WO2023042314A1 - 免疫異常性炎症性疾患を治療または予防するための組成物 - Google Patents

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Abstract

本開示は免疫異常性炎症性疾患の治療または予防のための優れた医薬組成物を提供する。 本開示によれば、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子を含む、免疫異常性炎症性疾患を予防または治療するための組成物が提供される。本開示によれば、キャッスルマン病などに代表される免疫異常性炎症性疾患のモデル動物およびその生産方法もまた提供される。

Description

免疫異常性炎症性疾患を治療または予防するための組成物
 本開示は、免疫異常性炎症性疾患を治療または予防するための組成物、方法等に関する。より具体的には、本開示は、キャッスルマン病などのリンパ球増殖性および/または免疫異常性の疾患の疾患を治療または予防するための組成物、方法等に関する。
 キャッスルマン病は、病理学的に形質細胞浸潤を伴う巨大リンパ節増殖の存在を特徴とするリンパ球増殖性障害である。キャッスルマン病患者は、発熱、貧血、高ガンマグロブリン血症、および急性期反応物質タンパク質の血清濃度の上昇を一般に有し、そのすべてはリンパ節で産生された大量のIL-6に起因している。
 キャッスルマン病の中でも特発性多中心性キャッスルマン病は、難治性のリンパ増殖性疾患である。治療法として、IL-6阻害薬があるが約20%の症例では十分な効果が得られないことがわかっている。希少疾患であり実験動物モデルがないことから、新規の治療法の開発が進んでいないのが現状である。
 したがって、本開示は、以下を提供する。
(項目1)
 CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子を含む、免疫異常性炎症性疾患を予防または治療するための組成物。
(項目2)
 前記調節因子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、ならびにこれらの複合分子からなる群より選択される、上記項目に記載の組成物。
(項目3)
 前記調節因子は、
 抗CXCL13抗体、CXCL13に対する核酸医薬、またはCXCL13阻害剤、
 抗CXCR5抗体、CXCR5に対する核酸医薬、またはCXCR5阻害剤、あるいは
 抗Tph細胞抗体、Tph細胞に対する核酸医薬、またはTph細胞阻害剤
である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
 前記調節因子は、CXCL13-CXCR5相互作用の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
 前記調節因子は、Tph細胞の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対する中和抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
 前記疾患はCXCL13媒介性疾患である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
 前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
 前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目A1)
 免疫異常性炎症性疾患モデル動物。
(項目A2)
 前記免疫異常性炎症性疾患がキャッスルマン病である、上記項目に記載のモデル動物。
(項目A3)
 前記免疫異常性炎症性疾患が特発性多中心性キャッスルマン病である、上記項目のいずれか一項に記載のモデル動物。
(項目A4)
 前記動物が免疫不全動物であり、該免疫不全動物が、該免疫不全動物以外に由来するリンパ節細胞を含む、上記項目のいずれか一項に記載のモデル動物。
(項目A5)
 前記リンパ節細胞は、iMCD-NOS患者のリンパ節細胞である、上記項目のいずれか一項に記載のモデル動物。
(項目B1)
 免疫異常性炎症性疾患モデル動物を作製する方法であって、非ヒト動物に、免疫異常性炎症性疾患に罹患した患者由来の移植片を異種移植する工程を含む、方法。
(項目B2)
 前記非ヒト動物が免疫不全動物を含む、上記項目に記載の方法。
(項目B3)
 前記非ヒト動物が免疫不全マウスを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B4)
 前記移植片がリンパ節細胞を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B5)
 前記リンパ節細胞は、iMCD-NOS患者のリンパ節細胞である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B6)
 前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B7)
 前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B8)
 上記項目のいずれか一項に記載の方法で生産されたモデル動物。
(項目C1)
 有効量のCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子を被験者に投与することを含む、それを必要とする被験者において免疫異常性炎症性疾患を予防または治療するための方法。
(項目C2)
 前記調節因子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、ならびにこれらの複合分子からなる群より選択される、上記項目に記載の方法。
(項目C3)
 前記調節因子は、
 抗CXCL13抗体、CXCL13に対する核酸医薬、またはCXCL13阻害剤、
 抗CXCR5抗体、CXCR5に対する核酸医薬、またはCXCR5阻害剤、あるいは
 抗Tph細胞抗体、Tph細胞に対する核酸医薬、またはTph細胞阻害剤
である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C4)
 前記調節因子は、CXCL13-CXCR5相互作用の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C5)
 前記調節因子は、Tph細胞の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C6)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対する中和抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C7)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C8)
 前記疾患はCXCL13媒介性疾患である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C9)
 前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C10)
 前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目D1)
 CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子を含む、免疫異常性炎症性疾患を予防または治療するための医薬組成物を製造するための、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子の使用。
(項目D2)
 前記調節因子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、ならびにこれらの複合分子からなる群より選択される、上記項目に記載の使用。
(項目D3)
 前記調節因子は、
 抗CXCL13抗体、CXCL13に対する核酸医薬、またはCXCL13阻害剤、
 抗CXCR5抗体、CXCR5に対する核酸医薬、またはCXCR5阻害剤、あるいは
 抗Tph細胞抗体、Tph細胞に対する核酸医薬、またはTph細胞阻害剤
である、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D4)
 前記調節因子は、CXCL13-CXCR5相互作用の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D5)
