JP2012143554A - ポリスルホン系中空糸膜及び血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール並びに血小板浮遊液の浄化方法 - Google Patents

ポリスルホン系中空糸膜及び血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール並びに血小板浮遊液の浄化方法 Download PDF

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【課題】血小板製剤に含まれる血漿を除去し、安全性の高い血小板製剤を効率よく得ることを可能にする血小板製剤の浄化方法並びにその浄化方法に使用するポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュールを提供する。
【解決手段】ポリスルホン系中空糸膜の外表面及び内表面に親水性高分子を有し、外表面に存在する孔の平均孔径は2μm以下であり、外表面における親水性高分子の存在率は25〜60質量%であり、内表面における親水性高分子の存在率は30〜60質量%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリスルホン系中空糸膜及び血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール並びに血小板浮遊液の浄化方法に関する。
輸血や血液製剤の製造のために用いられる献血は、全血献血と、成分献血とに大別される。献血により採取された血液等の成分を物理的に分離することで、様々な種類の血液製剤が製造されており、例えば、全血献血により採取された血液からは全血製剤、濃厚赤血球製剤、洗浄赤血球製剤及び血漿分画製剤が、成分献血により採取された特定の血液成分からは濃厚血小板製剤及び洗浄血小板製剤といった血小板製剤並びに血漿分画製剤が、それぞれ製造されている。
血液等の成分を物理的に分離する代表的な方法としては、膜分離法と遠心分離法とが挙げられる。膜分離法は、赤血球と血漿との分離(特許文献1及び2)等に用いられた実績があり、目詰まりや汚れが生じにくい膜(特許文献3)や耐久性の向上した膜(特許文献4)といった改良技術も開発されている。さらには、膜分離法は遠心分離法に比べ装置が小型かつ安価であり、得られる血液製剤に白血球等の血球成分が混入しないという利点があるが、日本国内での献血及び血液製剤の販売をすべて手がける日本赤十字社が遠心分離法によって血液製剤を製造していることもあり、遠心分離法が主たる方法としての地位を確立している。
特開昭62−290469号公報 特開昭54−15476号公報 特開昭61−238834号公報 特開2000−334277号公報
しかしながら、血液疾患や大量出血の際の輸血に用いられる血小板製剤については、患者によっては蕁麻疹や発熱等のアレルギー反応が伴うことが問題となっており、遠心分離法で分離しきれなかった血漿や白血球がこれらアレルギー反応を引き起こすとの指摘がなされていた。
その一方でこれまでに、血小板製剤中に含まれる血漿を分離して血小板製剤を浄化しようという試みは、膜分離法をはじめとして一切なされておらず、血小板製剤浄化のための全く新規な手段が求められているのが現状であった。
そこで本発明は、血小板製剤に含まれる血漿を除去し、安全性の高い血小板製剤を効率よく得ることを可能にする血小板製剤の浄化方法並びにその浄化方法に使用するポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(5)に記載した中空糸膜、中空糸膜モジュール及び血小板浮遊液の浄化方法を提供する。
(1) 外表面及び内表面に親水性高分子を有し、上記外表面に存在する孔の平均孔径は、2μm以下であり、上記外表面における上記親水性高分子の存在率は、25〜60質量%であり、上記内表面における上記親水性高分子の存在率は、30〜60質量%である、ポリスルホン系中空糸膜。
(2) 上記(1)記載のポリスルホン系中空糸膜からなる、血小板浮遊液浄化用中空糸膜。
(3) 上記(2)記載の血小板製剤浄化用中空糸膜を備える、血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール。
(4) 上記(3)記載の血小板製剤浄化用中空糸膜モジュールで血小板浮遊液を外圧式濾過し、血小板以外の成分を濾過する濾過ステップと、上記血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールで濾過されなかった血小板を血小板保存液で回収する回収ステップと、を備える、血小板浮遊液の浄化方法。
(5)上記濾過ステップにおける供給液線速度が、0.1〜0.4cm/秒である、上記(4)記載の浄化方法。
本発明のポリスルホン系中空糸膜は、血小板を活性化させることなく、血小板浮遊液中に含まれる血漿を分離除去することができ、血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールとして使用すれば、高い安全性を確保しながら効率よく血小板浮遊液を浄化することができる。
中空糸膜モジュールを用いた、クロスフロー方式かつ外圧式の血小板浮遊液浄化方法を示す概略図である。 中空糸膜モジュールを用いた、クロスフロー方式かつ内圧式の血小板浮遊液浄化方法を示す概略図である。 中空糸膜の外表面の1000倍画像の一例である。
