【発明の詳細な説明】
ファルネシル−タンパク質転移酵素の阻害剤 発明の背景
本発明は、Rasによって仲介される発癌経路に関与するタンパク質であるフ
ァルネシル−タンパク質転移酵素の阻害化合物に関する。Rasタンパク質(H
a−Ras、Ki4a−Ras、Ki4b−Ras及びN−Ras)は、細胞表
面の成長因子レセプターを、細胞増殖を開始させる核シグナルと結びつけるシグ
ナル伝達経路の一部である。Ras作用の生物学的及び生化学的研究によると、
RasはG−調節タンパク質のように機能する。不活性状態では、RasはGD
Pと結合している。成長因子レセプターが活性化されると、RasはGDPをG
TPに変えるように誘導され、コンフォメーション変化を起こす。RasのGT
P結合型は成長刺激シグナルを伝達し、Rasの内因性GTPase活性によっ
てシグナルは終り、Rasタンパク質を不活性GDP結合型に戻す(D.R.Lowy a
nd D.M.Willumsen,Ann.Rev.Biochem.62:851-891(1993))。変異ras遺伝
子(Ha−ras、Ki4a−ras、Ki4b
−ras及びN−ras)は、直腸結腸癌、膵外分泌腺癌、骨髄性白血病を含む
多くのヒト癌で見出されている。これらの遺伝子のタンパク質産物はGTPas
e活性を欠き、絶えず成長刺激シグナルを伝達する。
Rasは、正常機能及び発癌機能の両方のために形質膜に局在化している必要
がある。Rasの膜局在化と共に、少なくとも3つの翻訳後修飾が起り、3つの
全ての修飾は、RasのC末端で起る。RasのC末端は、“CAAX”又は“
Cys−Aaa1−Aaa2−Xaa”ボックス(Cysはシステイン、Aaaは
脂肪族アミノ酸、Xaaは任意のアミノ酸である)と命名された配列モチーフを
含む(willumsenら,Nature310:583-586(1984))。特異的配列により、このモチ
ーフは、酵素であるファルネシル-タンパク質転移酵素又はゲラニルゲラニル−
タンパク質転移酵素のシグナル配列として働く。それぞれの酵素は、それそれC15
又はC20イソプレノイドによるCAAXモチーフのシステイン残基のアルキル
化を触媒する(S.Clarke.,Ann.Rev.Biochem.61:355-386(1992);W.R.Schafer
and J.Rine,Ann.Rev.Genetics 30:209-237(1992))。Rasタンパク質は
、翻訳後ファルネシル化をう
けることが知られている。他のファルネシル化タンパク質には、Rhoのような
Ras関連GTP結合タンパク質、真菌接合因子、核ラミン、及びトランスデュ
ーシンのガンマサブユニットなどがある。Jamesら,J.Biol.Chem.269,1418
2(1994)は、同様にファルネシル化されるペルオキシソーム結合タンパク質Px
fを同定した。Jamesらは、上記のタンパク質の他に、未知の構造と機能のファ
ルネシル化タンパク質があることも示唆した。
ファルネシル-タンパク質転移酵素の阻害は、軟寒天中でRasで形質転換さ
れた細胞の成長を阻害し、形質転換の表現型の他の性質を変化させることが知見
された。ファルネシル-タンパク質転移酵素のある阻害剤は、細胞内でRas癌
タンパク質のプロセシングを選択的に阻害することも示された(N.E.Kohlら,Sci
ence,260:1934-1937(1993);G.L.Jamesら,Science,260:1937-1942(1993))。
最近、ファルネシル-タンパク質転移酵素の阻害剤は、ヌードマウスでras依
存性腫瘍の成長を阻害し(N.E.Kohlら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,91:9141
-9145(1994))、rasトランスジェニックマウスで乳癌と唾液腺癌の退化を誘導
する(N.E.Kohlら,Nature Medicine,
1:792-797(1995))ことが知見された。
ファルネシル-タンパク質転移酵素のインビボでの間接的阻害が、ロバスタチ
ン(Merck&Co.,Rahway,NJ)及びコンパクチン(Hancockら,上記;Caseyら,
上記;Schaferら,Science 245:379(1989))を用いて示された。これらの薬剤は
、ファルネシルピロリン酸を含むポリイソプレノイド産生の律速酵素であるHM
G−CoAレダクターゼを阻害する。ファルネシル−タンパク質転移酵素はファ
ルネシルピロリン酸を用い、ファルネシル基により、RasのCAAXボックス
のCysチオール基を共有結合で修飾する(Reissら,Cell,62:81-88(1990);sc
haberら,J.Biol.Chem,265:14701-14704(1990);Schaferら,Science,249:1
133-1139(1990);Manneら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:7541-7545(1990))。
HMG−CoAレダクターゼ阻害によるファルネシルピロリン酸生合成の阻害は
、培養細胞でRasの膜局在化を阻害する。しかし、ファルネシル−タンパク質
転移酵素の直接的阻害はより特異的であり、好ましいであろう。
ファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTase)の阻害剤は、2つの一般
的クラスに分類されてきた。第1はファルネ
シル二リン酸(FPP)のアナログであり、阻害剤の第2のクラスは該酵素のタ
ンパク質基質(例えば、Ras)に関連する。報告されたペプチド由来阻害剤は
一般的に、タンパク質のプレニル化のシグナルであるCAAXモチーフに関連す
るシステイン含有分子である(Schaberら,上記;reissら,上記;reissら,PNAS
,88:732-736(1991))。このような阻害剤は、ファルネシル-タンパク質転移酵素
の別の基質として働いてタンパク質のプレニル化を阻害しうるし、又は純粋の拮
抗阻害剤でありうる(米国特許第5,141,851号,テキサス大学;N.E.Koh
lら,Science,260:1934-1937(1993);Grahamら,J.Med.Chem.,37,725(1994))
。
最近、FPT−ase阻害剤は、血管の平滑筋細胞の増殖も阻害し、それ故、
動脈硬化及び血管の糖尿病による障害の予防と治療に有用であることが報告され
た(日本特許出願公開平成7−112930号)。
最近、場合によってはピペリジン部分を含むある種の三環系化合物がFPTa
