WO2024024966A1 - ペプチド合成酵素ライブラリー構築法 - Google Patents

ペプチド合成酵素ライブラリー構築法 Download PDF

Info

Publication number
WO2024024966A1
WO2024024966A1 PCT/JP2023/027837 JP2023027837W WO2024024966A1 WO 2024024966 A1 WO2024024966 A1 WO 2024024966A1 JP 2023027837 W JP2023027837 W JP 2023027837W WO 2024024966 A1 WO2024024966 A1 WO 2024024966A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
nucleic acid
nrps
sequence
restriction enzyme
enzyme recognition
Prior art date
Application number
PCT/JP2023/027837
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
謙爾 柘植
昭彦 近藤
ジャガディーシュ バラダ
Original Assignee
国立大学法人神戸大学
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 国立大学法人神戸大学 filed Critical 国立大学法人神戸大学
Publication of WO2024024966A1 publication Critical patent/WO2024024966A1/ja

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/11DNA or RNA fragments; Modified forms thereof; Non-coding nucleic acids having a biological activity
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/11DNA or RNA fragments; Modified forms thereof; Non-coding nucleic acids having a biological activity
    • C12N15/52Genes encoding for enzymes or proenzymes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/66General methods for inserting a gene into a vector to form a recombinant vector using cleavage and ligation; Use of non-functional linkers or adaptors, e.g. linkers containing the sequence for a restriction endonuclease
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C40COMBINATORIAL TECHNOLOGY
    • C40BCOMBINATORIAL CHEMISTRY; LIBRARIES, e.g. CHEMICAL LIBRARIES
    • C40B40/00Libraries per se, e.g. arrays, mixtures
    • C40B40/04Libraries containing only organic compounds
    • C40B40/06Libraries containing nucleotides or polynucleotides, or derivatives thereof
    • C40B40/08Libraries containing RNA or DNA which encodes proteins, e.g. gene libraries

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)

Abstract

本開示は、新規のNRPSを作製する。本開示において、目的のNRPを生産する機能を維持したままNRPSをコードする核酸に制限酵素認識配列を導入することに成功した。導入された制限酵素認識配列を利用して種々のNRPSが作製可能となる。一つの局面において、本開示は、非天然の制限酵素認識配列を含む、NRPSをコードする核酸を提供する。別の局面において、本開示は、非天然の制限酵素認識配列を利用して、新規のNRPSをコードする核酸を効率的に作製する方法を提供する。また、本開示は新規のNRPSおよび新規のNRPも提供する。

