以下、図面を参照して、本発明の一実施形態としてのトランスデューサアレイ、並びにこれを備えた光音響プローブ及び光音響計測装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
以下の説明では、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の数値又は物性値を含むものとして用いることとする。例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その上限値「1」及び下限値「100」の双方を包含するものであり、「1以上100以下」を表す。他の数値範囲の表記も同様である。
[1.第一実施形態]
第一実施形態に係る光音響計測装置、光音響プローブ、及びトランスデューサアレイについて、図1〜図17を参照して説明する。以降、第一実施形態を、単に本実施形態ともいう。なお、本実施形態では、検査対象物が生体の血管である場合を例に挙げて説明する。
[1−1.構成]
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態の光音響計測装置1は、光音響プローブ2、制御部41、プリアンプ部42、AD変換部43、ビームフォーム部44、信号処理部45、表示部46、機械走査部47、及び位置検出部48を備えている。光音響プローブ2は、光照射部10、及びトランスデューサアレイ20を備えている。さらに、トランスデューサアレイ20は、超音波を検出可能な複数のトランスデューサ素子21を備えている。
制御部41、ビームフォーム部44、及び信号処理部45は、光音響計測装置1が備える図示しないCPU(Central Processing Unit)による演算処理によりプログラムを実行することで実現される機能部位である。CPUは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Device)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のデータやプログラムを格納するデータ記憶装置に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部41、ビームフォーム部44、及び信号処理部45として機能する。なお、制御部41、ビームフォーム部44、及び信号処理部45における処理機能の実現手段はプログラムに限定されず、光音響計測装置1に搭載されるハードウェアにより実現されてもよい。例えば、制御部41、ビームフォーム部44、及び信号処理部45を、ROM、RAM、CPU等を内蔵したワンチップマイコンとして構成してもよいし、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable
Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の電子回路として構成してもよい。
制御部41は、光照射部10、トランスデューサアレイ20、信号処理部45、及び機械走査部47を制御して、これらの動作が同期をとるための信号を出力する。例えば、制御部41は、光照射部10に照射光の出力タイミングを制御する出力タイミング信号を送信するとともに、トランスデューサアレイ20の光音響波の検出タイミングを制御する検出タイミング信号を送信する。このように、制御部41が光照射部10とトランスデューサアレイ20の動作タイミングを制御する信号を送信することで、光音響プローブ2は、照射光の出力と同期して光音響信号を検出することができる。
プリアンプ部42は、入力信号を増幅する増幅器である。プリアンプ部42は、後述するトランスデューサアレイ20の信号電極22に対応してそれぞれ設けられている(図2参照)。プリアンプ部42は、各信号電極22から入力された光音響信号を増幅し、増幅した増幅信号をAD変換部43に出力する。
AD変換部43は、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器である。AD変換部43は、信号電極22及びプリアンプ部42に対応してそれぞれ設けられている。AD変換部43は、プリアンプ部42から入力されたアナログの光音響波信号の増幅信号を、デジタル化された信号に変換する。AD変換部43は、デジタル化された信号を、ビームフォーム部44に出力する。
ビームフォーム部44は、信号電極22に対応する複数のAD変換部43から入力された個々の信号に対して、受信焦点と各信号電極22との位置関係に応じた遅延時間を与える遅延処理と、遅延処理によって位相を合わせた信号を加算する加算処理との整相加算処理を行う。ビームフォーム部44は、整相加算処理を行った信号を、信号処理部45に出力する。
信号処理部45は、ビームフォーム部44から入力された信号を受信して、光音響画像データを生成する。信号処理部45は、入力された信号に、例えば、フィルタ処理、対数圧縮、包絡線検波等の処理を行う。そして、信号処理部45は、上記のような処理を行った信号に対して、画像生成に必要な処理を行い、光音響画像データを生成する。信号処理部45は、生成した光音響画像データを表示部46に出力する。
表示部46は、信号処理部45から入力された光音響画像データを受信して、光音響画像を表示する。表示部46は、CRT(Cathode Ray Tube)又はLCD(Liquid Crystal
Display)等のディスプレイである。表示部46は、信号処理部45での処理に応じて、二次元の光音響画像を表示してもよく、三次元の光音響画像を表示してもよい。
機械走査部47は、1次元方向、2次元方向、又は3次元方向に光音響プローブ2を移動させることで、被検体と、光照射部10及びトランスデューサアレイ20との位置を変化させるものである。機械走査部47としては、例えば、永久磁石ローター式誘導電動機を有し、互いに直角な3方向に光音響プローブ2を微動させる自動微動台が用いられる。機械走査部47によって、トランスデューサアレイ20が光音響波を検出する位置を機械的に走査することができる。機械走査部47の動作は、制御部41によって制御される。
位置検出部48は、光音響プローブ2の位置を検出する。位置検出部48としては、例えば、磁気式、赤外線式、超音波式、又は光学式等の位置センサが用いられる。位置検出部48によって、光音響プローブ2の移動量を検出して、被検体と光音響プローブ2との位置関係を調整することができる。位置検出部48により検出された光音響プローブ2の位置情報は、制御部41に出力される。
光音響プローブ2は、図示しない円筒形状の筐体を有している。光音響プローブ2は、筐体の上面に、制御部41及びプリアンプ部42と接続されるケーブルを有する。さらに、光音響プローブ2は、筐体の底面に、被検体と接する開口部30を有する(図3参照)。光照射部10及びトランスデューサアレイ20は、この開口部30に設けられている。光照射部10の光源から発せられた照射光の照射によって生体内に光音響波が生じ、この光音響波をトランスデューサアレイ20が検出して光音響信号を出力する。そして、光音響プローブ2から出力された光音響信号は、プリアンプ部42に入力される。
光照射部10は、所定の波長の光を発する1以上の図示しない光源を有する。光源としては、検査対象物である被検体に照射光を発して、この照射光により光音響波を発生させるものを用いることができる。このような光源としては、例えば、固体レーザー、ガスレーザー、半導体レーザー、化学レーザー等のレーザーや、発光ダイオード等を用いることができる。中でも、指向性や収束性に優れ、高出力が得られる点からレーザーが好ましく用いられる。また、光源としては、1〜100nsecのパルス幅を有するパルス光を出力するパルス光源が好ましい。光源の発する照射光の波長は、計測の対象となる被検体内の物質に伝播して、この物質の光吸収特性に応じて吸収されうる波長が選択される。例えば、生体内のヘモグロビンを対象として血管を撮像する場合には、近赤外波長域に属する波長が選択される。この場合、通常600〜1000nm、好ましくは700〜850nmの波長域である。
