明 細 書 血中滞留および癌組織特異的薬物送達のためのコンジユゲート 技術分野
本発明は、組織特異的薬物送達システムのコロイダルキヤリア一等として利用で きる、脂質とヒトを含むほ乳類の細胞より分泌される酵素の基質ペプチドと水溶性 高分子との結合体、該結合体の製造法、 該結合体の中間体として有用な保護基を有 していてもよいべプチドー水溶性高分子結合体、該結合体からなるコロイダルキャ リア一、ならびに該コロイダルキャリアーを使用する組織特異的薬物送達システム に関する。 背景技術
一つの分子内に親水性基と疎水性基を有する物質は両親媒性物質と呼ばれ、水と 混合することにより様々な分子集合体を形成する。
両親媒性物質が形成する分子集合体としては、 球状ミセル、 へキサゴナル構造、 ラメラ構造、 へキサゴナル Π構造、 逆ミセル構造等があり、 その物質の H L B (hydrophil ic- l ipophi l ic balance) の程度に依存する。
その中の一つであるラメラ構造を有するリボソームは親水性と疎水性のバラン スが都合よくとれた両親媒性物質を含む脂質二重膜からなり、薬物をリポソーム内 に封入させたキャリア一として広く利用され、安定性と組織への分布を変化させる ことによる薬効の向上が図られている (野島ら (編集), リボソーム(南江堂) )。 しかしながら、 リボソームを静脈内投与すると肝臓 · '脾臓等の細網内皮組織 (R E S ) に取り込まれやすいのが欠点であった。 リボソーム表面を水溶性の高分子で あるポリエチレングリコール (以下 P E Gと記載する) 、 ガンダリオシド GM 1、 ポリビニルアルコール誘導体等で修飾することで血中蛋白質の吸着とそれに伴う マクロファージ等の R E S系の細胞による取り込みを回避することで高い血中滞 留性を獲得することが報告されている (FEBS Let ter, 223, 42, 1987、 FEBS Let ter, 268, 253, 1990、薬剤学. 61, 86, 2001)。
また、血中滞留性にはリボソームの粒子径が大きく影響し、粒子径を 400 nm以 下とすることにより RES系による取り込みを回避して血中滞留性を顕著に向上 させることが可能となる (Pharm. Res., 13, 1704, 1996) 。
さらに、 このような血中滞留性を示す PEG修飾リボソームは E PR (enhanced permeability and retention) 効果により、 血中から癌組織に漏出 ·集積しやすい 特性を有している (Cancer Res., 46, 6387, 1986) 。 ドキソルビシンを封入した P E G修飾リボソームは力ポジ肉腫および乳癌を適応症として欧米で既に上市さ れており、 副作用の軽減と治療効果の点から有用性が報告されている (Drugs, 53, 520, 1997)
しかしながら、担癌マウスにおける検討結果より、薬物封入 PEG修飾リポソ一 ムの集積性と抗腫瘍効果は必ずしも相関しないことが報告されている。これはリポ ソーム表面に存在する PEG分子の影響により標的細胞との相互作用が低下した ことにより薬物の細胞内への送達が損なわれたことが大きな原因であると考えれ る (Clin. Cancer Res., 5, 3645, 1999) 。
このような P E G修飾リボソームの欠点を解決するために P E G修飾リポソ一 ムと標的細胞との相互作用を向上させる試みが行われている。 例えば、 Biophim. Biophys. Acta, 1234, 74-80, 1995には癌細胞特異的な抗体をリボソーム膜表面に 修飾した PEG修飾ィムノリボソームと抗体を PEG分子の先端に修飾したペン ダント型 PEG修飾ィムノリポソ一ムが報告されている。本技術においては、抗体 を用いることによる汎用性への課題が残る。
一方、特表 2001— 50339' 6号公報には、 生物学的表面に特異的に結合 するのに有効な親水性部分とこの親水性部分と生物学的表面の相互作用を遮断す るのに有効な親水性高分子を表面に有するリボソームが開示されている。この方法 によると、生体に投与されたリボソームは所望の生体内分布が達成されるまでは親 水性高分子が有効に機能し、その後親水性高分子を遊離させるための遊離剤を投与 することにより、 細胞表面との特異的な結合性が発揮される。 しかしながら、 この 方法においては親水性高分子を遊離させるために遊離剤を投与する必要があり、実 質的な使用においては遊離剤の効果、 安全性の点で課題が残されている。 また、 特 開平 10— 287554号公報には、環境の相違に依存せず、 生体に投与後経時的
に水溶性高分子がリポソ一ム表面から離脱することによりリポソームの性質を変 化させることができる技術が開示されている。 さらに、 Nature Bi otechno l ogy, 17, 775, 1999には、 ポリエチレングリコールと脂質との結合体の脂質部分のアルキル 鎖長を変えることにより、膜融合速度を調節可能な P E G修飾融合性リボソームが 開示されている。 しかしながら、 これらの技術においては、 疾患部位にリボソーム が到達する前に水溶性高分子が脱離する可能性があり、充分な効果を発揮するには 障害となることが懸念される。
さらにまた、 Advanced Drug De l ivery Revi ews, 53, 265-272, 2001には炎症部 位付近で発現するエラスタ一ゼによりぺプチドとジォレオイルホスホエタノール ァミン (脂質) に分解されるペプチド一脂質の結合体、 および該結合体を構成成分 とするリボソームが開示されている。 当該リポソ一ムは、 ペプチド部分が切断され ることにより、中性付近の p Hでァニオン性からカチオン性に変換する性質を有し ており、 この性質により細胞膜との融合を示し、細胞質内への内容物の送達を達成 するものである。 しかしながら、 血中滞留性に関しては謳われておらず、 標的細 胞への集積性等を考慮した場合には十分な技術とはいえず、改善の余地が残されて いる。 また用いられているペプチド鎖は短いものであり、'他物質との結合等を施し た場合、 他物質の影響を受け、 ペプチド部分が切断されないことも懸念される。 よって、 これまで水溶性高分子による癌組織への集積性を備え、 かつ標的細胞と の相互作用を低下させず、標的細胞内への良好な薬物送達性を達成した技術は知ら れていない。
発明の開示
本発明の目的は、製剤に封入された薬物の治療効果を向上させるために疾患部位 にて分泌される酵素を利用して、製剤表面に修飾した水溶性高分子を切断させるこ とにより製剤の特性を変化させることのできる結合体、該結合体の製造法、 該結合 体の中間体として有用な結合体、該結合体からなるコロイダルキャリア一、 ならび に該コロイダルキヤリァ一を利用する組織特異的薬物送達システムを提供するこ とにある。
癌部位において、転位性癌細胞が IV型コラーゲンを分解する酵素を分泌すること が見出されており (Nature, 284, 67, 1980) .、 現在に至るまで癌あるいは炎症部
位において分泌される酵素としてマトリックスメタ口プロテア一ゼ(以下 MMPと 記述する) が相次いで明らかにされている (生化学, 68, 1791, 1996) 。 特に間質 型コラゲナーゼ (MMP— 1) 、 ゼラチナーゼ一 A (MMP- 2) 、 ゼラチナーゼ — B (MMP— 9) 、 ストロムライシン一 1 (MMP— 3) 、 ストロムライシン一 2 (MMP— 10) 、 ストロムライシン一 3 (MMP- 1 1)、 マトリライシン (M MP— 7)、 メタ口エラスターゼ(MMP— 12) 、 MMP- 26は癌細胞の浸潤 · 転移に大きく関与し、 癌細胞表面において活性化することが報告されている (Cancer Res., 55, 3263, 1995、生化学, 68, 1791, 1996、 J. Biol. Chem. , 277, 35168, 2002) 。
このような状況下、本発明者らは疾患部位にて分泌される酵素の代表例として癌 あるいは炎症部位において分泌される ΜΜΡの基質べプチドに着目し、該ぺプチド に水溶性高分子および脂質を修飾した結合体を合成し、該結合体の特性につき検討 した結果、 該結合体は結合体形成の際にもその特性が失われず、 酵素特異性、 酵素 分解速度等が保持されており、さらにこの脂質とぺプチドと水溶性高分子結合体を 用いてコロイダルキヤリァ一としての製剤化が可能であることを知見して、本発明 を完成するに至った。
本発明によれば、脂質と癌あるいは炎症部において分泌される酵素の基質べプチ ドと水溶性高分子を用いることで、癌あるいは炎症等の標的疾患部位に製剤を到達 させたあと、 その標的疾患部位内で製剤からの水溶性高分子が特異的に脱離する。 また、製剤からの水溶性高分子の脱離により製剤の特性の変化により標的細胞への 薬物送達性を達成することが可能となる。
ここに以下の本発明記載において使用する、本発明結合体と該結合体に関する物 質の名称と記号を表記する。
I :脂質とペプチドと水溶性高分子の結合体
I -a :脂質一ペプチド一水溶性高分子の結合体
I -b :水溶性高分子一ペプチド一脂質の結合体
I I :水溶性高分子とペプチドの結合体
I I一 a: N末端が活性化されていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を 有していてもよいペプチド一水溶性高分子結合体
I I - b : C末端が活性化されていてもよく、 C一末端以外の官能基で保護基 を有していてもよい水溶性高分子一べプチド結合体
I I I :脂質
I I I— a:無水カルボン酸残基で置換されていてもよく、 カルボキシル基が 活性化されていてもよい脂質
Γΐ I一 b :活性化されていてもよいアミノ基を含有する脂質
I V:ぺプチド
I V - a: C末端が活性化されていてもよく、 C末端以外の官能基で保護基を 有していてもよいペプチド
I V— b: N末端が活性化されていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を 有していてもよいペプチド
V:水溶性高分子
V— a:ペプチドの力ルポキシル基またはその活性化基と反応する官能基を含 み、一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、他方端が一 NH 2、 または一低級アルキル— N H 2から選択された活性化基で置換されて いてもよいポリエチレングリコール、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシ ェチルアミノ酸、およびポリビニルピロリドンからなる群より選択さ れ' 水溶性高分子 ' .
V - b:一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、他方端が一 C O—低級ァ ルキレン一 C O O—ジカルポン酸ィミジル、 -低級アルキレン— C O 0—ジカルポン酸ィミジル、および一低級アルキルージカルポン酸ィ ミジルからなる群より選択された活性化基で置換されていてもよい , ポリエチレングリコール、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシェチルアミ ノ酸、およびポリビニルピロリドンからなる群より選択される水溶性 高分子
V I :保護基を有していてもよいペプチドと水溶性高分子との結合体(製造中間 体)
V I - a :保護基を有していてもよいペプチド一水溶性高分子結合体
V I - b :保護基を有していてもよい水溶性高分子一ペプチド結合体
V I I :脂質とペプチドの結合体
V I I— a: C—末端が活性化されていてもよく、 C一末端以外の官能基で保 護基を有していてもよい脂質一ペプチド結合体
V I I— b: N—末端が活性化されていてもよく、 N—末端以外の官能基で保 護基を有していてもよい脂質一ペプチド結合体
, V I I I :脂質とペプチドの結合体
V I I I - a :保護基を有していてもよい脂質—ペプチド結合体
V I I I— b :保護基を有していてもよい脂質—ペプチド結合体 すなわち、 本発明は、 '
. A:リン脂質、 高級脂肪酸、 高級脂肪族ァミン、 糖脂質、 セラミド、 コレステ ロール、グリセリドおよびそれらの誘導体からなる群より選択される脂質、 B :ヒトを含むほ乳類の細胞より分泌される酵素の基質ペプチド、
C:一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、 他方端が一 NH 2、 一低級 アルキル一 'ΝΗ 2、 一 C O—低級アルキレン一 C O O—ジカルボン酸イミ ジル、 一低級アルキレン— C〇〇—ジカルポン酸ィミジル、および一低級 アルキル—ジカルポン酸ィミジルからなる群より選択された活性化基で 置換されていてもよいポリエチレングリコ一ル、ポリアミノ酸、ポリヒド ' ロキシェチルアミノ酸、およびポリビニルピロリドンからなる群より選択 される水溶性高分子、 であり、
Bの両端に Aおよび Cがペプチド結合により結合された、 A、 Bおよび Cの結 合体 (I ) 、
. A、 Bおよび Cの結合体が、 A— B— C ( I— a )である上記 1記載の結合体、 . A、 Bおよび Cの結合体が、 C— B— A ( I— b )である上記 1記載の結合体、 .酵素の基質べプチドがマトリックスメタ口プロテア一ゼ、セリンプロテア一ゼ、 システィンプロテアーゼ、およびァスパルティックプロテア一ゼからなる群よ り選択される酵素の基質ペプチドである上記 1に記載の結合体、
5 . 酵素の基質べプチドがマトリックスメタ口プロテア一ゼの基質べプチドであ る上記 4に記載の結合体、
. 酵素の基質ペプチドが MMP— 1、 MMP— 2、 MMP— 3、 MMP— 7、 MMP— 9、 MMP- 10、 MMP-11、 MMP- 12まこは MMP- 26の基質ぺプ チドである上記 5記載の結合体、
. 酵素の基質ペプチドが、 下記一般式(IX)で示されるアミノ酸配列を有する上 記 1に記載の結合体、
-X-AA1 -AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-AA7-AA8- AA9 -Y- (IX)
(配列番号中の記号は以下の意味を表す。
X:結合、 無水カルボン酸残基、 または 1〜5個のアミノ酸残基、
AA1 :結合、 または G 1 y残基、
AA2 : P r oまたは Hyp残基、
AA3 : L e u、 G 1 n、 A 1 aまたは G 1 y残基、
AA4 : G 1 y、 A 1 a、 G 1 nまたは S e r残基、
AA5 :アミノ酸残基、
AA6 :アミノ酸残基、
AA7 :'G l y、 S e r、 または A 1 a残基、
AA8 :結合、 またはアミノ酸残基、
AA9 :結合、 イミノ基 (一 NH—) 、 一低級アルキレン—イミノ基または G y残基、
Y :結合、 または 1〜5個のアミノ酸残基)
. Xおよび Zまたは Yがそれぞれ独立してアミノ酸残基を示す場合のアミノ酸残 基が、 天然アミノ酸残基であり、 AA 5のアミノ酸残基が、 I 1 e、 Me t、 Va l、 Leu, Ty r、 Chg、 Va 1および P h e残基からなる群より選 択されたアミノ酸残基であり、 AA 6のアミノ酸残基が、 A l a、 Tr p、 A r g、 Leu, H i s, G 1 n、 Va 1および P h e残基からなる群より選択 されたアミノ酸残基であり、 AA 8がアミノ酸残基を示す場合のアミノ酸残基 が、 Tr p、 Ar g、 G 1 n、 Th r、 P r o、 G 1 yおよび L e uからなる 群より選択されたアミノ酸残基である上記 7記載の結合体、
. 酵素の基質ペプチドが 配列番号 1、 配列番号 2、 配列番号 3、 配列番号 4、
配列番号 5、 配列番号 6、 配列番号 7、 配列番号 8、 配列番号 9、 配列番号 1 0、 配列番号 1 1、 配列番号 1 2、 配列番号 1 3、 配列番号 1 4、 配列番号 1 5、 配列番号 1 6、 配列番号 1 7、 配列番号 1 8、 配列番号 1 9または配列番 号 2 0のアミノ酸配列を含み、マトリックスメタ口プロテア一ゼまたはセリン プロテアーゼの酵素基質と'しての活性を示す基質ペプチドである上記 8記載 の結合体、
. 酵素の基質ペプチドがセリンプロテア一ゼの基質ペプチドである上記 4に 記載の結合体、
. 酵素の基質ペプチドが Pros tate- spec i f ic ant igen, ゥロキナーゼ型プラス ミノーゲンァクチべ一夕一、 組織型プラスミノ一ゲンァクチべ一夕一、 プラ スミン、 トリプシンおよび組織力リクレインの基質ペプチドである上記 1 0 記載の結合体、
. B:ヒトを含むほ乳類の細胞より分泌される酵素の基質ペプチド、
