JP2004183062A - マグネシウム基合金線及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】靭性に優れた異形のマグネシウム基合金線及びその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、Zn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金線であって、ロール圧延により成形され、断面形状が非円形である。異形加工をダイス引抜きではなく、ロール圧延により行うことで、マグネシウム基合金線を加工する際の断線を抑制する。さらに、質量%でMn:0.1〜2.0%、Zr:0.1〜2.0%および希土類元素:1.0〜3.0%から選択される元素を1種以上含んでもよい。
【選択図】 なし
【解決手段】質量%で、Zn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金線であって、ロール圧延により成形され、断面形状が非円形である。異形加工をダイス引抜きではなく、ロール圧延により行うことで、マグネシウム基合金線を加工する際の断線を抑制する。さらに、質量%でMn:0.1〜2.0%、Zr:0.1〜2.0%および希土類元素:1.0〜3.0%から選択される元素を1種以上含んでもよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム基合金線およびその製造方法に関するものである。特に、靭性または強度に優れるマグネシウム基合金線及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム基合金は、アルミニウムよりも軽く、比強度、比剛性が鋼やアルミニウムよりも優れており、航空機部品、自動車部品などの他、各種電気製品のボディーなどにも広く利用されている。特に、従来は、プレス成形品によく用いられており、このプレス用板材の製造方法として、圧延によるものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−200349号公報(特許請求の範囲参照)
【0004】
【特許文献2】
特開平6−293944号公報(特許請求の範囲参照)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
マグネシウム基合金は、上記のように様々な特性に優れており、板材だけでなく線材として利用することが望まれている。しかし、Mg及びその合金は、最密六方格子構造であるため、延性に乏しく、塑性加工性が極めて悪い。そのため、Mg及びその合金の線を得ることは極めて困難であった。
【0006】
通常、断面が円形の線材を得るにはダイスによる引き抜き加工が利用される。断面が円形でない異形線も引き抜き加工を利用して得ることが考えられる。引き抜き加工により線材を得る場合、線材を加熱したりダイスを加熱することで減面率を大きくとることができるが、線材温度が300℃程度を超えると強度が落ちて断線が生じる。
【0007】
また、300℃以下での引き抜き加工では、断線を抑制できるものの、約30〜40%の減面率で加工硬化により加工限界に達し、引き抜き加工2回ごとに1回程度は350℃以上の温度により溶体化処理を行う必要がある。そのため、溶体化処理用の加熱設備が必要で、設備コスト、加熱コストの点からも長尺の異形マグネシウム基合金線を得ることは難しかった。
【0008】
従って、本発明の主目的は、靭性に優れた異形マグネシウム基合金線及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、引き抜きではなくローラーダイスを用いることで上記の目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明マグネシウム基合金線は、質量%で、Zn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金線であって、ロール圧延により成形され、断面形状が非円形であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明マグネシウム基合金線の製造方法は、質量%でZn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金からなる被加工材をロール圧延により異形断面に加工することを特徴とする。
【0012】
異形加工をダイス引抜きではなく、ロール圧延により行うことで、マグネシウム基合金線を加工する際の断線を抑制する。特に、線材を300℃以上に加熱しても断線を抑制することができる。図1に示すように、ダイス1による引き抜き加工は、線材3を引っ張ることにより加工を行う。これに対し、ロール圧延は、図2に示すように、ローラー2で線材3を挟み込んで送り出すことにより加工を行うため、線材加工時に張力がほとんど作用せず、断線を抑制することができる。
