WO2024142950A1 - 防水部材、防水ケース、及び電子機器 - Google Patents

防水部材、防水ケース、及び電子機器

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WO2024142950A1
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本発明は、防水性と通音特性とを両立させることに適した防水部材、これを備えた防水ケース及び電子機器を提供する。防水部材は、防水膜を備える。防水膜は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E'が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす。 (i)引張試験により測定した初期弾性率が、30MPa以上かつ100MPa以下である。 (ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、防水膜に針が貫通するまでの最大応力を、最大応力到達時の防水膜の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率が、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。

Description

防水部材、防水ケース、及び電子機器
 本発明は、防水部材、これを備えた防水ケース及び電子機器に関する。
 スピーカー及びブザー等の発音部、並びに、マイク等の受音部のような音響に関わる部品(音響部品)を備えた電子機器には、例えば、スマートウォッチをはじめとするウェアラブルデバイス、スマートフォン、携帯電話、及びデジタルカメラのように、持ち運んで屋外で使用される機器も多く存在する。近年、このような音響部品を備えた電子機器に対して、通音特性を確保しつつ、防水機能を付与することが求められている。既に、防水スマートウォッチ及び防水スマートフォン等が普及しており、それらの機器の音響部分(音響部品)を保護するために、防水通音機能を有するフィルタ(防水通音部材)が使用されている。
 例えば、マイク及びスピーカーを備えた防水スマートウォッチの筐体には、マイク及びスピーカーに対応する位置にそれぞれ開口が設けられている。それらの開口を防水通音部材で塞ぐことによって、通音特性及び防水性の確保が図られている。
 従来、防水通音部材として、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と記載する)等を用いた微孔性膜を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、防水通音部材として、エラストマーを用いた無孔性膜を使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。エラストマーを用いた防水通音部材は、無孔膜であるがゆえにPTFE等の微孔性膜に比べて防水性に優れる。
特表2003-503991号公報 特開2014-7738号公報
 しかし、防水性と通音特性とはトレードオフの関係にあるため、これまで両者の両立は困難であった。
 そこで、本発明は、防水性と通音特性とを両立させることに適した防水部材、これを備えた防水ケース及び電子機器の提供を目的とする。
 本発明者らは、鋭意検討した結果、エラストマーを含む防水膜の貯蔵弾性率及び初期弾性率をそれぞれ一定の範囲に調整することにより、上記目的が達成されることを見出した。
 本発明は、
 防水膜を備え、
 前記防水膜は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす、防水部材、
 を提供する。
(i)引張試験により測定した初期弾性率が、30MPa以上かつ100MPa以下である。
(ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、前記防水膜に針が貫通するまでの最大応力を、前記最大応力到達時の前記防水膜の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率が、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
 別の側面において、本発明は、
 開口が形成されたフレームを含むケースと、
 前記開口を塞ぐように前記フレームに配置された、上記本発明の防水部材と、を備えた、
 防水ケース、
 を提供する。
 さらに別の側面において、本発明は、
 開口が形成された筐体と、
 前記開口を塞ぐように前記筐体に配置された、上記本発明の防水部材と、を備えた、
 電子機器、
 を提供する。
 本発明によれば、防水性と通音特性とを両立させることに適した防水部材、これを備えた防水ケース及び電子機器を提供することができる。
図1Aは、本発明の防水部材の一例を模式的に示す断面図である。 図1Bは、図1Aの防水部材を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1Aの防水部材が機器の筐体に設置された状態の一例を示す断面図である。 図3Aは、本発明の防水部材の別の例を模式的に示す断面図である。 図3Bは、図3Aの防水部材を模式的に示す斜視図である。 図4は、図3Aの防水部材が機器の筐体に設置された状態の一例を示す断面図である。 図5Aは、本発明の防水ケースの一例を示す正面図である。 図5Bは、図5Aの防水ケースの背面図である。 図6Aは、図5AのA-A線に沿った断面図である。 図6Bは、図5AのB-B線に沿った断面図である。 図7Aは、防水ケース及び電子機器の配置を示す上方斜視図である。 図7Bは、防水ケース及び電子機器の配置を示す下方斜視図である。 図8は、本発明の電子機器の一例を示す正面図である。 図9は、サンプル1~3の引張試験による伸びと応力との関係を示すグラフである。 図10は、サンプル群1~3の厚さと耐水圧との関係を示すグラフである。 図11は、動的粘弾性測定試験を説明するための模式的な側面図である。 図12は、突き刺し試験を説明するための模式的な断面図である。 図13は、防水膜の挿入損失を評価する方法を説明するための模式図である。
 本発明の第1態様にかかる防水部材は、
 防水膜を備え、
 前記防水膜は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす。
(i)引張試験により測定した初期弾性率が、30MPa以上かつ100MPa以下である。
(ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、前記防水膜に針が貫通するまでの最大応力を、前記最大応力到達時の前記防水膜の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率が、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
 本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる防水部材では、前記防水膜は、周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失が10dB以下である。
 本発明の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる防水部材では、前記防水膜は、JIS L1092:2009に定められた耐水度試験B法(高水圧法)に準拠して測定した耐水圧が、200kPa以上かつ300kPa以下である。
 本発明の第4態様において、例えば、第1~第3態様のいずれか1つにかかる防水部材では、前記防水膜は、JIS K6253:2012に定められたタイプAデュロメータ硬さ試験に準拠して測定した硬度が、40以上かつ60以下である。
 本発明の第5態様において、例えば、第1~第4態様のいずれか1つにかかる防水部材では、前記防水膜は、エラストマーを含む。
 本発明の第6態様において、例えば、第5態様にかかる防水部材では、前記エラストマーは、シリコーンゴム及びウレタンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
 本発明の第7態様において、例えば、第5態様にかかる防水部材では、前記エラストマーは、シリコーンゴムである。
 本発明の第8態様において、例えば、第1~第7態様のいずれか1つにかかる防水部材では、前記防水膜の目付量が30g/m2より大きい。
 本発明の第9態様において、例えば、第5態様にかかる防水部材では、前記エラストマーは、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの混合物である。
 本発明の第10態様において、例えば、第1~第9態様のいずれか1つにかかる防水部材では、前記防水膜の少なくとも一方の主面に撥油処理が施されている。
 本発明の第11態様において、例えば、第1~第10態様のいずれか1つにかかる防水部材では、前記防水膜は、着色剤を含有する。