本発明のポリスルホン系中空糸膜は、外表面及び内表面に親水性高分子を有し、上記外表面に存在する孔の平均孔径は、2μm以下であり、上記外表面における上記親水性高分子の存在率は、25〜60質量%であり、上記内表面における上記親水性高分子の存在率は、30〜60質量%であることを特徴とする。
「ポリスルホン系中空糸膜」とは、ポリスルホン系ポリマーを主たる原料として製膜した中空糸膜をいう。ここで「ポリスルホン系ポリマー」とは、その主鎖に芳香環、スルフォニル基及びエーテル基を有するポリマーをいう。
ポリスルホン系ポリマーとしては、例えば、一般式(I)で示されるポリスルホン、一般式(II)で示されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリアリルエーテルスルホン等が挙げられるが、一般式(I)で示されるポリスルホン又は一般式(II)で示されるポリスルホンが好ましく、中でもn数が50〜80であるものがより好ましい。なお、一般式(I)で示されるポリスルホン等と、他のモノマーとのブロック共重合体や、一般式(I)で示されるポリスルホン等の変性体も「ポリスルホン系ポリマー」に包含される。一般式(I)で示されるポリスルホン等と、他のモノマーとのブロック共重合体における「他のモノマー」由来の構造は、ブロック共重合体全体に対して10質量%以下であることが好ましい。
より具体的なポリスルホンとしては、例えば、ユーデル(登録商標)ポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社)、ビクトレックス(住友化学株式会社)、レーデルA(ソルベイ社)、ウルトラソンE(BASF社)が挙げられる。
ポリスルホン系中空糸膜の「外表面」とは、ストロー状に成形されたポリスルホン系中空糸膜の外側の表面をいい、ポリスルホン系中空糸膜の「内表面」とは、ストロー状の中空糸膜の内側の表面をいう。
「親水性高分子」とは、水溶性の高分子化合物であるか、又は非水溶性であっても静電相互作用や水素結合により水分子と相互作用する高分子をいう。ここで親水性高分子としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール又はポリビニルピロリドン(以下、「PVP」)が挙げられるが、PVPが好ましい。
PVPの重量平均分子量は、親水性を向上させるために10000以上が好ましく、40000以上がより好ましい。
「親水性高分子を有」するとは、親水性高分子がポリスルホン系中空糸膜の外表面又は内表面に共有結合している場合に限られず、製膜プロセスにおいて芯液に親水性高分子溶液を用いた場合や、事後的なコーティングによる親水性高分子の皮膜形成等を含め、親水性高分子が何らかの形でポリスルホン系中空糸膜の外表面又は内表面に留まっている状態をいう。
本発明のポリスルホン系中空糸膜の「外表面に存在する孔の平均孔径」は、分離の対象である血小板、中でもヒト血小板の大きさが3〜4μmであることから、2μm以下である必要があるが、1μm以下であることが好ましい。ヒト血小板に比べて上記の平均孔径が大きい場合には、中空糸膜の内部で目詰まりが生じて濾過効率が低下するばかりか、血小板の活性化につながりかねない。また、上記の平均孔径がヒト血小板と同等の場合には、血小板が中空糸膜の外表面に存在する孔を閉塞することから、やはり濾過効率が低下するばかりか、閉塞を除去しようとすれば血小板の活性化につながりかねない。
一方で、上記の平均孔径が2μm以下であれば、中空糸膜の表面にケーク層が積層し濾過効率が低下するものの、このようなケーク層は血小板を活性化することなく除去できる場合が多い。
「外表面に存在する孔の平均孔径」は、以下の方法により測定及び算出することができる。まず、電界放射型走査型電子顕微鏡(S−800;日立製作所)で中空糸膜の外表面の1000倍画像を撮影する。次に、Matrox Inspector2.2(Matrox Electronic Systems Ltd.)で、孔の部分を白く、それ以外の部分を黒く反転させる画像処理を行い、白い孔の個数(以下、「総開孔数」)及び白い孔の部分のピクセル数の総和(以下、「総開孔面積」)を求め、以下の式1により、画像1枚当たりの平均孔径を算出する。これらの測定作業を中空糸5本につきそれぞれランダムに10箇所ずつ、計50回繰り返し、全50枚の画像についての平均値を「外表面に存在する孔の平均孔径」とする。なお、上記の1000倍画像の撮影条件は以下のとおりである。
[撮影条件]
画像サイズ : 655×740ピクセル
画像解像度 : 0.140845μm/ピクセル
画像面積S : 9615.2μm(縦92.3μm×横104.2μm角)
平均孔径(μm)=総開孔面積/総開孔数 ・・・・式1
本発明のポリスルホン系中空糸膜は、分離対象の液体として粘性を有するヒト血漿を想定していることから、濾過抵抗は低いことが好ましい。ここで、濾過抵抗に大きな影響を与える指標の一つとして、中空糸膜の外表面の開孔率が挙げられる。中空糸膜の外表面の開孔率は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。中空糸膜の外表面の開孔率が10%未満の場合には、濾過効率が低下するばかりか、血小板の活性化につながりかねない。
中空糸膜の「外表面の開孔率」は、上記の「外表面に存在する孔の平均孔径」と同一の方法により測定し、以下の式2により、画像1枚当たりの開孔率を算出する。これらの測定作業を中空糸5本につきそれぞれランダムに10箇所ずつ、計50回繰り返し、全50枚の画像についての平均値を「外表面の開孔率」とする。
開孔率(%)=総開孔面積/画像サイズ×100 ・・・・式2
