WO2018216422A1

WO2018216422A1 - 水耕栽培装置および水耕栽培方法

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Publication number: WO2018216422A1
Application number: PCT/JP2018/016730
Authority: WO
Inventors: 宏矢野
Original assignee: パナソニックＩｐマネジメント株式会社
Priority date: 2017-05-25
Filing date: 2018-04-25
Publication date: 2018-11-29

Abstract

水耕栽培装置（２００）は、宿根草（３）の地下部（７）を収容し、地下部（７）が成長する地下空間（７０）を形作る遮光性の栽培槽（２０）と、宿根草（３）の周囲の栽培槽（２０）の上側開口を塞ぐように設けられ、栽培槽（２０）と一体となって地下部（７）を内包し、地下空間（７０）と宿根草（３）の地上部（６）が成長する地上空間（８０）とを仕切る遮光性の仕切部（２３）と、宿根草（３）の新芽（８）が地上空間（８０）に露出されないように、地下部（７）を保持する保持部（９０）と、新芽（８）が湿潤状態に維持されるように、遮光された地下空間（７０）に水または養液を噴霧する噴霧部（２６）と、を備えている。

Description

水耕栽培装置および水耕栽培方法

　本発明は、土壌を使用することなく植物を成長させる水耕栽培装置および水耕栽培方法に関する。

　たとえば、特許文献１に開示されているように、植物の根を水に浸して栽培を行う水耕栽培装置の開発が進められている。特許文献１においては、植物の地下部が弾性体で被覆された状態で水耕栽培が行われている。

特開２０１５－８４７３１号公報

　植物のなかには、地上部が枯れた後に、残存する地下部に新芽が萌芽する宿根草がある。宿根草の自然栽培においては、新芽は、光が照射されず、かつ、非乾燥状態にある土壌の中で萌芽する。

　一般に、宿根草の新芽が乾燥すると、宿根草の成長不良が発生する。そのため、水耕栽培においても、自然栽培と同様に、宿根草の新芽が湿潤状態に維持される環境を提供することが好ましい。

　また、宿根草の新芽に光が照射されると、宿根草の成長に悪影響が及ぼされる。そのため、水耕栽培においても、自然栽培と同様に、宿根草の新芽に光が照射されない環境を提供することが好ましい。

　しかしながら、従来の宿根草の水耕栽培装置は、新芽を湿潤状態に維持することができ、かつ、新芽に光が照射されることを抑制することができる手段を有していない。

　そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものである。その目的は、新芽を湿潤状態に維持することができ、かつ、新芽に光が照射されない環境で、宿根草を育成することができる水耕栽培装置および水耕栽培方法を提供することである。

　上記の課題を解決するために、本発明の第１の態様の水耕栽培装置は、宿根草の地下部を収容し、前記地下部が成長する地下空間を形作る遮光性の栽培槽と、前記地下空間を覆うように設けられ、前記栽培槽と一体となって前記地下部を内包し、前記地下空間と前記宿根草の地上部が成長する地上空間とを仕切る遮光性の仕切部と、前記宿根草の新芽が前記地上空間に露出されないように、前記地下部を保持する保持部と、前記新芽が湿潤状態に維持されるように、水または養液を前記地下空間へ噴霧する噴霧部と、を備えている。

　本発明の第２の態様の水耕栽培方法は、宿根草の新芽を含む地下部を内包する地下空間を遮光し、前記新芽が湿潤状態に維持されるように、前記遮光された前記地下空間に水または養液を噴霧する。

　本発明によれば、新芽を湿潤状態に維持することができ、かつ、新芽に光が照射されない環境で、宿根草を育成することができる。

本発明の実施形態１の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の地上部が成長した状態を示す図である。本発明の実施形態１の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の新芽が萌芽した直後の状態を示す図である。本発明の実施形態２の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の地上部が成長した状態を示す図である。本発明の実施形態３の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の地上部が成長した状態を示す図である。本発明の実施形態３の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の新芽が萌芽した直後の状態を示す図である。本発明の実施形態３の変形例の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の地上部が成長した状態を示す図である。本発明の実施形態３の他の変形例の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の地上部が成長した状態を示す図である。本発明の実施形態３の他の変形例の水耕栽培装置を示す縦断面の模式図であって、宿根草の新芽が萌芽した直後の状態を示す図である。