C:一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、 他方端が一 NH 2、 一低 級アルキル一 N H 2、 — C O—低級アルキレン一 C 00—ジカルポン酸ィ ミジル、 一低級アルキレン— C〇〇—ジカルポン酸ィミジル、および—低 級アルキル—ジカルポン酸ィミジルからなる群より選択された活性化基 で置換されていてもよいポリエチレングリコール、ポリアミノ酸、ポリヒ ドロキシェチルアミノ酸、およびポリビニルピロリドンからなる群より選 択される水溶性高分子、 であり、
Bと Cがべプチド結合により結合された、 Bと Cの結合体、
. 上記 1に記載の結合体 (I ) からなるコロイダルキャリア一、
. 製剤形態がリボソーム、 ェマルジヨン、 ミセル、 またはナノパーティクル の形態である上記 1 3記載のコロイダルキャリアー、
. 結合体 (I ) の含有率が、 0 . 0 1〜1 0 0モル%である上記 1 4記載の . 上記 1 3に記載の結合体 (I ) のコロイダルキャリア一と、 薬物とを含有 し、 疾患組織から特異的に分泌される酵素に感応して前記結合体の酵素基質 :部分が切断されることにより、 担持されている薬物が標的組織に放
出されるように構成してなる組織特異的薬物送達
に関する。
以下、 本発明結合体、 該結合体の製造法、 該結合体の中間体としての結合体、 該 結合体からなるコロイダルキャリアー、該コロイダルキャリアーを使用する組織特 異的薬物送達システムにっき詳細に説明する。 ' '
( 1 ) 本発明結合体
本発明の 「脂質とペプチドと水溶性高分子との結合体 (I ) 」 には、 その結合の 向きに従い、 脂質一ペプチド一水溶性高分子 (I _ a ) の結合体と、 水溶性高分子 一ペプチド—脂質 (I一 b ) の双方が存在し、 本発明にはその双方の結合体が包含 される。
本発明で用いられる脂質とは、分子中に長鎖脂肪酸または類似の炭化水素鎖をも ち、 生物体内に存在するか生物に由来するような物質を指し、 上記結合体を形成す る成分として用いられる脂質であれば特に限定されない。なお、結合体において「脂 質」 と表記したものは、 前記の脂質が結合した脂質残基を意味する。 ペプチドや水 溶性高分子においても同様である。 力、かる脂質としては、 例えば、 リン脂質、 脂肪 酸、糖脂質、グリセリド、コレステロール、およびそれらの誘導体等が挙げられる。 リン脂質としては、 ホスファチジルコリン類、 例えば、 卵黄ホスファチジルコリ ン、 水添卵黄ホスファチジルコリン、 大豆ホスファチジルコリン、 水添大豆ホスフ ァチジルコリン、 ジラウロイルホスファチジルコリン、 ジミリストイルホスファチ ジルコリン、 ジォレオイルホスファチジルコリン、 ジパルミトイルホスファチジル コリン、 ジステアロイルホスファチジルコリン等、 ホスファチジルエタノールァミ ン類、 例えば、 卵黄ホスファチジルエタノールァミン、 大豆ホスファチジルェタノ ールァミン、 ジラウロイルホスファチジルエタノールァミン、 ジミリストイルホス ファチジルエタノールァミン、 ジォレオイルホスファチジルェ夕ノールァミン、 ジ タノ一ルァミン等、 ホスファチジルグリセ口ール類、 例えば、 卵黄ホ:
グリセロール、 ジラウロイルホスファチジルグリセロール、 ジミリストイルホスフ ァチジルグリセロール、 ジォレオイルホスファチジルグリセロール、 ジパルミトイ
ルホスファチジルグリセロール、
ホスファチジルイノシトール類、 例えば、 水添卵黄;
大豆ホスファチジ^/イノシト一レ、
ミリストイルホスファチジルイノシトール、ジォ: ルイノシトール等、 ホスファチジルセリン類、 例えば、 リン、 ジパルミトイルホスファチジルセリン、 ジステアロイルホスファチジルセリ ン等、 ホスファチジン酸類、 例えば、 ジラウロイルホスファチジン酸、 ジミリスト ィルホスファチジン酸、 ジォレオイルホスファチジン酸、 ジパルミトイルホスファ チジン酸、 ジステアロイルホスファチジン酸等、 カルジォリピン類、 例えば、 テト ララウロイルカルイオリピン、 テトラミリストイルカルイオリピン、 テトラオレォ ィルカルイオリピン、 テトラパルミトイルカルイオリピン、 テトラステアロイルカ ルイオリピン等、 スフインゴミエリン等およびそれらの誘導体が挙げられる。脂肪 酸としては、 脂肪酸類、 例えば、 ラウリン酸、 ミリスチン酸、 ォレイン酸、 パルミ チン酸、 ステアリン酸等、 脂肪族ァミン類、 例えば、 ラウリルァミン、 ミリスチル ァミン、 パルミチルァミン、'ォレオイルァミン、 ステアリルァミン、 ジラウリルァ ミン、 ジミリスチルァミン、 ジパルミチルァミン、 ジォレオイルァミン、 ジステア リルアミン等、 脂肪族アルコール類、 例えば、 ラウリルアルコール、 ミリスチルァ ルコール、 ォレオイルアルコール、 パルミチルアルコール、 ステアリルアルコール 等、 およびそれらの誘導体および塩類が挙げられる。 '
糖脂質としては、 セラミド、 スフインゴシン、 ガンダリオシドおよびそれらの誘 導体を挙げられる。
グリセリドとしては、 脂肪酸グリセリド、 例えば、 ジラウロイルグリセ口一ル、 ジミリストィルグリセ口一ル、 ジォレオイルグリセロール、 ジパルミトイルグリセ ロール、 ジステアロイルグリセロール等が挙げられる。脂肪族ジメチルアンモニゥ ムプロパン類としては、例えばジミリストイルジメチルアンモニゥムプロパン、 ジ ォレオイルジメチルアンモニゥムプロパン、ジパルミトイルジメチルアンモニゥム
:ニゥムプロパン、 ジォレオイルォキシジ
ドロクロライド等、脂肪族トリメチルアンモニゥムプロ パン類、例えばジミリストィルトリメチルアンモニゥムプロパン、 ジォレオイルト リメチルアンモニゥムプロパン、ジパルミトイル卜リメチルアンモニゥムプロパン、 ジステアロイルトリメチルアンモニゥムプロパン等およびそれらの誘導体を挙げ ることができる。
コレステロールとしては、 コレステロールおよびその誘導体が挙げられる。
—ルァミン、ジパルミトイ ールァミン、ジミリストィルホスファチジルエタノールァ ミン、 ジォレオイルホスファチジルエタノ一ルァミン、 ジラウロイルホスファチジ ルセリン、 ジミリストイルホスファチジルセリン、 ジォレオイルホスファチジルセ リン、 ジパルミ卜ィルホスファチジルセリン、 ジステアロイルホスファチジルセリ ン、 ラウリルァミン、 ミリスチルァミン、 パルミチルァミン、 ォレオイルァミン、 ステアリルァミン、ジラウリルァミン、ジミリスチルァミン、ジパルミチルァミン、 ジォレオイルァミン、 ジステアリルァミンが好ましく、更にジパルミトイルホスフ ァチジルエタノールァミン、 ジステア口ィルホスファチジルェ夕ノ一ルァミン、 ジ パルミチルァミン、 ジステアリルァミンが好ましく、 ジパルミトイルホスファチジ ルエタノールァミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールァミンが最も好ま しい。 '
本発明結合体を構成するペプチド残基としては、ヒトを含むほ乳類の疾患組織か ら特異的に分泌される酵素に感応して開裂する酵素基質ペプチド残基であれば特 に制限はなく、このような酵素基質べプチド残基を含む本発明結合体からなる 口 ィダルキャリア一と、薬物とを含有し、疾患組織から特異的に分泌される酵素に感 応して前記結合体の酵素基質べプチド部分が切断されることにより、標的細胞と相 互作用を起こし、担持されている薬物が標的細胞内に放出されるように構成されて なる組織特異的薬物放出システムとしうる酵素基質べプチドの残基が使用される。 特にこのような酵素基質べプチド残基としては、例えば癌組織および zまたは炎 症部位において分泌される酵素の基質べプチドやその数個 (好ましくは 1〜 3個) のアミノ酸が置換、 欠失、 揷入された同効の改変ペプチド (以下機能的等価改変べ プチド) の残基が好ましく、 酵素基質ペプチド残基フ
ーゼ、 セリンプロテアーゼ、 システィンプロテアーゼ、 およびァスパルティックプ 口テアーゼによって開裂する酵素基質ペプチドまたはその機能的等価改変べプチ ドの残基、 とりわけマトリックスメタ口プロテア一ゼの基質ペプチド、 セリンプロ テア一ゼの基質ペプチド、またはそれらの等価改変ペプチドの残基がさらに好適で ある。特に、このような酵素基質ペプチド殘基としては、 MMP— 1、 MMP— 2、 MMP - 3、 MMP - 7、 MMP - 9、 MMP - 10、 MMP - 11、 MMP - 1 2、 または MM P- 26の基質べプチドの残基、 あるいはこの機能的等価改変ぺプ チドの残基、 あるいは Prostate- specific antigen, ゥロキ^ "一ゼ型プラスミノ一 ゲンァクチべ一ター、 組織型プラスミノーゲンァクチべ一夕一、 プラスミン、 トリ プシンあるいは組織力リクレインの基質べプチドが好ましい。
また、 ペプチド鎖の切断が容易となるように、水溶性高分子の影響を受けない程 度に長いペプチド鎖が好ましい。具体的には 5個から 19個が好ましく、 さらに好 ましくは 6個から 14個である。 最適には 9個である。
MMP関連の、 このような残基を式示すれば、 下記一般式 (I X) で示される残 基が挙げられる。
-X-AA1-AA2-AA3-AA -AA5-AA6-AA7-AA8- AA9 -Y- (IX)
(配列番号中の記号は以下の意味を表す。
X:結合、 無水カルボン酸残基、 または 1〜5個のアミノ酸残基、
AA1 :結合、 または G 1 y残基、
AA2 : P r oまたは Hy p残基、
AA3 : Leu, G 1 n、 A 1 aまたは G 1 y残基、
AA4 : G 1 y、 A 1 a、 G 1 nまたは S e r残基、
AA5 :アミノ酸残基、
AA6 :アミノ酸残基、
AA7 : G 1 y、 S e r、 または A 1 a残基、
AA8 :結合、 またはアミノ酸残基、 t AA9 :結合、 イミノ基 (一 NH— ) 、 一低級アルキレン—イミノ基または G 1 y残基、
Y :結合、 または 1〜 5個のアミノ酸残基)
ここに、 Xおよび Ζまたは Υがそれぞれ独立してアミノ酸残基を示す場合のァミ ノ酸残基は天然アミノ酸残基であるのが好ましく、 ΑΑ5のアミノ酸残基が、 I 1 e、 Me t、 Va l、 Leu, Ty r、 Chg、 Va 1および P h e残基からなる 群より選択されたアミノ酸残基であるのが好ましく、 AA 6が示すアミノ酸残基が、 A 1 a、 T r p、 Ar g、 Le u, H i s, G 1 n、 V a, 1および P h e残基から なる群より選択されたァミノ酸残基であるのが好ましく、 A A 8がァミノ酸残基を 示す場合のアミノ酸残基が、 Tr p、 Ar g、 G l n、 Th r、 P r o, G 1 yお よび L e uからなる群より選択されたアミノ酸残基であるのが好ましい。
特に本発明の MMP関連の酵素基質ペプチド残基としては、多くの MMP関連酵 素基質ペプチドとして知られている酵素基質の中でも、配列番号 1 (P r o-G 1 n-G 1 y- I 1 e -A 1 a— G l y - Tr p) 、 配列番号 2 (P r o-Leu- G 1 y-Me t一 Tr p— S e r— Ar g) 、 配列番号 3 (P r o— Le u— G l y-Va 1— Ar g— G l y) 、 配列番号 4 (P r o-L e u-G 1 y-L e u- A 1 a-G 1 y) 、 配列番号 5 (P r o— Leu— G l y— Ty r— Leu— G l y)、配列番号 6 (P r o— G i n— G l y— I l e— A l a— G l y— Ar g)、 配列番号 7 (P r o-G 1 n-G 1 y- I 1 e - A 1 a - G 1 y - G 1 n) 、 配列 番号 8 (P r o-G 1 n-G 1 y- I l e— A l a— G l y— Th r) 、 配列番号 9 (P r o— G i n— G l y - Le u— A l a— G l y— G i n) 、 配列番号 10 (P r o— L eu_G l y— I 1 e - A 1 a - G 1 y - G 1 n)、配列番号 11 (P r o-L e u-G 1 y- I 1 e -A 1 a— G l y— P r o) 、 配列番号 12 (P r o-L e u-G 1 y-L e u-H i s— A l a— Ar g) 、 配列番号 13 (P r o — Leu— G l y,— Le u— Tr p— A 1 a— Ar g) 、 配列番号 14 (P r o— L eu— A l a— Phe— Tr p_A l a— Ar g) 、 配列番号 15 (P r o-G I n— G i n— P he— Ph e— G l y— Leu) 、 配列番号 16 (G 1 y-P r o-G 1 n-G 1 y- I 1 e -A 1 a— G l y— Tr p— G l y) 、配列番号 17 (G l y - P r o - Leu— G l y - I 1 e -A 1 a - G l y— G i n - G l y)、 配列番号 18 (G l y— P r o— G i n— G l y— I 1 e— Tr p— G l y— G l n-G 1 y) 、 配列番号 19 (G l y— Hyp— A l a— S e r— Chg— G i n
一 S e r— L e u— G l y)および配列番号 20 (G l y— P r o— G l y_Ar g-Va l -Va l -G l y-G l y-G l y)の MM P関連酵素基質ペプチドあ るいはこれらのペプチドの機能的等価改変ペプチド、特にこれらの配列を含み、 そ の N末端および/または C末端の一方、 または双方に G l y残基を有し、 かつマト リ,ックスメタ口プロテアーゼまたはセリンプロテァ一ゼの酵素基質としての活性 を示す基質 プチド (G 1 y導入機能的等価改変ペプチド) の残基が好ましい。 ぺプチドについては、固相ぺプチド合成法に従い合成することができる。例えば、 ァミノ基の力ルポキシル端を不溶性樹脂の固相に共有結合で結合しておき、同一容 器中でアミノ端側に順次ペプチド結合を延長していく。その間、 中間体の精製も同 一容器中で行い、最後に求めるペプチドを合成したところで、 ペプチド鎖を固相よ り切り離すことにより目的のぺプチドを得ることができる。
本発明における水溶性高分子としてはポリアルキレングリコール、ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシアルキルアミノ酸、 ビニル系高分子が挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、 ポリメチレンダリコール、 ポリエチレング リコ一ル、 ポリ一 n—プロピレングリコール、 ポリ— i s o—プロピレングリコ一 ルが挙げられる。
ポリアミノ酸としては、 ポリアラニン、 ポリアルギニン、 ポリアスパラギン、 ポ リアスパラギン酸、 ポリシスティン、 ポリグルタミン、 ポリグルタミン酸、 ポリグ リシン、 ポリヒスチジン、 ポリイソロイシン、 ポリロイシン、 ポリリジン、 ポリメ チォニン、 ポリフエ二ルァラニン、 ポリプロリン、 ポリセリン、 ポリスレオニン、 ポリトリプ卜ファン、 ポリチロシン、 ポリパリンが挙げられる。
ポリヒドロキシアルキルアミノ酸としては、 ポリヒドロキシメチルアミノ酸、 ポ リヒドロキシェチルアミノ酸、 ポリヒドロキシプロピルアミノ酸、 ポリヒドロキシ ブチルアミノ酸を挙げられ、具体的にはポリヒドロキシェチルァスパラギン酸、 ポ キシェチルリジン、 が挙げられる。
ビニル系高分子としては、 ポリビニルアルコール、 ポリビニルメチルエーテル、 ポリビエルピロリドン、 ポリビエルォキサゾリドン、 ポリビニルメチルォキサゾリ ドン、ポリビニルァミン、ポリ一 2—ビニルピリジン、ポリ一 4一ビニルピリジン、
ポリ一 N—ビニルサクシンイミド、 ポリ一 N—ビニルホルムアミド、 ポリ一 N—ビ 二ルー N—メチルァセ卜アミドが挙げられる。
これらの中でもポリエチレングリコール、ポリヒドロキシェチルァスパラギン酸、 ポリヒドロキシェチルグルタミン酸、 ポリビニルアルコ一ル、 ポリビエルピロリド ンが好ましく、更にポリエチレングリコール、 ポリヒドロキシェチルァスパラギン 酸、 ポリヒドロキシェチルグルタミン酸が好ましく、 ポリエチレングリコールがと りわけ好ましい。
水溶性高分子の末端置換基としては、 _OH、 — O— CH3、 -CH2CH2-0 H、 一 NH2、 一 CH2CH2_NH2、 一 (CH2) 3 - NH2、 _0— CH2CH2 — NH2、 _〇一 (CH2) 3 - NH2、 — S - CH2CH2 - N,H2、 一 02CNH_ CH2CH2— NH2、 -OCO-CH (低級アルキル) 一 NH2、 _〇— CH2_C