中空糸膜の外表面の開孔率と同じように濾過抵抗に大きな影響を与える指標として、中空糸膜の透水性能がある。中空糸膜の透水性能は、30mL/hr/Pa/m^以上であることが好ましく、45mL/hr/Pa/m^以上であることがより好ましい。中空糸膜の透水性能が30mL/hr/Pa/m^未満の場合には、濾過効率が低下するばかりか、血小板の活性化につながりかねない。
「中空糸膜の透水性能」は、以下の方法により測定及び算出することができる。まず、プラスチック管に中空糸膜を挿入し、中空糸膜の両端をプラスチック管両端部の内壁に接着固定して、有効長10cmのモジュールを作成する。次に、中空糸膜の外側から1.3×10Paの水圧をかけ、中空糸膜の内側に流出してくる単位時間当たりの水の量を測定し、以下の式3により「中空糸膜の透水性能」を算出する。
透水性能(mL/hr/Pa/m)=QW/(T×P×A) ・・・・式3
QW : 中空糸膜の内側に流出した水の量(mL)
T : 水圧をかけた時間(hr)
P : 水圧(Pa)
A : 中空糸膜の外表面の面積(m
本発明のポリスルホン系中空糸膜の「外表面における親水性高分子の存在率」とは、中空糸膜について、一定の面積の外表面から内表面へと向かう一定の深さを想定した場合、すなわち、中空糸膜の外表面を含む一定の体積を想定した場合において、その体積中に占める親水性高分子の割合をいう。
「外表面における親水性高分子の存在率」は、X線電子分光法(以下、「ESCA」)で測定角を90°として測定を行い、中空糸膜の外表面から約10nmの深さまでにおける炭素原子等の元素の存在比率を調べることによって算出することができる。より具体的には、以下の方法により測定及び算出することができる。
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させたものを測定サンプルとする。サンプルを装置(ESCALAB220iXL)にセットし、X線の入射角に対する検出器の角度を調整して測定角を90°として測定をする。得られたC1s、N1s及びS2pのそれぞれのスペクトルの面積強度並びに装置付属の相対感度係数から、中空糸膜の外表面から約10nmの深さまでにおける炭素原子、窒素原子及び硫黄原子の存在比率を求める。
ここで、例えば、「外表面における親水性高分子」がPVPである場合には、測定角を90°としてESCAで測定をして、中空糸膜の外表面から約10nmの深さまでにおける炭素原子、窒素原子及び硫黄原子の存在比率を調べ、以下の式4により、外表面におけるPVPの存在率を算出する。
外表面におけるPVPの存在率(質量%)=
N×111/(N×111+S×442) ・・・・式4
N : 窒素原子の存在比率
S : 硫黄原子の存在比率
111 : PVPの繰り返し単位数
442 : ポリスルホン系ポリマーの繰り返し単位数
「内表面における親水性高分子の存在率」についても、「外表面における親水性高分子の存在率」と同様の方法により測定及び算出することができる。
「外表面における親水性高分子の存在率」は、中空糸膜の外表面に積層したケーク層の除去が容易になることから、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。その一方で、親水性高分子が過剰に存在すると中空糸膜の外表面で膨潤が生じ、濾過抵抗が大きくなることから、60質量%未満であることが好ましい。
「内表面における親水性高分子の存在率」は、中空糸膜の内表面に付着した血小板の剥離が容易になることから、30質量%以上が好ましく、35質量%がより好ましい。その一方で、親水性高分子が過剰に存在すると中空糸膜の内表面で膨潤が生じ、濾過抵抗が大きくなることから、60質量%未満であることが好ましい。
本発明のポリスルホン系中空糸膜の外表面及び内表面に存在する親水性高分子の存在率は、どちらか一方の表面への特異的な血小板の付着を抑制するために、大きな偏りがないことが好ましい。より具体的には、「内表面における親水性高分子の存在率」を、「外表面における親水性高分子の存在率」で除した値は、0.5〜1.0であることが好ましく、0.6〜0.9であることがより好ましい。なお、この値が1.0を超えることは、中空糸膜の洗浄が不足しており、濾液等に親水性高分子が溶出する可能性が高いことを意味するため、好ましくない。
本発明のポリスルホン系中空糸膜は、例えば、オリフィス型二重円筒型口金を用いて、ポリスルホン系ポリマーを含む製膜原液を外側の筒から、芯液を内側の筒から、それぞれ吐出し、乾式部を通過させた後に凝固溶液中で凝固させて、さらに温水洗浄をすることで製膜することができる。
上記の製膜原液におけるポリスルホン系ポリマーの濃度は、中空糸膜の強度不足や製膜中の圧力上昇を防ぐために、10〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。
上記の芯液とは、ポリスルホン系ポリマーに対する良溶媒をいい、例えば、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」)、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、グリセリン又はこれらの混合溶媒が挙げられる。紡糸安定性を増すために、芯液にPVP、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等を添加しても構わない。
上記の乾式部は、露点30℃に調湿されていることが好ましい。また、乾式部の長さは、中空糸膜の表面の孔径を好適なものにする一方で、製膜中の糸揺れを防ぐために、10〜250mmが好ましい。
