明細書
フラーレンエポキシド及ぴその製造方法
技術分野
本発明は、 フラーレンエポキシド及ぴその製造方法、 並びにフラーレンェポ キシドの分離方法に関する。
背景技術
フラーレンエポキシドは、 包接化合物に関連するクラスター科学や医薬品、 光電子デバイスへの応用の分野で注目されている。 さらに、 フラーレンェポキ シドは、 巨大炭素クラスターの製造やフラーレンポリマーの製造への応用の分 野でも注目されている。 フラーレンエポキシドは、 フラーレンを所定の条件下で酸化することで生成 する。 そして、 1つのフラーレンに 3つのエポキシドを有するフラーレン C 6。 エポキシドは、 一部の異性体については、 存在が確認され、 または存在が予言 されている (Beck, R. D. et al. , J. Chem. Phys. 1994, 101 (4) , 3243-3249 及び Fusco, C. et al. , J. Org. Chem. 1999, 64, 8363-8368) 。 しかるに、 1つのフラーレンに 3つのエポキシドを有するフラーレン C 6 0ェ ポキシドの実用可能な製造方法、 特に異性体の単離方法は確立されておらず、 存在が予言されているに止まっている異性体もある。 従って、 その有用性につ
いても確認されていなかった。 そこで本発明は、 3つのエポキシドが存在する新規のフラーレン C60ェポキ シドを提供することを目的とする。 特に本発明は、 2又は。3の対称性 を有する 3つのエポキシドが存在する新規のフラーレン C6。エポキシドを提 供することを目的とする。 さらに本発明は、 フラーレンエポキシドを各異性体に分離できる方法及び、 この方法を利用した 3つのエポキシドを有するフラーレン C 6。エポキシドの 製造方法を提供することにある。 発明の要約
(1) C60O3で表され、 かつ- 1つの六員環に 2つのエポキシドが存在し、 か つ前記 2つのエポキシドが存在する六員環に隣接する六員環に 1つのエポキシ ドが存在するか、 または前記 2つのエポキシドが存在する六員環に六員環を 1 つ隔てて隣接する六員環に 1つのエポキシドが存在することを特徴とするフラ 一レンエポキシド。
(2) C6。〇3で表され、 3つのエポキシドを有し、 かつ Cい C2又は Csの 対称性を有することを特徴とする (1) に記載のフラーレンエポキシド。
(3) の対称性を有する (1) または (2) に記載のフラーレンエポキシ ド。
(4) C 2の対称性を有する (1) または (2) に記載のフラーレンエポキシ
ド。
(5) Csの対称性を有する請求項 1または 2に記載のフラーレンエポキシド。
(6) ラセミ体またはェナンチォマーである請求項 3〜 5のいずれか 1項に記 载のフラーレンエポキシド。
(7) フラーレンのトリエポキシドのみを含む画分をフラーレンのエポキシド 混合物からシリカゲルを用いて分離し、 さらに、 得られたフラーレンのトリエ ポキシドのみを含む画分を π— π相互作用を有する物質を用いて分離して、
(1) 〜 (6) のいずれか 1項に記載のフラーレンエポキシドを得ることを含 む、 フラーレンエポキシドの製造方法。
(8) シリカゲルが、 アルカン基結合シリカゲルである (6) に記載の製造方 法。
(9) フラーレンエポキシドの混合物を π— π相互作用を有する物質を用いて 分離することを特徴とするフラーレンエポキシドの分離方法。
(1 0) π— π相互作用を有する物質がピレン変性シリカゲルである (7) 〜 (9) のいずれかに記載の方法。 図面の簡単な説明
図 1は、 Csの対称性を有するフラーレンエポキシド C6。03 (3 a) 、 C2 の対称性を有するフラーレンエポキシド C6。03 (3 b ) 、 Ciの対称性を有す るフラーレンエポキシド C 6。03 (3 c) の構造と双極子モーメント (計算 値) 及ぴ生成熱 H. F. (計算値) を示す。