0— NH— NH3C 1、 一 SH、 一 C OOH、 一 O C〇一 C H2 C H 2— C〇〇H、 — O— CH2— COOH、一 O— CH2CH2— C〇OH、一〇CO— NH— CH (低 級アルキル) _C〇〇H、 一 CO〇ージカルポン酸ィミジル、 —〇CO_CH2C H2— C〇〇一ジカルポン酸ィミジル、 一 NH— CO— CH2CH2— COO—ジカ ルポン酸ィミジル、 一 O— CH2CH2— COO—ジカルポン酸ィミジル、 —0— C H2— COO—ジカルポン酸ィミジル、 -OCO-NH-CH (低級アルキル) 一 COO—ジカルポン酸ィミジル、 一 O— CH2—エポキシ ル、 — OCO—イミダ ゾ一ル、 _OC〇一二トロフエニル、 _OS02— CH2— CF3、 一〇一 CH2C H2— CH〇、 一〇一 CH2CH2— NCO、 一 O— CH2CHCH2、 一〇2— CC HCH2、 — 02CC (CH3) CH2、 _S02 - CHCH2、 — NH—CO - CH2
1、 一マレイミジル、 一 S— S—オルトピリジル、 一ピオチンが挙げられる。
本発明における水溶性高分子の平均分子量は 150〜 50, 000のものが用い られ、好ましくは 200〜15, 000が用いられる。更に好ましくは 500〜5, 000が用いられる。
本発明における無水カルボン酸としては、 無水マレイン酸、 無水コハク酸、 無水 シトラコン酸、 無水ダルタル酸、 無水酢酸、 無水フタル酸等が挙げられる。
本発明におけるヒトを含むほ乳類の細胞より分泌される酵素とは、特に癌組織お よび/または炎症部位において分泌される酵素を意味し、例えばマトリックスメタ
口プロテアーゼ、 セリンプロテア一ゼ、 システィンプロテアーゼ、 およびァスパル ティックプロテアーゼが挙げられる。 '
マトリックスメタ口プロテアーゼとしては、 例えば MMP— 1、 MMP— 2、 M MP - 3、 MMP - 7、 MMP - 8、 MMP - 9、 MMP - 10、 MMP - 1 1、 MMP- 12、 MMP- 13、 MMP— 14、 MMP— 1 5、 MMP - 16、 MM P - 17、 MMP_ 18、 MMP— 19、 MMP— 20、 MMP— 2 1、 MMP— 23、 MMP— 24、 MMP- 25、 MMP— 26、 MMP— 28等が挙げられる。 セリンプロテアーゼとしては、 例えば Prostate- specific antigen, ゥロキナ一ゼ 型プラスミノーゲンァクチべ一ター、組織型プラスミノーゲンァクチべ一ター、 プ ラスミン、 トリプシンおよび組織力リクレイン、 キモトリブシン、 亍づシン G、 エラス夕一ゼ、 トロンビンが挙げられる。 システィンプロテアーゼとしては、 カテ プシン B、 カテブシン H、 カテブシン Lが挙げられる。 ァスパルティックプロテア ーゼとしては、 カテブシン D、 カテブシン Eが挙げられる。
(2) 本発明結合体の製造法
本発明の結合体 (I) 、 特に (I _a) および (I一 b) 、 並びにこれらの中間 体は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、 種々の公知の合 成法を適用して製造することができる。 その際、 官能基の種類によっては、 当該官 能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化 可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能 基としては例えばアミノ基、 水酸基、 カルボキシル基等であり、 それらの保護基と しては例えばグリーン(T. W. Greene)及びウッツ(P. G,. M. Wuts)著、 rprotective Groups in Organic Synthesis (第 3版、 1999年) J に記載の保護基を挙げることが でき、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、 当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、 あるいは所望 の基に転化することにより、 所望の化合物とすることができる。
本発明の脂質とペプチドと水溶性高分子との結合体 (I) は、 N末端が活性化さ れていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を有していてもよいペプチド一水溶 性高分子結合体 (I I—a) と、 無水カルボン酸残基で置換されていてもよく、 力 ルポキシル基が活性化されていてもよい脂質 (I I I— a) とを反応せしめる力
または C末端が活性化されていてもよく、 C一末端以外の官能基で保護基を有して いてもよい水溶性高分子一ペプチド結合体(I I一 b) と、 活性化されていてもよ ぃァミノ基含有の脂質 (I I I一 b) と反応せしめ、 必要により保護基を除去する ことにより製造される。
本発明結合体 (I) は、 また一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、 他方 端が一 NH2、 一低級アルキル— NH2、 _ CO—低級アルキレン—COO—ジカル ボン酸ィミジル、 一低級アルキレン一 COO—ジカルポン酸ィミジル、 および一低 級アルキルージカルポン酸ィミジルからなる群より選択された基で置換されてい てもよいポリエチレンダリコール、ポリアミノ酸、ポリヒドロキシェチルアミノ酸、 およびポリビニルピロリドンからなる群より選択される水溶性高分子(V— a) と を反応せしめるか、 または一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、他方端が それぞれ保護基を有していてもよい _NH2、 一低級アルキル一 NH2、 — CO—低 級アルキレン一 C O O—ジカルポン酸ィミジル、一低級アルキレン— C〇 0—ジカ ルポン酸ィミジル、およびー俾級アルキル—ジカルポン酸ィミジルからなる群より 選択された基で置換されていてもよいポリエチレングリコール、 ポリアミノ酸、 ポ リヒドロキシェチルアミノ酸、およびポリビニルピロリドンからなる群より選択さ れる水溶性高分子(V— b) とを反応せしめ、 必要により保護基を除去することに より製造される。
具体的には、'本発明結合体( I )の内、脂質一ペプチド一水溶性高分子結合体( I 一 a) と、 水溶性高分子一ペプチド一脂質結合体 (I一 b) とに分け、 原料化合物 の製法と共に、 以下詳細に説明する。
製造法としては、以下第 1製造法から第 4製造法まで 4種の製造方法を選択する ことができ、 それぞれ第 1工程と第 2工程に分けられる。
第 1製造法
第一工程
ペプチド1 + 水溶性高分子1 → ペプチド2—水溶性高分子 (I V - a) (V - a) (V I - a) 第二工程 ,
必要により N末端保護基の除去、 N末端活性化
ペプチド2—水溶性高分子 →
(V I - a ) ぺプチド 3 _水溶性高分子 + L i p 1 →L i 一べプチド一本溶性高分子
( I I - a ) ( I I I - a ) (卜 a )
(式中、 ペプチド1は、 C末端が活性化されていてもよく、 C末端以外の官能基 で保護基を有していてもよペプチドを、 水溶性高分子1はペプチドの力ルポキシル 基またはその活性化基と反応する官能基を含み、一方端がメトキシ基で置換されて いてもよく 他方端が一 NH 2、 一低級アルキル一 NH 2からなる群より選択された 活性化基で置換されていてもよいポリエチレングリコ一ル、 ポリアミノ酸、 ポリヒ ドロキシェチルアミノ酸、およびポリビニルピロリドンからなる群より選択される 水溶性高分子を、 ペプチド2は保護基を有していてもよいペプチド残基を、 ぺプチ ド 3は N末端が活性化されていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を有してい てもよいペプチド残基を、 水溶性高分子は水溶性高分子残基を、 脂質1は無水カル ボン酸残基で置換されていてもよく、 力ルポキシル基が活性化されていてもよい、 リン脂質、 高級脂肪酸、 高級脂肪族ァミン、 糖脂質、 セラミド、 コレステロール、 グリセリドおよびそれらの誘導体からなる群より選択される脂質を、脂質は開裂し た無水カルボン酸残基を介在基として含んでいてもよい、 リン脂質、 高級脂肪酸、 高級脂肪族ァミン、 糖脂質、 セラミド、 コレステロール、 グリセリドおよびそれら の誘導体からなる群より選択される脂質の残基を、ペプチドは保護基を有していて もよいペプチド残基を意味する)
第一工程
本反応は、 C末端が活性化されていてもよく、 C末端以外の官能基で保護基を有 していてもよいペプチド (I V— a ) と、 ペプチドの力ルポキシル基またはその活 性化基と反応する官能基を含み、 一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、他 方端が一 NH 2、 一低級アルキル— NH 2か.らなる群より選択された基で置換され ていてもよいポリエチレングリコ一ル、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキ.シェチルアミ
ノ酸、 およびポリビニルピロリドンからなる群より選択される水溶性高分子(V— a ) とを反応させることにより、保護基を有していてもよいペプチド一水溶性高分 子結.合体 (V I— a ) を製造する方法である。
第一工程において、 ペプチド C末端活性化体としては、 酸クロライド、 酸ブロマ ィドの如き酸八'ライド;酸アジド;メチルエステル、ェチルエステル等のエステル; N -ヒドロキシスクシンイミド (HONSu) 、 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (HOBt) 等との活性エステル;対称型酸無水物;アルキル炭酸、 p -トルエンスルホン酸等 との混合酸無水物などが挙げられる。一方、水溶性高分子がペプチドのカルポキシ ル基またはその活性化基と反応しうる官能基としては、典型的にはァミノ基である。 すなわち、水溶性高分子が一方端にメトキシ基を有するポリエチレングリコールで あるときは、その他方端に一 NH 2、一低級アルキル— NH 2等を有するものであり、 水溶性高分子がポリアミノ酸、ポリヒドロキシェチルアミノ酸であるときは活性化 されていてもよいアミノ基であり、ポリビニルピロリドンにおいてはピロリドン環 ¾であ 。
本反応ば、 常法に従って、 レジンなどに一方の原料化合物を結合させておいて、 他方の原料化合物を反応させ、洗浄して副生成物を除去し、 ついでレジンより反応 生成物を単離するか、 あるいはそのまま次工程に付すことにより行われる。
反応は、 C末端が活性化されていてもよく、 C末端以外の官能基で保護基を有し ていてもよいペプチド (I V— a ) と、 メトキシ基、 またはメトキシ基および活性 化基を有していてもよい水溶性高分子 (V _ a ) とを、 縮合剤 (例えば、 ジシクロ へキシルカルポジイミド (DCC) 、 ジィソプロピルカルポジィミド (DIPC) 、 1 -ェ チル -3- (3-ジメチルァミノプロピル)カルポジイミド (WSC) 、 1,1 ' -力ルポ二ルビ ス- 1H-イミダゾール (CDI) 等) 、 場合によっては、 更に添加剤 (例えば、 N-ヒド ロキシスクシンイミド (HONSu) 、 1 -ヒドロキシベンゾ卜リアゾ一ル (HOBt) 等) の存在下、 縮合することにより行うことができる。 また、 ペプチド (I V— a ) と 上記添加剤との活性エステル体を一旦単離後、 水溶性高分子 (V— a ) と縮合して ちょい。
反応条件は、用いられる活性化体の種類など原料化合物の種類等によって異なる が、 例えば、 ベンゼン、 トルエン、 キシレン等の芳香族炭化水素類、 ジェチルエー
テル、 テトラヒドロフラン(THF;)、 1, 4-ジォキサン、 ジメトキシェタン等のエーテ ル類、 ジクロロメタン、 1, 2-ジクロロェタン、 クロ口ホルム等のハロゲン化炭化水 素類、 N, N -ジメチルホルムアミド(DMF)、 N-メチル -2-ピ口リドン (NMP)、 ピリジン 等の反応に不活性な有機溶媒中、 原料化合物 (I I一 a ) および (I I I一 a ) を 等モルないし一方を過剰モル用いて、 反応させるのが有利である。 溶媒は単独で、 又は 2種以上混合して使用してもよい。
また、 活性化体の種類によってはトリメチルァミン、 トリェチルァミン、 ピリジ ン、 ピコリン、 ルチジン、 ジメチルァニリン、 N—メチルモルホリンなどの有機塩 基、 炭酸カリウム、 炭酸ナトリウム、 水酸化ナトリウム、 水酸化カリウム等の無機 塩基などの塩基の存在下に実施するのが有利な場合がある。 また、 ピリジンは溶媒 を兼ねることもできる。
反応は、 通常常温下に実施することができるが、 原料化合物の種類、 特に活性化 体の種類によっては、 冷却下に、 あるいは加温下に実施する場合もある。
第二工程
第一工程で得られた保護基を有していてもよいペプチド一水溶性高分子結合体 (V I - a ) が N—末端に保護基を有する場合は、 その保護基を除去して、 必要に より該 N末端を活性化して、 N—末端が活性化されていてもよく、 N—末端以外の 官能基で保護基を有していてもよいペプチド一水溶性高分子結合体(I I一 a ) と する。
次いで無水カルボン酸残基で置換されていてもよく、力ルポキシル基が活性化さ れていてもよい脂質 (I I I一 a ) と反応せしめ、 必要により保護基を除去するこ と N末端が活性化されていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を有していても よいペプチド一水溶性高分子結合体(I I一 a ) と、 無水カルボン酸残基で置換さ れていてもよく、 カルボキシル基が活性化されていてもよい脂質 (I I I一 a ) と を反応せしめ、保孿基があるときは必要により該保護基を除去することにより、 本 発明結合体 (I一 a ) を製造することができる。
N末端の保護基の除去は、 常法によって行われ、 例えばァミノ基の保護基が、 9 一フルォレニルメチルカルボニル基などのァシル系の保護基はピペリジン Zジメ チルホルムアミドで処理することにより保護基を容易に除去することが可能であ
る。 また、 N末端の保護基が、 ベンジルォキシカルポニル基であるときは接触還元 が有利であり、場合によってはトリフルォロ酢酸/臭ィヒ水素酸などの酸による処理 が用いられる。 さらに、 t e r t—ブトキシカルポニル基などの他のウレタン型保 護基は前記の酸処理が有利である。 '
N末端の活性化基としては、 該ァミンの酸付加塩などが挙げられる。 また、 N末 端以外の官能基の保護基としては、前記非特許文献記載の各種の保護基が挙げられ る。
一方、無水カルボン酸残基で置換された場合の脂質は、 ホスファチジルエタノー ルァミンの如く脂質の末端基がァミノ基などの官能基の場合に採用され、ぺプチド の N末端への結合を容易にするために無水カルボン酸残基を結合させる。 また、 脂 質の活性化されていてもよいカルボン酸残基としては、前記のペプチドの C末端の 活性化基と同様、 如き酸ハライド;酸アジド;通常のエステル;活性エステル;対 称型酸無水物;混合酸無水物などが挙げられる。
反応は、 第一工程と同様、 ペプチド結合の形成反応であり、 第一工程と同様に実 施することができる。 すなわち、 結合体 (I I一 a ) と脂質 (I I I一 a ) とを、 縮合剤、 場合によっては、 更に前記の添加剤の存在下、 縮合することにより行うこ とができる。 また、 脂質 (I I I— a ) と上記添加剤との活性エステル体を一旦単 離後、 結合体 (I I一 a ) と縮合してもよい。
この反応においても、 常法に従って、 レジンに一方の原料化合物を結合させてお いて実施することができる。
反応条件も第一工程と同様であり、用いられる活性化体の種類など原料化合物の 種類等によっても異なるが、 反応に不活性な有機溶媒中、 原料化合物 (I I一 a ) および(I I I一 a ) を等モルないし一方を過剰モル用いて、 反応させるのが有利 である。 溶媒は単独で、 又は 2種以上混合して使用してもよい。
また、 活性化体の種類によってはトリメチルァミン、 トリェチルァミン、 ピリジ ン、 ピコリン、 ルチジン、 ジメチルァニリン、 N _メチルモルホリンなどの有機塩 基、 炭酸カリウム、 炭酸ナトリウム、 水酸化ナトリウム、 水酸化カリウム等の無機 塩基などの塩基の存在下に実施するのが有利な場合がある。 また、 ピリジンは溶媒 を兼ねることもできる。
反応は、 通常常温下に実施することができるが、 原料化合物の種類、 特に活性化 体の種類によっては、 冷却下に、 あるいは加温下に実施する場合もある。 - 保護基の除去は、常法によって行われ、例えばァミノ基の保護基が存在するとき は前記のピぺリジン Zジメチルホルムアミド処理、接触還元、酸処理で容易に実施 可能である。
