JPWO2018043567A1 - ヒト多能性幹細胞を除去する化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
(1) 下記式(I)で表される化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
R2及びR3は,同一又は異なって,それぞれ,水素原子,又はC1〜6アルキル基であり,
Xは,酸素原子,硫黄原子,又はNR7であり,
ここで,R7は,水素原子又はC1〜6アルキル基であり,
Lは,−(CH2)k(NH)m(CO)n(CH2)p−で表されるリンカー部分を表し,
ここで,kは3〜7の整数を表し,mは0又は1であり,nは0又は1であり,pは0又は1であり,
Dは,ABCG2選択的細胞障害性物質を表し,
ここで,ABCG2選択的細胞障害性物質は,SN38,Mitoxantrone,Irinotecan,9−Aminocamptothecin,Doxorubicin,Daunorubicin,Epirubicin,Idarubicinol,Flavopiridol,CI1033,BBR3390,Methotrexate,Prazocin,Indolocarbazole,topoisomerase I 阻害剤であるNB−506及びJ−107088,Zidovudine(AZT),及びlamivudineから選択される物質である]。
(2) 下記式(II)で表される,(1)に記載の化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
Lは,−(CH2)k(NH)m(CO)n(CH2)p−で表されるリンカー部分を表し,
ここで,kは3〜7の整数を表し,mは0又は1であり,nは0又は1であり,pは0又は1であり,
Dは,ABCG2選択的細胞障害性物質を表し,
ここで,ABCG2選択的細胞障害性物質は,SN38,Mitoxantrone,Irinotecan,9−Aminocamptothecin,Doxorubicin,Daunorubicin,Epirubicin,Idarubicinol,Flavopiridol,CI1033,BBR3390,Methotrexate,Prazocin,Indolocarbazole,topoisomerase I 阻害剤であるNB−506及びJ−107088,Zidovudine(AZT),及びlamivudineから選択される物質である]。
(3) R1が,ハロゲン原子又は−OP(O)(OR5)(OR6)基である,(1)又は(2)に記載の化合物(R5及びR6は,(1)又は(2)の定義に従う)。
(4) Lが,−(CH2)k(NH)(CO)(CH2)−で表されるリンカー部分を表し,ここで,kは3〜5の整数を表す,(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化合物。
(5) Dが,トポイソメラーゼ阻害剤であるABCG2選択的細胞障害性物質である,(1)〜(4)のいずれか1項に記載の化合物。
(6) Dが,SN38,又はMitoxantroneである,(1)〜(5)のいずれか1項に記載の化合物。
(7) 下記のいずれかの式で表される化合物(式中,原子を明示していない末端は,CH3を表す)。
(8) 下記式(Ia)又は(Ib)で表される化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
R2及びR3は,同一又は異なって,それぞれ,水素原子,又はC1〜6アルキル基であり,
Xは,酸素原子,硫黄原子,又はNR7であり,
ここで,R7は,水素原子又はC1〜6アルキル基であり,
kは3〜7の整数を表す]。
(9) 下記式(IIa)又は(IIb)で表される化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
kは3〜7の整数を表す]。
(10) R1が,ハロゲン原子又は−OP(O)(OR5)(OR6)基である,(8)又は(9)に記載の化合物。
(11) kが3〜5の整数を表す,(8)〜(10)のいずれか1項に記載の化合物。