seの阻害剤であることが開示された(WO95/10514,WO 95/1
0515及びWO 95/10516)。ファルネシル−タンパク質転移酵素の
イミダゾ
ール含有阻害剤も開示された(WO 95/09001及び欧州特許出願公開第
0675112号)。発明の概要
本発明は、式I[式中、
R1a、R1b、R2及びR10は独立に、水素、アリール、C3−C10シクロアルキ
ル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、R8O−、R9S(O)m−、R8
C(O)NR8−、CN、NO2、(R8)2NC(NR8)−、R8C(O)−、R8
OC(O)−、N3、−N(R8)2、R9OC(O)NR8−、並びに非置換のC1
−C6アルキル、又はハロ、アリール、複素環、C3−C10シクロアルキル、C2
−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、R8O−、R9S(O)m−、R8C(O
)NR8−、CN、(R8)2NC(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−
、N3、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−からなる群から選択される1〜
3個の基で置換された
C1−C6アルキルからなる群から選択される;
R3及びR4は独立に、H、F、CL、Br、−N(R8)2、CF3、NO2、(
R8)O−、(R9)S(O)m−、CF3(CH2)nO−、(R8)C(O)NH
−、H2NC(NH)−、(R8)C(O)−、(R8)OC(O)−、N3、CN
、(R9)OC(O)NR8−、置換された又は非置換のC1−C20アルキル、置
換された又は非置換のアリール、及び置換された又は非置換の複素環からなる群
から選択される;
A3は−NR5C(O)−である;
A4は、O、S(O)m(ここで、mは0、1又は2である)、NR5、OC(
O)、C(O)O、NR5S(O)m及びS(O)mNR5(式中、mは上記定義
のとおりであり、R5は、水素、非置換又は置換されたアリール、非置換又は置
換された複素環、非置換又は置換されたC3−C10シクロアルキル、並びに非置
換のC1−C6アルキル、又は非置換もしくは置換されたアリール、非置換もしく
は置換された複素環、非置換もしくは置換されたC3−C10シクロアルキル、N
(R8)2、CF3、NO2、(R8)O−、(R9)S(O)m−、(R8)C(O)
NH−、H2N−C(NH)−、(R8)C(O)−、(R8)OC(O)
−、N3、CN及び(R9)OC(O)NR8−からなる群から選択される1〜3
個のメンバーで置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択される)から選
択される;
R6及びR7は独立に、水素、アリール、複素環、C3−C10シクロアルキル、
C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1-6ペルフルオロアルキル、F、
Cl、Br、R8O−、R9S(O)m−、R8C(O)NR8−、CN、NO2、(
R8)2NC(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−、N3、−N(R8)2
、R9OC(O)NR8−、並びに非置換のC1−C6アルキル、又はアリール、複
素環、C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、
ペルフルオロアルキル、F、Cl、Br、R8O−、R9S(O)m−、R8C(O
)NR8−、CN、(R8)2NC(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−
、N3、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−から選択される1〜3個の基で
置換されたC1−C6アルキルからなる群から選択される;
各R8は独立に、水素、C1−C6アルキル、アリール及びアラルキルから選択
される;
各R9は独立に、C1−C6アルキル及びアリールから選択さ
れる;
A1及びA2は独立に、結合手、−CH=CH−、−C≡C−、−C(O)−、
−C(O)NR8−、−NR8C(O)−、−O−、−N(R8)−、−S(O)2
N(R8)−、−N(R8)S(O)2−及びS(O)mからなる群から選択される
;
Vは、水素、複素環、アリール、C1−C20アルキル(ここで、0〜4個の炭
素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられている)、及
びC2−C20アルケニルからなる群から選択されるが、但し、A1がS(O)mで
あるとき、Vは水素ではなく、A1が結合手、nが0且つA2がS(O)mである
とき、Vは水素ではない;
Wは複素環を表す;
Yはアリールを表す;
各n及び各pは独立に、0、1、2、3又は4を表す;
qは、1、2、3又は4である;
rは0〜5であるが、但しVが水素のとき、rは0である;
及び
tは0又は1である]
を有する化合物又は医薬として許容できるその塩に関する。発明の詳細な説明
本発明の化合物は、ファルネシル−タンパク質転移酵素及び癌遺伝子タンパク
質Rasのファルネシル化の阻害に有用であり、従って癌の治療に有用である。
本発明の化合物は、不斉中心を有しえ、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個
々のジアステレオマーとして存在しうるが、光学異性体を含む全ての可能な異性
体は本発明に包含される。
いずれの可変成分(例えば、アリール、複素環、R1、R2など)も任意の構成
成分中で2度以上存在するときには、各定義は独立である。
“アルキル”という用語並びにアルコキシ、アラルキル及び同様の用語のアル
キル部分は、特定数の炭素原子、又は特定されていなければ1〜6個の炭素原子
を有する分岐鎖及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含むものとする。シクロアル
キルは、飽和しており、3〜10個の原子を含む1〜2個の炭素環を意味する。
本明細書で使用する“ハロゲン”又は“ハロ”はフルオロ、クロロ、ブロモ及
びヨードを意味する。
本明細書で使用する“アリール”及びアラルキルのアリール