光源から出力された照射光は、例えば光ファイバ、導光板、レンズ及びミラー等の図示しない導光手段を用いて開口部30まで導光されて、被検体に照射される。本実施形態では、光照射部10が、トランスデューサアレイ20と一体として設けられている場合を例に挙げて説明する。光照射部10による光の照射、及び照射の条件は、制御部41によって制御される。
<トランスデューサアレイの構成>
(トランスデューサアレイ及びトランスデューサ素子の構造)
トランスデューサアレイ20及びトランスデューサ素子21の構造を、図2を参照して説明する。図2は、開口部30に設けられた共通電極23及び圧電コンポジット24の一部分を示すものである。図2に示すように、トランスデューサアレイ20は、図示しない基板上に設けられた複数の信号電極22a,22bと、共通電極(グランド電極)23と、信号電極22a,22bと共通電極23とに挟まれた圧電コンポジット24とを有している。また、図2では、二つのトランスデューサ素子21a,21bを示している。なお、トランスデューサ素子21a,21bを区別しない場合には、「トランスデューサ素子21」として符号を付して説明する場合がある。また、信号電極22a,22bを区別しない場合には、「信号電極22」として符号を付して説明する場合がある。
圧電コンポジット24は、高さ方向を揃えて2次元格子状に配列されている、略同じ高さの柱状の圧電体25と、圧電体25どうしの間及び圧電体25の周囲に、圧電体25と略同じ高さで充填されている高分子体26とからなっている。圧電体25は、断面四角形の四角柱状に形成されているが、形状はこれに限定されず、断面多角形の多角柱形状であってもよく、断面円形の円柱状であってもよい。製造効率の点から、四角柱状が好ましい。
信号電極22と共通電極23は、圧電コンポジット24を挟んで対向して設けられている。信号電極22と共通電極23は、圧電体25が連続する方向と直交する面において、圧電体25の長手方向の一方の端部と他方の端部に面してそれぞれ設けられている。信号電極22は、図示しない信号線によってプリアンプ部42に電気的に接続されている。信号電極22から出力された光音響信号は、プリアンプ部42に入力される。共通電極23は、光音響波を受信する面に設けられる。共通電極23は、図示しないアース線によってアース接続される。共通電極23は、各トランスデューサ素子21に共通して設けられた接地用電極である。
信号電極22及び共通電極23は、導電性の金属又は合金が板状に形成された部材である。信号電極22及び共通電極23に用いられる金属としては、特に限定されないが、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。信号電極22及び共通電極23を圧電コンポジット24上に形成する方法は特に限定されないが、メッキ、スパッタリング、エッチング、真空蒸着、スクリーン印刷等の方法で形成することができる。
圧電コンポジット24は、複合体を直交する3軸の方向で捉えた場合、圧電体25が1軸方向に接続しており、高分子体26が3軸いずれの方向にも接続している、1−3型の圧電コンポジットを使用している。なお、圧電コンポジット24としては、1−3型に限定されず、例えば0−3型、3−0型、3−1型、3−2型、3−3型の圧電コンポジットを使用してもよい。光音響波を受けることにより圧電体25に生じる変形を周囲の高分子体26が補うことによるアイソレーションの観点、及び圧電コンポジット24を部分球面状に変形させるためのフレキシブル性の観点から、1−3型の圧電コンポジットが好ましい。柱状の圧電体25長さと幅との比(長さ/幅)は、特に限定されないが、通常3〜10、好ましくは4〜6である。
圧電体25は、例えば、ダイシングマシーン等を用いて圧電材を格子状に切削して、柱状の圧電材の間に所定間隔の間隙を設けることで形成される。圧電材としては、外部から加えられた光音響波による圧力変位を受けて電圧を生じる、圧電効果を示す材料が用いられる。圧電体25に用いられる圧電材としては、特に限定されないが、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、及びニオブ酸鉛のセラミック等の圧電セラミック;ニオブ酸リチウム、亜鉛酸ニオブ酸チタン酸鉛(PZNT)、マグネシウム酸ニオブ酸チタン酸鉛(PMNT)等の単結晶等;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ尿素(PU)等の有機材料、等が挙げられる。なお、圧電材として有機材料を用いる場合には、特にコンポジット構造をとる必要がないことから、圧電コンポジット24に代えて圧電材の有機材料よりなる一体の板状圧電体を用いることができる。
高分子体26は、格子状に切削された圧電体25の周囲に高分子材料が充填されることによって形成される。高分子体26に用いられる高分子材料としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、等の有機合成高分子が挙げられる。
圧電コンポジット24を挟んで信号電極22と共通電極23とが設けられることで、信号電極22と、これに対向する共通電極23と、信号電極22と共通電極23との間に位置する圧電体25とによって、トランスデューサ素子21が構成されている。言い換えれば、トランスデューサ素子21は、少なくとも、信号電極22、圧電体25、及び共通電極23をこの順で備えるものである。
信号電極22によって圧電コンポジット24が分割されることで、信号電極22に対応する位置に配置される圧電体25が、各トランスデューサ素子21に含まれるようグルーピングされている。図2では、54個の圧電体25が、二つの信号電極22a,22bによって、24個と30個の二つにグルーピングされて、それぞれトランスデューサ素子21a,21bに含まれている。信号電極22の大きさ、形状を変更することで、トランスデューサ素子21を所望の大きさ、形状で作成することができる。このように、トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21がトランスデューサアレイ20に占める領域の設計自由度が高いものとなっている。
なお、図2では、信号電極22が長方形の場合を例に挙げて説明したが、信号電極22の形状はこれに限定されず、例えば、多角形、円形、楕円形、星型、又は輪郭が曲線からなる不定形であってもよい。また、多角形の場合は、角に丸みを帯びたものであってもよい。また、図2では、信号電極22が圧電体25の格子状の配列に沿って、個々の圧電体25を覆うようにして配置されているが、信号電極22と圧電体25との対応関係はこれに限定されない。例えば、信号電極22は、圧電体25の格子状の配列に対して斜めに配置されていてもよい。また、圧電体25に対して、平面視で信号電極22の端部の境界線上に圧電体25が位置するようにして、信号電極22を配置してもよい。すなわち、信号電極22は、圧電体25の一部のみを覆うようにして配置されていてもよい。ただし、このように圧電体25の一部のみを覆うようにして信号電極22が配置されて、信号電極22の境界線上から信号電極22の外側に圧電体25が露出している場合には、この圧電体25は光音響波の検出に寄与することができない。このため、信号電極22の境界線が、隣接する圧電体25の間を通るようにして、信号電極22を配置することが好ましい。これによって、平面視で個々の圧電体25の全体を信号電極22で覆うようにして、信号電極22を配置することにより、光音響波の検出効率を向上させることができる。また、隣接する信号電極22a,22bの間の間隔は、隣接する圧電体25の間の距離、すなわち圧電体25の間に挟まれる高分子体26の厚みを超えないことが好ましい。
トランスデューサアレイ20が備えるトランスデューサ素子21の個数は、通常、10〜10000個、好ましくは20〜1000個、より好ましくは100〜500個である。本実施形態では、トランスデューサアレイ20がトランスデューサ素子21を256個備える場合を例に挙げて説明する。トランスデューサ素子21の数が増えることで、トランスデューサアレイ20の分解能が上がる傾向がある。一方、トランスデューサ素子21の数が増えることで、各トランスデューサ素子21で得られた光音響信号の増幅、遅延等の処理に必要な回路が増加し、また、計算処理の負荷が増す傾向にある。また、トランスデューサ素子21からの接続線の本数が増加することで、トランスデューサ素子21のケーブルが太くなり、取り回し易さが低下する。
