JPWO2019131723A1 - 薬物の投与方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波発生装置とを組み合わせてなる、より安全かつ汎用性の高い新規な血液脳関門(BBB)の開放システム:該ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、BBBを開放させる方法:該ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、薬物のBBB透過性を増大させる方法を提供する。

Description

本発明は、1)平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と超音波発生装置とを組み合わせてなる血液脳関門(以下、BBBと略称する)等の開放システム、2)平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と超音波とを用いてBBBあるいは血液組織関門を開放させる方法、および3)平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と超音波とを用いて薬物のBBBあるいは血液組織関門透過性を増大させる方法等に関する。
(発明の背景)
超音波は、医療現場において主に超音波造影装置として利用されてきた。超音波造影剤であるマイクロバブルが超音波診断に画期的な進歩をもたらしている。一方、最近では、超音波を診断以外にも利用できるようになり、例えば、超音波エネルギーを患部に集束させて患部のみを加熱することによる非侵襲的がん温熱療法が、子宮筋腫や前立腺がんで臨床応用されている。また、非侵襲性と空間的・時間的制御が容易であることに着目して、超音波照射を、遺伝子や薬物を目的細胞に送達させるドラッグデリバリーシステム(DDS)の手段として利用する研究も進められている。
これまでに、バブルリポソームと超音波技術を融合した骨格筋への遺伝子デリバリーシステムとして、粒子サイズ約100〜200nmのポリエチレングリコール修飾リポソームに、パーフルオロプロパンを封入したバブルリポソームが報告されている(非特許文献1)。特定のモルフォリノオリゴマーを表面に結合させたバブルリポソームを有効成分として含有し、筋組織内または血管内に投与後、体外から筋組織に超音波照射することにより、筋細胞に該モルフォリノオリゴマーを高効率で導入させる用法で用いられるデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬、前記バブルリポソームがPEG−リポソームの内部にパーフルオロ炭化水素を封入したものであり、かつ、平均粒子径50〜500nmであることも報告されている(特許文献1)。
ところで、薬物が血中(もしくは脊髄液)から脳実質へと移行するためには、BBB(もしくは脊髄液脳関門)を通過しなければならない。BBBは脳毛細血管内皮細胞同士の強固な結合(タイトジャンクション)とグリア細胞とによって形成される。脂溶性薬剤は内皮細胞の脂質膜を受動的に通過するため、BBBを通過しやすいが、抗体等のタンパク質、核酸、血漿タンパク質に結合する薬剤等はBBBを通過しにくい。これまでにBBBの通過が困難な薬物のBBB透過性を増大させるための様々な試みがなされているが、未だ十分とは言えない。
悪性脳腫瘍患者の血流に、化学療法剤を注入し、次いで赤血球よりも小さなマイクロバブルを注入し、腫瘍近くのBBB領域の血管に低強度の超音波を照射し、薬物のBBB透過性向上に超音波を使用し得ることが報告されている(非特許文献2)。脳への薬物や遺伝子送達のために、ガス封入マイクロバブルおよび超音波が利用されうることも報告されている(非特許文献3)。再発性グリア芽細胞腫患者にSonoVue microbubbles(Bracco社)をボーラス投与開始時、超音波照射を開始し、BBB解放後60分以内にカルボプラチン静脈内注入することも報告されている(非特許文献4)。
しかしながら、従来のマイクロバブルは投与後に組織深部にまで到達させることは難しい。一方、リン脂質およびパーフルオロプロパンガスを用いて、パーフルオロプロパンガスまたは窒素ガスを用いたものよりも小さいサイズのナノバブル(約400nm)が報告されている(非特許文献5)。さらに、ddYマウスに対し、ナノバブルとフルオロウラシル(5−FU)を併用投与し、脳組織に対して超音波照射を行うことにより、5−FUの脳移行が少なくとも24時間みられたことが報告されている(非特許文献6)。
しかしながら、上記ナノバブルも平均径が約400nmであり組織深部への到達能力を考えると未だ十分とはいえない。また、超音波照射に1.5〜2.5W/cmといった超音波診断用として安全性に懸念がある出力強度が使用されており、実用性の面で問題がある。さらにバブルリポソームの使用は、脂質による抗原性の問題を引き起こす懸念がある。
本発明者らは、2.0×10個/mL以上のナノバブルを含有するナノバブル水が、優れた抗菌作用を有することを明らかにしている(特許文献2)。しかしながら、該ナノバブル水と超音波とを組み合わせた場合の作用効果については全く不明であった。
WO2012/153635 WO2015/182647
YAKUGAKU ZASSHI 130(11) 1489-1496 (2010) Sunnybrook (Web)、http://sunnybrook.ca/media/item.asp?i=1351 NATURE REVIEWS 12 161-174 (2016) Science Translational Medicine 8(343) 343 (2016) Drug Delivery 24(1) 320-327 (2017) 「超音波応答性ナノバブルによる脳指向DDSにおける脳内への薬物動態の評価」、渕上由貴ら、長崎大学、日本薬学会第137年会発表要旨(2017年3月)
本発明の目的は、より安全かつ汎用性の高い新規なBBBの開放システムおよびそれを用いて薬物のBBB透過性を向上させる手段を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、本発明者らが以前に開発した抗菌作用に優れたナノバブル水(上記特許文献2を参照)に着目した。該ナノバブル水に含まれるナノバブルの平均径を測定したところ、200nm以下という、従来よりもさらに小さな平均径を有していることが明らかとなった。そこで、該ナノバブル水と超音波照射とを組み合わせて、薬物のBBB透過性について検討した結果、該ナノバブル水は、50〜500mW/cmという、従来より極めて小さな出力強度で、薬物の分子量を問わず、薬物のBBBの透過性を顕著に増大させ得ることが示された。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波発生装置とを組み合わせてなる、BBBの開放システム(本明細書中、「本発明のBBB開放システム」ともいう);
[2]ナノバブルが、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤および/または親水性樹脂と気体とからなる、[1]に記載のシステム;
[3]ナノバブルが、非イオン性界面活性剤および/または親水性樹脂と気体とからなる、[1]に記載のシステム;
[4]気体が、パーフルオロ炭化水素または空気である、[2]または[3]に記載のシステム;
[5]ナノバブルの平均径が、50nm〜200nmである、[1]〜[4]のいずれかに記載のシステム;
