本発明は、効率のよい周波数変換を有するレーザシステムに関する。
そのようなレーザシステムは、欧州特許出願公開第1442507号明細書から知られており、該明細書は、基本周波数(波長)のためのレーザキャビティのミラーのうちの1つが周波数変換のための非線形媒体を組み込んだ共振反射器によって実現される、二重増強キャビティ内周波数変換を利用したレーザシステムを記載している。この知られたレーザシステムは、基本周波数の第2または第3高調波のレーザ光を効率良く出力する。
350nm近傍のスペクトル領域における紫外レーザ光は、工業、科学、および、特に医学および生命工学の分野で用いられてきた。そのような紫外レーザ発光は、非線形周波数変換、たとえば、ネオジムドープレーザ結晶の第3高調波発生(THG)により得ることができる。この場合、周波数変換の第1の工程において、基本周波数のレーザビームは、第1の非線形結晶において、周波数が二倍化される(第2高調波発生−SHG)。次に、第2の工程において、生じた基本周波数の第2高調波のビームと基本周波数の残留レーザビームとが、第2の非線形結晶において、基本周波数の第3高調波のレーザビームを生成するために組み合わせられる。
図1は、第3高調波発生(THG)のためのレーザシステムを示す。複数のミラー(20,31,32,36)によって形成されたレーザ共振キャビティにおいて、活性媒体21は、ポンプ源34によってポンピングされる。そのような配置において、4つのミラー(20,31,32,36)は、レーザの基本周波数(ω)において、高反射性とされる。レーザ共振キャビティ10において生成された基本周波数(ω)のレーザビームは、第2高調波(2ω)のレーザ光を生成するために、第1の非線形結晶30において、周波数二倍化を受ける。基本周波数(ω)のレーザビームおよび第2高調波(2ω)のレーザビームは、第3高調波(3ω)のレーザビームを生成するために、第2の非線形結晶50において、特別な位相整合条件のもとで相互作用する。第3高調波(3ω)のレーザビームは、レーザシステムの第3高調波(3ω)の出力として、ミラー32を介して透過させられる。ネオジムドープ活性媒体21に関して、基本周波数(ω)に対応する波長は、約1.053μm〜約1.075μmの範囲にある。第3高調波(3ω)に対応する波長は、約351nm〜約357nmの範囲にある。第3高調波発生についての詳細については、たとえばW.Koechner,Solid State Laser Engineering,第6版,Springer-Verlag,2006年,第625〜629頁を参照することができる。
上述のTHGスキームにおいて、基本周波数(ω)のレーザビームの唯一の利用可能な損失は、第2の高調波周波数(2ω)および第3の高調波周波数(3ω)への非線形変換による損失である。通常、この損失は、低または中程度の出力(ミリワットから数ワットの範囲内)を有する連続波(CW)レーザの場合、キャビティ往復につき、約1%以下である。結果として、全キャビティ損失は、レーザキャビティの内部部分により支配され、したがって全体のレーザ効率(ポンプ出力に対する第3高調波出力)をかなり小さくする。
同一のレーザキャビティ内の第2高調波および第3高調波発生プロセスのための非線形結晶内における異なる位相整合条件は、さらなるキャビティ損失をまねく相反する位相整合の技術的実現を意味しているために、THGの段階における周波数変換効率は、SHGの段階における周波数変換効率よりも非常に低く、通常は10%をはるかに下回る低いシステム全体の効率(レーザに与えられたポンプ出力に対する第3高調波出力)をもたらす。
レーザ光の第3高調波発生によって、約350nmの紫外光を生成するための上記構成の別の欠点は、小さな環境変化、熱的影響、および空気による散乱などに対する、レーザ出力の高い感受性である。キャビティ損失を小さな値に維持するとき、小さな外乱は、利用可能な損失および内部の損失の間のバランスを著しく変化させ得、レーザ出力の強い変動をもたらす。このことは、レーザの安定性を低下させ、安定化対策および使用されるレーザ部品における厳しい許容誤差を必要する。
さらに別の欠点は、ネオジム系レーザシステムの、351nm以下での、第3高調波の制限された波長選択性である。波長351nm以下のレーザビームは、いくつかの生物学的応用、たとえば、解析溶液のための免疫アッセイとしてのトリスビピリジンにおいて、たとえばEu3+を用いる蛍光法による試験/診断工程において、アッセイ量を最小化するために必要とされる。