Description

ペプチド合成酵素ライブラリー構築法
 本開示は、改変型非リボソーム型ペプチド合成酵素(Non ribosomal peptide synthetase: NRPS)およびその利用を提供する。本開示は、また改変型NRPSをコードするプラスミドまたはプラスミドライブラリー、あるいはこれらを利用または作製する方法を提供する。本開示はまた、NRPSから生産された非リボソーム型ペプチド(NRP)も提供する。
 NRPSは、特定の構造を有するペプチドを合成する酵素として知られる(非特許文献1)。NRPSによるペプチド合成はリボソームに依らないので、非タンパク質性アミノ酸(オルニチン、D体のアミノ酸など)を含むペプチドの合成が可能であり、NRPに含まれ得るアミノ酸は800種類以上存在することが知られている。NRPSによって合成されるNRPは、抗生物質や農薬など種々の分野において使用されている。新規のNRPSを開発し、効率的なNRP生産や、新規のNRPの提供が望まれる。
Angew Chem Int Ed Engl. 2017 Mar 27;56(14):3770-3821.
 本発明者らは、目的のNRPを生産する機能を維持したままNRPSをコードする核酸に制限酵素認識配列を導入することに成功した。導入された制限酵素認識配列を利用して種々のNRPSが作製可能となる。一つの局面において、本開示は、非天然の制限酵素認識配列を含む、NRPSをコードする核酸を提供する。別の局面において、本開示は、非天然の制限酵素認識配列を利用して、新規のNRPSをコードする核酸を効率的に作製する方法を提供する。また、本開示は新規のNRPSおよび新規のNRPも提供する。
 したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
 非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸配列を含む生成物プラスミドを作製する方法であって、
 開始プラスミドのセットを準備する工程であって、前記開始プラスミドのセットの各々は、少なくとも1つのNRPSモジュールをコードする塩基配列および少なくとも1つの制限酵素認識配列を含む、工程と、
 前記開始プラスミドのセットを制限酵素で処理して、得られた切断核酸断片を複数含む混合物を調製する工程と、
 前記複数の切断核酸断片をライゲーションして連結核酸を形成する工程と、
 前記連結核酸を形質転換生物に接触させて生成物プラスミドを形成する工程と
を含む方法。
(項目2)
 前記複数の切断核酸断片は、同じ突出配列を有し、複数種類のNRPSモジュールをコードする塩基配列を含む切断核酸断片のセットを含む、前述の項目の方法。
(項目3)
 前記複数の切断核酸断片は、同じ突出配列を有し、複数種類のアミノ酸を捕捉する前記NRPSモジュールをコードする塩基配列を含む切断核酸断片のセットを含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目4)
 前記切断核酸断片の各々は、3~5塩基長の突出配列を有する、前述の項目のいずれかの方法。
(項目5)
 前記開始プラスミドにおいて、前記制限酵素認識配列は、隣接するNRPSモジュールをコードする塩基配列の間に位置する、前述の項目のいずれかの方法。
(項目6)
 前記開始プラスミドにおいて、前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間に位置する、前述の項目のいずれかの方法。
(項目7)
 前記開始プラスミドにおいて、前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間の領域であって、前記Cドメインコード領域および前記Aドメインコード領域を含まない領域に位置する、前述の項目のいずれかの方法。
(項目8)
 前記制限酵素認識配列の少なくとも1つが、前記NRPSモジュールをコードする塩基配列内に存在する、前述の項目のいずれかの方法。
(項目9)
 前記制限酵素認識配列の少なくとも1つが、前記NRPSモジュールをコードする塩基配列外に存在する、前述の項目のいずれかの方法。
(項目10)
 前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールにおいて非天然の配列である、前述の項目のいずれかの方法。
(項目11)
 前記切断核酸断片の各々が、最大1つのNRPSモジュールを含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目12)
 前記制限酵素認識配列は、制限酵素特異的認識部位とは異なる部位で切断される、前述の項目のいずれかの方法。
(項目13)
 前記制限酵素認識配列は、SfiI、BglI、AlwNI、DraIII、PflMI、BstAPI、AarI、BbsI、BsaI、BsmBIまたはBspQIの認識配列を含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目14)
 前記開始プラスミドの各々は、4~12のNRPSモジュールをコードする塩基配列を含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目15)
 前記切断核酸断片を含む混合物を調製する工程において、前記開始プラスミドの各々は、互いに異なる突出配列を有する切断核酸断片を生じる、前述の項目のいずれかの方法。
(項目16)
 前記切断核酸断片を含む混合物が溶液である、前述の項目のいずれかの方法。
(項目17)
 前記開始プラスミドの各々は、独立して同じまたは異なる、選択マーカー配列を含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目18)
 前記選択マーカー配列が、薬剤耐性マーカー配列を含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目19)
 前記開始プラスミドの各々は、独立して同じまたは異なる、枯草菌において作動可能な複製起点を含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目20)
 前記開始プラスミドの各々は、独立して同じまたは異なる、前記NRPSをコードする塩基配列の上流にプロモーター領域を含む、前述の項目のいずれかの方法。
(項目21)
 前述の項目のいずれかの方法によって作製された生成物プラスミドまたはプラスミドライブラリー。
(項目22)
 前述の項目のいずれかの生成物プラスミドまたはプラスミドライブラリーから生産されるNRPS。
(項目23)
 前述の項目のいずれかのNRPSから生産されるNRP。
(項目24)
 非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸であって、
 少なくとも1つのNRPSモジュールをコードする塩基配列、および
 前記NRPSモジュールにとって非天然の制限酵素認識配列
を含む、核酸。
(項目25)
 前記制限酵素認識配列は、隣接する前記NRPSモジュールをコードする塩基配列の間に位置する、前述の項目のいずれかの核酸。
(項目26)
 前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間に位置する、前述の項目のいずれかの核酸。
(項目27)
 前記制限酵素認識配列は、NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間の領域であって、前記Cドメインコード領域および前記Aドメインコード領域を含まない領域に位置する、前述の項目のいずれかの核酸。
(項目28)
 前記制限酵素認識配列は、任意の種類の塩基が存在し得る領域を内部に含む配列を認識する制限酵素の認識配列である、前述の項目のいずれかの核酸。
(項目29)
 前記制限酵素認識配列は、SfiIの認識配列である、前述の項目のいずれかの核酸。
(項目30)
 前記核酸にコードされる前記NRPSモジュールの数が、4~12である、前述の項目のいずれかの核酸。
(項目31)
 非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸配列を含む生成物核酸を作製する方法であって、
 前述の項目のいずれかの核酸を開始核酸として準備する工程と、
 前記制限酵素認識配列を認識する制限酵素で前記核酸を処理して、切断核酸断片を調製する工程と、
 前記切断核酸断片をライゲーションして、前記開始核酸とは異なる生成物核酸を形成する工程と
を含む方法。
(項目32)
 前述の項目のいずれかに記載の方法によって生産される生成物核酸。
 本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
 本開示によれば、効率的に新規NRPSを作製でき、そうすることで効率的なNRP生産を可能とするNRPSや、新規のNRPを提供するNRPSの提供が可能になる。
プリパスタチン(A)およびそれを生産するNRPS(B)の構造の概要を示す。A:アデニル化ドメイン、T:チオール化ドメイン、C:縮合ドメイン、TE:チオエステラーゼドメイン、E:エピマー化ドメイン。 プリパスタチンNRPSモジュール間のC―Aリンカー領域のアライメントおよびSfiI認識配列導入サイト(四角囲み部分)を示す。 SfiI認識配列の導入の概要を示す。 OGAB法による単位DNAの集積の概要を示す。 プラスミドppsW03およびppsW10を各種制限酵素で処理した場合のゲル電気泳動バンドの比較を示す。 各株の培養液の抽出物のHPLC分析結果を示す。それぞれ(a)BEST8628、(b)ppsW03/BUSY9261、(c)ppsW10/BUSY9261、(d)BUSY9261の株の結果を示す。縦軸は、205nmでの吸光度を示し、横軸は保持時間(分)を示す。 ppsW03/BUSY9621株の生産する物質の質量分析計による測定結果を示す。a~dがプリパスタチンのピークを示す。 各株のプリパスタチン生産量を示す。左からBEST8628、ppsW10/BUSY9261、ppsW03/BUSY9261の株の結果を示す。縦軸はプリパスタチン生産量(μg/mL)を示し、横軸は培養時間(時間)を示す。 キメラNRPS遺伝子の概要を示す。 BUSY9261/chmera1から見出された新規キメラペプチドのMS/MS分析結果を示す。キメラペプチド1の結果である。 BUSY9261/chmera2から見出された新規キメラペプチドのMS/MS分析結果を示す。キメラペプチド2の結果である。 BUSY9261/chmera3から見出された新規キメラペプチドのMS/MS分析結果を示す。キメラペプチド3の結果である。 サーファクチン合成酵素へのSfiI認識配列の導入の概要を示す。 Combi-OGAB法による多様なNRPSの構築の概要を示す。
 以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
 以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
 本明細書において、「非リボソーム型ペプチド合成酵素」(本明細書においてNRPSとも称される)とは、mRNAを必要とせずにアミノ酸を基質として使用してペプチド(これは非リボソーム型ペプチド(NRP)と称され得る)を合成するタンパク質を指す。通常、複数分子のNRPSタンパク質が複合体を形成してペプチドを生産するが、本明細書では、NRPSはタンパク質複合体を形成しなくてもよい。NRPS分子は端部に位置するCOMドメインを介して他のNRPSに結合して、NRPSタンパク質複合体を形成し得る。20種類の必須アミノ酸以外に、オルニチンなどの非タンパク質性アミノ酸がNRPSの基質として使用される。NRPSにより、脂肪酸または糖鎖などの非アミノ酸の修飾を有するペプチドおよび環状または分枝鎖ペプチドも合成され得る。NRPSは、微生物においてシクロスポリンおよびバンコマイシンなどのペプチドの合成を担っていることが知られる。代表的には、Bacillus属(例えば、B. subtilis、B. amyloliquefaciens、B. licheniformis)、Brevibacillus brevis、Paenibacillus polymyxa、Photorhabdus asymbiotica、Photorhabdus luminescens、Xenorhabdus属(例えば、X. bovienii、X. budapestensis、X. doucetiae、X. indica、X. miraniensis、X. nematophila、X. stockiae、X. szentirmaii)、Streptomyces属(例えば、S.verticillus、S.roseosporus)、Penicillium属、Aspergillus属、Tolypocladium属(例えば、T.inflatum、T.niveum)、Fusarium属、Microcystis属などの生物におけるNRPSが知られる。
 一つの実施形態において、あるタンパク質がNRPSであることは、あるタンパク質が、A1コアモチーフ配列(L(TS)YxEL:配列番号44)、A2コアモチーフ配列(LKAGxAYL(VL)P(LI)D:配列番号45)、A3コアモチーフ配列(LAYxxYTSG(ST)TGxPKG:配列番号46)、A4コアモチーフ配列(FDxS)、A5コアモチーフ配列(NxYGPTE:配列番号47)、A6コアモチーフ配列(GELxIxGxG(VL)ARGYL:配列番号48)、A7コアモチーフ配列(Y(RK)TGDL:配列番号49)、A8コアモチーフ配列(GRxDxQVKIRGxRIELGEIE:配列番号50)、A9コアモチーフ配列(LPxYM(IV)P:配列番号51)、A10コアモチーフ配列(NGK(VL)DR:配列番号52)、Tコアモチーフ配列(DxFFxxLGG(HD)S(LI):配列番号53)、C1コアモチーフ配列(SxAQxR(LM)(WY)xL:配列番号54)、C2コアモチーフ配列(RHExLRTxF:配列番号55)、C3コアモチーフ配列(MHHxISDG(WV)S:配列番号56)、C4コアモチーフ配列(YxD(FY)AVW:配列番号57)、C5コアモチーフ配列((IV)GxFVNT(QL)(CA)xR:配列番号58)、C6コアモチーフ配列((HN)QD(YV)PFE:配列番号59)、およびC7コアモチーフ配列(RDxSRNPL:配列番号60)からなる群から選択されるモチーフを1つまたは複数含むことで判定され得る。好ましくは、NRPSは、A1~A10コアモチーフ配列、Tコアモチーフ配列、C1~C7コアモチーフ配列のうち連続する(例えば、A8~A10コアモチーフ配列)モチーフ配列を同じ順番で含み得る。複数のモチーフ配列が含まれる場合、モチーフ配列全体の中に1~3の変異(例えば、保存的アミノ酸置換)が含まれていてもよい。
 本明細書において「非リボソーム型ペプチド(NRP)」とは、NRPSによって生産され得るまたは生産されたペプチドを指し、リボソームで合成できる(天然の20種のアミノ酸からなる)ペプチドも含む。典型的には、NRPは、リボソームでは合成できないペプチドである。
 本明細書において、「NRPSモジュール」とは、NRPSの部分構造であり、原則としてNRPSにおいて1つのNRPSモジュールが1つのアミノ酸の結合に関与するが、アミノ酸以外の基質(βアミノ脂肪酸、βヒドロキシ脂肪酸、ポリケチドなど)の結合に関与する場合もある。典型的には、1つのNRPSモジュールは、1つのAドメイン、1つのTドメインおよび1つのCドメインを含み、TEなど他のドメインが含まれてもよい。A、TおよびCのいずれかのドメインをコードする領域の途中の部分が核酸分子断片の端に位置する場合、A、TおよびCのドメインのそれぞれの少なくとも一部をコードする領域が1つの核酸分子断片上に存在すれば、その核酸分子断片は1つのNRPSモジュールを含む。例えば、1つのNRPSモジュールは、N末端からC末端に向かって、(A、TおよびC)、(T、CおよびA)、または(C、AおよびT)のドメインを含む。典型的には、1分子の核酸上に複数のNRPSモジュールがコードされる場合、同じ順番でN末端からC末端に向かってA、TおよびCドメインを含む領域を1つのNRPSモジュールとして数えて最大の数が考慮される(例えば、A-T-C-A-T-C-A-T-Cのドメインをコードする核酸について、T-C-AまたはC-A-Tを1つのNRPSモジュールとして数えた場合にはNRPSモジュールは2つとなるが、A-T-Cを1つのNRPSモジュールとして数えた場合にはNRPSモジュールは3つとなるので、この場合のNRPSモジュール数は3つとなる)。本明細書において、典型的には、2つの制限酵素認識領域の間に1つのNRPSモジュールが配置される。A、TおよびCのうち1つまたは2つのドメインのみを有する領域は、不完全NRPSモジュールと称され得る。
 本明細書において、「Aドメイン」とは、NRPSのアデニル化ドメインであり、特定のアミノ酸を捕捉し、このアミノ酸をATPなどにより活性化すると考えられている。Aドメインは、約500~550アミノ酸のサイズを有し、特定のアミノ酸に対する基質特異性を有すると考えられる。Aドメインは、アミノ酸の結合ポケットを有する約400アミノ酸のAコアサブドメインと、触媒活性に関与するリジンを有するAサブサブドメインの特定のアミノ酸に対する基質特異性を有すると考えられる。一つの実施形態において、Aドメインは、A1コアモチーフ配列(L(TS)YxEL)の上流70アミノ酸から、A10コアモチーフ配列(NGK(VL)DR)の下流40アミノ酸までの領域を指し得る。
 本明細書において、「Tドメイン」(PCPドメインとも称される)とは、NRPSのチオール化ドメインであり、このドメイン(のシステイン残基のチオール部分)は、Aドメインから受け取ったアミノ酸を捕捉すると考えられる。Tドメインは、約70~90アミノ酸のサイズを有すると考えられる。一つの実施形態において、Tドメインは、Tコアモチーフ配列(DxFFxxLGG(HD)S(LI))の上流20アミノ酸から下流80アミノ酸までの領域を指し得る。
 本明細書において、「Cドメイン」とは、NRPSの縮合ドメインであり、Tドメインに捕捉されているアミノ酸に、前のNRPSモジュールに結合されたペプチドまたはアミノ酸を結合させる機能を有すると考えられる。Cドメインは、約450アミノ酸のサイズを有すると考えられる。一つの実施形態において、Cドメインは、C1コアモチーフ配列(SxAQxR(LM)(WY)xL)の上流20アミノ酸からC7コアモチーフ配列(RDxSRNPL)の下流70アミノ酸までの領域を指し得る。
 本明細書において、「TEドメイン」とは、NRPSのチオエステラーゼドメインであり、NRPSからNPRを放出させる機能を有すると考えられる。TEドメインは、NPRを環状化させる機能を有する場合もある。
 本明細書において、「リンカー領域」とは、NRPSのモジュール間やNRPSのドメイン間に存在する短い(例えば、20アミノ酸長以下)領域を指す。リンカー領域は、モジュールおよびドメインの外延同士の間に存在するものであることから、これらのモジュールおよびドメイン等の外延を確定することにより確定することができる。
 本明細書において、2つの領域(例えば、ドメインをコードする核酸領域)の「間」(英語では”between”という。)という記載は、その2つの領域自体も含む。典型的には、2つの領域の間は、一方の領域を構成するアミノ酸またはヌクレオチド残基の数(N)を2分する結合(Nが偶数の場合)またはアミノ酸もしくはヌクレオチド残基(Nが奇数の場合)から、他方の領域を構成するアミノ酸またはヌクレオチド残基の数(M)を2分する結合(Mが偶数の場合)またはアミノ酸もしくはヌクレオチド残基(Mが奇数の場合)までの領域を指す。
 本明細書において、2つの領域(例えば、ドメインをコードする核酸領域)の「境界」(英語では”boundary”という。)という記載は、ペプチドにおいて互いに隣接する2つのアミノ酸残基の間の結合またはポリヌクレオチドにおいて互いに隣接する2つのヌクレオチド間の結合であって、その2つの領域の間に存在するものを指す。一つの実施形態において、2つの領域の「境界」は、その2つの領域の間に存在し、その2つの領域の内部には存在しない。
 「非天然の」塩基配列とは、当該塩基配列にコードされるペプチド(NRPSモジュールなど)を、それと最も高い同一性を示す天然の対応するペプチド(NRPSモジュールなど)と比較した場合に異なるアミノ酸領域をコードする塩基配列を含む領域を指す。
 「制限酵素認識配列」とは、制限酵素の種類ごとに特異的な、制限酵素による核酸の切断のために必要な塩基配列を指す。制限酵素認識配列は任意の塩基(通常、モチーフにおいて「N」と表記される)を指定する部分を含んでもよい。特に、制限酵素認識配列のうちG、C、TまたはAのどれか1つであることが必要である部分を、制限酵素認識特異的部位と称する場合がある。例えば、SfiI(モチーフ5’-GGCCNNNN/NGGCC-3’)は2つの制限酵素特異的認識部位に挟まれた部位を切断し、AarI(モチーフ5’-CACCTGCNNNN/NNNN-3’)は制限酵素特異的認識部位から離れた部位を切断する。
 本明細書において使用する場合、「プラスミド」とは、細胞中で染色体とは別個に存在するか、または細胞に導入した場合に染色体とは別個に存在する環状DNAを指す。
 本明細書において「プラスミド複製を促進する核酸配列」とは、宿主細胞(例えば、枯草菌)に導入されたときに、宿主細胞内に存在するプラスミドの複製(この文脈においては、増幅と同じである。)を促進する任意の核酸配列をいう。好ましくは、このプラスミド複製を促進する核酸配列は、対象となるプラスミドをコードする核酸配列と作動可能に連結されているがこれに限定されない。プラスミド複製を促進する核酸配列、対象となるプラスミド、それらの関係などの詳細は、本明細書の別の箇所に記載される。プラスミド複製を促進する核酸配列としては、対象となる宿主細胞(例えば、枯草菌)において作動する複製起点を含む核酸配列などをあげることができる。例えば、枯草菌においてプラスミド複製を促進する核酸配列は、枯草菌におけるプラスミド複製の促進を可能にする能力を有するが、枯草菌以外の微生物(例えば、大腸菌)においてプラスミド複製の促進を可能にする能力をさらに有してもよい。枯草菌および他の生物(例えば、大腸菌)においてプラスミド複製を促進する核酸配列は、枯草菌および他の生物(例えば、大腸菌)の両方において同じ領域がプラスミド複製の促進のために利用される核酸配列でもよいし、離れた箇所に位置付けられる配列であってもよい。例えば、プラスミドpSTK1(Issay Narumtら、BIOTECHNOLOGY LETTERS、Volume 17 No.5 (May 1995) pp.475-480)、およびプラスミドpBS195(Molekuliarnaia Genetikaら、01 May 1991, (5):26-29、PMID:1896058)は、枯草菌および大腸菌の両方において同じ複製開始領域で複製可能であることが示されており、このような核酸配列は、枯草菌および大腸菌の両方においてプラスミド複製を促進する核酸配列として使用され得る。また、BR322(大腸菌プラスミド)およびpC194(枯草菌プラスミド)を連結して作製されたシャトルプラスミド(P Trieu-Cuotら、EMBO J. 1985 Dec 16;4(13A):3583-3587.)、およびタカラバイオ(滋賀県)から提供されるpUBoriおよびColE1 oriを含むB. subtilis Secretory Protein Expression Systemのプラスミドは、大腸菌および枯草菌の両方において複製可能であり、このような離れて位置付けられる核酸配列も、枯草菌および大腸菌の両方においてプラスミド複製を促進する核酸配列として使用され得る。