 前記調節因子は、Tph細胞の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D6)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対する中和抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D7)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D8)
 前記疾患はCXCL13媒介性疾患である、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D9)
 前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目D10)
 前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、上記項目のいずれか一項に記載の使用。
(項目E1)
 免疫異常性炎症性疾患の予防または治療における使用のためのCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子。
(項目E2)
 前記調節因子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、ならびにこれらの複合分子からなる群より選択される、上記項目に記載の調節因子。
(項目E3)
 前記調節因子は、
 抗CXCL13抗体、CXCL13に対する核酸医薬、またはCXCL13阻害剤、
 抗CXCR5抗体、CXCR5に対する核酸医薬、またはCXCR5阻害剤、あるいは
 抗Tph細胞抗体、Tph細胞に対する核酸医薬、またはTph細胞阻害剤
である、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E4)
 前記調節因子は、CXCL13-CXCR5相互作用の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E5)
 前記調節因子は、Tph細胞の調節因子である、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E6)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対する中和抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E7)
 前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体である、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E8)
 前記疾患はCXCL13媒介性疾患である、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E9)
 前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
(項目E10)
 前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、上記項目のいずれか一項に記載の調節因子。
 上述のような本開示の組成物および方法は、本明細書の他の箇所に記載される任意の特徴を含むことができる。
 本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
 本開示によれば、高度免疫不全マウス(NOD-SCID/IL2Rnull)等のモデル動物を用いてキャッスルマン病患者組織移植モデル動物を提供することができる。またモデル動物にCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子(例えば、阻害薬)を用いた治療が奏功することを示したことから、キャッスルマン病およびそれに類する種々の疾患の患者に有効な治療手段を提供することが可能となる。
図1は、iMCD-NOS患者のLN細胞を異種移植したところ、レシピエントマウスに致命的な全身性炎症が生じたことを示す図である。 図2は、iMCD-NOS患者のLN細胞を異種移植したところ、ヒトガンマグロブリンの分泌能を持つ形質芽球が増殖していたことを示すグラフである。 図3は、in vivoでのIMCD様疾患状態の発生にT-B相互作用が必要であったことを示す実験結果である。 図4は、iMCD-NOSのリンパ節細胞を移植した免疫不全マウスにおけるT細胞サブセットの解析結果を示すグラフである。 図5は、iMCD-NOS NSGマウスにおけるヒトCXCL13の上昇を示す図である。 図6は、 抗hCXCL13抗体を投与した場合のiMCD-NOS NSGマウスの生存率の上昇を示す図である。
 以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。したがって、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)で言及される用語は、特に言及しない限りその複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語はまた、特に言及しない限り当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。従って、通常用いられる意味と異なって定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の説明と当該分野の説明との相違がある場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
 (定義)
 最初に本開示において使用される用語および一般的な技術を説明する。
 本明細書において、「免疫異常性炎症性疾患」とは、免疫異常に起因するか起因すると考えられ、炎症性の症状を呈する任意の疾患をいい、キャッスルマン病などのリンパ増殖性疾患、自己免疫疾患、自己炎症性疾患を挙げることができる。
 キャッスルマン病(CD)は1956年にBenjamin Castlemanがリンパ濾胞の過形成と血管増生を特徴とした良性の縦隔リンパ節腫大の症例を報告したことから始まる。病理組織像からhyaline-vascular型とplasma cell型に分類されている。キャッスルマン病は発熱、貧血、急性期蛋白質の上昇や高ガンマグロブリン血症などの全身性の炎症を呈するが、これは腫大したリンパ節から産生されるIL-6が原因である(Yoshizaki K et al. Pathogenic significance of interleukin-6 (IL-6/BSF-2) in Castleman’s disease. Blood. 1989 74(4):1360-7)。血液学的にはリンパ増殖性疾患に分類される。
 キャッスルマン病は単中心性キャッスルマン病(unicentric CD:UCD)と多中心性キャッスルマン病(multicentric CD:MCD)に分けられる。UCDはキャッスルマン様の病理組織を示す単一局所領域のリンパ節病変によるものでhyaline-vascular型が多く、炎症症状は軽度で外科的リンパ節切除によって軽快する。MCDはplasma cell型が多く、HHV8(human herpes virus 8、KSHV: Kaposi’s sarcoma herpesvirusとも呼ばれる)によるもの(HHV8関連MCD)とHHV8陰性の特発性MCD(idiopathic MCD:iMCD)がある。ともに特徴的病理像を有する多巣性のリンパ節腫大と全身性の炎症症状を伴い、不明熱の鑑別疾患としてもしばしば考慮される。HHV8関連MCDはHIV感染や免疫不全症に伴ってみられHHV8がコードするウイルスIL-6やヒトIL-6が病態を形成している。多中心性キャッスルマン病のうち、ヒト・ヘルペスウイルス8型感染がみられない原因不明のものが特発性多中心性キャッスルマン病として明確に区別されて定義される。特発性多中心性キャッスルマン病は高インターロイキン6血症による発熱やリンパ節腫脹、貧血などの臨床症状を呈し、多くの場合、慢性の経過をとる。
 本明細書において、CXCL13および/またはCXCR5および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)は、CXCL13/CXCR5/Tphともいう。
 CXCL13は、BLC(B lymphocyte chemoattractant)またはBCA-1(B cell-attracting chemokine 1)としても知られるCXCケモカインで受容体CXCR5と結合しBリンパ球の遊走を促進する働きを有する。このタンパク質リガンドは、肝臓やリンパ節、脾臓で観察することができ、好中球やマクロファージ、樹状細胞や上皮細胞によって発現される。CXCL13の上昇レベルは、腫瘍、特に転移性疾患である乳がん患者で発現される。ヒトmRNAは、NM_006419、NM_001371558のIDで特定され得、マウスではNM_018866が知られる。タンパク質のアミノ酸配列としては、ヒトでは、NP_006410、NP_001358487が知られており、マウスではNP_061354が知られる。