トランスデューサ素子21の信号電極22側には、図示しないバッキング層が設けられている。バッキング層は、トランスデューサ素子21の超音波の受信方向の反対側に設けられて、超音波を吸収して減衰させることによりノイズを抑制するものである。バッキング層に用いられる材料としては、例えば、エポキシ樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。さらに、バッキング層は、酸化チタン、酸化タングステン、フェライト等の粉末を含有していてもよい。
トランスデューサ素子21の共通電極23側には、図示しない音響整合層が設けられている。音響整合層は、トランスデューサ素子21の超音波の受信方向側に設けられて、圧電コンポジット24と検査対象物との間の音響インピーダンスを整合させて、これらの境界面での反射を抑制するものである。音響整合層の音響インピーダンスは、圧電コンポジット24と検査対象物との間の音響インピーダンスに設定されることが好ましい。音響整合層に用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリドイミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。圧電コンポジット24と生体との超音波の伝播効率を向上させるために、音響整合層は、樹脂粒子又は金属粒子を含有してもよい。
(トランスデューサ素子の配置)
トランスデューサ素子21の配置について、図3,図4を参照して説明する。
図3(a)は、光音響プローブ2の検査対象物と接する側の開口部30において、光照射部10及びトランスデューサアレイ20の配置関係を示す図である。図3(a)は、部分球面状に配置されたトランスデューサ素子21を、平面上に投射して描いたものである。なお、図3(a)では、トランスデューサ素子21の占める領域を白色の領域で示している。また、トランスデューサ素子21及び光照射部10以外の部分が占める領域を黒色の領域で示している。また、トランスデューサ素子21のそれぞれの重心位置27を点で示している。図3(b)は、部分球面状に設けられるトランスデューサアレイ20の構造を説明するための図である。
図3(a)では、複数のトランスデューサ素子21を備えるトランスデューサアレイ20と、トランスデューサ素子21に囲まれて中心に配置された光照射部10との位置関係を示している。図3(a)に示すように、トランスデューサアレイ20では、複数のトランスデューサ素子21が、それぞれの重心位置27が2次元状にランダムに配置されている。さらに、複数のトランスデューサ素子21は、隙間なく隣接して配置されている。なお、本明細書において、トランスデューサ素子21の配置関係及び形状は、信号電極22の配置関係によって判断する。すなわち、トランスデューサ素子21の配置関係及び形状といった場合、信号電極22の配置関係及び形状をいう。
本明細書において、ランダムとは、グレーティングローブの発生を抑えるようにトランスデューサ素子21が不規則に配置されていることをいう。さらに、トランスデューサアレイ20では、グレーティングローブの発生を抑えるトランスデューサ素子21の不規則な配置が、2次元状に広がっている。グレーティングローブが発生する規則的に配置されたアレイとしては、例えば、正方格子状、矩形格子状、六角格子状、斜方格子状、平行体格子状等の格子状に素子が配列された2次元アレイ、等間隔又は不等間隔で直線状に配列された素子を、平行で等間隔に並べた2次元アレイ、等間隔又は不等間隔で環状に配列された素子を、環の径を等間隔に変えて同心円状に配置した2次元アレイ等が挙げられる。なお、トランスデューサアレイ20の全体としてグレーティングローブの発生を抑えるものであればよく、トランスデューサアレイ20の一部に、数個のトランスデューサ素子21による規則的な配置が出現していてもよい。
本明細書において、トランスデューサ素子21の重心位置27とは、トランスデューサ素子21の信号電極22の重心位置をいう。信号電極22の重心位置は、信号電極22の密度を均一とみなすことで、信号電極22の図心として算出される。重心位置の算出は、公知の手法により行うことができる。例えば、素子21の形状が円又は楕円形の場合、それらの中心が重心位置と算出される。また、トランスデューサ素子21の形状が三角形の場合、各頂点の三本の中線の交点が重心位置と算出される。また、トランスデューサ素子21の形状が四角形の場合、まず素子21を第一の対角線で分割して二つの三角形に分割して、分割された三角形それぞれの重心位置を求める。この手順を第一の対角線とは異なる第二の対角線についても行い、分割された三角形それぞれの重心位置を求める。そして、第一の対角線で分割された二つの三角形の重心位置を結ぶ線分と、第二の対角線で分割された二つの三角形の重心位置を結ぶ線分との交点が重心位置と算出される。また、トランスデューサ素子21の形状が多角形の場合、まず素子21を対角線で分割して複数の三角形に分割して、分割された三角形それぞれの重心位置を求める。次に、求められた三角形の重心位置を結んだ多角形を作成し、この多角形の重心位置を求める手順を繰り返すことで、重心位置が算出される。また、素子21の形状が、輪郭が曲線からなる不定形の場合、素子21の形状を輪郭に内接する多角形に近似して、この多角形の重心位置を算出することで求めることができる。
本明細書において、隙間なく隣接して配置とは、隣り合うトランスデューサ素子21の信号電極22が接触している態様をいうものではなく、信号電極22が互いに接触しない程度に近接して配置されているものをいう。このように、信号電極22が実質的に隙間なく隣接して配置されている態様により、各トランスデューサ素子21からの光音響信号を独立して取り出すことができるようになっている。
トランスデューサ素子21は、隣り合うトランスデューサ素子21の間で、それぞれの信号電極22の辺と辺とが面するようにして配置されていることが好ましい。これにより、例えば信号電極22が点と点で面する場合や、信号電極22が点と面とで面する場合と比べて、隣り合うトランスデューサ素子21の間の隙間を減らすようにして、トランスデューサ素子21を配置することができる。このように配置されるトランスデューサ素子21の形状は、多角形であることが好ましい。トランスデューサアレイ20は、開口部30をトランスデューサ素子21で埋めるようにして配置されている。
ここで、複数のトランスデューサ素子21が隙間なく隣接して配置されているのは、本発明者らにより、ランダムに配置されたトランスデューサ素子21の間に隙間がある場合には、グレーティングローブが発生して、非偏向時の不要応答が増加することがあることを見出したためである。すなわち、ランダムに配置された複数のトランスデューサ素子21を、隙間なく隣接して配置することで、受信ビームの非偏向時に不要応答が増加することを抑えることができる。
そこで、トランスデューサ素子21の配置は、トランスデューサアレイ20の主応答と不要応答との関係から規定することも可能である。この場合、トランスデューサアレイ20は、受信ビームの非偏向時において、主応答に対する不要応答のレベルが、好ましくは−30dB以下、より好ましくは−35dB以下、さらに好ましくは−40dB以下である。不要応答レベルが上記範囲内であることにより、隣接するトランスデューサ素子21の間の隙間に起因して生じる不要応答の影響を抑える程度に、トランスデューサ素子21が隙間なく隣接して配置されたトランスデューサアレイ20を提供することができる。
