JPWO2017150729A1 - 多孔性カプセルおよびその製造方法 - Google Patents

多孔性カプセルおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めうる、新規なカプセルを提供することを課題とする。また、本発明の他の課題は、多種の目的で使用することができる、新規なカプセルを提供することである。【解決手段】 ターゲット物質に作用する作用剤を収容している収容室が、微細貫通孔を有する多孔性の外殻によって、雰囲気空間から区画形成された、多孔性カプセルであって、前記微細貫通孔が、前記ターゲット物質が前記雰囲気空間から前記収容室まで通過することを許容し、かつ、前記作用剤の少なくとも一部が前記収容室から前記雰囲気空間まで通過することを阻止する大きさを有する、多孔性カプセル。【選択図】図2

Description

本発明は、多孔性カプセルおよびその製造方法に関する。
近年、薬効成分の効果を最大限に引き出すために様々なアプローチとしてドラッグデリバリーシステムが注目されている。具体的には、経口、経皮、血管など投与ルートに薬剤の特性に合わせて適切な製剤設計を行う方法である。そのため、有効成分が体内へ吸収される経路を考慮して、適切な添加物としての賦形剤を有効成分に添加している。
特開2006−036734号公報
例えば、特許文献1のように、慢性腎不全の症状を緩和させるべく経口で吸着剤(以下、経口吸着剤)として粉末状活性炭を服用する手法が開示されている。特許文献1の構成では、経口吸着剤は、農薬等を誤飲した場合に意識障害等の急性薬物中毒を治療する手段として用いられている。具体的には、活性炭が原因物質を吸着させて体外への排出を促進させている。このような構成では、消化管内で吸着可能な物質を吸着することで緩和可能な症状に着目しており、ドラッグデリバリーシステムの観点で発展の余地があった。
よって、本発明が解決しようとする課題は、ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めうる、新規なカプセルを提供することを課題とする。また、本発明の他の課題は、多種の目的で使用することができる、新規なカプセルを提供することである。
上述した課題の少なくとも一つを解決するための本発明の一側面を反映したカプセルは、ターゲット物質に作用する作用剤を収容している収容室が、微細貫通孔を有する多孔性の外殻によって、雰囲気空間から区画形成された、多孔性カプセルであって、前記微細貫通孔が、前記ターゲット物質が前記雰囲気空間から前記収容室まで通過することを許容し、かつ、前記作用剤の少なくとも一部が前記収容室から前記雰囲気空間まで通過することを阻止する大きさを有する、との構成を有する。
本発明によれば、ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めうる新規なカプセルを提供することができる。あるいは、多種の目的で使用することができる新規なカプセルを提供することができる。
本発明の実施形態の多孔性カプセルを示す概略図である。 本発明の実施形態の多孔性カプセルを示す概略図である。 本発明の実施形態の多孔性カプセルの製造方法の一工程を示す概略図である。 実施例1および2の透過性試験の結果を示すグラフである。 実施例3および比較例1の透過性試験の結果を示すグラフである。 実施例3および比較例1の透過性試験の結果を示すグラフである。 実施例4および比較例2の透過性試験の結果を示すグラフである。 実施例4および比較例2の透過性試験の結果を示すグラフである。 実施例5の結果を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
<多孔性カプセル>
本発明の実施形態は、ターゲット物質に作用する作用剤を収容している収容室が、微細貫通孔を有する多孔性の外殻によって、雰囲気空間から区画形成された、多孔性カプセルであって、前記微細貫通孔が、前記ターゲット物質が前記雰囲気空間から前記収容室まで通過することを許容し、かつ、前記作用剤の少なくとも一部が前記収容室から前記雰囲気空間まで通過することを阻止する大きさを有する、多孔性カプセルである。かかる構成を有することによって、ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めうる新規なカプセルを提供することができる。あるいは、多種の目的で使用することができる新規なカプセルを提供することができる。また、本発明においては、ターゲット物質に作用する作用剤を含む芯材に、微細貫通孔を有する多孔性の外殻を被覆させる、被覆工程を有する、前記作用剤を収容する収容室が前記外殻によって雰囲気空間から区画形成することを有する、製造方法によって製造されうる、多孔性カプセルも提供される。かかる構成を有することによって、ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めうる新規なカプセルを提供することができる。あるいは、多種の目的で使用することができる新規なカプセルを提供することができる。
図1は、本発明の実施形態の多孔性カプセルの概略図である。図1に示されるように、本発明の実施形態の多孔性カプセル1は、ターゲット物質Tに作用する作用剤(機能性物質)Aを収容している収容室Xが、複数の微細貫通孔Hを有する多孔性の外殻Sによって、雰囲気空間Oから区画形成されてなる。そして、微細貫通孔Hは、ターゲット物質Tが雰囲気空間Oから収容室Xまで通過することを許容し、かつ、作用剤Aの少なくとも一部が収容室Xから雰囲気空間Oまで通過することを阻止する大きさを有する。ここで、ターゲット物質Tが雰囲気空間Oから収容室Xまで通過することを許容し、かつ、作用剤Aの少なくとも一部が収容室Xから雰囲気空間Oまで通過することを阻止する大きさとは、平たく言えば、外殻Sが備える微細貫通孔H(細孔)の径が、作用剤Aの径よりも小さく、かつ、ターゲット物質Tの径よりも大きいということである。かような構成を有することによって、取り込まれたターゲット物質Tに作用する作用剤Aの少なくとも一部が収容室Xから雰囲気空間Oまで通過することを阻止することができるため、生体に悪影響を及ぼす可能性のあるものさえも作用剤Aとして選択することもでき、ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めることができる。また、本実施形態の多孔性カプセルは、中空カプセルであるため、作用剤Aの動きを制限することなく、ターゲット物質Tに効率的に作用する技術的効果がある。
図2は、本発明の実施形態の多孔性カプセルの概略図である。図2に示される多孔性カプセル1は、収容室Xに作用剤Aを保持する芯材(核)Cをさらに含んでなる。そのことによって、収容室Xが多孔性の外殻Sによって雰囲気空間Oから区画形成されてなる。つまり、本実施形態の多孔性カプセル1は、作用剤Aを保持してなる芯材Cを多孔性の外殻Sで覆った構成となっている。本実施形態の多孔性カプセル1は、一例を挙げると、芯材Cとして活性炭を、外殻Sとして多孔性シリカを用いる構成が考えられる。芯材Cとして活性炭を用いることで、当該活性炭が、作用剤A(例えば、薬剤や触媒等)を保持する。本実施形態の多孔性カプセル1における、複数の微細貫通孔Hは、ターゲット物質Tが雰囲気空間Oから収容室Xまで通過することを許容し、かつ、作用剤Aの少なくとも一部が収容室Xから前囲気空間Oまで通過することを阻止する大きさを有する。かような構成を有することによって、作用剤Aの少なくとも一部が収容室Xから雰囲気空間Oまで通過することを阻止することができる。そのため、生体に悪影響を及ぼす可能性のあるものも作用剤Aとして選択することもでき、ドラッグデリバリーシステムの設計自由度を高めることができる。また本実施形態では、前記収容室が、前記作用剤を含む芯材を含む。このように、収容室Xに芯材Cが充填された中実カプセルであることによって多孔性カプセルの強度が向上するとの技術的効果がある。
図1における多孔性カプセルも、図2における多孔性カプセルも、ターゲット物質Tが雰囲気空間Oから収容室Xまで通過することを許容する微細貫通孔Hを有する多孔性の外殻Sによって、収容室Xが雰囲気空間Oから区画形成されてなる。ターゲット物質Tが、雰囲気空間Oから収容室Xへと侵入すると、作用剤Aがターゲット物質Tに作用する。本発明の実施形態では、作用剤Aは、ターゲット物質Tの特性を生体に悪影響を及ぼさないようなものに変化させうる。
以下、本発明の多孔性カプセルを構成しうる要件について説明する。
(芯材)
芯材Cは作用剤Aを収容室Xに包埋することを補助する物質である。芯材Cとしては特に制限されず、無機物質であっても、有機物質であってもよいが、カプセル強度の観点で、無機物質であることが好ましい。無機物質としては、作用剤Aを含有できる細孔を有する無機体などが挙げられ、有機物質としては、作用剤Aを物理的あるいは化学的に吸着して保持できる有機体;作用剤Aを包埋できる柔らかいゲル状有機体;作用剤Aと化学吸着する所定の官能基を有する有機ポリマー;などが挙げられる。芯材Cは固体状のものであってもよいし、液体状のものであってもよいし、ゲル状のものであってもよく、作用剤Aに合わせて適宜選択すればよい。
作用剤Aを含有できる細孔を有する無機体としては、例えば、活性炭、アルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、活性白土、珪藻土、メソポーラス材料等の多孔性物質などが挙げられる。これらの多孔性物質の多くは、作用剤Aとの吸着能を有するため、作用剤Aをより多く保持することができる技術的効果もある。中でも、細孔容積と吸着能の双方の観点で、活性炭であることが好ましい。
