JPWO2017047819A1 - 血管形状分析装置、その方法、及びそのコンピュータソフトウェアプログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 この装置は、医用画像を取得する取得部と、前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化部と、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割部と、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測部であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測部とを有する。【選択図】 図2
Description
本発明は、血管病変の発症・成長の温床である血管形状の異常を判定し表示する機能を有する血管形状分析装置、その方法、及びそのコンピュータソフトウェアプログラムに関する。
従来、動脈硬化や動脈瘤等の血管病変には好発部位があることが知られている。血管病変の発症原因の1つとしては血流による悪性刺激がある。血流による流体力は血管内皮細胞を介して血管調節機能と密接にかかわっており、血管自身のもつ代償範囲を超えた刺激の存在は血管病変のトリガーとなると一般に考えられている。
近年では、上記血流の状態の分析手法として、位相コントラストMRIなどによる実験計測的手法やコンピュータシミュレーションによる計算科学的手法が実用段階を迎え、上述したような血流の悪性刺激の定量化も試みられるようになってきた。例えば、特許第5596865号には、血流をコンピュータシミュレーションにより流体解析して血管壁面の各位置における壁面せん断応力ベクトルを求め、当該せん断応力ベクトルから血流の悪性/良性を判別する技術が開示されている。
血流の悪性化はせん断応力の不安定化と密接に関係している。ここで、「不安定化」とは、せん断応力の向きが一拍動周期内で不安定化すること意味する。例えば流れの衝突、渦、剥離等は、せん断応力の不安定化を引き起こす要因となる。この血流の「不安定化」は、下記に詳述するように血管形状に起因する。従って、血管形状を分析することにより、上記手法をおこなわずとも血流が悪性化・不安定化するリスクを予測し得ることが期待される。
ところで、現代医療においても、血管形状異常を計測することで、脳動脈瘤等の血管病変の分析が行なわれている。しかしながら、その計測は一般に3次元形状である血管病変をある視点方向から2次元的に見た状態で行われる。また、このような従来の計測手法では、計測の原理の共有化・標準化が十分になされておらず、計測結果が測定者に依存する点、自動計測できないために網羅的かつ大規模なデータベースを構築できない点が課題となっている。
血管病変は心臓と脳を総括すれば主要死亡原因である。特に、超高齢化社会を迎える先進国では血管病変を未然に防ぐ試みが急務とされ、そのために病変の因果関係を明らかにすることが求められている。このような状況において、血管病変のビックデータをデータベース化し、その特徴量を統計解析していくことは重要である。例えば、脳動脈瘤は50歳以上でおおよそ人口の5%程度が潜在的に保有するとされており、脳動脈瘤ビックデータのデータベース化とコンピュータ自動解析技術が進展すれば脳動脈瘤の発症、成長、破裂の因果関係を明らかにできることが期待される。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、血管病変の発症・成長の温床となる血管形状を分析(診断)し表示する装置、その方法、及びそのコンピュータソフトウェアプログラムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の主要な観点によれば、医用画像を取得する取得部と、前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化部と、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割部と、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測部であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測部とを有することを特徴とする血管形状分析装置が提供される。