 CXCR5は、C-X-C chemokine receptor type 5(CXC-R5)の略称であり、CD185またはBurkitt lymphoma receptor 1(BLR1)とも称される。Gタンパク質7回膜貫通レセプターであり、CXCL13の唯一のレセプターとされる。CXCケモカインレセプターの一員でもあり、T細胞をリンパ節およびB細胞帯に移動させる。mRNAの配列としては、ヒトについてNM_032966、NM_001716が知られており、マウスでは、NM_007551が知られる。タンパク質のアミノン配列としては、ヒトでは、NP_001707、NP_116743が知られており、マウスでは、NP_031577が知られる。
 末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)とは、ヘルパーT細胞であって、細胞の表面の分子の発現がPD-1(hi)CXCR5(-)という特徴を持つものをいう。
 本明細書において、「調節因子」とは、ある標的となる分子等の物質または細胞等の対象に対して、その分子等の物質または細胞等の活性などを調節することができる任意の因子をいう。調節因子は通常、標的と相互作用をすることでその機能を発揮し得る。
 調節因子は、概して、ある物質またはそれを含む実体についてインシリコ、インビトロおよび/またはインビボのアッセイによって特定されたあらゆる阻害、抑制、または活性化化合物をいい、例えばアゴニスト、アンタゴニスト、およびそれらの断片、変異体および模倣体を含む。ここで、調節とは、増加または減少、あるいは、増強または抑制(若しくは消失)などを意味する。
 本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「減少」または「抑制」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における減少、または減少させる活性をいう。減少のうち「消失」した場合は、活性、発現産物等が検出限界未満になることをいい、特に「消失」ということがある。本明細書では、「消失」は「減少」または「抑制」に包含される。
 本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「増加」または「活性化」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における増加または増加させる活性をいう。
 本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。本開示では、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[本明細書において、CXCL13/CXCR5/Tphともいう]に結合する物質もまた、このような薬剤でありうる。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
 本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。本開示の調節因子は、このような相互作用を利用して実現することができる。本明細書において対象に対して「特異的に」相互作用する(または結合する)「因子」(または、薬剤、検出剤等)とは、その対象に対する親和性が、他の無関連の実体(例えばその対象がポリヌクレオチドまたはポリペプチドであれば30%未満のポリヌクレオチドまたはポリペプチド)に対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
 本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含む試料中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用する(または結合する)ことをいう。物質または因子について特異的な相互作用(または結合)としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、酵素-基質反応など、核酸およびタンパク質の反応、タンパク質-脂質相互作用、核酸-脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター-リガンド反応による相互作用、酵素-基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に」相互作用する(または結合する)ことには、抗体と、その抗原との間の相互作用(または結合)が包含される。このような特異的な相互作用または結合の反応を利用することにより、試料中の対象物の検出または定量を行うことができる。
 本開示の調節因子は対象の発現(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド等の場合)を調節することができる。本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチド発現の検出または定量は、例えば、検出剤、検査剤または診断剤(コンパニオン試薬としての適用を含む)への結合または相互作用を含む、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、発光イムノアッセイ(LIA)、免疫沈降法(IP)、免疫拡散法(SRID)、免疫比濁法(TIA)、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526-532に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT-PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two-hybridシステム、invitro翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔、羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
 本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様である。したがって、本明細書において「発現産物」とは、このようなポリペプチドもしくはタンパク質、またはmRNAを含む。本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいい、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。
 本明細書において「発現量」とは、目的の細胞、組織などにおいて、ポリペプチドまたはmRNA等が発現される量をいう。そのような発現量としては、本開示の調節因子が、例えば、抗体の場合は、当該抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される。本開示のポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本開示において使用されるポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本開示において使用されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。あるマーカーの発現量を測定することによって、マーカーに基づく種々の検出または診断を行うことができる。
