクラスI輸送シグナル(MITD)及びPEST配列(おそらく急速分解のためにタンパク質を標的化することによって抗原特異的CD8T細胞応答を増大させる)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、mRNAワクチンは、例えば、非APCを疑似APCに変換することによって、抗原提示細胞(APC)の産生を促進するための因子と組み合わせてもよい。抗原提示は、免疫応答の開始、増幅及び持続期間における重要なステップである。この過程において、抗原の断片は、抗原特異的免疫応答を駆動するT細胞に対する、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)を介して提示される。免疫予防及び治療に関して、この反応を増強することは、有効性を改善するために重要である。本発明のmRNAワクチンは、効率的な抗原提示を促進するように設計されても、または増強されてもよい。APCプロセシング及び提示を増強するための1つの方法は、抗原提示細胞(APC)へのmRNAワクチンのより良好な標的化を提供することである。別のアプローチは、免疫刺激製剤及び/または構成要素を用いてAPC細胞を活性化することを包含する。
あるいは、非APCをAPCになるように再プログラミングするための方法は、本明細書中に記載されるmRNAワクチンと共に使用され得る。重要なことに、mRNA製剤を取り入れ、それらの治療作用の標的となるほとんどの細胞はAPCではない。したがって、これらの細胞をAPCに変換する方法を設計することは、有効性にとって有益であろう。RNAワクチン、例えば、mRNAワクチンを細胞に送達し、一方で非APCからAPCへのシフトも促進するための方法及びアプローチが、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、APC再プログラミング分子をコードするmRNAは、mRNAワクチンに含まれるか、またはmRNAワクチンと同時投与される。
本明細書で使用されるAPC再プログラミング分子は、非APC細胞におけるAPC様表現型への移行を促進する分子である。APC様表現型は、MHCクラスIIプロセシングを可能にする特性である。したがって、APC様表現型を有するAPC細胞は、1つ以上の外因性分子を有さない同じ細胞と比較して、MHCクラスIIプロセシング能力が増強されている1つ以上の外因性分子(APC再プログラミング分子)を有する細胞である。いくつかの実施形態では、APC再プログラミング分子は、CIITA(MHCクラスII発現の中心的調節因子);シャペロンタンパク質、例えば、CLIP、HLA−DO、HLA−DMなど(MHCクラスIIへの抗原断片のローディングの促進剤)及び/またはCD40、CD80、CD86などのような共刺激分子(T細胞抗原認識及び/またはT細胞活性化の促進剤)である。
CIITAタンパク質は、クラスIIプロモーター領域と会合する、保存されたDNA結合タンパク質のセットと相互作用することにより、MHCクラスII遺伝子の転写の活性化を増強するトランスアクチベーターである(Steimle et al.,1993、Cell 75:135−146)。CIITAの転写活性化機能は、アミノ末端酸性ドメイン(アミノ酸26〜137)にマッピングされている。CIITAと相互作用するタンパク質をコードする核酸分子は、CIITA相互作用タンパク質104(本明細書ではCIP104とも呼ばれる)と呼ばれる。CITTA及びCIP104は両方とも、MHCクラスIIプロモーターからの転写を増強することが示されており、したがって本発明のAPC再プログラミング分子として有用である。いくつかの実施形態では、APC再プログラミング分子は、全長CIITA、CIP104、または他の関連分子もしくはその活性な断片、例えば、CIITAのアミノ酸26〜137、またはそれに対して少なくとも80%の配列同一性を有し、MHCクラスII遺伝子の転写の活性化を増強する能力を維持するアミノ酸である。
いくつかの実施形態では、APC再プログラミング分子は、APC再プログラミング分子をコードするmRNAの形態で対象に送達される。したがって、本明細書に記載のmRNAワクチンは、APC再プログラミング分子をコードするmRNAを含んでもよい。いくつかの実施形態では、mRNAはモノシストロン性である。他の実施形態では、mRNAはポリシストロン性である。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗原をコードするmRNAは、APC再プログラミング分子をコードするmRNAとは別の製剤中にある。他の実施形態では、1つ以上の抗原をコードするmRNAは、APC再プログラミング分子をコードするmRNAと同じ製剤中にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗原をコードするmRNAは、APC再プログラミング分子をコードするmRNAと同時に対象に投与される。他の実施形態では、1つ以上の抗原をコードするmRNAは、APC再プログラミング分子をコードするmRNAとは異なる時間に対象に投与される。例えば、APC再プログラミング分子をコードするmRNAは、1つ以上の抗原をコードするmRNAの前に投与され得る。APC再プログラミング分子をコードするmRNAは、抗原をコードするmRNAの直前、少なくとも1時間前、少なくとも1日前、少なくとも1週間前、または少なくとも1ヶ月前に投与されてもよい。あるいは、APC再プログラミング分子をコードするmRNAは、1つ以上の抗原をコードするmRNAの後に投与され得る。APC再プログラミング分子をコードするmRNAは、抗原をコードするmRNAの直後、少なくとも1時間後、少なくとも1日後、少なくとも1週間後、または少なくとも1ヶ月後に投与されてもよい。
他の実施形態では、標的化配列は、コードされたペプチドの一方または両方の末端に付着しているユビキチン化シグナルである。他の実施形態では、標的化配列は、コードされたペプチドの内部部位及び/またはどちらかの末端に結合しているユビキチン化シグナルである。したがって、mRNAは、コンカテマーペプチドをコードするヌクレオチドの一方または両方の末端にユビキチン化シグナルをコードする核酸配列を含んでもよい。翻訳後修飾であるユビキチン化は、ユビキチンを基質標的タンパク質に結合させるプロセスである。ユビキチン化シグナルは、ペプチドの1つ以上のプロテアソームへの標的化及びプロセシングを可能にするペプチド配列である。ユビキチン化シグナルの使用によりペプチドを標的化し処理することにより、ペプチドの細胞内プロセシングは、抗原提示細胞(APC)における抗原プロセシングをより厳密に再現し得る。
ユビキチンは、真核生物のほぼ全ての組織に見られる8.5kDaの調節タンパク質である。ヒトゲノムには、ユビキチンを生産する4つの遺伝子がある:UBB、UBC、UBA52、及びRPS27A。UBA52及びRPS27Aは、それぞれリボソームタンパク質L40及びS27aに融合したユビキチンの単一コピーをコードする。UBB及びUBC遺伝子は、ポリユビキチン前駆体タンパク質をコードする。3つの酵素によって実行されるユビキチン化への3つのステップがある。E1酵素とも呼ばれるユビキチン活性化酵素は、ユビキチンを反応状態になるように修飾する。E1は、ATPとユビキチンの両方に結合し、ユビキチンのC末端のアシルアデニル化を触媒する。次に、ユビキチンは、活性部位のシステイン残基に転移されてAMPを放出する。最終的に、チオエステル結合が、ユビキチンのC末端カルボキシル基とE1システインスルフヒドリル基の間に形成される。ヒトゲノムにおいて、UBA1及びUBA6は、E1酵素をコードする2つの遺伝子である。
次いで、活性化されたユビキチンは、トランス(チオ)エステル化反応を介してユビキチンをE1からE2の活性部位システインに転移させる、E2ユビキチン結合酵素にかけられる。E2は、活性化ユビキチンとE1酵素の両方に結合する。ヒトは、ユビキチン結合触媒(UBC)フォールドとして知られている、それらの高度に保存された構造を特徴とする35の異なるE2酵素を有する。E3ユビキチンリガーゼは、ユビキチン化カスケードの最終段階を容易にする。一般に、それらは標的タンパク質のリジンとユビキチンのC末端グリシンとの間にイソペプチド結合を形成する。何百ものE3リガーゼがあり;いくつかはまたE2酵素を活性化する。E3酵素は、系の基質認識モジュールとして機能し、E2と基質の両方と相互作用する。この酵素は、2つのドメインのうちの1つを有する:E6−APカルボキシル末端(HECT)ドメインに相同なドメイン、または非常に興味深い新遺伝子(really interesting new gene)(RING)ドメイン(または密接に関連したUボックスドメイン)。偏ったチオエステル中間体が、E3の活性部位システインと形成される場合、HECTドメインE3酵素は、ユビキチンに一時的に結合するが、RINGドメインE3酵素は、E2酵素から基質への直接移動を触媒する。
抗原に添加されたユビキチンの数は、処理工程の有効性を向上し得る。例えば、ポリユビキチン化では、最初のユビキチン分子がペプチドに結合した後に追加のユビキチン分子が加えられる。得られたユビキチン鎖は、ユビキチン分子のグリシン残基の、ペプチドに結合したユビキチンのリジンへの連結によって作り出される。各ユビキチンは、7つのリジン残基及びN末端(ユビキチン化のための部位として役立ち得る)を含む。ペプチド抗原上のリジン残基に4つ以上のユビキチン分子が結合すると、26Sプロテアソームは複合体を認識し、それを内在化し、そしてタンパク質を小さなペプチドに分解する。
ユビキチン野生型は、以下の配列を有する(Homo sapiens):
MQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGG(配列番号1318)
エピトープは、いくつかの実施形態では切断感受性部位によって連結されている。切断感受性部位は、酵素またはプロテアーゼによる切断を受けやすいペプチドである。これらの部位は、プロテアーゼ切断部位とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは細胞内酵素である。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、抗原提示細胞(APC)に見られるプロテアーゼである。したがって、プロテアーゼ切断部位は、APCにおける多量の(高度に発現された)プロテアーゼに相当する。APC酵素に対して感受性である切断感受性部位は、APC切断感受性部位と呼ばれる。APCで発現されるプロテアーゼとしては、限定するものではないが、以下が挙げられる:システインプロテアーゼ、例えば:カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンS、カテプシンF、カテプシンZ、カテプシンV、カテプシンO、カテプシンC、及びカテプシンK、ならびにアスパラギン酸プロテアーゼ、例えば、カテプシンD、カテプシンE、及びアスパラギニルエンドペプチダーゼ。
以下は例示的なAPC切断感受性部位である:
カテプシンB:Arg−Arg結合のカルボキシル側の開裂
カテプシンDは、以下の優先的切断配列を有する:
ここでXaa=任意のアミノ酸残基、疎水性=Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、またはTyr、及び↓=切断部位
カテプシン H:Arg−↓−NHMec;Bz−Arg−↓−NhNap;Bz−Arg−↓NHMec;Bz−Phe−Cal−Arg−↓−NHMec;Pro−Gly−↓−Phe
カテプシン S 及び F:Xaa−Xaa−Val−Val−Arg−Xaa−Xaa
式中Xaa=任意のアミノ酸残基
カテプシン V:Z−Phe−Arg−NHMec;Z−Leu−Arg−NHMec;Z−Val−Arg−NHMec
カテプシン O:Z−Phe−Arg−NHMec 及び Z−Arg−Arg−NHMec
カテプシン−C は以下の優先的な切断配列を有する:
ここで Xaa=任意のアミノ酸残基 及び ↓=切断部位
カテプシン E:Arg−X、Glu−X、及びArg−Arg
アスパラギニル エンドペプチダーゼ:アスパラギン残基の後
カテプシン Lは、以下の優先的な切断配列を有する:
ここでXaa=任意のアミノ酸残基、疎水性=Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、またはTyr、芳香族=Phe、Trp、His、またはTyr、及び↓=切断部位
いくつかの実施形態では、切断感受性部位は、カテプシンBまたはS感受性部位である。例示的なカテプシンB感受性部位としては、限定するものではないが、配列番号226〜615に記載のものが挙げられる。例示的なカテプシンS感受性部位としては、限定するものではないが、配列番号616〜1313に記載のものが挙げられる。
いくつかの実施形態では、mRNAがんワクチン及びワクチン接種方法は、1つ以上のネオエピトープ及び1つ以上の伝統的ながん抗原から構成されるコンカテマーがん抗原をコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、コードされたネオエピトープに加えて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の伝統的ながん抗原をコードする。
いくつかの実施形態では、コンカテマー抗原は、5〜10個のがんペプチドエピトープをコードする。さらに他の実施形態では、コンカテマー抗原は、25〜100個のがんペプチドエピトープをコードする。いくつかの実施形態では、mRNAがんワクチン及びワクチン接種方法は、特定の変異に基づくエピトープまたは抗原(ネオエピトープ)及びがん−生殖細胞系遺伝子によって発現されるもの(複数の患者に見られる腫瘍に共通の抗原)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAがんワクチン及びワクチン接種方法は、1つ以上の伝統的なエピトープまたは抗原、例えば、伝統的ながんワクチンに見られる1つ以上のエピトープまたは抗原を含む。
コンカテマー抗原に含めるために選択されたネオエピトープは、典型的には高親和性結合ペプチドであろう。コンカテマー構築物中のネオエピトープは、同じでも異なっていてもよく、例えば、それらは長さ、アミノ酸配列またはその両方が変化する。
いくつかの実施形態では、ネオエピトープには、リンカーが点在している。
いくつかの実施形態では、ワクチンは、複数のネオエピトープを含むポリシストロン性ワクチン、または1つ以上の単一mRNAワクチン、またはそれらの組み合わせであってもよい。
いくつかの実施形態では、mRNA細菌ワクチン及びワクチン接種方法は、1つ以上の細菌抗原から構成されるコンカテマー細菌抗原をコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の細菌抗原をコードする。
免疫増強剤mRNA及び目的の抗原の組成
別の態様では、本開示は、以下をコードする少なくとも1つの化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)を含む組成物を提供する:(i)目的の少なくとも1つの抗原;及び(ii)少なくとも1つのmmRNAが対象に投与されたとき、少なくとも1つの目的の抗原に対する免疫応答を増強する少なくとも1つのポリペプチドであって、ここで前記mmRNAは1つ以上の修飾核酸塩基を含むポリペプチド。したがって、本開示は、少なくとも1つの免疫増強剤mRNA及び目的の抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを含む組成物を提供し、ここで単一のmRNA構築物が目的の抗原(複数可)及び抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドの両方をコードしてもよいし、あるいは、この組成物は、2つ以上の別々のmRNA構築物、第1のmRNA及び第2のmRNAを含んでもよく、ここで、第1のmRNAは、少なくとも1つの目的の抗原をコードし、第2のmRNAは、抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする(すなわち、第2のmRNAは免疫増強剤を含む)。
目的の抗原(複数可)をコードする第1のmRNA及び目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする第2のmRNAを含む実施形態では、第1のmRNA及び第2のmRNAを一緒に(例えば、同時投与前)共処方してもよく、例えば、同じ脂質ナノ粒子中で共処方するなどしてもよい。
目的の抗原(複数可)及び目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドの両方をコードする単一のmRNAを含む実施形態では、このポリペプチドをコードする配列は、目的の抗原をコードする配列の上流または下流のいずれかでmRNA構築物上に位置し得る。例えば、抗原と免疫刺激ポリペプチドの両方をコードするmRNA構築物の非限定的な例としては、少なくとも1つの変異体KRAS抗原及び構成的に活性なSTINGポリペプチドをコードする、例えば、配列番号107〜130のいずれかに1つ示されるアミノ酸配列をコードする構築物が挙げられる。一実施形態では、構成的に活性なSTINGポリペプチドは、配列番号107〜118に示されるように、構築物のN末端(すなわち、抗原をコードする配列の上流)に位置する。別の実施形態では、構成的に活性なSTINGポリペプチドは、配列番号119〜130に示されるように、構築物のC末端(すなわち、抗原をコードする配列の下流)に位置する。
本開示の免疫増強剤mRNAと組み合わせて使用され得る目的の抗原をコードする様々なmRNA(例えば、mRNAワクチン)を以下にさらに詳細に記載する。
免疫原性細胞死誘導mRNA構築物
別の態様では、本開示は、ネクロトーシスまたはパイロトーシスなどの免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNA構築物(例えば、mmRNA)を提供する。mRNAによって誘導される免疫原性細胞死は、細胞に対する免疫応答がインビボで刺激されるように、細胞から細胞質ゾル成分の放出をもたらす。したがって、本発明のmRNAを使用して、がんの処置における腫瘍のような目的の細胞に対するインビボでの免疫応答を刺激してもよい。免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAは、単独で使用されてもよいし、あるいは、免疫応答性を刺激または増強する1つ以上のさらなる因子と組み合わせて使用されてもよい。そのような追加の因子としては、I型インターフェロン産生の刺激などの適応免疫を刺激する因子、T細胞活性化もしくは初回刺激を誘導する因子、及び/または1つ以上の免疫チェックポイントを調節する因子が挙げられる。そのような追加の因子はまた、mRNAであってもよく、あるいは、タンパク質、抗体または低分子のような異なる種類の因子であってもよい。一実施形態では、追加の因子は、本開示の1つ以上の免疫増強剤mRNA構築物である。
免疫原性細胞死は、細胞から周囲の環境への細胞内構成要素の放出をもたらし、その結果、それらの構成要素が免疫応答の刺激に利用可能になるという点で、免疫原性細胞死は、非免疫原性細胞死と識別可能である。ATP、HMGB1、IL−1a、尿酸、DNA断片、ヒストン及びミトコンドリア含有量を含む、「損傷関連分子パターン」またはDAMPと呼ばれる、免疫原性細胞死の間に典型的に放出される多数の細胞内構成要素が同定されている。DAMPは、細胞外に放出されてもよいし、または特定のDAMPは、細胞の内部から細胞表面に転位する(例えば、小胞体の内腔から細胞表面に転位するカルレティキュリン)。したがって、DAMPの放出は、免疫原性細胞死の指標として役立つ。免疫原性細胞死は、炎症誘発性サイトカインの刺激によっても特徴付けられる。
免疫原性細胞死の2つのタイプは、ネクロトーシス及びパイロトーシスである。これらの種類のプログラム細胞死のそれぞれは、それらをお互いから識別し、及びプログラムされた非免疫原性細胞死の一形態であるアポトーシスから識別する特徴的な特徴を有する。アポトーシスの際立った特徴は、それがカスパーゼ依存性(例えば、イニシエーターカスパーゼ、例えば、死受容体誘導性アポトーシスについてはカスパーゼ−8及び−10、または本質的に誘発されたアポトーシスについてはカスパーゼ−9に依存する)であり、細胞質濃縮及び細胞収縮、すなわち、原形質膜ブレブ(原形質膜の完全性の喪失ではない)、細胞内カルシウム濃度の増大、及びミトコンドリア外膜透過処理(MOMP)をもたらす。重要なことに、アポトーシスは、細胞内構成要素の周囲環境への放出を引き起こさず、そして免疫学的に寛容原性であると考えられる。対照的に、ネクロトーシスは、カスパーゼ活性には依存しないが、受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(Receptor Interacting Protein Kinase 1)(RIPK1)と呼ばれるキナーゼの活性には依存する。実際、カスパーゼの活性化は、例えば、活性化されたカスパーゼ−8及び−10がRIPK1を不活性化するので、ネクロトーシスを阻害する。RIPK1が活性化されると、それはRIPK3と相互作用してネクロソーム複合体を形成する。ネクロトーシスによる細胞死はまた、混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(Mixed Lineage Kinase Domain−Like protein)(MLKL)にも依存する。ネクロトーシスは、細胞の崩壊及びDAMPの放出を含む、原形質膜の完全性の喪失を特徴とする。パイロトーシスはまた、DAMPの放出によっても特徴付けられるが、それがガスデルミンD(GSDMD)、NLRファミリーピリンドメイン含有−3(NLRP3;クリピリンをコードする)及びカスパーゼ1、ならびにヒトではカスパーゼ4及びカスパーゼ5、及びマウスではカスパーゼ−11に依存しており、インフラマソームの誘導につながるという点でネクロトーシスとは異なる。原形質膜の破裂及び炎症をもたらすカスパーゼ非依存性免疫原性細胞死のさらなる形態としては、ミトコンドリア透過性遷移媒介調節壊死(MPT−RN)、フェロプトーシス、パルタナトス及びNETosisが挙げられる(概説については、例えば、Linkermann,A.et al.(2014)Nat.Rev.Immunol.14:759−767を参照のこと)。
一実施形態では、本発明は、ネクロトーシスを誘導するポリペプチドをコードするmRNAを提供する。別の実施形態では、本発明は、パイロトーシスを誘導するポリペプチドをコードするmRNAを提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、MPT−RN、フェロプトーシス、パルタナートまたはNETosisを誘導するポリペプチドをコードするmRNAを提供する。
一実施形態では、ネクロトーシスを誘導するポリペプチドは、混合系統キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。実施例22〜23にさらに記載されるように、MLKL構築物は、DAMPの放出を特徴とするネクロトーシスによる細胞死を誘導する。一実施形態では、mRNA構築物は、ヒトまたはマウスMLKLのアミノ酸1〜180をコードする。一実施形態では、MLKL構築物は1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、MLKL構築物は、例えば、3’UTRまたは5’UTR内に、miR122結合部位、miR142−3p結合部位またはその両方の結合部位を含む。MLKL、またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、それぞれ配列番号1327及び1328に示されるアミノ配列を含むヒトまたはマウスMLKLのアミノ酸1〜180をコードする。
別の実施形態では、ポリペプチドは、受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(receptor−interacting protein kinase)(RIPK3)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。実施例24にさらに記載されるように、RIPK3構築物は、ネクロトーシスによる細胞死を誘導する。一実施形態では、mRNA構築物は、それ自体と多量体化する(ホモオリゴマー化)RIPK3ポリペプチドをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK1と二量体化するRIPK3ポリペプチドをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3のキナーゼドメイン及びRHIMドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3のキナーゼドメイン、RIPK3のRHIMドメイン、及び2つのFKBP(F>V)ドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3ポリペプチド(例えば、RIPK3のキナーゼドメイン及びRHIMドメインを含む)及びIZドメイン(例えば、IZ三量体)をコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK3ポリペプチド(例えば、RIPK3のキナーゼドメイン及びRHIMドメインを含む)及び1つ以上のEEまたはRRドメイン(例えば、2×EEドメインまたは2×RRドメイン)をコードする。さらに、免疫原性細胞死を誘導するRIPK3構築物をコードするDNA構築物の構造は、例えば、Yatim,N.et al.(2015)Science 350:328−334またはOrozco,S.et al.(2014)Cell Death Differ.21:1511−1521にさらに記載されており、適切なRNA構築物の設計に使用してもよい。一実施形態では、RIPK3構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、RIPK3構築物は、例えば、3’UTRまたは5’UTR内に、miR122結合部位、miR142−3p結合部位またはその両方の結合部位を含む。RIPK3またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1329〜1344に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。
別の実施形態では、ポリペプチドは、受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(receptor−interacting protein kinase 1)(RIPK1)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。一実施形態では、mRNA構築物は、ヒトまたはマウスのRIPK1ポリペプチドのアミノ酸1〜155をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、RIPK1ポリペプチド及びIZドメインをコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、RIPK1ポリペプチド及びDMドメインをコードする。一実施形態では、mRNA構築物は、RIPK1ポリペプチド及び1つ以上のEEまたはRRドメインをコードする。さらに、免疫原性細胞死を誘導するRIPK1構築物をコードするDNA構築物の構造は、例えば、Yatim,N.et al.(2015)Science 350:328−334またはOrozco,S.et al.(2014)Cell Death Differ.21:1511−1521にさらに記載されており、適切なRNA構築物の設計に使用され得る。一実施形態では、RIPK1構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、RIPK1構築物は、例えば、3’UTR内または5’UTR内に、miR122結合部位、miR142−3p結合部位またはその両方の結合部位を含む。RIPK1またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号158〜163に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。
別の実施形態では、ポリペプチドは、低pIを有する直接IAP結合タンパク質(DIABLO)(SMAC/DIABLOとしても知られる)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。実施例に記載されるように、DIABLO構築物は、細胞死及びサイトカインの放出を誘導する。一実施形態では、mRNA構築物は、野生型ヒトDIABLOアイソフォーム1配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、S126L変異を含むヒトDIABLOアイソフォーム1配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトDIABLOアイソフォーム1のアミノ酸56〜239をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトDIABLOアイソフォーム1のアミノ酸56〜239をコードし、S126L変異を含む。別の実施形態では、mRNA構築物は、野生型ヒトDIABLOアイソフォーム3配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、S27L変異を含むヒトDIABLOアイソフォーム3配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトDIABLOアイソフォーム3のアミノ酸56〜240をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトDIABLOアイソフォーム3のアミノ酸56〜240をコードし、S27L変異を含む。一実施形態では、DIABLO構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、DIABLO構築物は、例えば、3’UTRまたは5’UTR中に、miR122結合部位、miR142−3p結合部位またはその両方の結合部位を含む。DIABLO、またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号165〜172に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。
別の実施形態では、ポリペプチドは、FADD(デスドメインを有するFas関連タンパク質)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。一実施形態では、FADD構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、FADD構築物は、miR122結合部位、miR142−3p結合部位、またはその両方の結合部位を、例えば、3’UTRまたは5’UTRに含む。FADDまたはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1345〜1351に示されるアミノ酸配列のいずれかを有するORFを含む。
別の実施形態では、本発明は、パイロトーシスを誘発するポリペプチドをコードするmRNAを提供する。一実施形態では、ポリペプチドは、ガスデルミンD(GSDMD)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。一実施形態では、mRNA構築物は、野生型ヒトGSDMD配列をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトGSDMDのアミノ酸1〜275をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、ヒトGSDMDのアミノ酸276〜484をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、野生型マウスGSDMDをコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、マウスGSDMDのアミノ酸1〜276をコードする。別の実施形態では、mRNA構築物は、マウスGSDMDのアミノ酸277〜487をコードする。一実施形態では、GSDMD構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、GSDMD構築物は、miR122結合部位、miR142−3p結合部位、またはその両方の結合部位を、例えば、3’UTRまたは5’UTRに含む。GSDMDまたはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1367〜1372に示される任意のアミノ酸配列をコードする。
別の実施形態では、ポリペプチドは、カスパーゼ−4もしくはカスパーゼ−5もしくはカスパーゼ−11、またはそれらの免疫原性細胞死誘導断片である。様々な実施形態では、カスパーゼ−4、−5、または−11構築物は、(i)全長の野生型カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、またはカスパーゼ−11;(ii)全長カスパーゼ−4、−5または−11に加えてIZドメイン;(iii)N末端が欠失したカスパーゼ−4、−5または−11に加えてIZドメイン;(iv)全長カスパーゼ−4、−5または−11に加えてDMドメイン;あるいは(v)N末端が欠失したカスパーゼ−4、−5または−11に加えてDMドメインをコードし得る。N末端欠失型のカスパーゼ−4及びカスパーゼ−11の例は、アミノ酸残基81〜377を含む。N末端欠失型カスパーゼ−5の例は、アミノ酸残基137〜434を含む。一実施形態では、カスパーゼ−4、−5、または−11構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、カスパーゼ−4、−5、または−11構築物は、miR122結合部位、miR142−3p結合部位、またはその両方の結合部位を、例えば、3’UTR内または5’UTR内に含む。カスパーゼ−4またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1352〜1356に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。カスパーゼ−5またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1357〜1361に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。カスパーゼ11、またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1362〜1366に示される任意のアミノ酸配列を有するORFを含む。
別の実施形態では、ポリペプチドは、NLRP3、またはその免疫原性細胞死誘導断片である。一実施形態では、NLRP3構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、NLRP3構築物は、miR122結合部位、miR142−3p結合部位またはその両方の結合部位を、例えば、3’UTRまたは5’UTR内に含む。NLRP3またはその免疫原性細胞死誘導断片をコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1373または1374に示されるORFアミノ酸配列をコードする。
別の実施形態では、ポリペプチドは、CARD(ASC/PYCARD)、またはその免疫原性細胞死誘導断片、例えば、Pyrinドメインを含むアポトーシス関連スペック様タンパク質である。一実施形態では、このペプチドはPyrin B30.2ドメインである。別の実施形態では、ポリペプチドは、V726A変異を含むPyrin B30.2ドメインである。一実施形態では、ASC/PYCARDまたはPyrin構築物は、1つ以上のmiR結合部位を含む。一実施形態では、ASC/PYCARDまたはPyrin構築物は、miR122結合部位、miR142−3p結合部位、またはその両方の結合部位を、例えば、3’UTR内または5’UTR内に含む。Pyrin B30.2ドメインをコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1375または1376に示されるORFアミノ酸配列をコードする。ASCをコードするmRNA構築物の非限定的な例は、配列番号1377または1378に示されるORFアミノ酸配列をコードする。
免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする本発明のmRNAは、炎症性反応及び/または免疫反応を刺激し、及び/または免疫応答性を調節する他の因子と組み合わせて使用されてもよい。がん細胞に対する免疫応答ががん細胞の殺傷に効果的であるためには、段階的様式で起こりそして反復的に進行して拡大することを許容されなければならない、多数の事象が記載されている。このプロセスは、がん−免疫サイクルと呼ばれてきた(例えば、Chen,D.S.and Mellman,I.(2013)Immunity,39:1−10を参照のこと)。これらの連続した事象は以下を含む:(i)がん細胞抗原の放出;(ii)がん抗原提示(例えば、樹状細胞または他の抗原提示細胞による);(iii)T細胞の初回刺激及び活性化;(iv)T細胞(例えば、CTL)の腫瘍への輸送;(v)腫瘍へのT細胞の浸潤;(vi)T細胞によるがん細胞の認識;及び(vii)がん細胞を殺傷すること。
したがって、本発明の別の態様は、殺傷の標的となる細胞の細胞抗原に対する免疫応答を促進または増強するために、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする本発明のmRNAと組み合わせて使用され得る追加の因子に関する。そのような追加の因子は、炎症性及び/または免疫応答を刺激または促進し得る。追加的または代替的に、そのような追加の因子は、例えば、免疫チェックポイントモジュレーターとして作用することによって、免疫応答性を調節し得る。さらなる因子はまた、例えば、mRNA構築物について本明細書に記載されるような構造的性質を有するmRNA(例えば、本明細書に記載されるような、修飾核酸塩基、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、miR結合部位(複数可)、ポリAテール)であってもよい。あるいは、追加の因子は、タンパク質、抗体または低分子などの非mRNA因子であってもよい。
一実施形態では、追加の因子は、免疫応答を増強し、例えば、適応免疫を誘導する(例えば、I型インターフェロン産生を刺激することにより)、炎症応答を刺激する、NFκBシグナル伝達を刺激する、及び/または樹状細胞(DC)動員を刺激する。一実施形態では、適応免疫を誘導する因子は、I型インターフェロンである。例えば、I型インターフェロンを含む薬学的組成物を因子として使用してもよい。あるいは、別の実施形態では、適応免疫を誘導する追加の因子は、I型インターフェロン産生を刺激する因子である。I型インターフェロン産生を刺激する因子の非限定的な例としては、STING、IRF1、IRF3、IRF5、IRF6、IRF7及びIRF8が挙げられる。炎症反応を刺激する因子の非限定的な例としては、STAT1、STAT2、STAT4、STAT6、NFAT及びC/EBPbが挙げられる。NFκBシグナル伝達を刺激する因子の非限定的な例としては、IKKβ、c−FLIP、RIPK1、IL−27、ApoF及びPLPが挙げられる。DC動員を刺激する因子の非限定的な例は、FLT3である。免疫応答を増強するさらに別の因子は、DIABLO(SMAC/DIABLO)である。
一実施形態では、免疫応答を増強する因子は、本開示の免疫増強剤mRNA構築物であり、その非限定的な例としては、STING、IRF3、IRF7、STAT6、Myd88、Btk(E41K)、TAK−TAB1、DIABLO(SMAC/DIABLO)、TRAM(TICAM2)ポリペプチドまたは自己活性化カスパーゼ−1ポリペプチド、構成的に活性なIKKβ、構成的に活性なIKKα、c−FLIP及びRIPK1のmRNA構築物をコードする構築物が挙げられる。
別の実施形態では、追加の因子は、T細胞活性化または初回刺激を誘導する。例えば、T細胞活性化または初回刺激を誘導する追加の因子は、サイトカインであっても、またはケモカインであってもよい。T細胞活性化または初回刺激を誘導するサイトカインまたはケモカインの非限定的な例としては、IL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20及びCCL21が挙げられる。一実施形態では、この因子は、サイトカインまたはケモカインを含む薬学的組成物である。別の実施形態では、この因子はサイトカインまたはケモカインの産生を誘導する因子である。別の実施形態では、因子はサイトカインまたはケモカインをコードするmRNA構築物である。別の実施形態では、この因子はケモカインまたはサイトカインを誘導するポリペプチドをコードするmRNA構築物である。
別の実施形態では、追加の因子は、免疫チェックポイントを調節する。PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤及びCTLA−4阻害剤を含む様々な免疫チェックポイント阻害剤が当該分野において記載されている。免疫チェックポイントの他の調節因子は、OX−40、OX−40LまたはICOSを標的とし得る。一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、抗体である。別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子はタンパク質または低分子モジュレーターである。別の実施形態では、この因子(mRNAなど)は、免疫チェックポイントの抗体モジュレーターをコードする。
一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する追加の因子は、PD−1を標的とする。PD−1を標的とする免疫療法剤の非限定的な例としては、ペムブロリズマブ、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、ピジリズマブ、オフマツマブ、リツキシマブ、MEDI0680及びPDR001、AMP−224、PF−06101591、BGB−A317、REGN2810、SHR−1210、TSR−042、アベルマブ、デュルバルマブ及びアフィマーが挙げられる。
一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する追加の因子は、PD−L1を標的とする。PD−L1を標的とする免疫療法剤の非限定的な例としては、アベルマブ(MSB0010718C)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、デュルバルマブ(MEDI4736)及びBMS936559が挙げられる。
一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する追加の因子は、CTLA−4を標的とする。CTLA−4を標的とする免疫療法剤の非限定的な例としては、イピリムマブ、トレメリムマブ及びAGEN1884が挙げられる。
一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する追加の因子は、OX−40またはOX−40Lを標的とする。一実施形態では、OX−40またはOX−40Lを標的とする因子は、Fc−OX−40LポリペプチドをコードするmRNA構築物である。さらに他の実施形態では、OX−40またはOX−40Lを標的とする因子は、免疫刺激アゴニスト抗OX−40またはOX−40L抗体であり、当該技術分野で知られているその例としては、MEDI6469(アゴニスト抗OX40抗体)及びMOXR0916(アゴニスト抗OX40抗体)が挙げられる。
さらに別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する追加の因子は、ICOS経路アゴニストである。
mRNA構築物構成要素
mRNAは、天然または非天然に存在するmRNAであってもよい。mRNAは、以下に記載されるように、1つ以上の修飾核酸塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドを含んでもよく、その場合、それは、「修飾mRNA」または「mmRNA」と称され得る。本明細書中に記載されるように、「ヌクレオシド」とは、有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書では「核酸塩基」とも呼ばれる)と組み合わせた、糖分子(例えば、ペントースまたはリボース)またはその誘導体を含む化合物として定義される。本明細書において記載される場合、「ヌクレオチド」とは、リン酸塩基を含むヌクレオシドとして定義される。
mRNAは、5’非翻訳領域(5’−UTR)、3’非翻訳領域(3’−UTR)、及び/またはコード領域(例えば、オープンリーディングフレーム)を含んでもよい。構築物において使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21に示す。構築物において使用するための別の例示的5’UTRを、配列番号1323に示す。構築物において使用するための例示的3’UTRを、配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRは、配列番号23に示される。mRNAは、任意の適切な数の塩基対を含んでもよく、これには、数十(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100)、数百(例えば、200、300、400、500、600、700、800、または900)または数千(例えば、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000)の塩基対を含む。任意の数(例えば、全部、いくつか、または全くない)の核酸塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドは、置換、修飾、またはそうでなければ天然に存在しない標準的な種の類似体であってもよい。特定の実施形態では、特定の核酸塩基型の全てを修飾してもよい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNAは、5’キャップ構造、鎖終結ヌクレオチド、必要に応じてKozak配列(Kozakコンセンサス配列としても知られる)、ステムループ、ポリA配列、及び/またはポリアデニル化シグナルを含んでもよい。
5’キャップ構造またはキャップ種は、リンカーによって結合された2つのヌクレオシド部分を含む化合物であり、天然に存在するキャップ、天然に存在しないキャップもしくはキャップ類似体、または抗逆キャップ類似体(ARCA)から選択されてもよい。キャップ種は、1つ以上の修飾ヌクレオシド及び/またはリンカー部分を含んでもよい。例えば、天然のmRNAキャップは、グアニンヌクレオチド及びその5’位において三リン酸結合によって結合された7位においてメチル化されたグアニン(G)ヌクレオチド、例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(通常はm7GpppGと書かれている)を含んでもよい。キャップ種はまた、抗逆キャップ類似体であってもよい。可能性のあるキャップ種の非限定的なリストとしては、m7GpppG、m7Gpppm7G、m73’dGpppG、m2 7,O3’GpppG、m2 7,O3’GppppG、m2 7,O2’GppppG、m7Gpppm7G、m73’dpppG、m2 7,O3’GpppG、m2 7,O3’GppppG、及びm2 7,O2’GppppGが挙げられる。
mRNAは、代わりにまたはそれに加えて、連鎖停止ヌクレオシドを含んでもよい。例えば、連鎖停止ヌクレオシドは、それらの糖基の2’及び/または3’位で脱酸素化されたヌクレオシドを含んでもよい。そのような種としては、3’デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−デオキシウリジン、3’−デオキシシトシン、3’−デオキシグアノシン、3’−デオキシチミン、及び2’、3’−ジデオキヌクレオシド、例えば、2’,3’−ジデオキシアデノシン、2’,3’−ジデオキシウリジン、2’,3’−ジデオキシシトシン、2’,3’−ジデオキシグアノシン、及び2’,3’−ジデオキシチミンが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、例えば、国際特許公開第WO2013/103659号に記載されているように、例えば、3’末端での鎖停止ヌクレオチドのmRNAへの組み込みは、mRNAの安定化を生じ得る。
mRNAは、代わりにまたはそれに加えて、ヒストンステムループなどのステムループを含んでもよい。ステムループは、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のヌクレオチド塩基対を含んでもよい。例えば、ステムループは、4、5、6、7、または8ヌクレオチド塩基対を含んでもよい。ステムループは、mRNAの任意の領域に位置し得る。例えば、ステムループは、非翻訳領域(5’非翻訳領域または3’非翻訳領域)、コード領域、またはポリA配列もしくはテールの中、前または後に位置し得る。いくつかの実施形態では、ステムループは、翻訳の開始、翻訳効率、及び/または転写終結などのmRNAの1つ以上の機能(複数可)に影響を及ぼし得る。
mRNAは、代わりにまたはそれに加えて、ポリA配列及び/またはポリアデニル化シグナルを含んでもよい。ポリA配列は、アデニンヌクレオチドまたはその類似体もしくは誘導体から完全に構成されてもよいし、またはほとんど構成されてもよい。ポリA配列は、mRNAの3’非翻訳領域に隣接して位置するテールであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリA配列は、mRNAの核外輸送、翻訳、及び/または安定性に影響を及ぼし得る。
mRNAは、代わりにまたはそれに加えて、マイクロRNA結合部位を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、mRNAは、第1のコード領域と第2のコード領域との間の内部翻訳開始を可能にする、内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含む介在配列を有するかまたは2Aペプチドなどの自己切断ペプチドをコードする介在配列を有する、第1のコード領域及び第2のコード領域を含むバイシストロン性mRNAである。IRES配列及び2Aペプチドは、典型的には同じベクターからの複数のタンパク質の発現を増強するために使用される。例えば、脳心筋炎ウイルスIRESを含む様々なIRES配列が当該分野で公知でありそして利用可能であり得、そして使用されてもよい。
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、自己切断ペプチドをコードする配列を含んでもよい。自己切断ペプチドは、限定するものではないが、2Aペプチドであってもよい。様々な2Aペプチドが当該技術分野において公知であり入手可能であり、用いられてもよく、これには、例としては、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス2Aペプチド、Thosea asignaウイルス2Aペプチド、及びブタテスコウイルス−12Aペプチドが挙げられる。2Aペプチドは、正常なペプチド結合が2Aペプチド配列で損なわれ、1つの翻訳事象から2つの不連続タンパク質が生じるように、いくつかのウイルスによって使用され、リボソームスキッピングによって1つの転写物から2つのタンパク質を生成する。非限定的な例として、2Aペプチドは、タンパク質配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号24)、それらの断片またはバリアントを有し得る。一実施形態では、2Aペプチドは、最後のグリシンと最後のプロリンとの間で切断する。別の非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドは、タンパク質配列GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号24)の断片またはそのバリアントを有する2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含んでもよい。2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の一例は以下である:GGAAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT(配列番号25)。例示的な一実施形態では、2Aペプチドは以下の配列によってコードされる:5’−
TCCGGACTCAGATCCGGGGATCTCAAAATTGTCAAACAAACTCTTAACTTTGATTTACTCAAACTGGCTGGGGATGTAGAAAGCAATCCAGGTCCACTC−3’(配列番号26)。2Aペプチドのポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の方法によって修飾されてもよいし、またはコドン最適化されてもよいし、及び/または当該技術分野において公知である。
一実施形態では、この配列を使用して、目的の2つ以上のポリペプチドのコード領域を分離し得る。非限定的な例として、F2Aペプチドをコードする配列は、第1のコード領域Aと第2のコード領域Bとの間にあってもよい(A−F2Apep−B)。F2Aペプチドの存在は、F2Aペプチド配列の末端でグリシンとプロリンとの間の1つの長いタンパク質の開裂をもたらし(NPGPは、開裂されてNPG及びPをもたらす)、したがって別個のプロテインA(NPGで終わる、結合されたF2Aペプチドの21アミノ酸を有する)及び分離したタンパク質B(結合したF2Aペプチドの1個のアミノ酸、Pを有する)を作り出す。同様に、他の2Aペプチド(P2A、T2A及びE2A)については、長いタンパク質中のペプチドの存在は、2Aペプチド配列の末端でグリシンとプロリンの間の切断をもたらす(NPGPは、NPG及びPをもたらすために切断される)。プロテインA及びプロテインBは、目的の同一または異なるペプチドまたはポリペプチドであってもよい。特定の実施形態では、プロテインAは、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドであり、プロテインBは、炎症性及び/または免疫応答を刺激するか、及び/または免疫応答性を調節する別のポリペプチドである(以下にさらに記載)。
修飾mRNA
特定の実施形態では、本開示のmRNAは、完全に非修飾核酸塩基、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含むが、いくつかの実施形態では本開示のmRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む(「修飾mRNA」または「mmRNA」と呼ばれる)。いくつかの実施形態では、修飾mRNAは、参照未修飾mRNAと比較して、安定性の向上、細胞内保持、翻訳の向上、及び/またはmRNAが導入される細胞の自然免疫応答の実質的な誘導の欠如などの有用な特性を有し得る。したがって、修飾mRNAの使用は、タンパク質産生の効率、細胞内での核酸の保持を促進し得、同様に免疫原性の低下を保有し得る。
いくつかの実施形態では、mRNAは1つ以上(例えば、1、2、3または4)の異なる修飾核酸塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100以上の)異なる修飾核酸塩基、ヌクレオシド、またはヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、修飾mRNAは、対応する未修飾mRNAと比較して、mRNAが導入された細胞内では分解が低下している場合がある。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、修飾されたウラシルである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたウラシルを有する)としては、シュードウリジン(Ψ)、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド、5−アザ−ウリジン、6−アザ−ウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオ−ウリジン(s2U)、4−チオ−ウリジン(s4U)、4−チオ−シュードウリジン、2−チオ−シュードウリジン、5−ヒドロキシ−ウリジン(ho5U)、5−アミノアリル−ウリジン、5−ハロ−ウリジン(例えば、5−ヨード−ウリジンまたは5−ブロモ−ウリジン)、3−メチル−ウリジン(m3U)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、ウリジン5−オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5−オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5−カルボキシメチル−ウリジン(cm5U)、1−カルボキシメチル−シュードウリジン、5−カルボキシヒドロキシメチル−ウリジン(chm5U)、5−カルボキシヒドロキシメチル−ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5−メトキシカルボニルメチル−ウリジン(mcm5U)、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオ−ウリジン(mcm5s2U)、5−アミノメチル−2−チオ−ウリジン(nm5s2U)、5−メチルアミノメチル−ウリジン(mnm5U)、5−メチルアミノメチル−2−チオ−ウリジン(mnm5s2U)、5−メチルアミノメチル−2−セレノ−ウリジン(mnm5se2U)、5−カルバモイルメチル−ウリジン(ncm5U)、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウリジン(cmnm5U)、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウリジン(cmnm5s2U)、5−プロピニル−ウリジン、1−プロピニル−シュードウリジン、5−タウリノメチル−ウリジン(τm5U)、1−タウリノメチル−シュードウリジン、5−タウリノメチル−2−チオ−ウリジン(τm5s2U)、1−タウリノメチル−4−チオ−シュードウリジン、5−メチル−ウリジン(m5U、すなわち、核酸塩基デオキシチミンを有する)、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)、5−メチル−2−チオ−ウリジン(m5s2U)、1−メチル−4−チオ−シュードウリジン(m1s4Ψ)、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、3−メチル−シュードウリジン(m3Ψ)、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロシュードウリジン、5,6−ジヒドロウリジン、5−メチル−ジヒドロウリジン(m5D)、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−メトキシ−ウリジン、2−メトキシ−4−チオ−ウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジン、N1−メチル−シュードウリジン、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジン(acp3U)、1−メチル−3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3Ψ)、5−(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inm5U)、5−(イソペンテニルアミノメチル)−2−チオ−ウリジン(inm5s2U)、α−チオ−ウリジン、2’−O−メチル−ウリジン(Um)、5,2’−O−ジメチル−ウリジン(m5Um)、2’−O−メチル−シュードウリジン(Ψm)、2−チオ−2’−O−メチル−ウリジン(s2Um)、5−メトキシカルボニルメチル−2’−O−メチル−ウリジン(mcm5Um)、5−カルバモイルメチル−2’−O−メチル−ウリジン(ncm5Um)、5−カルボキシメチルアミノメチル−2’−O−メチル−ウリジン(cmnm5Um)、3,2’−O−ジメチル−ウリジン(m3Um)、及び5−(イソペンテニルアミノメチル)−2’−O−メチル−ウリジン(inm5Um)、1−チオ−ウリジン、デオキシチミジン、2’−F−アラ−ウリジン、2’−F−ウリジン、2’−OH−アラ−ウリジン、5−(2−カルボメトキシビニル)ウリジン、及び5−[3−(1−E−プロペニルアミノ)]ウリジンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、修飾されたシトシンである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたシトシンを有する)としては、5−アザ−シチジン、6−アザ−シチジン、シュードイソシチジン、3−メチル−シチジン(m3C)、N4−アセチル−シチジン(ac4C)、5−ホルミル−シチジン(f5C)、N4−メチル−シチジン(m4C)、5−メチル−シチジン(m5C)、5−ハロ−シチジン(例えば、5−ヨード−シチジン)、5−ヒドロキシメチル−シチジン(hm5C)、1−メチル−シュードイソシチジン、ピロロ−シチジン、ピロロ−シュードイソシチジン、2−チオ−シチジン(s2C)、2−チオ−5−メチル−シチジン、4−チオ−シュードイソシチジン、4−チオ−1−メチル−シュードイソシチジン、4−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードイソシチジン、1−メチル−1−デアザ−シュードイソシチジン、ゼブラリン、5−アザ−ゼブラリン、5−メチル−ゼブラリン、5−アザ−2−チオ−ゼブラリン、2−チオ−ゼブラリン、2−メトキシ−シチジン、2−メトキシ−5−メチル−シチジン、4−メトキシ−シュードイソシチジン、4−メトキシ−1−メチル−シュードイソシチジン、リシジン(k2C)、α−チオ−シチジン、2’−O−メチル−シチジン(Cm)、5,2’−O−ジメチル−シチジン(m5Cm)、N4−アセチル−2’−O−メチル−シチジン(ac4Cm)、N4,2’−O−ジメチル−シチジン(m4Cm)、5−ホルミル−2’−O−メチル−シチジン(f5Cm)、N4,N4,2’−O−トリメチル−シチジン(m4 2Cm)、1−チオ−シチジン、2’−F−アラ−シチジン、2’−F−シチジン、及び2’−OH−アラ−シチジンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、修飾されたアデニンである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたアデニンを有する)としては、α−チオ−アデノシン、2−アミノ−プリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−ハロ−プリン(例えば、2−アミノ−6−クロロ−プリン)、6−ハロ−プリン(例えば、6−クロロ−プリン)、2−アミノ−6−メチル−プリン、8−アジド−アデノシン、7−デアザ−アデニン、7−デアザ−8−アザ−アデニン、7−デアザ−2−アミノ−プリン、7−デアザ−8−アザ−2−アミノ−プリン、7−デアザ−2,6−ジアミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2,6−ジアミノプリン、1−メチル−アデノシン(m1A)、2−メチル−アデニン(m2A)、N6−メチル−アデノシン(m6A)、2−メチルチオ−N6−メチル−アデノシン(ms2m6A)、N6−イソペンテニル−アデノシン(i6A)、2−メチルチオ−N6−イソペンテニル−アデノシン(ms2i6A)、N6−(cis−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン(io6A)、2−メチルチオ−N6−(cis−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン(ms2io6A)、N6−グリシニルカルバモイル−アデノシン(g6A)、N6−トレオニルカルバモイル−アデノシン(t6A)、N6−メチル−N6−トレオニルカルバモイル−アデノシン(m6t6A)、2−メチルチオ−N6−トレオニルカルバモイル−アデノシン(ms2g6A)、N6,N6−ジメチル−アデノシン(m6 2A)、N6−ヒドロキシノルバリルカルバモイル−アデノシン(hn6A)、2−メチルチオ−N6−ヒドロキシノルバリルカルバモイル−アデノシン(ms2hn6A)、N6−アセチル−アデノシン(ac6A)、7−メチル−アデニン、2−メチルチオ−アデニン、2−メトキシ−アデニン、α−チオ−アデノシン、2’−O−メチル−アデノシン(Am)、N6,2’−O−ジメチル−アデノシン(m6Am)、N6,N6,2’−O−トリメチル−アデノシン(m6 2Am)、1,2’−O−ジメチル−アデノシン(m1Am)、2’−O−リボシルアデノシン(リン酸塩)(Ar(p))、2−アミノ−N6−メチル−プリン、1−チオ−アデノシン、8−アジド−アデノシン、2’−F−アラ−アデノシン、2’−F−アデノシン、2’−OH−アラ−アデノシン、及びN6−(19−アミノ−ペンタオキサノナデシル)−アデノシンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基とは、修飾されたグアニンである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたグアニンを有する)としては、α−チオ−グアノシン、イノシン(I)、1−メチル−イノシン(m1I)、ワイオシン(imG)、メチルワイオシン(mimG)、4−デメチル−ワイオシン(imG−14)、イソワイオシン(imG2)、ワイブトシン(yW)、ペルオキシワイブトシン(o2yW)、ヒドロキシワイブトシン(OhyW)、不完全修飾型ヒドロキシワイブトシン(OhyW*)、7−デアザ−グアノシン、キューオシン(Q)、エポキシキューオシン(oQ)、ガラクトシル−キューオシン(galQ)、マンノシル−キューオシン(manQ)、7−シアノ−7−デアザ−グアノシン(preQ0)、7−アミノメチル−7−デアザ−グアノシン(preQ1)、アルカエオシン(G+)、7−デアザ−8−アザ−グアノシン、6−チオ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−8−アザ−グアノシン、7−メチル−グアノシン(m7G),6−チオ−7−メチル−グアノシン、7−メチル−イノシン、6−メトキシ−グアノシン、1−メチル−グアノシン(m1G)、N2−メチル−グアノシン(m2G)、N2,N2−ジメチル−グアノシン(m2 2G)、N2,7−ジメチル−グアノシン(m2,7G)、N2,N2,7−ジメチル−グアノシン(m2,2,7G)、8−オキソ−グアノシン、7−メチル−8−オキソ−グアノシン、1−メチル−6−チオ−グアノシン、N2−メチル−6−チオ−グアノシン、N2,N2−ジメチル−6−チオ−グアノシン、α−チオ−グアノシン、2’−O−メチル−グアノシン(Gm)、N2−メチル−2’−O−メチル−グアノシン(m2Gm)、N2,N2−ジメチル−2’−O−メチル−グアノシン(m2 2Gm)、1−メチル−2’−O−メチル−グアノシン(m1Gm)、N2,7−ジメチル−2’−O−メチル−グアノシン(m2,7Gm)、2’−O−メチル−イノシン(Im)、1,2’−O−ジメチル−イノシン(m1Im)、2’−O−リボシルグアノシン(リン酸塩)(Gr(p))、1−チオ−グアノシン、O6−メチル−グアノシン、2’−F−アラ−グアノシン、及び2’−F−グアノシンが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、1つ以上の前述の修飾核酸塩基の組み合わせ(例えば、2つ、3つまたは4つの前述の修飾核酸塩基の組み合わせ)を含む。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、シュードウリジン(Ψ)、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)、2−チオウリジン、4’−チオウリジン、5−メチルシトシン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、4−チオ−シュードウリジン、5−アザ−ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5−メトキシウリジン、または2’−O−メチルウリジンである。いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、1つ以上の上述の修飾された核酸塩基の組み合わせ(例えば、上述の修飾された核酸塩基のうち2、3または4つの組み合わせ)を包含する。いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)であり、本開示のmRNAは、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾される。いくつかの実施形態では、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)は、mRNA中の75〜100%のウラシルに相当する。いくつかの実施形態では、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)は、mRNA中の100%のウラシルに相当する。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、修飾されたシトシンである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたシトシンを有する)としては、N4−アセチル−シチジン(ac4C)、5−メチル−シチジン(m5C)、5−ハロ−シチジン(例えば、5−ヨード−シチジン)、5−ヒドロキシメチル−シチジン(hm5C)、1−メチル−シュードイソシチジン、2−チオ−シチジン(s2C)、2−チオ−5−メチル−シチジンが挙げられる。いくつかの実施形態では、開示のmRNAとしては、上述の修飾された核酸塩基のうちの1つ以上の組み合わせ(例えば、上述の修飾された核酸塩基の2、3、または4つの組み合わせ)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、修飾されたアデニンである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたアデニンを有する)としては、7−デアザ−アデニン、1−メチル−アデノシン(m1A)、2−メチル−アデニン(m2A)、N6−メチル−アデノシン(m6A)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、1つ以上の上述の修飾された核酸塩基の組み合わせ(例えば、上述の修飾された核酸塩基の2、3または4つの組み合わせ)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、修飾されたグアニンである。例示的な核酸塩基及びヌクレオシド(修飾されたグアニンを有する)としては、イノシン(I)、1−メチル−イノシン(m1I)、ワイオシン(imG)、メチルワイオシン(mimG)、7−デアザ−グアノシン、7−シアノ−7−デアザ−グアノシン(preQ0)、7−アミノメチル−7−デアザ−グアノシン(preQ1)、7−メチル−グアノシン(m7G)、1−メチル−グアノシン(m1G)、8−オキソ−グアノシン、7−メチル−8−オキソ−グアノシンが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のmRNAとしては、上述の修飾された核酸塩基の1つ以上の組み合わせ(例えば、上述の修飾された核酸塩基の2、3または4つの組み合わせ)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、修飾された核酸塩基は、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、5−メチル−シチジン(m5C)、シュードウリジン(Ψ)、α−チオ−グアノシン、またはα−チオ−アデノシンである。いくつかの実施形態では、本開示のmRNAとしては、上述の修飾された核酸塩基の1つ以上の組み合わせ(例えば、上述の修飾された核酸塩基の2、3または4つの組み合わせ)が挙げられる。
いくつかの実施形態では、mRNAは、シュードウリジン(Ψ)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、シュードウリジン(Ψ)及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、2−チオウリジン(s2U)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、2−チオウリジン及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、2’−O−メチルウリジンを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、2’−O−メチルウリジン及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、N6−メチル−アデノシン(m6A)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、N6−メチル−アデノシン(m6A)及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む。
特定の実施形態では、本開示のmRNAは、特定の修飾について均一に修飾されている(すなわち、完全に修飾された、配列全体にわたって修飾されている)。例えば、mRNAは、5−メチル−シチジン(m5C)で均一に修飾されてもよく、このことは、mRNA配列中の全てのシトシン残基が、5−メチル−シチジン(m5C)で置き換えられていることを意味する。同様に、本開示のmRNAは、上記で示される残基のような修飾された残基との置換によって、配列中に存在する任意の種類のヌクレオシド残基について均一に修飾され得る。
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、コード領域(例えば、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム)において修飾され得る。他の実施形態では、mRNAは、コード領域以外の領域で修飾されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、5’−UTR及び/または3’−UTRが提供され、ここで一方または両方は、独立して1つ以上の異なるヌクレオシド修飾を含んでもよい。そのような実施形態では、ヌクレオシド修飾はまたコード領域にも存在し得る。
本開示のmmRNA中に存在し得る、ヌクレオシド修飾及びそれらの組み合わせの例としては、限定するものではないが、PCT特許出願公開:WO2012045075、WO2014081507、WO2014093924、WO2014164253、及びWO2014159813に記載されるものが挙げられる。
本開示のmmRNAは、糖、核酸塩基、及び/またはヌクレオシド間結合に対する修飾の組み合わせを含み得る。これらの組み合わせは、本明細書に記載の任意の1つ以上の改変を含み得る。
修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオシドの組み合わせの例を、以下の表1及び表2に提供する。修飾ヌクレオチドのこれらの組み合わせを用いて、本開示のmmRNAを形成し得る。特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、本開示のmRNAの天然ヌクレオチドと部分的にまたは完全に置換され得る。非限定的な例として、天然のヌクレオチドウリジンは、本明細書に記載の修飾ヌクレオシドで置換されていてもよい。別の非限定的な例では、天然ヌクレオシドウリジンは、本明細書に開示されている修飾ヌクレオシドの少なくとも1つによって部分的に置換されていてもよい(例えば、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99.9%の天然ウリジン)。
本開示に従って、本開示のポリヌクレオチドは、表1または表2の組み合わせまたは単一の修飾を含むように合成され得る。
単一の修飾が列挙されている場合、列挙されているヌクレオシドまたはヌクレオチドは、修飾されているA、U、GまたはCのヌクレオチドまたはヌクレオシドの100パーセントに相当する。割合が列挙されている場合、これらは存在するA、U、GまたはC三リン酸の総量のうちのその特定のA、U、GまたはC核酸塩基三リン酸の割合を表す。例えば、25%の5−アミノアリル−CTP+75%のCTP/25%の5−メトキシ−UTP+75%のUTPの組み合わせとは、25%のシトシン三リン酸が、5−アミノアリル−CTPであり、一方で75%のシトシンがCTPであるポリヌクレオチドを指す;一方、ウラシルの25%が5−メトキシUTPであり、一方でウラシルの75%はUTPである。修飾されたUTPが列挙されていない場合には、天然に存在するATP、UTP、GTP及び/またはCTPが、ポリヌクレオチド中に見出されるそれらのヌクレオチドの部位の100%で使用される。この例では、全てのGTP及びATPヌクレオチドが未修飾のままである。
本開示のmRNA、またはその領域は、コドン最適化されていてもよい。コドン最適化法は、当該技術分野において公知であり、以下の種々の目的に有用であり得る:適切な折り畳みを保証するための宿主生物におけるコドン頻度の一致、mRNA安定性の向上または二次構造の低減のためのバイアスGC含量、遺伝子構築または発現を障害し得る、タンデムリピートコドンまたはベースランを最小化する、転写及び翻訳制御領域をカスタマイズする、タンパク質輸送配列を挿入または除去する、コードされたタンパク質中の翻訳後修飾部位の除去/追加(例えば、グリコシル化部位)、タンパク質ドメインを追加、除去またはシャッフルする、制限部位の挿入または削除、リボソーム結合部位及びmRNA分解部位を修飾する、翻訳速度を調節してタンパク質の種々のドメインが適切に折り畳まれることを可能にするか、またはポリヌクレオチド内の問題の二次構造を減少もしくは排除する。コドン最適化ツール、アルゴリズム及びサービスは、当該技術分野において公知であり;非限定的な例としては、GeneArt(Life Technologies)、DNA2.0(Menlo Park、CA)のサービス、及び/または独自の方法が挙げられる。一実施形態では、mRNA配列は、例えば、哺乳動物細胞における発現を最適化するため、またはmRNAの安定性を高めるために、最適化アルゴリズムを使用して最適化される。
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
本開示のmRNAは、インビトロ転写(IVT)及び合成方法を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において利用可能な手段によって産生され得る。酵素的(IVT)、固相、液相、複合合成法、小領域合成、及び連結法を利用してもよい。一実施形態では、mRNAは、IVT酵素合成法を用いて作製される。IVTによるポリヌクレオチドの製造方法は当該技術分野において公知であり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願PCT/US2013/30062に記載されている。したがって、本開示はまた、本明細書に記載のmRNAをインビトロ転写するために使用され得るポリヌクレオチド(例えば、DNA)、構築物(例えば、プラスミド)及びベクター(例えば、ウイルスベクター)を含む。
合成中または合成後に、非天然修飾核酸塩基をポリヌクレオチド、例えば、mRNAに導入してもよい。特定の実施形態では、修飾は、ヌクレオシド間結合、プリンもしくはピリミジン塩基、または糖にあってもよい。特定の実施形態では、修飾は、ポリヌクレオチド鎖の末端に導入しても、またはポリヌクレオチド鎖内の他のどこかに導入してもよい(化学合成によるかまたはポリメラーゼ酵素による)。修飾された核酸及びそれらの合成の例は、PCT出願第PCT/US2012/058519号に開示されている。修飾ポリヌクレオチドの合成はまた、Verma and Eckstein,Anergy Review of Biochemistry,vol.76,99−134(1998)にも記載される。
酵素的または化学的ライゲーション方法のいずれかを使用して、標的化剤または送達剤、蛍光標識、液体、ナノ粒子などのような、異なる機能部分とポリヌクレオチドまたはそれらの領域とをコンジュゲートさせてもよい。ポリヌクレオチド及び修飾ポリヌクレオチドのコンジュゲートは、Goodchild,Bioconjugate Chemistry,vol.1(3),165〜187(1990)に概説されている。
マイクロRNA(miRNA)結合部位
