WO2015002267A1

WO2015002267A1 - 皮膚外用剤

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Publication number: WO2015002267A1
Application number: PCT/JP2014/067782
Authority: WO
Inventors: 里美飯倉
Original assignee: 株式会社みょうばん湯の里
Priority date: 2013-07-03
Filing date: 2014-07-03
Publication date: 2015-01-08
Also published as: JPWO2015002267A1; CN105358121B; KR20160029747A; HK1221643A1; CN105358121A; JP6346890B2; KR102189339B1

Abstract

　明礬を含む硫黄泉由来の湯の花を精製液状化し、入浴剤、化粧水、皮膚疾患の緩和等に使用される皮膚外用剤を提供する。　当該皮膚外用剤は、硫黄泉蒸気を明礬を含む粘土層を通して生成される湯の花を水に分散させ、該分散液を、該湯の花生成に使用された後の残土を濾過材として濾過して得られる濾液よりなる。　前記湯の花は、赤色、黄金色、白色の湯の花をそれぞれ単独で、又は２種以上の適宜の組み合わせで混合したものであり、前記濾過材は、明礬湯の花を販売する際に該湯の花をパッケージングする不織布製袋に充填したものであってよい。

Description

皮膚外用剤

　本発明は、明礬を含む硫黄泉由来の湯の花、特に鉄分が多く一般ユーザには敬遠され勝ちな赤色を呈する湯の花を精製液状化し、入浴剤、化粧水、皮膚疾患の緩和等に使用される皮膚外用剤に関する。

　明礬泉、鉄明礬泉は、一般に、肩こり、うちみ、くじき、腰痛、神経痛、リュウマチなどの温泉療法手段として、また、湿疹、あせも、しもやけ、痔、ただれなどの温泉療法手段として古くから用いられている。
　また、明礬や鉄明礬は、化粧水に含まれる各種成分を皮膚内深くまで浸透させる効果や、紫外線や乾燥でダメージを受けた髪を保護する効果なども知られている。

　上記のような明礬泉等の効能を、明礬泉等の温泉場に出向くことなく、家庭で簡易に得るために、これらの温泉から生ずる湯の花を採取し、これを家庭の浴湯中に溶かし、明礬、鉄明礬を含む浴湯とすることが一般になされている。

　また、これまで、特定のイオンを含む鉱泉水、明礬、緑礬を1種以上含有する湯の花、又は該湯の花の溶媒抽出物の1種以上と、クエン酸塩又はアスコルビン酸塩を含む皮膚外用剤（特許文献１）や、湯の花を原料とし、硫酸イオンと３価の鉄イオンを特定の範囲で含み、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、及びカルシウムイオンからなる群から選択される1種以上をさらに含む皮膚外用組成物（特許文献２）が提案されている。
　特許文献１では、リパーゼ阻害試験、抗菌試験により、該外用剤が安定性に優れ、リパーゼ阻害及び抗菌作用を有することが記載され、特許文献２では、サイトカインの産生及び線維芽細胞の増殖を伴う細胞賦活作用が開示されており、湯の花は皮膚外用剤として有効であることは知られている。

　大分県別府市の明礬温泉の湯の花製造は、江戸時代より行われており、この製造手法では、雨風を防いで、湯の花の結晶ができやすい環境を作り出すために、湯の花小屋をつくり、その内部で噴気（硫黄泉由来の蒸気）と青粘土（別府温泉近郊の明礬鉱脈から採取されるもので、青色を帯びている）を利用して湯の花の結晶（“ハロトリカイト”と呼称されている）を作り出しており、この製造手法で得られる湯の花（“明礬湯の花”と呼称されている）は、入浴剤として利用されてきている。

　別府の明礬温泉一帯は、地熱地帯で地下３０ｃｍほどのところに温水（硫黄泉）脈があり、随所に温泉（硫黄泉由来）の蒸気が勢いよく噴き出している。湯の花小屋では、噴気が比較的強く出ている噴気孔の周辺６０ｍ^２ほどをスコップや木槌を使って平らに固めて基礎とし、該基礎の表面に噴気が一定の強さで噴き出すように小石を敷き、その上に藁を敷き、最上部に別府明礬温泉周辺の山から採取される青粘土を１５ｃｍほどの厚さに敷き固める。