 本明細書において「抗体」は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子またはその集団を含む。また抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、様々な形態で存在することができ、例えば、全長抗体(Fab領域とFc領域を有する抗体)、Fv抗体、Fab抗体、F(ab’)2抗体、Fab’抗体、diabody、一本鎖(単鎖)抗体(例えば、scFv)、sc(Fv)2(single chain(Fv)2)、scFv-Fc、dsFv、多価特異的抗体(例えば、オリゴ特異的抗体、二価特異的抗体)、ダイアボディー、抗原結合性を有するペプチドまたはポリペプチド、キメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラ抗体、ニワトリ-ヒトキメラ抗体等)、マウス抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはそれらの同等物(または等価物)からなる群から選ばれる1種以上の形態であってもよい。また抗体は、抗体修飾物または抗体非修飾物を含む。抗体修飾物は、抗体と、例えばポリエチレングリコール等の各種分子が結合していてもよい。抗体修飾物は、抗体に公知の手法を用いて化学的な修飾を施すことによって得ることができる。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。本開示で用いられる抗CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)抗体は、CXCL13タンパク質、CXCR5タンパク質、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に含まれるタンパク質等の物質に結合すればよく、その由来、種類、形状などは問われない。具体的には、非ヒト動物の抗体(例えば、マウス抗体、ラット抗体、ラクダ抗体)、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体が使用できる。本開示においては、モノクローナル、あるいはポリクローナルを抗体として利用することができるが好ましくはモノクローナル抗体である。抗体のCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)への結合は特異的な結合であることが好ましい。また抗体は、抗体修飾物または抗体非修飾物を含む。抗体修飾物は、抗体と、例えばポリエチレングリコール等の各種分子が結合していてもよい。抗体修飾物は、抗体に公知の手法を用いて化学的な修飾を施すことによって得ることができる。抗体は好ましくは「中和抗体」であり得る。「中和抗体」とは、抗体であって、その抗体が対象に結合した後、その対象の生物学的活性等の活性、好ましくは生物学的活性の少なくとも一つが阻害または消失するものをいう。
 本明細書において、用語「活性」は、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能、生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。
 本明細書において「生物学的機能」または「生物学的活性」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能または活性をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本開示においては、例えば、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に関与する機能(例えば、Tph細胞に関与する機能としてはB細胞の遊動と活性化、また炎症に伴い異所性にリンパ濾胞を形成すること、炎症組織においてTLSs(tertiary lymphoid structures)の発生に寄与し、感染症・自己免疫性疾患・悪性腫瘍に関連することなど、またCXCL13に関与する機能としては、リガンドであるGPCRのCXCR5を刺激し、細胞内Ca2+の流入やERK/MAPKシグナルを介して細胞の遊走に寄与すること、乳癌の増殖・生存にERKシグナルの活性化やcyclin D1を介して関与すること、in vivoでのCXCL13抗体による治療で乳癌のERK活性が低下すること、および非小細胞肺癌、膵癌、肝臓癌、および胃癌など多くの固形腫瘍の病因関連することなど)などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子の間の結合およびそれによって生じる生物学的変化であり得、そして、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。従って、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。
 本開示の調節因子などは、単離または精製されて提供され得る。本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された物質または生物学的因子におけるその物質または生物学的因子の純度は、その物質または生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質または生物学的因子は、好ましくは「精製された」物質または生物学的因子である。本明細書で使用される「単離された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子が実質的に除去されたものをいう。本明細書中で使用される用語「単離された」は、その目的に応じて変動するため、必ずしも純度で表示される必要はないが、必要な場合、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の物質または生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質は、好ましくは「単離された」物質または生物学的因子である。
 本明細書において「機能的等価物」とは、対象となるもとの実体に対して、目的となる機能が同じであるが構造が異なる任意のものをいう。従って、「CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)」またはその抗体の機能的等価物は、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体自体ではないが、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体の変異体または改変体(例えば、アミノ酸配列改変体等)であって、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体の持つ生物学的作用を有するもの、ならびに、作用する時点において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体自体またはこのCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体の変異体もしくは改変体に変化することができるもの(例えば、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体自体またはCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体の変異体もしくは改変体をコードする核酸、およびその核酸を含むベクター、細胞等を含む)が包含されることが理解される。本開示において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体の機能的等価物は、格別に言及していなくても、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)またはその抗体と同様に用いられうることが理解される。機能的等価物は、データベース等を検索することによって、見出すことができる。本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444-2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195-197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443-453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびinsituハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本開示において使用される遺伝子には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
 本開示の調節因子は、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に結合する物質、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)結合剤、またはCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)相互作用分子であり得、これらは、少なくとも一時的にCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に結合する分子または物質である。検出目的では好ましくは、結合したことを表示しうる(例えば標識されるか標識可能な状態である)ことが有利であり、治療目的では、さらに治療用薬剤が結合していることが有利である。CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に結合する物質は、例としては、抗体、結合性ペプチド、およびペプチド模倣体(peptidomimetic)等を挙げることができる。好ましくは、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に結合する物質は、細胞内移行(インターナライゼーション)活性を有している。本明細書において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)について「結合タンパク質」または「結合ペプチド」とは、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に結合する任意のタンパク質またはペプチドを指し、そしてCXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)に対して指向される抗体(例えば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)、抗体フラグメントおよび機能的等価物を含むがこれらに限定されない。