さらに、保護基として力ルポキシル基の保護基が存在するときは、保護基がエス テル形成基であるときはケン化により、 ベンジル基、 置換べンジル基のときは接触 還元ゃケン化により、 t e r t一ブチル基は前記の酸処理により、 さらにトリメチ ルシリル基は水と接触させることによりそれぞれの保護基を容易に除去できる。 メルカプト基や水酸基の保護基は大方ナトリゥム /液体アンモニア処理で除去 できるほか、 保護基の種類によっては接触還元 (例えば一〇—ベンジル等) 、 酸ま たはアルカリ存在下の加水分解(例えばァシル系保護基)で容易に除去可能である。 第 2製造法
第一工程
水溶性高分子2 + ペプチド4 水溶性高分子一ペプチド5 (V-b) (I V-b) (V I— b) 第二工程
必要により C末端保護基の除去、 C末端活性化 水溶性高分子- (V I -b) 水溶性高分子一ペプチド6 + 脂質2 水溶性高分子一べプチド—脂質 (I I一 b) ( I I I一 b) (I -b)
(式中、 水溶性高分子、 ペプチド、 および脂質は前記の意味を有し、 水溶性高分 子2は一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、 他方端がそれぞれ保護基を有
していてもよい— c o—低級アルキレン— c o o—ジカルボン酸ィミジル、一低級 アルキレン一 c o o—ジカルポン酸ィミジル、および一低級アルキル―ジカルボン 酸ィミジルからなる群より選択された基で置換されていてもよいポリエチレング リコール、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシェチルアミノ酸、 およびポリビニルど口 リドンからなる群より選択される水溶性高分子を、 ペプチド4は N末端が活性化さ れていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を有していてもよペプチドを、 ぺプ チド 5は保護基を有していてもよいペプチド残基を、ペプチド6は、 C末端が活性化 されていてもよく、 C末端以外の官能基で保護基を有していてもよいペプチド残基 を、脂質2は活性化されていてもよいアミノ基を含有する脂質をそれぞれ意味する) 第一工程
本反応は、一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、他方端がそれぞれ保護 基を有していてもよい—C O—低級アルキレン一 C O O—ジカルポン酸ィミジル、 一低級アルキレン一 C〇〇—ジカルポン酸ィミジル、および—低級アルキル—ジカ ルポン酸ィミジルからなる群より選択された基で置換されていてもよいポリェチ レンダリコール、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシェチルアミノ酸、 およびポリ'ビニ ルピロリドンからなる群より選択される水溶性高分子(V— b ) と、 N末端が活性 化されていてもよく、 N末端以外の官能基で保護基を有していてもよいペプチド ( I V - b ) とを反応させて、保護基を有していてもよい水溶性高分子一ペプチド 結合体 (V I— b ) を製造する反応である。
一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、他方端がそれぞれ保護基を有して いてもよい— C 0一低級アルキレン— C O O—ジカルボン酸ィミジル、一低級アル キレン— C O〇—ジカルポン酸ィミジル、および—低級アルキル一ジカルポン酸ィ ミジルからなる群より選択された基で置換されていてもよいポリエチレングリコ ール、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシェチルアミノ酸、 およびポリビニルピロリド ンからなる群より選択される水溶性高分子(V— a ) が有していてもよい保護基と しては、 前記アミノ基の保護基が挙げられる。
一方、 ペプチドの N末端の活性化基としては、該ァミンの酸付加塩などが挙げら れる。 また、 ペプチドの N末端以外の官能基の保護基としては、 前記非特許文献記
載の保護基が挙げられる。
本反応も第一製造法と同様ペプチド結合の形成反応であり、第一製造法と同様に 実施することができる。
第二工程 '
第二工程の反応は、第一工程で得られた保護基を有していてもよい水溶性高分子 一ペプチド結合体(V I— b)が C一末端に保護基を有する場合はその保護基を除 去 て、 必要により C末端を活性化して、 C—末端が活性化されていてもよく、 C 一末端以外の官能基で保護基を有していてもよい水溶性高分子一ペプチド結合体 (I I一 b) となし、 次いで活性化されていてもよいアミノ基含有の脂質 (I I I 一 b) と反応せしめ、 必要により保護基を除去することを特徴とする、 水溶性高分 子一ペプチド一脂質結合体 (I一 b) を製造する反応である。
ァミノ基を含有する脂質としては、ホスファチジルエタノ一ルァミンの如く末端 にアミノ基を含有する脂質が挙げられる。該ァミノ基の活性化されていてもよい活 性体は該ァミンの酸付加塩が挙げられる。 また、 ペプチドの C末端活性下記として は第一製造法に記載した活性化基が挙げられる。
本反応もまた、ぺプチド結合形成反応であり第一製造法に準じて実施するのが有 利である。
第 3製造法
第一工程
+
( I I I - a) (I V-b) (V I I— a) 第二工程
必要により C末端保護基の除去、 C末端活性化
脂質—ペプチド2
(V I I - a) 脂質一ペプチド3 + 水溶性高分子1 脂質一べプチドー水溶性高分子 (V I I— c) (V— a) (I一 a)
(式中、 脂質、 脂質1、 ペプチド、 ペプチド2、 ペプチド3、 ペプチド4、 水溶性 高分子および水溶性高分子1は、 前記の意味を有する。
本反応は、 無水カルボン酸残基で置換されていてもよく、 力ルポキシル基が活性 化されていてもよい脂質 (I I I一 a) と、 N末端が活性化されていてもよく、 N 末端以外の官能基で保護基を有していてもよいペプチド (I V—b) とを反応させ て、 保護基を有していてもよい脂質一ペプチド結合体 (V I I I— a) を製造する 反応(第一工程) 、 第一工程で得られた保護基を有していてもよい脂質一ペプチド 結合体(V I I I一 a)が C一末端に保護基を有する場合はその保護基を除去して、 必要により該 C末端を活性化して、 C一末端が活性化されていてもよく、 C一末端 以外の官能基で保護基を有していてもよい脂質一ペプチド結合体(VI I— a) と なし、 次いで一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、 他方端が— NH2、 一 低級アルキル一 NH2、 からなる群より選択された基で置換されていてもよいポリ エチレングリコ一ル、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシェチルアミノ酸、 およびポリ ビエルピロリドンかちなる群より選択される水溶性高分子(V— a) とを反応せし め、必要により保護基を除去することにより脂質一べプチドー水溶性高分子結合体
(I -a) を製造する反応 (第二工程) である。
この製造法の反応も、 ペプチド結合形成反応であり、 第 1〜2製造法に準じて実 施することができる。
第 4製造法
第一工程
ペプチド1 + 脂質2 → ペプチド2—脂質
(I V-a) (I I I一 b) (V I I I - a) 第二工程
必要により N末端保護基の除去、 N末端活性化
ペプチド2—脂質
(V I I I -a)
ペプチド3—脂質 + 水溶性高分子1 水溶性高分子-
(V I I I— c ) (V - a ) ( I - b )
(式中、 脂質、 脂質2、 ペプチド、 ペプチド1、 ペプチド2、 ペプチド3、 水溶性 高分子および水溶性高分子1は、 前記の意味を有する)
本反応は、 C末端が活性化されていてもよく、 C末端以外の官能基で保護基を有 していてもよペプチド (I V— a ) と、 活性化されていてもよいアミノ基を含有す る脂質 (I I I— b ) とを反応させて、 得られた保護基を有していてもよいべプチ ドー脂質結合体(V I I I— b )が N—末端に保護基を有する場合はその保護基を 除去して、必要により該 N末端を活性化して、 N—末端が活性化されていてもよく、 N—末端以外の官能基で保護基を有していてもよい脂質一ペプチド結合体(V I I 一 b ) となし、 次いで一方端がメトキシ基で置換されていてもよく、 他方端がそれ ぞれ保護基を有していてもよい一 C〇一低級アルキレン— C O〇ージカルボン酸 ィミジル、 —低級アルキレン一 C〇〇ージカルポン酸ィミジル、 および一低級アル キルージカルポン酸ィミジルからなる^より選択された基で置換されていてもよ いポリエチレングリコ一ル、 ポリアミノ酸、 ポリヒドロキシェチルアミノ酸、 およ びポリビニルピロリドンからなる群より選択される水溶性高分子(V _ b ) とを反 応せしめ、必要により保護基を除去することを特徴とする水溶性高分子一べプチド 一脂質結合体 (I一 b ) の製造法する反応 ある。
この製造法の反応も、 ペプチド結合形成反応であり、第 1〜3製造法に準じて実 施することができる。
( 3 ) 結合剤の中間体としての結合体とその製造方法
本願の発明には、 本発明の脂質とペプチドと水溶性高分子との結合体(I ) を 製造するために新規で有用な中間体である、 「保護基を有していてもよいペプ ド 一水溶性高分子結合体 (V I— a ) 」 の発明も包含される。
製造中間体(V I— a )が構成するペプチド残基および水溶性高分子に関する定 義については前記の通りであり、 この製造中間体は上記第 1製造法の第一土程を実 施することによって製造することができる。
この製造中間体は、優れたコロイダルキヤリァーとして有用な本発明結合体( I ) を直接製造するための中間体であり、 最終目的物である結合体(I ) に至る経路は 上記第 1製造法の第二工程に示したとおりである。
( 4 ) 結合体からなるコロイダルキャリアー
コロイダルキャリア一とは、一般的に低分子物質あるいは高分子物質を包含する ことのできるコロイドの運搬体を指す。 コロイドとは、光学顕微鏡では認められな いが、原子あるいは低分子よりは大きい粒子として分散している状態にある分散系 あるいは分散粒子を意味する。 コロイダルキャリア一は具体的にはリボソーム、 ェ マルジヨン、 ミセル、 またはナノパーティクル等を意味する。 したがって本発明で レ ^う結合体からなるコロイダルキャリア一とは脂質とぺプチドと水溶性高分子の 結合体と脂質あるいはその他の添加剤とを含有するリボソーム、 ェマルジヨン、 ミ セル、 またはナノパーティクル等を意味する。 これらコロイダルキャリアーを用い ることにより、薬物等の低分子物質あるいは高分子物質を担持させることが可能と なり、癌あるいは炎症等の標的疾患部位への薬物等の運搬と、水溶性高分子の結合 体からの脱離による薬物の標的細胞への到達を達成することができる。
コロイダルキャリアー調製の際に用いられる脂質は、リボソーム、ェマルジヨン、 ミセル、またはナノパーティクル等のコロイダルキャリアーを形成する成分として 用いられる脂質であれば特に限定されない。 かかる脂質としては、 例えば、 リン脂 質、 脂肪酸、 糖脂質、 グリセリド、 コレステロール、 およびそれらの誘導体等が挙 げられる。
リン脂質としては、 ホスファチジルコリン類、 例えば、 卵黄ホスファチジルコリ ン、 水添卵黄ホスファチジルコリン、 大豆ホスファチジルコリン、 水添大豆ホスフ ァチジルコリン、 ジラウロイルホスファチジルコリン、 ジミリストィルホスファチ ジルコリン、 ジォレオイルホスファチジルコリン、 ジパルミトイルホスファチジル コリン、 ジステアロイルホスファチジルコリン等、 ホスファチジルエタノールァミ ン類、 例えば、 卵黄ホスファチジルエタノ一ルァミン、 大豆ホスファチジルェタノ ールァミン、 ジラウロイルホスファ,チジルエタノールァミン、 ジミリストイルホス ファチジルエタノールァミン、 ジォレオイルホスファチジルエタノールァミン、 ジ
パルミ —ルァミン、ジステアロイルホスファチジルェ
ルホスファチジルグリセ口ール、 (—ル等、
ルセリン、 ジミリストイルホスファチジルセリン、 ジォレオイルホスファチジルセ リン、 ジパルミトイルホスファチジルセリン、 ジステアロイルホスファチジルセリ ン等、 ホスファチジン酸類、 例えば、 ジラウロイルホスファチジン酸、 ジミリスト ィルホスファチジン酸、 ジォレオイルホスファチジン酸、 ジパルミトイルホスファ チジン酸、 ジステアロイルホスファチジン酸等、 カルジォリピン類、 例えば、 テト ララウロイルカルイオリピン、 テトラミリストイルカルイオリピン、 テトラオレォ ィルカルイオリピン、 テトラパルミトイルカルイオリピン、 テトラステアロイルカ ルイオリピン等、 スフインゴミエリン等およびそれらの誘導体が挙げられる。脂肪 酸としては、 脂肪酸類、 例えば、 ラウリン酸、 ミリスチン酸、 ォレイン酸、 パルミ チン酸、 ステアリン酸等、 脂肪族ァミン類、 例えば、 ラウリルァミン、 ミリスチル ァミン、 パルミチルァミン、 ォレオイルァミン、 ステアリルァミン、 ジラウリルァ ミン、 ジミリスチルァミン、 ジパルミチルァミン、 ジォレオイルァミン、 ジステア リルアミン等、 脂肪族アルコール類、 例えば、 ラウリルアルコール、 ミリスチルァ ルコール、 ォレオイルアルコール、 パルミチルアルコール、 ステアリルアルコール 等、 およびそれらの誘導体および塩類が挙げられる。
糖脂質としては、 セラミド、 スフインゴシン、 ガンダリオシドおよびそれらの誘 導体を挙げられる。
グリセリドとしては、 脂肪酸グリセリド、 例えば、 ジラウロイルグリセロール、 ジミリストイルグリセロール、 ジォレオイルグリセロール、 ジパルミトイルグリセ
ロール、 ジステアロイルグリセ口一ル等が挙げられる。脂肪族ジメチルアンモニゥ ムプロパン類としては、例えばジミリストィルジメチルアンモニゥムプロパン、 ジ ォレオイルジメチルアンモニゥムプロパン、ジパルミトイルジメチルアンモニゥム プロパン、 ジステアロイルジメチルアンモニゥムプロパン、 ジォレオイルォキシジ メチルァミノプロパンハイドロクロライド等、脂肪族トリメチルアンモニゥムプロ パン類、例えばジミリストィルトリメチルアンモニゥムプロパン、 ジォレオイルト リメチルアンモニゥムプロパン、ジパルミトイルトリメチルアンモニゥムプロパン、 ジステアロイルトリメチルアンモニゥムプロパン等およびそれらの誘導体を挙げ ることができる。
コレステロールとしては、 コレステロールおよびその誘導体が挙げられる。
これらコロイダルキヤリァ一の調製には種々の方法を選択することができる。例 えばリボソームの調製法としては、薄膜法、逆相蒸発法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、 エタノール注入法、 エーテル注入法等の方法を選択することができる。 さらに、 サ ィズ、 ラメラ数、 内水相容積などを制御することを目的として、 超音波処理法、 フ レンチプレス法、 ェクストル一ジョン法、 界面活性剤除去法、 C a 2 +融合法、 凍結 融解法等の方法を選択することが可能である。上記の脂質とぺプチドと水溶性高分 子の結合体を他のリボソーム構成成分と混合してリボソームを調製することも可 能であり、またあらかじめ調製したリボソームに上記の脂質とペプチドと水溶性高 分子の結合体を添加することによりリポソームに導入することも可能である。リポ ソーム構成成分としては、 リン脂質、 脂肪酸、 糖脂質、 グリセリド、 コレステロ一 ルおよびそれらの誘導体等が挙げられる。これらリポソ一ム構成成分は 1種または 2種以上を添加してもよい。リボソーム成分に対する脂質とペプチドと水溶性高分 子の結合体の含有量は 0 . 0 1〜約 2 0 % (m o 1 /m o 1 ) の範囲が好ましく、 0 . 1〜約 1 5 % (m o 1 /m o 1 )が更に好ましく、最も好ましくは約 1〜 1 0 % (m o 1 /m o 1 )である。調製したリポソ一ムの粒子径は約 2 0〜8 0 0 nmの 範囲が好ましく、 さらに約 2 0〜約 6 0 0 nmが好ましく、 最も好ましくは約 2 0 〜4 0 0 nmである。
またミセル調製法としては、 例えば薄膜法、 o /w乳化法、 透析法など様々な方 法を選択することができる (J. Contrl. Rel" 48, 195, 1997、 J. Contrl. Rel" 78, 155,
2002) 。 また、 上記の脂質とペプチドと水溶性高分子の結合体のみからなるミセル を調製することも可能であり、 また、 その他の添加剤を加えることも可能である。. ミセル成分に対する脂質とペプチドと水溶性高分子の結合体の含有量は約 2 0 % (m o 1 /m o 1 ) 以上の範囲が好ましく、 約 5 0 % (m o 1 /m o 1 ) 以上がさ らに好ましい。脂質とぺプチドと水溶性高分子の結合体以外の添加剤は 2種類以上 添加してもよい。調製したミセルの粒子径は約 1 0〜約 5 0 O nmの範囲が好まし く、 約 2 0〜 4 0 0 nmがさらに好ましい。
