明細書 マグナポ一サ · グリセァ (Magnap o t he g r i s e a) に属する微生 物によって引き起こされる植物病害に対する抵抗性遺伝子、 該遺伝子で形質転換 された植物及びその製造法 技術分野
本発明は新規な、 マグナポ一サ ·グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生 物によって引き起こされる植物病害に対する抵抗性遺伝子、 該遺伝子で形質転換 された植物及びその製造方法に存する。 さらに詳しくは、 イネ品種とりで 1号に 由来する新規なイネいもち病抵抗性遺伝子、 該遺伝子で形質転換されたィネ科植 物及びその製造方法に存する。 背景技術
日本稲の品種改良において、 従来から、 いもち病に対する抵抗性を附加するこ とは、 育種学上重要課題である。 インド稲やアメリカ在来種には、 日本で発生す るいもち病菌各種レースに対して抵抗性を示す品種が存在し、 それらの品種と日 本稲との交配により、 いくつかのいもち病菌のレースに対する抵抗性遺伝子の日 本稲への導入が試みられている。 しかしながら、 交配による導入は、 他の形質を 左右する遺伝子をも同時に変換または、 欠失するケースが多く、 いもち病抵抗性 遺伝子部位のみの導入は不可能であり、 実用的な品種を得るには至っていない。 また、 本遺伝子は、 発現程度が非常に弱く且つ、 その発現は、 病原菌の宿主細胞 に侵入する過程のごく一時的なものであるという性質上、 従来頻繁に使用されて いるような方法での遺伝子単離は、 きわめて困難である。
現在まで、 国内において、 育種学的に位置づけれらている抵抗性遺伝子は、 1 0種あるが、 そのほとんどは、 特定のレースにのみ抵抗性を示す。 例えば、 P i — aではレース番号 003、 007、 033、 037、 103及び 303に侵さ れ、 また、 P i— t aでは 10 1、 103、 303に、 そして P i— t a2では 303に侵される。 さらに P i— bにおいてもその抵抗性遺伝子を侵し得るいも
ち病菌は存在する。 しかしながらその中で、 P i— z 1は国内で採取されたすベ てのいもち病菌に対して強い抵抗性を示し (Kiyosawa. S. , ( 1981 ) , Oryza. , 18, 196-203 )、 その適用範囲は広い (表 1参照) 。 しかし、 いずれにせよこれらの 1 0種の抵抗性遺伝子について、 実際に単離することにより、 構造やその機能が明 らかにされた例はない。 表 1 イネ判別品種に対するいもち病菌各種レースの反応型
S :罹病性、 R :抵抗性 発明の開示
本発明は、 上記のようにすベてのいもち病菌に対して強い抵抗性を示す P i一 の遺伝子を単離し、 マグナポ一サ ·グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微 生物によって引き起こされる植物病害、 特にいもち病に対する抵抗性を遺伝子ェ 学的に植物に付与する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、 トランスポゾン ·夕ギング (可動遺伝子を導入し、 染色体上を 転移させることで変異を誘発し、 挿入された可動遺伝子を指標として変異した形
質に関与している遺伝子を単離する方法) による遺伝子単離技術を応用すること、 すなわち、 トウモロコシから単離された可動遺伝子をイネ品種とりで 1号に導入 し、 染色体上を転移させることにより変異を誘発し、 いもち病抵抗性欠失変異体 を得て、 イネいもち病抵抗性遺伝子を単離することに成功し、 本発明を完成する に至った。
すなわち本発明は、 下記 (a ) 又は (b ) の D N Aを含む、 マグナポ一ザ - グ リセァ( Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物病害に 対する抵抗性遺伝子を提供する。
( a ) 配列表の配列番号 1又は 2に記載の塩基配列を有する D N A。
( b ) ( a ) の D N Aとストリンジェン卜な条件下でハイブリダィズし、 かつマ グナポ一サ · グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こさ れる植物病害に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質をコード する D N A。
また、 本発明は、 下記 (A ) 又は (B ) の、 マグナポーサ ·グリセァ(Magnapo the grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物病害に対する抵抗性を 植物に付与するタンパク質を提供する。
( A ) 配列表の配列番号 3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
( B ) 配列表の配列番号 3に記載のアミノ酸配列において 1若しくは数個のァミ ノ酸残基の置換、 欠失若しくは挿入があるアミノ酸配列を有し、 かつマグナポー サ . グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物 病害に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質。
さらに、 本発明は、 上記遺伝子を導入してなるベクター、 上記べクタ一を植物 細胞に導入し、 この植物細胞を植物体に再生させることを特徴とする、 マグナポ —サ ·グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植 物病害に対して抵抗性の植物の製造方法、 及び、 上記遺伝子が導入された形質転 換植物を提供する。
上記植物として具体的にはィネ科植物が、 さらに具体的にはィネが挙げられる。 マグナポーサ · グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起 こされる植物病害として具体的にはイネのいもち病が挙げられる。
さらに、 また、 本発明は、 上記遺伝子を保有する種子及び上記タンパク質を含 有する種子、 並びに上記遺伝子を保有する玄米又は白米及び上記タンパク質を含 有する玄米又は白米を提供する。
以下、 本発明につき詳細に説明する。
なお、 以下に、 本発明の遺伝子、 ベクタ一並びに本発明の遺伝子を導入した形 質転換植物及びその製造法の一例として、 イネからの該遺伝子の取得、 及びイネ の形質転換植物の製造について述べるが、 本発明の対象となる植物としては、 ィ ネの他、 芝、 麦、 トウモロコシ、 牧草等のイネ科植物が挙げられる。 さらに、 公 知の方法により、 導入する遺伝子のプロモーター部位を、 カリフラワーモザイク ウィルスの 35Sプロモータ一や病原菌の感染時に特異的に発現する PR夕ンパク群 のプロモータ一、 病原菌の感染以外のス トレス、 たとえば乾燥、 熱、 低温、 塩、 過剰な光などにより発現する遺伝子のプロモーター、 また、 葉や茎で特異的に発 現する遺伝子のプロモー夕一など各種植物から単離されたプロモーターで置き換 えて使用することによりその植物に応用することも可能である。 さらには、 遺伝 子のアミノ酸コドンを置換することにより種々の双子葉植物にも応用可能である。 く 1 >本発明の遺伝子及びタンパク質
本発明の遺伝子は、 上記 (a ) 又は (b ) の D N Aを含む遺伝子である。 この D N Aは、 本発明を完成するに当たっては、 次に述べるようにトランスポゾン ' 夕ギングによって取得されたものである力 本発明によってその塩基配列が明ら かにされたので、 この配列に基づいて化学合成することによつても得ることがで きる。 また、 前記配列に基づいて作製した合成オリゴヌクレオチドプローブを用 い、 公知の方法で、 マグナポーサ · グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生 物によって引き起こされる植物病害 (特にいもち病) に対して抵抗性を示す (耐 性) 植物から調製した染色体 D N Aライブラリ一から、 ハイブリダィゼーシヨン によって取得することもできる。 さらに、 前記配列に基づいて作製した合成オリ ゴヌクレオチドをプライマ一とし、 マグナポ一サ ·グリセァ(Magnapothe grisea) に属する微生物によって引き起こされる植物病害 (特にいもち病) に対して抵抗 性を示す (耐性) 植物から調製した染色体 D N Aを銪型とするポリメラ一ゼ 'チ ェイン . リアクション (P C R ) によって増幅することによつても、 上記 D N A
を得ることができる。
以下に、 トランスポゾン ·夕ギングによって本発明の遺伝子を取得する方法を 例示する。
( 1) いもち病抵抗性遺伝子欠失変異体の作出
トウモロコシのトランスポゾン A c (activator) は、 4565 bpの長さで、 Π b Pの末端く り返し配列 (terminal inverted repeats) を持ち、 その内部には 807 アミノ酸からなる転移酵素をコードする。 この転移酵素によって A cは自ら転移 できることから自律性因子 (autonomous elements) と呼ばれる。 一方、 D s (d issociation) は、 A cを制限酵素 Hindlllで消化して、 転移酵素遺伝子の内部の 領域を除去することにより作製された転移酵素遺伝子領域の内部欠失変異体であ り、 自ら転移できず、 転移酵素を発現できる Acとの共存下でのみ転移すること ができる非自律性因子 (non- autonomous elements) と呼ばれる。
このトウモロコシのトランスポゾン Ac (McClintock B., Cold Spring Harbo r Symp Biol., 16, 13-47(1951)、 Muller- Neumann M et al., Mol. Gen. Genet.,