 本開示の医薬はキットとして提供され得る。本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
 本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、免疫異常性炎症性疾患)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
 本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、免疫異常性炎症性疾患)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本開示の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本開示の薬剤を用いて例えば、免疫異常性炎症性疾患等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
 本開示は、免疫異常性炎症性疾患などの治療薬を提供し得る。本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、免疫異常性炎症性疾患等の疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいう。本開示の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。なお免疫異常性炎症性疾患の治療薬は、広義には免疫異常性炎症性疾患の予防のために用いられる薬物(予防薬)を含みうる。
 本開示は、免疫異常性炎症性疾患などの予防薬を提供し得る。本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、免疫異常性炎症性疾患等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
 本開示の医薬は、指示書とともに提供され得る。本明細書において「指示書」は、本開示を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものであり、添付文書またはラベル(Label)などと称され得る。この指示書は、本開示の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、静脈内への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本開示が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
 本明細書において「モデル動物」とは、ある動物(特にヒト)における疾患を模しては発症する実験動物をいい、免疫異常性炎症性疾患(例えば、キャッスルマン病)などの種々の疾患を発症する動物を挙げることができる。本開示では、モデル動物として、免疫不全動物(例えば、免疫不全マウス)において、当該免疫不全動物以外のリンパ節細胞を移植することで、免疫異常性炎症性疾患をモデルとする動物を作製することができたことから、本開示では、このような動物をモデル動物の一例として挙げることができる。モデル動物としては、任意の動物を挙げることができ、哺乳動物や、ヒトに類似する動物が好ましく、例えば、げっ歯類、霊長類などが汎用されるがこれに限定されず、具体的にはマウス、ラット、アカゲサルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
 本明細書において「免疫不全」動物とは、通常であれば有している免疫機能(例えば、B細胞機能、T細胞機能、NK活性、補体活性、マクロファージ機能、リンパ節、パイエル板等)を少なくとも一部欠如(あるいは全部欠如もあり得る)している動物を言い、例えば、T細胞機能欠如動物(例えば、Balb/cAJcL nu/nu系マウス)、B細胞・T細胞機能欠如動物(例えば、C.B-17 lcr-scid/scidJcl系マウス等)、B細胞・T細胞機能欠如、NK活性欠如、補体活性欠如、マクロファージ機能低下動物、リンパ節・パイエル板欠損動物など(例えば、日本クレアなど、https://www.clea-japan.com/products/animal/immunodeficiency)を挙げることができる。
 本明細書において「リンパ節細胞」とは、リンパ節に存在する細胞をいう。リンパ節とは、細網組織から構成されるリンパ洞と、リンパ球(免疫抗体を産生する細胞)の集まるリンパ小節により成る。皮質と髄質を持っており、さらに皮質はB細胞からなる濾胞を中央にもち、周囲におもにT細胞からなる傍皮質を持つ。本開示では、リンパ節細胞として、キャッスルマン病患者、例えば、特定不能型多中心性キャッスルマン病患者のリンパ節細胞が例示される。
 (好ましい実施形態)
 以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
(医薬組成物)
 本開示は、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子を含む、免疫異常性炎症性疾患を予防または治療するための組成物を提供する。一実施形態において、免疫異常性炎症性疾患は、リンパ増殖性疾患(例えば、キャッスルマン病)を含むことができる。
 キャッスルマン病(CD)は、リンパ節腫脹、高ガンマグロブリン血症、肝脾腫、全身性炎症を特徴とするリンパ増殖性疾患である。CDは、一中心性CD(UCD)と多中心性CD(MCD)の少なくとも2つの異なる疾患に分類される。この2つのタイプのCDは、臨床的特徴や予後が異なり、MCDはUCDよりも予後が悪いことが知られている。さらに、MCDは、特発性MCD(iMCD)、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)関連MCD(HHV8-MCD)、多発性神経炎、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性形質細胞障害、皮膚変化(POEMS)関連MCD(POEMS-MCD)に分類される。
 さらに、iMCDは、TAFRO(血小板減少・全身性浮腫・発熱・骨髄細網線維増加または腎機能障害・臓器腫大)型iMCD(iMCD-TAFRO)のサブタイプと、特定不能型iMCD(iMCD-NOS)のサブタイプの2つの異なるサブセットに分類される。
 本開示者らは、IL-6がCDの重要な疾患ドライバーであることを明らかにしている。そのため、iMCDの治療にはsiltuximabやtocilizumabなどの抗IL-6療法や抗IL-6受容体療法が標準的な治療法となっている。しかし、iMCD患者の約2分の1はIL-6阻害療法に反応しないことが知られており、IL-6阻害に抵抗性の症例には、代替サイトカインやケモカインの関与が疑われる。
 iMCD-TAFROではIL-6阻害抵抗性CD患者のリンパ節組織でmTORシグナルが亢進していることが知られている。また、1型IFNシグナルがJAK依存性のmTOR活性化を亢進させることで、iMCD-TAFROの病態に寄与していることも転写研究から明らかになっている。一方、iMCD-NOSの病態に関するデータは限られており、これはiMCD-NOSの発症率が低いこと、適切なiMCDの動物実験モデルが存在しないことに起因する。本開示の一実施形態において、患者由来異種移植(PDX)モデルを用いることで、キャッスルマン病に対する新しい治療戦略の有効性を評価することを可能にする。
 本開示においては、後述の実施例において説明するとおり、iMCD-NOS患者から精製したヒトLN細胞を異種移植したところ、高ガンマグロブリン血症や高サイトカイン血症などのiMCD類似の疾患状態を再現し、生体内で致命的な炎症を発症することを見出した。さらに、移植片からヒトCD3T細胞を枯渇させても、iMCD様の炎症は完全に発症しなかったことから、ヒトT細胞とB細胞の相互作用が、生体内でのiMCD様の全身性炎症の発症に不可欠な役割を果たしていることを見出した。興味深いことに、患者の血清データと比較すると、iMCDの「フレア」時に上昇するCXCL13が顕著に増加していた。さらに、中和抗体を用いてCXCL13を遮断すると、iMCD-NOS LN細胞を移植したマウスの致死的な炎症が大幅に改善された。