[6]ナノバブルのd90/d10比が5以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のシステム;
[7]ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液におけるナノバブルの密度が、2.0×10個/mL以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載のシステム;
[8]超音波発生装置において超音波の出力強度が、720mW/cm以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載のシステム;
[9]超音波発生装置において超音波の出力強度が50〜500mW/cmおよび超音波の周波数が0.5〜10MHzである、[1]〜[7]のいずれかに記載のシステム;
[10]薬物のBBB透過性を増大させるための、[1]〜[9]のいずれかに記載のシステム;
[11]薬物がBBBの通過が困難な化合物である、[10]に記載のシステム;
[12]平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、BBBを開放させる方法;
[13]平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、薬物のBBB透過性を増大させる方法;
等に関する。
本発明のBBB開放システムによれば、生体に悪影響を及ぼさない程度の出力強度の超音波を照射することでBBBを開放できるので、安全性の高い脳内へのDDSが提供され得る。
本発明のBBB開放システムは平均径200nm以下のナノバブルを含むので、脳の毛細血管(4〜7.5μm)に効率よく到達することができ、脳深部までナノバブルを送達させることができる。
また、マイクロバブルを用いて超音波照射を行う場合、BBBタイトジャンクションを大きくこじ開けるため、その再構築に時間を要するが、平均径200nm以下のナノバブルを用いる本発明ではBBBタイトジャンクションを大きくこじ開ける必要がないため、その再構築が速やかに行われる。
さらに、該平均径200nm以下のナノバブルはナノバブル水もしくはナノバブル水溶液内で長期間安定である。
本発明のBBB開放システムでは、リポソームを用いる必要がないため、リン脂質のような特殊な添加剤を配合する必要がなく、安価に製造可能であり、かつ、リン脂質による抗原性の問題が生じない。
(発明の詳細な説明)
本発明は、平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波発生装置とを組み合わせた、BBBもしくは脊髄液脳関門(以下、「BBB等」ともいう)の開放システム(以下、「本発明のシステム」ともいう)を提供する。
本明細書において「BBB等の開放」とは、本来BBB等を通過することが困難な化合物(例えば、水溶性で受動拡散しにくい化合物、分子量が大きい化合物、選択的なトランスポーターや受容体を持たない化合物)が、BBB等を通過して血液(もしくは脊髄液)から脳実質に移行し得る状態になることを意味する。従って、本発明のシステムは、いかなるメカニズムによって薬物のBBB等の透過性を増大させるものであってもよく、例えば、タイトジャンクションをこじ開けること等が挙げられるが、それに限定されない。
本発明のシステムが適用される生体バリアとしては、BBBもしくは脊髄液脳関門が挙げられるが、空間的な制限を受けないという当該システムの特徴を考慮すれば、BBB以外の血液組織関門(例、血液髄液関門、血液網膜関門、血液脊髄関門等)にも適用することが可能である。
本明細書において「ナノバブル」とは、気体を含んでいればよく、ナノバブル内が真空であってもよい。ここで、「真空」とは通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。ナノバブルは、例えば、1)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、2)親水性樹脂および3)電解質から選ばれる1種または2種以上の物質と、気体とからなる。
本発明において「アニオン性界面活性剤」としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明において「非イオン性界面活性剤」としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(例、モノステアリン酸グリセリン等)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル(例、ポリソルベート20等)、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(例、ポリソルベート80等)等)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、マクロゴール類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(例、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロキサミン等)等が挙げられる。中でも好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル(例、ポリソルベート20等)、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(例、ポリソルベート80等)等である。さらに好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80である。特に好ましくはポリソルベート80である。
本発明において「カチオン性界面活性剤」としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム等が挙げられる。
本発明において「両性界面活性剤」としては、例えば、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において「親水性樹脂」としては、例えば、アクリル系樹脂(例、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル)、ビニル系樹脂(例、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルエチルエーテル);多糖類(例、トラガントガム、カラヤガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、アガロース、カードラン等)が挙げられる。中でも好ましくはポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。より好ましくはポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記親水性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において「電解質」としては、例えば、ナトリウム塩(例、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等)、カルシウム塩(例、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等)、マグネシウム塩(例、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等)等が挙げられる。中でも好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。特に好ましくは塩化ナトリウム等が挙げられる。