　以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態の水耕栽培装置および水耕栽培方法を詳細に説明する。

　（実施の形態１）
　図１および図２に示されるように、本実施の形態においては、宿根草３が水耕栽培される。宿根草とは、多年生の植物のうち、生育に適さない時期（多くの場合、冬であるが、夏のこともある）には地上部が枯れてしまうが、その時期を過ぎると萌芽して再び成長を開始するものをいう。宿根草３は、葉１および茎２を有する地上部６と、主根５および主根５から延びる細根４を有する地下部７とを備えている。宿根草３は、たとえば、地下部７が肥大する根菜類としてのオタネニンジン（高麗人参または朝鮮人参）である。ただし、オタネニンジンは、宿根草の一例であって、本実施の形態の水耕栽培においては、いかなる宿根草が栽培されてもよい。

　図１に示されるように、本実施の形態の水耕栽培装置２００の一例は、６面体構造の金属製のコンテナのような遮光性の筐体１０を備えている。それにより、宿根草３は、筐体１０によって外部空間から遮断された空間内において成長する。そのため、筐体１０内の雰囲気は、筐体１０外部の雰囲気から遮断されている。ただし、空気調和機等により、筐体１０内へ外部の空気を導入したり、筐体１０内の空気を外部へ排出したりすることは可能である。したがって、水耕栽培装置２００によれば、宿根草３の周辺環境を管理することが容易である。また、外部の光は筐体１０内に入らない。

　宿根草３を栽培する作業員は、筐体１０の側面に設けられた扉を開けたり閉めたりすることにより、筐体１０に設けられた開口部から外部へ出たり、その開口部から筐体１０内に入ったりすることができる。

　水耕栽培装置２００は、筐体１０内に、プラスチック製の栽培槽２０を備えている。宿根草３が栽培されているときは、栽培槽２０は、その内部に水または養液９を貯留している。水または養液９は、タンクＴからポンプＰによって供給管２１を経由して栽培槽２０に供給される。水または養液９は、栽培槽２０の底面から上方へ延びる排水管２２から外部へ排出される。したがって、栽培槽２０内の水または養液９の高さは、栽培槽２０の底面から排水管２２の上端までの高さよりも低いかまたは同一になる。宿根草３の細根４の先端が水または養液９に浸かっている。

　栽培槽２０は、水または養液９の上面から所定の高さの位置に取り付けられた支持部材２５を備えている。支持部材２５は、宿根草３にミスト状態の水または養液９を噴霧する噴霧部２６を支持している。水または養液９は、タンクＴに貯留されており、ポンプＰによって送り出され、配管（点線で図示）を経由して噴霧部２６へ供給される。さらに、水または養液９は、噴霧部２６から宿根草３に向かって噴霧される。噴霧部２６から噴霧された霧状の水または養液９は、地下空間７０において拡散された後、栽培槽２０内に貯留されている水または養液９に向かって落下する。

　栽培槽２０は、その上端開口に取り付けられた仕切部２３を備えている。仕切部２３は、後に説明される新芽８（図２参照）が茎２へ成長した後、茎２が上方へ伸びるときに、茎２の先端が通過する位置に形成された貫通孔２３ａを有している。図１においては、宿根草３の茎２が貫通孔２３ａに挿入されている。

　貫通孔２３ａと宿根草３との間には、弾性部材２４が嵌め込まれている。弾性部材２４は、円筒状のスポンジ等の柔軟性を有しかつ水分を含むことができる材料によって構成されている。それにより、弾性部材２４が貫通孔２３ａと茎２との間に挟まれた状態で、茎２が仕切部２３内の弾性部材２４によって支持されている。そのため、地上部６の状態が安定している。

　栽培槽２０は、遮光性を有する材料によって構成されている。栽培槽２０は、宿根草３の地下部７を収容し、地下部７が成長する地下空間７０を形作っている。仕切部２３は、遮光性を有する材料によって構成されている。仕切部２３は、地下空間７０を覆い、宿根草３の茎２の周囲の栽培槽２０の開口を塞いでいる。仕切部２３と栽培槽２０とは、一体となって地下部７を内包している。仕切部２３は、宿根草３の地下部７が成長する地下空間７０と宿根草３の地上部６が成長する地上空間８０とを仕切っている。仕切部２３は、本実施の形態においては、黒色の発泡スチロールからなる。