本開示のポリヌクレオチドは、調節エレメント、例えば、マイクロRNA(miRNA)結合部位、転写因子結合部位、構造化mRNA配列及び/またはモチーフ、内因性核酸結合分子に対するシュード受容体として作用するように設計された人工結合部位、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、そのような調節エレメントを含むポリヌクレオチドは、「センサー配列」を含むと称される。センサー配列の非限定的な例は、その内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0200261号に記載されている。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、リボ核酸(RNA)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))は、目的のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、さらに1つ以上のmiRNA結合部位(複数可)を含む。miRNA結合部位(複数可)の包含もしくは組込みは、天然に存在するmiRNAの組織特異的及び/または細胞型特異的な発現に基づいて、本開示のポリヌクレオチド、そして今度は、それからコードされるポリペプチドの調節を提供する。
miRNA、例えば、天然に存在するmiRNAは、ポリヌクレオチドに結合し、安定性を低下させることによってまたはポリヌクレオチドの翻訳を阻害することによって、遺伝子発現を下方制御する19〜25ヌクレオチド長の非コードRNAである。miRNA配列は、「シード」領域、すなわち成熟miRNAの2〜8位の領域内の配列を含む。miRNAシードは、成熟miRNAの2〜8位または2〜7位を含み得る。いくつかの実施形態では、miRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2〜8)を含んでもよく、ここで対応するmiRNA結合部位内のシード相補的部位には、miRNA位置1とは反対側のアデノシン(A)が隣接している。いくつかの実施形態では、miRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2〜7)を含んでもよく、ここで対応するmiRNA結合部位内のシード相補的部位には、miRNA位置1とは反対側のアデノシン(A)が隣接している。例えば、Grimson A,Farh KK,Johnston WK,Garrett−Engele P,Lim LP,Bartel DP;Mol Cell 2007 Jul 6;27(1):91−105を参照のこと。標的細胞または組織のmiRNAプロファイリングは、細胞または組織中のmiRNAの有無を決定するために行われ得る。いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、リボ核酸(RNA)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))は、1つ以上のマイクロRNA結合部位、マイクロRNA標的配列、マイクロRNA相補的配列、またはマイクロRNAシード相補的配列を含む。そのような配列は、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2005/0261218号及び米国特許出願公開第2005/0059005号に教示されているものなどの任意の既知のマイクロRNAに相当し得、例えば、それに対する相補性を有し得る。
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNA(miRNAまたはmiR)結合部位」という用語は、miRNAと相互作用、会合または結合するためにmiRNAの全部または領域に対する十分な相補性を有する、ポリヌクレオチド内、例えば、DNA内またはRNA転写物内の配列(5’UTR及び/または3’UTR中を含む)を指す。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドをコードするORFを含む本開示のポリヌクレオチドは、さらに1つ以上のmiRNA結合部位(複数可)を含む。例示的な実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、リボ核酸(RNA)、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))の5’UTR及び/または3’UTRは、1つ以上のmiRNA結合部位(複数可)を含む。
miRNAに対して十分な相補性を有するmiRNA結合部位は、ポリヌクレオチドのmiRNA媒介調節、例えば、ポリヌクレオチドのmiRNA媒介の翻訳抑制または分解を促進するのに十分な程度の相補性を指す。本開示の例示的な態様では、miRNAに対して十分な相補性を有するmiRNA結合部位は、ポリヌクレオチドのmiRNA媒介性分解、例えば、mRNAのmiRNA誘導型RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)媒介切断を促進するのに十分な程度の相補性を指す。miRNA結合部位は、例えば、19〜25ヌクレオチドのmiRNA配列、19〜23ヌクレオチドのmiRNA配列、または22ヌクレオチドのmiRNA配列に対して相補性を有し得る。miRNA結合部位は、miRNAの一部分のみに対して、例えば、天然に存在するmiRNA配列の全長の1、2、3、または4ヌクレオチド未満の部分に対して相補性であり得る。所望の調節がmRNA分解である場合、全もしくは完全相補性(例えば、天然に存在するmiRNAの長さの全部もしくはかなりの部分にわたる全相補性、または完全相補性)が好ましい。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNAシード配列と相補性(例えば、部分的または完全相補性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNAシード配列と完全な相補性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNA配列と相補性(例えば、部分的または完全相補性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNA配列と完全な相補性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNA配列と完全な相補性を有するが、1、2、または3個のヌクレオチド置換、末端付加、及び/または切断がある。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、対応するmiRNAと同じ長さである。他の実施形態では、miRNA結合部位は、5’末端、3’末端またはその両方において対応するmiRNAよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヌクレオチド(複数可)短い。さらに他の実施形態では、マイクロRNA結合部位は、5’末端、3’末端、またはその両方において、対応するマイクロRNAよりも2ヌクレオチド短い。対応するmiRNAよりも短いmiRNA結合部位は依然として、1つ以上のmiRNA結合部位を組み込んでいるmRNAを分解するか、またはmRNAの翻訳を妨げ得る。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、活性RISC含有Dicerの一部である対応する成熟miRNAに結合する。別の実施形態では、RISC中の対応するmiRNAへのmiRNA結合部位の結合は、miRNA結合部位を含むmRNAを分解するか、またはmRNAが翻訳されるのを妨げる。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNAに対して十分な相補性を有し、その結果、miRNAを含むRISC複合体は、miRNA結合部位を含むポリヌクレオチドを切断する。他の実施形態では、miRNA結合部位は、不完全な相補性を有し、その結果、miRNAを含むRISC複合体がmiRNA結合部位を含むポリヌクレオチドの不安定性を誘発する。別の実施形態では、miRNA結合部位は、不完全な相補性を有し、その結果、miRNAを含むRISC複合体がmiRNA結合部位を含むポリヌクレオチドの転写を抑制する。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、対応するmiRNAから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のミスマッチ(複数可)を有する。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、対応するmiRNAのそれぞれ、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、または少なくとも約21の連続ヌクレオチドに対して相補的な、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、または少なくとも約21の連続ヌクレオチドを有する。
1つ以上のmiRNA結合部位を本開示のポリヌクレオチドに操作することによって、問題のmiRNAが利用可能であるという条件下で、ポリヌクレオチドを分解または翻訳の減少の標的とし得る。これは、ポリヌクレオチドの送達に対するオフターゲット効果を減少し得る。例えば、本開示のポリヌクレオチドが組織または細胞に送達されることを意図しないが、最終的に前記組織または細胞であるならば、miRNAの1つまたは複数の結合部位が、ポリヌクレオチドの5’UTR及び/または3’UTRに操作される場合、組織または細胞に豊富に存在するmiRNAは、目的の遺伝子の発現を阻害し得る。
逆に、特定の組織におけるタンパク質発現を増大させるために、それらが天然に存在するポリヌクレオチド配列からmiRNA結合部位を除去し得る。例えば、特定のmiRNAの結合部位をポリヌクレオチドから除去して、miRNAを含む組織または細胞におけるタンパク質発現を改善し得る。
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、細胞傷害性または細胞保護性mRNA治療薬を、限定するものではないが、正常細胞及び/または癌性細胞などの特定の細胞に調節するために、5’UTR及び/または3’UTRに少なくとも1つのmiRNA結合部位を含み得る。別の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、5’−UTR及び/または3’−UTR内に2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のmiRNA結合部位を含み、細胞傷害性または細胞保護性mRNA治療薬を、限定されるものではないが、正常細胞及び/または癌性細胞などの特定の細胞に調節してもよい。
複数の組織における発現の調節は、1つ以上のmiRNA結合部位、例えば、1つ以上の異なるmiRNA結合部位の導入または除去によって達成され得る。miRNA結合部位を除去するかまたは挿入するかの決定は、miRNA発現パターン及び/または発生中の組織及び/または細胞及び/または疾患におけるそれらのプロファイリングに基づいて行ってもよい。miRNA、miRNA結合部位、ならびにそれらの発現パターン及び生物学における役割の同定が報告されている(例えば、Bonauer et al.,Curr Drug Targets 2010 11:943−949;Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171−176;Contreras and Rao Leukemia 2012 26:404−413(2011 Dec 20.doi:10.1038/leu.2011.356);Bartel Cell 2009 136:215−233;Landgraf et al.,Cell,2007 129:1401−1414;Gentner and Naldini,Tissue Antigens.2012 80:393−403及びその中の全ての引用文献;それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
miRNA及びmiRNA結合部位は、その各々が、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0200261号、同第2005/0261218号、及び同第2005/0059005号に記載されている非限定的な例を含む、任意の公知の配列に相当し得る。
miRNAがmRNAを調節し、それによってタンパク質発現を調節することが公知である組織の例としては、限定するものではないが、肝臓(miR−122)、筋肉(miR−133、miR−206、miR−208)、内皮細胞(miR−17−92、miR−126)、骨髄細胞(miR−142−3p、miR−142−5p、miR−16、miR−21、miR−223、miR−24、miR−27)、脂肪組織(let−7、miR−30c)、心臓(miR−1d、miR−149)、腎臓(miR−192、miR−194、miR−204)、及び肺上皮細胞(let−7、miR−133、miR−126)が挙げられる。
具体的には、miRNAは、免疫細胞(造血細胞とも呼ばれる)、例えば、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞及びマクロファージ)、マクロファージ、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞などにおいて示差的に発現されることが公知である。免疫細胞特異的miRNAは、免疫原性、自己免疫、感染に対する免疫応答、炎症、ならびに遺伝子治療及び組織/臓器移植後の望ましくない免疫応答に関与している。免疫細胞特異的miRNAはまた、造血細胞(免疫細胞)の発生、増殖、分化及びアポトーシスの多くの態様を調節する。例えば、miR−142及びmiR−146は、免疫細胞において排他的に発現され、特に骨髄性樹状細胞において豊富に発現される。ポリヌクレオチドに対する免疫応答は、miR−142結合部位をポリヌクレオチドの3’−UTRに付加することによって遮断され得、組織及び細胞におけるより安定な遺伝子導入を可能にすることが実証されている。miR−142は、抗原提示細胞中の外因性ポリヌクレオチドを効率的に分解し、そして形質導入細胞の細胞毒性除去を抑制する(例えば、各々が、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Annoni A et al.,blood,2009,114,5152−5161;Brown BD,et al.,Nat med.2006,12(5),585〜591;Brown BD,et al.,blood,2007,110(13):4144〜4152を参照のこと)。
抗原媒介免疫応答は、外来抗原によって引き起こされる免疫応答を指す場合があり、それは、生物に入ると、抗原提示細胞によって処理され、抗原提示細胞の表面に表示される。T細胞は、提示された抗原を認識し、そして抗原を発現する細胞の細胞傷害性除去を誘導し得る。
本開示のポリヌクレオチドの5’UTR及び/または3’UTRへのmiR−142結合部位の導入は、miR−142媒介分解を通して抗原提示細胞における遺伝子発現を選択的に抑制し、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)における抗原提示を制限し、それによって、ポリヌクレオチドの送達後、抗原媒介性免疫応答を妨げる。次いで、ポリヌクレオチドは、細胞傷害性排除を引き起こすことなく、標的組織または細胞において安定的に発現される。
一実施形態では、免疫細胞、特に抗原提示細胞において発現されることが知られているmiRNAの結合部位を、miRNA媒介RNA分解を通じて抗原提示細胞におけるポリヌクレオチドの発現を抑制するために本開示のポリヌクレオチドに操作してもよく、抗原媒介性の免疫応答を抑制する。ポリヌクレオチドの発現は、免疫細胞特異的miRNAが発現されていない非免疫細胞において維持される。例えば、いくつかの実施形態では、肝臓特異的タンパク質に対する免疫原性反応を防ぐために、任意のmiR−122結合部位を除去してもよく、miR−142(及び/またはmirR−146)結合部位を、本開示のポリヌクレオチドの5’UTR及び/または3’UTRに操作してもよい。
APC及びマクロファージにおける選択的分解及び抑制をさらに駆動するために、本開示のポリヌクレオチドは、単独で、またはmiR−142及び/またはmiR−146の結合部位と組み合わせて、5’UTR及び/または3’UTRにさらなる負の調節エレメントを含んでもよい。非限定的な例として、さらなる負の調節エレメントは、構成的減衰エレメント(Constitutive Decay Element)(CDE)である。
免疫細胞特異的miRNAとしては、限定するものではないが、hsa−let−7a−2−3p、hsa−let−7a−3p、hsa−7a−5p、hsa−let−7c、hsa−let−7e−3p、hsa−let−7e−5p、hsa−let−7g−3p、hsa−let−7g−5p、hsa−let−7i−3p、hsa−let−7i−5p、miR−10a−3p、miR−10a−5p、miR−1184、hsa−let−7f−−1−3p、hsa−let−7f−2−−5p、hsa−let−7f−5p、miR−125b−1−3p、miR−125b−2−3p、miR−125b−5p、miR−1279、miR−130a−3p、miR−130a−5p、miR−132−3p、miR−132−5p、miR−142−3p、miR−142−5p、miR−143−3p、miR−143−5p、miR−146a−3p、miR−146a−5p、miR−146b−3p、miR−146b−5p、miR−147a、miR−147b、miR−148a−5p、miR−148a−3p、miR−150−3p、miR−150−5p、miR−151b、miR−155−3p、miR−155−5p、miR−15a−3p、miR−15a−5p、miR−15b−5p、miR−15b−3p、miR−16−1−3p、miR−16−2−3p、miR−16−5p、miR−17−5p、miR−181a−3p、miR−181a−5p、miR−181a−2−3p、miR−182−3p、miR−182−5p、miR−197−3p、miR−197−5p、miR−21−5p、miR−21−3p、miR−214−3p、miR−214−5p、miR−223−3p、miR−223−5p、miR−221−3p、miR−221−5p、miR−23b−3p、miR−23b−5p、miR−24−1−5p、miR−24−2−5p、miR−24−3p、miR−26a−1−3p、miR−26a−2−3p、miR−26a−5p、miR−26b−3p、miR−26b−5p、miR−27a−3p、miR−27a−5p、miR−27b−3p、miR−27b−5p、miR−28−3p、miR−28−5p、miR−2909、miR−29a−3p、miR−29a−5p、miR−29b−1−5p、miR−29b−2−5p、miR−29c−3p、miR−29c−5p、miR−30e−3p、miR−30e−5p、miR−331−5p、miR−339−3p、miR−339−5p、miR−345−3p、miR−345−5p、miR−346、miR−34a−3p、miR−34a−5p、miR−363−3p、miR−363−5p、miR−372、miR−377−3p、miR−377−5p、miR−493−3p、miR−493−5p、miR−542、miR−548b−5p、miR548c−5p、miR−548i、miR−548j、miR−548n、miR−574−3p、miR−598、miR−718、miR−935、miR−99a−3p、miR−99a−5p、miR−99b−3p、及びmiR−99b−5pが挙げられる。さらに、新規なmiRNAは、マイクロアレイハイブリダイゼーション及びマイクロトーム分析を通じて免疫細胞において特定され得る(例えば、Jima DD et al,Blood,2010,116:e118−e127;Vaz C et al.,BMC Genomics,2010,11,288,その各々の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
肝臓で発現されることが知られているmiRNAとしては、限定するものではないが、miR−107、miR−122−3p、miR−122−5p、miR−1228−3p、miR−1228−5p、miR−1249、miR−129−5p、miR−1303、miR−151a−3p、miR−151a−5p、miR−152、miR−194−3p、miR−194−5p、miR−199a−3p、miR−199a−5p、miR−199b−3p、miR−199b−5p、miR−296−5p、miR−557、miR−581、miR−939−3p、及びmiR−939−5pが挙げられる。肝臓におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、任意の肝臓特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。肝臓特異的miRNA結合部位は、本開示のポリヌクレオチドにおいて、単独で、またはさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作され得る。
肺で発現されることが知られているmiRNAとしては、限定するものではないが、let−7a−2−3p、let−7a−3p、let−7a−5p、miR−126−3p、miR−126−5p、miR−127−3p、miR−127−5p、miR−130a−3p、miR−130a−5p、miR−130b−3p、miR−130b−5p、miR−133a、miR−133b、miR−134、miR−18a−3p、miR−18a−5p、miR−18b−3p、miR−18b−5p、miR−24−1−5p、miR−24−2−5p、miR−24−3p、miR−296−3p、miR−296−5p、miR−32−3p、miR−337−3p、miR−337−5p、miR−381−3p、及びmiR−381−5pが挙げられる。肺におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、任意の肺特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。肺特異的miRNA結合部位は、単独で、またはさらに本開示のポリヌクレオチド中の免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作してもよい。
心臓で発現されることが知られているmiRNAとしては、限定するものではないが、miR−1、miR−133a、miR−133b、miR−149−3p、miR−149−5p、miR−186−3p、miR−186−5p、miR−208a、miR−208b、miR−210、miR−296−3p、miR−320、miR−451a、miR−451b、miR−499a−3p、miR−499a−5p、miR−499b−3p、miR−499b−5p、miR−744−3p、miR−744−5p、miR−92b−3p、及びmiR−92b−5pが挙げられる。心臓におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、任意の心臓特異的マイクロRNA由来のmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。心臓特異的miRNA結合部位は、本開示のポリヌクレオチドにおいて、単独で、またはさらに免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作してもよい。
神経系で発現されることが公知であるmiRNAとしては、限定するものではないが、miR−124−5p、miR−125a−3p、miR−125a−5p、miR−125b−1−3p、miR−125b−2−3p、miR−125b−5p、miR−1271−3p、miR−1271−5p、miR−128、miR−132−5p、miR−135a−3p、miR−135a−5p、miR−135b−3p、miR−135b−5p、miR−137、miR−139−5p、miR−139−3p、miR−149−3p、miR−149−5p、miR−153、miR−181c−3p、miR−181c−5p、miR−183−3p、miR−183−5p、miR−190a、miR−190b、miR−212−3p、miR−212−5p、miR−219−1−3p、miR−219−2−3p、miR−23a−3p、miR−23a−5p、miR−30a−5p、miR−30b−3p、miR−30b−5p、miR−30c−1−3p、miR−30c−2−3p、miR−30c−5p、miR−30d−3p、miR−30d−5p、miR−329、miR−342−3p、miR−3665、miR−3666、miR−380−3p、miR−380−5p、miR−383、miR−410、miR−425−3p、miR−425−5p、miR−454−3p、miR−454−5p、miR−483、miR−510、miR−516a−3p、miR−548b−5p、miR−548c−5p、miR−571、miR−7−1−3p、miR−7−2−3p、miR−7−5p、miR−802、miR−922、miR−9−3p、及びmiR−9−5pが挙げられる。神経系で豊富なmiRNAとしてはさらに、限定するものではないが、miR−132−3p、miR−132−3p、miR−148b−3p、miR−148b−5p、miR−151a−3p、miR−151a−5p、miR−212−3p、miR−212−5p、miR−320b、miR−320e、miR−323a−3p、miR−323a−5p、miR−324−5p、miR−325、miR−326、miR−328、miR−922を含むニューロンで特異的に発現されるmiRNA、ならびに限定するものではないが、miR−1250、miR−219−1−3p、miR−219−2−3p、miR−219−5p、miR−23a−3p、miR−23a−5p、miR−3065−3p、miR−3065−5p、miR−30e−3p、miR−30e−5p、miR−32−5p、miR−338−5p、及びmiR−657を含むグリア細胞で特異的に発現されるmiRNAが挙げられる。任意のCNS特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、神経系におけるポリヌクレオチドの発現を調節するための本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。神経系特異的miRNA結合部位は、単独で操作されてもよいし、またはさらに本開示のポリヌクレオチド中の免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作されてもよい。
膵臓で発現されることが公知であるmiRNAとしては、限定するものではないが、miR−105−3p、miR−105−5p、miR−184、miR−195−3p、miR−195−5p、miR−196a−3p、miR−196a−5p、miR−214−3p、miR−214−5p、miR−216a−5p、miR−30a−3p、miR−33a−3p、miR−33a−5p、miR−375、miR−7−1−3p、miR−7−2−3p、miR−493−3p、miR−493−5p、及びmiR−944が挙げられる。任意の膵臓特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、膵臓におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。膵臓特異的miRNA結合部位は、単独で操作されてもよいし、またはさらに本開示のポリヌクレオチドにおいて免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作されてもよい。
腎臓で発現されることが知られているmiRNAとしては、限定するものではないが、miR−122−3p、miR−145−5p、miR−17−5p、miR−192−3p、miR−192−5p、miR−194−3p、miR−194−5p、miR−20a−3p、miR−20a−5p、miR−204−3p、miR−204−5p、miR−210、miR−216a−3p、miR−216a−5p、miR−296−3p、miR−30a−3p、miR−30a−5p、miR−30b−3p、miR−30b−5p、miR−30c−1−3p、miR−30c−2−3p、miR30c−5p、miR−324−3p、miR−335−3p、miR−335−5p、miR−363−3p、miR−363−5p、及びmiR−562が挙げられる。腎臓におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、任意の腎臓特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。腎臓特異的miRNA結合部位は、単独で、またはさらに本開示のポリヌクレオチド中の免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作してもよい。
筋肉内で発現されることが公知であるmiRNAとしては、限定するものではないが、let−7g−3p、let−7g−5p、miR−1、miR−1286、miR−133a、miR−133b、miR−140−3p、miR−143−3p、miR−143−5p、miR−145−3p、miR−145−5p、miR−188−3p、miR−188−5p、miR−206、miR−208a、miR−208b、miR−25−3p、及びmiR−25−5pが挙げられる。筋肉内のポリヌクレオチドの発現を調節するために、任意の筋肉特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。筋肉特異的miRNA結合部位は、単独で操作されてもよいし、またはさらに本開示のポリヌクレオチド中の免疫細胞(例えば、APC)miRNA結合部位と組み合わせて操作されてもよい。
miRNAはまた、限定するものではないが、内皮細胞、上皮細胞、及び脂肪細胞などの、異なる種類の細胞において示差的に発現される。
内皮細胞において発現されることが知られているmiRNAとしては、限定するものではないが、let−7b−3p、let−7b−5p、miR−100−3p、miR−100−5p、miR−101−3p、miR−101−5p、miR−126−3p、miR−126−5p、miR−1236−3p、miR−1236−5p、miR−130a−3p、miR−130a−5p、miR−17−5p、miR−17−3p、miR−18a−3p、miR−18a−5p、miR−19a−3p、miR−19a−5p、miR−19b−1−5p、miR−19b−2−5p、miR−19b−3p、miR−20a−3p、miR−20a−5p、miR−217、miR−210、miR−21−3p、miR−21−5p、miR−221−3p、miR−221−5p、miR−222−3p、miR−222−5p、miR−23a−3p、miR−23a−5p、miR−296−5p、miR−361−3p、miR−361−5p、miR−421、miR−424−3p、miR−424−5p、miR−513a−5p、miR−92a−1−5p、miR−92a−2−5p、miR−92a−3p、miR−92b−3p、及びmiR−92b−5pが挙げられる。多くの新規なmiRNAが、ディープシーケンシング分析から内皮細胞において発見されている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Voellenkle C et al.,RNA,2012,18、472−484)。任意の内皮細胞特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、内皮細胞におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。
上皮細胞において発現されることが知られているmiRNAとしては、限定するものではないが、let−7b−3p、let−7b−5p、miR−1246、miR−200a−3p、miR−200a−5p、miR−200b−3p、miR−200b−5p、miR−200c−3p、miR−200c−5p、miR−338−3p、miR−429、miR−451a、miR−451b、miR−494、miR−802及びmiR−34a、miR−34b−5p、miR−34c−5p、miR−449a、miR−449b−3p、miR−449b−5p(呼吸器繊毛上皮細胞に特異的)、let−7ファミリー、miR−133a、miR−133b、miR−126(肺上皮細胞に特異的)、miR−382−3p、miR−382−5p(腎臓上皮細胞に特異的)、及びmiR−762(角膜上皮細胞に特異的)が挙げられる。任意の上皮細胞特異的miRNA由来のmiRNA結合部位を、上皮細胞におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、本開示のポリヌクレオチドに導入してもよいし、またはそこから除去してもよい。
さらに、miRNAの大集団が胚性幹細胞に富んでおり、幹細胞の自己複製、ならびに神経細胞、心臓、造血細胞、皮膚細胞、骨形成原細胞及び筋肉細胞などの様々な細胞系列の発達及び/または分化を制御する(例えば、Kuppusamy KT et al.,Curr.Mol Med.2013,13(5),757−764;Vidigal JA and Ventura A,Semin Cancer Biol.2012,22(5−6),428−436;Goff LA et al.,PLoS One,2009,4:e7192;Morin RD et al.,Genome Res,2008,18,610−621;Yoo JK et al.,Stem−Cells Dev.2012,21(11),2049−2057(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。胚性幹細胞で豊富なmiRNAとしては限定するものではないが、let−7a−2−3p、let−a−3p、let−7a−5p、let7d−3p、let−7d−5p、miR−103a−2−3p、miR−103a−5p、miR−106b−3p、miR−106b−5p、miR−1246、miR−1275、miR−138−1−3p、miR−138−2−3p、miR−138−5p、miR−154−3p、miR−154−5p、miR−200c−3p、miR−200c−5p、miR−290、miR−301a−3p、miR−301a−5p、miR−302a−3p、miR−302a−5p、miR−302b−3p、miR−302b−5p、miR−302c−3p、miR−302c−5p、miR−302d−3p、miR−302d−5p、miR−302e、miR−367−3p、miR−367−5p、miR−369−3p、miR−369−5p、miR−370、miR−371、miR−373、miR−380−5p、miR−423−3p、miR−423−5p、miR−486−5p、miR−520c−3p、miR−548e、miR−548f、miR−548g−3p、miR−548g−5p、miR−548i、miR−548k、miR−548l、miR−548m、miR−548n、miR−548o−3p、miR−548o−5p、miR−548p、miR−664a−3p、miR−664a−5p、miR−664b−3p、miR−664b−5p、miR−766−3p、miR−766−5p、miR−885−3p、miR−885−5p、miR−93−3p、miR−93−5p、miR−941、miR−96−3p、miR−96−5p、miR−99b−3p及びmiR−99b−5pが挙げられる。多くの予測される新規のmiRNAが、ヒト胚性幹細胞におけるディープシーケンシングによって発見される(例えば、それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Morin RD et al.,Genome Res,2008,18,610−621;Goff LA et al.,PLoS One,2009,4:e7192;Bar M et al.,Stem cells,2008,26,2496−2505)。
一実施形態では、胚性幹細胞特異的miRNAの結合部位は、胚性幹細胞の発生及び/または分化を調節するために、変性条件(例えば、変性疾患)で幹細胞の老化を抑制するために、または疾患条件(例えば、がん幹細胞)において幹細胞の老化及びアポトーシスを刺激するために、本開示のポリヌクレオチドの3’UTRに含まれてもよいし、またはそこから除去されてもよい。
様々ながん細胞/組織及び他の疾患におけるmiRNAの示差的発現をプロファイルするために、多くのmiRNA発現研究が行われている。いくつかのmiRNAは、特定のがん細胞で異常に過剰発現され、他のものは過小発現されている。例えば、miRNAは、がん細胞(WO2008/154098、US2013/0059015号、US2013/0042333号、WO2011/157294);がん幹細胞(US2012/0053224号);膵臓のがん及び疾患(US2009/0131348号、US2011/0171646号、US2010/0286232号、US8389210号);喘息及び炎症(US8415096号);膵臓癌(US2013/0053264号);肝細胞癌(WO2012/151212、US2012/0329672号、WO2008/054828、US8252538号);肺癌細胞(WO2011/076143、WO2013/033640、WO2009/070653、US2010/0323357号);癌性T細胞リンパ腫(WO2013/011378);結腸直腸癌細胞(WO2011/0281756、WO2011/076142);癌陽性リンパ節(WO2009/100430、US2009/0263803号);鼻咽頭癌(EP2112235号);慢性閉塞性肺疾患(US2012/0264626号、US2013/0053263号);甲状腺癌(WO2013/066678);卵巣癌細胞(US2012/0309645号、WO2011/095623);乳癌細胞(WO2008/154098、WO2007/081740、US2012/0214699号)、白血病及びリンパ腫(WO2008/073915、US2009/0092974号、US2012/0316081号、US2012/0283310号、WO2010/018563)において示差的に発現され、その各々の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
非限定的な例として、特定のがん及び/または腫瘍細胞において過剰発現されるmiRNAのmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドの3’UTRから除去して、がん細胞において過剰発現されたmiRNAによって抑制された発現を回復させ、これによって、対応する生物学的機能、例えば、転写刺激及び/または抑制、細胞周期停止、アポトーシス及び細胞死を改善する。miRNAの発現がアップレギュレートされていない正常な細胞及び組織は、影響を受けないままである。
miRNAはまた、血管新生などの複雑な生物学的プロセス(例えば、miR−132)を調節し得る(Anand and Cheresh Curr Opin Hematol 2011 18:171−176)。本開示のポリヌクレオチドにおいて、そのようなプロセスに関与するmiRNA結合部位は、ポリヌクレオチドの発現を生物学的に関連する細胞型または関連する生物学的プロセスに合わせるために除去されても、または導入されてもよい。これに関連して、本開示のポリヌクレオチドは、栄養要求性ポリヌクレオチドとして定義される。
いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの治療ウィンドウ及び/または示差的発現(例えば、組織特異的発現)は、ポリペプチドをコードするmRNAへのmiRNA結合部位の組み込みによって改変され得る。一例では、mRNAは、1つの組織型において別の組織型と比較してより高い発現を有するmiRNAによって結合される1つ以上のmiRNA結合部位を含んでもよい。別の例では、mRNAは、同じ起源の組織の非癌性細胞と比較して、がん細胞においてより低い発現を有するmiRNAによって結合される1つ以上のmiRNA結合部位を含んでもよい。低レベルのそのようなmiRNAを発現するがん細胞中に存在する場合、mRNAによってコードされるポリペプチドは、典型的には発現の増大を示すであろう。
肝癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)は、通常、正常な肝細胞と比較して低レベルのmiR−122を発現する。したがって、少なくとも1つのmiR−122結合部位を含むポリペプチドをコードするmRNA(例えば、mRNAの3’−UTR内)は、通常、正常な肝細胞において比較的低レベルのポリペプチドを発現し、比較的高レベルのポリペプチドを肝癌細胞中で発現する。ポリペプチドが免疫原性細胞死を誘導し得る場合、これは、正常な肝細胞と比較して、肝臓癌細胞(例えば、肝細胞癌細胞)の優先的免疫原性細胞死滅を引き起こし得る。
いくつかの実施形態では、mRNAは、少なくとも1つのmiR−122結合部位、少なくとも2つのmiR−122結合部位、少なくとも3つのmiR−122結合部位、少なくとも4つのmiR−122結合部位、または少なくとも5つのmiR−122結合部位を含む。一態様では、miRNA結合部位は、miR−122に結合するか、またはmiR−122に相補的である。別の態様では、miRNA結合部位は、miR−122−3pまたはmiR−122−5pに結合する。特定の態様では、miRNA結合部位は、配列番号1326と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一のヌクレオチド配列を含み、ここでmiRNA結合部位はmiR−122に結合する。別の特定の態様では、miRNA結合部位は、配列番号26と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一のヌクレオチド配列を含み、ここでmiRNA結合部位は、miR−122に結合する。これらの配列を、下記表3に示す。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、miRNA結合部位を含み、miRNA結合部位は、表3から選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含み、任意の1つ以上のmiRNA結合部位配列の1つ以上のコピーを含む。いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、表3から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の同じまたは異なるmiRNA結合部位(任意の組み合わせを含む)をさらに含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miR−142に結合するか、またはmiR−142に相補的である。いくつかの実施形態では、miR−142は、配列番号27を含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miR−142−3pまたはmiR−142−5pに結合する。いくつかの実施形態では、miR−142−3p結合部位は、配列番号29を含む。いくつかの実施形態では、miR−142−5p結合部位は、配列番号31を含む。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、配列番号29または配列番号31と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、ポリヌクレオチドの任意の位置(例えば、5’UTR及び/または3’UTR)で本開示のポリヌクレオチドに挿入される。いくつかの実施形態では、5’UTRは、miRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態では、3’UTRは、miRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態では、5’UTR及び3’UTRは、miRNA結合部位を含む。ポリヌクレオチド中のmiRNA結合部位の挿入が、対応するmiRNAの非存在下で機能的ポリペプチドの翻訳を妨害しない限り、ポリヌクレオチド中の挿入部位はポリヌクレオチド中のどこにあってもよい;そして、miRNAの存在下で、ポリヌクレオチドへのmiRNA結合部位の挿入、及び対応するmiRNAへのmiRNA結合部位の結合は、ポリヌクレオチドを分解し得るかまたはポリヌクレオチドの翻訳を妨げ得る。
いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、ORFを含む本開示のポリヌクレオチド中のORFの終止コドンから下流の少なくとも約30ヌクレオチドに挿入される。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、本開示のポリヌクレオチド中のORFの終止コドンから、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、または少なくとも約100ヌクレオチド下流に挿入される。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、本開示のポリヌクレオチドにおいて、ORFの終止コドンから、約10ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド、約20ヌクレオチド〜約90ヌクレオチド、約30ヌクレオチド〜約80ヌクレオチド、約40ヌクレオチド〜約70ヌクレオチド、約50ヌクレオチド〜約60ヌクレオチド、約45ヌクレオチド〜約65ヌクレオチド下流に挿入される。
miRNA遺伝子調節は、miRNAを取り巻く配列、例えば、限定するものではないが、周囲の配列の種類、配列の種類(例えば、異種、同種、外因性、内因性、または人工)、周囲の配列中の調節エレメント及び/または周囲の配列中の構造エレメントなどの影響を受ける場合がある。miRNAは、5’UTR及び/または3’UTRによって影響を受ける場合がある。非限定的な例として、非ヒト3’UTRは、同じ配列型のヒト3’UTRと比較して、目的のポリペプチドの発現に対するmiRNA配列の調節効果を増大し得る。
一実施形態では、5’UTRの他の調節エレメント及び/または構造エレメントは、miRNA媒介遺伝子調節に影響し得る。調節エレメント及び/または構造エレメントの一例は、5’UTR中の構造化IRES(内部リボソーム進入部位)であり、これは翻訳延長因子の結合がタンパク質翻訳を開始するのに必要である。5’−UTRにおけるこの二次構造化エレメントへのEIF4A2の結合は、miRNA媒介遺伝子発現に必要である(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Meijer HA et al.,Science、2013年、340、82−85)。本開示のポリヌクレオチドは、マイクロRNA媒介遺伝子調節を増強するために、この構造化5’UTRをさらに含んでもよい。
少なくとも1つのmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドの3’UTRに操作してもよい。これに関連して、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、またはそれ以上のmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドの3’UTRに操作してもよい。例えば、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、2、または1つのmiRNA結合部位を、本開示のポリヌクレオチドの3’UTRに操作してもよい。一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれたmiRNA結合部位は、同じでもよいし、異なるmiRNA部位であってもよい。本開示のポリヌクレオチドに組み込まれた異なるmiRNA結合部位の組み合わせは、任意の異なるmiRNA部位の2つ以上のコピーが組み込まれている組み合わせを含み得る。別の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれたmiRNA結合部位は、体内の同じまたは異なる組織を標的とし得る。非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドの3’−UTRへの組織、細胞型、または疾患特異的miRNA結合部位の導入を通して、特定の細胞型における発現の程度(例えば、肝細胞、骨髄細胞、内皮細胞、がん細胞などを減らし得る。
一実施形態では、miRNA結合部位は、本開示のポリヌクレオチドにおける、3’UTRの5’末端付近、3’UTRの5’末端と3’末端との間のほぼ中間、及び/または3’UTRの3’末端付近に操作され得る。非限定的な例として、miRNA結合部位は、3’UTRの5’末端付近及び3’UTRの5’末端と3’末端との間のほぼ中間の位置に操作され得る。別の非限定的な例として、miRNA結合部位は、3’UTRの3’末端付近及び3’UTRの5’末端と3’末端との間のほぼ中間の位置に操作され得る。さらに別の非限定的な例として、miRNA結合部位は、3’UTRの5’末端付近及び3’UTRの3’末端付近に操作され得る。
別の実施形態では、3’UTRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のmiRNA結合部位を含み得る。miRNA結合部位は、miRNA、miRNAシード配列、及び/またはこのシード配列に隣接するmiRNA配列に対して相補的であり得る。
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、対象の異なる組織または異なる細胞型において発現される2つ以上のmiRNA部位を含むように操作され得る。非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドは、対象の肝臓及び腎臓におけるポリヌクレオチドの発現を調節するために、miR−192及びmiR−122を含むように操作され得る。別の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、同じ組織に対して2つ以上のmiRNA部位を含むように操作され得る。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関連する治療ウィンドウ及びまたは示差的発現は、miRNA結合部位を用いて改変され得る。例えば、死のシグナルを提供するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それらの細胞のmiRNAサインによってがん細胞においてより高度に発現されるように設計され得る。がん細胞が低レベルの特定のmiRNAを発現する場合、そのmiRNA(または複数のmiRNA)に対する結合部位をコードするポリヌクレオチドは、より高度に発現されるだろう。従って、死のシグナルを提供するポリペプチドは、がん細胞における細胞死を誘発または誘導する。同じmiRNAのより高い発現を有する隣接する非癌性細胞は、結合部位へのmiRNAの結合の効果、または3’UTR中にコードされた「センサー」に起因して、このポリヌクレオチドが低レベルで発現されるので、コードされた死シグナルによる影響が少ない。逆に、細胞生存または細胞保護シグナルは、miRNAが、がん細胞においてより高い発現を示す、がん及び非癌性細胞を含む組織に送達され得る−その結果、がん細胞に対するより低い生存シグナル及び正常細胞に対するより大きな生存シグナルが得られる。本明細書に記載のmiRNA結合部位の使用に基づいて、異なるシグナルを有する複数のポリヌクレオチドを設計して、投与してもよい。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドの発現は、少なくとも1つのセンサー配列をポリヌクレオチドに組み込むこと、及び、投与用のポリヌクレオチドを処方することによって制御され得る。非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドは、miRNA結合部位を組み込むこと、及び本明細書に記載の任意の脂質を含むカチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子中にこのポリヌクレオチドを処方することによって、組織または細胞に標的され得る。
本開示のポリヌクレオチドは、異なる組織、細胞型、または生物学的条件におけるmiRNAの発現パターンに基づいて、特定の組織、細胞型、または生物学的条件における、より標的化された発現のために操作され得る。組織特異的miRNA結合部位の導入を通じて、本開示のポリヌクレオチドは、組織もしくは細胞における、または生物学的条件の状況における最適なタンパク質発現のために設計され得る。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、公知のmiRNAシード配列に対して100%の同一性を有するか、またはmiRNAシード配列に対して100%未満の同一性を有するmiRNA結合部位を組み込むように設計され得る。いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、公知のmiRNAシード配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するmiRNA結合部位を組み込むように設計され得る。このmiRNAシード配列は、miRNA結合親和性を減少させるために部分的に変異されてもよく、それ自体ポリヌクレオチドの下方調節を減少させる。本質的に、miRNA結合部位とmiRNAシードとの間の一致または不一致の程度は、タンパク質発現を調節するmiRNAの能力をさらに微調整するためのレオスタットとして作用し得る。さらに、miRNA結合部位の非シード領域における変異はまた、タンパク質発現を調節するmiRNAの能力にも影響を及ぼし得る。
一実施形態では、miRNA配列を、ステムループのループに組み込んでもよい。
別の実施形態では、miRNAシード配列を、ステムループのループに組み込んでもよく、miRNA結合部位をステムループの5’または3’ステムに組み込んでもよい。
一実施形態では、翻訳エンハンサーエレメント(TEE)を、ステムループのステムの5’末端に組み込んでもよく、miRNAシードを、ステムループのステムに組み込んでもよい。別の実施形態では、TEEをステムループのステムの5’末端に組み込んでもよく、miRNAシードを、ステムループのステムに組み込んでもよく、miRNA結合部位をステムの3’末端に、またはステムループの後の配列に組み込んでもよい。miRNAシード及びmiRNA結合部位は、同じ及び/または異なるmiRNA配列に対するものであり得る。
一実施形態では、miRNA配列及び/またはTEE配列の組み込みは、翻訳を増大及び/または減少し得るステムループ領域の形状を変化させる。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kedde et al.,”A Pumilio−induced RNA structure switch in p27−3′UTR controls miR−221 and miR−22 accessibility.”Nature Cell Biology. 2010を参照のこと)。
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドの5’−UTRは、少なくとも1つのmiRNA配列を含み得る。miRNA配列は、限定するものではないが、19もしくは22ヌクレオチド配列及び/またはシードを含まないmiRNA配列であり得る。
一実施形態では、5’UTR中のmiRNA配列を使用して、本明細書に記載の開示のポリヌクレオチドを安定化し得る。
別の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドの5’UTR中のmiRNA配列を使用して、限定するものではないが、開始コドンなどの翻訳開始部位のアクセス性を低下させ得る。例えば、Matsuda et al.,PLoS One.2010 11(5):e15057(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。これは、開始コドン(AUGコドンのAが+1である場合、−4〜+37)の周りにアンチセンスロックド核酸(LNA)オリゴヌクレオチド及びエキソン接合複合体(EJC)を使用し、最初の開始コドン(AUG)へのアクセス性を低下させる。Matsudaは、LNAまたはEJCを用いて開始コドン周辺の配列を変更することが、ポリヌクレオチドの効率、長さ及び構造安定性に影響を及ぼすことを示した。本開示のポリヌクレオチドは、翻訳開始部位へのアクセス性を減少させるために、翻訳開始部位の近くに、Matsudaらによって記載されたLNAまたはEJC配列の代わりに、miRNA配列を含んでもよい。翻訳開始部位は、miRNA配列の前であっても、後であっても、または内部であってもよい。非限定的な例として、翻訳開始部位は、シード配列または結合部位などのmiRNA配列内に位置してもよい。別の非限定的な例として、翻訳開始部位は、シード配列またはmir−122結合部位などのmiR−122配列内に位置してもよい。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、抗原提示細胞による抗原提示を抑制するために少なくとも1つのmiRNAを含んでもよい。miRNAは、完全なmiRNA配列、miRNAシード配列、シードなしのmiRNA配列、またはそれらの組み合わせであってもよい。非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれたmiRNAは、造血系に特異的であり得る。別の非限定的な例として、抗原提示を抑えるために本開示のポリヌクレオチドに組み込まれたmiRNAは、miR−142−3pである。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、目的の組織または細胞におけるコードされたポリペプチドの発現を抑制するために少なくとも1つのmiRNAを含み得る。非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドは、肝臓における目的のコードされたポリペプチドの発現を抑制するために、少なくとも1つのmiR−122結合部位を含み得る。別の非限定的な例として、本開示のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのmiR−142−3p結合部位、miR−142−3pシード配列、シードなしのmiR−142−3p結合部位、miR−142−5p結合部位、miR−142−5pシード配列、シードなしのmiR−142−5p結合部位、miR−146結合部位、miR−146シード配列及び/またはシード配列なしのmiR−146結合部位を含み得る。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、治療的送達によって引き起こされる望ましくない免疫原性反応を抑えるために免疫細胞中のmRNA治療薬を選択的に分解するために、3’UTR中に少なくとも1つのmiRNA結合部位を含み得る。非限定的な例として、miRNA結合部位は、抗原提示細胞において本開示のポリヌクレオチドをより不安定にする可能性がある。これらのmiRNAの非限定的な例としては、mir−142−5p、mir−142−3p、mir−146a−5p、及びmir−146−3pが挙げられる。
一実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、RNA結合タンパク質と相互作用し得るポリヌクレオチドの領域内に、少なくとも1つのmiRNA配列を含む。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、RNA、例えば、mRNA)は、(i)配列最適化ヌクレオチド配列(例えば、ORF)及び(ii)miRNA結合部位(例えば、miR−142と結合するmiRNA結合部位)を含む。
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、本明細書に開示のポリペプチドをコードするウラシル修飾配列、及び本明細書に開示のmiRNA結合部位、例えば、miR−142に結合するmiRNA結合部位を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードするウラシル修飾配列は、少なくとも1つの化学修飾核酸塩基、例えば、5−メトキシウラシルを含む。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドをコードするウラシル修飾配列中の少なくとも95%の種類の核酸塩基(例えば、ウラシル)が修飾核酸塩基である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードするウラシル修飾配列中の少なくとも95%のウリシルは、5−メトキシウリジンである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列及びmiRNA結合部位を含むポリヌクレオチドが、送達剤、例えば、式(I)を有する化合物、例えば、化合物1〜147のいずれかと共に処方される。
機能的RNAエレメントを含む修飾ポリヌクレオチド
本開示は、修飾(例えば、RNAエレメント)を含む合成ポリヌクレオチドを提供し、ここで修飾は所望の翻訳調節活性を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、5’非翻訳領域(UTR)、開始コドン、ポリペプチドをコードする全オープンリーディングフレーム、3’UTR、及び少なくとも1つの修飾を含むポリヌクレオチドを提供し、ここでこの少なくとも1つの修飾は、所望の翻訳調節活性、例えば、mRNA翻訳の翻訳忠実度を促進及び/または増強する修飾を提供する。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、シス作用調節活性である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、開始コドンにおける、またはその近くの43S開始前複合体(PIC)またはリボソームの滞留時間の増大である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、開始コドンにおける、または開始コドンからのポリペプチド合成の開始の増大である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、完全オープンリーディングフレームから翻訳されたポリペプチドの量の増大である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、PICまたはリボソームによる開始コドンの解読の忠実度の増大である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、PICまたはリボソームによるリーキースキャニングの阻害または低減である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、PICまたはリボソームによる開始コドンの解読速度の低下である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、開始コドン以外のmRNA内の任意のコドンにおけるポリペプチド合成の開始の阻害または減少である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、完全オープンリーディングフレーム以外のmRNA内の任意のオープンリーディングフレームから翻訳されたポリペプチドの量の阻害または減少である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、異常な翻訳産物の産生の阻害または減少である。いくつかの実施形態では、所望の翻訳調節活性は、前述の翻訳調節活性のうちの1つ以上の組み合わせである。
したがって、本開示は、本明細書に記載の所望の翻訳調節活性を提供する、配列及び/またはRNA二次構造(複数可)を含むRNA要素を含むポリヌクレオチド、例えば、mRNAを提供する。いくつかの態様では、mRNAは、mRNA翻訳の翻訳忠実度を促進及び/または増強する、配列及び/またはRNA二次構造(複数可)を含むRNAエレメントを含む。いくつかの態様では、mRNAは、リーキースキャニングの阻害及び/または低減などの所望の翻訳調節活性を提供する、配列及び/またはRNA二次構造(複数可)を含むRNAエレメントを含む。いくつかの態様では、本開示は、リーキースキャニングを阻害及び/または低減し、それによってmRNAの翻訳忠実度を促進する、配列及び/またはRNA二次構造(複数可)を含むRNAエレメントを含むmRNAを提供する。
いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、天然及び/または修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、本明細書に記載されるように所望の翻訳調節活性を提供する、連結ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含む。いくつかの実施形態では、RNAエレメントは、安定なRNA二次構造を形成または折り畳む連結ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含み、ここでRNA二次構造は、本明細書に記載の所望の翻訳調節活性を提供する。RNAエレメントは、そのエレメントの一次配列(例えば、GCリッチエレメント)に基づいて、そのエレメントによって形成されるRNA二次構造(例えば、ステムループ)によって、RNA分子内のエレメントの位置によって(例えば、mRNAの5’UTR内に位置する)、エレメント(例えば、「翻訳エンハンサーエレメント」)の生物学的機能及び/または活性によって、ならびにそれらの任意の組み合わせによって、同定されてもよく、及び/または特徴付けされてもよい。
いくつかの態様では、本開示は、リーキースキャニングを阻害するか、及び/またはmRNA翻訳の翻訳忠実度を促進する1つ以上の構造修飾を有するmRNAを提供し、ここで構造修飾の少なくとも1つはGCリッチRNAエレメントである。いくつかの態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列に先行する、連結ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントである。一実施形態では、GCリッチのRNAエレメントは、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2、または約1ヌクレオチド(複数可)上流に位置する。別の実施形態では、GCリッチのRNAエレメントは、Kozakコンセンサス配列の15〜30、15〜20、15〜25、10〜15、または5〜10ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、GCリッチのRNAエレメントは、mRNAの5’UTR内のKozakコンセンサス配列に直接隣接して位置する。
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、任意の順序で連結された、3〜30、5〜25、10〜20、15〜20、約20、約15、約12、約10、約7、約6または約3ヌクレオチドの配列、それらの誘導体または類似体を含むGCリッチのRNAエレメントを提供し、ここで、この配列組成は、70〜80%シトシン、60〜70%シトシン、50%〜60%シトシン、40〜50%シトシン、30〜40%シトシン塩基である。前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、任意の順序で連結された、3〜30、5〜25、10〜20、15〜20、約20、約15、約12、約10、約7、約6または約3ヌクレオチドの配列、それらの誘導体または類似体を含むGCリッチのRNAエレメントを提供し、ここで、この配列組成は、約80%シトシン、約70%シトシン、約60%シトシン、約50%シトシン、約40%シトシン、または約30%シトシンである。
任意の前述のまたは関連の態様では、本開示は、任意の順序で連結された、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4もしくは3ヌクレオチドの配列、またはそれらの誘導体または類似体を含むGCリッチのRNAエレメントを提供し、ここで、この配列組成は、70〜80%シトシン、60〜70%シトシン、50%〜60%シトシン、40〜50%シトシン、または30〜40%シトシンである。任意の前述のまたは関連の態様では、本開示は、任意の順序で連結された、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4もしくは3ヌクレオチドの配列、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含むGCリッチのRNAエレメントを提供し、ここで、この配列組成は、約80%シトシン、約70%シトシン、約60%シトシン、約50%シトシン、約40%シトシン、または約30%シトシンである。
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列に先行する、連結ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントであり、このGCリッチのRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2、または約1ヌクレオチド(複数可)上流に位置し、ここで、このGCリッチのRNAエレメントは、任意の順序で連結された、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20ヌクレオチドの配列、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含み、ここでこの配列組成は>50%シトシンである。いくつかの実施形態では、配列組成は、>55%シトシン、>60%シトシン、>65%シトシン、>70%シトシン、>75%シトシン、>80%シトシン、>85%シトシン、または>90%シトシンである。
他の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列に先行する、連結ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントであり、ここで、GCリッチのRNAエレメントは、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2、または約1ヌクレオチド(複数可)上流に位置し、ここで、このGCリッチRNAエレメントは、約3〜30、5〜25、10〜20、15〜20または約20、約15、約12、約10、約6もしくは約3ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含み、ここで、この配列は反復GCモチーフを含み、ここでこの反復GCモチーフは[CCG]nであり、ここでn=1〜10、n=2〜8、n=3〜6、またはn=4〜5である。いくつかの実施形態では、配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、ここでn=1、2、3、4または5である。いくつかの実施形態では、この配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、ここでn=1、2または3である。いくつかの実施形態では、この配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、ここでn=1である。いくつかの実施形態では、この配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、ここでn=2である。いくつかの実施形態では、この配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、ここでn=3である。いくつかの実施形態では、この配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、ここでn=4(配列番号1384)である。いくつかの実施形態では、この配列は、反復GCモチーフ[CCG]nを含み、n=5(配列番号1382)である。
別の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列に先行する、連結ヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントであり、このGCリッチRNAエレメントは、表4に記載の配列のいずれか1つを含む。一実施形態では、GCリッチRNAエレメントは、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、約5、約4、約3、約2、または約1ヌクレオチド(複数可)上流に位置する。別の実施形態では、GCリッチのRNAエレメントは、Kozakコンセンサス配列の約15〜30、15〜20、15〜25、10〜15、または5〜10ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、GCリッチのRNAエレメントは、mRNAの5’UTR内のKozakコンセンサス配列に直接隣接して位置する。
他の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列に先行する、表4に記載の配列V1[CCCCGGCGCC](配列番号1383)、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントである。いくつかの実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTR内のKozakコンセンサス配列の上流に直接隣接して位置する表4に記載の配列V1を含む。いくつかの実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTRのKozakコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基上流に位置する、表4に記載の配列V1を含む。他の実施形態では、GCリッチのエレメントは、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列の1〜3、3〜5、5〜7、7〜9、9〜12、または12〜15塩基上流に位置する表4に記載の配列V1を含む。
他の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列に先行する、表4に記載の配列V2[CCCCGGC]、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントである。いくつかの実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTR内のKozakコンセンサス配列の上流に直接隣接して位置する表4に記載の配列V2を含む。いくつかの実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基上流に位置する表4に記載の配列V2を含む。他の実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列の1〜3、3〜5、5〜7、7〜9、9〜12、または12〜15塩基上流に位置する表4に記載の配列V2を含む。
他の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列に先行する、表4に記載の配列EK[GCCGCC]、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントである。いくつかの実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTR内のKozakコンセンサス配列の上流に直接隣接して位置する表4に記載の配列EKを含む。いくつかの実施形態では、GCリッチのエレメントは、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基上流に位置する表4に記載の配列EKを含む。他の実施形態では、GCリッチエレメントは、mRNAの5’UTR中のKozakコンセンサス配列の1〜3、3〜5、5〜7、7〜9、9〜12、または12〜15塩基上流に位置する表4に記載の配列EKを含む。
さらに他の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで少なくとも1つの修飾は、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列に先行する、表4に記載の配列V1[CCCCGGCGCC](配列番号1383)、またはその誘導体もしくは類似体を含むGCリッチRNAエレメントであり、ここでこの5’UTRは、表4に示される以下の配列を含む:
GGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGA(配列番号1384)。
いくつかの実施形態では、GCリッチエレメントは、表4に示す5’UTR配列内のKozakコンセンサス配列の上流に直接隣接して位置する表4に記載の配列V1を含む。いくつかの実施形態では、このGCリッチエレメントは、mRNAの5’UTRにおけるKozakコンセンサス配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基上流に位置する表4に記載の配列V1を含み、ここでこの5’UTRは、表4に示す以下の配列を含む:
GGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGA(配列番号1384)。
他の実施形態では、GCリッチのエレメントは、mRNAの5’UTR中にKozakコンセンサス配列の1〜3、3〜5、5〜7、7〜9、9〜12、または12〜15塩基上流に位置する表4に記載の配列V1を含み、ここで5’UTRは、表4に示す以下の配列を含む:
GGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGA(配列番号1384)。
いくつかの実施形態では、この5’UTRは、表4に示される以下の配列を含む:
GGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGACCCCGGCGCCGCCACC(配列番号1385)
いくつかの実施形態では、この5’UTRは、表4に示される以下の配列を含む:
GGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGACCCCGGCGCCACC(配列番号1386)。
別の態様では、本開示は、少なくとも1つの修飾を含む修飾mRNAを提供し、ここで、少なくとも1つの修飾は、ヘアピンまたはステムループを形成する、ある順番で連結されたヌクレオチドの配列、またはその誘導体もしくは類似体を含む安定なRNA二次構造を含むGCリッチRNAエレメントである。一実施形態では、安定なRNA二次構造は、Kozakコンセンサス配列の上流にある。別の実施形態では、安定なRNA二次構造は、Kozakコンセンサス配列の約30、約25、約20、約15、約10、または約5ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、安定なRNA二次構造は、Kozakコンセンサス配列の約20、約15、約10、または約5ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、安定なRNA二次構造は、Kozakコンセンサス配列の約5、約4、約3、約2、約1ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、安定なRNA二次構造は、Kozakコンセンサス配列の約15〜30、約15〜20、約15〜25、約10〜15、または約5〜10ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、安定なRNA二次構造は、Kozakコンセンサス配列の12〜15ヌクレオチド上流に位置する。別の実施形態では、安定なRNA二次構造は、約−30kcal/mol、約−20〜−30kcal/mol、約−20kcal/mol、約−10〜−20kcal/mol、約−10kcal/mol、約−5〜−10kcal/molのデルタGを有する。
別の実施形態では、修飾はポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームに機能的に連結されており、ここで修飾とオープンリーディングフレームとは異種である。
別の実施形態では、GCリッチのRNAエレメントの配列は、グアニン(G)及びシトシン(C)核酸塩基のみから構成される。