上記電解質は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における「ナノバブル」として好ましくは、1)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、および/または2)親水性樹脂と、気体とからなるナノバブル等が挙げられる。中でも好ましくは、非イオン性界面活性剤および/または親水性樹脂と気体とからなるナノバブル等が挙げられる。または、非イオン性界面活性剤と気体とからなるナノバブル等も好ましい。さらに好ましくは、1)ポリソルベート80およびポリソルベート20から選ばれる1種または2種および/または2)ポリビニルアルコールと気体とからなるナノバブル等が挙げられる。さらに好ましくは、ポリソルベート80および/またはポリビニルアルコールと気体とからなるナノバブル等が挙げられる。とりわけ、ポリソルベート80と気体とからなるナノバブルが好ましい。
本発明において「気体」としては、例えば、パーフルオロ炭化水素(例、パーフルオロプロパン(C)、パーフルオロブタン等)、空気、窒素、オゾン、酸素、アルゴン、二酸化炭素およびヘリウム等から選ばれる1種または2種以上の混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも好ましくは、パーフルオロ炭化水素(例、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン等)、空気、窒素、オゾン、酸素、アルゴン等が挙げられる。より好ましくは、パーフルオロ炭化水素(例、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン等)、空気等である。空気を用いる場合、安価で、かつ、容易にナノバブルを製造することができる。さらに好ましくはパーフルオロプロパン、パーフルオロブタン等が挙げられる。
本発明における「ナノバブル」として好ましくは、(A)非イオン性界面活性剤および/または親水性樹脂と(B)パーフルオロ炭化水素、空気等から選ばれる1種または2種以上の気体とからなるナノバブル等が挙げられる。さらに好ましくは、(A)1)ポリソルベート80およびポリソルベート20から選ばれる1種または2種および/または2)ポリビニルアルコールと(B)パーフルオロ炭化水素および空気から選ばれる1種または2種の気体とからなるナノバブル等が挙げられる。さらに好ましくは、(A)ポリソルベート80および/またはポリビニルアルコールと(B)パーフルオロ炭化水素および/または空気とからなるナノバブル等が挙げられる。とりわけ、ポリソルベート80および/またはポリビニルアルコールとパーフルオロ炭化水素とからなるナノバブルが好ましい。
本発明における「ナノバブル」は、リポソーム等の両親媒性リン脂質を含まないため、抗原性を示すことなく、より安全な製剤を提供し得る。
本発明において「ナノバブル」の平均径は約200nm以下である。好ましい平均径としては、例えば10nm〜200nm、さらに好ましくは50nm〜200nm、より好ましくは100nm〜180nmである。
本明細書において「平均径」とは、分布の最頻値(個数%の極大値)に対応する粒子径(モード径)を意味する。
本明細書において「ナノバブル水」もしくは「ナノバブル水溶液」とは、1000nm以下の直径を有する気体粒子(ナノバブル)が安定に存在する水もしくは水溶液を意味する。本発明におけるナノバブル水もしくはナノバブル水溶液(以下、「本発明におけるナノバブル水等」ともいう)は、平均径が約200nm以下であるナノバブルを含むことを特徴とする。
本発明において、ナノバブルのサイズは均一であることが望ましい。例えば、ナノバブル個数基準分布の小径側から累積10%および累積90%に相当するナノバブル径をそれぞれd10およびd90としたときの「d90/d10比」は、5以下であることが好ましく、さらに好ましくは4.5以下である。
本発明において、ナノバブル水等に含有されるナノバブル数とは、ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液1mL中に存在するナノバブルの数を意味し、本明細書においては「ナノバブル密度」と称することもある。本発明におけるナノバブル水等に含まれるナノバブル数は特に制限されない。「ナノバブル密度」の下限として例えば、2.0×10個/mL以上、好ましくは2.5×10個/mL以上である。「ナノバブル密度」の上限として例えば、2.0×10個/mL以下、好ましくは1.0×10個/mL以下である。本発明における「ナノバブル密度」としては、例えば、2.0×10〜2.0×10個/mL、好ましくは2.0×10〜1.0×10個/mL、さらに好ましくは2.5×10〜1.0×10個/mLである。
ナノバブル径(ナノバブル平均径を含む。以下同じ)、ナノバブル個数基準分布(d90/d10比を含む。以下同じ)、およびナノバブル数は、ブラウン運動に基づくレーザー光の散乱を利用した方法(例、ナノサイト社、LM20やLM10等)、電気抵抗変化に基づく方法(例、ベックマン・コールター社、Multisizer4等)、レーザー回折散乱法に基づく方法(例、島津製作所、SALD−7100H等)、ミー散乱を利用した方法(例、日本電色工業、NP−500T等)等を用いて測定することができる。本発明におけるナノバブル径およびナノバブル個数基準分布は、ナノサイト社製ナノサイト(機器名LM10)を用いたレーザー光散乱を利用したトラッキング法(追尾法)を用いて測定されたもの、あるいはそれに準じて測定されたものが使用される。
ナノバブル径、ナノバブル個数基準分布およびナノバブル数の値は、通常、ナノバブル水等の製造直後に測定されてもよく、長期保管後に測定されてもよい。本発明におけるナノバブル水等のナノバブル径、ナノバブル個数基準分布およびナノバブル数は極めて長期間(例えば、6ヶ月〜2年程度)安定に維持されるため、ナノバブル水を製造後に一定期間密閉保管後、使用直前にナノバブル径、ナノバブル個数基準分布およびナノバブル数を測定した値であってもよい。
本明細書における、ナノバブルを含む「水」としては、特に制限はなく、例えば水道水、脱イオン水、蒸留水、滅菌蒸留水、注射用精製水、超純水等を用いることができるが、注射剤に使用する場合は、滅菌蒸留水、注射用精製水等が好ましい。
本明細書における、ナノバブルを含む「水溶液」としては、例えば、医薬製剤分野で通常使用され得る任意の添加剤をさらに含有する水が挙げられる。該「添加剤」としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、親水性樹脂、電解質、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、分散剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、pH調整剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤等が挙げられる。好ましくは薬理学的に許容し得る添加剤が挙げられる。さらに好ましくは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、親水性樹脂、電解質等が挙げられる。これら添加剤の他に、好ましくは、懸濁化剤、安定化剤、分散剤、等張化剤等から選ばれる1種または2種以上の添加剤が用いられる。