　本実施の形態の水耕栽培装置２００は、照明部３０を備えている。照明部３０は、地上空間８０において、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２に形成された葉１に光を照射する位置に設けられている。なお、仕切部２３が反射率の高い材料によって構成されていれば、葉１へ向かって光が反射されるため、その光も宿根草３の光合成に利用され得る。

　以上から分かるように、地下空間７０は、遮光性の栽培槽２０、遮光性の仕切部２３、および遮光性の弾性部材２４によって内包されており、外部から光が進入することができない遮光された空間となっている。つまり、地下空間７０は、実質的に密閉系として構成されている。ただし、地下空間７０と地上空間８０との間には、宿根草３の成長に必要な酸素等が地下空間７０へ進入できる程度の隙間が存在する。

　地下空間７０には、保持部９０が設置されている。保持部９０は、架台部９１と柔軟性部材９２とを備えている。架台部９１は、平板部９１ａと、平板部９１ａを支える４つの同一長さの脚部９１ｂとを備えている。平板部９１ａは、貫通孔９０ａを備え、貫通孔９０ａ内には、スポンジからなる柔軟性部材９２が充填されている。柔軟性部材９２は、地下部７と貫通孔９０ａとの間に充填され、地下部７を保持している。地下部７は、地下部７と柔軟性部材９２との間の摩擦力および柔軟性部材９２と貫通孔９０ａの内周面との間の摩擦力によって、保持されている。

　水耕栽培装置２００は、遮光部材５０を備えている。遮光部材５０は、茎２が通過できる程度の貫通孔と、外周からその貫通孔まで延びる１本の切れ込みと、を有する円盤状の弾性体である。茎２は、遮光部材５０の切れ込みに沿って挿入され、遮光部材５０の貫通孔内に位置付けられる。したがって、遮光部材５０の貫通孔の内面は茎２に密着している。したがって、光が茎２と遮光部材５０との隙間から下方へ進行することが抑制される。また、遮光部材５０は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺の貫通孔２３ａを塞ぐように設けられている。そのため、遮光部材５０は、貫通孔２３ａを通じて地下空間７０への照明部３０が発した光の進入を抑制している。したがって、照明部３０が発した光が茎２と弾性部材２４との間の隙間および貫通孔２３ａと弾性部材２４との間の隙間から地下空間７０へ進入することが阻止されている。その結果、光が宿根草３の地下部７に照射されることが抑制されている。

　本実施の形態においては、遮光部材５０は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺を取り囲むように、仕切部２３の上に載置されている。したがって、本実施の形態の遮光部材５０は、その形状や材質の制限が実施の形態２の遮光部材５０に比較して少ない。

　本実施の形態の水耕栽培装置２００は、遮光部材５０の上面に設けられ、照明部３０が発した光を反射する反射部材５１を備えている。反射部材５１の反射率は、遮光部材５０よりも高い。本実施の形態においては、反射部材５１で反射した光が葉１へ照射される分だけ、反射部材５１が設けられていない場合に比較して、より多くの光を宿根草３の葉１に照射することができる。したがって、宿根草３の光合成をより促進することができる。本実施の形態においては、反射部材５１は、スポンジに反射塗料が染み込まされたものであるものとする。ただし、反射部材５１は、反射塗料が遮光部材５０の上面に塗布されたものであってもよい。

　図２に示されるように、新芽８が主根５から萌芽した直後の状態においては、保持部９０は、栽培槽２０および仕切部２３の内側に宿根草３の新芽８が位置付けられるように、地下部７を保持している。本実施の形態においては、保持部９０は、地下空間７０内で地下部７を保持している。そのため、保持部９０は、宿根草３の新芽８が地上空間８０に露出されないように、地下部７を保持していると言える。本明細書においては、新芽８が地下空間７０に存在しており、貫通孔２３ａが塞がれていない状態は、新芽８が地上空間８０に露出されない状態であるものとする。なお、新芽８は、地下空間７０に存在する場合であっても、地上部６として言及される。新芽８が主根５から萌芽した直後の状態においては、貫通孔２３ａと宿根草３との間には、新芽８から成長した茎２の先端が、貫通孔２３ａを通過することができるように、貫通孔２３ａには弾性部材２４が嵌め込まれていない。弾性部材２４（図１参照）は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した後、茎２と貫通孔２３ａとの間に作業員によって挿入される。