(12) (8)〜(11)のいずれか1項に記載の化合物と,ABCG2選択的細胞障害性物質とを反応させることを備える,(1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物の合成方法であって,ここで,ABCG2選択的細胞障害性物質が,SN38,Mitoxantrone,Irinotecan,9−Aminocamptothecin,Doxorubicin,Daunorubicin,Epirubicin,Idarubicinol,Flavopiridol,CI1033,BBR3390,Methotrexate,Prazocin,Indolocarbazole,topoisomerase I 阻害剤であるNB−506及びJ−107088,Zidovudine(AZT),及びlamivudineから選択される物質である,方法。
(13) 幹細胞を分化誘導した細胞集団に(1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物を未分化細胞が死滅する時間接触させること,及び,残存した(1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物を洗浄により除去することを含む,幹細胞を分化誘導した後に残存する未分化細胞の除去方法。
(14) 幹細胞がiPS細胞である,(13)に記載の除去方法。
(15) (1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物を有効成分として含有する,ABCB1及びABCG2トランスポーターの発現が抑制されている細胞に選択的に障害を与える薬剤。
(16) ABCB1及びABCG2トランスポーターの発現が抑制されている細胞が未分化細胞である,(15)に記載の薬剤。
(17) (1)〜(7)のいずれか1項に記載の化合物を含有する,ABCB1及びABCG2トランスポーターの発現が抑制されている細胞に選択的に障害を与えるためのキット。
本発明の化合物は,本願実施例における化合物1〜13の合成を参酌して,KP−1等由来の中間体を合成し,次いで,必要に応じてABCG2選択的細胞障害性物質由来の中間体を合成し,最後にKP−1等の中間体とABCG2選択的細胞障害性物質またはそれ由来の中間体とを反応させることにより製造することができる。
[式中,R1,R2,R3,及びXは,上記定義に従う。L’は,リンカーLと同じ又はその一部であっても良い]
一態様において,本発明は,幹細胞を分化誘導した細胞集団に本発明の化合物を未分化細胞が死滅する時間接触させること,及び,残存した前記化合物を洗浄により除去することを含む,幹細胞を分化誘導した後に残存する未分化細胞の除去方法に関する。
化学試薬は,シグマアルドリッチジャパン株式会社,和光純薬株式会社,東京化成工業(TCI)から購入し,そのまま使用した。化学合成のために使用した溶媒は,使用前に乾燥させた。高速液体クロマトグラフィーは,島津LC−2010C及び日立HPLCシステム(L−7260 オートサンプラー,L−7150 ポンプ,D−7600 インターフェース,L−7410 UV検出器)を用いて行った。マススペクトルは,島津LCMS−2010を用いてESIモードで記録した。3つの複合体の高分解能質量スペクトルは,JEOL JMS LG−2000をFABモードで使用して得た。溶液1H−NMRスペクトルはJEOL JNM−ECP 300MHzまたはJEOL JNM−ECA 600MHzのスペクトロメーターで収集した。蛍光スペクトルは,LS55蛍光分光計(Perkin Elmer社)を用いて記録した。
KB3−1及びKB3−1由来細胞(ABCB1を安定的に発現するKB/ABCB1(Y.Taguchiら,Biochemistry(1997)36:8883−8889),ABCC1を安定的に発現するKB/ABCC1(K.Nagataら,J Biol Chem(2000)275:17626−17630),及び,ABCG2を安定的に発現するKB/ABCG2(N.Hirataら,Cell Rep(2014)6:1165−1174.))を,10%熱不活化ウシ胎児血清(Equitech−Bio社,カーヴィル,テキサス州)および1%抗生物質(シグマアルドリッチ社,セントルイス,ミズーリ州)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Gibco社)中で培養した。SNLフィーダー細胞を,7%の熱不活化ウシ胎児血清(Equitechバイオ社,カーヴィル,テキサス州),1%のL−グルタミン(200mM,ギブコ社),及び1%の抗生物質を含む,4.5g/Lのグルコース含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM高グルコース,ナカライテスク,日本)を含有する培地で培養した。ヒト体初代細胞を,セルシステムズ社から購入した,MSCM(気管支上皮細胞),BEGM(副腎微小血管細胞),又はCSC(星状膠細胞,脳微小血管細胞,前立腺上皮細胞,及び肝細胞)中で培養した。hiPSCsについては,SNLフィーダー細胞を播種したゼラチンプレコートディッシュ,および,4ng/mLのbFGF(リプロセル)を含むES霊長類培地(リプロセル)を定期的なメンテナンスのために使用した。全ての細胞を37℃,5%CO2の加湿インキュベーター中で維持した。