上記の製膜方法によれば、中空糸膜は湿潤状態で得られるが、このままでは中空糸膜の透水性能が不安定であることから、乾燥が必要となる。この乾燥は、得られた中空糸膜を巻き取った後に、これを一定の長さに切断してから行うことが好ましい。乾燥温度は、水分を蒸発させることから100℃以上であることが好ましく、ポリスルホン系ポリマーのガラス転移点を超えないよう、180℃以下であることが好ましい。
本発明のポリスルホン系中空糸膜の中空糸膜外径は、中空糸膜本数を増やすことなく一定の有効中空糸膜面積を大きくするために、300μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましい。
上記の「中空糸膜外径」とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の外径をレーザー変位計(LS5040T;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して求めた平均値をいう。なお、「中空糸膜内径」とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の膜厚をマイクロウォッチャーの1000倍レンズ(VH−Z100;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して平均値aを求め、以下の式5により算出した値をいう。
中空糸膜内径(μm)=中空糸膜外径−2×a ・・・・式5
本発明のポリスルホン系中空糸膜は、血小板浮遊液中に含まれる保存液を分離して血小板浮遊液を浄化するために、好適に用いることができる。ここで「血小板浮遊液」とは、赤血球及び白血球を含まない、血小板と保存液との混合液であり、血小板が1mL当たり1億個以上含まれる液体をいう。
血小板浮遊液としては、例えば、血小板製剤が挙げられる。ここで血小板製剤とは、血小板と、保存液である血漿との混合液であって、血小板の量的又は質的低下に基づいた出血の予防や治療等を目的とする血小板輸血に用いられる血小板濃厚液をいう。なお、血小板製剤には「1単位当たり0.2×1011個以上の血小板を含む」という規格単位が定められており、例えば、10単位の血小板製剤は約200mLの容量中に2.0×1011個以上の血小板数を含むものである。
本発明の血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールは、本発明のポリスルホン系中空糸膜、すなわち、血小板浮遊液浄化用中空糸膜を備えることを特徴とする。
本発明の血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールは、本発明の血小板浮遊液浄化用中空糸膜の必要本数が束ねられて筒状のケースに挿入され、中空糸膜束の両端が、筒状のケースの両端部の内壁に接着固定すなわちポッティングされていることが好ましい。
「血小板浮遊液浄化用中空糸膜の必要本数」を把握するための指標として、中空糸膜モジュールに挿入、ポッティングされる血小板浮遊液浄化用中空糸膜の充填率が挙げられる。中空糸膜束の両端が、筒状のケースの両端部の内壁にポッティングされている中空糸膜モジュールの「充填率」は、以下の式6及び式7により算出されるが、10〜50%であることが好ましい。充填率が低すぎると濾過効率が低下する一方で、充填率が高すぎると線速度が大きくなり、血小板の活性化につながりかねない。
充填率(%)={π×(中空糸膜外径/2)×中空糸本数}/B ・・・・式6
B=π×(筒状のケースの内径/2) ・・・・式7
本発明の血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールの中空糸膜面積は、ケーク層が膜表面に広く積層して血小板の回収率が低減することを防ぐため、1.0m未満であることが好ましく、0.8m以下であることがより好ましい。なお、中空糸膜モジュールの容積は、取扱い容易性や作業性を考慮すると、血小板製材用血液バックの20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
本発明の血小板浮遊液の浄化方法は、血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールで血小板浮遊液を外圧式濾過し、血小板以外の成分を濾過する濾過ステップと、血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールで濾過されなかった血小板を血小板保存液で回収する回収ステップと、を備えることを特徴とする。
上記の「濾過ステップ」における濾過の方式としては、外圧式及び内圧式の2つの方式が考えられるが、本発明の血小板浮遊液の浄化方法においては外圧式濾過をすることが要件となる。ここで、外圧式濾過とは、中空糸の外側から血小板浮遊液を供給し、中空糸の内側から濾液を回収する方式の濾過をいう。一方で、内圧式濾過ステップとは、中空糸の内側から血小板浮遊液を供給し、中空糸の外側から濾液を回収する方式の濾過をいう。
内圧式濾過であれば、中空糸膜の中空部の断面積次第で濾過抵抗等が自ずと定まるというメリットがあるが、濾過抵抗が大きく、これが血小板の活性化につながりかねない。なお、外圧式の濾過ステップにおいては、オリフィス又はドシフローの使用や、中空糸膜モジュールを緩やかな振盪等により、濾過流量を調節することも有効である。
上記の外圧式の濾過ステップにおける供給液線速度は、0.1〜0.4cm/秒であることが好ましい。ここで、供給液線速度とは、以下の式8及び式9により算出される値をいう。なお、上記の内圧式の濾過ステップにおける供給液線速度を算出する場合には、式9における中空糸膜外径を、中空糸膜内径に置き換えればよい。