　明礬湯の花が結晶化する過程をみると、まず硫黄泉噴気が土、小石、藁の層を上昇する途中で冷えて水になる。それと同時に該噴気に含まれていた硫化水素や亜硫酸ガスが酸化して硫酸となり、この水に溶けこむ。それが上昇し青粘土の層に入ると、青粘土に含まれているアルミニウムや鉄と反応して硫酸塩となり結晶として表面に現れる。１０日前後で硫酸塩の結晶、すなわち明礬湯の花が青粘土の表面に生成するが、最初に生成した湯の花は不純物が多く含まれているため、採取せずに木槌などで固める。さらに３０日前後して再び湯の花が生成すると、不純物などが少ない白い部分だけを選んで左官用の鏝や木の棒などで掻き採る。掻き採った湯の花（粉末状）は通気性のよい容器に入れて保管し、小分けパック等の形態で浴用剤として提供される。

　この明礬湯の花の製造に使用する青粘土は、床に敷いてから５～６回程度は明礬湯の花の生成に使用できるが粘土中の鉄が減ってくるとアルミニウム硫酸塩の割合が増し、さらにアルミニウムも不足すると二酸化ケイ素の析出が優先するようになる。こうして青粘土中に含まれる鉄やアルミニウム等が抽出され、用済みとなった青粘土は青粘土残土として廃棄され、新たな青粘土と交換される。

　なお、先に、“明礬を主要成分とする湯の花”と、“明礬を主要成分とする湯の花の含まれた粘土”の一種又は二種以上からなる明礬含有物を、水に入れ、且つ、これを濾過して得られた濾過液よりなる浴用添加剤が提案されている（特許文献３）。特許文献３の記載から、この浴用添加剤の技術構成の全容を十分に理解することは困難であり、反復性（再現性・継続性）を欠く。例えば、同文献には、“明礬を主要成分とする湯の花の含まれた粘土の一種又は二種以上からなる明礬含有物”が“明礬を主要成分とする湯の花の生成手段として用いられた粘土床材”を指す旨の記載もあり、この記載から、青粘土上に明礬湯の花を生成させ、生成された該湯の花を青粘土から掻き採ることなく、該湯の花を付着した状態の青粘土を水に入れ、該水を濾過すると解釈され、この青粘土に更に明礬湯の花を混合する技術的意味は、理解できない。しかも、請求項２（本件では、これを特許にしている≪特許文献４≫）や実施例では、木炭粉末をも混合しており、木炭粉末に明礬湯の花中の有用成分が吸着除去される懸念もあり、この濾液には、江戸時代から伝わる明礬湯の花の薬効がそのまま存在しているかの疑問が残る。

特開２００２－３２６９４２号公報特開２００６－１９３４４７号公報特開平９－３０９５５号公報特許３１０５１５３号公報

　前述したように薬効の期待される明礬湯の花（粉末状）は、従来、家庭用の浴槽内浴湯（一般に二百数十リットル≪以下、リットルをＬ、ミリリットルをｍＬと記す≫程度）に対して、例えば５ｇ～１０ｇ程度を投入して用いられている。
　しかし、明礬湯の花の粉末を、直接浴槽内浴湯に投入する手法では、湯の花が十分に分散・溶解せず、薬効が十分に得られなかったり、入浴後の浴湯（いわゆる残り湯）に沈殿物が残り、洗濯機に使用できなかったり、場合によっては沈殿物によるパイプの詰まり等の不都合が生じることがある。

　しかも、天然資源をできるだけ有効に活用し、廃棄物の量を極力低減することも、環境保全の観点から重要な要求事項となっている。

　本発明は、以上のような不都合を解決し、明礬湯の花を原料とし、該湯の花に含まれている成分を確実に浴湯等に移行させることができると共に、取扱い易い液状で、かつ確実な反復再現性を有して、天然資源を極力効果的に使用することにより廃棄分を激減させることができる、皮膚外用剤を提供することを課題とする。