潜在的に、350nm近傍のスペクトル領域におけるレーザ光は、(室温において)基本波長694.3nmを発光し、したがってSHGによって波長347.15nmのレーザ光を提供する、ルビーレーザからの発光の第2高調波発生によっても可能である。しかしながら、これまでに知られたルビーレーザは、ポンプ源として、高圧放電閃光灯を用いる。後者は、基本波長においてさえも非常に低い「ポンピング対出力」効率を有し、連続波(CW)動作のためにはまったく適していないけれども、ルビー活性媒体のために要求されるポンピング密度を、パルス領域においてのみ、提供することができる。
本発明の主要な目的は、350nm近傍のスペクトル領域内のレーザ光の発生効率を改善することである。本発明のさらなる目的は、非効果的で高価な閃光灯ポンピングの使用を排除するルビーレーザからの基本波長発光の第2高調波変換によって、350nm近傍領域におけるレーザ光の効率のよい発生を提供すること、および、特に、効率のよい、CWおよびパルス双方の、全固体レーザ技術に基づいている、ルビーレーザを提供することである。
先ず、システムおよび方法は、レーザ光の効率のよい発生のために提供される。本発明のこの態様のために、第1の活性媒体と、第1の基本周波数出力を発生するための第1の活性媒体をポンピングするための固体ポンプ源と、第1の基本周波数出力を受けて、周波数変換された光出力を発生する周波数変換手段とを含む第1の光キャビティ、および第2の周波数出力を生成するためのポンプ源として、周波数変換された光出力を受ける第2の活性媒体を含む第2の光キャビティを含む、レーザシステムが提供される。
好ましい実施形態において、本発明は、第2の活性媒体として、ルビー系材料を用いる。活性レーザ結晶、ガラス、または、好ましくはネオジムもしくはイッテルビウムドープ光ファイバに基づく、近赤外ダイオード励起固体(DPSS)レーザからの第2高調波でルビーをポンピングすることによって、ルビー活性結晶からのレーザ光の発光は、約694nm(R線転移)のものとなる。これらのDPSSレーザは、1030nm〜1080nmの範囲内の基本波長、たとえば、Nd−ドープYAGまたはバナジウム酸塩結晶の場合、1064nmの基本波長を発光し、したがってポンピングのためのルビーの「緑」帯域吸収に整合する515nm〜540nmの範囲内の第2高調波発光を提供し、よってルビーレーザが全固体レーザ技術の上に構成されることを可能にする。
さらに、NdまたはYbドープ活性媒体に基づく近赤外DPSSからの第2高調波出力によってポンピングされる、第2の複合光キャビティにおけるルビー系活性レーザ媒体からの放射の第2高調波変換によって、紫外レーザ光を生成するためのシステムおよび方法が提供される。
システム全体の効率のために、ルビーの「緑」吸収帯域に整合する第2高調波の発生は、それ自体、可能な限り効率がよいことが重要である。この特別な問題を目標として、本発明によって、第1の複合光キャビティからの第2高調波波長の出力によって第2のレーザキャビティ内に配置されたルビー結晶をポンピングすることによって、694.3nmのルビーの基本波長の光を発生するためのシステムおよび方法が提供される。特に、限定を目的とするものではないが、第1の複合レーザキャビティは、たとえば欧州特許出願公開第1442507号明細書に記載された、DENICAFCレーザ技術により設計されてもよい。
さらに、本発明の別の態様において、活性レーザ媒体からの発光の第2高調波変換によって紫外レーザ光を発生するためのシステムおよび方法であって、活性レーザ媒体が、好ましくはルビー系であって、第1の複合レーザキャビティにおける、好ましくはNdまたはYbドープ活性媒体からの第2高調波波長の出力によってポンピングされる、システムおよび方法が提供される。レーザシステムは、第1の複合光キャビティであって、第1の複合光キャビティの低レベル循環する第1の基本周波数出力の第1のキャビティ部分と、第1の複合光キャビティの高レベル循環する第1の基本周波数出力の第2のキャビティ部分とを有する第1の複合光キャビティと、第1の複合光キャビティの第1のキャビティ部分にある好ましくはネオジムドープ活性媒体と、第1の複合光キャビティの第2のキャビティ部分にある少なくとも1つの第1の非線形結晶と、第2の複合光キャビティであって、第2の複合光キャビティの低レベル循環する第2基本周波数出力の第1のキャビティ部分と、第2の複合光キャビティの高レベル循環する第2基本周波数出力の第2のキャビティ部分とを有する第2の複合光キャビティと、第2の複合光キャビティの第1のキャビティ部分にある好ましくはルビー系である活性媒体と、第2の複合光キャビティの第2のキャビティ部分にある少なくとも1つの第2の非線形結晶とを含む。