198, 19 - 24(1984)、 Pohlman R et al., Cell, 37, 635-642(1984), Gierl A, S eadler H, Plant Mol. Biol., 19, 39-49(1992), McClintock Β·, Carnegie Ins t Wash Yearb, 46, 146-152(1947))) を制限酵素 Ban I Iで消化して得られる 転移酵素遺伝子領域の上流部に後述するイネ科植物中で発現するプロモーターを、 下流部に後述するイネ科植物中で発現するターミネータ一を連結し、 転移能を持 たない転移酵素の高発現ベクター (以下、 「Acの転移酵素遺伝子領域を含むベ クタ一」 という。 ) を作製する。
一方、 転位因子 D s (McClintock B., Cold Spring Harbor Symp Biol., 16, 13 - 47(1951)、 Muller-Neumann M et al., Mol. Gen. Genet., 198, 19-24(1984)、 Pohlman R et al., Cell, 37, 635-642(1984), Gierl A, Seadler H, Plant Mol
Biol., 19, 39-49(1992), McClintock B" Carnegie Inst Wash Yearb, 46, 14 6- 152(1947))の上流部に上記のようなプロモ一夕一を、 下流部に後述する適当な 選択マーカー遺伝子及び上記のような夕一ミネ一夕一を連結して、 前記の転移酵 素の高発現べクタ一と共存下で転移酵素遺伝子の作用により D sが転移したとき に、 上流部のプロモーターと選択マーカー遺伝子とが連結され、 この選択マーカ
—の作用によって特異的に選択可能となるようにしたベクター (以下、 「D sを 含むベクタ一」 という。 ) を作製する。
次に、 上記のようにして得られたベクターを用いて常法によりイネの形質転換 を行う。 すなわち、 とりで 1号由来のプロ トプラス トを単離し、 液体培地に懸濁 し、 電気パルスを印加して上記ベクターを導入した後、 イネ培養細胞を含有する 培地で培養してコロニーを形成させ、 該コロニ一から植物体を再生させる (Natu re, 337, 274-276 ( 1989) )0
このとき D sを含むベクターを導入した系統は、 転移酵素遺伝子が共存しない ために次代の R 1世代においても安定に伝達され転移は認められない。 しかし、 A cの転移酵素遺伝子領域を含むべク夕一を導入した R 1系統と交配することに より、 上流部にイネ科植物中で発現するプロモーターを、 下流部にイネ科植物中 で発現する夕一ミネ一夕一を連結した転移酵素遺伝子領域及び D sの両方が導入 されると、 上流部にイネ科植物中で発現するプロモ一夕一を、 下流部にイネ科植 物中で発現するターミネータ一を連結した転移酵素遺伝子領域が発現した転移酵 素により D sが転移するようになる。
ここで、 プロ トプラス 卜培養や外来遺伝子の導入により得られた再生個体では、 体細胞変異が高頻度で生じることが知られているため、 この体細胞変異と D sの 転移により誘発された変異とを見分けるために、 D s及び A cの転移酵素遺伝子 領域を含むベクターのそれそれの因子を導入した R 1個体を交配することにより、 両因子の導入を行う。
このようにして、 両因子が導入され、 転移酵素遺伝子の作用により D sの転移 が認められた F 1集団を得ることができる。
なお、 上記で得られた F 1集団の自殖により得られた F 2集団について、 発芽 から生育段階の初期に出現する突然変異を調べることにより、 D sの転移によつ て誘起されたと思われる突然変異体が高頻度で認められることがわかる。 これに より、 イネにおいて A c /D s系を用いての変異体の作出が非常に有効であるこ とが確認できる。
上記の D sの転移によって得られた F 2の変異集団について、 いもち病菌を常 法により噴霧接種して病徴を調べ、 いもち病菌による典型的な紡錘状の罹病病斑
を形成する個体と、 いもち病に対して感受性を示さない個体とを選別する。 さら にこの個体群の自殖により得られた F 3集団について同様に接種試験を行い、 病 徴を調べ、 罹病性を示す個体と示さない個体とを選別する。
このようにして得られた F 2及び; F 3集団を以下の遺伝子解析に使用する。 上記 F 2及び F 3集団より DNAを抽出し、 サザン解析を行って、 得られたい もち病抵抗性遺伝子欠失変異体での D sの挿入と転移の状況を調べると、 罹病性 を示す系統においては、 共通のサイズ (約 23 kb) の位置に D sのバンドが検 出され、 いもち病に対して感受性を示さない個体からはそのバンドが検出されな いことから、 この D s挿入部位が、 とりで 1号がもついもち病抵伉性遺伝子と関 与していることが確認できる。
ここで、 得られた変異体が D sの挿入によって起きたことを確認するには、 揷 入された D sを再び別の場所に転移させることにより元の形質に復帰するかどう かを調べればよい。 すなわち、 上記で得られたいもち病抵抗性遺伝子欠失変異体 の種子よりカルスを誘導し、 プロトプラス卜から再生させることで D sを再度転 移させ、 得られた再生個体でのいもち病菌に対する反応を調べればよい。
上記の共通のサイズの位置に導入された D sを含む隣接したイネゲノム断片を 単離するには、 例えば後述の実施例に示すような Inverse PCR法 (逆 PCR法) を用 いることができる。 すなわち、 いもち病抵抗性遺伝子欠失体から抽出した DNA を適当な制限酵素により消化後、 ァガロース電気泳動により分画し、 約 23 k b 付近のァガロースゲルを切り出してァガロース内の DNA断片を回収する。 得ら れた DNA断片を、 市販のライゲーシヨンキヅトを用いてセルフライゲ一シヨン させる。 さらに導入した D sの両端に位置する塩基配列に基づいて逆 (外側) に 向けてプライマーを設定し、 セルフライゲーシヨンをさせた DN Aを銪型として PCRを行い、 D sが隣接しているゲノム断片を特異的に増幅させる。 増幅した DNA断片を回収し、 その塩基配列をシークェンサ一により調べると、 D sが転 移したときにおこる 8 bpの繰り返し配列 (Fedoroff, NV.,(1989) Berg DE, Ho we MM. (eds), Mobile DNA, American Society for Microbiology, Washington, DC, 375-411(1989)) が認められる。
とりで 1号は、 日本稲である農林 8号とィンド稲である T KM 1とを交配し、
得られた F 1を農林 8号に 5回戻し交配をして得られた品種で、 ほとんどの遺伝 形質は農林 8号由来であるが、 いもち病抵抗性遺伝子 P i - z 1を含むごく一部 の遺伝子が TKM 1由来であることが知られている (Yokoo.M., Kiyosawa, S., Japan J. Breed. 20, 375-411(1970)) 。 そこで、 上記で得られた D N A断片の 塩基配列をもとにプライマ一を設計し、 常法によりとりで 1号から抽出した DN Aを鍊型として PC Rを行い、 D sが挿入された部位を本品種であるとりで 1号 から改めて増幅させ、 例えば約 200 bpの DNA断片を得る。
上記で得られた約 200 b pの DNA断片をプローブとして、 とりで 1号のゲ ノム DNAより作成したゲノミックライブラリーからのスクリーニングを行う。 すなわち、 とりで 1号の葉から、 例えば後述の実施例 6に記載されたような方法 で DN Aを抽出しゲノミヅクライブラリーを作製する。 このようなゲノミック D N Aが組み込まれたえファージを常法により大腸菌に感染させ (Maniatisらの方 法 (Sambrook, J. , Fritsch, E. F. , Maniatis, T. , Molecular Cloning, Cold S pring Harbor Laboratory Press (1989))) 、 これを培養する。 その結果形成さ れたプラークを上記で得られた約 200 bpの DNA断片をプローブとしてブラ ークハイブリダイゼーシヨンを行い、 これを数回繰り返すことによりプラークの 単一化を行う。
上記で得られた単一プラークから常法に従いファージを増殖させ、 例えば後述 の実施例に示したような方法に従って、 挿入 DN Aを精製し、 適当な制限酵素で 消化することで、 いくつかの DNA断片に分け、 大腸菌用プラスミ ドベクタ一、 例えば、 Ml 3ベクター、 pUCベクター、 pBR 322ベクタ一、 pB lue s c r i t I I P h a g em i dベクター等に各々の DNAをサブクロー ニングする。 得られた各々のプラスミ ドを錶型とし、 以下のようにして設計した プライマーを用いた P CR法を行う。 すなわち、 得られた部分的な塩基配列をも とに、 それに連続する塩基配列を調べるためにプライマーを設計する。 その長さ は、 錶型となるプラスミ ド DNAのその部分に正しく結合させるために、 少し長 めの 23mer程度に設定し、 その配列は、 A Tと G Cの含量ができるだけ同じ割 合になる部分を選択する。 また、 繰り返し配列ができるだけない部分を選択する。 そして、 プライマー内での結合が行われないように、 プライマーを設計する。
上記のようにして PCR法を行い、 シークェンサ一により各 DNA断片の塩基 配列を決定することができる。
このようにして得られた塩基配列をもとに新たにプライマーを設計し、 挿入 D N Aを錶型として P CRを行うことにより本発明の遺伝子の全長の塩基配列を決 定することができる。
また、 一般に、 タンパク質のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列には、 そのタンパク質の機能に実質的に影響を与えない相違が、 種間、 株間、 個体間な どで存在し得ることが知られている。 本発明の遺伝子及びそれによりコードされ るタンパク質も、 塩基配列及びァミノ酸配列において、 種間及び株間での上記相 違や個体間で自然突然変異、 変異誘発処理などにより生じ得る上記相違があるこ とが予想される。