本明細書中に記載されるような所望の翻訳調節活性を提供するRNAエレメントは、リボソームプロファイリングのような公知の技術を用いて同定されそして特徴付けられ得る。リボソームプロファイリングは、mRNAに結合したPIC及び/またはリボソームの位置の決定を可能にする技術である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるIngolia et al.,(2009)Science 324(5924):218〜23を参照のこと)。この技術は、ヌクレアーゼ消化から、PIC及び/またはリボソームによって、mRNAの領域またはセグメントを保護することに基づいている。保護により、「フットプリント」と呼ばれる30bpのRNA断片が生成される。RNAフットプリントの配列及び頻度は、当該分野で公知の方法(例えば、RNA−seq)によって分析され得る。フットプリントは、リボソームのA部位にほぼ中心がある。PICまたはリボソームが、mRNAに沿った特定の場所または位置に滞留する場合、これらの位置に生じるフットプリントは比較的一般的であろう。PIC及び/またはリボソームが加工性の低下を示す場所でより多くのフットプリントが生成し、PIC及び/またはリボソームが加工性の増大を示す位置でより少ないフットプリントが生成されることが、研究により示されている(Gardin et al.,(2014)eLife 3:e03735)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAエレメントのうちの任意の1つ以上を含むポリヌクレオチドに沿った別々の場所または位置でのPICまたはリボソームの滞留時間または占有時間は、リボソームプロファイリングによって決定される。
送達ビヒクル
概要
本開示のmRNAは、例えば、対象に送達されたときにそれらを分解から保護するために、ナノ粒子または他の送達ビヒクル中に処方され得る。例示的なナノ粒子は、Panyam、J.&Labhasetwar,V.Adv.Drug Deliv.Rev.55,329−347(2003)及びPeer,D. et al.Nature Nanotech.2,751−760(2007)に記載されている。特定の実施形態では、本開示のmRNAは、ナノ粒子内に封入されている。特定の実施形態では、ナノ粒子は、1000nM以下、500nM以下、または100nM以下の少なくとも1つの寸法(例えば、直径)を有する粒子である。特定の実施形態では、ナノ粒子は脂質を含む。脂質ナノ粒子としては、限定するものではないが、リポソーム及びミセルが挙げられる。カチオン性及び/またはイオン性脂質、アニオン性脂質、中性脂質、両親媒性脂質、PEG化脂質、及び/または構造脂質を含む、任意の数の脂質が存在し得る。そのような脂質は、単独で使用されてもよいし、または組み合わせて使用されてもよい。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の1つ以上のmRNAを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNAの脂質ナノ粒子製剤は、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)のカチオン性及び/またはイオン性脂質を含み得る。そのようなカチオン性及び/またはイオン性脂質としては、限定するものではないが、3−(ジドデシルアミノ)−N1,N1,4−トリドデシル−1−ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1−[2−(ジドデシルアミノ)エチル]−N1,N4,N4−トリドデシル−1,4−ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25−ジトリデシル−15,18,21,24−テトラアザ−オクタトリアコンタン(KL25)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLin−DMA)、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)、ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル4−(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin−MC3−DMA)、2,2−ジリノレイル−4−(2−ジメチルアミノエチル)−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)、2−({8−[(3β)−コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(Octyl−CLinDMA)、(2R)−2−({8−[(3β)−コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(オクチル−CLinDMA(2R))、(2S)−2−({8−[(3β)−コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(Octyl−CLinDMA(2S))、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−−N−トリエチルアンモニウムクロライド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(「DOTAP」);1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパン塩化物塩(「DOTAP.Cl」);3−β−(N−−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチル−アンモニウム トリフルオロアセテート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、及びN−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が挙げられる。さらに、カチオン性脂質及び/またはイオン性脂質の多数の市販の調製物、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(例としては、GIBCO/BRLから入手可能なDOTMA及びDOPE)、及びLIPOFECTAMINE(登録商標)(例としては、GIBCO/BRLから入手可能なDOSPA及びDOPE)などが用いられ得る。KL10、KL22、及びKL25は、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第8,691,750号に記載される。特定の実施形態では、その脂質は、DLin−MC3−DMAまたはDLin−KC2−DMAである。
本開示の脂質ナノ粒子に使用するのに適したアニオン性脂質としては、限定するものではないが、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、及び中性脂質に結合された他のアニオン性飾基基が挙げられる。
本開示の脂質ナノ粒子での使用に適した中性脂質としては、限定するものではないが、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。様々な鎖長及び飽和度の様々なアシル鎖基を有する脂質が入手可能であるか、または周知の技術によって単離されても、もしくは合成されてもよい。さらに、飽和及び不飽和脂肪酸鎖の混合物を有する脂質を使用してもよい。いくつかの実施形態では、本開示において使用される中性脂質は、DOPE、DSPC、DPPC、POPC、または任意の関連ホスファチジルコリンである。いくつかの実施形態では、中性脂質は、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、またはセリン及びイノシトールなどの他の頭部基を有するリン脂質から構成され得る。
いくつかの実施形態では、両親媒性脂質は、本開示のナノ粒子に含まれる。本開示のナノ粒子における使用に適した例示的な両親媒性脂質としては、限定するものではないが、スフィンゴ脂質、リン脂質、及びアミノ脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、リン脂質は、以下からなる群より選択される:
1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−ホスホコリン(DMPC)、
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、
1,2−ジウンデカノイル−sn−グリセロ−ホスホコリン(DUPC)、
1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、
1,2−ジ−O−オクタデセニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、
1−オレオイル−2−コレステリルヘミスクシノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(OChemsPC)、
1−ヘキサデシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(C16 Lyso PC)、
1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、
1,2−ジアラクドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、
1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセリン−3−ホスホコリン、
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジフタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
1,2−ジアラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、及びスフィンゴミエリン。他のリン欠失化合物、例えば、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、及びβ−アシルオキシ酸も使用されてもよい。さらに、そのような両親媒性脂質は、トリグリセリド及びステロールなどの他の脂質と容易に混合され得る。
いくつかの実施形態では、本開示のナノ粒子の脂質構成要素は、1つ以上のPEG化脂質を含み得る。PEG化脂質(PEG脂質またはPEG修飾脂質とも呼ばれる)は、ポリエチレングリコールで修飾された脂質である。脂質構成要素は、1つ以上のPEG化脂質を含んでもよい。PEG化脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、及びPEG修飾ジアルキルグリセロールからなる非限定的な群より選択され得る。例えば、PEG化脂質は、PEG−c−DOMG、PEG−DMG、PEG−DLPE、PEG−DMPE、PEG−DPPC、またはPEG−DSPE脂質であってもよい。
本開示の脂質ナノ粒子は、1つ以上の構造脂質を含んでもよい。本開示の脂質ナノ粒子中に存在し得る例示的で非限定的な構造脂質としては、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、またはα−トコフェロールが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本開示の1つ以上のmRNAは、約1nm〜約900nm、例えば、約1nm〜約100nm、約1nm〜約200nm、約1nm〜約300nm、約1nm〜約400nm、約1nm〜約500nm、約1nm〜約600nm、約1nm〜約700nm、約1nm〜約800nm、約1nm〜約900nmの直径を有する脂質ナノ粒子に処方してもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約10nm〜約300nm、約20nm〜約200nm、約30nm〜約100nm、または約40nm〜約80nmの直径を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約30nm〜約300nm、約40nm〜約200nm、約50nm〜約150nm、約70〜約110nm、または約80nm〜約120nmの直径を有してもよい。一実施形態では、mRNAは、限定するものではないが、約10〜約20nm、約10〜約30nm、約10〜約40nm、約10〜約50nm、約10〜約60nm、約10〜約70nm、約10〜約80nm、約10〜約90nm、約20〜約30nm、約20〜約40nm、約20〜約50nm、約20〜約60nm、約20〜約70nm、約20〜約80nm、約20〜約90nm、約20〜約100nm、約30〜約40nm、約30〜約50nm、約30〜約60nm、約30〜約70nm、約30〜約80nm、約30〜約90nm、約30〜約100nm、約40〜約50nm、約40〜約60nm、約40〜約70nm、約40〜約80nm、約40〜約90nm、約40〜約100nm、約50〜約60nm、約50〜約70nm、約50〜約80nm、約50〜約90nm、約50〜約100nm、約60〜約70nm、約60〜約80nm、約60〜約90nm、約60〜約100nm、約70〜約80nm、約70〜約90nm、約70〜約100nm、約80〜約90nm、約80〜約100nm、及び/または約90〜約100nmなどの間の範囲を含む約10〜約100nmの直径を有する脂質ナノ粒子に処方してもよい。一実施形態では、mRNAは、約30nm〜約300nm、約40nm〜約200nm、約50nm〜約150nm、約70nm〜約110nm、または約80nm〜約120nm、例としてはその間の範囲の直径を有する脂質ナノ粒子に処方されてもよい。
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、100nm超、150nm超、200nm超、250nm超、300nm超、350nm超、400nm超、450nm超、500nm超、550nm超、600nm超、650nm超、700nm超、750nm超、800nm超、850nm超、900nm超、または950超の直径を有してもよい。
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の粒径は、増大しても、及び/または減少してもよい。粒径の変化は、それだけには限らないが炎症などの生物学的反応に対抗するのを助けることができ、または患者もしくは対象に送達されるmRNAの生物学的効果を増大し得る。
特定の実施形態では、細胞型及び/または組織型に特異的な標的化部分を用いて、本開示のナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子を標的化することが望ましい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、標的化部分を用いて特定の細胞、組織、及び/または臓器に標的化されてもよい。特定の実施形態では、ナノ粒子は、本明細書に記載の1つ以上のmRNA及び標的部分を含む。例示的な非限定的標的化部分は、リガンド、細胞表面受容体、糖タンパク質、ビタミン(例えば、リボフラビン)及び抗体(例えば、全長抗体、抗体断片(例えば、Fv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、またはF(ab’)2断片)、単一ドメイン抗体、ラクダ抗体及びその断片、ヒト抗体及びその断片、モノクローナル抗体、及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体))を含む。いくつかの実施形態では、標的化部分はポリペプチドであってもよい。標的化部分は、ポリペプチド全体(例えば、ペプチドまたはタンパク質)またはそれらの断片を含んでもよい。標的化部分は、典型的には、標的化部分が標的、例えば、細胞表面受容体との相互作用に利用可能であるような方式で、ナノ粒子の外面に配置される。種々の異なる標的化部分及び方法は、例えば、Sapra et al.,Prog.Lipid Res.42(5):439−62,2003及びAbra et al.,J.Liposome Res.12:1−3,2002に記載のものを含み、当該分野で公知かつ利用可能である。
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子(例えば、リポソーム)は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖などの親水性ポリマー鎖の表面コーティングを含んでもよい(例えば、Allen et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1237:99−108,1995;DeFrees et al.,Journal of the American Chemistry Society 118:6101−6104,1996;Blume et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1149:180−184,1993;Klibanov et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334,1992;米国特許第5,013,556号;Zalipsky,Bioconjugate Chemistry 4:296−299,1993;Zalipsky,FEBS Letters 353:71−74,1994;Zalipsky,in Stealth Liposomes Chapter 9(Lasic and Martin,Eds)CRC Press,Boca Raton Fla.,1995を参照のこと)。1つのアプローチでは、脂質ナノ粒子を標的とするための標的部分を、ナノ粒子を形成する脂質の極性頭部基に結合させる。別のアプローチでは、標的化部分は、親水性ポリマーコーティングを形成するPEG鎖の遠位端に結合される(例えば、Klibanov et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334,1992;Kirpotin et al.,FEBS Letters 388:115−118,1996を参照のこと)。
標的化部分(複数可)を結合するための標準的な方法が使用され得る。例えば、標的化部分の結合のために活性化され得るホスファチジルエタノールアミン、または誘導体化親油性化合物、例えば、脂質誘導体化ブレオマイシンを使用してもよい。抗体標的化リポソームは、例えば、プロテインAを組み込んだリポソームを用いて構築され得る(例えば、Renneisen et al.,J.Bio.Chem.、265:16337−16342,1990及びLeonetti et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),87:2448−2451,1990を参照のこと)。抗体コンジュゲーションの他の例は、米国特許第6,027,726号に開示されている。標的化部分の例としてはまた、新生物または腫瘍に関連する抗原を含む、細胞構成要素に特異的な他のポリペプチドが挙げられる。標的化部分として使用されるポリペプチドは、共有結合を介してリポソームに結合してもよい(例えば、Heath,Covalent Attachment of Proteins to Liposomes,149 Methods in Enzymology 111−119(Academic Press,Inc.1987)を参照のこと)。他の標的化方法としては、ビオチン−アビジン系が挙げられる。
いくつかの実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子としては、限定するものではないが、肝細胞、結腸細胞、上皮細胞、造血細胞、上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉系細胞、神経細胞、心臓細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑膜細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、及び腫瘍細胞(原発性腫瘍細胞及び転移性腫瘍細胞を含む)を含む細胞に脂質ナノ粒子を標的化する標的化部分が挙げられる。特定の実施形態では、標的化部分は、脂質ナノ粒子を肝細胞に標的化する。他の実施形態では、標的化部分は脂質ナノ粒子を結腸細胞に標的化する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、脂質ナノ粒子を肝臓がん細胞(例えば、肝細胞がん細胞)または結腸直腸がん細胞(例えば、原発腫瘍または転移)に標的化する。
脂質ナノ粒子
一組の実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)が提供される。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン性脂質、構造脂質、リン脂質、及び1つ以上のmRNAを含む脂質を含む。本明細書に記載の各LNPは、本明細書に記載のmRNAの製剤として使用され得る。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン性脂質、構造脂質、リン脂質、PEG修飾脂質、及び1つ以上のmRNAを含む。いくつかの実施形態では、LNPは、イオン性脂質、PEG修飾脂質、ステロール及びリン脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約20〜60%のイオン性脂質:約5〜25%のリン脂質:約25〜55%のステロール;及び約0.5〜15%のPEG修飾脂質というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約50%のイオン性脂質、約1.5%のPEG修飾脂質、約38.5%のコレステロール、及び約10%のリン脂質というモル比を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約55%のイオン性脂質、約2.5%のPEG脂質、約32.5%のコレステロール、及び約10%のリン脂質というモル比を含む。いくつかの実施形態では、イオン性脂質は、イオン性アミノまたはカチオン性脂質であり、中性脂質は、リン脂質であり、ステロールはコレステロールである。いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5というイオン性脂質:コレステロール:DSPC(1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン):PEG−DMGのモル比を有する。
a.イオン性脂質
本開示は、有利な性質を有する薬学的組成物を提供する。例えば、本明細書に記載の脂質(例えば、式(I)、(IA)、(II)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、(IIe)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)のいずれかを有する脂質)は、哺乳動物細胞または臓器への治療剤及び/または予防剤の送達のための脂質ナノ粒子組成物において有利には使用され得る。例えば、本明細書に記載の脂質は、免疫原性がほとんどないか、または全くない。例えば、本明細書に開示される脂質化合物は、参照脂質(例えば、MC3、KC2、またはDLinDMA)と比較して低い免疫原性を有する。例えば、本明細書に開示される脂質及び治療剤または予防剤を含む製剤は、参照脂質(例えば、MC3、KC2、またはDLinDMA)及び同じ治療剤または予防薬を含む、対応する製剤と比較して増大した治療インデックスを有する。特に、本出願は、以下を含む薬学的組成物を提供する:
(a)目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;及び
(b)送達剤。
いくつかの実施形態では、上記送達剤は、式(I)を有する脂質化合物であって、
式中
R1は、C5−30アルキル、C5−20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3は、独立して、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3は、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここでQは、炭素環、複素環、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−N(R)2、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−N(R)R8、−O(CH2)nOR、−N(R)C(=NR9)N(R)2、−N(R)C(=CHR9)N(R)2、−OC(O)N(R)2、−N(R)C(O)OR、−N(OR)C(O)R、−N(OR)S(O)2R、−N(OR)C(O)OR、−N(OR)C(O)N(R)2、−N(OR)C(S)N(R)2、−N(OR)C(=NR9)N(R)2、−N(OR)C(=CHR9)N(R)2、−C(=NR9)N(R)2、−C(=NR9)R、−C(O)N(R)OR、及び−C(R)N(R)2C(O)ORから選択され、各nは独立して1、2、3、4、及び5から選択され;
各R5は、独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6は、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より独立して選択され;
M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7は、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
R8は、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
R9は、H、CN、NO2、C1−6アルキル、−OR、−S(O)2R、−S(O)2N(R)2、C2−6アルケニル、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
各Rは独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’は独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より独立して選択され;
各R”は、独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*は、独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yは独立してC3−6炭素環であり;
各Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;
mは5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、脂質化合物、
またはそれらの塩もしくは立体異性体を含む。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットとしては、
R1は、C5−20アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3は、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より独立して選択されるか、またはR2及びR3は、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここでQは、炭素環、複素環、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−N(R)2、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、及び−C(R)N(R)2C(O)ORから選択され、そして各nは、独立して1、2、3、4及び5から選択され;
各R5は独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6は独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7は、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rは独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’は独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”は独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*は、独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yは独立してC3−6炭素環であり;
各Xは独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;mは5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはその塩もしくは立体異性体が挙げられ、ここで、アルキル基及びアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットは、R4が−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、または−CQ(R)2である場合、(i)nが1、2、3、4もしくは5であるとき、QはN(R)2ではないか、または(ii)nが1もしくは2であるときは、Qは5、6または7員のヘテロシクロアルキルではないものを含む。
別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5−30アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より独立して選択されるか、またはR2及びR3は、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、Qは、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロアリール、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−CRN(R)2C(O)OR、−N(R)R8、−O(CH2)nOR、−N(R)C(=NR9)N(R)2、−N(R)C(=CHR9)N(R)2、−OC(O)N(R)2、−N(R)C(O)OR、−N(OR)C(O)R、−N(OR)S(O)2R、−N(OR)C(O)OR、−N(OR)C(O)N(R)2、−N(OR)C(S)N(R)2、−N(OR)C(=NR9)N(R)2、−N(OR)C(=CHR9)N(R)2、−C(=NR9)N(R)2、−C(=NR9)R、−C(O)N(R)OR、ならびにオキソ(=O)、OH、アミノ、及びC1−3アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されている、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5員〜14員のヘテロシクロアルキルから選択され、各nが、独立して、1、2、3、4、及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
R8が、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
R9が、H、CN、NO2、C1−6アルキル、−OR、−S(O)2R、−S(O)2N(R)2、C2−6アルケニル、C3−6炭素環、及び複素環からなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5−30アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が、−C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、Qが、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロアリール、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−CRN(R)2C(O)OR、ならびにオキソ(=O)、OH、アミノ、及びC1−3アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されている、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員ヘテロシクロアルキルから選択され、各nは独立して1、2、3、4、及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、ヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5-20アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3は、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、Qは、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員の複素環、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−CRN(R)2C(O)OR、−N(R)R8、−O(CH2)nOR、−N(R)C(=NR9)N(R)2、−N(R)C(=CHR9)N(R)2、−OC(O)N(R)2、−N(R)C(O)OR、−N(OR)C(O)R、−N(OR)S(O)2R、−N(OR)C(O)OR、−N(OR)C(O)N(R)2、−N(OR)C(S)N(R)2、−N(OR)C(=NR9)N(R)2、−N(OR)C(=CHR9)N(R)2、−C(=NR9)R、−C(O)N(R)OR、及び−C(=NR9)N(R)2から選択され、各nは独立して1、2、3、4、及び5から選択され;かつQが5〜14員の複素環であり、かつ(i)R4が−(CH2)nQであり、nが1もしくは2であるか、または(ii)R4が−(CH2)nCHQRであり、nが1であるか、または(iii)R4が−CHQR、及びCQ(R)2であるならば、Qは5〜14員のヘテロアリールまたは8〜14員のヘテロシクロアルキルであり;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より独立して選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
R8が、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
R9が、H、CN、NO2、C1−6アルキル、−OR、−S(O)2R、−S(O)2N(R)2、C2−6アルケニル、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の他のサブセットには、
R1が、C5-20アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3は、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、Qは、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を有する5〜14員の複素環、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−CRN(R)2C(O)ORから選択され;及び各nが独立して1、2、3、4及び5から選択され;Qが5〜14員の複素環であり、(i)R4が、−(CH2)nQであり、nが1もしくは2であるか、または(ii)R4が−(CH2)nCHQRであり、nが1であるか、または(iii)R4が−CHQR、及び−CQ(R)2であるならば、Qは5〜14員のヘテロアリールまたは8〜14員のヘテロシクロアルキルであり;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5−30アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、Qは、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロアリール、−OR、O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−CRN(R)2C(O)OR、−N(R)R8、−O(CH2)nOR、−N(R)C(=NR9)N(R)2、−N(R)C(=CHR9)N(R)2、−OC(O)N(R)2、−N(R)C(O)OR、−N(OR)C(O)R、−N(OR)S(O)2R、−N(OR)C(O)OR、−N(OR)C(O)N(R)2、−N(OR)C(S)N(R)2、−N(OR)C(=NR9)N(R)2、−N(OR)C(=CHR9)N(R)2、−C(=NR9)R、−C(O)N(R)OR、及び−C(=NR9)N(R)2から選択され、各nは独立して、1、2、3、4及び5から選択され;
各R5は独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6は独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、−S−S−、アリール基、ヘテロアリール基から選択され;
R7は、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
R8は、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
R9は、H、CN、NO2、C1−6アルキル、−OR、−S(O)2R、−S(O)2N(R)2、C2−6アルケニル、C3−6炭素環及び複素環からなる群より選択され;
各Rは独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’は独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R’’は独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*は独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yは独立してC3−6炭素環であり;
各Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;
そして
mは、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5-20アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、−CQ(R)2、及び非置換C1−6アルキルからなる群より選択され、ここで、QがC3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロアリール、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−CRN(R)2C(O)ORから選択され、及び各nは独立して1、2、3、4及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R’’が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが、独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5−30アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C2−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が−(CH2)nQまたは−(CH2)nCHQRであり、ここでQはN(R)2であり、そしてnは3、4及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC1−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5-20アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、H、C2−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択され、あるいはR2及びR3はそれらが結合する原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成し;
R4が−(CH2)nQまたは−(CH2)nCHQRであり、ここでQが−N(R)2であり、そしてnは3、4及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC1−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;
そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに他の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5−30アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3は、それらが結合する原子と一緒になって複素環または炭素環を形成し;
R4が、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及びCQ(R)2からなる群より選択され、ここで、Qは−N(R)2であり;そしてnは1、2、3、4、及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より独立して選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC1−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され、そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
さらに他の実施形態では、式(I)の化合物の別のサブセットには、
R1が、C5-20アルキル、C5-20アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択され;
R2及びR3が独立して、C1−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合する原子と一緒になって複素環または炭素環を形成し;
R4が、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及び−CQ(R)2からなる群より選択され、ここで、Qが−N(R)2であり、そしてnは1、2、3、4、及び5から選択され;
各R5が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R6が独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
M及びM’が独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
R7が、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各Rが独立して、C1−3アルキル、C2−3アルケニル、及びHからなる群より選択され;
各R’が独立して、C1−18アルキル、C2−18アルケニル、−R*YR”、−YR”及びHからなる群より選択され;
各R”が独立して、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択され;
各R*が独立して、C1−12アルキル及びC1−12アルケニルからなる群より選択され;
各Yが独立してC3−6炭素環であり;
各Xが独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群より選択され;そして
mが、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13から選択される、化合物のサブセット、
またはそれらの塩もしくは立体異性体が挙げられる。
特定の実施形態では、式(I)の化合物のサブセットは、式(IA)の化合物:
またはその塩もしくは立体異性体を包含し、式中、lは1、2、3、4及び5から選択され;mは5、6、7、8、及び9から選択され;M1は結合またはM’であり;R4は、非置換C1−3アルキル、または−(CH2)nQであり、ここで、Qは、OH、−NHC(S)N(R)2、−NHC(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)R8、−NHC(=NR9)N(R)2、−NHC(=CHR9)N(R)2、−OC(O)N(R)2、−N(R)C(O)OR、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルであり;M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−P(O)(OR’)O−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;そして
R2及びR3は独立して、H、C1−14アルキル、及びC2−14アルケニルからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットには、式(IA)の化合物、またはその塩もしくは立体異性体が含まれ、
ここで
lは1、2、3、4及び5から選択され;mは5、6、7、8、及び9から選択され;
M1は結合またはM’であり;
R4は、非置換C1−3アルキル、または−(CH2)nQであり、ここで、Qは、OH、−NHC(S)N(R)2、または−NHC(O)N(R)2であり;
M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−P(O)(OR’)O−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;そして
R2及びR3は、H、C1−14アルキル、及びC2−14アルケニルからなる群より独立して選択される。
特定の実施形態では、式(I)の化合物のサブセットは、式(II)のもの
またはその塩もしくは立体異性体を含み、式中、lは1、2、3、4及び5から選択され;M1は結合またはM’であり;R4は非置換C1−3アルキル、または−(CH2)nQであり、ここでnは2、3、または4であり、そしてQは、OH、−NHC(S)N(R)2、−NHC(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、N(R)R8、−NHC(=NR9)N(R)2、−NHC(=CHR9)N(R)2、−OC(O)N(R)2、−N(R)C(O)OR、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルであり;M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−P(O)(OR’)O−、−S−S−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;そして
R2及びR3は独立して、H、C1−14アルキル、及びC2−14アルケニルからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物のサブセットは、式(II)の化合物、またはその塩もしくは立体異性体を含み、式中
lは1、2、3、4及び5から選択され;
M1は結合またはM’であり;
R4は非置換C1−3アルキル、または−(CH2)nQであり、ここでnは2、3または4であり、そしてQはOH、−NHC(S)N(R)2、またはNHC(O)N(R)2であり;
M及びM’は独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−P(O)(OR’)O−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;そして
R2及びR3は独立して、H、C1−14アルキル、及びC2−14アルケニルからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は式(IIa)のもの、
またはその塩であり、式中R4は上記のとおりである。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIb)のもの、
またはその塩であり、式中R4は上記のとおりである。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIc)のもの、
またはその塩であり、式中R4は上記のとおりである。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IIe)のもの:
またはその塩であり、式中R4は上記のとおりである。
いくつかの実施形態では、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、または(IIe)の化合物は、R4を含み、これは、−(CH2)nQ及び−(CH2)nCHQRから選択され、ここでQ、R及びnは、上記のとおりである。
いくつかの実施形態では、Qは、−OR、−OH、−O(CH2)nN(R)2、−OC(O)R、−CX3、−CN、−N(R)C(O)R、−N(H)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(H)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(H)C(O)N(R)2、−N(H)C(O)N(H)(R)、−N(R)C(S)N(R)2、−N(H)C(S)N(R)2、−N(H)C(S)N(H)(R)、及び複素環からなる群より選択され、式中Rは上記のとおりである。いくつかの態様では、nは、1または2である。いくつかの実施形態では、Qは、OH、−NHC(S)N(R)2、または−NHC(O)N(R)2である。
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(IId)のもの、
またはその塩であり、式中R2及びR3は独立して、C5−14アルキル及びC5−14アルケニルからなる群より選択され、nは、2、3、及び4から選択され、R’、R’’、R5、R6及びmは、上記のとおりである。
式(IId)の化合物のいくつかの態様では、R2はC8アルキルである。式(IId)の化合物のいくつかの態様では、R3はC5−C9アルキルである。式(IId)の化合物のいくつかの態様では、mは5、7、または9である。式(IId)の化合物のいくつかの態様では、各R5はHである。式(IId)の化合物のいくつかの態様では、各R6はHである。
別の態様では、本出願は、以下を含む脂質組成物(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))を提供する:(1)式(I)を有する化合物;(2)必要に応じてヘルパー脂質(例えば、リン脂質);(3)必要に応じて構造脂質(例えば、ステロール);及び(4)必要に応じて脂質コンジュゲート(例えば、PEG−脂質)。例示的な実施形態では、脂質組成物(例えば、LNP)はさらに、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、その中に封入されたポリヌクレオチドを含む。
本明細書で使用される場合、「アルキル」または「アルキル基」という用語は、1個以上の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれ以上の炭素原子)を含む直鎖状または分枝状の飽和炭化水素を意味する。
表記「C1−14アルキル」とは、1〜14個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝状の飽和炭化水素を意味する。アルキル基は必要に応じて置換されていてもよい。
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」または「アルケニル基」という用語は、2個以上の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の炭素原子)及び少なくとも1つの二重結合を含む、直鎖状または分岐状炭化水素を意味する。
表記「C2−14アルケニル」とは、2〜14個の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を含む、直鎖状または分岐状の炭化水素を意味する。アルケニル基は、1、2、3、4またはそれ以上の二重結合を含み得る。例えば、C18アルケニルは、1つ以上の二重結合を含んでもよい。2つの二重結合を含むC18アルケニル基は、リノレイル基であり得る。アルケニル基は、必要に応じて置換されていてもよい。
本明細書で使用されるとき、「炭素環」または「炭素環式基」という用語は、炭素原子の1つ以上の環を含む単環式または多環式系を意味する。環は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15員環であってもよい。
表記「C3−6炭素環」とは、3〜6個の炭素原子を有する単環を含む炭素環を意味する。炭素環は、1つ以上の二重結合を含んでもよく、そして芳香族(例えば、アリール基)であってもよい。炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、及び1,2ジヒドロナフチル基が挙げられる。炭素環は必要に応じて置換されてもよい。
本明細書で使用される場合、「複素環」または「複素環式基」という用語は、少なくとも1つの環が少なくとも1つのヘテロ原子を含む、1つ以上の環を含む単環式または多環式系を意味する。ヘテロ原子は、例えば、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子であってもよい。環は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12員環であってもよい。複素環は、1つ以上の二重結合を含んでもよく、そして芳香族(例えば、ヘテロアリール基)であってもよい。複素環の例としては、イミダゾリル、イミダゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、チアゾリル、チアゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、モルホリニル、ピロリル、ピロロリジニル、フリル、テトラヒドロフリル、チオフェニル、ピリジニル、ピペリジニル、キノリル、及びイソキノリル基が挙げられる。複素環は必要に応じて置換されてもよい。
本明細書中で使用される場合、「生分解性基」とは、対象における脂質のより速い代謝を促進し得る基である。生分解性基としては限定するものではないが、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基であり得る。
本明細書で使用されるとき、「アリール基」とは、1つ以上の芳香環を含む炭素環式基である。アリール基の例としては、フェニル及びナフチル基が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール基」とは、1つ以上の芳香環を含む複素環基である。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、フリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、及びチアゾリルが挙げられる。アリール基及びヘテロアリール基の両方とも必要に応じて置換されていてもよい。例えば、M及びM’は、必要に応じて置換されているフェニル、オキサゾール、及びチアゾールからなる非限定的な群から選択され得る。本明細書中の式において、M及びM’は、上記生分解性基のリストから独立して選択され得る。
アルキル、アルケニル、及びシクリル(例えば、カルボシクリル及びヘテロシクリル)基は、特に明記しない限り、必要に応じて置換されていてもよい。任意の置換基は、限定するものではないが、ハロゲン原子(例えば、塩化物、臭化物、フッ化物、またはヨウ化物基)、カルボン酸(例えば、−C(O)OH)、アルコール(例えば、ヒドロキシル、−OH)、エステル(例えば、−C(O)ORまたは−OC(O)R)、アルデヒド(例えば、−C(O)H)、カルボニル(例えば、−C(O)R)、あるいは、C=Oで表される)、ハロゲン化アシル(例えば、−C(O)X、式中、Xは、臭化物、フッ化物、塩化物及びヨウ化物から選択されるハロゲン化物である)、炭酸塩(例えば、−OC(O)OR)、アルコキシ(例えば、−OR)、アセタール(例えば、−C(OR)2R”“、ここで各ORは同一でも異なってもよいアルコキシ基であり、そしてR”“はアルキルまたはアルケニル基である)、ホスフェート(例えば、P(O)4 3−)、チオール(例えば、−SH)、スルホキシド(例えば、−S(O)R)、スルフィン酸(例えば、−S(O)OH)、スルホン酸(例えば、−S(O)2OH)、チアール(例えば、−C(S)H)、硫酸塩(例えば、S(O)4 2−)、スルホニル(例えば、S(O)2−)、アミド(例えば、−C(O)NR2、または−N(R)C(O)R)、アジド(例えば、−N3)、ニトロ(例えば、−NO2)、シアノ(例えば、−CN)、イソシアノ(例えば、−NC)、アシルオキシ(例えば、−OC(O)R)、アミノ(例えば、−NR2、−NRH、または−NH2)、カルバモイル(例えば、−OC(O)NR2、−OC(O)NRH、または−OC(O)NH2)、スルホンアミド(例えば、−S(O)2NR2、−S(O)2NRH、−S(O)2NH2、−N(R)S(O)2R、−N(H)S(O)2R、−N(R)S(O)2H、または−N(H)S(O)2H)、アルキル基、アルケニル基、及びシクリル(例えば、カルボシクリルまたはヘテロシクリル)基からなる群より選択され得る。
上記のいずれにおいても、Rは、本明細書に定義のアルキルまたはアルケニル基である。いくつかの実施形態では、置換基自体が、例えば、本明細書で定義の1、2、3、4、5、または6個の置換基でさらに置換されていてもよい。例えば、C1−6アルキル基は、本明細書に記載の1、2、3、4、5、または6個の置換基でさらに置換されてもよい。
式(I)、(IA)、(II)、(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)のうちいずれか1つの化合物は、該当する場合、以下の特徴の1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及び−CQ(R)2からなる群より選択され、式中、Qは、C3−6炭素環、N、O、S及びPから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員の芳香族または非芳香族複素環、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−N(R)2、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、及び−C(R)N(R)2C(O)ORから選択され、各nは独立して1、2、3、4及び5から選択される。
別の実施形態では、R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及び−CQ(R)2からなる群より選択され、ここでQは、C3−6炭素環、N、O及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロアリール、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−C(R)N(R)2C(O)OR、ならびに、N、O及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロシクロアルキル(オキソ(=O)、OH、アミノ、及びC1−3アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される)から選択され、各nは独立して1、2、3、4、及び5から選択される。
別の実施形態では、R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及び−CQ(R)2からなる群より選択され、ここでQは、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員の複素環、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−C(R)N(R)2C(O)ORから選択され、各nは独立して1、2、3、4、及び5から選択され;Qが5〜14員の複素環であり、かつ(i)R4が−(CH2)nQであり、nは1もしくは2であるか、または(ii)R4が−(CH2)nCHQRであり、nが1であるか、または(iii)R4が−CHQR、及び−CQ(R)2であるならば、Qは5〜14員のヘテロアリールまたは8〜14員のヘテロシクロアルキルのいずれかである。
別の実施形態では、R4は、C3−6炭素環、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及び−CQ(R)2からなる群より選択され、ここでQは、C3−6炭素環、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員のヘテロアリール、−OR、−O(CH2)nN(R)2、−C(O)OR、−OC(O)R、−CX3、−CX2H、−CXH2、−CN、−C(O)N(R)2、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(R)C(S)N(R)2、−C(R)N(R)2C(O)ORから選択され、及び各nは独立して1、2、3、4及び5から選択される。
別の実施形態では、R4は非置換C1−4アルキル、例えば、非置換メチルである。
特定の実施形態では、本開示は、R4が−(CH2)nQまたは−(CH2)nCHQRであり、Qが−N(R)2であり、nが3、4、及び5から選択される式(I)を有する化合物を提供する。
特定の実施形態では、本開示は、R4が、−(CH2)nQ、−(CH2)nCHQR、−CHQR、及び−CQ(R)2からなる群より選択され、ここでQは−N(R)2であり、nは1、2、3、4及び5から選択される、式(I)を有する化合物を提供する。
特定の実施形態では、本開示は、R2及びR3が独立して、C2−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合している原子と一緒になって複素環または炭素環を形成し、そしてR4が−(CH2)nQまたは−(CH2)nCHQRであり、ここでQが−N(R)2であり、そしてnは3、4及び5から選択される、式(I)を有する化合物を提供する。
特定の実施形態では、R2及びR3が独立して、C2−14アルキル、C2−14アルケニル、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択されるか、またはR2及びR3が、それらが結合している原子と一緒になって複素環または炭素環を形成する。
いくつかの実施形態では、R1は、C5-20アルキル及びC5-20アルケニルからなる群より選択される。
他の実施形態では、R1は、−R*YR”、−YR”、及び−R”M’R’からなる群より選択される。
特定の実施形態では、R1は、−R*YR”及び−YR”から選択される。いくつかの実施形態では、Yはシクロプロピル基である。いくつかの実施形態では、R*は、C8アルキルまたはC8アルケニルである。特定の実施形態では、R”は、C3−12アルキルである。例えば、R’’はC3アルキルであってもよい。例えば、R”は、C4−8アルキル(例えば、C4、C5、C6、C7、またはC8アルキル)であってもよい。
いくつかの実施形態では、R1はC5−20アルキルである。いくつかの実施形態では、R1はC6アルキルである。いくつかの実施形態では、R1はC8アルキルである。他の実施形態では、R1はC9アルキルである。特定の実施形態では、R1は、C1−4アルキルである。他の実施形態では、R1はC18アルキルである。
いくつかの実施形態では、R1はC5-20アルケニルである。特定の実施形態では、R1は、C18アルケニルである。いくつかの実施形態では、R1はリノレイルである。
特定の実施形態では、R1は分岐されている(例えば、デカン−2−イル、ウンデカン−3−イル、ドデカン−4−イル、トリデカン−5−イル、テトラデカン−6−イル、2−メチルウンデカン−3−イル、2−メチルデカン−2−イル、3−メチルウンデカン−3−イル、4−メチルドデカン−4−イル、またはヘプタデカ−9−イル)。特定の実施形態では、R1は、
である。
特定の実施形態では、R1は、非置換C5-20アルキルまたはC5-20アルケニルである。特定の実施形態では、R’は、置換C5-20アルキルまたはC5-20アルケニル(例えば、1−シクロプロピルノニルなどのC3−6炭素環で置換されている)である。
他の実施形態では、R1は−R”M’R’である。
いくつかの実施形態では、R’は、−R*YR”及びYR”から選択される。いくつかの実施形態では、YはC3−8シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、YはC6−10アリールである。いくつかの実施形態では、Yはシクロプロピル基である。いくつかの実施形態では、Yはシクロヘキシル基である。特定の実施形態では、R*はC1アルキルである。
いくつかの実施形態では、R’’は、C3−12アルキル及びC3−12アルケニルからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、Yに隣接するR”は、C1アルキルである。いくつかの実施形態では、Yに隣接するR”は、C4−9アルキル(例えば、C4、C5、C6、C7またはC8またはC9アルキル)である。
いくつかの実施形態では、R’は、C4アルキル及びC4アルケニルから選択される。特定の実施形態では、R’は、C5アルキル及びC5アルケニルから選択される。いくつかの実施形態では、R’は、C6アルキル及びC6アルケニルから選択される。いくつかの実施形態では、R’は、C7アルキル及びC7アルケニルから選択される。いくつかの実施形態では、R’は、C9アルキル及びC9アルケニルから選択される。
他の実施形態では、R’はC11アルキル及びC11アルケニルから選択される。他の実施形態では、R’はC12アルキル、C12アルケニル、C13アルキル、C13アルケニル、C14アルキル、C14アルケニル、C15アルキル、C15アルケニル、C16アルキル、C16アルケニル、C17アルキル、C17アルケニル、C18アルキル、及びC18アルケニルから選択される。特定の実施形態では、R’は分岐されている(例えば、デカン−2−イル、ウンデカン−3−イル、ドデカン−4−イル、トリデカン−5−イル、テトラデカン−6−イル、2−メチルウンデカン−3−イル、2−メチルデカン−2−イル、3−メチルウンデカン−3−イル、4−メチルドデカン−4−イルまたはヘプタデカ−9−イル)。特定の実施形態では、R’は、
である。
特定の実施形態では、R’は、非置換C1−18アルキルである。特定の実施形態では、R’は、置換C1−18アルキル(例えば、1−シクロプロピルノニルなどのC3−6炭素環で置換されているC1−15アルキル)である。
いくつかの実施形態では、R’’は、C3−14アルキル及びC3−14アルケニルからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、R’’は、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、C6アルキル、C7アルキル、またはC8アルキルである。いくつかの実施形態では、R’’は、C9アルキル、C10アルキル、C11アルキル、C12アルキル、C13アルキル、またはC14アルキルである。
いくつかの実施形態では、M’は−C(O)O−である。いくつかの実施形態では、M’は−OC(O)−である。
他の実施形態では、M’はアリール基またはヘテロアリール基である。例えば、M’は、フェニル、オキサゾール、及びチアゾールからなる群より選択され得る。
いくつかの実施形態では、Mは、−C(O)O−である。いくつかの実施形態では、Mは、−OC(O)−である。いくつかの実施形態では、Mは、−C(O)N(R’)−である。いくつかの実施形態では、Mは−P(O)(OR’)O−である。
他の実施形態では、Mは、アリール基またはヘテロアリール基である。例えば、Mは、フェニル、オキサゾール、及びチアゾールからなる群より選択され得る。
いくつかの実施形態では、Mは、M’と同じである。他の実施形態では、Mは、M’とは異なる。
いくつかの実施形態では、各R5はHである。このような特定の実施形態では、各R6もHである。
いくつかの実施形態では、R7はHである。他の実施形態では、R7はC1−3アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはi−プロピル)である。
いくつかの実施形態では、R2及びR3は独立して、C5−14アルキルまたはC5−14アルケニルである。
いくつかの実施形態では、R2及びR3は同じである。いくつかの実施形態では、R2及びR3はC8アルキルである。特定の実施形態では、R2及びR3はC2アルキルである。他の実施形態では、R2及びR3はC3アルキルである。いくつかの実施形態では、R2及びR3はC4アルキルである。特定の実施形態では、R2及びR3は、C5アルキルである。他の実施形態では、R2及びR3はC6アルキルである。いくつかの実施形態では、R2及びR3はC7アルキルである。
他の実施形態では、R2及びR3は異なる。特定の実施形態では、R2は、C8アルキルである。いくつかの実施形態では、R3は、C1−7(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、またはC7アルキル)またはC9アルキルである。
いくつかの実施形態では、R7及びR3はHである。
特定の実施形態では、R2はHである。
いくつかの実施形態では、mは5、7、または9である。
いくつかの実施形態では、R4は−(CH2)nQ及び−(CH2)nCHQRから選択される。
いくつかの実施形態では、Qは、−OR、−OH、−O(CH2)nN(R)2、−OC(O)R、−CX3、−CN、−N(R)C(O)R、−N(H)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(H)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(H)C(O)N(R)2、−N(H)C(O)N(H)(R)、−N(R)C(S)N(R)2、−N(H)C(S)N(R)2、−N(H)C(S)N(H)(R)、−C(R)N(R)2C(O)OR、炭素環、及び複素環からなる群より選択される。
特定の実施形態では、Qは、−OHである。
特定の実施形態では、Qは、置換または非置換の5〜10員ヘテロアリールであり、例えば、Qは、イミダゾール、ピリミジン、プリン、2−アミノ−1,9−ジヒドロ−6H−プリン−6−オン−9−イル(またはグアニン−9−イル)、アデニン−9−イル、シトシン−1−イル、またはウラシル−1−イルである。特定の実施形態では、Qは、例えば、オキソ(=O)、OH、アミノ、及びC1−3アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されている、置換5〜14員ヘテロシクロアルキルである。例えば、Qは、4−メチルピペラジニル、4−(4−メトキシベンジル)ピペラジニル、またはイソインドリン−2−イル−1,3−ジオンである。
特定の実施形態では、Qは、非置換もしくは置換C6−10アリール(例えば、フェニル)またはC3−6シクロアルキルである。
いくつかの実施形態では、nは1である。他の実施形態では、nは2である。さらなる実施形態では、nは3である。特定の実施形態では、nは4である。例えば、R4は、−(CH2)2OHであり得る。例えば、R4は−(CH2)3OHであり得る。例えば、R4は−(CH2)4OHであり得る。例えば、R4はベンジルであり得る。例えば、R4は4−メトキシベンジルであり得る。
いくつかの実施形態では、R4はC3−6炭素環である。いくつかの実施形態では、R4はC3−6シクロアルキルである。例えば、R4は、例えば、OH、ハロ、C1−6アルキルなどで必要に応じて置換されているシクロヘキシルであり得る。例えば、R4は、2−ヒドロキシシクロヘキシルであり得る。
いくつかの実施形態では、RはHである。
いくつかの実施形態では、Rは、非置換C1−3アルキルまたは非置換C2−3アルケニルである。例えば、R4は、−CH2CH(OH)CH3または−CH2CH(OH)CH2CH3であり得る。
いくつかの実施形態では、Rは置換C1−3アルキル、例えば、CH2OHである。例えば、R4は、−CH2CH(OH)CH2OHであってもよい。
いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成する。いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、N、O、S及びPから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する5〜14員の芳香族または非芳香族複素環を形成する。いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、芳香族または非芳香族のいずれかで、必要に応じて置換されているC3−20炭素環(例えば、C3−18炭素環、C3−15炭素環、C3−12炭素環またはC3−10炭素環)を形成する。いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、C3−6炭素環を形成する。他の実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、シクロヘキシルまたはフェニル基などのC6炭素環を形成する。特定の実施形態では、複素環またはC3−6炭素環は、1つ以上のアルキル基で(例えば、同じ環原子または隣接もしくは非隣接環原子で)置換されている。例えば、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、1つ以上のC5アルキル置換を保有するシクロヘキシルまたはフェニル基を形成し得る。特定の実施形態では、R2及びR3によって形成される複素環またはC3−6炭素環は、炭素環基で置換されている。例えば、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、シクロヘキシルまたはフェニル基を形成し得、これはシクロヘキシルで置換されている。いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、シクロヘプチル、シクロペンタデカニル、またはナフチル基などのC7−15炭素環を形成する。
いくつかの実施形態では、R4は−(CH2)nQ及び−(CH2)nCHQRから選択される。いくつかの実施形態では、Qは、−OR、−OH、−O(CH2)nN(R)2、−OC(O)R、−CX3、−CN、−N(R)C(O)R、−N(H)C(O)R、−N(R)S(O)2R、−N(H)S(O)2R、−N(R)C(O)N(R)2、−N(H)C(O)N(R)2、−N(H)C(O)N(H)(R)、−N(R)C(S)N(R)2、−N(H)C(S)N(R)2、−N(H)C(S)N(H)(R)、及び複素環からなる群より選択される。他の実施形態では、Qは、イミダゾール、ピリミジン、及びプリンからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、複素環または炭素環を形成する。いくつかの実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、フェニル基などのC3−6炭素環を形成する。特定の実施形態では、複素環またはC3−6炭素環は、1つ以上のアルキル基で(例えば、同じ環原子または隣接もしくは非隣接環原子で)置換されている。例えば、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒になって、1つ以上のC5アルキル置換を保有するフェニル基を形成し得る。
いくつかの実施形態では、本開示の薬学的組成物、式(I)の化合物は、以下からなる群より選択される:
ならびにその塩及び異性体。
他の実施形態では、式(I)の化合物は、化合物1〜化合物147、またはそれらの塩もしくは立体異性体からなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、中心ピペラジン部分を含むイオン性脂質が提供される。本明細書に記載の脂質は、哺乳動物細胞または臓器への治療剤及び/または予防剤の送達のための脂質ナノ粒子組成物において有利に使用され得る。例えば、本明細書に記載の脂質は、免疫原性がほとんどまたは全くない。例えば、本明細書に開示されている脂質化合物は、参照脂質(例えば、MC3、KC2、またはDLinDMA)と比較して低い免疫原性を有する。例えば、本明細書に開示される脂質と治療剤または予防剤とを含む製剤は、参照脂質(例えば、MC3、KC2、またはDLinDMA)及び同じ治療剤または予防剤を含む対応する製剤と比較して治療指数が大きい。
いくつかの実施形態では、送達剤は式(III)を有する脂質化合物
またはその塩もしくは立体異性体を含み、式
環Aは
であり;
tは1または2であり;
A1及びA2はそれぞれ独立してCHまたはNから選択され;
ZはCH2であるかまたは存在せず、ここでZがCH2であるとき、破線(1)及び(2)はそれぞれ単結合を表し;そして、Zが存在しないとき、破線(1)及び(2)は両方とも存在せず;
R1、R2、R3、R4、及びR5は独立して、C5−20アルキル、C5−20アルケニル、−R”MR’、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択され;
各Mは独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、ヘテロアリール基からなる群より選択され;
X1、X2、及びX3は独立して、結合、−CH2−、−(CH2)2−、−CHR−、−CHY−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−CH2−、−CH2−C(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、−CH2−C(O)O−、−CH2−OC(O)−、−CH(OH)−、−C(S)−、及び−CH(SH−からなる群より選択され;
各Yは独立してC3−6炭素環であり;
各R*は独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Rは独立して、C1−3アルキル及びC3−6炭素環からなる群より選択され;
各R’は独立して、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、及びHからなる群より選択され;そして
各R’’は、独立して、C3−12アルキル及びC3−12アルケニルからなる群より選択され、
式中、環Aが
であるならば、
i)X1、X2、及びX3のうち少なくとも1つが−CH2−ではないか;及び/または
ii)R1、R2、R3、R4,及びR5のうちの少なくとも1つが−R”MR’である。
いくつかの実施形態では、この化合物は、式(IIIa1)−(IIIa6)のうちいずれかである:
式(III)の化合物または(IIIa1)−(IIIa6)のうちのいずれかとしては、適用可能な場合以下の特徴のうちの1つ以上が挙げられる。
いくつかの実施形態では、環Aは
である。
いくつかの実施形態では、環Aは、
または
である。
いくつかの実施形態では、環Aは、
である。
いくつかの実施形態では、環Aは、
である。
いくつかの実施形態では、環Aは、
である。
いくつかの実施形態では、環Aは、
であり、
式中環には、N原子にX2が接続されている。
いくつかの実施形態では、ZはCH2である。
いくつかの実施形態では、Zは存在しない。
いくつかの実施形態では、A1及びA2の少なくとも1つはNである。
いくつかの実施形態では、A1及びA2のそれぞれがNである。
いくつかの実施形態では、A1及びA2のそれぞれがCHである。
いくつかの実施形態では、A1はNであり、A2はCHである。
いくつかの実施形態では、A1はCHであり、A2はNである。
いくつかの実施形態では、X1、X2、及びX3の少なくとも1つは−CH2−ではない。例えば、特定の実施形態では、X1は−CH2−ではない。いくつかの実施形態では、X1、X2、及びX3のうちの少なくとも1つは−C(O)−である。
いくつかの実施形態では、X2は−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−CH2−、−CH2−C(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、−CH2−C(O)O−、または−CH2−OC(O)−である。
いくつかの実施形態では、X3は−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−CH2−、−CH2−C(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、−CH2−C(O)O−、または−CH2−OC(O)−である。他の実施形態では、X3は−CH2−である。
いくつかの実施形態では、X3は結合または−(CH2)2−である。