本発明に用いられる薬物としては、本発明に用いられる薬物としては、 治療学的 に有効な活性成分、あるいは予防学的に有効な活性成分であれば特に制限されない。 かかる医薬活性成分としては、 例えば催眠鎮静剤、 睡眠導入剤、 抗不安剤、 抗てん かん剤、 抗うつ薬、 抗パーキンソン剤、 精神神経用剤、 中枢神経系用薬、 局所麻酔 剤、 骨格筋弛緩剤、 自律神経剤、 解熱鎮痛消炎剤、 鎮けい剤、 鎮暈剤、 強心剤、 不 整脈用剤、 利尿剤、 血圧降下剤、 血管収縮剤、 血管拡張剤、 循環器官用薬、 高脂血 症剤、 呼吸促進剤、 鎮咳剤、 去たん剤、 鎮咳去たん剤、 気管支拡張剤、 止しや剤、 整腸剤、 消化性潰瘍用剤、 健胃消化剤、 制酸剤、 下剤、 利胆剤、 消化器官用藥、 副 腎ホルモン剤、 ホルモン剤、 泌尿器官用剤、 ビタミン剤、 止血剤、 肝臓疾患用剤、 通風治療剤、 糖尿病用剤、 抗ヒスタミン剤、 抗生物質、 抗菌剤、 抗悪性腫瘍剤、 化 学療法剤、総合感冒剤、滋養強壮保健薬、骨粗しょう症薬等を挙げることができる。 かかる薬物として、 例えば、 インドメタシン、 ジクロフエナック、 ジクロフエナツ クナトリウム、 コディン、 イブプロフェン、 フエ二ルブ夕ゾン、 ォキシフェンブタ ゾン、 メピリゾ一ル、 アスピリン、 ェテンザミド、 ァセトァミノフェン、 アミノピ リン、 フエナセチン、 臭ィ匕ブチルスコポラミン、 モルヒネ、 エトミドリン、 ペン夕 ゾシン、 フエノプロフェンカルシウム、 ナプロキセン、 セレコキシブ、 バルデコキ シブ、 トラマドール等の消炎、 解熱、 鎮けいまたは鎮痛薬、 エトドラック等の抗リ ユーマチ薬、 フルォロウラシル、 カルモフール、 塩酸アクラルビシン、 塩酸ダウノ ルビシン、 塩酸ドキソルビシン、 マイトマイシン、 パクリタキセル、 塩酸ェピルビ シン、 塩酸イダルビシン、 塩酸ピラルビシン、 ブレオマイシン、 硫酸べプロマイシ ン、 エトポシド、 塩酸イリノテカン、 塩酸ノギテカン、 酒石酸ビノレルビン、 ドセ タキセル、 硫酸ビンクリスチン、 硫酸ビンデシン、 硫酸ビンプラスチン、 クェン酸
夕モキシフェン、 シゾフィラン、 クレスチン、 ゲフイチニブ、 シスプラチン、 シク ロホスフアミド、チォテパ等の抗悪性腫瘍薬、ェピネフィリン、トリアムシノロン、 ヒドロコルチゾン、 酢酸コルチゾン、 デキサメタゾン、 酢酸パラメタゾン、 酢酸ハ ロプレドン、 酢酸フルド口コルチゾン、 ノルェピネフィリン、 プラステロン、 プレ ドニゾロン、 ベタメタゾン等の副腎ホルモン剤、 塩酸アンピシリンフタリジル、 セ フォテタン、ジョサマイシン、ェンサンテトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、 塩酸ミノサイクリン等の抗生物質、 等が挙げられる。 薬物は、 フリー体または製薬 的に許容され得る塩のいずれをも用いることができる。 また、 薬物は、 1種または 2種以上組合せて用いることもできる。
薬物を含有するリボソーム調製法としては、前記リボソーム調製法を適用するこ とが可能である。薬物と他のリボソーム成分とを混合してリボソームを調製するこ とも可能であり、またあらかじめ調製したリポソ一ムに薬物を添加することにより リボソームに薬物を 含させることも可能である。例えば、薬物と脂質とペプチド と水溶性高分子の結合体とその他のリボソーム構成成分を混合して薄膜を調製後、 水和処理により薬物を包含したリボソームを調製することができる。 また、 あらか じめ調製した脂質とペプチドと水溶性高分子の結合体とを含有するリボソームに 凍結融解法、 p H勾配法等の方法によりリボソームに薬物を包含させることも可能 である。 リボソームに包含されなかった薬物は透析、 ゲル濾過、 超遠心等の方法に より除去することができる。 リボソーム成分に対する薬物の含有量は、 0 . 0 1〜 約 7 0 % (w/w) の範囲が好ましく、 さらに 0 . 1〜約 5 0 % (w/w) 、 最も 好ましくは約 1〜約 3 0 % (w/w) である。
また薬物を含有するミセル調製法としては、前記ミセル調製法を適用することが 可能である。 ミセルに包含されなかった薬物は透析、 ゲル濾過、 超遠心等の方法に より除去することができる。 ミセル成分に対ずる薬物の含有量は 0 . 0 1〜約 7 0 % (w/w) の範囲が好ましく、 さらに 0 . 1〜約 5 0 % (w/w) 、 最も好ま しくは約 1〜約 3 0 % (w/w) である。
( 5 ) コロイダルキヤリァーを使用する組織特異的薬物送達システム
本発明でいう組織特異的薬物送達システムとは、薬物と脂質とペプチドと水溶性
高分子の結合体からなるコロイダルキヤリァ一を使用して、疾患組織から特異的に 分泌される酵素に感応して前記結合体の酵素基質べプチド部分が切断されること により、 キャリアーがその標的組織の細胞へ接着し、薬物を放出するシステムを意 味する。 また、標的組織の細胞に接着する性質を有するコロイダルキャリアーを使 用する前記システムを意味する。薬物はコロイダルキャリアーに担持され、標的組 織まで運ばれる。本発明でいう細胞への接着とは、 キャリア一の脂質部分が細胞膜 との相互作用をおこすことをいい、 会合という場合もある。 また接着、 会合の後、 細胞膜との融合 (膜融合) 等により、 キヤ.リア一が細胞内へ取り込まれ、 標的組織 まで運ばれた薬物は放出される。
膜融合は、 2つの脂質膜が合体して一つの膜になる現象をいい、 多くの細胞現象 にかかわる重要な過程で、 エンドサイトーシスやェキソサイトーシス、 小胞輸送な ど細胞内の多くの過程に膜融合が関わっている。 しかしながら、 細胞膜はイオンや 極性の高い分子、蛋白質や遺伝子などの大きな分子を透過させない。細胞内で活性 を発現する生理活性物質を有効に働かせるためには、それらを細胞質の中に導入す る運搬体が必要であり、膜融合能をもつリボソームは、細胞膜やエンドゾーム膜と 融合することによって、内部に封入した物質を効率よく細胞質内に移行させること ができるため、 細胞質内送達システムとして有用であることが報告されている (Proc. Nat l . Acad. Sc i . USA, 84, 7413, 1987) 。
また前記システム以外に難溶性の薬物の可溶化手段としても本発明結合体を利 用することが可能である。すなわち本発明結合体は、 一つの分子内に親水性基と疎 水性基を有していることから、水に分散させた際に、 一定濃度以上になると親水性 基を外に、 疎水性基を内に向けて小さな集合体 (ミセル) を形成する。 水に溶けに くい物質をミセルに取り込むことにより可溶化の作用を示すことが可能だからで ある。 リボソームの場合、水溶性高分子と脂質の誘導体の添加量は、 リボソーム膜表面上 における水溶性高分子のコンフオメーシヨン、水和層の厚さ、 リポソ一ムの血中滞 留性に影響する (Adv. Drug Del . Rev. , 24, 165, 1997) 。 特に、 水溶性高分子の コンフオメーシヨンの変化には大きく影響し、分子量 2 0 0 0のポリエチレンダリ
コールでは全脂質量の 4m o 1 %、分子量 5000のポリエチレングリコールでは 全脂質量の 2mo 1 %の際にコンフオメーシヨン変化が生じる (Biophys. J., 68, 1903, 1995) 。
ミセルの場合、両親媒性物質がどのような構造を形成するかは、親水性および疎水 性の程度に大きく影響を受ける。親水性の水溶性高分子と疎水性の脂質を有する両 親媒性物質は親水性が相対的に強く、 単独ではミセルを構成する。 また、 ミセルを 形成する物質に界面活性剤を約 70 %程度添加することにより、混合ミセルを形成 させることができる (野島ら (編集) , リボソーム, 南江堂) 図面の簡単な説明
図 1は、 Fmo c -GPQG I AGWG— P E Gの MALDI-T0FMS測定結果である。 図 2は、 DS PE— GPQG I AGWG— P E Gの MALDI- T0FMS測定結果である。 図 3は、 DSPE— GPQGI AGWG— P E Gの - NMR測定結果である。 図 4は、 酵素分解性試験の結果である。
図 5は、 DSPE— GPQGI AGWG— P E G含有リボソームおよび P E G— DSP E含有りポソームの血漿中濃度推移測定結果である。
図 6は、 DSPE— GPQG I AGWG— P E G含有リポソ一ムおよび P E G— DSP E含有リポゾームの癌組織集積性測定結果である。
図 7は、 MMP- 2添加によるリポソーム表面からの P E G脱離性試験結果であ る。 ' - 発明を実施するための最良の形態
以下、実施例を挙げてさらに本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定 されるものではない。 測定法、 分析法等
[RP-HPLC分析]
9—フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) ーグリシルプロリルグルタミル
'ニルダリシルトリプトファニルグリシン (G 1 y-P r
o— G i n— G l y— I 1 e— Al a— G l y— Tr p— G l y)合成の純度評価 および酵素分解性評価を行った。尚、検出は 9一フルォレニルメチルカルポニル(F mo c) 基を蛍光検出した。
システム: LC 10 A (島津製作所) 、 カラム: TSKGEL ODS-80Ts QA φ=4.6ιπι X 250mm (東ソ一) 、 移動相: 0.1%TFA I CH3CN = 65 /35、 流速: 1.0 ml I min、 検出器:蛍光分光光度計、 波長: Ex 265 nm、 Em 305腿、 ォ一ブン温度: 40°C
[MALDI- T0F/MS分析]
9一フルォレニルメチルカルボニル (Fmo c) ーグリシルプロリルダルタミル グリシルイソロイシルァラニルダリシルトリプトファニルダリシン( G 1 y— P r o— G i n— G l y— I l e— A l a— G l y— Tr p— G l y)、 9—フルォレ 二ルメチルカルポニル(Fmo c) 一グリシルプロリルグルタミルグリシルイソ口 イシルァラニルダリシルトリプトファニルダリシル(G 1 y-P r o-G 1 n-G
1 y- I l e— A l a— G l y— T r p— G l y)—アミドプロピルポリオキシェ チレンメチルエーテル、ジステアロイルホスフ 7チジルエタノールァミン—ダル夕 リル— G l y— P r o— G i n— G l y_ I 1 e -A 1 a— G l y— T r p— G
1 y—アミドプロピルポリオキシエチレンメチルェ一テルの合成の確認を行った。 サンプルごく少量 C H C 1 3/M e OH混液に溶解させ、 マトリクス
(2,5-dihydroxybenzoic acid) 溶液 (in CH3CN) と混合して乾燥させた。 VoyagerEliteXL (Applied Biosystems) にて測定した。
[TLC分析]
反応の進行および生成物の同定を行った。 サンプルを薄層プレート (Merck Silicagel60) にスポットし、 CH3Cl/MeOH/H20=65/25/4(v/v)にて展開した。検出は 蛍光検出、 ニンヒドリン検出、 12 vaporにて行った。
[Ή -画 R分析]
ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンーダル夕リル—ダリシルプロ リルグル夕ミルグリシルイソロイシルァラニルダリシルトリプトファニルダリシ
ル (G l y— P r o— G l n_G l y— I 1 e-A l a-G l y-Tr p-G l y) 一アミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテルの合成の確認を行った。 サンプルを重水に溶解後、 J NM-AL 400 (日本電子)'にて測定した。
[ゲル濾過測定法]
9一フルォレニルメチルカルポニル(Fmo c) —グリシルプロリルグル夕ミル o— G i n— G l y— I 1 e -A 1 a— G l y— Tr p— G l y)—アミドプロピ ルポリオキシエチレンメチルエーテルの酵素分解性の評価を行った。
サンプル 0. 5m 1にァセ卜二卜リル 0. 5ml添加後、 濾過してゲル濾過を行 つた。システム: LC-10A (島津製作所)、カラム: Superdex peptide HR10/30 (Amersham Pharmacia Biotech) 、 移動相: 10mM HEPES I 150mM NaCl pH7.4、 流速: 1.0 ml / min、 検出器:蛍光分光光度計、 波長: Ex 265 nm、 Em 305 nm
[ポリエチレングリコ一ル定量]
リボソームに導入されたポリエチレングリコールの定量をピクリン酸法により 行った (Int. J. Pharm., 203, 255, 2000) 。
[コリン定量法]
リボソームを構成- ンの定量をリン脂質 C _テストヮコ 一 (和光純薬工業) にて行った。 '
[粒子径測定]
ミセルおよびリボソームの粒子径を N I COMP Mo d e 1 370 (Particle Sizing Systems Inc.) にて測定した。
[ゼ一夕電位測定法]
リボソームのゼ一夕電位を Z ETAS I Z ER 3 00 0 H S A (Malvern Instruments) にて測定した。
[アントラセン- 9-力ルポン酸コレステリル (CA) 定量] '
リボソーム中、 血漿中および癌組織中のアントラセン- 9-力ルポン酸コレステリ ルの定量を RP- HPLC分析により行った (Journal of Chromatography.ん.421,43, 1987)。
1. Gly- Pro- Gln_Gly_Ile-Ala-Gly-Trp-Glyペプチド
1. 1. 9 _フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) グリシルプロリルグ ルタミルグリシルイソロイシルァラニルダリシルトリプトファニルグリシン(G 1 y - P r o— G l n_G l y - I 1 e -A 1 a - G l y - Tr p— G l y) (Fm o c -GPQG I AGWG) の合成
Fmoc- Gly- WangResinに 20 %ピぺリジン/ジメチルホルムアミドを加えることに より脱 Fmo cを行った。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 アミノ酸、 2-(lH-Benzotriazole-l-yl)-l, 1, 3, 3-teiramet yluronium
hexaf luorophosphate (HBTU) 、 N, N-di isopropylethylamine (DIE A) 、 ジメチル ホルムアミドを加え R e s i nに結合したアミノ酸残基にアミノ酸をカツプリン グさせた。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 脱' Fmo c、 洗 浄、 カップリング、洗浄の操作を繰り返すことにより全配列のアミノ酸をカツプリ ングさせた後トリフルォロ酢酸を加えて攪拌し、 Re s i nからペプチドを切り出 した。ェ一テルでペプチドを再沈させて得られた c r ud eを精製することにより ' 標記化合物を得た。
生成物の確認は、 RP— HPLC分析および MALD I一 TO FMS分析にて確認 した。 RP—HPLC測定結果のピーク面積比より Fmo c -GPQG I AGWG の純度を算出したところ、 99.. 5 %の純度であることを確認した。 また、 MAL D I - TOF.MS測定の結果、 1087Daおよび 1103Daにシグナルが観測 された。 Fmo c -GPQG I AGWGの分子量の理論値は 1063. 5 D aであ るが、 N a付加体および K付加体の分子量の理論値は 1086. 5Da、 1102. 6 D aであることから測定値は N a付加体および K付加体として測定されており、 理論値通りの分子量が得られていることから Fmo c -GPQG I AGWGが合 成されたものであることが示された。
1. 2. 9一フルォレニルメチルカルボニル (Fmo c) ーグリシルプロリルグ ル夕ミルグリシルイソロイシルァラニルダリシルトリプ卜ファニルダリシル( G 1 y— P r o - G i n— G l y— l i e— A l a - G l y— Tr p— G l y) -アミ ドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(Fmo c -GPQG I AGWG- PEG) の合成