 枯草菌における核酸(プラスミド)の複製機構としては、ローリングサークル型、シータ型、oriC、ファージによるものなどが挙げられ、枯草菌内で複製される配列としていずれの機構を利用するものでも使用することができる。ローリングサークル型の複製機構は、二本鎖DNAの片側の一本鎖の複製を行ったのち、もう一方の鎖の複製を行う機構であり、核酸が一本鎖DNAとして存在する時間が長いためプラスミドが不安定化になる傾向がある。シータ型の複製機構は、細菌染色体の複製の場合と同じように複製起点から2方向に同時に二本鎖DNA(プラスミド)の複製が開始される機構であり、本開示のように長いDNA(例えば、10kb以上)の複製の際には好ましく使用され得る(Janniere, L., A. Gruss, and S. D. Ehrlich. 1993. Plasmids, p. 625-644. InA. L. Sonenshein, J. A. Hoch, and R. Losick (ed.), Bacillus subtilis and othergram-positive bacteria: biochemistry, physiology and molecular genetics.American Society for Microbiology, Washington, D.C.)。oriCの複製機構は、宿主細菌(例えば、枯草菌)染色体の複製の場合と同じように作動する。枯草菌内でプラスミド複製を促進する核酸配列としては、ローリングサークル型、シータ型、oriC、ファージなどによる複製機構を作動させることが公知である、プラスミドもしくはその部分または複製起点あるいはそれらの改変体などが挙げられる。ローリングサークル型プラスミドとして、pUB110、pC194、pE194、pT181などが公知であり、シータ型プラスミドとして、pAMβ1、pTB19、pLS32、pLS20などが公知である。
 枯草菌内でプラスミド複製を促進する核酸配列は、公知の複製開始点と同一または類似の配列(例えば、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上の配列同一性)を有し得る。例えば、候補DNA断片と、薬剤耐性遺伝子などの枯草菌で有効な選択マーカー遺伝子とを連結したDNA断片を枯草菌に導入した後、(薬剤などを添加して)培養した後に、これが染色体外で複製される場合、この候補DNA断片は枯草菌内でプラスミド複製を促進する核酸配列を有すると判定できる。プラスミド増幅を促進する核酸配列は、複製開始点を有するDNA断片であり、染色体DNAとは独立して複製可能なDNA断片を指す。これらのDNA断片が複製可能かどうかは、これらのDNA断片に薬剤耐性遺伝子などの選択マーカー遺伝子を連結し、薬剤などの選択条件で培養した後、プラスミドDNAを精製し、電気泳動によりそのDNAのバンドを観察するなどの手法により確認することが出来る。プラスミドは、複製開始点の他に、プラスミドの娘細胞への分配を確実に行うための分配機構遺伝子、選択マーカー遺伝子などを含んでもよい。
 本明細書において使用する場合、「複製起点」は、その核酸配列を認識するタンパク質(例えば、イニシエーターDnaAタンパク質など)が結合することや、RNAが合成されることで部分的にDNA二重らせんが解かれ、複製が開始される核酸配列のセグメントを指す。
 本明細書において、「形質転換生物」は、OGAB法において使用でき、非環状の長鎖核酸を取り込み、プラスミドを生成できる生物を指す。形質転換生物としては、自発的に核酸を取り込む微生物が使用できる。代表的な形質転換生物は、枯草菌である。
 本明細書において「枯草菌」とは、土壌や植物に普遍的に存在し、反芻動物やヒトの胃腸管に存在する、好気性のグラム陽性のカタラーゼ陽性の細菌であり、0.7~0.8×2~3μmの大きさであり、中温性で、最適生育温度は25~40℃であり、芽胞を形成するとされ、学名Bacillus subtilisまたはこれと近縁なBacillus属細菌であるBacillus amyloliquefaciens、Bacillus licheniformis、Bacillus pumilusなどを含む、病原性を有せず、自然形質転換能を有する任意の細菌をさす。好ましい実施形態では、枯草菌は、Bacillus subtilisの中で高い自然形質転換能を有する株であるMarburg 168株またはその派生株のRM125株である。168株は、遺伝的に最も研究されたグラム陽性菌であり、RM125株とともにATCC(American Type Culture Collection)などから入手可能であり、それ自体は人畜無害であること、OGAB法が適応可能であることが判っていることなどからも、本開示において好適に使用され得る。
 本明細書において「反復配列」または「タンデムリピート」(な核酸配列)とは、生物ゲノムの核酸配列で、同じ配列が反復して(特に数回以上)見られるものの総称である。当該分野で使用される任意の反復配列を本開示において使用することができる。典型的には、プロモーター配列が反復して出現する。
 本明細書において使用する場合、「宿主細胞」とは、外来性の核酸またはタンパク質またはウイルスが導入される細胞(そのような細胞の子孫を含む)をさす。
 本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、天然または人工的に改変されたポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)が包含される。
 本明細書において「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。核酸の例として、DNA、RNA、cDNA、mRNA、rRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、lncRNAが挙げられる。この用語はまた、「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチド誘導体を含むか、またはヌクレオチド間結合が通常とは異なるポリヌクレオチドをいう。「ヌクレオチド誘導体」とは、天然のDNAまたはRNAにおいて使用される通常のヌクレオチドとは異なる構造を有するヌクレオチドをいい、例えば、ロックト核酸(LNA)、2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸(2'-O,4'-C-ethylene bridged nucleic acid、ENA)などのエチレン核酸、その他の架橋核酸(bridged nucleic acid、BNA)、ヘキシトール核酸(hexitol nucleic acid、HNA)、アミド架橋核酸(Amido-bridged nucleic acid、AmNA)、モルホリノ核酸、トリシクロ-DNA(tcDNA)、ポリエーテル核酸(例えば、米国特許第5,908,845号参照)、シクロヘキセン核酸(CeNA)などが挙げられる。ヌクレオチド間結合が通常とは異なる例として、例えば、リン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド間結合、リン酸ジエステル結合がN3’-P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド間結合、リボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド間結合などが挙げられる。
 他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る。例えば、特定のNRPSのAドメインなど具体的な野生型配列に基づく改変体には、元となる配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%の配列同一性を有する配列を含む核酸も含まれる。
 本明細書において「遺伝子」とは、一定の生物学的機能を果たす核酸部分を指す。この生物学的機能として、ポリペプチドまたはタンパク質をコードすること、タンパク質非コード機能性RNA(rRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、lncRNAなど)をコードすること、特定のタンパク質に特異的に結合されること、核酸の切断または複製を制御することが挙げられる。そのため、本明細書における遺伝子には、タンパク質またはタンパク質非コード機能性RNAをコードする核酸部分以外にも、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、インスレーター、サイレンサー、複製起点が含まれる。本明細書において「遺伝子産物」とは、遺伝子にコードされるポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質非コード機能性RNAを指し得る。
 本明細書において使用する場合、遺伝子を「欠損する」とは、核酸がその遺伝子を含まないか、またはその遺伝子の正常な機能(例えば、機能的なタンパク質を生産する機能)を発揮しないように改変された遺伝子を含むことを指す。
 本明細書において使用する場合、「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
 本明細書において核酸の「相同性」とは、2以上の核酸配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの核酸の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。「類似性」は、同一性に加え、類似の塩基についても計算に入れた数値であり、ここで類似の塩基とは、混合塩基(例えば、R=A+G、M=A+C、W=A+T、S=C+G、Y=C+T、K=G+T、H=A+T+C、B=G+T+C、D=G+A+T、V=A+C+G、N=A+C+G+T)において、一部が一致する場合をいう。2種類の核酸が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、またはストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの核酸配列を直接比較する場合、その核酸配列間で、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
 アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.10.1+(2020.6.18発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメータの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。類似性は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。
 本明細書において「保存的アミノ酸置換」とは、ペプチドにおけるアミノ酸を別の性質の類似したアミノ酸に置き換えることを指し、ペプチドの性質は保存的置換の前後で類似であることが予測され得る。一つの実施形態において、保存的アミノ酸置換は、以下のアミノ酸の群におけるアミノ酸を同じ群内の別のアミノ酸で置き換えることである。
 ・群1:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン
 ・群2:セリンおよびスレオニン
 ・群3:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン
 ・群4:リジン、ヒドロキシリジン、アルギニンおよびヒスチジン
 ・群5:システイン、メチオニン、メチオニンスルホキシドおよびホモシステイン
 ・群6:プロリンおよびヒドロキシプロリン
 ・群7:グルタミン酸およびアスパラギン酸
 ・群8:グルタミンおよびアスパラギン
 本明細書において、特に断らない限り、ある生物学的物質(例えば、タンパク質、核酸、遺伝子)についての言及は、その生物学的物質の生物学的機能と同様の機能(同じ程度でなくてもよい)を発揮するその生物学的物質のバリアント(例えば、アミノ酸配列に修飾を有するバリアント)についての言及でもあることが理解される。このようなバリアントには、元の分子のフラグメント、同一サイズの元の生物学的物質のアミノ酸配列または核酸配列にわたり、または当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行ってアラインされる元の分子の配列と比較した際、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%同一である分子が含まれ得る。バリアントには、改変されたアミノ酸(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化またはリン酸化による改変)または改変されたヌクレオチド(例えば、メチル化による改変)を有する分子が含まれ得る。
 本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。ストリンジェントな条件は、例えば、以下の条件を採用することができる。(1)洗浄のために低イオン強度および高温度を用いる(例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム)、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる(例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム)、または(3)20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、および20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベーションし、次に約37-50℃で1×SSCでフィルターを洗浄する。なお、ホルムアミド濃度は50%またはそれ以上であってもよい。洗浄時間は、5、15、30、60、もしくは120分、またはそれら以上であってもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに影響する要素としては温度、塩濃度など複数の要素が考えられ、詳細はAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照することができる。「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、65~68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、42℃である。ハイブリダイゼーション、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-38, DNA Cloning 1:Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。中程度のストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することができ、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3番、Vol.1、7.42-7.45 Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40-50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC-6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。従って、本開示において使用されるポリペプチドには、本開示で特に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子に対して、高度または中程度でストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドも包含される。
 本明細書において「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。対応するアミノ酸は、例えば、システイン化、グルタチオン化、S-S結合形成、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)、ホルミル化、アセチル化、リン酸化、糖鎖付加、ミリスチル化などがされる特定のアミノ酸であり得る。あるいは、対応するアミノ酸は、二量体化を担うアミノ酸であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。2つの配列の間でアライメントを行った結果、同じ位置に位置付けられる核酸またはアミノ酸は対応する核酸またはアミノ酸であり得る。
 本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。例えば、ある細菌における特定のアミノ酸の結合に関するNRPSモジュールに対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となるNRPSモジュールの遺伝子配列をクエリ配列として用いて目的の細菌の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
 本開示に従って、用語「活性」は、本明細書において、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能、生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。
 本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な細胞表面構造認識能、酵素活性、特定のタンパク質との結合能等を挙げることができるがそれらに限定されない。本開示においては、例えば、あるプロモーターが特定の宿主細胞において認識される機能などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドの対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、宿主細胞における上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。
 本明細書において使用する場合、用語「形質転換」、「形質導入」および「トランスフェクション」は、特に言及しない限り互換可能に使用され、宿主細胞への核酸の導入(必要に応じてウイルスまたはウイルス由来構築物を介した)を意味する。形質転換方法としては、宿主細胞に核酸を導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、コンピテント化細胞の使用、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法、リン酸カルシウム法などの種々の周知の技術が挙げられる。
 本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本開示で用いられる物質は、好ましくは「精製された」物質である。
 本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)であってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子およびこれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。
 本明細書において使用される場合、「複合体」または「複合分子」とは、2以上の部分を含む任意の構成体を意味する。例えば、一方の部分がポリペプチドである場合は、他方の部分は、ポリペプチドであってもよく、それ以外の物質(例えば、基材、糖、脂質、核酸、他の炭化水素等)であってもよい。本明細書において複合体を構成する2以上の部分は、共有結合で結合されていてもよくそれ以外の結合(例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等)で結合されていてもよい。
 本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、NRPS由来構築物、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、プラスミド等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
 用語「約」は、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。「約」が、温度について使用される場合、示された温度プラスまたはマイナス5℃を指し、「約」が、pHについて使用される場合、示されたpHプラスまたはマイナス0.5を指す。
 (好ましい実施形態)
 以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
(改変NRPS)
 一つの局面において、本開示は、1つまたは複数の非天然の制限酵素認識配列を含む、改変NRPSをコードする核酸を提供する。一つの実施形態において、本開示は、そのような核酸にコードされる改変NRPSを提供する。発明者らは、NRPSをコードする核酸に制限酵素認識配列を導入して、改変NRPSを作製したが、この改変NRPSは元のNRPSと同様に目的のNRPを生産可能であることが見いだされた。制限酵素認識配列が導入されたことにより、NRPSの改変が容易になり、種々のNRPSを作製することが可能になる。
 改変NRPSは、1つまたは複数のNRPSモジュールを含み得る。各NRPSモジュールは、独立して、Bacillus属(例えば、B. subtilis、B. amyloliquefaciens、B. licheniformis)、Brevibacillus brevis、Paenibacillus polymyxa、Photorhabdus asymbiotica、Photorhabdus luminescens、Xenorhabdus属(例えば、X. bovienii、X. budapestensis、X. doucetiae、X. indica、X. miraniensis、X. nematophila、X. stockiae、X. szentirmaii)、Streptomyces属(例えば、S.verticillus、S.roseosporus)、Penicillium属、Aspergillus属、Tolypocladium属(例えば、T.inflatum、T.niveum)Fusarium属、Microcystis属などの生物に由来するNRPSモジュールであり得る。例えば、改変NRPSにおける1つまたは複数のNRPSモジュールは、天然の(特定の生物種または株の)NRPSモジュールと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有し得る。
 1つの生物種または株は、複数のNRPSモジュールを有し得るので、本開示の改変NRPSは、1つの生物種または株に由来する複数のNRPSモジュールを特定の順番で組み合わせて含んでもよい。
 一つの実施形態において、NRPSモジュールの各ドメイン(Aドメイン、Tドメイン、Cドメインなど)は、同じ種類のアミノ酸の連結に関与する別の生物(種または株)に由来するNRPSモジュールの対応するドメインと置き換えてもよい。
 一つの実施形態において、本開示の改変NRPSは、NRPSモジュールのAドメイン、TドメインおよびCドメインの他に、COMドメイン、TEドメイン、E(エピマー化)ドメイン、M(メチル化)ドメイン、R(還元)ドメイン、F(ホルミル化)ドメイン、Cy(環状化)ドメイン、Ox(酸化)ドメイン、KR(ケトアシルレダクターゼ)ドメイン、MOx(モノオキシゲナーゼ)ドメイン(例えば、Angew Chem Int Ed Engl. 2017 Mar 27;56(14):3770-3821.を参照のこと)などの他のドメインを含んでもよい。
 一つの実施形態において、本開示の改変NRPSは、所望の数のNRPSモジュールを含んでもよく、例えば、3~100、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100のNRPSモジュールを含み得る。
 一つの実施形態において、本開示の改変NRPSをコードする核酸は、異なる生物(種または株)に由来するNRPSモジュールをコードする核酸配列の間に非天然の制限酵素認識配列を含み得る。一つの実施形態において、本開示の改変NRPSをコードする核酸は、天然で隣接しないNRPSモジュールをコードする核酸配列の間に非天然の制限酵素認識配列を含み得る。
(制限酵素認識配列)