いくつかの実施形態において、ルビー系活性媒体は、Cr:Al2O3型ルビーであってもよい。いくつかの実施形態において、ルビーにおける、クロムドーピング濃度は、0.03%〜5%の範囲内、好ましくは2%〜5%の範囲内であってもよい。
いくつかの実施形態において、第2の複合光キャビティの出力は、第2の基本周波数の第2高調波にあるように構成されてもよい。第2の複合光キャビティにおける、約694nmの基本周波数を有するルビー系活性媒体のために、第2の複合光キャビティの出力は、約347nmとなる。
いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティの第1のキャビティ部分は、Qスイッチングとして、キャビティ損失変調器を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の複合光キャビティの第1のキャビティ部分は、Qスイッチングとして、キャビティ損失変調器を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティの第1のキャビティ部分は、第1の基本周波数における発光スペクトルを狭窄化するための、少なくとも1つのスペクトル選択器を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、第2の複合光キャビティの第1のキャビティ部分は、第2の基本周波数における発光スペクトルを狭窄化するための、少なくとも1つのスペクトル選択器をさらに含んでもよい。
いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティのネオジムドープまたはイッテルビウムドープ活性媒体は、ダイオードレーザまたはファイバ結合ダイオードレーザによってポンピングされてもよい。いくつかの実施形態において、ネオジムドープ活性媒体は、ネオジムドープイットリウムバナジウム(Nd:YVO4)、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)、またはネオジムドープイットリウムリチウムフロライド(Nd:YLF)であってもよい。
いくつかの実施形態において、イッテルビウムドープ活性媒体は、イッテルビウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Yb:YAG)、イッテルビウムドープガラス媒体(Yb:Glass)、またはイッテルビウムドープ光ファイバであってもよい。
いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティの活性媒体は、ホルミウム、プラセオジム、バナジウム、またはエルビウムドープ材料であってもよい。
いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティの第2の部分は、少なくとも1つの第1の非線形結晶を組み込んだ、第1の基本周波数においての第1の非線形共振反射器を含んでもよい。第1の複合光キャビティの第1のキャビティ部分から第1の非線形共振反射器に入射した放射線に対する、第1の非線形共振反射器の後方反射率(backward reflectivity)は、少なくとも1つの第1の非線形結晶の存在によって、第1のキャビティ部分内で第1の基本周波数において循環するキャビティ内出力をアウトカップリングするための最適値に近づけるように自己調整されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の温度制御装置が、周波数変換のための位相整合条件を調節し安定させるための第1の共振反射器の第1の非線形結晶の温度を制御するために用いられてもよい。
いくつかの実施形態において、適切な制御電子装置を有する第1の圧電トランスデューサ(PZT)が、共振条件において、少なくとも1つの第1の非線形結晶を組み込んだ第1の非線形共振反射器の光路を微調整し安定させるために用られてもよい。