ここで、この発明の一の実施態様によれば、この装置は、さらに、前記形状計測データが閾値を超過するか否かに基づいて各血管形状に対する病変発症のリスクを判定する判定部であって、前記閾値は血管の幾何学的形状情報に関する統計データに基づき予め設定されたものである、前記判定部と、前記判定結果を出力する出力部とを有するものである。さらに、この場合、前記出力部は、前記判定結果を前記血管領域と共に表示するものであることが好ましい。
また、前記形状計測部は、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面の径、凹凸度、曲げ度、及び捩れ度、並びに、血管要素間の血管分岐部分における分岐角度の少なくとも1つを算出するものであることが好ましい。
また、別の一実施態様によれば、前記形状計測部は、前記血管中心線の走行方向に沿って血管断面積を計測しその等価直径を算出するものであり、この装置は、さらに、前記等価直径に基づいて標準血管モデルを構築する標準血管生成部と、前記医用画像と前記標準血管モデルとの差分画像を計算して当該差分画像に含まれるフラグメントをそれぞれ特定する差分画像計算部と、前記フラグメントそれぞれの形状を計測し、当該計測されたフラグメントの形状から前記フラグメントの属性を教師付き機械学習により得られたフラグメント幾何学的特徴情報に基づいて判別し、当該判別結果を出力するフラグメント分析部であって、このフラグメント分析部は、少なくともフラグメントが血管異常部であるかノイズであるかを判別するものであるフラグメント分析部とを有するものである。この場合、この装置は、さらに、前記フラグメントの属性の判別結果に基づいて血管異常部を分割し表示する血管異常分割部を有することが好ましい。
また、更なる別の一実施態様によれば、前記標準血管生成部は、前記血管要素内の複数の離散的位置において算出された等価直径に基づいて血管直径の変化特性データを生成し、当該血管直径の変化特性データに近似曲線をフィッティングすることで前記標準血管モデルを構築するものである。
また、別の一実施態様によれば、前記フラグメント分析部は、前記フラグメントの属性として、血管病変の種類を判別するものである。
また、別の一実施態様によれば、前記教師付き機械学習は、前記判定結果をデータベース化・分析することにより、前記フラグメント幾何学的特徴情報を更新するものである。
この発明の第2の主要な観点によれば、コンピュータが、医用画像を取得する取得工程と、コンピュータが、前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化工程と、
コンピュータが、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割工程と、コンピュータが、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測工程であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測工程とを有することを特徴とする血管形状分析方法が提供される。
コンピュータが、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割工程と、コンピュータが、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測工程であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測工程とを有することを特徴とする血管形状分析方法が提供される。
また、この発明の第3の主要な観点によれば、血管形状を分析するコンピュータソフトウェアプログラムであって、以下の工程:コンピュータが、医用画像を取得する取得工程と、コンピュータが、前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化工程と、コンピュータが、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割工程と、コンピュータが、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測工程であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測工程とを実行させる命令を含むことを特徴とするコンピュータソフトウェアプログラムが提供される。
なお、この発明の上記述べた以外の他の特徴については、次に説明する「発明を実施するための形態」及び図面を参照することにより当業者にとって容易に理解することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