【0013】
本発明合金線の断面形状は、圧延ロールで加工可能な円形以外のものが全て含まれる。一般に、圧延ロールで加工すると、扁平に成形されるため、断面が矩形状のものが多い。より詳しくは、上下面が平面で、両側面が側方に突出した円弧状面であるものや、上下面・両側面が平面であるものが挙げられる。
【0014】
また、本発明合金線に用いられるマグネシウム基合金には、鋳造用マグネシウム基合金と展伸用マグネシウム基合金のいずれも利用することができる。上記Znに加えて、質量%でMn:0.1〜2.0%、Zr:0.1〜2.0%および希土類元素:1.0〜3.0%から選択される元素を1種以上含むマグネシウム基合金を用いてもよい。上記Zn、Mn、Zr、希土類元素の他にはMgおよび不純物が含まれる合金として利用されることが一般的である。不純物には、Fe、Si、Cu、Ni、Caなどが挙げられる。
【0015】
より具体的なマグネシウム基合金としては、例えば、ASTM記号におけるZK系、EZ系などが利用できる。
【0016】
ZK系におけるZK60は、例えば、質量%でZn:4.8〜6.2%、Zr:0.4%以上を含有するマグネシウム基合金である。ZK40は、例えば、質量%で、Zn:3.5〜4.5%、Zr:0.45%以上を含有するマグネシウム基合金である。ZK10は、例えば、質量%でZn:0.8〜1.5%、Zr:0.4〜0.8%を含有するマグネシウム基合金である。
【0017】
EZ系におけるEZ33は、例えば、質量%でZn:2.0〜3.1%、Cu:0.1%以下、Ni:0.01%以下、RE:2.5〜4.0%、Zr:0.5〜1%を含有するマグネシウム基合金である。ここで、REは希土類元素であり、通常はPrとNdの混合物が利用されることが多い。
【0018】
本発明合金線は、室温での180°曲げ試験において、最小曲げ半径Rminとマグネシウム基合金線の厚みtがRmin≦tであることが好適である。圧延ロールを用いた加工により、靭性に優れた合金線を得ることができる。
【0019】
ロール圧延を行うことで、ダイスによる引き抜きに比べて1回での加工度を高めることができる。一回の圧下率は20%以上40%以下であることが好適である。この圧下率が20%未満では、効率的な加工を行うことが難しく、40%を超えると割れを生じやすくなる。
【0020】
ロールを加熱したり、ロール圧延前にマグネシウム基合金の被加工材を加熱しておくことで、一回での圧下率をより大きくとることができる。ロールを加熱する場合は150℃以上450℃以下、被加工材を加熱する場合は250℃以上450℃以下の温度とすることが好適である。150℃(250℃)未満では亀裂が発生しやすい上、大きな圧下率を採ることが難しい。逆に450℃を超えると被加工材の表面が酸化したり、加熱に要する時間やエネルギーが大きくなる。より好ましい加熱温度は、ロールを加熱する場合は180℃以上400℃未満、被加工材を加熱する場合は300℃以上400℃未満である。ロールの加熱や被加工材の加熱を行わない場合、一回の圧下率は10%以下とすることが好ましい。
【0021】
このように、300℃以上でも加工が可能になり、ダイス引抜加工時に行っていた加工2回つきに1回の溶体化処理を被加工材の加熱で代用することができる。これにより、オフラインでの溶体化処理を省略し、加工設備の簡略化、加工工数の減少が可能になる。
【0022】
特に、溶体化処理を省略できるため、ロール圧延による圧延加工を多段に連続で実施することができる。これにより、効率的なマグネシウム基合金線の加工が可能になる。
【0023】
その場合、最終パスを被加工材および圧延ロール共に加熱することなく加工することが好ましい。これにより、最終パスにおいて加熱に必要な設備を省略することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1)
まず、ZK60からなるφ3.0mmのマグネシウム基合金押出材を準備し、この押出材を6枚の異形ダイスに通して、厚さ1.0mm×幅2.0mm、コーナー半径0.2mmのワイヤーを作製した。この引き抜き加工におけるダイス直後における被加工材の温度は150℃である。このワイヤーをワイヤーaとする。
【0025】
また、前記φ3.0mmの丸線を一旦φ1.8mmの丸線まで温間(150℃)にて線引き加工した後、3パスのロール圧延加工により、厚さ1.0mm×幅2.0mm、コーナー半径0.2mmのワイヤーとした。ここでのロール圧延は、4方向からの圧延が可能なタークスヘッドロールを用い、ロール加熱を行わずに被加工材を加熱したワイヤーbおよび被加工材は加熱せずロール加熱を行ったワイヤーcを作製した。ロール圧延における圧下率は、加工前の厚さをt0、加工後の厚さをt1としたとき、(t0−t1)/t0とする。ワイヤーbおよびワイヤーcの各パスにおける減面条件を下記に示す。
【0026】
ワイヤーb
3.0mmφ→1.8mmφ(ダイス引き)