ここで、活性炭とは、木材などを加熱して作られた炭を活性化した物質を意味する。具体的には、例えば炭を1000℃近い高温で加熱処理して活性炭は作られる。例えば、水蒸気や二酸化炭素、空気などのガスを使うガス賦活法(800〜950℃)や、塩化亜鉛などの薬品で処理する化学法等がある。活性炭には微細な孔が無数あり、他の物質を物理的に吸着する特性を備える。炭の1グラム当たりの表面積は300〜500mであり、活性炭の1グラム当たりの表面積は800〜2500mに達する。活性炭が備える微細孔は直径10〜200Åである。
酸化アルミニウムであるアルミナには、結晶相の異なる多くの種類がある。その主なものは、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナである。これら異なるアルミナも、高温で焼成することで別の結晶相へ変化し、どのアルミナからも最終的にはα−アルミナになる。α−アルミナは表面積が数m/gと小さいため芯材としてあまり適しておらず、これ以外のアルミナを利用する方が好ましい。また、酸化アルミニウム結晶が形成する前のアモルファスアルミナも、表面積が大きく、芯材としての利用が適している。さらに、アルミナ原料として使われるベーマイト(アルミナ水和物)も低温(例えば100℃以下)では安定なため、低温で利用する上では適した芯材材料である。
その他、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物も様々な結晶相をもつものがあり、それらを芯材として利用することができるが、結晶化していないアモルファス状態のものの方が芯材としてより適している。また、シリカ−アルミナに代表されるように、異なる金属酸化物が複合化された金属酸化物もあり、そのような酸化物も多孔性で大きな表面積を有することが多く、芯材として利用することができる。ゼオライトは、規則的な細孔と大きな表面積を有する結晶体である。シリカとアルミナを主成分とするものが多いが、様々な金属成分からなるゼオライトが製造されており、その組成あるいは細孔の規則性の相違により種別される。いずれのゼオライトも多孔性であるため、芯材として利用することができる。
芯材の材料は結晶体である必要はないので、様々なメソポーラス材料を芯材として利用することができる。例えば、メソポーラスシリカは、規則的な細孔を有するが、ゼオライトよりも大きな細孔を有するアモルファスのシリカである。そのように人工的に合成されたメソポーラス材料だけでなく、珪藻土や活性白土など自然に産出される多孔性材料も芯材としての利用が可能である。
作用剤Aを物理的あるいは化学的に吸着して保持できる有機体としては、作用剤Aが備えうる官能基に対して、イオン結合、共有結合または配位結合によって結合可能な官能基を備える物質が挙げられる。当該官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基、チオール基などが挙げられる。かような、作用剤Aを物理的あるいは化学的に吸着して保持できる官能基をゲル状有機体に化学修飾することで、作用剤Aを効率的に保持することができる。有機体としては、例えば、炭化水素鎖に糖鎖高分子に上述の官能基を化学修飾した材料、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、およびこれらの誘導体、またこれら主鎖が炭化水素の高分子だけでなく、糖鎖高分子に上記官能基を修飾した高分子なども挙げることができる。
作用剤Aを包埋できる柔らかいゲル状有機体としては、そのゲル体の内部に作用剤Aを保持することができる特性を有するものであり、例えば、アルギン酸塩、ゼラチン、コラーゲン、でんぷん、またはこれらの化学誘導体を挙げることができる。
作用剤Aと化学吸着する所定の官能基を有する有機ポリマーとしては、当該官能基によって作用剤Aと化学吸着する化学吸着能を有するものである。ここで、当該高分子がゲル状である場合、ゲル体の内部に作用剤Aを保持することができる特性を有していてもよい。つまり、所定の官能基を有する有機ポリマーとしては、高分子の官能基による化学吸着能と、高分子ゲルによる内包能との二つの機能を有しているものが好ましい。
本発明の実施形態によれば、芯材の直径(言い換えると多孔性カプセルの内径)(別の実施形態では収容室の直径)は、10nm〜10mmであることが好ましく、50nm〜1mmであることがより好ましく、100nm〜100μmであることがさらに好ましく、1〜100μmであることがよりさらに好ましく、10〜100μmであることがよりさらに好ましい。芯材の大きさ(別の実施形態では収容室)の大きさ(平たく言えば、カプセル容積の大きさ)を考慮すれば、これらの大きさは大きい方が好ましい。一方、外殻Sの微細貫通孔の制御の容易さに鑑みれば、これらの大きさは小さい方が好ましい。かような範囲であれば、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。なお、本発明の実施形態の多孔性カプセルを経口投与に供する場合には、飲み易さや、1回の投与量等を考慮して芯材の直径を設定してもよい。
芯材の直径(言い換えると多孔性カプセルの内径)(別の実施形態では収容室の直径)の大きさの測定方法にも特に制限はないが、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、統計学的に有意な数の視野(例えば、数〜数十視野)中に観察される粒子の粒子径(直径)の平均値として算出される値を採用するものとする。また、「直径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。また、直径に応じて測定方法を変えてもよく、例えば、動的光散乱法等の公知の測定手段を使って測定してもよい。
本発明の実施形態によれば、芯材の割合は、多孔性カプセル全体に対して、好ましくは5〜90質量%含まれ、より好ましくは40〜80質量%含まれる。かような範囲は、充分な強度をもつ外殻Sを備えたカプセルにおいて、充分な量の作用剤Aを内包できるだけのカプセル内容積を確保する意義がある。
(作用剤)
作用剤Aは、ターゲット物質Tに作用する機能を有する。作用剤Aが発揮する作用は、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば、前記作用は、吸着、吸収、抽出、化学結合、錯形成、分解および触媒機能からなる群から選択される少なくとも1種である。言い換えれば、作用剤は、吸着剤、吸収剤、抽出剤、化学結合剤、錯形成剤、分解剤および触媒からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
作用剤Aが低分子である場合、その分子量の下限としては、150以上であることが好ましく、300以上であることが好ましい。特に、300以上の分子であれば高分子やタンパクのように多様な機能を発現させることができる技術的効果がある。このように、分子サイズが大きいほど、吸着、吸収、抽出、分解、触媒という多様な機能を備える分子を想定することができる。一方、分子量の上限は、作用剤Aが高分子である場合で、100万以下であることが好ましい。そのように1分子が大きい場合でも、実際の作用部位となる官能基が多数あれば十分な作用を期待できる。作用剤Aが高分子である場合の分子量定量法としては、粘度から評価する方法、カラム中の移動速度から評価するGPC法、屈折率から評価する方法、溶液の浸透圧から評価する方法、また質量分析器で測定する方法が挙げられる。本発明では、質量分析器で測定する方法を採用する。
作用剤Aは、固体状のものであっても、液体状のものであっても、ゲル状のものであってもよい。ここで、作用剤Aとして液状物質を用いた場合でも、外殻Sの微細貫通孔Hの大きさを適切に制御することによって、作用剤Aの少なくとも一部が収容室Xから雰囲気空間Oまで通過することを阻止すればよい。
また、本発明の実施形態において、収容室Xが、作用剤Aを保持する芯材Cを含む場合(つまり、図2に示されるような中実の形態である場合)、当該芯材Cに含まれる作用剤Aの割合は、作用剤Aと芯材Cとの全体に対して、好ましくは5〜90質量%含まれ、より好ましくは20〜80質量%含まれる。かような範囲であることによって、芯材Cが外殻Sの形成と強度を補助する役割を果たしながらも作用剤Aを多く保持することができる。また、本発明の別の実施形態によれば、作用剤Aの質量を1とした際に、芯材Cの質量は0.1〜10であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましい。かような範囲であることによって作用剤Aの内包量向上の技術的効果があることを本発明者らは知見した。
また、本発明の実施形態において、収容室Xが、芯材Cを含まない場合(つまり、図1に示されるような中空の形態である場合)、作用剤Aの割合は、多孔性カプセル全体に対して、好ましくは50〜95質量%含まれ、より好ましくは70〜90質量%含まれる。かような範囲であることによって、カプセルの機能向上の技術的効果がある。
なお、本発明の実施形態において、収容室Xが、作用剤Aを含む芯材Cを含む場合、芯材は作用剤としての機能を兼ね備えているものであってもよい。かような実施形態であることによって、芯材Cが外殻Sの形成と強度を補助する役割を果たしながらも作用剤Aを多く保持することができる。本実施形態によれば、作用剤A(芯材C)の割合は、芯材Cを含まない場合と一致することとなり、多孔性カプセル全体に対して、好ましくは40〜95質量%含まれ、より好ましくは50〜90質量%含まれる。かような範囲であることによって、カプセルの機能および強度の向上の技術的効果がある。