 一つの局面において、本開示のNRPSをコードする核酸は、1つまたは複数の非天然の制限酵素認識配列を含み得る。非天然の制限酵素認識配列の導入においては、塩基の挿入、欠失および置換が任意の組み合わせで使用され得る。非天然の制限酵素認識配列は、終止コドンが形成されないように導入され、コドンの読み枠がずれないように導入される。一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、嵩高くないアミノ酸(アラニン、グリシンなど)をコードするように設計されている。
 一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、NRPSモジュールのアライメントにおいて、相同性が高いコンセンサス配列部分以外に導入するように設計されている。一つの実施形態において、ある生物株の有するNRPSモジュールのAドメインからCドメインまでの領域のアミノ酸配列を全て取得し、アライメントした場合に、対応するアミノ酸位置に同じアミノ酸が存在する割合が30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を超えるアミノ酸位置を含まない3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸長の領域に非天然の制限酵素認識配列が導入される。
 一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、A1コアモチーフ配列(L(TS)YxEL)、A2コアモチーフ配列(LKAGxAYL(VL)P(LI)D)、A3コアモチーフ配列(LAYxxYTSG(ST)TGxPKG)、A4コアモチーフ配列(FDxS)、A5コアモチーフ配列(NxYGPTE)、A6コアモチーフ配列(GELxIxGxG(VL)ARGYL)、A7コアモチーフ配列(Y(RK)TGDL)、A8コアモチーフ配列(GRxDxQVKIRGxRIELGEIE)、A9コアモチーフ配列(LPxYM(IV)P)、A10コアモチーフ配列(NGK(VL)DR)、Tコアモチーフ配列(DxFFxxLGG(HD)S(LI))、C1コアモチーフ配列(SxAQxR(LM)(WY)xL)、C2コアモチーフ配列(RHExLRTxF)、C3コアモチーフ配列(MHHxISDG(WV)S)、C4コアモチーフ配列(YxD(FY)AVW)、C5コアモチーフ配列((IV)GxFVNT(QL)(CA)xR)、C6コアモチーフ配列((HN)QD(YV)PFE)、C7コアモチーフ配列(RDxSRNPL)の各アミノ酸配列中の大文字のアミノ酸で特定されるアミノ酸を変更することなく制限酵素認識配列を導入できる部位、あるいはこれらコアモチーフ配列のいずれにも該当しない部位に導入され得る。
 一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、隣接するNRPSモジュールをコードする塩基配列の間に位置する。一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間に位置する。一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、NRPSモジュールのA、TおよびCのうちの2つのドメインコード領域(例えば、Cドメインコード領域とAドメインコード領域)の間の領域であって、これら2つのドメインコード領域を含まない領域に位置する。
 一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、2つの制限酵素特異的認識部位に挟まれた部位が切断される配列であり、例えば、TypeII制限酵素のSfiI(5’-GGCCNNNN/NGGCC-3’)、BglI(5’-GCCNNNN/NGGC-3’)、AlwNI(5’-CAGNN/CTG-3’)、DraIII(5’-CACNNN/GTG-3’)、PflMI(5’-CCANNNN/NTGG-3’)、BstAPI(5’-GCANNNN/NTGC-3’)などの認識配列である。一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、制限酵素特異的認識部位から離れた部位が切断される配列であり、例えば、TypeIIS制限酵素のAarI(5’-CACCTGCNNNN/NNNN-3’)、BbsI(5’-GAAGACNN/NNNN-3’)、BsaI(5’-GGTCTCN/NNNN-3’)、BsmBI(5’-CGTCTCN/NNNN-3’)、BspQI(5’-GCTCTTCN/NNN-3’)などの認識配列である。制限酵素特異的認識部位が切断部位と異なることで、制限酵素処理により生じる核酸断片の突出配列が可変となるので、1種類の制限酵素による処理で複数種類の突出配列を形成できるため、TypeIIまたはTypeIISの制限酵素は、複数種類の突出配列を利用する方法(OGAB法など)において好適に使用され得る。
 一つの実施形態において、非天然の制限酵素認識配列は、それを含むNRPSをコードする核酸を当該制限酵素認識配列を認識する制限酵素で処理した場合に、複数種類の切断核酸断片が同じ突出配列を有することがないように導入され得る。
 任意の種類の制限酵素認識配列が、任意の上記の非天然の制限酵素認識配列の導入部位に導入され得る。
(制限酵素認識配列を使用した新規NRPS作製)
 一つの局面において、本開示は、非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸配列を含む生成物核酸を作製する方法であって、非天然の制限酵素認識配列を含む核酸を開始核酸として準備する工程と、前記制限酵素認識配列を認識する制限酵素で前記核酸を処理して、切断核酸断片を調製する工程と、前記切断核酸断片をライゲーションして、前記開始核酸とは異なる生成物核酸を形成する工程とを含む方法を提供する。
 一つの実施形態において、切断核酸断片をライゲーションする工程において、ライゲーション反応を生じさせる混合物(溶液など)は複数種類の切断核酸断片を含み、複数種類の切断核酸断片は、複数種類の突出配列を有し、少なくとも一部の突出配列は非天然の制限酵素認識配列の切断によって生じる。複数種類の突出配列の中に相補的な突出配列の対があれば、相補的な突出配列を有する切断核酸断片同士が優先的にライゲーションされ得る。そのため、同じ種類の突出配列を有する複数種類の切断核酸断片が存在した場合、突出配列の種類により指定される位置にどの切断核酸断片が組み込まれるかはランダムとなり、NRPSの特定の領域(例えば、1つのNRPSモジュール)を置き換えた改変NRPSが容易に得られ得る。
 一つの実施形態において、複数の切断核酸断片は、同じ突出配列を有し、複数種類のNRPSモジュールをコードする塩基配列を含む切断核酸断片のセットを含む。一つの実施形態において、複数の切断核酸断片は、同じ突出配列を有し、複数種類のアミノ酸を捕捉するNRPSモジュールをコードする塩基配列を含む切断核酸断片のセットを含む。一つの実施形態において、切断核酸断片の各々は、3~5塩基長の突出配列を有する。
 NRPSにおいては1つのNRPSモジュールが1つのアミノ酸の連結に関与し得るので、切断核酸断片が整数個のNRPSモジュール(同数のAドメイン、TドメインおよびCドメイン)を含むことで、作製された改変NRPSにより生産されるNRPの設計が容易になり得る。一つの実施形態において、切断核酸断片の各々は、独立に、0~5(0、1、2、3、4または5)のNRPSモジュールを含む。一つの実施形態において、切断核酸断片の各々は、最大1つのNRPSモジュールを含む。
 一つの実施形態において、ライゲーション反応を生じさせる混合物において、同じ突出配列を有し、NRPSモジュールの少なくとも一部をコードする切断核酸断片のセットは、NRPSモジュールの対応する部位で切断されていることが好ましい。対応する部位とは、例えば、それぞれのNRPSモジュールのA-T間リンカー領域、Aドメインの特定領域など、NRPSモジュールのアミノ酸配列同士をアライメントした場合に20アミノ酸以内(例えば、15、10、5、4、3、2または1アミノ酸以内)だけ離れた位置であり得る。例えば、同じ突出配列を有する切断核酸断片にAドメインコード領域で切断されたものとTドメインコード領域で切断されたものが存在した場合、ライゲーションにより得られるNRPSコード核酸において、Aドメインコード領域の連続した出現や、Aドメインコード領域の欠失が生じ得るので、NRPの生産に失敗し得る。
 一つの実施形態において、切断核酸断片は、NRPSモジュールのCOMドメイン、TEドメイン、E(エピマー化)ドメイン、M(メチル化)ドメイン、R(還元)ドメイン、F(ホルミル化)ドメイン、Cy(環状化)ドメイン、Ox(酸化)ドメイン、KR(ケトアシルレダクターゼ)ドメイン、MOx(モノオキシゲナーゼ)ドメイン(例えば、Angew Chem Int Ed Engl. 2017 Mar 27;56(14):3770-3821.を参照のこと)などのドメインを含んでもよい。これらのドメインは、例えば組み込みたいアミノ酸の種類に応じて適宜当業者が選択できる。
 一つの実施形態において、NRPSモジュールをコードする核酸を制限酵素で処理する場合に、当該核酸は当該制限酵素による天然の制限酵素認識配列を含んでもよく、この場合、当該核酸を当該制限酵素で処理することで生じる核酸断片の突出配列は、当該核酸断片と混合する他の核酸断片のいずれとも異なることが好ましい。同じ突出配列を有する核酸断片が他になければ、天然の制限酵素認識配列の切断により生じた核酸断片はライゲーションにより切断前の状態に戻り得る。
 一つの実施形態において、天然では隣接しないNRPSモジュール同士を連結させる場合は、各NRPSモジュールが有するペプチド鎖を伸長する機能を害さない形で連結する必要があり、例えば、Cドメインは連結するアミノ酸を指定するのでこの機能を破壊しないようにする必要がある。
 一つの実施形態において、本開示は、非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸配列を含む生成物プラスミドを作製する方法であって、開始プラスミドのセットを準備する工程であって、前記開始プラスミドのセットの各々は、少なくとも1つのNRPSモジュールをコードする塩基配列および少なくとも1つの制限酵素認識配列を含む、工程と、前記開始プラスミドのセットを制限酵素で処理して、得られた切断核酸断片を複数含む混合物を調製する工程と、前記複数の切断核酸断片をライゲーションして連結核酸を形成する工程と、前記連結核酸を形質転換生物に接触させて生成物プラスミドを形成する工程を含む方法を提供する。一つの実施形態において、切断核酸断片を含む混合物が溶液である。
 一つの実施形態において、開始核酸の各々は、独立して同じまたは異なる、選択マーカー配列を含む。一つの実施形態において、選択マーカー配列は、薬剤耐性マーカー配列を含む。一つの実施形態において、開始核酸の各々は、独立して同じまたは異なる、枯草菌において作動可能な複製起点を含む。一つの実施形態において、開始核酸の各々は、独立して同じまたは異なる、NRPSをコードする塩基配列の上流にプロモーター領域を含む。
 一つの実施形態において、開始プラスミドは、形質転換生物(枯草菌など)においてプラスミド複製を促進する核酸配列を含む。一つの実施形態において、枯草菌においてプラスミド複製を促進する核酸配列は、枯草菌において作動する複製起点、例えば、oriC、およびpTB19(Imanaka,T., et al. J. Gen. Microbioi. 130, 1399-1408. (1984))やpLS32(Tanaka, T and Ogra, M. FEBS Lett. 422, 243-246. (1998))、pAMβ1(Swinfield, T. J., et al. Gene 87, 79-90. (1990))等のプラスミドに含まれる複製起点を含み得る。枯草菌においてプラスミド複製を促進する核酸配列としては、ローリングサークル型、シータ型、oriC、ファージなどによる複製機構を作動させることが公知である、プラスミドもしくはその部分または複製起点あるいはそれらの改変体などが挙げられる。一つの実施形態において、枯草菌においてプラスミド複製を促進する核酸配列は、公知の複製開始点と同一または類似の配列(例えば、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上の配列同一性)を有し得る。
 一つの実施形態において、開始プラスミドは、枯草菌において作動するプロモーターおよび/またはエンハンサーを有し得る。例えば、枯草菌のプロモーターとして、IPTG(isopropyl s-D-thiogalactopyranoside)で発現制御可能なPspac(Yansura, D. and Henner, D. J. Pro. Natl. Acad. Sci, USA 81, 439-443.(1984.))、あるいはPrプロモーター(Itaya, M. Biosci. Biotechnol. Biochem. 63, 602-604. (1999))等が挙げられる。枯草菌において作動する核酸エレメントは枯草菌に由来する必要はなく、高効率に作動するものなどが選択され得る。
 一つの実施形態において、本開示は、複数の核酸配列を作動可能に連結する工程を含む、本開示のNRPS由来構築物プラスミドを作製する方法を提供する。一つの実施形態において、枯草菌は外部から取り込んだ核酸からプラスミドを形成する能力を有し得るので、この方法において、導入する核酸はプラスミドでなくてもよい。例えば、枯草菌は、核酸(例えば、タンデムリピートな核酸配列を有する非環状核酸)と接触すると、この核酸を取り込み、枯草菌内でプラスミドを形成し得る(例えば、本明細書に記載のOGAB法を参照のこと)。
 一つの実施形態において、枯草菌に核酸を導入する方法は、任意の方法であり得るが、例えば、コンピテントな枯草菌の使用、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法、リン酸カルシウム法などが挙げられる。「コンピテント」とは、細胞が外来性の物質(例えば、核酸)に対してより透過性になった状態を指す。枯草菌をコンピテントにするためには、任意の公知の方法を使用することができるが、例えば、Anagnostopoulou, C. and Spizizen, J. J. Bacteriol., 81, 741-746(1961)に記載の方法を使用することができる。一つの実施形態において、本開示のNRPS由来構築物プラスミドは、枯草菌において作製され、そのまま同じ枯草菌において増幅されてもよい。
 (OGAB法)
 一つの実施形態において、本開示のNRPSコードプラスミドまたはプラスミドライブラリーは、OGAB法によって作製され得る。OGAB(Ordered Gene Assembly in Bacillus subtilis)法は、集積核酸を形質転換生物に取り込ませることでこの生物において環状のプラスミドを生成する方法である。OGAB法では、大きなサイズの核酸を含むプラスミドが簡便に調製され得る。形質転換生物に取り込ませる核酸を本明細書では「集積核酸」と呼び、典型的には、集積核酸は、同じ方向にプラスミドの1単位と、1セットの単位核酸とが繰り返し現れるようなタンデムリピート状の構造を有し、このような構造の集積核酸を使用することで、形質転換生物におけるプラスミドの生成が促進され得る。本明細書において「単位核酸」とは、集積核酸の配列を構成する一部の配列を有する核酸分子または核酸分子の部分を指し、以下で詳細に説明されるように、複数種類の単位核酸が単位ベクターとして調製され、その後集積核酸が構築される。
 以下で、形質転換生物に取り込ませるための集積核酸の作製手順を説明する。
・単位核酸の調製
 集積核酸に組み込むための単位核酸を調製する。単位核酸は任意の公知の方法によって作製でき、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や化学合成により作製することができる。単位核酸は、所望のタンパク質(NRPSなど)をコードする配列またはその部分、遺伝子を制御する配列(プロモーター、エンハンサーなど)、核酸を操作するための配列(制限酵素認識配列など)など任意の所望の配列を有し得る。集積核酸に組み込んだときに、複数種類の単位核酸が特定の順番および/または特性の方向に並ぶように、それぞれの単位核酸の末端は、特定の突出配列を生じるように構成され得る。
 最終的にプラスミド上に多数の単位核酸が集積され得るので、1つまたは複数の単位核酸は塩基長の長い1つまたは複数の遺伝子をコードするように設計されてもよい。塩基長の長い遺伝子としては、例えば、NRPS複合体を構成する遺伝子群などが挙げられる。
・単位ベクターの調製
 単位核酸と、それとは異なる付加核酸とを連結することで単位ベクターを調製することができる。単位ベクターを使用することで、単位核酸をより容易に取り扱うことが可能になり得る。
 付加核酸は、直鎖状核酸であってもよいし、環状のプラスミドであってもよい。環状のプラスミドを付加核酸として使用する場合、単位ベクターも環状構造を有し得るため、例えば、大腸菌等の形質転換に使用できる。一つの実施形態において、導入された宿主中で単位ベクターが複製されるように、付加核酸は複製開始点を含み得る。一つの実施形態において、ある集積核酸を構築するための全ての単位核酸は、同一種類の付加核酸に連結してもよく、そうすることで単位ベクター間のサイズ差を小さくし、複数種類の単位ベクターの取り扱いが容易になり得る。一つの実施形態において、ある集積核酸を構築するための単位核酸は、異なる種類の付加核酸に連結してもよい。一つの実施形態において、ある集積核酸を構築するための1つまたは複数の単位核酸について、(単位核酸の塩基長)/(単位ベクターの塩基長)の割合またはその平均は、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下、5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下または0.5%以下であり得る。付加核酸のサイズが単位核酸より大きいほど、異なる種類の単位ベクターのより均一な取り扱いが可能になり得る。単位核酸と付加核酸との連結は、例えば、DNAリガーゼを用いたライゲーション、TAクローニング法など任意の方法で実施できる。一つの実施形態において、ある集積核酸を構築するための1つまたは複数の単位核酸について、(単位核酸の塩基長)/(単位ベクターの塩基長)の割合またはその平均は、1%以上、0.3%以上、0.1%以上、0.03%以上、0.01%以上、0.003%以上または0.001%以上であり得、単位ベクターの操作が容易になり得る。
 一つの実施形態において、単位核酸の長さは、10bp以上、20bp以上、50bp以上、70bp以上、100bp以上、200bp以上、500bp以上、700bp以上、1000bp以上または1500bp以上、かつ5000bp以下、5000bp以下、2000bp以下、1500bp以下、1200bp以下、1000bp以下、700bp以下または500bp以下であり得る。
 一つの実施形態において、集積核酸は、2種以上、4種以上、6種以上、8種以上、10種以上、15種以上、20種以上、30種以上、40種以上、50種以上、60種以上、70種以上、80種以上、90種以上または100種以上、かつ1000種以下、700種以下、500種以下、200種以下、120種以下、100種以下、80種以下、70種以下、60種以下70種以下または50種以下の単位核酸から構築され得る。各々の単位核酸(または単位ベクター)のモル数がほぼ同一になるように調整することで、タンデムリピート状の構造を有する所望の集積核酸が効率的に作製され得る。
 一つの実施形態において、単位核酸は、集積核酸における1セットの反復配列を単位核酸の数でほぼ等分した塩基長を有してもよい。そうすることで、各々の単位核酸(または単位ベクター)のモル数を揃える操作が容易になり得る。一つの実施形態において、単位核酸は、集積核酸における1セットの反復配列を単位核酸の数でほぼ等分した塩基長から30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下または5%以下の増大または減少した塩基長を有し得る。
 一つの実施形態において、単位核酸は、単位核酸の端部に非回文配列(パリンドローム配列でない配列)を有するように設計され得る。このように設計された単位核酸は、その非回文配列を突出配列にした場合、集積核酸において単位核酸が互いに順序を保ったまま連結した構造を容易に与え得る。
・集積核酸の作製
 集積核酸は、単位核酸を互いに連結することによって構築され得る。一つの実施形態において、単位核酸は、単位ベクターから制限酵素などによって切り出されることで調製され得る。集積核酸は、反復配列のセットを1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上または10つ以上含み得る。集積核酸における反復配列は、単位核酸の配列および必要に応じて集積ベクター核酸の配列を含み得る。集積核酸は、形質転換生物において核酸の複製を可能とする配列を有し得る。一つの実施形態において、形質転換生物において核酸の複製を可能とする配列は、形質転換生物(例えば、Bacillus属細菌(枯草菌))中で有効な複製開始点を含み得る。枯草菌中で有効な複製開始点の配列は、特に限定されないが、例えば、θ型の複製機構を有するものとしては、pTB19(Imanaka,T., et al. J.Gen.Microbioi. 130, 1399-1408.(1984))やpLS32(Tanaka, T and Ogra, M. FEBS Lett. 422, 243-246.(1998))、pAMβ1(Swinfield, T.J., et al. Gene 87, 79-90.(1990))等のプラスミドに含まれる複製開始点等の配列が挙げられる。
 集積核酸は、単位核酸の他にも、必要に応じて追加の塩基配列を含んでもよい。一つの実施形態において、集積核酸は、プロモーター、オペレーター、アクチベーター、ターミネーター等の転写翻訳を制御する塩基配列を含んでもよい。枯草菌を宿主とした場合のプロモーターとしては、具体的には、IPTG(isopropyl s-D-thiogalactopyranoside)で発現制御可能なPspac(Yansura, D. and Henner, D.J. Pro. Natl. Acad. Sci, USA 81, 439-443.(1984.))、あるいはPrプロモーター(Itaya, M. Biosci. Biotechnol. Biochem. 63, 602-604.(1999))等が挙げられる。
 単位核酸は、集積核酸において一定の順序および向きを保った繰り返し構造を形成し得る。一つの実施形態において、単位ベクターから切り出された単位核酸の突出末端の塩基配列が互いに相補的になるように単位核酸を構築することで、集積核酸における一定の順序および向きを保った繰り返し構造の形成が可能になり得る。一つの実施形態において、異なる単位核酸毎に突出末端の構造をユニークにすることで、効率的に一定の順序および向きを保った繰り返し構造を形成し得る。一つの実施形態において、突出末端は、非回分配列を有してもよく、5’末端突出または3’末端突出のいずれであってもよい。
 一つの実施形態において、制限酵素を用いて単位ベクターから突出末端を有する単位核酸が切り出され得る。この実施形態において、単位ベクターは、1つまたは複数の制限酵素認識配列を有し得る。単位ベクターが複数の制限酵素認識配列を有する場合、それぞれの制限酵素認識配列は同じ制限酵素によって認識されてもよいし、異なる制限酵素によって認識されてもよい。一つの実施形態において、単位ベクターは、同じ制限酵素によって認識される1対の領域を、完全な単位核酸領域がこれらの領域の間に含まれるように含み得る。使用される制限酵素は、特に限定されないが、タイプII制限酵素、例えば、AarI、BbsI、BbvI、BcoDI、BfuAI、BsaI、BsaXI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspMI、BspQI、BtgZI、FokI、SfaNIなどが挙げられ、これらの制限酵素は、認識配列から一定距離離れた部位に突出末端を創出可能であり得る。(例えば単独の)タイプIIS制限酵素を用いると、切り出した単位核酸の突出末端の配列が単位核酸毎に異なり得るので、複数の単位核酸を一定の順序および向きで集積させるのに有利であり得る。タイプIIS制限酵素を使用する一つの実施形態において、単位ベクターは単位核酸領域にそのタイプIIS制限酵素が認識する領域を含まない。認識領域を切断する制限酵素を使用する実施形態において、単位ベクターは単位核酸領域の末端にその制限酵素が認識する領域を含み得る。