hiPSCsを24時間継代培養した後,0.5μMのオールトランスレチノイン酸を添加し,細胞を更に48または72時間インキュベートした。その後,部分的に分化したhiPSCsを,被験化合物で72時間処理した。
被験細胞を,1ウェルあたり5000細胞となるように96ウェルプレートに播種した。播種から24時間後,被験化合物を様々な濃度で添加した。24または72時間インキュベーション後,細胞をPBSで洗浄した。生存率(%)はWST−8ベースの比色アッセイ(細胞計数キット−8,同仁化学)により決定した。450nmにおける吸光度を測定し,IC50を用量応答値に基づいて計算した。生存率(%)は,5000細胞を播種した時の値を100として求めた。トランスポーター阻害剤を用いた実験のため,シクロスポリンA(10μM)またはKo143(10μM)を,被験化合物とのインキュベーションの1時間前に添加した。
ヒトESCsまたはhiPSCsを6ウェルプレートに播種し,72時間増殖させた後,被験化合物で72時間処理した。細胞を4%パラホルムアルデヒドで1時間固定し,PBSで2回洗浄し,1%クリスタルバイオレット溶液(シグマアルドリッチ社)で15分間染色した。次いで,プレートをPBS及び蒸留水で3〜5回洗浄し,画像を撮影する前に空気乾燥させた。定量のため,1%SDS溶液を各ウェルに添加し,15分間インキュベートした。溶出液の570nmにおける吸光度を測定した。
KB3−1とKB3−1由来細胞株を1ウェルあたり5000細胞となるように96ウェルプレート(Nunc 165305,サーモフィッシャーサイエンティフィック社)上に播種した。細胞播種の24時間後に被験化合物(1μMまたは10μM)を添加し,細胞を37℃で2時間インキュベートした。処理した細胞をPBSで洗浄し,10%FBSを含有するDMEM中,レーザ励起波長405,488,及び561nmの共焦点顕微鏡を使用して観察した(Cell Voyager 1000,横河電機株式会社)。定量分析は,蛍光強度を測定し,NIH ImageJ,バージョン1.30をもちいて分析することにより行った。hiPSCs(クローン#201B7)を,μ−ディッシュ(高さ35mm,ibidi社)中のSNLフィーダー細胞上に播種した。インキュベーション6日後に,iPS細胞のドーナツ状のコロニーが得られた。コロニーをKP−1(1μM),複合体17(1μM),または複合体18(10μM)と共に,37℃で2時間インキュベートした。処理した細胞をPBSで洗浄し,4ng/mLのbFGFを含むES霊長類培地中で観察した。蛍光イメージングは,レーザー励起波長405,488,および561nmの共焦点顕微鏡(Cell Voyager 1000,横河電機株式会社)を用いて撮影した。
チューブリン重合アッセイキットは,Cytoskeleton(BK006P)から購入し,製造業者の指示に従ってアッセイを行った。各成分の最終濃度は,PIPES(pH6.9) 80mM,MgCl2 2mM,EGTA 0.5mM,グリセロール 10.2%,GTP 1mM,及びチューブリン 3mg/mLであった。反応系を,チューブリンを含有しない状態で37℃に予備加温し,次いでチューブリンの添加により反応を開始した。チューブリンの添加直後,及び,その後1分間隔で60分間,340nmにおける吸収をSpectraMax M5(Molecular Devices社)を用いて測定した。CA4およびタキソールを陽性対照として用い,分子14及びDMSO単独を陰性対照として用いた。
hiPSCsのアルカリフォスファターゼ活性は,アルカリフォスファターゼ基質キット(SK−5300,Vector(登録商標)ブルー)を用いて測定した。hiPSCコロニーと部分的に分化したhiPSCsを上述の方法で調製した。次いで,細胞をSK−5300で処理し,室温で1時間インキュベートして洗浄し,最後にPBS緩衝液中で維持した。
オールトランスレチノイン酸(0.5μM)と共に48時間インキュベートすることにより部分的に分化したhiPSCsを調製した後,被験化合物と共に72時間処理した。トータルmRNAをISOGEN(株式会社ニッポンジーン)を用いて単離し,PrimeScript(宝酒造社)を用いてcDNAを合成した。QPCRは,高速SYBR(登録商標)Greenマスターミックスを用い,7500FastリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社)で行った。プライマー配列を以下の表1に示す。