従って、 本発明においては、 マグナポーサ · グリセァ(Magnapothe grisea)に 属する微生物によって引き起こされる植物病害に対する抵抗性、 特に、 後述の実 施例で示す方法で測定されるイネいもち病抵抗性を損なわない範囲で、 配列番号 1〜2に示す塩基配列において、 1又は数個の塩基が欠失、 置換又は付加された 塩基配列を有する DNAを含む遺伝子も、 本発明の遺伝子に含まれる。 このよう な欠失、 置換又は付加された塩基配列を有する DN Aは、 例えば部位特異的変異 法によって取得することができる。 また、 本発明の遺伝子若しくはこれを有する 細胞に変異処理を行って得られる DNA若しくは細胞、 又はいもち耐性植物 (同 種変異体も含む) から、 配列番号 1〜 2のいずれかに記載の塩基配列を有する D N Aとストリンジェン卜な条件下でハイプリダイズする DN Aを選択ないし調製 することによつても、 欠失、 置換又は付加された塩基配列を有する遺伝子を得る ことができる。 ここでいう 「ストリンジェン卜な条件」 とは、 いわゆる特異的な ハイプリッドが形成され、 非特異的なハイプリッ ドが形成されない条件をいう。 この条件を明確に数値化することは困難であるが、 一例を示せば、 相同性が高い 核酸同士、 例えば、 完全にマッチしたハイブリッドの Tm〜Tm— 60°C、 好ま しくは Tm~Tm— 40°Cの範囲、 あるいは 50%、 好ましくは 70%以上の相 同性を有する DN A同士がハイプリダイズし、 それより相同性が低い核酸同士が ハイブリダィズしない条件が挙げられる。 ここで相同性は、 C lu s t a lW法
(Nucleic Acids Res., 22, 4673-4680(1994)) により算出した値である。 スト リンジェントな条件として、 より具体的には、 60°Cにおいて、 5 xS S C、 5 Xデンハルト溶液、 0. 5 %SD S溶液中でハイブリダィゼーシヨンを行い、 次 いで、 60°Cにおいて、 0. 1 X S S C、 0. 1 %SD Sで洗浄を行う条件が挙 げられる。
本明細書において 「タンパク質をコードする」 とは、 DN Aが二本鎖の場合、 いずれか一方の鎖が、 DN Aがー本鎖の場合、 その鎖またはその相補鎖がタンパ ク質をコードすることを意味する。
本発明のタンパク質は、 下記 (A) 又は (B) の、 マグナポーサ ·グリセァ(M agnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物病害、 特にいも ち病に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質である。
(A) 配列表の配列番号 3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質。
( B ) 配列表の配列番号 3に記載のァミノ酸配列において 1若しくは数個のァミ ノ酸残基の置換、 欠失若しくは挿入があるアミノ酸配列を有し、 かつマグナポ一 サ . グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物 病害に対する抵抗性を植物に付与する活性を有するタンパク質。
本発明のタンパク質は、 本発明の遺伝子を適当な宿主に導入し、 宿主で発現し たタンパク質を回収することによって得ることができる。 1若しくは数個のアミ ノ酸残基の置換、 欠失若しくは挿入があるアミノ酸配列を有するタンパク質は、 このような変化をもたらす、 1又は数個の塩基が欠失、 置換又は付加された塩基 配列を、 本発明の遺伝子について説明したように、 取得することによって取得可 能である。
タンパク質の回収は、 タンパク質の精製に関して知られている方法やそれらの 組合せにより、 マグナポーサ · グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物に よって引き起こされる植物病害に対する抵抗性を植物に付与する活性や、 その夕 ンノ ク質の免疫化学的性質を指標にして行うことができる。
マグナポ一サ . グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起 こされる植物病害に対する抵抗性の評価方法は、 特に限定されない。 例えば、 植 物病害がイネいもち病の場合には、 後述の実施例で示す方法が挙げられる。
< 2 >本発明のベクター、 形質転換植物及びその製造法並びに種子
上記のようにして得られる約 13 kbの DNA断片を、 いもち病感受性品種である農 林 8号に導入し、 導入された形質転換体の接種試験により抵抗性の有無を確認す ることにより、 この DNA断片が抵抗性遺伝子をコ一ドしていることを判定するこ とができる。 また、 このようにして、 マグナポ一サ 'グリセァ(Magnapothe gris ea)に属する微生物によって引き起こされる植物病害に対して抵抗性の形質転換 植物、 特に、 いもち病抵抗性形質転換植物を作出することができる。
すなわち、 適当なベクタ一、 例えば、 大腸菌選抜マ一力一としてテトラサイク リン抵抗性遺伝子及びスぺクチノマイシン抵抗性遺伝子を、 植物選抜マーカーと してハイグロマイシン抵抗性遺伝子を持つプラスミ ド(pGM 414)を Hpalで切断し たものと、 上記の約 13 kbの DNA断片を Hpalにより消化したものとを、 それそれ、 フエノール処理及びエタノール沈殿により精製し、 両者を連結する (以下、 この 例の得られた組換えべクタ一を pHZT 1と記載する) (図 1 0 ) 。 続いて、 この組 換えベクターを用いてァグロパクテリゥム EHA101株を DNA Cloning (DNA Cloning Vol . I . I I a practical approach, Edited by D.M. Glover, IRL PRESS, Oxford, Washington D. C. ) に記載の方法に準じて形質転換する。 EHA 101のシングルコ ロニ一をー晚 YEB培地(0. ィ一ストエキストラクト, 0.5%ビ一フエキストラクト, 0.5 ペプトン、 0.5%ショ糖、 pH 7.0)で培養し、 その 1 mlを、 1 /g/mlテ卜ラサ イクリン、 25 〃g/mlスぺクチノマイシン及び 50 mg/mlハイグロマイシンを含む Y EB培地に加えて 30°Cで 5〜6時間培養する。 その培養液を 400 rpmで 5分間遠心分離 し、 その沈殿に 20 mlの 10 mM Tris- HC1緩衝液(pH 8.0)を加え、 洗浄する。 回収 した沈殿を 400 〃1の YEB培地に懸濁し、 この懸濁液 90 〃1と先の pHZT 1プラスミ ド 10 ng/10 〃1を合わせて- 110°Cで 5分間、 続いて 37 Cで 25分間処理する。 これ に YEB培地 400 1を加えて 30°Cで一晩振盪培養する。 この培養液の 50 〃1を 1 〃 g/mlテトラサイクリン、 25 〃g/mlスぺクチノマイシン及び 50 mg/mlハイグロマ イシンを含む YEB寒天培地にまいて 30°Cでニ晚培養し、 プラスミ ドを含んだコロ ニーを選抜する。 このコロニーからプラスミ ドを回収すれば、 本発明のベクター が得られる。
上記のようにして構築した組換えべクタ一(pHZT 1 )は、 例えば、 Hiei Y.らの
方法(Hiei Y. et al . ( 1994) . Plant J. 6 ; 271- 282. )に従って、 ァグロバクテ リウム法により、 農林 8号への導入を行うことができる。 すなわち、 籾を取り除 いた農林 8号の完熟種子を、 次亜塩素酸ナトリウムで滅菌後、 2 mg/mlの 2, 4- Dを 含む MS培地 (Physiol . Plantarum. 15, 473-497 ( 1962) )上に置床し、 カルスを誘 導する。 誘導 3週間後の胚盤由来のカルスのみを、 新しい MS培地に移植し、 さら に 3日間、 25°C、 明所で培養する。 pHZT 1プラスミ ドを有したァグロバクテリウ ムの 1コロニーを抗生物質を含む YEB培地(0. 1%ィ一ストエキス卜ラク 卜, 0.5%ビ 一フエキス トラク ト, 0.5%ペプトン, 0.5%ショ糖, pH 7. 0 )5 ml中、 30°Cで一晩 培養する。 この培養液を 3000 rpmで 10分間遠心分離し、 3%のショ糖を含む R2液体 培地 (Plant Cel l Physiol . 1997, 14; 1113 )で一回洗浄した後、 同じ R2培地に懸 濁する。 このァグロパクテリゥム懸濁液に先の前培養したカルスを入れて 25°Cで 2〜 3分間振とう培養する。 この溶液を濾過しカルスのみ取り出し、 無菌べ一パ 一夕オル上で余分なァグロパクテリゥムを取り除き元の前培養培地上でニ晚同時 培養しカルスにァグロパクテリゥムを感染させる。 この後カルスを除菌培地 (B5 -ビタミン、 1 ing/L 2,4-ジクロロフヱノキシ酢酸、 3 ショ糖、 0. 7%ァガロース、 500 mg/Lカルペニシリンを含んだ R2寒天培地) 上に移して三日間培養してァグロ パクテリゥムの増殖を抑える。 次にこれらのカルスを一次選抜培地 (B5-ビ夕ミ ン、 3 mg/Lベンジルァミノプリン、 1 mg/Lゼァチン、 2%ショ糖、 0.7%ァガロース、 15 mg/Lハイグロマイシン、 500 mg/Lカルペニシリンを含む R2寒天培地) 上に移 して 2週間培養する。 これによりァグロパクテリゥムが感染して pHZTlプラスミ ド を持った形質転換植物細胞のみが分裂増殖して緑色のカルスを形成することがで きる。 更にこれらのカルスを二次選抜培地 (一次選抜培地のショ糖含量を 2%から 1%に減少させた培地) 上に移し 3週間培養する。 この時、 形質転換したカルスは 更に大きくなるので、 次にこのカルス部分のみを発芽培地 (二次選抜培地のカル ペニシリンを 500 mg/Lから 250 mg/Uこ減少させたもの) に移す。 再生した芽は伸 長培地 (0. 1 mg/Lベンジルァミノプリン、 250 mg/Lカルペニシリン、 0. 7%ァガロ —スを含む B5寒天培地) 上で成長させ、 次に発根培地 (0. 1 mg/L ナフタレン 酢酸、 0. 01 mg/Lゼァチン、 3 ショ糖、 0.8%ァガロースを含む R2寒天培地) に移 した後、 馴化させることにより形質転換植物を得ることができる。