1.8mmφ→1.4mm厚(ロール圧延:圧下率22.2%、被加工材を300℃に加熱)
1.4mm厚→1.1mm厚(ロール圧延:圧下率21.4%、被加工材を300℃に加熱)
1.1mm厚→1.0mm厚(ロール圧延:圧下率9.1%、冷間)
【0027】
ワイヤーc
3.0mmφ→1.8mmφ(ダイス引き)
1.8mmφ→1.4mm厚(ロール圧延:圧下率22.2%、ロールを180℃に加熱)
1.4mm厚→1.1mm厚(ロール圧延:圧下率21.4%、ロールを180℃に加熱)
1.1mm厚→1.0mm厚(ロール圧延:圧下率9.1%、ロール加熱なし)
【0028】
得られた各ワイヤーを、250℃にて15分焼鈍し、曲げ加工試験を行った。この試験は、曲げ半径Rを変化させてワイヤーを、上下面が曲げの内側と外側になるように180°まで曲げ、破断又は亀裂の有無により評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、ワイヤaはR=1.0mm以下では破断もしくは亀裂が認められたのに対して、ワイヤbはR=1.0mmまで亀裂の発生はなかった。更にワイヤcではR=0.8mmまで亀裂の発生はなかった。従って、ロール圧延加工によって異形ワイヤーを製造することにより、曲げ加工性に優れた異形ワイヤーを製造できることがわかる。
【0031】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施したが、いずれもワイヤーc→ワイヤーb→ワイヤーaの順に曲げ特性が良好であった。
【0032】
(試験例2)
ZK60合金において、試験例1におけるワイヤーbと同様の工程を、加熱温度を変化させて行った。その結果、圧下率を21〜23%とした時、200℃未満の温度の加工では被加工材に亀裂が発生し、250℃以上450℃以下では問題なく加工できたが、400℃を超えると線材の表面に酸化が認められた。
【0033】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施した。その結果、200℃未満の温度の加工では亀裂が発生し、250℃以上450℃以下では問題なく加工ができた。
【0034】
(試験例3)
ZK60合金において、試験例1におけるワイヤーcと同様の工程を、ロールの加熱温度を変化させて行った。その結果、圧下率を21〜23%とした時、150℃未満の温度の加工では被加工材に亀裂が発生し、150℃以上450℃以下では問題なく加工できたが、400℃を超えると線材の表面に酸化が認められた。
【0035】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施した。その結果、150℃未満の温度の加工では亀裂が発生し、150℃以上450℃以下では問題なく加工ができた。
【0036】
(試験例4)
ZK60合金において試験例1におけるワイヤーbと同様の工程を、加熱温度を300℃とし、圧下率を変化させて行った。各圧下率は次の通りである。
【0037】
1.8mmφ→1.4mm厚(ロール圧延:圧下率22.2%)
1.8mmφ→1.3mm厚(ロール圧延:圧下率27.8%)
1.8mmφ→1.2mm厚(ロール圧延:圧下率33.3%)
1.8mmφ→1.1mm厚(ロール圧延:圧下率38.9%)
1.8mmφ→1.0mm厚(ロール圧延:圧下率44.4%)
【0038】
各試料のうち、1パス当りの圧下率が40%を超えるものは亀裂が生じて加工できなかった。従って、1パスの加工は圧下率40%以下が好ましい。但し、生産性を考慮すれば20%以上が好ましい。
【0039】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施したが、1パス当りの圧下率が40%超では亀裂が生じ加工できなかった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明マグネシウム基合金線は、靭性に優れた合金線である。また、本発明マグネシウム基合金の製造方法は、被加工材の断線を効果的に抑制し、効率的な異形合金線の製造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】引き抜き加工の説明図である。
【図2】圧延ロール加工の説明図である。
【符号の説明】
1 ダイス
2 ローラー
3 線材
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム基合金線およびその製造方法に関するものである。特に、靭性または強度に優れるマグネシウム基合金線及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム基合金は、アルミニウムよりも軽く、比強度、比剛性が鋼やアルミニウムよりも優れており、航空機部品、自動車部品などの他、各種電気製品のボディーなどにも広く利用されている。特に、従来は、プレス成形品によく用いられており、このプレス用板材の製造方法として、圧延によるものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−200349号公報(特許請求の範囲参照)
