(本発明の基礎となった知見)
画像符号化規格H.265/HEVC(非特許文献1参照)などの画像符号化方式には、時間スケーラビリティという機能がある。時間スケーラビリティ(非特許文献2のP.211~P.212参照)を有するビットストリームには、TemporalIdという時間識別子が挿入される。これにより、画像復号装置は、複数の時間解像度で復号画像を出力することが可能となる。例えば、60fps(frames per second)の動画像を符号化したビットストリームでは伝送レートが不足する場合に、画像符号化装置(送信装置)は、当該ビットストリームから、30fps又は15fpsにフレームレートを落としたサブビットストリームを切り出し、得られたサブビットストリームを伝送することで、画像復号装置(受信装置)でのコマ落ち及び画質の低下を防止できる。
図1は、TemporalIdを付与した60fpsのビットストリームの一例を示す図である。縦軸がTemporalIdを示し、横軸がピクチャの出力順(POC:Picture Order Count)を示している。また、矢印元のピクチャを矢印先のピクチャの予測画像の生成に用いることが可能である。例えば、POC=2のピクチャに対して、POC=0とPOC=4のピクチャを参照画像として使用できる。
この例のビットストリームは、TemporalIdの異なる3つの階層で符号化されている。この階層をサブレイヤ又は時間レイヤという。符号化又は復号の対象であるカレントピクチャの時間方向予測が行われる際、カレントピクチャのTemporalIDよりもTemporalIdの値が大きなピクチャを参照できないという制限がある。例えば、POC=2のピクチャがカレントピクチャの場合には、カレントピクチャにTemporalId=1が付与されているため、TemporalId=3が付与されたPOC=1とPOC=3のピクチャは参照できない。
この制限によって、時間解像度を落とすときには、画像符号化装置は、TemporalIdが大きなピクチャをビットストリームから容易に取り除くことができる。例えば、画像符号化装置は、30fpsのサブビットストリームを生成するときには、ビットストリームからTemporalId=2のサブレイヤを取り除き、15fpsのサブビットストリームを生成するときには、ビットストリームからTemporalId≧1のサブレイヤを取り除く。このように、再エンコードを行わずにフレームレートを変換できるので、画像符号化装置(送信装置)の負荷を軽減できる。
しかし、この方法により、全ての時間解像度においてコンフォーマンスを満たすビットストリームを符号化する場合には、処理量が増加し画像符号化装置の負荷が大きくなるという問題がある。
具体的には、通常の(時間スケーラビリティを有さない)ビットストリームを生成する場合には、画像符号化装置は、当該ビットストリームがコンフォーマンスを満たすように符号化を行えばよい。一方で、時間スケーラビリティを有するビットストリームでは、上述した切り出しによりサブビットストリームが生成され、当該サブビットストリームが画像復号装置に送信される。よって、このようなビットストリームでは、全てのサブレイヤの符号化情報を含む元のビットストリームだけなく、当該ビットストリームから生成される各サブビットストリームも、コンフォーマンスを満たす必要がある。このように、元のビットストリーム及び複数のサブビットストリームの全てがコンフォーマンスを満たすように、単一のビットストリームを符号化することは困難であり、また、このようなビットストリームを生成するためには画像符号化装置における処理が複雑化するとともに処理量が大きく増加する。
そこで、本発明の一態様に係る画像符号化方法は、複数の画像を符号化することで時間スケーラビリティを有するビットストリームを生成する画像符号化方法であって、固定ビットレート及び可変ビットレートから第1ビットレートタイプを選択する選択ステップと、前記複数の画像それぞれの時間レイヤを決定する決定ステップと、前記第1ビットレートタイプとして固定ビットレートが選択された場合に、(1)全ての時間レイヤに属する前記複数の画像の符号化データを含む前記ビットストリームの第2ビットレートタイプを固定ビットレートに設定し、(2)前記ビットストリームの一部であり、前記複数の画像のうち、最上層の時間レイヤ以外の時間レイヤに属する画像の符号化データを含むサブビットストリームの第3ビットレートタイプを可変ビットレートに設定する設定ステップと、前記複数の画像の各々を、処理対象の画像より時間レイヤが高い画像を参照することを禁止して符号化する符号化ステップと、前記複数の画像の前記時間レイヤを示す時間スケーラビリティ情報と、前記第2ビットレートタイプ及び前記第3ビットレートタイプを示すビットレート制御情報と、符号化された前記複数の画像とを含む前記ビットストリームを生成する生成ステップとを含む。
これにより、全ての時間レイヤの画像を含むビットストリームのビットレートタイプが固定ビットレートに設定される場合でも、サブビットストリームのビットレートタイプは可変ビットレートに設定される。これにより、ビットストリームの生成時に、サブビットストリームのオーバーフローを考慮する必要なく、全ての時間レイヤの画像を含むビットストリームに対してオーバーフローが発生しないような制御のみを行えばよい。これにより、当該画像符号化方法は、複数の時間解像度を有し、かつ各時間解像度においてコンフォーマンスを満たすビットストリームを符号化する際の画像符号化装置の処理量を低減できる。
例えば、前記符号化ステップでは、画像復号装置のバッファ管理を仮想的にモデル化した仮想参照デコーダを用いて、前記第2ビットレートタイプで、前記画像復号装置が前記ビットストリームを破綻なく処理できるように前記複数の画像を符号化してもよい。
例えば、前記時間スケーラビリティ情報は、前記複数の画像それぞれが属する前記時間レイヤを示す時間識別子、又は復号対象の1以上の時間レイヤを特定する時間解像度の取りうるパターン数を含んでもよい。