作用剤Aとしては、ターゲット物質Tに作用する機能を有するものであれば、特に制限はないが、活性炭、澱粉やセルロースを酸化して得られるジアルデヒド澱粉やジアルデヒドセルロースなどの高分子アルデヒド化合物;ポリアクリル酸などのカルボニル基を有する高分子;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、シグマ・アルドリッチ製 トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO))、トリオクチルアミン、アルキルジオールなどの金属抽出剤;EDTAやNTAなどのキレート剤;クレイ、ゼオライト、イオン交換樹脂などの吸着剤;ポリスチレン、ポリアミドなどのポリマー;ペプチド;細胞;DNA;アミラーゼなどの酵素;微生物;ホルモン物質などの生態活性の高い物質からなる群から選択される少なくとも一種である。
ここで、活性炭は、尿毒症の要因である腸内のクレアチニンや尿素等を、腸壁を介して吸着除去する能力があることが知られている。これらのうち特にクレアチニンに有効であることが古くから知られており、尿毒症患者からの体内老廃物の経口剤による除去方法として、活性炭を使用することが実用化されている。本発明の実施形態によれば、活性炭が、ターゲット物質T(クレアチニン、尿素等)とする作用剤Aとなる。本発明の実施形態においては、外殻Sの微細貫通孔Hが、ターゲット物質T(クレアチニン、尿素等)より大きく、かつ、作用剤A(活性炭)よりも小さいので、作用剤Aを収容室Xに保持したまま、作用剤Aとターゲット物質Tとを反応させることができる。また、本実施形態においては、作用剤A(活性炭)が外殻Sによって雰囲気空間Oから区画形成されているので、生体に悪影響を及ぼす虞のある材料が活性炭に残留していたとしても経口服用できる可能性が高く、作用剤としての活性炭種別選択の多様性向上の技術的効果がある。本発明の実施形態によれば、前記作用剤が、活性炭または金属抽出剤であり、前記外殻が、シリカである。
また、ポリマーとしては、特開2004−131406号公報に記載されているような、分子インプリンティング法により合成された尿毒症性物質特異的認識ポリマー等が好適である。かかるポリマーの具体例は、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アリルミン、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2、2、6、6−テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、1、2、2、6、6−ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、および、これらの四級化物等のカチオン性基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、ビニル安息香酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアニオン性基含有モノマー等のモノマーを重合させた重合体である。本発明の実施形態によれば、かようなポリマーが、尿素、インドールのような尿毒症性物質をターゲット物質Tとする作用剤Aとなる。本実施形態においては、作用剤A(ポリマー)が外殻Sによって雰囲気空間Oから区画形成されているので、尿毒症性物質特異的認識ポリマーに生体反応性の高いポリマーを選択することもできるようになり、材料選択の多様性向上の技術的効果がある。つまり、一般に尿素と非可逆的に反応し、吸着除去ができるような活性の高い物質、例えばジアルデヒド化合物は生態に対する刺激性や毒性が強くそのままでは利用することが難しい。一方、本発明の方法をとることにより、かような活性の高い物質を作用剤として用いることができる点、優れたものである。また、当該実施形態においては、かような作用剤A(ポリマー)表面に直接外殻Sを形成させることが可能であるため、当該ポリマーを芯材の機能を兼ね備えた作用剤とせしめることができる点も好適である。
また、ペプチドとしては、CNP(C型ナトリウム利尿ペプチド)、AM(アドレノメデュリン)、グレリン、WT1ペプチドなどが挙げられる。かようなペプチドは、様々な治療や検査に有効であるとされながらも、胃や腸の酵素により分解されてしまうことで製剤が困難であるとの問題があった。これに対して、本発明によれば、作用剤Aであるペプチドを外殻Sによって胃や腸の酵素から区画することができ、製剤化が可能となる技術的効果を有する。
(外殻)
外殻Sは、作用剤Aを収容している収容室Xを、雰囲気空間Oから区画形成する。図1に示されるように、外殻Sは収容室Xを雰囲気空間Oから区画形成している。また、図2に示されるように、収容室Xが芯材Cを含む場合は、外殻Sは芯材Cを被覆することで雰囲気空間Oから収容室Xを区画形成している。
外殻Sとしては、微細貫通孔Hを備えつつも、物理的強度と、耐酸性等の化学的安定性とを備える物質を選択することが好ましい。
本発明の実施形態によれば、前記外殻Sが、多孔性無機体である。多孔性無機体であることによって、物理的強度と、耐酸性等の化学的安定性とを備えうる技術的効果を有する。本発明の実施形態によれば、前記多孔性無機体が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1種である。前記多孔性無機体が、これらの中から選択されることによって、カプセルの物理的・化学的安定性向上の技術的効果を有する。とりわけ、シリカは細孔径や膜厚等を調整しやすく、物理的・化学的安定性も高いため好ましい。
ここで、シリカ(silica)とは、二酸化ケイ素(SiO)、もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称である。機械的強度が高く、化学的にも非常に安定な物質で、通常の酸・塩基では溶解させることができない。フッ酸あるいは高濃度の水酸化ナトリウム・水酸化カリウムなどで溶解させることは可能であるが、そのような環境は生体内には存在しない。アルミナ、チタニア、およびジルコニアも同様の性質をもつ。
前記多孔性無機体は、これらの材料を複合化したものであってもよく、例えば、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、アルミナ−チタニアなどが好適である。多孔性無機体の種類によって液体への分散性や固体への付着性が変化するので、そのような分散性や付着性に利用上の問題が生じる場合には、かような複合化によって純粋な無機体とは分散性や付着性が変化して、カプセル機能が向上する。
本発明の実施形態によれば、外殻Sは、2層以上の多層構造であってもよい。多層構造からなる場合、層数にも特に制限されないが、2〜3層が好適である。このように、外殻Sが多層構造からなる場合、1層だけで外殻Sを形成できない場合があっても、微細貫通孔の大きさの制御に有用な材料を補助的に用いることができ、外殻Sの微細貫通孔の大きさの制御範囲を拡大できる。本発明の実施形態によれば、収容室に近い方から、第1層目が、アルミナ、酸化イットリウム、酸化タングステン、セリアおよび酸化ランタンからなる群から選択される少なくとも1種から選択され、第2層目がシリカからなる。かような実施形態であることによって、外殻Sの細孔径の制御が容易になる。また、本発明の実施形態によれば、外殻Sが2層以上の多層構造からなる場合、最外層がシリカからなる。シリカと芯材との親和性が高くない場合に、芯材とシリカの双方と親和性が高いが、それだけで完全な外殻Sを形成することができない第1層を形成することによって、最外層であるシリカ層の細孔径制御を容易にするとともに層の均一性を高める技術的効果がある。
本発明の実施形態によれば、外殻の割合は、多孔性カプセル全体に対して、好ましくは5〜80質量%含まれ、より好ましくは5〜60質量%含まれる。かような範囲であることによってカプセル内容積を大きくすることができる。
また、本発明の実施形態によれば、外殻の厚み(言い換えると多孔性カプセルの壁の厚さ)は1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜100nmであることがより好ましく、2nm〜50nmであることが好ましい。かような範囲であることによって多孔性カプセルに好適な機能を付与することができることを本発明者らは知見した。また、かような範囲とすることによって外殻を均一な膜とし易くなる。なお、厚みの測定方法についても特に制限はないが、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定することができる。具体的には、統計学的に有意な、数〜数十視野中に観察される膜の断面積と膜厚に直角方向の長さ(膜長さとする)を計測し(総計膜厚に対して100倍以上の長さ)、膜断面積を膜長さで割った値を平均の厚みとする。
また、本発明の実施形態によれば、微細貫通孔(言い換えれば細孔)の最大値(モード)は、0.5nm〜50nm程度であることが好ましく、0.8nm〜20nm程度であることがより好ましく、1nm〜10nm程度であることがさらに好ましい。かような範囲であることによって本発明の所期の効果を効率的に奏することができ、例えば、生体内酵素により分解されてしまう薬剤を保護することもできる。また、体刺激性の高い作用剤から生体を保護することができる。無論、多孔性カプセルの用途に応じて適宜調整すればよい。
また、本発明の実施形態によれば、最大細孔径は作用剤Aの分子サイズよりも小さく、ターゲット物質Tの分子サイズよりも大きくなければならない。その最大細孔径に対して±50%程度の範囲に90%以上のカプセルが収まることが望ましい。このように細孔径の分散を低減することによって本発明の所期の効果を効率よく奏することができる。無論、分散は小さい方が好ましいが、1つのカプセル中における細孔径分布は問題にならないし、評価することも不可能である。
(作用剤と、ターゲット物質との関係)