　上記課題を解決するに際し、本発明者は、次のような知見を得た。
〔１〕明礬湯の花の生成に使用した後の青粘土（残土）は、硫黄泉からの噴気中の硫黄成分との反応生成物である硫酸を含み、大量に排出されるが、今日まで、その残土の活用方法は僅かに特許文献３に記載されているものの、反復継続性の全く無い手法としての記載でしかない。
　本発明者は、この残土を有効活用すべく、この残土の特性を、次のようにして調べた。上記残土の少量を水に分散させ、ここに塩化第二鉄溶液（市販の試薬）を滴下したところ、塩化第二鉄の黄褐色が瞬時に退色した。これは、この青粘土残土が強力な還元作用を保有することに外ならず、この残土の強力な還元力については、上記の特許文献３には認識すらないばかりか、従来全く知られていなかった。

〔２〕一方、明礬湯の花は、一般に鉄分が少量しか含まれない白色、鉄分が多量に含まれる赤色、及びこの中間の鉄分量を含む黄金色の３種に分類されるが、水に分散させると、赤色、黄金色はもとより、白色の湯の花であっても、分散液全体が赤褐色～黄褐色に着色する。この赤褐色～黄褐色成分は明らかに第二鉄化合物由来の成分であり、上記〔１〕の青粘土残土の還元力を利用すれば、第二鉄化合物は第一鉄化合物に還元され、赤褐色～黄褐色は退色乃至は消失すると考えられる。

〔３〕そこで、明礬湯の花を水に分散させた黄褐色の液に、この青粘土残土を大量に投入したところ、第二鉄イオンによると考えられる液の黄褐色は僅かではあるが退色することが確認された。但し、残土は水に非溶解性乃至は難溶解性であり、残土に起因すると思われる褐色微粒子が液中に分散された状態となり、液が無色透明となることはなかった。

〔４〕本発明者は、上記の褐色微粒子の除去を試みるべく、検討を重ねたところ、上記３種の湯の花ともに、分散水に特許文献３のように青粘土残土を投入した後の液を濾過するのみでは、濾過に時間がかかるばかりでなく、退色効果も極めて僅かであることを確認した。特に赤色の湯の花の場合、青粘土残土を大量に使用すれば、退色効果はある程度向上するが、濾過が極めて困難乃至は不可能になり、青粘土残土を分散する方法では、液を無色透明にすることは実質上不可能である。

〔５〕本発明者は発想を転換させ、青粘土残土を濾過材として使用し、上記３種の湯の花分散水を濾過したところ、３種とも青粘土残土の使用量は、それほど多くなくても、濾過液は、十分に退色し、無色透明となることを確認した。

〔６〕上記〔３〕～〔５〕から、３種の明礬湯の花に含まれる赤褐色～黄褐色成分は、青粘土残土を濾過材として、赤色、黄金色、白色の明礬湯の花の分散液を濾過させれば、十分に還元され、退色し、無色透明な濾液が得られることを知得した。

　本発明の皮膚用外用剤は、以上の知見に基づくもので、
（１）硫黄泉蒸気を明礬を含む粘土層を通して生成される湯の花を水に分散させ、該分散液を、該湯の花生成に使用された後の残土を濾過材として濾過して得られる濾液よりなることを特徴とする。
（２）前記湯の花は、赤色、黄金色、白色の湯の花をそれぞれ単独で、又は２種以上の適宜の組み合わせで混合したものであってよく、（３）前記明礬を含む粘土は別府明礬温泉で採取されるものであり、前記湯の花は別府明礬温泉で噴出される硫黄泉蒸気を該粘土層を通して得られる赤色、黄金色、白色の湯の花それぞれを単体で、又は２種以上の適宜の組み合わせで混合したものであってよい。（４）また、上記の濾過材は、明礬湯の花を販売する際に該湯の花をパッケージングする不織布製袋に充填したものであってよい。

　本発明の皮膚用外用剤は、家庭用の浴用剤として使用すれば、従来の粉末状明礬湯の花を浴槽中の湯に投入した際に生じる黄褐色への変色はもとより、沈殿物も無くなり、しかも従来の粉末状明礬湯の花を湯に投入した場合と同等の効果を得ることができる。
　また、本発明の皮膚外用剤は、化粧水、皮膚疾患用薬剤、それらの原料等として使用することもでき、皮膚の殺菌および美肌作用に効果がある。