また、本発明の一態様に係る画像符号化装置は、複数の画像を符号化することで時間スケーラビリティを有するビットストリームを生成する画像符号化装置であって、固定ビットレート及び可変ビットレートから第1ビットレートタイプを選択する選択部と、前記複数の画像それぞれの時間レイヤを決定する決定部と、前記第1ビットレートタイプとして固定ビットレートが選択された場合に、(1)全ての時間レイヤに属する前記複数の画像の符号化データを含む前記ビットストリームの第2ビットレートタイプを固定ビットレートに設定し、(2)前記ビットストリームの一部であり、前記複数の画像のうち、最上層の時間レイヤ以外の時間レイヤに属する画像の符号化データを含むサブビットストリームの第3ビットレートタイプを可変ビットレートに設定する設定部と、前記複数の画像の各々を、処理対象の画像より時間レイヤが高い画像を参照することを禁止して符号化する符号化部と、前記複数の画像の前記時間レイヤを示す時間スケーラビリティ情報と、前記第2ビットレートタイプ及び前記第3ビットレートタイプを示すビットレート制御情報と、符号化された前記複数の画像とを含む前記ビットストリームを生成する生成部とを備える。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
本実施の形態に係る画像符号化装置は、全てのサブレイヤの符号化情報を含む元のビットストリームのビットレートタイプによらず、サブビットストリームのビットレートタイプを可変ビットレートに設定する。これにより、画像符号化装置は、サブビットストリームのオーバーフローを考慮することなく、ビットレート制御を行える。よって、画像符号化装置の処理量を低減できる。
ます、本実施の形態に係る画像符号化装置200の構成を説明する。図2は、本実施の形態に係る画像符号化装置200の構造を示すブロック図である。
この画像符号化装置200は、入力された動画像又は画像ビットストリームである入力画像251をブロック毎に符号化することで符号化ビットストリームであるビットストリーム261を作成する。この画像符号化装置200は、図2に示すように、ビットレート制御部201と、時間スケーラビリティ情報付与部202と、減算器203と、変換部204と、量子化部205と、逆量子化部206と、逆変換部207と、加算器208と、ブロックメモリ209と、フレームメモリ210と、イントラ予測部211と、インター予測部212と、エントロピー符号化部213とを備える。
ビットレート制御部201は、コンフォーマンスを満たすビットストリーム261を生成するために、HRDを用いて、量子化部205を制御する。また、ビットレート制御情報263をエントロピー符号化部213へ出力する。
ビットレート制御情報263は、選択可能な時間解像度(図1に示す例では60fps、30fps及び15fps)のビットストリームの各々のビットレートタイプを示す情報である。ここでビットレートタイプとは、固定ビットレート又は可変ビットレートである。例えば、ビットレート制御情報263は、フラグ情報cbr_flag[TemporalId]である。
cbr_flag[TemporalId]は選択可能な時間解像度の数と同じ数のフラグを含む。ここで、cbr_flag[TemporalId]におけるTemporalIdは、再生されるピクチャの持つTemporalIdの中で最も大きな値を示す。例えば、図1に示す例では、60fpsの全てのピクチャが再生される場合は、再生されるピクチャの持つTemporalIdの中で最も大きなTemporalIdは「2」であるためcbr_flag[2]に格納されているビットレートタイプが使用される。また、15fpsで再生する場合は再生されるピクチャの持つTemporalIdの中で最も大きなTemporalIdは「0」であるためcbr_flag[0]に格納されているビットレートタイプが使用される。
例えば、cbr_flag[TemporalId]=1は固定ビットレートを示し、cbr_flag[TemporalId]=0は可変ビットレートを示す。
なお、以下では、最大の時間解像度を有するビットストリーム(ビットストリーム261)を最上層のビットストリームと呼び、ビットストリーム261から生成される時間解像度の低いビットストリームを下層のビットストリーム又はサブビットストリームと呼ぶ。また、最上層のビットストリームのビットレートタイプを最上層のビットレートタイプと呼び、下層のビットストリームのビットレートタイプを下層のビットレートタイプと呼ぶ。
時間スケーラビリティ情報付与部202は、時間スケーラビリティ情報264をエントロピー符号化部213へ出力する。時間スケーラビリティ情報264は、具体的には、各画像のTemporalIdを示す。
入力画像251は、複数のピクチャ、1つのピクチャ又は1つのスライスなどの単位で減算器203に入力される。減算器203は、入力画像251と予測画像260との差分である残差信号252を算出し、残差信号252を変換部204へ出力する。
変換部204は、残差信号252を周波数係数253に変換し、得られた周波数係数253を量子化部205へ出力する。量子化部205は、入力された周波数係数253を量子化し、得られた量子化係数254を逆量子化部206及びエントロピー符号化部213へ出力する。
なお、変換部204と量子化部205の処理は、各処理部において変換ユニット(TU:Transform Unit)単位で順に実行される場合もあれば、TUサイズに対応した係数を有する1以上のマトリックスの乗算を用いて一括して実行される場合もある。
逆量子化部206は、量子化部205から出力された量子化係数254を逆量子化し、得られた周波数係数255を逆変換部207へ出力する。逆変換部207は、周波数係数255に対して逆周波数変換を行うことで周波数係数255を残差信号256に変換し、得られた残差信号256を加算器208へ出力する。
加算器は、逆変換部207から出力された残差信号256を、イントラ予測部211又はインター予測部212から出力された予測画像260に加算し、得られた再構成画像257を更なる予測のためにブロックメモリ209又はフレームメモリ210に出力する。