本発明の好ましい実施形態によれば、ターゲット物質が、尿素、インドール、尿酸、クレアチニン、希少金属、毒性金属および放射性物質からなる群から選択される。かような中から選択されることによって、作用剤をカプセル内に保持したまま、その機能を発現する。
上記のように、作用剤Aは、ターゲット物質に作用する機能を有し、作用剤Aが発揮する作用は、ターゲット物質Tに応じて適宜選択されるが、例えば、ターゲット物質Tが左欄に示されるものである場合、作用剤Aは中央欄に示されるものであるよい。
<多孔性カプセルの製造方法>
本発明の実施形態の多孔性カプセルの製造方法は、ターゲット物質に作用する作用剤を含む芯材に、微細貫通孔を有する多孔性の外殻を被覆させる、被覆工程を有する、前記作用剤を収容する収容室が前記外殻によって雰囲気空間から区画形成された、多孔性カプセルの製造方法である。かかる構成を有することによって、所期の多孔性カプセルを効率よく得ることができる。また、芯材に作用剤を予め保持しておくことで、芯材表面に外殻を形成させることができ、カプセル内部(収容室)に作用剤を効果的に包埋することができる。また、本発明の好ましい実施形態では、多孔性カプセルの製造方法は、ターゲット物質に作用する作用剤を含む芯材に、微細貫通孔を有する多孔性の外殻を被覆させる、被覆工程を有する、前記作用剤を収容する収容室が前記外殻によって雰囲気空間から区画形成され、前記微細貫通孔が、前記ターゲット物質が前記雰囲気空間から前記収容室まで通過することを許容し、かつ、前記作用剤の少なくとも一部が前記収容室から前記雰囲気空間まで通過することを阻止する大きさを有する。
(反応工程)
本発明の実施形態によれば、前記被覆工程が、前記芯材と、前記外殻の前駆体とを親水性のカップリング剤を介して反応させる、反応工程を有する。かような被覆工程を有することによって、前記芯材に、外殻を被覆することができる。
芯材と、外殻の前駆体との混合量としては、本発明の所期の目的を達成できる量であれば特に制限はなく、また、芯材と外殻の前駆体との種類によって適宜変更してもよいが、例えば、芯材1gに対して、外殻の前駆体が0.1〜20mlであることが好ましく、1〜15mlであることがより好ましい。
ただし、外殻前駆体の最適量は芯材の外表面積に依存する。ここで言う外表面積は外殻が形成する表面積であって、芯材が有する表面積とは一致しない。すなわち、先述のような最適量の範囲を予想することはできるが、その範囲外の使用量が適する場合もあり得る。かような範囲であることによって、外殻Sの厚さおよび細孔径を制御できる。
外殻の前駆体は、反応後に外殻となりうるものであれば特に制限はないが、シリカの前駆体、アルミナの前駆体、チタニアの前駆体、ジルコニアの前駆体およびマグネシアの前駆体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、外殻の前駆体は、シリカの前駆体であることが好ましい。
シリカの前駆体としては、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド(オルトケイ酸テトラエチル)、シリコンテトラプロポキシドなどのアルコキシド、あるいは、そのアルコキシ基を一部別の官能基に変えたアルコキシドを用いることができる。別の官能基としては、アルコキシ基をメチル基、エチル基、プロピル基、アミノプロピル基、メルカプト基などが挙げられる。また、本発明の実施形態では、シリカの前駆体としてケイ酸ナトリウム(水ガラス)を用いてもよい。ただしその場合は、後述するような、水との相分離が起こらない。また、水ガラスからカプセルを形成させるためには、pHを12〜14の範囲で制御して、水ガラスの反応性を下げる必要がある。
アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアの前駆体としては、シリカの場合と同様のアルコキシドを用いることができる。例えば、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシドなどを用いることができる。また、マグネシアの前駆体として塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの塩を用いることもできる。また、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ランタンの前駆体には、各金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、あるいは無機酸およびそのアンモニウム塩などを用いることができる。たとえば、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、タングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、塩化ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタンなどである。
芯材と、外殻の前駆体との反応は、芯材の存在下で、外殻の前駆体を水で加水分解して縮重合反応させることによって行うことが好ましい。
本発明の実施形態によれば、作用剤を含む芯材に外殻を被覆させるにあたり、当該芯材を水に分散させておく。つまり、本発明の実施形態によれば、芯材が、水に分散している状態で前記被覆工程を行う。かような実施形態によって、芯材と、外殻の前駆体との反応を効率よく行わせることができる。一方、本発明の実施形態によれば、外殻の前駆体として、水と相分離を起こすものを準備する。そして、水に分散させた芯材と、水と相分離を起こす外殻の前駆体とを混合する。そうすると、図3(a)に示されるように、芯材Cが分散されている水Wと、外殻の前駆体Pとは相分離を起こす。しかし、外殻の前駆体Pは、水Wに僅かに溶解するため、その僅かに溶解した外殻の前駆体Pが、芯材Cの表面に付着し、反応後、芯材Cの表面に外殻が形成される。外殻の前駆体Pが外殻形成のために消費されると、外殻の前駆体Pが、外殻の前駆体Pの相から水中に新たに供給され、芯材Cの表面に付着し、反応後、芯材表面に外殻が形成される。よってかような実施形態であると、多孔性カプセルの形成反応が進む過程で、所定の原料濃度が維持され、多孔性カプセルの形成反応を安定かつ再現性よく継続することができ、つまり均一な多孔性の外殻を形成することができ、細孔径も制御することができる。よって内包する作用剤が外殻の外(雰囲気空間)へ漏出することを効率よく抑制できる。また、外殻の外(雰囲気空間)からターゲット物質が外殻の細孔を透過して収容室へと通過することを効率よく促進することができる。
本発明の実施形態によれば、図3(a)に示されるように、前記芯材Cと、前記外殻の前駆体Pとを親水性のカップリング剤CPを介して反応させる。かような実施形態によれば、親水性のカップリング剤CPは、水Wに分散された芯材C表面に吸着するので、外殻の前駆体Pと、水Wに分散させた芯材Cとを相分離させた状態でも効率よく多孔性カプセルを製造することができる。つまり、親水性のカップリング剤CPを使用することによって、外殻の前駆体P(アルコキシド等)の加水分解・縮重合反応が、芯材Cの近傍で起こしやすくなり、多孔性カプセルの形成に有利となる。かような親水性のカップリング剤としては、例えば、アミノプロピル基などアミノ基をもつアルコキシドあるいは化合物であることが好ましい。例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシドシラン、アミノプロピルジメトキシメチルシラン、メルカプトトリメチルシラン、メルカプトトリエチルシラン、メルカプトジメトキシメチルシランなどが好適である。また、アミノ基を有する化合物としては、アミノ基を有するアルコキシド以外に、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン等のジアミン類を用いることもできる。
親水性のカップリング剤の添加タイミングとしては特に制限はないが、主原料(つまり、外殻の前駆体)を添加する前であることが好ましい。このような場合、外殻の均一性を高める技術的効果がある。なお、図3(a)に示される製造方法は、外殻の前駆体がシリカ前駆体である際に特に好適である。
本発明の実施形態において、カップリング剤に対する、外殻の前駆体の量も、所望の多孔性カプセルを製造できれば特に制限はないが、カップリング剤を3mlとした場合、好ましくは0.1ml超であることが好ましく、0.5ml以上がさらに好ましい。また、20ml以下であることが好ましく、10ml以下であることがより好ましく、8ml以下がさらに好ましい。
また、本発明の実施形態において、外殻の前駆体に対する、カップリング剤の量も、所望の多孔性カプセルを製造できれば特に制限はないが、外殻の前駆体を1mlとした場合、好ましくは0.1ml超であり、0.2ml以上であることがより好ましい。また、20ml以下であることが好ましく、10ml以下であることがより好ましく、6ml以下であることがさらに好ましい。よって、本発明の実施形態において、前記外殻の前駆体を1mlとした場合、前記カップリング剤の添加量が、0.1ml超6ml以下である。また、本発明の実施形態において、芯材1gに対する、前記カップリング剤の添加量が、0.1〜20mlであることが好ましく、0.2〜10mlであることがより好ましい。