前述したように、本発明の第1の側面は、血管病変の発症・成長の温床となる血管形状を分析(診断)し、その結果を出力する装置である。この発明では、血流の不安定化が血管形状に起因することに着目し、血管形状の異常度を算出することで、血管組織の病変の発症や進展をもたらす一要因となり得る血管部位を特定・状態判別する。
例えば、配管設計などの工業分野においては、拡大管を設計する際、配管の拡大角をある一定角(例、10度)以内に収めることが一般的である。これは、規定角度を超えると流れが剥離することで壁近傍では渦が発生し、実質的に物質輸送に寄与しないデッドゾーンを形成するためである。本発明者等は、このような視点から血管形状を見た場合、正常血管の大半は縮小型となっているが、血管病変を伴う場合には血管限局的に拡大型となっている場合があることを経験的に知得した。すなわち、縮小型の管路では、流れ方向に対して流れの不安定化は抑制される。一方で、前述したように拡大型では不安定化する性質がある。これは流れ方向に対して圧力勾配が異なり、縮小型では負値をとり流体は加速するが、拡大型では正値をとり流体は減速するためである。この発明は、上記観点に基づき誠意検証・実験を行った結果、完成したものである。
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明する。尚、以下では好適な例として、脳動脈瘤の場合をもって説明する。
図1は、本発明の一実施形態が示す血管形状分析装置(血管形状診断装置)10の概略構成図である。医用画像を入力とする。
血管形状分析装置10は、CPU11、RAM12及び入力/出力IF13が接続されたバス50に、プログラム格納部60とデータ格納部70、71が接続されている。この装置10は、さらに、各種外部参照データを格納するその他の機器および/または通信ポートに前記バス50が接続されてもよい。また、この装置10の入力/出力IF13には、マウスやキーボード、タッチスクリーンなどの入力デバイス(不図示)や、ディスプレイ(不図示)又はその他の出力デバイスを接続することができる。
プログラム格納部60は、入力部14、細線化部15、グラフ化部16、形状計測部17、判定部18、及び表示部19を備えている。
データ格納部70は入力された医用画像を格納する。データ格納部71は、血管形状データ20、血管形状計測データ21、およびリスク判定結果22等を格納する。
前記構成(入力部14、細線化部15、グラフ化部16、形状計測部17、判定部18、及び表示部19)は、実際にはハードディスクの記憶領域に格納されたコンピュータソフトウエアによって構成され、前記CPU11によって呼び出されRAM12上に展開され実行されることによって、本実施形態の各構成要素として構成され機能するようになっている。
各部の機能についてそれぞれの受け持つ工程とともに以下に述べる。図2は、本実施形態における装置10の血管形状分析(血管形状診断)フローを示す図である。
(入力部)
入力部14は医用画像などを読み込む(ステップS0)。この実施形態において、入力される医用画像は、例えばMRA(磁気共鳴画像)、CTA(X線コンピュータ断層撮影画像)、DSA(血管造影画像)などの対象血管部位の断層画像を取得可能な装置の他、US(超音波画像)、IVUS(血管内超音波画像)、OCT(近赤外画像)など、対象血管部位における画像データを取得可能な種々の装置により得られたものであってよい。また、対象血管部位としては、例えば脳動脈、冠動脈、頚動脈、大動脈、または被験者のその他の対象血管部位であってよい。当該医用画像は、入力/出力IF13を介して、または不図示の通信ポートやその他の転送手段により一旦データ格納部70に記録された後、細線化部15に入力される。
入力部14は医用画像などを読み込む(ステップS0)。この実施形態において、入力される医用画像は、例えばMRA(磁気共鳴画像)、CTA(X線コンピュータ断層撮影画像)、DSA(血管造影画像)などの対象血管部位の断層画像を取得可能な装置の他、US(超音波画像)、IVUS(血管内超音波画像)、OCT(近赤外画像)など、対象血管部位における画像データを取得可能な種々の装置により得られたものであってよい。また、対象血管部位としては、例えば脳動脈、冠動脈、頚動脈、大動脈、または被験者のその他の対象血管部位であってよい。当該医用画像は、入力/出力IF13を介して、または不図示の通信ポートやその他の転送手段により一旦データ格納部70に記録された後、細線化部15に入力される。
(細線化部)