なお、逆量子化部206及び逆変換部207の処理は、TU単位で順に実行される場合もあれば、TUサイズに対応する係数を有する1以上のマトリックスの乗算を用いて一括して行われる場合もある。ここでは説明を明確にするために逆量子化及び逆変換という言葉を用いたが、逆量子化及び逆変換は、量子化及び変換と、単に係数の値が異なるだけであり、マトリックスの乗算を用いた処理であるため量子化及び変換と呼ばれる場合がある。
イントラ予測部211は、予測ユニット(PU:Prediction Unit)毎に、ブロックメモリ209に保存される再構成画像257内を検索し、検索により得られた画像の一部をコピーしたり、重み付けの乗算を施したりすることで、入力画像251と類似するように予測された予測画像258を作成する。
インター予測部212は、PU毎に、フレームメモリ210に保存される再構成画像257内を検索し、入力画像251と最も類似する又は類似する可能性が高い画像を1つ以上検出することで予測画像259を生成する。また、予測画像258及び予測画像259の一方が予測画像260として選択される。
エントロピー符号化部213は、ビットレート制御部201からのビットレート制御情報263と、時間スケーラビリティ情報付与部202からの時間スケーラビリティ情報264と、量子化部205からの量子化係数254と、イントラ予測部211からの予測情報と、インター予測部212からの予測情報とを符号化することでビットストリーム261を出力する。
次に、本実施の形態に係るが画像符号化処理について説明する。図3は、本実施の形態に係る画像符号化プロセスのフローチャートである。
ステップS301では、画像符号化装置200は、ビットレート制御情報263及び時間スケーラビリティ情報264を生成する。画像符号化装置200は、生成されたビットレート制御情報263及び時間スケーラビリティ情報264をエントロピー符号化し、符号化されたビットレート制御情報263及び時間スケーラビリティ情報264をビットストリーム261のヘッダに挿入する。
ステップS302では、画像符号化装置200は、イントラ予測又はインター予測を行うことで予測画像260を作成する。
ステップS303では、画像符号化装置200は、予測画像260と入力画像251との差分である残差信号252を算出する。
ステップS304では、画像符号化装置200は、残差信号252を周波数変換することで周波数係数253を算出する。
ステップS305では、画像符号化装置200は、ビットレート制御により量子化幅を算出し、得られた量子化幅を用いて周波数係数253を量子化することで量子化係数254を算出する。具体的には、画像符号化装置200は、最上層のビットレートタイプで、HRDを用いたビットレート制御を行うことにより量子化幅を算出する。
ステップS306では、画像符号化装置200は、予測情報及び量子化係数254をエントロピー符号化し、符号化された予測情報及び量子化係数254をビットストリーム261に挿入する。
ステップS301の処理について以下、図4~図9を用いて詳細に説明する。
図4は、画像符号化装置200により生成されるビットストリーム261のデータ構造の一例を示す図である。ビットストリーム261は、VPS(Video Parameter Set)、APS(Adaptation Parameter Set)、SPS(Sequence Parameter Set)及びPPS(Picture Parameter Set)などのヘッダ部分と、符号化された画像データであるピクチャデータとを含んでいる。ピクチャデータは、スライスヘッダ(SH)と、スライスデータとを含んでいる。スライスデータは、スライスに含まれる符号化された画像データを含んでいる。スライスデータは、ブロックヘッダ(BH)と、ブロックデータとを含んでいる。ブロックデータは、ブロックに含まれる符号化された画像データを含んでいる。
ビットレート制御情報263及び時間スケーラビリティ情報264は、エントロピー符号化部213において符号化され、VPS、APS、SPS、PPS、及びSHのいずれかに挿入される。
図5は、ビットレート制御部201によるビットレート制御情報263の算出プロセスを説明するための図である。ビットレート制御部201は、外部パラメータ262で指定されるビットレートタイプに応じて、各層のビットレートタイプを決定する。
具体的には、外部パラメータ262により固定ビットレートが指定されている場合には、ビットレート制御部201は、最上層(この例ではTemporalId=2)のビットレートタイプを固定ビットレートに設定し、最上層以外(この例ではTemporalId=0及び1)のビットレートタイプを可変ビットレートに設定する。また、外部パラメータ262により可変ビットレートが指定されている場合には、ビットレート制御部201は、全ての層(この例ではTemporalId=0~2)のビットレートタイプを可変ビットレートに設定する。
つまり、ビットレート制御部201は、最上層のビットレートタイプを外部パラメータ262で指定されるビットレートタイプと同じに設定する。また、ビットレート制御部201は、最上層以外の全てのビットレートタイプを、外部パラメータ262で指定されるビットレートタイプに依存せず、常に可変ビットレートに設定する。
図6は、ビットレート制御情報263の算出プロセスのフローチャートである。
ステップS401では、ビットレート制御部201は、外部パラメータ262で示される、全てのピクチャを符号化する時間解像度でのビットレートタイプを取得する。
ステップS402では、時間スケーラビリティ情報付与部202は、外部パラメータ262で示される時間スケーラビリティ情報を取得する。ここで、時間スケーラビリティ情報は、サブレイヤの数つまりTempralIdの数、又は各ピクチャに設定するTemporalIdを示す。なお、これらのTempralIdの情報は、GOP単位の各ピクチャに設定されるTemporalIdの情報であってもよいし、スライスタイプ毎のTemporalIDの情報であってもよい。また、時間スケーラビリティ情報付与部202は、外部パラメータ262で示される時間スケーラビリティ情報に基づき時間スケーラビリティ情報264を生成し、生成された時間スケーラビリティ情報264をビットレート制御部201へ出力する。ここで、時間スケーラビリティ情報264は、例えば、サブレイヤの数、つまりTemporalIdの数を示す。