いくつかの実施形態では、R1及びR2は同じである。特定の実施形態では、R1、R2、及びR3は同じである。いくつかの実施形態では、R4及びR5は同じである。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じである。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つは−R”MR’である。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの最大1つが−R”MR’である。例えば、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、−R”MR’であってもよく及び/またはR4及びR5のうちの少なくとも1つは、−R”MR’である。特定の実施形態では、少なくとも1個のMは、−C(O)O−である。いくつかの実施形態では、各Mは−C(O)O−である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のMは、−OC(O)−である。いくつかの実施形態では、各Mは−OC(O)−である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のMは−OC(O)O−である。いくつかの実施形態では、各Mは−OC(O)O−である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のR”は、C3アルキルである。特定の実施形態では、各R”は、C3アルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のR’’はC5アルキルである。特定の実施形態では、各R”は、C5アルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のR’’はC6アルキルである。特定の実施形態では、各R”は、C6アルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のR’’はC7アルキルである。特定の実施形態では、各R”は、C7アルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のR’は、C5アルキルである。特定の実施形態では、各R’は、C5アルキルである。他の実施形態では、少なくとも1個のR’はC1アルキルである。特定の実施形態では、各R’はC1アルキルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR’は、C2アルキルである。特定の実施形態では、各R’は、C2アルキルである。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも1つはC12アルキルである。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のそれぞれは、C12アルキルである。
特定の実施形態では、化合物は、以下からなる群より選択される:
いくつかの実施形態では、上記送達剤は、化合物236を含む。
いくつかの実施形態では、上記送達剤は、式(IV)を有する化合物
またはその塩もしくは立体異性体を含み、式中
A1及びA2はそれぞれ独立してCHまたはNから選択され、A1及びA2の少なくとも一方はNであり;
ZはCH2であるかまたは存在せず、ここでZがCH2であるとき、破線(1)及び(2)はそれぞれ単結合を表し;そして、Zが存在しないとき、破線(1)及び(2)は両方とも存在せず;
R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、C6−20アルキル及びC6−20アルケニルからなる群より選択され;
式中、環Aが、
であるならば、
i)R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであり、ここでR1はC12アルキルでも、C18アルキルでも、またはC18アルケニルでもないか;
ii)R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの1つのみがC6−20アルケニルから選択されるか;
iii)R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つが、R1、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも1つの他のものとは異なる数の炭素原子を有するか;
iv)R1、R2、及びR3がC6−20アルケニルから選択され、ならびにR4及びR5がC6−20アルキルから選択されるか;または
v)R1、R2、及びR3がC6−20アルキルから選択され、R4及びR5がC6−20アルケニルから選択される。
いくつかの実施形態では、化合物は、式(IVa)の化合物:
のものである。
適用可能であれば、式(IV)または(IVa)の化合物は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、ZはCH2である。
いくつかの実施形態では、Zは存在しない。
いくつかの実施形態では、A1及びA2の少なくとも一方はNである。
いくつかの実施形態では、A1及びA2のそれぞれはNである。
いくつかの実施形態では、A1及びA2のそれぞれはCHである。
いくつかの実施形態では、A1はNであり、A2はCHである。
いくつかの実施形態では、A1はCHであり、A2はNである。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであり、かつC12アルキルでも、C18アルキルでも、またはC18アルケニルでもない。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じであり、C9アルキルまたはC14アルキルである。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの1つのみが、C6−20アルケニルから選択される。特定のこのような実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5が同数の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、R4はC5−20アルケニルから選択される。例えば、R4は、C12アルケニルであっても、またはC18アルケニルであってもよい。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つは、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの他の少なくとも1つとは異なる数の炭素原子を有する。
特定の実施形態では、R1、R2、及びR3は、C6−20アルケニルから選択され、そしてR4及びR5は、C6−20アルキルから選択される。他の実施形態では、R1、R2、及びR3は、C6−20アルキルから選択され、R4及びR5は、C6−20アルケニルから選択される。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3は、同数の炭素原子を有する、及び/またはR4及びR5は同数の炭素原子を有する。例えば、R1、R2、及びR3、またはR4及びR5は、6、8、9、12、14、または18個の炭素原子を有してもよい。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3、またはR4及びR5は、C18アルケニル(例えば、リノレイル)である。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3、またはR4及びR5は、6、8、9、12、または14個の炭素原子を含むアルキル基である。
いくつかの実施形態では、R1は、R2、R3、R4、及びR5とは異なる数の炭素原子を有する。他の実施形態では、R3は、R1、R2、R4、及びR5とは異なる数の炭素原子を有する。さらなる実施形態では、R4は、R1、R2、R3、及びR5とは異なる数の炭素原子を有する。
いくつかの実施形態では、上記化合物は、以下からなる群より選択される:
他の実施形態では、送達剤は式(V)を有する化合物
またはその塩もしくは立体異性体を含み、ここで
A3はCHまたはNであり;
A4はCH2またはNHであり;ならびにA3及びA4の少なくとも一方はNまたはNHであり;
ZはCH2であるかまたは存在せず、ここでZがCH2であるとき、破線(1)及び(2)はそれぞれ単結合を表し;そして、Zが存在しないとき、破線(1)及び(2)は両方とも存在せず;
R1、R2、及びR3は、独立して、C5−20アルキル、C5−20アルケニル、−R”MR’、−R*YR”、−YR”、及び−R*OR”からなる群より選択され;
各Mは独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基から選択され;
X1及びX2は独立して、−CH2−、−(CH2)2−、−CHR−、−CHY−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−CH2−、−CH2−C(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、−CH2−C(O)O−、−CH2−OC(O)−、−CH(OH)−、−C(S)−、及び−CH(SH)−からなる群より選択され;
各Yは独立してC3−6炭素環であり;
各R*は独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Rは独立して、C1−3アルキル及びC3−6炭素環からなる群より選択され;
各R’は独立して、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、及びHからなる群より選択され;そして
各R”は、独立して、C3−12アルキル及びC3−12アルケニルからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、化合物は式(Va)の化合物:
のものである。
適用可能であれば、式(V)または(Va)の化合物は、以下の特徴のうちの1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、ZはCH2である。
いくつかの実施形態では、Zは存在しない。
いくつかの実施形態では、A3及びA4の少なくとも一方はNまたはNHである。
いくつかの実施形態では、A3はNであり、A4はNHである。
いくつかの実施形態では、A3はNであり、A4はCH2である。
いくつかの実施形態では、A3はCHであり、A4はNHである。
いくつかの実施形態では、X1及びX2の少なくとも一方は−CH2−ではない。例えば、特定の実施形態では、X1は−CH2−ではない。いくつかの実施形態では、X1及びX2の少なくとも一方は−C(O)−である。
いくつかの実施形態では、X2は−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−CH2−、−CH2−C(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、−CH2−C(O)O−、または−CH2−OC(O)−である。
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3は、独立して、C5−20アルキル及びC5−20アルケニルからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3は同じである。特定の実施形態では、R1、R2、及びR3は、C6、C9、C12、またはC14アルキルである。他の実施形態では、R1、R2、及びR3がC18アルケニルである。例えば、R1、R2、及びR3は、リノレイルであってもよい。
いくつかの実施形態では、化合物は、以下からなる群より選択される:
他の実施形態では、送達剤は、式(VI):
を有する化合物、またはその塩もしくは立体異性体を含み、ここで
A6及びA7はそれぞれ独立してCHまたはNから選択され、ここでA6及びA7の少なくとも1つはNであり;
ZはCH2であるかまたは存在せず、ここでZがCH2であるとき、破線(1)及び(2)はそれぞれ単結合を表し;Zが存在しないとき、破線(1)及び(2)は両方とも存在しない;
X4及びX5は独立して、−CH2−、−CH2)2−、−CHR−、−CHY−、−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)−CH2−、−CH2−C(O)−、−C(O)O−CH2−、−OC(O)−CH2−、−CH2−C(O)O−、−CH2−OC(O)−、−CH(OH)−、−C(S)−、及び−CH(SH)−からなる群より選択され;
R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立して、C5−20アルキル、C5−20アルケニル、−R”MR’、−R*YR”、−YR”及び−R*OR”からなる群より選択され;
各Mは独立して、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)N(R’)−、−N(R’)C(O)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(S)S−、−SC(S)−、−CH(OH)−、−P(O)(OR’)O−、−S(O)2−、アリール基、及びヘテロアリール基からなる群より選択され;
各Yは独立してC3−6炭素環であり;
各R*は独立して、C1−12アルキル及びC2−12アルケニルからなる群より選択され;
各Rは独立して、C1−3アルキル及びC3−6炭素環からなる群より選択され;
各R’は独立して、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、及びHからなる群より選択され;そして
各R”は独立して、C3−12アルキル及びC3−12アルケニルからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立して、C6−20アルキル及びC6−20アルケニルからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、R1とR2とは同じである。特定の実施形態では、R1、R2、及びR3は同じである。いくつかの実施形態では、R4とR5とは同じである。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5は同じである。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つはC9−12アルキルである。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のそれぞれは、独立して、C9、C12またはC14アルキルである。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のそれぞれは、C9アルキルである。
いくつかの実施形態では、A6はNであり、かつA7はNである。いくつかの実施形態では、A6はCHでありかつA7はNである。
いくつかの実施形態では、X4は−CH2−であり、かつX5は−C(O)−である。いくつかの実施形態では、X4及びX5は−C(O)−である。
いくつかの実施形態では、A6がNでありかつA7がNである場合、X4及びX5の少なくとも一方は−CH2−ではなく、例えば、X4及びX5の少なくとも一方は−C(O)−である。いくつかの実施形態では、A6がNであり、かつA7がNである場合、R1、R2、R3、R4、及びR5の少なくとも1つは−R”MR’である。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つは−R”MR’ではない。
いくつかの実施形態では、上記化合物は
である。
他の実施形態では、上記送達剤は、以下の式:
を有する化合物を含む。
本明細書に開示されている脂質化合物のアミン部分は、特定の条件下でプロトン化され得る。例えば、式(I)による脂質の中心アミン部分は、典型的には、アミノ部分のpKa未満のpHでプロトン化(すなわち、正に荷電)されており、pKaを超えるpHでは実質的に荷電されていない。そのような脂質は、イオン性アミノ脂質と呼んでもよい。
特定の一実施形態では、イオン性アミノ脂質は化合物18である。別の実施形態では、イオン性アミノ脂質は化合物236である。
いくつかの実施形態では、イオン性アミノ脂質、例えば、式(I)の化合物の量は、脂質組成物中で、約1モル%〜99モル%の範囲である。
一実施形態では、イオン性アミノ脂質、例えば、式(I)の化合物の量は、脂質組成物中で、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99モル%である。
一実施形態では、イオン性アミノ脂質、例えば、式(I)の化合物の量は、脂質組成物中で、約30モル%〜約70モル%、約35モル%〜約65モル%、約40モル%〜約60モル%、及び約45モル%〜約55モル%の範囲である。
1つの特定の実施形態では、イオン性アミノ脂質、例えば、式(I)の化合物の量は、脂質組成物中で、約50モル%である。
本明細書に開示されるイオン性アミノ脂質、例えば、式(I)の化合物に加えて、本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物は、リン脂質、構造脂質、PEG−脂質、及びそれらの任意の組み合わせなどの追加の構成要素を含んでもよい。
b.リン脂質
本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物は、1つ以上のリン脂質、例えば、1つ以上の飽和もしくは(多価)不飽和リン脂質、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。一般に、リン脂質は、リン脂質部分及び1つ以上の脂肪酸部分を含む。
リン脂質部分は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、2−リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンからなる非限定的な群から選択され得る。
脂肪酸部分は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファ−リノレン酸、エルカ酸、フィタン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸からなる非限定的な群から選択され得る。
特定のリン脂質は膜への融合を促進し得る。例えば、カチオン性リン脂質は、膜(例えば、細胞膜または細胞内膜)の1つ以上の負荷電リン脂質と相互作用し得る。リン脂質の膜への融合は、脂質含有組成物(例えば、LNP)の1つ以上の要素(例えば、治療剤)が膜を通過すること、例えば、1つ以上の要素の標的組織への送達を可能にし得る。
分岐、酸化、環化、及びアルキンを含む修飾及び置換を有する天然種を含む非天然リン脂質種もまた企図される。例えば、リン脂質は、1つ以上のアルキン(例えば、1つ以上の二重結合が三重結合で置き換えられているアルケニル基)で官能化されても、または架橋されてもよい。適切な反応条件下で、アルキン基は、アジドへの曝露時に銅触媒付加環化を受け得る。そのような反応は、膜透過もしくは細胞認識を容易にするためにナノ粒子組成物の脂質二重層を官能化することにおいて、または標的化もしくは画像化部分(例えば、染料)などの有用な構成要素にナノ粒子組成物を結合することにおいて有用であり得る。
リン脂質としては、限定するものではないが、グリセロリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジン酸などが挙げられる。リン脂質としてはまた、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ糖脂質も挙げられる。
リン脂質の例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、DSPC(1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)の類似体またはバリアントである。特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、式(IX)の化合物:
(またはその塩であり、式中:
各R1は独立して必要に応じて置換されているアルキルであるか;あるいは必要に応じて2つのR1が介在原子と一緒になって連結され、必要に応じて置換されている単環式カルボシクリルまたは必要に応じて置換されている単環式ヘテロシクリルを形成するか;あるいは必要に応じて3つのR1が介在原子と一緒になって連結され、必要に応じて置換されている二環式カルボシクリルを形成するかまたは必要に応じて置換二環式ヘテロシクリルを形成し;
nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
Aは、以下の式:
のものであり;
L2の各例は独立して、結合または必要に応じて置換されているC1−6アルキレンであり、ここで必要に応じて置換されているC1−6アルキレンの1つのメチレン単位は、必要に応じて−O−、−N(RN)−、−S−、−C(O)−、−C(O)N(RN)−、−NRNC(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)−N(RN)−、−NRNC(O)O−、または−NRNC(O)N(RN)−で置換されており;
R2の各実例は、独立して、必要に応じて置換されているC1−30アルキル、必要に応じて置換されているC1−30アルケニル、または必要に応じて置換されているC1−30アルキニルであり;必要に応じて、ここで、R2の1つ以上のメチレン単位は独立して、必要に応じて置換されているカルボシクリレン、必要に応じて置換されているヘテロシクリレン、必要に応じて置換されているアリーレン、必要に応じて置換されているヘテロアリーレン、−N(RN)−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)N(RN)−、−NRNC(O)−、−NRNC(O)N(RN)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)−N(RN)−、−NRNC(O)O−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(=NRN)−、−C(=NRN)N(RN)−、−NRNC(=NRN)−、−NRNC(=NRN)N(RN)−、−C(S)−、−C(S)N(RN)−、−NRNC(S)−、−NRNC(S)N(RN)−、−S(O)−、−OS(O)−、−S(O)O−、−OS(O)O−、−OS(O)2−、−S(O)2O−、−OS(O)2O−、−N(RN)S(O)−、−S(O)N(RN)−、−N(RN)S(O)N(RN)−、−OS(O)N(RN)−、−N(RN)S(O)O−、−S(O)2−、−N(RN)S(O)2−、−S(O)2N(RN)−、−N(RN)S(O)2N(RN)−、−OS(O)2N(RN)−、または−N(RN)S(O)2O−で置き換えられ;
RNの各実例は、独立して、水素、必要に応じて置換されているアルキル、または窒素保護基であり;
環Bは、必要に応じて置換されているカルボシクリル、必要に応じて置換されているヘテロシクリル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり;そして
pは1または2であり;
ただし、上記化合物は式:
のものではなく、式中、R2の各実例は、独立して、非置換アルキル、非置換アルケニル、または非置換アルキニルである。
i)リン脂質ヘッドの修飾
特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、修飾リン脂質ヘッド(例えば、修飾コリン基)を含む。特定の実施形態では、修飾頭部を有するリン脂質は、修飾四級アミンを有するDSPC、またはその類似体である。例えば、式(IX)の実施形態では、少なくとも1つのR1はメチルではない。特定の実施形態では、R1の少なくとも1つは、水素でもまたはメチルでもない。特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、以下の式;
のうちの1つのもの、
またはその塩であり、式中:
各tは独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
各uは独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;かつ
各vは独立して1、2、または3である。
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、以下の式:
のうちの1つのもの、
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、以下:
のうちの1つ、
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、式(IX−a):
のもの、
またはその塩である。
特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、修飾コアを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の修飾コアを有するリン脂質は、修飾コア構造を有する、DSPCまたはその類似体である。例えば、式(IX−a)の特定の実施態様では、基Aは、以下の式:
のものではない。
特定の実施形態では、式(IX−a)の化合物は、以下の式のうちの1つ:
のもの、
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、以下:
のうち1つ、
またはその塩である。
特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、グリセリド部分の代わりに環状部分を含む。特定の実施形態では、本発明において有用なリン脂質は、グリセリド部分の代わりに環式部分を有する、DSPC(1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、またはその類似体である。特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、式(IX−b)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−b)の化合物は、式(IX−b−1)のもの:
またはその塩であり、式中:
wは、0、1、2、または3である。
特定の実施形態では、式(IX−b)の化合物は、式(IX−b−2)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−b)の化合物は、式(IX−b−3)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−b)の化合物は、式(IX−b−4)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−b)の化合物は、以下:
のうちの1つのものまたはその塩である。
(ii)リン脂質テール修飾
特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、修飾テールを含む。特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、修飾テールを有するDSPC(1,2−ジオクタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)、またはその類似体である。本明細書に記載される場合、「修飾テール」とは、より短いまたはより長い脂肪鎖、分岐が導入された脂肪鎖、置換が導入された脂肪鎖、1つ以上のメチレンが環状基またはヘテロ原子基によって置き換えられる脂肪鎖、またはそれらの任意の組み合わせを有するテールであり得る。例えば、特定の実施形態では、(IX)の化合物は、式(IX−a)のものまたはその塩であり、式中、R2の少なくとも1つの事例は、必要に応じて、C1−30アルキルで置換されているR2のそれぞれの事例であり、ここでR2の1つ以上のメチレン単位は、独立して、必要に応じて置換されているカルボシクリレン、必要に応じて置換されているヘテロシクリレン、必要に応じて置換されているアリーレン、必要に応じて置換されているヘテロアリーレン、−N(RN)−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)N(RN)−、−NRNC(O)−、−NRNC(O)N(RN)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(RN)−、−NRNC(O)O−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(=NRN)−、−C(=NRN)N(RN)−、−NRNC(=NRN)−、−NRNC(=NRN)N(RN)−、−C(S)−、−C(S)N(RN)−、−NRNC(S)−、−NRNC(S)N(RN)−、−S(O)−、−OS(O)−、−S(O)O−、−OS(O)O−、−OS(O)2−、−S(O)2O−、−OS(O)2O−、−N(RN)S(O)−、−S(O)N(RN)−、−N(RN)S(O)N(RN)−、−OS(O)N(RN)−、−N(RN)S(O)O−、−S(O)2−、−N(RN)S(O)2−、−S(O)2N(RN)−、−N(RN)S(O)2N(RN)−、−OS(O)2N(RN)−、または−N(RN)S(O)2O−で置き換えられる。
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、式(IX−c)のもの:
またはその塩であり、式中:
各xは独立して、0〜30の整数(包括的)であり;そして
各々の事例は、Gであり、独立して、必要に応じて置換されているカルボシクリレン、必要に応じて置換されているヘテロシクリレン、必要に応じて置換されているアリーレン、必要に応じて置換されているヘテロアリーレン、−N(RN)−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(O)N(RN)−、−NRNC(O)−、−NRNC(O)N(RN)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(RN)−、−NRNC(O)O−、−C(O)S−、−SC(O)−、−C(=NRN)−、−C(=NRN)N(RN)−、−NRNC(=NRN)−、−NRNC(=NRN)N(RN)−、−C(S)−、−C(S)N(RN)−、−NRNC(S)−、−NRNC(S)N(RN)−、−S(O)−、−OS(O)−、−S(O)O−、−OS(O)O−、−OS(O)2−、−S(O)2O−、−OS(O)2O−、−N(RN)S(O)−、−S(O)N(RN)−、−N(RN)S(O)N(RN)−、−OS(O)N(RN)−、−N(RN)S(O)O−、−S(O)2−、−N(RN)S(O)2−、−S(O)2N(RN)−、−N(RN)S(O)2N(RN)−、−OS(O)2N(RN)−、またはN(RN)S(O)2O−からなる群より選択される。各々の可能性は、本発明の別の実施形態に相当する。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、式(IX−c−1)のもの:
またはその塩であり、式中:
vの各々の事例は、独立して1、2、または3である。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、式(IX−c−2)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、以下の式のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、以下:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、式(IX−c−3)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、以下の式のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX−c)の化合物は、以下:
またはその塩である。
特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、第四級アミンをホスホリル基に連結するアルキル鎖がエチレンではない(例えば、nが2ではない)修飾ホスホコリン部分を含む。したがって、特定の実施形態では、本発明において有用または潜在的に有用なリン脂質は、式(IX)の化合物であり、式中、nは、1、3、4、5、6、7、8、9、または10である。例えば、特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、以下の式のうちの1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、以下:
のうちの1つ、またはその塩である。
c.代替の脂質
特定の実施形態では、本発明のリン脂質の代わりに代替の脂質が使用される。そのような代替脂質の非限定的な例としては以下が挙げられる:
d.構造脂質
本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物は、1つ以上の構造脂質を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、「構造脂質」という用語は、ステロール及びステロール部分を含有する脂質を指す。
脂質ナノ粒子への構造脂質の組み込みは、粒子中の他の脂質の凝集を軽減することを補助し得る。構造脂質は、限定するものではないが、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、アルファ−トコフェロール、ホパノイド、フィトステロール、ステロイド、及びそれらの混合物を含む群から選択され得る。いくつかの実施形態では、構造脂質はステロールである。本明細書で定義される場合、「ステロール」とは、ステロイドアルコールからなるステロイドのサブグループである。特定の実施形態では、構造脂質はステロイドである。特定の実施形態では、構造脂質はコレステロールである。特定の実施形態では、構造脂質はコレステロールの類似体である。特定の実施形態では、構造脂質はアルファ−トコフェロールである。構造脂質の例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
一実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物中の構造脂質(例えば、コレステロールなどのステロール)の量は、約20モル%〜約60モル%、約25モル%〜約55モル%、約30モル%〜約50モル%、または約35モル%〜約45モル%の範囲である。
一実施形態では、本明細書に開示される脂質組成物中の構造脂質(例えば、コレステロールなどのステロール)の量は、約25モル%〜約30モル%、約30モル%〜約35モル%、または約35〜約40モル%の範囲である。
一実施形態では、本明細書に開示される脂質組成物中の構造脂質(例えば、コレステロールなどのステロール)の量は、約24モル%、約29モル%、約34モル%、または約39モル%である。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の脂質組成物中の構造脂質(例えば、コレステロールなどのステロール)の量は、少なくとも約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60モル%である。
e.ポリエチレングリコール(PEG)−脂質
本明細書中に開示される薬学的組成物の脂質組成物は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)脂質を含み得る。
本明細書で使用される場合、「PEG脂質」という用語は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質を指す。PEG脂質の非限定的な例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEGセラミドコンジュゲート(例えば、PEG−CerC14またはPEG−Cer20)、PEG修飾ジアルキルアミン及びPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミンが挙げられる。そのような脂質はまた、PEG化脂質とも呼ばれる。例えば、PEG脂質は、PEG−c−DOMG、PEG−DMG、PEG−DLPE、PEG−DMPE、PEG−DPPC、またはPEG−DSPE脂質であってもよい。
いくつかの実施形態では、PEG脂質としては、限定するものではないが、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG−DMG)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG−DSPE)、PEG−ジステアリルグリセロール(PEG−DSG)、PEG−ジパルメトレイル、PEG−ジオレイル、PEG−ジステアリル、PEG−ジアシルグリカミド(PEG−DAG)、PEG−ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DPPE)、またはPEG−1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−アミン(PEG−c−DMA)が挙げられる。
一実施形態では、PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、PEG脂質の脂質部分としては、約C14〜約C22、好ましくは約C14〜約C16の長さを有するものを含む。いくつかの実施形態では、PEG部分、例えば、mPEG−NH2は、約1000、2000、5000、10,000、15,000または20,000ダルトンのサイズを有する。一実施形態では、PEG脂質は、PEG2k−DMGである。
一実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子は、非拡散性PEGであるPEG脂質を含み得る。非拡散性PEGの非限定的な例としては、PEG−DSG及びPEG−DSPEが挙げられる。
PEG−脂質は、米国特許第8158601号及び国際公開第WO2015/130584A2号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなど、当該技術分野において公知である。
一般に、本明細書に記載されている様々な式の他の脂質構成要素(例えば、PEG脂質)のいくつかは、その全体が参考として組み込まれる、「Compositions and Methods for Delivery of Therapeutic Agents」と題される、2016年12月10日に出願された国際特許出願第PCT/US2016/000129号に記載のとおり合成され得る。
脂質ナノ粒子組成物の脂質構成要素は、ポリエチレングリコールを含む1つ以上の分子、例えば、PEGまたはPEG修飾脂質を含んでもよい。そのような種は、代わりにPEG化脂質も呼ばれてもよい。PEG脂質は、ポリエチレングリコールで修飾された脂質である。PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物を含む非限定的な群から選択され得る。例えば、PEG脂質は、PEG−c−DOMG、PEG−DMG、PEG−DLPE、PEG−DMPE、PEG−DPPC、またはPEG−DSPE脂質であってもよい。
いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、PEG DMGの修飾型である。PEG−DMGは以下の構造を有する:
一実施形態では、本発明において有用なPEG脂質は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2012099755号に記載されているPEG化脂質であってもよい。本明細書に記載の任意のこれらの例示的なPEG脂質は、PEG鎖上にヒドロキシル基を含むように修飾され得る。特定の実施形態では、PEG脂質はPEG−OH脂質である。本明細書で一般的に定義されるように、「PEG−OH脂質」(本明細書では「ヒドロキシ−PEG化脂質」とも呼ばれる)は、脂質上に1つ以上のヒドロキシル(−OH)基を有するPEG化脂質である。特定の実施形態では、PEG−OH脂質は、PEG鎖上に1つ以上のヒドロキシル基を含む。特定の実施形態では、PEG−OHまたはヒドロキシ−PEG化脂質は、PEG鎖の末端に−OH基を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
特定の実施形態では、本発明において有用なPEG脂質は、式(VII)の化合物である。本明細書で提供されるのは、式(VII)の化合物
またはその塩であり、式中:
R3は、−OROであり;
ROは、水素、必要に応じて置換されているアルキル、または酸素保護基であり;
rは1〜100の整数(包括的)であり;
L1は、必要に応じて置換されているC1−10アルキレンであり、ここで、必要に応じて置換されているC1−10アルキレンの少なくとも1つのメチレンは独立して、必要に応じて置換されているカルボシクリレン、必要に応じて置換されているヘテロシクリレン、必要に応じて置換されているアリーレン、必要に応じて置換されているヘテロアリーレン、O、N(RN)、S、C(O)、C(O)N(RN)、NRNC(O)、C(O)O)、−OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(RN)、NRNC(O)O)、またはNRNC(O)N(RN)で置換されており;
Dは、クリックケミストリーまたは生理学的条件下で切断可能な部分によって得られる部分であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;
Aは、式:
のものであり;
L2の各事例は独立して結合または必要に応じて置換されているC1−6アルキレンであり、ここで必要に応じて置換されているC1−6アルキレンの1つのメチレン単位は必要に応じて、O、N(RN)、S、C(O)、C(O)N(RN)、NRNC(O)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、−OC(O)N(RN)、NRNC(O)O、またはNRNC(O)N(RN)で置換されており;
R2の各事例は、独立して、必要に応じて置換されているC1−30アルキル、必要に応じて置換されているC1−30アルケニル、または必要に応じて置換されているC1−30アルキニルであり;必要に応じてここで、R2の1つ以上のメチレン単位は独立して、必要に応じて置換されているカルボシクリレン、必要に応じて置換されているヘテロシクリレン、必要に応じて置換されているアリーレン、必要に応じて置換されているヘテロアリーレン、N(RN)、O、S、C(O)、C(O)N(RN)、NRNC(O)、−NRNC(O)N(RN)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(RN)、NRNC(O)O、C(O)S、SC(O)、−C(=NRN)、C(=NRN)N(RN)、NRNC(=NRN)、NRNC(=NRN)N(RN)、C(S)、C(S)N(RN)、NRNC(S)、NRNC(S)N(RN)、S(O)、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、OS(O)2、S(O)2O、OS(O)2O、N(RN)S(O)、−S(O)N(RN)、N(RN)S(O)N(RN)、OS(O)N(RN)、N(RN)S(O)O、S(O)2、N(RN)S(O)2、S(O)2N(RN)、N(RN)S(O)2N(RN)、OS(O)2N(RN)、またはN(RN)S(O)2Oで置換されており;
RNの各事例は独立して、水素、必要に応じて置換されているアルキル、または窒素保護基であり;
環Bは必要に応じて置換されているカルボシクリル、必要に応じて置換されているヘテロシクリル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールであり;そして
pは1または2である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、PEG−OH脂質である(すなわち、R3は−OROであり、ROは水素である)。特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、式(VII−OH)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、Dは、クリックケミストリー(例えば、トリアゾール)によって得られる部分である。特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、式(VII−a−1)もしくは(VII−a−2)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩であり、式中
sは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、Dは、生理学的条件下で切断可能な部分(例えば、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、尿素)である。特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、式(VII−b−1)または(VII−b−2)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、式(VII−b−1−OH)または(VII−b−2−OH)のもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、式(VII)の化合物は、以下の式の1つのもの:
またはその塩である。
特定の実施形態では、本発明において有用なPEG脂質は、PEG化脂肪酸である。特定の実施形態では、本発明において有用なPEG脂質は、式(VIII)の化合物である。本明細書で提供されるのは、式(VIII)の化合物:
またはその塩であり、式中:
R3は−OROであり;
ROは水素、必要に応じて置換されているアルキルまたは酸素保護基であり;
rは1〜100の整数(包括的)であり;
R5は、必要に応じて置換されているC10−40アルキル、必要に応じて置換されているC10−40アルケニル、または必要に応じて置換されているC10−40アルキニルであり;かつ必要に応じてR5の1つ以上のメチレン基は、必要に応じて置換されていているカルボシクリレン、必要に応じて置換されているヘテロシクリレン、必要に応じて置換されているアリーレン、必要に応じて置換されているヘテロアリーレン、N(RN)、−O、S、C(O)、C(O)N(RN)、NRNC(O)、NRNC(O)N(RN)、C(O)O、OC(O)、OC(O)O、OC(O)N(RN)、NRNC(O)O、C(O)S、SC(O)、C(=NRN)、C(=NRN)N(RN)、NRNC(=NRN)、NRNC(=NRN)N(RN)、−C(S)、C(S)N(RN)、NRNC(S)、NRNC(S)N(RN)、S(O)、OS(O)、S(O)O、OS(O)O、OS(O)2、−S(O)2O、OS(O)2O、N(RN)S(O)、S(O)N(RN)、N(RN)S(O)N(RN)、OS(O)N(RN)、N(RN)S(O)O、−S(O)2、N(RN)S(O)2、S(O)2N(RN)、N(RN)S(O)2N(RN)、OS(O)2N(RN)、またはN(RN)S(O)2Oで置換され;そして
RNの各例は独立して、水素、必要に応じて置換されているアルキル、または窒素保護基である。
特定の実施形態では、式(VIII)の化合物は、式(VIII−OH)のもの:
またはその塩である。いくつかの実施形態では、rは、45である。
特定の実施形態では、式(VIII)の化合物は、以下の式のうちの1つのもの:
またはその塩である。いくつかの実施形態では、rは45である。
さらに他の実施形態では、式(VIII)の化合物は以下:
またはその塩である。
一実施形態では、式(VIII)の化合物は、
である。
一実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物中のPEG脂質の量は、約0.1モル%〜約5モル%、約0.5モル%〜約5モル%、約1モル%〜約5モル%、約1.5モル%〜約5モル%、約2モル%〜約5モル%、約0.1モル%〜約4モル%、約0.5モル%〜約4モル%、約1モル%〜約4モル%、約1.5モル%〜約4モル%、約2モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約3モル%、約0.5モル%〜約3モル%、約1モル%〜約3モル%、約1.5モル%〜約3モル%、約2モル%〜約3モル%、約0.1モル%〜約2モル%、約0.5モル%〜約2モル%、約1モル%〜約2モル%、約1.5モル%〜約2モル%、約0.1モル%〜約1.5モル%、約0.5モル%〜約1.5モル%、または約1モル%〜約1.5モル%の範囲である。
一実施形態では、本明細書に開示されている脂質組成物中のPEG脂質の量は、約2モル%である。一実施形態では、本明細書に開示の脂質組成物中のPEG−脂質の量は、約1.5モル%である。
一の実施形態では、本明細書に開示されている脂質組成物中のPEG脂質の量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5モル%である。
いくつかの態様では、本明細書に開示されている薬学的組成物の脂質組成物は、PEG−脂質を含まない。
f.他のイオン性アミノ脂質
本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)による脂質に加えてまたはその代わりに、1つ以上のイオン性アミノ脂質を含み得る。
イオン性脂質は、3−(ジドデシルアミノ)−N1,N1,4−トリドデシル−1−ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1−[2−(ジドデシルアミノ)エチル]−N1,N4,N4−トリドデシル−1,4−ピペラジンジエタノールアミン(KL22)、14,25ジトリデシル−15,18,21,24−テトラアザ−オクタトリアコンタン(KL25)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノメチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−K−DMA)、ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル4−(ジメチルアミノ)ブタン酸(DLin−MC3−DMA)、2,2−ジリノレイル−4−(2−ジメチルアミノエチル)−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)、1,2−ジオレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DODMA)、(13Z,165Z)−N,N−ジメチル−3−ノニドコサ−13−16−ジエン−1−アミン(L608)、2({8[(3β)−コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(オクチル−ClinDMA)、(2R)−2−({8[(3β)]−コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,N−ジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(オクチル−CLinDMA(2R))、及び(2S)−2−({8[(3β)コレスト−5−エン−3−イルオキシ]オクチル}オキシ)−N,Nジメチル−3−[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン−1−イルオキシ]プロパン−1−アミン(オクチル−ClinDMA(2S))からなる非限定的な群から選択される。これらに加えて、イオン性アミノ脂質はまた、環状アミン基を含む脂質であってもよい。
イオン性脂質はまた、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2017/075531A1号に開示されている化合物であってもよい。例えば、イオン性アミノ脂質としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
及びそれらの任意の組み合わせ。
イオン性脂質はまた、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2015/199952A1号に開示されている化合物であってもよい。例えば、イオン性アミノ脂質としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
及びそれらの任意の組み合わせ。
g.ナノ粒子組成物
本明細書に開示される薬学的組成物の脂質組成物は、上記のものに加えて1つ以上の構成要素を含み得る。例えば、脂質組成物は、1つ以上の透過性増強剤分子、炭水化物、ポリマー、表面改質剤(例えば、界面活性剤)、または他の構成要素を含んでもよい。例えば、透過性増強剤分子は、米国特許出願公開第2005/0222064号に記載されている分子であってもよい。炭水化物は、単糖(例えば、グルコース)及び多糖(例えば、グリコーゲンならびにそれらの誘導体及び類似体)を含んでもよい。
ポリマーは、本明細書に開示されている薬学的組成物(例えば、脂質ナノ粒子形態の薬学的組成物)を封入するかまたは部分的に封入するために含まれてもよく、及び/または使用されてもよい。ポリマーは生分解性であっても、及び/または生体適合性であってもよい。ポリマーは、限定するものではないが、ポリアミン類、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカルバメート類、ポリウレア類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリイミド類、ポリスルホン類、ポリウレタン類、ポリアセチレン類、ポリエチレン類、ポリエチレンイミン類、ポリイソシアネート類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリアクリロニトリル類、及びポリアリレート類から選択され得る。
脂質組成物とポリヌクレオチド範囲との間の比率は、約10:1〜約60:1(wt/wt)であってもよい。
いくつかの実施形態では、脂質組成物とポリヌクレオチドとの間の比率は、約10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1または60:1(wt/wt)であり得る。いくつかの実施形態では、治療剤をコードするポリヌクレオチドに対する脂質組成物のwt/wt比は、約20:1または約15:1である。
一実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を、脂質:ポリヌクレオチド重量比5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1もしくは70:1で、またはある範囲またはこれらの任意の比率、例えば、限定するものではないが、5:1〜約10:1、約5:1〜約15:1、約5:1〜約20:1、約5:1〜約25:1、約5:1〜約30:1、約5:1〜約35:1、約5:1〜約40:1、約5:1〜約45:1、約5:1〜約50:1、約5:1〜約55:1、約5:1〜約60:1、約5:1〜約70:1、約10:1〜約15:1、約10:1〜約20:1、約10:1〜約25:1、約10:1〜約30:1、約10:1〜約35:1、約10:1〜約40:1、約10:1〜約45:1、約10:1〜約50:1、約10:1〜約55:1、約10:1〜約60:1、約10:1〜約70:1、約15:1〜約20:1、約15:1〜約25:1、約15:1〜約30:1、約15:1〜約35:1、約15:1〜約40:1、約15:1〜約45:1、約15:1〜約50:1、約15:1〜約55:1、約15:1〜約60:1もしくは約15:1〜約70:1で含んでもよい。
一実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子は、ポリヌクレオチドを、約0.1mg/ml〜2mg/ml、例えば、限定するものではないが、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1.0mg/ml、1.1mg/ml、1.2mg/ml、1.3mg/ml、1.4mg/ml、1.5mg/ml、1.6mg/ml、1.7mg/ml、1.8mg/ml、1.9mg/ml、2.0mg/mlまたは2.0mg/ml超などの濃度で含んでもよい。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)として処方される。したがって、本開示はまた、(i)本明細書に記載の式(I)または(III)の化合物などの送達剤を含む脂質組成物、及び(ii)目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むナノ粒子組成物を提供する。そのようなナノ粒子組成物において、本明細書に開示される脂質組成物は、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをカプセル化し得る。
ナノ粒子組成物は、典型的にはマイクロメートル以下程度の大きさであり、脂質二重層を含んでもよい。ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム(例えば、脂質小胞)、及びリポプレックスを包含する。例えば、ナノ粒子組成物は、500nm以下の直径を有する脂質二重層を有するリポソームであってもよい。
ナノ粒子組成物は、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、及びリポプレックスを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、1つ以上の脂質二重層を含む小胞である。特定の実施形態では、ナノ粒子組成物は、水性区画によって分離された2つ以上の同心二重層を含む。脂質二重層は、官能化されてもよいし、及び/または互いに架橋されてもよい。脂質二重層は、1つ以上のリガンド、タンパク質、またはチャネルを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、本開示のナノ粒子組成物は、式(I)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)による少なくとも1つの化合物を含む。例えば、ナノ粒子組成物は、1つ以上の化合物1〜147、または1つ以上の化合物1〜342を含んでもよい。ナノ粒子組成物はまた、様々な他の構成要素を含んでもよい。例えば、ナノ粒子組成物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)による脂質に加えて、以下のような1つ以上の他の脂質を含んでもよい。(i)少なくとも1つのリン脂質、(ii)少なくとも1つの構造脂質、(iii)少なくとも1つのPEG脂質、または(iv)それらの任意の組み合わせ。例えば、式IIIによる脂質が本発明の脂質ナノ粒子複合体に使用される場合、構造脂質の包含は任意であり得る。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(I)の化合物(例えば、化合物18、25、26または48)を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(I)の化合物(例えば、化合物18、25、26または48)及びリン脂質(例えば、DSPC)を含む。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(III)の化合物(例えば、化合物236)を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(III)の化合物(例えば、化合物236)及びリン脂質(例えば、DOPEまたはDSPC)を含む。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(I)の化合物(例えば、化合物18、25、26または48)からなるかまたは本質的になる脂質組成物を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(I)の化合物(例えば、化合物18、25、26または48)及びリン脂質(例えば、DSPC)からなるかまたは本質的になる脂質組成物を含む。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(III)の化合物(例えば、化合物236)からなるか、または本質的にそれからなる脂質組成物を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(III)の化合物(例えば、化合物236)及びリン脂質(例えば、DOPEまたはDSPC)からなるかまたは本質的になる脂質組成物を含む。
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン性脂質、構造脂質、リン脂質、PEG修飾脂質、及びmRNAを含む。いくつかの実施形態では、LNPは、イオン性脂質、PEG修飾脂質、ステロール及びリン脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約20〜60%のイオン性脂質:約5〜25%のリン脂質:約25〜55%のステロール;及び約0.5〜15%のPEG修飾脂質というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約50%のイオン性脂質、約1.5%のPEG修飾脂質、約38.5%のコレステロール、及び約10%のリン脂質というモル比を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約55%のイオン性脂質、約2.5%のPEG脂質、約32.5%のコレステロール、及び約10%のリン脂質というモル比を含む。いくつかの実施形態では、イオン性脂質は、イオン性アミノ脂質であり、中性脂質はリン脂質であり、ステロールはコレステロールである。いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5のイオン性脂質:コレステロール:DSPC:PEG脂質というモル比を有する。いくつかの実施形態では、イオン性脂質は化合物18または化合物236であり、PEG脂質は化合物428またはPEG−DMGである。
いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5の化合物18:コレステロール:リン脂質:化合物428というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5の化合物18:コレステロール:DSPC:化合物428というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5の化合物18:コレステロール:リン脂質:PEG−DMGというモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5の化合物18:コレステロール:DSPC:PEG−DMGというモル比を有する。
いくつかの実施形態では、LNPは、50:38.5:10:1.5の化合物236:コレステロール:リン脂質:化合物428というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは50:38.5:10:1.5の化合物236:コレステロール:DSPC:化合物428というモル比を有する。
いくつかの実施形態では、LNPは、40:38.5:20:1.5の化合物18:コレステロール:リン脂質:化合物428というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、40:38.5:20:1.5の化合物18:コレステロール:DSPC:化合物428というモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、40:38.5:20:1.5の化合物18:コレステロール:リン脂質:PEG−DMGというモル比を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、40:38.5:20:1.5の化合物18:コレステロール:DSPC:PEG−DMGというモル比を有する。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、化合物18:リン脂質:コレステロール:化合物428が50:10:38.5:1.5というモル比である製剤を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、化合物18:DSPC:コレステロール:化合物428が50:10:38.5:1.5というモル比である製剤を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、化合物18:リン脂質:コレステロール:PEG−DMGが50:10:38.5:1.5というモル比である製剤を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、化合物18:DSPC:コレステロール:PEG−DMGが50:10:38.5:1.5というモル比である製剤を有し得る。
いくつかの実施形態では、LNPは、0.4未満の多分散度値を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、中性pHで正味の中性電荷を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、50〜150nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、80〜100nmの平均直径を有する。
本明細書で一般的に定義されるように、「脂質」という用語は、疎水性または両親媒性の性質を有する低分子を指す。脂質は天然のものでも合成のものでもよい。脂質の種類の例としては、限定するものではないが、脂肪類、ワックス類、ステロール含有代謝産物類、ビタミン類、脂肪酸類、グリセロ脂質類、グリセロリン脂質類、スフィンゴ脂質類、糖脂質類、及びポリケチド類、ならびにプレノール脂質類が挙げられる。いくつかの例では、いくつかの脂質の両親媒性によって、それらは水性媒体中でリポソーム、小胞または膜を形成することになる。
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子(LNP)は、イオン性脂質を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「イオン性脂質」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を有し、そして1つ以上の荷電部分を含む脂質を指し得る。いくつかの実施形態では、イオン性脂質は、正電荷または負電荷を帯びていてもよい。イオン性脂質は正に帯電していてもよく、その場合それは「カチオン性脂質」と呼ばれる場合がある。特定の実施形態では、イオン性脂質分子は、アミン基を含んでもよく、そしてイオン性アミノ脂質と称されてもよい。本明細書中で使用される場合、「荷電部分」は、形式的な電荷を帯びた化学部分、例えば、一価(+1、または−1)、二価(+2、または−2)、三価(+3、または−3)などである。荷電部分は、アニオン性(すなわち、負に荷電)またはカチオン性(すなわち、正に荷電)であってもよい。正電荷部分の例としては、アミン基(例えば、一級、二級、及び/または三級アミン)、アンモニウム基、ピリジニウム基、グアニジン基、及びイミジゾリウム基が挙げられる。特定の実施形態では、荷電部分は、アミン基を含む。負に帯電した基またはその前駆体の例としては、カルボキシレート基、スルホネート基、スルフェート基、ホスホネート基、ホスフェート基、ヒドロキシル基などが挙げられる。荷電部分の電荷は、ある場合には、環境条件によって変化し得、例えば、pHの変化は、その部分の電荷を変化させ得、及び/またはその部分を荷電または非荷電にし得る。一般に、分子の電荷密度は、所望のとおりに選択されてもよい。
「荷電」または「荷電部分」という用語は、分子上の「部分的負電荷」または「部分的正電荷」を指すものではないことを理解されたい。「部分的負電荷」及び「部分的正電荷」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を与えられる。「部分的負電荷」とは、官能基が、電子密度が結合の1つの原子に向かって引き寄せられ、原子上に部分的負電荷を生成するように分極される結合を含む場合に生じ得る。当業者は、一般的には、このように分極化し得る結合を認識する。
いくつかの実施形態では、イオン性脂質はイオン性アミノ脂質であり、当該技術分野において「イオン性カチオン性脂質」と呼ばれることもある。一実施形態では、イオン性アミノ脂質は、リンカー構造を介して結合している正電荷を帯びた親水性頭部及び疎水性テールを有し得る。
これらに加えて、イオン性脂質はまた、環状アミン基を含む脂質であってもよい。
一実施形態では、イオン性脂質は、限定するものではないが、国際公開第WO2013086354号及び同第WO2013116126号に記載されているイオン性脂質から選択され得て;それぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
さらに別の実施形態では、イオン性脂質は、限定するものではないが、米国特許第7,404,969号(これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の式CLI−CLXXXXIIから選択され得る。
一実施形態では、脂質は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2012170889号に記載されているものなどの切断可能な脂質であってもよい。一実施形態では、脂質は、当該技術分野で公知の方法によって、及び/または国際公開第WO2013086354号(それぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように合成され得る。
ナノ粒子組成物は様々な方法によって特徴付けることができる。例えば、顕微鏡法(例えば、透過型電子顕微鏡法または走査型電子顕微鏡法)を使用して、ナノ粒子組成物の形態及びサイズ分布を調べてもよい。動的光散乱法または電位差測定法(例えば、電位差滴定)を用いて、ゼータ電位を測定してもよい。動的光散乱もまた粒径を決定するために利用してもよい。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd,Malvern,Worcestershire,UK)などの機器を使用して、粒径、多分散指数、及びゼータ電位などのナノ粒子組成物の複数の特性を測定してもよい。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(I)の化合物(例えば、化合物18、25、26または48)からなるかまたは本質的になる脂質組成物を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、式(I)の化合物(例えば、化合物18、25、26または48)及びリン脂質(例えば、DSPCまたはMSPC)からなるか、または本質的にそれからなる脂質組成物を含む。
ナノ粒子組成物は様々な方法によって特徴付けられ得る。例えば、顕微鏡法(例えば、透過型電子顕微鏡法または走査型電子顕微鏡法)を使用して、ナノ粒子組成物の形態及びサイズ分布を調べてもよい。動的光散乱法または電位差測定法(例えば、電位差滴定)を用いて、ゼータ電位を測定してもよい。動的光散乱もまた粒径を決定するために利用してもよい。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd,Malvern,Worcestershire,UK)などの機器を使用して、粒径、多分散指数、及びゼータ電位などのナノ粒子組成物の複数の特性を測定してもよい。
ナノ粒子のサイズは、限定するものではないが、炎症などの生物学的反応に対抗するのに役立ち得るか、またはポリヌクレオチドの生物学的効果を増大し得る。
本明細書で使用される場合、ナノ粒子組成物の文脈における「サイズ」または「平均サイズ」とは、ナノ粒子組成物の平均直径を指す。
一実施形態では、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、約10〜約100nm、例えば、限定するものではないが、約10〜約20nm、約10〜約30nm、約10〜約40nm、約10〜約50nm、約10〜約60nm、約10〜約70nm、約10〜約80nm、約10〜約90nm、約20〜約30nm、約20〜約40nm、約20〜約50nm、約20〜約60nm、約20〜約70nm、約20〜約80nm、約20〜約90nm、約20〜約100nm、約30〜約40nm、約30〜約50nm、約30〜約60nm、約30〜約70nm、約30〜約80nm、約30〜約90nm、約30〜約100nm、約40〜約50nm、約40〜約60nm、約40〜約70nm、約40〜約80nm、約40〜約90nm、約40〜約100nm、約50〜約60nm、約50〜約70nm、約50〜約80nm、約50〜約90nm、約50〜約100nm、約60〜約70nm、約60〜約80nm、約60〜約90nm、約60〜約100nm、約70〜約80nm、約70〜約90nm、約70〜約100nm、約80〜約90nm、約80〜約100nm及び/または約90〜約100nmの直径を有する脂質ナノ粒子に処方される。
一実施形態では、ナノ粒子は、約10〜500nmの直径を有する。一実施形態では、ナノ粒子は、100nm超、150nm超、200nm超、250nm超、300nm超、350nm超、400nm超、450nm超、500nm超、550nm超、600nm超、650nm超、700nm超、750nm超、800nm超、850nm超、900nm超、950nm超、または1000nm超の直径を有する。
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物の最大寸法は、1μm以下(例えば、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm、またはそれ以下)である。
ナノ粒子組成物は比較的均質であり得る。多分散指数は、ナノ粒子組成物の均一性、例えば、ナノ粒子組成物の粒径分布を示すために使用され得る。小さい(例えば、0.3未満の)多分散性指数は一般に、狭い粒径分布を示す。ナノ粒子組成物は、約0〜約0.25、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、または0.25という多分散指数を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のナノ粒子組成物の多分散指数は、約0.10〜約0.20であってもよい。
ナノ粒子組成物のゼータ電位は、組成物の界面動電位を示すために使用してもよい。例えば、ゼータ電位は、ナノ粒子組成物の表面電荷を表す場合がある。より高い電荷を有する種は、細胞、組織、及び体内の他の要素と望ましくなく相互作用する可能性があるので、正または負の比較的低い電荷を有するナノ粒子組成物が一般に望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるナノ粒子組成物のゼータ電位は、約−10mV〜約+20mV、約−10mV〜約+15mV、約10mV〜約+10mV、約−10mV〜約+5mV、約−10mV〜約0mV、約−10mV〜約−5mV、約−5mV〜約+20mV、約−5mV〜約+15mV、約−5mV〜約+10mV、約−5mV〜約+5mV、約−5mV〜約0mV、約0mV〜約+20mV、約0mV〜約+15mV、約0mV〜約+10mV、約0mV〜約+5mV、約+5mV〜約+20mV、約+5mV〜約+15mV、または約+5mV〜約+10mVであってもよい。
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子のゼータ電位は、約0mV〜約100mV、約0mV〜約90mV、約0mV〜約80mV、約0mV〜約70mV、約0mV〜約60mV、約0mV〜約50mV、約0mV〜約40mV、約0mV〜約30mV、約0mV〜約20mV、約0mV〜約10mV、約10mV〜約100mV、約10mV〜約90mV、約10mV〜約80mV、約10mV〜約70mV、約10mV〜約60mV、約10mV〜約50mV、約10mV〜約40mV、約10mV〜約30mV、約10mV〜約20mV、約20mV〜約100mV、約20mV〜約90mV、約20mV〜約80mV、約20mV〜約70mV、約20mV〜約60mV、約20mV〜約50mV、約20mV〜約40mV、約20mV〜約30mV、約30mV〜約100mV、約30mV〜約90mV、約30mV〜約80mV、約30mV〜約70mV、約30mV〜約60mV、約30mV〜約50mV、約30mV〜約40mV、約40mV〜約100mV、約40mV〜約90mV、約40mV〜約80mV、約40mV〜約70mV、約40mV〜約60mV、及び約40mV〜約50mVであってもよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子のゼータ電位は、約10mV〜約50mV、約15mV〜約45mV、約20mV〜約40mV、及び約25mV〜約35mVであってもよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子のゼータ電位は、約10mV、約20mV、約30mV、約40mV、約50mV、約60mV、約70mV、約80mV、約90mV、及び約100mVであってもよい。
ポリヌクレオチドの「カプセル化効率」という用語は、提供された初期量に対する、調製後にナノ粒子組成物によってカプセル化されるか、そうでなければナノ粒子組成物と会合するポリヌクレオチドの量を表す。本明細書で使用される場合、「カプセル化」とは、完全な、実質的な、または部分的な囲い込み、閉じ込め、包含、または内包を指し得る。
カプセル化効率は、高いことが望ましい(例えば、100%に近い)。カプセル化効率は、例えば、ナノ粒子組成物を1つ以上の有機溶媒または界面活性剤で粉砕する前後の、ナノ粒子組成物を含有する溶液中のポリヌクレオチドの量を比較することによって測定され得る。
蛍光は、溶液中の遊離ポリヌクレオチドの量を測定するために使用され得る。本明細書に記載のナノ粒子組成物では、ポリヌクレオチドのカプセル化効率は、少なくとも50%、例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であり得る。いくつかの実施形態では、カプセル化効率は少なくとも80%であってもよい。特定の実施形態では、カプセル化効率は少なくとも90%であってもよい。
本明細書に開示される薬学的組成物中に存在するポリヌクレオチドの量は、ポリヌクレオチドのサイズ、所望の標的及び/または用途、あるいはナノ粒子組成物の他の特性、ならびにポリヌクレオチドの特性などの複数の要因に依存し得る。
例えば、ナノ粒子組成物に有用なmRNAの量は、mRNAのサイズ(長さ、または分子量として表される)、配列、及び他の特徴に依存し得る。ナノ粒子組成物中のポリヌクレオチドの相対量もまた変動し得る。
本開示の脂質ナノ粒子組成物中に存在する脂質組成物及びポリヌクレオチドの相対量は、有効性及び耐容性を考慮して最適化され得る。ポリヌクレオチドとしてmRNAを含む組成物の場合、N:P比は有用な測定基準として役立ち得る。
ナノ粒子組成物のN:P比が、発現及び忍容性の両方を制御するので、低いN:P比及び強い発現を有するナノ粒子組成物が望ましい。N:P比は、ナノ粒子組成物中の脂質対RNAの比に従って変わる。
一般に、より低いN:P比が好ましい。1つ以上のRNA、脂質、及びそれらの量は、約2:1〜約30:1、例えば、2:1、3:1、4:1、5:1,6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1、20:1、22:1、24:1、26:1、28:1、または30:1などのN:P比を提供するように選択され得る。特定の実施形態では、N:P比は、約2:1〜約8:1であり得る。他の実施形態では、N:P比は約5:1〜約8:1である。特定の実施形態では、N:P比は5:1から6:1の間である。特定の一態様では、N:P比は約5.67:1である。
ナノ粒子組成物を提供することに加えて、本開示はまた、ポリヌクレオチドを封入することを含む脂質ナノ粒子を製造する方法も提供する。そのような方法は、本明細書に開示されている薬学的組成物のいずれかを使用すること、及び当該分野で公知の脂質ナノ粒子の製造方法に従って脂質ナノ粒子を製造することを包含する。例えば、Wang et al.(2015)「Delivery of oligonucleotides with lipid nanoparticles」Adv.Drug Deliv.Rev.87:68〜80;Silva et al.(2015)「Delivery Systems for Biopharmaceuticals」.Part I:Nanoparticles and Microparticles」Curr.Pharm.Technol.16:940−954;Naseri et al.(2015)「Solid Lipid Nanoparticles and Nanostructured Lipid Carriers:Structure,Preparation and Application」Adv.Pharm.Bull.5:305−13;Silva et al.(2015)「Lipid nanoparticles for the delivery of biopharmaceuticals」Curr.Pharm.Biotechnol.16:291−302、及びその中で引用されている引用文献を参照のこと。
薬学的組成物