なお、 得られた形質転換植物のいもち病抵抗性の確認は、 後述の実施例 5に記 載したような方法、 例えば、 いもち病菌分生胞子を植物体に噴霧接種し、 10日後 に形成される病徴の程度を調べることにより確認することができる。
上記と同様にして、 イネの他、 芝、 麦、 トウモロコシ等の、 マグナポ一サ ' グ リセァ( Magnapothe gr isea )に属する微生物によって引き起こされる植物病害に 対して感受性、 特にいもち病感受性のイネ科植物、 あるいはマグナポーサ · グリ セァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物病害に対 して感受性、 特にいもち病感受性の他の植物に本発明の遺伝子を導入することに よって、 マグナポ一サ · グリセァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって 引き起こされる植物病害に対して抵抗性の形質転換植物、 特に、 いもち病抵抗性 の形質転換植物を作出することができる。
本発明の種子は、 上記遺伝子を保有する又は上記タンパク質を含有することを 特徴とする。 本発明の種子は、 通常には、 上記形質転換植物の種子として得られ る。 本発明の種子は、 好ましくは、 イネの種子すなわち籾である。
本発明の種子は、 植物の種類に応じて種子に通常に適用される加工方法により 加工品とすることができる。 例えば、 イネの場合には、 脱穀により玄米とし、 さ らに精白により白米とすることができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 実施例 1及び 2で作製したベクターの構造を表す図。
図 2は、 実施例 2で得られた D s導入個体のサザン解析の結果を表す電気泳動 図 3は、 実施例 3の 3 5 S— A c及び D sの導入と転移能を確認したサザン解 祈の結果を表す電気泳動写真。
図 4は、 実施例 6で得られた変異系統の D sをプローブとしたサザンハイプリ ダイゼーシヨンの結果を示す電気泳動写真。
図 5は、 実施例 6で得られた罹病型及び褐点型変異系統由来の DNAを複数の制 限酵素により消化したもののサザン解析の結果を示す電気泳動写真。
図 6は、 実施例 Ίで得られた抵抗性欠失変異体からの再生個体について変異の
出願頻度 (D sの再転移) を調べたサザン解析の結果を示す電気泳動写真。
図 7は、 実施例 8 < 1 >で行つた Inverse PCRの模式図。
図 8は、 実施例 8く 2 >で行った P C R用のプライマーの設計方法を示す図。 図 9は、 実施例 8の D s隣接の D N A断片の多型解析 (サザン解析) の結果を 示す電気泳動写真。
図 1 0は、 本発明の遺伝子を含むベクターの一実施例である pHZT 1の構造を示 す図。
図 1 1は、 実施例 9で得られた形質転換植物について、 導入遺伝子の有無を調 ベたサザン解析の結果を示す電気泳動写真。
図 1 2は、 実施例 9で得られた形質転換植物のうち、 いもち病抵抗性の植物の 次世代について、 導入遺伝子の有無を調べたサザン解析の結果を示す電気泳動写 真。
図 1 3は、 本発明の遺伝子の構造の模式図。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明につき実施例を挙げて具体的に説明するが、 本発明はその要旨を 超えない限り、 以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例 1 トウモロコシのトランスポゾン由来の転移酵素遺伝子を有するベ クタ一及び転移因子を有するベクターの構築
トウモロコシのトランスポゾン Acを制限酵素 B an 1 1で消化して得られた転移酵 素遺伝子領域の上流部に力リフラワーモザイクウィルス 35- Sプロモ一夕一を、 下 流部に力リフラワーモザイクウィルス 35-S夕一ミネ一ターを連結し、 pUC6をべク 夕一として用い、 転移酵素の高発現ベクターを作製し、 PCKR532と名づけた (Mol . Gen. Genet. ( 1993 ) 239, 354-360、 図 1参照) 。 以下、 pCKR532が有する 35 - S プロモーターによって制御される転移酵素遺伝子を 「35S- Ac」 という。 pCKR532 は、 Acの両末端領域を欠失しており、 転移能を有しない。
一方、 Acを制限酵素 Hindl l lで消化することにより転位酵素遺伝子領域の一部 が除去され、 自ら転位酵素を発現できない転移因子 Dsの上流部に 35- Sプロモー夕 —を、 下流部にハイグロマイシン抵抗性遺伝子 (ハイグロマイシンフォスフォ ト
ランスフヱラーゼ遺伝子 (hph) ) のコ一ド領域及び 35- S夕一ミネ一夕一を連結し、 PUC6をべクタ一として用い、 pCKR234を作製した (Mol . Gen. Genet. ( 1993) 239,
354-360、 図 1参照) o この pCKR234は、 pCKR532共存下で、 pCKR532が発現する 転移酵素遺伝子の作用により Ds部分が転移したときに、 上流部のプロモーターと ハイグロマイシン抵抗性遺伝子が連結され、 ハイグロマイシン抵抗性を与える
(図 1参照) 。
実施例 2 トウモロコシのトランスポゾンのイネへの導入
実施例 1で得られた、 転移酵素遺伝子と転移因子のベクタ一を用いて、 イネへ の形質転換を行なった。
( 1 ) イネプロ 卜プラス 卜の単離
本実施例に使用したイネ植物由来のプロ 卜プラス卜は、 栽培イネ (品種: とり で 1号) の完熟種子に由来するもので、 以下のようにして得た。 完熟種子のサス ペンション細胞を R2培地 (Plant. Cel l . Physiol . , 14, 1113( 1973 ) )で培養した 後、 4%セルラーゼ RS (ヤクルト社の商品名) 、 1 %マセロザィム R10 (ヤクルト社 の商品名) 及び 0.4Mマ二トールを含む酵素液 (pH 5.6) で 3〜4時間 30°Cで処 理した。 酵素処理液を濾過した後、 濾液に 4倍量の KMC液 (塩化カリウム 0· 118Μ、 塩化マグネシウム 0.0817Μ、 塩化カルシウム 0.085M, pH 6.0) を加え、 遠心分 離して沈降したプロトプラストを集め、 さらに KMC液で 2回洗浄した。
( 2 ) 電気パルスによる 35S- Acと Dsの導入
前記 ( 1 ) で調製したプロトプラストを、 EP3緩衝液 (70 mM KC1 , 5 mM MgC , 0.4Mマンニトール、 0. 1 %MESを含む緩衝液(pH 5.8)) に 4 x 106個/ mlとなるよ うに懸濁した。 この懸濁液に、 上記実施例 1で得たプラスミ ド、 PCKR234と pCKR5 32 (60 g/ml ) ならびに選択マーカ一として、 35- Sプロモーターにより制御され るハイグロマイシンフォスフォ トランスフェラーゼ遺伝子を有するプラスミ ド pS HI943 (図 1 : 60〃g/ml) を混合して添加し、 4°Cで 5分間冷却した後、 滅菌した プラスチックセルに移し、 並行電極を用い、 直流の電気パルスを印加した。 その 際、 80〃Fのコンデンサーを用いて 300 V/cmの初期電圧をかけ、 パルス幅は 10 ms ecとした。 パルス印加後 4 °Cで 10分間冷却した後、 等量の R2/MSプロ トプラス ト ァガロース培地と混合し、 プレートに広げて 0.7 腿の厚さとなるように固化させ
た。 この時の細胞密度は約 3 x l06個/ mlであった。
( 3 ) プロ トプラス 卜の培養
電気パルス法により各々のベクターを導入したプロ卜プラストを含むァガロー スを 10 mm x lO 匪大の大きさに切断し、 R2液体プロトプラスト培地 (2, 4-ジクロ 口フエノキシ酢酸 (2,4- D) 2 g/ 6¾ショ糖) 5 mlを入れた直径 6 cmのプレー 卜に入れ、 更に約 100 mg(FW)のイネ培養細胞をナース細胞として入れた。 プロト プラストは約 25 Cで約 10日間、 50 r. p. m.の回転数でゆつく り振とうしながら、 暗条件下で培養した。
このナース細胞として用いたイネ培養細胞は次のようにして調製した。 実生の イネの根に由来するカルス (0C l ine) を、 前述の R 2液体プロ トプラス ト培地 中で週 1回植え継ぐことによって作製した懸濁培養細胞中に存在する分裂旺盛な 細かい細胞 ( Ι ΙΜΦ ) を集めた。
10日間培養後、 ナース細胞を KMC液を用いて取り除いた。 さらに、 培養 2〜4日 後に 20 〃g/mlとなるようにハイグロマイシン Bを培地に加え、 2〜3週間培養し た。 次いでこのァガ口一ス片を R2ソフ トァガー培地 (2, 4-ジクロロフエノキシ酢 酸 (2,4- D) 2 mg/L、 6¾ショ糖、 0.25%ァガロース) において培養し、 2〜4週間後、 さらに大きくなったコロニーを個々に分けて、 R2ソフトァガ一培地に移した。 このカルスを R2再生培地 (3%ソルビトール、 2%ショ糖、 1 %ァガロース (pH 5.8) ) に移し、 25°C、 2000-4000 luxの条件下で 3~10週間培養すると、 芽及び 根が現れた。 芽が 2 cm程度に成長したところで、 R2再生培地を入れたプラスチッ クボックスに移し、 幼植物へと成長させた。 さらにバ一ミユキユライ トポットに 移植して生育させたところ、 成熟した完全な形質転換イネ植物体が得られた。 ここで得られた形質転換体は、 Ds導入個体が 6個体、 35S- Ac導入個体が 5個体 であった。 しかしながら、 6個体の Ds導入個体のうち稔性があり、 R1種子が得ら れたものは 1個体のみであり、 その R1集団の Ds導入の状況をサザン解析 (後述の 実施例 6の方法) で調べた (図 2 ) 。 その結果、 図 2中の A、 B、 C、 Dの 4コ ピーの Dsの導入が確認された (図 2中、 C oはコントロール (非形質転換体) 、 R oは形質転換体 (当代) を示す) 。 以後の実験にはその中の 4コピーの導入系 統を使用した。