不要応答レベルは、トランスデューサアレイ20のビームプロファイルから求められる。ビームプロファイルは、トランスデューサアレイ20によって形成される受信ビームについて、受信感度の強度分布を、アレイ中心からの距離との関係で示すものである。ビームプロファイルにおいて、焦点の方向に生じるメインローブに由来する受信感度のピークが、アレイ中心付近の領域に主応答として表れる。このとき、このメインローブに由来するピークが含まれる範囲よりも外側の領域に表れる受信感度の強度を、不要応答とみなす。そして、最も受信感度の強い主応答の受信感度のピーク強度に対する、不要応答に由来する受信感度の強度の中で最も強いピーク強度の比を求め、この比を対数で表すことで不要応答レベル(dB)が算出される。
光音響イメージングにおける点応答特性は、光吸収の無視できる媒質中に、無視できない光吸収率をもつ材料よりなる微小球を埋め込んだものを対象として測定する。この微小球に光パルスを照射して、発生した光音響波をトランスデューサアレイで受信して取り込み記録することで、点応答特性を測定する。さらに、微小球をトランスデューサアレイに対して相対的に移動して、光パルスの照射と光音響波の受信との操作を繰り返すことで、ビームプロファイルが得られる。このとき、受信ビームプロファイルに着目するときには、光源と微小球の相対的位置関係を一定として測定することが好ましい。また、微小球の半径は、着目する超音波波長の1/2以下が好ましい。なお、同様のビームプロファイルは、超音波の伝搬を数値計算シミュレーションすることによっても求めることもできる。数値計算シミュレーションを行う場合、一般的には、トランスデューサアレイを点受信素子の集合体とみなして数値計算を行う。この点受信素子の間隔は、着目する超音波波長の1/2以下に設定することが好ましい。この条件を満たすには、トランスデューサアレイが圧電コンポジットよりなる場合、それを構成する圧電柱の1つ1つをそれぞれ点受信素子に置き換えれば十分である。
トランスデューサ素子21は、隣接するトランスデューサ素子21の間の隙間に起因して生じる不要応答の影響を抑えるものであれば、隣接するトランスデューサ素子21の間に間隔が空けられていてもよい。より具体的には、隣り合うトランスデューサ素子21の間の間隔は、トランスデューサ素子21が受信する光音響波の波長λに対して、好ましくは1/2λ以下、より好ましくは1/3λ以下、さらに好ましくは1/6λ以下である。
トランスデューサ素子21の配置関係は、トランスデューサアレイ20の開口面積に対する、トランスデューサ素子21の占める合計面積を示す充填率によっても示すことができる。この充填率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。充填率が上記範囲内であることにより、隣接するトランスデューサ素子21の間の隙間に起因して生じる不要応答の影響を抑える程度に、トランスデューサ素子21が隙間なく隣接して配置されたトランスデューサアレイ20を提供することができる。なお、充填率の算出において、トランスデューサアレイ20の開口面積は、トランスデューサ素子21の占める面積と、隣接するトランスデューサ素子21によって挟まれた部分の面積とを足し合わせたものをいう。すなわち、図4に示される開口部30全体の中でも、光照射部10が配置される部分の面積、及び複数のトランスデューサ素子21からなる集合体の外側の斜線で示される領域102は、トランスデューサアレイ20の開口面積に含まれない。
トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の面積の変動係数が、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%である。トランスデューサ素子21の面積の変動係数が上記範囲内にあることにより、各トランスデューサ素子21の特性が揃いやすくなる傾向にある。これにより、トランスデューサアレイ20に含まれるトランスデューサ素子21から得られる光音響信号の制御が容易となる。トランスデューサ素子21の面積の変動係数(%)は、トランスデューサ素子21の面積の標準偏差を、トランスデューサ素子21の平均値で除算して、100を乗算することで算出できる。
トランスデューサアレイ20は、隣接するトランスデューサ素子21の重心位置27間の距離(以降、「隣接素子間距離」と称する場合がある。)の変動係数が、好ましくは25%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下である。トランスデューサ素子21の隣接素子間距離の変動係数が上記範囲内にあることにより、各トランスデューサ素子21が略均等な距離間隔で配置される傾向にある。これにより、トランスデューサアレイ20全体にトランスデューサ素子21を偏りが少なくなるように配置して、トランスデューサ素子21の間に生じる空隙を抑えることができる。トランスデューサ素子21の隣接素子間距離の変動係数(%)は、トランスデューサ素子21の隣接素子間距離の標準偏差を、トランスデューサ素子21の隣接素子間距離の平均値で除算して、100を乗算することで算出できる。
隣接素子間距離について、図3(a)を参照して説明する。素子21aの隣接素子間距離といった場合、図3(a)に示すように、素子21aと隣接する、素子21b,21c,21d,21e,21f,21gとのそれぞれの重心位置27間の距離をいう。ここでは、素子21aと素子21fとの隣接素子間距離L1を図示しているが、素子21aと、素子21b,21c,21d,21e,21gそれぞれとの隣接素子間距離についても、素子21aの隣接素子間距離である。そして、上述した隣接するトランスデューサ素子21の隣接素子間距離の変動係数とは、トランスデューサアレイ20に含まれる全てのトランスデューサ素子21についての隣接素子間距離の変動係数を示すものである。
なお、トランスデューサ素子21の充填率、面積、及び隣接素子間距離を測定するにあたっては、トランスデューサアレイ20に含まれるトランスデューサ素子21の信号電極22の大きさを実測することにより測定することができる。このとき、必要に応じて、拡大鏡や顕微鏡を用いて観察して測定してもよい。
図3(b)に示すように、トランスデューサアレイ20は、光音響プローブ2の開口部30において、部分球面31をなして設けられる。部分球面31は、半径30mmの球において、頂点が球の中心位置と一致して、頂角90度で母線の長さ30mmである円錐の底面によって切り取られた球欠の側面部分である球冠の形状を有する。部分球面31は、開口部30の口径が42.4mmであり、口径に対する焦点距離の比を表すFナンバーが0.8となっている。トランスデューサ素子21は、このような部分球面31上の凹面部に配置されている。
トランスデューサアレイ20は、圧電コンポジット24が部分球面31を形成するように成形されている。このような部分球面状に成形された圧電コンポジット24は、例えば、板状の圧電コンポジット24を加熱して、予め加熱した球面凹状の金型と球面凸状とによって挟み込み、球殻型に湾曲させることで得ることができる。さらに、部分球面状に成形された圧電コンポジット24に、信号電極22及び共通電極23、並びに信号線及びアース線を設けることで、トランスデューサ素子21が得られる。トランスデューサ素子21は、共通電極23を凹面側に向けて、部分球面状に配置されている。
(トランスデューサ素子の配置方法)
トランスデューサ素子21の配置方法について、図5〜図7を参照して説明する。
トランスデューサ素子21の配置は、部分球面状に複数の円を隣接して配置する隣接円配置工程と、隣接円配置工程で配置された複数の円に挟まれた領域を分割する分割工程とによって行うことができる。
まず、隣接円配置工程について説明する。隣接円配置工程では、基本円に隣接するように追加円を設置することで行われる。以降、基本円と追加円とを区別しない場合、あわせて仮想円と称する場合がある。始めに、図5(a)に示すように、アレイ中心110の近くに4個の基本円111を設置する(ステップS1)。仮想円の設置は、図3(b)を参照して説明した部分球面31の表面に仮想円の外周が接するようにして行われる。このとき、各基本円111の中心間距離を、基本円の直径の2倍未満に設定する。これは、後述する追加円112を設置する際に、追加円112が中心110と重なる位置に設置されないようにするためである。なお、基本円111及び追加円112、並びに後述する追加円の直径は、同じ長さに設定する。これら仮想円の直径は、隣り合うトランスデューサ素子21どうしの重心位置27間の最小距離に相当するため、トランスデューサアレイ20の所望の性能に応じて適宜設定することができる。アレイ中心110は、トランスデューサアレイ20の中心に相当する位置である。