部分は、各環において最大7員の任意の安定な単環又は二環の炭素環(少なくと
も一つの環は芳香族である)を意味するものとする。このようなアリール要素の
例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル
、フェナントリル、アントリル、又はアセナフチルが含まれる。好適なアラルキ
ル基はベンジルである。
本明細書で使用する複素環(heterocyclyl,heterocycle及びheterocyclic)
という用語は、5〜7員の単環式又は8〜11員の二環式の複素環であって、飽
和又は不飽和であり、芳香族、部分的に芳香族、又は非芳香族であり、炭素原子
とN、O及びSからなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子からなることを
特徴とする該複素環を意味し、上記複素環のいずれかがベンゼン環に縮合してい
る任意の二環式基を包含する。複素環又は複素環系は、安定な構造ができる限り
任意のヘテロ原子又は炭素原子に結合してもよく、1〜3個のカルボニル基を含
みうる。このような複素環の例には以下のものが含まれるが、それらに限定され
ない。アゼピニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾフラ
ザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリ
ル、ベン
ゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、クロマニル、シンノリニル、ジヒドロベンゾ
フリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾチオピラニル、ジヒドロベン
ゾチオピラニルスルホン、フリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダ
ゾリル、インドリニル、インドリル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソ
キノリニル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、モル
ホリニル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサ
ゾリル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペルジニル、2−オキソピロリ
ジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリジニル、
ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリル、キナゾリ
ニル、キノリニル、キノキサリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキ
ノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスル
ホキシド、チアゾリル、チアゾリニル、チエノフリル、チエノチエニル、及びチ
エニル。
“ヘテロアリール”は複素環のサブセットであり、各環が最大7員からなる単
環系又は二環系であって、少なくとも一つの環は芳香族であり、1〜4個の炭素
原子が、N、O及びSから
なる群から選択されるヘテロ原子により置き換えられていることを特徴とする該
単環系又は二環系を意味する。例には、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイソオキサ
ゾリル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾフリ
ル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、クロマニル、シ
ンノリニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロベンゾチエニル、ジヒドロベンゾ
チオピラニル、ジヒドロベンゾチオピラニルスルホン、フリル、イミダゾリル、
インドリニル、インドリル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソキノリニ
ル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニ
ル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノ
リニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニ
ル、チアゾリル、チエノフリル、チエノチエニル、及びチエニルなどがある。
置換基から環系に引かれた線は、結合が、置換されることができる環原子の任
意のものに結合できることを示す。
例えば、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換された複素環、及び
置換されたシクロアルキルについて、使用される“置換された”という用語は、
ハロ、アリール、複素環、
C3-10シクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、R8O−、R9S(
O)m−、R8C(O)NR8−、CN、(R8)2NC(NR8)−、R8C(O)
−、R8OC(O)−、N3、−N(R8)2及びR9OC(O)NR8−から選択さ
れる1〜3個の置換基を有する、それぞれアルキル基、アリール基、複素環基及
びシクロアルキル基を意味する。
好ましくは、ハロ、アリール、R8O−、CN、R8C(O)−及び−N(R8
)2から選択される1〜2個の基が、置換されたアルキル、置換されたアリール
、置換された複素環、及び置換されたシクロアルキルに存在する。
好ましくは、R1a、R1b、及びR2は独立に、水素、−N(R8)2、R8C(O
)NR8−、又は非置換もしくは置換されたC1-C6アルキル(ここで、置換され
たC1−C6アルキル上の置換基は、非置換もしくは置換されたアリール、−N(
R8)2、R8O−及びR8C(O)NR8−から選択される)から選択される。
好ましくは、R3及びR4は水素及びC1−C6アルキルから選択される。
好ましくは、A3は−NR5C(O)−(ここで、R5は水素
を表す)を表す。
好ましくは、R6は、CN、NO2、又はR8O−を表す。