一方、図3(a)に示されるように、外殻の前駆体Pと、水Wに分散させた芯材Cとを相分離させた状態で反応させるのではなく、図3(b)に示されるように、親水性溶媒ALを使って相分離を解消させて、外殻の前駆体Pと、芯材Cとを反応させることもできる。かような親水性溶媒ALとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルサルファイド、ジメチルホルムアミドなどが好適である。特に、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールは、化粧品や食品を製造する際に用いる工業用溶剤として用いられる点も好適である。ここで、図3(b)に示される実施形態の方が、反応させたい対象物を効率よく接触させることができるので、一見するとより好適であるようにも予想される。つまり、外殻の前駆体Pと、水に分散させた芯材Cとを相分離させた状態で反応させると、外殻の前駆体Pが水にほとんど溶解しないため、図3(b)に示される形態の方が好ましいものとも推測される。しかしながら、本発明者らは、外殻の前駆体と、水に分散させた芯材とを相分離させた状態で反応させる方が、本発明の所期の効果を達成させることができるとの予想に反した知見を得ている。
なお、外殻の前駆体としてシリカ前駆体以外の前駆体を用いる場合であって、水と親和性のある前駆体を用いる場合は、水を極力含まない有機溶媒(無水溶媒)を用いるとよい。有機溶媒の種類はヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが好ましい。また、有機溶媒としては、沸点が50℃〜200℃であるものが好適である。なお、外殻の前駆体を加水分解および縮重合反応させるための水は、有機溶媒中の微量の水由来、あるいは空気中の水由来であってもよく、それであってもカプセル形成反応は進行しうる。
前記芯材と、前記外殻の前駆体とを親水性のカップリング剤を介して反応させる、反応工程における温度は、室温(25℃)〜90℃程度であることが好ましく、室温〜70℃程度であることがより好ましく、30〜60℃程度であることがさらに好ましく、40〜60℃程度であることがよりさらに好ましい。なお、70℃超の場合は、還流器を備えた反応容器(例えば、ビーカ、フラスコ)を使用する方がよい。かような温度であることによって反応性が向上する技術的効果がある。なお、加熱は反応性の向上のためであり、必須なものではないが、温度が低いほど、外殻の形成に時間が掛かるため、微細貫通孔(細孔)のサイズを小さいものとすることができ、温度を高くするほど、微細貫通孔(細孔)のサイズを大きいものとすることができる知見を得ている。よって、反応工程における温度を制御することによって、所望の微細貫通孔(細孔)の大きさに制御することができる。また、温度の維持手段としては、恒温槽などを用いることが好ましい。よって、本発明の実施形態によれば、多孔性カプセルの製造方法は、反応工程における温度を制御することによって、外殻の微細貫通孔の大きさを制御することを有する。
また、反応工程における時間は、0.5〜168時間であることが好ましく、1〜72時間であることがより好ましく、1.5〜12時間であることがさらに好ましく、2〜5時間であることがよりさらに好ましい。かような範囲内であることによって、外殻Sの構造形成の再現性が向上する技術的効果がある。よって、本発明の実施形態によれば、多孔性カプセルの製造方法は、反応工程における時間を制御することによって、外殻の微細貫通孔の大きさを制御することを有する。
反応工程は、前記芯材と、前記外殻の前駆体とを攪拌させながら行うことが好ましい。攪拌手段としては、ホットスターラ、マグネティックスターラ、機械的攪拌翼などが好適である。マグネティックスターラと恒温槽との組み合わせや、機械的攪拌翼と恒温槽となどを組み合わせて反応を行ってもよい。より具体的には、水を張ったトレイにビーカを設置し、当該ビーカに、芯材と、外殻の前駆体と、親水性のカップリング剤とを添加する。芯材と、外殻の前駆体と、カップリング剤との攪拌には攪拌子を用いてもよい。
反応工程におけるpHは、前記芯材と、前記外殻の前駆体との種類に応じて適宜設定を行ってもよいが、前記外殻の前駆体の反応に水を用いる場合、pH0〜12であることが好ましく、pH2〜11であることがより好ましい。かような範囲であることによって作用剤自体の変化を抑制することができるとの技術的効果がある。また、均質かつ安定に外殻を形成することができるとの技術的効果がある。
(洗浄工程)
被覆工程を行った後は、芯材の表面に未反応の外殻の前駆体等が付着している場合がある。よって、本発明の実施形態の多孔性カプセルの製造方法は、未反応の外殻の前駆体等を除去または低減等させるために、さらに洗浄工程を有していてもよい。また、収容室から雰囲気空間までの微細貫通孔を通過してしまう一部の作用剤の存在がある場合も、かような作用剤を可能な限り外(雰囲気空間)に出しておく観点で、さらに洗浄工程を有してもよい。洗浄工程を経て作製された多孔性カプセルは、収容室から雰囲気空間までの微細貫通孔を通過してしまう作用剤が実質的に既になくなっているので、ドラッグデリバリーシステム等に好適に利用することができる。
洗浄工程の具体的な方法としては、例えば、水(例えば蒸留水)あるいは溶剤を用いて複数回洗浄を行うことが挙げられる。溶剤としては、溶剤には、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトンなどが適している。また、洗浄に用いた薬剤(溶剤)を適宜乾燥(真空乾燥等)させることによって、外殻に付着した物質(未反応の外殻の前駆体等)や容易に外殻の外へと流出する物質(作用剤)を洗浄除去することができる。洗浄条件は、反応工程で用いた材料に応じて変更してもよい。洗浄の回数や、洗浄剤の種類にも特に制限がなく、未反応の外殻の前駆体が付着しているかどうか、あるいは、収容室から雰囲気空間までを通過してしまう作用剤があるかどうかのチェックを繰り返すことによって決定してもよい。洗浄によって、外殻に付着した物質が除去されたか、外殻の外へと流出する物質(作用剤)がなくなったかについては、洗浄後の溶液を分析することによって確認することができる。金属を含む物質であれば誘導プラズマ発光分析装置、原子吸光光度計を用いることができ、官能基を有する化合物であれば紫外可視吸光光度計、蛍光光度計、赤外分光光度計を用いることができ、特に光を吸収しない有機物であれば、全有機炭素検出計を用いることができる。
(前処理工程)
本発明の実施形態においては、被覆工程の前に、使用する芯材(当該芯材は作用剤の機能を兼ね備えたものでもよい)に対して予め前処理を施しておいてもよい。
以下では、芯材として活性炭を使用する場合について説明する。具体的には、水(好ましくは蒸留水)400mlに対して、好ましくは1〜100g、より好ましくは10〜50g程度の活性炭を加える。この活性炭を含んだ水を入れた容器を、好ましくは80〜100℃、より好ましくは100℃程度に加熱した油浴中に浸たす。活性炭を含む水は沸騰を開始するが、沸騰が開始した時点から好ましくは5〜120分、より好ましくは10〜60分間程度沸騰を維持する。その後、室温(25℃)まで冷却させ、ろ過等の公知の手段によって活性炭を分離する。その際に使用するフィルタとしては、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜10μmの孔を有する親水性PTFE膜を用いるが、芯材の径よりも細かければ制限されない。その後、活性炭を60〜90℃で乾燥させることが好ましい。乾燥時間としては好ましくは2〜72時間であり、より好ましくは4〜24時間である。乾燥は真空下で行ってもよい。かような前処理を行うことによって、活性炭の細孔内から不純物を除去するとの技術的効果がある。なお、活性炭を例に挙げて説明したが、他の材料を選択した場合も、不純物を除去するとの理由で略同等の洗浄処理を行う方が好ましい。
(作用剤を含む芯材の準備方法)
本発明の実施形態の多孔性カプセルの製造方法では、ターゲット物質に作用する作用剤を含む芯材を準備する。作用剤としては、固体状のものを使用しても、液状(ゲル状)のものを使用してもよい。
まず、固体の作用剤を含む芯材の準備方法としては、特に制限はない。例えば、作用剤が溶解してなる溶媒中に芯材を浸漬させることによって、芯材中に作用剤を導入させる。作用剤を導入した芯材を加熱して溶媒を蒸発させることによって固体の作用剤を芯材に保持することができる。また、当該溶媒としては作用剤と親和性の高い溶媒であることが好ましく、例えば水や低級アルコールなどが考えられる。かような溶媒であることによって蒸発を容易に行わせることができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが好適であり、特に有機物と反応性を有する芯材に対してはメタノール、有機物との反応性が特にない芯材に対しては2−プロパノールが好ましい。溶媒への作用剤の添加量としては特に制限されないが、作用剤の内包量をできるだけ多くする観点からできるだけ高い濃度であることが好ましく、具体的には溶媒重量に対して1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方で、その上限は作用剤の溶媒への最大飽和量であり、好ましくは30質量%以下である。一方で、高濃度にすると不安定であったり、保持が困難であったりする場合には、低濃度であってもよい。
また芯材を浸漬する溶媒量としても特に制限されないが、芯材が吸収できる最大量であることが好ましい。その最大量を予め測定しておくことによって、その量に応じた量の芯材を加えることができて歩留まりを向上させることができる。また、作用剤を導入した芯材を乾燥させる方法にも特に制限はないが、例えば、ロータリーエバポレーター、ホットスターラ、マントルヒーターによって行うことができる。加熱温度としても、十分蒸発(乾燥)できる温度であることが好ましく、例えば、室温〜80℃である。熱に弱い作用剤が導入されている場合には室温付近で減圧乾燥させ、熱に強い作用剤の場合には70〜90℃で加熱することが好ましい。溶媒として2−プロパノールを使用するのであれば、80℃程度で加熱することが好ましい。その理由は、2−プロパノールを十分蒸発できる温度であって、かつ、作用剤を失活させない温度であるからである。なお、加熱時間としては特に制限はなく、1〜72時間が好ましい。このように溶媒を十分乾燥させることによって芯材に作用剤を保持させることができる。なお、乾燥温度や、乾燥時間は、使用する溶媒、作用剤、芯材の種類によって適宜変更することができ、つまり、作用剤が失活しないように、溶媒の乾燥を促進する温度や時間を適宜調整すればよい。