 本発明の第12態様において、例えば、第1~第11態様のいずれか1つにかかる防水部材は、前記防水膜に接合された粘着剤層をさらに備える。
 本発明の第13態様にかかる防水ケースは、
 開口が形成されたフレームを含むケースと、
 前記開口を塞ぐように前記フレームに配置された、第1~第12態様のいずれか1つにかかる防水部材と、を備える。
 本発明の第14態様にかかる電子機器は、
 開口が形成された筐体と、
 前記開口を塞ぐように前記筐体に配置された、第1~第12態様のいずれか1つにかかる防水部材と、を備える。
 以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
 [防水部材]
 本実施形態の防水部材の一例を図1A~1Bに示す。図1A~1Bに示す防水部材10は、防水膜1を備える。図2は、防水部材10が筐体50の開口51を塞ぐように配置された状態の一例を示す断面図である。図2に示すように、防水部材10は、筐体50の開口51を塞ぐように配置されて使用される。
 防水膜1は、音の通過を許容しつつ水の侵入を防ぐ膜である。防水膜1は、開口51を塞ぐ形状を有している。防水膜1は、筐体50に配置されたときに開口51に面する第1主面1aと、開口51とは反対側に面する第2主面1bとを有する。本明細書において、「開口に面する」とは、開口側に向いていることを意味し、2つの部材が互いに対向する場合に限定されず、2つの部材の間に別の部材が存在する場合も含む。
 防水膜1は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす。
(i)引張試験により測定した初期弾性率Etが、30MPa以上かつ100MPa以下である。
(ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、防水膜1に針が貫通するまでの最大応力を、最大応力到達時の防水膜1の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率EPが、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
 本実施形態において、動的粘弾性測定試験による測定範囲は、通音特性の測定範囲である周波数0~20kHzである。
 特許文献2において提案されているようなエラストマーからなる防水膜を含む音響部品用保護部材では、防水性と通音特性との両立は困難であった。本発明者らは、この課題について検討を進め、特に、エラストマーからなる防水膜は、低周波数域(周波数100~500Hz)の音に対する挿入損失が高いという新たな課題を発見した。低周波数域の音に対する挿入損失を低減することができれば、防水性を確保しつつ通音特性を向上させた防水部材を提供できる。そこで、本発明者らは、防水膜について、低周波数域の音に対する挿入損失を低減する方法について鋭意検討した。その結果、膜の弾性率に着目することに想到した。
 膜の振動速度は、膜の通音特性に影響する。具体的には、膜の振動速度が増加すると、挿入損失が低下し、膜の通音特性が向上する。振動速度は、振動による変位量を時間で微分した値である。そのため、膜の変位量を増加させれば、膜の振動速度は増加する。これらの知見に基づき、本発明者らは、膜の通音特性を向上させるために、膜の弾性率を調整することに想到した。
 さらに、本発明者らは、膜は周波数によって異なる特性を示すことから、周波数に依存するパラメータである貯蔵弾性率E’は、通音特性との相関性がより高いという知見を得た。これらの知見に基づき、本発明者らは、低周波数域における膜の通音特性を向上させるために、膜の貯蔵弾性率E’を低減することに想到した。一方、本発明者らの検討によると、初期弾性率Et及び突刺し弾性率EPは、膜の防水性に影響を与える。
 貯蔵弾性率E’が上記の範囲に調整され、かつ、上記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす防水膜1は、防水性を確保しながら、低周波数域における挿入損失を低減させうる。そのため、防水部材10は、防水性と通音特性とを両立させることに適している。
 防水膜1は、貯蔵弾性率E’の下限が、3.5×106Paであってもよく、4.5×106Paであってもよく、5.5×106Paであってもよく、さらには、6.5×106Paであってもよい。防水膜1は、貯蔵弾性率E’が、6.7×106Pa以上かつ7.4×106Pa以下であってもよい。
 防水膜1は、初期弾性率Etの上限が、90MPaであってもよく、80MPaであってもよく、70MPaであってもよく、60MPaであってもよく、さらには、55MPaであってもよい。防水膜1は、突刺し弾性率Epの上限が、35MPaであってもよく、30MPaであってもよく、さらには、25MPaであってもよい。防水膜1は、初期弾性率Etが、31MPa以上かつ54MPa以下であること、及び、突刺し弾性率Epが、9.5MPa以上かつ23MPa以下であること、から選ばれる少なくとも1つを満たしてもよい。
 (貯蔵弾性率E’の測定方法)
 貯蔵弾性率E’は、以下に説明する引張モードの動的粘弾性測定試験により測定することができる。動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)は、サンプル片の粘弾性挙動を知る方法の一つである。図11は、DMA装置の引張モードを説明するための模式的な側面図である。まず、防水膜1を幅10mm×長さ20mmの短冊状に切り出し、サンプル片S1とする。次に、図11に示すDMA装置80において、長手方向が垂直方向となるようにサンプル片S1を測定ヘッド81にクランプする。クランプされたサンプル片S1に対して、荷重発生部82からプローブ83を介して引張方向の応力(周波数による正弦波応力)σを付与する。測定周波数は、0~20kHzの範囲である。このとき、サンプル片S1は、温度調節器84により-10~10℃に温度調整されている。応力σは、サンプル片S1の歪振幅が一定となるように付与される。サンプル片S1は、応力σに対し、粘性成分に依存した位相の遅れをもって同様な正弦波状の歪応答を与える。変位検出部85は、応力σと歪εの振幅比σ/ε及び位相差δを検出する。振幅比σ/ε及び位相差δを用いて、貯蔵弾性率E’を算出できる。このようにして算出した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率を、防水膜1の貯蔵弾性率E’とみなす。本実施形態では、5個のサンプル片S1について応力σと歪εの振幅比σ/ε及び位相差δを検出し、これらの検出値から算出された貯蔵弾性率E’の平均値を防水膜1の貯蔵弾性率E’とする。
 (初期弾性率Etの測定方法)
 初期弾性率Etは、ヤング率とも呼ばれ、以下に説明する方法により測定することができる。まず、防水膜1を幅5mm×長さ60mmの短冊状に切り出し、サンプル片S2とする。引張試験機を用いて、25℃、チャック間距離40mm、速度300mm/分の条件で、サンプル片S2を長手方向に引張り、伸び10%時の弾性率を測定する。このようにして測定した弾性率を、防水膜1の初期弾性率Etとみなす。本実施形態では、5個のサンプル片S2について初期弾性率Etを測定し、これらの測定値の平均値を防水膜1の初期弾性率Etとする。
 (突刺し弾性率Epの算出方法)
 突刺し弾性率Epは、JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して、以下に説明する方法により求めることができる。図12は、突き刺し試験を説明するための模式的な断面図である。まず、防水膜1を幅10mm×長さ100mmの短冊状に切り出し、サンプル片S4とする。次に、図12に示すように、サンプル片S4を冶具90に固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針91を10mm/minの速度でサンプル片S4に突き刺し、サンプル片S4に針が貫通するまでの最大応力p(gf)、及び、最大応力pに到達した時のサンプル片S4の突刺し方向の変位量h(mm)を測定する。突刺し弾性率Epは、変位量hに対する最大応力pの比(p/h)として算出できる。このようにして算出した突刺し弾性率Epを、防水膜1の突刺し弾性率Epとみなす。本実施形態では、5個のサンプル片S4について最大応力p及び変位量hを測定し、これらの測定値から算出された突刺し弾性率Epの平均値を防水膜1の突刺し弾性率Epとする。
 防水膜1は、例えば、周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失が10dB以下である。上記挿入損失が上記範囲にある防水膜1は、低周波数域における通音特性に優れている。防水膜1の上記挿入損失の下限は特に限定されない。上記挿入損失の下限は、例えば、0.5dBである。
 (挿入損失の測定方法)
 防水膜1の周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失の測定方法の詳細は、実施例の欄において述べる。