　加えて、本発明の皮膚用外用剤は、原料の全てを江戸時代から続く明礬湯の花の製造工程で得られるものであり、大分県別府市の明礬湯と同等の効能を、当該温泉地から遠く離れた地域においても、当該外用剤を使用することによって、極めて容易に得ることができる。
　しかも、本発明の皮膚用外用剤は、特に一般ユーザに敬遠され勝ちな、扱いの厄介な赤色の湯の花であっても、有効に使用することができ、枯渇しつつある天然資源の有効活用と言う点においても顕著な効果がある。

　本発明では、大分県別府市の明礬温泉で従来から使用されている従来の構成通りの湯の花小屋内において、硫黄泉蒸気を明礬を含む粘土層を通して生成する湯の花を掻き採ったものを使用する。
　また、この明礬湯の花の生成に使用した後の残土は、湯の花小屋から採取した後、本発明では、雨の降らない日に通常１日～１週間程度天日干ししたものを使用する。夜間は、露の付着を防ぐべく、屋内に取り込むか、防水シートで覆う等の配慮（防水処置）が必要であり、実際には、日中７～９時間程度の天日干し→夜間屋内取込み（又は防水処置）を残土の状態を観察しつつ１日～１週間程度繰り返す（梅雨の時期や雨後等のように多湿の場合は、かなり水分を含んでおり、１週間程度の乾燥を必要とするが、冬季のような乾季には１日程度の乾燥で十分である）。
　あるいは、天日干しに代えて、常圧・常温（１５～３５℃程度）で、１～５０ｒｐｍ程度の回転を加え、かつ必要に応じて送風（周囲の空気を常温で送風）する等の、強制乾燥を行ってもよい。強制乾燥の際の時間は、上記の７～９時間／１日で１日～１週間を目安にして設定すればよい。
　このような乾燥処理により、採取直後の残土重量（平均１～２ｋｇ／Ｌ）の１０～７０％減（平均０．３～１．８ｋｇ／Ｌ）程度となる。

　本発明において、上記のような緩慢な乾燥手法を採用する理由は、上記残土は硫黄成分を含んでおり、高温・高圧下での強制乾燥では、硫黄分が大量に蒸発し、空気中の水分と反応して毒性成分を生成し作業環境を悪化させるのみならず、残土の有用な特性である還元性（還元力）をも低減してしまうからであり、できるだけ硫黄分の気散を抑え、水分を多量に除去するためである。
　また、残土から水分を除去するのは、残土を濾過材として使用する際の濾過操作を容易にする（残土の水分量が多いと、濾過材として使用する際に濾過速度を極端に低下させ、場合によっては濾過操作が不可能になる）ためと、残土（特に固体）中の成分と分散液中の赤褐色乃至黄褐色成分との接触を効果的に行うためである。
　但し、水分の蒸発に伴って、固体中の上記成分（硫黄化合物と推測される）もある程度揮散し、該成分による退色作用（還元作用と推測される）を低減することがある。従って、乾燥度合は、上記のように、採取直後の残土重量の１０～７０％減程度である。

　上記の明礬湯の花（赤色、黄金色、白色をそれぞれ単独の場合と、適宜の組み合わせによる２種以上の混合物の場合を含む。以下、明礬湯の花あるいは湯の花と言うときは、特に断らない限り同じ）は、該湯の花１００重量部に対して水０．１～１０Ｌ程度の割合で、水に分散させる。
　なお、本発明において、赤色は、総鉄量がＪＩＳ　Ｋ　０１０２　５７．４による測定で約６８００～７５００ｐｐｍ／Ｌ、２価鉄がＪＩＳ　Ｋ　０１０２　５７．１　備考３による測定で約３０００～３７００ｍｇ／Ｌ、３価鉄がこの差で約３１００～４５００ｍｇ／Ｌのものを指し、黄金色は、総鉄量が上記ＪＩＳ測定で約４０００～４６００ｍｇ／Ｌ、２価鉄が上記ＪＩＳ測定で約１６００～２２００ｍｇ／Ｌ、３価鉄がこの差で約１８００～３０００ｍｇ／Ｌのものを指し、白色は、総鉄量が上記ＪＩＳ測定で約１４００～２０００ｍｇ／Ｌ、２価鉄が上記ＪＩＳ測定で約１４００～２０００ｍｇ／Ｌ、３価鉄がこの差で約１～９ｍｇ／Ｌのものを指す。