本開示は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、担体または希釈剤と組み合わせて、本明細書に記載のmRNAまたはナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を含む薬学的組成物を包含する。特定の実施形態では、mRNAは、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中に存在する。特定の実施形態では、mRNAまたはナノ粒子は薬学的組成物中に存在する。様々な実施形態では、この薬学的組成物中に存在する1つ以上のmRNAは、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中にカプセル化されている。特定の実施形態では、第1のmRNA対第2のmRNAのモル比は、約1:50、約1:25、約1:10、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、または約5:1、約10:1、約25:1または約50:1である。特定の実施形態では、第1のmRNA対第2のmRNAのモル比は1:1より大きい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、目的の抗原(Ag)をコードするmRNA、及び目的の抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチド(例えば、免疫増強剤(IP)、例えば、STINGポリペプチド)をコードするmRNAを含み、ここで目的の抗原(Ag)をコードするmRNA及び目的の抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチド(例えば、免疫増強剤、例えば、STINGポリペプチド)(IP)をコードするmRNAは、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1または20:1というAg:IP質量比で処方される。あるいは、IP:Ag質量比は、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、または1:20であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、1:1、1.25:1、1.50:1、1.75:1、2.0:1、2.25:1、2.50:1、2.75:1、3.0:1、3.25:1、3.50:1、3.75:1、4.0:1、4.25:1、4.50:1、4.75:1または5:1という目的の抗原をコードするmRNA対、目的の抗原に対する免疫を増強するポリペプチド(例えば、免疫増強剤、例えば、STINGポリペプチド)をコードするmRNAのAg:IP質量比で処方される。いくつかの実施形態では、この組成物は、目的の抗原をコードするmRNA対、目的の抗原に対する免疫を増強するポリペプチド(例えば、免疫増強剤、例えば、STINGポリペプチド)をコードするmRNAの5:1という質量比で処方される(5:1というAg:IP;または、1:5というIP:Ag比)。いくつかの実施形態では、この組成物は、目的の抗原をコードするmRNA対、目的の抗原に対する免疫を増強するポリペプチド(例えば、免疫増強剤、例えば、STINGポリペプチド)をコードするmRNAの10:1という質量比で処方される(10:1というAg:IP;または、1:10というIP:Ag比)。
免疫増強剤をコードするmRNA構築物及び目的の抗原をコードするmRNA構築物の両方を含む共処方物は、CD8+T細胞の初回刺激及び抗原特異的免疫応答(例えば、抗腫瘍免疫)の誘導に特に有益であり得る。その技術において、病原体関連分子パターン(PAMP)による抗原提示細胞(APC)の直接活性化は、CD8+T細胞初回刺激に必要であるが、炎症性メディエータにより間接的に活性化されるAPCは、CD8+T細胞の初回刺激には効果的でないと報告されている(Kratky,W.et al.(2011)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108:17414−17419)。従って、免疫増強剤及び目的の抗原をコードするmRNA構築物の共処方は、APCを直接活性化しそしてCD8+T細胞を初回刺激するために特に有益であり得る。
薬学的組成物は、1つ以上の追加の活性物質、例えば、治療的及び/または予防的活性物質を必要に応じて含み得る。本開示の薬学的組成物は、無菌であるか及び/または発熱物質を含まないものであり得る。薬剤の処方及び/または製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21sted.,Lippincott Williams&Wilkins,2005(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見出され得る。特定の実施形態では、薬学的組成物は、mRNA及び脂質ナノ粒子、またはそれらの複合体を含む。
本明細書に記載の薬学的組成物の製剤は、薬理学の分野において公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤及び/または1つ以上の他の副成分と会合させ、次いで必要に応じて及び/または望ましい場合には、製品を、望ましい単回または複数回投与単位に分割、成形及び/または包装するステップを包含する。
本開示による薬学的組成物中の、活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/または任意のさらなる成分の相対量は、処置される対象の同一性、大きさ、及び/または状態に応じて、さらにその組成物が投与される経路に依存して変化する。例として、組成物は、0.1%〜100%、例えば、0.5%〜70%、1%〜30%、5%〜80%、または少なくとも80%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
本開示のmRNAは、1つ以上の賦形剤を用いて以下を行うように処方され得る:(1)安定性を増大する;(2)細胞トランスフェクションを増大させる;(3)持続放出または遅延放出(例えば、mRNAのデポー製剤からの)を可能にする;(4)生体内分布を変える(例えば、mRNAを特定の組織または細胞型に標的化する);(5)インビボでmRNAによってコードされるポリペプチドの翻訳を増大させる;及び/または(6)インビボでmRNAによってコードされるポリペプチドの放出プロファイルを変える。任意のかつ全ての溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤などの従来の賦形剤に加えて、本開示の賦形剤は、限定するものではないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子(例えば、リポソーム及びミセル)、ポリマー、リポプレックス、コア−シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、炭水化物、mRNAでトランスフェクトされた細胞(例えば、対象への移植用)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、及びそれらの組み合わせが含まれてもよい。したがって、本開示の製剤は、一緒になってmRNAの安定性を高める、mRNAによる細胞トランスフェクションを高める、mRNAによってコードされるポリペプチドの発現を高める、及び/またはmRNAコードポリペプチドの放出プロファイルを変化させる各々の量の1種以上の賦形剤を含んでもよい。さらに、本開示のmRNAは、自己アセンブル核酸ナノ粒子を使用して処方され得る。
薬学的組成物を配合するための様々な賦形剤及び組成物を調製するための技術は、当該技術分野において公知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006(全体として参照によって本明細書に組み込まれている)を参照のこと)。通常の賦形剤媒体の使用は、任意の通常の賦形剤媒体が物質またはその誘導体と不適合であり得る場合を除いて(例えば、何らかの望ましくない生物学的効果を生じさせることによって、またはそうでなければ薬学的組成物の任意の他の構成要素(複数可)と有害な方法で相互作用することによって)、本開示の範囲内で企図され得る。賦形剤としては、例えば、粘着防止剤、酸化防止剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング、流動促進剤(glidant)(流動促進剤(flow enhancer))、滑剤、防腐剤、印刷インキ、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和水が挙げられ得る。例示的な賦形剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、レチニルパルミテート、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグリコール酸デンプン、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトール。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される塩を含み得る。本開示の製剤に含まれ得る薬学的に許容される塩の例としては、限定するものではないが、酸付加塩、アルカリまたはアルカリ土類金属塩、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩;などが挙げられる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エプタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられ、これには、限定するものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、少なくとも1種類のポリヌクレオチドを含有してもよい。非限定的な例として、この製剤は、本明細書に記載の1、2、3、4、5または5を超えるmRNAを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、ポリペプチドをコードする少なくとも1つのmRNA、ならびに少なくとも1つの核酸配列、例えば、限定するものではないが、siRNA、shRNA、snoRNA、及びmiRNAを含んでもよい。
例えば、非経口投与用の液体剤形としては、限定するものではないが、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、及び/またはエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で通常使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、落花生油、とうもろこし油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び/または懸濁剤を含んでもよい。非経口投与のための特定の実施形態では、組成物は、可溶性剤、例えば、CREMAPHOR(登録商標)、アルコール、油、改質油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及び/またはそれらの組み合わせと混合される。
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散剤、湿潤剤、及び/または懸濁剤を使用して公知の技術に従って処方されてもよい。無菌注射用製剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、無毒性の非経口的に許容される希釈剤及び/または溶媒中の無菌注射用溶液、懸濁液、及び/またはエマルジョンであり得る。許容されるビヒクル及び溶媒の中では、水、リンゲル液(U.S.P.)、及び等張塩化ナトリウム溶液が使用されてもよい。無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油を使用してもよい。オレイン酸などの脂肪酸を、注射剤の調製に使用してもよい。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、及び/または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つのmRNAを含む薬学的組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与される。本明細書で提供される薬学的組成物の説明は主に、ヒトへの投与に適した薬学的組成物を対象としているが、そのような組成物は一般に任意の他の動物、例えば、非ヒト哺乳動物への投与に適していることが当業者には理解されよう。組成物を様々な動物への投与に適したものにするためのヒトへの投与に適した薬学的組成物の改変は十分に理解されており、当業者の獣医薬理学者は、あるとしても単に通常の実験によって、そのような改変を設計及び/または実施し得る。薬学的組成物の投与が企図される対象としては、限定するものではないが、ヒト及び/または他の霊長類;哺乳動物、例としては商業的に関連する哺乳動物、例えば、牛、豚、馬、羊、猫、犬、マウス、及び/またはラット;及び/または、鳥類、例としては、商業的に関連する鳥類、例えば、家禽、鶏、アヒル、ガチョウ、及び/または七面鳥が挙げられる。特定の実施形態では、対象は本明細書に記載の2つ以上のmRNAが提供される。特定の実施形態では、第1及び第2のmRNAは、同時にまたは異なる時間に、例えば、順次に対象に提供される。特定の実施形態では、例えば、同じ細胞による両方のmRNAの取り込みを容易にするために、第1及び第2のmRNAが、同じ薬学的組成物または製剤で対象に提供される。
本開示はまた、免疫応答を増強するポリペプチドをコードするmRNAを含む容器を備えるキットを包含する。別の実施形態では、このキットは、免疫応答を増強するポリペプチドをコードするmRNA、ならびに1つ以上の目的の抗原をコードする1つ以上の追加のmRNAを含む容器を備える。他の実施形態では、このキットは、免疫応答を増強するポリペプチドをコードするmRNAを含む第1の容器と、目的の1つ以上の抗原をコードする1つ以上のmRNAを含む第2の容器とを備える。特定の実施形態では、免疫応答を増強するためのmRNA、及び抗原(複数可)をコードするmRNA(複数可)は、同じまたは異なるナノ粒子及び/または薬学的組成物中に存在する。特定の実施形態では、mRNAは、凍結乾燥、乾燥、またはフリーズドライされている。
免疫応答を増強する方法
本開示は、対象、例えば、ヒト対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、目的の抗原(複数可)に対する免疫応答が増強されるように、以下をコードする少なくとも1つのmRNA構築物を含む本開示の組成物(またはその脂質ナノ粒子、またはその薬学的組成物)を対象に投与することを包含する:(i)目的の少なくとも1つの抗原、及び(ii)目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチド。一実施形態では、免疫応答を増強することは、サイトカイン産生を刺激することを包含する。別の実施形態では、免疫応答を増強することは、細胞性免疫(T細胞応答)を増強すること、例えば、抗原特異的CD8+T細胞活性を刺激すること、抗原特異的CD4+T細胞活性を刺激すること、または「エフェクターメモリー」CD62LloT細胞の割合を増大させることを包含する。別の実施形態では、免疫応答を増強することは、抗原特異的抗体産生を刺激することなどの体液性免疫(B細胞応答)を増強することを包含する。
この方法の一実施形態では、免疫増強剤mRNAは、I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激するポリペプチドをコードする(例えば、免疫増強剤は、STING、IRF3、IRF7または本明細書に記載の任意のさらなる免疫増強剤などのポリペプチドをコードする)。この方法の他の様々な実施形態では、免疫増強剤は、NFκB経路シグナル伝達を刺激するか、炎症反応を刺激するか、または樹状細胞の発達、活性もしくは動員を刺激するポリペプチドをコードする。一実施形態では、この方法は、I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激するmRNA組成物を対象に投与する前に、樹状細胞の発達、活性または動員を刺激するmRNA組成物を対象に投与することを包含する。例えば、樹状細胞の発達または活性を刺激するmRNA組成物は、I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激するmRNA組成物を投与する1〜30日前、例えば、3日、5日、7日、10日、14日、21日、28日に投与され得る。
本開示の免疫増強剤による、目的の抗原(複数可)に対する対象における免疫応答の増強は、限定するものではないが、実施例に記載の方法を含む、免疫応答を評価するために当該分野で確立されている様々な方法によって評価され得る。例えば、種々の実施形態では、増強は、IFN−γもしくはTNF−αについてのCD8+細胞の細胞内染色(ICS)のレベル、脾臓もしくは末梢のCD8b+細胞の割合、または脾臓もしくは末梢の「エフェクターメモリー」CD62Llo細胞の割合によって評価される。
STING媒介シグナル伝達の結果は、異なる細胞型の間で異なり得、特にT細胞は、他の細胞型(例えば、マクロファージ及び樹状細胞)と比較してより強いSTING応答を示し、T細胞はSTINGの発現レベル増大を示すことが報告されている(Gulen,M.F.et al.(2017)Nature Comm.8(1):427)。したがって、STINGシグナル伝達の大きさは、異なるエフェクター応答をもたらし得、それにより、用量、細胞型発現及び/または目的の抗原との共処方(例えば、Ag:STING比)に応じてSTING媒介応答の調整及び微調整を可能にし得る。実施例に記載されているデータでは、STINGが抗原特異的免疫応答の増強において有効性を示す広い治療ウィンドウがあることが示されている。
本開示の組成物は、有効量で対象に投与される。一般に、有効量の組成物は、細胞内でのコードされたポリペプチドの効率的な産生を可能にするであろう。効率のための測定基準としては、ポリペプチド翻訳(ポリペプチド発現によって示される)、mRNA分解のレベル、及び免疫応答指標が挙げられ得る。
免疫原性細胞死を誘導する方法
本発明は、細胞、例えば、哺乳動物細胞において免疫原性細胞死を誘導する方法を提供する。一実施形態では、この細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞内で免疫原性細胞死を誘導する方法は、細胞を本明細書に記載のmRNA、例えば、ネクロトーシスまたはパイロトーシスなどの免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAと接触させることを包含する。特定の実施形態では、そのような方法は、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする単離されたmRNAと細胞とを接触させることを包含する。特定の実施形態では、細胞を、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAを含む脂質ナノ粒子組成物と接触させる。細胞を脂質ナノ粒子組成物または単離されたmRNAと接触させると、mRNAは細胞内に取り込まれて翻訳され、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドを産生し得る。一実施形態では、免疫原性細胞死は、細胞の膨潤、原形質膜の破裂、及び細胞の細胞質ゾル内容物の放出によって特徴付けられる。一実施形態では、免疫原性細胞死は、細胞からのATP及びHMGB1の放出を特徴とする。
本発明はさらに、正常細胞と比較してがん細胞において免疫原性細胞死を選択的に誘導する方法を提供する。いくつかの実施形態では、がん細胞において免疫原性細胞死を選択的に誘導する方法は、細胞を本明細書に記載のmRNA、例えば、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNA(ここでこのmRNAはさらに、がん細胞と比較した正常細胞中のポリペプチドの発現を低下する調節性エレメントを含む)と接触させることを包含する。特定の実施形態では、調節性エレメントは、がん細胞よりも正常細胞中で発現が大きいマイクロRNAの結合部位(例えば、miR−122結合部位)であり、ここでマイクロRNAの結合部位への結合は、ポリペプチドの発現を阻害する。特定の実施形態では、細胞を、ポリペプチドをコードする領域を含むmRNAとマイクロRNA結合部位とを含むナノ粒子組成物と接触させる。その細胞をナノ粒子組成物または単離されたmRNAと接触させると、mRNAは細胞内に取り込まれ、翻訳されてポリペプチドを産生する。ポリペプチドの発現は、正常細胞よりもがん細胞において大きく、その結果、正常細胞よりもがん細胞の免疫原性細胞死の誘導が大きい。
一般に、哺乳動物細胞を組成物(例えば、本発明の単離されたmRNA、ナノ粒子、または薬学的組成物)と接触させるステップは、インビボ、エキソビボ、培養中、またはインビトロで行われてもよい。本発明の例示的実施形態では、哺乳動物細胞を組成物(例えば、本発明の単離されたmRNA、ナノ粒子、または薬学的組成物)と接触させるステップは、インビボまたはエキソビボで行われる。細胞と接触させる組成物の量、及び/またはその中のmRNAの量は、接触させる細胞または組織の種類、投与手段、組成物及びその中のmRNAの生理化学的特徴(例えば、サイズ、電荷、及び化学組成)、ならびに他の要因に依存し得る。一般に、有効量の組成物は、細胞内でのコードされたポリペプチドの効率的な産生を可能にする。効率のための測定基準は、ポリペプチド翻訳(ポリペプチド発現によって示される)、mRNA分解のレベル、及び免疫応答指標を含み得る。
mRNAまたは単離されたmRNAを含む組成物を細胞と接触させる工程は、トランスフェクションを伴うことも、または引き起こすこともある。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子に含まれるリン脂質は、例えば、細胞膜または細胞内膜と相互作用及び/または融合することによって、トランスフェクションを容易にし、かつ/またはトランスフェクション効率を高め得る。トランスフェクションは、細胞内でのmRNAの翻訳を可能にし得る。本発明の組成物(例えば、脂質ナノ粒子または単離されたmRNA)が免疫原性細胞死を誘導する能力は、例えば、限定するものではないが、TNFR、TLRもしくはTCR受容体の関与、DNA損傷またはウイルス感染を含む、免疫原性細胞死を誘導し得る公知の薬剤またはその操作と比較して、免疫原性細胞死を誘導する組成物の能力を比較することによって容易に決定され得る。薬剤が免疫原性細胞死を誘導し得るか否かを決定する様々な方法、例えば、染色剤及び染料(例えば、CELLTOX(商標)、MITOTRACKER(登録商標)Red、ヨウ化プロピジウム、及びYOYO3)、細胞生存率アッセイ、及びDAMP(「損傷関連分子パターン(damage associated molecular patterns)」)の放出、例としては、ATP、HMGB1、IL−1a、尿酸、DNA断片及び/またはミトコンドリア含有量の放出を検出するアッセイ(例えば、ELISA))は当該分野で公知である。
予防及び治療方法
対象において目的の抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するための本開示の方法は、様々な臨床的、予防的または治療的用途に使用され得る。例えば、この本方法は、腫瘍を有する対象または腫瘍の危険性がある対象(例えば、HPVなどの発がん性ウイルスに潜在的にさらされる)において抗腫瘍免疫を刺激するために使用してもよい。さらに、本方法は、病原性感染症に罹患している対象を処置するため、または病原体に対する曝露前に病原体に対して対象に防御免疫を提供するため(例えば、病原体に対する予防接種)などのために、対象における抗病原体免疫を刺激するために使用されてもよい。
したがって、一態様では、本開示は、それを必要とする対象において腫瘍または腫瘍抗原に対する免疫原性応答を刺激する方法であって、目的の腫瘍抗原(複数可)に対する免疫応答が増強されるように:(i)少なくとも1つの目的の腫瘍抗原、及び(ii)目的の腫瘍抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする少なくとも1つのmRNA構築物を含む、本開示の組成物(またはその脂質ナノ粒子、またはその医薬品)を対象に投与することを包含する方法に関与する。目的の適切な腫瘍抗原としては、本明細書に記載されているもの(例えば、変異KRAS抗原を含む腫瘍新生抗原;HPV抗原を含む発がん性ウイルス抗原)が挙げられる。この方法の一実施形態では、対象に、配列番号107〜130のいずれかに示される配列をコードする変異体KRAS抗原−STING mRNA構築物を投与する。
本開示はまた、それを必要とする対象においてがんを治療または予防する方法であって、対象に対して、本明細書に記載の少なくとも1つのmRNA組成物(すなわち、同一または別々のmRNA構築物中の、免疫増強剤mRNA及び抗原コードmRNA)を提供または投与することを含む方法を提供する。関連の実施形態では、対象は、mRNA(複数可)を含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を提供されるかまたは投与される。さらなる関連の実施形態では、対象は、本開示の薬学的組成物をその対象に提供されるかまたは投与される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、抗原をコードするmRNA(複数可)及び本明細書に記載の免疫刺激ポリペプチドを含むか、またはmRNA(複数可)を含むナノ粒子を含む。特定の実施形態では、mRNA(複数可)はナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中に存在する。特定の実施形態では、mRNA(複数可)またはナノ粒子は薬学的組成物中に存在する。
特定の実施形態では、それを必要とする対象は癌と診断されたか、またはがんを発症する危険性があるとみなされる。いくつかの実施形態では、癌は、肝臓癌、結腸直腸癌、黒色腫癌、膵臓癌、NSCLC、子宮頸癌、または頭頸部癌である。特定の実施形態では、肝臓癌は、肝細胞癌腫である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、原発腫瘍または転移である。いくつかの実施形態では、癌は造血器癌である。いくつかの実施形態では、癌は急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、骨髄ジストロフィー症候群(難治性貧血及び難治性血球減少症を含む)または骨髄増殖性新生物もしくは疾患(真性多血症、本態性血小板増多症及び原発性骨髄線維症を含む)である。他の実施形態では、癌は、血液系癌または造血系癌である。さらに他の実施形態では、癌は、子宮頸癌、陰茎癌、膣癌、外陰癌、肛門癌及び/または口腔咽頭癌などのHPV関連癌である。
特定のがん型に対する選択性は、mRNA構築物に操作された適切な調節部位(複数可)(例えば、マイクロRNA)と組み合わせた、適切なLNP製剤(例えば、特定の細胞型を標的とする)の使用の組み合わせによって達成され得る。
いくつかの実施形態では、mRNA(複数可)、ナノ粒子、または薬学的組成物は、非経口的に患者に投与される。特定の実施形態では、対象は哺乳動物、例えば、ヒトである。様々な実施形態では、対象は有効量のmRNA(複数可)を提供される。
がんを治療する方法は、対象における抗腫瘍応答を増強するか、及び/または腫瘍に対して細胞傷害性である追加の薬剤(例えば、化学療法剤)による対象の処置をさらに包含し得る。併用療法に使用するのに適した治療剤としては、プロテインチロシンキナーゼ阻害剤を含む低分子化学療法剤、ならびに以下にさらに論じるものを含むがこれらに限定されない抗がん抗体などの生物学的抗がん剤が挙げられる。併用療法は、抗腫瘍免疫を増強するための免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤及びCTLA−4阻害剤を対象に投与することを包含し得る。免疫チェックポイントの他の調節因子は、OX−40、OX−40LまたはICOSを標的とし得る。一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する薬剤は抗体である。別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する薬剤は、タンパク質または低分子モジュレーターである。別の実施形態では、因子(mRNAなど)は、免疫チェックポイントの抗体モジュレーターをコードする。併用療法に使用され得る免疫チェックポイント阻害剤の非限定的な例としては、ペムブロリズマブ、アレムツズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、MEDI0680及びPDR001、AMP−224、PF−06801591、BGB−A317、REGN2810、SHR−1210、TSR−042、アフィマー、アベルマブ(MSB0010718C)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、デュルバルマブ(MEDI4736)、BMS936559、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN1884、MEDI6469及びMOXR0916が挙げられる。
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象においてHPV関連がんを予防または処置する方法であって、目的のHPV抗原(複数可)に対する免疫応答が増強されるように、以下:(i)少なくとも1つの目的のHPV抗原、及び(ii)目的のHPV抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする少なくとも1つのmRNA構築物を含む開示の組成物(またはその脂質ナノ粒子、またはその薬学的組成物)を対象に投与することを包含する方法を提供する。様々な実施形態では、HPV関連癌は子宮頸癌、陰茎癌、膣癌、外陰癌、肛門癌及び/または口腔咽頭癌である。特定の実施形態では、mRNA構築物(複数可)によってコードされるHPV抗原(複数可)は、少なくとも1つのE6抗原、少なくとも1つのE7抗原、または少なくとも1つのE6抗原と少なくとも1つのE7抗原の両方である。一実施形態では、E6抗原(複数可)及び/またはE7抗原(複数可)は可溶性である。別の実施形態では、E6抗原(複数可)及び/またはE7抗原(複数可)は細胞内にある。一実施形態では、目的のHPV抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドは、STINGポリペプチド(例えば、構成的に活性なSTINGポリペプチド)である。一実施形態では、HPV抗原(複数可)及びSTINGポリペプチドは、異なるmRNA上にコードされており、対象への同時投与の前に脂質ナノ粒子中に共処方されている。別の実施形態では、HPV抗原(複数可)及びSTINGポリペプチドは、同じmRNA上にコードされている。一実施形態では、HPV抗原(複数可)及び免疫増強剤をコードする組成物は、HPVへの曝露の危険性がある対象に投与され、それによってHPV感染及びHPV関連がん(複数可)の発症に対する予防的防御が提供される。別の実施形態では、HPV抗原(複数可)及び免疫増強剤をコードする組成物は、HPVに感染しているか、及び/またはHPV関連がんを有する対象に投与され、それによって対象におけるHPVに対する免疫応答を増強することによって、HPVに対する治療活性が提供される。特定の実施形態では、HPV関連がんを有する対象はまた、HPV+免疫増強ワクチンを用いた処置と組み合わせて、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA−4、抗PD−1、抗PD−L1など)でも処置される。
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象において病原体に対する免疫原性応答を刺激する方法に関し、この方法は、目的の病原体抗原(複数可)に対する免疫応答が増強されるように、以下:(i)少なくとも1つの目的の病原体抗原、及び(ii)目的の病原体抗原(複数可)に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする少なくとも1つのmRNA構築物を含む本開示の組成物(またはその脂質ナノ粒子、またはその薬学的組成物)を対象に投与することを包含する。一実施形態では、少なくとも1つの病原体抗原は、ウイルス、細菌、原生動物、真菌及び寄生生物からなる群より選択される病原体に由来する。
目的の適切な病原体抗原としては、本明細書に記載のものが挙げられる。一実施形態では、病原体抗原(複数可)はウイルス抗原(複数可)である。一実施形態では、病原体抗原(複数可)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、例えば、E6抗原(例えば、配列番号36〜72のいずれかに示すアミノ酸配列を含む)またはE7抗原(例えば、配列番号73〜94のいずれかに示すアミノ酸配列を含む)である。一実施形態では、この病原体抗原(複数可)は、多価細菌抗原などの細菌抗原(複数可)である。
それを必要とする対象において病原体抗原(複数可)に対する免疫原性応答を刺激する方法の一実施形態では、mRNA構築物(複数可)、脂質ナノ粒子または薬学的組成物が、非経口的に対象に投与される。一実施形態では、mRNA(複数可)、脂質ナノ粒子または薬学的組成物は、週に1回の注入によって投与される。
本開示の1つ以上のmRNAを含む薬学的組成物は、任意の適切な経路によって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、非経口(例えば、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、髄腔内、病巣内または頭蓋内注射ならびに任意の適切な注入技術)、経口、経皮または皮内、皮内、直腸内、膣内、局所(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/またはドロップによる)、粘膜、経鼻、口腔内、経腸、硝子体、腫瘍内、舌下、鼻腔内;気管内注入、気管支注入、及び/または吸入による;経口スプレー及び/または粉末、鼻腔スプレー、及び/またはエアロゾルとして、及び/または門脈カテーテルを含む種々の経路のうち1つ以上によって投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、腫瘍内、皮下または吸入によって投与してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は筋肉内投与される。しかし、本開示は、薬物送達の科学における可能性のある進歩を考慮に入れた任意の適切な経路による本開示の組成物の送達を包含する。一般に、最も適切な投与経路は、1つ以上のmRNAを含む薬学的組成物の性質(例えば、血流及び胃腸管などの様々な身体環境におけるその安定性)、及び患者の状態(例えば、患者が特定の投与経路に耐えることができるか否か)を含む様々な要因に依存する。
特定の実施形態では、本開示の組成物は、所定の用量中で、約0.0001mg/kg〜約10mg/kg、約0.001mg/kg〜約10mg/kg、約0.005mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約2mg/kg〜約10mg/kg、約5mg/kg〜約10mg/kg、約0.0001mg/kg〜約5mg/kg、約0.001mg/kg〜約5mg/kg、約0.005mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約5mg/kg、約2mg/kg〜約5mg/kg、約0.0001mg/kg〜約1mg/kg、約0.001mg/kg〜約1mg/kg、約0.005mg/kg〜約1mg/kg、約0.01mg/kg〜約1mg/kg、または約0.1mg/kg〜約1mg/kgを送達するのに十分な投薬レベルで投与されてもよいが、1mg/kgの用量では、対象の体重1kgあたり1mgのmRNAまたはナノ粒子が得られる。特定の実施形態では、本開示のmRNAまたはナノ粒子の約0.005mg/kg〜約5mg/kgの用量が投与され得る。
いくつかの実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物(例えば、STING構築物)及び抗原構築物(例えば、ワクチン構築物)の両方を含む本開示の組成物は、それが免疫増強剤構築物の固定用量の関数として最適化されるように処方される。免疫増強構築物の固定用量の非限定的な例としては、所定の用量中で0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.001mg/kg〜10mg/kg、0.005mg/kg〜10mg/kg、0.01mg/kg〜10mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、1mg/kg〜10mg/kg、2mg/kg〜10mg/kg、5mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.001mg/kg〜5mg/kg、0.005mg/kg〜5mg/kg、0.01mg/kg〜5mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、1mg/kg〜5mg/kg、2mg/kg〜5mg/kg、0.0001mg/kg〜1mg/kg、0.001mg/kg〜1mg/kg、0.005mg/kg〜1mg/kg、0.01mg/kg〜1mg/kg、または0.1mg/kg〜1mg/kgが挙げられ、ここで1mg/kgの用量によって、対象の体重1kgあたり1mgのmRNAが得られる。
別の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物(例えば、STING構築物)及び抗原構築物(例えば、ワクチン構築物)の両方を含む本開示の組成物は、抗原構築物の固定用量の関数として最適化されるように処方される。抗原構築物の固定用量の非限定的な例としては、所定の用量中で0.001mg/kg、0.005mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.001mg/kg〜10mg/kg、0.005mg/kg〜10mg/kg、0.01mg/kg〜10mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、1mg/kg〜10mg/kg、2mg/kg〜10mg/kg、5mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.001mg/kg〜5mg/kg、0.005mg/kg〜5mg/kg、0.01mg/kg〜5mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、1mg/kg〜5mg/kg、2mg/kg〜5mg/kg、0.0001mg/kg〜1mg/kg、0.001mg/kg〜1mg/kg、0.005mg/kg〜1mg/kg、0.01mg/kg〜1mg/kg、または0.1mg/kg〜1mg/kgが挙げられ、ここで1mg/kgの用量によって、対象の体重1kgあたり1mgのmRNAが得られる。
いくつかの実施形態では、免疫調節治療組成物中のRNAポリヌクレオチド(免疫増強剤RNAポリヌクレオチド、抗原コードRNAポリヌクレオチド、または両方)の投与量は、1用量あたり1〜5μg、5〜10μg、10〜15μg、15〜20μg、10〜25μg、20〜25μg、20〜50μg、30〜50μg、40〜50μg、40〜60μg、60〜80μg、60〜100μg、50〜100μg、80〜120μg、40〜120μg、40〜150μg、50〜150μg、50〜200μg、80〜200μg、100〜200μg、100〜300μg、120〜250μg、150〜250μg、180〜280μg、200〜300μg、30〜300μg、50〜300μg、80〜300μg、100〜300μg、40〜300μg、50〜350μg、100〜350μg、200〜350μg、300〜350μg、320〜400μg、40〜380μg、40〜100μg、100〜400μg、200〜400μg、または300〜400μgである。いくつかの実施形態では、免疫調節治療組成物は、皮内注射または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、免疫調節治療組成物は、0日に対象に投与される。いくつかの実施形態では、免疫調節治療組成物の第2の用量は、7日目、または14日目または21日目に対象に投与される。
いくつかの実施形態では、25マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、10マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、30マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、100マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、50マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、75マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、150マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、400マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、300マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、200マイクログラムの用量のRNAポリヌクレオチドが、対象に投与される免疫調節治療組成物に含まれる。いくつかの実施形態では、RNAポリヌクレオチドは、遠位リンパ節と比較して局所リンパ節において100倍高いレベルで蓄積する。他の実施形態では、免疫調節治療組成物は、化学的に修飾されており、他の実施形態では免疫調節治療組成物は、化学的に修飾されていない。
いくつかの実施形態では、有効量は1〜100μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は100μgの総用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、対象に合計1回または2回投与される25μgの用量である。いくつかの実施形態では、有効量は、対象に合計2回投与される100μgの用量である。いくつかの実施形態では、この有効量は、1μg〜10μg、1μg〜20μg、1μg〜30μg、5μg〜10μg、5μg〜20μg、5μg〜30μg、5μg〜40μg、5μg〜50μg、10μg〜15μg、10μg〜20μg、10μg〜25μg、10μg〜30μg、10μg〜40μg、10μg〜50μg、10μg〜60μg、15μg〜20μg、15μg〜25μg、15μg〜30μg、15μg〜40μg、15μg〜50μg、20μg〜25μg、20μg〜30μg、20μg〜40μg、20μg〜50μg、20μg〜60μg、20μg〜70μg、20μg〜75μg、30μg〜35μg、30μg〜40μg、30μg〜45μg、30μg〜50μg、30μg〜60μg、30μg〜70μg、30μg〜75μgの用量であり、対象に合計1回または2回投与され得る。
用量は、所望のレベルのmRNA発現及び/または効果(例えば、治療効果)を得るために、1日に1回以上同じ量または異なる量で投与されてもよい。所望の投与量は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに送達されてもよい。特定の実施形態では、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上の投与)を用いて送達され得る。例えば、特定の実施形態では、免疫増強剤mRNA構築物(例えば、STING構築物)及び抗原構築物(例えば、ワクチン構築物)の両方を含む本開示の組成物は少なくとも2回投与され、ここで第2の用量は、第1の用量が投与された後、少なくとも1日、または少なくとも3日、または少なくとも7日、または少なくとも10日、または少なくとも14日、または少なくとも21日、または少なくとも28日、または少なくとも35日、または少なくとも42日、または少なくとも48日に投与される。特定の実施形態では、第1及び第2の用量は、それぞれ0日目及び2日目に、またはそれぞれ0日目及び7日目に、またはそれぞれ0日目及び14日目に、またはそれぞれ0日目及び21日目に、またはそれぞれ0日目及び48日目に投与される。追加の投与量(すなわち、3回目の投与量、4回目の投与量など)は、最初の2回投与量が投与されたのと同じスケジュールで投与されてもまたは異なるスケジュールで投与されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、第1及び第2の投与量は、7日間隔で投与され、次いで1回以上の追加投与量がその後毎週投与される。別の実施形態では、第1及び第2の投与量は7日間隔で投与され、次いで、2週間ごとに1回以上のさらなる投与量がその後に投与される。
いくつかの実施形態では、単回用量は、例えば、外科的手順の前もしくは後に、または急性の疾患、障害もしくは病態の場合に投与され得る。任意の特定の患者に対する具体的な治療上有効、予防上有効、またはそうでなければ適切な用量レベルは、もしあれば、治療される障害の重症度及び同定;使用された1つ以上のmRNA;採用した特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;使用した特定の薬学的組成物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;処置期間;使用される特定の薬学的組成物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;そして医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存する。
いくつかの実施形態では、本開示の薬学的組成物は、別の薬剤、例えば、別の治療剤、予防剤、及び/または診断剤と組み合わせて投与されてもよい。「と組み合わせて」とは、薬剤を同時に投与しなければならない、及び/または一緒に送達するために処方しなければならないことを意味することを意図するものではないが、これらの送達方法は、本開示の範囲内である。例えば、1つ以上の異なるmRNAを含む1つ以上の組成物を組み合わせて投与してもよい。組成物は、1つ以上の他の所望の治療薬または医療手順と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。一般に、各薬剤はその薬剤について決定された用量及び/またはタイムスケジュールで投与されるであろう。いくつかの実施形態では、本開示は、それらのバイオアベイラビリティーを改善し、それらの代謝を低減及び/または改変し、それらの排泄を阻害し、及び/または体内でのそれらの分布を改変する薬剤と組み合わせた、本開示の組成物の送達、またはそのイメージング、診断もしくは予防組成物を包含する。
本開示の組成物と組み合わせて投与され得る例示的な治療剤としては、限定するものではないが、細胞傷害性剤、化学療法剤、及び他の治療剤が挙げられる。細胞傷害剤としては、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシネジオン(dihydroxyanthracinedione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メイタンシノイド、ラシェルマイシン、及びそれらの類似体が挙げられ得る。放射性イオンも治療剤として使用されてもよく、例えば、放射性ヨウ素、ストロンチウム、リン、パラジウム、セシウム、イリジウム、コバルト、イットリウム、サマリウム、及びプラセオジムが挙げられ得る。他の治療剤としては、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、及び5−フルオロウラシル、及びデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、ラシェルマイシン、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、及びシスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン及びドキソルビシン)、抗生物質(例、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン)、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、及びメイタンシノイド)が挙げられ得る。
併用レジメンで使用する療法(治療薬または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療薬及び/または手順の適合性、ならびに達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。使用される療法が同じ障害に対して所望の効果を達成し得る(例えば、がんを処置するのに有用な組成物は、化学療法剤と同時に投与され得る)、またはそれらは異なる効果を達成し得る(例えば、有害効果の制御)ことも理解される。
プログラム死受容体1/プログラム死リガンド1(PD−1/PD−L1)とPD−L2との間の相互作用を標的とするペムブロリズマブまたはニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害剤は、最近、様々な悪性腫瘍の処置に承認されており、現在メラノーマ、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を含む様々ながんの臨床試験で調査中である。
したがって、本開示の一態様は、本開示の脂質ナノ粒子または組成物の投与の前に、対象が以前にPD−1アンタゴニストで治療されている併用療法に関する。別の態様では、対象は、本開示の脂質ナノ粒子または組成物を投与する前に、PD−1に結合するモノクローナル抗体で処置されている。別の態様では、抗PD−1モノクローナル抗体療法による処置の前に、対象に本開示の脂質ナノ粒子または組成物を投与した。いくつかの態様では、抗PD−1モノクローナル抗体療法は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
別の態様では、対象は、本開示の脂質ナノ粒子または組成物を投与する前に、PD−L1に結合するモノクローナル抗体で処置されている。別の態様では、抗PD−L1モノクローナル抗体療法による処置の前に、対象に脂質ナノ粒子または組成物を投与する。いくつかの態様では、抗PD−L1モノクローナル抗体療法は、デュルバルマブ、アベルマブ、MEDI473、BMS−936559、エゾリズマブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
いくつかの態様では、対象は、本開示の組成物による処置の前にCTLA−4アンタゴニストで処置されている。別の態様では、対象は、本開示の脂質ナノ粒子または組成物の投与前に、CTLA−4に結合するモノクローナル抗体で以前に処置されている。いくつかの態様では、抗CTLA−4モノクローナル抗体による処置の前に、対象に脂質ナノ粒子または組成物が投与されている。いくつかの態様では、抗CTLA−4抗体療法は、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む。
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、個体におけるがんの処置または進行の遅延に使用するための脂質ナノ粒子、及び任意の薬学的に許容される担体、または薬学的組成物を提供し、ここでこの処置は、第2の組成物と組み合わせたこの組成物の投与を包含し、この第2の組成物は、チェックポイント阻害剤ポリペプチド及び任意の薬学的に許容される担体を含む。
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、個体におけるがんの処置または進行を遅延させるための医薬の製造における脂質ナノ粒子及び任意の薬学的に許容される担体の使用を提供し、ここでこの医薬は、脂質ナノ粒子及び任意の薬学的に許容される担体を含み、ここでこの処置は、チェックポイント阻害剤ポリペプチド及び任意の薬学的に許容される担体を含む組成物と組み合わせたこの医薬の投与を包含する。
任意の前述のまたは関連する態様では、本開示は、個体におけるがんの処置または進行を遅延させるための、脂質ナノ粒子、及び任意の薬学的に許容される担体、または薬学的組成物、ならびに脂質ナノ粒子または薬学的組成物の投与の説明書を含む添付文書を備える容器を備えるキットを提供する。いくつかの態様では、この添付文書は、個体におけるがんの処置または進行を遅延させるための、チェックポイント阻害剤ポリペプチド及び任意の薬学的に許容される担体を含む組成物と組み合わせた、脂質ナノ粒子または薬学的組成物の投与の説明書をさらに含む。
任意の前述のまたは関連する態様では、本開示は、脂質ナノ粒子、及び任意の薬学的に許容される担体、または薬学的組成物を含む医薬、ならびに単独でまたは個体におけるがんの処置または進行を遅延させるためのチェックポイント阻害剤ポリペプチドと任意の薬学的に許容される担体とを含む組成物と組み合わせたこの医薬の投与の説明書を含む添付文書を備えるキットを提供する。いくつかの態様では、このキットは、個体におけるがんの処置または進行を遅延させるための第2の医薬の投与の前、それと同時、またはその後の第1の医薬の投与のための説明書を含む添付文書をさらに備える。
任意の前述のまたは関連する態様では、本開示は、脂質ナノ粒子、組成物もしくはそれらの使用、または本明細書に記載の脂質ナノ粒子もしくは組成物を備えるキットを提供し、ここでこのチェックポイント阻害剤ポリペプチドがPD1、PD−L1、CTLA4、またはそれらの組み合わせを阻害する。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、抗体である。いくつかの態様では、そのチェックポイント阻害剤ポリペプチドは、CTLA4に特異的に結合する抗CTLA4抗体またはその抗原結合断片、PD1に特異的に結合する抗PD1抗体またはその抗原結合断片、PD−L1に特異的に結合するPD−L1抗体またはその抗原結合断片、及びそれらの組み合わせから選択される抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブから選択される抗PD−L1抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、トレメリムマブまたはイピリムマブから選択される抗CTLA−4抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、ニボルマブまたはペンブロリズマブから選択される抗PD1抗体である。
関連する態様では、本開示は、本開示の任意の前述のもしくは関連する脂質ナノ粒子、または本開示の任意の前述のまたは関連する組成物を対象に投与することを包含する、それを必要とする対象における腫瘍のサイズを低減もしくは縮小するか、または腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。
関連する態様では、本開示は、本開示の任意の前述もしくは関連脂質ナノ粒子、または本開示の任意の前述もしくは関連組成物を対象に投与することを包含する、がんを有する対象において抗腫瘍応答を誘導する方法を提供する。いくつかの態様では、抗腫瘍反応は、T細胞反応を含む。いくつかの態様では、T細胞応答はCD8+T細胞を包含する。
前述の方法のいくつかの態様では、上記方法はさらに、チェックポイント阻害剤ポリペプチド及び任意の薬学的に許容される担体を含む第2の組成物を投与することを包含する。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、PD1、PD−L1、CTLA4、またはそれらの組み合わせを阻害する。いくつかの態様では、このチェックポイント阻害剤ポリペプチドは抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、CTLA4に特異的に結合する抗CTLA4抗体またはその抗原結合断片、PD1に特異的に結合する抗PD1抗体またはその抗原結合断片、PD−L1に特異的に結合する抗PD−L1抗体またはその抗原結合断片、及びそれらの組み合わせから選択される抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブから選択される抗PD−L1抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、トレメリムマブまたはイピリムマブから選択される抗CTLA−4抗体である。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドは、ニボルマブまたはペンブロリズマブから選択される抗PD1抗体である。
任意の前述の方法または関連する方法のいくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドを含む組成物は、静脈内注射によって投与される。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドを含む組成物は、2〜3週間に1回投与される。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドを含む組成物は、2週間に1回または3週間に1回投与される。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤ポリペプチドを含む組成物は、脂質ナノ粒子またはその薬学的組成物の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与される。
前述のまたは関連する態様のいずれかにおいて、本開示は、脂質ナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、筋肉内送達用に処方されている。
免疫原性細胞死を誘導するための治療方法
本発明は、それを必要とする対象、例えば、ヒト対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、腫瘍に対する免疫原性応答が対象において刺激されるように、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする本発明のmRNAの有効量を対象に投与することを包含する。別の実施形態では、この方法は、腫瘍に対する免疫原性応答が対象において刺激されるように、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAを含む有効量の本発明の脂質ナノ粒子を対象に投与することを包含する。さらに別の実施形態では、この方法は、腫瘍に対する免疫原性応答が対象において刺激されるように、対象に本発明の薬学的組成物(例えば、本発明のmRNAまたは脂質ナノ粒子を含む)を投与することを包含する。
様々な実施形態では、この方法は、炎症性及び/または免疫反応を刺激する、及び/または免疫応答性を調節し、それによって対象における腫瘍に対する免疫原性応答をさらに促進もしくは増強する1つ以上のさらなる因子を対象に投与することを包含し得る。追加の因子として使用するための適切な種類の因子は上記されている。一実施形態では、対象に1つの追加の因子が投与される。別の実施形態では、対象に2つの追加の因子が投与され、それら追加の因子は互いに異なる。さらに別の実施形態では、対象に3つの追加の因子が投与され、それらの追加の因子は互いに異なる。
一実施形態では、方法は、免疫応答を増強する、例えば、適応免疫を誘導する(例えば、I型インターフェロン産生を刺激することによって)、炎症性応答を刺激する、NFκBシグナル伝達を刺激する、及び/または樹状細胞(DC)動員を刺激する、少なくとも1つの因子を対象に投与することをさらに包含する。一実施形態では、この方法は、適応免疫を誘導する少なくとも1つの因子を対象に投与することをさらに包含する。一実施形態では、適応免疫を誘導する因子は、I型インターフェロン(例えば、I型インターフェロンを含む薬学的組成物)である。別の実施形態では、適応免疫を誘導する因子は、I型インターフェロンを刺激する。適応免疫を刺激する因子(例えば、mRNA構築物)の非限定的な例としては、STING、IRF1、IRF3、IRF5、IRF6、IRF7及びIRF8が挙げられる。別の実施形態では、この因子は炎症反応を刺激する。炎症反応を刺激する因子(例えば、mRNA構築物)の非限定的な例としては、STAT1、STAT2、STAT4、STAT6、NFAT及びC/EBPbが挙げられる。別の実施形態では、この因子は、NFκBシグナル伝達を刺激する。NFκBシグナル伝達を刺激する因子(例えば、mRNA構築物)の非限定的な例としては、IKKβ、c−FLIP、RIPK1、IL−27、ApoF及びPLPが挙げられる。別の実施形態では、この因子はDC動員を刺激する。DC動員を刺激する因子の非限定的な例は、FLT3である。さらに別の実施形態では、免疫応答を増強する因子は、DIABLO(SMAC/DIABLO)(例えば、DIABLO mRNA構築物)である。
別の実施形態では、上記方法は、T細胞活性化または初回刺激を誘導する少なくとも1つの因子を対象に投与することをさらに包含する。一実施形態では、T細胞活性化または初回刺激を誘導する因子はサイトカインまたはケモカインである。T細胞活性化または初回刺激を誘導するサイトカインまたはケモカインの非限定的な例としては、IL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20及びCCL21が挙げられる。一実施形態では、T細胞活性化または初回刺激を誘導する因子は、IL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20またはCCL21を含む薬学的組成物である。別の実施形態では、T細胞活性化または初回刺激を誘導する因子は、IL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20またはCCL21をコードする因子(例えば、mRNA構築物)である。さらに別の実施形態では、この因子は、ケモカインまたはサイトカインを誘導する(例えば、IL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20またはCCL21を誘導する)ポリペプチドをコードするmRNA構築物である。
別の実施形態では、上記方法は、免疫チェックポイントを調節する少なくとも1つの因子を対象に投与することをさらに包含する。一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は抗体である。別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、抗体をコードする因子(例えば、mRNA構築物)である。一実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、CTLA−4阻害剤であり、その非限定的な例としてはイピリムマブ、トレメリムマブ及びAGEN1884が挙げられる。別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、PD−1阻害剤であり、その非限定的な例としては、ペムブロリズマブ、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、ピジリズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、MEDI0680及びPDR001、AMP−224、PF−06801591、BGB−A317、REGN2810、SHR−1210、TSR−042、アベルマブ、デュルバルマブ及びアフィマーが挙げられる。別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、PD−L1阻害剤であり、その非限定的な例としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ及びBMS936559が挙げられる。さらに別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、OX−40またはOX−40Lの活性を調節し、その非限定的な例としては、Fc−OX−40L、MEDI6469(アゴニスト抗OX40抗体)及びMOXR0916(アゴニスト抗OX40抗体)が挙げられる。さらに別の実施形態では、免疫チェックポイントを調節する因子は、ICOSの活性を調節する(例えば、ICOS経路アゴニスト)。
一実施形態では、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAを投与することに加えて、この方法はさらに:(i)免疫応答を増強する(例えば、適応免疫を誘導する、I型インターフェロンを刺激する、炎症反応を刺激する、NFκBシグナル伝達を刺激する、及び/またはDC動員を刺激する)少なくとも1つの因子;ならびに(ii)T細胞活性化または初回刺激を誘導する少なくとも1つの因子を投与することを包含する。別の実施形態では、この方法はさらに:(i)免疫応答を増強する(例えば、適応免疫を誘導する、I型インターフェロンを刺激する、炎症応答を刺激する、NFκBシグナル伝達を刺激する、及び/またはDC動員を刺激する)少なくとも1つの因子;ならびに(ii)免疫チェックポイントを調節する少なくとも1つの因子を投与することを包含する。別の実施形態では、この方法はさらに以下を投与することを包含する:(i)T細胞活性化または初回刺激を誘導する少なくとも1つの因子;ならびに(ii)免疫チェックポイントを調節する少なくとも1つの因子。さらに別の実施形態では、この方法はさらに、対象に対して以下を投与することを包含する:(i)免疫応答を増強する(例えば、適応免疫を誘導する、I型インターフェロンを刺激する、炎症応答を刺激する、NFκBシグナル伝達を刺激する、及び/またはDC動員を刺激する)少なくとも1つの因子;(ii)T細胞活性化または初回刺激を誘導する少なくとも1つの因子;ならびに(iii)免疫チェックポイントを調節する少なくとも1つの因子。
それを必要とする対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激する方法の一実施形態では、mRNA構築物、脂質ナノ粒子または薬学的組成物は、非経口的に対象に投与される。一実施形態では、mRNA、脂質ナノ粒子または薬学的組成物は、週に1回の注入によって投与される。一実施形態では、腫瘍は、肝臓癌、結腸直腸癌または黒色腫癌細胞である。
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激するための方法を提供し、この方法は対象に有効量の以下:
(i)免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)(ここで、上記第1のmmRNAは1つ以上の修飾核酸塩基を含む);
及び以下のうち少なくとも1つ:
(ii)免疫応答を増強する(例えば、適応免疫を誘導する、I型インターフェロンを刺激する、炎症応答を刺激する、NFκBシグナル伝達を刺激する、及び/またはDC動員を刺激する)ポリペプチドをコードする第2のmmRNA(ここで上記第2のmmRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基を含む);
(iii)T細胞活性化または初回刺激を誘導するポリペプチドをコードする第3のmmRNA(ここで、前記第3のmmRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基を含む);及び/または
(iv)免疫チェックポイントを調節するポリペプチドをコードする第4のmmRNA(ここで前記第4のmmRNAは1つ以上の修飾核酸塩基を含む)、
を投与することを包含し、
その結果、腫瘍に対する免疫原性応答が対象において生じる。
第1のmmRNA、第2のmmRNA、第3のmmRNA及び/または第4のmmRNAは、対象に投与されるのと同じ薬学的組成物または脂質ナノ粒子中に存在してもよい。あるいは、第1のmmRNA、第2のmmRNA、第3のmmRNA及び/または第4のmmRNAは、対象に投与される異なる薬学的組成物または脂質ナノ粒子中に存在してもよい。
一実施形態では、第1のmmRNA及び第2のmmRNAが対象に投与される。別の実施形態では、第1のmmRNA及び第3のmmRNAが対象に投与される。別の実施形態では、第1のmmRNA及び第4のmmRNAが対象に投与される。別の実施形態では、第1のmmRNA、第2のmmRNA及び第3のmmRNAが対象に投与される。別の実施形態では、第1のmmRNA、第2のmmRNA及び第4のmmRNAが対象に投与される。別の実施形態では、第1のmmRNA、第3のmmRNA及び第4のmmRNAが対象に投与される。別の実施形態では、第1のmmRNA、第2、第3のmmRNA及び第4のmmRNAが対象に投与される。
一実施形態では、第1のmmRNAによってコードされるポリペプチドは、MLKL、RIPK3、RIPK1、DIABLO、FADD、GSDMD、カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−11、NLRP3、ASC/CARD及びPyrinからなる群より選択される。一実施形態では、第2のmmRNAによってコードされるポリペプチドは、DIABLO、STING、IRF1、IRF3、IRF5、IRF6、IRF7、IRF8、STAT1、STAT2、STAT4、STAT6、NFAT、C/EBPb、IKKβ、c−FLIP、RIPK1、IL−27、ApoF、PLP及びFLT3からなる群より選択される。一実施形態では、第2のmmRNAによってコードされるポリペプチドは、DIABLO、STING、IRF3、IRF7、STAT6、IKKβ、c−FLIP及びRIPK1からなる群より選択される。一実施形態では、第3のmmRNAによってコードされるポリペプチドは、IL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20及びCCL21からなる群より選択される。一実施形態では、第4のmmRNAによってコードされるポリペプチドは、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、CTLA−4阻害剤、OX−40アゴニスト、OX−40L及びICOS経路アゴニストからなる群より選択される。
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチドをコードするmRNAを対象に提供または投与することを包含する、それを必要とする対象においてがんを処置または予防する方法を提供する。関連の実施形態では、対象は、mRNAを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)を提供されるかまたは投与される。さらなる関連の実施形態では、対象は、本発明の薬学的組成物を対象に提供または投与される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするmRNAを含むか、またはそのmRNAを含むナノ粒子を含む。特定の実施形態では、mRNAはナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中に存在する。特定の実施形態では、mRNAまたはナノ粒子は薬学的組成物中に存在する。特定の実施形態では、それを必要とする対象は癌と診断されたか、またはがんを発症する危険性があるとみなされる。いくつかの実施形態では、癌は肝臓癌、結腸直腸癌または黒色腫癌である。特定の実施形態では、肝臓癌は肝細胞癌腫である。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、原発腫瘍または転移である。いくつかの実施形態では、癌は造血器癌である。いくつかの実施形態では、癌は急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、骨髄ジストロフィー症候群(難治性貧血及び難治性血球減少症を含む)または骨髄増殖性新生物または疾患(真性多血症、本態性血小板増多症及び原発性骨髄線維症を含む)である。他の実施形態では、癌は血液系癌または造血系癌である。特定のがん型に対する選択性は、mRNA構築物に操作された適切な調節部位(複数可)(例えば、マイクロRNA)と組み合わせた適切なLNP製剤(例えば、特定の細胞型を標的とする)の使用の組み合わせによって達成され得る。
いくつかの実施形態では、mRNA、ナノ粒子、または薬学的組成物は、患者に非経口的に投与される。特定の実施形態では、対象は哺乳動物、例えば、ヒトである。様々な実施形態では、対象は有効量のmRNAを提供される。
本発明はさらに、それを必要とする対象においてがんを治療または予防する方法であって、有効量の本明細書に記載のmRNA、例えば、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAを対象に提供することを包含する方法を提供し、ここでmRNAがさらに正常細胞と比較してがん細胞におけるポリペプチドの発現を増強する調節エレメントをさらに包含する。特定の実施形態では、調節エレメントは、がん細胞よりも正常細胞中で発現が大きいマイクロRNAの結合部位(例えば、miR−122結合部位)であり、ここでマイクロRNAの結合部位への結合はポリペプチドの発現を阻害する。特定の実施形態では、mRNAは、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子中に存在する。特定の実施形態では、mRNAまたはナノ粒子は薬学的組成物中に存在する。免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドを産生するために、ナノ粒子または単離されたmRNAを対象の細胞に取り込んで翻訳してもよい。特定の実施形態では、ポリペプチドの発現は、正常細胞よりもがん細胞において大きく、その結果、正常細胞よりもがん細胞の免疫原性細胞死が大きくなる。
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の第1のmRNA、例えば、免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードするmRNAを、化学療法薬または他の抗がん剤などの治療剤と組み合わせて、対象に提供することを包含する、それを必要とする対象におけるがんの処置または予防の方法を包含する。併用療法に使用するのに適した治療剤としては、低分子化学療法剤、例としては、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、ならびに生物学的抗がん剤、例えば、抗がん抗体が挙げられる。併用療法における使用のための他の適切な治療剤は、以下にさらに記載される。
本発明の1つ以上のmRNAを含む薬学的組成物は、任意の適切な経路によって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1つ以上の様々な経路、例としては、非経口(例えば、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内または頭蓋内注射、ならびに任意の適切な注入技術)、経口、経皮または皮内、皮内、直腸内、膣内、局所(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/またはドロップによる)、粘膜、経鼻、口腔内、経腸、硝子体、腫瘍内、舌下、鼻腔内によって;気管内注入、気管支注入、及び/または吸入によって;経口スプレー及び/または粉末、鼻腔スプレー、及び/またはエアロゾルとして、及び/または門脈カテーテルを通して投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、腫瘍内、皮下または吸入によって投与され得る。しかし、本開示は、薬物送達の科学における可能性のある進歩を考慮に入れて、任意の適切な経路による本発明の組成物の送達を包含する。一般に、最も適切な投与経路は、1つ以上のmRNAを含む薬学的組成物の性質(例えば、血流及び胃腸管などの様々な身体環境におけるその安定性)、及び患者の状態(例えば、患者が特定の投与経路に耐えることができるか否か)を含む様々な要因に依存する。
特定の実施形態では、本発明の組成物は、所定の用量中で約0.0001mg/kg〜約10mg/kg、約0.001mg/kg〜約10mg/kg、約0.005mg/kg〜約10mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約10mg/kg、約2mg/kg〜約10mg/kg、約5mg/kg〜約10mg/kg、約0.0001mg/kg〜約5mg/kg、約0.001mg/kg〜約5mg/kg、約0.005mg/kg〜約5mg/kg、約0.01mg/kg〜約5mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、約1mg/kg〜約5mg/kg、約2mg/kg〜約5mg/kg、約0.0001mg/kg〜約1mg/kg、約0.001mg/kg〜約1mg/kg、約0.005mg/kg〜約1mg/kg、約0.01mg/kg〜約1mg/kg、または約0.1mg/kg〜約1mg/kg送達するのに十分な投薬レベルで投与され得、ここで、1mg/kgの用量によって、対象の体重1kgあたり1mgのmRNAまたはナノ粒子が提供される。特定の実施形態では、約0.005mg/kg〜約5mg/kgという本発明のmRNAまたはナノ粒子の投与量が投与され得る。
用量は、所望のレベルのmRNA発現及び/または効果(例えば、治療効果)を得るために、1日に1回以上、同じ量または異なる量で投与されてもよい。所望の投与量は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに送達してもよい。特定の実施形態では、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上の投与)を用いて送達され得る。いくつかの実施形態では、単回用量は、例えば、外科的処置の前もしくは後に投与されても、または急性の疾患、障害もしくは病態の場合に投与されてもよい。任意の特定の患者に対する具体的な治療上有効、予防上有効、またはそうでなければ適切な用量レベルは、もしあれば、処置される障害の重症度及び同定;使用された1つ以上のmRNA;使用された特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;使用した特定の薬学的組成物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;処置の期間;使用される特定の薬学的組成物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;そして医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存するであろう。
いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、別の薬剤、例えば、別の治療剤、予防剤、及び/または診断剤と組み合わせて投与され得る。「と組み合わせて」とは、薬剤を同時に投与しなければならないか、及び/または一緒に送達するために処方されなければならないことを意味することを意図しないが、これらの送達方法は、本開示の範囲内である。例えば、1つ以上の異なるmRNAを含む1つ以上の組成物は組み合わせて投与されてもよい。組成物は、1つ以上の他の所望の処置法または医療処置と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。一般に、各因子はその因子について決定された用量及び/またはタイムスケジュールで投与される。いくつかの実施形態では、本開示は、それらのバイオアベイラビリティーを改善する、それらの代謝を低減及び/または改変する、それらの排泄を阻害する、及び/または体内でのそれらの分布を改変する因子と組み合わせた、本発明の組成物、またはその画像化、診断もしくは予防用の組成物の送達を包含する。
本発明の組成物と組み合わせて投与され得る例示的な治療剤としては、限定するものではないが、細胞傷害性剤、化学療法剤、及び他の治療剤が挙げられる。細胞傷害剤としては、例えば、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシネジオン(dihydroxyanthracinedione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、メイタンシノイド、ラシェルマイシン、及びそれらの類似体が挙げられ得る。放射性イオンも治療剤として使用されてもよく、例えば、放射性ヨウ素、ストロンチウム、リン、パラジウム、セシウム、イリジウム、コバルト、イットリウム、サマリウム、及びプラセオジムが挙げられ得る。他の治療剤としては、例えば、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、及び5−フルオロウラシル、及びデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、ラシェルマイシン、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、及びシスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン)、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、及びメイタンシノイド)が挙げられ得る。