実施例 3 交配による、 転移酵素遺伝子と転移因子の導入 プロ卜プラスト培養や外来遺伝子の導入により得られた再生個体では高頻度で 体細胞変異が生じることが知られている。 単一個体中に 35S- Ac及び Dsが導入され たときに、 35S- Ac中の転移酵素遺伝子による Dsの転移により誘発された変異と、 前記体細胞変異とを見分けるために、 35S- Ac又は Dsを導入した各々の R1個体を交 配することによる両因子の導入を試みた。
35S- Ac及び Dsが導入された形質転換 R1個体のそれそれ 5系統ずつ合計 10個体を 2 5°C、 12時間日長条件の温室内で生育させ、 出穂させた後、 開花前日に各個体の 半分の穂に対し、 45° (:、 7分間の温湯処理をすることにより、 花粉を不活化し、 不活化したおしべをピンセッ 卜で除去した。 次の日、 温湯処理をしていないもう 半分の穂の開花と同時に、 その花粉を前日温湯処理をした花のめしべにピンセッ 卜でふりかけ、 交配をおこなった。 その時、 35S- Ac導入個体のめしべには Dsの花 粉を、 またその逆となるように交配作業をした。 交配後、 それそれの穂に袋をか け、 温室内で結実するまで生育させた。
約 1ヶ月後、 交配し、 結実した F1種子を発芽させ、 同様の条件で生育させ、 第 4葉展開期ごろに第 2葉を取り、 そこから MAを抽出し (後述の実施例 6の方法) 、 35S- Acまたは Dsをプローブとして実施例 6と同様にサザン解析を行い、 両因子の 導入と転移能を確認した (図 3 ) 。 すなわち、 両因子が導入された個体について は、 交配前に 4コピー存在していた Dsの、 35S— Acが発現した転移酵素による転移 が起こり、 バンドの位置やコピー数の増加が認められた。 得られた F1種子 137個 体中、 76個体で Dsの転移が認められ、 そのうち稔性のあったものは 69個体であつ た。 このようにして、 35S- Acの作用により Dsの転移が確認された 69個体について、 次世代 F2の種子を採取し、 以後の実験に使用した。
実施例 4 Dsの転移により誘発された変異
Dsの転移が確認された Π , 69個体から得られた F2集団の、 それそれ約 100粒づ つ、 合計約 7000の種子を播種し、 発芽から生育段階の初期に出現する突然変異を 調べた。 その結果、 Dsの転移により誘起されたと思われる突然変異体が高頻度で 認められ、 その変異の代表的なものには、 葉緑体の異常により起こる斑入り (va riegation) やストライプ、 アルビノ、 クロリナなど、 また、 わい性や双子胚、
巻き葉などの形態異常、 さらにはその後の出穂期が 2週間も早生なものもあった。 このようにイネにおいて Ac/Ds系を用いての変異体の作出が非常に有効であるこ とが確認された。
実施例 5 噴霧接種法によるいもち病感受性変異体のスクリーニング Dsの転移によって得られた F2の変異集団、 69系統、 約 7, 000個体について、 い もち病菌、 レース 031 (農業生物資源研究所より入手可能) の分生胞子を噴霧接種 し、 病徴を調べた。 すなわち、 あらかじめ PSA (potato sucrose agar) 培地上で 前培養した菌糸片をォ一トミール培地 (ォ一トミール : 200 g 寒天: 15 g ) に移植し、 シャーレ全体に菌糸層が広がった時点 (約 2週間後) で培地表面の菌 糸 (気中菌糸) を筆で洗い取り、 25°C、 蛍光灯照射下で 3日間培養し、 培地表面 に分生胞子を形成させた。
形成された培地表面の分生胞子を筆にて水洗しながら集め、 4重ガーゼ濾過に よって菌糸片を除去し、 106胞子/ mlに調整した。 この胞子戀だく液を F2集団、 約 7, 000個体の第 4葉展開期に噴霧接種し、 24時間、 100%湿度下に放置したのち 25 °C、 半日長条件下の温室にて育成させ、 約 10曰後に形成された病斑の程度を調べ た。
その結果、 F2集団、 69系統のうち 29系統、 96個体で、 いもち病菌による、 典型 的な紡錘状の罹病病斑を形成する個体が出現した。 さらにこの F2、 29系統、 96個 体から得られた F3集団の、 それそれ 100個体、 合計約 10 , 000個体について再度同 様に接種試験を行い、 病徴の遺伝的分離を調べたところ、 26系統で 100%罹病性 を示し (罹病病徴) 、 いもち病感受性は安定的に後代へ伝達されていた。 一方、 これら 26系統の他に、 12系統においては赤褐色の褐点病斑を形成し (褐点病徴) 、 これらの個体は抵抗性ではあるが本来のとりで 1号の反応型とは明らかに異なる ものであり、 これらも安定な変異系統であることが確認された。
実施例 6 いもち病感受性変異体の遺伝子解析
得られた感受性変異体での Dsの挿入と転移の状況を調べるために感受性変異体 の F2ならびに F3集団より DNAを抽出し、 Dsをプローブとしてサザン解析を行った。 すなわち、 感受性変異体 F2と F3苗、 各 14個体の若い葉より DNAを抽出した (Mol . Gen. Genet . , 211 , 27 ( 1988 ) ) 。 約 10〜15 cm長の葉片を液体窒素下で摩砕し、
2 mlの Sol . 1 ( 15 ショ糖, 50 mM Tris-HCl (pH 8.0), 50 mM Na-EDTA, 500 mM N aCl )に懸濁した後、 600 rpm、 3分の遠心後、 上清を取り除き、 600 〃Lの再懸濁 バッファー(20 mM Tris-HCl, 10 mM EDTA)と 20%SDSを 40 〃Lを加え、 懸濁した後、 65°Cで 15分間加温し、 ここに、 7.5 M酢酸アンモニゥム 350 Lを加えて氷上で 30 分間置き、 15,000 rpm、 4°C、 15分間遠心後、 上清にプロパノール 1 mLを加えて 再度同様の条件で遠心して DNAを沈殿させた。 得られた DNAを 70% EtOHで洗い、 乾 燥させた後、 TEバッファー(10 mM Tris-HCl (pH8.0 ) , 1 mM EDTA)50〃Lに溶かし た。 これらの DNA溶液を制限酵素、 Bgl l lで消化し、 0.8%ァガロースにて電気泳 動した。
電気泳動にて分画したァガロース内の DNA断片をナイロンメンブレインに写し、 乾燥後、 3 2 P- dCTPにより標識した Dsをプローブとして常法によりサザンハイブリ ダイゼ一ションを行った。
その結果、 罹病病斑と褐点病斑を形成した変異体の系統(C-12- 12及び C-12- 16 ) で共通のサイズ (約 23 kb) の位置に Dsのバンドが検出され、 その Dsは安定的に F 3世代へ伝達されていた (図 4 ) 。 さらに、 それそれのバンドの DNAを、 複数の制 限酵素で消化し、 サザン解析を行ったところ、 両者の Ds挿入部位が非常に近いこ とが推定された (図 5 ) 。 しかしながら、 感受性を示さなかった個体の系統 (C - 1 2- 40)からはその大きさのバンドは検出されなかった (図 4 ) 。 すなわち、 この 共通したバンドの Ds挿入部位がとりで 1号が持つ抵枋性遺伝子と関与しているこ とが示唆された。 なお、 各系統の R1はそれそれ図 2に示した #11を交配親として 使用したものである。
実施例 7 復帰突然変異体の作出
得られた変異体が Dsの挿入によって起きたという事実は、 挿入された Dsを再び 別の場所へ転移させることによつて元の抵抗性に復帰するかどうかを調べること で証明される。
感受性変異体のいくつかの系統は、 揷入された Dsは 35S- Acが共存しているにも 関わらず安定的に次代へ伝達されている。 一般的に DNA型トランスポゾンの転移 活性の制御にはシトシン残基のメチル化が関係していると考えられている。 そし てその脱メチル化は DNAの修復過程で起こると考えられており、 放射線や紫外線
などで誘発される。 また、 トランスポゾンの転移はウィルスの感染や傷、 培養な どのストレスによって活性化されることが知られている。
そこで抵抗性欠失変異体の F4種子よりカルスを誘導し、 プロ卜プラス卜からの 再生を行った (実施例 2の方法) 。 その結果、 得られた再生個体の R1集団につい て、 変異の出現頻度と Dsの再転移をサザン法により調べたところ、 下記表 2及び 3に示すように、 いくつかの系統において新たなサイズのバンドが複数認められ たことから再び Dsの転移が確認され、 様々な変異が新たに誘発された。 表 2 R1集団における変異対の出現頻度
C-1 2-12-4 (D s/35 S-Ac) : D s転移
Rl o 1-1 1-4 1-9 1-13 1-14 1-15 2-4 2-5
No. of germ 21 80 40 81 209 224 43 78 ストライプ 3 7
アルビノ
双子胚 3
矮性 1 1 致死 2 25 4 4
表 3 R 1集団における変異対の出現頻度
Dsの再転移によって、 F2、 F3世代で見られた共通のバンドはもはや検出されな かった (図 6 ) 。 ここで得られた R1集団について、 接種試験を行い、 Dsの転移に よる抵抗性への復帰を調べたところ、 下記表 4に示すように、 罹病病斑を示した 変異体 (罹病型) からは、 64系統 1870個体中、 5個体の褐点型個体 (抵抗性) と、 7個体の無病徴型個体 (高度抵抗性) が、 また、 褐点病班を示した変異体 (褐点 型) からは、 5系統 661個体中、 3個体の罹病型個体 (罹病性) と、 4個体の無病 徴型個体が出現した。
表 4 プロトプラスト培養または転移酵素遺伝子の再導入による 感受性変異体からの復帰突然変異体の出現頻度
S :罹病性、 R :抵抗性、 H R :高度抵抗性 実施例 8 Ds挿入部位のクローニング
< 1 > Inverse PCR法 (逆 PCR法) による Ds隣接部位 DNA断片の単離