　貫通孔２３ａは、新芽８が成長して茎２になるまで、弾性部材２４とまたは弾性部材２４と同様のスポンジ等の部材で一時的に塞がれていてもよい。これによれば、新芽８に光が照射されてしまうことを確実に防止することができる。この場合、新芽８が茎２に成長した後、そのスポンジが取り外されることにより、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過可能になる。

　弾性部材２４が貫通孔２３ａに嵌め込まれていない状態では、光が貫通孔２３ａを通じて地下空間７０へ進入する。そのため、図２に示されるように、新芽８が主根５から萌芽した直後の状態においては、新芽８に光が照射されないように、照明部３０は、消灯されている。図２に示される状態においては、外部の光は遮光性の筐体１０の内側へ進入しない。また、仮に、僅かの光が遮光性の筐体１０の内側へ進入したとしても、新芽８が栽培槽２０および仕切部２３の内側に位置付けられるように保持部９０が地下部７を保持しているため、光は新芽８に到達し難い状態になっている。照明部３０は、図１に示されるように、弾性部材２４が貫通孔２３ａに嵌め込まれた後、点灯される。

　前述のように、地下空間７０には、噴霧部２６が設けられている。噴霧部２６は、図２に示されるように、新芽８が湿潤状態に維持されるように、水または養液９を地下空間７０へ噴霧する。噴霧部２６が噴霧するミストは、１流体のミストまたは２流体のミスト等のいかなるものであってもよく、噴霧部２６の数は特に限定されない。

　上記の本実施の形態の水耕栽培装置２００によれば、新芽８が湿潤状態に維持され、かつ、新芽８に光が照射されない状態で、宿根草３を水耕栽培することができる。

　また、本実施の形態においては、水耕栽培装置２００は、保持部９０とは異なる他の保持部を備えている。他の保持部は、保持部９０とは別の構造体として独立して設けられている。他の保持部は、地上部６を保持する。本実施の形態においては、他の保持部の機能は、仕切部２３および弾性部材２４によって発揮される。具体的には、仕切部２３および弾性部材２４は、茎２の一部を取り囲みながら保持する。これによれば、地上部６の倒伏を抑制することができる。ただし、他の保持部は、地上部６の倒伏を抑制するように地上部６を保持するのであれば、仕切部２３および弾性部材２４とは別に、仕切部２３および弾性部材２４の上に設けられ、茎２が挿入される貫通孔を有する円筒状の弾性体等であってもよい。

　図２に示されるように、本実施の形態においては、保持部９０は、新芽８が地下空間７０に露出されるように、地下部７を保持している。そのため、新芽８が噴霧部２６から地下空間７０に噴霧された水または養液９によって湿潤状態にされ易くなる。したがって、新芽８を良好に成長させることができる。

　本実施の形態の水耕栽培装置２００は、地下空間７０に接しており、かつ、下方を向く下面に対して、下面からの水または養液９の液滴の落下を促進する撥水処理が施されている。本実施の形態においては、地下空間７０に接しており、かつ、下方を向く下面は、仕切部２３の下面、架台部９１の平板部９１ａの下面、および支持部材２５の下面である。そのため、水または養液９の液滴が長期間にわたって地下空間７０に残存することよって、地下部７の腐敗や菌の発生等の宿根草３の成長に悪影響が及ぼされる１つの要因を排除することができる。

　上記したように、水耕栽培方法においては、まず、宿根草３の新芽８を含む地下部７を内包する地下空間７０が遮光される。その後、新芽８が湿潤状態に維持されるように、遮光された地下空間７０に水または養液９が噴霧される。この方法によれば、新芽８が湿潤状態に維持され、かつ、新芽８に光が照射されない状態で、宿根草３を水耕栽培することができる。

　（実施の形態２）
　本実施の形態の水耕栽培装置２００は、実施の形態１の水耕栽培装置とほぼ同一であるので、その同一である部分の説明は繰り返さない。本実施の形態の水耕栽培装置２００は、以下に説明する事項に関して、実施の形態１の水耕栽培装置２００と異なっている。

　図３に示されるように、本実施の形態においては、実施の形態１の弾性部材２４として、遮光部材５０が、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺の貫通孔２３ａ内に充填されている。遮光部材５０は、スポンジに白い塗料が塗布されたものであるものとする。つまり、本実施の形態においては、遮光部材５０が実施の形態１で説明された弾性部材２４によって構成されている。そのため、遮光部材５０は、茎２が外周面と貫通孔２３ａの内周面とに密着する。したがって、照明部３０が発した光が地下空間７０へ進入することをより確実に抑制することができる。