ステップS403では、ビットレート制御部201は、ステップS401で取得されたビットレートタイプが固定ビットレートかを判定する。
ビットレートタイプが固定ビットレートである場合(S403でYes)、ステップS404では、ビットレート制御部201は、最上層のビットレートタイプを固定ビットレートに設定する。具体的には、ビットレート制御部201は、TemporalId=2のcbr_flag[2]に「1」(固定ビットレート)を設定する。
一方、ビットレートタイプが固定ビットレートではない、つまり可変ビットレートである場合(S403でNo)ステップS405では、ビットレート制御部201は、最上層のビットレートタイプを可変ビットレートに設定する。具体的には、ビットレート制御部201は、TemporalId=2のcbr_flag[2]に「0」(可変ビットレート)を設定する。
ステップS404又はS405の後、ステップS406では、ビットレート制御部201は、最上層以外の全ての層のビットレートタイプを可変ビットレートに設定する。具体的には、ビットレート制御部201は、TemporalId≦1のcbr_flag[TemporalId]に「0」(可変ビットレート)を設定する。
ステップS407では、ビットレート制御部201は、各層のビットレートタイプを示すビットレート制御情報263であるcbr_flag[TemporalId]をエントロピー符号化部213へ出力する。
なお、ステップS401及びS402では、ビットレートタイプ及び時間スケーラビリティ情報が外部パラメータ262として外部から入力されているが、ビットレートタイプ及び時間スケーラビリティ情報の少なくとも一方として、画像符号化装置200に予め保持されている固定値が用いられてもよい。
以下、本実施の形態により、全ての時間解像度においてコンフォーマンスを満たすビットストリーム261を作成できることを説明する。
図7は、60fpsの動画像を、固定ビットレートでコンフォーマンスを満たしつつ符号化した時の、ビットストリームに対するHRDのCPB占有量の例を示す図である。図7の縦軸はCPB占有量を示し、横軸は時刻を示す。また、HRDのCPB容量を水平線で示す。図7に示すように、60fpsの符号化では、オーバーフローを起こすことなく、符号化が行われる。
なお、説明のために、ビットストリームの階層構造は図1に示した例を使用する。ここで、全てのピクチャからTemporalId≧1のピクチャを除くことにより、60fpsのビットストリームから15fpsのビットストリームを作成できる。その時の、HRDのCPB占有量を図8に示す。また、図8は、比較のための図であり、cbr_flag[0]=1、つまり、15fpsにおけるビットレートタイプが固定ビットレートである場合を示す。この場合、図8に示すように、オーバーフローが生じる。
一方、本実施の形態では、上述したように、60fps以外の下層のビットストリームに対して、cbr_flag[TemporalId]=0(TemporalId≦1)に設定される。つまり、60fps以外のビットレートタイプは可変ビットレートに設定される。可変ビットレートにおいて、CPB容量に空きが無い場合、ビットストリームの入力を一時停止することができる。これにより、オーバーフローを回避できる。図9は、15fpsのビットレートタイプが可変ビットレートである場合のHRDのCPB占有量を示す図である。図9に示すように、ビットレートタイプを可変ビットレートに設定することで、オーバーフローの発生を防止できる。
また、異なる時間解像度(上記の60fps、30fps及び15fps)のビットストリームに対して同一の目標ビットレートが設定されてもよい。この場合、時間解像度が異なる複数のビットストリームにおける、時間当たりのCPBへの入力量は一定である。また、時間解像度が60fpsから15fpsに変更された場合、CPBから引き抜かれるバッファ量は減る。よって、最も高い時間解像度においてアンダーフローが起きないように符号化されていれば、全ての時間解像度でアンダーフローは発生しない。
ここで、CPBからの引き抜き時刻を示す情報は、例えば、シーケンスに設定されるSupplimental Enhance Information(SEI)に符号化される。
本実施の形態により、全てのピクチャを符号化する最も高い時間解像度においてのみ、アンダーフローとオーバーフローが発生しないようにビットレートを制御することで、TemporalIdで設定された全ての時間解像度においてコンフォーマンスを満たすビットストリームを符号化できる。
このように、本実施の形態の構成によると、処理量の増大を抑制しつつ、伝送レートによらずコンフォーマンスを満たすように、適切に画像を符号化できる。
以上のように、本実施の形態に係る画像符号化装置200は、複数の画像を符号化することで時間スケーラビリティを有するビットストリーム261を生成する。
画像符号化装置200は、固定ビットレート及び可変ビットレートから第1ビットレートタイプを選択し(S401)、複数の画像それぞれの時間レイヤを決定する(S402)。例えば、画像符号化装置200は、外部パラメータ262で示されるビットレートタイプ又は予め定められたビットレートタイプを選択する。また、画像符号化装置200は、外部パラメータ262で示される時間スケーラビリティ情報に基づき、複数の画像それぞれの時間レイヤを決定する。
画像符号化装置200は、第1ビットレートタイプとして固定ビットレートが選択された場合(S403でYes)に、(1)全ての時間レイヤに属する複数の画像の符号化データを含むビットストリーム261の第2ビットレートタイプを固定ビットレートに設定し(S404)、(2)ビットストリーム261の一部であり、上記複数の画像のうち、最上層の時間レイヤ以外の時間レイヤに属する画像の符号化データを含むサブビットストリームの第3ビットレートタイプを可変ビットレートに設定する(S406)。