図 2は、 フラーレンのエポキシド混合物の HPLCクロマトグラム。
図 3は、 ピーク f を Develosil C30 RPFULLERENEカラム上でトルエン/メタノ ール(60:40)を用いて溶出させた場合のクロマトグラム (上部) 、 及びピーク f を Cosmosil Bucky Prep カラム上でトルエン/メタノール(80:20)を用いて溶出 させた場合のクロマトグラム (下部) 。
図 4は、ピーク eの画分並びにピーク I及び IIの画分の可視吸収スぺク トル。 図 5は、 ピーク IIの画分から得られた異性体の13 C— NMR測定結果。 Cs の対称性を有する 3つのフラーレン C 6。エポキシド(3 a)であることを示す。 図 6は、 ピーク IIの画分から得られた異性体の13 C— NMR測定結果。 Cs の対称性を有する 3つのフラーレン C 60エポキシド(3 a)であることを示す。 図 7は、 ピーク Iの画分から得られた異性体の13 C— NMR測定結果。 C2 の対称性を有する 3つのフラーレン C 6。エポキシド(3 b)であることを示す。 図 8は、 ピーク Iの画分から得られた異性体の13 C— NMR測定結果。 C2 の対称性を有する 3つのフラーレン C 6。エポキシド(3 b)であることを示す。 図 9は、 ピーク eの画分から得られた異性体の13 C— NMR測定結果。 の対称性を有する 3つのフラーレン C 6。エポキシド(3 c )であることを示す。 図 10は、 ピーク eの画分から得られた異性体の13 C— NMR測定結果。 C iの対称性を有する 3つのフラーレン C60エポキシド (3 c) であることを示 す。
図 1 1は、 C2、 Cs対称を有する C 6。03の各異性体に関する第一還 元電位 (E1) の測定結果及び半経験的分子軌道計算によって求めた最低非占有 軌道 (LUM0) レベル
図 1 2は、 ピーク I、 II及び eの各画分、 並びに C6。、 C6。0及び C6。02
の F T— I Rスぺク トノレ。
図 1 3は、 C60O3異性体 (3 c) の CDスぺク トル。 発明を実施するための最良の形態
本発明のフラーレンエポキシドは、 C6。03で表され、 かつ 1つの六員環に 2つのエポキシドが存在し、 かつ前記 2つのエポキシドが存在する六員環に隣 接する六員環に 1つのエポキシドが存在するか、 または前記 2つのエポキシド が存在する六員環に六員環を 1つ隔てて隣接する六員環に 1つのエポキシドが 存在することを特徴とする。
フラーレン C6。エポキシドには、フラーレン C6。が有するエポキシドの個数 に応じて種々の化合物がある。 中でも本発明は、 フラーレン C6。に 3つのェポ キシドを有する C 60Ο 3で表される化合物である。
C6。03で表され、 1つの六員環に 2つのエポキシドが存在し、 かつ前記 2 つのエポキシドが存在する六員環に隣接する六員環に 1つのエポキシドが存在 するフラーレンエポキシドは、 例えば、 C2又は Csの対称性を有するものであ る。 C2の対称性を有するフラーレンエポキシドは、 図 1に 3 bとして示す構 造を有し、 C sの対称性を有するフラーレンエポキシドは、 図 1に 3 aとして 示す構造を有する。 また、 C6。03で表され、 1つの六員環に 2つのエポキシドが存在し、 かつ 前記 2つのエポキシドが存在する六員環に六員環を 1つ隔てて隣接する六員環
に 1つのエポキシドが存在するフラーレンエポキシドは、 例えば、 の対称 性を有するものである。 Ciの対称性を有するフラーレンエポキシドは、 図 1 に 3 cとして示す構造を有する。
Csの対称性を有するフラーレン C60エポキシド (異性体) 及び C2の対称性 を有するフラーレン C 60エポキシド (異性体) については、 存在するであろう と予言されていた(非特許文献 2)。 しカゝし、 物質として単離され、 かつ物質と して同定されてはいなかった。 .