いくつかの実施形態において、第2の複合キャビティの第2のキャビティ部分が少なくとも1つの第2の非線形結晶を組み込んだ第2の非線形共振反射器を含んでもよい。第2の非線形共振反射器の後方反射率は、第2の複合キャビティの第1のキャビティ部分から入射する放射線に関して、少なくとも1の第2の非線形結晶の存在によって、第2の複合キャビティの第1のキャビティ部分内で第2の基本周波数で循環しているキャビティ内出力をアウトカップリングするための最適値に近づけるように自己調整されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の温度制御装置が、第1の非線形共振反射器の少なくとも1つの非線形結晶の温度を制御して周波数変換のための位相整合条件を調整し安定させるために用いられてもよい。
いくつかの実施形態において、適切な制御電子装置を有する第2の圧電トランスデューサ(PZT)が、共振条件において、少なくとも1つの第2の非線形結晶を組み込んだ第2の非線形共振反射器の光路を微調整し安定させるために用いられてもよい。
紫外光を発生させる方法は、活性媒体、好ましくは、ネオジムドープまたはイッテルビウムドープ活性媒体を有する第1の複合光キャビティにおいて、第1のレーザビームを発生させ、第1の複合光キャビティの第1の基本周波数の第2高調波におけるレーザビームを発生させ、活性レーザ媒体、好ましくはルビー系活性レーザ媒体を、第1の複合レーザキャビティからの出力で第2の複合レーザキャビティにおいてポンピングし、好ましくはルビー系活性媒体を有する第2の複合光キャビティにおいて、第2の複合光キャビティの第2の基本周波数の第2高調波における第2のレーザビームを生成することを含む。
いくつかの実施形態において、ルビー系活性媒体は、Cr:Al2O3型ルビーであってもよい。第2のレーザビームは約347nmであってもよい。いくつかの実施形態において、該方法は、第1の複合光キャビティのネオジムドープまたはイッテルビウムドープ活性媒体を、レーザダイオードまたはファイバ結合ダイオードレーザでポンピングすることをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、該方法は、第1の複合光キャビティ内の第1の基本周波数における第1のレーザビームをQスイッチングすることをさらに含むことをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、該方法は、第2の複合光キャビティ内の第2の基本周波数における第2のレーザビームをQスイッチングすることをさらに含んでもよい。
いくつかの実施形態において、第1の基本周波数における発光スペクトルを狭窄化するための少なくとも1つのスペクトル選択器の実施をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、第2の基本周波数において発光スペクトルを狭窄化するための少なくとも1つのスペクトル選択器の実施をさらに含んでもよい。
約350nmでの紫外発光を発生させるための上述の好ましいレーザシステムおよび方法において、さらなる利点は、ネオジムドープまたはイッテルビウムドープ活性媒体を用いる第1の複合光キャビティからの出力である第1の基本周波数の第2高調波における第1のレーザビームのスペクトルがルビー活性レーザ媒体の「緑」吸収帯域と重なるということによって、第2複合レーザキャビティ内で高いゲインを与えるということである。
上述のレーザシステムおよび方法の利点は、周波数変換の両段階におけるより効率のよい非線形プロセスとしてSHGの実施によって与えられ、THGの低効率非線形プロセスの使用を完全に除去することができる。
上述および他の目的、特徴ならびに利点は、添付の図面に示されるように、以下の実施形態のより特定の説明から明らかであろう。図面を通して、同様の参照符号が同様の部分に付される。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに実施形態の原理を説明することに注力している。
キャビティ内第3高調波発生(THG)のために一般的に用いられている周知のレーザキャビティレイアウトを示す。
二重増強キャビティ内周波数二倍化ネオジム系レーザの出力によってポンピングされたルビーレーザの発光の二重増強キャビティ内周波数二倍化に適したレーザキャビティ構造を示す。
第1のキャビティ部分に関する、対応する第1のキャビティ部分および全体としての実際の後方反射率に対する第2のキャビティ部分のそれぞれの出力増強を示す。
第1のキャビティ部分に関する、対応する第1のキャビティ部分および全体としての実際の後方反射率に対する第2のキャビティ部分のそれぞれの出力増強を示す。