好ましくは、R7は、水素、非置換又は置換されたC1−C6アルキルを表す。
好ましくは、R8は、H又はC1−C6アルキルを表し、R9はC1−C6アルキル
である。
好ましくは、A1及びA2は独立に、結合手、−C(O)NR8−、−NR8C(
O)−、−O−、−N(R8)−、−S(O)2N(R8)−及び−N(R8)S(
O)2−から選択される。
好ましくは、Vは、水素、複素環及びアリールから選択される。より好ましく
は、Vはフェニルである。
好ましくは、Wは、イミダゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、ピラゾリ
ル、ピロリジニル、チアゾリル及びピリジルから選択される複素環である。より
好ましくは、Wはイミダゾリル及びピリジルから選択される。
好ましくは、mは2である。
好ましくは、n及びpは、0、1、2、又は3である。
好ましくは、tは1である。
本発明の化合物の一つのサブセットは、式Ia
[式中、
R3、R4、A3、A4、Y、R8、R9、m、n、p及びrは最初に定義したとお
りである;
各R1a、R1b、R2及びR10は独立に、水素及びC1−C6アルキルから選択さ
れる;
R5は、水素、並びに非置換のC1−C6アルキル、又は非置換もしくは置換さ
れたアリール、非置換もしくは置換された複素環、非置換もしくは置換されたC3
−C10シクロアルキル、−N(R8)2、CF3、−NO2、(R8)O−(R9)
S(O)m−、(R8)C(O)NH−、H2NC(NH)−、(R8)C(O)−
、(R8)OC(O)−、N3、CN及び(R9)OC(O)NR8−からなる群か
ら選択される1〜3個のメンバーで置換されたC1−C6アルキルからなる群から
選択される;
R6及びR7は独立に、水素、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−
C6アルキニル、C1−C6ペルフルオロア
ルキル、F、Cl、R8O−、R8C(O)NR8−、CN、NO2、(R8)2N−
C(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−、−N(R8)2、又はR9OC
(O)NR8−、並びにC1−C6ペルフルオロアルキル、R8O−、R8C(O)
NR8−、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−、−N
(R8)2及びR9OC(O)NR8−によって置換されたC1−C6アルキルから選
択される;
A1及びA2は独立に、結合手、−CH=CH−、−C≡C−、−C(O)−、
−C(O)NR8−、O、−N(R8)−、及びS(O)mから選択される:及び
Vは、水素;アリール;ピロリジニル、イミダゾリル、ピリジニル、チアゾリ
ル、ピリドニル、2−オキソピペリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノ
リニル及びチエニルから選択される複素環;C1−C20アルキル(ここで、0〜
4個の炭素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられてい
る);及びC2−C20アルケニル;から選択されるが、但し、A1がS(O)mの
場合、Vは水素ではなく、A1が結合手でA2がS(O)mの場合、Vは水素では
ない]
によって表される。
本発明の化合物の第2のサブセットは、式Ib
[式中、
R1a、R1b、R2、R10、A1、A2、A4、Y、R3、R4、R5、R6、R8、R9
、m、n、p、q及びrは最初に定義したとおりである;
R7は水素及びC1−C6アルキルから選択される;
Vは、水素;ピロリジニル、イミダゾリル、ピリジニル、チアゾリル、ピリド
ニル、2−オキソピペリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル及び
チエニルから選択される複素環;アリール;C1−C20アルキル(ここで、0〜
4個の炭素原子が、O、S及びNから選択されるヘテロ原子で置き換えられてい
る);及びC2−C20アルケニル;から選択されるが、但し、A1がS(O)mの
場合、Vは水素ではなく、A1が結合手で、nは0且つA2がS(O)mの場合、
Vは水素ではない;及び
Wは、ピロリジニル、ピリジニル、チアゾリル、ピリドニル、2−オキソピペ
リジニル、インドリル、キノリニル及びイソキ
ノリニルから選択される複素環を表す]
によって表される。
本発明の第3の実施態様は、式Ic
[式中、
各R1b及びR10は独立に、水素及びC1−C6アルキルから選択される;
R3、R4、A4、R8、R9、m、p、q及びYは最初に定義したとおりである
;及び
R6は、水素、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル
、C1−C6ペルフルオロアルキル、F、Cl、R8O−、R8C(O)NR8−、
CN、NO2、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)−、R8OC(O)−、
−N(R8)2、又はR9OC(O)NR8−、並びにC1−C6ペルフルオロアルキ
ル、R8O−、R8C(O)NR8−、(R8)2N−C(NR8)−、R8C(O)
−、R8OC(O)−、−N(R8)2もしくはR9OC(O)NR8−によって置
換された
C1−C6アルキルからなる群から選択される]
によって表される。
本発明の化合物の特別の例は、 及び医薬として許容できるそれらの塩である。
本発明の化合物の医薬的に許容できる塩には、例えば非毒性の無機酸又は有機
酸から形成される本発明の化合物の通常の非毒性塩がある。例えば、このような
通常の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸
などの無機酸から得られる塩:及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール
酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ
酸(pamoic)、マレイン酸、ヒドロキシ
マレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニ
ル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホ
ン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの
有機酸から製造される塩がある。
本発明の化合物の医薬的に許容できる塩は、塩基性部分を含む本発明の化合物
から通常の化学的方法により合成されることができる。一般的には、塩は、イオ
ン交換クロマトグラフィーによって、あるいは適切な溶媒中、又は溶媒の種々な
組合せ物中で、遊離塩基を所望の塩を形成する無機酸又は有機酸の化学量論的量
又は過剰量と反応させることによって製造する。
本発明の化合物を製造するために使用される反応は、スキーム1−12に記載
の反応、並びに文献で公知であるか、又は本明細書の実験方法で例示した、エス
テル加水分解、保護基の切断などの他の標準的操作を用いて行う。スキームに示
す置換基R’及びR’CH2−は、合成する本発明の化合物により、置換基R8、
R9などを表す。変化しうるp’はp−1を表す。
これらの反応を、順番通りに用い、本発明の化合物を得ることができるし、又
はフラグメントを合成するために、これらの
反応を用い、次に、スキームで記載したアルキル化反応によってフラグメントを
結合しうる。スキーム1−14の概要
必要な中間体は、市販されているか、又は文献に記載の方法で製造できる。ス
キーム1−4は、可変成分Wが、適切に置換されたベンジル基で置換されたイミ
ダゾリル基として存在することを特徴とする本発明の好適な面を示す。しかし、
Wの他の基も同様にここで適用できる。置換された保護イミダゾールアルキルア
ミンI(スキーム1)は、J.C.Emmettら,J.Med.Chem.,1982,25,1168-1174に
よって記載の方法のような方法で、F.Schneider,Z.Physiol.Chem.,3:206-210(
1961)及びC.P.Stewart,Biochem.Journal,17:130-133(1923)によって記載の方
法のような方法で製造できる置換された保護イミダゾールから製造できる。一般
的に、ヘテロアリールアルキルアミンI又は同様の中間体は、非プロトン性溶媒
中の適切な塩基存在下、アシル部分からのハロ基のような脱離基の置換により連
結部分と反応させることができる。同様に、
て鎖に結合させることができる。
スキーム2のようにチオエーテル結合が存在する場合、適切な酸化剤を用いて
、硫黄をスルホキシド又はスルホンに酸化できる。
A4がアミノ又はエーテル結合を表す場合、アミノ又はエーテル結合は、それ
ぞれスキーム3又は4のように同様に生成させることができる。
スキーム5−8は、可変成分Wがピリジル部分として存在することを特徴とす
る適切に置換されたアミンの合成を示す。可変成分Wとして他の複素環部分が導
入されているアルカノールの製造の同様の合成戦略も適切である。
スキーム9に示すように、ジアミンIXはアルデヒドIVから得ることができる。
アルデヒドIVは最初に還元的アミン化され、次いで脱ベンジル化され、アミンVI
を得る。有機塩基(例えばトリエチルアミン)を含む、DMFのような極性溶媒
中で、ブロモアセチルブロミドのような二官能性化合物とのカップリング、次い
でアリールチオールVIIの添加により、VIIIを得る。脱保護により、本化合物IX
を得る。
スキーム10に示すように、化合物IXは更に選択的に保護化
され、Xを得ることができるが、次にそれを、XIのような第2のアルデヒドで還
元的アルキル化して、XIIを得ることができる。保護基の除去(XIIIへ)及びジ
ヒドロイミダゾールXIVのような環状化生成物への変換は文献記載の方法で行う
ことができる。
アミノアルカノールXVI(標準的方法を用いてアミノ酸XVの還元により得られ
る)が上記条件下でカップリングされるならば、XVIIのようなアルコールが得ら
れる(スキーム11)。該アルコールは標準的条件下、例えばアルデヒドXVIII
に酸化されることができ、次にそれを、グリニャール試薬のような種々の有機金
属試薬と反応させて、XIXのような第2級アルコールを得ることができる。更に
、十分に脱保護されたアミノアルコールXX(スキーム12)は、種々のアルデヒ
ドで還元的アルキル化され(上記条件下)、XXIのような第2級アミン又は第3
級アミンを得ることができる。
Boc保護アミノアルコールXVIIはまた、XXIIのような2−アジリジニルメチ
ルアミドを合成するために利用することができる(スキーム13)。XVIIを、ジ
メチルホルムアミドのような溶媒中、1,1’−スルホニルジイミダゾールと水
素化ナトリウムで処理すると、アジリジンXXIIが生成する。該ア
ジリジンは、塩基の存在下、チオールのような求核試薬と反応させて、開環生成
物XXIIIを得ることができる。次いで脱保護により、XXIVを得る。
更に、スキーム14に示すように、標準的方法により、ジアミンXXIXは、O−
アルキル化チロシンXXVIのようなアミノ酸から得ることができる。中間体XXIXは
最初に、ブロモアセチルブロミドのような二官能性化合物と結合させ、次いでア
リールチオールVIIの添加(上記)により、XXXを得る。R’がアリール基のとき
、XXXは最初に水素化され、フェノールのマスクをはずすことができ、アミン基
は酸で脱保護化され、XXXIIを生成させることができる。あるいは、XXXのアミン
保護基を除去でき、XXXIのようなO−アルキル化フェノール性アミンを生成させ
ることができる。
スキーム1 スキーム2 スキーム3 スキーム4 スキーム5 スキーム6 スキーム7 スキーム8 スキーム9 スキーム10 スキーム10(続き) スキーム11 スキーム12 スキーム13 スキーム14 スキーム14(続き) 本発明の化合物は、癌の治療に有用である。本発明の化合物で治療できる癌に
は、結腸直腸癌、膵外分泌腺癌、骨髄性白血病、及び神経系腫瘍があるが、それ
らに限定されない。このような腫瘍は、ras遺伝子それ自身の変異、Ras活
性を制御できるタンパク質(即ち、神経線維腫(NF−1)、neu、scr、
abl、lck、fyn)の変異、又は他の機構により起りうる。
本発明の化合物は、ファルネシル−タンパク質転移酵素及び癌遺伝子タンパク
質Rasのファルネシル化を阻害する。本発明の化合物は腫瘍血管新生も阻害し
、そのため腫瘍の成長に影響を及ぼしうる(J.Rakら,Cancer Research,55:457
5-4580(1995))。本化合物のこのような抗血管新生という性質も、網膜血管新生
関連失明のある種の型の治療にも有用でありうる。
本発明の化合物はまた、Rasタンパク質が、他の遺伝子の発癌的変異の結果
(即ち、Ras遺伝子それ自体は、発癌形態への変異によって活性化されない)