 以上のことから、本開示の一局面において、iMCDのPDXモデルを提供し、またTph細胞によって産生されるCXCL13が、iMCD様疾患状態の発症に重要な役割を果たしていることから、iMCD-NOSの治療においてCXCL13を標的とした治療法、およびCXCL13の調節因子を含む組成物を提供する。
 本開示の一実施形態において、免疫異常性炎症性疾患には、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群が含まれる。一実施形態において、免疫異常性炎症性疾患は、特発性多中心性キャッスルマン病を含むことができる。一実施形態において、免疫異常性炎症性疾患はCXCL13媒介性疾患であってもよい。
 本開示の一実施形態において、本開示の組成物は、CXCR5を発現している癌に対しても有効である。
 本開示の一実施形態において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、ならびにこれらの複合分子からなる群より選択されることができる。このような調節因子は、既知のものであっても良いし、後述するようなスクリーニング方法によって得ることもできる。
 本開示の一実施形態において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子は、(1)抗CXCL13抗体、CXCL13に対する核酸医薬、またはCXCL13阻害剤、(2)抗CXCR5抗体、CXCR5に対する核酸医薬、またはCXCR5阻害剤、あるいは(3)抗Tph細胞抗体、Tph細胞に対する核酸医薬、またはTph細胞阻害剤とすることができる。CXCL13のpositive regulatorである転写因子としてはSox4を挙げることができる(Yoshitomi H. et al. Nat Commun. 2018 Sep 19; 9(1):3762., Kobayashi S. et al. Eur J Immunol. 2016 Feb; 46(2):360-71.)。またCXCL13のnegative regulatorの転写因子としては、Blimp1を挙げることができる。また他の実施形態において、CXCL13の制御因子として、IL-21、IL-23、IL-6、またはtype1 IFNを用いることもできる。
 本開示の一実施形態において、CXCL13の調節因子として抗CXCL13抗体を用いることができ、この抗CXCL13抗体はCXCL13に対する中和抗体であってもよい。例えば、CXCL13に対する中和抗体としては、Biolegend Ultra-LEAFTM Purified anti-human CXCL13(BLC) antibody(Catalog no.934503)、Ultra-LEAF:Purifide anti-human CXCL13 antibody(Biolegend,cat# 934506,マウスIgG1,k)、PetroTeck(cat# 300-47)、BMC anti-CXCL13abなどを挙げることができる。他の実施形態において、抗CXCL13抗体は、CXCL13に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体とすることもできる。キメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体については、上記の抗体を含む公知の抗CXCL13抗体から、本分野で周知の種々の方法を用いて作製することができる。
 本開示の一実施形態において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子は、CXCL13-CXCR5相互作用の調節因子であってもよい。例えば、上記に挙げたような転写因子や制御因子のうち、CXCL13-CXCR5相互作用に関与するものを用いることもできる。
 また本開示の一実施形態において、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子は、Tph細胞の調節因子であってもよい。
(モデル動物)
 本開示の一局面において、免疫異常性炎症性疾患モデル動物が提供される。一実施形態において、本開示のモデル動物は、キャッスルマン病、好ましくは特発性多中心性キャッスルマン病のモデル動物とすることができる。一実施形態において、この動物は、免疫不全動物であって、当該免疫不全動物以外に由来するリンパ節細胞を含む。使用されるリンパ節細胞は、免疫異常性疾患の患者の細胞であれば特に限定されないが、一実施形態では、リンパ節細胞は、iMCD-NOS患者のリンパ節細胞であり得る。
 本開示の免疫異常性炎症性疾患モデル動物は、非ヒト動物に、免疫異常性炎症性疾患に罹患した患者由来の移植片を異種移植することによって作製することができる。したがって、本開示の一局面において、免疫異常性炎症性疾患モデル動物を作製する方法であって、非ヒト動物に、免疫異常性炎症性疾患に罹患した患者由来の移植片を異種移植する工程を含む、方法が提供される。この場合、前記非ヒト動物は免疫不全マウスを含むことが好ましい。また非ヒト動物に異種移植する移植片としては、リンパ節細胞を含むことが好ましい。
 免疫異常性炎症性疾患のモデル動物が、このように生産し得たことは意外である。理論に束縛されることを望まないが、キャッスルマン病などの免疫異常性炎症性疾患の場合、免疫不全動物に移植すると、免疫異常性の炎症を誘発し生存し得ないと想定されていたからである。したがって、本開示は、このような本開示前の予想にもかかわらず、免疫異常性炎症性疾患のモデル動物が提供し得たという点でも着目すべきである。
(スクリーニング)
 本開示の一局面において、本開示の免疫異常性炎症性疾患モデル動物を用いて、CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子をスクリーニングすることができる。一実施形態において、本開示のスクリーニングによって、低分子医薬、ペプチド医薬、抗体医薬、または核酸医薬(siRNA)などを得ることができる。例えば本開示のスクリーニングでは、CXCL13に強いアフィニティーを示す低分子をイン・シリコでスクリーニングし、またはハイスループットスクリーニングを行い、またはCXCL13に強いアフィニティーを示すペプチドをファージディスプレイでスクリーニングする。一実施形態において、アフィニティーは表面プラズモン共鳴(SPR)技術でKD値を確認することができる。次に相互作用の阻害活性(IC50値)をSPRで確認し、さらにキャッスルマン病由来細胞株を用いてin vitroアッセイを行い、候補となる低分子あるいはペプチドの細胞ベースでの活性および毒性を評価することができる。
 十分な活性および非毒性を細胞ベースで確認後、高度免疫不全マウス(NOD-SCID/IL2Rnull)を用いてキャッスルマン病患者組織移植モデルマウスに対して、低分子の場合には経口投与し、ペプチドの場合には静脈投与し、in vivo効果を確認することができる。以上のプロセスについて、好ましくは高活性かつ高選択性のある低分子やペプチドが得られるまで繰り返すことで、吸収、分布、代謝、排泄、及び/または毒性のプロファイルが良い医薬候補分子を得ることができる。
 本開示を種々の実施形態を用いて説明してきた。本明細書において本開示の説明のために引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用される。
 以下に、理解の容易のために実施例を挙げて、本開示を具体的に説明する。しかしながら、提供される実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
 以下の実施例においては、以下に説明する患者や方法を用いた。
(患者の特徴)
 反応性リンパ腫、濾胞性リンパ腫または形質芽細胞性リンパ腫と診断された5人の対照患者と、iMCDの基準を満たした7人の患者から、診断のために外科的に切除された膨張リンパ節を得た。採取したリンパ節はRPMI1640で1~3mmの大きさに切り分けた。浮遊細胞を培地から回収した。細胞はCelltac Alpha MEK-6510K(日本光電工業)を用いてカウントし、その後の分析に供するか、機能的なアッセイターゲットとして凍結保存した。九州大学病院の施設内倫理委員会によってヒトを対象としたすべての研究が承認された。
(マウスとヒトLNCsの移植)
 異種移植アッセイには、NSG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/Sz)の成体雌マウスを用いた。マウスは九州大学(日本、福岡)のマイクロアイソレーターケージ内の特定病原体フリー施設で飼育した。動物実験は、九州大学の動物管理委員会が承認した機関ガイドラインに従って行われた。再構成アッセイのために、RPMI1640中の選択された細胞(マウスあたり合計0.5~3×10細胞)を、Y. Kikushige, et al. Cancer cell. 2011.に記載されるとおり、尾静脈を介して胸腔下照射(2.2Gy)された6~8週齢のNSGマウスに移植した。