 防水膜1は、例えば、JIS L1092:2009に定められた耐水度試験B法(高水圧法)に準拠して測定した耐水圧が、200kPa以上かつ300kPa以下である。上記耐水圧が上記範囲にある防水膜1は、防水性に優れている。防水膜1の上記耐水圧の下限は、210kPa以上であってもよい。
 (耐水圧の測定方法)
 防水膜1の耐水圧は、以下に説明する方法により測定することができる。まず、防水膜1を準備し、これをサンプル片S3とする。耐水圧の測定冶具の一例は、直径1mmの貫通孔(円形の断面を有する)が中央に設けられた、直径47mmのステンレス製円板である。この円板は、耐水圧を測定する際に加えられる水圧によって変形しない厚さを有する。この測定冶具を用いた耐水圧の測定は、以下のように実施できる。測定冶具の貫通孔の開口を覆うように、当該冶具の一方の面にサンプル片S3を固定する。固定は、耐水圧の測定中、サンプル片S3の固定部分から水が漏れないように行う。サンプル片S3の固定には、測定冶具の貫通孔の開口の形状と一致した形状を有する通水口が中心部に打ち抜かれた両面粘着テープを利用できる。両面粘着テープは、測定冶具の貫通孔の開口の周と通水口の周とが一致するように、測定冶具とサンプル片S3との間に配置すればよい。次に、サンプル片S3を固定した測定冶具を、サンプル片S3の固定面とは反対側の面が測定時の水圧印加面となるように試験装置にセットして、JIS L1092:2009のB法(高水圧法)に従って耐水圧を測定する。ただし、耐水圧は、サンプル片S3の膜面の1か所から水が出たときの水圧に基づいて測定する。測定した値を、防水膜1の耐水圧とすることができる。本実施形態では、5個のサンプル片S3について耐水圧を測定し、これらの測定値の平均値を防水膜1の耐水圧とする。試験装置として、JIS L1092:2009に例示されている耐水度試験装置と同様の構成を有するとともに、上記測定冶具をセット可能な試験片取付構造を有する装置を使用できる。
 防水膜1の厚さは、例えば、5μm以上かつ40μm以下である。防水膜1の厚さが上記範囲にあることにより、防水部材10において、十分な防水性及び強度を確保することができる。防水膜1の厚さの上限は、35μmであってもよく、30μmであってもよい。防水膜1の厚さの下限は、10μmであってもよく、15μmであってもよい。
 (厚さの測定方法)
 防水膜1の厚さは、防水膜1の任意の5点について厚さを測定し、これらの測定値の平均値として求めることができる。
 防水膜1は、例えば、JIS K6253:2012に定められたタイプAデュロメータ硬さ試験に準拠して測定した硬度HAが、40以上かつ60以下である。硬度HAが上記範囲にある防水膜1では、貯蔵弾性率E’が、6.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、初期弾性率Etが、30MPa以上かつ55MPa以下であることが実現されやすい。防水膜1の硬度HAは、45以上かつ60以下であってもよく、50以上かつ60以下であってもよい。なお、以下では、硬度HAが40以上かつ60以下であることを中硬度と呼ぶことがある。
 (硬度HAの測定方法)
 硬度HAは、タイプAデュロメータ硬度計を用いて、JIS K6253:2012に準拠して測定することができる。
 防水膜1の原料は特に限定されない。防水膜1は、例えば、シリコーンゴム、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。防水膜1は、シリコーンゴム及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
 防水膜1は、単一の原料から構成されていてもよく、異なる原料の混合物から構成されていてもよい。
 防水膜1は、エラストマーを含んでいてもよい。防水膜1は、エラストマーを主成分として含んでいてもよい。防水膜1がエラストマーを主成分として含むとは、防水膜1に含まれる成分の中で、エラストマーの含有量が最も大きい割合(質量%)であることを意味する。防水膜1は、エラストマーのみからなっていてもよい。
 本実施形態において、防水膜1は無孔膜である。そのため、防水部材10は、防水性の向上に特に適している。本実施形態において、無孔とは、膜の一方の主面と他方の主面とを連通する細孔が存在しない、又は、細孔の数が極めて少ないことを意味する。例えば、ガーレー数で表示される通気度が1万秒/100mLより大きい膜を無孔膜と判断することができる。ここで、ガーレー数とは、JIS P8117:2009に準拠して測定することにより得られる値である。
 防水膜1に用いられるエラストマーは、ゴム状弾性体である。エラストマーは、ゴム硬度、すなわち硬度HAを有するゴム状弾性体が好ましい。エラストマーは、熱硬化性エラストマーであってもよく、熱可塑性エラストマーであってもよい。エラストマーは、特には限定されない。エラストマーとして、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム、及び天然ゴム等が挙げられる。エラストマーとして、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを使用できる。これらの中でも、シリコーンゴム及びウレタンゴムが望ましく用いられる。エラストマーは、シリコーンゴム及びウレタンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
 防水膜1に用いられるエラストマーは、シリコーンゴムであってもよい。防水膜1に用いられるエラストマーとして、シリコーンゴムを用いることにより、防水部材10の通音特性をより向上させることができる。
 防水膜1の目付量は、30g/m2より大きくてもよい。目付量は、面密度とも呼ばれ、防水膜1の単位面積あたりの質量である。
 例えば、防水膜1に用いられるエラストマーがシリコーンゴムである場合には、目付量を30g/m2より増加させることにより、防水部材10の防水性をさらに向上させつつ通音特性の低下を抑制することができる。
 例えば、防水膜1に用いられるエラストマーがシリコーンゴムである場合、防水膜1の目付量の上限は、65g/m2であってもよい。防水膜1の目付量の上限は、63g/m2であってもよい。
 防水膜1は、単一のエラストマーから構成されていてもよい。防水膜1は、異なるエラストマーの混合物から構成されていてもよい。
 防水膜1は、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの混合物からなっていてもよい。すなわち、防水膜1に用いられるエラストマーは、相対的に高硬度の第1エラストマーと、第1エラストマーより相対的に低硬度の第2エラストマーとの混合物であってもよい。本実施形態において、高硬度とは、例えば、硬度HAが、60超かつ96以下であることを意味する。低硬度とは、例えば、硬度HAが、20以上かつ40未満であることを意味する。一般的に、高硬度のエラストマーは、低硬度のエラストマーよりも防水性に優れる。低硬度のエラストマーは、高硬度のエラストマーよりも通音特性に優れる。
 本発明者らの検討により、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの混合物からなる防水膜1は、単一のエラストマーからなる防水膜に比べて、通音特性及び防水性に優れることが見出された。これは、上記混合物からなる防水膜1では、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとが相分離した状態(例えば、海島構造)で存在していることにより、高硬度のエラストマーによる部分は優れた防水性を発揮する一方で、低硬度のエラストマーによる部分は、振動しやすく、音透過が促進されるためと推測される。さらに、上記効果は、防水膜1の硬度HAが40以上かつ60以下である場合、すなわち、上記混合物が中硬度のエラストマーである場合に特に顕著であることが見出された。
 上記混合物において、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの質量比は、4:6~6:4の範囲にあることが好ましい。高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの質量比が上記範囲にある場合、防水性と通音特性とのバランスが取れた防水膜1が実現されやすい。
 防水膜1の少なくとも一方の主面に撥油処理が施されていてもよい。このような構成を有する防水膜1は、より高い防水性を有する。
 防水膜1の双方の主面に撥油処理が施されていてもよい。
 撥油処理は、防水膜1の少なくとも一方の主面に撥油剤溶液を塗布し、乾燥することにより実施することができる。撥油剤溶液を塗布する方法は、特に制限されず、例えば、スプレー法、スピンコート法、ディッピング法、ロールコーター法等を用いることができる。撥油剤溶液における撥油剤濃度は、0.1~10重量%が好ましく、0.5~5.0重量%がより好ましい。
