JPWO2018230708A1 - 低カリウム食品、その製造方法 - Google Patents

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Abstract

短時間加熱した後に、カリウム濃度が一定以下の水に浸漬することによって、低カリウム食品を製造することができる。従来のように酸を使用しないため、味の変質がなく、また、中和を必要としないことから、簡便に低カリウム食品を製造することが可能となる。多様な食品からカリウムを除去し、低カリウム食品を提供することができる。

Description

多様な食品からカリウムを効率良く除去する方法及び低カリウム食品に関する。
日本透析医学会の調査によれば、わが国の慢性透析患者は2011年に30万人を超え、毎年5千人程度増加している。さらに、慢性腎臓病(CKD)の患者は約1330万人、すなわち日本人成人の8人に1人が慢性腎臓病患者であるとも言われており、腎機能の低下は大きな問題と考えられている。
慢性腎臓病患者は、リン、カリウム、タンパク質の制限が必要になる。特に、カリウムは、致死性の不整脈による突然死をきたすことがある高カリウム血症の原因となることから一定に制限する必要がある。そのため、慢性腎臓病患者には、カリウム制限の食事指導が継続して行われる必要がある。一日に摂取可能なカリウム量は病期によっても異なるが、1500〜2000mg以下に制限する必要がある。これは、生活習慣病の発症予防などの観点から厚生労働省が定めた日本人の食事摂取基準(2015年版)における成人の1日のカリウム摂取量の目標量が男性3000mg、女性2600mgであることを考えると1/2から3/4程度に制限することに相当する。
カリウムは、ほぼ全ての食品に含有されていることから、カリウム制限が必要な場合には、食品の選択や調理法を工夫することによってカリウム摂取量の低減を図る必要がある。特に、カリウムは、植物が大きく生育するために必須の栄養素であることから、農産物には多量に含まれている。したがって、カリウム制限を受けている患者は、カリウムが多く含まれている野菜、イモ類、豆類、果物などの農産物の摂取を制限されている場合が多い。
慢性腎臓病患者は、カリウム摂取量をはじめ食生活において種々の制限を受けていることから、限られた食材により、限られた調理方法を選択することが多く、制限された食生活にストレスを感じることもあり、QOL(Quality of Life)の点で問題になっている。
カリウム制限を行う場合には、カリウムは水に溶出しやすいことから、小さく切って水に晒したり、茹でこぼしたりするなどの調理方法によって、カリウムを除去するのが一般的である。非特許文献1には、たっぷりのお湯で葉菜類なら約5分、根菜類であれば10〜15分茹でたのち、流水で洗い流す「茹でこぼし」を行うことによって、3割から5割のカリウムを減らすことができると記載されている。しかし、茹でこぼすことによって、食材の旨味成分も同時に抜け出る、あるいは茹でこぼしても豆類などについてはカリウムが溶出しにくいなど、調理方法での対応には限界がある。例えば、ホウレンソウなどの葉菜類を5分茹でた後に、あるいは、大根などの根菜類を15分茹でた後に流水で洗い流した場合には、カリウムは除去されるものの、野菜特有の風味、旨味なども同時に抜け出てしまう。さらに、過剰に茹でていることから、歯ざわりも非常に柔らかいものとなり、味、食感ともに劣ったものとなる。また、重度の慢性腎臓病患者は高齢であることが多く、カリウム含有量の低い食材を組合せたうえで、茹でこぼすなどの調理に手間をかけることが困難になっている者も多い。そのため、簡便で継続可能な食事療法が必要とされている。
そこで、上記の一般的な調理方法による対応に加え、食品からカリウムを除去した低カリウム食品が提案されている。食品からカリウムを除去する方法としては、水耕栽培等、培養液により栽培する方法が知られている(特許文献1、2)。これら文献には、水耕栽培、又はパーライト耕により作物を栽培し、低カリウム作物を栽培する方法が開示されている。
また、食酢等、酸を添加することにより食品からカリウムを除去する方法が知られている(非特許文献2、3)。これら文献には、0.5%又は1%の酢酸、マロン酸等の有機酸、あるいは、1%食酢水(酢酸濃度0.042%)に浸漬することにより、カリウムを除去する方法が記載されている。また、野菜に針を突き刺して針穴を形成した後、水に浸漬してカリウムを除去する方法が提案されている(特許文献3)。
また、大豆から製造した豆乳、膨化食品のような加工食品(特許文献4、5)、加圧処理、凍結融解処理等を行った果物の加工品(特許文献6)、低カリウムジュース(特許文献7)など加工食品にすることによって低カリウム化し、カリウム制限を行っている腎臓病患者に食品を提供することも試みられている。
本願発明者らは、加工食品の形態ではなく、食材として種々の低カリウム食品を提供することを目的として、通電、あるいは酸処理によってカリウムを除去し、食品のpHを調整して低カリウム食品を提供する技術を開示している(特許文献8〜11)。
特開2008−61587号公報 特開2014−161256号公報 特開2017−184662号公報 特開昭63−148952号公報 特開昭64−030558号公報 特開2007−105000号公報 特表2003−511052号公報 国際公開第2015/155852号 国際公開第2016/181478号 国際公開第2016/132485号 国際公開第2016/133164号