 一つの実施形態において、複数の単位ベクターから単位核酸を切り出すために同じ種類の制限酵素を使用する場合、この複数の単位ベクターを含む溶液中で制限酵素処理を行うことができ、作業の効率が向上し得る。ある集積核酸を作製するために使用する制限酵素の種類は、例えば、5種以下、4種以下、3種以下、2種以下または1種であり得、少ない種類の制限酵素を使用することで、単位核酸間のモル数のばらつきが低減され得る。一つの実施形態において、単位ベクターから切り出された単位核酸は、アガロースゲル電気泳動など任意の公知の分画法により容易に精製され得る。
 単位核酸および必要に応じて集積ベクター核酸は、DNAリガーゼ等を用いて互いに連結(ライゲーション)することができる。これにより、集積核酸を作製できる。例えば、単位核酸および必要に応じて集積ベクター核酸の連結は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG8000など)および塩(例えば、1価のアルカリ金属、塩化ナトリウムなど)などの成分の存在下で実施することができる。ライゲーション反応液中の各単位核酸の濃度は、特に限定されず、1fmol/μl以上などであり得る。ライゲーションの反応温度および時間は、特に限定されず、37℃で30分以上などである。一つの実施形態において、単位核酸および必要に応じて集積ベクター核酸を連結させる前に、単位核酸および必要に応じて集積ベクター核酸を含む組成物は、制限酵素を失活させる任意の条件に供されてもよい(例えば、フェノール・クロロフォルム処理)。
 単位核酸は、WO2015/111248に記載される方法などを使用して、ほぼ同じモル数に調整することができる。単位核酸をほぼ同じモル数に調整することで、タンデムリピート状の構造を有する所望の集積核酸が効率的に作製され得る。単位ベクターまたは単位核酸の濃度を測定することで、単位核酸のモル数を調整することができる。
・集積核酸からのプラスミドの作製
 集積核酸を形質転換生物と接触させることで、形質転換生物においてプラスミドが形成され得る。一つの実施形態において、形質転換生物として、Bacillus属細菌、Streptococcus属細菌、Haemophilus属細菌、Neisseria属などが挙げられる。Bacillus属細菌としては、B.subtilis(枯草菌)、B.megaterium(巨大菌)、B.stearothermophilus(中度高熱菌)などが挙げられる。好ましい実施形態において、形質転換生物は枯草菌である。一つの実施形態において、集積核酸を取り込ませる形質転換生物は、コンピテント状態であり、能動的に核酸を取り込むことができる。例えば、コンピテント状態の枯草菌は、基質となる2本鎖核酸を細胞上で切断し、2本鎖の内のいずれかの1本鎖をこの切断点から分解し、他方の1本鎖を菌体内に取り込む。取り込まれた1本鎖は、菌体内で環状の2本鎖核酸に修復され得る。形質転換生物をコンピテント状態にするために、任意の公知の方法を使用できるが、例えば、枯草菌は、Anagnostopoulou, C. and Spizizen, J. J. Bacteriol., 81, 741-746(1961)に記載の方法を用いてコンピテント状態にすることができる。形質転換の方法は、それぞれの形質転換生物に適した公知の方法を用いることができる。
 形質転換細胞から生産されたプラスミドは任意の公知の方法を用いて精製でき、本開示は、このように精製されたプラスミドも提供する。一つの実施形態において、精製したプラスミドが所望の核酸配列を有することは、制限酵素切断により発生する断片のサイズパターンを調べること、PCR法、塩基配列決定法などにより確認することができる。一つの実施形態において、本開示のプラスミドを含む枯草菌を提供する。
 一つの実施形態において、本開示は、本開示の方法により作製された種々のNRPSをコードするプラスミドライブラリーを提供する。一つの実施形態において、本開示は、本開示の方法により作製された種々のNRPSをコードするプラスミドを含む枯草菌のライブラリーを提供する。
 一つの実施形態において、本開示は、本開示の方法により作製されたNRPSをコードするプラスミドから生産されるNRPSを提供する。一つの実施形態において、本開示は、本開示の方法により作製された種々のNRPSをコードするプラスミドから生産されるNRPSのライブラリーを提供する。
(組成物)
 本明細書に記載のNRPSから作製されたペプチド(NRP)、またはこれを含む組成物は、ペプチドに応じて治療、公衆衛生、生物工学など、種々の用途で使用することができる。一つの実施形態において、本開示は、本明細書に記載のNRPSから作製されたペプチド(NRP)を含む組成物を提供する。組成物は、種々の形態で提供され得る。組成物の形態としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、吸入剤等であってもよい。注射用の水溶液は、例えば、バイアル、またはステンレス容器で保存してもよい。また注射用の水溶液は、例えば生理食塩水、糖(例えばトレハロース)、NaCl、またはNaOH等を配合してもよい。
 一つの実施形態では、本開示の組成物は、薬学的に許容しうるキャリアもしくは賦形剤を含む。このようなキャリアは、無菌液体、例えば水および油であることも可能であり、石油、動物、植物または合成起源のものが含まれ、限定されるわけではないが、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等が含まれる。賦形剤には、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポロキサマー、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が含まれる。組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有することも可能である。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出配合物等の形を取ることも可能である。伝統的な結合剤およびキャリア、例えばトリグリセリドを用いて、組成物を座薬として配合することも可能である。経口配合物は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的キャリアを含むことも可能である。適切なキャリアの例は、E.W.Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)に記載される。これらのほか、例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含んでいてもよい。本開示の組成物の任意の成分は、薬学的に許容しうる塩として提供することができる。
 本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
 以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
 試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
 菌株
 遺伝子クローニング用の大腸菌には、DH5α、TOP10、JM109を用いた。枯草菌の遺伝子組換えの宿主には168株の派生株を用いた。具体的には、プリパスタチンNRPSのOGAB法による集積の際には、ppsABCDEと、srfAA、AB、ACを欠損したBEST9731株を用いた。組換えNRPS発現宿主には、ppsABCDEを欠損し、168株のsfp遺伝子欠損を相補したBUSY9621株を用いた。BReT法による、野生型ppsABCDE遺伝子のクローニングには、プリパスタチンを生産するBEST8628株をそれぞれ用いた。
 培地
 LB培地は、Bactotryptone 10g、酵母抽出物5g、塩化ナトリウム5gを1Lの水に溶解して調製し、寒天プレートの場合は、さらにBacto Agar 15gを添加して、オートクレーブ(121℃、20分)して調製した。必要に応じて、カルベニシリン(終濃度100μg/mL)、あるいはテトラサイクリン(終濃度10μg/mL)を加えて用いた。枯草菌形質転換用のTF-I培地とTF-II培地は、以下のように作製した。まず、10×Spizizen(1Lあたり、140g KHPO(無水)、60g KHPO(無水)、20g (NHSO、10g Na-クエン酸・O)、50% グルコ-ス、2% MgSO・7HO、2% カザミノ酸、および水を、それぞれオートクレーブにより個別に準備した。またトリプトファン、アルギニン、ロイシン、トレオニンの各アミノ酸の水溶液(5mg/mL)は、フィルター滅菌により準備した。10×Spizizenを50mL、50% グルコ-ス、2% MgSO・7HO、2% カザミノ酸、5mg/mLのトリプトファン、アルギニン、ロイシン、トレオニンの各アミノ酸をそれぞれ5mLずつ、最後に滅菌水415mLを混合して、フィルター滅菌することでTF-I培地(500mL)を作製し、使用するまで4℃で保存した。2% カザミノ酸を2.5mL、各アミノ酸溶液(5mg/mL)を0.5mL、滅菌水を435.5mLにする以外は、TF-I培地と同様のものを使用して、フィルター滅菌することでTF-II培地(500mL)を作製し、使用するまで4℃で保存した。枯草菌によるペプチド生産のためのACS培地は、以下の様に作製した。培地1L当たり、スクロース 100g、クエン酸 11.7g、硫酸ナトリウム 4g、酵母エキス 5g、リン酸水素二アンモニウム 4.2g、塩化カリウム 0.76g、塩化マグネシウム・6水和物 0.42g、塩化亜鉛 0.0104g、塩化第二鉄・6水和物 0.0245g、塩化マンガン・4水和物 0.0181gを溶解し、アンモニア水でpH6.9に調整後、オートクレーブした。
 試験管内遺伝子操作
 他の一般的なDNAの操作については、標準プロトコール(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989))に従って行った。
 枯草菌形質転換法
 Falconの14mL試験管(2051)にLB培地2mLを入れ、そこに-70℃で保存したグリセロールストックの枯草菌を植菌し、回転培養装置で回転しながら、37℃で17時間培養した。新しい14mL試験管(Falcon 2051)にTF-I培地を900μL分注し、25μLの2% カザミノ酸を添加し、50μLの前培養液を添加し、回転培養装置で回転しながら、37℃で4時間培養した。その後、新しい14mL試験管にTF-II培地を900μL分注し、100μLのTF-I培養液を添加し、回転培養装置で回転しながら、37℃で1.5時間培養した。1.5mLの遠心チューブにTF-II培養液を100μL入れ、8μLのDNAを添加した。回転培養装置で回転しながら、37℃で30分培養した後、LB培地を300μL添加し、さらに回転培養装置で回転しながら、37℃で1時間培養した。その後、テトラサイクリン10μg/mLを含むLB培地寒天プレートに広げて37℃で一晩インキュベーションすることで、形質転換体を得た。
 PCR法による単位遺伝子の増幅とプラスミドへのクローニング
 TAKARA Ex-Taq用10×酵素2.5μL、2.5mM dNTP溶液 2μL、10pmol/μLのプライマーのセットをそれぞれ0.25μL、鋳型となる枯草菌のゲノムDNA 1μL、滅菌水16μL、Ex-TaqHS 0.5μLを添加して、94℃で5minインキュベーション後、98℃で20sec、58℃で30sec、72℃、1min/kbを30サイクル行うことでDNAを増幅した。得られたDNA断片に対して、pCR-XL-TOPO Kit(インビトロジェン)をマニュアルに従って用いた。あるいは、プラスミドpBR-delTypeIIS-XcmIをXcmIで切断して作製したTAクローニングベクターによりTAクローニング法によりクローニングする際には、PCR産物をMiniElute PCR purification Kitにより精製後、その1μLを10ng/μLの上記ベクター断片1μLと混合し、そこにTAKATA Ligation(Mighty)Mix 2μLを加え、16℃で終夜インキュベーションした。このライゲーション溶液の4μLを40μLの大腸菌DH5α、あるいはJM109のケミカルコンピテントセルに添加して、氷上で15min恒温後、42℃で30sec熱ショックを与え、2min氷上で放置後、LB培地を200μL添加して、37℃で1h恒温後、カルベニシリンを100μg/mLの濃度で含む、1.5%寒天を含むLBプレートに塗抹し、37℃で終夜培養することによりプラスミドの形質転換体を得た。
 大腸菌プラスミド精製と制限酵素切断
 望ましい配列を有するDNA断片をクローンするプラスミドを持つ大腸菌形質転換体をそれぞれ2mLの100μg/mLのカルベニシリン入りLB培地で37℃、120spm、一晩終夜培養し、得られた菌体に対して、QIA spin miniprep kit(キアゲン社)を用い、マニュアルに従ってプラスミドを精製した。およそ20μgのプラスミドを含む40μLのDNA溶液に10×Cut smart buffer 50μL、SfiI制限酵素(NEB)5μLを添加し、50℃、2h反応させることにより単位DNA断片をプラスミドベクターから切り離した。
 低融点アガロースゲルによるDNAのサイズ分画
 制限酵素処理したDNA溶液を、1%の低融点アガロースゲル(2-Hydroxyethyl Agarose TypeVII, シグマ社)で、1×TAEバッファー(Tris-Acetate-EDTA Buffer)存在下で、汎用アガロースゲル電気泳動装置(i-MyRun.N 核酸用電気泳動システム、コスモバイオ社)で、50V(約4V/cm)の電圧を印加し、1h泳動することにより、プラスミドベクターと単位DNAを分離した。この泳動ゲルを、1μg/mLの臭化エチジウム(シグマ社)を含む1×TAEバッファー100mLで30min染色し、長波長の紫外線(366mn)で照らすことにより可視化することで、所定の大きさのDNA断片をカミソリで切り出し、1.5mLチューブに回収した。回収した低融点アガロースゲル(約300mg程度)に、1×TAEバッファーを添加することにより全体積を約700μLとし、これを65℃、10min恒温することにより、ゲルを溶解した。その後、等量のTE飽和フェノール(ナカライテスク社)を添加し、良く混合することで制限酵素を失活した。遠心分離(20,000×g、10min)によりフェノール相と水相に分離し、水相(約900μL)を新しい1.5mLチューブに回収した。ここに1-ブタノール(和光純薬工業社)を500μL添加し、良く混合後、遠心分離(20,000×g、1min)により分離し、水分を飽和した1-ブタノールを取り除くという操作を水相の体積が450μL以下になるまで繰り返すことで、水相の体積を減少させた。これに、3M酢酸カリウム-酢酸緩衝液(pH5.2)を50μLと、エタノール900μLを添加し、遠心分離(20,000×g、10min)することにより、DNAを沈殿し、これを70%エタノールでリンスして、20μLのTEに溶解した。
 DNA濃度調整
 測定対象のDNAをおよそ数ng/μLの濃度に調整したもの25μLに、SYBRgreenI(Molecular Probe)をTEで1/12,500に希釈したワーキング液を125μL添加して、良く混合することで測定サンプルとした。既知濃度のDNA(TOYOBO λ/HindIII DNA(250μg/mL))をTEで希釈することで31.25ng/μLから2倍の希釈系列を12段階作製し、これらの25μLに同様にワーキング溶液を125μL添加して、良く混合することで、スタンダード希釈系列とした。測定サンプルと希釈系列スタンダードを黒色の96穴プレートに移し、蛍光プレートリーダー(Thermofisher Fluoroskan FL)で、励起波長485nm、蛍光波長535nmで蛍光強度を測定し、スタンダード希釈系列から作製した検量線により測定対象のDNA濃度を決定した。
 OGAB法による遺伝子集積
 遺伝子集積用ベクターおよび集積対象の各DNA断片を10fmolの等モルを含むように混合し、TEで全体の体積を10μLに調整した。そこに2×ライゲーションバッファー(20%(w/v)PEG6000、132mM Tris-HCl(pH7.6)、13.2 mM MgCl、20 mM DTT、0.2 mM ATP、300 mM NaCl)を11μL添加し、全体を37℃で5min間恒温した後、1μLのT4DNAリガーゼ(Takara)を添加して、37℃で4h恒温した。10μLを取って電気泳動することによりライゲーションされていることを確認後、これを10μL新しいチューブに採取し、枯草菌コンピテントセルを100μL添加し、37℃で30min、ダックローターで回転培養した。その後、300μLのLB培地を添加して、37℃で1h、ダックローターで回転培養し、その後、培養液を10μg/mLのテトラサイクリン入りLBプレートに広げ、37℃で一晩培養した。
 超遠心法によるプラスミドの大量調製
 培養終了後、50mLずつ50mLチューブ(ファルコン2070)4本に分注し、5,000×gで10分間遠心した。上清を捨てて、菌ペレットをボルテックスにより完全にほぐした。大腸菌の場合はP1 Buffer(キアゲン)単独を使用し、枯草菌の場合は、10mg/mLのリゾチームおよび10mg/mLのリボヌクレアーゼAを添加したP1 Buffer(キアゲン)溶液を使用し、菌を入れたチューブ4本にそれぞれ5mLずつ添加し、よく混合した。これを室温で5分間インキュベーションした。4本のチューブにそれぞれP2 Buffer(キアゲン)を5mLずつ添加し、ゆっくりと混合し、室温で5分間インキュベーションした。さらに、P3 Buffer(キアゲン)を5mLずつ添加し、白濁物質が均等に分散できるようにある程度強い力で混合した。5,000×gで10分間遠心して、上清をピペットで吸い、新しい4本のネジ蓋の50mLチューブ(ファルコン2070)に移した。それぞれのチューブに5mLのフェノール飽和TEを添加し、激しく混合した。5,000×gで10分間遠心して、上清をピペットで吸い、新しい4本のネジ蓋の50mLチューブ(ファルコン2070)に移した。100%エタノールをそれぞれ20mL添加し混合して、5,000×gで10分間遠心し、上清を取り除いた。沈殿に5.4mLのTEを添加し、完全に溶解した。次に、6.40gの塩化セシウムを投入し、完全に溶解した。更に、1.1g/mLの塩化セシウム溶液(1.1gの塩化セシウムと1mLの水を混ぜて作製した溶液、体積調整せず)を2.6mL添加した。最後に、10mg/mLのエチジウムブロマイド溶液を600μL添加し、よく混合した。超遠心チューブ(ベックマン362181)1本に中身を移した。バランスとの重さの違いが20mg以内になるように、水、あるいは1.1g/mL塩化セシウム溶液(比重約1.5g/mL程度)を添加して重さを微調整した。超遠心装置(ベックマンコールター)で以下の条件で遠心を行った。温度:18℃、速度:50,000rpm、加速度:Max、減速度:Max。15時間以上遠心した。
 遠心終了後、紫外線(365nm)観察下で、針(21G×5/8”)をセットした1mLのシリンジをccc型のプラスミドのバンドに挿し、プラスミド溶液を回収し、15mLチューブに移した。ここにP3を500μL添加し、次に、全体が3mLになるように水を添加した。さらに、9mLの100%エタノールを添加した。5,000×gで10分間遠心し、上清を取り除いた。得られた沈殿に700μLのTEを添加し、DNAを溶解した。これを1.5mLのチューブに移し、600μLの1-ブタノールを添加して混合し、20,000×gで10秒程度遠心して、2層に分離し、上層のブタノール層を捨てた。新たに、600μLの1-ブタノールを添加して混合し、20,000×gで10秒程度遠心して、2層に分離し、上層のブタノール層を捨てた。この操作を、水層が450μL以下になるまで続けた。水層が450μL以下になったら、P3 Buffer(キアゲン)を50μL添加し、更にエタノールを900μL添加して混合後、20,000×gで10分間遠心した。上清を取り除き、得られたペレットDNAを900μLの70%エタノールでリンス後、22μLのTEに溶解した。
 分析HPLCによるリポペプチドの分析
 培養液を50mL遠心チューブに入れて、そこに12N塩酸を加えてpH2にし、発生した沈殿を9,160×gで10min遠心することによりペレットとして回収した。ここに、4mLの95%エタノールを添加し、マグネチックスターラーで1時間混合した後、9,160×gで10min遠心することにより、上清を回収した。これを0.45μmのPTFEフィルターを通過させることにより、HPLCサンプルとした。HPLCは、カラムにInertsil ODS-2[直径4.6mm × 長さ250mm];gLサイエンス)を用いた。溶離液は、(A)0.05%トリフルオロ酢酸水溶液、(B)0.02%トリフルオロ酢酸を含む、アセトニトリル:イソプロピルアルコール=7:3の有機溶剤の2種類を用いた。常に、2つの溶離液の合計が1mL/minとなるように流した。各溶離液の時間変化は以下の様になる。開始時(0分)は、A=60%、B=40%で、以降直線的にAが減少しBが増加するように変化し、30分後にA=0%、B=100%となってから、そのままの状態を5min維持した後、A=60%、B=40%を10min維持した。検出は、205nmの吸収で行った。
 大量分取用HPLCによるペプチド精製
 500mL三角フラスコに200mLのテトラサイクリン(10μg/mL)添加ACS培地を入れ、そこに植菌し、30℃、120spmで4日間培養した。培養液を12N塩酸でpH2に調整し、発生した沈殿を、9,160×g、10minの遠心により回収した。そこに、500mLの95%エタノールを加え、攪拌により溶出後、0.45μmのフィルター(Corning(登録商標) 150mL Filter System, 0.45μm 13.6cm2 Cellulose Acetate)を通過させることでろ過した。得られたろ液のうち、300mLをローターリーエバポレーターにより100mLまで濃縮した。再度、0.45μmのフィルターでろ過し、ローターリーエバポレーターにより、10~15mLまで濃縮した。さらに、真空遠心濃縮器(Labconco Centrivap concentrator)により濃縮後、0.45μmのPTFEフィルター(htslabs.com, Standard/ Filtervial PTFE 0.45μM W/Pre-slit septum Blue snap cap PK100)を通過させて大量分取HPLC用サンプルとした。フラクションコレクター(FRC-10A)を有する島津製作所製HPLC装置に、カラムにPhenomenex, Luna(登録商標) 5μm C18(2) 100Å, LC Column 250 x 10mm, Eaを搭載して、カラム温度40℃、流速3mL/minの条件を用いた。溶離液は、分析用HPLCと同じAとBを用い、AとBの割合の時間変化も分析用HPLCと同様の条件を用いた。検出は、205nmを用いた。
 実施例1:プリパスタチンNRPSへのSfiIサイトの導入