Fmo c -GPQG I AGWG 10 Omgを N, N—ジメチルホルムアミド 5m 1を加えて溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 11. 9mgを添加し、 さらに ジシクロへキシルカルポジイミド 38, 5mgを添加し、室温にて 2時間攪拌した。 この溶液にメトキシポリエチレングリコーループ口ピルアミン(SUNBR I TE MEPA—20H、 日本油脂㈱) 187mgをN, N—ジメチルホルムアミド 2. 3mlに溶解した溶液を添加し 45°Cにて 18時間反応を行った。反応後 0°C以下 に冷却し反応液を濾過して不溶物を除去し、クロ口ホルム 5mlを用いて洗浄した。 この濾液を強酸性陽イオン交換樹脂 (ダイヤイオン SK— 1、 三菱化学㈱) カラム に通して未反応のメトキシポリエチレングリコール—プロピルアミンを除去した 後エバポレーターにて減圧乾固した。さらに酢酸ェチル 20mlを加えて 0°C以下 に冷却後濾過して粗結晶を得た後、注射用水 5mlを加えて不溶物を除去し、 凍結 乾燥を行い標記化合物 157 m gを得た。
反応の進行および生成物の同定はシリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグ ラフィー (TLC) によって行った。 展開溶媒にはクロ口ホルム、 メタノール、 水 の混合比 (体積比) 65 : 25 : 4の混合溶媒を用い、 ヨウ素蒸気にて発色させて 標記物質との比較により物質の定性を行った。反応終点は上記の TLCにて R f値 0. 6付近に検出されるメトキシポリエチレングリコール—プロピルァミンと R f 値 0. 2付近に検出される Fmo c -GPQG I AGWGのスポットが R f値 0. 75付近に検出されるスポットに変換されることにより確認を行った。生成物の確 認は、 1 H— NM Rよりメトキシポリエチレングリコール—プロピルァミン由来の 末端メトキシのメチル基 (5 : 3. 4p pm付近、 ポリオキシエチレンのエチレン基 <5 : 3. 5 p pm付近の検出によりペプチド由来のメチレン基 δ : 1. 5 p pm付 近の検出により、モノメトキシォキシエチレン鎖およびペプチド鎖の存在を確認し た。本物質を精製後 MALD I一 TOFMS測定したところ、概ね中央値 3274
D aに PEG由来シグナルが観察された (図 1) 。 Fmo c— GPQG I AGWG 一 PEGの分子量の計算値は PEGS合度 n = 48として 3250D aでありほ ぼ合っており、 N a付加体 =+23 D aとして観測されているものであると思われ る。 このことから、 Fmo c— GPQG I AGWG— PEGを合成できたことが確 ΰ 、 ¾ Λ
1. 3. H2N-G l y-P r o-G l n-G l y- I 1 e-A l a-G l y- T r p— G 1 y—アミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(GP QG I AGWG— PEG) の合成
上記で得られた Fmo c -GPQG I AGWG— PEG 1 5mgを N, N—ジ メチルホルムアミド 3mlに溶解し、ピぺリジン lm 1を添加し室温にて 40分間 攪拌し反応を行った。反応液をエバポレータ一にて減圧乾固した。酢酸ェチル 10 mlを加えて 0°C以下に冷却し、濾過して粗結晶を得た。 この精製工程をさらに 2 回繰り返し、 標記化合物 67'mgを得た。 反応の進行および生成物の同定は、 上記 と同様の TLCによって行い、反応終点は R f値 0. 75付近に検出される Fmo c— GPQG I AGWG— PEGのスポットが、 R :HfiO. 5付近に検出される付 近に変換することにより、さらにそのスポ^トがニンヒドリン発色することより確 認した。
1. 4. ジステアロイルホスファチジルエタノールアミングル夕レート (DSP E-G 1 t) の合成
ジステアロイルホスファチジルエタノールァミン 748mgにクロ口ホルム 1 0mlを加えて 40°Cで攪拌し、酢酸ナトリウム 100mg、 無水ダルタル酸 17 Omgを加えて 50 で 5時間反応を行った。反応終点は上記と同様の TL Cによ り行い、ニンヒドリン発色にてジステアロイルホスファチジルェ夕ノ一ルァミンが 検出されなくなる点とした。反応液を冷却後アセトン 10mlを加えて粗結晶を得、 さらに 2—プロパノール 20mlを加えて冷却濾過し、標記化合物を 705mg得 た。
1. 5. ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンーダルタリルー G 1 y 一 P r o— G i n— G l y - I l.e -A 1 a— G l y— T r p— G l y—アミド プロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(DS PE— GPQG I AGWG-P EG) の合成
上記で得られた DS PE— G 1 t 34mgをクロ口ホルム 0. 3mlに溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 5. 3mg、 ジシクへキシルカルポジイミド 16. '5mgを添加し室温にて 2時間攪拌した。反応液を濾過して不溶物を除去し、 ジス 上記で得られた GPQG I AGWG-PEG60 m gをクロ口ホルム 3 m 1に溶 解し、ジステアロイルホスファチジルェタノ一ルアミングルタルサクシンイミド溶 液を添加し、 40°Cで 5時間攪拌反応した。 反応後濾過して不溶物を除去し、 その 溶液に酢酸ェチル 10mし へキサン 5m 1を加えて冷却後濾過し粗結晶を得た。 粗結晶に酢酸ェチル 2 m 1加えて冷却濾過し、結晶を得る晶析工程を 2回繰り返し て精製を行い、 標記化合物 45mgを得た。
反応の進行および生成物の同定は、 上記と同様の TLCによって行った。 R i値 0. 5付近に検出される GPQG I AGWG— PEGのスポットと R f値 0. 2付 近に検出される DSPE— G 1 tのスポットが、 尺 値0. 8付近に検出されるス ポットに変換したことにより確認を行った。 生成物の確認は、 iH— NMRよりメ トキシポリエチレングリコーループ口ピルアミン由来の末端メトキシのメチル基 6 : 3. 4 p pm付近、ポリオキシエチレン基 δ: 3. 5 p pm付近の検出により、 またペプチド由来の δ : 1. 5 p pm付近の検出により、 さらにジステアロイルホ スファチジルエタノールァミン由来のァシル基の末端メチル基 <5: 0. 9 ppm付 近の検出により、 モノメトキシォキシエチレン鎖、 ペプチド鎖およびジステアロイ ルホスファチジルエタノ一ルァミンの存在を確認した (図 3)
本サンプルを MALD I— TOFMS分析したところ、概ね中央値 3873D a に PEG由来シグナルが観察された (図 2) 。 DS PE— GPQG I AGWG— P EGの分子量の計算値は PEG重合度 n = 48として 3872D aであり実測値 にほぼ一致する。
1. 6. ペプチドおよびペプチド— PEGの酵素分解性
(1) Fmo c— GPQG I AGWGの酵素分解性検討
Fmo c -GPQG I AGWGの酵素基質としての特異性を確認するために、 M MP— 2、 Collagenase、 Carboxypeptidase A、 Ami卿 eptidase - 1、 Trypsinによる 酵素分解性の検討を行つた。
Fmo c -GPQG I AGWGをトリス緩衝液 (l O OmM Tr i s/100 mM NaC 1/1 OmM C a C 12/0. 05% BR I J 35 pH7. 5) に 溶解し、 所定濃度に調整した。 MMP— 2、 Collagenases Carboxypeptidase A、 Aminopeptidase-K Trypsinをそれぞれトリス緩衝液にて希釈あるいは溶解した。 37°Cに加温した Fmo c -GPQG I AGWG溶液に各々の酵素溶液を添加し、 37 °Cにて所定時間インキュベーションした。酵素の最終濃度は以下の通りである。 MMP— 2 : 0. 17 g/m 1 > Collagenase: 7 m/ m 1、 Carboxypeptidase A: 10 g/ m 1、 Aminopeptidase-l: 10 g/ m 1、 Trypsin: 10 gZ ml。 所定時間後、 サンプル溶液に同量の acetnitrileを添加し、 0. 5 mのフ ィル夕一 (Millex-LHMILIPORE) にて濾過した。 濾液中の Fmo c—GPQG I A GWG量を RP— HPLCにて分離定量した。
酵素分解反応初期(15分) における各酵素単位重量および単位時間当たりの Fmo c -GPQG I AGWGの分解速度を比較したところ、 MMP— 2による F mo c— GPQG I AGWG分解速度は、 Collagenase、 Carboxypeptidase A、 AminopepUdase- 1と比較してそれぞれ、 26. 9倍、 38. 8倍、 14. 2倍であ つた。 Trypsinによる Fmo c— GPQG I AGWGの分解性は見られなかった。 本試験の結果より、 Fmo c— GPQG I A GWGの酵素分解性は Collagenase 、 Carboxypeptidase A AminopepUdase- 1では低く、 MMP— 2に対して特異性が 高いことが確認された。
(2) Fmo c -GPQG I AGWG— P E Gの MMP— 2分解性検討
Fmo c一 GPQG I AGWGに PEGを結合させた際の MMP— 2分解性に及 ぼす影響について評価を行つた。
Fmo c -GPQG I AGWG— P E Gをトリス緩衝液 (10 OmM T r i s
/ 1 0 0 mM N a C 1 / 1 0 mM C a C 12/ 0. 0 5 % B R I J 3 5 PH7. 5) に溶解し、 所定濃度に調整した。 MMP— 2をトリス緩衝液にて希釈 した。 37 Cに加温した Fmo c -GPQG I AGWG— P E G溶液に MMP— 2 溶液を添加し、 37 °Cにて所定時間インキュベーションした。 MMP— 2の最終濃 度は 0. 34 gZmLとした。 所定時間後、 サンプル溶液に同量のァセトニトリ ルを添加し、 0. 5 mのフィルタ一 (Millex-LHMILIPORE) にて濾過した。 濾液 中の Fmo c— GPQG I AGWG— PEG量をゲル濾過法にて分離定量した。
酵素分解反応初期(15分) における MMP— 2単位重量および単位時間当たり の Fmo c—GPQG I AGWGおよび Fmo c -GPQG I AGWG— P EG の分解速度を比較したところ、 ほぼ同等であることが確認された (図 4) 。 このこ とから、酵素基質べプチドに P E Gを修飾した際の酵素分解性に与える影響はほと んどないことが確認された。
1. 7. ペプチド一 PEGのミセル調製法
Fmo c -GPQG I AGWG— P E Gをトリス緩衝液 (10 OmM T r i s / 1 0 0 mM N a C 1 / 1 0 mM C a C 12/ 0. 0 5 % B R I J 3 5 PH7. 5) に溶解後所定濃度に調整し、 レーザー回折粒子径測定装置 (N I CO MP Mode 1 370) にて粒子径を測定した (表 1) 。
5 M以上では約 200 nmの粒子径を有する会合体を形成していることが明ら かとなつた。 また、 N I COMP測定の際のレーザー光散乱強度は濃度依存性を示 しており、 2 a M以下では粒子径測定が不可能であつたことから、 5 1 M付近に臨 界 5セル濃度が存在するものと考えられた。
表 1 Fmo c— PQG I p e p— PEGの粒子径測定
濃度 ( M) 1 2 5 10 20 50 100 粒子径 (腹) nd nd 232 200 205 210 237 s.d. (%) - - 38.4 63.3 62.3 53.2 39.3
1. 8. 脂質ーぺプ 'チド— P E G含有リポソームの調製法
DPPC/cholesterolに : DS PE-GPQG I AGWG— PEGを 2. 5、 5. 0、
7. 5mo 1 %添加した脂質膜を調製後、 力ルセインを含む HE PES緩衝液(1 0 OmM HEPESZ1 5 OmM NaC 1 H7. 4) にてハイドレーシヨン し、ポリカーボネート膜を用いたェクストルージョンにより粒子径約 10 Onmの リボソームを調製した。リボソームに導入されなかった DS PE— GPQG I AG WG-PE Gおよびカルセィンを除去するために、 HE P E S緩衝液に分散して超 遠心処理 (40, 000 r pm、 5 h) を 2回行った。 ピクリン酸法により PEG 定量、コリン定量法により D P P C量の定量および蛍光測定によりカルセィン定量 を行い、 リボソームの特性を評価した。
調製されたリボソームの平均粒子径は約 12 O nmであった。 また、水溶性マ一力 —である力ルセインの封入性を確認できた。 これらのことから、 DSPE— GPQ G I AGWG-PEGを導入したリボソームを調製可能であることを確認した。
1. 9. DSPE- GPQGIAGWG- PEG導入リボソームの血中滞留性、 癌組織集積性試験
(1) 脂質一ペプチド一 PEG、 PEG— DSPE含有リポソ一ムの調製法 DPPC/cholesterol/CAに DSPE— GPQG I AGWG— PEG、 PEG-DS
PEをそれぞれ 7: 5、 5. 0 mo 1 %添加した脂質膜を調製後、 HE PES緩衝 液 (1 OmM HEPES/ 1 5 OmM NaC 1 pH7. 4) にてハイドレーシ ョンし、孔径 100 nmのポリカーボネート膜を用いたェクストルージョンにより リポソ一ムを調製した。 DS PE— GPQG I AGWG— P E G含有リボソームの 平均粒子径は約 142 n m、 ゼ一夕電位は— 10. 1 mVであつた。 P E G— D S P E含有リポソームの平均粒子径は約 131 nm、 ゼータ電位は一 15. 7 mVで あった。
(2) マウス投与試験 +
(2- 1) 血漿中滞留性評価
調製したリボソームを BALB/cマウス (20— 25 g) に脂質濃度 25mg/ml にて尾静脈投与した。 所定時間後に血漿中アントラセン- 9-カルボン酸コレステリ ル濃度を測定することにより、 リボソームの血中滞留性を評価した。 図 5にリポソ ームの血漿中濃度推移、 表 2に PKパラメータ一を示した。 これらの結果より、 D
S PE-GPQG I AGWG— PEG含有リポソ一ムは、 P EG— DSP E含有リ ポソ一ムと同等の血中滞留性を示すことが明らかとなった。
表 2 リボソームの Mパラメ —夕一
PKパラメーター
PtG conjugate t1/2 (h) Vz (ml/kg)
DSPE - PQGIpep - PEG 18.0 47.2 0.039
PEG-DSPE 19.4 52.6 0.041
(2-2) 癌組織集積性
HT 1080細胞を BALB/c nu/nuマウス ( 20— 25 g)'の背部皮 下に 3 X 106 cells/10 O^Lにて移植することにより担癌マウスを作成した。 一定期間飼育した後、調製したリボソームを脂質濃度 25mg/m 1にて尾静脈投 与した。 所定時間後、 癌組織を取り出してホモジナイズ後、 アントラセン- 9-カル ボン酸コレステリル濃度を測定することにより、リポソ一ムの癌組織集積性を評価 した。 図 6にリボソームの癌組織集積性を示した。 得られた結果より、 DSPE— GPQG I AGWG— PEG含有リボソームは、 P E G— D S P E含有リボソーム — * - と同等の癌組織集積性を示すことが明らかとなつた。
( 3 ) MMP- 2による PEG.鎖の脱離性
(3- 1) 脂質一ペプチド一 PEG含有リボソームの調製法
DPPC/cholesterol/DPPGの脂質膜を調製後、 HE PES緩衝液(10 OmM HE PES/15 OmM N a C 1 H 7. 4) にてハイドレーシヨンし、 孔径 100 nmのポリカーボネート膜を用いたェクストル一ジョンによりリボソームを調製 した。リボソーム懸濁液に DSPE— GPQG I AGWG— P E G水溶液を 1. 0、 2. 5、 5. 0mo 1 %となるように添加し、 60 °Cにて 1時間インキュべ一ショ ンすることによりリボソーム表面に DS PE— GPQG I AGWG— PEGを導 入した。リボソームに導入されなかった DSPE— GPQG I AGWG— PEGを 除去するために、 トリス緩衝液 (10 OmM T r i sZ5mM C aC 12/0.