共通のサイズ (約 23 kb) の位置に導入された Dsを含む隣接したイネゲノム断 片を単離するために Inverse PCRを行った。 すなわち、 罹病型変異体及び褐点型 変異体からそれぞれ抽出した DNAを Bgl 11で消化し、 0.8%ァガロース電気泳動によ り分画し、 約 23 kb付近のゲルを切り出し、 ァガロースゲル内の DNA断片を回収し た。 得られた DNA断片を宝酒造社のライゲーシヨンキットを用いて、 セルフライ ゲーシヨン、 すなわち、 一本、 一本の断片が個々に環を形成するようにライゲ一 シヨンをさせた。 さらに、 導入した Dsの両端に位置する塩基配列に基づき、 伸長 方向を逆 (外側) に向けてプライマー (配列表の配列番号 4〜 7 ) を設定し、 セ ルフライゲ一シヨンをさせた DNAを銃型として PCRを行い (実施例 8く 5 > ) 、 Ds が隣接しているゲノム断片を特異的に増幅させた (図 7 ) 。 増幅した DNA断片を 回収し、 その塩基配列を AB I社の自動蛍光シークェンサ一により調べたところ (実施例 8く 5〉) 、 罹病型ならびに褐点型の両者ともそれぞれに、 Dsが転移し たときにおこる 8 bpの繰り返し配列が認められた。
く 2 >Ds隣接 DNA断片の多型解析
とりで 1号は、 日本稲である農林 8号とインド稲である TKM1を交配し、 得られた F 1を農林 8号に 5回もどし交配して得られた品種で、 ほとんどの遺伝形質は農林 8 号由来であるが、 抵抗性遺伝子 (Pi- Z 1 ) を含むごく一部の遺伝子が TKM1由来で
あることが知られている。 そこで、 く 1 >で得られた DNA断片の塩基配列をもと にプライマーを設計し (配列表の配列番号 8及び 9) (図 8) 、 とりで 1号から 抽出した DNAを銪型として PCRを行い、 Dsが挿入された部位を本品種であるとりで 1号から改めて増幅させ、 約 200 bpの DNA断片を得た。 この DNA断片をプローブと して、 農林 8号、 とりで 1号、 TKM1の 3品種から抽出したゲノム MA (実施例 6の方 法) を Bglllで消化後、 サザン解析 (実施例 6の方法) を行い、 制限酵素断片多 型の有無、 ならびに位置関係を調べた。 その結果、 とりで 1号(Toride 1)と TKM1 には同じサイズ (約 10 kb) にバンドが検出されたが、 農林 8号(N8)では異なるサ ィズ (約 7 kb) にバンドが検出された (図 9) 。 すなわち、 得られた DNA断片に コードされている塩基配列は、 3品種とも相同性のあるものは存在するが、 ゲノ ム上の位置はとりで 1号と TKM1では類似し、 農林 8号では異なることから、 得ら れた断片は TKM1由来の断片であることが推定された。
< 3 >ゲノミックライブラリーからのいもち病抵抗性遺伝子のスクリ一ニング (A) ゲノミックライブラリ一の作製
得られた約 200 bpの DNA断片をプローブとして、 とりで 1号のゲノム DNAより作 成したゲノミックライブラリーからのいもち病抵抗性遺伝子のスクリーニングを 行った。 すなわち、 とりで 1号の葉から実施例 6の方法で MAを抽出し、 制限酵素、 Bglllで消化後、 ァガロースゲル電気泳動により分画した。 8〜15 kb付近の位置 にある部分を切り出し、 ァガロースゲル内の DNA断片を抽出した。 得られた DNA断 片を、 STRATAGENE社の LAMBDA FIX II / Xholパーシャルフィルインベクター(Par tial Fill-in vector)に挿入した。 すなわち、 50 〃gの DNA断片と、 30 〃1の 10 Xフィルインバッファー(60 mM Tris-HCL (pH 7.5), 60 mM NaCl, 60 mM gCL, 0.5%(w/v)ゼラチン, 15 mMジチオスレィ トール(DTT) )ならびに 5 〃mの 10 mM dA TP, 5 〃1の 10 mM dGTP, 15 Uの DNAポリメラ一ゼ 'クレノウ ' フラグメント 'ェ ンザィムを混合し、 最終量 300〃 1になるように水で調節し、 室温で 15分間放置し た。
その後、 33 〃1の 10XSTEU M NaCl, 200 mM Tris-HCl(pH 7.5), 100 mM EDTA) と 100 〃1の lxSTE(100 mM NaCl, 20 mM Tris-HCl(pH 7.5), 10 mM EDTA)を加え、 等量のフエノール: クロロフオルム混液(25:24)を加え、 混合し、 遠心分離によ
り分画した上清に 1/10量の 5 ^ &(½(:と2.5倍量のェ夕ノールを加ぇ、 遠心分離に より DNAを沈澱させた。 得られた DNAの 0.4 /gと 1 gの Lambda FIXベクター、 な らびに 0.5 〃1の 10Xライゲ一シヨンバッファ一(500 mM Tris- HCl(pH 7.5), 70 mM MgCL, 10 mM DTT), 0.5 〃1の 10 mM ATP (pH 7.5), 2 Weiss Uの T4 DNAリガ ーゼを加え、 最終量 5.0 〃1になるように水で調整し、 4°Cで一昼夜インキュべ一 卜することによりベクタ一と DNA断片を連結させた。
連結した DNAのパッケージングを行った。 すなわち、 STRATAGE 社の Gigapack II Gold Packaging Extractと 0.5 〃gの連結した DNAを混合し、 22°Cで 2時間イン キュペートした後、 500〃1の SMバッファ一(5.8 g NaCl, 2.0 g MgS04 - 7H20, 50. 0 ml 1M Tris-HCl(pH 7.5), 5.0 ml 2%(w/v)ゼラチン( 1 L当たり))と 20 〃1の クロロフオルムを加えた。 これをファージ溶液とした。
(B) スクリーニング
大腸菌 X - Blue MRA (P2)株のシングルコロニーを 10 mM MgS04と 0.2%(w/v)マ ルトースを含む LB培地(10 g NaCl, 10 gトリプトン, 5 gィ一ストエキストラク ト( 1 L当たり)) 100 ml中で 37°Cにおいて 4時間培養し、 500xg、 10分の遠心分 離により集菌し、 10 mM MgS04溶液で、 菌濃度を 0D6。。が 0.5となるように調整し た。 この菌に (A) で調製したファージ溶液を 37°Cで 10分間保温することで吸着 させ、 LBプレート上にまき、 37°Cで 8時間培養し、 プラークを形成させた。 この プラークを、 ナイロンメンプレインに写し、 実施例 8く 2 >で得られた 200 bpの MA断片をプローブとして、 サザン解析のときと同条件でプラークハイプリダイ ゼーシヨンを行った。 得られたポジティブプラークをプレートから取り出し、 上 記操作を、 3回繰り返すことで、 プラークの単一化を行った。
く 4 >サブクローニング
(A) ラムダ DNAの抽出
実施例 8 < 3 >で得られた単一プラークを 1プレート当たり約 1万プラークと なるように、 ファージ溶液と菌懸濁液 (実施例 8<3>(A)の方法) を混合し、 37°C で 20分間培養し、 プレーティングした (実施例 8く 3>(B)の方法) 。 8時間後、 プ ラーク形成したプレートに 5 mlの SMバヅファ一を加え、 ソフトァガ一ごとブラ一 クを回収した。 これにクロロフオルムを数滴加え、 混合後、 3000 r.p.m.、 10分
間の遠心により上清をとり、 10 〃1の DNase 1(10 mg/ml)を加え、 室温で 20分間 放置した。 1/4量の 5XPEG溶液 (207 ポリエチレングリコール #6000, 6 gデキ ストランサルフェート, 49.5 g NaCl/600 ml)を加え、 氷上に 1時間置いた。 100 00 r.p.m.、 10分の遠心分離により沈澱を回収し、 1 mlの TEバッファ一と、 25 /ι 1の 20% SDS, 171 〃1の 5M NaCl, 128 〃 1の CTAB/NaCl溶液(4.1 g NaCl, 10 gセ チノレ卜リメチリレアンモニゥムフ、 '口ミ ド (Cetyltrimethyl— ammonium bromide)/100 ml)を加え、 65°Cで 10分間ィンキュベートした。 等量のクロロフオルム :ィソァ ミルアルコール (24:1) 混液と混合し、 5000 r.p.m.、 5分間の遠心により上清を 回収し、 さらに等量のフヱノール: クロロフオルム(25:24)混液を加え、 混合し、 5000 r.p.m.、 5分間の遠心により上清を回収した。 回収した上清に 0.6倍容のィ ソプロパノールを加え、 すぐに室温下で 15000 r.p.m.、 10分間の遠心により沈澱 を回収し、 70 エタノールで洗浄後、 乾燥したものを 1 ^g/mlの RNase Aを含む 20 0 /1の TEバッファ一に溶解した。 次に 33.3 〃1の 5M NaClと 25 1の CTAB/NaCl を加え、 65。Cで 10分間保温した。 そしてもう一度等量のクロロフオルム :イソァ ミルアルコール (24:1) 混液と混合し、 5000 r.p.m.、 5分間の遠心により上清 を回収し、 さらに等量のフエノール: クロロフオルム(25:24)混液を加え、 混合 し、 5000 r.p.m.、 5分間の遠心により上清を回収した。 回収した上清に 0.6倍容 のイソプロパノールを加え、 すぐに室温下で 15000 r.p.m.、 10 分間の遠心によ り沈澱を回収し、 70%エタノールで洗浄後、 乾燥したものを 100 〃1の TEバッファ 一に溶解した。 得られたファージ DNAを、 挿入した DNA断片と連結した部分で切断 するために、 制限酵素 Notlで消化し、 挿入 DNAの長さを電気泳動により調べたと ころ、 約 13 kbであった。
(B) クローニング
得られたファージ DNAを制限酵素 Hindlllで消化することにより、 6種類の断片 に分断し、 それそれの断片を pBluescript II KS+ ベクタ一 (staratagene社) の Hindlll部位に宝酒造社のライゲ一シヨンキットを用いて連結し、 得られた組 換えベクターで大腸菌 DH5ひ株を形質転換した。 形質転換の方法は、 Harmhanの方 法 (DNA cloning, vol. 1, pl09〜136 (1985)) に従って行い、 6種類のクローン 得た。 それそれの形質転換された大腸菌を 50 〃g/mlのアンピシリンを含む 20