　上記の分散液を、上記のような減水処理をした残土を濾過材として濾過すればよい。
　上記残土は、上記のようにして緩慢乾燥させた後そのまま濾過装置に濾過材として使用することもできるが、場合によっては、粒度がかなり小さくなっていたり、逆にかなり大きくなっていたりすることがあり、濾過材に適さないことがある。本発明では、一般に、明礬湯の花の販売に際して使用するパッケージング材すなわち目付量０．０２～０．１ｇ／ｃｍ^２の不織布（ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維製）を通過してしまう細粒と、目の大きさが７ｍｍ×７ｍｍの金網上に残る大粒とを除いたものを使用する。この大粒径のものは、破砕して上記程度の粒径とし、濾過材として使用してもよいことは言うまでもない。

　また、上記の濾過材は、一般に使用されている市販の砂濾過材と併用することもできる。併用態様は特に限定しないが、残土との良好な接触と、良好な濾過とを考慮すれば、混合（均一な混合状態での使用）が好ましい。残土と砂との混合割合は、残土：砂（重量比）≒３０：７０～７０：３０が適している。

　上記の残土または、該残土と市販の濾過用砂とを混合したものは、例えば、上記した湯の花小屋で採取される明礬湯の花を市販するに際して使用されているパッケージング材（小分パック用のパッケージング材）としての不織布を縫製あるいは融着等で袋状にし、この袋内に封入したものを袋のまま、あるいは一部（分散液と最初に接触する側の面）を切り欠いて濾過材とし、これを濾過装置にセットして使用することもできる。

　上記濾過材（残土のみの場合と、砂との混合体の場合を含む。以下、濾過材と言うときは同じ）の使用量は、特に限定しないが、一般には、明礬湯の花を水に分散させ、該分散液１Ｌが０．５～１０時間程度で濾過する量とすることが適している。具体的には、明礬湯の花１００ｇを水０．１～１０Ｌに分散させ、この分散液１Ｌが上記時間で濾過する量、１００～１５００ｇ程度が適している。

　本発明では、赤褐色乃至黄褐色を呈する液を無色透明な液にすることを目的としており、白色の湯の花の場合は、少量の水（具体的には、湯の花１００ｇに対して水０．１～５Ｌ程度）でも十分（淡褐色の濁り水となる）であり、かつ残土も少量（具体的には、上記の分散水量に対して１００～２００ｇ程度）で十分（無色透明な濾液が得られる）である。
　これに対し、赤色の場合は、多量の水（具体的には、湯の花１００ｇに対して水２～１０Ｌ程度）で残土も多量（具体的には、この分散水量に対して２００～１０００ｇ程度）とすることが好ましく、しかも赤色の場合は循環濾過する（１回の濾過操作で得た濾液を再度この残土で濾過する操作を２回～１０回程度繰り返す）ことが好ましく、このような操作により濾液の濁り度は極く低くなり、無色透明な濾液を得ることができる。
　黄金色の場合は、上記の白色と赤色の中間的な水の量及び残土の量で無色透明な濾液とすることができる。

　念のため、特許文献３に沿って、残土を明礬湯の花と共に水に分散し、この分散液を濾過したところ、残土の量が少ないと無色透明になることはなく、多くすると濾紙の詰りにより濾過操作を極めて困難乃至は不可能となり、この傾向は、黄金色、赤色の順で大きくなることが解った。故に、特許文献３の実施例では、備長炭を加えて無色透明を図っているものと解される。
　しかも、特許文献３にも記載のように、残土は溶解性が低く、特許文献３では湯の花と水と残土を混合する際に１００℃に加熱（溶解性を向上させるためと解される）する手法を採っているが、湯の花はもとより、残土にも多量の硫黄分が含くまれており、１００℃もの高温加熱により有毒な揮発成分が大量に発生するのみならず、本発明者の実験の結果、理由は不明であるが褐色がより濃厚になることが確認され、無色透明の液を得るという目的を達成することはできなかった。