併用レジメンで使用する療法(治療薬または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療薬及び/または手順の適合性、ならびに達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。使用される療法が同じ障害に対して所望の効果を達成し得ること(例えば、がんを処置するのに有用な組成物は、化学療法剤と同時に投与されてもよい)、またはそれらは異なる効果を達成する場合もある(例えば、有害効果の制御)ことも理解される。
本開示の他の実施形態
E1.免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、上記mmRNAは1つ以上の修飾核酸塩基を含む、化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)。
E2.上記ポリペプチドがネクロトーシスを誘発する、実施形態1に記載のmmRNA。
E3.上記ポリペプチドが混合系列キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態2に記載のmmRNA。
E4.上記MLKLポリペプチドが、配列番号1または2に示されるアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載のmmRNA。
E5.上記ポリペプチドが受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIPK3)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態2に記載のmmRNA。
E6.上記RIPK3ポリペプチドが配列番号3〜19に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態5に記載のmmRNA。
E7.上記ポリペプチドが受容体相互作用タンパク質キナーゼ1(RIPK1)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態2に記載のmmRNA。
E8.上記RIPK1ポリペプチドが配列番号62〜67に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態7に記載のmmRNA。
E9.上記ポリペプチドが、低pIの直接IAP結合タンパク質(DIABLO)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態2に記載のmmRNA。
E10.上記DIABLOポリペプチドが配列番号26〜33に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態9に記載のmmRNA。
E11.上記ポリペプチドが、デスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態2に記載のmmRNA。
E12.上記FADDポリペプチドが配列番号56〜61に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態11に記載のmmRNA。
E13.上記ポリペプチドがパイロトーシスを誘発する、実施形態1に記載のmmRNA。
E14.上記ポリペプチドがガスデルミンD(GSDMD)、またはその免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E15.上記GSDMDポリペプチドが配列番号20〜25に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態14に記載のmmRNA。
E16.上記ポリペプチドがカスパーゼ−4、その免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E17.上記カスパーゼ−4ポリペプチドが配列番号34〜38に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態16に記載のmmRNA。
E18.上記ポリペプチドがカスパーゼ−5、その免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E19.上記カスパーゼ−5ポリペプチドが配列番号39〜43に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態18に記載のmmRNA。
E20.上記ポリペプチドがカスパーゼ−11、その免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E21.上記カスパーゼ−11ポリペプチドが、配列番号44〜48に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態20に記載のmmRNA。
E22.上記ポリペプチドがNLRP3、その免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E23.上記NLRP3ポリペプチドが配列番号51〜52に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態22に記載のmmRNA。
E24.上記ポリペプチドが、Pyrinドメイン、その免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E25.上記Pyrinドメインポリペプチドが配列番号49〜50に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態24に記載のmmRNA。
E26.上記ポリペプチドがASC/PYCARD、その免疫原性細胞死誘導断片である、実施形態13に記載のmmRNA。
E27.上記ASC/PYCARDポリペプチドが、配列番号53〜54に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む、実施形態26に記載のmmRNA。
E28.上記mmRNAが、5’UTR、上記ポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレーム、3’UTR及び連結ヌクレオシドの3’テーリング領域を含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つに記載のmmRNA。
E29.上記mmRNAが、1つ以上のマイクロRNA(miRNA)結合部位をさらに含む、実施形態28に記載のmmRNA。
E30.上記mmRNAが完全に修飾されている、上記実施形態のいずれか1つに記載のmmRNA。
E31.上記mmRNAが、シュードウリジン(Ψ)、シュードウリジン(Ψ)及び5−メチル−シチジン(m5C)、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)及び5−メチル−シチジン(m5C)、2−チオウリジン(s2U)、2−チオウリジン及び5−メチル−シチジン(m5C)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)及び5−メチル−シチジン(m5C)、2’−O−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン及び5−メチル−シチジン(m5C)、N6−メチル−アデノシン(m6A)またはN6−メチル−アデノシン(m6A)及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む、先行する実施形態のうちいずれか1つに記載のmmRNA。
E32.上記mmRNAが、シュードウリジン(Ψ)、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)、2−チオウリジン、4’−チオウリジン、5−メチルシトシン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、4−チオ−シュードウリジン、5−アザ−ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5−メトキシウリジン、または2’−O−メチルウリジン、またはそれらの組み合わせを含む、先行する実施形態のうちいずれか1つに記載のmmRNA。
E33.上記mmRNAが、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、5−メチル−シチジン(m5C)、シュードウリジン(Ψ)、α−チオ−グアノシンまたはα−チオ−アデノシン、またはそれらの組み合わせを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のmmRNA。
E34.実施形態1〜33のいずれか1つに記載のmmRNAを含む脂質ナノ粒子。
E35.リポソームである、実施形態34に記載の脂質ナノ粒子。
E36.カチオン性脂質及び/またはイオン性脂質を含む、実施形態34に記載の脂質ナノ粒子。
E37.上記カチオン性脂質及び/またはイオン性脂質が、2,2−ジリノレイル−4−メチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)またはジリノレイル−メチル−4−ジメチルアミノブチレート(DLin−MC3−DMA)である、実施形態36に記載の脂質ナノ粒子。
E38.上記脂質ナノ粒子が、上記脂質ナノ粒子の外面にコンジュゲートされている標的化部分をさらに含む、実施形態34〜37のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
E39.実施形態1〜33のいずれかに記載のmmRNAまたは実施形態34〜38のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、及び薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物。
E40.細胞の免疫原性細胞死を誘導するための方法であって、上記細胞を、実施形態1〜33のいずれか1つに記載のmmRNA、実施形態34〜38のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、または実施形態39に記載の薬学的組成物と接触させることを包含し、その結果上記細胞の免疫原性細胞死が起こる方法。
E41.免疫原性細胞死が、原形質膜の破裂及び上記細胞のサイトゾル内容物の放出によって特徴付けられる、実施形態40に記載の方法。
E42.ATP及びHMGB1が細胞から放出される、実施形態41に記載の方法。
E43.上記接触がインビトロまたはインビボで起こる、実施形態40〜42のいずれか1つに記載の方法。
E44.上記細胞ががん細胞である、実施形態40〜43のいずれか1つに記載の方法。
E45.上記がん細胞が肝臓癌細胞、結腸直腸癌細胞または黒色腫癌細胞である、実施形態44に記載の方法。
E46.上記細胞がヒト細胞である、実施形態40〜45のいずれか1つに記載の方法。
E47.それを必要とする対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激する方法であって、上記対象に対して有効量の実施形態1〜33のいずれか1つに記載のmmRNA、実施形態34〜38のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、または実施形態39に記載の薬学的組成物を投与することを包含し、その結果上記腫瘍に対する免疫原性応答が上記対象において刺激される方法。
E48.実施形態47に記載の方法であって、上記対象に対して、免疫応答を増強する少なくとも1つの因子を投与し、免疫応答を増強する上記少なくとも1つの因子が適応免疫を誘導するか、1型インターフェロンを刺激するか、炎症応答を刺激するか、NFκBシグナル伝達を刺激するか、または樹状細胞動員を刺激することをさらに包含する、方法。
E49.上記少なくとも1つの因子が1型インターフェロンを刺激することによって適応免疫を誘導する、実施形態48に記載の方法。
E50.T細胞活性化または初回刺激を誘導する少なくとも1つの因子を上記対象に投与することをさらに包含する、実施形態47に記載の方法。
E51.T細胞活性化または初回刺激を誘導する上記少なくとも1つの因子がサイトカインまたはケモカインである、実施形態50に記載の方法。
E52.免疫チェックポイントを調節する少なくとも1つの因子を上記対象に投与することをさらに包含する、実施形態47に記載の方法。
E53.実施形態47に記載の方法であって、上記対象に以下:(i)免疫応答を増強する少なくとも1つの因子;(ii)T細胞活性化または初回刺激を誘導する少なくとも1つの因子;及び(iii)免疫チェックポイントを調節する少なくとも1つの因子、を投与することをさらに包含する、方法。
E54.上記mmRNA、脂質ナノ粒子または薬学的組成物が上記対象に非経口投与される、実施形態47〜53のいずれか1つに記載の方法。
E55.上記mmRNA、脂質ナノ粒子または薬学的組成物が週1回の注入によって投与される、実施形態54に記載の方法。
E56.上記対象がヒトである、実施形態47〜55のいずれか1つに記載の方法。
E57.上記腫瘍が肝臓癌または結腸直腸癌である、実施形態47〜56のいずれか1つに記載の方法。
E58.それを必要とする対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激する方法であって、上記対象に有効量の:
(i)免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、上記第1のmmRNAが1つ以上の修飾核酸塩基を包含する、メッセンジャーRNA;
ならびに以下のうち少なくとも次の1つ:
(ii)免疫応答を増強するポリペプチドをコードする第2のmmRNAであって、1つ以上の修飾核酸塩基を含む、第2のmmRNA;
(iii)T細胞活性化または初回刺激を誘導するポリペプチドをコードする第3のmmRNAであって、1つ以上の修飾核酸塩基を含む第3のmmRNA、及び/または
(iv)免疫チェックポイントを調節するポリペプチドをコードする第4のmmRNAであって、1つ以上の修飾核酸塩基を含む第4のmmRNA、
を投与することを包含し、
その結果、上記腫瘍に対する免疫原性応答が上記対象において生じる、方法。
E59.上記第2のmmRNAが、適応免疫を誘導するか、1型インターフェロンを刺激するか、炎症応答を刺激するか、NFκBシグナル伝達を刺激するか、または樹状細胞動員を刺激する、ポリペプチドをコードする、実施形態58に記載の方法。
E60.上記第1のmmRNA及び第2のmmRNAが上記対象に投与される、実施形態58に記載の方法。
E61.上記第1のmmRNA、上記第2のmmRNA及び上記第3のmmRNAが上記対象に投与される、実施形態58に記載の方法。
E62.上記第1のmmRNA、上記第2のmmRNA、上記第3のmmRNA及び上記第4のmmRNAが上記対象に投与される、実施形態58に記載の方法。
E63.上記第1のmmRNA、第2のmmRNA、第3のmmRNA及び/または第4のmmRNAが、上記対象に投与されるのと同じ薬学的組成物または脂質ナノ粒子中に存在する、実施形態58〜62のいずれか1つに記載の方法。
E64.上記第1のmmRNAによってコードされる上記ポリペプチドが、MLKL、RIPK3、RIPK1、DIABLO、FADD、GSDMD、カスパーゼ−4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−11、NLRP3、ASC/PYCARD及びPyrinからなる群より選択される、実施形態58〜63のいずれか1つに記載の方法。。
E65.上記第2のmmRNAによってコードされる上記ポリペプチドが、DIABLO、STING、IRF1、IRF3、IRF5、IRF6、IRF7、IRF8、STAT1、STAT2、STAT4、STAT6、NFAT、C/EBPb、IKKβ、c−FLIP、RIPK1、IL−27、ApoF、PLP及びFLT3からなる群より選択される、実施形態58〜64のいずれか1つに記載の方法。
E66.上記第3のmmRNAによってコードされる上記ポリペプチドがIL−12、IL36g、CCL2、CCL4、CCL20及びCCL21からなる群より選択される、実施形態58及び60〜64のいずれか1つに記載の方法。
E67.上記第4のmmRNAによってコードされる上記ポリペプチドが、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、CTLA−4阻害剤、OX−40アゴニスト、OX−40L及びICOS経路アゴニストからなる群より選択される、実施形態58及び61〜65のいずれか1つに記載の方法。
E68.それを必要とする対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激する方法であって、上記対象に有効量の:
(i)免疫原性細胞死を誘導するポリペプチドをコードする少なくとも1つの第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、1つ以上の修飾核酸塩基を含む、第1のmmRNA;
ならびに以下のうちの少なくとも1つ:
(ii)免疫応答を増強するポリペプチドをコードする少なくとも1つの第2のmmRNAであって、1つ以上の修飾核酸塩基を含む第2のmmRNA、及び/または
(iii)免疫チェックポイント阻害剤、
を投与することを包含し、
その結果、上記腫瘍に対する免疫原性応答が上記対象において生じる、方法。
E69.上記少なくとも1つの第1のmmRNAが、MLKL、Diablo、RIPK3、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるポリペプチドをコードする、実施形態68に記載の方法。
E70.上記第1のmmRNAがMLKLをコードする、実施形態69に記載の方法。
E71.上記第1のmmRNAがDiabloをコードする、実施形態69に記載の方法。
E72.上記第1のmmRNAがRIPK3をコードする、実施形態69に記載の方法。
E73.上記第1のmmRNAが、一方がMLKLをコードし、他方がDiabloをコードする2つのmmRNAを含む、実施形態69に記載の方法。
E74.上記第1のmmRNAが、一方がMLKLをコードし、他方がRIPK3をコードする2つのmmRNAを含む、実施形態69に記載の方法。
E75.上記第1のmmRNAが、一方がRIPK3をコードし、他方がDiabloをコードする2つのmmRNAを含む、実施形態69に記載の方法。
E76.上記第2のmmRNAがSTINGをコードする、実施形態68〜75のいずれか1つに記載の方法。
E77.上記免疫チェックポイント阻害剤が抗CTLA−4抗体である、実施形態68〜76のいずれか1つに記載の方法。
E78.上記免疫チェックポイント阻害剤が抗PD−1抗体である、実施形態68〜76のいずれか1つに記載の方法。
E79.対象における目的の抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)であって、上記mmRNAが、1つ以上の修飾核酸塩基を含み、上記免疫応答は、以下:
(i)I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること;
(ii)NFκB経路シグナル伝達を刺激すること;
(iii)炎症反応を刺激すること;
(iv)サイトカイン産生を刺激すること;または
(v)樹状細胞の発達、活性もしくは動員を刺激すること;及び
(vi)(i)〜(vi)のいずれかの組み合わせ、
によって特徴付けられる、
細胞性免疫応答または体液性免疫応答を含む、mmRNA。
E80.上記目的の抗原が上記対象における内因性抗原である、実施形態79に記載のmmRNA。
E81.上記目的の抗原が、mmRNAと一緒に上記対象に同時投与される外因性抗原である、実施形態79に記載のmmRNA。
E82.上記目的の抗原がmmRNAによってコードされている実施形態81に記載のmmRNA。
E83.構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドをコードする、実施形態79〜82のいずれかに記載のmmRNA。
E84.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドが、V147L、N154S、V155M、R284M、R284K、R284T、E315Q、R375A、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の変異を含む、実施形態83に記載のmmRNA。
E85.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドがV155M変異を含む、実施形態84に記載のmmRNA。
E86.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドが変異R284M/V147L/N154S/V155Mを含む実施形態84に記載のmmRNA。
E87.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドが、配列番号1〜10のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号199〜208、225、1319もしくは1320のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態84に記載のmmRNA。
E88.上記mmRNAが構成的に活性なIRF3ポリペプチドをコードする、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E89.上記構成的に活性なIRF3ポリペプチドがS396D変異を含む、実施形態88に記載のmmRNA。
E90.上記構成的に活性なIRF3ポリペプチドが、配列番号11〜12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、実施形態89に記載のmmRNA。
E91.上記mmRNAが構成的に活性なヒトIRF7ポリペプチドをコードする、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E92.上記構成的に活性なヒトIRF7ポリペプチドが、S475D、S476D、S477D、S479D、L480D、S483D、S487D、アミノ酸247〜467の欠失、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の変異を含む、実施形態91に記載のmmRNA。
E93.上記構成的に活性なヒトIRF7ポリペプチドが配列番号14〜18のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、実施形態91に記載のmmRNA。
E94.上記ポリペプチドが、MyD88、TRAM、IRF1、IRF8、IRF9、TBK1、IKKi、STAT1、STAT2、STAT4、STAT6、c−FLIP、IKKβ、RIPK1、TAK−TAB1、DIABLO、Btk、自己活性化カスパーゼ−1及びFlt3からなる群より選択される、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E95.上記ポリペプチドがI型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激する、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E96.上記ポリペプチドがNFκBシグナル伝達を刺激する、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E97.上記ポリペプチドがサイトカイン産生を刺激する、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E98.上記ポリペプチドによって増強される免疫応答が細胞性免疫応答である、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E99.上記ポリペプチドによって増強される免疫応答が体液性免疫応答である、実施形態79〜82のいずれか1つに記載のmmRNA。
E100.実施形態79、81〜99のいずれか1つに記載のmmRNA及び少なくとも1つの目的の抗原をコードする第2のmmRNAを含む組成物であって、上記第2のmmRNAが1つ以上の修飾核酸塩基を含み、上記組成物が対象に投与されるとき、上記ポリペプチドが上記少なくとも1つの目的の抗原に対する免疫応答を増強する組成物。
E101.上記少なくとも1つの目的の抗原及び上記少なくとも1つの目的の抗原に対する免疫応答を増強する上記ポリペプチドの両方をコードする単一のmmRNA構築物を含む、実施形態100に記載の組成物。
E102.一方は目的の少なくとも1つの上記抗原をコードし、もう一方は目的の少なくとも1つの上記抗原に対する免疫応答を増強する上記ポリペプチドをコードする、2つのmmRNA構築物を含む、実施形態100記載の組成物。
E103.上記2つのmmRNA構築物が脂質ナノ粒子中に共処方されている、実施形態102に記載の組成物。
E104.上記少なくとも1つの目的の抗原が少なくとも1つの腫瘍抗原である、実施形態100〜103のいずれか1つに記載の組成物。
E105.上記少なくとも1つの腫瘍抗原が少なくとも1つの変異体KRAS抗原である、実施形態104に記載の組成物。
E106.上記少なくとも1つの変異体KRAS抗原がG12D、G12V、G13D、G12C及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含む、実施形態105に記載の組成物。
E107.上記少なくとも1つの変異体KRAS抗原が、配列番号95〜106及び131〜132のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号1321または1322に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、実施形態105に記載の組成物。
E108.実施形態105の組成物であって、少なくとも1つの変異体KRAS抗原及び構成的に活性なSTINGポリペプチドをコードするmmRNAを含み、上記mmRNAが配列番号107〜130のいずれか1つに示されるアミノ酸配列をコードする、組成物。
E109.上記少なくとも1つの目的の抗原が少なくとも1つの病原体抗原である、実施形態100〜103のいずれか1つに記載の組成物。
E110.上記少なくとも1つの病原体抗原が、ウイルス、細菌、原生動物、真菌及び寄生生物からなる群より選択される病原体に由来する、実施形態109に記載の組成物。
E111.上記少なくとも1つの病原体抗原が少なくとも1つのウイルス抗原である、実施形態110に記載の組成物。
E112.上記少なくとも1つのウイルス抗原が少なくとも1つのヒトパピローマウイルス(HPV)抗原である、実施形態111に記載の組成物。
E113.上記HPV抗原がHPV16 E6もしくはHPV E7抗原、またはそれらの組み合わせである、実施形態112に記載の組成物。
E114.上記HPV抗原が、配列番号36〜94のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、実施形態113に記載の組成物。
E115.上記少なくとも1つの病原体抗原が少なくとも1つの細菌性抗原である、実施形態110に記載の組成物。
E116.上記mmRNA(複数可)が、5’UTR、上記ポリペプチドをコードするコドン最適化オープンリーディングフレーム、3’UTR及び連結ヌクレオシドの3’テーリング領域を含む、実施形態79〜115のいずれか1つに記載のmmRNAまたは組成物。
E117.上記mmRNA(複数可)が、1つ以上のマイクロRNA(miRNA)結合部位をさらに含む、実施形態116に記載のmmRNAまたは組成物。
E118.上記mmRNA(複数可)が完全に修飾されている、実施形態79〜117のいずれか1つに記載のmmRNAまたは組成物。
E119.上記mmRNA(複数可)が、シュードウリジン(Ψ)、シュードウリジン(Ψ)及び5−メチル−シチジン(m5C)、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)及び5−メチル−シチジン(m5C)、2−チオウリジン(s2U)、2−チオウリジン及び5−メチル−シチジン(m5C)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)及び5−メチル−シチジン(m5C)、2’−O−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン及び5−メチル−シチジン(m5C)、N6−メチル−アデノシン(m6A)またはN6−メチル−アデノシン(m6A)及び5−メチル−シチジン(m5C)を含む、実施形態79〜118のいずれか1つに記載のmmRNAまたは組成物。
E120.上記mmRNA(複数可)が、シュードウリジン(Ψ)、N1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)、2−チオウリジン、4’−チオウリジン、5−メチルシトシン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、4−チオ−シュードウリジン、5−アザ−ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5−メトキシウリジン、または2’−O−メチルウリジン、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態79〜119のいずれか1つに記載のmmRNAまたは組成物。
E121.上記mmRNA(複数可)が、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、5−メチル−シチジン(m5C)、シュードウリジン(Ψ)、α−チオ−グアノシン、もしくはα−チオ−アデノシン、またはそれらの組み合わせを含む、実施形態79〜120のいずれか1つに記載のmmRNAまたは組成物。
E122.実施形態79〜121のいずれかに記載のmmRNAまたは組成物を含む脂質ナノ粒子。
E123.リポソームである、実施形態122の脂質ナノ粒子。
E124.カチオン性及び/またはイオン性アミノ脂質を含む、実施形態122に記載の脂質ナノ粒子。
E125.上記カチオン性及び/またはイオン性アミノ脂質が、2,2−ジリノレイル−4−メチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)またはジリノレイル−メチル−4−ジメチルアミノ酪酸エステル(DLin−MC3−DMA)である、実施形態124に記載の脂質ナノ粒子。
E126.上記脂質ナノ粒子が、上記脂質ナノ粒子の外面にコンジュゲートした標的化部分をさらに含む、実施形態122〜125のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子。
E127.実施形態79〜121のいずれかに記載のmmRNAもしくは組成物または実施形態122〜126のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、及び薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む薬学的組成物。
E128.目的の抗原に対する免疫応答を増強するための方法であって、実施形態79〜121のいずれか1つに記載のmmRNAもしくは組成物、実施形態122〜126のいずれか1つに記載の脂質ナノ粒子、または実施形態127に記載の薬学的組成物を対象に投与することを包含し、その結果、上記目的の抗原に対する免疫応答が上記対象において増強される、方法。
E129.免疫応答を増強することがサイトカイン産生を刺激することを包含する、実施形態128に記載の方法。
E130.免疫応答を増強することが、抗原特異的CD8+T細胞活性を刺激することを包含する、実施形態128に記載の方法。
E131.免疫応答を増強することが、抗原特異的抗体産生を刺激することを包含する、実施形態128に記載の方法。
E132.I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激するmRNA組成物を上記対象に投与する前に、樹状細胞の発達または活性を刺激するmRNA組成物を上記対象に投与することを包含する、実施形態128に記載の方法。
E133.それを必要とする対象において腫瘍に対する免疫原性応答を刺激する方法であって、上記対象に対して、有効量の実施形態79〜121のいずれか1つに記載のmmRNAもしくは組成物、またはそれらの脂質ナノ粒子、またはその薬学的組成物を投与することを包含し、その結果、上記腫瘍に対する免疫原性応答が上記対象において刺激される、方法。
E134.上記腫瘍が、肝臓癌、結腸直腸癌、黒色腫癌、膵臓癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、子宮頸癌、または頭頸部癌である、実施形態133に記載の方法。
E135.上記対象がヒトである、実施形態133に記載の方法。
E136.それを必要とする対象において病原体に対する免疫原性応答を刺激する方法であって、上記対象に対して、実施形態79〜99及び116〜121のいずれか1つに記載の有効量のmmRNA、または実施形態100〜115のいずれか1つに記載の組成物、またはその脂質ナノ粒子、またはその薬学的組成物を投与することを包含し、その結果、上記病原体に対する免疫原性応答が上記対象において刺激される、方法。
E137.上記病原体が、ウイルス、細菌、原生動物、真菌及び寄生生物からなる群より選択される、実施形態136に記載の方法。
E138.上記病原体がウイルスである、実施形態137に記載の方法。
E139.上記病原体がヒトパピローマウイルス(HPV)である、実施形態138に記載の方法。
E140.上記病原体が細菌である、実施形態137に記載の方法。
E141.上記対象がヒトである、実施形態136に記載の方法。
E142.それを必要とする対象においてヒトパピローマウイルス(HPV)関連がんを予防または処置する方法であって、以下:(i)少なくとも1つの目的のHPV抗原、及び(ii)少なくとも1つの上記目的のHPV抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチド、をコードする少なくとも1つのmRNA構築物を含む組成物を上記対象に投与することを包含し、その結果、上記目的の少なくとも1つのHPV抗原に対する免疫応答が増強される、方法。
E143.上記目的の少なくとも1つのHPV抗原(複数可)に対する免疫応答を増強する上記ポリペプチドがSTINGポリペプチドである、実施形態142に記載の方法。
E144.上記少なくとも1つのHPV抗原が、少なくとも1つのE6抗原、少なくとも1つのE7抗原、または少なくとも1つのE6抗原と少なくとも1つのE7抗原との組合せである、実施形態142に記載の方法。
E145.上記少なくとも1つのHPV抗原及び上記ポリペプチドが別々のmRNA上にコードされており、そして上記対象への投与の前に脂質ナノ粒子中に共処方されている、実施形態142に記載の方法。
E146.上記対象がHPVへの曝露の危険性があり、上記組成物がHPVへの曝露の前に投与される、実施形態142に記載の方法。
E147.上記対象がHPVに感染しているか、またはHPV関連がんを患っている、実施形態142に記載の方法。
E148.上記がんが、子宮頸癌、陰茎癌、膣癌、外陰癌、肛門癌、及び口腔咽頭癌からなる群より選択される、実施形態147に記載の方法。
E149.上記対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いても処置されている、実施形態148に記載の方法。
E150.対象における少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)、及び少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原をコードする第2のmmRNAを含む組成物であって、各mmRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基を含み、上記免疫応答は、以下:
(i)I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること;
(ii)NFκB経路シグナル伝達を刺激すること;
(iii)炎症反応を刺激すること;
(iv)サイトカイン産生を刺激すること;または
(v)樹状細胞の発達、活性または動員を刺激すること;及び
(vi)(i)〜(vi)のいずれかの組み合わせ、
によって特徴付けられる細胞性免疫応答または体液性免疫応答を含む、組成物。
E151.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原及び上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強する上記ポリペプチドの両方をコードする単一のmmRNA構築物を含む、実施形態150の組成物。
E152.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス1型(HTLV−1)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)及びメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)からなる群より選択される発がん性ウイルスに由来する、実施形態150または151の組成物。
E153.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が:E1、E2、E4、E5、E6、E7、L1、L2及びそれらの組み合わせからなるHPV抗原の群から選択される、実施形態150または151に記載の組成物。
E154.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が:HBsAg、HBcAg、HBeAg、HBxAg、Pol、及びそれらの組み合わせからなるHBV抗原の群から選択される、実施形態150または151に記載の組成物。
E155.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が:コア(C、p22)、E1(gp35)、E2(gp70)、NS1(p7)、NS2(p23)、NS3(p70)、NS4A(p8)、NS4B(p27)、NS5A(p56/58)、NS5B(p68)、及びそれらの組み合わせからなるHCV抗原の群から選択される、実施形態150または151に記載の組成物。
E156.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が、EBV−1またはEBV−2由来の抗原性ポリペプチドである、実施形態150または151に記載の組成物。
E157.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が:gag、pol、pro、env、tax、rex、p12、p21、p13、p30、HBZ、及びそれらの組み合わせからなるHTLV−1抗原の群から選択される、実施形態150または151に記載の組成物。
E158.少なくとも1つの発がん性ウイルス抗原が、KSHVサブタイプA、KSHVサブタイプB、KSHVサブタイプC、KSHVサブタイプD、KSHVサブタイプE、またはそれらの組み合わせ由来の抗原性ポリペプチドである、実施形態150または151に記載の組成物。
E159.上記少なくとも1つの目的の発がん性ウイルス抗原が:ラージT抗原(LT)、スモールT抗原(sT)、57kT抗原(57kT)、選択的T抗原(ALTO)、メジャーキャプシドタンパク質ウイルスタンパク質1(VP1)、マイナーキャプシドウイルスタンパク質2または3(VP2またはVP3)、及びそれらの組み合わせからなるMCPyV抗原の群から選択される、実施形態150または151に記載の組成物。
E160.上記少なくとも1つの発がん性ウイルス抗原が、2〜20の発がん性ウイルス抗原から構成されるコンカテマー発がん性ウイルス抗原である、実施形態150〜159のいずれか1つの実施形態に記載の組成物。
E161.上記コンカテマー発がん性ウイルス抗原が、以下:
a)22〜20個の上記発がん性ウイルス抗原に切断感受性部位が散在している;
b)各発がん性ウイルス抗原をコードするmmRNAがリンカーなしで互いに直接結合している、及び/または
c)各発がん性ウイルスをコードするmmRNAが単一のヌクレオチドリンカーで互いに連結されている、
のうちの1つ以上を含む、実施形態160に記載の組成物。
E162.ユビキチン化シグナルをさらに含む、実施形態150〜161のいずれか1つに記載の組成物。
E163.上記ユビキチン化シグナルが上記mmRNAのC末端に位置する、実施形態162に記載の組成物。
E164.上記切断部位の少なくとも1つがAPC切断部位である、実施形態161〜163のいずれか1つに記載の組成物。
E165.上記切断部位がセリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼの切断部位である、実施形態164に記載の組成物。
E166.上記切断部位がシステインプロテアーゼに対するものである、実施形態165に記載の組成物。
E167.上記システインプロテアーゼがカテプシンBである、実施形態166に記載の組成物。
E168.上記切断部位がアミノ酸配列GFLG、Arg−↓−NHMec;Bz−Arg−↓−NhNap;Bz−Arg−↓NHMec;Bz−Phe−Cal−Arg−↓−NHMec;Pro−Gly−↓−Phe;Xaa−Xaa−Val−Val−Arg−Xaa−XまたはArg−Argを含み、、ここでXaaが任意のアミノ酸残基である、実施形態164に記載の組成物。
E169.さらにリコール抗原を含む、実施形態150〜168のいずれか1つに記載の組成物。
E170.上記リコール抗原が、上記リコール抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmRNAである、実施形態169に記載の組成物。
E171.上記リコール抗原が上記コンカテマー抗原に含まれる、実施形態169または170に記載の組成物。
E172.エンドソーム標的化配列をさらに含む、実施形態150〜171のいずれか1つに記載の組成物。
E173.上記エンドソーム標的化配列が、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP−1)の膜貫通ドメインの少なくとも一部分を含む、実施形態172に記載の組成物。
E174.上記エンドソーム標的化配列が、不変鎖の膜貫通ドメイン(Ii)の少なくとも一部を含む、実施形態172に記載の組成物。
E175.HPV由来の少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)、及びHPV由来の上記少なくとも1つの抗原をコードする第2のmmRNAを含む組成物であって、各mmRNAが1つ以上の修飾核酸塩基を含む、組成物。
E176.上記第2のmmRNAがHPV抗原E6及び/またはHPV抗原E7をコードする、実施形態175に記載の組成物。
E177.上記第1のmmRNAが構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドをコードする、実施形態175または176に記載の組成物。
E178.各mmRNAが同じまたは異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態150〜177のいずれか1つに記載の組成物。
E179.発がん性ウイルス抗原をコードする各mmRNAが、同一または異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態178に記載の組成物。
E180.上記発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが、同一または異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態179の組成物。
E181.発がん性ウイルス抗原をコードする各mmRNAが同じ脂質ナノ粒子に処方され、上記発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが異なる脂質ナノ粒子に処方される、実施形態178〜180のいずれか1つに記載の組成物。
E182.発がん性ウイルス抗原をコードする各mmRNAが同じ脂質ナノ粒子に処方され、上記発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが、発がん性ウイルス抗原をコードする各mmRNAと同じ脂質ナノ粒子に処方される、実施形態178〜180のいずれか1つに記載の組成物。
E183.発がん性ウイルス抗原をコードする各mmRNAが異なる脂質ナノ粒子に処方され、上記発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが各発がん性ウイルス抗原をコードする各mmRNAと同じ脂質ナノ粒子に処方される、実施形態178〜180のいずれか1つに記載の組成物。
E184.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が:
発がん性ウイルス抗原のコンカテマーをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
発がん性ウイルス抗原のコンカテマーに対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤、
を含む、脂質ナノ粒子担体。
E185.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が:
発がん性ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのmmRNA;
上記発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤、
を含む、脂質ナノ粒子担体。
E186.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が:
HPV抗原のコンカテマーをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤、
を含む、脂質ナノ粒子担体。
E187.HPV抗原のコンカテマーがHPV抗原E6及びE7を含む、実施形態186に記載の脂質ナノ粒子担体。
E188.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が:
HPVウイルス抗原E6をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
HPVウイルス抗原E7をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤、
を含む、脂質ナノ粒子担体。
E189.ワクチンであって:
薬学的組成物を含む第1のナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、目的の第1の発がん性ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、上記目的の第1の発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、第1のナノ粒子;
薬学的組成物を含む第2のナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、目的の第2の発がん性ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、上記目的の第2の発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、第2のナノ粒子;
薬学的組成物を含む第3のナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、目的の第3の発がん性ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、上記目的の第3の発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、第3のナノ粒子;
薬学的組成物を含む第4のナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、目的の第4の発がん性ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、上記目的の第4の発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、第4のナノ粒子;または
それらの組み合わせ、
を含む、ワクチン。
E190.ワクチンであって:
薬学的組成物を含むナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、目的のコンカテマー発がん性ウイルス抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、上記目的のコンカテマー発がん性ウイルス抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含むナノ粒子、を含むワクチン。
E191.ワクチンであって:
薬学的組成物を含む第1のナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、HPV抗原E6をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、第1のナノ粒子;ならびに
薬学的組成物を含む第2のナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、HPV抗原E7をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNAと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、第2のナノ粒子、
を含む、ワクチン。
E192.発がん性ウイルスに感染した対象における腫瘍増殖を予防する方法であって、実施形態150〜191のいずれか1つに記載の組成物、脂質ナノ粒子担体、またはワクチンを上記対象に投与することを包含し、その結果腫瘍増殖が上記対象において予防される、方法。
E193.上記対象が投与前に検出可能な腫瘍を有していない、実施形態192に記載の方法。
E194.発がん性ウイルスに感染した対象において腫瘍増殖を阻害する方法であって、上記対象に対して実施形態150〜191のいずれか1つの組成物、脂質ナノ粒子担体、またはワクチンを投与することを包含し、その結果、腫瘍増殖が上記対象において阻害される、方法。
E195.投与前の腫瘍形成が上記発がん性ウイルスの感染の結果である、実施形態194に記載の方法。
E196.癌性ウイルスに感染した癌対象においてがんを処置する方法であって、上記対象に対して、実施形態150〜191のいずれか1つに記載の組成物、脂質ナノ粒子担体、またはワクチンを投与することを包含し、その結果癌が上記対象において処置される、方法。
E197.上記癌が上記発がん性ウイルスの感染の結果である、実施形態196に記載の方法。
E198.対象において少なくとも1つの目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)、及び上記少なくとも1つの目的のがん抗原をコードする第2のmmRNAを含む、個別化がんワクチンであって、各mmRNAが、1つ以上の修飾核酸塩基を含み、免疫応答が、以下:
(i)I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること;
(ii)NFκB経路シグナル伝達を刺激すること;
(iii)炎症反応を刺激すること;
(iv)サイトカイン産生を刺激すること;または
(v)樹状細胞の発達、活性または動員を刺激すること;及び
(vi)(i)〜(vi)のいずれかの組み合わせ
によって特徴付けられる細胞性免疫応答または体液性免疫応答を含む、個別化がんワクチン。
E199.上記少なくとも1つの目的のがん抗原と、少なくとも1つの目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドとの両方をコードする単一のmmRNA構築物を含む、実施形態198に記載の個別化されたがんワクチン。
E200.上記少なくとも1つの目的のがん抗原が、2〜100個のペプチドエピトープから構成されるコンカテマーがん抗原である、実施形態198または199に記載の個別化されたがんワクチン。
E201.上記コンカテマーがん抗原が、以下:
a)上記2〜100個のペプチドエピトープに切断感受性部位が点在している;
b)各ペプチドエピトープをコードする上記mRNAが、リンカーなしで互いに直接結合されている;
c)各ペプチドエピトープをコードする上記mRNAが、単一のヌクレオチドリンカーを用いて互いに連結されている;
d)各ペプチドエピトープが25〜35個のアミノ酸を含み、中央に位置するSNP変異を含む;
e)上記ペプチドエピトープの少なくとも30%が、対象由来のクラスIMHC分子に対して最も高い親和性を有する;
f)少なくとも30%の上記ペプチドエピトープが、対象由来のクラスIIMHC分子に対して最も高い親和性を有する;
g)上記ペプチドエピトープの少なくとも50%が、HLA−A、HLA−B及び/またはDRB1に対してIC>500nMという推定結合親和性を有する;
h)上記mRNAが20個のペプチドエピトープをコードする;
i)50%の上記ペプチドエピトープがクラスIMHCに対する結合親和性を有し、50%の上記ペプチドエピトープがクラスIIMHCに対する結合親和性を有する;及び/または
j)ペプチドエピトープをコードする上記mRNAは、上記ペプチドエピトープが疑似エピトープを最小にするように順序付けられるように配置される、
のうちの1つ以上を含む、実施形態200に記載の個別化されたがんワクチン。
E202.各ペプチドエピトープが31個のアミノ酸を含み、中央に位置するSNP変異を含み、SNP変異の両側に15個の隣接アミノ酸を有する、実施形態201に記載の個別化されたがんワクチン。
E203.上記ペプチドエピトープがT細胞エピトープ及び/またはB細胞エピトープである、実施形態200〜202のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E204.上記ペプチドエピトープがT細胞エピトープ及びB細胞エピトープの組み合わせを含む、実施形態200〜203のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E205.上記少なくとも1つのペプチドエピトープがT細胞エピトープである、実施形態200〜204のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E206.上記少なくとも1つのペプチドエピトープがB細胞エピトープである、実施形態200〜205のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E207.上記T細胞エピトープが8〜11個のアミノ酸を含む、実施形態200〜206のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E208.上記B細胞エピトープが13〜17個のアミノ酸を含む、実施形態200〜207のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E209.ユビキチン化シグナルをさらに含む、実施形態198〜208のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E210.上記ユビキチン化シグナルが上記mmRNAのC末端に位置する、実施形態209に記載の個別化されたがんワクチン。
E211.上記切断感受性部位の少なくとも1つがAPC切断部位である、実施形態201〜210のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E212.上記切断部位がセリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼの切断部位である、実施形態211に記載の個別化がんワクチン。
E213.上記切断部位がシステインプロテアーゼのためのものである、実施形態212の個別化されたがんワクチン。
E214.上記システインプロテアーゼがカテプシンBである、実施形態213に記載の個別化されたがんワクチン。
E215.上記切断部位がアミノ酸配列GFLG、Arg−↓−NHMec;Bz−Arg−↓−NhNap;Bz−Arg−↓NHMec;Bz−Phe−Cal−Arg−↓−NHMec;Pro−Gly−↓−Phe;Xaa−Xaa−Val−Val−Arg−Xaa−XまたはArg−Argを含み、ここでXaaは任意のアミノ酸残基である、実施形態214の個別化されたがんワクチン。
E216.各ペプチドエピトープが抗原性領域及びMHC安定化領域を含む、実施形態200〜215のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E217.上記MHC安定化領域が5〜10アミノ酸長である、実施形態216に記載の個別化されたがんワクチン。
E218.上記抗原性領域が5〜100アミノ酸長である、実施形態216または217の個別化されたがんワクチン。
E219.上記ペプチドエピトープが、上記対象のMHCに対する結合強度について最適化されている、実施形態200〜218のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E220.各エピトープに対するTCR面が内因性タンパク質との類似性が低い、実施形態219の個別化されたがんワクチン。
E221.さらにリコール抗原を含む、実施形態198〜220のいずれか1つの個別化されたがんワクチン。
E222.上記リコール抗原が感染性疾患抗原である、実施形態221に記載の個別化されたがんワクチン。
E223.上記リコール抗原が、上記リコール抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmRNAである、実施形態221または222の個別化されたがんワクチン。
E224.上記リコール抗原が上記コンカテマー抗原中のペプチドエピトープである、実施形態221〜223のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E225.上記リコール抗原がインフルエンザ抗原である、実施形態221及び223〜224のいずれか1つの個別化されたがんワクチン。
E226.エンドソーム標的化配列をさらに含む、実施形態198〜225のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E227.上記エンドソーム標的化配列が、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP−1)の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む、実施形態226に記載の個別化されたがんワクチン。
E228.上記エンドソーム標的化配列が、不変鎖の膜貫通ドメイン(Ii)の少なくとも一部を含む、実施形態226に記載の個別化されたがんワクチン。
E229.上記ペプチドエピトープが少なくとも1つのMHCクラスIエピトープ及び少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープを含む、実施形態200の個別化されたがんワクチン。
E230.上記エピトープの少なくとも30%がMHCクラスIエピトープである、実施形態229の個別化されたがんワクチン。
E231.上記エピトープの少なくとも30%がMHCクラスIIエピトープである、実施形態229の個別化されたがんワクチン。
E232.1つ以上の伝統的ながん抗原をコードするORFをさらに含む、実施形態198〜231のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E233.1つ以上の伝統的ながん抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmRNAをさらに含む、実施形態198〜232のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E234.対象において少なくとも1つの目的のがん抗原に対する免疫応答を増強する上記ポリペプチドが構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドである、実施形態198〜233のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチン。
E235.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドが、V147L、N154S、V155M、R284M、R284K、R284T、E315Q、R375A、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の変異を含む、実施形態234に記載の個別化されたがんワクチン。
E236.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドがV155M変異を含む、実施形態235に記載の個別化されたがんワクチン。
E237.上記構成的に活性なヒトSTINGポリペプチドが、変異R284M/V147L/N154S/V155Mを含む、実施形態235に記載の個別化されたがんワクチン。
E238.実施形態198〜238のいずれか1つに記載の個別化されたがんワクチンを含む組成物。
E239.各mmRNAが同一または異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態238に記載の組成物。
E240.目的のがん抗原をコードする各mmRNAが、同一または異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態239に記載の組成物。
E241.目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが、同じまたは異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態240に記載の組成物。
E242.目的のがん抗原をコードする各mmRNAが同じ脂質ナノ粒子に処方され、上記目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが異なる抗原に処方される、実施形態239〜241のいずれか1つに記載の組成物。
E243.目的のがん抗原をコードする各mmRNAが同じ脂質ナノ粒子に処方され、上記目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが、目的のがん抗原をコードする各mmRNAと同じ脂質ナノ粒子に処方される、実施形態239〜241のいずれか1つに記載の組成物。
E244.目的のがん抗原をコードする各mmRNAが異なる脂質ナノ粒子に処方され、上記目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが目的の各がん抗原をコードする各mmRNAと同じ脂質ナノ粒子に処方される、実施形態239〜241のいずれか1つに記載の組成物。
E245.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が以下:
目的のコンカテマーがん抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
上記目的のコンカテマーがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
薬学的に許容される担体または賦形剤、
を含む、脂質ナノ粒子担体。
E246.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が以下:
目的のがん抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのmmRNA;
上記目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤、
を含む、脂質ナノ粒子担体。
E247.個別化されたがんワクチンであって、以下:
薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、対象において目的のがん抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのmmRNA、上記目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、脂質ナノ粒子、
を含む、個別化されたがんワクチン。
E248.個別化されたがんワクチンであって、以下:
薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子であって、上記薬学的組成物が、目的のコンカテマーがん抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのmmRNA、上記目的のがん抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、及び薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、脂質ナノ粒子、
を含む、個別化されたがんワクチン。
E249.対象にワクチン接種するための方法であって、以下:
がんを有する対象に、個別化されたがんワクチンまたは実施形態198〜248のいずれか1つに記載の組成物を、上記対象にワクチン接種するために投与すること、
を包含する、方法。
E250.個別化されたがんワクチンを用いて対象を処置する方法であって、上記対象から試料を単離すること、上記試料由来の患者のトランスクリプトーム及び/または患者のエキソームを分析することによって一組のネオエピトープを同定して、患者特異的ムタノームを生成すること、MHC結合強度、MHC結合多様性、予測される免疫原性の程度、低い自己反応性、及び/またはT細胞反応性に基づいて上記ムタノーム由来ワクチンのネオエピトープのセットを選択すること、上記ネオエピトープのセットをコードするmRNA及び上記ネオエピトープに対する免疫応答を増強するポリペプチドを調製すること、ならびに上記対象から上記試料を単離した後2ヶ月以内に、上記対象に対して上記個別化されたがんワクチンを投与することを包含する、方法。
E251.上記個別化されたがんワクチンが、上記対象から上記試料を単離した後1ヶ月以内に上記対象に投与される、実施形態250に記載の方法。
E252.上記個別化されたがんワクチンが1つ以上の伝統的ながん抗原をさらにコードする、実施形態250または251に記載の方法。
E253.上記1つ以上の伝統的ながん抗原が上記ネオエピトープのセットをコードする同じmRNAによってコードされる、実施形態252に記載の方法。
E254.上記1つ以上の伝統的ながん抗原が、上記ネオエピトープのセットをコードするmRNAとは異なるmRNAによってコードされる、実施形態252に記載の方法。
E255.上記個別化されたがんワクチンががん治療剤と組み合わせて投与される、実施形態250〜254のいずれか1つに記載の方法。
E256.上記がん治療薬が伝統的ながんワクチンである、実施形態255の方法。
E257.少なくとも1つの目的の細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする第1の化学修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)、及び少なくとも1つの目的の細菌抗原をコードする第2のmmRNAを含む細菌ワクチンであって、各mmRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基を含み、上記免疫応答は、以下:
(i)I型インターフェロン経路シグナル伝達を刺激すること;
(ii)NFκB経路シグナル伝達を刺激すること;
(iii)炎症反応を刺激すること;
(iv)サイトカイン産生を刺激すること;または
(v)樹状細胞の発達、活性または動員を刺激すること;及び
(vi)(i)〜(vi)のいずれかの組み合わせ、
によって特徴付けられる細胞性免疫応答または体液性免疫応答を含む、細菌ワクチン。
E258.上記少なくとも1つの目的の細菌抗原及び上記少なくとも1つの目的の細菌抗原に対する免疫応答を増強する上記ポリペプチドの両方をコードする単一のmmRNA構築物を含む、実施形態257に記載の細菌ワクチン。
E259.上記目的の少なくとも1つの細菌抗原が、2〜10個の細菌抗原から構成されるコンカテマー細菌抗原である、実施形態257または258に記載の細菌ワクチン。
E260.上記コンカテマー細菌抗原が、以下:
a)上記2〜10個の細菌抗原に切断感受性部位が分散されている;
b)各細菌抗原をコードする上記mmRNAがリンカーなしで互いに直接結合されている;及び/または
c)各細菌抗原をコードする上記mmRNAが単一のヌクレオチドリンカーを用いて互いに連結されている、
のうちの1つ以上を含む、実施形態259に記載の細菌ワクチン。
E261.ユビキチン化シグナルをさらに含む、実施形態257〜260のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E262.上記ユビキチン化シグナルが上記mmRNAのC末端に位置する、実施形態261に記載の細菌ワクチン。
E263.上記切断部位のうち少なくとも1つがAPC切断部位である、実施形態260〜262のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E264.上記切断部位がセリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼの切断部位である、実施形態263に記載の細菌ワクチン。
E265.上記切断部位がシステインプロテアーゼのためのものである、実施形態264の細菌ワクチン。
E266.上記システインプロテアーゼがカテプシンBである、実施形態265の細菌ワクチン。
E267.上記切断部位がアミノ酸配列GFLG、Arg−↓−NHMec;Bz−Arg−↓−NhNap;Bz−Arg−↓NHMec;Bz−Phe−Cal−Arg−↓−NHMec;Pro−Gly−↓−Phe;Xaa−Xaa−Val−Val−Arg−Xaa−XまたはArg−Argを含み、ここでXaaは任意のアミノ酸残基である、実施形態263の細菌ワクチン。
E268.さらにリコール抗原を含む、実施形態257〜267のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E269.上記リコール抗原が感染性疾患抗原である、実施形態268に記載の細菌ワクチン。
E270.上記リコール抗原が、上記リコール抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmRNAである、実施形態268または269の細菌ワクチン。
E271.上記リコール抗原が上記コンカテマー抗原に含まれる、実施形態268〜270のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E272.上記リコール抗原がインフルエンザ抗原である、実施形態268〜271のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E273.エンドソーム標的化配列をさらに含む、実施形態257〜272のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E274.上記エンドソーム標的化配列が、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP−1)の膜貫通ドメインの少なくとも一部を含む、実施形態273に記載の細菌ワクチン。
E275.上記エンドソーム標的化配列が、不変鎖の膜貫通ドメイン(Ii)の少なくとも一部を含む実施形態273に記載の細菌ワクチン。
E276.上記ワクチンが体液性免疫応答を誘導する、実施形態257〜275のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E277.上記ワクチンが適応免疫応答を誘導する、実施形態257〜275のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E278.上記適応免疫応答が、抗原特異的抗体産生の誘導またはTヘルパーリンパ球もしくは細胞傷害性リンパ球の抗原特異的誘導/活性化を含む、実施形態277に記載の細菌ワクチン。
E279.上記目的の細菌抗原がStaphylococcus aureusに由来する、実施形態257〜278のいずれか1つに記載の細菌ワクチン。
E280.実施形態257〜279のいずれか1つに記載の細菌ワクチンを含む組成物。
E281.各mmRNAが同じまたは異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態280に記載の組成物。
E282.目的の細菌抗原をコードする各mmRNAが、同一または異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態281に記載の組成物。
E283.上記目的の細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが、同じまたは異なる脂質ナノ粒子に処方されている、実施形態282に記載の組成物。
E284.目的の細菌抗原をコードする各mmRNAが同じ脂質ナノ粒子に処方され、上記細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが異なる脂質ナノ粒子に処方される、実施形態281〜283のいずれか1つに記載の組成物。
E285.目的の細菌抗原をコードする各mmRNAが同じ脂質ナノ粒子に処方され、上記細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが細菌性抗原をコードする各mmRNAと同じ脂質ナノ粒子に処方される、実施形態281〜283のいずれか1つに記載の組成物。
E286.細菌抗原をコードする各mmRNAが異なる脂質ナノ粒子中に処方され、上記細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードする各mmRNAが各細菌抗原をコードする各mmRNAと同じ脂質ナノ粒子中に処方される、実施形態281〜283のいずれか1つに記載の組成物。
E287.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が:
細菌抗原のコンカテマーをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;
上記細菌抗原のコンカテマーに対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、
脂質ナノ粒子担体。
E288.薬学的組成物を含む脂質ナノ粒子担体であって、上記薬学的組成物が:
細菌抗原をコードするオープンリーディングフレームを有する少なくとも1つのmmRNA;
上記細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA;及び
薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む、
脂質ナノ粒子担体。
E289.細菌ワクチンであって以下:
薬学的組成物を含むナノ粒子であって、上記薬学的組成物が目的の細菌抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、上記目的の細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、及び薬学的に許容される担体または賦形剤、を含む、ナノ粒子、を含む、細菌ワクチン。
E290.細菌ワクチンであって、以下:
薬学的組成物を含むナノ粒子であって、上記薬学的組成物が目的のコンカテマー細菌抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、上記目的のコンカテマー細菌抗原に対する免疫応答を増強するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有するmmRNA、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、ナノ粒子、
を含む細菌ワクチン。
E291.目的の細菌による感染に対して対象にワクチン接種するための方法であって:
実施形態257〜290のいずれか1つの細菌ワクチン、組成物、または脂質ナノ粒子担体を上記対象に投与して、上記対象にワクチン接種することを包含する、方法。
E292.上記目的の細菌がStaphylococcus aureusである、実施形態291に記載の方法。
E293.上記目的の細菌がメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である、実施形態291に記載の方法。
E294.細菌感染症を有する対象を処置するための方法であって:
上記対象に実施形態257〜290のいずれか1つに記載の細菌ワクチン、組成物、または脂質ナノ粒子担体を投与して、上記対象を処置することを包含する、方法。
E295.上記細菌性感染がStaphylococcus aureusによって引き起こされる、実施形態294に記載の方法。
E296.上記細菌感染がメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)によって引き起こされる、実施形態294に記載の方法。
定義
投与:本明細書中で使用される場合、「投与する」とは、組成物を対象または患者に送達する方法を指す。投与方法は、身体の特定の領域または系への送達を標的する(例えば、特異的に送達する)ために選択され得る。例えば、投与は、非経口(例えば、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、髄腔内、病巣内、または頭蓋内注射、ならびに任意の適切な注入技術)、経口、経皮、もしくは皮内、皮内、直腸内、膣内、局所用(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/またはドロップによる)、粘膜、鼻腔、口腔内、経腸、硝子体、腫瘍内、舌下、鼻腔内;気管内注入、気管支注入、及び/または吸入による;経口スプレー及び/または粉末、鼻腔スプレー、及び/またはエアロゾルとして、及び/または門脈カテーテルを通してであってもよい。
おおよそ、約:本明細書で使用される場合、「ほぼ、おおよそ(approximately)」または「約、ほぼ(about)」とは、1つ以上の目的の値に適用される場合、述べられた参照値と同様の値を指す。特定の実施形態では、「ほぼ」または「約」という用語は、特に明記しない限り、または文脈から明らかな場合を除き、いずれかの方向(超えるかまたは下回る)で、言及した参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内におさまる値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
がん:本明細書中で使用される場合、「がん」とは、異常な及び/または未制御の細胞増殖を含む状態である。癌という用語は良性及び悪性のがんを包含する。例示的な非限定的な癌としては、副腎皮質癌、進行癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、脳腫瘍、脳癌、乳癌、小児癌、原発不明癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎細胞癌、喉頭癌及び下咽頭癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、骨髄異形成症候群(難治性貧血及び難治性血球減少症を含む)、骨髄増殖性新生物または疾患(真性多血症、本態性血小板増多症及び原発性骨髄線維症を含む)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、成人軟部肉腫、基底及び扁平上皮癌、黒色腫、小腸癌、胃癌、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、及びがん処置による二次がんが挙げられる。特定の実施形態では、がんは肝臓癌(例えば、肝細胞癌)または結腸直腸癌である。他の実施形態では、癌は、血液系癌または造血系癌である。
切断可能なリンカー:本明細書で使用される場合、「切断可能なリンカー」という用語は、等モルレベルの複数の遺伝子が同じmRNAから産生され得るように、マルチシストロンmRNA構築物に組み込むことができるリンカー、典型的にはペプチドリンカー(例えば、約5〜30アミノ酸長、典型的には約10〜20アミノ酸長)を指す。切断可能なリンカーの非限定的な例としては、ピコルナウイルスにおいて最初に発見された、F2A、P2A、T2A及びE2Aを含む2Aファミリーのペプチドが挙げられ、これは、mRNA構築物に組み込まれると(例えば、2つのポリペプチドドメイン間)、2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をリボソームにスキップさせることによって機能し、それによって2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離をもたらす。