　本実施の形態の水耕栽培装置２００においても、弾性部材２４（遮光部材５０）の上面に設けられ、照明部３０が発した光を反射する反射部材５１を備えている。本実施の形態１の反射部材５１も、実施の形態１の反射部材５１と同様に、反射率は弾性部材２４（遮光部材５０）よりも高い。そのため、より多くの光を宿根草３の葉１に照射することができる。したがって、宿根草３の光合成をより促進することができる。また、反射部材５１として、反射塗料が弾性部材２４（遮光部材５０）の上面に塗布されてもよい。

　（実施の形態３）
　本実施の形態の水耕栽培装置２００は、実施の形態１の水耕栽培装置とほぼ同一であるので、その同一である部分の説明は繰り返さない。本実施の形態の水耕栽培装置２００は、以下に説明する事項に関して、実施の形態１の水耕栽培装置２００と異なっている。

　図４に示されるように、本実施の形態においては、保持部９０の構造が上記した実施の形態１および２の保持部９０と異なっている。本実施の形態においては、保持部９０は、厚板部９３と柔軟性部材９４とを備えている。

　厚板部９３は、仕切部２３の下側に仕切部２３と一体化された状態で設けられている。厚板部９３と仕切部２３とは、接着材を用いて互いに貼り付けられることによって、一体化されているものとする。しかしながら、厚板部９３と仕切部２３との一体化は、ボルトとナット等の他の接合手段によって実現されてもよい。厚板部９３の中央位置には、貫通孔９３ａが形成されている。仕切部２３は、実施の形態１と同様に貫通孔２３ａが設けられている。貫通孔２３ａと貫通孔９３ａとは、互いに連通している。貫通孔２３ａおよび貫通孔９３ａには、柔軟性部材９４が挿入されている。柔軟性部材９４は、スポンジからなり、水または養液９を吸収する吸液性を有する。本実施の形態においては、柔軟性部材９４は、実施の形態１で説明された遮光部材５０と同様の材質からなっているものとする。ただし、本実施の形態の柔軟性部材９４は、実施の形態１で説明された弾性部材２４と同一の部材によって構成されていてもよい。なお、本実施の形態においては、柔軟性部材９４の上面に実施の形態１で説明された反射部材５１が設けられている。

　図５から分かるように、柔軟性部材９４は、新芽８を取り囲むように、地下部７を保持している。この状態では、照明部３０を消灯しているため、新芽８に光は照射されない。ただし、柔軟性部材９４は、新芽８から成長した茎２が柔軟性部材９４から上方へ突出して地上空間８０において伸長することができるように、地下部７を保持している。

　本実施の形態においては、たとえば、スポンジからなる柔軟性部材９４の２つの部分が、互いに密着しており、地下部７を挟むように地下部７を保持する。そのため、本実施の形態においても、保持部９０は、宿根草３の新芽８が地上空間８０に露出されないように、地下部７を保持していると言える。本明細書においては、地上空間８０から流れ込んできた空気が柔軟性部材９４の部分同士の間の隙間を経由して新芽８に接触する場合も考えられる。この場合においても、新芽８が柔軟性部材９４の２つの部分同士によって内包されるように挟まれている状態は、新芽８が地上空間８０に露出されない状態であるものとする。この場合、新芽８が遮光性を有する柔軟性部材９４の２つの部分同士の間の隙間を押し広げながら、地上空間８０まで伸長する。したがって、仮に照明部３０が点灯していても、光は柔軟性部材９４によって遮断されるため、地上空間８０から新芽８まで到達することはないか、または、ほとんど到達しないに等しい。ただし、柔軟性部材９４は、円筒状のスポンジであってもよい。この場合、細長い中空円柱部分を有する円筒状の柔軟性部材９４の中空円柱部分に地下部７が挿入される。それにより、新芽８および新芽８が成長した茎２は、円筒状の柔軟性部材９４の中空円柱部分を押し広げながら、地上空間８０まで伸長する。この場合、照明部３０が消灯されていれば、光が円筒状の柔軟性部材９４内の新芽８まで到達することはない。