として異常に活性化されることを特徴とする他の疾患の阻害又は治療にも有用で
あり、該阻害は、このような治療の必要な哺乳動物に有効量の本発明の化合物の
投与によって行う。例えば、NF−1の一症状は良性
増殖性疾患である。
本発明の化合物は、ウイルス感染の治療、特に肝炎デルタウイルス及び関連ウ
イルスの治療にも有用でありうる(J.S.Glennら,Science,256:1331-1333(1992
))。
本発明の化合物は、新生内膜形成阻害による、経皮的管腔冠血管形成後の再発
狭窄症の予防にも有用である(C.Indolfiら,Nature medicine,1:541-545(1995
))。
本化合物は、多発性嚢胞腎疾患の治療と予防にも有用でありうる(D.L.Schaff
nerら,American Journal of Pathology,142:1051-1060(1993);B.Cowley,Jr
ら,FASEB Journal,2:A3160(1988))。
本発明の化合物は、真菌感染の治療にも有用でありうる。
本発明の化合物は、単独で、又は好ましくは、医薬として許容できる担体と組
合せて式Iの化合物からなる医薬組成物の形態で、医薬として許容できる担体も
しくは希釈剤と組合せて、哺乳動物、特にヒトに投与できる。本発明の化合物は
、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下経路投与を含む、経口、局所、経直腸、経膣、
経皮、又は非経口的に投与できる。
経口使用の場合、本化合物は、例えば、錠剤もしくはカプセ
ルの形態で、又は溶液もしくは懸濁液として投与する。経口使用の錠剤の場合、
通常使用する担体には、乳糖及びコーンスターチがある。ステアリン酸マグネシ
ウムのような潤滑剤も通常加える。カプセル形態での経口投与の場合、希釈剤に
はまた、乳糖及び乾燥コーンスターチがある。水性懸濁液が経口使用に必要の場
合、活性成分を乳化剤及び懸濁剤と組合せる。所望ならば、ある種の甘味料及び
/又はフレーバー剤を加えることができる。筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内での
使用の場合、通常活性成分の滅菌液を製造するが、溶液のpHを適切に調整し、
製剤を緩衝化する。静脈内使用の場合、合計濃度は、製剤を等張にするように制
御すべきである。
本発明の化合物はまた、治療する疾患に対し特別の有用性のために選択される
他の周知の治療薬と共投与することもできる。例えば、本発明の化合物は、公知
の抗癌剤及び細胞毒性剤と組合せて有用でありうる。同様に、本発明の化合物は
、NF−1、再発狭窄症、多発性嚢胞腎疾患、肝炎デルタウイルスと関連ウイル
スの感染、及び真菌感染の治療と予防に有効な薬剤と組合せて有用でありうる。
一定の投与量として製剤される場合、このような組合せ品で
は、実質的に下記の投与量範囲内の本発明の化合物と、典型的には許容できる投
与量範囲内の他の医薬として活性な薬剤を用いる。あるいは、組合せ製剤が不適
当な場合には、本発明の化合物は、公知の医薬として許容できる薬剤と逐次的に
使用できる。
通常、1日当りの投与量は、個々の患者の年齢、体重、反応、並びに患者の疾
患の程度により投与量を変えられる処方医によって決定される。
一つの典型的な適用においては、適切な量の化合物が、癌の治療を受ける哺乳
動物に投与される。1日当り約0.1〜約60mg/体重kg、好ましくは0.
5〜約40mg/体重kgが投与される。
本発明の化合物は、組成物中のファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTa
se)の存在と量の迅速測定のアッセイにおける成分としても有用である。即ち
、試験する組成物を分割し、2個の部分を、FPTaseの公知の基質(例えば
、アミン末端にシステインを有するテトラペプチド)及びファルネシルピロリン
酸、及び混合物の一つには本発明の化合物を含む混合液と接触させることができ
る。アッセイ混合物を、FPTase
が基質をファルネシル化するのに十分な時間(当業者周知)インキュベートした
後、アッセイ混合液の化学的内容を、周知の免疫学的、放射化学的、又はクロマ
トグラフィー技術で決定できうる。本発明の化合物は、FPTaseの選択的阻
害剤であるので、本化合物を含むアッセイ中の変化しない基質の存在に対し、本
発明の化合物を含まないアッセイ混合液中の基質の存在しないこと又は基質量の
定量的減少は、試験組成物中のFPTaseの存在を示す。
上記のようなアッセイは、ファルネシル−タンパク質転移酵素を含む組織サン
プルの同定と該酵素の定量に有用であることは、当業者に自明であろう。即ち、
本発明の強力な阻害化合物は、サンプル中の酵素量の測定のために、活性部位滴
定アッセイで使用できる。未知量のファルネシル−タンパク質転移酵素、過剰量
のFPTaseの既知基質(例えば、アミン末端にシステインを有するテトラペ
プチド)及びファルネシルピロリン酸を含む組織抽出液のアリコートからなる一
連のサンプルを、種々の濃度の本発明の化合物の存在下、適切な時間インキュベ
ートする。サンプルの酵素活性を50%阻害するのに必要な十分に強力な阻害剤
(即ち、アッセイ容器中で酵素濃度よりかな
り小さいKiを有する阻害剤)の濃度は、その特定のサンプル中の酵素濃度の半
分にほぼ等しい。
実施例1 4−シアノベンジルヒスタミン Nr−ピバロイルオキシメチル−Nα−フタロイルヒスタミン(4.55g,
12.8mmol;上記のように製造(J.C.Emmett,F.H.Holloway,and J.L.Turn
er,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1341(1979)))とα−ブロモ−p−トルニト
リル(3.77g,19.2mmol)をアセトニトリル(70mL)に溶解し
た。溶液を55℃で4時間加熱し、室温に冷却し、濾過し、白色固体を除去した
。アセトニトリル(30mL)を、減圧下、容量の1/2まで濃縮し、溶液を5
5℃で一晩加熱した。溶液を冷却し、濾過し、白色固体を得た。濾液の容量を1
0mLに減少させ、溶液を55℃で1時間加熱し、次に室温に冷却し、EtOA
c(25mL)で希釈し、濾過し、更なる白色固体を得た。固体を一緒にし、乾
燥し、更に精製せずに用いた。
メタノール(100mL)中の1−ピバロイルオキシメチル−3−(4−シア
ノベンジル)−4−(2−フタルイミドエチル)イミダゾリウムブロミド(6.