(抗体と細胞染色)
 LNCを接種してから8週間後に、ヒト細胞の生着を評価するために、マウスから脾臓、肝臓、骨髄の懸濁液を調製した。FACS分析のために、細胞を、抗ヒトCD45(HI30、biolegend)、抗マウスCD45(30-F11、biolegend)および抗Ter119(TER-119、biolegend)で染色した。細胞はさらに、抗ヒトCD3(UCHT1、biolegend)、抗ヒトCD4(RPA-T4、biolegend)、抗ヒトCD8a(RPA-T8、biolegend)、抗ヒトCD19(HIB19、biolegend)、抗ヒトCD20(2H7,biolegend)、抗ヒトCD27(M-T271、biolegend)、抗ヒトCD34(8G12、BD biosciences)、抗ヒトCD35(E11、biolegend)、抗ヒトCD192(CCR2)(K036C2、biolegend)、および抗ヒトCD279(PD-1)(EH12.2H7、biolegend)で染色した。非生存細胞はヨウ化プロピジウム(PI)染色により除外した。染色後、BD FACS AriaII(BD Biosciences)、BD FACS Aria IIIu(BD biosciences)またはAttune NxT Flow Cytometer(Thermo Fisher Scientific)を用いて細胞を分析した。
(免疫組織化学的染色)
 マウスの脾臓および肝臓を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。10μmの切片を脱パラフィンし、クエン酸ベースのバッファー(pH6)を用いて10分間抗原を回収した(H3300,Vector Laboratories)。スライドをブロッキング液(3%ウシ血清アルブミンおよびtween20を含むトリス緩衝生理食塩水)で1時間インキュベートし、マウス抗ヒトCD3(Dako,Clone F7.2.38,#M725401-2)およびマウス抗ヒトCD20cy(Dako,Clone L26,#IR604)で一晩インキュベートした。その後、スライドをHRP結合二次抗体(Dako EnVision+ Dual Link System-HRP,Dako,#K4063)でインキュベートした。スライドはジアミノベンジジン(ImmPACT DAB Peroxidase(HRP) Substrate, Vector Laboratories,#SK-4105)で現像した。
(イメージングマスサイトメトリー(IMC))
 iMCD-NSGマウスの肝臓および脾臓から採取した10μmの組織切片を処理し、IMCD用の11種類のマーカーを用いて染色した。IMC抗体を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001

 
 Hyperion Imaging System(Fluidigm)を用いて、肝臓と脾臓のスライド上のHE染色で検出された関心領域を取得した。IMCイメージングのmcd.ファイルは,Rソフトウェアを用いてtiffファイルにエクスポートした。
(サイトカイン/ケモカインおよび免疫グロブリンタンパク質の測定)
 Bio-Plex Suspension Array System with Bio-Prex Pro Human Cytokine Screening 27-Plex Panel (Bio-Rad Laboratories Inc., CA, USA)を用いて、異種移植で得られたマウスの血清を27種類のサイトカインについて測定した。このアッセイでは、以下のサイトカインを検査した。IL-1β,IL-1Ra,IL-2,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-9,IL-10,IL-12p70,IL-13,IL-15,IL-17,Eotaxin,FGF basic,GM-CSF,IFN-γ,IP-10,MIP-1a,PDGF-BB,MIP-1b,RANTES,TNF-α。CXCL13は、市販の特異的ELISAキット(ab269370;Abcam)を用いて、製造者の指示に従って測定した。各サイトカインの値を用いてヒートマップを作成した。
 マウス血清中のヒトIgG、IgA、IgEは、市販の特異的ELISAキット(ab195215,ab196263,ab195216,abcam)を用いて、製造者の指示に従って測定した。
(インビボ薬理学研究)
 6~8週齢のNSGマウス(雌)に2.2Gyのマイクロ波を照射した。NSGマウスに尾静脈からiMCDのLNCを移植した。翌日、CXCL13中和抗体を毎週合計4回腹腔内投与(15μg/mouse,Biolegend,cat#A15151D)し、ラパマイシンを毎日腹腔内投与(20μg/mouse,KOM,AG-CN2-0025-M005)した。対照となるIgG抗体は毎週腹腔内に注射し、計4回おこなった。
(統計解析)
 統計解析はR(4.0.3)を用いて行った。適用した統計的検定は、凡例または対応する方法の欄に示した。P≦0.05の場合、統計的に有意な差とした。
(実施例1:iMCD-NOS患者のLN細胞によるin vivoでの致命的な全身性炎症)
 まず、独立した3人の反応性リンパ節症の患者(対照群)と独立した3人のiMCD-NOS患者(iMCD-NOS 1~3)のリンパ節(LN)細胞を、2.2Gy照射したNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/Sz(NSG)マウスに尾静脈注射で移植した(図1A)。iMCD-NOS患者と対照群の臨床的特徴を表2に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 驚くべきことに、iMCD-NOS患者由来のLN細胞は、レシピエントマウスに致命的な全身性の炎症を引き起こし、すべてのマウスが2ヶ月以内に死亡したが、反応性LN細胞を移植したNSGマウス(コントロールNSGマウス)は、調べたすべてのケースで死亡しなかった(図1B)。興味深いことに、iMCD-NOS患者のLN細胞を移植したレシピエントマウス(iMCD-NOS NSGマウス)は、iMCDの臨床症状として知られる脱毛と血管拡張を示した(図1C)。また、iMCD-NOS NSGマウスでは体重の減少が進行していたが、対照NSGマウスでは観察期間中に体重が徐々に増加した(図1D)。10週目までは、すべてのiMCD-NOS NSGマウスが虚弱体質のために犠牲になった。一方、対照NSGマウスはすべて10週目まで生存していた。
 ヘマトキシリン・エオジン染色により、iMCD-NAS NSGマウスの脾臓には、ヒトリンパ球の浸潤が認められた(図1E上)。肝臓では、血管周囲にヒト細胞の浸潤が見られた(図1E下)。免疫組織化学的染色では、iMCD-NOS NSGマウスの脾臓と肝臓において、ヒトCD3 T細胞とCD19 B細胞の拡大とびまん性の浸潤が確認された(図1F)。これらの結果を総合すると、iMCD-NOS患者のLN細胞を異種移植すると、致命的な全身性の炎症が起こり、生体内でiMCD-NOS様の病状が再現されることがわかる。
 (実施例2:iMCD-NSGマウスにおける成熟B細胞の拡大とIgG、IgM、IgEの血漿レベルの上昇)
 FACS解析により、iMCD-NSGマウスの骨髄・脾臓には、hCD3 T細胞とhCD19 B細胞を含むhuman(h)CD45造血細胞が増殖していることが明らかになった(図2A、上段)。iMCD-NOS NSGマウスの骨髄、脾臓、肝臓では、CD8 T細胞だけでなく、CD4 T細胞の生着と拡大が観察された。CD3CD4CD8細胞のほとんどは、PD-1TIM-3枯渇の免疫表現型を示した(補足図2)。生体内でのiMCD-NOSのような状態の発生と一致して、形質細胞様B細胞へのhCD10hCD19hCD20hCD27hCD38メモリーが拡大した(図2A、下段)。重要なことは、PCRによるTCR/IGH遺伝子の再配列解析により、これらの拡大したヒトCD3 T細胞およびCD19 B細胞は、調べたすべてのケースでポリクローナルであることが明らかになったことである(図示せず)。
 iMCD-NOS NSGマウスでは形質芽球B細胞へのメモリーが拡大したので、これらのヒトB細胞が血清中にヒトガンマグロブリンを分泌するかどうかを調べた。この目的のために、他のiMCD-NOS患者(iMCD-NOS 4)のLN細胞をNSGマウスに異種移植し、マウスにiMCD様疾患を再構成した。図2B~Cは、iMCD-NOS NSG(iMCD-NOS 4)と対照NSGマウスにおけるヒトIgG、IgA、IgEの血清レベルをそれぞれ示したものである。iMCD-NSGのIgGおよびIgAは、いずれも対照NSGのものよりも有意に高かった。しかし、iMCD-NSGと対照NSGでは、IgEの血清レベルに有意な差はなかった(図示せず)(IgG:p=0.06635,平均±SEM 1.398±0.16mg/dl(対照群 0.4430±0.1125)。