細線化部15は、医用画像を二値化・細線化処理して血管の中心線を取得する(ステップS1)。以下、図3を参照して具体的に説明する。細線化部15は、まず、読み込まれた図3(a)に示すような医用画像を二値化し、対象血管領域を抽出して、血管3次元形状データを生成する(図3(b))。この実施形態では、細線化部15は二値化の閾値を画像全体の輝度値のヒストグラムに基づいて血管壁特有の特徴を抽出するように自動設定する。他の実施例では、ユーザーが二値化の閾値を選定してもよい。次いで、細線化部15は、二値化した血管3次元形状データ(以下、「血管形状」と言う)に対して細線化処理を行い血管中心線を取得する(図3(c))。細線化は複数のアルゴリズムが知られており、特定のアルゴリズムに限定されないが、この実施形態では、細線化部15は、抽出した血管領域のボクセルを当該血管領域の外周側(すなわち表面)から中心に向けて削ることで血管の芯を抽出し、血管走行方向にスプライン曲線などをフィッティングすることで中心線を取得する。
細線化部15は、医用画像を二値化・細線化処理して血管の中心線を取得する(ステップS1)。以下、図3を参照して具体的に説明する。細線化部15は、まず、読み込まれた図3(a)に示すような医用画像を二値化し、対象血管領域を抽出して、血管3次元形状データを生成する(図3(b))。この実施形態では、細線化部15は二値化の閾値を画像全体の輝度値のヒストグラムに基づいて血管壁特有の特徴を抽出するように自動設定する。他の実施例では、ユーザーが二値化の閾値を選定してもよい。次いで、細線化部15は、二値化した血管3次元形状データ(以下、「血管形状」と言う)に対して細線化処理を行い血管中心線を取得する(図3(c))。細線化は複数のアルゴリズムが知られており、特定のアルゴリズムに限定されないが、この実施形態では、細線化部15は、抽出した血管領域のボクセルを当該血管領域の外周側(すなわち表面)から中心に向けて削ることで血管の芯を抽出し、血管走行方向にスプライン曲線などをフィッティングすることで中心線を取得する。
(グラフ化部)
グラフ化部16は、細線化処理で得られた血管中心線を用いてグラフ化を行う(ステップS2)。この実施形態において、グラフ化とは、各血管部分に対応する中心線データにラベリングすることであり、そのグラフ化されたデータをグラフデータと言う。グラフ化処理において、グラフ化部16は、まず血管中心線を領域ごとに要素分割する。この要素分割は、図4に示すように、細線化処理で取得した中心線においてその端部・分岐点(A、B、C、・・・)を特定し、当該端部・分岐点で前記中心線を分割することで行う。以下、この分割された端点・分岐点間の中心線に対応する各血管部分を「血管要素」と言う。その後、グラフ化部16は、各血管要素の中心線データにラベリング(#1、2、3、・・・)を行い、グラフデータ(グラフ)を生成する。
グラフ化部16は、細線化処理で得られた血管中心線を用いてグラフ化を行う(ステップS2)。この実施形態において、グラフ化とは、各血管部分に対応する中心線データにラベリングすることであり、そのグラフ化されたデータをグラフデータと言う。グラフ化処理において、グラフ化部16は、まず血管中心線を領域ごとに要素分割する。この要素分割は、図4に示すように、細線化処理で取得した中心線においてその端部・分岐点(A、B、C、・・・)を特定し、当該端部・分岐点で前記中心線を分割することで行う。以下、この分割された端点・分岐点間の中心線に対応する各血管部分を「血管要素」と言う。その後、グラフ化部16は、各血管要素の中心線データにラベリング(#1、2、3、・・・)を行い、グラフデータ(グラフ)を生成する。
次に、グラフ化部16は、癒着の検出・分離を行う。ここでいう「癒着」とは、図5に示すように、近接して走行している二本の血管が、本来癒着していないにも関わらず、上記抽出処理において分離されずに一体となって抽出される現象を言う。
通常、血管とは全身レベルでは一巡閉鎖系のループ回路となっているが、血管形状診断の対象となるような比較的に微視的な領域においてループは形成しない。従って、この実施形態では、ループの有無に応じて癒着の有無を検出する。以下、癒着の検出・分離をより詳しく説明する。
まず、癒着部位の検出を、グラフに対して深さ優先探索を実行することにより行う。すなわち、抽出された血管の3次元血管形状を解析することによって端点と分岐点を検出し、それらの接続関係を調べる。
例えば、図6(b)に示すグラフでは血管の分岐構造が表現されている。図6に円で示したものは節点であり、端点または分岐点を示す。癒着が生じると、このグラフに閉路(ループ)として表れるようになっており、この閉路をグラフの深さ優先探索を行うことで検出する。これは初期の節点からすべての節点を通るように辺をたどっていく操作である。たどり方の規則は以下の通りである。