次に画像符号化装置200は、複数の画像の各々を、処理対象の画像より時間レイヤが高い画像を参照することを禁止して符号化する(S302~S305)。
例えば、画像符号化装置200は、画像復号装置のバッファ管理を仮想的にモデル化した仮想参照デコーダ(HRD)を用いて、第2ビットレートタイプで、画像復号装置がビットストリーム261を破綻なく処理できるように複数の画像を符号化する。具体的には、画像符号化装置200は、HRDを用いたビットレート制御により、画像復号装置においてアンダーフロー及びオーバーフローが発生しないように、量子化幅を制御する。
また、画像符号化装置200は、全ての時間レイヤに属する複数の画像の符号化において、第2ビットレートタイプで、ビットレート制御を行うことで、量子化幅を決定し、時間解像度が低いサブビットストリームの各々に対しては、第3ビットレートタイプでのビットレート制御は行わない。
次に、画像符号化装置200は、複数の画像の時間レイヤを示す時間スケーラビリティ情報264と、第2ビットレートタイプ及び第3ビットレートタイプを示すビットレート制御情報263と、符号化された複数の画像とを含むビットストリーム261を生成する(S301及びS306)。ここで、時間スケーラビリティ情報264は、複数の画像それぞれが属する時間レイヤを示す時間識別子(TemporalId)、又は復号対象の1以上の時間レイヤを特定する時間解像度の取りうるパターン数を含む。
このように、本実施の形態に係る画像符号化装置200は、全てのサブレイヤの符号化情報を含む最上層のビットストリームのビットレートタイプによらず、サブビットストリームのビットレートタイプを可変ビットレートに設定する。これにより、画像符号化装置200は、サブビットストリームのオーバーフローを考慮することなく、ビットレート制御を行える。よって、画像符号化装置200の処理量を低減できる。
また、上述したように、最上層のビットストリーム及びサブビットストリームの目標ビットレートを同一に設定してもよい。これにより、サブビットストリームのアンダーフローを考慮する必要がなくなる。
これらにより、画像符号化装置200は、サブビットストリームのオーバーフロー及びアンダーフローを考慮する必要がないので、最上層のビットストリームに対してのみビットレート制御を行えばよい。よって、画像符号化装置200は、通常の(時間スケーラビリティを有さない)ビットストリームと同様の処理により、コンフォーマンスを満たす、時間スケーラビリティを有するビットストリームを生成できる。
以上、実施の形態に係る画像符号化方法及び画像符号化装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
例えば、本発明は、上記実施の形態に係る画像符号化方法又は画像符号化装置により生成されたビットストリームを復号する画像復号方法又は画像復号装置として実現されてもよい。
また、上記実施の形態に係る画像符号化装置に含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
言い換えると、画像符号化装置は、処理回路(processing circuitry)と、当該処理回路に電気的に接続された(当該処理回路からアクセス可能な)記憶装置(storage)とを備える。処理回路は、専用のハードウェア及びプログラム実行部の少なくとも一方を含む。また、記憶装置は、処理回路がプログラム実行部を含む場合には、当該プログラム実行部により実行されるソフトウェアプログラムを記憶する。処理回路は、記憶装置を用いて、上記実施の形態に係る画像符号化方法を実行する。
さらに、本発明は上記ソフトウェアプログラムであってもよいし、上記プログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
また、上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
また、上記の画像符号化方法に含まれるステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
以上、本発明の一つ又は複数の態様に係る画像符号化方法及び画像符号化装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
(実施の形態2)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)または動画像復号化方法(画像復号方法)の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
さらにここで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法(画像符号化方法)や動画像復号化方法(画像復号方法)の応用例とそれを用いたシステムを説明する。当該システムは、画像符号化方法を用いた画像符号化装置、及び画像復号方法を用いた画像復号装置からなる画像符号化復号装置を有することを特徴とする。システムにおける他の構成について、場合に応じて適切に変更することができる。
図10は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
しかし、コンテンツ供給システムex100は図10のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号化処理して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号化処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