また、 。 の対称性を有するフラーレン C6。エポキシド (異性体) について は、 これまでに報告されたことはない。 本発明では、 上記本発明の C60O3で表されるフラーレン C6。エポキシドを 以下の製造方法により製造することができる。
(1) フラーレンのエポキシド混合物の調製
本発明の製造方法では、原料としてフラーレン C6。のエポキシド混合物を用 いる。 このフラーレン C60エポキシドの混合物には、 目的物であるフラーレン C 6。のトリエポキシドが含まれている必要が有り、 そのような混合物は、 例え ば、 フラーレン C 6 Qを m—塩化過安息香酸(m - CPBA)で酸化することで得られた ものである事ができる。 m - CPBAによる酸化反応は、 例えば、 以下の条件で行う ことができる。
フラーレン C 6。と m- CPBAとのモル比: 1 : 10〜 1 : 100、好ましくは 1 : 30〜 1 : 60
反応温度: 8 0〜 1 2 0 °C
反応時間: 1分〜 6 0分、 好ましくは 1 0〜 3 0分 フラーレン C 6。エポキシドの混合物の調製は、 上記 m_CPBAのような過安息 香酸を用い.る方法以外に例えば、 酸化剤としては、 フランペルォキシド等の有 機過酸、 ジォキシシラン化合物、 オゾン、 P 4.5 0 :チトクロームォキシダーゼ 等を用いる方法を用いる事もできる。
(2)トリエポキシドのみを含む画分の分離
フラーレン C 6。エポキシドの混合物には、一般に未反応のフラーレンや低次 及び高次のエポキシドが混在する。 例えば、 フラーレン C 6。エポキシドの混合 物を HPLCにかけると図 2に示すような種々のフラグメントが存在する。そして、 こ れ ら の 各 フ ラ グ メ ン ト は 、 例 え ば 、 LC-APCI-MS (Liquid chromatography- Atmospheric pressure chemical ionixation (APCI) -Mass- spectroscopy (MS)、 大気圧化学ィォン化質量分析器を 接続した高速液体クロマトグラフィー)を用いることで質量数を決定できる。 本発明の方法では、 フラーレン C 6。エポキシドの混合物の中から、 例えば、 上記 LC- APCI- MSを用いてフラーレンのトリエポキシドのみを含む画分を、シリ 力ゲルを用いて分離する。 具体的には、 シリカゲルを充填したカラムにフラー レン C 6 0エポキシドの混合物を供給し、 次いで、 適当な溶出液を用いて各フラ グメントを順次溶出させ、 目的とするフラーレン C 6。トリエポキシドのみを含
む画分を得る。 使用するシリカゲルには特に制限はないが、 例えば、 アルカン基結合シリカ ゲルであることが好ましく、 アルカン基結合シリカゲルとして.は、 C 1 8 (ォ クタドデシル) 基結合シリカゲル、 C 3 0基結合シリカゲル等を挙げることが できる。
また、 溶出液は、 使用するシリカゲルの種類により適宜決定されるが、 例え ば、 疎水性移動相という観点から、 トルエンとァセトニトリルとの混合溶媒、 トルエンとメタノールとの混合溶媒、 オルトジクロ口ベンゼンとメタノールと の混合溶媒等を使用することができる。 本発明の Cい C 2.又ほ C sの対称性を有する 3つのフラーレン C 6 0エホ。キシ ドは、 図 1に示すように互いに構造的に近似していることから、 上記シリカゲ ルによる分離では、 3つの成分に分離することは、 事実上できない。 具体的に は、 上記シリカゲルでの分離を逆相 Develosil C30 RPFULLERENEカラムを用い て行った場合、図 2中のピーク e及び f がフラーレン C 6。トリエポキシドのい ずれかのみを含む画分であった。 そして、 電子スペク トルを用いたピーク純度 技術 (L. Huber, 'Application of diodearry detection in HPLC" , Hewlett-Packard Primer, Publication number 12 - 5953 - 233, 1989)を用レヽると ピーク f は、 純粋ではなく複数の成分が含まれることが示された。 そこで本発明では、上記工程で得られたフラーレン C 6。トリエポキシドのみ