(1)分岐点に来たときには、通過していない辺を選び、次の節点に進む。
(2)端点に来たときには、手前の分岐点に戻る。
(3)分岐点に戻ったときに通過していない辺がなければ、手前の分岐点に戻る。
図6(c)において、各節点の番号は深さ優先探索の訪問順序を表す。また、実線矢印は往路、点線矢印は復路を示す。この図6(c)に示す例では5番と6番の間に閉路が生じている。深さ優先探索を行うと、5番の節点から6番、7番、8番と進み6番に戻ってくる。ここで、往路は5番と6番間において下側の辺を通ってきたので、上側の辺はまだ通過していない。ところが上の辺を選ぶとすでに訪問済みの5番に着く。閉路がなければ訪問済みの節点に戻るのは復路だけであるが、閉路が存在する場合は往路で訪問済みの節点に到達する。従って、グラフ化部16は、節点と辺の通過状況を記録しておくことによって閉路を検出し、閉路と判定された時点の節点(例えば、図6(c)に示すグラフの場合は6番)を癒着部位とみなす。
(1)分岐点に来たときには、通過していない辺を選び、次の節点に進む。
(2)端点に来たときには、手前の分岐点に戻る。
(3)分岐点に戻ったときに通過していない辺がなければ、手前の分岐点に戻る。
図6(c)において、各節点の番号は深さ優先探索の訪問順序を表す。また、実線矢印は往路、点線矢印は復路を示す。この図6(c)に示す例では5番と6番の間に閉路が生じている。深さ優先探索を行うと、5番の節点から6番、7番、8番と進み6番に戻ってくる。ここで、往路は5番と6番間において下側の辺を通ってきたので、上側の辺はまだ通過していない。ところが上の辺を選ぶとすでに訪問済みの5番に着く。閉路がなければ訪問済みの節点に戻るのは復路だけであるが、閉路が存在する場合は往路で訪問済みの節点に到達する。従って、グラフ化部16は、節点と辺の通過状況を記録しておくことによって閉路を検出し、閉路と判定された時点の節点(例えば、図6(c)に示すグラフの場合は6番)を癒着部位とみなす。
グラフ化部16は、癒着部位を検出すると、次に当該癒着部位の分離を行う。癒着部位に接続されている血管の走行方向と形状に基づいて癒着部位を分離する。分離の処理を行う前提として、血管の領域と中心線が抽出されており、血管の走行方向および断面積が既知であるとする。
分離処理の流れは以下の通りである。
(1)血管の断面積の変化から癒着区間を求める。
(2)癒着区間の前後の血管の中心線を用いて、癒着区間の中心線を推定する。
(3)癒着区間の血管断面において二つの接する楕円を血管表面の輪郭に当てはめることによって各血管の形状を推定する。
(4)癒着区間断面を二つに分割する。
(1)血管の断面積の変化から癒着区間を求める。
(2)癒着区間の前後の血管の中心線を用いて、癒着区間の中心線を推定する。
(3)癒着区間の血管断面において二つの接する楕円を血管表面の輪郭に当てはめることによって各血管の形状を推定する。
(4)癒着区間断面を二つに分割する。
以下に、図7を参照して、上記(1)〜(4)の各分離処理をより詳細
に説明する。まず、癒着区間とその前後における血管の断面積を計測する。癒着している部分は二本の血管が一体となっているため、血管の走行に沿って断面積をプロットしていくと図7(a)下方に示したグラフのように癒着区間のみ断面積が増大する。この変化を検出して、癒着区間を決定する。次に血管の中心線に着目すると、元々は二本だった中心線が内側へとずれていき、ついには接して分岐点となる。図7(a)の一点鎖線で示したものがそれに相当する。しかし、本来は二本の血管であるから、図7(a)の点線で示したように交わることの無い二本の曲線になっているはずである。そこで、癒着区間の本来の中心線をその前後の中心線から補間することによって推定する。その次に、推定された中心線を用いて、癒着区間の断面上で各血管の輪郭を推定する。図7(b)は癒着区間の断面を示している。二つの黒い点51は推定された中心線を示す。血管の断面は楕円と仮定して、二つ楕円52の中心が既知であり、接しているという条件の下で癒着区間の血管の輪郭53に二つの楕円を当てはめる。図7(b)の点線が当てはめた二つの楕円52を示す。最後に、癒着区間の内部を二つの血管の径の比に応じて二つの領域に分割し、分離処理を完了する。