次に、図5(a)に示すように、ステップS1で配置した基本円111のうちの少なくとも2個に接して、且つアレイ中心110からの距離が最小となるところに追加円112を設置する(ステップS2)。なお、ここでは、4個の追加円112を設置している。
さらに、図5(b)に示すように、ステップS1で設置した基本円111に、ステップS2で設置した4個の追加円112を加えた8個の仮想円を基本円113として、ステップS2と同様に追加円114を設置する(ステップS3)。なお、ここでは、4個の追加円114を設置している。
以降同様にして、追加円を設置する。例として、図5(c)に示すように、基本円113に、ステップS3で設置した4つの追加円114を加えた12個の仮想円を基本円115として、ステップS2と同様に追加円116を設置する。なお、ここでは、4個の追加円116を設置している。
このようにして、追加円の設置を繰り返すことで、多数の仮想円を隣接して部分球面状に配置することができる。図6(a)では、アレイ中心110の周囲に設置された基本円117に加えて、さらに4個の追加円118を設置するところを示している。図6(b)は、部分球面119をなして設置された基本円117及び追加円118を側面視で示している。部分球面119は、上述した部分球面31と同様の球冠の形状を有する。このようにして、トランスデューサアレイ20の設計に応じて所望の数の仮想円が設置されるまで、追加円の設置を繰り返す。図7に示すように、仮想円の設置は、設置する追加円が開口部30と同形状及び同面積となる仮想開口部130内に位置する限り行うことができる。本実施形態では、仮想開口部130に、256個の仮想円121を設置した。なお、図7では、仮想円121の占める領域を白色の領域で示している。仮想円121以外の部分が占める領域を黒色の領域で示している。
次に、分割工程について説明する。分割工程では、隣接円配置工程で配置された仮想円121に挟まれた領域を分割して、この分割された領域にまで仮想円121の占める領域を拡張する。仮想円121に挟まれた領域の分割は、この領域に隣接する仮想円121の中心から最も近い領域が、その仮想円121に組み込まれるようにして行う。このとき、部分球面に設置した仮想円121に対して、部分球面状の仮想開口部130の面上で分割を行っている。
分割工程は、隣接円配置工程で配置された複数の仮想円121の中心を母点としたボロノイ分割によって行うことができる。ボロノイ分割とは、ある面上に複数の点(以下、「母点」と称する場合がある。)が配置されているとき、その面上の任意の点が最も近い母点に帰属するものとして面を分割することをいう。具体的には、ボロノイ分割は、近接する母点間を線分で結び、この母点間の線分の垂直二等分線を引き、この垂直二等分線を繋いだボロノイ境界を作成することで行われる。ボロノイ分割によって、仮想開口部130の面が、ボロノイ境界によって規定される多角形状のボロノイ領域に分割されたボロノイ図が得られる。このボロノイ領域は、それぞれ仮想円121の中心を一つずつ有している。また、ボロノイ分割によって、隣接する仮想円121との間の領域を区切るボロノイ境界を境界線として、仮想円121の占める領域が拡張される。
このようにして、図3(a)に示すように、トランスデューサ素子21を配置したトランスデューサアレイ20が得られる。ボロノイ境界によって区切られるボロノイ領域によって、信号電極22の形状、すなわちトランスデューサ素子21の形状が決定されている。上記説明の通り、トランスデューサ素子21は、部分球面状に隣接して配置された複数の円の中心を母点としたボロノイ分割によって規定される形状を有するということができる。
隣接円配置工程により、部分球面上において、少なくとも2つの基本円111に隣接するように追加円112が設置されることから、仮想円121は六方充填のような細密充填で配置されずに、位置にゆらぎを持って配置される。このため、仮想円121は多少の粗密をもって配置されている。さらに、この状態で分割工程を経ることで仮想円121が拡張されることによって、トランスデューサ素子21は、それぞれの重心位置27が規則的な配置とはならず、ランダムに配置されることになる。また、トランスデューサ素子21の形状は、ボロノイ分割によって規定されるものであるが、隣接して配置された直径が同じ仮想円121の中心を基にして定められている。このため、完全にランダムに配置された点を母点としてボロノイ分割する場合と比べて、トランスデューサ素子21の面積のばらつきが小さく、隣接するトランスデューサ素子21の重心位置27間の距離のばらつきが小さくなる。また、母点をランダムに配置してボロノイ分割を行い、得られたボロノイ図の中からばらつきが少ないものを抽出する場合と比べて、本実施形態の配置方法によれば、計算に要するリソースを軽減して、短時間でトランスデューサ素子の配置を行うことが出来る。
[1−2.動作と特性]
光音響計測装置1は、上述のように構成されており、光照射部10から被検体に照射光を照射する。トランスデューサアレイ20は、被検体から発せられた光音響波を検出して光音響信号を出力する。そして、信号処理部45が、光音響信号を処理することで光音響画像データを生成して、表示部46が光音響画像を表示する。このとき、ビームフォーム部44によって、複数のトランスデューサ素子21からの光音響信号の遅延時間を制御することで、受信ビームの焦点位置を、幾何学的焦点位置から電子的に偏向(ステアリング)させることができる。また、機械走査部47によって光音響プローブ2を移動させることで、照射光の照射位置と光音響波の検出位置とを機械的に走査することができる。このとき、位置検出部48によって光音響プローブ2の位置を検出することで、制御部41を介して機械走査部47による移動方向、移動量、及び移動速度が制御される。また、制御部41によって、光照射部10、トランスデューサアレイ20、信号処理部45、及び機械走査部47の動作を連携させることで、所望の位置及びタイミングでの照射光の照射と光音響波の検出とを行うことができる。これにより、光音響計測装置1では、機械的走査による撮像と、電子フォーカスによる撮像とを組み合わせて、光音響イメージングを行うことができる。また、機械走査部47を省略して、手動にて光音響プローブ2を移動し、その位置を位置検出部48によって検出することもできる。
本実施形態のトランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の面積の分布が図8に示す関係にあり、また、隣接素子間距離の分布が図9に示す関係にある。トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の面積の平均が0.942mm2、標準偏差が0.058mm2であり、変動係数が6.2%である。また、トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の隣接素子間距離の平均が2.47mm、標準偏差が0.031mmであり、変動係数が1.3%である。また、トランスデューサアレイ20の充填率は、98%である。
トランスデューサアレイ20のビームプロファイルを数値計算シミュレーションにより推定した。本明細書では、ビームプロファイルは、XYZ3軸方向の直交座標系において、Z軸がアレイの中心を通り、非偏向時の受信ビームの向きがZ軸の向きと一致するようにしてXY平面上にトランスデューサアレイ20を置いた場合に、アレイの中心からXY方向に±3mm四方までの範囲の受信感度を示している。
図10(a),図10(b)は、電子的偏向による焦点位置の移動量(以降、「焦点移動量」と称する場合がある。)が0mm、すなわち受信ビームの偏向を行っていない場合のトランスデューサアレイ20のビームプロファイルを示している。