複合体17のトポイソメラーゼIが阻害活性は,スーパーコイルDNA緩和アッセイにより試験した。スーパーコイルDNA(TopoGEN社)を,複合体17(0,1,若しくは10μM)又は対照としてSN38(0,1,若しくは10μM)と予め混合された,組換えヒトトポイソメラーゼI(野生型タンパク質,TopoGEN社)と共に37℃で30分間インキュベートした。反応を停止緩衝液(TopoGEN社)で終了させ,反応混合物を1%アガロースゲルにロードした。電気泳動後,ゲルを,TAE緩衝液中の臭化エチジウムで染色し,UV照明下で撮影した。
オールトランスレチノイン酸(0.5μM)と共に48時間インキュベートすることにより部分的に分化したhiPSCsを調製し,その後複合体17(5μM)で72時間処理した。複合体17で細胞処理した3日後,培地を回収した。細胞を2mlの新鮮なES培地で3回洗浄し,洗浄培地を回収した。得られた培地試料を遠心分離し,蛍光強度(励起波長528nm)を分析した。
(実施例1)化合物1〜8の合成
細胞障害性抗がん剤として,SN38,Camptothecin,9−Aminocamptothecin,9−nitrocamptothecin,7−ethylcamptothecin,Doxorubicin,Mitoxantrone,Etoposide,Mitomycin C,5−FUdR,Dactinomycin,Taxol,及びVinblastinを用いた。KB3−1及びKB3−1由来細胞(KB/ABCB1,KB/ABCC1,及びKB/ABCG2細胞を用いて,上述の(細胞ベースアッセイ)を行い,各化合物のIC50値を求めた(n≧2)。
KP−1における結合可能な部位を調べるため,構造活性相関を調べた。最初にKP−1のベンゼン「ヘッド」及びキサントン「アーム」上に異なる置換機を有するKP−1誘導体を上述の方法に従って15種類合成し(化合物1〜15),それらの蛍光スペクトル(λex及びλem)を測定した。次いで,化合物1〜15のABCトランスポーターに対する選択性を4種類の細胞株(KB3−1,KB/ABCB1,KB/ABCC1,およびKB/ABCG2)の染色パターンにより評価した。
化合物14と細胞障害性抗がん剤であるコンブレタスタチンA−4(CA4)との結合物(複合体16)が,KP−1のABC輸送体選択性を維持するか否かを,化合物14とCA4を結合させて調べた。この天然に存在するチューブリン阻害剤は,高度にABCB1およびABCG2を発現する細胞株に対して効果的であり,このことはCA4が,ABCB1またはABCG2のいずれかの基質ではないことを示している(L.M.Greeneら,J Pharmacol Exp Ther(2010)335:302−313)。化合物16の構造を図2Aに示す。化合物16のチューブリン重合阻害能を確認するため,チューブリン重合アッセイを行った。また,複合体16のABCトランスポーター選択性を調べるため,細胞生存率アッセイと蛍光イメージングアッセイの2種類の細胞ベースのアッセイを同時に行った。
ABCG2は,一般に,ABCB1よりも狭い排出基質プロファイルを持つと考えられている(J.J.Strouseら,Anal Biochem(2013)437:77−87)。実施例13におけるCA4の代わりにABCG2選択的細胞障害性薬剤を用いることにより,得られる複合体がABCB1およびABCG2の両方の基質となるか調べた。いくつかの細胞障害性抗がん剤が,ABCG2の基質として報告されている(L.Doyleら,Oncogene(2003)22:7340−7358)。この中から長い使用暦を持つ抗癌剤SN38を選択して複合体17を合成した(図3A)。複合体17のABCトランスポーター選択性を調べるため,細胞生存率アッセイと蛍光イメージングアッセイの2種類の細胞ベースのアッセイを同時に行った。
化合物14とABCG2選択的細胞障害性薬剤との組み合わせが,ABCB1およびABCG2の両方に対する細胞障害性基質となりうることをさらに検証するため,化合物14と別のABCG2選択的細胞障害性薬剤ミトキサントロンとを結合させて,複合体18(図5A)を合成した。複合体18のABCトランスポーター選択性を調べるため,細胞生存率アッセイと蛍光イメージングアッセイの2種類の細胞ベースのアッセイを同時に行った。