 プリパスタチンは、枯草菌が生産する10アミノ酸からなる環状リポペプチドで、NRPSにより生合成される。プリパスタチンNRPSは、図1に示すようにPpsA、PpsB、PpsC、PpsD、PpsEの5つの酵素からなるが、それぞれ、2個、2個、2個、3個、1個の指定されたアミノ酸の伸長に関わる。PpsA-PpsE間には、全部で10個のモジュールが存在しており、枯草菌ゲノム上でも同じ順序でNRPS遺伝子が並んでいる。本実施例では、モジュールの境界となる、Cドメインと隣のモジュールのAドメインとの間の領域(以後C-Aリンカーと表現)のDNA配列中に制限酵素SfiIサイトを導入した。まず、PpsA-PpsE間に存在する10個のC-Aリンカー領域のうち、Cドメイン中のC5コンセンサス配列((IV)GxFVNT(QL)(CA)xR)とAドメイン中のA1コンセンサス配列(L(TS)YxEL)の間のアミノ酸配列を収集し、これをclustralWにより、マルチプルアライメント解析を行った(図2)。その結果、A1コンセンサス配列からC5コンセンサス配列方向に25アミノ酸離れた場所に、アミノ酸配列に多様性がみられる部分が存在するため、そこに注目した。SfiIサイトは、5‘-GGCCNNNN/NGGCC-3’(/は切断場所、Nは、A,C,T,G何れでもよい)は、13塩基に及び、NRPSコード領域中の最大で連続した5アミノ酸に影響を及ぼす。OGAB法を行う上で必要となる、各SfiI切断により生成する突出配列は相補鎖も考慮に入れた上で唯一の突出となる含む点、さらに突出の3塩基の配列中に最低限1塩基のGあるいはC塩基を含む点を満たしながら、SfiIサイトの導入によるコード領域アミノ酸配列の野生型配列からの変更を最小限にするために、以下のルールに従って改変するDNA配列を決定した(図3)。まず、SfiIサイト13塩基のうち、最もCドメインに近いG塩基を、影響を与える可能性のある5つのアミノ酸のうち最上流のアミノ酸をコードするコドンの3番目の塩基に位置付けることで、同義語コドンへの変換の可能性を高めるようにした。2~4番目の塩基のGCCにより、野生型のアミノ酸配列に関係なくアラニンをコードするようにした。5~7番目の塩基は、形成されることになる突出配列の特異性を担保しながらできるだけ野生型の配列に類似するようにした。8~10番目の塩基は、形成されることになる突出配列の特異性を担保しながら野生型と同一アミノ酸をコードするように試み、それが困難な場合でもコドンの2番目の塩基が野生型と同じになるようにすることで、コードされるアミノ酸の疎水性・親水性が大きく変更されないように設計した。11~13番目の塩基は、野生型のアミノ酸配列に関係なくアラニンをコードするようにした。このような設計指針に基づいて、図3及び配列番号1~22に示すように、プライマーの5’末端に設計したSfiIサイトが位置付けられるように設計したプライマーを使用して、野生型枯草菌ゲノムDNAをテンプレートに用いてPCRにより増幅し、pCR-XL-TOPO kit(インビトロジェン)によりマニュアルに従って大腸菌DH5αにクローニングすることで、pps01~pps09のDNA断片を得た。最後のモジュールとなるpps10については、C-Aリンカー中のpps09の接続部分(上流側)からppsE遺伝子の下流に存在する推定ρ因子非依存性ターミネーター配列(下流側)までを含むように増幅するプライマーを設計した。また、pps01よりも上流のpps00領域については、pps00とpps01との接続部分から、ppsオペロンのプロモーター領域を含むように増幅するプラマーを設計した。pps00断片およびpps10断片も同様にpCR-XL-TOPOにクローニング後、ベクターへのクローニング方向を確認した後、pps00をクローニングするプラスミドのSpeIサイトに、pps10をクローニングするプラスミドをSpeIとXbaIで切断して得られるpps10を含む断片を連結し、pps00とpps10がゲノム中の位置関係を保持した状態で連結されたクローンを選択して、pCR-pps00-pps10を構築した。このプラスミドを制限酵素SfiIで部分分解し、pps00がpps10と連結された4.3kbのDNA断片を低融点アガロースゲル電気泳動よりサイズ分画し、精製後、大腸菌-枯草菌のシャトルプラスミドベクターのpGETS109DraIIIのDraIIIクローニングサイトに連結し、pGETS109DraIII-pps00-pps10を構築した。このプラスミドをSfiIで切断し、低融点アガロースゲル電気泳動によるサイズ分画により長いDNA断片を切り出し精製することで、OGAB法で使用可能なベクターDNA断片を得た。このベクターDNA断片と、pps01からpps09のDNA断片をクローニングするプラスミドDNAからSfiIにより切断して得られたpps01からpps09までの断片を等モル濃度になるように混合し、OGAB法により集積を行った(図4)。形質転換後、枯草菌をテトラサイクリン入りLBプレートに塗抹し、37℃で終夜培養することにより、57個の形質転換体を得た。ランダムに選択した、12個のコロニーをテトラサイクリン入りLB培地で培養後、プラスミドを少量精製し、SfiIおよび他の制限酵素により切断し、アガロースゲル電気泳動により切断パターンを解析した(図5)。その結果、12個中5個が、pps00-pps01-pps02-pps03-pps04-pps05-pps06-pps07-pps08-pps09-pps10の連結を含むDNAであった。このうちの一つをppsW03と命名した(配列番号23)。
 SfiIサイトを導入したNRPSによるプリパスタチンの生産の確認
 NRPS生産宿主となるBUSY9261を、ppsW03で枯草菌コンピテントセル法により形質転換し、得られた株をppsW03/BUSY9261と命名した。この株をテトラサイクリン入りLB培地で前培養後、ACS培地で30℃で5日間培養した。この株の培養液の酸性沈殿物をエタノールで抽出して分析用HPLCで分析したところ、野生株のBEST8628株のプリパスタチンと同じ保持時間にピークが観察された(図6)。大量分取用HPLCによりこのピーク物質を回収し、質量分析を行ったところ、プリパスタチンを生産していることが確認された(図7)。ppsW03と同様の配列を持つがSfiIサイトを有さない野生型のNRPSを有するプラスミドppsW10は、SfiIで切断したpGETS109DraIII-pps00-10でBEST8628株を形質転換することで、BReT法(Tomita, S., Tsuge, K., Kikuchi, Y., Itaya, M., 2004. Targeted isolation of a designated region of the Bacillus subtilisgenome by recombinational transfer. Appl. Environ. Microbiol. 70, 2508-2513.を参照のこと)により構築した(図5)。これをBUSY9261株に導入したppsW10/BUSY9261株を比較対象として培養した。その結果、ppsW03/BUSY9261株は、ppsW10/BUSY9261株と同様のプリパスタチン生産量を示した(図8)。SfiIサイトの導入がプリパスタチンの生産量に影響を与えないことが確認された。
 実施例2:キメラNRPSの構築
 実施例1で作製したプリパスタチンNRPSの第7番目のモジュールをコードするpps07断片、及び第8番目のモジュールをコードするpps08断片を、他のNRPS由来のモジュールのDNA断片に置き換えることで新規組換えNRPS遺伝子を構築した(図9)。枯草菌のサーファクチンNRPSのモジュールで置き換えた。サーファクチンNRPSの第4番目のモジュールをコードするsrf07断片のために、実施例1での指針と同様にA1コンセンサス配列からおよそ25アミノ酸上流の位置に、pps07と同一の突出配列が形成されるようにSfiIサイトを設計した。また、サーファクチンNRPSの第5番目モジュールをコードするsrf08断片についても同様に、A1コンセンサス配列からおよそ25アミノ酸上流の位置に、pps08と同一の突出配列が形成されるようにSfiIサイトを設計した。実施例1と同様に、配列番号24~27のプライマーを用いて枯草菌168株ゲノムDNAをテンプレートにしてsrf07およびsrf08のDNA断片を増幅し、pCR-XL-TOPOにクローニングした。得られたプラスミドをSfiIにより切断することにより、srf07断片とsrf08断片を取得した。
 キメラNRPS遺伝子について、以下のキメラ1~3の3つのパターンを作製した(図9)。
 キメラ1:pps00-pps01-pps02-pps03-pps04-pps05-pps06-srf07-pps08-pps09-pps10(配列番号28)
 キメラ2:pps00-pps01-pps02-pps03-pps04-pps05-pps06-pps07-srf08-pps09-pps10(配列番号29)
 キメラ3:pps00-pps01-pps02-pps03-pps04-pps05-pps06-srf07srf08-pps09-pps10(配列番号30)
 これらのプラスミドは、枯草菌宿主BEST8666株を用いてOGAB法により集積した。正しく集積されたそれぞれのプラスミドを、ppsABCDEを欠損する枯草菌宿主BUSY9261株にコンピテントセル法で導入し、得られた株を、それぞれBUSY9261/chimera1、BUSY9261/chimera2、BUSY9261/chimera3と命名した。各株をLB培地で前培養後、ACS培地で5日培養して、分析HPLCにより分析したところ、これらの株が、既知のプリパスタチンやサーファクチンとは異なる移動度の化合物を生産していることを確認した。より詳細な構造解析を行うため、大量培養を行い、その後、大量分取用HPLCを行うことで、新規物質を精製した。LC-MS/MSによる構造決定の結果、BUSY9261/chmera1からは、
・キメラペプチド1: β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Leu-Leu-Val-Gln-Tyr-Ile-OH(配列番号61)
BUSY9261/chmera2およびBUSY9261/chmera3からは、
・キメラペプチド2および3: β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Leu-Leu-Val-Asp-Tyr-Ile-OH(配列番号62)
のペプチドが生産されることが示唆された(図10)。
 キメラ1~3のプラスミドにコードされるNRPS遺伝子から予想されるペプチド産物は、
・キメラ1由来: β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Orn-Tyr-Thr-Glu-Val-Val-Gln-Tyr-Ile-OH(配列番号63)(あるいは、このペプチドのN末端の脂肪酸鎖上の水酸基またはN末端に近い方のTyrの水酸基と、C末端のカルボキシル基との間のラクトン環形成物)
・キメラ2由来: β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Orn-Tyr-Thr-Glu-Val-Pro-Asp-Tyr-Ile-OH(配列番号64)(あるいは、このペプチドのN末端の脂肪酸鎖上の水酸基またはN末端に近い方のTyrの水酸基と、C末端のカルボキシル基との間のラクトン環形成物)
・キメラ3由来: β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Orn-Tyr-Thr-Glu-Val-Val-Asp-Tyr-Ile-OH(配列番号65)(あるいは、このペプチドのN末端の脂肪酸鎖上の水酸基またはN末端に近い方のTyrの水酸基と、C末端のカルボキシル基との間のラクトン環形成物)
であった。予想と異なり、導入したsrf07もしくはsrf08を境目として、その前半側は、サーファクチンNRPS由来、後半側はプリパスタチンNRPS由来の新規ペプチドとなっており、キメラペプチド2と3は、同一のペプチドであった。この原因は、BUSY9261に導入したキメラ1~3のプラスミドが、何らかの理由により宿主のゲノムDNA中に存在する野生型サーファクチンNRPS遺伝子と、srf07あるいはsrf08の相同性を利用して組み込まれた結果であると想定される。いずれにしても、新規ペプチドが得られた。
 実施例3(仮想実施例):サーファクチン合成酵素へのSfiI認識配列の導入
 実施例1のプリパスタチンNRPSと同様に、Cドメインのコンセンサス配列のC1配列の上流25アミノ酸の部分に図11に示すように、制限酵素SfiIの認識部位を導入する。OGAB法のための各ブロック(単位DNA)を配列番号31~42に示すプライマーDNAを用いてPCR法により増幅する。遺伝子断片をpBR-delTypeIIS-3-AarIにクローニングして、正しい塩基配列のクローンを準備する。実施例2で作製した単位DNAのsrf07とsrf08を含めた全単位DNAであるsrf00、srf04~srf10を準備し、実施例1と同様にOGAB法によりsrf00-srf04-srf05-srf06-srf07-srf08-srf09-srf10が連結した集積プラスミドをBEST9731株により構築する(配列番号43)。このプラスミドはサーファクチンを生産する。
 実施例4:キメラNRPSライブラリーの構築
 実施例1で作製したプリパスタチンNRPS遺伝子にSfiIサイトを導入したプラスミドppsW03と、実施例3で作製するサーファクチンNRPS遺伝子にSfiIサイトを導入したプラスミドsrf-SfiIを使用して、WO2020/203496で示すCombi-OGAB法によりキメラプラスミドライブラリーを構築する。ppsW03とsrf-SfiIプラスミドを超遠心法により高純度に精製し、それぞれ1fmolずつを制限酵素SfiIで切断し、フェノール処理、ブタノール処理、エタノール沈殿を行うことでDNA断片を精製する。得られたDNAを混合し、2×ライゲーションバッファーとT4DNAリガーゼを用いて疑似タンデムリピート状に連結し、これをプリパスタチン、サーファクチンの量NRPSを欠損したBUSY9731にsfp遺伝子を搭載した枯草菌にコンピテントセル法で導入することにより、キメラNRPSライブラリーが構築できる(図12)。
 実施例5:異なるサイトへの制限酵素認識部位の導入
 実施例1でプリパスタチンNRPSのC1コンセンサス配列から25アミノ酸上流部分にSfiIサイトを導入したが、実施例5では、これとは異なりC3コンセンサス配列から下流に25アミノ酸離れた場所に制限酵素PflMIサイトを導入する。PflMIが認識する3’-CCANNNN/NTGG-5’(/は切断場所、Nは、A,C,T,G何れでもよいことを示す。)は、プリパスタチンNRPS内には、1か所しかない。実施例1と同様にPflMIサイトを付加した各単位DNAをPCRにより増幅し、大腸菌プラスミドベクターにクローニング後、PflMIで切断し、低融点アガロースゲル電気泳動により各単位DNAを精製する。これらの単位DNA及びOGAB集積用ベクターDNAを等モル濃度に混合して、枯草菌BEST9731株を用いてOGAB法により遺伝子集積を行う。得られたプラスミドDNAをBUSY9621株に導入することにより、PflMIサイトを導入したNRPS遺伝子から生産されたプリパスタチンNRPSによるプリパスタチンが生産される。
 実施例6:イチュリンNRPSへの制限酵素サイトの導入
 枯草菌RB14株が生産するイチュリンAは、βアミノ脂肪酸と7つのアミノ酸が環状に連結したNRPで、ituA、ituB、ituCの3つのORFにコードされるNRPSにより合成される。これら3つのORFはこの順番で連続しており、遺伝子の内部には、制限酵素SfiIサイトは存在しない。イチュリンAのNRPSのC1コンセンサス配列から25アミノ酸上流部分にSfiIサイトを導入すべく、実施例1と同様にSfiIサイトを付加した各単位DNAをPCRにより増幅し、大腸菌プラスミドベクターにクローニング後、SfiIで切断し、低融点アガロースゲル電気泳動により各単位DNAを精製する。これらの単位DNA及びOGAB集積用ベクターDNAを等モル濃度に混合して、枯草菌BEST9731株を用いてOGAB法により遺伝子集積を行う。得られたプラスミドDNAをBUSY9621株に導入することにより、SfiIサイトを導入したNRPS遺伝子から生産されたイチュリンANRPSによりイチュリンAが生産される。
 (注記)
 以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に2022年7月29日に出願された特願2022-121822に対して優先権主張をするものであり、その内容はその全体があたかも本願の内容を構成するのと同様に参考として援用される。
 本開示によれば、効率的に新規NRPSを作製でき、そうすることで効率的なNRP生産を可能とするNRPSや、新規のNRPを提供するNRPSの提供を可能とし得る。
配列番号1:プライマー00-F
CGACTTGGCCGATGTGGCCCGGGAGACCTGTTTTCCAAGAG
配列番号2:プライマー00-R
TTTAGGGGCCGCCACGGCCGTCTTGTTAAACTCATACAACAATTTTTG
配列番号3:プライマー01-F
CAAGACGGCCGTGGCGGCCCCTAAAGCTTTCACCCTGC
配列番号4:プライマー01-R
TTGAGCGGCCTCAACGGCCGTTTTGTTAAATTCAAAGACTATTTTTTGTT
配列番号5:プライマー02-F
CAAAACGGCCGTTGAGGCCGCTCAAAAAGATATTCCTTTTCATCGC
配列番号6:プライマー02-R
GTTCACGGCCGGACGGGCCGTTTCGTTAAACAATTGGATAACCTGTTG
配列番号7:プライマー03-F
CGAAACGGCCCGTCCGGCCGTGAACAAAACGATACCCCAATTG
配列番号8:プライマー03-R
TCTCGGGGCCAGGGCGGCCTGCCCCATTTTTTCAAGGAGTAAC
配列番号9:プライマー04-F
GGGGCAGGCCGCCCTGGCCCCGAGAAATGAAAACATAGTAAGC
配列番号10:プライマー04-R
TTCAGGGGCCACACTGGCCGTCCTGTTATTTTGAGAAACGATTTTCC
配列番号11:プライマー05-F
CAGGACGGCCAGTGTGGCCCCTGAAGCCCCAACC
配列番号12:プライマー05-R
TCTTGGGGCCTCTATGGCCGTACGATTGAGCTCGTGG
配列番号13:プライマー06-F
TCGTACGGCCATAGAGGCCCCAAGAAATGAAACCATCAGCAG
配列番号14:プライマー06-R
GGTTTCGGCCACTGGGGCCTGATCTGTGATTTCTCCAATCAGC
配列番号15:プライマー07-F
AGATCAGGCCCCAGTGGCCGAAACCATCCATGCCATGTTTG
配列番号16:プライマー07-R
TGAATAGGCCGTCACGGCCAACAGATGGCATGATTCAATGAAATCTC
配列番号17:プライマー08-F
TCTGTTGGCCGTGACGGCCTATTCAATGAATCAAACGCTCCACTATG
配列番号18:プライマー08-R
TCCGTAGGCCTTCGCGGCCCCGGTGTTAAACTCATTAAGCAG
配列番号19:プライマー09-F
CACCGGGGCCGCGAAGGCCTACGGAGTTCAAACAATCAGTCAATTG
配列番号20:プライマー09-R
CTTTGGGGCCTCCGTGGCCGTATTGTTGAACTGTGTGACAATCTG
配列番号21:プライマー10-F
CAATACGGCCACGGAGGCCCCAAAGAATCATACAATTATCGATTTATTTC
配列番号22:プライマー10-R
AAGCTTGGCCAAGACGGCCATACAAAAAGAAAGACGGACAGAGAATGGC
配列番号23:ppsW03
配列表に記載の通り。
配列番号24:プライマーsrf07-F
CAGCACGGCCGCAGAGGCCCCTGAAGGAATGGCTGTTCAC
配列番号25:プライマーsrf07-R
GGTTGCGGCCGTCATGGCCGTCATATGTCTTTCTTCTAGCAAAGCAGC
配列番号26:プライマーsrf08-F
TATGACGGCCATGACGGCCGCAACCTTTGCAGCACTTTTTGAAAAACAG
配列番号27:プライマーsrf08-R
TGTCGGGGCCGTCGGGGCCTTGCCCTTCCATGCCTCAAGAAGC
配列番号28:キメラ1
配列表に記載の通り。
配列番号29:キメラ2
配列表に記載の通り。
配列番号30:キメラ3
配列表に記載の通り。
配列番号31:プライマーsrf00-F
TAGGGCCGATGTGGCCCAAAAATGTCATGAAAGAATCGTTGTAAGACGCTC
配列番号32:プライマーsrf00-R
CTTACGGGCCCCCACGGCCTTACCGCCGGCCCTCG
配列番号33:プライマーsrf04-F
CGGTAAGGCCGTGGGGGCCCGTAAGGACATGACGATACCAGAG
配列番号34:プライマーsrf04-R
TTTCGGGGCCGCACTGGCCCCCGGGTTAAACTGCTGAATTTGC
配列番号35:プライマーsrf05-F
CCCGGGGGCCAGTGCGGCCCCGAAAGATAAAACAATTGTTCAGCTGTTTGAG
配列番号36:プライマーsrf05-R
TGTCGGGGCCGCTAGGGCCTTGCCCTTCCAAGCCTCAAGAAG
配列番号37:プライマーsrf06-F
GGGCAAGGCCCTAGCGGCCCCGACAGACAAAACGGTTCATCAGC
配列番号38:プライマーsrf06-R
TTCAGGGGCCTCTGCGGCCGTGCTGTTAAACACCTCGACAATTTG
配列番号39:プライマーsrf09-F
GGGCAAGGCCCCGACGGCCCCGACAGACAAAACGGTTCATCAG
配列番号40:プライマーsrf09-R
TGTTTCGGCCGCCGGGGCCGGCGGGTTTAAGCC
配列番号41:プライマーsrf10-F
CCCGCCGGCCCCGGCGGCCGAAACAAAGCCTCTGACGTATTGG
配列番号42:プライマーsrf10-R
TAGGGCCAAGAAGGCCTTATGAAACCGTTACGGTTTGTGTATTAAGAAATTCGA
配列番号43:srfAA-AC
配列表に記載の通り。
配列番号44:A1コアモチーフ配列
L(TS)YxEL
配列番号45:A2コアモチーフ配列
LKAGxAYL(VL)P(LI)D
配列番号46:A3コアモチーフ配列
LAYxxYTSG(ST)TGxPKG
配列番号47:A5コアモチーフ配列
NxYGPTE
配列番号48:A6コアモチーフ配列
GELxIxGxG(VL)ARGYL
配列番号49:A7コアモチーフ配列
Y(RK)TGDL
配列番号50:A8コアモチーフ配列
GRxDxQVKIRGxRIELGEIE
配列番号51:A9コアモチーフ配列
LPxYM(IV)P
配列番号52:A10コアモチーフ配列
NGK(VL)DR
配列番号53:Tコアモチーフ配列
DxFFxxLGG(HD)S(LI)
配列番号54:C1コアモチーフ配列
SxAQxR(LM)(WY)xL
配列番号55:C2コアモチーフ配列
RHExLRTxF
配列番号56:C3コアモチーフ配列
MHHxISDG(WV)S
配列番号57:C4コアモチーフ配列
YxD(FY)AVW
配列番号58:C5コアモチーフ配列
(IV)GxFVNT(QL)(CA)xR
配列番号59:C6コアモチーフ配列
(HN)QD(YV)PFE
配列番号60:C7コアモチーフ配列
RDxSRNPL
配列番号61:キメラペプチド1
β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Leu-Leu-Val-Gln-Tyr-Ile
配列番号62:キメラペプチド2および3
β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Leu-Leu-Val-Asp-Tyr-Ile
配列番号63:キメラ1推定ペプチド
β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Orn-Tyr-Thr-Glu-Val-Val-Gln-Tyr-Ile
配列番号64:キメラ2推定ペプチド
β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Orn-Tyr-Thr-Glu-Val-Pro-Asp-Tyr-Ile
配列番号65:キメラ3推定ペプチド
β-ヒドロキシ脂肪酸-Glu-Orn-Tyr-Thr-Glu-Val-Val-Asp-Tyr-Ile