ルビー結晶がダイオード励起固体レーザからの第2高調波波長における出力でポンピングされた本発明に係る全固体ルビー系レーザシステムの構成を示す。
図2は、第1の複合光キャビティ10’であって、そこからの出力36’が第2の複合光キャビティ10”内で活性レーザ媒体をポンピングして約350nmにおけるレーザビームを生成するために用いられる、第1の複合光キャビティ10’を有するレーザシステムの実施形態を示す。第1の複合光キャビティ10’は、低レベル循環する第1の基本周波数(ω1)出力の第1のキャビティ部分12’と、高レベル循環する第1の基本周波数出力(ω1)の第2のキャビティ部分14’とを含む。第1のキャビティ部分12’は、キャビティバックミラー20’と、ネオジムドープまたはイッテルビウムドープ活性媒体21’と、ビームスプリッタミラー48’とを含む。第2のキャビティ部分14’は、ビームスプリッタミラー48’と、非線形結晶30’と、2つのキャビティエンドミラー(45’,46’)とを含む。図中の波線矢印34’は、活性媒体21’の適切なポンプ源が横方向および/または長手方向に配置されてもよいことを示している。
いくつかの実施形態において、キャビティバックミラー20’は、第1の基本周波数(ω1)において高い反射率のものであってもよい。いくつかの実施形態において、キャビティバックミラー20’は、活性媒体21’の裏面38’上に蒸着されてもよい。第1のキャビティ部分12’は、図2において符号44’で示されている、Qスイッチングのための光キャビティ損失変調器および/または第1の基本周波数(ω1)における発光スペクトルを狭窄化するためのスペクトル選択器を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティ10’の活性媒体のためのポンプ源は、ダイオードレーザまたはファイバ結合ダイオードレーザであってもよい。ネオジムドープ活性媒体21’の場合における第1の複合光キャビティ10’の第1の基本周波数(ω1)出力は、1064nmである。第1の複合光キャビティ10’の活性媒体21’のための他の可能性のある材料は、ホルミウム、プラセオジム、バナジウムまたはエルビウムドープ材料を含む。
図2に示されるように、第1の複合光キャビティ10’の第2のキャビティ部分14’は、非線形共振反射器から成り、第1の基本周波数(ω1)において高反射性である、2つのキャビティエンドミラー(45’,46’)と、第1の基本周波数(ω1)において部分的に反射するビームスプリッタミラー48’と、適切なカットおよび方向を有する非線形結晶30’であって、周波数二倍化のための位相整合条件を提供して第1の基本周波数(ω1)の第2高調波(2ω1)において出力36’を生成する非線形結晶30’とを含む。いくつかの実施形態において、非線形結晶30’の温度を制御する第1の温度制御装置61’が、周波数変換のための位相整合条件を調整し安定させるためにさらに設けられてもよい。いくつかの実施形態において、第1の複合光キャビティ10’の第2のキャビティ部分14’のミラー45’が、共振条件において、第1の非線形共振反射器の光路を微調整し安定させるための適切な電子回路を有する第1の圧電トランスデューサ(PZT)65’上に配置されてもよい。
第1の複合光キャビティ10’におけるレーザの最も高い効率を達成するために、ミラー(20’,45’,46’)の反射率は、要求される第1の基本周波数(ω1)において、技術的にできるだけ100%に近づけるようにすべきである。ビームスプリッタミラー48’の適切な部分反射率値は、最適な出力カプラが単に(非線形共振反射器に代えて)用いられて基本周波数(ω1)におけるレーザから最大出力を抽出する場合に、このようなカプラに対するのと同じくらいに近づけるように非線形共振反射器14’の後方反射率を与えるであろう反射率程度の範囲にあるいずれの値であってもよい。当業者は、このような構成に対する最適な反射率を規定するための基準を熟知している。
図2を参照して、非線形共振反射器14’を有する第1の複合光キャビティ10’のレイアウトが、単なる一例として、非線形結晶がミラー48’およびミラー45’間に配置された、すなわち第1の複合光キャビティ10’の第1のキャビティ部分12’の光軸に対して角度をなす状態で、示されている。非線形結晶30’は、ミラー46’およびミラー48’間の経路に配置されてもよい。設計および位置合わせの都合上決定されるものを除いて、第1の複合光キャビティ10’の非線形共振反射器部分を第1のキャビティ部分12’の光軸に対して折り畳む角度(たとえば90°)の選択に関して特に限定されない。