1 % 牛血清アルブミン ; H7. 5)に分散して超遠心処理(40, 000 r pm、 5 h) を 2回行った。
(3-2) MMP— 2による PEG脱離試験
リボソーム脂質^度 4mg/ml、 MMP— 2濃度 1. 7 g/mlとなるよう にトリス緩衝液 (10 OmM T r i s/5mM C a C 12/0. 1 % 牛血清ァ ルブミン pH7. 5) を用いて調整した。 37 °Cにて所定時間インキュべ一ショ ン後、 PEG鎖を除去するために超遠心処理 (40, 000 r pm、 5 h) を 2回 行った。リポソ一ムのコリン定量および P E G定量を行った。図 7に示したように、 MMP- 2を添加することによりリポソーム表面から P E G鎖が脱離することが 認められた。
2. Gly- Pro- Leu- Gly- lie- Ala-Gly-Gln_Glyペプチド (MMP基質)
2. 1. 9 _フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) —グリシルプロリル口 イシルグリシルイソロイシルァラニルダリシルグル夕ミルグリシン (G 1 y-P r o-Le u-G l y- I l e - A l a-G l y-G l n-G l y) (Fmo c— G PLG I AGQG) の合成
Fmoc-Gly- WangResinに 20 %ピぺリジン/ジメチルホルムアミドを加えることに より脱 Fmo cを行った。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 アミノ酸、 2-(lH-Benzotriazole-l-yl)-l, 1, 3, 3-tetramethyluronium
hexaf luorop osphate (HBTU) 、 N, N-di isopropyleihylamine (DIEA) 、 ジメチレ ホルムアミドを加え Re s i nに結合したアミノ酸残基にアミノ酸をカップリン グさせた。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 脱 Fmo c、 洗 浄、 カップリング、 洗浄の操作を繰り返すことにより全配列のアミノ酸をカツプリ ングさせた後トリフルォロ酢酸を加えて攪拌し、 Re s i nからペプチドを切り出 した。エーテルでペプチドを再沈させて得られた c r ud eを精製することにより 標記化合物を得た。
生成物の確認は、 RP— HPLC分析および MALD I一 TOFMS分析にて確認 した。 RP— H PLC測定結果のピーク面積比より Fmo c -GPLG I AGQG の純度を算出したところ、 98. 7%の純度であることを確認した。 また、 MAL
D I一 TOFMS測定の結果、 991 D aにシグナルが観測され、 理論値通りの分 子量が得られていることから Fmo c -GPLG I AGQGが合成されたもので あることが示された。
2. 2. 9一フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) —グリシルプロリル口 イシルダリ.シルイソロイシルァラニルダリシルグルタミルグリシン(G 1 y_P r o-L e u-G 1 y- I 1 e— A l a_G l y— G i n— G l y)—アミドプロピ ルポリオキシエチレンメチルエーテル (Fmo c-GPLG IAGQG-PEG) の合成
Fmo c— GPLG IAGQG10 Omgを N, N—ジメチルホルムアミド 5m 1を加えて溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 11. lmgを添加し、 さらに ジシクロ Λキシルカルポジイミド 35. 9mgを添加し、室温にて 2時間攪拌した。 この溶液にメトキシポリエチレングリコ一ル—プロピルアミン(SUNBR I TE MEPA— 20H、 日本油脂㈱) 174mgを N, N—ジメチルホルムアミド 2. 3mlに溶解した溶液を添加し 45°Cにて 18時間反応を行った。反応後 O 以下 に冷却し反応液を濾過して不溶物を除去し、クロ口ホルム 5m 1を用いて洗浄した。 この濾液を強酸性陽イオン交換樹脂 (ダイヤイオン SK— 1、 三菱化学㈱) カラム に通して未反応のメトキシポリエチレングリコーループ口ピルアミンを除去した 後エバポレーターにて減圧乾固した。さらに酢酸ェチル 20mlを加えて 0°C以下 に冷却後濾過して粗結晶を得た後、注射用水 5mlを加えて不溶物を除去し、凍結 乾燥を行い標記化合物 146 m gを得た。
反応の進行および生成物の同定はシリカゲルプレートを用いた薄層クロ'マトグ ラフィ一 (TLC) によって行った。 展開溶媒にはクロ口ホルム、 メタノール、 水 の混合比 (体積比) 65 : 25 : 4の混合溶媒を用い、 ヨウ素蒸気にて発色させて 標記物質との比較により物質の定性を行った。反応終点は上記の TLCにて R ί値 0. 55付近に検出されるメトキシポリエチレングリコール一プロピルァミンと; R f値 0. 22付近に検出される Fmo c -GPLG I AGQG— PEGのスポット が R f値 0. 63付近に検出されるスポットに変換されることにより確認を行った。
2. 3. H2N-G l y-P r o-Le u-G l y- I 1 e-A l a-G l y- G 1 n-G 1 y—アミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(GPLG I AGQG-PEG) の合成
上記で得られた Fmo C-GPLGIAGQG-PEG140mgをN, N—ジ メチルホルムアミド 3 m 1に溶解し、ピぺリジン 1 m 1を添加し室温にて 40分間 攪拌し反応を行った。反応液をエバポレーターにて減圧乾固した。酢酸ェチル 10 m 1を加えて 0°C以下に冷却し、濾過して粗結晶を得た。 この精製工程をさらに 2 回繰り返し、 標記化合物 65mgを得た。 反応の進行および生成物の同定は、 上記 と同様の TLCによって行い、 反応終点は R f値 0. 66付近に検出される Fmo c一 GPLG I AGQG— PEGのスポットが、 尺 値0. 32付近に検出される スポットに変換することにより、さらにそのスポットがニンヒドリン発色すること より確認した。
2. 4. ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンーダル夕リル一 G 1 y -P r o-L e u-G 1 y- I 1 e -A 1 a— G l y— G i n— G l y—アミド プロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(DS PE— GPLG I AGQG— P EG) の合成
上記で得られた DS PE— G 1 t 34mgをクロ口ホルム 0. 3mlに溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 5. 3mg、 ジシクへキシルカルポジイミド 16. 5 mgを添加し室温にて 2時間攪拌した。反応液を濾過して不溶物を除去し、 ジス テアロイルホスファチジルエタノールアミングルタルサクシンイミド溶液を得た。 上記で得られた GPLG I AGQG-PEG60 m gをクロ口ホルム 3 m 1に 溶液を添加し、 40°Cで 5時間攪拌反応した。 反応後濾過して不溶物を除去し、 そ の溶液に酢酸ェチル 10m 1、へキサン 5m 1を加えて冷却後濾過し粗結晶を得た。 粗結晶に酢酸ェチル 2m 加えて冷却濾過し、結晶を得る晶析工程を 2回繰り返し て精製を行い、 標記化合物 46mgを得た。
反応の進行および生成物の同定は、 上記と同様の TLCによって行った。 R i値 0. 26付近に検出される GPLG I AGQG— PEGのスポットと R f値 0. 1
5付近に検出される DSP E— G 1 tのスポットが、 R fiO. 51付近に検出さ れるスポットに変換したことにより確認を行った。 生成物の確認は、 — NMR よりメトキシポリエチレングリコ一ループ口ピルアミン由来の末端メトキシのメ チル基 δ : 3. 4ppm付近、 ポリオキシエチレン基 δ : 3. 5 ppm付近の検出 により、 またペプチド由来の <5 : 1. 5 p pm付近の検出により、 さらにジステア ロイルホスファチジルエタノールァミン由来のァシル基の末端メチル基 <5: 0. 9 p pm付近の検出により、 モノメトキシォキシエチレン鎖、 ペプチド鎖およびジス テアロイルホスファチジルエタノールァミンの存在を確認した。
本サンプルを MALD I一 TO FMS分析したところ、概ね中央値 3797D a に PEG由来シグナルが観察された (図 2) 。 DSPE— GPLG I AGQG— P E Gの分子量の計算値は PEG重合度 n = 48として 3800D aであり実測値 にほぼ一致する。
3. Gly_Pro- Gin- Gly-Ile-TiD-Gly-Gln-Glyペプチド (MMP基質)
3. 1. 9—フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) —グリシルプロリルグ ル夕ミルグリシルイソロイシルトリプトファニルダリシルダル夕ミルグリシン(G l y - P r o— G i n - G l y - I 1 e-Tr p-G l y-G l n-G l y) (F mo c—GPQG IWGQG) の合成
Fmoc-Gly- WangResinに 20 %ピぺリジン/ジメチルホルムアミドを加えることに より脱 Fmo cを行った。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 アミノ酸、 2 -(1H - Benzotriazole - l_yl) - 1, 1, 3, 3-tetramethyluronium
hexaf luorophosphate (HBTU) 、 N, N-di isopropy I ethyl amine (DIEA) 、 ジメチノレ ホルムアミドを加え Re s i nに結合したアミノ酸残基にアミノ酸をカップリン グさせた。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 脱 Fmo c、 洗 浄、 カップリング、洗浄の操作を繰り返すことにより全配列のアミノ酸をカツプリ ングさせた後トリフルォロ酢酸を加えて攪拌し、 Re s i nからペプチドを切り出 した。ェ一テルでペプチドを再沈させて得られた c r ud eを精製することにより 標記化合物を得た。
生成物の確認は、尺?ー^1?1^(:分析ぉょび1^八 0 I—TOFMS分析にて確
認,した。 RP— HPLC測定結果のピーク面積比より Fmo c— GPQG IWGQ Gの純度を算出したところ、 98. 4%の純度であることを確認した。 また、 MA LD I一 TOFMS測定の結果、 1120 D aにシグナルが観測され、理論値通り の分子量が得られていることから Fmo c -GPQG I WGQGが合成されたも のであることが示された。
3. 2. 9一フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) —グリシルプロリルグ ル夕ミルグリシルイソロイシルトリブトファニルダリシルグルタミルグリシン( G l y-P r o-G l n-G l y- I 1 e - Tr p_G l y— G l n_G l y)—ァ ミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(Fmo c -GPQG I WGQG -PEG) の合成
Fmo c— GPQG IWGQG5 Omgを N, N—ジメチルホルムアミド 5m 1 を加えて溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 9. lmgを添加し、 さらにジシ クロへキシルカルポジイミド 29. 5mgを添加し、 室温にて 2時間攪拌した。 こ の溶液にメトキシポリエチレングリコーループ口ピルアミン (SUNBR I TE MEPA—20H、 日本油脂㈱) 144mgを N, N—ジメチルホルムアミド 2. 3 m 1に溶解した溶液を添加し 45 °Cにて 18時間反応を行つた。反応後 0 °C以下 に冷却し反応液を濾過して不溶物を除去し、クロ口ホルム 5m 1を用いて洗浄した。 この濾液を強酸性陽イオン交換樹脂(ダイヤイオン SK— 1、 三菱化学㈱) カラム に通 て未反応のメトキシポリエチレンダリコール一プロピルアミンを除去した 後エバポレ一ターにて減圧乾固した。さらに酢酸ェチル 20mlを加えて 0°C以下 に冷却後濾過して粗結晶を得た後、注射用水 5mlを加えて不溶物を除去し、 凍結 乾燥を行い標記化合物 7 Omgを得た。
反応の進行および生成物の同定はシリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグ ラフィー (TLC) によって行った。 展開溶媒にはクロ口ホルム、 メタノール、 水 の混合比 (体積比) 65 : 25 : 4の混合溶媒を用い、 ヨウ素蒸気にて発色させて 標記物質との比較により物質の定性を行った。反応終点は上記の TLCにて R f値 0. 57付近に検出されるメトキシポリエチレングリコーループ口ピルァミンと R f値 0. 22付近に検出される Fmo c— GPQG I WGQG— PEGのスポット
が R f値 0. 63付近に検出されるスポッ卜に変換したことにより確認を行った。
3. 3. H2N-G l y-P r o-G l n-G l y- I 1 e-Tr p-G l y- G 1 n— G 1 y—アミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(GPQG I WGQG-PEG) の合成
上記で得られた Fmo c -GPQG I WGQG-PEG 6 Omgを N, N—ジメ チルホルムアミド 3mlに溶解し、ピぺリジン lmlを添加し室温にて 40分間攪 拌し反応を行った。反応液をエバポレー夕一にて減圧乾固した。酢酸ェチル 1 Om 1を加えて 0°C以下に冷却し、濾過して粗結晶を得た。 この精製工程をさらに 2回 繰り返し、 標記化合物 67mgを得た。 反応の進行および生成物の同定は、 上記と 同様の TLCによって行い、 反応終点は R f値 0. 62付近に検出される Fmo c — GPQG IWGQG— PEGのスポットが、 R O. 21付近に検出されるス ポットに変換したことにより、さらにそのスポットがニンヒドリン発色することよ り確認した。
3. 4 ジステアロイルホスファチジルエタノールァミン—ダル夕リル一 G 1 y— P r o - G i n - G l y— I 1 e— Tr p— G l y— G i n - G l y -アミドプ 口ピルポリォキシェチレンメチルェ一テル(DSPE— GPQGIWGQG— PE G) の合成
上記で得られた DS PE— G 1 t 34mgをクロ口ホルム 0. 3mlに溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 5. 3mg、 ジシクへキシルカルポジイミド 16. 5 mgを添加し室温にて 2時間攪拌した。反応液を濾過して不溶物を除去し、 ジス テアロイルホスファチジルエタノールァミンダルタルサクシンィミド溶液を得た。 上記で得られた GPQG I WGQG-PEG20 mgをクロ口ホルム 3 m 1に 溶解し、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミングルタルサクシンイミド 溶液を添加し、 40°Cで 5時間攪拌反応した。 反応後濾過して不溶物を除去し、 そ の溶液に酢酸ェチル 10m 1、へキサン 5m 1を加えて冷却後濾過し粗結晶を得た。 粗結晶に酢酸ェチル 2m 1加えて冷却濾過し、結晶を得る晶析工程を 2回繰り返し て精製を行い、 標記化合物 5 mgを得た。