Claims (32)

  1.  非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸配列を含む生成物プラスミドを作製する方法であって、
     開始プラスミドのセットを準備する工程であって、前記開始プラスミドのセットの各々は、少なくとも1つのNRPSモジュールをコードする塩基配列および少なくとも1つの制限酵素認識配列を含む、工程と、
     前記開始プラスミドのセットを制限酵素で処理して、得られた切断核酸断片を複数含む混合物を調製する工程と、
     前記複数の切断核酸断片をライゲーションして連結核酸を形成する工程と、
     前記連結核酸を形質転換生物に接触させて生成物プラスミドを形成する工程と
    を含む方法。
  2.  前記複数の切断核酸断片は、同じ突出配列を有し、複数種類のNRPSモジュールをコードする塩基配列を含む切断核酸断片のセットを含む、請求項1に記載の方法。
  3.  前記複数の切断核酸断片は、同じ突出配列を有し、複数種類のアミノ酸を捕捉する前記NRPSモジュールをコードする塩基配列を含む切断核酸断片のセットを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4.  前記切断核酸断片の各々は、3~5塩基長の突出配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5.  前記開始プラスミドにおいて、前記制限酵素認識配列は、隣接するNRPSモジュールをコードする塩基配列の間に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6.  前記開始プラスミドにおいて、前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間に位置する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7.  前記開始プラスミドにおいて、前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間の領域であって、前記Cドメインコード領域および前記Aドメインコード領域を含まない領域に位置する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8.  前記制限酵素認識配列の少なくとも1つが、前記NRPSモジュールをコードする塩基配列内に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9.  前記制限酵素認識配列の少なくとも1つが、前記NRPSモジュールをコードする塩基配列外に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10.  前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールにおいて非天然の配列である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
  11.  前記切断核酸断片の各々が、最大1つのNRPSモジュールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12.  前記制限酵素認識配列は、制限酵素特異的認識部位とは異なる部位で切断される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13.  前記制限酵素認識配列は、SfiI、BglI、AlwNI、DraIII、PflMI、BstAPI、AarI、BbsI、BsaI、BsmBIまたはBspQIの認識配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14.  前記開始プラスミドの各々は、4~12のNRPSモジュールをコードする塩基配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15.  前記切断核酸断片を含む混合物を調製する工程において、前記開始プラスミドの各々は、互いに異なる突出配列を有する切断核酸断片を生じる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
  16.  前記切断核酸断片を含む混合物が溶液である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
  17.  前記開始プラスミドの各々は、独立して同じまたは異なる、選択マーカー配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
  18.  前記選択マーカー配列が、薬剤耐性マーカー配列を含む、請求項17に記載の方法。
  19.  前記開始プラスミドの各々は、独立して同じまたは異なる、枯草菌において作動可能な複製起点を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
  20.  前記開始プラスミドの各々は、独立して同じまたは異なる、前記NRPSをコードする塩基配列の上流にプロモーター領域を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
  21.  請求項1~20のいずれか一項に記載の方法によって作製された生成物プラスミドまたはプラスミドライブラリー。
  22.  請求項21に記載の生成物プラスミドまたはプラスミドライブラリーから生産されるNRPS。
  23.  請求項22に記載のNRPSから生産されるNRP。
  24.  非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸であって、
     少なくとも1つのNRPSモジュールをコードする塩基配列、および
     前記NRPSモジュールにとって非天然の制限酵素認識配列
    を含む、核酸。
  25.  前記制限酵素認識配列は、隣接する前記NRPSモジュールをコードする塩基配列の間に位置する、請求項24に記載の核酸。
  26.  前記制限酵素認識配列は、前記NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間に位置する、請求項24または25に記載の核酸。
  27.  前記制限酵素認識配列は、NRPSモジュールのCドメインコード領域とAドメインコード領域との間の領域であって、前記Cドメインコード領域および前記Aドメインコード領域を含まない領域に位置する、請求項24~26のいずれか一項に記載の核酸。
  28.  前記制限酵素認識配列は、任意の種類の塩基が存在し得る領域を内部に含む配列を認識する制限酵素の認識配列である、請求項24~27のいずれか一項に記載の核酸。
  29.  前記制限酵素認識配列は、SfiIの認識配列である、請求項24~28のいずれか一項に記載の核酸。
  30.  前記核酸にコードされる前記NRPSモジュールの数が、4~12である、請求項24~29のいずれか一項に記載の核酸。
  31.  非リボソーム型ペプチド合成酵素(NRPS)をコードする核酸配列を含む生成物核酸を作製する方法であって、
     請求項24~30のいずれか一項に記載の核酸を開始核酸として準備する工程と、
     前記制限酵素認識配列を認識する制限酵素で前記核酸を処理して、切断核酸断片を調製する工程と、
     前記切断核酸断片をライゲーションして、前記開始核酸とは異なる生成物核酸を形成する工程と
    を含む方法。
  32.  請求項31に記載の方法によって生産される生成物核酸。
PCT/JP2023/027837 2022-07-29 2023-07-28 ペプチド合成酵素ライブラリー構築法 WO2024024966A1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022-121822 2022-07-29
JP2022121822 2022-07-29