31g,11.1mmol)をアンモニア気体で飽和させ、温度を30℃未満に
保った。溶液を1時間撹拌し、濃縮乾固し、CH2Cl2(3×200mL)で抽
出し、乾燥し(MgSO4)、濃縮し、クロマトグラフィーを行い(シリカゲル
,MeOH/CH2Cl2/NH4OH 10:90:1)、4−シアノベンジル
−Nα−フタロイルヒスタミンを得た。
4−シアノベンジル−Nα−フタロイルヒスタミン(1.64g,4.61m
mol)とヒドラジン(1.46mL,46.1mmol)を無水EtOH(7
0mL)に溶解した。1時間後、溶液を濃縮し、濾過し、白色沈殿を除去し、そ
れをEtOHで数回洗浄した。濾液を濃縮し、残渣のクロマトグラフィーを行い
(シリカゲル,MeOH/CH2Cl2/NH4OH 10:90:1)、標記化
合物を得た。
実施例2 2−フェニルチオ−N−2−{1−(4−シアノベンジル)イミダゾール−5− イル}エチルアセトアミド 室温のDMF(8mL)中の4−シアノベンジルヒスタミン(100mg,0
.33mmol)とEt3N(92μL,0.66mmol)の溶液に、2−ブ
ロモアセチルブロミド(35μL,0.4mmol)を加えた。15分後、チオ
フェノール(80μl,0.72mmol)とEt3N(92μL,0.66m
mol)を加え、混合液を更に1時間撹拌した。混合液をH2OとEtOACに
注ぎ、EtOACで抽出し(3回)、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)
、濾過し、蒸発させ、油状物を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;
5%MeOH/CHCl3)による精製で、清澄な油状物を得、それをエーテル
中1N HClで処理し、溶媒を真空除去し、標記化合物(塩酸塩)を白色固体
として得た。
C21H20N4OS・1.2HCl・0.15H2Oについて分析:計算値C,59
.63;H,5.12;N,13.25;
実測値C,59.66;H,5.12;N,13.32。実施例3 2−フェニルチオ−S−オキシド−N−2−{1−(4−シアノベンジル)イミ ダゾール−5−イル}エチルアセトアミド CH2Cl2(5mL)中の2−フェニルチオ−N−2−{1−(4−シアノベ
ンジル)イミダゾール−5−イル}エチルアセトアミド(実施例1;91mg,
0.24mmol)の溶液を、m−CPBA(83.5mg;〜0.48mmo
l)で処理し、混合液を室温で1時間撹拌した。溶液を飽和NaHCO3溶液に
注ぎ、CH2Cl2で抽出し(3回)、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)
、真空濃縮した。カルムクロマトグラフィー(シリカゲル;5%MeOH/CH
Cl3)により油状物を得、それを分取HPLC(H2O/CH3CN(0.1%
TFA含有);グラジエント)で更に精製し、第1溶出化合物を集めた。この溶
液を凍結乾燥し、標記化合物をトリフルオロ酢酸塩として得た。1
H NMR(300MHz,CD3OD)δ2.8(2H,m),
3.5(2H,m),3.68(1H,d,J=13.3Hz),3.77(1
H,d,J=13.3Hz),5.61(2H,s),7.48(3H,m),
7.58(3H,m),7.7(2H,m),7.82(2H,d,J=8.6
Hz),8.43(1H,m),9.01(1H,s)。
実施例4 2−フェニルチオ−S,S−ジオキシド−N−2−{1−(4−シアノベンジル )イミダゾール−5−イル}エチルアセトアミド 実施例2に記載の方法に従い、但し、HPLC精製でより遅く溶出される化合
物を集め、次いで凍結乾燥を行い、標記化合物をトリフルオロ酢酸塩として得た
。1
H NMR(300MHz,CD3OD)δ2.8(2H,t,J=6.5Hz
),3.42(2H,m),4.11(2H,s),5.61(2H,s),7
.47(2H,d,J=8.5Hz),7.52(1H,s),7.63(2H
,m),
7.75(2H,m),7.82(2H,d,J=8.5Hz),7.90(2
H,m),8.49(1H,m),9.01(1H,s)。Rasファルネシル転移酵素のインビトロ阻害
ファルネシル−タンパク質転移酵素のアッセイ。部分精製ウシFPTase及
びRasペプチド(Ras−CVLS,Ras−CVIM及びRas−CAIL
)をそれぞれ、Schaberら、J.Biol.Chem.265,14701-14704(1990);Pomplianoら
,Biochemistry 31:3800(1992);及びGibbsら、PNAS USA 86,6630-6634(1989)に
よって記載されたように調製した。ウシFPTaseを、100mM N−(2
−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPE
S),pH7.4、5mMMgCl2、5mMジチオトレイトール(DTT)、
100mM[3H]−ファルネシル二リン酸([3H]−FPP;740CBq/
mmol,New England Nuclear)、650nM Ras−CVLS及び10μg
/mL FPTaseを含む容量100μL中で、31℃、60分間アッセイし