図10(a)は、アレイ中心を通るY軸方向からの1次元強度分布を示している。図10(a)では、横軸にX軸のアレイ中心からの距離(mm)を、縦軸に受信感度の強度を示している。図10(a)に示すように、X=0mmの位置に主応答であるメインローブのピークが表れている。なお、図10(a)では、受信感度の強度の振幅を、主応答の受信感度を1とした相対値で表している。
図10(b)は、Z軸方向から受信感度の2次元強度分布を示している。図10(b)では、横軸にX軸のアレイ中心からの距離(mm)を、縦軸にY軸のアレイ中心からの距離(mm)を示し、受信感度の強度を、主応答であるメインローブのピークの受信感度に対する比の対数(dB)で示している。
次に、図11(a),図11(b)に、焦点移動量がX軸方向に1mmの場合のトランスデューサアレイ20のビームプロファイルを示す。図11(a)は、図10(a)と同様に、1次元強度分布を示している。また、図11(b)は、図10(b)と同様に、2次元強度分布を示している。
さらに、参考例1として、扇形形状のトランスデューサ素子221を隙間なく規則的に配列したトランスデューサアレイ220を挙げる。トランスデューサアレイ220は、トランスデューサアレイ20と略同じ開口面積を有している。
トランスデューサアレイ220は、図12(a)に示すように、円の中心を除いた環の部分を、9個の環に分割することで、9個の径の異なる環がそれぞれの外周と内周とを隣接させて配置されている。さらに、それぞれ環を等分割することで、扇形状の素子221が形成されている。素子221の数は、一番内側の環から外側の環に向けて、それぞれ8,16,20,24,28,32,36,44,48個存在し、トランスデューサアレイ220全体で256個の素子221を有している。さらに、トランスデューサアレイ220では、素子221の面積が同じとなるように環の幅を設定している。トランスデューサアレイ220は、図12(b)に示すように、部分球面231をなして設けられる。部分球面231は、部分球面31と同様に、半径30mmの球における球冠の形状を有する。トランスデューサ素子221は、部分球面231上の凹面部に、部分球面状に配置されている。
トランスデューサアレイ220のビームプロファイルを、図13(a),図13(b),図14(a),図14(b)に示す。図13(a)は、図10(a)と同様に、焦点移動量が0mmの1次元強度分布を示している。また、図13(b)は、図10(b)と同様に、焦点移動量が0mmの場合の2次元強度分布を示している。また、図14(a)は、図11(a)と同様に、焦点移動量が1mmの場合の1次元強度分布を示している。また、図14(b)は、図11(b)と同様に、焦点移動量が1mmの場合の2次元強度分布を示している。
またさらに、参考例2として、円形のトランスデューサ素子321を隙間なく配列したトランスデューサアレイ320を挙げる(図7参照)。トランスデューサアレイ320は、トランスデューサアレイ20と略同じ開口面積を有している。トランスデューサアレイ320は、図7を参照して説明した隣接円配置工程において仮想円を配置して、分割工程を行わずに、仮想円の位置及び形状をそのまま信号電極の位置及び形状としたものである。これにより、トランスデューサアレイ320は、円形のトランスデューサ素子321が部分球面状にランダムに配置されている。トランスデューサアレイ320の充填率は、83%である。
トランスデューサアレイ320のビームプロファイルを、図15(a),図15(b),図16(a),図16(b)に示す。図15(a)は、図10(a)と同様に、焦点移動量が0mmの場合の1次元強度分布を示している。また、図15(b)は、図10(b)と同様に、焦点移動量が0mmの場合の2次元強度分布を示している。また、図16(a)は、図11(a)と同様に、焦点移動量が1mmの場合の1次元強度分布を示している。また、図16(b)は、図11(b)と同様に、焦点移動量が1mmの場合の2次元強度分布を示している。
図17は、第一実施形態のアレイ20、参考例1のアレイ220、参考例2のアレイ320、及び後述する第二実施形態のアレイ420について、それぞれの焦点移動量と不要応答レベルとの関係を示している。なお、ここでは、焦点から0.8mm以上離れた領域の応答を不要応答とみなして、不要応答レベルを算出した。
図13(a),図13(b)と、図15(a),図15(b)とのビームプロファイルの対比から、受信ビームの非偏向時に、アレイ320は、アレイ中心の周囲の2mm付近の位置に不要応答が表れていることが分かる。このことから、円形形状の素子321をランダムに配置したアレイ320では、素子321の間に存在する隙間に起因して、グレーティングローブが生じることで、不要応答が増加していると考えられる。一方で、図10(a),図10(b)のビームプロファイルから明らかなように、アレイ20では、素子21が隙間なく隣接して配置されているために、非偏向時の不要応答がアレイ220と同程度であることが分かる。
次に、図14(a),図14(b)と、図16(a),図16(b)とのビームプロファイルの対比から、受信ビームの偏向時に、アレイ220は、アレイ中心からX軸方向に−0.8mm付近の位置に不要応答が大きく表れていることが分かる。このことから、扇形形状の素子221を配置したアレイ220では、素子221の配置の規則性に起因して、グレーティングローブが生じることで不要応答が増加しているといえる。一方で、円形形状の素子321をランダムに配置したアレイ320では、アレイ中心からX軸方向に−1mm付近の不要応答が、アレイ220よりも抑えられている。同様に、図11(a),図11(b)のビームプロファイルから明らかなように、アレイ20では、アレイ中心からX軸方向に−1mm付近の不要応答が抑えられている。これは、アレイ20,320では、素子21,321がランダムに配置されていることで、グレーティングローブが抑制されたものと考えられる。
さらに、図17に示されるように、参考例1のアレイ220では、焦点移動量が1mmの偏向時にグレーティングローブに起因する不要応答レベルが大きく増加していた。一方、参考例2のアレイ320では、偏向時の不要応答を抑圧できていたものの、焦点移動量が0mmの非偏向時にはかえって不要応答レベルが増加してしまっていた。これらに対して、本実施形態のアレイ20は、偏向時には参考例2のアレイ320と同程度の不要応答レベルでありながら、非偏向時には参考例1のアレイ220と同程度の不要応答レベルとなっている。すなわち、本実施形態のアレイ20は、規則的な配列のアレイに生じる偏向時の不要応答を抑圧するとともに、素子間に隙間があるアレイに生じる非偏向時の不要応答についても抑圧したものである。より具体的には、非偏向時における不要応答レベルは、アレイ20では0.0269(=−31.4dB)、アレイ320では0.0589(=−24.6dB)、アレイ220では0.0196(=−34.2dB)であった。
トランスデューサアレイ20は、受信ビームの非偏向時に不要応答が少なく、好適に光音響イメージングを行うことができる。このため、例えば、広い範囲の撮像が要求される場合では、機械走査部47によって光音響プローブ2を動かすことでアレイ20の位置を変えて撮像を行い、狭い範囲の撮像では、電子的偏向を行うことで高感度に光音響イメージングを行うことができる。このような狭い範囲の撮像とは、好ましくはアレイ中心から0〜0.4mmの範囲、より好ましくはアレイ中心から0〜0.3mmの範囲、さらに好ましくはアレイ中心から0〜0.2mmの範囲である。
[1−3.作用及び効果]
本実施形態に係るトランスデューサアレイ20、光音響プローブ2、及び光音響計測装置1は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