中根真利子、透析ケア、2014年、Vol.20、No.1、pp.44−47 中野典子・宇野良子、椙山学園大学研究論集、2001年、第32号(自然科学篇)、p.41−51 内藤初枝、静岡県立大学短期大学部研究紀要、1996年、第10号、p.285−292 松裏容子 他、日本食品工業学会誌、1989年、第36巻、第2号、p.97−102 村田容常、化学と生物、2007年、Vol.45、No.6、p.403−410 鈴木綾子、澱粉科学、1993年、第40巻、第2号、p.233−243
非特許文献1に記載されているように、茹でこぼしによって十分量のカリウムを溶脱するためには、たっぷりのお湯で野菜を茹でたのち流水で洗い流す、あるいは野菜を高温で数回茹でその都度湯を交換する必要がある。作業が煩雑であるとともに、繰り返し長時間茹でることにより野菜類が軟弱化し形状が壊れるなど、産業的に良質な低カリウム野菜を生産し提供することはできなかった。
また、非特許文献2や3に記載されているように、酢酸などの酸に浸漬することによってカリウムを除去する方法は、カリウムを除去した後に中和する必要がある。また、特許文献3に記載されている穿孔し、水に浸漬する方法は、穿孔具によって野菜に孔があくことから、孔の部分が変色したり、痛みやすくなるなどの問題がある。また、特許文献3の実施例で用いているキャベツではカリウムが除去されるものの、じゃがいも、ニンジンなどの特有の食感・歯触りを得るために厚みが求められる根菜類は孔の内部の水の交換が難しいことから、カリウムの除去率が低いおそれがある。
特許文献1や2に代表されるように、溶液栽培で低カリウム野菜として栽培できる野菜は栽培期間の短い葉物野菜、例えば、リーフレタスやほうれん草等の葉物野菜、あるいはイチゴ、メロンなど栽培期間が短く、培養液によって栽培可能な作物に限定される。にんじん、ごぼうなどの根菜類や、葉物野菜でもキャベツや玉レタス(結球レタス)などの結球性葉菜類は収穫までに期間を要するために培養液で栽培されておらず、低カリウム野菜が栽培されていない。
特許文献4〜7に記載の発明は、加工食品として低カリウム化を実現したものである。そのため、食品中のカリウムは十分除去されているものの腎臓病患者が自分の好みに合うように調理することができなかった。腎臓病患者は長期の食事制限によるストレスが大きく、また、調理を行う患者の家族にとっても、患者と同じ献立で食事をしたいという希望があり、加工食品の形態ではなく、素材として提供される低カリウム食品が望まれていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために、すでに様々な食品からカリウムを除去する方法を開発している(特許文献8〜11)。本発明者らは、食品から電気的に、あるいは酸によってカリウムを除去し、低下したpHを中和することによって、食品の食感は保持しながらカリウムを除去し、元の食品と比較して遜色のない食品を製造する方法を開発している。しかしながら、低カリウム化、pHの調整に時間を要することから、より簡便な方法で短時間に低カリウム食品を提供する方法が必要とされていた。
本発明は種々の農産物から効率良くカリウムを除去する方法、及び低カリウム食品に関する。中和を行う必要なく低カリウム食品を製造することができれば、製造工程を短縮することが可能となり、短時間で低カリウム食品を製造することができる。
(1)収穫後の農産物からカリウムを除去する低カリウム食品の製造方法であって、前記農産物の中心部が45℃以上になるように短時間加熱する加熱工程と、前記農産物を中性付近の水と接触させる工程によって日本食品標準成分表2015年版(七訂)に示される前記食品のカリウム値が65%以下となるようにカリウムを除去することを特徴とする低カリム食品製造方法。
(2)前記加熱工程は、前記農産物の軟化に必要な時間より短い時間であることを特徴とする(1)記載の低カリウム食品製造方法。
(3)前記水と接触させる工程は、イオン交換樹脂若しくは逆浸透膜によりカリウムを除去した水を循環通水し接触させる工程、又はカリウム濃度が低い流水と接触させる工程であることを特徴とする(1)、又は(2)記載の低カリウム食品製造方法。
(4)前記加熱工程の前に前記農産物を一定の大きさに切断する工程を備えた(1)〜(3)いずれか1つ記載の低カリウム食品製造方法。
(5)収穫後の農産物からカリウムが除去された低カリウム食品であって、カリウム値が日本食品標準成分表2015年版(七訂)に示される前記食品のカリウム値の65%以下であるとともに、前記低カリウム食品中のナトリウム値とカルシウム値の各当量の和から、前記日本食品標準成分表2015年版(七訂)の成分値として記載されている前記食品中のナトリウム値とカルシウム値の各当量の和を引いた値を前記食品から除去されたカリウムの当量で除した値が−0.8以上0.1以下であって、カリウムを除去した後の硬度が、除去前の硬度の80%以上であることを特徴とする低カリウム食品。
(6)(5)記載の低カリウム食品であって、前記低カリウム食品中のカルシウムとマグネシウムの当量の和が、食品成分表の前記食品中のカルシウムとマグネシウムの当量の和に対して、1.0以下であることを特徴とする低カリウム食品。
(7)(5)、又は(6)記載の低カリウム食品を原材料として含む低カリウム加工食品。
中心部の温度の変化を示す図。 中心部の温度とカリウム除去される割合を示す図。