を含む画分の内、 さらに上記ピーク f をさらに π— π相互作用を有する物質に よる分離に付す。 π— π相互作用を有する物質としては、 例えば、 ピレン変性 シリカゲルを挙げることができる。ピレン変性シリカゲルは、例えば、 Cosmosil Bucky Prep カラムとしてナカライテスタ (株) から市販されている。 ピレン変 性シリカゲル以外の π— π相互作用を有する物質としては、 例えば、 フエニル 基結合シリ力ゲル等を挙げることもできる。 . 具体的には、 ピレン変性シリカゲルを充填したカラムにフラーレン C 6。トリ エポキシドのみを含む画分を供給し、 次いで、 適当な溶出液を用いて各フラグ ントを順次溶出させ、 図 2に示すように、 画分 f と eとを得る。 溶出液は、 使用するピレン変性シリカゲルの種類により適宜決定されるが、 例えば、 疎水 性移動相という観点から、 トルエン、 ァセトニトリル、 トルエンとァセトニト リルとの混合溶媒、 トルエンとメタノールとの混合溶媒、 オルトジクロロベン ゼンとメタノールとの混合溶媒等を使用することができる。 図 3の上部には、 ピーク f をシリカゲル分離に用いたと同じ Develosil C30 RPFULLERENE カラム上でトルエン/メタノール(60 : 40)を用いて溶出させた場合 のクロマトグラムを示す。 シリカゲルでは、 ピーク: は単一画分となる。 それ に対して、 図 3の下部には、 ピーク f を Cosmosil Bucky Prep カラム上でトル ェン /メタノール(80 : 20)を用いて溶出させた場合のクロマトグラムを示す。. 2 つのピーク I及ぴ IIに分離されている。
先に得られたピーク eの画分並びにピーク I及び IIの画分は、以下のような 方法で同定した。
まず、ピーク eの画分に含まれる化合物及びピーク IIの画分に含まれる化合 物は、 いずれも、 LC- APCI- MS測定では、 炭素同位体含有量の予想値と一致した 同位体比とともに質量数 768 (M— ) を主ピークとする質量スペク トルを示し、 紫外可視分光分析においても C60に類似の吸収スぺク トルを示したことから、 C 6。03の異性体であることが分かる。
次に、 13C— NMRにてスぺク トルを測定した。 測定方法については実施例 で詳述する。 その結果、 ピーク e の画分は、 ェの対称性を有する 3つのフラ 一レン C60エポキシドであり (図 9及び 1 0) 、 ピーク IIの画分は、 C2の対 称性を有する 3つのフラーレン C60エポキシドであり (図 7及び 8)·、 ピーク Iの画分は、 Csの対称性を有する 3つのフラーレン C6。エポキシドである (図 5及び 6) ことが判明した。 さらに、 それぞれの第一還元電位 (E1) を測定した結果、 ピーク Iが- 0.762 (V vs Fc/Fc+) であったのに対し、 ピーク IIとピーク eはそれぞれ- 0.796と - 0.802と低い値であった(図 1 1 )。 これは、図 1 1に示すように、 。い C2、 c 対称を有する c 6 Q o 3の各異性体に関して半経験的分子軌道計算によって 求めた最低非占有軌道 (LUM0) レベル(それぞれ -3.018、 -3.013, -3.029 (eV) ) と相対的な関係が一致することから、 ピーク I は Csの対称性を有するフラー レン C6。 トリエポキシドであり、 ピーク IIは C2の対称性を有するフラーレン C60トリエポキシドであり、 ピーク eは Ciの対称性を有するフラーレン C6。