液体(ゲル)の作用剤を含む芯材の準備方法としては特に制限はないが、液体(ゲル)の作用剤中に、芯材を浸漬させることによって、芯材中に作用剤を導入させる。その後、上記のような、乾燥を行うことなく、本発明の実施形態の多孔性カプセルの製造方法において、ターゲット物質に作用する作用剤を含む芯材として利用する。上記と同様に、芯材(例えば、活性炭)が吸収できる作用剤の量を予め測定しておくことで、その量に応じた量の芯材(例えば、活性炭)を加えることができて歩留まりが向上する効果がある。
なお、上記では一実施形態として図2に示される中実カプセルの製造方法について説明したが、図1に示されるような中空カプセルの製造方法も基本的には同様に作製することができる。図2との違いである、中空にするための方法にも特に制限はないが、例えば、ゲル状の高分子の表面に、微細貫通孔を有する多孔性の外殻を被覆させた後、当該ゲル状の高分子を分解可能な溶媒・溶液に十分浸漬させて、ゲル状の高分子を分解して収容室から雰囲気空間まで通過させることによって中空状の多孔性カプセルを製造してもよい。この際、ゲル状高分子の分解物が通過するような微細貫通孔の大きさを適切に制御してカプセルを製造すればよい。
<用途>
(ドラッグデリバリーシステムへの応用)
本発明の実施形態の多孔性カプセルの適用の用途は特に制限されないが、ドラッグデリバリーシステムへの応用のために好適である。
従来の薬剤を使用すると、消化管上部、特に胃の酸性環境と食物との共存下での消化管運動による機械的ストレスにより過量放出(dose dumping)が起こる可能性がある。これに対し、本発明の実施形態の多孔性シリカは、作用剤を含む収容室が外殻によって雰囲気空間から区画形成されているので、作用剤の少なくとも一部が前記収容室から前記雰囲気空間まで通過することを阻止することができる。さらに、微細貫通孔および/または作用剤を制御したり、変更したりことによって患者および病態に合わせた放出制御を行うこともできる。本発明の実施形態によれば、多孔性カプセルは、体内環境にて、実質的に不溶性であることが好ましい。本発明の実施形態によれば、例えば、外殻Sが備える微細貫通孔Hの径がアミラーゼなどの酵素よりも小さければ、酵素により芯材Cが保持する作用剤Aの変質を抑制することができる。多孔性シリカの外殻Sは、胃酸や胆汁酸等に対して安定(耐酸性を備える)ことが好ましい。
(キレート剤のカプセル化)
ドラッグデリバリーシステムの応用として、金属キレート剤をカプセルに内包して、非常時および日常的に経口服用することが考えられる。非常時とは、放射線を浴びて放射性物質が体内に生成してしまったり、誤飲してしまった場合である。そのような非常時に服用する物質の代表例としてヨウ素があるが、ヨウ素は積極的に放射性物質を体外へ排出する機能をもたない。そのため非常時には放射性元素と強く結合するキレート剤の服用が検討されている。キレート剤は各種金属元素と強く結合して、体内への吸収を防ぐことができるからである。しかし、キレート剤自体に毒性があるため、非常時以外に服用することは危険である。それに対して、本発明のカプセル内に金属キレート剤を内包させておき、外殻によりキレート剤の透過を阻止する。この場合も、金属イオンの放射性元素は外殻を容易に透過することができる。したがって、このカプセルを服用しても、キレート剤が放出されないため身体への影響は最小限にとどめることができ、一方で放射性元素をカプセル内に取り込んで、積極的に体外放出することができる。極めて安全にキレート剤を保持できれば、日常的な服用さえも可能になるかもしれない。
(レアメタルの回収への応用)
都市鉱山からのレアメタル回収を含む金属精製過程では、金属抽出剤が広く用いられている。金属抽出剤は、水中に溶解している特定の金属イオンと油溶性の錯体を形成するため、特定の金属だけを水中から、それと接触している有機溶媒中へと移動させることができる。このため多種類の金属が溶解している液体から、特定の金属を選択的に回収することができる。この手法は工業的に広く用いられているが、大量の有機溶媒を用いるため環境への影響が大きい。また、金属抽出剤が徐々に失われていくという問題もあるため、特定の金属への選択性が高い金属抽出剤が発明されても、コスト面から、実用化されないことも多い。それに対して、本発明のカプセル内にレアメタルと錯形成する金属抽出剤と少量の有機溶媒を内包させて、金属抽出剤のカプセル内から外への透過を阻止すれば、カプセル内部で金属抽出剤を機能させることができる。そのカプセルをレアメタルを含む溶液に加えることで、特定のレアメタルをカプセル内部に抽出することができる。この場合、有機溶媒とレアメタルイオンは外殻の細孔を透過することができる。しかし、有機溶媒は外部の水に溶解しないので、カプセル外に透過することはない。レアメタルイオンは、外部の水中からカプセル内に透過して入ってくる。このカプセルを回収して、新しい酸性水溶液に浸せば、錯体が崩壊して、レアメタルイオンだけが酸性水溶液に放出される。このカプセルでは、有機溶媒の使用量を低減できるだけでなく、金属抽出剤の漏出や損失を抑制することができ、従来の抽出プロセスの課題を解決することができる。
(金属錯体触媒のカプセル化)
溶液中に分子として溶解した状態で、様々な化学反応を促進する金属錯体触媒は、工業的に広く使われている。しかし、溶解した状態で用いるため、反応生成物との分離が困難で、使い捨てにされている場合も多い。そのため、高価ではあるが、優れた機能を示す金属錯体触媒が開発されても、工業利用されることは難しい。この問題に対しても本発明のカプセルを用いれば、上記のレアメタル回収と同様に課題を解決することができる。カプセル内部に金属錯体触媒を内包させ、外殻で金属錯体触媒の透過を阻止する。外殻は、反応原料と反応生成物の透過は許さねばならないため、精密な細孔径制御が必要となる。このように金属錯体触媒をカプセル内部に保持した状態で、化学反応を促進できれば、生成物と触媒内包カプセルを分離することは容易である。シリカなどの無機物質からなる外殻を有するカプセルは密度が高いため、沈降法等で簡便に分離することができる。また、分離可能ということから、再利用も容易であり、高価な金属錯体触媒も使い捨てることなく、再利用することが可能となる。
以下、本発明の代表的な実施形態を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
<実施例1>
(前処理)
蒸留水400mlに対して20gの活性炭(和光純薬工業社製、型番:カラムクロマトグラフ用活性炭素粉末、中性)を加えた。この活性炭を含んだ水を入れた容器を100℃に加熱した油浴中に浸した。活性炭を含む水は沸騰を開始したので、沸騰が開始した時点から15分間沸騰を維持させた。その後、室温(25℃)まで冷却させ、ろ過によって活性炭を分離した。なお、フィルタとしては、1.0μmの孔を有する親水性PTFE膜を用いた。その後、活性炭を80℃で12時間、真空乾燥させた。
(反応工程)
蒸留水80mlに硫酸21μlを加えてpHを2に調整した溶液を準備した。当該溶液に、上記の前処理を経て得られた、作用剤も兼ね備えた芯材である活性炭2gを加えた。なお、pHは東亜ディーケーケー社製のpHメータを使って測定した。続いて、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)6.3mlを加えた。その後、ケイ酸エチル(TEOS)6.5mlを加えた。そうすると、図3(a)に示されるように活性炭Cが分散されている水Wと、外殻の前駆体Pとしてのケイ酸エチルとは相分離を起こした。その後、ホットスターラで50℃に調温し、撹拌しながら2時間反応させた。
(洗浄工程)
反応後、遠心分離と、蒸留水とによる洗浄を3セット行い、その後、真空乾燥機にて真空乾燥させた。これによって、活性炭が多孔性シリカで被覆された多孔性カプセルを得た。
<実施例2>
硫酸21μlの代わりにトリエチルアミン350μlを用いてpHを10に調整した以外は、実施例1と同様にして、活性炭が多孔性シリカで被覆された多孔性カプセルを得た。
<透過性試験>
続いて、多孔性カプセルの性能試験方法について簡単に説明する。
現在、電子顕微鏡等を用いても外殻表面の多数の微細貫通孔の平均値等を求めるのは困難である。そのため、以下の代替測定手法を用いて、多孔性カプセルの微細貫通孔と関連する透過性について評価した。具体的には以下の手順で評価した。
200ml容量のビーカを複数用意し、それぞれに100mlの有機溶媒(シクロヘキサン)を入れた。これらに、それぞれ異なる分子量(異なるサイズ)を有する、活性炭により吸着される特性を持つ物質(塩化ルテニウム、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン)をそれぞれ0.1mmolずつ用意して添加した。その後、実施例1で製造された多孔性カプセル100mgをそれぞれに添加した。これらの溶液を磁気スターラで攪拌(50rpm)し、1時間経過後、メンブラン・フィルタ(孔径1μm)ろ過し、これらの濃度変化(吸着量)を可視・紫外分光法(UV−Vis)で測定した。なお、測定は3回行い平均値を用いている。結果を図4(a)に示す。また、実施例2で製造された多孔性カプセルを使って同様の実験を行った。結果を図4(b)に示す。