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2024024966A1 true WO2024024966A1 (ja) 2024-02-01

Family

ID=89706713

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
PCT/JP2023/027837 WO2024024966A1 (ja) 2022-07-29 2023-07-28 ペプチド合成酵素ライブラリー構築法

Country Status (1)

Country Link
WO (1) WO2024024966A1 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020203496A1 (ja) * 2019-04-01 2020-10-08 国立大学法人神戸大学 キメラプラスミドライブラリーの構築方法
WO2021241593A1 (ja) * 2020-05-26 2021-12-02 Spiber株式会社 マルチモジュール型生合成酵素遺伝子のコンビナトリアルライブラリーの調製方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020203496A1 (ja) * 2019-04-01 2020-10-08 国立大学法人神戸大学 キメラプラスミドライブラリーの構築方法
WO2021241593A1 (ja) * 2020-05-26 2021-12-02 Spiber株式会社 マルチモジュール型生合成酵素遺伝子のコンビナトリアルライブラリーの調製方法

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
GAO LING, LIU HONGXIA, MA ZHI, HAN JINZHI, LU ZHAOXIN, DAI CHEN, LV FENGXIA, BIE XIAOMEI: "Translocation of the thioesterase domain for the redesign of plipastatin synthetase", SCIENTIFIC REPORTS, NATURE PUBLISHING GROUP, US, vol. 6, no. 1, 23 December 2016 (2016-12-23), US , pages 38467, XP093132629, ISSN: 2045-2322, DOI: 10.1038/srep38467 *
JAGADEESH VARADA, YOSHIDA TAKANOBU, URAJI MISUGI, OKAHASHI NOBUYUKI, MATSUDA FUMIO, VAVRICKA CHRISTOPHER J., TSUGE KENJI, KONDO AK: "Simple and Rapid Non-ribosomal Peptide Synthetase Gene Assembly Using the SEAM–OGAB Method", ACS SYNTHETIC BIOLOGY, AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, WASHINGTON DC ,USA, vol. 12, no. 1, 20 January 2023 (2023-01-20), Washington DC ,USA , pages 305 - 318, XP093132630, ISSN: 2161-5063, DOI: 10.1021/acssynbio.2c00565 *
KENJI TSUGE, YUKARI SATO, YUKA KOBAYASHI, MAIKO GONDO, MASAKO HASEBE, TAKASHI TOGASHI, MASARU TOMITA, MITSUHIRO ITAYA: "Method of preparing an equimolar DNA mixture for one-step DNA assembly of over 50 fragments", SCIENTIFIC REPORTS, vol. 5, no. 1, 1 September 2015 (2015-09-01), XP055369781, DOI: 10.1038/srep10655 *
WASHIO KENJI, MASAAKI MORIKAWA: "Peptide synthesis reaction that does not use mRNA as a template: Learning from the activities of microorganisms that surpass the central dogma", CHEMISTRY AND BIOLOGY, vol. 44, no. 2, 1 January 2006 (2006-01-01), pages 85 - 92, XP093132631 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Trauger et al. Peptide cyclization catalysed by the thioesterase domain of tyrocidine synthetase
KR102647766B1 (ko) 클래스 ii, 타입 v crispr 시스템
KR20190082318A (ko) Crispr/cpf1 시스템 및 방법
Gruenewald et al. In vivo production of artificial nonribosomal peptide products in the heterologous host Escherichia coli
AU781215B2 (en) Cyclic peptides
Doekel et al. Non-ribosomal peptide synthetase module fusions to produce derivatives of daptomycin in Streptomyces roseosporus
US7271256B2 (en) Method for producing circular or multimeric protein species in vivo or in vitro and related methods
EP3274459A1 (en) Platform for non-natural amino acid incorporation into proteins
AU2018354068C1 (en) Method for production of recombinant E. coli asparaginase
KR100750658B1 (ko) 폴리믹신 생합성 효소 및 이를 코딩하는 유전자 군
Villet et al. Idiosyncratic features in tRNAs participating in bacterial cell wall synthesis
EP1068339B1 (en) Compositions and methods for protein secretion
WO2024024966A1 (ja) ペプチド合成酵素ライブラリー構築法
Niquille et al. Reprogramming nonribosomal peptide synthesis by surgical mutation
KR20020069509A (ko) 맞춤형 펩타이드 신테타제, 이의 제조 방법 및 이의 용도
Lin et al. Functional analysis of fengycin synthetase FenD
Worthington et al. Activity-guided engineering of natural product carrier proteins
US20220002719A1 (en) Oligonucleotide-mediated sense codon reassignment
CN113528563A (zh) 一种利用爆炸物分子降解基因合成可视化生物感应器的制备方法及其应用
Moore et al. Decoding of tandem quadruplets by adjacent tRNAs with eight-base anticodon loops
JPWO2019216248A1 (ja) ペプチド類の大環状化酵素
Van Zyl et al. Use of the mCherry fluorescent protein to optimize the expression of class I lanthipeptides in Escherichia coli
Readnour et al. Evolution of Streptococcus pyogenes has maximized the efficiency of the Sortase A cleavage motif for cell wall transpeptidation
CA3175336A1 (en) Methods and biological systems for discovering and optimizing lasso peptides
US20100279347A1 (en) Polymyxin synthetase and gene cluster thereof

Legal Events

Date Code Title Description
121 Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application

Ref document number: 23846696

Country of ref document: EP

Kind code of ref document: A1