また、これら符号化・復号化処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD-ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号化処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号化し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、図11に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも動画像符号化装置(画像符号化装置)または動画像復号化装置(画像復号装置)のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した動画像符号化方法により符号化されたデータである(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置によって符号化されたデータである)。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号化して再生する(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)。
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号化する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した動画像復号化装置または動画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に動画像復号化装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に動画像復号化装置を組み込んでもよい。
図12は、上記各実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号化する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305(本発明の一態様に係る画像符号化装置または画像復号装置として機能する)を有する信号処理部ex306と、復号化した音声信号を出力するスピーカex307、復号化した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号化し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号化し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号化方法を用いて復号化する。復号化した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号化処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号化処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を図13に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
図14に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば図12に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
図15Aは、上記実施の形態で説明した動画像復号化方法および動画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号化されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号化されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
さらに、携帯電話ex114の構成例について、図15Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した動画像符号化方法によって圧縮符号化し(即ち、本発明の一態様に係る画像符号化装置として機能する)、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号化するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法に対応した動画像復号化方法によって復号化することにより映像信号を復号し(即ち、本発明の一態様に係る画像復号装置として機能する)、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号化器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号化器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
このように、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法あるいは動画像復号化方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置と、MPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG-2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
図16は、多重化データの構成を示す図である。図16に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC-3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS-HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
図17は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
図18は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。図18における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。図18の矢印yy1,yy2,yy3,yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time-Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time-Stamp)が格納される。