供給液線速度(cm/秒)=(C/t)/(D×中空糸本数) ・・・・式8
C : 供給した血小板浮遊液の液量
t : 濾過時間
D=π×(中空糸膜外径/2) ・・・・式9
線速度が低すぎると、積層したケーク層を剥離する効果が低くなる一方で、線速度が高すぎると、血小板の活性化につながりかねない。
上記の濾過ステップにおいて、本発明の血小板浮遊液浄化用中空糸膜の表面に積層したケーク層を効果的に剥離するためには、中空糸膜の表面に負荷を与えるずり速度を、30〜500秒−1の範囲とすることが好ましい。ここで、ずり速度とは、中空糸膜の表面に対しずり応力を与えるための、血小板浮遊液の流動速度をいい、より具体的には、以下の式10〜式13により算出される値をいう。なお、上記の内圧式の濾過ステップにおける供給液線速度を算出する場合には、式12及び式13における中空糸膜外径を、中空糸膜内径に置き換えればよい。
ずり速度(1/秒)=4×E/F ・・・・式10
E : 供給液線速度(cm/秒)
F : 相当半径(cm)
F=2×(G/H) ・・・・式11
G : 管路の断面積(cm
H : 管路断面の流体に接する部分の長さ(浸辺長)(cm)
G=B−{π×(中空糸膜外径/2)×中空糸本数} ・・・・式12
H=
(中空糸膜外径×π×中空糸本数)+筒状のケースの内径×π ・・・・式13
ずり速度が低すぎると、積層したケーク層を剥離する効果が低くなり、血小板回収率の低下や濾過時間の増加といった問題が生じる一方で、ずり速度が高すぎると、血小板の活性化につながりかねない。
血小板浮遊液、濾過ステップで得られた濾液及び濾過ステップ及び回収ステップで得られた回収液のそれぞれに含まれる血小板数は、全自動血球測定器(Celltacα(MEC−6318);日本光電工業株式会社)により測定することができる。また、血小板回収率は、以下の式14により算出される。
血小板回収率(%)=(I+J)/K×100 ・・・・式14
I : 濾液に含まれる血小板数
J : 回収液に含まれる血小板数
K : 血小板浮遊液に含まれる血小板数
濾過ステップ及び回収ステップによる血小板の活性化を示す指標として、CD62P陽性率の増加率が挙げられる。CD62Pは、血小板内の分泌顆粒膜に内在する分子量140kDaの糖蛋白質である。血小板が外部からの刺激等で活性化されると、CD62Pが血小板の細胞膜表面に移行して発現するため、CD62P陽性となった血小板の割合が、血小板の活性化の度合いを示す指標となる。
CD62P陽性率は、フローサイトメーターを用いて、以下の方法により測定することができる。被測定試料に活性化非依存性の血小板特異マーカーに対する抗体であるCD61抗体及びマウスIgGを加えたサンプル(以下、「サンプルA」)と、被測定試料にCD61抗体及びCD62P抗体を加えたサンプル(以下、「サンプルB」)と、をそれぞれ用意する。サンプルAを用いて、フローサイトメーターで散乱光パターンによる血小板ゲートに加えて、CD61の蛍光標識を用いて、血小板をゲートする。次に、血小板用マウスIgGの蛍光標識を用いて、血小板の0.5±0.1%が超過するように、抗体と反応した血小板をゲートする。この時のゲートを固定したまま、サンプルAをサンプルBに置き変えて同様の測定を行い、固定されたゲートを超過した血小板数の割合から、CD62P陽性率を決定する。なお、CD62P陽性率の増加率は、以下の式15により算出される。
CD62P陽性率の増加率(%)=L/M×100 ・・・・式15
L : 濾液と回収液との混合液のCD62P陽性率
M : 血小板浮遊液のCD62P陽性率
また、高濃度の血小板溶液(血小板濃厚液)の品質を簡便かつ短時間に把握できる有用な方法として、スワーリング検査が挙げられる。ここでスワーリングとは、濃厚血小板の容器を光にかざしてゆっくりと撹拌すると、渦巻き状のパターンが見られる現象をいう。活性化されていない血小板の形態は円盤状であることから、撹拌によって円盤状血小板が光を一様に屈折させて光散乱現象が生じ、スワーリングが観察される。一方で、活性化により血小板の形態が変化すると、光散乱現象は生じず、スワーリングは低下し消失する。
血小板浮遊液として血小板製剤を浄化した場合、濾過ステップにより得られる濾液は血漿であることから、これを血漿分画製剤として利用することも可能である。得られた濾液を血漿分画製剤として利用することの可否を判断するための指標として、血液凝固第VIII因子活性変化率が挙げられる。血液凝固第VIII因子活性変化率が80%以上であれば、得られた濾液は血漿分画製剤として利用可能であると判断できる。なお、血液凝固第VIII因子活性は、測定キット(ベリクロームFXIII;シスメックス株式会社)を用いたAPPT法により測定することができる。なお、血液凝固第VIII因子活性変化率は、以下の式16により算出される。
血液凝固第VIII因子活性変化率(%)=V/W×100 ・・・・式16
V : 濾液の血液凝固第VIII因子活性
W : 濾過前の血小板製剤の血液凝固第VIII因子活性
以下、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
15部のユーデル(登録商標)ポリスルホン(P3500;ソルベイ社)、8部のPVP(K90;ISP社)、75部のDMAC及び2部の水からなる混合物を、90℃で混合溶解した後に、50℃に保温したものを製膜原液とした。また、80部のDMAC及び20部の水からなる混合溶液に、30部のPVP(K30;ISP社)を加え混合溶解したものを芯液とした。