本発明は、野菜を短時間加熱した後に、食品を水に浸漬し、カリウムを除去する方法である。野菜の加熱は、沸騰水に所定の時間浸漬する、所定の温度の湯に浸漬する、電磁波加熱器を用いて加熱するなど、どのような方法を用いても良いが、加熱しすぎると水に浸漬する工程において、形がくずれるなどの問題が生じることから、長時間加熱し過ぎることは好ましくない。加熱時間は、加熱して食べる野菜では後述する最適加熱時間よりも短い条件で、生食する野菜では加熱によって硬さが変化しない条件で加熱を行う。例えば、じゃがいもやニンジンなど加熱して食べる野菜でも、キャベツなどの生食する野菜でも、加熱によって硬さがほとんど変化せず、生の状態とほぼ同定度の硬さが保てる程度に加熱し、低カリウム処理を行う。
食品を浸漬する水は、カリウムの溶脱を潤滑に進めるため、低カリウム野菜の目標カリウム濃度(100gの低カリウム野菜に含まれるカリウム濃度)の1/10〜1/100以下にすればよい。具体的には、ある野菜100g中の目標カリウム含有量を50mg(500ppm)に設定した場合には、1/10以下の0〜50ppm、より好ましくは1/100の0〜5ppm程度の濃度に保つ必要がある。カリウム濃度は低ければ低いほど、カリウム除去に要する時間が短いことから好ましい。
また、本実施例に示すように、低カリウム野菜は、カリウムを除去した後に野菜の中和処理を行わず、そのまま用いることができる。したがって、カリウムを除去するために用いる水のpHは中性付近の水を用いればよい。本発明で、中性付近の水とは、飲料水の基準として厚生労働省が定めているpH5.8以上8.6以下のものをいう。したがって、食品を浸漬するための水としては、水道水、井戸水などの飲料水、あるいは蒸留水、脱イオン水などカリウムを除去した水を使用すればよい。
浸漬する水のカリウムイオン濃度を一定以下の濃度に保つためには、食品を浸漬している水槽に水道水、井戸水などの飲料水を流し続けてもよいし、イオン交換樹脂や逆浸透膜を用いて一定のカリウム濃度を保つようにして水を循環させて用いてもよい。
本発明は、農産物からカリウムを除去する方法であるが、農産物とは主として栽培作物であって、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の分類による穀類、いも類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類をいう。特に、水耕栽培によって栽培することが難しい、穀類、いも類、豆類、野菜類、果実類をいう。野菜類のうちでも水耕栽培を行うことが難しい根菜類、茎菜類、花菜類、葉菜類の中でも結球性葉菜類は、本発明の方法であれば風味を損なわずに低カリウム食品とすることができる。
具体的には、本発明の低カリウム野菜製造方法によれば、じゃがいも、さつまいも、さといもなどのいも類、ニンジン、大根、ビーツ、コールラビ、ごぼう、れんこんなどの根菜類、日本かぼちゃ、西洋かぼちゃなどの果菜類、タケノコなどの茎菜類、ブロッコリーなどの花菜類など、これまで形態が厚みのあるブロック状で低カリウム食品として提供することが困難であった野菜類からカリウムを除去することができる。また、本発明の方法によれば、葉菜類のうちでも、水耕栽培による低カリウム化が困難であった白菜やキャベツなどの結球性葉菜類からもカリウムを除去することが可能となる。さらに、カリウムの多い豆類、具体的には大豆(青大豆、黒大豆(いわゆる黒豆)、黄大豆など)、小豆、いんげん豆(赤いんげん豆、白いんげん豆など)などの乾物を低カリウム化して提供することができる。また、落花生や枝豆は生の豆を低カリウム化して提供することができる。また、カキ、ナシ、バナナなどの果物も本発明の方法であれば、低カリウム化して提供することができる。このように、本発明の方法によれば、多様な食品を低カリウム化することができる。
低カリウム食品は、患者個人が安心して自宅で多様な食品を摂取することができるだけではなく、病院食としても茹でこぼしなどの手間をかける必要がなくなることから非常に有用である。本実施例で示すように、農産物は生の状態と同程度の硬さが保てる程度に加熱し、低カリウム処理を行っていることから、低カリウム処理後のチルド流通が可能になる。したがって、患者、あるいは病院は、低カリウム野菜として購入し、好みの調理法で調理することが可能となる。例えば、じゃがいもであれば、さらに調味して肉じゃが、茹でてポテトサラダ、揚げてフライドポテトなど、様々な調理方法で調理することが可能である。茹でこぼしなど従来の方法でカリウムを除去した場合には、非常に柔らかくなっているので、すぐに形が崩れることから、簡単なパッケージで輸送することはできない。また、ブロッコリーなどの花菜類では、通常の花菜類の冷凍前処理と同様の加熱程度であることから、低カリウム化した野菜をそのまま冷凍食品として提供することも可能である。
低カリウム食品の基準として用いるのは、食品の栄養素を一般に公開しているデータベースなど、平均的な値として広く使用されているものであればどのようなものであっても構わない。例えば、各国の政府機関、あるいはそれに準ずる機関によって解析され公開されている日常摂取する食品の成分値についてまとめたデータをいう。日本の場合には、日本食品標準成分表2015年版(七訂)、あるいは従前から使用されていた五訂増補日本食品標準成分表を指し、米国の場合には、「the Nutrient Data Laboratory」、フランスの場合には、「Composition nutritionnelle des aliments TABLE Ciqual 2012」などをいう。また、これに準ずるような成分表であればどのようなものでもよい。なお、以下において、日本食品標準成分表2015年版(七訂)を食品成分表と略記する。