 撥油剤は、特に限定されないが、フッ素系撥油処理剤が好ましい。フッ素系撥油剤としては、例えば、フッ素含有側鎖を有するアクリル系ポリマー、フッ素含有側鎖を有するウレタンポリマー、及びフッ素含有側鎖を有するシリコーン系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。例えば、撥油剤として、下記化学式(a)により示される化合物を単量体とする重合体を含む撥油剤aと、溶媒との混合物を使用することができる。
 CH2=C(CH3)COOCH2CH2510CH249 ・・・(a)
 溶媒としては、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン(以下、HFE-347pc-fという)(AGC社製,AE-3000)及びメタキシレンヘキサフロライド(以下、MX-HFという)の混合溶液を使用することができる。混合比は、体積比により表示して、HFE-347pc-f:MX-HF=3:1が良好である。
 また、上述のようなフッ素系撥油剤として、市販品を使用することも可能である。例えば、ダイキン社製「ユニダイン(登録商標)」シリーズ;信越化学社製X-70-029C;AGCセイミケミカル社製「エスエフコート(登録商標)」シリーズ(例えば、SIF-200)等を使用することができる。また、シリコーン系ポリマーのフッ素系撥油剤としては、例えば、信越化学社製KP-801M等がある。
 撥油剤溶液に使用する溶媒には、フッ素系側鎖に親和性の高いフッ素系の溶媒が好ましい。フッ素系側鎖に親和性の高いフッ素系の溶媒として、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学社製FSシンナー、住友スリーエム社製フロリナート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
 撥油剤溶液の塗布後の乾燥は、特に限定されず、自然乾燥(風乾)であってもよく、加熱乾燥であってもよい。オイル付着後の通気性に優れることから、40~120℃の加熱乾燥が好ましく、50~110℃の加熱乾燥がより好ましい。
 防水膜1には、着色処理が施されていてもよい。防水膜1が透明又は白色であると、防水部材10が機器の筐体の開口を塞ぐように配置された場合、防水膜1が目立つことがある。そこで、配置される筐体の色に応じて防水膜1を着色することにより、筐体に配置された場合に目立ちにくい防水部材10を実現することができる。防水膜1は、例えば黒色に着色されていてもよい。また、筐体のデザイン性が重視される際、防水部材10を筐体の開口を塞ぐように配置すると、デザイン性が損なわれるおそれがある。そこで、筐体のデザイン性に合わせて防水膜1を着色することにより、デザイン性を維持することができる。
 防水膜1の着色は、例えば、防水膜1に含まれる原料(例えば、エラストマー)に着色剤を含有させることによって実現できる。デザイン性を有する機器を実現する場合、使用される着色剤は、例えば、380nm以上かつ500nm以下の波長域の少なくとも一部の光についての光吸収能を有することが望ましい。換言すると、防水膜1が、この着色剤によって、黒色、灰色、茶色、緑色、黄色又は桃色に着色されていることが望ましい。防水膜1の着色方法としては、シート化する前の原料(例えば、エラストマー)を含む原料に、顔料又はカーボンブラック等の着色剤を混合して着色する方法と、シート化した後の原料(例えば、シート状エラストマー)を、染色又は印刷の技術を利用して、着色剤によって着色する方法とがある。なお、着色剤としてカーボンブラックを用いた場合、防水膜1の強度を向上させることができ、さらに防水性を向上させることができるという効果も得られる。
 防水膜1を製造する方法は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、原料溶液をダイス等の吐出手段により、離型可能な基材上に薄層に押し出す方法、原料溶液を離型可能な基材上に流涎した後、アプリケータやワイヤーバー、ナイフコーターで薄膜形成する方法等を採用することができる。さらには切削方式により、防水膜1を所定の厚さに調整してもよい。
 一例として、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの混合物であるエラストマーからなる防水膜1は、次のような方法で製造することが可能である。まず、酢酸エチルに溶解させた高硬度のエラストマー(例えば、高硬度のシリコーンゴム)GHと、酢酸エチルに溶解させた低硬度のエラストマー(例えば、低硬度のシリコーンゴム)GLとを所定の質量比(例えば、GH:GL=40:60)で混合して攪拌し、混合物を得る。得られた混合物を原料溶液として用い、シート状に成形する。これにより、高硬度のエラストマーGHと低硬度のエラストマーGLとの混合物であるエラストマーからなる防水膜1を得ることができる。
 図1A~1Bに示すように、防水部材10は、防水膜1に接合された粘着剤層2を備えていてもよい。本実施形態において、粘着剤層2は、防水膜1の第1主面1aの周縁部に配置されている。図1Bにおいて、符号4は、防水部材10を機器に設置した際に音を透過させる領域、すなわち、音透過領域(通音領域)を指している。
 粘着剤層2の材料は、防水部材10が適用される音響部品に直接貼り付けて固定することができるように、又は、当該音響部品を収容する筐体に貼り付けて固定することができるように、適宜選択されうる。粘着剤層2として、例えば、汎用の基材付き両面テープ、基材のない両面テープ(すなわち粘着剤のみのテープ)等を、防水膜1との貼り付け性、及び、筐体又はケースとの貼り付け性を考慮して、適宜採用することができる。防水膜1に用いるエラストマーとしてシリコーンゴムを採用した場合、粘着剤層2は、シリコーン粘着剤からなる面を有し、そのシリコーン粘着剤からなる面を防水膜1に接する面とすることが好ましい。これは、シリコーン粘着剤が、他のアクリル粘着剤等と比較して、シリコーンゴムに対して非常に高い接着性を有するからである。
 図1A~1Bに示す例では、防水膜1の主面に垂直な方向から見て、粘着剤層2は、環状である。ただし、粘着剤層2の形状は、図1A~1Bに示す例に限定されない。
 図1A~1Bに示す例では、防水膜1の主面に垂直な方向から見て、防水部材10は円形である。ただし、防水部材10の形状は、図1A~1Bに示す例に限定されない。防水部材10の形状は、円(略円を含む)、楕円(略楕円を含む)並びに長方形及び正方形を含む多角形であってもよい。多角形の角は丸められていてもよい。
 防水部材10の厚さは、例えば、2000μm以下である。防水部材10の厚さは、1000μm以下、750μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、さらには300μm以下であってもよい。防水部材10の厚さの下限は、例えば、50μmである。
 (変形例)
 次に、本実施形態にかかる防水部材の別の例を図3A~3Bに示す。図3A~3Bに示す防水部材20は、防水膜1と離間して配置された、厚さ方向の通気性を有する支持層3をさらに備える。以下では、防水部材20について、防水部材10と同じ要素には同じ符号を付し、説明を省略することがある。
 図4は、防水部材20が筐体50の開口51を塞ぐように配置された状態の一例を示す断面図である。図4に示すように、支持層3は、防水部材20が開口51を塞ぐように配置されたときに、防水膜1と筐体50との間に位置する。
 支持層3は、防水膜1の変形を一定範囲に制限するために取り付けられるものである。支持層3は、防水部材20が開口51を塞ぐように配置されたときに、防水膜1の第1主面1aに面する第1主面3aと、開口51に面する第2主面3bとを有する。図4に示すように、防水部材20が開口51を塞ぐように配置されたときに、防水膜1の第1主面1aと支持層3の第1主面3aとが、第1主面1a及び第1主面3aに接する空間を介して互いに対向している。
 図3A~3Bに示すように、防水部材20は、防水膜1の第1主面1aと支持層3の第1主面3aとを接合する接合層21を備えている。本実施形態において、接合層21は、防水膜1の第1主面1aの周縁部及び支持層3の第1主面3aの周縁部に配置されている。
 図3Aに示すように、防水部材20は、防水膜1と支持層3とが接合された接合領域11と、防水部材20の主面に垂直な方向から見て、接合領域11により囲まれた非接合領域12とを有している。接合領域11は、防水膜1及び支持層3の周縁部の領域を含んでいる。防水膜1と支持層3とは、接合層21により接合されている。
 図3Aに示すように、非接合領域12において、防水膜1と支持層3とは互いに離間した状態にある。すなわち、非接合領域12では、支持層3が防水膜1から離間して配置されている。
 非接合領域12における支持層3の厚さは、例えば、500μm以下である。これにより、防水部材20では、支持層3を備えながらも良好な通音特性の確保が可能となる。支持層3の厚さは、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、さらには100μm以下であってもよい。非接合領域12における支持層3の厚さの下限は、例えば、30μmであり、50μmであってもよい。支持層3は、非接合領域12に限られることなく上記厚さを有していてもよい。支持層3の全体が上記厚さを有していてもよい。