[1]トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21が、隙間なく隣接して配置されていることにより、光音響プローブ2の開口部30がトランスデューサ素子21により覆われることになる。これによって、被検体から発生する光音響波をトランスデューサ素子21により検出することで、光音響波を開口部30のトランスデューサ素子21が設けられてない部分で受けることによるロスを軽減することにより、感度を向上させることができる。また、トランスデューサ素子21が、隙間なく隣接して配置されていることにより、素子間に隙間が存在するように配置された場合に生じるグレーティングローブに起因する非偏向時の不要応答を抑圧することができる。さらに、トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の重心位置27が2次元状にランダムに配置されていることにより、素子が規則的に配置された場合に生じるグレーティングローブに起因する偏向時の不要応答を抑圧することができる。すなわち、トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の充填率を上げることによる感度の向上と、グレーティングローブに起因する不要応答の抑圧とを両立したものである。
[2]また、トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の重心位置27が2次元状にランダムに配置されている。さらに、トランスデューサアレイ20は、受信ビームの非偏向時において、主応答に対する不要応答レベルが−30dB以下である。これにより、トランスデューサ素子21が隙間なく隣接して配置された、トランスデューサアレイ20が得られる。よって、上記[1]と同様に、トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21の充填率を上げることによる感度の向上と、グレーティングローブに起因する不要応答の抑圧とを両立することができる。
[3]トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21が、部分球面状に配置されている。これにより、トランスデューサ素子21がなす幾何学的な焦点付近から発せられた超音波を効率的に検出することができる。また、トランスデューサアレイ20は、隣接円配置工程と分割工程とによって、トランスデューサ素子21を部分球面状に、ランダム且つ隙間なく隣接して配置することができる。
[4]トランスデューサアレイ20は、トランスデューサ素子21が、部分球面状に隣接して配置された複数の円の中心を母点としたボロノイ分割によって規定される形状を有する。トランスデューサ素子21がこのような形状を有することにより、球面状の領域にトランスデューサ素子がランダムに配置されるとともに、トランスデューサ素子21の面積及び隣接素子間距離のばらつきを抑えることができる。
[2.第二実施形態]
第二実施形態に係るトランスデューサアレイについて、図17〜図20を参照して説明する。以降、第二実施形態を、単に本実施形態ともいう。第二実施形態は、第一実施形態に係る光音響計測装置1及び光音響プローブ2において、トランスデューサアレイ20をトランスデューサアレイ420に変更した以外は同様に構成されている。そこで、第一実施形態と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
[2−1.構成]
<トランスデューサアレイの構成>
(トランスデューサアレイ及びトランスデューサ素子の構造)
図18(a)に示すように、トランスデューサアレイ420は、超音波を検出可能な複数のトランスデューサ素子421を備えている。トランスデューサ素子421は、図2を参照して説明したトランスデューサアレイ20と同様の層構造となっているが、信号電極22の形状が異なり、素子421の配置関係も変化している。
(トランスデューサ素子の配置)
図18(a)は、光音響プローブ2の検査対象物と接する側の開口部430において、光照射部10及びトランスデューサアレイ420の配置関係を示す図である。図18(a)は、部分球面状に配置されたトランスデューサ素子421を、平面上に投射して描いたものである。なお、図18(a)では、トランスデューサ素子421の占める領域を白色の領域で示している。また、トランスデューサ素子421及び光照射部10以外の部分が占める領域を黒色の領域で示している。
トランスデューサアレイ420は、図18(a)に示すように、複数のトランスデューサ素子421が、それぞれの重心位置が2次元状にランダムに配置されている。また、トランスデューサアレイ420は、図18(b)に示すように、部分球面431をなして設けられる。部分球面431は、部分球面31と同様に、半径30mmの球における球冠の形状を有する。トランスデューサ素子421は、部分球面431上の凹面部に、部分球面状に配置されている。さらに、複数のトランスデューサ素子421は、隙間なく隣接して配置されている。また、トランスデューサ素子421は、隣り合うトランスデューサ素子421の間で、それぞれの信号電極22の辺と辺とが面するようにして配置されている。また、トランスデューサ素子421の形状は、多角形である。そして、トランスデューサアレイ420は、トランスデューサアレイ20と比べて、重心位置、並びにトランスデューサ素子421の形状及び面積のばらつきが増している。
トランスデューサアレイ420は、トランスデューサアレイ420に含まれるトランスデューサ素子421の最小面積に対する最大面積の比(以降、「最大最小面積比」と称する場合がある。)が、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。最大最小面積比が上記範囲の上限よりも多すぎると、トランスデューサアレイ220と同程度かそれ以上の不要応答が偏向時に発生することがある。
(トランスデューサ素子の配置方法)
トランスデューサ素子421の配置方法について説明する。
トランスデューサ素子421の配置は、部分球面上にランダムな点を配置する仮想点配置工程と、仮想点配置工程で配置された点を母点としたボロノイ分割を行う分割工程と、ボロノイ分割で得られたボロノイ図の中から所望のボロノイ図を抽出する抽出工程とによって行うことができる。
まず、仮想点配置工程では、所望の個数の点(仮想点)を、開口部430と同形状及び同面積となる仮想開口部内に無作為な位置に設置する。本実施形態では、256個の仮想点を部分球面状に設置している。
次に、分割工程では、ボロノイ分割によって、仮想点配置工程で配置された仮想点を母点として、仮想開口部の面を多角形状のボロノイ領域に分割したボロノイ図を得る。このとき、部分球面状の仮想開口部の面上で分割を行っている。
さらに仮想点配置工程と分割工程とを1セットとするボロノイ図の作成を複数回繰り返す。ボロノイ図作成の回数を繰り返すほど、最大最小面積比が低くなり不要応答が抑えられた所望のボロノイ図が得られやすくなる傾向にあるため、好ましくは104回、より好ましくは106回、さらに好ましくは108回行う。本実施形態では、ボロノイ図の作成を104回行った。
続いて、抽出工程では、分割工程で得られたボロノイ図の中から、最大最小面積比が最も小さいボロノイ図を抽出する。抽出されたボロノイ図のボロノイ領域によって、トランスデューサ素子421の配置が決定される。
このようにして、図18(a)に示すように、トランスデューサ素子421を配置したトランスデューサアレイ420が得られる。ボロノイ境界によって区切られるボロノイ領域によって、信号電極22の形状、すなわちトランスデューサ素子421が決定されている。上記説明の通り、トランスデューサ素子421は、ランダムに配置された複数の点を母点としたボロノイ分割によって規定される形状を有するということができる。
仮想点配置工程と分割工程とを複数行い、さらに抽出工程を行うことによって、ランダムに配置された仮想点を基にして、トランスデューサ素子421の配置、並びに形状及び面積を決定することができる。これにより、第一実施形態のトランスデューサアレイ20と同程度の不要応答レベルを示すトランスデューサアレイ420を得ることができる。なお、最大最小面積比がトランスデューサアレイ20と同程度になるトランスデューサ素子421を得るためには、ボロノイ図の作成回数が1020回程度を要する。
[2−2.動作と特性]