食品成分表に記載されている各栄養素の値は、農産物であれば産地、収穫時期によっても数10%程度ずれていることが認識されている。しかし、本発明の方法によれば食品成分表の成分値の65%程度の値までは、容易にカリウムを除去することができる。前述のようにカリウム制限を行っている患者は、成人の1日のカリウム摂取量の目標値の1/2から3/4程度に制限する必要があること、肉・魚・卵などのタンパク源については有効なカリウム除去法がないことを考えると農産物のカリウム量は少なくとも食品成分表の65%以下とすることが望ましい。したがって、本発明で低カリウム食品という場合には、食品に含まれるカリウムの量が食品成分表の成分値の少なくとも65%以下のものをいう。より厳しいカリウム制限を行っている者に対しては、食品成分表の成分値の50%以下であることがより好ましい。
腎臓病患者がどの程度の食事制限を行っているかにより、一日に摂取可能なカリウム量は異なる。したがって、患者の必要に応じて食品成分表の65%以下、50%以下、30%以下とカリウム含有量の異なる低カリウム食品を提供することができれば、患者だけではなくその家族のニーズにあった食品とすることができる。さらに、農産物の多くを低カリウム食品から摂取することにより、低カリウム化することが困難な、肉、魚などの食品について摂取可能な量を増やすことができる。
本発明の低カリウム食品は、調味する前の低カリウム化した状態の食品を指すが、低カリウム化食品を用いた低カリウム加工食品とすることにより、さらに簡便にカリウム量を一定以下にした加工食品として、カリウム制限を行っている患者に提供することができる。
本発明における低カリウム加工食品とは、低カリウム化した農産物を用いて製造された加工食品を指す。低カリウム食品を原料とする調理済みの食品や、低カリウム化工程の後に完全に加熱した状態、半加熱の状態で提供する食材、冷凍食品、発酵食品、乾燥食品など、低カリウム化した農産物を原料として製造する加工食品全般を指す。加工食品の提供形態としては、レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰め、冷凍食品、保冷食品など、どのような形態で提供してもよい。レトルトパウチ食品などの形態で提供することができることから、カリウム制限を行っている患者に対する災害時の非常食など、これまで災害時に大きな問題となっていた腎臓病患者へのカリウム制限食の提供を行うことが可能となる。
調理済みの低カリウム加工食品として提供した場合であっても、加えた塩は塩素の量を測定することによって求めることができる。したがって、調理前の食品中のナトリウム量を求めることができる。したがって、調味済みの食品であっても素材である野菜に含まれたカリウム量、ナトリウム量を推定することが可能となることから、本実施例で示した方法によって、低カリウム化した農産物を用いた食品であることを判別可能である。
本発明の方法について以下に実施例をあげて詳細に説明する。しかし、実施例に挙げた食品に限らず、どのような食品であっても効率よく、かつ風味を損なわずに低カリウム食品化することが可能であることは言うまでもない。
[実施例1]前処理方法の検討
従来から食品を低カリウム化する方法として、酸を用いる方法が知られている。そこで、食品に前処理を行った後に、水に浸漬することによって効率良くカリウムを除去することができるのではないかと考えた。ただし、酸処理はその後水に浸漬しても味が損なわれるなどの問題があり中和を必要とすることから、酸処理以外の方法の前処理をブロッコリーを用いて検討した。
食品に適用することから前処理方法は、食品衛生上可能な方法でなければならないので、超音波、乾燥、短時間の加熱について検討を行った。超音波処理は、超音波分散機(株式会社エムエステー、UH−600)を用いて、出力600W、20KHz±3KHzで液温が35℃以下を保つように間欠的に照射し、照射時間の合計が10分間となるように照射を行った。乾燥水戻しについては、40℃の通風乾燥機中(いすゞ製作所 ESF−111S)で72時間乾燥処理したのち、脱イオン水に48時間、冷蔵浸漬して水戻しを行ったものを使用した。加熱は、ブロッコリーを沸騰水に30秒浸漬して前処理とした。なお、沸騰水に30秒ブロッコリーを浸漬した状態は、通常食する状態よりもかなり硬い状態である。
ブロッコリーを一口大に切り、前処理なし、超音波、乾燥して水に戻す(乾燥水戻し)、加熱処理を行い、イオン交換水を軽く撹拌しながら野菜を浸漬した。水はナトリウム型のイオン交換樹脂(アイリシステム株式会社・CJ−12Na)を用いてカリウム濃度をほぼ0ppmに保ったものを循環して用いた。以下の実施例においても、水はイオン交換樹脂に連続的に通水し、野菜は軽く撹拌することによって溶出したカリウムが野菜の周囲に滞留しないようにしてカリウム除去を行っている。
試料は乾燥・湿式灰化後、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムは原子吸光光度法により測定した。リンの量はバナドモリブデン発色・吸光光度法により測定した。結果を表1に示す。なお、表中、「N.D.」は測定を行わなかったことを示す。