複合体17と複合体18が,細胞混合物中のhiPSCsを標識し,排除することができるかどうかを確認した。hiPSCsは,過増殖すると細胞がドーナツ状のコロニーを形成する。コロニーの中央部は分化した細胞を表す(N.Hirataら,Cell Rep(2014)6:1165−1174)。まず,ドーナツ状のコロニーを形成したhiPSCsを複合体17(1μM)又は複合体18(10μM)で処理し,直後に共焦点顕微鏡で観察した。
蛍光標識した(図5A)。また,複合体17又は複合体18存在下での培養により,ALP−陽性細胞が除去されたが,ALP−陰性細胞はほとんど影響を受けなかった(図5B)。hiPSCsが細胞混合物から除去された。DMSO単独で処理した細胞混合物は,nanog(0.7%),oct3/4(6.7%),およびsox2(0.4%)を比較的高く発現した。複合体17または複合体18存在下での培養により,nanogの発現レベルを0.1%に,oct3/4の発現レベルを0.8%に,かつsox2の発現レベルを0.03%に減少させ(図5C,5D,5E),多能性細胞の選択的な除去と一致した。
2種類のhiPSCクローン,201B7及び253G1と比較した,5種類の異なるヒト体初代細胞に対する複合体17の効果を比較した。また,SN38自体がhiPSCsに対して選択的であるかどうかを調べるために,SN38単独と複合体17の種々のヒト初代細胞及びhiPSCsに対する効果を比較した。
SN38が元来有する選択性は,その作用メカニズムに由来する可能性がある。(C.P.Garciaら,Stem Cell Res(2014)12:400−414;O.Momcilovic,PLoS One(2010)5:e13410) SN38はポイソメラーゼI(TopoI)を阻害することによって抗増殖活性を発揮する(B.L.Stakerら,Proc Natl Acad Sci USA(2002)99:15387−15392)。PSCsの多能性と自己再生には高い増殖率が重要であると考えられている(S.Ruizら,Curr Biol(2011)21:45−52)。対照的に,分化細胞は通常,低増殖速度を示し,おそらくこれがある程度のTopoI阻害剤に対する抵抗性を与え得る。複合体17が,TopoIを阻害するかどうかを調べるため,組換えヒトトポイソメラーゼIを使用して,インビトロでの生化学アッセイを行った。
腫瘍を生じやすい未分化細胞が複合体によって除去された後,移植前に細胞試料から複合体を除去する必要がある。その蛍光特性を利用して,複合体17の残存量をモニターした。
Claims (17)
- 下記式(I)で表される化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
R2及びR3は,同一又は異なって,それぞれ,水素原子,又はC1〜6アルキル基であり,
Xは,酸素原子,硫黄原子,又はNR7であり,
ここで,R7は,水素原子又はC1〜6アルキル基であり,
Lは,−(CH2)k(NH)m(CO)n(CH2)p−で表されるリンカー部分を表し,
ここで,kは3〜7の整数を表し,mは0又は1であり,nは0又は1であり,pは0又は1であり,
Dは,ABCG2選択的細胞障害性物質を表し,
ここで,ABCG2選択的細胞障害性物質は,SN38,Mitoxantrone,Irinotecan,9−Aminocamptothecin,Doxorubicin,Daunorubicin,Epirubicin,Idarubicinol,Flavopiridol,CI1033,BBR3390,Methotrexate,Prazocin,Indolocarbazole,topoisomerase I 阻害剤であるNB−506及びJ−107088,Zidovudine(AZT),及びlamivudineから選択される物質である]。 - 下記式(II)で表される,請求項1に記載の化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
Lは,−(CH2)k(NH)m(CO)n(CH2)p−で表されるリンカー部分を表し,
ここで,kは3〜7の整数を表し,mは0又は1であり,nは0又は1であり,pは0又は1であり,
Dは,ABCG2選択的細胞障害性物質を表し,