　本実施の形態においても、噴霧部２６が霧状の水または養液９を地下空間７０へ噴霧する。霧状の水または養液９は、柔軟性部材９４に吸収される。柔軟性部材９４は、その内部で水または養液９が浸透するため、湿潤状態に維持されている。そのため、柔軟性部材９４に取り囲まれた新芽８の湿潤状態が柔軟性部材９４に保持された水または養液９によって確実に維持される。したがって、新芽８の萌芽を確実に促進することができる。

　図５に示されるように、本実施の形態においては、柔軟性部材９４は、実施の形態１の遮光部材５０と同様の材質からなり、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺の貫通孔２３ａを塞ぐように設けられている。柔軟性部材９４は、貫通孔２３ａを通じて地下空間７０への照明部３０が発した光の進入を抑制する。このように、柔軟性部材９４が、前述の実施の形態の遮光部材５０としても機能するため、水耕栽培装置２００の部品点数を低減することができる。また、本実施の形態においても、水耕栽培装置２００は、柔軟性部材９４の上面に設けられ、照明部３０が発した光を反射する反射部材５１を備え、反射部材５１の反射率が柔軟性部材９４の反射率よりも高い。そのため、より多くの光を宿根草３の葉１に照射することができる。

　本実施の形態においては、図５に示されるように、保持部９０と仕切部２３とは、２つの独立した部材が一体化されることによって１つの構造体となっている。本実施の形態においては、保持部９０と仕切部２３とは、接着材の接合力により一体化された構造体となっている。しかしながら、本実施の形態の水耕栽培装置２００の変形例としては、図６に示されるように、１つの兼用部材１００が図４および図５に示される保持部９０の厚板部９３および仕切部２３の双方の機能を発揮するものであってもよい。つまり、保持部９０の厚板部９３と仕切部２３との一体化された構造体が１つの兼用部材１００によって実現されてもよい。この場合、貫通孔２３ａと貫通孔９３ａとは、１つの貫通孔として形成されている。これによれば、水耕栽培装置２００の内部構造を簡素化することができるため、宿根草３の取り扱いが容易になる。

　図７および図８に示されるように、本実施の形態の他の変形例の水耕栽培装置２００においては、柔軟性部材９４が仕切部２３の上側主表面から上方に突出しおり、突出した柔軟性部材９４の上面上に反射部材５１が設けられていてもよい。この場合、新芽８が形成されたときに、新芽８が地上空間８０に露出されないように、柔軟性部材９４が新芽８を取り囲んでいるのであれば、地下部７の上端部が仕切部２３の上側主表面よりも上側に位置付けられていてもよい。この場合も、噴霧部２６から噴霧された水または養液９は、スポンジ等からなる柔軟性部材９４に浸透し、新芽８に到達する。これによっても、光が新芽８に照射されることを抑制しながら、新芽８を湿潤状態に維持することができる。

　本実施の形態においては、保持部９０は、前述のように、柔軟性部材９４および厚板部９３である。そのため、保持部９０は、地下部７とともに、地上部６を保持する。具体的には、保持部９０の柔軟性部材９４が地下部７の上側部分とともに地上部６としての茎２の下側部分を保持する。その結果、本実施の形態においても、地上部６の倒伏を抑制することができる。

　以下、実施の形態の水耕栽培装置２００の特徴的構成およびそれにより得られる効果を述べる。

　（１）　水耕栽培装置２００は、遮光性の栽培槽２０、遮光性の仕切部２３、保持部９０、および噴霧部２６を備えている。遮光性の栽培槽２０は、宿根草３の地下部７を収容し、地下部７が成長する地下空間７０を形作る。遮光性の仕切部２３は、地下空間７０を覆うように設けられ、栽培槽２０と一体となって地下部７を内包し、地下空間７０と宿根草３の地上部６が成長する地上空間８０とを仕切る。保持部９０は、宿根草３の新芽８が地上空間８０に露出されないように、地下部７を保持する。噴霧部２６は、新芽８が湿潤状態に維持されるように、水または養液９を地下空間７０へ噴霧する。この構成によれば、新芽８が湿潤状態に維持され、かつ、新芽８に光が照射されない環境で、宿根草３を水耕栽培することができる。

　（２）　仕切部２３は、新芽８が茎２へ成長した後、茎２が上方へ伸びるときに、茎２の先端が通過する位置に形成された貫通孔２３ａを有していてもよい。この場合、水耕栽培装置２００は、地上空間８０において、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２に形成された葉１に光を照射する位置に設けられた照明部３０を備えている。また、水耕栽培装置２００は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺の貫通孔２３ａを塞ぐように設けられた遮光部材５０を備えていてもよい。この構成によれば、遮光部材５０が貫通孔２３ａを通じて地下空間７０への照明部３０が発した光の進入を抑制するため、光が宿根草３の地下部７に照射されることを抑制することができる。