外径1.0mm/内径0.7mmのオリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒から製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、30℃に設定した長さ80mmの乾式部を通過させた後、90部の水及び10部のDMACからなる混合溶液を入れた90℃の凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに80℃の温浴で温水洗浄してからカセ枠に巻き取り、湿潤状態の中空糸膜を得た。なお、製膜速度を40m/分としたところ、中空糸膜内径は300μm、中空糸膜の膜厚は80μmとなった。
得られた湿潤状態の中空糸膜を0.25mの長さに切断して小分けし、90℃の温浴に30分間浸漬して温水洗浄した後、170℃の乾熱乾燥機で10時間乾燥を行い、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の透水性能、外表面に存在する孔の平均孔径、外表面における親水性高分子の存在率及び内表面における親水性高分子の存在率をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
得られた中空糸膜から、以下のようにして中空糸膜モジュールを作製した。まず、φ18×220mmの筒状のプラスチックモジュールに、上記製膜操作により得られた260本の中空糸膜の束を挿入し、これを60質量%グリセリン水溶液に浸漬した後に、50℃で一昼夜乾燥した。続いて、遠心器にセットしたプラスチックモジュールの両端にウレタン樹脂すなわちポッティング5mLをそれぞれ注入し、60G/15分で回転させた(1度目のポッティング)。その15分後に、さらにプラスチックモジュールの両端にポッティング材10mLをそれぞれ注入し、再び60G/15分で回転させて(2度目のポッティング)、中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールの充填率及び中空糸膜面積をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
作製した中空糸膜モジュールを用いて、血小板製剤の浄化を行った。具体的には、まず、1Lの大塚蒸留水に4gの塩化ナトリウム、0.4gの塩化カリウム、0.1gの塩化マグネシウム、3.4gの酢酸ナトリウム、2.9gのクエン酸ナトリウム及び9.9gのリン酸ナトリウムを溶解し、血小板保存液であるPAS−IIIMを調整した。また、浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P陽性率及び血小板製剤の血液凝固第VIII因子活性を、予め測定しておいた。
図1に示すように、中空糸膜モジュール20が備える複数のポートの内、外圧式の濾過が可能となるような3箇所のポートをそれぞれ血小板製剤の供給ポート21、濾液の排出ポート23及び血小板の回収ポート24とし、血小板製剤の供給ポート21に血小板製剤用血液バック10を、濾液の排出ポート23に濾液回収用血液バック30を、血小板の回収ポート24に血小板回収用血液バック40を、それぞれ接続した。
血小板製剤用血液バック10に、210mLの血小板製剤(10単位)を入れて、血小板製剤用時血液バック10と、血小板製剤の供給ポート21との高低差が140cmになるように血小板製剤用血液バック10を設置し、その静水圧によって血小板製剤の供給ポート21から血小板製剤を供給し、クロスフロー方式かつ外圧式の濾過、すなわち濾過ステップを実施した。なお、濾液の排出ポート23から留出した液体すなわち血漿を濾液とし、血小板の回収ポート24から留出した液体を回収液とした。
血小板製剤用血液バック10に入れた血小板製剤の全量が濾過された後に、濾液の排出ポート23を封止して、血小板製剤の供給ポート21から140mLの血小板保存液を供給し、中空糸膜モジュール20の内部に残存した血小板の回収、すなわち回収ステップを実施した。なお、血小板保存液はすべて血小板の回収ポート24から留出するが、これも回収液として、濾過ステップで得られた回収液と混合した。
上記の濾過ステップに要した時間すなわち濾過時間は44分であり、平均流速は4.9mL/分、供給液線速度は0.18cm/秒であり、ずり速度は66秒−1であった。
濾過ステップで得られた濾液中の血小板数と、最終的に得られた回収液中の血小板数を測定し、血小板回収率を算出した。結果を表1に示す。また、最終的に得られた回収液のCD62P陽性率を測定し、CD62P陽性率の増加率を算出した。結果を表1に示す。さらに、得られた濾液の血液凝固第VIII活性を測定し、血液凝固第VIII因子活性変化率を算出した。結果を表1に示す。
血小板製剤の浄化の結果得られた回収液のCD62P陽性率は若干上昇したものの、血小板輸血に用いるために何ら問題のないレベルであった。また、回収液についてスワーリング検査を実施したところ、スワーリングが観察された。
なお、上記の濾過ステップに用いた血小板製剤用血液バック10の容積は1Lであったため、中空糸膜モジュール20の容積は、血小板製剤用血液バック10の6%であったことになる。
(実施例2)
実施例1と同一の方法で中空糸膜を得て、中空糸膜モジュールを作製した。
血小板製剤の量を205mLにし、さらに、中空糸膜モジュール20を振盪器に載せ、80rpmの速度で緩やかに振盪を継続した以外は、実施例1と同一の方法で血小板製剤の浄化を行った。濾過時間は21分であり、平均流速は9.8mL/分、供給液線速度は0.38cm/秒であり、ずり速度は136秒−1であった。