表1に示すように、ブロッコリーの場合には、短時間の加熱、あるいは乾燥水戻し処理を行い、その後水に浸漬することによって、残存するカリウムを食品成分表の10〜23%とすることができる。何も処理を行わなかったブロッコリー(前処理なし、イオン交換水との接触時間0h)のカリウム量が食品成分表の89%であることを考慮すると、乾燥水戻し、イオン交換水との接触時間4時間では元の野菜の79%、加熱後2時間イオン交換水と接触させることによって元の野菜の89%のカリウムを除去したことになる。しかし、乾燥水戻しの場合は、茎の部分が線維を束ねたような触感になり、茹でて提供するブロッコリーとは大きく異なるものとなっていた。また、乾燥水戻しを行うと、カリウムも除去されるが、他のうまみ成分も除去されており、乾燥水戻しは低カリウム食品を製造する前処理方法としては適さないと考えられる。
前処理なしでイオン交換水に浸漬した場合でも食品成分表の10〜15%のカリウムが除去されていることを考えると、切断面からカリウムが溶出しているものと考えられる。しかし、カリウムが除去される割合の時間経過を考えると徐々にカリウムの減少率が低下していることから、これ以上長時間水に浸漬してもさほど効果があるものとは考えにくい。
超音波処理を行ったものは、前処理なしのものと比較すると、カリウム除去率が高い。しかし、カリウムが除去される割合の時間経過を考えると、前処理なしのものと同様にカリウムの減少率が時間とともに低下しており、食品成分表の50%以下のカリウム量にするにはかなり長時間水に浸漬する必要があるものと考えられる。以上の結果から、短時間の加熱による処理がカリウムを除去するのに効果的であると考えられたので、さらに検討を行った。
[実施例2]種々の野菜の低カリウム化
短時間の加熱処理を行った後に、カリウム濃度の低い水に浸漬することによって、効率良くカリウム除去を行えることが明らかとなったので、種々の野菜を短時間加熱して水に浸漬し、カリウム等の量の測定を行った。以下に具体的に説明するが、ここで、短時間の加熱処理とは、野菜の種類や大きさによって加熱時間は異なるが、中心部まで加熱されるものの、硬さは生の状態の野菜とほとんど変わらない状態に処理を行うことをいう。
通常皮を剥いて用いる野菜は皮を剥いた後、平板状あるいは立方体に切断し実験を行った。切断した短辺の長さは、表2「厚さ」の欄に示している。カリフラワー、ブロッコリーは一口大に切断して実験を行った。野菜は加熱時間の欄に示すように、沸騰水に0.5〜10分間浸漬した。なお、大豆はここでは10分間加熱しているが、1分間の加熱でも、同様の結果が得られることを確認している。
各野菜には、固有の硬さ、また、最適可食状態と感じられる硬さがあり、最適可食状態に達する最適加熱時間は野菜によって異なる(非特許文献4)。表2に記載した加熱条件は、最適可食状態よりもはるかに硬い状態に加熱する条件であり、本実施例で行っている短時間の加熱とは、最適可食状態に達する最適加熱時間よりも短い加熱条件のことである。各野菜の最適可食状態(Optimum hardness)の硬さは、テクスチュロメーターと官能試験により、非特許文献4に記載されている方法により求めることができる。また、以下の実施例で示すように、硬度計による測定や、包丁での切断、指で押しつぶすなどによっても確認することができる。以下の実施例で示すように、加熱条件は短時間、また、中心部が45℃以上の温度になるまで加熱されればよいことから、加熱して食する食品は最適可食状態よりも硬い状態である。生食する食品は低い温度で短時間加熱すればよく、その硬さはほとんど変化することがない。
野菜は加熱処理後、表2の「樹脂の種類」に記載されているイオン交換樹脂に循環通水した水に、「浸水時間」に記載した時間、軽く撹拌しながら浸漬した。イオン交換樹脂は上記と同様に、ナトリウム型のイオン交換樹脂(Na)、あるいは混床型のイオン交換樹脂(混床、アイリシステム株式会社・MB−115)を用いた。実施例1と同様にしてカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リンの量を測定した(表2)。
カリウム量(K%)は、大豆以外は食品成分表に記載されている生の農産物のカリウム値を100として%表示している。大豆は、乾物大豆を一晩水戻しした後加熱処理した。大豆のカリウム量(%)は乾物100g相当に含まれるカリウム値に換算して算出した。
表2に示すように、農産物の種類によってカリウム除去に要する時間は異なるもののいずれの農産物の場合でも、加熱処理後1〜4時間水に浸漬することにより、残存しているカリウム含有量は食品成分表に記載されているカリウム量の50%以下に減らすことができる。
立方体状に切断した野菜の場合には、小さく切った方が表面積が大きくなるのでより早くカリウムを除去することができるが、水に浸漬する時間を長くすることにより、一辺が30mm程度の大きさであれば一定以下にカリウムを除去することが可能である。この方法により、カリウムを除去すれば、酸処理等によりカリウムを除去した場合に必要な中和工程がいらないため、短時間でカリウムを除去することができる。
また、ブロッコリー、カリフラワーなどのように花芽を食べる花菜類の場合、体積に較べて表面積が非常に大きいことから、茹でこぼすことによってもカリウムを除去することは可能である。しかし、本発明による方法であれば、ほとんど生に近い状態で低カリウム食品として提供することが可能である。