mlの LB培地 (実施例 8く 9>(B) ) で増殖させ、 プラスミ ドを抽出した。
く 5 >塩基配列の決定
得られた 6種類の断片について、 個々に塩基配列を決定した。 すなわち、 く 4 >で抽出したプラスミ ドを銪型とし、 プライマーは、 ベクターのクローニングサ ィ トの 5,側の内側のリバーサルプラィマ一、 ならびに 3'側の内側のユニバーサル プライマー、 それそれ 19 bpのオリゴヌクレオチドを用いて ABI社の手法に従って PCRを行い、 ABI社 (アプライ ドバイオシステムズ社) の自動蛍光シークェンサ一 によりシークェンシングを行った (Brow, M. A. D. ( 1990) PCR Protocols. A G uide to Methodsand Applications, pp. 189~196, Editted by M. A. Innis e t al . Academic Press) 0
さらに得られた塩基配列を基に、 それに連続する塩基配列を調べるために、 新 しくブライマ一を設計した。 その長さは、 銪型となるそれそれのプラスミ ドのプ ライマー結合部位に正しく結合させるために、 少し長めの 2 3 mersとし、 その配 列は、 ATと GCの含量が出来るだけ同じ割合になる部分を選択した。 また、 繰り返 し配列の無い部分、 そしてプライマ一内やプライマ一同士での結合が起こらない 部分を考慮した。 これらのプライマ一を用いて、 同様に PCRを行い、 シークェン シングを行った。 さらにこの塩基配列を基に新たにプライマーを設計し、 13 kb 断片を錡型として PCRを行うことで 6種の断片を繋げ、 全長の塩基配列を決定した (配列表の配列番号 1 ) 。
S型反応を引き起こす罹病型変異体は、 配列表の配列番号 1の 8728 bpの部位 に、 Dsが挿入されていることが明らかとなり、 この部分の変異が抵抗性遺伝子の 発現の有無とその程度を決定する重要な部分であることが示唆された。
実施例 9 形質転換体の作出
< 1 >導入ベクターの構築
実施例 8 (4) (A)で得られた約 13 kbの DNA断片を、 いもち病感受性品種である農 林 8号に導入し、 導入された形質転換体の接種試験により抵抗性の有無を確認す ることにより、 この DNA断片が抵抗性遺伝子をコ一ドしていることを判定した。 すなわち、 大腸菌選抜マーカ一にテトラサイクリン抵抗性遺伝子及びスぺクチ ノマイシン抵抗性遺伝子を、 植物選抜マ一カーにハイグロマイシン抵抗性遺伝子
を持つプラスミ ド(pGM 414)を Hpalで切断したものと、 約 13 kbの DNA断片を、 Hpa Iにより、 部分消化したものとをそれそれ、 フヱノール処理及びエタノール沈殿 により精製し、 両者を連結した (以下、 このプラスミ ドを pHZT 1と記載する)
(図 1 0 ) 。 続いて、 このプラスミ ドをァグロパクテリゥム EHA101株に DNA Clon ingに記載の方法に準じて形質転換させた。 EHA 101のシングルコロニーを一晩 YE B培地(0.1%イーストエキストラク卜, 0.5%ビーフエキストラクト, 0.5 ペプトン、 0.5 ショ糖、 pH 7.0)で培養し、 その 1 mlを 1 〃g/mlテトラサイクリン、 25 jug/ mlスぺクチノマイシン及び 50 mg/mlハイグロマイシンを含んだ YEB培地に加えて 3 0°C 5〜6時間培養した。 その培養液を 400 rpmで 5分間遠心分離し、 その沈殿に 20 mlの 10 mM Tris- C1緩衝液(pH 8.0)を加え、 洗浄した。 回収した沈殿を 400 JUL \ の YEB培地に懸濁し、 この懸濁液 90 Iと先の PHZT 1プラスミ ド 10 ng/10 〃1を 合わせて- 110°Cで 5分間、 続いて 37°Cで 25分間処理した。 これに YEB培地 400 jul を加えて 30°Cで一晩振盪培養した。 この培養液の 50 〃1を 1 〃g/mlテトラサイク リン、 25〃g/mlスぺクチノマイシン及び 50 rag/mlハイグロマイシンを含んだ YEB 寒天培地にまいて 30°Cでニ晚培養し、 プラスミ ドを含んだコロニーを選抜した。 く 2 >遺伝子の導入
く 1 >で構築したベクター(pHZT 1)を、 Hiei Υ·らの方法(Hiei Y. et al. (19 94). Plant J. 6; 271- 282. )に従って、 ァグロパクテリゥム法により、 農林 8号 へ導入した。 すなわち、 籾を取り除いた農林 8号の完熟種子を、 次亜塩素酸ナト リウムで滅菌後、 2mg/mlの 2,4- Dを含む MS培地(Physiol. Plantarum. 15, 473-49 7 (1962))上に置床し、 カルスを誘導した。 誘導 3週間後の胚盤由来のカルスのみ を、 新しい MS培地に移植し、 さらに 3日間、 25°C、 明所で培養した。 pHZT 1ブラ スミ ドを有したァグロパクテリゥムの 1コロニーを抗生物質を含む YEB培地(0.1% イーストエキストラクト, 0.5%ビーフエキストラクト, 0.5 ペプトン, 0.5Γンョ 糖, pH 7.0)5 ml中、 30°Cでー晚培養した。 この培養液を 3000 rpmで 10分間遠心 分離し、 3 のショ糖を含む R2液体培地 (Plant cell Physiol. 1997, 14; 1113)で 一回洗浄した後、 同じ R2培地に戀濁した。 このァグロパクテリゥム懸濁液に先の 前培養したカルスを入れて 25°Cで 2 ~ 3分間振とう培養した。 この溶液を濾過し カルスのみ取り出し、 無菌ペーパー夕オル上で余分なァグロパクテリゥムを取り
除き元の前培養培地上でニ晚同時培養しカルスにァグロパクテリゥムを感染させ た。 この後カルスを除菌培地 (B5 -ビタミン、 1 mg/L 2,4-ジクロロフエノキシ酢 酸、 3%ショ糖、 0. 7%ァガ口一ス、 500 mg/Lカルペニシリンを含んだ R2寒天培地) 上に移して 3日間培養してァグロパクテリゥムの増殖を抑えた。 次にこれらの力 ルスを一次選抜培地 (B5 -ビタミン、 3 mg/L ベンジルァミノプリン、 1 mg/L ゼ ァチン、 1 ショ糖、 Q. n ァガロース、 15 mg/L ハイグロマイシン、 500 mg/L カルペニシリンを含む R2寒天培地) 上に移して 2週間培養した。 これによりァグ ロバクテリゥムが感染して pHZTlプラスミ ドを持った形質転換植物細胞のみ分裂 増殖して緑色のカルスを形成することができる。 更にこれらのカルスを二次選抜 培地 (一次選抜培地のショ糖含量を 2%から 1%に減少させた培地) 上に移し 3週間 培養した。 この時形質転換したカルスは更に大きくなるので、 次にこのカルス部 分のみを発芽培地 (二次選抜培地より、 カルペニシリンを 500 mg/Lから 250 mg/L に減少させたもの) に移した。 再生した芽は伸長培地 (0. 1 mg/L ベンジルアミ ノプリン、 250 mg/L カルペニシリン、 0. 7% ァガ口一スを含む B5寒天培地) 上で 成長させ、 次に発根培地 (0. 1 mg/L 卜ナフ夕レン酢酸、 0. 01 mg/L ゼァチン、 3 % ショ糖、 0. 8 ァガロースを含む R2寒天培地) に移した後、 馴化させることによ り形質転換植物を得た。
実施例 1 0 いもち病抵抗性の確認
実施例 9で得られた形質転換植物 (15個体) に、 実施例 5に記載した方法によ り、 いもち病菌分生胞子を噴霧接種し、 10日後に形成される病徴の程度を調べた。 さらに、 いもち病抵抗性を剥離葉鞘接種法によっても調べた。 結果を表 5に示す。 なお、 剥離葉鞘接種法は、 以下の通りに行った。 個体の第 4〜 5葉鞘の裏面を ピンセッ トで剥離し、 その表皮組織に、 1 0 6胞子/ mlに調整した胞子懸濁液 (実施例 5の方法) を接種し、 2 5 °C湿室下で培養した。 接種後 1 0〜5 0時間 の感染菌糸の伸長度と感染細胞の変化を経時的に顕微鏡下で観察した。
その結果、 ハイグロマイシン添加培地上で、 再生した独立の個体について、 剥 離葉鞘接種法により抵抗性の確認を細胞レベルで行ったところ、 3個体において 病斑が形成されず、 無病徴の高度抵抗性が確認された (表 5 ) 。 さらに、 この 3 個体について、 再度剥離葉鞘接種法により、 抵抗性の再現性を確認した (表 5 ) 。
また、 これらの個体について、 サザン解析により導入遺伝子の検出を行ったと ころ (図 1 1 (図中、 N8は農林 8号) 。 検出されたバンドのサイズを表 5に示す) 完全長の遺伝子が導入されており、 抵抗性への形質転換が確認された。 表 5 胞子接種試験の結果及び導入 DNA断片のサイズ 形質転換 胞子接種試験1 導入 DNA断片
>| / -,
植物番号 噴霧接種法 剥離葉鞘接種法 表現型 2) のサイズ 3)
1回目 2回目 (kb)
1 MR S S
2 MR S S S 10 -
3 MR S S 3
4 MR S S 0.5
5 MR S S 2.5
6 MR S S 0.5
7 R HR HR HR 12
8 R S S S 11/4
9 R HR HR HR 15
10 MR S S 10または一
1 1 R S S 4.5/3.5
12 R S S 16
13 R S S S 12
14 R HR HR HR 14
15 R S S S
1) S :罹病性、 MR :中度抵抗性、 R :抵抗性、 HR :高度抵抗性
(—は、 非実施)
2) S :罹病性、 HR :高度抵抗性
3) 一は非検出 なお、 噴霧接種法における、 R、 MR、 HRの評価基準、 剥離葉鞘接種法の S、 HRの評価基準は、 以下の通りである。
A. 噴霧接種法 (肉眼での判定)
HR :全く病斑が認められない (無病徴) 個体
R :褐点病斑は形成されるが罹病病斑は認められない個体
M R :病斑の多少の進展 (拡大) が認められるが、 罹病病斑までには至らず、 抵抗性と判断される個体 (罹病性個体においても、 接種個体の葉期が進んでいる 場合 (第 4葉が完全に展開して、 第 5葉が展開し始めている場合やそれ以後) に、 罹病病斑の伸展が不完全で、 M Rと判定することもある。 元来 M Rタイプの抵抗 性品種 (個体) も存在する。 )