図4(a)に示されるように、アントラセンは殆ど活性炭に作用(吸着)されておらず、一方、塩化ルテニウムは多く作用(吸着)していることが分かる。つまり、アントラセンは外殻の微細貫通孔を殆ど通過せず、収容室に収容されている作用剤(活性炭)と接触できずに作用(吸着)されなかったことが窺がわれる。一方、ルテニウムは外殻の微細貫通孔を通過し、収容室に収容されている作用剤(活性炭)と接触し作用(吸着)されたことが窺がわれる。これを換言すれば、本実施例では、アントラセンよりも大きな物質を作用剤とすることによって、収容室から雰囲気空間まで通過することを阻止することができ、一方、ルテニウムほどの小さな物質をターゲット物質とすることによって、収容室から雰囲気空間まで通過することを許容することができる。pHを変えて実験を行った実施例2の結果を示す図4(b)も同様であった。
上記のように、pHの違いによって外殻の特性が変化することによって活性炭への物質吸着量の変化があったため、両カプセルの特性には少しの相違が認められる。しかし、本発明の多孔性カプセルのポイントは、どのような物質がカプセル細孔を透過せず、どのような物質が透過するのかが問題であり、どの程度透過するかは問題ではない。その観点からは、両実施例のカプセルの外殻はともに、アントラセンをほとんど透過せず、それより小さい対象物質はある程度透過するという性質を持っているということが示唆されたということであり、大きな相違はないことが考察される。
<実施例1と実施例2の多孔性カプセルの成分比較>
熱重量法によって、各多孔性カプセルの有機成分、無機成分および水の割合を示した。
上記の表に示されるように、芯材の材料、外殻の材料が同一の場合であったとしても、製法を調整することによって多孔性カプセルを構成する成分の割合に違いが見られた。具体的には、pH2で調整した多孔性カプセルは、pH10で調整した多孔性カプセルに比べて、無機成分であるシリカの含有割合が高い。すなわち、実施例1の製造方法の方が、同じ時間で多くのシリカ前駆体が反応して外殻に変換されたことになる。また、成分が異なるのに、外殻の透過性能が類似していた理由は、図4で用いた分子(つまり、塩化ルテニウム、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン)よりも大きい貫通孔を有する外殻が、実施例2の多孔性カプセルより、実施例1の多孔性カプセルの方が多かったことを意味している。すなわち、図4で用いた分子の透過に全く影響を及ぼさない極めて大きな貫通孔を有する外殻が実施例1に存在したことを意味している。
上記では熱重量法を使った方法を述べたが、その他の測定方法として、ろ過後の試料の吸着による重量増加について評価する手法がある。具体的には、試料を200℃のAr気流中で水分を除去することにより乾燥重量の増加量で評価してもよい。あるいは、対象物質が化学的に非常に安定な場合には、フッ酸あるいは高濃度水酸化ナトリウムなどでカプセル壁を溶解させてから、活性炭に吸着した対象物質を再溶出させて、溶出した対象物質の量をUV−Visなどで測定することでも評価することができる。
<実施例3>
アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)の使用量6.3mlを3mlに変更し、ケイ酸エチル(TEOS)の使用量6.5mlを下記の表、図5に示されるように変更し、またトリエチルアミンを用いてpH=10.0に調整した点以外は、実施例2と同様にして、活性炭が多孔性シリカで被覆された多孔性カプセルを得た。なお、「A3T5」とはAPTSが3mlに対してTEOSが5mlという比率を示している。同様に、「A3T3」はAPTSが3mlに対してTEOSを3mlで製造したことを意味する。以下、同様である。
<比較例1>
ケイ酸エチル(TEOS)の使用量の使用量を0ml(つまり使用せず)に変更した以外は、実施例3と同様に実験を行った。
<透過性試験>
A3T0、A3T0.5、A3T1、A3T3、A3T5の多孔性カプセルについて、それぞれ異なる分子量(異なるサイズ)を有する、活性炭により吸着される特性を持つ物質として、ナフタレン、ピレン、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル(NP10)を用いて、上記と同様の透過性試験を行った。結果を図5(a)(b)に示す。なお、当該透過性試験は、コントロールとして多孔性シリカによって被覆されていない、前記の前処理を行った活性炭を用い、未被覆時に対する被覆時の吸着割合を測定したものである。
結果、前述の評価方法を用いることにより、活性炭のみのコントロール試料と比較して、いずれのカプセルも吸着量が減少していることが図5(a)からわかる。よって、シリカの外殻を形成することにより、ターゲット物質を透過させないカプセルが存在することを示している。また、外殻の微細貫通孔の変化を調べるため、吸着量の比を調べた結果が図5(b)である。その比は、TEOS量を変化させてもあまり変化していなかった。この結果は、TEOS添加量を変えても、外殻の微細貫通孔があまり変化しないことを示している。すなわち、TEOS添加量は外殻の微細貫通孔にあまり影響を及ぼさないことがわかった。
<実施例3と比較例1の多孔性カプセルの成分比較>
前記と同様の熱重量法によって、各多孔性カプセルの有機成分、無機成分および水の割合を示す。
上記の表に示されるように、無機成分に相当する外殻の割合がA3T3−A3T5で大きい値となった。これらのカプセルでは、外殻が分厚くなったことを示している。しかし、図5(b)に対応した微細貫通孔はほとんど変化していなかった。
これは、実施例1、2のpHの影響と同様に、A3T3−A3T5のカプセルには、実験対象としている分子よりも大きな微細貫通孔を有する外殻部分が多く形成したことを意味している。逆に述べると、A3T3−A3T5のカプセルは外殻部分の厚さ・体積が大きかったにもかかわらず、実験対象の分子サイズに対応する大きさ範囲の貫通細孔は、外殻部の薄いA3T1−A3T0.5などと変わらない量が存在していたといえる。
<実施例4>
ケイ酸エチル(TEOS)の使用量6.5mlを1mlに変更し、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)の使用量を、下記の表、図6に示されるように変更した以外は、実施例2(pH=10)と同様に活性炭が多孔性シリカで被覆された多孔性カプセルを得た。
<比較例2>
アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)の使用量を0ml(つまり使用せず)に変更した以外は、実施例4と同様に実験を行った。
<透過性試験>
A0T1、A0.1T1、A0.5T1、A0.7T1、A1T1、A3T1、A5T1の多孔性カプセルについて、それぞれ異なる分子量(異なるサイズ)を有する、活性炭により吸着される特性を持つ物質として、ナフタレン、ピレン、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル(NP10)、塩化白金酸を用いて、上記と同様の透過性試験を行った。結果を図6(a)に示す。なお、当該透過性試験は、コントロールとして多孔性シリカによって被覆されていない、前記の前処理を行った活性炭を用い、未被覆時に対する被覆時の吸着割合を測定したものである。
図6(a)のA0T1(比較例2)に示すように、シリカゾルを活性炭に吸着させた構成では吸着量が未被覆の活性炭と変わらない上に、吸着対象となる分子量に対する感度変化も観察されなかった。すなわち、外殻の形成にAPTS(カップリング剤)が重要な役割を果たしていることがわかった。A0.1T1の場合も、A0T1とあまり変わらない結果であったので、APTSの量は0.1超であることが好ましいことが示唆される。
一方、APTSを充分加えて調製したカプセル(A1T1〜A3T1)はいずれも、NP10、ピレン、ナフタレンの吸着量が、コントロール試料よりも小さくなった。これらの物質の透過を外殻が阻害したことを示している。
しかし、いずれのカプセルも塩化白金酸の吸着量はコントロール試料と同じであったので、これらの外殻の微細貫通孔は、塩化白金酸よりも充分に大きいことがわかった。次に、微細貫通孔の変化を調べるため、吸着量の相対比を調べた(図6(b))。
図5(b)とは異なり、APTSの添加量を変化させると、吸着量比が大きく変化した。具体的には、A1.0T1の場合に比が最も小さくなり、すなわち微細貫通孔が最も小さくなった。このカプセルは、NP10を全く吸着しなかったため、このカプセルの微細貫通孔がNP10の分子サイズよりも小さいことが明らかとなった。A1.0T1よりも、APTSを多くしても少なくしても、吸着量比が大きくなったので、微細貫通孔が大きくなったことを示している。以上のように、外殻の形成にはAPTSが重要な役割を果たしており、その添加量を変化させることで、外殻の微細貫通孔の大きさを制御できることがわかった。よって、本発明の好ましい実施形態では、多孔性カプセルの製造方法は、カップリング剤の添加量を変化させることによって、外殻の微細貫通孔の大きさを制御することを有する。外殻の微細貫通孔の大きさを制御することにより、外殻の外(雰囲気空間)のターゲット物質(対象物質)が外殻の微細貫通孔を透過して殻内へ促進することができる。また、外殻を構成することで、作用剤が殻外へ漏れなくすることができるため生体反応性の高い物質を利用することができる。
<実施例4と比較例2の多孔性カプセルの成分比較>
前記と同様の熱重量法によって、各多孔性カプセルの有機成分、無機成分および水の割合を示す。