イオン交換樹脂として弱酸性陽イオン交換樹脂のみを用いると、カリウムは除去されるが、多くのアミノ酸や糖類は除去されないので、脱カリウム水を循環利用すれば野菜中のうまみ成分を残しつつカリウムを除去することができる。より積極的には、これらうまみ成分を添加した水を用い脱カリウム水として用いることができる。
特許文献10、及び11に開示しているように、従来の方法ではカリウム除去工程の後に、酸性に偏った食品を中和するためにアルカリを添加する必要がある。その結果、中和に使用するアルカリに含まれるナトリウム、カルシウムが低カリウム食品に添加されることになる。一方、本発明の方法でカリウムを除去する場合には、カリウム除去後中和処理を行う必要がないことから、食品に含まれるナトリウム、カルシウムは低い状態で保たれる。
表2でカリウムを除去した食品について、食品に含まれるナトリウム量、カルシウム量について検討を行った(表3)。低カリウム食品中に含まれるナトリウム量、カルシウム量の和と、食品成分表に記載されている農産物のナトリウム量、カルシウム量の和との差を求め、除去したカリウムに対する比、すなわち、[(低カリウム化した食品のナトリウム量+カルシウム量(当量))−(食品成分表のナトリウム量+カルシウム量(当量))]/除去されたカリウム量(食品成分表のカリウム量−低カリウム化した食品中のカリウム量との差(当量))(以下、この値をδ(Na+Ca)/δKと記載する。)を求めた。結果を表3に示す。なお、試料番号は、表2に記載している試料番号を示し、試料番号が同じであれば同一の試料から得た結果であることを意味している。
δ(Na+Ca)/δKの値が負であることは、脱カリウム処理後のナトリウムとカルシウムの和が食品成分表のそれらよりも少ないことを意味する。特許文献10、及び11に記載の方法では、除去されたカリウム量に対して当量比0.15〜1.25のナトリウム及び/又はカルシウムを補い中和を行うが、この方法では、中和の必要がないことから、負の値となっているものが多い。正の値、すなわち脱カリウム処理後のナトリウムとカルシウムの和の方が食品成分表のそれらよりも大きい場合であっても、両者の差はごくわずかであり、最大でも0.07程度である。
低カリウム食品中のナトリウム及びカルシウムの和の方が大きいのは、元の農産物に含まれるナトリウム、カルシウムの含有量が食品成分表に記載されている量とは異なることや、ナトリウム型のイオン交換樹脂を用いた場合には、カリウムとナトリウムが交換されることから、水に含まれるナトリウムの含有量が高くなることに起因すると考えられる。
表3の結果では、ナトリウム型イオン交換樹脂を用いた試料番号2のじゃがいものδ(Na+Ca)/δKが0.074と一番高い値となっている。δ(Na+Ca)/δK値は、元の農産物中に含まれるナトリウムやカルシウム量の違いや、ナトリウム型のイオン交換樹脂を使用して水を循環させることを考慮しても、0.1以下であると考えられる。δ(Na+Ca)/δK値は、カリウム除去率との比であることを考えると−0.80より小さくはならないものと考えられるから、−0.80以上0.1以下の値になると考えられる。
さらに、施肥による影響を受けにくいカルシウム、マグネシウムについて食品成分表の値との比を算出した。食品成分表に記載されているカルシウム、マグネシウムの合計に対するカリウムを除去した食品中のカルシウム、マグネシウムの合計の当量比(低カリウム化した食品のカルシウム量+マグネシウム量(当量))/(食品成分表のカルシウム量+マグネシウム量(当量))を求めた(表3、食品成分表に対する(Ca+Mg)比)。カルシウム、マグネシウムの当量比は0.32(試料番号20、ブロッコリー)〜0.78(試料番号5、じゃがいも、試料番号23、大豆)と低カリウム化した食品中のカルシウム、マグネシウム量が減少していた。
水に晒すことによって、食品からカルシウムやマグネシウムも減少するが、水溶性のカリウムに比べ、分子量も大きく細胞内の構成要素と結合して存在していることの多い、カルシウム、マグネシウムはその低下率が少ない。食品成分表と実際の農産物の栄養素の値は、産地、季節によって変わるが、カルシウム、マグネシウムは比較的影響を受けにくい。実際に低カリウム化する食品のカルシウムやマグネシウムの値が食品成分表に記載されている値よりも大きい場合であっても、カリウム除去工程の間に減少することから当量比で1.0以下の値になるものと推定される。
さらに、食品成分表に記載されている農産物のカルシウム量、マグネシウム量の和と測定した低カリウム食品中に含まれるカルシウム量、マグネシウム量の和との差を求め、除去したカリウムに対する比、すなわち、[(食品成分表のカルシウム量とマグネシウム量(当量))−(低カリウム化した食品のカルシウム量とマグネシウム量(当量))]/除去されたカリウム量(食品成分表のカリウム量−低カリウム化した食品中のカリウム量との差(当量))(以下、この値をΔ(Ca+Mg)/δKと記載する。)を求めた。いずれの場合も、カリウム除去した食品の方が、食品成分表よりもカルシウム量、マグネシウム量が減少している。また、カリウム減少量に比較するとその減少量は少ないものとなっており、0.076(試料番号5、じゃがいも)〜0.34(試料番号10、さつまいも)の間の値となっている。