ここで,ABCG2選択的細胞障害性物質は,SN38,Mitoxantrone,Irinotecan,9−Aminocamptothecin,Doxorubicin,Daunorubicin,Epirubicin,Idarubicinol,Flavopiridol,CI1033,BBR3390,Methotrexate,Prazocin,Indolocarbazole,topoisomerase I 阻害剤であるNB−506及びJ−107088,Zidovudine(AZT),及びlamivudineから選択される物質である]。 - R1が,ハロゲン原子又は−OP(O)(OR5)(OR6)基である,請求項1又は請求項2に記載の化合物。
- Lが,−(CH2)k(NH)(CO)(CH2)−で表されるリンカー部分を表し,ここで,kは3〜5の整数を表す,請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
- Dが,トポイソメラーゼ阻害剤であるABCG2選択的細胞障害性物質である,請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化合物。
- Dが,SN38,又はMitoxantroneである,請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の化合物。
- 下記のいずれかの式で表される化合物。
- 下記式(Ia)又は(Ib)で表される化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
R2及びR3は,同一又は異なって,それぞれ,水素原子,又はC1〜6アルキル基であり,
Xは,酸素原子,硫黄原子,又はNR7であり,
ここで,R7は,水素原子又はC1〜6アルキル基であり,
kは3〜7の整数を表す]。 - 下記式(IIa)又は(IIb)で表される,請求項8に記載の化合物
[式中,R1は,水素原子,ハロゲン原子,C1〜6アルキル基,C1〜6アルコキシ基,フェニル基,フェニルオキシ基,水酸基,又は−OP(O)(OR5)(OR6)基であり,
ここで,R5及びR6は,同一又は異なって,それぞれ,フェニル基で置換されていても良いC1〜6アルキル基を表すか,又は,R5及びR6は存在せず,
kは3〜7の整数を表す]。 - R1が,ハロゲン原子又は−OP(O)(OR5)(OR6)基である,請求項8又は請求項9に記載の化合物。
- kが3〜5の整数を表す,請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の化合物。
- 請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の化合物と,ABCG2選択的細胞障害性物質とを反応させることを備える,請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物の合成方法であって,ここで,ABCG2選択的細胞障害性物質が,SN38,Mitoxantrone,Irinotecan,9−Aminocamptothecin,Doxorubicin,Daunorubicin,Epirubicin,Idarubicinol,Flavopiridol,CI1033,BBR3390,Methotrexate,Prazocin,Indolocarbazole,topoisomerase I 阻害剤であるNB−506及びJ−107088,Zidovudine(AZT),及びlamivudineから選択される物質である,方法。
- 幹細胞を分化誘導した細胞集団に請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物を未分化細胞が死滅する時間接触させること,及び,残存した請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物を洗浄により除去することを含む,幹細胞を分化誘導した後に残存する未分化細胞の除去方法。
- 幹細胞がiPS細胞である,請求項13に記載の除去方法。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物を有効成分として含有する,ABCB1及びABCG2トランスポーターの発現が抑制されている細胞に選択的に障害を与える薬剤。
- ABCB1及びABCG2トランスポーターの発現が抑制されている細胞が未分化細胞である,請求項15に記載の薬剤。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の化合物を含有する,ABCB1及びABCG2トランスポーターの発現が抑制されている細胞に選択的に障害を与えるためのキット。
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