図2に示されるように、第2の複合光キャビティ10”は、低レベル循環する第2の基本周波数(ω2)出力の第1のキャビティ部分12”と、高レベル循環する第2の基本周波数出力(ω2)の第2のキャビティ部分14”とを含む。第1のキャビティ部分12”は、キャビティバックミラー20”と、好ましくはルビーである活性媒体21”と、ビームスプリッタミラー48とを含む。第2のキャビティ部分14”は、ビームスプリッタミラー48”と、非線形結晶30”と、2つのキャビティエンドミラー(45”,46”)とを含む。活性媒体としてルビーの場合、第2の基本周波数出力(ω2)は、694nmにある。第2の複合光キャビティ10”の活性媒体の他の可能性のある材料は、他のクロム、エルビウムまたはプラセオジムドープ材料を含む。
いくつかの実施形態において、キャビティバックミラー20”は、第2の基本周波数(ω2)において高い反射率のものであってもよい。いくつかの実施形態において、キャビティバックミラー20”は、活性媒体21”の裏面38”上に蒸着されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の複合光キャビティの第1のキャビティ部分12”は、図2において符号44”で示されている、Qスイッチングのための光キャビティ損失変調器および/または第2の基本周波数(ω2)における発光スペクトルを狭窄化するためのスペクトル選択器を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、ルビー系活性媒体21’はCr:Al2O3であってもよい。
図2に示されるように、第2の複合光キャビティ10”の第2のキャビティ部分14”は、非線形共振反射器から成り、第2の基本周波数(ω2)において高反射性である、2つのキャビティエンドミラー(45”,46”)と、第2の基本周波数(ω2)において部分的に反射するビームスプリッタミラー48”と、適切なカットおよび方位を有する非線形結晶30”であって、周波数二倍化のための位相整合条件を提供して約350nmにおいて出力36”を生成する非線形結晶30”とを含む。いくつかの実施形態において、非線形結晶30”の温度を制御する第2の温度制御装置61”が、周波数変換のための位相整合条件を調整し安定させるためにさらに設けられてもよい。いくつかの実施形態において、第2の複合光キャビティ10”の第2のキャビティ部分14”のミラー45”が、共振条件において、第2の非線形共振反射器の光路を微調整し安定させるための適切な電子回路を有する第2の圧電トランスデューサ(PZT)65”上に配置されてもよい。
第1のレーザキャビティ10’におけるレーザ発光の周波数は、ミラー44’またはミラー46’のいずれかを、適切な電子回路によって制御される圧電アクチュエータ上に配置することによって、所望の基準値に調整および/または固定されてもよい。
いくつかの実施形態において、第2の複合レーザキャビティ10”におけるレーザ発光の周波数は、ミラー44”またはミラー46”のいずれかを、適切な電子回路によって制御される追加の圧電アクチュエータ上に配置することによって、所望の基準値に調整および/または固定されてもよい。
第2の複合光キャビティ10”におけるレーザの最も高い効率を達成するために、ミラー(20”,45”,46”)の反射率は、要求される第2の基本周波数(ω2)において、技術的にできるだけ100%に近づけるようにすべきである。ビームスプリッタミラー48”の適切な部分反射率値は、最適な出力カプラが単に(非線形共振反射器に代えて)用いられて第2の基本周波数(ω2)におけるレーザから最大出力を抽出する場合に、このようなカプラに対するのと同じくらいに近づけるように非線形共振反射器14”の後方反射率を与えるであろう反射率程度の範囲にあるいずれの値であってもよい。当業者は、このような構成に対する最適な反射率を規定するための基準を熟知している。
図2において、非線形共振反射器14”を有する第2の複合光キャビティ10”のレイアウトが、単なる一例として、非線形結晶がミラー48”およびミラー45”間に配置された、すなわち第2の複合光キャビティ10”の第1のキャビティ部分12”の光軸に対して角度をなす状態で、示されている。非線形結晶30”は、ミラー46”およびミラー48”間の経路に配置されてもよい。設計および位置合わせの都合上決定されるものを除いて、複合光キャビティ10”の非線形共振反射器部分を第1のキャビティ部分12”の光軸に対して折り畳む角度(たとえば90°)の選択に関して特に限定されない。