Δ(Ca+Mg)/δK値は、実際の野菜に含まれるカルシウム、マグネシウムの量と食品成分表の値の差や、除去されたカリウムの程度によっても異なるが、0.005〜0.7の範囲になると考えられる。
[実施例3]加熱時間の検討
加熱による前処理が低カリウム食品を製造するためには効果的であると考えられたので、処理温度、処理時間についての検討を行った。切断した野菜を沸騰水に投入した場合、表面の温度はすぐに上昇するが、中心部の温度は外側から徐々に上昇する。中心部の温度が一定以上の温度となることが、カリウムを効率良く除去するためには必要であると考えた。中心部の温度が上昇する時間をサーミスタ(株式会社ティアンドデイ、TR−1320 ステンレス保護管センサ、直径2mm)を用いて解析した。
じゃがいもを10、20、30mmの厚みに切断し、激しく沸騰している脱イオン水中に、センサを挿入した試料を吊り下げて、中心部の温度の経時変化を測定した(図1)。試料投入による温度変化がないように、加熱沸騰水は4L、各試験は2片(数10g程度の重量)で行っている。図1に示すように、10mmの厚みであっても、内部が90℃に達するには、3分程度の時間を要することが分かった。
表2に示した厚み10mmのじゃがいもで行った試験では加熱時間を3分、あるいは2分としてカリウム除去を行っている。そうすると、中心部分の温度は、85〜90℃、75℃〜80℃に達しているものと考えられる。いずれの場合も100℃には達しておらず、75℃程度に熱せられた場合でも十分にカリウムが除去されている。そこで、低い温度で加熱した場合でもカリウムが除去されるのではないかと考え、加温する温度の検討を行った。
厚み1cmに切断したじゃがいも試料300gを、40℃から75℃に設定した温水4L中に投入し、中心温度が設定温度に達した後、2.5分、又は5分加温した。試料温度は2連で測定し、両方が設定温度に達した時間を0時間として時間を計測して加温を行った。その後、ナトリウム型イオン交換樹脂で処理したイオン交換水で2時間処置し、カリウムイオン等の測定を行った。結果を図2、表4に示す。
図2は横軸に処理温度、縦軸に残存カリウム量を示す。図2に示すように、加温時間は2.5分でも5分でもカリウム除去に対して同じような効果があった。したがって、より短時間の加温であっても加温効果があるものと考えられることから、少なくとも30秒以上その温度に維持すればよいと考えられる。50℃以上に加温すると、カリウム除去率は急激に増加することから、50℃以上で加温することが好ましい。しかし、食品成分表に対してカリウム残存量が65%になるまでカリウムを除去することを考えると、45℃の加温処理でも十分な効果を得ることができる。カリウム除去率を高くしたい場合には50℃以上の温度で、生で食べる野菜を提供する場合には、加温による影響がほとんどないと考えられる45℃で処理した後に、水に浸漬すればよい。
中心温度が45℃以上になれば、カリウムが溶出しやすくなるが、中心温度が一定の温度に達するのに要する時間は、野菜の厚みや、野菜の水分含有量や組成、すなわち野菜の種類よっても異なる。低カリウム化する野菜の中心温度を所定の温度以上にするためには、加熱方法および加熱時間を調節すればよい。
また、空気に触れることによって褐変する野菜は、酵素が失活する温度まで加熱することによって、変色を防止することができる。一般的に植物の酵素の至適温度は40〜60℃と言われている。酵素は、至適温度を超えた温度範囲で徐々に失活しはじめる。レタスでは、50℃で90秒間ヒートショック処理を行っただけで褐変が抑制されることが報告されている(非特許文献5)。野菜に含まれる酵素によって、褐変などの変化を抑制し得る温度は異なるが、中心部の温度が45℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上の温度なるように加熱することによって、酵素反応を抑制し得る。したがって、加熱処理を行ったうえで、低カリウム化した野菜は、褐変の程度が通常の野菜に比べて抑制されていることや、褐変を引き起こす酵素の活性が低下していることからも区別することができる。
また、イモ類などに含まれるデンプンは、比較的低温でデンプンの糊化が始まる(非特許文献6)。例えば、じゃがいもデンプンは61℃で糊化が開始することから、デンプンの糊化を解析することによっても、加熱工程、浸漬工程を経て低カリウム化した野菜と、他の野菜を区別することができる。すなわち、本発明の方法によって低カリウム化した野菜であることは、酵素の失活の程度、デンプンの糊化など、加熱によって変化する成分を解析することによって調べることが可能である。ここでは、酵素、デンプンなど、農産物に多く含まれている成分について例示したが、個別の農産物に特有な加熱によって変化する成分によって解析できることは言うまでもない。
さらに、表4に示すように、いずれの温度で加温した場合であっても、δ(Na+Ca)/δK、食品成分表に対する(Ca+Mg)の比、Δ(Ca+Mg)/δKは、表3で示したような一定の数値範囲内であった。
[実施例4]加熱による硬さへの影響の検討
加熱時間は短時間でよいことを示してきたが、実際に加熱工程、浸漬工程によって低カリウム化した野菜の硬さについて検討を行った。硬度は、クリープメーター(株式会社山電)を用いた。測定条件は、直径3mmの円柱形状のプランジャーを用いて、試料台上昇速度1mm/sで試験を行い、検体が破断したときの荷重を硬度とした。硬度は10試料について硬度測定を行い、平均値を求めた。