 (実施例3:iMCD-NSGマウスの生着、高ガンマグロブリン血症、及びサイトカインストームの再現のためのT細胞の必要性)
 iMCDの特徴として知られている高ガンマグロブリン血症とサイトカインストームを再現するためには、どの系統の細胞が必要なのかを調べるために、リンパ節の細胞を異なる割合で移植した。iMCD-2とiMCD-5のリンパ節細胞は、CD3ビーズセレクションを用いて、CD3枯渇細胞とCD3非枯渇細胞の2つのグループに分けられた(図3A)。CD3非枯渇細胞から移植されたNSGのヒトCD45細胞の割合は、CD3枯渇細胞よりも有意に高かった(図3B)。iMCD-2とiMCD-5のリンパ節をBulkで異種移植を行ったマウスではヒトのγグロブリンの上昇を認めた(図3C及び図3D)。HyperionTM imaging mass cytometoryシステムによる多重染色により、生着したマウスの肝臓と脾臓の組織ではT細胞とB細胞が混在していることを確認した(図3E)。
 iMCD-NOSのリンパ節細胞を移植した免疫不全マウスにおける、移植片のT細胞が極めて重要な役割をしていると考え、マウス内のT細胞サブセットを解析した。マウスに生着したT細胞の大部分はhCD3CD4CD8であったが、hTIM-3とhPD-1の発現を認めており、疲弊型T細胞であった(図4A)。一方でhCD3hCD4hPD-1highhCXCR5のTph細胞がマウスの脾臓に存在していた(図4B)。この細胞は臍帯血で再構成されたマウスの脾臓には存在しておらず、4つの異なる症例由来のiMCD-NOS移植マウスにおいて検出された(図4C)。また、これらの細胞(hCD3hCD4hPD-1highhCXCR5)はhCCR2の発現を認める点でTFHと異なることが示された(図4C)。
 (実施例4:iMCD細胞を移植したマウスでのin vivoの全身性炎症性サイトカインのプロファイリング)
 図5Aは、CD3枯渇細胞、CD3非枯渇細胞、および臍帯血CD34細胞を含むiMCD LNCから移植されたNSGの血清中のヒトサイトカインを示している。臍帯血とCD3枯渇細胞をiMCD-NOS 2に移植したNSGのサイトカインプロファイルと比較すると、iMCD-NOS 2のCD3非枯渇細胞のサイトカインは全般的に上昇していることがわかる。また、iMCD-NOS 2のNSGマウス中のマウスのサイトカインも上昇を認めており、マウスの中で致死的な炎症が惹起されていることを確認した(図5B)。
 サイトカインシグナルの濃縮と、一般的に認められているサイトカインストームとしてのiMCDのモデルを考慮して、Sheila K. Pierson, etal.のように、どのサイトカインが最も上昇しているかを調べるために追加の分析を行った(図5C)。IFN-γ、GM-CSF、CXCL13、およびTNF-αは、iMCD-5の血清中のサイトカインと比較して上昇していた。これらのサイトカインおよびケモカインはすべて、末梢性ヘルパーT細胞によって発現されていた(SakuragiT, et al., J Immunol. 2021;206(9):2045-51)。図5Dは、上昇しているヒトCXCL13は細胞内サイトカイン染色法を用いたFlow cytometryでhCD3hCD4hPD-1highが産生していることを示した。
 (実施例5:ヒトCXCL13中和抗体によるiMCD-NSGマウスの早死にの抑制)
 iMCDにおける病原性の重要性とCXCL13の治療効果を示すために、2匹のiMCD PDXに抗hCXCL13中和抗体とiMCDの従来の治療法であるmTORC1阻害剤(ラパマイシン)を投与した(図6A)。図6Bと6Cは、iMCD-6とiMCD-7の生存曲線である。治療28日目、抗hCXCL13中和抗体およびmTORC1阻害剤を投与したマウスコホートは、PBSを投与したマウスコホートと比較して、全生存率が有意に上昇していた。
 これらのデータを総合すると、CXCL13はサイトカインの上昇開始に関連しており、CXCL13を遮断することはiMCDの新しい治療戦略となる。
 (注記)
 以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様に、その内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
 本開示は、難治性のリンパ増殖性疾患である特発性多中心性キャッスルマン病を治療するための新規な組成物を提供し、医薬品産業において利用可能である。

Claims (22)

  1.  CXCL13、CXCR5、および/または末梢ヘルパーT細胞(Tph細胞)[CXCL13/CXCR5/Tph]の調節因子を含む、免疫異常性炎症性疾患を予防または治療するための組成物。
  2.  前記調節因子は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、ならびにこれらの複合分子からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  3.  前記調節因子は、
     抗CXCL13抗体、CXCL13に対する核酸医薬、またはCXCL13阻害剤、
     抗CXCR5抗体、CXCR5に対する核酸医薬、またはCXCR5阻害剤、あるいは
     抗Tph細胞抗体、Tph細胞に対する核酸医薬、またはTph細胞阻害剤
    である、請求項1または2に記載の組成物。
  4.  前記調節因子は、CXCL13-CXCR5相互作用の調節因子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
  5.  前記調節因子は、Tph細胞の調節因子である、請求項1または2に記載の組成物。
  6.  前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対する中和抗体である、請求項3に記載の組成物。
  7.  前記抗CXCL13抗体が、CXCL13に対するキメラ抗体、ヒト型化抗体、またはヒト抗体である、請求項3または6に記載の組成物。
  8.  前記疾患はCXCL13媒介性疾患である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
  9.  前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
  10.  前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
  11.  免疫異常性炎症性疾患モデル動物。
  12.  前記免疫異常性炎症性疾患がキャッスルマン病である、請求項11に記載のモデル動物。
  13.  前記免疫異常性炎症性疾患が特発性多中心性キャッスルマン病である、請求項11または12に記載のモデル動物。
  14.  前記動物が免疫不全動物であり、該免疫不全動物が、該免疫不全動物以外に由来するリンパ節細胞を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のモデル動物。
  15.  前記リンパ節細胞は、iMCD-NOS患者のリンパ節細胞である、請求項14に記載のモデル動物。
  16.  免疫異常性炎症性疾患モデル動物を作製する方法であって、非ヒト動物に、免疫異常性炎症性疾患に罹患した患者由来の移植片を異種移植する工程を含む、方法。
  17.  前記非ヒト動物が免疫不全動物を含む、請求項16に記載の方法。
  18.  前記非ヒト動物が免疫不全マウスを含む、請求項16または17に記載の方法。
  19.  前記移植片がリンパ節細胞を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
  20.  前記リンパ節細胞は、iMCD-NOS患者のリンパ節細胞である、請求項19に記載の方法。
  21.  前記疾患が、キャッスルマン病、関節リウマチ、プラズマサイトーシス、高イムノグロブリン症、貧血、腎炎、悪液質、多発性骨髄腫、メサンギュウム増殖性腎炎、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬、小児慢性関節炎、または全身型若年性特発性関節炎、血管炎、川崎病、TAFRO症候群、およびポエムズ症候群を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
  22.  前記疾患が、特発性多中心性キャッスルマン病を含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
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