第1の複合光キャビティ10’からの第1の基本周波数(ω1)の第2高調波(2ω1)における出力36’は、好ましくはルビー系である活性媒体21”を長手方向にポンピングする。ネオジム系活性レーザ媒体に対する約527nm〜約532nmの第2高調波周波数(2ω1)は、ルビー(Cr:Al2O3)の「緑」吸収帯域とうまく重なる。いくつかの実施形態において、出力36’は、1以上のステアリングミラー(図示せず)によってルビー系活性媒体21”に向けられてもよく、各ミラーは第1の基本周波数(ω1)の第2高調波(2ω1)において反射性が高い。また、集束要素(図示せず)が、ポンプビーム36’のサイズを、活性媒体21”内の第2の基本周波数(ω2)における第2複合光キャビティ10”の基本横モードのサイズと一致させるために用いられてもよい。これらの集束要素は、出力36’を活性媒体21”および/または適切なレンズに向けるために用いられる適切な曲率を有するミラーであってもよい。
図2を参照して、複合光キャビティ10’,10”のそれぞれに対して、ミラー(20’,20”)およびミラー(48’,48”)間に取り囲まれた第1のキャビティ部分(12’,12”)は、低レベルのキャビティ内循環出力を維持し、ミラー(48’,48”)を通過して注入され、ミラー(45’,45”)、ビームスプリッタミラー(48’,48”)およびミラー(46’,46”)間の第2のキャビティ部分(14’,14”)において結合される基本周波数出力は、共振増強のために高レベルである。共振条件において、第2のキャビティ部分(14’,14”)は、第1のキャビティ部分(12’,12”)に対して非線形共振反射器として作用する。第2のキャビティ部分(14’,14”)における出力増強のレベル(Enh)および第1のキャビティ部分(12’,12”)に対する全体としての実際の後方反射率(Rback)は、部分的に反射するビームスプリッタミラー(48’,48”)の反射率と、非線形結晶内の周波数変換プロセスから生じる基本周波数出力の損失(減少)を含む第2のキャビティ部分内の損失とのバランスに依存する。
第2のキャビティ部の上記の出力増強係数Enhと後方反射率Rbackとは、以下の式によって与えられる。
式中R1とR2とは、ミラー(46’,46”)および(45’,45”)の周波数ωにおける反射率であり、Rcは部分的に反射するビームスプリッタミラー(48’,48”)の周波数ωでの反射率であり、L1およびL2は、それぞれ、ミラー(48’,48”)とミラー(46’,46”)との間、およびミラー(48’,48”)とミラー(45’,45”)との間の周波数ωにおける光路であり、Tは、非線形周波数変換プロセスから生じる損失を含む全損失を考慮した、周波数ωにおける非線形結晶透過率である。実際のところ、R1・R2≒1(約0.9998)であり、透過率Tは、約0.95〜0.995の間の範囲内にある。
上記式から、出力増強係数Enh(ω)と後方反射率Rback(ω)とは、ω・((L1+L2)/c)を整数とする周波数において最大値を有する、周波数の周期関数である。これが共振条件である。式(1)および(2)に対する最大値は、それぞれ以下のとおりである:
図3(a)および図3(b)はそれぞれ、EnhMaxとRbackMaxの透過率T=0.99におけるビームスプリッタミラー(48’,48”)の部分反射率値への依存を示している。このTの場合については図3(a)から明らかであるように、第2のキャビティ部分(14’,14”)における基本周波数出力値は、第1のキャビティ部分(12’,12”)におけるそれよりも10〜16倍だけ大きい。
レーザキャビティミラーの上記の反射率について、複合光キャビティ(10’,10”)それぞれの内部を循環している基本周波数出力は、2つの異なるレベル、すなわち、キャビティバックミラー(20‘,20”)とビームスプリッタミラー(48‘,48”)との間のキャビティ経路内の低レベルと、ミラー(46’,46”)と、ミラー(48’,48”)とミラー(45’,45”)との間の非線形共振反射器経路内の高レベルとを含む。しかしながら、低レベルは、レーザキャビティ外部にあるであろうものと比べれば、すでに増強されたレベルの基本周波数出力である。