いずれも2cm角の立方体に切断したじゃがいも(男爵系じゃがいも)を用いて測定を行った(表5)。試料は一部に皮がついたままの状態のものを用いた。表中の水さらし試料は、立方体に切断した試料を5時間水に漬けたもの、短時間加熱試料は、加熱後室温に静置した際に内部変色が生じない程度まで試料を固茹でにしたもの、すなわち、試料内部の酵素失活を指標としたもの、低カリウム処理試料は、上記条件で短時間加熱後、循環水によって低カリウム化処理を行ったもの、茹でこぼし試料は、立方体試料に4倍量の水を加え、10分加熱を行い(強火で加熱を開始し、沸騰後は火力調整を行い、沸騰を保ち加熱を行ったもの)、直ちに湯切りをする工程を茹でこぼし1回とし、茹でこぼしを3回、あるいは5回繰り返した試料を用意した。各試料の平均の硬度、残存するカリウムの食品成分表に対する割合(%)を示す。
じゃがいもを用いた場合には、短時間加熱試料、低カリウム処理試料では、無処理試料に比べて、硬度が増加する傾向にある。また、他の農産物を用いた場合でも、短時間加熱、短時間加熱後に浸漬工程を行い、低カリウム化しても、ほとんど硬度の変化はない。また、硬度計で測定するまでもなく、包丁での切断、指で押した感触によっても処理の違いによる試料の硬さの違いは明らかであった。無処理試料、水さらし試料は、包丁で切断したときにサクサクと切れる感じがするのに対し、短時間加熱、低カリウム処理試料は、糊化したデンプンが包丁の表面に粘りつく感じがした。また、短時間加熱、低カリウム処理試料では、皮が剥がれることがなく、立方体の各角が欠け崩れることもない。これに対し、茹でこぼし3回、5回試料では、皮が剥がれ、指先で押す程度で潰れ、角が欠けて崩れているのが観察された。さらに、茹でこぼし5回試料では、角の欠け崩れだけではなく、煮崩れているのも観察された。また、包丁で細断した場合にも茹でこぼし3回、5回試料では容易に潰れるのが観察された。
上記のように短時間の加熱処理は、じゃがいもを通常食べる状態よりもはるかに硬い状態である。このように、農産物の軟化に必要な時間よりも短時間、あるいは、低温で加熱することによって、硬さの変化はほとんど生じることがなく、浸漬工程でカリウムを除去することができる。
ここで示したじゃがいものように、短時間加熱することによって、デンプンが多い野菜類では生の野菜より硬くなることが多い。また、他の野菜類でも、短時間の加熱処理によって多少軟化が生じるとしても、生の野菜の80%程度の硬さを保ち、包丁で切断したり、噛んだ場合に、ほとんど生の野菜と変わらない食感を保つことができる。短時間の加熱処理と、その後の浸漬工程によって、どのような農産物であっても低カリウム野菜とすることができる。また、短時間の加熱であることから、野菜の角が崩れたり、煮崩れるようなことがなく、食感の変化が生じることがない。
以上、示してきたように、中心温度が45℃以上になるように短時間加温した後に、カリウム濃度の低い水に浸漬するという、極めてシンプルな方法によりカリウムを食品から除去することができる。また、温度も比較的低温で処理することが可能であることから、生に近い状態で提供することが可能となる。したがって、非常に多様な農産物に応用可能となり、カリウム制限されている患者の食生活を豊かにすることができる。

Claims (7)

  1. 収穫後の農産物からカリウムを除去する低カリウム食品の製造方法であって、
    前記農産物の中心部が45℃以上になるように短時間加熱する加熱工程と、
    前記農産物を中性付近の水と接触させる工程によって日本食品標準成分表2015年版(七訂)に示される前記食品のカリウム値が65%以下となるようにカリウムを除去することを特徴とする低カリム食品製造方法。
  2. 前記加熱工程は、
    前記農産物を軟化に必要な時間より短い時間であることを特徴とする請求項1記載の低カリウム食品製造方法。
  3. 前記水と接触させる工程は、
    イオン交換樹脂若しくは逆浸透膜によりカリウムを除去した水を循環通水し接触させる工程、又はカリウム濃度が低い流水と接触させる工程であることを特徴とする請求項1、又は2記載の低カリウム食品製造方法。
  4. 前記加熱工程の前に前記農産物を一定の大きさに切断する工程を備えた請求項1〜3いずれか1項記載の低カリウム食品製造方法。
  5. 収穫後の農産物からカリウムが除去された低カリウム食品であって、
    カリウム値が日本食品標準成分表2015年版(七訂)に示される前記食品のカリウム値の65%以下であるとともに、
    前記低カリウム食品中のナトリウム値とカルシウム値の各当量の和から、前記日本食品標準成分表2015年版(七訂)の成分値として記載されている前記食品中のナトリウム値とカルシウム値の各当量の和を引いた値を
    前記食品から除去されたカリウムの当量で除した値が−0.8以上0.1以下であって、
    カリウムを除去した後の硬度が、除去前の硬度の80%以上であることを特徴とする低カリウム食品。
  6. 請求項5記載の低カリウム食品であって、
    前記低カリウム食品中のカルシウムとマグネシウムの当量の和が、
    食品成分表の前記食品中のカルシウムとマグネシウムの当量の和に対して、1.0以下であることを特徴とする低カリウム食品。
  7. 請求項5、又は6記載の低カリウム食品を原材料として含む低カリウム加工食品。
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