実施例1と同様に、血小板回率及びCD62P陽性率の増加率を算出した。回収液のCD62P陽性率は若干上昇したものの、血小板輸血に用いるために何ら問題ないレベルであった。また、回収液についてスワーリング検査を実施したところ、スワーリングが観察された。
(比較例1)
乾熱乾燥機の温度設定を100℃に変更した以外は、実施例1と同一の方法で中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の透水性能、外表面に存在する孔の平均孔径、外表面における親水性高分子の存在率及び内表面における親水性高分子の存在率をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
筒状のプラスチックモジュールのサイズをφ10×120mmに、中空糸膜束を構成する中空糸膜の本数を200本に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同一の方法で中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールの充填率及び中空糸膜面積をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
血小板製剤用血液バック10の容量を250mLにし、そこへ35mLの血小板製剤(血小板数としては10単位相当)を入れた以外は、実施例1と同一の方法で血小板製剤の浄化を行った。濾過時間は4分であり、平均流速は8.8mL/分、供給液線速度は0.44cm/秒であり、ずり速度は566秒−1であった。
実施例1と同様に、血小板回率及びCD62P陽性率の増加率を算出した。回収液のCD62P陽性率は若干上昇したものの、血小板輸血に用いるために何ら問題ないレベルであった。しかしながら、血小板回収率は低く、満足できるものではなかった。
なお、上記の濾過ステップに用いた血小板製剤用血液バック10の容積は250mLであったため、中空糸膜モジュール20の容積は、血小板製剤用血液バック10の3%であったことになる。
(比較例2)
16部のユーデル(登録商標)ポリスルホン樹脂(P3500;ソルベイ社)、2部のPVP(K90;ISP社)、4部のPVP(K30;ISP社)、75部のDMAC及び2部の水からなる混合物を、90℃で混合溶解した後に、50℃に保温したものを製膜原液とした。また、70部のDMAC及び30部の水からなる混合物を、芯液とした。
外径0.35mm/内径0.25mmのオリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒から製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、30℃に設定した長さ240mmの乾式部を通過させた後、90部の水及び10部のDMACからなる混合溶液を入れた40℃の凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに80℃の温浴で温水洗浄してから150℃でオンライン乾燥を行い、カセ枠に巻き取って中空糸膜を得た。なお、製膜速度を30m/分としたところ、中空糸膜内径は240μm、中空糸膜の膜厚は70μmとなった。
得られた中空糸膜の透水性能、外表面に存在する孔の平均孔径、外表面における親水性高分子の存在率及び内表面における親水性高分子の存在率をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
中空糸膜束を構成する中空糸膜の本数を400本に変更した以外は、実施例1と同一の方法で中空糸膜モジュールを作製した。作製した中空糸膜モジュールの充填率及び中空糸膜面積をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
血小板製剤の量を205mLにした以外は実施例1と同一の方法で血小板製剤の浄化を行ったところ、濾過時間は120分以上となり、濾過ステップを完遂することが困難になった。平均流速は1.7mL/分、供給液線速度は0.06cm/秒であり、ずり速度は29秒−1であった。濾過ステップに長時間を要した原因としては、血小板による中空糸膜の目詰まりが考えられる。さらに、濾過ステップを中止した後に中空糸膜モジュールの内部を観察したところ、一部に凝集塊のような塊が存在していた。
(比較例3)
15部のポリメチルメタクリレート(パラスチレンスルホン酸/カチオン性ポリマー=3/2;以下、「PMMA」)及び85部のジメチルスルホキシド/グリセリン混合液(ジメチルスルホキシド/グリセリン=85/15)からなる混合物を、120℃で溶解した後に、105℃に保温したものを製膜原液とした。また、93部のジメチルスルホキシド及び7部の水からなる混合物を、芯液とした。
外径0.9mm/内径0.65mmのオリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒から製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、30℃に設定した長さ100mmの乾式部を通過させた後、90部の水及び10部のジメチルスルホキシドからなる混合溶液を入れた90℃の凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに80℃の温浴で温水洗浄してから75質量%のグリセリン水溶液を付与し、カセ枠に巻き取って中空糸膜を得た。なお、製膜速度を50m/分としたところ、中空糸膜内径は300μm、中空糸膜の膜厚は90μmとなった。