第二実施形態では、トランスデューサアレイ20と同様に、トランスデューサアレイ420が被検体から発せられた光音響波を検出して光音響信号を出力する。また、複数のトランスデューサ素子421からの光音響信号の遅延量を制御することで、受信ビームの焦点位置を電子的に偏向(ステアリング)させることができる。
トランスデューサアレイ420は、トランスデューサ素子421の面積の分布が図19に示す関係にあり、また、隣接素子間距離の分布が図20に示す関係にある。トランスデューサアレイ420は、トランスデューサ素子421の面積の平均が1.023mm2、標準偏差が0.478mm2であり、変動係数が46.7%である。また、トランスデューサアレイ420は、トランスデューサ素子421の隣接素子間距離の平均が1.963mm、標準偏差が0.465mmであり、変動係数が23.7%である。また、トランスデューサアレイ220の最大最小面積比は、10である。また、トランスデューサアレイ220の充填率は、99%以上である。
トランスデューサアレイ420のビームプロファイルを数値計算シミュレーションにより推定した。トランスデューサアレイ420のビームプロファイルを、図21(a),図21(b),図22(a),図22(b)に示す。図21(a)は、図10(a)と同様に、焦点移動量が0mmの1次元強度分布を示している。また、図21(b)は、図10(b)と同様に、焦点移動量が0mmの場合の2次元強度分布を示している。また、図22(a)は、図11(a)と同様に、焦点移動量が1mmの場合の1次元強度分布を示している。また、図22(b)は、図11(b)と同様に、焦点移動量が1mmの場合の2次元強度分布を示している。
図21(a),図21(b)のビームプロファイルから明らかなように、アレイ420では素子21が隙間なく隣接して配置されているために、非偏向時の不要応答がアレイ20,220と同程度であることが分かる。
また、図22(a),図22(b)のビームプロファイルから明らかなように、アレイ中心からX軸方向に−0.8mm付近の不要応答が抑えられており、アレイ20,320と同程度となっている。これは、アレイ420においても、素子421がランダムに配置されていることで、グレーティングローブが抑制されたものと考えられる。
さらに、図17に示されるように、本実施形態のアレイ420は、偏向時には参考例2のアレイ320と同程度の不要応答レベルでありながら、非偏向時には参考例1のアレイ220と同程度の不要応答レベルとなっている。すなわち、本実施形態のアレイ420は、規則的な配列のアレイに生じる偏向時の不要応答を抑圧するとともに、素子間に隙間があるアレイに生じる非偏向時の不要応答についても抑圧したものである。なお、アレイ420は、受信ビームの非偏向時において不要応答レベルが0.0196(=−34.2dB)であった。
トランスデューサアレイ420は、上述のように構成されることで、トランスデューサ素子421の充填比率を上げることによる感度の向上と、グレーティングローブに起因する不要応答の抑圧とを両立したものである。さらには、トランスデューサアレイ420は第一実施形態のアレイ20と同様な不要応答レベルを示していることから、重心位置が2次元状にランダムに配置されており、且つ隙間なく隣接して配置されているトランスデューサ素子を備えるトランスデューサアレイによって、本発明の効果を奏することが確認された。
[3.その他]
<トランスデューサ素子の配置>
上記の実施形態では、隣接円配置工程において、4個の基本円111を、等間隔に、且つアレイ中心110を中心にしてアレイ中心110から等距離に設置した。このように、4個の基本円111が4回対象性を有しているため、追加円112,113,116が対称な位置関係で配置されて、仮想円121も4回対称性を有しているが、仮想円の配置はこれに限定されない。例えば、基本円111の配置を不均等な位置関係にすることで、仮想円が対称性を持たないように配置してもよい。
また、上記の実施形態では、基本円111を4個設置する場合について説明したが、基本円111の数は、4個に限定されず、1以上の任意の個数を設置することができる。但し、仮想円とアレイ中心とが重ならないようにして仮想円を設置する場合には、基本円111の数は3個以上で行うことが好ましい。
また、上記の実施形態では、仮想円がアレイ中心110と重ならないように、アレイ中心11の周辺部を空けるようにして仮想円を設置した。これは、アレイ中心110の位置に光照射部10を設けるに行ったものであるため、光照射部10の位置をアレイ中心110以外の位置に変更する場合には、アレイ中心110の位置に仮想円を設置してもよい。この場合、任意の位置に光照射部10を設けるための所定の領域を設けて、この領域と仮想円とが重ならないようにして、仮想円を設置すればよい。
また、上記の実施形態では、円形状の仮想円を互いに隣接して設置する場合を例に挙げて説明した。設置を行う際の図形の形状は円に限られず、楕円形又は多角形を隣接して設置してもよい。設置を行う際の計算が容易になる点、また設置した後の隣接する各図形の中心位置間の距離が均等になる点からは、円形状の仮想円を用いることが好ましい。
<光照射部の配置>
上記の実施形態では、光音響プローブ2が開口部30に光照射部10を1個有する例を説明した。光照射部10は、トランスデューサアレイ20とともに一体として光音響プローブ2に設けられてもよく、トランスデューサアレイ20と別体に設けられていてもよい。また、光照射部10の個数はこれに限定されず、2以上であってもよい。一例として、図23に、5個の光照射部510a〜510eと、トランスデューサ素子521が複数配置されたトランスデューサアレイ520とを備える光音響プローブ2を示す。ここでは、トランスデューサアレイ520の中心に1個の光照射部510aが設けられ、周囲の均等な位置に4個の光照射部510b〜510eが設けられている。このように、光音響プローブ2が2個以上の光照射部510を備える場合には、隣接円配置工程及び仮想点配置工程において、予め光照射部510の数に応じた光照射部510が設けられる領域を設けて、この領域に仮想円及び仮想点を配置しないようにする。また、分割工程において、光照射部510が設けられる領域を除外してボロノイ領域を作成する。これにより、複数の光照射部510及びトランスデューサ素子521の配置を行うことができる。
<トランスデューサアレイの形状>
上記の実施形態では、トランスデューサ素子21が部分球面状に配置されて、トランスデューサアレイ20が部分球面31をなして設けられる例を説明した。トランスデューサ素子21が平面状に配置されて、トランスデューサアレイ20が2次元平面アレイであってもよい。
<圧電体及びトランスデューサアレイの構成>
上記の実施形態では、圧電コンポジット24に含まれる圧電体25を信号電極22によって分割することで、トランスデューサ素子21を配置したトランスデューサアレイ20を構成する例を説明した。これに限定されず、個々に圧電体を有するトランスデューサ素子を予め作成して、これを配置することでトランスデューサアレイ20を構成してもよい。また、cMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)を用いたトランスデューサ素子21を配置することで、トランスデューサアレイ20を構成してもよい。
<検査対象物>
上記の実施形態では、検査対象物として、生体の血管を例に挙げて説明した。検査対象物はこれに限定されず、生体の臓器、組織、細胞等を対象としてもよい。又は、金属、樹脂、ゴム、木材、ガラス、セラミック等を対象としてもよい。
<適用対象>
上記の実施形態では、光照射部10及びトランスデューサアレイ20を備える光音響プローブ2を用いて、光音響信号を検出して光音響イメージングを行う例を説明した。トランスデューサアレイ20の適用対象はこれに限定されず、例えば、トランスデューサアレイ20から超音波を出力する、超音波送波器に用いることができる。また、検査対象物に対して超音波を送信するとともに、検査対象物で反射した反射波をトランスデューサアレイ20によって検出する、超音波診断装置及び超音波探傷試験装置に用いることができる。