上記した添加剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
これらの添加剤は、ナノバブルの生成および安定性等に影響を与えない限り、予め水に溶解して直接ナノバブル水溶液として調製することもでき、あるいは、添加剤を含まない水中にナノバブルを生成させナノバブル水とした後、用時添加剤を溶解しナノバブル水溶液としてもよい。
水溶液としては、プラスに帯電したナノバブル水溶液およびマイナスに帯電したナノバブル水溶液のどちらでも使用できる。本発明の、ナノバブル水溶液と超音波とを用いて薬物の血液組織関門透過性を増大させる方法において、薬物が高分子化合物の場合、ナノバブル水溶液としては、プラスに帯電したナノバブル水溶液が好ましい。また、薬物が高分子化合物の場合、ナノバブル水溶液のpHとしては、例えば1〜4が好ましい。
ナノバブル水の製造方法としては、マイクロバブル(1〜60μm程度の直径を有する気体粒子)とナノバブルとを水中に同時発生させた後、マイクロバブルを浮上分離させてナノバブルのみを残留させる方法と、ナノバブルを直接生成させる方法とに大別されるが、現状では前者が主流である。前者の方法としては、気体を高速旋回で破砕してマイクロバブルを多数発生させ、マイクロバブルを浮上分離してナノバブルを水中に残留させる高速旋回液流式、気体を加圧して過飽和で溶解させた液を急速減圧してマイクロバブルとナノバブルを発生させ、マイクロバブルを浮上分離してナノバブルを水中に残留させる加圧溶解式等がある。
本発明におけるナノバブル水もしくはナノバブル水溶液の製造方法として好ましくは、加圧溶解式が用いられる。例えば、以下の1)〜3)の工程が挙げられる;1)加圧ポンプにより0.2〜0.5MPa程度に加圧された加圧容器内で、(i)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、(ii)親水性樹脂および/または(iii)電解質が溶解している液に強制的に気体を溶解させ;2)ノズルを通して水中にフラッシュ操作し、減圧され過飽和となった気体を排水中にマイクロバブルまたはナノバブルとして放出させ、マイクロバブル水およびナノバブル水の混合物を生成する;3)通気を停止して静置し、マイクロバブルを自然浮上離脱させる。これより、ナノバブルのみが残留した澄明なナノバブル水が生成される。
本発明におけるナノバブル水もしくはナノバブル水溶液の製造に用いられるナノバブル発生装置としては、例えば、加圧溶解式装置(例、IDEC社製nanoGALFTM、オーラテック社製OM4−MD5−045、ニクニ社製マイクロバブルジェネレータ等)、高速旋回液流式装置(例、バイ・クリーン社製YJ、アクアエアー社製マイクロバブル発生装置、ローヤル電機社製マイクロブレード等)等が挙げられる。ナノバブル発生装置として好ましくは、加圧溶解式装置(例、IDEC社製nanoGALFTM)である。
本発明において、ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液の製造にアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質を用いることにより、上記ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液中のナノバブル数を増大させることができる。
本発明で用いられるアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の水への含有量は特に限定されるものではない。上限としては、好ましくは50%(W/V)以下、より好ましくは20%(W/V)以下、さらに好ましくは10%(W/V)以下である。下限としては、好ましくは0.01%(W/V)以上、より好ましくは0.05%(W/V)以上、さらに好ましくは0.1%(W/V)以上である。ここで、(W/V)は、g/mLを意味するものとする。
該界面活性剤、親水性樹脂および電解質を2種以上組み合わせて用いる場合は、その合計量を水への含有量とする。
上記のようにして製造された本発明におけるナノバブル水等は、バイアルまたはアンプルに密封して保存する。保存は遮光条件下で行うのが好ましい。保存温度は室温以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
本発明におけるナノバブル水もしくはナノバブル水溶液は、好ましくはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下製造されるため、本発明におけるナノバブル水等の作用効果(例えば、ナノバブル水等と超音波処理とを併用した場合のBBB等の開放効果、ナノバブル水等と超音波とを用いて薬物のBBB透過性を増大させる効果等)が維持されることが要求される期間(例えば、BBB等を通過して送達されることが望まれる薬物の基剤として使用した場合には、その有効期間(例えば3ヶ月以上、より好ましくは6ヶ月以上、さらに好ましくは1年以上))、ナノバブル水等のナノバブル数を2.0×10個/mL以上に維持することができる。
本発明におけるナノバブル水等は加熱滅菌を行うことができ、加熱滅菌後もナノバブル数を2.0×10個/mL以上に維持することができる。
本発明におけるナノバブル水等が2.0×10個/mL以上のナノバブル数を有する場合、優れた抗菌作用とそれによる保存効力を示すので、一定期間、同一容器から繰り返して使用される複数回投与型の液体医薬製剤、例えば、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤、脳内投与注射剤、脳脊髄液内投与注射剤、眼内投与注射剤等)の基剤としても有用である。
本発明におけるナノバブル水等は、好ましくはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤(好ましくはポリソルベート80および/またはポリソルベート20、さらに好ましくはポリソルベート80)の存在下で製造され、製造されたナノバブル水等では、ナノバブルの平均径がより小さく、また、そのサイズがより均一である(すなわちd90/d10比が小さい)ため、本発明のBBB開放システムにおいて、より安全なBBB開放効果が得られる。
本発明のシステムに使用される「超音波発生装置」としては、本発明におけるナノバブル水等と組み合わせて用いた場合に、BBB等を開放するのに十分な条件の超音波を発生させ得る限り、いかなるものでも使用することができる。例えば、従来より医療現場で超音波診断用に使用されている任意の装置や、市販の超音波遺伝子導入装置(例、Sonitron GTS(ネッパジーン社製)等)等を適宜用いることができる。
本発明における「超音波発生装置」の条件としては、例えば、超音波の出力強度(音波の進行方向に垂直な単位面積(cm)を単位時間に通過する音響エネルギー)が10mW以上、好ましくは30mW以上、より好ましくは50mW以上であることが挙げられる。出力強度の上限に特に制限はないが、本発明のシステムがヒトを含む哺乳動物におけるBBB等の開放を目的とすることを考慮すれば、動物に悪影響(例、細胞毒性)を及ぼさない範囲を上限とすることが好ましい。例えば、改正薬事法の第3者認証基準(2005)において「720mW/cmを超えない」(米国FDAのTrack 3の上限値と同じ)との要求事項が追加され、日本国内の超音波診断装置はこの上限を超えないよう制御されていることから、好ましくは、本発明のシステムにおける超音波の出力強度の上限は720mW/cmである。超音波の出力強度として好ましくは、50〜720mW/cm、さらに好ましくは50〜500mW/cmである。従来の遺伝子導入やBBB開放のために使用されている超音波の出力強度は、超音波診断用途での上記基準を大幅に上回っており(例えば、1.5〜2.5W/cm)安全性に対するリスクが大きいが、本発明のシステムにおいては、小さな出力強度(好ましくは50〜500mW/cm)で薬物の分子量に関係なく、薬物のBBB等の透過性を顕著に増大させることができ、極めて安全な薬物送達システムである。