　（３）　遮光部材５０は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺を取り囲むように、仕切部２３の上に載置されていてもよい。この構成によれば、使用され得る遮光部材５０の材質の選択の幅を広げることができる。

　（４）　遮光部材５０は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺の貫通孔２３ａ内に充填された弾性部材２４であってもよい。この構成によれば、照明部３０が発した光が地下空間７０へ進入することをより確実に抑制することができる。

　（５）　水耕栽培装置２００は、遮光部材５０の上面に設けられ、照明部３０が発した光を反射する反射部材５１を備え、反射部材５１の反射率が遮光部材５０の反射率よりも高いことが好ましい。この構成によれば、より多くの光を宿根草３の葉１に照射することができる。

　（６）　保持部９０は、新芽８が地下空間７０に露出されるように、地下部７を保持するものであってもよい。この構成によれば、新芽８が噴霧部２６から地下空間７０に噴霧された水または養液９によって湿潤状態にされ易くなる。したがって、新芽８を良好に成長させることが容易になる。

　（７）　水耕栽培装置２００は、保持部９０とは異なる他の保持部を備え、他の保持部は、地上部６を保持するが好ましい。これによれば、地上部６の倒伏を抑制することができる。他の保持部は、たとえば、仕切部２３および弾性部材２４であってよい。

　（８）　保持部９０は、水または養液９を吸収する吸液性を有する柔軟性部材９４を含んでいてもよい。この場合、柔軟性部材９４は、新芽８を取り囲むように、かつ、新芽８から成長した茎２が柔軟性部材９４から上方へ伸長することができるように、地下部７を保持してもよい。この構成によれば、新芽８の湿潤状態が柔軟性部材９４に保持された水または養液９によって確実に維持される。したがって、新芽８を良好に成長させることができる。

　（９）　仕切部２３は、新芽８が茎２へ成長した後、茎２が上方へ伸びるときに、茎２の先端が通過する位置に形成された貫通孔２３ａを有していてもよい。この場合、水耕栽培装置２００は、地上空間８０に設けられ、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２に形成された葉１に光を照射する位置に設けられた照明部３０を備えていてもよい。柔軟性部材９４は、茎２の先端が貫通孔２３ａを通過した茎２の周辺の貫通孔２３ａを塞ぐように設けられた遮光部材５０である。この構成によれば、柔軟性部材９４が、遮光部材５０としても機能するため、水耕栽培装置２００の部品点数を低減することができる。

　（１０）　水耕栽培装置２００は、柔軟性部材９４の上面に設けられ、照明部３０が発した光を反射する反射部材５１を備え、反射部材５１の反射率が柔軟性部材９４の反射率よりも高いことが好ましい。この構成によれば、より多くの光を宿根草３の葉１に照射することができる。

　（１１）　保持部９０と仕切部２３とは、一体化された構造体であってもよい。この構成によれば、水耕栽培装置２００の内部構造を簡素化することができるため、宿根草３の取り扱いが容易になる。

　（１２）　保持部９０は、地下部７とともに、地上部６を保持するものであってもよい。これによっても、地上部６の倒伏を抑制することができる。保持部９０は、たとえば、柔軟性部材９４および厚板部９３であってよい。

　（１３）　水耕栽培装置２００は、地下空間７０に接しており、かつ、下方を向く下面に対して、下面からの水または養液９の液滴の落下を促進する撥水処理が施されていることが好ましい。この構成によれば、水または養液９の液滴が長期間にわたって地下空間７０に残存することよって、地下部７の腐敗や菌の発生等の宿根草３の成長に悪影響が及ぼされる１つの要因を排除することができる。

　（１４）　水耕栽培方法は、宿根草３の新芽８を含む地下部７を内包する地下空間７０を遮光し、新芽８が湿潤状態に維持されるように、遮光された地下空間７０に水または養液９を噴霧する。この方法によれば、新芽８が湿潤状態に維持され、かつ、新芽８に光が照射されない状態で、宿根草３を水耕栽培することができる。