【0004】
【特許文献2】
特開平6−293944号公報(特許請求の範囲参照)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
マグネシウム基合金は、上記のように様々な特性に優れており、板材だけでなく線材として利用することが望まれている。しかし、Mg及びその合金は、最密六方格子構造であるため、延性に乏しく、塑性加工性が極めて悪い。そのため、Mg及びその合金の線を得ることは極めて困難であった。
【0006】
通常、断面が円形の線材を得るにはダイスによる引き抜き加工が利用される。断面が円形でない異形線も引き抜き加工を利用して得ることが考えられる。引き抜き加工により線材を得る場合、線材を加熱したりダイスを加熱することで減面率を大きくとることができるが、線材温度が300℃程度を超えると強度が落ちて断線が生じる。
【0007】
また、300℃以下での引き抜き加工では、断線を抑制できるものの、約30〜40%の減面率で加工硬化により加工限界に達し、引き抜き加工2回ごとに1回程度は350℃以上の温度により溶体化処理を行う必要がある。そのため、溶体化処理用の加熱設備が必要で、設備コスト、加熱コストの点からも長尺の異形マグネシウム基合金線を得ることは難しかった。
【0008】
従って、本発明の主目的は、靭性に優れた異形マグネシウム基合金線及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、引き抜きではなくローラーダイスを用いることで上記の目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明マグネシウム基合金線は、質量%で、Zn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金線であって、ロール圧延により成形され、断面形状が非円形であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明マグネシウム基合金線の製造方法は、質量%でZn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金からなる被加工材をロール圧延により異形断面に加工することを特徴とする。
【0012】
異形加工をダイス引抜きではなく、ロール圧延により行うことで、マグネシウム基合金線を加工する際の断線を抑制する。特に、線材を300℃以上に加熱しても断線を抑制することができる。図1に示すように、ダイス1による引き抜き加工は、線材3を引っ張ることにより加工を行う。これに対し、ロール圧延は、図2に示すように、ローラー2で線材3を挟み込んで送り出すことにより加工を行うため、線材加工時に張力がほとんど作用せず、断線を抑制することができる。
【0013】
本発明合金線の断面形状は、圧延ロールで加工可能な円形以外のものが全て含まれる。一般に、圧延ロールで加工すると、扁平に成形されるため、断面が矩形状のものが多い。より詳しくは、上下面が平面で、両側面が側方に突出した円弧状面であるものや、上下面・両側面が平面であるものが挙げられる。
【0014】
また、本発明合金線に用いられるマグネシウム基合金には、鋳造用マグネシウム基合金と展伸用マグネシウム基合金のいずれも利用することができる。上記Znに加えて、質量%でMn:0.1〜2.0%、Zr:0.1〜2.0%および希土類元素:1.0〜3.0%から選択される元素を1種以上含むマグネシウム基合金を用いてもよい。上記Zn、Mn、Zr、希土類元素の他にはMgおよび不純物が含まれる合金として利用されることが一般的である。不純物には、Fe、Si、Cu、Ni、Caなどが挙げられる。
【0015】
より具体的なマグネシウム基合金としては、例えば、ASTM記号におけるZK系、EZ系などが利用できる。
【0016】
ZK系におけるZK60は、例えば、質量%でZn:4.8〜6.2%、Zr:0.4%以上を含有するマグネシウム基合金である。ZK40は、例えば、質量%で、Zn:3.5〜4.5%、Zr:0.45%以上を含有するマグネシウム基合金である。ZK10は、例えば、質量%でZn:0.8〜1.5%、Zr:0.4〜0.8%を含有するマグネシウム基合金である。
【0017】
EZ系におけるEZ33は、例えば、質量%でZn:2.0〜3.1%、Cu:0.1%以下、Ni:0.01%以下、RE:2.5〜4.0%、Zr:0.5〜1%を含有するマグネシウム基合金である。ここで、REは希土類元素であり、通常はPrとNdの混合物が利用されることが多い。
【0018】
本発明合金線は、室温での180°曲げ試験において、最小曲げ半径Rminとマグネシウム基合金線の厚みtがRmin≦tであることが好適である。圧延ロールを用いた加工により、靭性に優れた合金線を得ることができる。