本発明における「超音波発生装置」の条件としては、超音波の周波数は特に制限されず、例えば、0.5〜10MHzの範囲内で適宜選択することができる。現在広く採用されている周波数は約1MHzであるが、高周波数の方が生体への悪影響がより少ないと考えられることから、好ましくは1〜5MHz、より好ましくは1〜3MHzの範囲内で適宜選択され得る。
本発明における「超音波発生装置」を用いる条件としては、超音波の照射時間は、BBB等を開放するのに十分な時間であれば特に制限されず、超音波の出力強度に応じても変動し得るが、例えば、出力強度50mW/cmであっても、10秒の照射時間で薬物のBBB等の透過性を増大させることができる。超音波の照射時間としては、例えば1〜60秒、好ましくは1〜30秒、より好ましくは1〜20秒を挙げることができる。
本発明における「超音波発生装置」を用いる場合の条件としては、例えば、(i)超音波の出力強度が50〜720mW/cm(好ましくは50〜500mW/cm)、(ii)超音波の周波数が0.5〜10MHzおよび(iii)超音波の照射時間が1〜60秒の組み合わせが挙げられる。中でも好ましくは、(i)超音波の出力強度が50〜500mW/cm、(ii)超音波の周波数が1〜5MHzおよび(iii)超音波の照射時間が1〜60秒の組み合わせ等が挙げられる。
本発明はまた、平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、BBB等を開放させる方法(以下、「本発明の開放方法」ともいう)も提供する。当該方法は、本発明におけるナノバブル水等を対象に投与して脳毛細血管(もしくは脳脊髄液)に送達させること、および該脳毛細血管(もしくは脳脊髄液)に対して超音波照射を行うことを含み、それによりBBB等が開放される。さらに、平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、薬物のBBB等の透過性を増大させる方法(以下、「本発明のBBB透過性増大方法」ともいう)も提供する。
「本発明の開放方法」および「本発明のBBB透過性増大方法」において使用されるナノバブル水もしくはナノバブル水溶液としては、上記の本発明におけるナノバブル水等を用いることができる。また、「本発明の開放方法」および「本発明のBBB透過性増大方法」における超音波照射は、上記の本発明のシステムにおける超音波発生装置の使用と同様の条件にて実施することができる。
「本発明の開放方法」および「本発明のBBB透過性増大方法」を適用し得る対象としては、BBB等の生体バリアを有する動物であれば特に制限はなく、例えば、ヒトおよびその他の哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)を挙げることができる。対象に本発明におけるナノバブル水等を投与する手段としては、ナノバブルを脳毛細血管(もしくは脳脊髄液)に送達させることができる投与経路であれば特に制限はないが、例えば注射剤の形態で、例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、点滴、脳内投与注射、脳脊髄液内投与注射等を挙げることができる。
本発明におけるナノバブル水等の投与量は、超音波照射によりBBB等を開放させるのに十分な量であれば特に制限はないが、例えば、脳毛細血管(もしくは脳脊髄液)中のナノバブル密度が1×10〜10×10個/mL、好ましくは2×10〜5×10個/mLとなるように、ナノバブルを送達させ得る量であればよい。
超音波照射は、従来より超音波診断に使用されている方法と同様の方法を、標的部位を脳毛細血管(もしくは脳脊髄液)に代えて実施することができる。
「本発明のシステム」、「本発明の開放方法」および「本発明のBBB透過性増大方法」は、非侵襲的かつ安全にBBB等を開放させることができるので、脳内へのドラッグデリバリーシステム(DDS)として特に有用である。従って、本発明はまた、薬物のBBB等の透過性を増大させるための本発明のシステムおよび本発明の開放方法の使用(以下、それぞれ「本発明のDDS」および「本発明の送達方法」ともいう)も提供する。
「本発明のDDS」および「本発明の送達方法」が適用され得る薬物(治療薬、診断薬を含む)は、脳実質内で薬効を発揮し得る化合物であれば特に制限はないが、例えばBBB等の通過が困難な化合物が挙げられ、好ましくは、BBB等を通過させるための人為的手段を講じなければ、治療上または診断上有効な量を脳実質内に送達させることが困難な化合物である。該BBB等の通過が困難な化合物としては、例えば、高分子化合物〔例えば、核酸(例、siRNA(例、FAM-siRNA、ニッポンジーン製)、ssRNA、shRNA、miRNA、S化オリゴDNA(ホスホロチオエート)等)、遺伝子(例、プラスミドDNA, mRNA等)、タンパク質(例、抗体(例、IgG(例、Alexa-IgG、インビトロジェン製))等)、多糖類(例、デキストラン、フルオレセインイソチオシアナートデキストラン等)等〕、ペプチド、低分子化合物(例、フルオレセイン、フルオレセインナトリウム等)等を挙げることができるが、それらに限定されない。中でも好ましくは高分子化合物および低分子化合物等が挙げられる。さらに好ましくは高分子化合物等が挙げられる。さらに好ましくは核酸およびタンパク質等が挙げられる。特に好ましくは核酸および抗体等が挙げられる。
「本発明のDDS」および「本発明の送達方法」において、薬物の使用量は、ナノバブル水等におけるナノバブル密度が上記「本発明のシステム」について説明したナノバブル密度の範囲内となる量であれば特に限定されず、薬物の種類、疾患、重篤度等に応じて適宜選択することができる。
本発明の送達方法において、上記薬物は、本発明におけるナノバブル水等と混合して単一の製剤として対象に投与してもよいし、あるいは、両者が同時に脳毛細血管(もしくは脳脊髄液)内に共存し得る限り、それぞれを別個に製剤化して、同時または時間差をおいて、同一または異なる経路で投与してもよい。
薬物と本発明におけるナノバブル水等とを別個に製剤化する場合、該薬物には、医薬上許容できる担体をヒトまたは他の哺乳動物が許容できる量配合することができる。
医薬上許容できる担体としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調節剤;硫酸カナマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、ペニシリンGカリウム等の抗生物質;乳糖、グルタミン酸カリウム、D−ソルビトール、アミノ酢酸、ヒト血清アルブミン等の安定剤;フェノールレッド等の着色剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム等の等張化剤等が挙げられる。
別の態様として、平均径が異なるナノバブルの混合液を投与して、異なる周波数あるいは強度の超音波を複数組み合わせることによって、薬物を他段階に細胞障壁を通過させて、脳内または組織内の目的とする場所へ送達させることができる。