　本発明では発想の転換を図って、残土を濾過材すなわち固体で使用し、固体中に湯の花分散液を常圧・常温といった緩慢な条件で通すことにより、固体中の成分と湯の花分散液中の褐色成分とが接触による反応（この反応と共に、該分散液中の超微粒子成分を、同類の成分からなる濾過材としての固体残土に捕捉される現象）を生起していると解され、濾過液（固体との接触液）を無色透明にすることを確認している。
　この固体と褐色成分との接触をより良好にするために、循環濾過回数を多くし（赤色では上記量で１～１０回程度、白色では１～３回程度、黄金色ではこの中間）、濾過速度を緩慢にする（赤色では上記量で１．５～１０時間程度、白色では０．５～３時間程度、黄金色ではこの中間の速度）ことが好ましい。

　上記濾過材による濾過は、常温・常圧下で上記濾過速度・濾過回数となるようにするのが好ましいが、勿論、加圧下での濾過、吸引下での濾過、加圧と吸引との併用下での濾過であってもよい。

　上記残土の強力な還元力（還元作用）は、残土中に閉じ込められている硫黄化合物と考えられる。このことは、上記のように使用済み青粘土残土を加熱すると、特有な硫黄臭（硫化水素臭等）を発することで確かめられる。
　この還元作用（還元反応）により、明礬湯の花中の第二鉄化合物が第一鉄化合物になり、該第一鉄化合物と硫黄とで無色透明の水溶性のキレート化合物をも形成すると考えられる。
　従って、本発明の皮膚外用剤においては、明礬湯の花中に含まれる各種の有用成分がそのまま、液体の状態で含まれることとなり、別府明礬温泉での入浴で得られる効能を、家庭の入浴で簡易に得られることとなる。

〔実施例１〕
　明礬湯の花を５回採取し、新しいもの（青粘土）に交換すべく、掻き採った青粘土残土を、屋外の駐車場（コンクリート）に敷いた防水シート上に広げ、広げた直後（ａｍ９：３０）から数えて５日間天日干しをした。全ての日において、ｐｍ５：００に残土上を防水シートで覆い、周辺を折り曲げ、下側の防水シート下に挟み、ピンチで固定した。翌朝、ａｍ９：３０から天日干し再開となるように、時間を見計らって、この防水シートの取り外し作業を行った。
　なお、４日目と５日目の間が雨天であったため、４日目の天気予報に応じ、４日目の天日干し後、下側の防水シートごと屋外に取り込み、１日おいて５日目の天日干しを行った。
　５日目の天日干しした後のものを青粘土残土とし、該残土を、大粒のもののみ木槌で砕いて、目の大きさが７ｍｍ×７ｍｍの網を通過するもので、０．５ｍｍ×０．５ｍｍの網を通過しないもの（重量が、採取直後の重量より約３５％減少したもの）のみを濾過材として使用した。
　この濾過材１０ｇを濾過装置に敷き込み、本出願人により市販している明礬湯の花（白色・大略粉末状）１０ｇを市販の蒸留水（山栄社製精製水）０．１Ｌに分散させた液（明礬湯の花の濃度９．０９ｗｔ％で、黄褐色を呈していた）を、常温・常圧で濾過した。濾液は、無色透明になっていることが確認された。
　また、濾過は、上記分散液約０．１１Ｌの全量を濾過するのに、１４分程度かかった。
　上記濾液の成分分析結果と、ｐＨ値を表１に示す。

〔実施例２〕
　実施例１で濾過材として使用したものと同じ残土５ｇと濾過材として市販されている砂（日本原料社製ＪＷＷＡ　Ａ－１０３合格品　有効径０．６ｍｍ　均等係数１．４）５ｇを混合し、これを濾過材として使用する以外は実施例１と同様にして白色明礬湯の花分散液の濾過を行った。
　濾過時間は、約１０分で、実施例１より短時間で濾過でき、得られた濾液は透明であったが、極めて淡い黄褐色を呈していた。
　上記濾液の成分分析結果と、ｐＨ値を表１に合わせて示す。