B . 剥離葉鞘接種法 (顕微鏡下での判定)
H R :感染菌糸の伸長は、 侵入直後に停止し、 第 1次感染細胞及び一部の隣接 細胞では、 砂粒状の細胞変質が認められる
R :感染菌糸の分枝 ·伸展は認められるもののその程度は抑制され、 感染細 胞内には顆粒状変質ゃ褐変化などの変化が認められる
S :旺盛な感染菌糸の伸展が第 1次感染細胞及び隣接細胞で認められる 遺伝子断片の導入により、 抵抗性への形質転換が確認された 3個体を含む 5個 体 (T。世代) について、 次世代 世代) への抵抗性伝達の確認を接種試験 (剥離葉鞘接種法) ならびにサザン解析により行った。 その結果、 3個体すベて の次世代個体集団において、 導入遺伝子が検出され (図 1 2 (図中、 N8は農林 8 号) ) 、 また抵抗性も確認された (表 6 ) 。 すなわち、 導入した遺伝子断片には、 抵抗性を発現するための情報がコードされており、 その遺伝子は、 次世代にも安 定に伝達されていることが明らかとなつた。
表 6 To/Ti世代の表 と遺伝子断片の導入
To世代 表現型 υ Ί 世代個体番号 分離 個体番号 サイズ2) 1 A 7
0 0 8 9 10 11
7 HR HR S HR HR S HR HR HR HR 7:2
13 kb 十 一 + + 一 + + + +
o Q S/R S/R S/R
9 HR HR HR HR HR S/R HR HR 6:1
15 kb + + + + 一 + +
13 S S/R S S S/R 4:0
11 kb
14 HR HR HR HR S/R HR HR HR HR HR S/R HR 9:2
14 kb + + + — + + + + + 一 +
1)表 5と同様 (表中、 S/Rと示したものは、 ほとんと S型反応であるが、 R 応 も混在していることを示す。 これは、 接種に使用した葉組織の葉期 (葉のェイジ ング) が進んでいる によく現れる現象で、 全体としての判定は Sとなる。 )
2)導入断片のサイズ 実施例 1 1 cDNAの単離
イネ品種: とりで 1号の第 4葉展開期にいもち病菌レース 037の胞子を噴霧接 種し、 20時間、 暗所、 25°Cに安置した第 3葉を用いて cDNAライブラリ一の作成を 行った。 すなわち、 接種 20時間後の第 3葉を液体窒素で摩砕し、 フエノール法 (Sambrook, J., Fritsch, E. F. , Maniatis, T., Molecular Cloning, Cold Spr ing Harbor Laboratory Press (1989))により全(total) Aを抽出した。 さらに この全 RNAを夕カラ社の 01igotexTM-dT30(Super)により、 ポリ A+RNAを精製した。
STRATAGENE社の cDNA Synthesis Kit, ZAP-cDNA Synthesis Kit及び ZAP- cDNA G igapack III Gold Cloning Kitを用いてプロ 卜コールに従って cDNAの合成、 ZAP ベクターへの揷入、 パッケージングを行ない、 cDNAライブラリ一を作成した。
実施例 12 cDNAのスクリーニング
大腸菌 X - Blue MRF,(P2)株のシングルコロニーを 10 mM MgS04と 0.2%(w/v)マ
ルト一スを含む LB培地(10 g NaCl,10 gトリプトン, 5 gィーストエキストラクト ( 1 L当たり)) 100 ml中で 37°Cにおいて 4時間培養し、 500xg、 10分の遠心分離 により集菌し、 10 mM MgS04溶液で、 菌濃度を 0D6。。が 0.5となるように調整した。 この菌に実施例 8< 3 > (A) で調製したファージ溶液を 37°Cで 10分間保温する ことで吸着させ、 LBプレート上にまき、 37°Cで 8時間培養し、 プラークを形成さ せた。 このプラークを、 ナイロンメンブレインに写し、 実施例 8く 2〉で得られ た DNA断片をプローブとして、 サザン解析のときと同条件でプラークハイプリダ ィゼ一シヨンを行った。 得られたポジティブプラークをプレー卜から取り出し、 上記操作を、 3回繰り返すことで、 プラークの単一化を行った。
実施例 1 3 5'レース法による 5'末端 cDNAの単離
6 (}08 社の5,1^0£ Systemキットを用いて、 プロトコ一ルに従って 5'末端の c MAを単離した。 すなわち、 実施例 1 1で精製した m A 1 gに 200 ngのランダ ムへキサマー · プライマーを加えて 15.5 1とし、 70 °Cで 10分処理後急冷した ものに 10XPCRバッファ一 2.5 〃1と 25 mM MgCh 2.5〃1,10 mM dNTP mix 1〃1,0. 1 M 01!を2.5 〃1加え、 42°Cで 1分処理後、 SuperScriptTMI I Reverse Transcri ptase(200 units/〃l)を 1 〃1加えて 42°Cで 50分処理した。 次に、 70°Cで 15分の 処理後、 20秒間 37°Cに放置した後、 1 /1の RNase mixを加え、 30分間処理し、 G1 assMax DNA Isolation Spin Cartridge Purificationカラムにより、 未結合のプ ライマ一を除去した。 この精製したサンプル 16.5 〃1に 5xバッファーを 5 ul, 2 mM (1(]?を2.5 1加えて 24 1とし、 94°Cで 3分の処理後急冷し、 1 μΛの ー ミナルデォキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を加え、 37°Cで 10分間 処理した。 その後、 65°Cで 10分間の処理後急冷し、 次の PCRのサンプル(dC- taile d cDNA)とした。 dC- tailed cDNAサンプル 5 〃1に、 lOxPCRバッファ一(200 mM T ris-HCL(pH 8.4), 500 mM KC1)5 il, 3 〃1の 25 mM MgCh, 1 〃1の 10 mM dNTP mix, 2 〃1の Abridged Anchor Primer (10 M)、 ゲノムの塩基配列から設計し たプライマー(10 〃M)を 2 PL\ 加え、 94°C30秒、 55 C1分、 72°C3分のサイクルを 30回の条件での PCRを行った。 このサンプルをゲル電気泳動により分離し、 得ら れたバンドを切り出し、 2回目の PCRサンプルとした。 このサンプル 5 〃1とュニ バーサルアンプリフィケ一シヨンプライマーとゲノムプライマーを用いて同条件
で 2回目の PCRを行い、 得られたバンドを TAクローニングベクターに揷入した。 実施例 14 3'レース法による 3,末端 cDNAの単離
実施例 13と同様に、 (} (:08¾社の3,1^^^ System for Rapid Amplification of cDNA Endsキヅトを用いて、 プロトコールに従って 3'末端の cDNAを単離した。 すなわち 50 ngの mRNAと 1〃1のアダプタ一プライマ一(10 M)を 70°C10分間処 理し、 〃1の 10XPCRバッファー(200 mM Tris-HCL(pH 8.4), 500 mM KC1)、 2 〃1の 25 mM MgCL,l 〃1の 10 mM dNTP mix, 2 〃1の DTT(0.1 M)を加え、 42°Cで 5 分間処理後、 SuperScript™II Reverse Transcriptase (200 units/〃l)を 1
加えて 42°Cで 50分処理した。 次に、 70°Cで 15分の処理後、 20秒間 37°Cに放置した 後、 1 〃1の RNaseHを加え、 37°Cで 20分間処理し、 次の PCRのサンプル(cDNA synt hesis reaction)とした。 cDNAサンプル 5〃1に、 5 〃1の lOxPCRバッファー(200 mM Tris-HCL(pH 8.4), 500 mM KC1)、 3 〃1の 25 mM gCl
2,l 〃1の 10 mM dNTP mix, 2〃1の Abridged universal amplification primer (AUAP:10 〃M)、 2 μ.\ ゲノムの塩基配列から設計したプライマ一 (10 〃Μ) を加え、 94°C30秒、 55°C1 分、 72°C3分のサイクルを 30回の条件での PCRを行った。 このサンプルをゲル電気 泳動により分離し、 得られたバンドを切り出し、 2回目の PCRサンプルとした。 このサンプル 5 1とユニバーサルアンプリフィケージョンプライマーとゲノム プライマーを用いて同条件で 2回目の PCRを行い、 得られたバンドを TAクロー二 ングベクターに挿入した。
実施例 15 cDNAの塩基配列の決定
実施例 13及び 14でクローニングしたそれそれのベクターについて、 実施例 8(4)(B)〜(5)と同様の方法により、 塩基配列の決定を行った。 得られた塩基配 列の情報と先に決定したゲノム塩基の配列をもとに、 cDNAの全長の塩基配列を決 定した。 得られた塩基配列は、 3204 bpで、 この配列から推定されるアミノ酸配 列は、 1068アミノ酸により構成されていることが明らかとなった (配列表の配列 番号 3) 。 これらの配列より推測される遺伝子の構造の模式図を図 13に示す。 産業上の利用の可能性
本発明によれば、 現在知られているすべてのいもち病菌のレースに対し抵抗性
を有するいもち病抵抗性遺伝子が提供され、 この遺伝子は、 マグナポーサ 'グリ セァ(Magnapothe grisea)に属する微生物によって引き起こされる植物病害に対 する抵抗性遺伝子であると考えられる。 該遺伝子を導入したベクターにより植物 体を形質転換することにより、 マグナポ一サ ·グリセァ(Magnapothe grisea)に 属する微生物、 特に、 すべてのいもち病菌に対して強い抵抗性を有する形質転換 植物を得ることができる。