トリエポキシドである事が分かる。 さらに、前記各画分に含まれる成分の F T— I Rスぺク トル(図 1 2 )には、 いずれも 8 0 0 c m一1付近にエポキシ基に由来する振動ピークが観測され、 こ れらの成分がエポキシ基を有する化合物であることが分かる。 上記製造方法により得られた C i、 C 2及び C sの対称性を有する各フラーレ ン C 6 0エポキシドは、 いずれもラセミ体であり、各ラセミ体は光学分割するこ とでェナンチォマー (鏡像異性体) を得ることもできる。
光学異性体は、 旋光性以外は互いに同じ性質を持っているため、 通 常の方法では分割精製することができない。一般的には光学分割カラ ムを装備した高速液体ク口マ トグラフィ (H P L C ) によって分割を 行う ことができる。 光学分割カラムに用いる充填剤としては、 1 ) ポ リ アミ ノ酸の様な対掌の右巻きと左巻きのヘリ ックス構造を持つも の、 2 ) ポリ スチレンビーズにポリ グルタ ミ ン酸の誘導体を共有結合 で固定した高分子吸着剤などが知られている。ポリアミ ノ酸の場合は、 高分子側鎖間で形成される空間が対掌を形成し、光学異性体のどちら か一方に対し強い親和性を持つことで D、 L体を分割する。 高分子吸 着剤は、ァミノ酸誘導体の種類を変えることなどで種々の光学異性体 を分離しう る吸着剤を作ることが出来る。 本発明の Cい C 2又は C sの対称性の対称性を有するフラーレン C 6。トリエ
ポキシド、 特に、 Csの対称性の対称性を有するフラーレン C 6。トリエポキシ ドは、 フラーレンよりもさらに高い吸電子性を示し、 導電性材料、 例えば、 光 電池や光導電性材料の電子受容剤として有用である。 さらに、 本発明の Cい C 2又は C sの対称性の対称性を有するフラーレン C 6。トリエポキシドは、ェポ キシドであり、 かつ高い吸電子性を示すことから、 強力な酸化剤としても有用 である。 尚、 前記 π— π相互作用を有する物質による分離では、 フラーレン C6。トリ エポキシドの分離のみならず、 その他のフラ一レン、 例えば、 C70、 C72、 C 76、 C 82等のエポキシドを分離することもできる。その際に使用できる π— π 相互作用を有する物質としては、 例えば、 Cosmosil Bucky Prep カラムとして ナカライテスク (株) から市販されているピレン変性シリカゲルを挙げること ができる。 π— π相互作用を有する物質としては、 ピレン変性シリ力ゲル以外 に、 例えば、 フヱニル基結合シリカゲル等を用いることもできる。 実施例
以下、 本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
1 X 1 0— 3モル Z dm— 1のフラーレン C 60 (純度 99. 98%以上、 マツ ポ)及び 1 X 1 0— 1モル Zdm— 1の m—クロ口パーォキサイドベンゾィックァ シド (東京化成) を含むトルエン溶液を暗黒下、 還流しながら 30分間加熱し た。 得られた反応生成物をメタノールで洗浄して、 未反応の m—クロ口パーォ キサイドべンゾイツクァシドを除去した。 次いで、 シリカゲル (FC40、 和
光純薬) を用いたフラッシュゲルカラムクロマトグラフィーにより、 フラーレ ンのエポキシド混合物を未反応の c 6。から分離した。 得られたフラーレンのエポキシド混合物を逆相 Develosil C30 RPFULLERENE カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーに付した。 検出波長は、 3 3 5 η mとし、 溶出にはトルエン:ァセトニトリル (7 0 : 3 0 ) を用いた。 得られ たク ロマ ト グラ ムは図 2 に示す。 