た。反応をFPTaseで開始させ、エタノール中の1.0M HCl 1mL
で停止させた。沈殿物を、TomTec Mach II細胞回収器を用いてフィ
ルター−マット上に回収し、100%エタノールで洗浄し、乾燥し、LKB β
−プレートカウンターで計測した。アッセイは、両方の基質、FPTaseレベ
ル及び時間に関し直線であった。[3H]−FPPの10%未満が反応時間中利
用された。精製化合物を100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、
アッセイ溶液中に20倍希釈した。試験化合物の存在下での放射活性の取込み量
を、試験化合物の非存在下での取込み量と比較して、%阻害を測定する。
ヒトFPTaseは、Omerら,Biochemistry 32:5167-5176(1993)に記載のよ
うに調製した。ヒトFPTase活性は、0.1%(w/v)ポリエチレングリ
コール20,000、10μM ZnCl2及び100nM Ras−CVIMを
反応混合液に加えたということを除いて、上記のようにアッセイした。反応を3
0分間行い、エタノール中30%(v/v)トリクロロ酢酸100μLで停止さ
せ、ウシの酵素の場合での上記のように処理した。インビボrasファルネシル化アッセイ
本アッセイで使用した細胞系は、ウイルスHa−ras p21を発現する、
Rat1細胞又はNIH3T3細胞由来のv
−ras系である。アッセイは、本質的にDeClue,J.E.ら,Cancer Research 51:7
12-717(1991)に記載のように行う。10cmディッシュ中50−75%密集度の
細胞を、試験化合物(溶媒、即ちメタノール又はジメチルスルホキシドの最終濃
度は0.1%)で処理する。37℃で4時間後、10%レギュラーDMEM、2
%ウシ胎児血清及び400mCi[35S]メチオニン(1000Ci/mmol
)を補充したメチオニン非含有DMEM3mL中で細胞を標識する。更に20時
間後、溶解緩衝液(1%NP40/20mM HEPES,pH7.5/5mM
MgCl2/1mM DTT/10mg/mLアプロチネン/2mg/mLロイ
ペプチン/2mg/mLアンチパイン/0.5mMPMSF)1mL中で細胞を
溶解し、溶解液を100,000×g、45分間の遠心で清澄化する。等数の酸
沈殿カウントを含む溶解液のアリコートを、IP緩衝液(DTTを欠く溶解緩衝
液)で1mLにし、ras−特異的モノクローナル抗体Y13−259(Furth,
M.E.ら,J.Virol.43:294-304(1982))で免疫沈殿させる。4℃で2時間の抗体
インキュベーション後、ウサギ抗ラットIgGで被覆したプロテインA−セファ
ロースの25%懸濁液200mLを45分間加える。免疫沈殿物を、
IP緩衝液(20nM HEPES,pH7.5/1mMEDTA/1%Tri
ton X−100,0.5%デオキシコレート/0.1%SDS/0.1M
NaCl)で4回洗浄し、SDS−PAGEサンプル緩衝液中で煮沸し、13%
アクリルアミドゲルにかける。色素前線が底に到達したときに、ゲルを固定し、
Enlighteningで濯ぎ、乾燥し、オートラジオグラフィーを行う。ファルネシル化
及び非ファルネシル化rasタンパク質に対応するバンドの強度を比較し、タン
パク質へのファルネシル転移の%阻害を決定する。インビボ成長阻害アッセイ
FPTase阻害の生物的結果を決定するために、v−ras、v−raf、
又はv−mos癌遺伝子で形質転換されたRat1細胞の足場−非依存性成長に
対する本発明の化合物の効果を試験する。Rasで誘導される細胞形質転換のた
めの本化合物の特異性を評価するための解析に、v−Raf及びv−Mosで形
質転換された細胞を含めることができる。
v−ras、v−raf、又はv−mosで形質転換されたRat1細胞を、
底のアガロース層(0.6%)上の培地A(10%ウシ胎児血清を添加したダル
ベッコ改変イーグル培地)中
の0.3%トップアガロース層に、密度1×104細胞/プレート(直径35m
m)で播く。両層は、0.1%メタノール又は適当な濃度の本化合物(アッセイ
で使用する最終濃度の1000倍で、メタノールに溶解する)を含む。細胞に、
1週間に2度、0.1%メタノール又は本化合物を含む培地A0.5mLを供給
する。培養液を播いた16日後に、光学顕微鏡写真をとり、比較する。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 35/00 A61K 31/00 635
A61K 31/4164 31/415 606
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AU,AZ
,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CN,CU,
CZ,EE,GE,HU,IL,IS,JP,KG,K
R,KZ,LC,LK,LR,LT,LV,MD,MG
,MK,MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,
SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,U
S,UZ,VN,YU