〔実施例３，４〕
　本出願人が市販する明礬湯の花のパッケージング材として使用している目付量０．０９ｇ／ｃｍ^２の不織布（ポリエチレンテレフタレートを主材とし、撥水加工を施していないもの）を、略１５×１５ｃｍの正方形の袋状とし、内部に、実施例１で使用したものと同じ残土１０ｇを封入した袋状濾過材を作製（四周は融着）した。同じく、実施例２で調製した残土と砂の等量混合物１０ｇを封入した袋状濾過材を作製した。
　上記の２種の袋状濾過材を使用する以外は、実施例１，２と同様の濾過を行った。
　濾過時間は残土のみの場合（実施例３）は約１４．５分、残土と濾過砂の等量混合物の場合（実施例４）は約１０．５分と実施例１，２より僅かに長かったが、得られた濾液は実施例３では実施例１と同程度の無色透明であり、実施例４では実施例２よりも透明度が高く、色も薄かった。
　上記濾液の成分分析結果と、ｐＨ値を表１に合わせて示す。

〔実施例５〕
　市販の白色明礬湯の花に代えて、赤色の明礬湯の花を使用し、残土の量を１０ｇ、３０ｇ、５０ｇ、７０ｇ、１００ｇとする以外は、実施例３（これらの量の乾燥残土を撥水加工していない不織布に夫々封入し濾過材として使用）と同様にして濾過した。
　結果は、残土の量を７０ｇと１００ｇにしたものの濾液は極めて淡い黄褐色乃至は無色で済んだ透明となっていた。濾過時間は、残土量が１０ｇで約１５分、３０ｇで約１１分、５０ｇと７０ｇで約８分、１００ｇで約７分と、残土の使用量が多いほど濾過時間は短時間であった。この理由は必ずしも明らかではないが、分散液と乾燥残土が接触すると瞬時に還元反応や捕捉現象が生起し、これらの反応や現象が生起した後の液は粘性が低下し、速やかに濾過が進行するためと推測される。
　上記各残土量における濾液のｐＨ値の変化を表２に合わせて示す。

〔実施例６〕
　赤色明礬湯の花に代えて、黄金色の明礬湯の花を使用する以外は、実施例５と同様にして濾過した。
　結果は、残土の量を５０ｇ、７０ｇ、１００ｇにしたものの濾液は極めて淡い黄褐色乃至は無色で済んだ透明となっていた。濾過時間は１分から１分半程度短時間であったが、大略実施例５と同様の傾向を示した。
　上記各残土量における濾液のｐＨ値の変化を表２に合わせて示す。

〔実施例７〕
　実施例５で調製した赤色湯の花分散液を使用し、残土量を３０ｇとする以外は実施例３と同様にして作成した袋状濾過材を使用して、実施例３と同様の濾過を３回繰り返し（１回目濾液を、１回目濾過済み残土を濾過材として２回目濾過を行い、２回目濾液を、２回目濾過済み残土を濾過材として３回目濾過）行った。
　濾過時間は、１回毎の時間で実施例５の残土量３０ｇと略同程度であり、３回濾過で約３倍の濾過時間であった。
　濾液は、１回目の退色度合と透明度は実施例５の残土量３０ｇの場合と同程度であり、２回目では実施例５の残土量７０ｇの場合に近づき、３回目で際立った変化はないものの確実に向上していることが確認できた。ｐＨは、１～３回目で際立った変化は確認できなかった。
　上記３回目の濾液の成分分析結果と、ｐＨ値を表１に合わせて示す。

〔実施例８〕
　赤色湯の花５ｇと黄金色湯の花５ｇを混合して使用する以外は、実施例７と同様にして３回繰り返し濾過を行った。
　濾過時間は、１回毎の時間で実施例７と略同程度であり、３回濾過で約３倍の濾過時間であった。
　濾液は、１回目、２回目、３回目において、退色度合、透明度とも、実施例７と同様の挙動を示し、ｐＨは１～３回目で際立った変化は確認できなかった。
　上記３回目の濾液の成分分析結果と、ｐＨ値を表１に合わせて示す。