 非接合領域12における防水膜1と支持層3との離間距離は、例えば、150μm以下である。離間距離が150μm以下であると、支持層3を備えながらも良好な通音特性の確保が可能となる。離間距離は、125μm以下、100μm以下、75μm以下、さらには50μm以下であってもよい。離間距離の下限は、例えば、5μmであり、10μm、20μm、さらには30μmであってもよい。
 支持層3の面内方向の透気抵抗度は、10万秒/100mL以上、15万秒/100mL以上、20万秒/100mL以上、25万秒/100mL以上、30万秒/100mL以上であってもよく、30万秒/100mLを超えてもよい。支持層3の面内方向の透気抵抗度の上限は、例えば、100万秒/100mL以下である。なお、支持層3の面内方向の透気抵抗度は、防水部材20に組み込まれた状態の支持層3の主面における非接合領域12に位置する部分と、当該支持層3の外周側面3sとの間の透気抵抗度として評価することができる。ここで、透気抵抗度とは、100mLの空気が部材を面内方向(厚さ方向)に通過するのに要する時間である。
 図3A~3Bに示すように、防水部材20は、支持層3の第1主面3aに接合された粘着剤層22を備えていてもよい。粘着剤層22は、防水部材10における粘着剤層2に対応している。本実施形態において、粘着剤層22は、支持層3の第1主面3aの周縁部に配置されている。図3Bにおいて、符号4は、防水部材20を機器に設置した際に音を透過させる領域、すなわち、音透過領域(通音領域)を指している。
 図3A~3Bに示す例では、防水膜1の主面に垂直な方向から見て、防水部材20及び非接合領域12は、ともに円形である。ただし、防水部材20及び非接合領域12の形状は、図3A~図3Bに示す例に限定されない。防水部材20及び非接合領域12の形状は、互いに独立して、円(略円を含む)、楕円(略楕円を含む)並びに長方形及び正方形を含む多角形であってもよい。多角形の角は丸められていてもよい。
 接合領域11の形状は、非接合領域12を囲む形状である限り限定されない。接合領域11は、典型的には、防水膜1及び/又は支持層3の周縁部を含む領域である。図3A~3Bに示す例では、防水膜1と支持層3とが接合された接合領域11以外の領域が非接合領域12である。図3A~3Bに示す例では、非接合領域12において、防水部材20の一方の面(筐体50に配置されたときに外部に面する面)に防水膜1が露出している。また、非接合領域12において、防水部材20の他方の面(筐体50に配置されたときに開口51に面する面)に支持層3が露出している。
 防水膜1の形状及び支持層3の形状は、防水膜1の主面に垂直な方向から見て、同一であっても異なっていてもよい。図3A~3Bに示す例では、防水膜1の形状及び支持層3の形状は互いに同一であり、防水部材20の形状とも同一である。
 防水部材20の厚さは、例えば、2000μm以下である。防水部材20の厚さは、1000μm以下、750μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、さらには300μm以下であってもよい。防水部材20の厚さの下限は、例えば、50μmである。
 支持層3を構成する材料は、例えば、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。支持層3としての強度に優れることから、支持層3を構成する材料は、好ましくは金属である。金属は、例えば、アルミニウム及びステンレスである。樹脂は、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアミド(ナイロンを含む各種の脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミド等)、ポリカーボネート及びポリイミドといった各種の樹脂である。
 具体的な支持層3の一例は、第1主面3aと第2主面3bとを接続する1又は2以上の貫通孔を有する金属板である。金属板である支持層3は、特に強度に優れる。また、支持層3が金属板である場合、防水部材20としての剛性及び取扱性を向上できる。貫通孔は、例えば、支持層3の厚さ方向に延びている。通音特性と強度とがより高いレベルで両立した防水部材20が得られることから、2以上の貫通孔を有する金属板が好ましい。貫通孔は、少なくとも非接合領域12に位置する部分に存在すればよい。
 支持層3が2以上の貫通孔を有する場合、各々の貫通孔の開口は、金属板の主面に垂直な方向から見て、当該主面上に規則的に配列していても、不規則に位置していてもよい。
 貫通孔の開口の形状は、金属板の主面に垂直な方向から見て、例えば、円(略円を含む)、楕円(略楕円を含む)、並びに正方形及び長方形を含む多角形である。多角形の角は丸められていてもよい。ただし、貫通孔の開口の形状は上記例に限定されない。2以上の貫通孔を有する場合、各々の貫通孔の開口の形状は、同一であっても異なっていてもよい。
 2以上の貫通孔を有する金属板の一例は、パンチングメタルである。パンチングメタルは、パンチ加工(プレス抜き加工)によって貫通孔が設けられた金属板である。
 上記金属板である支持層3の開口率は、例えば5~80%であり、15~40%、さらには15~30%であってもよい。開口率がこれらの範囲にある場合、通音特性と強度とがより高いレベルで両立した防水部材20を得ることができる。なお、上記金属板である支持層3の開口率は、支持層3の主面の面積に対する当該主面上に存在する全ての貫通孔の開口の面積の割合である。
 支持層3の別の一例は、金属、樹脂又はこれらの複合材料から構成されるメッシュ及びネットである。
 支持層3の厚さ方向の通気性は、通常、防水膜1の厚さ方向の通気性に比べて高い。支持層3の厚さ方向の通気性は、JIS L1096:2010に定められた通気性測定A法(フラジール形法)に準拠して求めた通気度(フラジール通気度)により表して、例えば10cm3/(cm2・秒)以上であり、100cm3/(cm2・秒)以上、300cm3/(cm2・秒)以上、さらには500cm3/(cm2・秒)を超えてもよい。支持層3の厚さ方向の通気性の上限は、フラジール通気度により表して、例えば1000cm3/(cm2・秒)以下である。
 なお、支持層3のサイズが、フラジール形法における試験片のサイズ(約200mm×200mm)に満たない場合にも、測定エリアの面積を制限する測定冶具を使用することにより、フラジール通気度の評価が可能である。測定冶具の一例は、所望の測定エリアの面積に対応した断面積を有する貫通孔が中央に形成された樹脂板である。例えば、1mm又はこれ未満の直径を有する円形の断面を持つ貫通孔が中央に形成された測定冶具を使用できる。
 支持層3の強度は、通常、防水膜1の強度に比べて高い。
 図3A~3Bに示す例では、防水膜1の主面に垂直な方向から見て、接合層21は、環状である。ただし、接合層21の形状は、図3A~3Bに示す例に限定されない。
 図3A~3Bに示す例では、防水膜1の主面に垂直な方向から見て、粘着剤層22は、環状である。ただし、粘着剤層22の形状は、図3A~3Bに示す例に限定されない。
 図3A~3Bに示すように、接合層21と粘着剤層22とは、同じ接合面積を有する環状であってもよい。
 接合層21は、例えば、粘着剤層又は接着剤層である。ただし、接合領域11及び非接合領域22を形成可能である限り、接合層21の構成は限定されない。粘着剤層又は接着剤層である接合層21は、例えば、公知の粘着剤又は接着剤を防水膜1の第1主面1aの周縁部に塗布して形成できる。接合層21は、両面粘着テープから構成されていてもよい。即ち、接合領域11において、両面粘着テープによって防水膜1と支持層3とが接合されていてもよい。接合層21が両面粘着テープから構成される場合、防水膜1と支持層3との接合がより確実となり、防水部材20の防水性をさらに向上できる。また、非接合領域12における防水膜1と支持層3との離間距離の制御がより容易となる。
 接合層21を構成する両面粘着テープには、公知の両面粘着テープを使用できる。両面粘着テープの基材は、例えば、樹脂のフィルム、不織布又はフォームである。基材に使用できる樹脂は限定されず、例えば、ポリエステル(PET等)、ポリオレフィン(ポリエチレン等)、ポリイミドである。両面粘着テープの粘着剤層には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の各種の粘着剤を使用できる。防水膜1と支持層3との接合力を向上できることから、アクリル系粘着剤を粘着剤層に使用することが好ましい。両面粘着テープは、熱接着テープであってもよい。
 接合層21の厚さは、例えば、150μm以下である。接合層21の厚さは、125μm以下、100μm以下、75μm以下、さらには50μm以下であってもよい。接合層21の厚さの下限は限定されず、例えば、5μmであり、10μm、20μm、さらには30μmであってもよい。
 粘着剤層22の材料として、防水部材10における粘着剤層2について説明した材料を採用することができる。
 粘着剤層22の材料は、接合層21の材料と同じであってもよい。例えば、粘着剤層22及び接合層21として、同じ両面テープが用いられてもよい。