　本出願は、２０１７年５月２５日に出願された日本出願の特願２０１７－１０３６５５号に基づく優先権を主張し、当該日本出願に記載された全ての記載内容を参照によって援用するものである。

　１　葉
　２　茎
　３　宿根草
　６　地上部
　７　地下部
　８　新芽
　９　水または養液
　２０　栽培槽
　２３　仕切部
　２３ａ　貫通孔
　２６　噴霧部
　３０　照明部
　５０　遮光部材
　５１　反射部材
　７０　地下空間
　８０　地上空間
　９０　保持部
　９４　柔軟性部材
　２００　水耕栽培装置

Claims

　宿根草の地下部を収容し、前記地下部が成長する地下空間を形作る遮光性の栽培槽と、
　前記地下空間を覆うように設けられ、前記栽培槽と一体となって前記地下部を内包し、前記地下空間と前記宿根草の地上部が成長する地上空間とを仕切る遮光性の仕切部と、
　前記宿根草の新芽が前記地上空間に露出されないように、前記地下部を保持する保持部と、
　前記新芽が湿潤状態に維持されるように、水または養液を前記地下空間へ噴霧する噴霧部と、を備えた、水耕栽培装置。
　前記仕切部は、前記新芽が茎へ成長した後、前記茎が上方へ伸びるときに、前記茎の先端が通過する位置に形成された貫通孔を有し、
　前記地上空間において、前記茎の先端が前記貫通孔を通過した前記茎に形成された葉に光を照射する位置に設けられた照明部と、
　前記茎の先端が前記貫通孔を通過した前記茎の周辺の前記貫通孔を塞ぐように設けられた遮光部材と、をさらに備えた、請求項１に記載の水耕栽培装置。
　前記遮光部材は、前記茎の先端が前記貫通孔を通過した前記茎の周辺を取り囲むように、前記仕切部の上に載置された、請求項２に記載の水耕栽培装置。
　前記遮光部材は、前記茎の先端が前記貫通孔を通過した前記茎の周辺の前記貫通孔内に充填された弾性部材である、請求項２に記載の水耕栽培装置。
　前記遮光部材の上面に設けられ、前記照明部が発した光を反射する反射部材を備え、
　前記反射部材の反射率が前記遮光部材の反射率よりも高い、請求項２～４のいずれかに記載の水耕栽培装置。
　前記保持部は、前記新芽が前記地下空間に露出されるように、前記地下部を保持する、請求項１～５のいずれかに記載の水耕栽培装置。
　前記保持部とは異なる他の保持部を備え、前記他の保持部は、前記地上部を保持する、請求項１～６のいずれかに記載の水耕栽培装置。
　前記保持部は、前記水または前記養液を吸収する吸液性を有する柔軟性部材を含み、
　前記柔軟性部材は、前記新芽を取り囲むように、かつ、前記新芽から成長した茎が前記柔軟性部材から上方へ伸長することができるように、前記地下部を保持する、請求項１に記載の水耕栽培装置。
　前記仕切部は、前記新芽が前記茎へ成長した後、前記茎が上方へ伸びるときに、前記茎の先端が通過する位置に形成された貫通孔を有し、
　前記地上空間に設けられ、前記茎の先端が前記貫通孔を通過した前記茎に形成された葉に光を照射する位置に設けられた照明部をさらに備え、
　前記柔軟性部材は、前記茎の先端が前記貫通孔を通過した前記茎の周辺の前記貫通孔を塞ぐように設けられた遮光部材である、請求項８に記載の水耕栽培装置。
　前記柔軟性部材の上面に設けられ、前記照明部が発した光を反射する反射部材を備え、
　前記反射部材の反射率が前記柔軟性部材の反射率よりも高い、請求項９に記載の水耕栽培装置。
　前記保持部と前記仕切部とは、一体化された構造体である、請求項８～１０のいずれかに記載の水耕栽培装置。
　前記保持部は、前記地下部とともに、前記地上部を保持する、請求項８～１１のいずれかに記載の水耕栽培装置。
　前記地下空間に接しており、かつ、下方を向く下面に対して、前記下面からの前記水または養液の液滴の落下を促進する撥水処理が施された、請求項１～１２のいずれかに記載の水耕栽培装置。
　宿根草の新芽を含む地下部を内包する地下空間を遮光し、前記新芽が湿潤状態に維持されるように、遮光された前記地下空間に水または養液を噴霧する、水耕栽培方法。