〔参考例１〕
　実施例１で使用したものと同じ残土１０ｇを、実施例１で使用したものと同じ蒸留水１００ｍＬに分散し、濾紙を用いて常温・常圧で濾過して得た濾液（無色透明で、表１に参考例１として示す成分分析結果のもの）約９０ｍＬを、実施例１で調製した白色明礬湯の花分散液１００ｍＬ（明礬湯の花濃度９．０９ｗｔ％）に、注入し、常温・常圧で撹拌したが、退色効果も透明化効果も目視観察で確認できなかった。
　このことから、湯の花分散液を無色透明にする作用をなす残土中の成分は、難溶性乃至は不溶性であって（表１の参考例１参照）、水分を減少させた乾燥残土中に閉じ込められたままとなっており、この乾燥残土に本発明における湯の花分散液を緩慢な条件で接触（固液接触）させることが本発明の目的達成上重要であることが解る。

〔比較例１〕
　実施例１で調製した白色明礬湯の花水１００ｍＬ（明礬湯の花濃度９．０９ｗｔ％）に、実施例１で調製した乾燥残土１０ｇを投入し、撹拌分散させた。
　この分散液の上澄み液の退色効果は余り良好でなかった（赤褐色を呈していた）ので、備長炭粉２０ｇを投入し、撹拌分散させた後、実施例１で使用した濾紙と同じ濾紙により、常温・常圧で濾過した。
　結果は、実施例１と同程度に退色し、透明な濾液となっていることが確認できた。

　以上の実施例の結果、青粘土残土は、乾燥した状態で使用するため粉末の飛散がかなり多量にあることと、この飛散粉末が空気中の湿気（水分）によりかなり強い酸性を示し、作業環境内にある金属製機器類の発錆を促すこと等から、青粘土残土は、不織布製袋に投入して使用することが、作業環境上からも好ましいことを見出した。
　加えて、市販の白色の明礬湯の花も酸性はかなり強く、該湯の花を投入した浴湯であってもアルカリ泉のように（アルカリによるタンパク質の溶解で）ヌルヌル感のある浴湯とはならないものの、沈殿物による浴槽の詰りや、浴用タオルの着色、あるいは残り湯の洗濯機への使用不可能等、各種の問題があり、特に赤色の明礬湯の花においてこれらの問題は大きかったが、本発明による皮膚用外用剤の使用により、これらの問題が悉く解消でき、特に赤色の場合の有用性が顕著であることが明らかとなった。

　本発明の皮膚外用剤は、家庭用の浴槽にそのまま投入して入浴剤として使用できる外、各種の皮膚疾患に効果が期待できるため、皮膚疾患用薬剤の成分としての利用も期待できる。
　また、別府（別府八湯明礬温泉）地区に古くからある明礬鉱脈に依存してきた明礬湯の花の資源である青粘土が枯渇しつつある現状において、本発明で得られる皮膚用外用剤は、同地区に古来から湧き出している明礬温泉と同等の成分を含んでおり、高品質であることは言うまでもなく、しかも取り扱い易い液体の状態で、水が加わる分だけ多量に提供することができる。
　加えて、本発明は、今まで廃棄せざるを得ないとされていた明礬湯の花の結晶採取後の残土を有効利用するものであり、資源枯渇の救済の一助となることは言うまでもない。

Claims

　硫黄泉蒸気を明礬を含む粘土層を通して生成される湯の花を水に分散させ、該分散液を、該湯の花生成に使用された後の残土を濾過材として濾過して得られる濾液よりなることを特徴とする皮膚外用剤。
　前記湯の花が、赤色、黄金色、白色の湯の花をそれぞれ単独で、又は２種以上の適宜の組み合わせで混合したものであることを特徴とする請求項１記載の皮膚用外用剤。
　前記明礬を含む粘土が別府明礬温泉で採取されるものであり、前記湯の花が別府明礬温泉で噴出される硫黄泉蒸気を該粘土層を通して得られる赤色、黄金色、白色の湯の花それぞれを単体で、又は２種以上の組み合わせで混合したものであることを特徴とする請求項１または２に記載の皮膚外用剤。
　前記濾過材が、明礬湯の花を販売する際に該湯の花をパッケージングする不織布製袋に充填したものであることを特徴とする請求項１～３の何れかに記載の皮膚用外用剤。