別の態様として、鼻粘膜投与の場合に、ナノバブルと薬物を溶液あるいは懸濁液で(あるいは粉末でもよい)共存させて、超音波を適用することにより、薬物の鼻粘膜吸収性および脳移行性を向上させることもできる。特に、鼻粘膜部位の滞留性が良好な製剤(例えばWO2017/073798A1等)を用いた場合には、薬物の吸収性および脳移行性を高める効果は高い。
別の態様として、平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、神経細胞(BBB開放後の脳神経細胞を含む)等へ薬物送達性向上方法を提供することもできる。
当該方法は、本発明におけるナノバブル水等を対象に投与して、神経細胞に対し、より効率的に薬物を送達させること、および神経細胞等に対して超音波照射を行うことを含み、それにより神経細胞における膜透過性向上等が生じうる。当該細胞は、生体内および培養細胞のいずれも含む。
当該薬物送達性向上方法において使用されるナノバブル水もしくはナノバブル水溶液としては、上記の本発明におけるナノバブル水等を用いることができる。
また、当該薬物送達性向上方法における超音波照射は、上記の本発明のシステムにおける超音波発生装置を用いることができ、下記(i)〜(iii)の条件にて実施することができる。
(i)超音波の出力強度:特に制限されず、例えば、720mW/cm以下、少なくとも出力強度50〜500mW/cmの範囲内で適宜選択され得る。
(ii)超音波の周波数:特に制限されず、例えば、0.5〜10MHzの範囲内、好ましくは1〜5MHz、より好ましくは1〜3MHzの範囲内で適宜選択され得る。
(iii)超音波の照射時間:超音波の出力強度に応じても変動し得るが、特に制限されず、例えば1〜60秒、好ましくは1〜30秒、より好ましくは、1〜20秒である。
以下、参考例および実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれらに限定されるものではない。
以下の参考例および実施例において、「%」は特記しない限り、重量/容量%を示す。
参考例1:ナノバブル水の調製
注射用水2Lにポリソルベート80を2g溶解させ(0.2% ポリソルベート80)、IDEC社製ナノバブル発生装置(nanoGALFTMFZ1N-02)を用いて、以下の設定によりナノバブル水を調製した。
・調製に用いたガス:C3F8
・気泡水流量 約4.0L/分
・溶解圧力 300KPa ± 5%
調製されたナノバブル水は、適宜、オートクレーブを用いて121〜124℃ で 30分間高圧蒸気滅菌した。滅菌後にナノサイト社、LM10を用いたレーザー光散乱を利用したトラッキング法(追尾法)を用いてナノバブル平均径、ナノバブル数およびd90/d10比を測定した。
結果を表1に示す。
参考例2:ナノバブル水の調製
注射用水2Lにポリソルベート80を1g(0.05% ポリソルベート80)およびPVAを1g(0.05% PVA)溶解させ、IDEC社製ナノバブル発生装置(nanoGALFTMFZ1N-02)を用いて、以下の設定によりナノバブル水を調製した。
・調製に用いたガス:C3F8
・気泡水流量 約4.0L/分
・溶解圧力 300KPa ± 5%
調製されたナノバブル水は、適宜、オートクレーブを用いて121〜124℃で 30分間高圧蒸気滅菌した。滅菌後にナノサイト社、MS300を用いたレーザー光散乱を利用したトラッキング法(追尾法)を用いてナノバブル平均径、ナノバブル数およびd90/d10比を測定した。
結果を表2に示す。
参考例3:ナノバブル水の調製
「薄めたMcIlvaine緩衝液pH 3.0」(製品名)(富士フィルム和光純薬製) 2Lに、ポリソルベート80を2g(0.1% ポリソルベート80)溶解させ、IDEC社製ナノバブル発生装置(nanoGALFTM FZ1N-02)を用いて、以下の設定によりナノバブル水を調製した。
・調製に用いたガス:C3F8
・気泡水流量 約4.0L/分
・溶解圧力 300KPa ± 5%
調製されたナノバブル水は、適宜、オートクレーブを用いて121〜124℃ で 30分間高圧蒸気滅菌した。滅菌後にナノサイト社、MS300を用いたレーザー光散乱を利用したトラッキング法(追尾法)を用いてナノバブル平均径、ナノバブル数およびd90/d10比を測定した。
結果を表3に示す。
以下の実施例1〜7では、上述の参考例1で調製したナノバブル水[ナノバブル水(PS80)]を使用した。加えて実施例4では上述の参考例2で調製したナノバブル水を、実施例5では上述の参考例3で調製したナノバブル水をそれぞれ使用した。
実施例1:BBBキットTM を用いたフルオレセインのBBB透過実験
BBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)付属プロトコール記載のD-PBS を調製した。このD-PBSを用いて、フルオレセイン(和光純薬社製 フルオレセインナトリウム、コードNo. 213-00092)を溶解させ、フルオレセイン原液を調製した。フルオレセイン原液および参考例1で調製したナノバブル水(PS80)を用いて、フルオレセイン濃度およびナノバブル密度がそれぞれ1μMおよび2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈することで培養液(液量:500μL)を調製した(n = 3)。これら培養液をBBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)の血管側インサート(内側:液量:500μL)に加え、このインサートをD-PBS(液量1500μL)の入ったプレートのウェルに入れた後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置 (Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzで、100 mW/cm2 (n = 3)、250 mW/cm2(n = 3)、および500 mW/cm2 (n = 3) の超音波強度で、10秒間照射した。2時間後にプレートのウェル内培養液〔脳実質側(インサートの外側)〕に移行したフルオレセイン濃度を、マイクロプレートリーダーで測定した。
測定したフルオレセイン濃度より透過係数(Papp)を算出し、フルオレセインの脳内移行性(BBB透過性)を算出した。一方、D-PBSを用いて、フルオレセイン濃度が1μMとなるように培養液(液量:500μL)を調製し(n = 3)、これをコントロールとした。この培養液をBBBキットTMの血管側インサートに加え、2時間後に脳側へ移行したフルオレセイン濃度を算出した。
プレートリーダーの測定条件
蛍光波長: 520 nm
励起波長: 480 nm
Flash回数:6回
試験結果を表4に示す。
コントロールと比較して、100 mW/cm2以上の超音波照射で明らかなBBB透過性亢進が認められた。
実施例2:BBBキットTM を用いたデキストランのBBB透過実験
BBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)付属プロトコール記載のD-PBSを調製した。このD-PBSを用いて、フルオレセインイソチオシアナートデキストラン(東京化成工業製Cas No. 60842-46-8;FITCデキストラン)を溶解させ、FITCデキストラン原液を調製した。FITCデキストラン原液および参考例1で調製したナノバブル水(PS80)を用いてFITCデキストラン濃度およびナノバブル密度がそれぞれ1μMおよび2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈することで培養液(液量:500μL)を調製した(n = 3)。これら培養液をBBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)の血管側インサート(内側:液量:500μL)に加え、このインサートをD-PBS(液量1500μL)の入ったプレートのウェルに入れた後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置 (Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzで、50 mW/cm2 (n = 3)、100 mW/cm2(n = 3)、および250 mW/cm2 (n = 3) の超音波強度で、10秒間照射した。2時間後にプレートのウェル内培養液〔脳実質側(インサートの外側)〕に移行したFITCデキストラン濃度を、マイクロプレートリーダーで測定した。
測定したFITCデキストラン濃度より透過係数(Papp)を算出し、FITCデキストランの脳内移行性(BBB透過性)を算出した。一方、D-PBSを用いて、FITCデキストラン濃度が1μMとなるように培養液(液量:500μL)を調製し(n = 3)、これをコントロールとした。この培養液をBBBキットTMの血管側インサートに添加し、上記同様に操作し、2時間後に脳側へ移行したフルオレセイン濃度を算出した。
プレートリーダーの測定条件
蛍光波長: 520 nm
励起波長: 494 nm
Flash回数:6回
試験結果を表5に示す。
コントロールと比較して、50 mW/cm2 以上の超音波照射で明らかなBBB透過性亢進が認められた。
実施例3:BBBキットTM を用いた核酸のBBB透過実験
BBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)付属プロトコール記載のD-PBSを調製し、FAM-siRNA(ニッポンジーン製)を溶解し、FAM-siRNA原液を調製した。FAM-siRNA原液および参考例1で調製したナノバブル水(PS80)を用いて、FAM-siRNAの濃度が1μMおよびナノバブル密度が2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈し、培養液(液量:500μL)を調製した(n = 2)。該培養液をBBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)の血管側インサート(内側:液量:500μL)に加え、該インサートをD-PBS(液量1500μL)の入ったプレートのウェルに入れた後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置 (Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzおよび超音波強度100 mW/cm2 (n = 2)で10秒間照射した。2時間後にプレートのウェル内培養液〔脳実質側(インサートの外側)〕に移行したFAM-siRNA濃度をマイクロプレートリーダーで測定した。
測定したFAM-siRNA濃度より透過係数(Papp)を算出し、FAM-siRNAの脳内移行性(BBB透過性)を算出した。一方、D-PBSを用いて、FAM-siRNA濃度が1μMとなるように培養液(液量:500μL)を調製し(n = 2)、コントロールとした。コントロール培養液をBBBキットTMの血管側インサートに添加し、上記同様に操作し、2時間後に脳側へ移行したFAM-siRNA濃度を算出した。
プレートリーダーの測定条件
蛍光波長: 520 nm
励起波長: 494 nm
Flash回数:6回
試験結果を表6に示す。
コントロールと比較して、100 mW/cm2以上の超音波照射で明らかなFAM-siRNAのBBB透過性亢進が認められた。
実施例4:BBBキットTM を用いたフルオレセインのBBB透過実験
BBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)付属プロトコール記載のD-PBSを調製し、フルオレセイン(和光純薬社製 フルオレセインナトリウム、コードNo. 213-00092)を溶解させ、フルオレセイン原液を調製した。該フルオレセイン原液および参考例1で調製したナノバブル水を用いて、フルオレセインの濃度が1μMおよびナノバブル密度が2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈し、培養液A(液量:500μL)を調製した(n = 2)。また、該フルオレセイン原液および参考例2で調製したナノバブル水を用いて、フルオレセインの濃度が1μMおよびナノバブル密度が2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈し、培養液B(液量:500μL)を調製した(n = 2)。上記培養液Aおよび培養液BをそれぞれBBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)の血管側インサート(内側:液量:500μL)に加え、このインサートをD-PBS(液量1500μL)の入ったプレートのウェルに入れた後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置(Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzで、100 mW/cm2 (n = 2)の超音波強度で、10秒間照射した。2時間後にプレートのウェル内培養液〔脳実質側(インサートの外側)〕に移行したFAM-siRNA濃度をマイクロプレートリーダーでそれぞれ測定した。
測定したフルオレセイン濃度より透過係数(Papp)を算出し、フルオレセインの脳内移行性(BBB透過性)を算出した。一方、D-PBSを用いて、フルオレセイン濃度が1μMとなるように培養液(液量:500μL)を調製し(n = 2)、これをコントロールとした。該コントロール培養液をBBBキットTMの血管側インサートに添加し、上記同様に操作し、2時間後に脳側へ移行したフルオレセイン濃度を算出した。
プレートリーダーの測定条件
蛍光波長: 520 nm
励起波長: 494 nm
Flash回数:6回
試験結果を表7に示す。
コントロールと比較して、培養液A(参考例1)および培養液B(参考例2)を用いて100 mW/cm2以上の超音波照射することで、明らかなフルオレセインのBBB透過性亢進が認められた。
実施例5:BBBキットTM を用いた抗体のBBB透過実験
BBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)付属プロトコール記載のD-PBSを調製し、Alexa-IgG(インビトロジェン製)を溶解させ、Alexa-IgG原液を調製した。Alexa-IgG原液および参考例1で調製したナノバブル水を用いてAlexa-IgG濃度が1μMおよびナノバブル密度が2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈し、培養液A(液量:500μL)を調製した(n = 2)。また、Alexa-IgG原液および参考例3で調製したナノバブル水を用いてAlexa-IgG濃度が1μMおよびナノバブル密度が2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈し、培養液B(液量:500μL)を調製した(n = 2)上記培養液Aおよび培養液BをそれぞれBBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)の血管側インサート(内側:液量:500μL)に加え、このインサートをD-PBS(液量1500μL)の入ったプレートのウェルに入れた後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置(Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzおよび超音波強度100 mW/cm2 (n = 2)で、10秒間照射した。2時間後にプレートのウェル内培養液〔脳実質側(インサートの外側)〕に移行したAlexa-IgG濃度をマイクロプレートリーダーでそれぞれ測定した。