【0019】
ロール圧延を行うことで、ダイスによる引き抜きに比べて1回での加工度を高めることができる。一回の圧下率は20%以上40%以下であることが好適である。この圧下率が20%未満では、効率的な加工を行うことが難しく、40%を超えると割れを生じやすくなる。
【0020】
ロールを加熱したり、ロール圧延前にマグネシウム基合金の被加工材を加熱しておくことで、一回での圧下率をより大きくとることができる。ロールを加熱する場合は150℃以上450℃以下、被加工材を加熱する場合は250℃以上450℃以下の温度とすることが好適である。150℃(250℃)未満では亀裂が発生しやすい上、大きな圧下率を採ることが難しい。逆に450℃を超えると被加工材の表面が酸化したり、加熱に要する時間やエネルギーが大きくなる。より好ましい加熱温度は、ロールを加熱する場合は180℃以上400℃未満、被加工材を加熱する場合は300℃以上400℃未満である。ロールの加熱や被加工材の加熱を行わない場合、一回の圧下率は10%以下とすることが好ましい。
【0021】
このように、300℃以上でも加工が可能になり、ダイス引抜加工時に行っていた加工2回つきに1回の溶体化処理を被加工材の加熱で代用することができる。これにより、オフラインでの溶体化処理を省略し、加工設備の簡略化、加工工数の減少が可能になる。
【0022】
特に、溶体化処理を省略できるため、ロール圧延による圧延加工を多段に連続で実施することができる。これにより、効率的なマグネシウム基合金線の加工が可能になる。
【0023】
その場合、最終パスを被加工材および圧延ロール共に加熱することなく加工することが好ましい。これにより、最終パスにおいて加熱に必要な設備を省略することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1)
まず、ZK60からなるφ3.0mmのマグネシウム基合金押出材を準備し、この押出材を6枚の異形ダイスに通して、厚さ1.0mm×幅2.0mm、コーナー半径0.2mmのワイヤーを作製した。この引き抜き加工におけるダイス直後における被加工材の温度は150℃である。このワイヤーをワイヤーaとする。
【0025】
また、前記φ3.0mmの丸線を一旦φ1.8mmの丸線まで温間(150℃)にて線引き加工した後、3パスのロール圧延加工により、厚さ1.0mm×幅2.0mm、コーナー半径0.2mmのワイヤーとした。ここでのロール圧延は、4方向からの圧延が可能なタークスヘッドロールを用い、ロール加熱を行わずに被加工材を加熱したワイヤーbおよび被加工材は加熱せずロール加熱を行ったワイヤーcを作製した。ロール圧延における圧下率は、加工前の厚さをt0、加工後の厚さをt1としたとき、(t0−t1)/t0とする。ワイヤーbおよびワイヤーcの各パスにおける減面条件を下記に示す。
【0026】
ワイヤーb
3.0mmφ→1.8mmφ(ダイス引き)
1.8mmφ→1.4mm厚(ロール圧延:圧下率22.2%、被加工材を300℃に加熱)
1.4mm厚→1.1mm厚(ロール圧延:圧下率21.4%、被加工材を300℃に加熱)
1.1mm厚→1.0mm厚(ロール圧延:圧下率9.1%、冷間)
【0027】
ワイヤーc
3.0mmφ→1.8mmφ(ダイス引き)
1.8mmφ→1.4mm厚(ロール圧延:圧下率22.2%、ロールを180℃に加熱)
1.4mm厚→1.1mm厚(ロール圧延:圧下率21.4%、ロールを180℃に加熱)
1.1mm厚→1.0mm厚(ロール圧延:圧下率9.1%、ロール加熱なし)
【0028】
得られた各ワイヤーを、250℃にて15分焼鈍し、曲げ加工試験を行った。この試験は、曲げ半径Rを変化させてワイヤーを、上下面が曲げの内側と外側になるように180°まで曲げ、破断又は亀裂の有無により評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、ワイヤaはR=1.0mm以下では破断もしくは亀裂が認められたのに対して、ワイヤbはR=1.0mmまで亀裂の発生はなかった。更にワイヤcではR=0.8mmまで亀裂の発生はなかった。従って、ロール圧延加工によって異形ワイヤーを製造することにより、曲げ加工性に優れた異形ワイヤーを製造できることがわかる。
【0031】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施したが、いずれもワイヤーc→ワイヤーb→ワイヤーaの順に曲げ特性が良好であった。
【0032】
(試験例2)
ZK60合金において、試験例1におけるワイヤーbと同様の工程を、加熱温度を変化させて行った。その結果、圧下率を21〜23%とした時、200℃未満の温度の加工では被加工材に亀裂が発生し、250℃以上450℃以下では問題なく加工できたが、400℃を超えると線材の表面に酸化が認められた。
【0033】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施した。その結果、200℃未満の温度の加工では亀裂が発生し、250℃以上450℃以下では問題なく加工ができた。