コンジュゲートされた:本明細書で使用される「コンジュゲートされた」という用語は、2つ以上の部分に関して使用される場合、その部分が直接または連結剤として働く1つ以上の追加の部分を介して物理的に会合または互いに結合して、構造が使用される条件下、例えば、生理学的条件下で部分が物理的に会合したままであるように十分に安定な構造を形成することを意味する。いくつかの実施形態では、2つ以上の部分が直接共有化学結合によってコンジュゲートされてもよい。他の実施形態では、2つ以上の部分がイオン結合または水素結合によってコンジュゲートされてもよい。
接触:本明細書で使用される場合、「接触する」という用語は、2つ以上の実体の間の物理的接続を確立することを意味する。例えば、細胞をmRNAまたは脂質ナノ粒子組成物と接触させることは、その細胞及びmRNAまたは脂質ナノ粒子が物理的結合を共有するように作られることを意味する。インビボ、インビトロで、及びエキソビボの両方で細胞を外部実体と接触させる方法は、生物学的分野において周知である。本開示の例示的な実施形態では、哺乳動物細胞を組成物(例えば、本開示の単離されたmRNA、ナノ粒子、または薬学的組成物)と接触させるステップはインビボで行われる。例えば、脂質ナノ粒子組成物と生物(例えば、哺乳動物)内に配置され得る細胞(例えば、哺乳動物細胞)とを接触させることは、任意の適切な投与経路(例えば、静脈内、筋肉内、皮内及び皮下投与を含む、生物への非経口投与)によって行われ得る。インビトロで存在する細胞の場合、例えば、組成物を細胞の培地に添加することによって組成物(例えば、脂質ナノ粒子または単離されたmRNA)と細胞とを接触させてもよく、トランスフェクションを伴う場合もあるし、生じる場合もある。さらに、2つ以上の細胞がナノ粒子組成物によって接触されてもよい。
封入する:本明細書で使用される場合、「封入する(encapsulate)」という用語は、包み込む、囲む、または封入することを意味する。いくつかの実施形態では、化合物、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)、または他の組成物は、完全に封入されていても、部分的に封入されていても、または実質的に封入されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、脂質ナノ粒子、例えば、リポソーム中にカプセル化されてもよい。
有効量:本明細書で使用される場合、ある因子の「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果、例えば、臨床結果をもたらすのに十分な量であり、したがって、「有効量」とは、それが関係する文脈次第である。例えば、がんを処置するある因子を投与するという文脈において、ある因子の有効量とは、例えば、その因子を投与しないで得られた応答と比較して、本明細書に定義のがんの処置を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態では、治療有効量とは、感染、疾患、障害、及び/または病態に罹患しているかまたは感染しやすい対象に投与した場合に、その感染、疾患、障害及び/または病態を処置、その症状を改善、その発現を診断、予防及び/または遅延させるために十分である、送達される因子(例えば、核酸、薬物、治療剤、診断剤または予防薬剤)の量である。
発現:本明細書中で使用される場合、核酸配列の「発現」とは、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からの(例えば、転写による)RNAテンプレートの生成;(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシングによる);(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;ならびに(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子間)及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列を整列させることによって実施され得る(例えば、最適整列のために第1及び第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入してもよく、及び非同一配列は比較目的で無視してもよい)。特定の実施形態では、比較目的で整列された配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチドで占められているならば、その分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数、及び2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、Computational Molecular Biology,Lesk、A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.ed.,Academic Press,New York,1993;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991(各々が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の方法などの方法を用いて決定され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers and Millerのアルゴリズム(CABIOS,1989,4:11−17)を用いて決定され得る。2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、あるいは、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用するGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定され得る。配列間の同一性パーセントを決定するために一般に使用される方法としては、限定するものではないが、Carillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法が挙げられる。同一性を決定するための技術は、公的に利用可能なコンピュータープログラムに体系化されている。2つの配列間の相同性を決定するための例示的なコンピューターソフトウェアとしては、限定するものではないが、GCGプログラムパッケージ、Devereux et al.,Nucleic Acids Research,12(1):387,1984,BLASTP,BLASTN、及びFASTA、Altschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.,215,403,1990が挙げられる。
断片:「断片」とは、本明細書において用いる場合、ある部分を指す。例えば、タンパク質の断片は、培養細胞から単離された全長タンパク質を消化することによって得られるか、または組換えDNA技術によって得られるポリペプチドを含んでもよい。
GCリッチ:本明細書で使用される場合、「GCリッチ」という用語は、グアニン(G)及び/またはシトシン(C)核酸塩基を含む、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)、またはその任意の部分(例えば、RNAエレメント)の核酸塩基組成、またはその誘導体もしくは類似体(ここで、GC含有量は、約50%を超える)を指す。「GCリッチ」という用語は、限定するものではないが、遺伝子、非コード領域、5’UTR、3’UTR、オープンリーディングフレーム、RNAエレメント、配列モチーフ、またはそれらの任意の個別の配列、断片、もしくはセグメント(約50%のGC含有量を含む)を含む、ポリヌクレオチドの全部または一部を指す。本開示のいくつかの実施形態では、GCリッチのポリヌクレオチド、またはその任意の部分は、グアニン(G)及び/またはシトシン(C)核酸塩基のみから構成される。
GC含量:本明細書で使用される場合、「GC含有量」という用語は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)またはその一部(例えば、RNAエレメント)の中の核酸塩基(グアニン(G)及びシトシン(C)核酸塩基、またはその誘導体もしくは類似体のいずれかである)の割合を指す(DNA中及びRNA中の、アデニン(A)及びチミン(T)もしくはウラシル(U)ならびにそれらの誘導体もしくは類似体を含む可能性のある核酸塩基の総数から)。「GC含量」という用語は、限定するものではないが、遺伝子、非コード領域、5’または3’UTR、オープンリーディングフレーム、RNAエレメント、配列モチーフ、またはそれらの任意の別個の配列、断片、もしくはセグメントを含むポリヌクレオチドの全部または一部を指す。
遺伝子アジュバント:本明細書で使用される「遺伝子アジュバント」とは、例えば、サイトカイン産生を刺激することによって、及び/または抗原特異的なエフェクター細胞(例えば、CD8T細胞)の産生を刺激することによって、ワクチンに対する免疫応答を増強するmRNA構築物(例えば、mmRNA構築物)を指す。遺伝子アジュバントmRNA構築物は、例えば、I型インターフェロンを刺激する(例えば、I型インターフェロン経路シグナル伝達を活性化する)か、または樹状細胞の発達もしくは活性を促進するポリペプチドをコードし得る。
異種:本明細書で使用される場合「異種」とは、配列(例えば、アミノ酸配列またはアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド)が通常、所与のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに存在しないことを示す。例えば、あるタンパク質のドメインまたはモチーフに相当するアミノ酸配列は、第2のタンパク質に対して異種であってもよい。
疎水性アミノ酸:本明細書で使用される場合、「疎水性アミノ酸」とは、非荷電の非極性側鎖を有するアミノ酸である。天然に存在する疎水性アミノ酸の例は、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、及びトリプトファン(Trp)である。
免疫増強剤:本明細書で使用される「免疫増強剤」とは、例えば、限定するものではないが、サイトカイン産生、抗体産生の刺激、または抗原特異的免疫細胞(例えば、CD8+T細胞またはCD4+T細胞)の産生の刺激を含む、T細胞、B細胞または樹状細胞応答の刺激によって、例えば、目的の抗原に対する(免疫増強剤を投与される対象における内因性抗原または免疫増強剤と同時投与される外因性抗原のいずれか)免疫応答を増強するmRNA構築物(例えば、mmRNA構築物)を指す。
開始コドン:本明細書で使用される場合、「開始コドン(start codon)」という用語と交換可能に使用される「開始コドン(initiation codon)」という用語は、リボソームによって翻訳され、そして連結されたアデニン−ウラシル−グアニン核酸塩基のトリプレットから構成されるオープンリーディングフレームの最初のコドンを指す。開始コドンは、アデニン(A)、ウラシル(U)、及びグアニン(G)の最初の文字コードによって表され、そしてしばしば単に「AUG」と書かれる。天然のmRNAは、開始コドンとしてAUG以外のコドン(本明細書では「代替開始コドン」と呼ばれる)を使用し得るが、本明細書に記載のポリヌクレオチドの開始コドンはAUGコドンを使用する。翻訳開始の過程の間、開始コドンを含む配列は、リボソームによって結合された開始tRNA(Met−tRNAi Met)のアンチコドンに対する相補的塩基対合を介して認識される。オープンリーディングフレームは、本明細書中で「代替開始コドン」と呼ばれる、2つ以上のAUG開始コドンを含んでもよい。
開始コドンは、翻訳開始において重要な役割を果たす。開始コドンは、リボソームによって翻訳されるオープンリーディングフレームの最初のコドンである。典型的には、開始コドンは、ヌクレオチドトリプレットAUGを含むが、ある場合には、翻訳開始は異なるヌクレオチドから構成される他のコドンで起こる場合もある。真核生物における翻訳の開始は、メッセンジャーRNA分子(mRNA)、40Sリボソームサブユニット、翻訳機構の他の構成要素(例えば、真核生物開始因子;eIF))の間の多数のタンパク質−タンパク質、タンパク質−RNA、及びRNA−RNAの相互作用を含む、多段階生化学プロセスである。mRNA翻訳開始の現在のモデルは、特定の翻訳促進ヌクレオチド含有物(Kozak配列)内に存在する最初のAUGコドンに遭遇するまで5’から3’方向にヌクレオチドをスキャンすることによって、開始前複合体(あるいは「43S開始前複合体」;「PIC」と略される)がmRNA上の動員部位(典型的には5’キャップ)から開始コドンに転位すると仮定する(Kozak(1989)JCell Biol108:229−241)。PICによるスキャンニングは、開始Met−tRNAi Met転移RNAのアンチコドンを含むヌクレオチドとmRNAの開始コドンを含むヌクレオチドとの間の相補的塩基対合によって終了する。AUGコドンとMet−tRNAi Metアンチコドンとの間の生産的な塩基対合は、PICへの大きな60Sリボソームサブユニットの連結においてPICに達する一連の構造的及び生化学的事象を誘発して、翻訳伸長に適格な活性リボソームを形成する。
挿入:本明細書中で使用される場合、「挿入」または「付加」とは、参照配列、例えば、天然に存在する分子に見られる配列と比較して、それぞれ、分子への1つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチドの付加をもたらす、アミノ酸またはヌクレオチド配列の変化を指す。例えば、異種ポリペプチド(例えば、BH3ドメイン)のアミノ酸配列は、挿入に適した部位で足場ポリペプチド(例えば、SteA足場ポリペプチド)に挿入されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、足場ポリペプチドのループを形成するアミノ酸配列(例えば、SteAまたはSteA誘導体のループ1またはループ2)が異種ポリペプチドのアミノ酸配列で置換される場合、挿入は置換であってもよい。
挿入部位:本明細書で使用される場合、「挿入部位」は、異種ポリペプチドのアミノ酸配列の挿入に適している足場ポリペプチドの位置または領域である。挿入部位はまた、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの位置または領域(例えば、足場ポリペプチド中の所与のアミノ酸をコードするポリヌクレオチドのコドン)を指す場合もあることを理解すべきである。いくつかの実施形態では、足場ポリペプチドへの異種ポリペプチドのアミノ酸配列の挿入は、足場ポリペプチドの安定性(例えば、立体構造安定性)、発現レベル、または全体的な二次構造にほとんどまたは全く影響を及ぼさない。
単離された:本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、それが関連した(自然界でも実験環境でも)構成要素の少なくともいくつかから分離されている物質または実体を指す。単離された物質は、それらが関連している物質に関連して様々なレベルの純度を有し得る。単離された物質及び/または実体は、それらが最初に関連していた他の構成要素の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ以上から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された因子は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超純粋である。本明細書において用いる場合、他の構成要素を実質的に含まないならば、その物質は「純粋」である。
Kozak配列:「Kozak配列」(「Kozakコンセンサス配列」とも呼ばれる)という用語は、遺伝子またはオープンリーディングフレームの発現を増強するための翻訳開始エンハンサーエレメントを指し、これは、真核生物においては5’UTRに位置する。プレプロインスリン遺伝子の翻訳に対する開始コドン(AUG)を囲む単一の変異の影響の分析に続いて、Kozakコンセンサス配列はもともと配列GCCRCC(R=プリン)として定義された(Kozak(1986)Cell 44:283−292)。本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、Kozakコンセンサス配列、またはその誘導体もしくは改変体を含む。(翻訳エンハンサー組成物及びその使用方法の例、その全体が参照により本明細書に組み込まれるAndrewsらの米国特許第5,807,707号;その全体が参照により本明細書に組み込まれるChernajovskyの米国特許第5,723,332号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wilsonの米国特許第5,891,665号を参照のこと)。
リーキースキャニング:「リーキースキャニング」として知られる現象が起こり得、それによってPICは開始コドンを迂回し、代わりに、代替のまたは代わりの開始コドンが認識されるまで下流へのスキャニングを続ける。発生頻度に応じて、PICによる開始コドンの迂回は翻訳効率の低下をもたらし得る。さらに、この下流のAUGコドンからの翻訳が起こり得るが、それは所望の処置反応を引き出すことができないかもしれない、所望されない、異常な翻訳産物の産生をもたらすであろう。ある場合には、異常な翻訳産物が実際に有害な反応を生じ得る(Kracht et al.,(2017)Nat Med 23(4):501−507)。
リポソーム:本明細書で使用される場合、「リポソーム」とは、水性内部を囲む脂質含有膜を含む構造を意味する。リポソームは、1つ以上の脂質膜を有してもよい。リポソームとしては、単層リポソーム(single−layered liposomes)(当該技術分野において単層リポソーム(unilamellar liposomes)としても知られている)及び多層リポソーム(multi−layered liposomes)(当該技術分野において多層リポソーム(multilamellar liposomes)としても知られている)が挙げられる。
転移:本明細書中で使用される場合、「転移」という用語は、がんが最初に発生した場所から原発腫瘍として身体内の離れた場所に拡がる過程を意味する。このプロセスの結果として生じた二次腫瘍は、「転移」と呼ばれる場合もある。mRNA:本明細書で使用される場合、「mRNA」とはメッセンジャーリボ核酸を指す。mRNAは天然のものであっても、天然のものでなくてもよい。例えば、mRNAは、1つ以上の核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、またはリンカーなどの修飾された構成要素を含んでも、及び/または天然に存在しない構成要素を含んでもよい。mRNAは、キャップ構造、鎖終結ヌクレオシド、ステムループ、ポリA配列、及び/またはポリアデニル化シグナルを含んでもよい。mRNAは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有し得る。mRNAの翻訳、例えば、哺乳動物細胞内でのmRNAのインビボ翻訳は、ポリペプチドを産生し得る。伝統的に、mRNA分子の基本的な構成要素としては、少なくともコード領域、5’−非翻訳領域(5’−UTR)、3’UTR、5’キャップ及びポリA配列が挙げられる。
マイクロRNA(miRNA):本明細書中で使用される場合、「マイクロRNA(miRNA)」とは、(例えば、RNAサイレンシングによる、例えば、mRNAの切断による、そのポリAテールを短くすることによる、及び/またはリボソームによるmRNAのポリペプチドへの翻訳効率を妨げることによるmRNAの不安定化による)遺伝子発現の転写後調節において機能し得る小さな非コードRNA分子である。成熟miRNAは典型的には約22ヌクレオチド長である。
マイクロRNA−122(miR−122):本明細書で使用される場合、「マイクロRNA−122(miR−122)」は、特に示さない限り、例えば、ヒトを含む、任意の脊椎動物起源由来の任意の天然miR−122を指す。miR−122は通常肝臓で高く発現しており、そこで脂肪酸代謝を調節し得る。肝臓癌、例えば、肝細胞癌では、miR−122レベルが低下する。miR−122は、肝臓で最も高く発現しているmiRNAの1つであり、これは限定するものではないが、CAT−1、CD320、AldoA、Hjv、Hfe、ADAM10、IGFR1、CCNG1、及びADAM17を含む標的を調節する。成熟ヒトmiR−122は、AACGCCAUUAUCACACUAAAUA(hsa−miR−122−3pに相当する配列番号32)またはUGGAGUGUGACAAUGGUGUUUG(hsa−miR−122−5pに相当する配列番号33)の配列を有し得る。
マイクロRNA−21(miR−21):本明細書で使用される場合、「マイクロRNA−21(miR−21)」は、他に示されない限り、例えば、ヒトを含む任意の脊椎動物起源由来の任意の天然のmiR−21を指す。miR−21レベルは、正常な肝臓と比較して、肝臓癌、例えば、肝細胞癌において増大している。成熟ヒトmiR−21は、UAGCUUAUCAGACUGAUGUUGA(has−miR−21−5pに相当する配列番号34)または5’−CAACACCAGUCGAUGGGCUGU_3’(has−miR−21−3pに相当する配列番号35)の配列を有し得る。
マイクロRNA−142(miR−142):本明細書で使用される場合、「マイクロRNA−142(miR−142)」は、他に示さない限り、例えば、ヒトを含む任意の脊椎動物起源由来の任意の天然のmiR−142を指す。miR−142は、典型的には骨髄細胞において高度に発現される。成熟ヒトmiR−142は、UGUAGUGUUUCCUACUUUAUGGA(hsa−miR−142−3pに相当する配列番号28)またはCAUAAAGUAGAAAGCACUACU(hsa−miR−142−5pに相当する配列番号30)の配列を有し得る。
マイクロRNA(miRNA)結合部位:本明細書中で使用される場合、「マイクロRNA(miRNA)結合部位」とは、miRNA標的部位もしくはmiRNA認識部位、またはmiRNAが結合もしくは会合する任意のヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態では、miRNA結合部位は、miRNAの少なくとも「シード」領域が結合するポリヌクレオチド(例えば、mRNA)のヌクレオチド位置または領域を表す。「結合」は、伝統的なワトソン−クリックハイブリダイゼーション法則に従う場合もあり、またはマイクロRNA部位に、またはそれに隣接してmiRNAと標的配列との任意の安定な会合を反映する場合もあることが理解されるべきである。
miRNAシード:本明細書中で使用される場合、miRNAの「シード」領域は、成熟miRNAの2〜8位の領域内の配列であって、典型的にはmiRNA結合部位に対して完全なワトソン−クリック相補性を有する配列を指す。miRNAシードは、成熟miRNAの2〜8位または2〜7位を含んでもよい。いくつかの実施形態では、miRNAシードは、7ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2〜8)を含んでもよく、ここで、対応するmiRNA結合部位におけるシード相補的部位には、miRNA位置1とは反対側のアデニン(A)が隣接している。いくつかの実施形態では、miRNAシードは、6ヌクレオチド(例えば、成熟miRNAのヌクレオチド2〜7)を含んでもよく、対応するmiRNA結合部位内のシード相補的部位には、miRNA位置1とは反対側のアデニン(A)が隣接している。miRNA結合部位に言及するとき、miRNAシード配列は、miRNA結合部位に結合するmiRNAのシード配列と相補性(例えば、部分的、実質的または完全な相補性)を有すると理解されるべきである。
修飾:本明細書で使用される「修飾された」または「修飾」とは、本明細書で提供されるポリヌクレオチド(例えば、mRNA)または分子の変化した状態または組成もしくは構造の変化を指す。ポリヌクレオチド及び分子は、様々な方法で、例えば、化学的に、構造的に、及び/または機能的に修飾され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、1つ以上の機能(例えば、翻訳調節活性)を提供する配列及び/またはRNA二次構造(複数可)を含む、1つ以上のRNAエレメントの組み込みによって構造的に修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、天然のリボヌクレオチドA、U、G及びCに関する場合、非天然のヌクレオシド及び/またはヌクレオチドの導入によって修飾される。キャップ構造などの非標準ヌクレオチドは、「修飾」とみなされないが、A、C、G、Uリボヌクレオチドの化学構造とは異なる。したがって、本開示のポリヌクレオチド及び分子は、1つ以上の修飾(例えば、1つ以上の化学的修飾、構造的修飾、または機能的修飾(それらの任意の組み合わせを含む)を含み得る)から構成されてもよい。
ナノ粒子:本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」とは、同じ材料のバルク試料と比較して新規な特性を示す、約1000nm未満のスケールのいずれか1つの構造的特徴を有する粒子を指す。通常、ナノ粒子は、約500nm未満、約200nm未満、または約100nmのスケールでいずれか1つの構造的特徴を有する。また、通常、ナノ粒子は、約50nm〜約500nm、約50nm〜約200nm、または約70〜約120nmのスケールのいずれか1つの構造的特徴を有する。例示的実施形態では、ナノ粒子は、約1〜1000nm程度の1つ以上の寸法を有する粒子である。他の例示的実施形態では、ナノ粒子は、約10〜500nm程度の1つ以上の寸法を有する粒子である。他の例示的な実施形態では、ナノ粒子は、約50〜200nm程度の1つ以上の寸法を有する粒子である。球状ナノ粒子は、例えば、約50〜100または70〜120ナノメートルの直径を有するであろう。ナノ粒子は、ほとんどの場合、その輸送と特性の観点から1つの単位として挙動を示す。ナノ粒子を対応するバルク材料と区別する新規な特性は、典型的には1000nm未満のサイズスケール、または約100nmのサイズで発達するが、ナノ粒子は、例えば、長楕円形、管状などの粒子の場合、より大きなサイズであり得ることに留意されたい。大部分の分子のサイズは上記の概要に適合するが、個々の分子は通常ナノ粒子とは呼ばれない。
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という用語はその最も広い意味で使用され、そしてヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/または物質を包含する。これらのポリマーはしばしばポリヌクレオチドと呼ばれる。本開示の例示的な核酸またはポリヌクレオチドとしては、限定するものではないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA−RNAハイブリッド、RNAi誘導剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒性DNA、三重らせん形成を誘導するRNA、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA、例としては、β−D−リボ立体配置を有するLNA、α−L−リボ立体配置を有するα−LNA(LNAのジアステレオマー)、2’−アミノ官能化を有する2’−アミノ−LNA、及び2’−アミノ官能化を有する2’−アミノ−α−LNA)またはそれらのハイブリッドが挙げられる。さらに、核酸は、プラスミドまたはベクター(例えば、ウイルスベクター、発現ベクター)などの核酸構築物の形態であってもよい。
核酸塩基:本明細書で使用される場合、「核酸塩基」という用語(あるいは「ヌクレオチド塩基」または「窒素含有塩基」)とは、核酸またはその一部もしくはセグメントに対する改善された特性(例えば、結合親和性、ヌクレアーゼ耐性、化学的安定性)を付与する、天然に存在するプリン及びピリミジンの任意の誘導体または類似体を含む、核酸中に見られるプリンまたはピリミジン複素環式化合物を指す。アデニン、シトシン、グアニン、チミン、及びウラシルは、主に天然核酸に見られる核酸塩基である。当該技術分野において公知であるか、及び/または本明細書に記載されるような他の天然、非天然及び/または合成核酸塩基を核酸に組み込んでもよい。
ヌクレオシド/ヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」という用語は、核酸塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはそれらの誘導体もしくは類似体(本明細書では「核酸塩基」とも呼ばれる)に共有結合した糖分子(例えば、RNA中のリボースまたはDNA中のデオキシリボース)、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含むが、ヌクレオシド間連結基(例えば、リン酸基)を欠く化合物を指す。本明細書中で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、核酸またはその一部もしくはセグメントに対する、化学的及び/または機能的特性(例えば、結合親和性、ヌクレアーゼ耐性、化学的安定性)の改善を付与する、ヌクレオシド間連結基(例えば、リン酸基)に共有結合したヌクレオシド、またはその任意の誘導体、類似体もしくは修飾を指す。
オープンリーディングフレーム:本明細書中で使用される場合、「オープンリーディングフレーム」という用語(「ORF」と略される)は、ポリペプチドをコードするmRNA分子のセグメントまたは領域を指す。ORFは、開始コドンで始まり終止コドンで終わる連続した一続きの重ならないインフレームコドンを含み、そしてリボソームによって翻訳される。
患者:本明細書中で使用される場合、「患者」とは、処置を求めているかもしくは処置を必要とするか、処置が必要であるか、処置を受けているか、処置を受ける対象、または特定の疾患もしくは状態に関して訓練を受けた専門家による治療中の対象を指す。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。いくつかの実施形態では、患者はがん(例えば、肝臓癌または結腸直腸癌)に罹患している患者である。
薬学的に許容される:「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険率に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がなく、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適している化合物、材料、組成物及び/または剤形を指すように本明細書で使用される。
薬学的に許容される賦形剤:本明細書で使用される場合「薬学的に許容される賦形剤」という句は、本明細書に記載の化合物以外の任意の構成要素(例えば、活性化合物を懸濁または溶解し得るビヒクル)であって、患者において、実質的に無毒かつ非炎症性であるという特性を有する構成要素を指す。賦形剤としては、例えば:付着防止剤、酸化防止剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(着色剤)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、フィルム形成剤またはコーティング剤、香料、芳香剤、流動促進剤(流動増強剤)、潤滑剤、防腐剤、印刷インキ、吸収剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、及び水和水が挙げられ得る。例示的な賦形剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、レチニルパルミテート、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグリコール酸デンプン、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトール。
薬学的に許容される塩:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」とは、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって(例えば、遊離の塩基基と適切な有機酸とを反応させることによって)親化合物が修飾される開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、限定するものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩;などが挙げられる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩など、ならびに無毒性アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩及びアミンカチオンの塩が挙げられ、これらには、限定するものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどの塩を含む。本開示の薬学的に許容される塩としては、例えば、無毒性の無機または有機の酸から形成された親化合物の従来の無毒性の塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成され得る。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を化学量論的量の適当な塩基または酸と、水中もしくは有機溶媒中、またはその2つの混合物中で反応させることによって調製され得る(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい)。適切な塩の列挙は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418,Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Wiley−VCH,2008、及びBerge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66,1−19(1977)(その各々がその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に見出される。
ポリペプチド:本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド」または「目的のポリペプチド」という用語は、天然に(例えば、単離または精製され)または合成によって産生され得るペプチド結合によって典型的に連結されるアミノ酸残基のポリマーを指す。
開始前複合体(PIC):本明細書中で使用される場合、「開始前複合体」という用語(あるいは「43S開始前複合体」;「PIC」と略される)は、40Sリボソームサブユニット、真核生物開始因子(eIF1、eIF1A、eIF3、eIF5)、及びeIF2−GTP−Met−tRNAi Met三元複合体(これは本質的にmRNA分子の5’キャップに結合し得、そして結合後に5’UTRのリボソームスキャニングを行い得る)を含むリボ核タンパク質複合体を指す。
RNAエレメント:本明細書中で使用される場合、「RNAエレメント」という用語は、生物学的機能を提供するか、及び/または生物学的活性(例えば、翻訳調節活性)を有するRNA分子の部分、断片、またはセグメントを指す。本明細書に記載のものなどの1つ以上のRNAエレメントの組み込みによるポリヌクレオチドの修飾は、修飾されたポリヌクレオチドに1つ以上の望ましい機能的特性を提供する。本明細書に記載のRNAエレメントは、天然に存在するものであっても、天然に存在しないものであっても、合成であっても、遺伝子操作であっても、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、調節活性を提供する天然に存在するRNAエレメントとしては、ウイルス、原核生物及び真核生物(例えば、ヒト)のトランスクリプトーム全体に見られるエレメントが挙げられる。RNAエレメント、特に真核生物mRNA及び翻訳されたウイルスRNAは、細胞内の多くの機能を媒介することに関与していることが示されている。例示的な天然のRNAエレメントとしては、限定するものではないが、翻訳開始エレメント(例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)、Kieft et al.,(2001)RNA7(2):194〜206を参照)、翻訳エンハンサーエレメント(例えば、APP mRNA翻訳エンハンサーエレメント、Rogers et al.,(1999)J Biol Chem 274(10):6421−6431を参照のこと)、mRNA安定性エレメント(例えば、AUリッチエレメント(ARE)、Garneau et al.,(2007)Nat Rev Mol Cell Biol 8(2):113−126を参照のこと)、翻訳抑制エレメント(例えば、Blumer et al.,(2002)Mech Dev110(1−2):97−112を参照のこと)、タンパク質結合RNAエレメント(例えば、鉄応答エレメント、Selezneva et al.,(2013)J Mol Biol 425(18):3301−3310を参照のこと)、細胞質ポリアデニル化エレメント(Villalba et al.,(2011)Curr Opin Genet Dev 21(4):452−457)、及び触媒性RNAエレメント(例えば、リボザイム、Scott et al.,(2009)Biochim Biophys Acta 1789(9−10):634−641を参照のこと)が挙げられる。
滞留時間:本明細書で使用される場合、「滞留時間」という用語は、mRNA分子に沿った別々の位置または場所での開始前複合体(PIC)またはリボソームの占有時間を指す。
対象:本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、例えば、実験的、診断的、予防的及び/または治療的目的のために、本開示による組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象は動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)及び/または植物を含む。いくつかの実施形態では、対象は患者であり得る。
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的のある特徴または特性の全体的またはほぼ全体的な度合もしくは程度を示す定性的状態を指す。生物学的分野の当業者は、生物学的及び化学的現象が、完成するまで進行するか、及び/または完全になるか、または絶対的な結果を達成もしくは回避する場合があっても、めったにないことを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捉えるために本明細書で使用される。
罹患している:疾患、障害、及び/または病態に「罹患している」個体は、疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状と診断されているか、またはそれらの症状を示している。
標的化部分:本明細書で使用される場合、「標的化部分」とは、ナノ粒子を特定の細胞、組織、及び/または器官型に標的化し得る化合物または薬剤である。
治療剤:「治療剤」という用語は、対象に投与したときに、治療的、診断的、及び/もしくは予防的効果を有するか、ならびに/または所望の生物学的効果及び/もしくは薬理学的効果を引き出す任意の薬剤を指す。
トランスフェクション:本明細書中で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、種(例えば、mRNAなどのポリヌクレオチド)を細胞に導入するための方法をいう。
翻訳調節活性:本明細書中で使用される場合、「翻訳調節活性」という用語(「翻訳調節機能」と交換可能に使用される)は、PIC及び/またはリボソームの活性を含む翻訳装置の活性を調節する(例えば、調節する、影響する、制御する、変化させる)生物学的な機能、機構、またはプロセスを指す。いくつかの態様では、所望の翻訳調節活性は、mRNA翻訳の翻訳忠実度を促進及び/または増強する。いくつかの態様では、所望の翻訳調節活性は、リーキースキャニングを低減及び/または阻害する。対象:本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、例えば、実験的、診断的、予防的及び/または治療的な目的のために、本開示による組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な対象としては動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)及び/または植物が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は患者であり得る。
治療:本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、特定の感染、疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状または特徴を、部分的または完全に緩和、軽減、改善、救済、発症の遅延、進行の抑制、重症度の低下、及び/またはその頻度の低減を指す。例えば、がんを「処置する」とは、腫瘍の生存、成長、及び/または拡大を阻害することを指す場合がある。疾患、障害、及び/または病態に関連する病理の発症の危険性を減少させる目的で、疾患、障害、及び/または病態の徴候を示さない対象に対して、及び/または疾患、障害、及び/または病態の初期兆候のみを示す対象に対して、処置を施してもよい。
予防:本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、特定の感染、疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状または特徴の発症を部分的または完全に阻害することを指す。
腫瘍:本明細書で使用される場合、「腫瘍」とは、良性または悪性にかかわらず、組織の異常な増殖である。
未修飾:本明細書中で使用される場合、「未修飾」とは、何らかの形で変更される前の任意の物質、化合物または分子を指す。未修飾とは、必ずしもそうとは限らないが、野生型または天然型の生体分子を指すことがある。分子は一連の修飾を受けてもよく、それにより各修飾分子は、その後の修飾のための「未修飾」出発分子として役立ち得る。
ウリジン含有量:「ウリジン含有量」または「ウラシル含有量」という用語は互換的であり、特定の核酸配列中に存在するウラシルまたはウリジンの量を指す。ウリジン含有量またはウラシル含有量は、絶対値(配列中のウリジンまたはウラシルの総数)または相対値(核酸配列中の核酸塩基の総数に対するウリジンまたはウラシルの割合)として表され得る。
ウリジン修飾配列:「ウリジン修飾配列」という用語は、候補核酸配列のウリジン含有量及び/またはウリジンパターンに関して、異なる全体もしくは局所ウリジン含有量(より高いまたはより低いウリジン含有量)を有するか、または異なるウリジンパターン(例えば、勾配分布またはクラスタリング)を有する配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)を指す。本開示の内容において、「ウリジン修飾配列」及び「ウラシル修飾配列」という用語は、同等であり互換的であると見なされる。
「高ウリジンコドン」とは、2つまたは3つのウリジンを含むコドンとして定義され、「低ウリジンコドン」とは、1つのウリジンを含むコドンとして定義され、「無ウリジンコドン」とは、ウリジンを含まないコドンである。いくつかの実施形態では、ウリジン修飾配列は、低ウリジンコドンによる高ウリジンコドンの置換、無ウリジンコドンによる高ウリジンコドンの置換、高ウリジンコドンによる低ウリジンコドンの置換、無ウリジンコドンによる低ウリジンコドンの置換、低ウリジンコドンによる無ウリジンコドンの置換、高ウリジンコドンによる無ウリジンコドンの置換、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、高ウリジンコドンは別の高ウリジンコドンで置き換えてもよい。いくつかの実施形態では、低ウリジンコドンは、別の低ウリジンコドンで置き換えてもよい。いくつかの実施形態では、無ウリジンコドンは別の無ウリジンコドンと置き換えられてもよい。ウリジン修飾配列は、ウリジン富化されても、またはウリジン希薄化されてもよい。
ウリジン富化:本明細書中で使用される場合、「ウリジン富化」という用語及び文法的変形は、対応する候補核酸配列のウリジン含量に関して、配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)中のウリジン含有量の増大(絶対値または割合値として表される)を指す。ウリジン富化は、候補核酸配列中のコドンを、含んでいるウリジン核酸塩基が少ない同義コドンで置換することによって実施され得る。ウリジン富化は、全体的(すなわち、候補核酸配列の全長に対して)であっても、または局所的(すなわち、候補核酸配列の部分配列または領域に対して)であってもよい。
ウリジン希薄化:本明細書で使用される場合、「ウリジン希薄化」という用語及び文法上の変形は、対応する候補核酸配列のウリジン含量に関して、配列最適化核酸(例えば、合成mRNA配列)中のウリジン含有量の減少(絶対値または割合値として表される)を指す。ウリジン希薄化は、候補核酸配列中のコドンを、含んでいるウリジン核酸塩基が少ない同義コドンで置換することによって実施され得る。ウリジン希薄化は、全体的(すなわち、候補核酸配列の全長に対して)であっても、または局所的(すなわち、候補核酸配列の部分配列または領域に対して)であってもよい。
等価物及び範囲
当業者であれば、本明細書に記載の開示による具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または通常の実験のみを用いて確認し得るであろう。本開示の範囲は、以下の説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載のとおりである。
特許請求の範囲において、「1つの、ある(a、an)」、及び「この、その(the)」などの冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味し得る。1つ、2つ以上、または全てのグループメンバーが、反対の指示がない限り、そうでなければその文脈から明らかでない限り、所定の生成物またはプロセスに存在するか、使用されるか、またはそうでなければ関連がある場合、グループの1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、満たされると見なされる。本開示は、その群の正確に1つのメンバーが所定の生成物またはプロセス中に存在するか、使用されるか、またはそうでなければ関連する実施形態を包含する。本開示は、1つより多く、または全てのグループメンバーが所定の生成物またはプロセス中に存在するか、使用されるか、またはそうでなければ関連する実施形態を包含する。
「含む」という用語は、開放的で許容されることを意図しているが、追加の要素またはステップを含めることを必要としないことにも留意されたい。「含む」という用語が本明細書で使用される場合、したがって、「からなる」という用語も包含され開示される。
範囲が指定されている場合は、エンドポイントが含まれる。さらに、当業者の文脈及び理解から他に示されていないかまたはさもなければ明白でない限り、範囲として表される値は、本開示の異なる実施形態において述べられた範囲内の任意の特定の値または部分範囲から、文脈上明らかにそうでないと示されない限り、その範囲の下限の単位の10分の1までを仮定し得ることが理解される。
全ての引用された出典、例えば、本明細書に引用された引用文献、出版物、データベース、データベースエントリ、及び技術は、その引用文献中に明示的に表現されない場合でさえ、参照により本出願に組み込まれる。引用された出典の記載と本出願の記載とが矛盾する場合、本出願における記載が優先するものとする。
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されるであろう。しかし、それらは本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示目的のみに過ぎず、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、そして本出願及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれるべきであることが理解される。
実施例1:STING免疫増強剤mRNA構築物
この実施例では、構成的に活性化された形態のヒトSTINGをコードする一連のmmRNA構築物を作製し、それらがインターフェロン−β(IFN−β)産生を刺激する能力について試験した。構築物によってコードされるヒトSTINGタンパク質は、1つ以上の点突然変異の導入を通して構成的に活性化された。以下の単一または組み合わせ点突然変異を試験した:(i)V155M;(ii)R284T;(iii)V147L/N154S/V155M;及び(iv)R284M/V147L/N154S/V155M。これらの構築物は典型的には検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードした。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾された。エピトープタグを有さない、代表的な構成的に活性なヒトSTING構築物のORFアミノ酸配列を配列番号1〜10に示す。これらのアミノ酸配列をコードする例示的なヌクレオチド配列を、配列番号199〜208及び1442〜1450に示す。構築物に使用するための例示的な5’UTRを配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRは、配列番号23に示される。
構成的に活性なSTING構築物がIFN−β産生を刺激し得るか否かを決定するために、その構築物をヒトTF1a細胞にトランスフェクトした。野生型(非構成的に活性な)ヒト及びマウスSTING構築物を陰性対照として使用した。25,000細胞/ウェルを、96ウェルプレートにプレートし、そしてmmRNA構築物(250ng)をLipofectamine 2000を用いてそれらにトランスフェクトした。24及び48時間後、上清を回収し、そしてIFN−βレベルを標準的なELISAによって決定した。その結果を図1に示しており、これによって、構成的に活性なSTING構築物が、野生型(非構成的に活性な)ヒト及びマウスSTING対照と比較して、IFN−β産生を刺激したことが実証されている。4つ全ての変異STING構築物がIFN−β産生を刺激したが、V155M変異及びR284T変異が最も高い活性を示した。これらの結果から、構成的に活性なSTING mRNA構築物が、IFN−β産生の刺激を通して免疫応答を増強する能力が実証される。
第2のセットの実験では、転写がインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)によって駆動されるレポーター遺伝子を用いて、構成的に活性なSTING mRNA構築物のパネルが、B16メラニン形成細胞由来のSTING KOレポーターマウス細胞株においてISREを活性化する能力を試験した。その結果を図2に示しており、これは、構成的に活性なSTING構築物がレポーター遺伝子発現を刺激したことを示し、それによってその構築物がインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)を活性化できたことを示している。
実施例2:IRF3及びIRF7免疫増強剤mRNA構築物
この実施例では、構成的に活性化された形態のIRF3またはIRF7をコードする一連のmmRNA構築物を作製し、それらがインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)を活性化する能力について試験した。エピトープタグを有さない、S396D点突然変異を含む、代表的な構成的に活性なマウス及びヒトのIRF3構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号11〜12に示す。これらのアミノ酸配列をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号210〜211に示される。エピトープタグを有さない、野生型ヒトIRF7構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号13に示す(配列番号212に示すヌクレオチド配列によりコードされる)。エピトープタグを有さない、代表的な構成的に活性なヒトIRF7構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号14〜18に示す。これらのアミノ酸配列をコードする例示的なヌクレオチド配列を、配列番号213〜217及び142〜1459に示す。エピトープタグを有さない、代表的な短縮型ヒトIRF7構築物(不活性「ヌル」変異)のORFアミノ酸配列を、配列番号19〜20に示す。これらのアミノ酸配列をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号218〜219に示される。これらの構築物は典型的には、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードした。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾された。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを、配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを、配列番号23に示す。
転写がインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)によって駆動される、実施例1で使用されたレポーター細胞株を使用して、構成的に活性なIRF3及びIRF7のmRNA構築物がISREを活性化する能力を試験した。その結果を図3A〜3Bに示しており、これは、構成的に活性なIRF3構築物(図3A)及び構成的に活性なIRF7構築物(図3B)がレポーター遺伝子発現を刺激することを実証しており、それによってこの構築物がインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)を活性化できたことが示される。
実施例3:IKKβ、cFLIP及びRIPK1免疫増強剤mRNA構築物
この実施例では、転写がNFκBシグナル伝達経路によって駆動されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を使用して、構成的に活性なIKK、cFLIP及びRIPK1 mRNA構築物がNFκBシグナル伝達を活性化する能力を試験した。
構成的に活性なIKKβ構築物は、以下の2つの点突然変異を含んでいた:S177E/S181E。構成的に活性なIKKαまたはIKKβ構築物は、PEST変異を含んでいた。エピトープタグを有さない、構成的に活性なIKKβ構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号146〜149に示す。配列番号146のタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列を、配列番号1414及び1485に示す。エピトープタグなしで、PEST変異を含む、構成的に活性なIKKαまたはIKKβ構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号150、152、154、及び156に示される(それぞれ、配列番号151、153、155、及び157、またはそれぞれ配列番号1428、1397、1429、及び1430に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)。構成的に活性なcFLIP構築物は、cFLIP−L、cFLIP−S(aa1−227)、cFLIP p22(aa1−198)、cFLIP p43(aa1−376)またはcFLIP p12(aa 377−480)を含んでいた。エピトープタグを有さない、cFLIP構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号141〜145に示される。これらのcFLIPタンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1398〜1402及び1469〜1473に示される。種々の構成的に活性なRIPK1構築物の構造は、例えば、Yatim,N.et al.(2015)Science 350:328−334またはOrozco,S.et al.(2014)Cell Death Differ.21:1511〜1521にさらに記載されている。エピトープタグを有さない、構成的に活性なRIPK1構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号158〜163に示される。これらのRIPK1タンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1403〜1408及び1474〜1479に示される。オープンリーディングフレームに加えて、全ての構築物は、Cap1 5’Cap(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)を用いて完全に修飾された。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを、配列番号22に示す。構築物における使用のためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを配列番号23に示す。
最初の一連の実験では、cFLIPまたはIKKβ構築物のいずれか(12.5ngRNA)を、NFκB−lucレポーター遺伝子と共に、B16F10、MC38またはHEK293細胞にトランスフェクトし、二重Lucアッセイを、NFκBシグナル伝達の活性化の指標としてトランスフェクション24時間後に行った。その結果を図4に示しており、これは、構成的に活性なcFLIP及びIKKβ構築物がレポーター遺伝子発現を刺激したことを実証しており、それによって構築物がNFκBシグナル伝達経路を活性化できたことが示されている。第2の一連の実験では、RIPK1構築物を、NFκB−lucレポーター遺伝子と共に、B16F10細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にNFκBシグナル伝達の活性化の指標として二重Lucアッセイを行った。その結果を図5に示しており、これは、構成的に活性なRIPK1構築物がレポーター遺伝子発現を刺激したことを実証しており、それによって構築物がNFκBシグナル伝達経路を活性化できたことを示している。
実施例4:DIABLO免疫増強剤mRNA構築物
この実施例では、DIABLOをコードする一連のmmRNA構築物を作製し、それらがサイトカイン産生を誘導する能力について試験した。これらの構築物は、典型的には検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードしていた。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾された。エピトープタグを有さないDIABLO構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号165〜172に示される。配列番号169のDIABLOタンパク質をコードする例示的ヌクレオチド配列は、配列番号1416及び1487に示される。構築物に使用するための例示的5’UTRは、配列番号21及び1323に示される。構築物における使用のための例示的な3’UTRを配列番号22に示す。構築物中の使用のためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを、配列番号23に示す。
DIABLO構築物がサイトカイン産生を誘導できるか否かを決定するために、構築物をSKOV3細胞にトランスフェクトした。1万個の細胞/ウェルを96ウェルプレートにプレートし、そしてmiRNA構築物を、Lipofectamine 2000を用いてそれらにトランスフェクトした。SKOV3細胞におけるDIABLO mmRNA構築物によるサイトカイン産生の刺激を測定した。その結果を、TNF−αについては図6に、インターロイキン6(IL−6)については図7に示しており、多数のDIABLO mmRNA構築物がSKOV3細胞によるサイトカインの産生を刺激することが実証されている。
実施例5:免疫増強剤mRNAは、HPVワクチン応答を増強する
この実施例では、STING、IRF3またはIRF7免疫増強剤と組み合わせて使用されるヒトパピローマウイルス(HPV)E6/E7 mRNAベースのワクチンに対する応答の効力及び耐久性を調べた。子宮頸部の微小環境におけるヒトパピローマウイルス(HPV)に対する特異的免疫反応は、感染を根絶し、変異細胞を排除するのに重要な役割を果たすことが公知である。しかし、高リスクHPVは、免疫細胞を調節して免疫抑制微小環境を作り出すことが知られている(例えば、Prata、T.T.et al.(2015)Immunology 146:113−121を参照のこと)。したがって、頑強でかつ耐久性のある免疫応答をもたらすHPVワクチン接種アプローチが非常に望ましい。
この実施例で使用したHPVワクチンは、本明細書でそれぞれiE6/E7及びsE6/E7と呼ばれる、細胞内または可溶性形態のHPV16抗原E6及びE7のいずれかをコードするmRNA構築物であった。可溶性フォーマットを作製するために、分泌に必要なシグナルペプチドを、抗原のN末端に融合した。シグナルペプチドの配列は、Igカッパ鎖V−III領域HAHに由来した。0日目及び14日目に、iE6/E7またはsE6/E7 mRNAワクチン(0.25mg/kgの用量)のいずれかを、対照mRNA構築物(NTFIX)、またはSTING、IRF3もしくIRF7免疫増強剤mRNA構築物(0.25mg/kgの用量で)のいずれかと組み合わせてマウスに筋肉内免疫した。構成的に活性なSTING免疫増強剤は、V155M変異(配列番号1に相当するマウスのバージョン)を含んでいた。構成的に活性なIRF3免疫増強剤は、S396D突然変異(配列番号12に相当する)を含んでいた。構成的に活性なIRF7免疫増強剤は、内部欠失及び6つの点突然変異(配列番号18に相当するマウスのバージョン)を含んでいた。HPVワクチン構築物及び免疫増強剤構築物を、MC3脂質ナノ粒子中に共処方した。
21日目及び53日目に、各試験群のマウス由来の脾臓細胞及び末梢血単核球(PBMC)を、GolgiPlug(商標)(Brefeldin A;BD Biosciences)を含む)の存在下で、37℃で4時間、エキソビボで、E6ペプチドプール(37E6ペプチドを含み、その配列は配列番号36〜72に示される)、E7ペプチドプール(22 E7ペプチドを含み、その配列は配列番号73〜94に示される)、E6単一ペプチド(8個の個々のペプチド)、E7単一ペプチド(7個の個々のペプチド)またはペプチドなし(対照)のいずれかを用いて、再刺激した。各ペプチドは0.2μg/mlの用量で提供された。CD8ワクチン応答は、IFN−γまたはTNF−αについての細胞内染色(ICS)によって評価した。
IFN−γ及びTNF−αについての21日目の脾臓細胞によるE7特異的応答についての代表的なICS結果を、図8A(IFN−γ)及び図8B(TNF−α)に示す。IFN−γ及びTNF−αについて21日目の脾臓細胞によるE6特異的応答についての代表的なICSの結果を図9A(IFN−γ)及び図9B(TNF−α)に示す。図8A〜8B及び図9A〜9Bの結果によって、STING、IRF3またはIRF7免疫増強剤をワクチンと共処方した場合、CD8ワクチン応答(細胞内及び可溶性抗原フォーマットの両方に対する)が非常に増強されたことが実証され、ここではE7エピトープがE6エピトープよりも強くかつ変動が少なく、可溶型の抗原が、細胞内形態の抗原よりも強い。免疫増強剤によるこの増強されたCD8ワクチン応答は、それぞれ図10A及び図10Bに示される、代表的な21日目と53日目のE7特異的脾臓細胞IFN−γICSデータで明らかなように、耐久性があることが示された。脾臓細胞データと同様の結果が、PBMC実験について観察された(データは示さず)。抗原特異的CD8応答の耐久性を改善するSTINGの能力は、図11A(細胞内E6/E7で免疫したマウス由来のE7特異的応答)及び図11B(可溶性E6/E7で免疫されたマウス由来のE7特異的応答)に示されるIFN−γICSデータによってさらに実証され、ここで、7週間の実験の過程にわたって、STING処置マウスにおいてより高い割合の抗原特異的CD8T細胞が維持されたことが実証された。
生CD45+細胞のうちのCD8b+細胞の割合も調べた。21日目対53日目の脾臓細胞の結果を、それぞれ図12A及び12Bに示す。その結果から、免疫増強剤(特にSTING構築物)が21日目に総CD8b+集団を拡大するが、53日目には拡大しないことが実証される。
免疫増強剤構築物がCD8ワクチン応答を増強する能力は、E7−MHC1−四量体染色によってさらに確認された。21日目対53日目の脾臓細胞の代表的な結果を、それぞれ図13A及び13Bに示す。E7−MHC−1−四量体染色の結果は、上で考察したICSの結果と一致したが、それらはさらに変動性であった。図14A〜図14Dに示すように、大部分の四量体陽性CD8細胞は、「エフェクターメモリー」CCD62Llo表現型を有することが見出された。21日目と53日目のE7四量体+CD8細胞の比較によって、この「エフェクター記憶」CD62Llo表現型が研究を通して維持されたことが実証された。さらなる染色実験によって、免疫増強剤が全Foxp3+Treg−CD4T細胞の%をわずかに減少させ(データ示さず)、そしてCD138+形質芽細胞の%を変えないこと(データは示さず)が実証された。
実施例6:免疫増強剤mRNAは、MC38がんワクチン応答を増強する
この実施例では、STING、IRF3またはIRF7免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせて使用されるMC38mRNAベースのがんワクチンに対する応答の効力及び耐久性を調べた。MC38マウス腫瘍モデルは、抗腫瘍T細胞応答を刺激し得るネオエピトープを含有する免疫原性変異ペプチドを同定するために使用されてきた(例えば、Yadav,M.et al.(2014)Nature 515:572−576を参照のこと)。したがって、腫瘍ネオエピトープに対する頑強で耐久性のある免疫応答をもたらすがんワクチン接種アプローチが非常に望ましい。
この実施例で使用したMC38ワクチンは、Adpgk、Dpagt1、及びReps1に由来する腫瘍ネオエピトープを含有する3つの25量体の変異体ペプチドのADRコンカテマーをコードするmRNA構築物であった(このワクチンは、本明細書ではADRvaxとも呼ばれる)。mRNA構築物は、容易に検出するためのN末端Hisタグも含む、配列番号179に示されるオープンリーディングフレームをコードする。0日目及び14日目に、対照のmRNA構築物(NTFIX)、またはSTING、IRF3もしくはIRF7免疫増強剤mRNA構築物(0.25mg/kgの用量)のいずれかと組み合わせて、マウスをADRvax mRNAワクチン(0.25mg/kgの用量)で筋肉内免疫した。構成的に活性なSTING免疫増強剤は、V155M変異(配列番号1に相当するマウスのバージョン)を含んでいた。構成的に活性なIRF3免疫増強剤は、S396D変異(配列番号12に相当する)を含んでいた。構成的に活性なIRF7免疫増強剤は、内部欠失及び6つの点突然変異(配列番号18に相当するマウスバージョン)を含んでいた。MC38ワクチン構築物及び免疫増強剤構築物を、MC3脂質ナノ粒子中に共処方した。
21日目及び35日目に、各試験群のマウス由来のCD8+脾臓細胞を、GolgiPlug(商標)(BrefeldinA;BD Biosciencesを含む)の存在下、野生型または変異体MC38 ADRペプチド(ペプチドあたり1μg/ml)と共に37℃で、4時間エキソビボで再刺激し、CD8ワクチン応答を、IFN−γについて細胞内染色(ICS)によって評価した。IFN−γについての21日目及び35日目のCD8+脾臓細胞によるMC38 ADR特異的応答についての代表的なICS結果を、図15A(21日目)及び図15B(35日目)に示す。TNF−α及びCD8+PBMCのICSについても同様の結果が観察された。その結果から、CD8ワクチン応答がSTING免疫増強剤構築物によって非常に増強され、そしてIRF3及びIRF7免疫増強剤構築物によって中程度に増強されたことが実証される。免疫増強剤で処置したマウスについての抗原特異的CD8応答の最初の改善が、21日目に観察され(STING処置対対照について、約5%対1%)、それは35日目までに改善し続け(対照と比較してSTING処置に対して最大15%)、それによって応答の耐久性が実証される。
生存CD45+細胞のうちのCD8b+細胞の割合も調べた。35日目の脾臓細胞及びPBMCについての結果を、図16Aに示しており、これによって、免疫増強剤構築物が全CD8b+集団を拡大することが実証される。図16Bに示すように、大部分のCD8+脾臓細胞及びPBMCは、「エフェクターメモリー」CD62Llo表現型を有することが見出された。さらなる染色実験によって、STING及びIRF7免疫増強剤構築物が全Foxp3+TregCD4T細胞の%をわずかに減少させることが実証された(データは示さず)。追加の染色実験によって、免疫増強剤がCD138+形質芽細胞の%を変化させないことが実証された(データ示さず)。
実施例7:免疫増強剤mRNAは細菌ワクチン応答を増強する
この実施例では、STING免疫増強剤と組み合わせて使用される細菌性mRNAベースのワクチンに対する応答の効力、特に細菌性抗原に対する体液性免疫応答に対する免疫増強剤の効果(抗体産生)を調べた。
この実施例で使用した細菌ワクチンは、細菌感染に対する防御免疫を提供するために当該技術分野で確立されている細菌抗原ペプチドのパネルをコードするmRNA構築物のプールであった。したがって、この実施例で使用されたワクチンは、多価mRNAベースの細菌ワクチンであった。細菌ペプチド抗原mRNA構築物は、ペプチド抗原に対するORFをコードし、そしてまた、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含有し、1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾されていた。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを配列番号22に示す。構築物での使用のためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRは、配列番号23に示す。これらの構築物はまた、必要に応じて、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグをコードし得る。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。
細菌ペプチド抗原mRNA構築物を、0、14及び28日目に、単独でまたはSTING免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせて、抗原あたり0.2μgまたは0.8μgの用量でマウスに投与した。構成的に活性なSTING免疫増強剤は、V155M変異(配列番号1に相当するマウスのバージョン)を含んでいた。血清を、処置前ならびに14、28及び35日目に採取した。細菌ペプチド抗原mRNA構築物単独で処理したマウスと、STING mRNA構築物と組み合わせた細菌ペプチド抗原mRNA構築物で処理したマウスとの間で、抗体価を比較した。より高用量(0.8μg)の細菌性抗原ペプチドmRNA構築物で処置したマウスは、STING構築物との同時処置によって抗原特異的抗体価に対して中程度の効果を示した(データは示さず)。しかし、図17に示すように、STING構築物との同時処置は、低用量(0.2μg)の細菌ペプチド抗原mRNA構築物(図17のRNA 0298、2753、2723、2635、1507、0992及び0735と呼ばれる)で処理されたマウスにおいて抗原特異的抗体価に対して有意な効果を示した。これらの結果から、STING免疫増強剤が、特に細菌mRNAワクチン構築物がより低用量で使用された場合に、細菌mRNAワクチン構築物によってコードされた細菌ペプチド抗原に対する体液性免疫応答を増強したことが実証される。
実施例8:KRAS−STING mRNA構築物
様々な種類のがんにおけるRas変異の包括的な調査が報告されている(Prior、I.A.et al.(2012)Cancer Res.72:2457−2467)。この調査によって、結腸直腸癌におけるKRASの上位3つの最も頻繁な変異がG12D、G12V及びG13Dであることが証明された。KRAS抗腫瘍mRNAベースのワクチンとして使用するために、これら3つの変異のうちの1つを含む1つ以上のKRASペプチドをコードする、一連の変異体KRAS mRNA構築物を調製した。さらに、KRASワクチン応答に対するmRNAベースの免疫増強剤の効果を調べるために、免疫増強剤としてSTINGをコードする配列にN末端またはC末端で連結された1つ以上の変異体KRASペプチドをコードする一連のmRNA構築物を調製した。したがって、これらのKRAS−STING mRNA構築物において、ワクチン抗原(複数可)及び免疫増強剤は、同じmRNA構築物によってコードされている。
以下のものをコードする変異体KRASペプチドmRNA構築物を調製した:G12D、G12VまたはG13Dの変異を有する15量体のペプチド(そのアミノ酸配列はそれぞれ配列番号95〜97に示す);G12D、G12VまたはG13Dの変異を有する25量体ペプチド(それぞれ配列番号98〜100);G12D、G12VまたはG13D変異を有する15量体ペプチドの3つのコピー(それぞれ配列番号101〜103);またはG12D、G12VまたはG13D変異を有する25量体ペプチドの3つのコピー(それぞれ、配列番号104〜106)。さらなる構築物は、G12C変異を有する25量体のペプチド(それぞれ、配列番号131〜132)または野生型25量体ペプチド(配列番号133)の1コピーまたは3コピーをコードした。特定の実施形態では、G12CのKRAS変異は、G12D、G12VもしくはG13Dの変異、またはそれらの組み合わせと組み合わせて使用され得る。これらの変異体KRASペプチドをコードするヌクレオチド配列は、実施例9に提供されている。
N末端にSTINGコード配列を有する、以下のものをコードする変異体KRASペプチド−STING mRNA構築物を調製した:G12D、G12VまたはG13D変異を有する15量体ペプチド(そのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号107〜109に示す);G12D、G12VまたはG13Dの変異を有する25量体ペプチド(それぞれ配列番号110〜112);G12D、G12VまたはG13D変異を有する15量体ペプチドの3つのコピー(それぞれ配列番号113〜115);あるいはG12D、G12VまたはG13D変異を有する25量体ペプチドの3つのコピー(それぞれ、配列番号116〜118)。特定の実施形態では、G12CのKRAS変異は、G12D、G12VもしくはG13Dの変異、またはそれらの組み合わせと組み合わせて使用され得る。N末端にSTINGコード配列を有するこれらのKRASペプチドSTING構築物をコードする代表的なヌクレオチド配列は、配列番号220及び222に示される。
C末端にSTINGコード配列を有する以下をコードした変異体KRASペプチド−STING mRNA構築物を調製した:G12D、G12VまたはG13D変異を有する15量体ペプチド(そのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号119〜121に示されている);G12D、G12VまたはG13Dの変異を有する25量体ペプチド(それぞれ配列番号122〜124);G12D、G12VまたはG13D変異を有する15量体ペプチドの3つのコピー(それぞれ配列番号125〜127);またはG12D、G12VもしくはG13D変異を有する25量体ペプチドの3つのコピー(それぞれ、配列番号128〜130)。特定の実施形態では、G12CのKRAS変異は、G12D、G12VもしくはG13Dの変異、またはそれらの組み合わせと組み合わせて使用され得る。C末端にSTINGコード配列を有するこれらのKRASペプチドSTING構築物をコードする代表的なヌクレオチド配列は、配列番号221及び223に示される。
これらの構築物はまた、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかでエピトープタグをコードし得る。異なるエピトープタグを使用してもよい(例えば、FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、ポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾された。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを、配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRは、配列番号23に示す。
KRAS変異体ペプチド(複数可)mRNAワクチン構築物またはKRAS変異体ペプチド(複数可)ワクチン−STING免疫増強剤mRNA構築物のいずれかで処置したマウスにおけるワクチン応答を試験するために、マウス(HLA−A*11:01またはHLA−A*2:01;Taconic)を、KRAS変異体ペプチドワクチンmRNA構築物(例えば、配列番号95〜106のうちの1つをコードする)またはKRAS変異体ペプチドワクチン−STING免疫増強剤mRNA構築物(例えば、配列番号107−130のうちの1つをコードする)を用いて処置する。マウスを1日目及び15日目に筋肉内に免疫し(0.5mg/kg)、そして22日目に屠殺する。CD8ワクチン応答を試験するために、CD8+脾臓細胞及びPBMCを、GolgiPlug(商標)(BrefeldinA(BD Biosciences)を含む)の存在下で、変異体KRASペプチド(G12D、G12VまたはG13D)または野生型KRASペプチド(ペプチドあたり1μg/ml)のいずれかを用いて、セ氏37度で4時間エキソビボで再刺激した。次いで、CD8ワクチン応答を、IFN−γ及び/またはTNF−αについての細胞内染色(ICS)によって評価し得る。KRAS変異体ペプチドワクチン−STING免疫増強剤mRNA構築物で処置したマウスにおけるIFN−γ及び/またはTNF−αのICS応答の増強は、KRAS変異体ペプチドワクチンmRNA構築物を用いた処置と比較して、STING免疫増強剤が、KRAS特異的CD8ワクチン応答を増強することを示す。
実施例9:活性化がん遺伝子KRAS変異体ペプチドmRNA構築物と組み合わせた免疫増強剤mRNA構築物の使用
この実施例では、変異体KRASペプチドmRNA構築物は、変異体KRASペプチドに対する免疫応答を増強するために、別個の構成的に活性なSTING免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせて使用される。
KRASは、ヒトのがんにおいて最も頻繁に変異するがん遺伝子である(約15%)。KRAS変異は、主にいくつかの「ホットスポット」で発生し、がん遺伝子を活性化する。以前の研究は、発がん性突然変異に特異的なT細胞を惹起する能力が限られていることを示していた。しかし、これの大部分は最も一般的なHLA対立遺伝子(A2、白人の約50%で生じる)の状況で行われた。ごく最近になって、(a)特異性T細胞が、あまり一般的でないHLA対立遺伝子(A11、C8)の状況で点突然変異に対して生成され得、そして(b)エキソビボでこれらの細胞を増殖させ、それらを患者に移入して戻すことは、肺癌患者において劇的な腫瘍反応を媒介したことが実証された。(N Engl JMed 2016;375:2255−2262 December 8,2016DOI:10.1056/NEJMoa1609279)。
下記の表5に示すように、CRC(結腸直腸癌)では、3つの変異(G12V、G12D、及びG13D)のみが、この悪性腫瘍におけるKRAS変異の96%を占める。さらに、全てのCRC患者を標準治療としてKRAS変異について遺伝子型決定した。
別のCOSMICデータセットでは、結腸直腸癌におけるKRAS変異のうち73.68%が、これらの3つの変異(G12V、G12D、及びG13D)によって占められている(表6)。
Priorらは、それぞれHRAS、KRAS、及びNRASについて、アイソフォーム特異的な点突然変異特異性を検討して要約した(Prior et al.Cancer Res.2012 May 15;72(10):2457−2467)。各点突然変異を有する腫瘍の総数を表すデータを、COSMICv52の放出から照合した。各がん型の各アイソフォームについて最も頻度の高い変異が報告されている(Priorらのの表2を参照のこと)。