図 2 中の ピーク e 及び f が、 IX— APし Ϊ一 MS (Liquid chromatography-Atmospheric pressure chemical ionixation (APCI)— Mass— spectroscopy (MS) ) を用 ヽた質量数力 ら、 C 6。〇3で あることが判明した。 次いで、 図 2中のピーク f に相当する画分を、 Cosmosil Bucky Prep カラム 上でトルエン/メタノール(80 : 20)を用いて溶出させた。 得られたクロマトグラ ムを図 3に示す。 図 2中のピーク f に相当する画分は、 図 3 ( b ) 中の 2つの ピーク I及び IIに分離された。これらの、ピーク I及び IIに相当する画分は、 いずれも mZ z 7 6 8 (M一) に APCI質量シク、 'ナルを示した。 さらに、 いずれも、 電子スぺク トルを用いたピーク純度技術(L. Huber, "Application of aiodearry detection m HPLC' , Hewlett-Packard Primer, Publication number 12-5953-233, 1989)を用いて検証した結果、 純粋であることが判明した。
ピーク e、 ピーク I及ぴ Πの各画分のモル収率 (フラーレンの消費量基準) は 0 . 2 5 %、 0 . 2 5 %及ぴ 0 . 3 5 %であった。
分離された各画分を乾燥し、 茶色の粉末が得られた。 さらに単離し た'各異性体を含むトルエン/ァセトニトリル溶液を蒸発乾固し、 展開 溶媒中に含まれる油状の不純 ·物を除去するためへキサンで数回洗浄し た後、 真空乾燥機にて 4 0 °C以下で十分に乾燥した。 黒色の末が得ら れた。 これらの粉末はいずれもトルエンに対しての溶解性は低く、 通常の方法では 13C_NMRの測定はできなかった。 そこで、 本発明では、 得られた黒色粉 末 5mg を二硫化炭素 0.4cc に溶解させ、 0. Ice のベンゼン- d6 と lmg のク ロム (III) ァセチルァセ トナー ト及びテ トラメチルシラン (TMS) を加え、 NMR管に入れて測定用サンプルと した。 測定は日本分光 JE0L GSX500 (125.7MHz) を用い、 室温中でパルス幅 4.3マイ ク ロ秒、 観測 時間帯 1.04秒、 遅延時間 0.5秒、 積算回数 40000回で行った。 結果を 図 5〜; L 0に示す。 図 5の結果において、 84. 0〜64. 0の領域は s p 3炭素の領域であり、 図 6の 1 50. 0〜1 38. 0の領域は s p 2炭素の領域である。 s p 3炭素の 領域に明確な 2本の強いピークと 2本の弱いピークの合わせて 4本のピークが 観測されることから、 この異性体は、 C sの対称性の対称性を有するフラーレ ン C6。トリエポキシドであることを示す。 図 7の、 8 9. 0〜6 7. 0の領域は s p 3炭素の領域であり、 図 8の 1 5
0. 0〜1 3 6 · 0の領域は s p 2炭素の領域である。 s p 3炭素の領域に明確 な 3本のピークが観測されることから、 この異性体は、 C2の対称性の対称性 を有するフラーレン C 6。トリエポキシドであることを示す。 図 9の 9 0. 0〜6 0. 0の領域は s p 3炭素の領域であり、 図 1 0の 1 5 0. 0~ 1 3 0. 0の領域は s p 2炭素の領域である。 s p 3炭素の領域には、 7本のピークが観測され、 その内の 1本は不純物の物と考えられ、 結果として 6本のピークが観測されることから、 この異性体は、 C iの対称性の対称性を 有するフラーレン C6。トリエポキシドであることを示す。 また、 トルエン溶液の可視吸収スペク トルは、 図 4に示すように、 ピーク I及ぴ IIの画分間で大きく異なった。 特に、 ピーク Iの画分か ら得られた粉末は、 4 3 5 n mに鋭いピークを有していた。 さらに、 上述の粉末固体から KB r ペレツ ト法によりパーキンエルマ —社製スぺク トラムワンを用いて F T— I Rスぺク トル測定を行った。 結果を図 1 2に示す。