 防水部材10、20は、音響部品を保護可能であれば、その設置方法は特には限定されない。例えば、防水部材10、20が適用される音響部品に、粘着剤層2、22によって防水部材10を直接貼り付けて固定してもよい。あるいは、防水部材10、20が適用される音響部品を収容する筐体に、粘着剤層2、22によって防水部材10、20を貼り付けて固定してもよい。この場合、例えば、図2、図4に示すように、防水膜1が筐体50に設けられた開口51を塞ぐように、粘着剤層2、22によって防水部材10、20が筐体50に固定される。なお、筐体50に設けられた開口51は、音響部品に対応する位置に、音を透過させる目的で設けられているものである。
 防水部材10、20を製造する方法は、特に限定されず、従来の防水部材の製造方法を利用することができる。一例として、防水部材10は、次のような方法で製造することが可能である。まず、防水膜1を形成するためのシート状の原料と、粘着剤層2を形成するための粘着シート(例えば両面テープ)とを準備する。粘着シートに、音透過領域4に相当する穴を予め形成しておく。この粘着シートとシート状の原料とを貼り合わせて、所定の形状に打抜き成形することによって、防水部材10を得ることができる。一例として、防水部材20は、次のような方法で製造することが可能である。まず、防水膜1を形成するためのシート状の原料と、支持層3を形成するための板状の原料と、接合層21を形成するための第1粘着シート(例えば両面テープ)と、粘着剤層22を形成するための第2粘着シート(例えば両面テープ)とを準備する。第1粘着シート及び第2粘着シートに、音透過領域4に相当する穴を予め形成しておく。シート状の原料、第1粘着シート、板状の原料、及び第2粘着シートをこの順に貼り合わせて、所定の形状に打抜き成形することによって、防水部材20を得ることができる。
 なお、本実施形態では、防水部材10として、防水膜1に粘着剤層2が設けられている構成について説明したが、防水部材10は粘着剤層2を備えていなくてもよい。その場合は、防水膜1を、Оリング等で挟み込んで固定したり、樹脂封止によって固定したりすることによって、防水部材10を所定の位置に設置できる。また、本実施形態では、防水部材20として、支持層3に粘着剤層22が設けられている構成について説明したが、防水部材20は粘着剤層22を備えていなくてもよい。その場合は、防水膜1、接合層21、及び支持層3から構成される積層体を、Оリング等で挟み込んで固定したり、樹脂封止によって固定したりすることによって、防水部材20を所定の位置に設置できる。
 また、図示は省略するが、防水部材10、20において、防水膜1の第2主面1b側には、防塵用としてネット又は不織布等がさらに設けられていてもよい。
 防水部材10、20の用途は限定されない。防水部材10、20は、通音性及び防水性の双方が必要な用途、例えば、防水通音構造、防水通音構造を有する物品等、に使用できる。防水部材10、20は、典型的には、音声機能を有する電子機器に使用される。防水部材10は、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems;MEMS)等の微細な製品に使用されてもよい。防水部材10、20は、MEMSの音響部品が実装されている回路基板に適用されてもよい。
 [防水ケース]
 防水部材10、20は、音響部品を備えた電子機器を収容する防水ケースにも適用できる。以下に、本発明の防水ケースの実施形態について説明する。
 図5A~5Bに示すように、防水ケース100は、上述した防水部材10又は20と、ケース101とを備える。防水部材10又は20が備える防水膜1は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす。
(i)引張試験により測定した初期弾性率Etが、30MPa以上かつ100MPa以下である。
(ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、防水膜1に針が貫通するまでの最大応力を、最大応力到達時の防水膜1の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率EPが、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
 ケース101は、フレーム110と、弾性透明フィルム120とを含んでいる。フレーム110は、上フレーム110a及び下フレーム110bを有している。上フレーム110aは、輪郭が矩形で中央に矩形の開口が形成された薄板状の構造を有している。上フレーム110aは、通音開口111a、通音開口111b、及び操作開口112を有する。下フレーム110bは、上方が開口した有底箱体形状であり、底面に通音開口111cを有する。弾性透明フィルム120は、操作開口112を塞ぐように上フレーム110aに配置され、取り付けられている。弾性透明フィルム120は、例えば、シリコーンゴムフィルム、ウレタンゴムフィルム、又はガラスである。
 図6Aは、図5AのA-A線に沿った断面図である。図6Bは、図5AのB-B線に沿った断面図である。図6A~6Bでは、防水ケース100が、防水部材10を備える場合を例示している。図6Aに示すように、防水部材10は、通音開口111bを塞ぐように粘着剤層2を介して上フレーム110aに配置され、接合されている。図示は省略するが、防水部材10は、通音開口111aを塞ぐように粘着剤層2を介して上フレーム110aに配置され、接合されている。図6Bに示すように、防水部材10は、通音開口111cを塞ぐように粘着剤層2を介して下フレーム110bに接合されている。
 下フレーム110bの開口を上フレーム110aで覆うように、上フレーム110aと下フレーム110bとを組み付けることによって、ケース101の内部は防水された状態になる。このため、図7A~7Bに示すように、上フレーム110aと下フレーム110bとの間にスマートフォン等の電子機器200を配置してケース101の内部に電子機器200を収容することによって、防水が要求される環境で電子機器200を使用できる。
 ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、通音開口111aは、電子機器200のスピーカー用の通音口210aに対応した領域に位置する。また、ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、通音開口111bは、電子機器200のマイクロフォン用の通音口210bに対応した領域に位置する。また、ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、通音開口111cは、電子機器200のスピーカー用の通音口210cに対応した領域に位置する。このため、ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、電子機器200のスピーカー又はマイクロフォンとケース101の外部との間で音が伝わる。従って、ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、ユーザーは電子機器200のスピーカー又はマイクロフォンを利用できる。
 ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、弾性透明フィルム120は、電子機器200のタッチスパネル式のディスプレイ220を覆うように電子機器200に接している。ユーザーは、弾性透明フィルム120を介してディスプレイ220を操作できるとともに、弾性フィルム120を通してディスプレイ220を視認できる。このように、ケース101の内部に電子機器200を収容した状態で、ユーザーは、電子機器200を操作できる。
 [電子機器]
 防水部材10は、音声機能を有する電子機器にも適用できる。以下に、本発明の電子機器の実施形態について説明する。
 図8に、防水部材10又は20が使用された電子機器の一例を示す。図8に示す電子機器は、スマートフォン300である。スマートフォン300は、上述した防水部材10又は20と、筐体301とを備える。防水部材10又は20が備える防水膜1は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす。
(i)引張試験により測定した初期弾性率Etが、30MPa以上かつ100MPa以下である。
(ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、防水膜1に針が貫通するまでの最大応力を、最大応力到達時の防水膜1の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率EPが、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
 スマートフォン300の筐体301の内部には、電気信号と音声との変換を行う音声変換器が配置されている。音声変換器(音声変換部)は、例えば、スピーカー、マイクロフォンである。音声変換器はマイクロフォンであってもよい。筐体301には、外部通音口である開口311a及び開口311bが設けられている。