このように、複合光キャビティの非線形共振反射器部分内に配置される非線形結晶の場合は、基本周波数出力の増強に2つの段階がある。共振反射器内に組み込まれている光学非線形のゆえに、(キャビティバックミラー(20’,20”)の方向における)後方反射率は、複合光キャビティ(10’,10”)の第1の部分内を循環する基本周波数出力をアウトカップリングする最適値に近づくように自己調整される。これは活性媒体(21’,21”)に供給されるポンプ出力、すなわち、光学レーザ効率に関する、最大第2高調波出力(36’,36”)のための条件を付与し、さらにまた、外乱に起因するレーザキャビティ損失変動に対するレーザ出力の最小感度と、レーザキャビティ要素の限界許容誤差とを付与する。
所望の方向における複合レーザキャビティからの第2高調波出力について準備するためには、第2高調波周波数(2ω1,2ω2)でのミラー(45’,45”)、ビームスプリッタミラー(48’,48”)、およびミラー(46’,46”)の反射率を適切に選択しなければならない。図2に示されている場合のように、たとえば、ミラー(45’,45”)も第2高調波周波数(2ω1,2ω2)では反射率が高く、ビームスプリッタミラー(48’,48”)は、第2高調波周波数(2ω1,2ω2)において透過性が高い。したがって、第2高調波出力は、経路(36’,36”)によって示されるように向けられる。また、ミラー(46’,46”)を介して出力されるべき第2高調波出力のためには、ミラー(46’,46”)は第2高調波周波数(2ω1,2ω2)において透過性が高くあるべきであり、ミラー(45’,45”)もビームスプリッタミラー(48’,48”)もどちらも第2高調波周波数(2ω1,2ω2)においての反射率は高くあるべきである。第1の複合光キャビティ10’の場合、ミラー46’を介する第2高調波出力は、ポンピングのための活性媒体21に向けられたであろう。
通常、本発明の他の態様においては、ここに記載されたシステムと方法とは、第1のレーザキャビティにおいて、ネオジムドープまたはイッテルビウムドープ活性レーザ媒体を使用する有利な特徴を利用して、第2高調波変換を介して、第2の複合レーザキャビティのルビー系活性媒体を光学ポンピングするための緑のスペクトル範囲(約515nm〜550nm)におけるレーザ光を付与して、約694nmで、およびさらなる第2高調波発生を介して約347nmでレーザビームを作る。
図4は、キャビティミラー80および81を有する第1のレーザキャビティ91内に配置された活性媒体を、出力ビーム73がポンピングするダイオードレーザ構成71を有する全固体ルビーレーザシステムの実施形態を示す。活性媒体75は、固体材料であるところの、ネオジムドープまたはイッテルビウムドープレーザ材料を含む。活性媒体として作用するネオジムドープ材料は、光学軸に沿って同じ共振器内に配置される非線形周波数二倍化結晶79内に、カップリング77を介して入射する、(たとえば)約1064nmおけるレーザビームを生成する。これによって、活性媒体75によって発生される基本周波数出力は、約532nmにおける波長の第2高調波ビーム92に変換される。次いで、532nmにおけるこのレーザビームは、キャビティミラー82,83を有する第2のレーザキャビティ97内で、第2の活性媒体93をポンピングして、レーザ発光99を生成する。この第2の活性媒体は、ルビーを含む。ルビーの基本波長におけるレーザ発光は、約694nmである。
レーザダイオードポンプ光は、第1のレーザキャビティのミラーの1つを介して第1の光キャビティに導入されてもよく、または好ましくは適切な光学系を用いることによって、活性媒体を横切って方向づけられてもよい。
第1および第2のレーザキャビティにおける基本レーザ出力の周波数変換の効率は、図2に関して記載されたような共振キャビティ反射器を有する光キャビティのレイアウトを利用することによって増加させることができる。第1レーザキャビティにおける周波数上方変換の効率の増加は、第2のレーザにおける活性材料の効率的なポンピングを支援し、これによって、紫外領域における発光周波数における全固体レーザを実現する可能性の一因となる。
光学レイアウトおよび処理はその特定の実施形態を参照して記載され説明されたけれども、当業者は、種々の適応、変更、修正または追加が添付の特許請求の範囲によって規定された発明の範囲を逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。ここに記載されたシステムおよび方法は、周知のレーザシステムに組み込まれてもよい。