図 1 2に示す F T— I Rスペク トルにおいて、 ピーク I、 II また は eの画分から得られた各粉末は 8 0 0 c m— 1付近に、 C一 O伸縮振 動に相当する吸収を示した。 これらの結果から、 ピータ エの画分から 得られた粉末は、 C sの対称性を有するフラーレン C 6。 トリエポキシ ドであると同定された。
さらに、 各画分について、 以下の方法で、 第一還元電位 (E1) を測定した。 還元電位 (E1) の測定は、 各フラーレン C6。トリエポキシドの o—ジクロロべ ンゼン溶液 (1X10—3M) に支持電解塩として 0.1Mの(tーブチル) 4N+PF6-を加え たサンプルを用いて、ディファレンシャルパルスポルタンメ トリー (DPV)法に より実施した。走查速度は 100mV/s、作用電極に白金、比較電極に銀—塩化銀、 補助電極には白金ワイヤーを使用した。 その結果、 ピーク Iカ 0.762 (V vs Fc/Fc+) であったのに対し、 ピーク II とピーク eはそれぞれ- 0.796と - 0.802と低い値であった。 これは、 Cl C2、 c s対称を有する C 6。 o 3の各異性体に関して半経験的分子軌道計算によって 求めた最低非占有軌道(LUM0)レベル(図 1 1に示す。それぞれ- 3.018、- 3.013、 - 3.029 (eV) ) と相対的な関係が一致することから、 ピーク I は Csの対称性 を有するフラーレン C6。トリエポキシドであり、 ピーク IIは C2の対称性を有 するフラーレン C 6。トリエポキシドであり、 ピーク eは Ciの対称性を有する フラーレン C 6。トリエポキシドでありる事が分かった。
尚、 半経験的分子軌道計算によって求められる最低非占有軌道 (LUM0) レべノレの計算 fま、 WinMOPAC Version3.0 (富士通) により PM3 法で行った。 各異性体の光学分割法
各異性体を含むトルエン溶液の濃度は約 1. lmmo 1 /Lであった。 化学
結合トラルパック (C h i r a 1 p a k) ADカラムを調製し、 UV及び CD デュアルディテクター (JASCO CD- 1595) 及びリサイクルパルプ ュニット (HV— 1592-01) を装備した。 サンプルを、 Rh e o d y n eモデル 7125インジヱクタ一を用いてクロマトグラフフィーシステムに注 入した。 へキサン一 CHC 1 a (80 : 20) 混合物を溶出液として用いた (流 量 1. 0m l/m i n) 。 トルエン溶液の UVスペクトルを、 日立 U— 200
0分光光度計を用いて測定した。 前記方法により異性体 (3 c) は、 光学分割された。
C6。03異性体 (3 c) の各光学活性体についてへキサン一 CHC 13及びト ルェン中での CDスぺク トルを JASCO J - 720 Lを用いて室温で測定 した (0. 2 cm石英セル使用) 。 結果を図 13に示す。 図 13中、 Aで示さ れるェナンチォマー (3 c) はプラス体であり、 Bで示されるェナンチォマー (3 c) は、 マイナス体であった。
尚、 前記 ADカラムを用いる方法により異性体 (3 a) 及ぴ (3 b) につい ても光学分割を試みたが、 光学活性体は得られなかった。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 C1 C2又は Csの対称性を有する 3つのフラーレン C6。 エポキシドを提供することができる。
また、 これらのフラーレン C6。エポキシドの製造方法を提供することができ る。
さらに、 フラ一レンエポキシドの分離方法を提供することができる (