実施例の手法で形成した多孔性カプセルは芯材を十分に被覆していることが分かる。また、APTS添加量が多くなるほど、外殻成分(無機成分)の割合が増加する傾向が認められ、APTSが外殻形成に対する寄与が大きいことが読み取れる。それに対し、比較例の手法で形成した場合、シリカカプセル構造とはならず、シリカゾルを活性炭周囲に付着させた形態となった。つまり、比較例の手法で形成した場合、シリカ原料の加水分解・縮重合反応を活性炭近傍で起こさせるためのアミノプロピルトリエトキシシランを加えていないため、活性炭の場所とは無関係にシリカゾルが生成し、そのシリカゾルが活性炭に付着した構造になったことが分かった。
<実施例5>
本実施例では、芯材とは別に作用剤Aを多孔性カプセル内に内包する例について説明する。本実施例では芯材に活性炭を、作用剤として金属抽出剤(東京化成工業製 ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、シグマ・アルドリッチ製 トリ−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO))を用いた。以下に具体的な製造方法について説明する。まず、0.5mol/lのAOTあるいはTOPOが溶解したテトラヒドロフラン溶液(AOTでは30ml、TOPOでは20ml)に、上述の前処理後の活性炭5.0gを浸し、12時間真空乾燥した。こうしてAOTあるいはTOPOを保持した活性炭を得た。含浸させたAOTあるいはTOPOは容器にほとんど残留しておらず、すべて活性炭中に保持されたと言える。そのため仕込み量から、活性炭中のAOTあるいはTOPOの含有量が計算できる。あらかじめ50℃に調温しておいた蒸留水80mlにトリエチルアミンを加えてpH10に調整した。その溶液に前述のAOTあるいはTOPOを保持した活性炭を加えた。その活性炭量は、活性炭だけで2gになるよう調整した。その後ただちに、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)とケイ酸エチル(TEOS)を加え、撹拌しながら2時間反応させた。APTSとTEOSの量は、AOTの場合にはそれぞれ18.9mlと22.6ml、TOPOの場合には6.32mlと6.45mlであった。活性炭からTEOSまでを迅速かつ逐次的に加えた理由は、外殻Sが形成する前に、AOTあるいはTOPOが調製液に溶出することを最小限にするためである。少しでも溶出すると、溶液が泡立つが、この調製条件では溶液の泡立ちは観察されなかった。その後、遠心分離と蒸留水による洗浄を3セット行い、その後、試料を真空乾燥させた。こうして調製した試料の前記と同様の熱重量法による組成を表5に示す。
作用剤を保持した活性炭に対しては無機成分である外殻Sの割合が大きく減少している。これは活性炭が作用剤を保持しているために、有機成分の重量が増加しており、相対的に外殻Sの割合が減少したためと考えられる。
このカプセルを用いて、金属の抽出実験を行った結果も併せて示す。上記で得られたカプセルを4mlのシクロヘキサン中に加えた。その重量は、AOTの場合は0.2gで、TOPOの場合は0.5gとした。次に、その溶液の入った容器をガラス製真空容器内にセットし、容器内をゆっくりと減圧した。容器内の圧力は測定していないが、減圧後ただちに試料から気泡が出る様子が観察され、約3分後には気泡が出なくなった。そこで圧力を常圧に戻して、溶液の入った容器を取り出した。この操作は、カプセルの内部にシクロヘキサンで満たすことを目的としており、気泡が出て、それが止まることで、目的を達成できたと言える。その溶液に、あらかじめ調製しておいた0.1mol/lの硝酸ニッケル(Ni)水溶液(関東化学製 硝酸ニッケル六水和物)4mlを溶液内が乱れないように、静かに加えた。Ni水溶液とシクロヘキサンは分離して、下部にNi水溶液で上部がシクロヘキサンになっている。カプセルはもともとシクロオヘキサン中に存在したが、Ni水溶液を加えると、下部のNi水溶液へと移動した。その後、30℃の恒温槽中で24時間静置した。
その後、スポイトを用いてシクロヘキサン相とNi水溶液相を分離し、カプセルが含まれるNi水溶液を0.1μm孔径のフィルタで濾過した。それらシクロヘキサン相とカプセル相を紫外可視吸光光度計で測定し、Ni濃度の変化を調べた。その結果を図7に示す。活性炭への吸着量は、AOTもTOPOも含まないコントロール試料の結果で、Niは活性点にほとんど吸着しないことがわかる。これはカプセル内部がシクロヘキサンで満たされているためで、シクロヘキサンに溶解できないNiイオンが活性炭に接触することができなかっためである。それに対して、AOTあるいはTOPOを含むカプセルには、AOTあるいはTOPOとおよそ同モル量のNiがカプセル内に吸着した。この結果は、Niがカプセル壁(外殻)を通って、シクロヘキサン中に溶解しているAOTあるいはTOPOと接触し、油溶性のNi錯体を形成したために、カプセル内に取り込まれたと言える。見かけ上はカプセルに吸着したように見えるため、図7では吸着量と表記した。このときシクロヘキサン相のNi濃度はゼロであった。このことはカプセル壁が,AOTあるいはTOPOのカプセル外部への溶出を阻止したことを示す。以上のように,カプセル内の芯材(活性炭)に保持された作用剤(AOT,TOPO)が収容室内で金属抽出剤として機能し,さらにカプセル外壁がターゲット物質(Niイオン)の透過を許容したが作用剤の漏出は阻止したことが示された。
1 多孔性カプセル、
A 作用剤、
C 芯材、
S 外殻、
T ターゲット物質、
H 微細貫通孔、
X 収容室、
O 雰囲気空間、
P 外殻の前駆体、
CP カップリング剤、
AL 親水性溶媒、
W 水。
本出願は、2016年3月3日に出願された日本国特許出願第2016−41631号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

Claims (19)

  1. ターゲット物質に作用する作用剤を収容している収容室が、微細貫通孔を有する多孔性の外殻によって、雰囲気空間から区画形成された、多孔性カプセルであって、
    前記微細貫通孔が、前記ターゲット物質が前記雰囲気空間から前記収容室まで通過することを許容し、かつ、前記作用剤の少なくとも一部が前記収容室から前記雰囲気空間まで通過することを阻止する大きさを有する、多孔性カプセル。
  2. 体内環境にて、実質的に不溶性である、請求項1に記載の多孔性カプセル。
  3. 前記収容室が、前記作用剤を含む芯材を含む、請求項1または2に記載の多孔性カプセル。
  4. 前記芯材が、無機物質である、請求項3に記載の多孔性カプセル。
  5. 前記無機物質が、アルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、活性白土、珪藻土およびメソポーラス材料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の多孔性カプセル。
  6. 前記無機物質が、活性炭である、請求項5に記載の多孔性カプセル。
  7. 前記作用が、吸着、吸収、抽出、化学結合、錯形成、分解および触媒機能からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔性カプセル。
  8. 前記作用剤が、活性炭、高分子アルデヒド化合物、カルボニル基を有する高分子、金属抽出材、キレート剤、吸着剤、ポリスチレン、ポリアミド、ペプチド、細胞、DNA、酵素、微生物およびホルモン物質からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多孔性カプセル。
  9. 前記外殻が、多孔性無機体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多孔性カプセル。
  10. 前記多孔性無機体が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の多孔性カプセル。
  11. 前記多孔性無機体が、シリカである、請求項10に記載の多孔性カプセル。
  12. 前記作用剤が、活性炭または金属抽出剤であり、前記外殻が、シリカである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多孔性カプセル。
  13. 前記ターゲット物質が、尿素、インドール、尿酸、クレアチニンおよび金属からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の多孔性カプセル。
  14. ターゲット物質に作用する作用剤を含む芯材に、微細貫通孔を有する多孔性の外殻を被覆させる、被覆工程を有する、前記作用剤を収容する収容室が前記外殻によって雰囲気空間から区画形成した、多孔性カプセルの製造方法。
  15. 前記被覆工程が、前記芯材と、前記外殻の前駆体とを親水性のカップリング剤を介して反応させる、反応工程を有する、請求項14に記載の製造方法。
  16. 前記芯材が、水に分散している状態で前記被覆工程を行う、請求項14または15に記載の製造方法。
  17. 前記前駆体が、水と相分離を起こすものである、請求項14〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 前記カップリング剤の添加量を変化させることによって、前記外殻の微細貫通孔の大きさを制御することを有する、請求項14〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
  19. 前記外殻の前駆体を1mlとした場合、前記カップリング剤の添加量が、0.1ml超6ml以下である、請求項14〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
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