得られた中空糸膜の透水性能、外表面に存在する孔の平均孔径を算出した。結果を表1に示す。
中空糸膜束を構成する中空糸膜の本数を250本に変更した以外は、実施例1と同一の方法で中空糸膜モジュールを作製した。作製した中空糸膜モジュールの充填率及び中空糸膜面積をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
実施例1と同一の方法で血小板製剤の浄化を行ったところ、濾過時間は120分以上となり、濾過ステップを完遂することが困難になった。平均流速は1.8mL/分、供給液線速度は0.06cm/秒であり、ずり速度は24秒−1であった。濾過ステップに長時間を要した原因としては、血小板による中空糸膜の目詰まりが考えられる。さらに、濾過ステップを中止した後に中空糸膜モジュールの内部を観察したところ、一部に凝集塊のような塊が存在していた。
(比較例4)
実施例1と同一の方法で中空糸膜を得て、中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールを用いて、血小板製剤の浄化を行った。
図2に示すように、中空糸膜モジュール60が備える複数のポートの内、内圧式の濾過が可能となるような3箇所のポートをそれぞれ血小板製剤の供給ポート65、濾液の排出ポート68及び血小板の回収ポート67とし、血小板製剤の供給ポート65に血小板製剤用血液バック50を、濾液の排出ポート68に濾液回収用血液バック80を、血小板の回収ポート67に血小板回収用血液バック70を、それぞれ接続した。
血小板製剤用血液バック50に、200mLの血小板製剤(10単位)を入れて、血小板製剤用時血液バック50と、血小板製剤の供給ポート65との高低差が140cmになるように血小板製剤用血液バック50を設置し、その静水圧によって血小板製剤の供給ポート21から血小板製剤を供給し、クロスフロー方式かつ内圧式の濾過、すなわち濾過ステップを実施した。なお、濾液の排出ポート68から留出した液体を濾液とし、血小板の回収ポート67から留出した液体を回収液とした。
しかしながら、濾過時間は120分以上となり、濾過ステップを完遂することが困難になった。平均流速は4.5mL/分、供給液線速度は0.41cm/秒であり、ずり速度は110秒−1であった。濾過ステップに長時間を要した原因としては、血小板による中空糸膜の目詰まりが考えられる。
(比較例4)
中空糸膜束を構成する中空糸膜の本数を520本に変更した以外は、実施例1と同一の方法で中空糸膜モジュールを作製した。作製した中空糸膜モジュールの充填率及び中空糸膜面積をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
比較例4と同じように内圧式濾過が可能となるように接続した。
血小板製剤の量を200mLにした以外は実施例4と同一の方法で血小板製剤の浄化を行ったところ、濾過時間は80分であった。平均流速は2.5mL/分、供給液線速度は0.11cm/秒であり、ずり速度は30秒−1であった。しかし、濾過ステップを中止した後に中空糸膜モジュールの内部を観察したところ、一部に凝集塊のような塊が存在していた。この結果は、内圧式濾過ではたとえ供給線速度を抑制したとしても、血小板が活性化されることを示すものと考えられる。
本発明は、医療分野において血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールとして用いることができる。
10・・・血小板浮遊液用血液バック、20・・・血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール、21・・・血小板浮遊液の供給ポート、24・・・血小板の回収ポート、23・・・濾液の排出ポート、30・・・濾液回収用血液バック、40・・・血小板回収用血液バック、50・・・血小板浮遊液用血液バック、60・・・血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール、65・・・血小板浮遊液の供給ポート、67・・・血小板の回収ポート、68・・・濾液の排出ポート、70・・・血小板回収用血液バック、80・・・血漿回収用血液バック

Claims (5)

  1. 外表面及び内表面に親水性高分子を有し、
    前記外表面に存在する孔の平均孔径は、2μm以下であり、
    前記外表面における前記親水性高分子の存在率は、25〜60質量%であり、
    前記内表面における前記親水性高分子の存在率は、30〜60質量%である、
    ポリスルホン系中空糸膜。
  2. 請求項1記載のポリスルホン系中空糸膜からなる、血小板浮遊液浄化用中空糸膜。
  3. 請求項2記載の血小板製剤浄化用中空糸膜を備える、血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュール。
  4. 請求項3記載の血小板製剤浄化用中空糸膜モジュールで血小板浮遊液を外圧式濾過し、血小板以外の成分を濾過する濾過ステップと、
    前記血小板浮遊液浄化用中空糸膜モジュールで濾過されなかった血小板を血小板保存液で回収する回収ステップと、
    を備える、血小板浮遊液の浄化方法。
  5. 前記濾過ステップにおける供給液線速度が、0.1〜0.4cm/秒である、請求項4記載の浄化方法。
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