【0034】
(試験例3)
ZK60合金において、試験例1におけるワイヤーcと同様の工程を、ロールの加熱温度を変化させて行った。その結果、圧下率を21〜23%とした時、150℃未満の温度の加工では被加工材に亀裂が発生し、150℃以上450℃以下では問題なく加工できたが、400℃を超えると線材の表面に酸化が認められた。
【0035】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施した。その結果、150℃未満の温度の加工では亀裂が発生し、150℃以上450℃以下では問題なく加工ができた。
【0036】
(試験例4)
ZK60合金において試験例1におけるワイヤーbと同様の工程を、加熱温度を300℃とし、圧下率を変化させて行った。各圧下率は次の通りである。
【0037】
1.8mmφ→1.4mm厚(ロール圧延:圧下率22.2%)
1.8mmφ→1.3mm厚(ロール圧延:圧下率27.8%)
1.8mmφ→1.2mm厚(ロール圧延:圧下率33.3%)
1.8mmφ→1.1mm厚(ロール圧延:圧下率38.9%)
1.8mmφ→1.0mm厚(ロール圧延:圧下率44.4%)
【0038】
各試料のうち、1パス当りの圧下率が40%を超えるものは亀裂が生じて加工できなかった。従って、1パスの加工は圧下率40%以下が好ましい。但し、生産性を考慮すれば20%以上が好ましい。
【0039】
同様の試験をZK40およびEZ33マグネシウム基合金においても実施したが、1パス当りの圧下率が40%超では亀裂が生じ加工できなかった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明マグネシウム基合金線は、靭性に優れた合金線である。また、本発明マグネシウム基合金の製造方法は、被加工材の断線を効果的に抑制し、効率的な異形合金線の製造を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】引き抜き加工の説明図である。
【図2】圧延ロール加工の説明図である。
【符号の説明】
1 ダイス
2 ローラー
3 線材
Claims (12)
- 質量%で、Zn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金線であって、
ロール圧延により成形され、断面形状が非円形であることを特徴とするマグネシウム基合金線。 - 室温での180°曲げ試験において、最小曲げ半径Rminとマグネシウム基合金線の厚みtがRmin≦tであることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基合金線。
- 更に質量%で、Mn:0.1〜2.0%、Zr:0.1〜2.0%および希土類元素:1.0〜3.0%から選択される元素を1種以上含むことを特徴とする請求項1または2記載のマグネシウム基合金線。
- 質量%でZn:1.0〜10.0%を含むマグネシウム基合金からなる被加工材をロール圧延により異形断面に加工することを特徴とするマグネシウム基合金線の製造方法。
- ロール圧延前に前記被加工材を加熱することを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- 圧延ロールを加熱することを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- 加熱温度が250℃以上450℃以下であることを特徴とする請求項5に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- 加熱温度が150℃以上450℃以下であることを特徴とする請求項6に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- 一回の圧下率が20%以上40%以下であることを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- ロール圧延による圧延加工を多段に連続で実施することを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- 最終パスを被加工材およびロール共に加熱することなく加工することを特徴とする請求項10に記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
- 更に質量%で、Mn:0.1〜2.0%、Zr:0.1〜2.0%および希土類元素:1.0〜3.0%から選択される元素を1種以上含むことを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載のマグネシウム基合金線の製造方法。
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