 スマートフォン300では、開口311aを覆うように、第1の防水部材10又は20が筐体301に配置されている。また、開口311bを覆うように、第2の防水部材10又は20が筐体301に配置されている。双方の防水部材10又は20について、防水膜1の第2主面1bが開口311a又は311bを介して外部に面している。
 また、第1及び第2の防水部材10又は20は、それぞれ、筐体301の内部に収容された音声変換器に固定されている(図示せず)。双方の防水部材10又は20について、他方の主面が音声変換器に接している。
 防水部材10又は20を備える電子機器はスマートフォン300に限定されない。電子機器は、例えば、スマートウォッチ及びリストバンド等のウェアラブルデバイス;アクションカメラ及び防犯カメラを含む各種のカメラ;携帯電話及びスマートフォン等の通信機器;仮想現実(VR)機器;拡張現実(AR)機器;センサー機器等である。電子機器は、例えば、MEMS等の微細な製品であってもよい。
 以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
 最初に、本実施例で作製した防水膜の評価方法について説明する。
 防水膜の硬度HA、厚さ、初期弾性率Et、突刺し弾性率Ep、耐水圧、及び貯蔵弾性率E’は、上述の方法により評価した。タイプAデュロメータ硬度計として、テクロック社製のGS-615を使用した。引張試験機として、島津製作所社製のオートグラフAGS-Xを使用した。DMA装置として、日立ハイテクサイエンス社製のDM6100を使用した。
 (挿入損失の測定方法)
 防水膜の周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失の測定方法について、図13を用いて説明する。挿入損失は、図13に示す携帯電話の筐体を模した模擬筐体を用いて、以下の方法により測定した。
 図13の(A)及び(B)に示すように、模擬筐体の中に収容するスピーカーユニット135を作製した。具体的には、次の通りである。音源であるスピーカー140(スター精密社製、SCC-16A)と、ウレタンスポンジからなり、スピーカー140を収容するとともにスピーカーからの音声を不必要に拡散させない(評価対象である防水膜サンプルを通過することなく評価用マイクロフォンに入力する音声をできるだけ発生させない)ための充填材130a、130b、130cと、を準備した。充填材130aには、直径5mmの円形の断面を有する通音口132がその厚さ方向に設けられている。充填材130bには、スピーカー140の形状に対応する形状を有する切り欠きと、スピーカーケーブル142を収容するとともにスピーカーユニット135外へスピーカーケーブル142を導出するための切り欠きとが設けられている。次に、充填材130c及び130bを重ね、充填材130bの切り欠きにスピーカー140及びスピーカーケーブル142を収容した。次に、通音口132を介してスピーカー140からスピーカーユニット135の外部に音声が伝達されるように充填材130aを重ねて、スピーカーユニット135を得た(図13の(B))。
 次に、図13の(C)に示すように、携帯電話の筐体を模した模擬筐体160(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)の内部に、上記作製したスピーカーユニット135を収容した。具体的には、次の通りである。準備した模擬筐体160は、2つの部分160a、160bからなり、部分160a、160bは互いに嵌め合わせることができる。部分160aには、内部に収容したスピーカーユニット135から発せられた音声を模擬筐体160の外部に伝達する通音口162(直径1mmの円形の断面を有する)と、スピーカーケーブル142を模擬筐体160の外部に導出する導通孔164とが設けられている。部分160a、160bを互いに嵌め合わせることによって、通音口162及び導通孔164以外に開口がない空間が模擬筐体160内に形成される。作製したスピーカーユニット135を部分160b上に配置した後、部分160aと部分160bとを嵌め合わせて、模擬筐体160内にスピーカーユニット135を収容した。このとき、スピーカーユニット135の通音口132と部分160aの通音口162とを重ね合わせて、双方の通音口132、162を介してスピーカー140から模擬筐体160の外部に音声が伝達されるようにした。スピーカーケーブル142は導通孔164から模擬筐体160の外部に引き出し、導通孔164はパテによって塞いだ。
 次に、評価対象である防水膜を直径5.8mmの円形に切り出し、サンプルS5とした。サンプルS5の双方の主面に両面粘着テープAをそれぞれ貼付した。テープAは、当該テープの外周とサンプルS5の周とが一致するように、サンプルS5に貼付した。次に、一方のテープAにより、模擬筐体160の通音口162にサンプルS5を固定した。サンプルS5は、当該膜の主面に垂直な方向から見て、通音領域(両面粘着テープAの開口部に対応する直径1.5mmの円形領域)の全体が通音口162の開口内に位置するように固定した。次に、サンプルS5の通音領域を覆うようにマイクロフォン150(Knowles Acoustics社製、SPU0410LR5H)を固定した。マイクロフォン150は、他方のテープAによりサンプルS5に固定した。
 マイクロフォン150を固定したときのスピーカー140とマイクロフォン150との距離は、評価対象であるサンプルS5の厚さに応じて最大2mm程度変化するが、およそ22~24mmの範囲にあった。次に、スピーカー140及びマイクロフォン150を音響評価装置(B&K社製、Multi-analyzerSystem 3560-B-030)に接続し、評価方式としてSSR(Solid State Response)モード(試験信号20Hz~20kHz、sweep up)を選択して実行し、サンプルS5の周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失を評価した。挿入損失は、音響評価装置からスピーカー140に入力された試験信号と、マイクロフォン150で受信された信号とから自動的に求められる。サンプルS5の挿入損失を評価するにあたっては、サンプルS5を取り除いた場合の挿入損失の値(ブランク値)を予め求めておいた。ブランク値は、周波数1kHzにおいて-24dBであった。サンプルS5の挿入損失は、音響評価装置での測定値からこのブランク値を引いた値である。挿入損失の値が小さいほど、スピーカー140から出力された音声のレベル(音量)が維持されていることになる。
 上述の方法によりサンプルS5の周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失を測定し、測定値を防水膜の周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失とみなした。
 〔防水膜の弾性率と耐水圧との関係〕
 原料として、シリコーンゴムA、シリコーンゴムB、及びシリコーンゴムDを準備した。シリコーンゴムAは高硬度であった。シリコーンゴムBは低硬度であった。シリコーンゴムDは中硬度であった。各原料について、膜の厚さが30μmになるように成形工程を実施し、膜を作製した。膜は無孔質であった。各膜を幅5mm×長さ60mmの短冊状に切り出し、サンプル片とした。シリコーンゴムAからなるサンプル片をサンプル1とした。シリコーンゴムBからなるサンプル片をサンプル2とした。シリコーンゴムDからなるサンプル片をサンプル3とした。なお、シリコーンゴムDは、本出願人による特願2013-109932(特開2014-7738号公報)の実施例1及び2で使用したシリコーンゴム(硬度65)に対応している。
 サンプル1~3について、上述した初期弾性率Etの測定方法と同様の方法により引張試験を実施し、応力と伸びを測定した。図9に、サンプル1~3の引張試験による伸びと応力との関係を示す。
 図9に示されるように、高硬度のシリコーンゴムAからなるサンプル1は、伸び10%時の応力が最も大きく、すなわち、最も大きい初期弾性率Etを示した。
 次に、上記各原料について、膜の厚さを変化させながら成形工程を実施し、厚さの異なる複数の膜を作製した。膜はすべて無孔膜であった。作製した各膜をサンプル片とした。シリコーンゴムAからなるサンプル片の群をサンプル群1とした。シリコーンゴムBからなるサンプル片の群をサンプル群2とした。シリコーンゴムDからなるサンプル片の群をサンプル群3とした。
 サンプル群1~3について、厚さの異なるサンプル片ごとに、耐水圧を測定した。図10に、サンプル群1~3の厚さと耐水圧との関係を示す。
 図9~10から理解されるように、初期弾性率Etが大きいければ大きいほど耐水圧は上昇傾向を示した。図10に示されるように、膜の厚さが大きければ大きいほど耐水圧は上昇傾向を示した。
〔防水膜の特性〕
 次に、シリコーンゴムからなる防水膜の特性について評価を実施した。
 [比較例1]
 上述の製造方法に従い、シリコーンゴムAを用いて、膜の厚さが30μmになるように目付量を調整して成形工程を実施し、膜を作製した。膜は無孔膜であった。得られた膜を比較例1とした。比較例1について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