測定したAlexa-IgG濃度より透過係数(Papp)を算出し、Alexa-IgGの脳内移行性(BBB透過性)を算出した。一方、D-PBSを用いて、Alexa-IgG濃度が1μMとなるように培養液(液量:500μL)を調製し(n = 2)、これをコントロールとした。この培養液をBBBキットTMの血管側インサートに添加し、上記同様に操作し、2時間後に脳側へ移行したAlexa-IgG濃度を算出した。
プレートリーダーの測定条件
蛍光波長: 520 nm
励起波長: 494 nm
Flash回数:6回
試験結果を表8に示す。
コントロールと比較して、培養液A(参考例1)を用いて100 mW/cm2以上の超音波照射することで、Alexa-IgGのBBB透過性亢進が認められた。培養液B(参考例3)を用いて100 mW/cm2以上の超音波照射することで、Alexa-IgGのより明らかなBBB透過性亢進が認められた。
実施例6:ラットを用いたFITCデキストランのBBB透過実験
注射用水を用いて、フルオレセインイソチオシアナートデキストラン(東京化成工業製Cas No. 60842-46-8;FITCデキストラン)を溶解させ、FITCデキストラン原液を調製した。該FITCデキストラン原液および参考例1で調製したナノバブル水(PS80)を用いてFITCデキストラン濃度が0.5mg/mLおよびナノバブル密度が2X108個となるよう投与液を調製した(n = 3)。
該投与液を適切な大きさの注射筒および注射針(いずれも滅菌済みディスポーザブル製品)を用いて、ラット尾静脈内へ1 mL/minの速度で0.4mL注入後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置 (Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzおよび超音波強度2W/cm2 (n = 3)で、60秒間照射した。その3時間後に脳を採取しLysis buffer(0.1M Tris-HCl (pH7.8), 0.1% Triton X-100, および2mM EDTA)中でホモジネートし、FITCデキストランを抽出した。該抽出液中のFITCデキストラン濃度をマイクロプレートリーダーで測定した。
測定したFITCデキストラン濃度より透過係数(Papp)を算出し、FITCデキストランの脳内移行性(BBB透過性)を算出した。一方、該FITCデキストラン原液中のFITCデキストラン濃度が0.5mg/mLの投与液を調製し、コントロールとした(n = 2)。該コントロール投与液を上記同様に操作し、3時間後に脳へ移行したFITCデキストラン濃度を算出した。
プレートリーダーの測定条件
蛍光波長: 520 nm
励起波長: 494 nm
Flash回数:6回
試験結果を表9に示す。
コントロールと比較して、参考例1で調製されたナノバブル水を用いて超音波照射することで、フルオレセインイソチオシアナートデキストランの脳移行性亢進が認められた。
実施例7:BBBキットTMを用いたタイトジャンクション再構築検討
参考例1で調製したナノバブル水(PS80)を2X108個となるようにD-PBSを用いて希釈し、培養液を調製した(n = 2)。該培養液をBBBキットTM (フォーマコセル社製、RBT-24H)の血管側インサート(内側:液量:500μL)に加え、このインサートをD-PBS(液量1500μL)の入ったプレートのウェルに入れた後、ネパジーン製超音波遺伝子導入装置 (Sonitron GTS) を用いて、周波数1MHzおよび超音波強度100 mW/cm2 (n = 2)で、10秒間照射した。その後のタイトジャンクション再構築の評価のため経上皮電気抵抗(TEER)を0分、30分、60分および120分にそれぞれ測定した。無処置群をコントロールとした。
試験結果を表10に示す。
コントロールと比較して、参考例1で調製されたナノバブル水を用いて超音波照射することで、一過性のTEERの低下が見られたが、120分後にはコントロールと比較して同等になった。すなわち、本発明のBBB開放システムを用いる場合に、BBBタイトジャンクションの再構築が速やかに行われることが示された。
本発明のBBB開放システムは、低い出力強度の超音波を照射することで、効率よくBBBを開放できるので、安全性の高い脳内へのDDSを提供することができる。また、従来より平均径が小さいナノバブルを含むので、脳深部まで薬物を送達させることができる。さらに、リポソームを用いる必要がないので、安価に製造可能でかつ安全性も高い。以上より、本発明のシステムは、脳実質内で薬効を発揮する薬物の新規なDDSとして、きわめて有用である。
本出願は、日本で出願された特願2017−252531を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。

Claims (13)

  1. 平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波発生装置とを組み合わせてなる、血液脳関門の開放システム。
  2. ナノバブルが、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤および/または親水性樹脂と気体とからなる、請求項1に記載のシステム。
  3. ナノバブルが、非イオン性界面活性剤および/または親水性樹脂と気体とからなる、請求項1に記載のシステム。
  4. 気体が、パーフルオロ炭化水素または空気である、請求項2に記載のシステム。
  5. ナノバブルの平均径が、50nm〜200nmである、請求項1に記載のシステム。
  6. ナノバブルのd90/d10比が5以下である、請求項1に記載のシステム。
  7. ナノバブル水もしくはナノバブル水溶液におけるナノバブルの密度が、2.0×10個/mL以上である、請求項1に記載のシステム。
  8. 超音波発生装置において超音波の出力強度が、720mW/cm以下である、請求項1に記載のシステム。
  9. 超音波発生装置において超音波の出力強度が50〜500mW/cmおよび超音波の周波数が0.5〜10MHzである、請求項1に記載のシステム。
  10. 薬物の血液脳関門透過性を増大させるための、請求項1に記載のシステム。
  11. 薬物が血液脳関門の通過が困難な化合物である、請求項10に記載のシステム。
  12. 平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、血液脳関門を開放させる方法。
  13. 平均径が200nm以下であるナノバブルを含むナノバブル水もしくはナノバブル水溶液と、超音波とを用いて、薬物の血液脳関門透過性を増大させる方法。
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