反応の進行および生成物の同定は、 上記と同様の TLCによって行った。 R f値 0. 19付近に検出される GPQG I WGQG— PEGのスポットと R f値 0. 2 3付近に検出される DSPE— G 1 tのスポットが、 R f O. 46付近に検出さ れるスポットに変換したことにより確認を行つた。
4. Gly- Hyp-Ala- Ser_Chg_Gln-Ser-Leu-Glyペプチド (PS A基質)
4. 1. 9—フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) —グリシルヒドロキシ シン(G l y— Hyp— A l a— S e r— Chg— G i n— S e r— Leu_G l y) (Fmo c— GHypASChgQSLG) の合成
Fmoc- Gly- WangResinに 20 %ピぺリジン/ジメチルホルムアミドを加えることに より脱 Fmo cを行った。 ジメチルホルムアミドを添加し R e s i nを洗浄した。 アミノ酸、 2-(lH-Benzotriazole-l-yl)-l, 1, 3, 3-tetramethyluronium
hexaf luorophosphate (HBTU) 、 N, N-di isopropyl ethyl amine (DIE A) 、 ジメチル ホルムアミドを加え Re s i nに結合したアミノ酸残基にアミノ酸をカップリン グさせた。 ジメチルホルムアミドを添加し Re s i nを洗浄した。 脱 Fmo c、 洗 浄、 カップリング、洗浄の操作を繰り返すことにより全配列のアミノ酸をカツプリ ングさせた後トリフルォロ酢酸を加えて攪拌し、 Re s i nからペプチドを切り出 した。ェ一テルでペプチドを再沈させて得られた c rud eを精製することにより 標記化合物を得た。
生成物の確認は、 RP—HPLC分析および MALD I—TOFMS分析にて確 認した。 R P _ H P L C測定結果のピーク面積比より Fmo c— GPQG IAGW Gの純度を算出したところ、 100%の純度であることを確認した。 また、 MAL D I一 TOFMS測定の結果、 1116 D aにシグナルが観測され、理論値通りの 分子量が得られていることから Fmo c— GHy p AS Ch gQSLGが合成さ れたものであることが示された。
4. 2. 9一フルォレニルメチルカルポニル (Fmo c) —グリシルヒドロキシ プロリルァラニノ
シン(G l y— Hyp— A l a— S e r— Chg— G i n— S e r -L e u-G 1 y) 一アミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(Fmo c -GHy pA SChgQSLG— PEG) の合成
Fmo c-GHypASChgQSLGl O Omgを N, N—ジメチルホルムァ ミド 5mlを加えて溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 17. 8mgを添加し、 さらにジシクロへキシルカルポジイミド 57. 7mgを添加し、室温にて 2時間攪 拌した。 この溶液にメトキシポリエチレングリコーループ口ピルアミン(SUNB R I TE ME PA— 20 H、 日本油脂㈱) 28 Omgを N, N—ジメチルホルム アミド 2. 3mlに溶解した溶液を添加し 45°Cにて 18時間反応を行った。反応 後 0°C以下に冷却し反応液を濾過して不溶物を除去し、クロ口ホルム 5mlを用い て洗浄した。 この濾液を強酸性陽イオン交換樹脂(ダイヤイオン SK— 1、 三菱化 学㈱)カラムに通して未反応のメ卜キシポリエチレングリコーループ口ピルアミン を除去した後エバポレーターにて減圧乾固した。さらに酢摩ェチル 2 Omlを加え て 0°C以下に冷却後濾過して粗結晶を得た後、注射用水 5m 1を加えて不溶物を除 去し、 凍結乾燥を行い標記化合物 145mgを得た。
反応の進行および生成物の同定はシリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグ ラフィ一 (TLC) によって行った。 展開溶媒にはクロ口ホルム、 メタノール、 水 の混合比 (体積比) 65 : 25 : 4の混合溶媒を用い、 ヨウ素蒸気にて発色させて 標記物質との比較により物質の定性を行った。反応終点は上記の TLCにて R f値 0. 15付近に検出される Fmo c— GHy pASChgQSLG— PEGのスポ ットが R f値 0. 55付近に検出されるスポットに変換したことにより確認を行つ た。
4. 3. H2N-G l y-Hyp-A l a-S e r-Chg-G l n-S e r- Le u— G l y—アミドプロピルポリオキシエチレンメチルエーテル(GHy p A SChgQSLG— PEG) の合成
上記で得られた Fmo c— GHypASChgQSLG— PEG140mgを N, N—ジメチルホルムアミド 3m 1に溶解し、 ピぺリジン lm 1を添加し室温に て 40分間攪拌し反応を行った。反応液をエバポレーターにて減圧乾固した。酢酸
ェチル 10mlを加えて 0°C以下に冷却し、濾過して粗結晶を得た。 この精製工程 をさらに 2回繰り返し、標記化合物 65mgを得た。反応の進行および生成物の同 定は、 上記と同様の TLCによって行い、 反応終点は R f値 0. 57付近に検出さ れる Fmo c— GHy pAS Ch gQSLG— PEGのスポットが、 R f値 0. 2 1付近に検出されるスポットに変換したことにより、さらにそのスポットがニンヒ ドリン発色することより確認した。
4. 4. ジステアロイルホスファチジルエタノールァミン—ダルタリルー G 1 y 一 Hyp— A l a— S e r— Chg— G l n— S e r— L e u— G l y—アミド プロピルポリォキシエチレンメチルエーテル(DSPE— GHypASChgQS LG-PEG) の合成
上記で得られた DSPE— G 1 t 34mgをクロ口ホルム 0. 3mlに溶解し、 N—ヒドロキシサクシンイミド 5. 3mg、 ジシクへキシルカルポジィミド 16. 5 mgを添加し室温にて 2時間攪拌した。反応液を濾過して不溶物を除去し、 ジス テアロイルホスファチジルエタノールアミングルタルサクシンイミド溶液を得た。 上記で得られた GHy p AS C h g Q S L G— P E Gm gをクロ口ホルム 3 m 1に溶解し、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミングルタルサクシンィ ミド溶液を添加し、 40°Cで 5時間攪拌反応した。反応後濾過して不溶物を除去し、 その溶液に酢酸ェチル 10m 1、へキサン 5m 1を加えて冷却後濾過し粗結晶を得 た。粗結晶に酢酸ェチル 2m 1加えて冷却濾過し、 結晶を得る晶析工程を 2回繰り 返して精製を行い、 標記化合物 58mgを得た。
反応の進行および生成物の同定は、上記と同様の TLCによって行った。 R f値 0. 17付近に検出される GHy pASCh gQSLG— PEGのスポットと R f 値 0. 24付近に検出される DS PE— G 1 tのスポットが、 1 値0. 47付近 に検出されるスポットに変換したことにより確認を行った。 生成物の確認は、 11 一 NMRよりメトキシポリエチレングリコーループ口ピルアミン由来の末端メト キシのメチル基 δ : 3. 4ppm付近、 ポリオキシエチレン基 δ : 3. 5 ppm付 近の検出により、 またペプチド由来の δ : 1. 5 P pm付近の検出により、 さらに ジステアロイルホスファチジルエタノールァミン由来のァシル基の末端メチル基
δ : 0. 9 p pm付近の検出により、 モノメトキシォキシエチレン鎖、 ペプチド鎖 およびジステアロイルホスファチジルエタノ一ルァミンの存在を確認した。
5. DODAS u c _p e p t i d e— PHEA合成
5. 1. /3—ベンジル— Lーァスパラギン酸 NC Aの合成
β—ベンジルー L—ァスパラギン酸 5 gをテトラヒドロフラン 34m 1に加え て懸濁させた。この溶液に 2 0 %ホスゲン含有トルエン溶液 1 6m lを添加し窒素 気流下で 6 0°Cにて 9 0分間加熱して ]3—べンジルー Lーァスパラギン酸を溶解 させた。 この溶液を n—へキサン 140m 1に注ぎ、 — 2 0 °Cに冷却し濾過して ]9 一べンジルー L—ァスパラギン酸 NC Aの結晶 4. 3 gを得た。
5. 2. ポリベンジル— Lーァスパラギン酸 (PBLA) の合成
β一べンジルー Lーァスパラギン酸 NC A 3 gをジメチルホルムアミド 9m 1 に溶解し、 メチルァミン 1 8. 6mgをテトラヒドロフラン 0. 3m lに溶解して 添加した。 この溶液を窒素下で室温にて 1 8時間攪拌した。 この溶液を精製水 1 5 0m lに注ぎ、 濾過して PBLA2 gを得た。
5. 3. H2N—グリシルプロリルダルタミルグリシルイソロイシルァラニルダ リシルトリプトファニルグリシン (G l y-P r o-G l n-G l y- I 1 e -A 1 a-G 1 y-T r p-G 1 y) —アミドボリベンジルー Lーァスパラギン酸(G PQG I AGWG-PBLA) の合成
Fmo c -GPQG I AGWG45mgを N, N—ジメチルホルムアミド lm 1 に加えて溶解し、 P y BOP (Benzotriazole-1-yl-oxy-tris- pyrrolidino-phosphoniumhexaf 1匿 ophosphateリ 1 5 6. 6mgを添カ卩した。 この 溶液に 1ーヒドロキシベンゾトリアオールハイドレイト 46. Imgを N, N—ジ メチルホルムアミド 0. 6m lに溶解して添加しさらに N_メチルモルホリン 5 0 ία lをN, N—ジメチルホルムアミド 0. 5m lに添加した。 この溶液に PBLA 7 Omgを N, N—ジメチルホルムアミド lm 1に溶解した溶液を添加し室温にて 1 8時間窒素気流下にて反応を行った。反応後この溶液をェチルエーテル 9 0m l
, に注ぎ、 濾過して Fmo c -GPQG I AGWG— P B L Aを得た。得られた Fm o c— GPQG I AGWG— PBLAを N, N—ジメチルホルムアミド 0. 9ml に溶解し、 ピぺリジン 0. 3mlを添加し室温にて 30分間攪拌し反応を行った。 この溶液をェチルエーテル 100m lに注ぎ、濾過して GPQG I AGWG-PB LA粗結晶を得た。 、
5. 4. ジステアリルアミンースクシニル一 G 1 y— P r o— G 1 n— G 1 y— I l e—A l a— G l y— T r p— G l y—ァミドポリヒドロキシェチルー L— ァスパラギン酸 (DODAS u c— GPQG I AGWG— PHEA) の合成 上記で得られた GPQG I AGWG-PBLA5 Omgをクロ口ホルム 0. 5m 1に溶解し、 トリェチルァミン 9 1を添力!]した。 この溶液に N, N,一ジシクロへ キシルカルポジイミド 5mg、 4- (ジメチルァミノ) ピリジニゥム— 4一トルェ ンスルホン酸 (J.S. Moore and S.I. Stupp, Macromolecules 23: 65-70 (1990)) 0. 4mg、 N—スクシ二ルーシステアリルアミン (DODAS u c、 L. Schmitt, C. Dietrich and R. Tampe in J. Am. Chem. Soc. 116: 8485-8491 (1994)) 8. 8m gをクロ口ホルム lmlに溶解して添加し、 室温で 18時間攪拌反応した。 この溶 液をメタノール 100mlに注ぎ、濾過して粗結晶 4 Omgを得た。粗結晶をエタ ノールアミン 0. lm l、 ヒドロキシピリジン 1 lmgを含む N, N—ジメチルホ ルムアミド 1. 5mlに溶解し、 40°Cで 18時間反応した。 この溶液をェチルェ —テルに注ぎ、 結晶を得る晶析工程を 2回繰り返した後、 透析にて精製を行い、 標 記化合物 1 5mgを得た。
本サンプルを MALD I—TOFMS分析したところ、概ね中央値 491 6Da に PEG由来シグナルが観察された。 DODAS u c -GPQG I AGWG— PH E Aの分子量の計算値は PHEA重合度 n= 22として 4906 D aであり実測 値にほぼ一致する。
ァニルダリシルグルタミルグリシン(G l y— P r o— G i n— G l y— I 1 e - T r p-G 1 y-G 1 n— G 1 y) (—アミドボリベンジルー Lーァスパラギン酸
(GPQG I WGQG-PBLA) の合成) ·
Fmo c -GPQG I WGQG45mgを N, N—ジメチルホルムアミド lm 1 に加えて溶解し、 P y B 0 P (Benzotriazole-1-yl-oxy-tris- pyrrolidino-phosphoniumhexaf luorophosphate) 156. 6mgを添カロした。 この 溶液に 1ーヒドロキシベンゾトリアオールハイドレイト 46. lmgを N, N—ジ メチルホルムアミド 0. 6mlに溶解して添加しさらに N—メチルモルホリン 50 1を N, N—ジメチルホルムアミド 0. 5mlに添加した。 この溶液に PBLA 7 Omgを N, N—ジメチルホルムアミド lm 1に溶解した溶液を添加し室温にて 18時間窒素気流下にて反応を行った。反応後この溶液をェチル X—テル 90ml に注ぎ、濾過して Fmo c— GPQG I WGQG— PBLAを得た。得られた Fm 0 c—GPQG I WGQG— PBLAを N, N—ジメチルホルムアミド 0. 9ml に溶解し、 ピぺリジン 0. 3m 1を添加し室温にて 30分間攪拌し反応を行った。 この溶液をェチルエーテル 100mlに注ぎ、濾過して GPQG IWGQG—PB LA粗結晶を得た。
5. 6. ジステアリルアミン―スクシ二ルー G 1 y— P r o— G 1 n— G 1 y— I l e— T r p— G l y— G i n— G l y—アミドポリヒドロキシェチル— L— ァスパラギン酸 (DODAS u c— GPQG I WGQG— PHEA) の合成 上記で得られた GPQG I WGQG— PBLA 5 Omgをクロ口ホルム 0. 5m 1に溶解し、 トリェチルァミン 9 1を添加した。 この溶液に N, N,一ジシクロへ キシルカルポジイミド 5mg、 4一 (ジメチルァミノ) ピリジニゥムー 4—トルェ ンスルホン酸 0. 4mg、 N—スクシニル一システアリルアミン 8. 8mgをクロ 口ホルム lmlに溶解して添加し、室温で 18時間攪拌反応した。 この溶液をメタ ノール 100m 1に注ぎ、濾過して粗結晶 4 Omgを得た。粗結晶をェタノ一ルァ ミン 0. lml、 ヒドロキシピリジン 1 lmgを含む N, N—ジメチルホルムアミ ド 1. 5mlに溶解し、 40°Cで 18時間反応した。 この溶液をェチルエーテルに 注ぎ、 結晶を得る晶析工程を 2回繰り返した後、 透析にて精製を行い、 標記化合物 5mgを得た。
本サンプルを MALD I一 TOFMS分析したところ、概ね中央値 4811 D a
に PEG由来シグナルが観察された。 DODAS u c - G P Q G I WGQ G - P H E Aの分子量の計算値は P HE A重合度 n= 21として 4808 Daであり実測 値にほぼ一致する。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、脂質と標的疾患部位において分泌される酵素の基質べプチドと 水溶性高分子を用いることで、標的疾患部位に製剤を到達させたあと、その標的疾 患部位内で製剤からの水溶性高分子が特異的に脱離する。 また、 製剤からの水溶性 高分子の脱離により製剤の特性の変化により標的細胞への薬物送達性を達成する ことが可能となる。 '
また本発明の中間体は、該組織特異的送達システムの優れた結合体(I)を直接製 造するための中間体として有用である。