 [比較例2]
 上述の製造方法に従い、シリコーンゴムBを用いて、膜の厚さが30μmになるように目付量を調整して成形工程を実施し、膜を作製した。膜は無孔膜であった。得られた膜を比較例2とした。比較例2について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
 [実施例1]
 上述の製造方法に従い、シリコーンゴムAとシリコーンゴムBとを質量比で4:6の割合で混合した混合物C1を用いて、膜の厚さが30μmになるように目付量を調整して成形工程を実施し、膜を作製した。膜は無孔膜であった。得られた膜を実施例1とした。実施例1について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
 [実施例2]
 膜の厚さが15μmになるように目付量を調整して成形工程を実施した以外は、実施例1と同じ方法により膜を作製した。膜は無孔膜であった。得られた膜を実施例2とした。実施例2について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
 [実施例3]
 上述の製造方法に従い、シリコーンゴムAとシリコーンゴムBとを質量比で6:4の割合で混合した混合物C2を用いて、膜の厚さが30μmになるように目付量を調整して成形工程を実施し、膜を作製した。膜は無孔膜であった。得られた膜を実施例3とした。実施例3について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
 [実施例4]
 上述した方法により、実施例1で作製した膜の一方の主面に撥油剤溶液を塗布し、乾燥させることにより撥油処理を施した。撥油剤として、下記化学式(a)により示される化合物を単量体とする重合体を含む撥油剤aと、溶媒との混合物を準備した。
 CH2=C(CH3)COOCH2CH2510CH249 ・・・(a)
 溶媒は、撥油処理液における撥油剤aの濃度が1.0重量%となるように加えた。溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ-1-(2,2,2-トリフルオロ)エタン(以下、HFE-347pc-fという)(AGC社製,AE-3000)及びメタキシレンヘキサフロライド(以下、MX-HFという)の混合溶液とした。混合比は、体積比により表示して、HFE-347pc-f:MX-HF=3:1とした。撥油処理により得られた膜を実施例4とした。実施例4について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
 [比較例3]
 上述の製造方法に従い、シリコーンゴムDを用いて、膜の厚さが30μmになるように目付量を調整して成形工程を実施し、膜を作製した。膜は無孔膜であった。得られた膜を比較例3とした。比較例3について、初期弾性率Et、耐水圧、挿入損失、貯蔵弾性率E’等を評価した。結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1に示すように、貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、初期弾性率Etが、30MPa以上かつ100MPa以下である実施例1~4では、低周波数域(周波数100~500Hz)の音に対する挿入損失が10dB以下に抑制されているとともに、耐水圧が200kPa以上であり、高い防水性を示した。これらの結果から、実施例1~4の膜は、防水性と通音特性とを両立させることに適していると考えられる。
 また、表1に示すように、貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、突刺し弾性率Epが、9.0MPa以上かつ40MPa以下である実施例1~4では、低周波数域(周波数100~500Hz)の音に対する挿入損失が10dB以下に抑制されているとともに、耐水圧が200kPa以上であり、高い防水性を示した。これらの結果からも、実施例1~4の膜は、防水性と通音特性とを両立させることに適していると考えられる。
 実施例1~4の膜と比較例3の膜とは、いずれも中硬度であった。ところが、実施例1~4は、比較例3に比べて、高い防水性かつ高い通音特性を示した。
 実施例1の膜は、実施例2の膜よりも目付量が大きく、防水性が向上していた。一方で、目付量を増加させたにもかかわらず、実施例1では、挿入損失の増加は抑制されていた。
 実施例4は、実施例1の膜の一方の表面に撥油処理を施したものであり、耐水圧が向上していた。一方で、実施例4では、挿入損失の増加はごくわずかであった。この結果から、エラストマーからなる防水膜において、撥油処理が通音特性に及ぼす影響は小さいと考えられる。
 上記実施例及び比較例では、原料としてシリコーンゴムを用いた防水膜について特性の評価を実施した。ただし、シリコーンゴム以外の原料、例えば、ウレタンゴム、又はポリテトラフルオロエチレン等を用いた防水膜であっても、貯蔵弾性率E’2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下を満たし、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす場合、上述と同様の効果が見込まれる。
(i)引張試験により測定した初期弾性率Etが、30MPa以上かつ100MPa以下である。
(ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、防水膜に針が貫通するまでの最大応力を、最大応力到達時の防水膜の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率EPが、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
 本発明の技術は、スマートウォッチ等のウェアラブルデバイス;各種カメラ;携帯電話及びスマートフォン等の通信機器;及びセンサー機器といった、種々の電子機器に適用できる。

Claims (14)

  1.  防水膜を備え、
     前記防水膜は、引張モードの動的粘弾性測定試験により測定した周波数100~500Hzの範囲における貯蔵弾性率E’が、2.5×106Pa以上かつ7.5×106Pa以下であり、かつ、下記(i)及び(ii)から選ばれる少なくとも1つを満たす、防水部材。
    (i)引張試験により測定した初期弾性率が、30MPa以上かつ100MPa以下である。
    (ii)JIS Z1707:2019に定められた突刺し強さ試験に準拠して測定した、前記防水膜に針が貫通するまでの最大応力を、前記最大応力到達時の前記防水膜の突刺し方向の変位量で除することにより算出した突刺し弾性率が、9.0MPa以上かつ40MPa以下である。
  2.  前記防水膜は、周波数100~500Hzの範囲の音に対する挿入損失が10dB以下である、請求項1に記載の防水部材。
  3.  前記防水膜は、JIS L1092:2009に定められた耐水度試験B法(高水圧法)に準拠して測定した耐水圧が、200kPa以上かつ300kPa以下である、請求項1に記載の防水部材。
  4.  前記防水膜は、JIS K6253:2012に定められたタイプAデュロメータ硬さ試験に準拠して測定した硬度が、40以上かつ60以下である、請求項1に記載の防水部材。
  5.  前記防水膜は、エラストマーを含む、請求項1に記載の防水部材。
  6.  前記エラストマーは、シリコーンゴム及びウレタンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項5に記載の防水部材。
  7.  前記エラストマーは、シリコーンゴムである、請求項5に記載の防水部材。
  8.  前記防水膜の目付量が30g/m2より大きい、請求項7に記載の防水部材。
  9.  前記エラストマーは、高硬度のエラストマーと低硬度のエラストマーとの混合物である、請求項5に記載の防水部材。
  10.  前記防水膜の少なくとも一方の主面に撥油処理が施されている、請求項1に記載の防水部材。
  11.  前記防水膜は、着色剤を含有する、請求項1に記載の防水部材。
  12.  前記防水膜に接合された粘着剤層をさらに備えた、請求項1に記載の防水部材。
  13.  開口が形成されたフレームを含むケースと、
     前記開口を塞ぐように前記フレームに配置された、請求項1~12のいずれか1項に記載の防水部材と、を備えた、
     防水ケース。
  14.  開口が形成された筐体と、
     前記開口を塞ぐように前記筐体に配置された、請求項1~12のいずれか1項に記載の防水部材と、を備えた、
     電子機器。
PCT/JP2023/044746 2022-12-28 2023-12-13 防水部材、防水ケース、及び電子機器 WO2024142950A1 (ja)

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