さらに、二次KRAS変異は、EGFR遮断耐性患者において同定されている。RASは、EGFRの下流にあり、それはEGFR遮断療法に対する耐性の機構を構成することが見出された。EGFR遮断耐性KRAS変異腫瘍は、本明細書に開示される組成物及び方法を用いて標的化され得る。少数のケースでは、同じ患者で複数のKRAS変異が同定された(最大4つの異なる変異が同時に発生する)。Diazらは、EGFR遮断の獲得後のこれらの二次KRAS変異を報告しており(補遺の表2を参照のこと)、及びMisaleらは、EGFR遮断後の二次KRAS変異を報告している(図3b参照を参照のこと)(Diaz et al.,The molecular evolution of acuquired resistance to targeted EGFR blockade in colorectal cancers,Nature 486:537(2012);Misale et al.Emergence of KRAS mutations and acquired resistance to anti−EGFR therapy in colorectal cancer,Nature 486:532(2012))。この変異スペクトルは、結腸直腸癌における原発性腫瘍ミスセンス変異体と少なくともある程度は異なるように思われる。
図18に示すように、NRASは結腸直腸癌においても変異しているが、cBioPortalで利用可能なデータの分析に基づいて、KRASよりも低い頻度である。
本実施例では、動物に、少なくとも1つの活性化がん遺伝子突然変異ペプチド、例えば、少なくとも1つの活性化KRAS変異をコードするmRNAを単独で、または免疫増強剤mRNA構築物、例えば、構成的に活性なSTING mRNA構築物、例えば、配列番号1〜10のいずれかに示される配列をコードする、例えば、配列番号1に示され及び配列番号199に示されるヌクレオチド配列をコードしたアミノ酸配列を有する、V155M変異を含む構成的に活性なヒトSTINGタンパク質をコードするmRNA構築物などと組み合わせて含む免疫調節治療組成物を投与する。
例示的なKRAS変異体ペプチド配列及びmRNA構築物を表7〜9に示す。
化学:ウリジン修飾されたN1−メチルシュードウリジン(m1Ψ)
Cap:C1
Tail:T100
5’UTR配列(標準5’Flank(生成FP+T7部位+5’UTR)を含む):TCAAGCTTTTGGACCCTCGTACAGAAGCTAATACGACTCACTATAGGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGAGCCACC(配列番号21)
5’UTR配列(プロモーターなし):GGGAAATAAGAGAGAAAAGAAGAGTAAGAAGAAATATAAGAGCCACC
(配列番号194)
3’UTR配列(ヒト3’UTR XbaIなし):TGATAATAGGCTGGAGCCTCGGTGGCCATGCTTCTTGCCCCTTGGGCCTCCCCCCAGCCCCTCCTCCCCTTCCTGCACCCGTACCCCCGTGGTCTTTGAATAAAGTCTGAGTGGGCGGC(配列番号22)
インビボでのKRAS抗原応答に対するSTING免疫増強剤mRNA構築物の効果を調べるための最初の研究において、HLA−A*2:01 Tgマウス(Taconic、系統9659F、n=4)に、以下のように、変異したKRASをコードするmRNAを投与する:変異したKRASをコードするmRNA(単独でまたはSTINGと組み合わせて)を1日目に投与し、8日目に採血し、変異したKRASをコードするmRNA(単独でまたはSTINGと組み合わせて)を15日目に投与し、動物を22日目に屠殺した。試験群を、次のように表10に示す。
mRNAを0.5mg/kg(動物20gあたり10ug)の用量で動物に投与する。KRAS及びSTING構築物は1:1の比率で投与される。エキソビボ再刺激(ペプチドあたり1μg/ml)を、GolgiPlug(Brefeldin A)の存在下、セ氏37度で4時間試験する。細胞内サイトカイン染色(ICS)を、KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13D、KRAS G12WT、KRAS G13WT、及びペプチドなしについて試験する。
KRAS変異をコードするmRNAを、単独でまたは構成的に活性なSTINGをコードするmRNAと組み合わせて、T細胞を生成する能力について試験する。KRAS変異をコードするmRNAの有効性は、例えば、ペプチドワクチン接種と比較される。STING免疫増強剤の効果は、KRAS変異ペプチド単独による処置とSTING免疫増強剤との組み合わせによる処置とを比較することによって決定される。例えば、CD8ワクチン応答は、本明細書中に記載されるように、IFN−γ及び/またはTNF−αについての細胞内染色(ICS)によって評価され得る。KRAS変異体ペプチドワクチンmRNA構築物単独での処置と比較して、STING免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせてKRAS変異体ペプチドワクチンで処置したマウスにおけるIFN−γ及び/またはTNF−αに対するICS応答の増強によって、STING免疫増強剤は、KRAS特異的CD8ワクチン応答を増強することが示される。
STING免疫増強剤mRNA構築物が変異体KRASペプチド抗原mRNA構築物の様々な異なる形態に対する免疫応答に及ぼす影響を調べるための第2の研究において、HLA*A*11:01 Tgマウス(Taconic、株9660F、n=4)に、以下のとおりSTING免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせて、種々の異なる形態の変異したKRASペプチド抗原mRNA構築物をコードするmRNAを投与する:STINGと組み合わせた変異KRASをコードするmRNAを1日目に投与し、8日目に採血し、STINGと組み合わせて変異したKRASをコードするmRNAを15日目に投与し、22日目に動物を屠殺した。
試験した変異体KRAS構築物の種類は以下のとおりであった:(i)G12D、G12V、G13DまたはG12C変異(「一重項」)のいずれかを含む単一変異体KRAS 25量体ペプチド抗原をコードするmRNA;(ii)3つの25量体ペプチド抗原のコンカテマーをコードするmRNA(したがって75量体を作製する)、それぞれ1つはG12D、G12V及びG13D変異を含む(「KRAS−3MUT」);(iii)それぞれの1つがG12D、G12V、G13D及びG12C変異を含有する、4つの25量体ペプチド抗原のコンカテマー(したがって100量体を作製する)をコードするmRNA(「KRAS−4MUT」);または(iv)一緒に同時投与された4つの別々のmRNA、それぞれG12D、G12V、G13DまたはG12C変異のいずれかを含む単一変異体KRAS 25量体ペプチド抗原をコードする(「単一×4」)。
G12D 25量体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号98及び185に示す。G12V 25量体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号99及び186に示す。G13D 25量体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号100及び187に示す。G12C25量体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号131及び191に示す。KRAS−3MUT 75量体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号195及び196に示す。KRAS−4MUT 100量体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号197及び198に示す。KRAS−4MUT 100量体のさらなるヌクレオチド配列を、配列番号1321及び1322に示す。
mRNAを、0.5mg/kg(動物20gあたり10μg)の用量で動物に投与する。KRAS及びSTING構築物は、1:1の比率で投与する。エキソビボ再刺激(ペプチドあたり1μg/ml)を、GolgiPlug(Brefeldin A)の存在下、セ氏37度で4時間試験する。細胞内サイトカイン染色(ICS)を、KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13D、G12C、KRAS G12WT、KRAS G13WT、及びペプチドなしについて試験する。
構成的に活性なSTINGをコードするmRNAと組み合わせてKRAS変異をコードする種々のmRNAがT細胞応答を生成する能力を試験して、種々の異なるKRAS構築物に対するSTING免疫増強剤の効果の比較を可能にする。例えば、CD8ワクチン応答は、本明細書中に記載されるように、IFN−γ及び/またはTNF−αについての細胞内染色(ICS)によって評価され得る。
実施例10:STING免疫増強剤と組み合わせたHPVワクチンによる予防的または治療的なワクチン接種は、腫瘍増殖を阻害する
本実施例では、TC1腫瘍細胞でチャレンジする前、それと同時に、またはその後で、マウスをSTING免疫増強剤と組み合わせてHPVワクチンで処置した。TC−1は、当該技術分野において公知のHPV16 E7発現マウス腫瘍モデルである(例えば、Bartkowiak et al.(2015)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 112:E5290−5299を参照のこと)。この実施例で使用したHPVワクチンは、実施例5に記載したように、本明細書でそれぞれiE6/E7及びsE6/E7と呼ばれる、細胞内または可溶性形態のHPV16抗原E6及びE7のいずれかをコードするmRNA構築物であった。この実施例で使用した構成的に活性なSTING免疫増強剤は、実施例5に記載したように、V155M変異を含んでいた。HPVワクチン構築物及び免疫増強剤構築物を、MC3脂質ナノ粒子中に共処方した。特定のマウスをまた、免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA−4または抗PD−1のいずれか)でも処置した。
HPV+STINGワクチン接種の予防活性を調べる第1セットの実験では、C57/B6マウスを、(i)−7日目及び−14日目、または(ii)1日目及び8日目のいずれかで、0.5mg/kgのHPV+STINGワクチン(sE6/E7またはiE6/E7のいずれかをコードする)の筋肉内注射により、その後1日目に2×105個のTC1細胞の皮下注射によって、処置した。特定のマウスもまた、6、9及び12日目に抗CTLA−4(クローン9H10)または抗PD−1(RMP1−14)のいずれかを用いて処置した。経時的な腫瘍容積として報告される代表的な結果は、図19A〜図19Cのグラフに示され、ここで図19A及び図19Bは、sE6/E7(図19A)またはiE6/E7(図19B)のいずれかで−14及び−7日目に処置したマウスについてのデータを示し、図19Cは、1及び8日目にsE6/E7で処置したマウスについてのデータを示す。その結果から、HPV+STINGワクチン(単独でまたは免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて)で処置したマウスの全てが、対照マウス(対照mRNA構築物NTFIXを用いて、単独でまたは免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて処置した)と比較して、数週間にわたって腫瘍増殖の完全な阻害を示したことが実証される。したがって、これらの実験によって、STING免疫増強剤と一緒のHPVワクチンによる予防的ワクチン接種(すなわち、腫瘍チャレンジの前または同時に)が、インビボでのHPV発現腫瘍細胞の増殖の防止に有効であることが実証される。
HPV+STINGワクチン接種の治療活性を調べる第2のセットの実験では、C57/B6マウスに1日目に2×105TC1細胞を皮下投与し、続いて0.5mg/kgのHPV+STINGワクチン(sE6/E7をコードする)を8日及び15日に筋肉内注射することにより処置した。特定のマウスはまた、13、16及び19日目に抗CTLA−4(クローン9H10)または抗PD−1(RMP1−14)のいずれかで処置した。経時的な腫瘍容積として報告されている代表的な結果は、図20A〜20Iのグラフに示されている。その結果から、対照mRNA構築物NTFIXを単独でもしくは免疫チェックポイント阻害剤(図20D〜20F)と組み合わせて処置した対照マウス、または対照DMXAA化合物(STINGの化学活性化剤)と組み合わせてsE6/E7構築物を用いて単独でもしくは免疫チェックポイント阻害剤(図20G〜図20I)と組み合わせて処置した対照マウスと比較して、HPV+STINGワクチンで(単独でまたは免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて)処置したマウスが腫瘍退縮を示した(図20A〜図20C)ことが示される。したがって、これらの実験によって、STING免疫増強剤と共にHPVワクチンを用いた治療的ワクチン接種(すなわち、腫瘍チャレンジ後)がインビボでHPV発現腫瘍の退縮を誘導するのに有効であることが実証される。
第3の一連の実験では、より大きなTC1腫瘍におけるHPV−STING治療ワクチンの有効性を調べるために、C57/B6マウスに2×10
5TC1細胞を皮下投与し、腫瘍を200mm
3または300mm
3の容積まで増殖させ、次いで、これを1日目とした。次いで、マウスを1日目及び8日目にHPV+STINGワクチン(sE6/E7をコードする)を筋肉内注射することによって処置した。処置群及び対応する投与量を表12に示す。
その結果を図21に示しており、これは22日間の経過にわたる腫瘍容積を示す(上のグラフは200mm3の腫瘍についてのものであり、下のグラフは300mm3の腫瘍についてのものである)。その結果から、HPV−STING治療用ワクチンがインビボでより大きなHPV発現腫瘍を阻害するのに有効性を示すことが実証される。
実施例11:mRNAワクチン設計における最適抗原:免疫増強剤の質量比の決定
この実施例では、異なるAg:免疫増強剤比で免疫増強剤と組み合わせて目的の抗原(Ag)で処理した動物で試験を行い、続いて抗原に対するT細胞応答を調べて、目的のこの抗原に対する免疫応答を増強するのに最適なAg:免疫増強剤の比率を確認した。
第1セットの実験では、構成的に活性なSTING免疫増強剤構築物と組み合わせて、実施例6に記載されているように、Adpgk、Dpagt1、及びReps1由来の腫瘍ネオエピトープを含む3つの25量体突然変異ペプチドのADRコンカテマーをコードするMC38ワクチン(このワクチンは本明細書においてADRvaxとも呼ばれる)を用いてマウスを処置した。この実施例で使用した構成的に活性なSTING免疫増強剤は、実施例5に記載したように、V155M変異を含んでいた。下の表13にまとめた研究デザインにより、ADRvax及びSTING構築物を、様々なAg:STING比でSM102カチオン性脂質ナノ粒子(化合物25を含む)中に共処方した。
マウスに1日目及び15日目に筋肉内投与した。21日目に、各試験群のマウス由来のCD8+脾臓細胞を、GolgiPlug(商標)(Brefeldin A(BD Biosciences)を含む)の存在下で、セ氏37℃で4時間エキソビボで、野生型または変異体MC38 ADRペプチド(ペプチドあたり1μg/ml、プール)を用いて再刺激し、CD8ワクチン応答を、IFN−γまたはTNF−αについて細胞内染色(ICS)によって評価した。IFN−γについての21日目のCD8+脾臓細胞によるMC38 ADR特異的応答についての代表的なICSの結果を、図22に、そしてTNF−αについては図23に示す。21日目のPBMCで同等の結果が観察された。さらに、実験は54日を通して行い、54日目の脾臓細胞の結果は21日目の脾臓細胞について観察された結果と同等であった。さらに、ADRvax内の3つの個々のエピトープ(すなわち、ペプチドAdpk1、Reps1及びDpagt1)のそれぞれに対するCD8ワクチン応答も、個々のエピトープで刺激した後のIFN−γについてICSによって評価した。その結果を図24A(ペプチドAdpk1について)、図24B(ペプチドReps1について)及び図24C(ペプチドDpagt1について)示す。
その結果から、試験した全てのAg:STING比(1:1〜20:1の範囲)が、対照と比較してSTINGのアジュバント効果を示したことが実証される。全体としてADRvax抗原について、最適なAg:STING比は、5:1であることが見出された。ADRvax内の個々のペプチドエピトープについて、Adpgk1ペプチドについての最適Ag:STING比は、5:1であったが、Reps1ペプチドについての最適Ag:STING比は、10:1であった(第3ペプチド、Dpagt1に対する応答は、当該技術分野で知られているようにそれが非優性エピトープであることと一致して、STINGの有無にかかわらず極めて低かった)。STINGはまた、用量反応が観察されると(データは示さず)、CD45+T細胞のうちのCD8+細胞の総割合を増大させることが見出され、そして用量反応が観察されると(データ示さず)、CD44hi−CD8+細胞(エフェクター/記憶サブセット)のうちのCD62L細胞の総割合を増大させることが見出された。さらに、PBMC細胞から得られた結果は、脾臓細胞の結果と一致した(データは示さず)。したがって、これらの実験によって、STRINGがADRvax抗原に対する免疫応答を増強する際の免疫増強剤として作用する能力が確認され、そしてさらに、処置にとって最適なAg:免疫増強剤比率の決定が実証され、1:1以外の比率が最適である(例えば、5:1または10:1の比が1:1よりも効果的である)ことが見いだされた。その結果からさらに、最適なAg:免疫増強剤の比率が、使用される目的の特定の抗原に応じて異なる場合があることが示されている。
第2のセットの実験では、非ヒト霊長類を、下記の表14にまとめられた研究デザインに従って、種々のAg:STING比で構成的に活性なSTING免疫増強剤構築物と組み合わせて(SM102カチオン性脂質ナノ粒子中に共処方された)、実施例5に記載したように、細胞内E6/E7をコードするHPVワクチン(iE6/E7)で処置した。
最初の投与(筋肉内投与)の24時間後に臨床所見は観察されず、注射部位の反応はなく、初期の処置は安全に受けられたことが示されている。1日目の初回投与後、動物は2週間の回復期間を有し、次いで14日目に2回目の投与を受け、続いてさらに2週間の回復期間を与えられる。さらなる安全性分析は、2、16及び30日目に臨床病理学(臨床化学、血液学及び凝固)により決定される。CD4及びCD8細胞に対するIFN−γに対する抗抗体及びELISpot分析またはICSを行って、試験された様々な比率でSTINGによるHPVワクチンに対する免疫応答の増強を評価する。
第3のセットの実験では、既知のマウスエピトープを用いたモデルコンカテマー抗原を、構成的に活性なSTING免疫増強剤と様々な比率で組み合わせてマウスで試験した。本明細書でCA−132と呼ぶコンカテマー抗原は、CB6マウスのMHCクラスI及びクラスII抗原上に提示されると考えられる20の既知のマウスエピトープを含む。これらのエピトープは、文献に由来するエピトープの公共データベースであるIEDB.orgウェブサイトから入手した。クラスIエピトープは、MHCクラスI分子上に提示されてCD8+応答を誘発すると予想されるが、クラスIIエピトープは、MHCクラスII分子上に提示されてCD4+T細胞応答を誘発すると予想される。CA−132抗原構築物は、クラスI及びクラスIIエピトープの両方をコードし、CD4及びCD8のT細胞応答の両方の評価を可能にする。さらに、コンカテマー抗原にクラスIIエピトープを含めること(したがってCD4応答を引き起こすこと)は、より強いCD8T細胞応答を誘導するのに役立つと考えられている。したがって、CA−132抗原の設計へのアプローチは、他のコンカテマー抗原構築物の設計においても使用され得る(例えば、本明細書に記載されるように、個別化されたがんワクチンまたは細菌ワクチンのために)。
CA−132抗原構築物及びSTING免疫増強剤構築物を、SM102カチオン性脂質ナノ粒子中に共処方し、そして以下の投与量でCB6マウスに筋肉内投与した:CA−132単独を1μg、3μgまたは10μgで、STING単独を3μgで、CA−132+STINGをそれぞれ3μgまたはそれぞれ1μg(1:1の比率)、CA−132を3μg及びSTINGを1μg(Ag:STINGの比率が3:1)またはCA−132を1μg及びSTINGを3μg(Ag:STINGの比が1:3)。CA−132抗原構築物内のクラスIエピトープに対する抗原特異的T細胞応答を、IFN−γについてのELISpot分析によって調べ、その結果を図25に示す。その結果から、STINGを用いて処方した場合、クラスIエピトープに対するIFN−γ応答の増大が実証された。これらの結果は、CA−132抗原内のクラスIエピトープの1つ(エピトープCA−87)を用いたCD8+T細胞の再刺激とそれに続くIFN−γのELISpot分析によって確認され、その結果を図26に示す。これらの結果によって、STINGが、1:1、3:1及び1:3のAg:STING比で、抗原特異的CD8+T細胞応答を免疫増強する能力が実証された。
第4のセットの実験では、C57/Bl6マウスを、様々なAg:STING比で、構成的に活性なSTING免疫増強剤構築物と組み合わせて、HPV16 E7ワクチン(実施例5に記載)を用いて1日目及び14日目に処置した。以下の表15に要約される研究デザインに従って、mRNAを、化合物25:コレステロール:DSPC:PEG−DMG(それぞれ50:38.5:10:1.5の比率で)を含む脂質ナノ粒子中に共処方した。
21日目に、マウスを屠殺し、CD8+T細胞によるIFN−γ発現を、本明細書に記載のようにICSにより評価した。その結果を図27に示しており、これによって1:1、5:1及び10:1というAg:STING比でのSTING mRNA構築物の強力な免疫増強効果が示される。
要約すると、これらの研究は、STING免疫増強剤構築物が目的の抗原に対する免疫応答を増強する能力を確認し、そして処置のための最適なAg:STING比の決定を実証した。
実施例12:非ヒト霊長類におけるSTINGによる免疫増強
この実施例では、非ヒト霊長類(カニクイザル)を、STING免疫増強剤と組み合わせてHPVワクチンをコードするmRNAで処置し、続いて抗原特異的T細胞及び抗体応答を評価した。この実施例で使用したHPVワクチン構築物は、実施例5に記載されている。この実施例で使用した構成的に活性なSTING免疫増強剤構築物は、実施例5に記載したようにV155M変異を含んでいた。HPVワクチ構築物及び免疫増強剤mRNA構築物は、化合物25:コレステロール:DSPC:PEG−DMGをそれぞれ50:38.5:10:1.5の比で含む脂質ナノ粒子に共処方した。異なる比率のSTING:Agを試験した。対照動物は、HPV抗原単独またはSTING免疫増強剤単独のいずれかをコードするmRNAで処置した。
2〜5歳で体重2〜5kgの15匹のオスのカニクイザルを、以下の表16に示す研究デザインに従って処置した。
投与前試料のPBMCを、−7日目に収集し、続いて1日目及び15日目に動物をmRNA LNPを用いて筋肉内で処置した。投与後試料のPBMCを、29日目に収集した。研究中には毒性も他の主な臨床観察も注目されず、mRNA LNPの忍容性が良好であることが示された。
STING免疫増強剤が抗原特異的CD8+T細胞応答を増強する能力を調べるために、TNFα及びIL−2についての細胞内サイトカイン染色(ICS)を実施した。PBMCを、HPV16 E6ペプチドプールまたはHPV16 E7ペプチドプールを用いて、37℃で、6時間エキソビボで刺激した。PMA/イオノマイシンでの刺激を陽性対照として使用し、培地単独での刺激を陰性対照として使用した。
TNFαのICSの代表的な結果を図28A〜図28Cに示しており、ここで図28Aは、E6ペプチドプールによるエキソビボ刺激の結果を示し、図28Bは、E7ペプチドプールによるエキソビボ刺激の結果を示しており、図28Cは、培地対照によるエキソビボ刺激の結果を示す。抗原単独で免疫した投与前群と投与後群との間では、TNFα+CD8T細胞頻度の増大は観察されなかった(群1)。STING処置のみによる免疫(群2)は、TNFα+CD8T細胞頻度に対してわずかな効果を及ぼした。対照的に、STING+Agで免疫した群(群3、4、5)は、抗原特異的TNFα+CD8T細胞の有意な増大を示した。さらに、「マッチング」抗原用量のSTING:Ag(1:10の比)で免疫した第5群は、群1及び群2の対照と比較した場合、抗原特異的TNFα+CD8T細胞の有意な増大を示した。
IL−2のICSについての代表的な結果を図29A〜図29Cに示しており、ここで図29Aは、E6ペプチドプールによるエキソビボ刺激の結果を示し、図29Bは、E7ペプチドプールによるエキソビボ刺激の結果を示し、図29Cは、培地対照を用いたエキソビボ刺激の結果を示す。投与前と投与後との間のIL−2+CD8T細胞頻度の穏やかな増大が、全ての免疫動物において観察された(第1〜5群)。しかし、IL−2+CD8T細胞の増大は、STING:Agを1:1と1:5の比で処置した群(第3群及び4群)において最も検出可能であり、一方でSTING:Agを1:10の比で処置した動物では、対照と比較して増大したIL−2+CD8T細胞の増大を示さなかった。IL−2の増大は、活性T細胞応答中にT細胞のサブセットがIL−2を分泌するという公知の能力と一致する。
抗原特異的抗体応答に対するNHP中のSTING:Ag処置の効果を調べるために、E6特異的ELISA及びE7特異的ELISAを実施した。プレートを、組換えE6(Prospec;#HPV−005 His HPV16 E6)または組換えE7(ProteinX;#2003207 His HPV16 E7)のいずれかでコーティングした。Alpha Diagnostics Internationalからのマウス抗E6モノクローナル抗体(#HPV16E61−M)を陽性対照として使用した。Fisher/Life Technologiesのマウス抗E7モノクローナル抗体(#280006−EA)を陽性対照として使用した。Jackson ImmunoResearchの抗マウスIgG−HRP抗体(#715−035−150)を、陽性対照の二次抗体として使用した。Abcamの抗サルIgG−HRP(#ab112767)を、NHP血清に対する二次抗体として使用した。
プレートを、組換えE6またはE7(500ng/ウェル;100μl/ウェル)を用いて、4℃で一晩コーティングし、次いでTBS SuperBlockを用いて室温で1時間ブロックした。一次抗体を加え(100μl/ウェル)、そして室温で1時間インキュベートした。陽性対照抗体を段階希釈した。NHP血清を1:5000に希釈した。洗浄後、二次抗体を添加し(100μl/ウェル)、そして室温で1時間インキュベートした。陽性対照抗マウスIgG−HRPを、1:5000に希釈した。NHP血清については、抗サルIgG−HRPを1:30,000に希釈した。色を5分間(抗E6)または10分間(抗E7)発色させ、次いで停止させて450nmで読み取った。
抗HPV16 E6 IgGに関する代表的な結果を図30に示す。抗HPV16 E7 IgGについての代表的な結果を、図31に示す。抗E6及び抗E7の両方についての結果によって、特に1:5及び1:10の比のSTING:Agで動物を処置すると、抗原特異的抗体応答が増大することが示されている。
したがって、非ヒト霊長類研究に関して本明細書に記載される結果によって、STINGがインビボでmRNAワクチン抗原に対する抗原特異的T細胞及び抗体応答を免疫増強することが確認される。
実施例13:HLA*A11トランスジェニックマウスにおける種々のKRAS−STINGワクチンフォーマットの免疫原性
この実施例では、変異体KRASペプチド抗原mRNA構築物の様々な異なる形態に対する免疫応答に対するSTING免疫増強剤mRNA構築物の効果を調べるために、HLA*A*11:01 Tgマウス(Taconic、株9660F、n=3)を、以下のように、STING免疫増強剤mRNA構築物と組み合わせて、種々の異なる形態の変異されたKRASペプチド抗原mRNA構築物をコードするmRNAを投与した:STINGと組み合わせて、変異したKRASをコードするmRNAを、0日目及び14日目に投与し、21日目に動物を屠殺した。マウスは、0日目に6〜9週齢であった。mRNAを0.5mg/kgの用量で動物に投与した(動物20gあたり10μg)。KRAS及びSTING構築物を、5:1の比率(Ag:STING)で投与する。mRNA構築物を、SM102カチオン性脂質ナノ粒子(化合物25を含む)中に共処方した。
試験した変異したKRAS構築物の種類は以下のとおりであった:(i)G12D、G12V、G13DまたはG12C変異のいずれかを含有する単一変異体KRAS 25量体ペプチド抗原をコードするmRNA(「単量体」);(ii)3つの25量体ペプチド抗原のコンカテマーをコードするmRNA(したがって75量体を作製する)、それぞれ1つがG12D、G12V及びG13D変異を含む(「KRAS−3MUTコンカテマー」);(iii)4つの25量体ペプチド抗原のコンカテマーをコードするmRNA(したがって100量体を作製する)、それぞれ1つがG12D、G12V、G13D及びG12C変異を含む(「KRAS−4MUTコンカテマー」);または(iv)一緒に同時投与された4つの別々のmRNA、それぞれがG12D、G12V、G13DまたはG12C変異のいずれかを含む単一の変異体KRAS 25量体ペプチド抗原(「プールされた単量体」)をコードする。構築物のアミノ酸及びヌクレオチド配列は、実施例9に記載のとおりである。A11ウイルスエピトープコンカテマー抗原もまたSTINGまたは対照mRNA(NTFIX)(「有効なA11 Ag」)と組み合わせて試験した。
KRAS抗原に対する抗原特異的CD8+T細胞応答を評価するための第1セットの実験では、マウス由来の21日目の脾臓細胞を、GolgiPlug(Brefeldin A)の存在下で、セ氏37℃で5時間、KRAS単量体ペプチド(ペプチドあたり2μg/ml)で、エキソビボで再刺激した。細胞内サイトカイン染色(ICS)(IFN−γ)を、KRAS G12D(aa*7/8−16)、KRAS G12V(aa*7/8−16)、KRAS G13D(aa*7/8−16)、G12C(aa*7/8−16)、KRAS WT(aa*7/8〜16)及びペプチドなしについて行った。
KRAS−G12V特異的応答についてのICSの結果を図32に示す。KRAS−G12D特異的応答についてのICSの結果を図33に示す。これらの結果により、抗KRAS−G12V及び抗KRAS−G12D特異的CD8+T細胞が、対応するKRAS−STINGワクチン(単量体またはコンカテマー)で免疫されそして同族ペプチドで再刺激されたマウスにおいて検出されたことが実証される。KRAS変異を単量体またはコンカテマーとしてマウスに投与した場合、匹敵する%のIFN−ガンマ陽性CD8+T細胞が見られた。G12Vで観察された応答は、G12Dで観察された反応よりも強かった。この実験では、抗KRAS G12C及び抗KRAS G13D応答は観察されなかった(データ示さず)。
KRAS抗原に対する抗原特異的CD8+T細胞応答を評価するための第2のセットの実験では、マウス由来の21日目の脾臓細胞を、対応するKRASペプチド(G12V、G12DまたはWT対照)、続いてICS(IFN−γ)を用いてパルスしたHLA*A11発現標的細胞(Cos7−A11細胞)と共培養した。KRAS−G12V特異的応答についてのCos7−A11共培養の結果を図34に示す。KRAS−G12D特異的応答についてのCos7−A11共培養の結果を図35に示す。これらの結果から、抗KRAS−G12V及び抗KRAS−G12D特異的CD8+T細胞応答が、対応するKRAS−STINGワクチン(単量体またはコンカテマー)で免疫され、G12VまたはG12DでパルスされたA11+発現細胞株で再刺激されたマウスにおいて検出されたことが実証される。したがって、KRAS抗原に対する抗原特異的CD8+T細胞応答の検出に関するこの第2セットの実験における結果は、同族ペプチドによる再刺激を用いた第1セットの実験からの結果と非常に類似していた。
最後に、既知のA*11拘束性ウイルスエピトープに対する抗原特異的応答を増強するSTINGの能力を、A11ウイルスエピトープコンカテマーで免疫したマウス由来の21日目の脾臓細胞を用いて評価した。A11−トランスジェニックマウス(表17の処置群9)においてSTINGと組み合わせて抗原として使用するために、8つのウイルスエピトープ(EBV BRLF1、FLU、HIV NEF、EBV、HBVコア抗原、HCV、CMV及びBCL−2L1)(各25アミノ酸)をコンカテマー化して、mRNAによってコードした。A11ウイルスエピトープコンカテマーも、NTFIX対照mRNAと同時投与した(表17の処置群10)。8つのエピトープのうち5つ(EBV BRLF1、FLU、HIV NEF、EBV、HBVコア抗原)を、比較的低い予測IC50を有するA11結合剤として検証した;他の3つのエピトープ(HCV、CMV及びBCL−2L1)は、A11に対してより中程度の予測される親和性を有していたが、実験的には検証されていない。ウイルスエピトープについてのアミノ酸配列、ならびにそれらのIC50を、以下の表18に示す。
21日目の脾臓細胞を、個々のA*11ウイルスエピトープを用い、続いてICS(IFN−γ及びTNF−α)を用いてエキソビボで再刺激して、抗原特異的CD8+T細胞応答を検出した。抗原特異的CD8+T細胞応答が、8つのウイルスエピトープのうちの4つ(EBV、EBV BRLF1、FLU及びHIV NEF)について観察され、図36に示されるように、STINGはこれらのウイルスエピトープのうち3つ(EBV、EBV BRLF1及びFLU)についてT細胞応答を増強した。
したがって、HLA*A11トランスジェニックマウスについて本明細書に記載される結果によって、STINGが、抗原特異的T細胞抗KRAS応答、ならびに他のA11拘束性ウイルス抗原に対する抗ウイルス応答を免疫増強し、ワクチン抗原に対する応答を種々の形式(単量体及びコンカテマー)で免疫増強し得ることが実証される。
実施例14:STINGの免疫増強は、1型インターフェロン及びNFκBの活性化によって再構成される
この実施例では、HPVワクチンマウスモデル系を用いて、STINGの免疫増強作用を、1型インターフェロンを活性化する(構成的に活性なIRF3及びIRF7)か、またはNFκBを活性化する(構成的に活性なIKKβ)かのいずれかである、免疫増強剤の免疫増強作用と比較した。STING mRNA構築物(V155M変異)は実施例1に記載されている。構成的に活性IRF3及びIRF7のmRNA構築物は、実施例2に記載されている。構成的に活性IKKβ構築物は、実施例3に記載されている。HPVワクチンマウスモデル系は、実施例5に記載されている。マウスを、HPVワクチンを:(i)対照構築物(NTFIX)、(ii)STING構築物、(iii)IRF3/IRF7構築物、または(iv)IRF3/IRF7/IKKβ構築物のいずれかと組み合わせて用いて免疫した。
各試験群のマウス由来の21日目の脾臓細胞を、実施例5に記載のように、E7単一ペプチド(3個の個々のペプチド)またはE7ペプチドプールのいずれかを用いて、GolgiPlug(商標)(Brefeldin A;BD Biosciencesを含む)の存在下で、37℃で4時間エキソビボで再刺激した。CD8ワクチン応答は、IFN−γまたはTNF−αについての細胞内染色(ICS)によって評価した。IFN−γ及びTNF−αについての21日目の脾臓細胞によるE7特異的応答についての代表的なICS結果を図37A(IFN−γ)及び図37B(TNF−α)に示す。実験は50日を通して行い、50日目の脾臓細胞の結果は21日目に観察された結果と同等であった。その結果から、構成的に活性なIRF3+構成的に活性なIRF7+構成的に活性なIKKβの組み合わせが、STING媒介アジュバント表現型を反復したことが示される。したがって、これらの結果から、STINGの免疫増強効力が、1型インターフェロン及びNFκBを活性化する構築物の使用によって再構成され得ることが実証される。
実施例15:細胞内経路の調節による免疫増強
この実施例では、STINGの免疫増強効果を、細胞内経路を調節する免疫増強剤の増強効果と比較した。それぞれTLRの下流で機能する細胞内シグナル伝達タンパク質である、TAK1、TRAMまたはMyD88をコードする免疫増強剤mRNA構築物を試験した。構成的に活性なSTING構築物(V155M)は、実施例1に記載されている。TAK1構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号164に示される(配列番号1411及び1482に示される例示的ヌクレオチド配列によってコードされる)。TRAM構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号136に示される(配列番号1410及び1481に示される例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)。MyD88構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号134(配列番号1409及び1480に示される例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)及び配列番号135に示される。マウスを:(i)STING、(ii)TAK1、(iii)TRAM、または(iv)MyD88のうちのいずれかをコードするmRNA構築物と組み合わせて、試験抗原としてオボアルブミンをコードするmRNAを用いて免疫した。OVA抗原mRNA構築物及び免疫増強剤mRNA構築物を、それぞれ50:38.5:10:1.5の比で、化合物25:コレステロール:DSPC:PEG−DMGを含む脂質ナノ粒子中に共処方した。マウスを、1及び15日目に0.5mg/kgで筋肉内に免疫した。
各試験群のマウス由来の25日目の脾臓細胞を、GolgiPlug(商標)(Brefeldin A;BD Biosciencesを含む)の存在下で、37℃で4時間、OVAペプチド(MHCクラスI)を用いてエキソビボで再刺激した。CD8ワクチン応答は、IFN−γ、TNF−αまたはIL−2についての細胞内染色(ICS)によって評価した。IFN−γ、TNF−α及びIL−2についての25日目の脾臓細胞によるOVA特異的応答についての代表的なICS結果を図38A(IFN−γ)、図38B(TNF−α)及び図38C(IL−2)に示す。その実験は50日にわたって行い、50日目の脾臓細胞の結果は25日目に観察された結果と匹敵していた。その結果から、TAK1、TRAM及びMyD88構築物がSTINGと同様の免疫増強活性を示したことが実証される。したがって、これらの結果から、そのような細胞内経路の構成要素、特にTLRの下流で機能する構成要素をコードするmRNA構築物を用いて細胞内経路を調節することによって免疫応答が増強され得ることが実証される。
実施例16:アダプタータンパク質による及びインフラマソームによる免疫増強またはネクロトソームの誘導
この実施例では、mRNA構築物のパネルの免疫増強能を、試験抗原としてオボアルブミンを用いてマウスで比較した(実施例15に記載のとおり)。mRNA構築物のパネルは、アダプタータンパク質STINGまたはMAVS(ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質)、構成的に活性なIKKβ(NFκBを活性化する)、カスパーゼ1/4(インフラマソーム誘導に関与)またはMLKL(ネクロトソーム誘導に関与)のいずれかをコードした。構成的に活性なSTING構築物(V155M)は、実施例1に記載されている。構成的に活性なIKKβ構築物は、実施例3に記載されており、そして配列番号152に示されるアミノ酸配列をコードする(配列番号153及び1397に示される例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)。MAVS構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号1387に示されている(配列番号1413及び1484に示される例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)。MLKL構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号1327(配列番号1412及び1483に示す例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)及び1328に示される。カスパーゼ−1構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号175〜178(配列番号1395及び1467に示される例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)に示される。カスパーゼ−4構築物によってコードされる代表的なアミノ酸配列は、配列番号1352〜1356(配列番号1396及び1468に示される例示的なヌクレオチド配列によってコードされる)に示される。以下のいずれかをコードするmRNA構築物と組み合わせて、試験抗原としてのオボアルブミンをコードするmRNAでマウスを免疫した;(i)STING;(ii)MAVS;(iii)IKKβ;(iv)カスパーゼ1/4+IKKβ;(v)MLKL;または(vi)MLKL+STING。NTFIX構築物及びDMXAA(STING依存性自然免疫経路の化学的活性化剤)を対照として使用した。OVA抗原mRNA構築物及び免疫増強剤mRNA構築物を、それぞれ50:38.5:10:1.5の比で、化合物25:コレステロール:DSPC:PEG−DMGを含む脂質ナノ粒子中に共処方した。マウスを1及び15日目に0.5mg/kgで筋肉内に免疫した。
各試験群のマウス由来の脾臓細胞を、GolgiPlug(商標)(Brefeldin A;BD Biosciencesを含む)の存在下で、OVAペプチド(MHCクラスI)を用いて37℃で4時間、エキソビボで再刺激した。抗原特異的CD8応答は、IFN−γについて細胞内染色(ICS)によって評価された。IFN−γについての21日目の脾臓細胞によるOVA特異的応答についての代表的なICS結果を図39に示す。IFN−γについての50日目の脾臓細胞によるOVA特異的応答についての代表的なICS結果を、図40に示す。その結果によって、アダプター化合物(STING及びMAVS)、インフラマソームの誘導(カスパーゼ1/4+IKKβによる)またはネクロトソームの誘導(MLKLによる)が全て、抗原特異的CD8応答の免疫増強をもたらしたことが実証される。さらに、MLKLとSTINGの組み合わせは、MLKL単独と比較して増強された活性を示した。さらに、50日目の結果によって、免疫増強効果が持続的であることが実証されている。これらの結果から、免疫応答がアダプタータンパク質によって、インフラマソームの誘導によって、またはネクロトソームの誘導によって増強され得ることが実証される。
実施例17:構成的に活性なSTING構築物の比較
この実施例では、C57/Bl6マウスを、構成的に活性な異なるSTING変異体mRNA構築物と共処方または同時投与した、OVA抗原コードmRNA構築物を用いて免疫した。試験した構成的に活性なSTING構築物は以下のとおりであった:(i)p23(V155M);(ii)p57(R284M/V147L/N154S/V155M);(iii)p56(V147L/N154S/V155M);及び(iv)p19(R284M)。全ての構築物を、OVA抗原構築物と共処方して試験した。p23構築物もまた、OVA抗原構築物と同時投与して、ただし別々に処方して試験した。マウスを1日目及び14日目に免疫した。
21日目に、マウスを屠殺し、CD8+T細胞によるIFN−γ発現を、本明細書に記載のようにICSにより評価した。その結果を図41Aに示しており、これにより、試験した全ての構成的に活性なSTING変異体構築物が、インビボで(NTFIX対照と比較して)OVA抗原に対する抗原特異的CD8+T細胞応答を免疫増強する能力を示したことが実証される。さらに、p23構築物は、それがOVA抗原構築物と共処方されたとき、及びそれがOVA抗原構築物と同時投与されたが、ただし別々に処方されたときの両方とも、抗原特異的CD8+T細胞応答を免疫増強した。さらに、90日目に、マウスを屠殺し、CD8+T細胞によるIFN−γ発現を、本明細書に記載のようにICSにより評価した。その結果を図41Bに示しており、これによって、構成的に活性なSTING変異体構築物の免疫増強効果が持続的であることが実証される。
実施例18:STING媒介免疫増強におけるCD4及びCD8T細胞の役割
この実施例では、CD4枯渇マウスまたはCD8枯渇マウスを用いて、STING媒介免疫増強におけるCD4+またはCD8+T細胞の役割を評価した。第1の一連の実験では、CD4細胞を枯渇させるために、実験の−3、−1、11及び13日目に、マウスに抗CD4 mAb GK1.5を腹腔内注射した。枯渇効率は、フローサイトメトリーによって確認した。マウスに、STING構築物(V155M)と共処方されたHPV16 E6/E7抗原ワクチンを用いて、0.5mg/kgの用量で筋肉内に、1日目と15日目にワクチン接種した。このワクチン及びSTING mRNA構築物を、1:1の比で、化合物25:コレステロール:DSPC:PEG−DMGを、それぞれ50:38.5:10:1.5の比で含む脂質ナノ粒子中に共処方した。
21日目及び50日目に、マウスを屠殺し、CD8+T細胞によるIFN−γ発現を、本明細書に記載のようにICSによって評価した。その結果を図42A(21日目)及び図42B(50日目)に示す。ICSにより評価したところ(データは示さず)、CD8+T細胞によるTNF−α発現について同様の結果が観察された。その結果により、STINGによって媒介されるアジュバント効果がCD4+T細胞の助けとはほとんど無関係であることが実証されている。
第2の一連の実験では、腫瘍細胞増殖に対するHPV−STINGワクチンの効果におけるCD4及びCD8T細胞の役割を、実施例10に記載のTC1モデルを用いて調べた。TC1 HPV細胞(2×10
5細胞)を、C57/B6マウスに皮下移植し、腫瘍を100mm
3の容積の大きさまで増殖させて、これを1日目とした。1日目及び8日目に、マウスにSTING構築物(V155M)と共処方されたHPV16 E6/E7可溶性抗原ワクチン(1:1の比率のsE6/E7及びSTING)を10μgの投与量で筋肉内に投与した。対照マウスはPBSのみで処置した。さらに、1、4、7、10日目に、そしてその後研究の終わりまで週に2回、マウスを抗CD4(GK1.5mAb)または抗CD8(2.43mAb)のいずれかを用いて処置して、それぞれCD4T細胞またはCD8細胞を枯渇させた。対照マウスは枯渇抗体で処置しなかった。処置群及び対応する投与量は表19に示している。
結果を図43に示し、これは22日の経過にわたる腫瘍容積を示す。その結果から、CD4+T細胞の枯渇はHPV−STINGワクチンの抗腫瘍効果に有意に影響を及ぼさなかったが、CD8+T細胞の枯渇はHPV−STINGワクチンの抗腫瘍効果に影響を及ぼしたことが実証され、それによってワクチンの有効性はCD8+T細胞には依存するが、CD4+T細胞には依存しないことが実証される。
実施例19:STINGは、CD8細胞をエフェクター記憶表現型へ歪ませる
この実施例では、CD62Lloエフェクターメモリー細胞に関して実施例5及び6に報告された結果をさらに確認するために、C57/Bl6マウスを様々な濃度のSTING免疫増強剤mRNA構築物と共処方した様々な濃度のMC38ワクチンで免疫した追加実験を行った。使用したAg及びSTINGの量/比率は、実施例11の表15に記載のものと同じであった。マウスを1日目及び14日目に免疫した。21日目及び54日目に、CD44hiCD8+細胞のうちのCD62Lloエフェクターメモリー細胞の割合を調べた。その結果を図44A(21日目)及び図44B(54日目)に示す。その結果から、STING免疫増強剤mRNA構築物が、CD8細胞集団をエフェクター記憶表現型(CD62Llo細胞)へ歪ませることが実証される。
実施例20:STINGは、コンカテマーワクチンに対する応答を、様々な抗原:STING比率で免疫増強する
この実施例では、構成的に活性なSTINGなどの免疫増強剤が、コンカテマーワクチンに対するT細胞応答を増強し得るか否かを検討した。クラスI及びクラスIIエピトープをコードするCA−132コンカテマー(実施例11に記載)をコードするmRNA構築物をワクチンとして使用し、そしてクラスI及びクラスIIエピトープに対するT細胞応答に対するmRNA STING構築物の効果を検討した。CA−132及びSTING mRNAは、共処方され同時に送達されるか、または共処方されずに、STING mRNAが遅延送達された。動物に、1日目にプライミング用量を、及び15日目に追加免疫を与えた。脾細胞を21日目に採取した。
STINGを様々な比率でコンカテマーワクチンに添加するときの免疫原性を決定するため、STINGを市販の一流アジュバントと比較するため、免疫原性がSTING投与のタイミングに依存するか否かを決定するため、及びSTING投与時の未処方mRNAの免疫原性を検査するために、種々の材料を試験した。以下の材料/条件を試験した:CA−132(3μg)、ポリI:C(10μg)を有するCA−132(3μg)、MPLA(5μg)を有するCA−132(3μg)、STING(1μg)/CA−132(3μg)、STING(0.6μg)/CA−132(3μg)、STING(0.6μg)/CA−57(3μg)、STING(0.6μg)/CA−132(3μg)(24時間後)、STING(0.6μg)/CA−132(3μg)(48時間後)、STING(0.6μg)/CA−132(3μg)(未処方)、及びSTING(6μg)/CA−132(30μg)(未処方)。CA−57は、5つのクラスIIエピトープのコンカテマーである(それらは全てCA−132に含まれている)。
結果を図45〜47に示す。抗原特異的IFN−γ応答がクラスIIエピトープで調べられたとき、STINGは、mRNAによってコードされたMHCクラスIIエピトープに対する免疫応答を増強することが見出された。STINGは、市販のアジュバントと同等の挙動を示した(用量で5〜10倍の差)。試験した両方の比率は機能したが、1:5のSTING:抗原の比率は1:3の組み合わせよりも良好に機能した(図45)。上記のとおり、また図46に示すように、クラスIエピトープを使用して同様の結果が得られた。同様に、1:5のSTING:抗原比は、クラスIエピトープについての1:3の組み合わせよりも良好に機能することが見出された。
さらに、遅い時点(24時間)でSTINGを投与すると、共送達と同様に免疫原性が増大することが見出された(図47)。
さらなる実験では、52個のマウスエピトープを使用して、異なるSTING:抗原比の効果を調べた。マウスに1日目にプライミング用量、8日目に追加免疫用量を投与し、15日目に脾細胞を採取した。再刺激に対するT細胞応答を、ELISpot及びFACSを使用して評価した。インビトロでのT細胞の再刺激は、コンカテマー内にコードされているエピトープに相当するペプチド配列を用いた。2つのクラスIIエピトープペプチド(CA−82及びCA−83)及び4つのクラスIエピトープペプチド(CA−87、CA−93、CA−113及びCA−90)に対するT細胞応答を調べた。
非常に驚くべきことに、試験した大部分の比率にわたってSTINGを添加すると、抗原単独と比較してT細胞応答が改善され、抗原単独よりも決して悪く実行されないことが見出された。応答性の幅は予想外であった。試験した6つの抗原(エピトープ)のうちの4つについて、10〜30μgの全用量でSTINGを抗原に添加すると、50μg用量の抗原単独の場合よりも一貫してより高いT細胞応答が生じた。したがって、免疫原性を改善するために、STING:抗原の比率に広い鐘型曲線がある。
試験群は以下の表20に示すとおりであった。
クラスIIエピトープのうち、CA−82(図48に示す結果)及びCA−83(図49に示す結果)は、STINGを添加すると、抗原のみの群(最大50μgまでの用量の抗原単独を含む)に対して1:1(STING:抗原)未満の比でT細胞応答が増大することが示された。図49の左パネルは、STINGを添加すると、抗原のみの群と比較して全ての比率でT細胞応答が増大したことが示す。
同様の結果がクラスIエピトープでも見られた。CA−87(図50に示す結果)、CA−93(図51に示す結果)、CA−113(図52に示す結果)、及びCA−90(図53に示す結果)の全てによって、STING:抗原の比率は、全mRNA用量と比較した場合、抗原のみの群と比較してより高いT細胞応答を生じたことが示された。
実施例21:STING媒介免疫増強の倍増
この実施例では、様々な抗原についてSTINGによって媒介される免疫増強の大きさを調べるために、マウスを様々な抗原と組み合わせてSTINGで処置した。最初の一連の実験では、マウスを以下の前述の抗原のうちの1つと組み合わせてSTINGで処置した:(i)HPV16 E7(細胞内);(ii)HPV16 E7(可溶性);(iii)MC38 ADRネオ抗原(細胞内);または(iv)OVA(可溶性)。2.5μgのHPV16 E7抗原または5μgのMC38 ADRネオ抗原を、5μgのSTINGと一緒に投与した。HPV16 E7を、E6と共処方したところ、HPV抗原とADR抗原の両方について1:1という抗原:STING比が得られた。21日目及び50+日目に、脾細胞を採取し、IFN−γを発現するT細胞を、本明細書に記載のように細胞内染色(ICS)によって評価した。その結果は免疫応答の増大倍数として計算して、以下の表21(21日目の結果)及び表22(50+日の結果)にまとめている。
第2の一連の実験では、マウスを実施例20に記載のCA−132コンカテマーワクチンと組み合わせてSTINGで処置し、コンカテマーワクチン内の様々なエピトープに対する抗原特異的T細胞応答をIFN−γ発現についてのELISpot分析によって評価した。その結果は、免疫応答の増大倍数として算出し、以下の表23にまとめている。
その結果から、STINGによって媒介される免疫応答性の倍数増大は抗原に基づいて変動したが、試験されたほとんどの抗原についてSTINGは少なくとも2倍の免疫応答性の増大を誘導し、特定の抗原に関しては、抗原単独(すなわち、抗原+NTFIXmRNA)と比較して免疫応答のさらにそれより大きい増強(例えば、5倍超、10倍超、20倍超、30倍超、50倍超または75倍超の増強)を示したことが実証される。
実施例22:MLKL mmRNA構築物は、細胞死を誘導する
この実施例では、ヒトまたはマウスMLKLのアミノ酸残基1〜180をコードする一連のmmRNA構築物を作製し、それらが細胞死を誘導する能力について試験した。これらの構築物は典型的には、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードした。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾されていた。特定の構築物では、3’UTRは、miR−122及びmiR−142−3p結合部位を含んでいた。エピトープタグを有さない、ヒト及びマウスのMLKL1−180構築物のオープンリーディングフレーム(ORF)のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1327及び1328に示す。配列番号1327のMLKLタンパク質をコードする例示的ヌクレオチド配列を、配列番号1412及び1483に示す。構築物に使用するための例示的5’UTRは、配列番号21及び1323に示される。構築物における使用のための例示的な3’UTRを、配列番号22に示す。構築物中での使用のためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを、配列番号23に示す。
MLKL1−180構築物が細胞死を誘導し得るか否かを決定するために、構築物をHep3Bヒト肝癌細胞にトランスフェクトした。1ウェルあたり20,000個のHeLa細胞を、96ウェルプレートにプレートし、Lipofectamine 2000を使用してmmRNA構築物をそれらにトランスフェクトした。24時間後、細胞死を、CellTiter−Glo(登録商標)発光セル生存率アッセイ(Promega)を使用して測定した。その結果を図54に示しており、これによって、MLKL1−180mmRNA構築物がHeLa細胞の細胞死を誘導できたことが実証されている。
これらの結果は、細胞死の程度を測定するために使用される死滅細胞によって優先的に吸収されるDNA色素である、YOYO−3(登録商標)(Life Technologies)の存在下で、MLKL1−180mmRNA構築物及びHep3B細胞を用いて同様の実験を行うことによって確認された。細胞生存率についてYOYO−3(登録商標)リードアウトシステムを用いて実験を行い、その結果を図55に示しており、それによって、MLKL1−180 mmRNA構築物がHep3B肝癌細胞の細胞死を誘導できたことが確認された。
実施例23:MLKL mmRNA構築物は、ネクロトーシスを引き起こす
この実施例では、MLKL1−180 mmRNA構築物がネクロトーシスを引き起こす能力を調べた。ネクロトーシスは、原形質膜の破裂及びサイトゾル内容物の周辺領域への漏出を特徴とする。これによって、培養培地に漏出する損傷関連分子パターン(DAMP)の検出によるインビトロアッセイについて試験してもよい。
最初の一連の実験では、MLKL1−180 mmRNA構築物を、HeLa細胞にトランスフェクトし(実施例22に記載のとおり)、壊死の指標としてDAMPであるATPの放出を測定した。ATPの放出は、ENLITEN(登録商標)ATPアッセイ(Promega)を用いて検出した。その結果を図56に示しており、これによって、MLKL1−180mmRNA構築物が細胞からのATPの放出を誘導することが実証され、それによってこの構築物がネクロトーシスを引き起こしていることが示される。
ネクトローシスが起こっていることを確認するために、MLKL1−180 mmRNA構築物をHeLa細胞にトランスフェクトし、別のDAMPであるHMGB1の放出をネクロトーシスの指標として測定する第2の一連の実験を行った。HMGB1の放出は、HMGB1 ELISAアッセイを用いて検出した。この実験のセットでは、HeLa細胞(2×104細胞/100μl/ウェル)を、mRNA構築物(200ng/ウェル;1μl容積)、Lipofectamine(0.2μl/ウェル容積)及びOpti−MEM(18.8μL/ウェル容積)を含むトランスフェクション混合物(20μl)を用いてトランスフェクトした。細胞のトランスフェクションの前に、トランスフェクション混合物を、室温で20分間インキュベートし、次いでトランスフェクション混合物を、細胞の上に加えた。培養プレートを軽くたたき、次いで37℃、5%CO2で0、1、3及び6時間インキュベートした。これらの各時点で、110μlの上清を取り出し、プールして1000rpmでスピンダウンした。トランスフェクションあたり50μlの上清を、標準HMGB1 ELISAで使用した。その結果を図57に示しており、これは、MLKL1−180 mmRNA構築物が細胞からのHMGB1の放出を誘導することを実証しており、それによってこの構築物がネクロトーシスを引き起こしていることが示されている。
第3の一連の実験は、通常は小胞体の内腔に存在するが、ネクロトーシスの誘導(マクロファージ及び樹状細胞による食作用を媒介する)後、死にゆく細胞の表面に転位するDAMP分子であるカルレティキュリン(CRT)の細胞表面発現に対するMLKL1−180mmRNA構築物による処理の効果を調べた。細胞を、ニセトランスフェクトし、アポトーシス誘導構築物(「PUMA」)を用いてトランスフェクトするか、またはMLKL1−180mmRNA構築物(huMLKL 4HB(1−180).cHA miR122/142−3p)を用いてトランスフェクトし、細胞表面を、カルレティキュリンの発現のための標準的な方法によって染色した。その結果を図58に示しており、これは、アポトーシス誘導性構築物ではなく、MLKL構築物が細胞表面へのCRTの転座を誘導したことを実証しており、それによってMLKL構築物がネクロトーシスを引き起こしたことがさらに確認される。
第4の一連の実験では、MLKL誘導性細胞死に対する阻害剤ネクロスルホンアミド(NSA)の効果を調べた。NSAは、MLKLを特異的に標的とする阻害剤である。NSAは、MLKL構築物によって誘導される濃度依存方式で細胞死を阻害することが示され(リードアウトとしてYOYO−3(登録商標)を用いて測定;データ示さず)、それによって観察された細胞死はMLKLによって誘導されるネクロトーシスによる細胞死であることが確認された。
実施例24:RIPK3及びGSDMD mmRNA構築物は細胞死を誘導する
本実施例では、RIP3KまたはGSDMDをコードする一連のmmRNA構築物を作製し、それらが細胞死を誘導する能力について試験した。これらの構築物は典型的には、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードした。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾されていた。エピトープタグを有さない、RIP3K構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号1329〜1344に示している。配列番号1339のRIPK3タンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、配列番号1415及び1486に示されている。エピトープタグを有さない、GSDMD構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号1367〜1372に示されている。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを、配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを、配列番号23に示す。
RIPK3またはGSDMD構築物が細胞死を誘導し得るか否かを決定するために、構築物を3つの異なる細胞型:HeLa細胞、B16F10細胞及びMC38細胞にトランスフェクトした。1ウェルあたり5000個の細胞を96ウェルプレートにプレートし、mmRNA構築物を、Lipofectamine 2000を用いてそれらにトランスフェクトした。24時間後、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent−Cell Viability Assay(Promega)を用いて細胞死を測定した。その結果を図59A(HeLa細胞)、図59B(B16F10細胞)及び図59C(MC38細胞)に示し、MLKL(1−180)構築物についてのデータもまた比較の目的のために示されている。この結果によって、RIPK3 mmRNA構築物が、MLKL(1−180)構築物について観察されたものに匹敵する効力で3つ全ての細胞型において細胞死を誘導できたことが実証される。この結果からさらに、GSDMD構築物が、MLKL(1−180)構築物について観察されたものよりも低い効力ではあるが、3つ全ての細胞型において細胞死を誘導できたことが実証される。YOYO−3(登録商標)リードアウトシステムを用いて実施した実験についても同様の結果が観察された。
オリゴマー化するように設計された一連の追加のRIPK3構築物を作製した。これらの構築物は、タンパク質の三量体化及びオリゴマー化をもたらすタンパク質ドメイン(IZ三量体、またはロイシンジッパーキラルドメイン(EE及びRR))を含む。RIPK3の誘導された二量体または三量体形成は、より高分子量のオリゴマー及びネクロトーシスの誘導をもたらす(参考としてYatim et al.,Science,2015及びOrozco et al.,Cell Death Differ,2014を参照のこと)。これらの構築物を、NIH3T3細胞へのトランスフェクションによって細胞死を誘導するそれらの能力について試験した。トランスフェクションの15時間後に、YOYO−3(登録商標)リードアウトシステムを用いて細胞死を測定した。その結果を図60及び表24に示しており、これによって、多量体化RIPK3構築物がNIH3T3細胞の死を誘導することが実証されている。
多量体化RIPK3構築物がDAMP放出を誘導する能力を、構築物によるネクロトーシスの誘導の指標として試験した。B16F10細胞を、実施例23に示される多量体化RIPK3構築物(RIPK3−IZ三量体)、アポトーシス誘導構築物(PUMA)、MLKL1−180構築物(huMLKL.4HB(1−180).cHA miR122/142−3p)のいずれかでトランスフェクトして、DAMP放出またはGFP制御構築物を誘導した。HMGB1の放出は、HMGB1 ELISAアッセイを用いて検出した。その結果を図61に示しており、これにより、多量体化RIPK3構築物がMLKL構築物と同様のレベルでHMGB1の放出を誘導したことが実証される。
別の一連の実験では、阻害剤GSK’872がRIPK3誘導性の細胞死に及ぼす影響を調べた。GSK’872は、RIPK3を特異的に標的とする阻害剤である。GSK’872は、RIPK3構築物によって誘導される濃度依存的方式で細胞死を阻害することが示され(リードアウトとして、YOYO−3(登録商標)を用いて測定:データ示さず)、それによって観察された細胞死はRIPK3によって誘導されるネクロトーシス細胞死であることが確認された。
実施例25:DIABLO mmRNA構築物は細胞死を誘導する
この実施例では、DIABLOをコードする一連のmmRNA構築物を作製し、それらが細胞死を誘導する能力について試験した。これらの構築物は典型的には検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードした。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物が、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾された。エピトープタグを有さないDIABLO構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号165〜172に示される。配列番号169のDIABLOタンパク質をコードする例示的ヌクレオチド配列は、配列番号1416及び1487に示される。構築物に使用するための例示的5’UTRは、配列番号21及び1323に示される。構築物における使用のための例示的な3’UTRは、配列番号22に示される。構築物中の使用のためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを配列番号23に示す。
DIABLO構築物が細胞死を誘導し得るか否かを決定するために、その構築物をSKOV3細胞にトランスフェクトした。96ウェルプレートに1万細胞/ウェルをプレートし、Lipofectamine 2000を用いてmmRNA構築物をそれらにトランスフェクトした。41時間後、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent−Cell Viability Assay(Promega)を用いて細胞死を測定した。その結果を図62に示しており、これによって、多数のDIABLO mmRNA構築物が細胞死を誘導できたことが実証される。
実施例26:カスパーゼ4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−11、Pyrin、NLRP3及びASC mmRNA構築物は、細胞死を誘導する
この実施例では、様々な形態のカスパーゼ−4、カスパーゼ−5、カスパーゼ−11、Pyrin、NLRP3またはASCをコードするmmRNA構築物を調製し、細胞にトランスフェクトしてYOYO−3(登録商標)DNA色素(Life Technologies)を用いて細胞死を誘導する能力を調べて、細胞死の程度を測定した。
最初の一連の実験では、様々なカスパーゼ−4、−5または−11タンパク質をコードする、あるパネルのmmRNA構築物を作製し、それらが細胞死を誘導する能力について試験した。試験した構築物は、(i)全長の野生型カスパーゼ−4、カスパーゼ−5またはカスパーゼ−11;(ii)全長カスパーゼ−4、−5または−11に加えてIZドメイン;(iii)N末端が欠失したカスパーゼ−4、−5または−11に加えてIZドメイン;(iv)全長カスパーゼ−4、−5または−11に加えてDMドメイン;あるいは(v)N末端が欠失したカスパーゼ−4、−5または−11に加えてDMドメイン、のいずれかをコードした。N末端欠失型のカスパーゼ−4及びカスパーゼ−11は、アミノ酸残基81〜377を含み、一方N末端欠失型のカスパーゼ−5は、アミノ酸残基137〜434を含んでいた。これらの構築物は通常、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグ(例えば、FLAG、Myc、CT、HA、V5)もコードした。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾されていた。エピトープタグを有さない、カスパーゼ−4構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号1352〜1356に示されている。エピトープタグを有さない、カスパーゼ−5構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号1357〜1361に示される。エピトープタグを有さない、カスパーゼ11構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号1362〜1366に示される。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRは配列番号23に示す。
カスパーゼ−4、−5及び−11構築物が細胞死を誘導し得るか否かを決定するために、Lipofectamine 2000を用いて構築物をHeLa細胞にトランスフェクトした。24時間後、YOYO−3(登録商標)DNA色素を用いて細胞死を測定した。その結果を図63に示しており、これによって、5つの形態のカスパーゼ−4、カスパーゼ−5及びカスパーゼ−11のmmRNA構築物全てが、HeLa細胞の細胞死を誘導できたことが実証されている。
第2の一連の実験では、様々なPyrin、NLRP3またはASCタンパク質をコードするmmRNA構築物のパネルを作製し、それらが細胞死を誘導する能力について試験した。これらの構築物は通常、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグ(例えば、FLAG、Myc、CT、HA、V5)もコードした。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾されていた。エピトープタグを有さないPyrin構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号1375及び1376に示される。エピトープタグを有さないNLRP3構築物のORFアミノ酸配列は、配列番号1373及び1374に示される。エピトープタグを有さない、ASC構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号1377及び1378に示す。構築物に使用するための例示的5’UTRを配列番号21及び1323に示す。構築物において使用するための例示的な3’UTRを配列番号22に示す。構築物に使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを配列番号23に示す。
Pyrin、NLRP3及びASC構築物が細胞死を誘導できるか否かを決定するために、Lipofectamine 2000を用いて構築物をHeLa細胞にトランスフェクトした。24時間後、YOYO−3(登録商標)DNA色素を用いて細胞死を測定した。その結果を図64に示しており、これは、Pyring、NLRP3及びASC mmRNA構築物がHeLa細胞の細胞死を誘導できたことを実証している。
実施例27:構成的に活性なIRF3及びIRF7 mmRNA構築物は、インターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)活性化する
本実施例では、転写がインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)によって駆動されるレポーター遺伝子を使用して、構成的に活性なIRF3及びIRF7 mRNA構築物がISREを活性化する能力を試験した。構成的に活性なIRF3及びIRF7構築物を調製し、そして以下に記載する。これらの構築物は典型的にはまた、検出を容易にするためにN末端またはC末端のいずれかにエピトープタグもコードした。異なるエピトープタグを試験した(FLAG、Myc、CT、HA、V5)。さらに、全ての構築物は、キャップ1 5’キャップ(7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp)、5’UTR、3’UTR、100ヌクレオチドのポリAテールを含み、そして1−メチル−シュードウリジン(m1Ψ)で完全に修飾された。エピトープタグなしで、S396D点突然変異を含む、代表的な構成的に活性なマウス及びヒトのIRF3構築物のORFアミノ酸配列を、それぞれ配列番号11及び12に示す。これらのIRF3タンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号210及び211、ならびにそれぞれ配列番号1452及び1453に示す。エピトープタグを有さない、代表的な構成的に活性なヒトIRF7構築物のORFアミノ酸配列を、配列番号13〜20に示す。これらのIRF7タンパク質をコードする例示的なヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号212〜219及び配列番号1454〜1461に示す。構築物に使用するための例示的な5’UTRを、配列番号21及び1323に示す。構築物に使用するための例示的な3’UTRを配列番号22に示す。構築物において使用するためのmiR−122及びmiR−142−3p結合部位を含む例示的な3’UTRを配列番号23に示す。
その結果を図65A〜図65Bに示し、これによって、構成的に活性なIRF3構築物(図65A)及び構成的に活性なIRF7構築物(図65B)の両方がレポーター遺伝子発現を刺激することが実証され、それによってこの構築物がインターフェロン感受性応答エレメント(ISRE)を活性化し得たことが示される。
実施例28:パイロトーシス構築物で処理した細胞による炎症性サイトカインの放出に対する初回刺激の効果
本実施例では、細胞による炎症誘発性サイトカインの放出に対する、パイロトーシスmRNA構築物でのトランスフェクションの前に免疫増強剤で細胞を初回刺激することの効果を調べた。
研究のデザインは図66に示されている。1日目に、96ウェルプレートに1ウェルあたり10,000個のHeLa細胞をプレートした。2日目に、細胞を図66に示す免疫増強剤のうちの1つで処理した(構成的に活性なIKKβ構築物は実施例3にさらに記載されている)。3日目に、細胞に、図66に示すカスパーゼ−4、カスパーゼ−5またはカスパーゼ−11のmRNA構築物のうちの1つをトランスフェクトした(カスパーゼ−4、−5及び−11構築物は、実施例26にさらに記載されている)。4日目に、上清を収集し、そして標準的なELISAによって炎症性サイトカインIL−18のレベルについてアッセイした。
その結果を図67に示しており、これによって、特にPEST変異を有する免疫増強剤IL−1αまたは構成的に活性なIKKβ構築物での細胞の初回刺激が、HeLa細胞、特にカスパーゼ−4またはカスパーゼ−5構築物で処理されたものによる炎症誘発性サイトカインの放出を刺激したことが実証される。これらの結果から、炎症誘発性応答を増強するために、免疫原性細胞死を刺激するポリペプチドをコードするmRNA構築物と免疫増強剤とを組み合わせることの利点が実証される。
実施例29:単独で、または免疫増強剤及び/もしくは免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた、実行型mRNAの抗腫瘍効果
この実施例では、マウスのインビボでの腫瘍増殖に対する実行型mRNAの効果を調べた。MLKL、RIPK3またはDIABLOをコードする実行型mRNA構築物を、単独でまたは免疫増強剤(STING mRNA構築物)及び/もしくは免疫チェックポイント阻害剤(抗CTLA4抗体もしくは抗PD−1抗体)と組み合わせて用いた。
第1セットの実験では、MC38結腸癌腫瘍(皮下移植された5×105細胞;処置時の大きさが約100〜120mm3の腫瘍)を有するマウスを、11の処置群に分け、そして、4週間にわたって週に2回(1、4、8、11、17、20、24及び27日)以下のmRNA構築物を用いて腹腔内処置し、特定の群では、以下に示されるような免疫チェックポイント阻害剤(複数可)でも処置されている:(i)陰性対照としてのNT−MOD;(ii)huMLKL.4HB(1−180).cHA miR122/142−3p(12.5μg/動物);(iii)DIABLO(12.5μg/動物);(iv)muRIPK3−IZ三量体(12.5μg/動物);(v)huMLKL.4HB(1−180).cHA miR122/142−3p(12.5μg/動物)+抗CTLA4 9H10(5mg/kg、1日目に腹腔内、2.5mg/kg、4日目及び7日目に腹腔内)ならびに7);(vi)DIABLO(12.5μg/動物)+抗CTLA4 9H10(5mg/kg、1日目に腹腔内、2.5mg/kg、4日目及び7日目に腹腔内);(vii)muRIPK3−IZ.三量体(12.5μg/動物)+抗CTLA4 9H10(5mg/kg、1日目に腹腔内、2.5mg/kgを4日目及び7日目に腹腔内);(viii)NT−MOD+抗CTLA4 9H10(5mg/kg、1日目に腹腔内、2.5mg/kgを4日目及び7日目に腹腔内);(ix)huMLKL.4HB(1−180).cHA miR122/142−3p(12.5μg/動物)+DIABLO(12.5μg/動物);(x)huMLKL.4HB(1−180).cHA miR122/142−3p(12.5μg/動物)+DIABLO(12.5μg/動物)+抗CTLA4 9H10(5mg/kg、1日目に腹腔内、2.5mg/kgを4日目及び7日目に腹腔内);ならびに(xi)抗CTLA4 9H10(5mg/kg、1日目に腹腔内、2.5mg/kgを4日目及び7日目に腹腔内)+抗PD−1RMP1−14(2週間にわたって週に2回5mg/kg腹腔内)(陽性対照として)。
その結果を図68A〜図68Kに示しており、これは、上記の11の処置群に相当しており、この実験の時間経過にわたるマウスの腫瘍容積(mm3)を示す。さらに、最初の腫瘍内注射の10時間後及び24時間後に血清を収集し、ProcataPlex(Affymetrix)を用いて炎症性サイトカインの発現について分析した。サイトカイン分析により、IFN−α、IL−6、TNF−α、GRO α(CXCL1)、MIP−1 α(CCL3)、MIP−1β(CCL4)、及びRANTES(CCL5)のレベルが対照と比較して処置群において上昇したことが明らかになった。
第2のセットの実験では、MC38結腸癌腫瘍(皮下に移植された5×105細胞;処置時の大きさが約100〜120mm3の腫瘍)を有するマウスを、7つの処置群に分け、そして4週間にわたって毎週以下のmRNA構築物で腫瘍内処置した(1、8、15、22日目):(i)陰性対照としてのNT−MOD;(ii)NT−MOD+STING;(iii)MLKL+STING;(iv)Diablo+STING;(v)RIPK3+STING;(vi)MLKL+Diablo+STING;及び(vii)RIPK3+Diablo+STING。全ての群を、1日目に5mg/kg、そして4日目及び7日目に2.5mg/kgで、抗CTLA4を用いて(腹腔内で)処置した。
その結果を図69Aに示しており、これは、上記の7つの処置群に相当しており、実験の時間経過にわたるマウスの腫瘍容積(mm3)を示し、図69Bでは、実験の過程にわたる示された治療群の生存率を示している。さらに、最初の腫瘍内注射の10時間後及び24時間後に血清を収集し、ProcataPlex(Affymetrix)を用いて炎症性サイトカインの発現について分析した。サイトカイン分析により、IFN−α、IL−6、TNF−α、GRO α(CXCL1)、MIP−1 α(CCL3)、MIP−1β(CCL4)、及びRANTES(CCL5)のレベルが対照と比較して処置群において上昇したことが明らかになった。
第3のセットの実験では、MC38結腸癌腫瘍(皮下に移植された5×105細胞)を有するマウスを、3つの処置群に分け、そして4週間にわたり毎週、以下のmRNA構築物を用いて腫瘍内で処置した(1、8、15、22日目):(i)ビヒクル対照;(ii)NT−MOD+抗PD−1;(iii)STING+抗PD−1。抗PD1を、2週間にわたって週に2回、5mg/kgで腹腔内投与した。
その結果を図70Aに示しており、これは、上記の3つの処置群に相当し、実験の時間経過にわたるマウスにおける腫瘍容積(mm3)を示しており、図70Bでは、実験の過程にわたる処置群の生存率を示す。
他の実施形態
本開示をその詳細な説明と併せて開示してきたが、前述の説明は例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
本明細書に記載の全ての引用文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表のまとめ