図19は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD-ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには図19下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
図20はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
多重化データ情報ファイルは、図21に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
多重化データ情報は図21に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
ストリーム属性情報は図22に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
また、本実施の形態における動画像復号化方法のステップを図23に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した動画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号化方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した動画像符号化方法または装置、または、動画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法および装置、動画像復号化方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、図24に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。このようなプログラマブル・ロジック・デバイスは、典型的には、ソフトウェア又はファームウェアを構成するプログラムを、ロードする又はメモリ等から読み込むことで、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法、又は動画像復号化方法を実行することができる。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号化装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。図25は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、図24のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、図24の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態3で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態3で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、図27のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
図26は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4-AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した動画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
(実施の形態6)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した動画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を図28Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した動画像復号方法と、MPEG4-AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4-AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4-AVC規格に対応しない、本発明の一態様に特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。特に、本発明の一態様は、階層符号化に特徴を有していることから、例えば、階層符号化については専用の復号処理部ex901を用い、それ以外のエントロピー復号、逆量子化、デブロッキング・フィルタ、動き補償のいずれか、または、全ての処理については、復号処理部を共有することが考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した動画像復号化方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4-AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
また、処理を一部共有化する他の例を図28Bのex1000に示す。この例では、本発明の一態様に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の一態様に係る動画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明の一態様、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
このように、本発明の一態様に係る動画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。