に説明する。まず、癒着区間とその前後における血管の断面積を計測する。癒着している部分は二本の血管が一体となっているため、血管の走行に沿って断面積をプロットしていくと図7(a)下方に示したグラフのように癒着区間のみ断面積が増大する。この変化を検出して、癒着区間を決定する。次に血管の中心線に着目すると、元々は二本だった中心線が内側へとずれていき、ついには接して分岐点となる。図7(a)の一点鎖線で示したものがそれに相当する。しかし、本来は二本の血管であるから、図7(a)の点線で示したように交わることの無い二本の曲線になっているはずである。そこで、癒着区間の本来の中心線をその前後の中心線から補間することによって推定する。その次に、推定された中心線を用いて、癒着区間の断面上で各血管の輪郭を推定する。図7(b)は癒着区間の断面を示している。二つの黒い点51は推定された中心線を示す。血管の断面は楕円と仮定して、二つ楕円52の中心が既知であり、接しているという条件の下で癒着区間の血管の輪郭53に二つの楕円を当てはめる。図7(b)の点線が当てはめた二つの楕円52を示す。最後に、癒着区間の内部を二つの血管の径の比に応じて二つの領域に分割し、分離処理を完了する。
(形状計測部)
形状計測部17はグラフ化処理により得られた各血管要素の形状計測を行う(ステップS3)。この実施形態では、下記パラメータ(1)〜(5)を計測する。
(1)直径 (血管断面に関する情報)
(2)凹凸 (血管表面形状に関する情報)
(3)曲げ (血管中心線の幾何学的特徴に関する情報)
(4)捻れ (血管中心線の幾何学的特徴に関する情報)
(5)分岐角度 (血管中心線の幾何学的特徴に関する情報)
ここで、「(1)直径」は、血管中心線走行方向での血管断面積の等価直径である。このパラメータ(1)は、図8に示すように、各血管要素(#1、2、3、...)内の血管中心線走行方向に沿う1若しくはそれ以上の離散的な位置(例えば、血管要素#1における位置P1、P2、P3...)で測定されてよく、形状計測部17は、それらの測定値から、血管要素毎に当該測定値の最小値、最大値、平均値、変動値(標準偏差など)等を算出することができる。以下に詳述するパラメータ(2)〜(4)も、同様にして、血管要素毎に当該測定値の最小値、最大値、平均値、変動値(標準偏差など)等を算出することができる。
形状計測部17はグラフ化処理により得られた各血管要素の形状計測を行う(ステップS3)。この実施形態では、下記パラメータ(1)〜(5)を計測する。
(1)直径 (血管断面に関する情報)
(2)凹凸 (血管表面形状に関する情報)
(3)曲げ (血管中心線の幾何学的特徴に関する情報)
(4)捻れ (血管中心線の幾何学的特徴に関する情報)
(5)分岐角度 (血管中心線の幾何学的特徴に関する情報)
ここで、「(1)直径」は、血管中心線走行方向での血管断面積の等価直径である。このパラメータ(1)は、図8に示すように、各血管要素(#1、2、3、...)内の血管中心線走行方向に沿う1若しくはそれ以上の離散的な位置(例えば、血管要素#1における位置P1、P2、P3...)で測定されてよく、形状計測部17は、それらの測定値から、血管要素毎に当該測定値の最小値、最大値、平均値、変動値(標準偏差など)等を算出することができる。以下に詳述するパラメータ(2)〜(4)も、同様にして、血管要素毎に当該測定値の最小値、最大値、平均値、変動値(標準偏差など)等を算出することができる。
「(2)凹凸」は、中心線直交断面上の中心線の位置から当該中心線直交断面上の血管表面若しくは血管外輪郭の位置までの距離(以下、「血管高さ」と言う)を測定することで算出する。図9(a)は上記血管表面座標系を説明するための図であり、図9(b)は、当該血管表面座標系の各位置Qにおいて測定される血管高さHを写像した3次元情報の一例を示す。図9(a)において血管走行方向に延びる実線41、42は血管表面走行座標系における線分の例を示す。図9(b)の横軸には、当該血管走行方向に延びる線分上の位置を血管表面走行距離Lとして示している。また、図9(b)の縦軸には、血管周方向に並ぶ各線分の番号を線分番号Nとして示している。
「(3)曲げ」と「(4)捻れ」は、血管中心線をスプライン関数近似することで定量する。また、「(5)分岐角度」は、血管分岐部における親血管と娘血管のなす角度である。図10に、形状計測部17で計測される形状計測データのテーブルの一例を示す。
尚、本実施形態では、上記(1)〜(5)を計測しているが、これに限られるものではない。例えば、上記(1)〜(5)のうちの1若しくはそれ以上のパラメータを計測してもよいし、上記パラメータ以外の形状パラメータも計測してもよい。
(判定部)
判定部18は、形状計測部17が出力した結果をもとに血管形状分類を判定する(ステップS4)。判定アルゴリズムは、統計データを基準にする。「(1)等価直径」の場合を例に挙げて説明すると、図11(a)は、等価直径の変化割合を示した統計データである。図11(a)に示すように、等価直径の変化割合の正常範囲が、前記変化割合の平均値をもとに変動値(変動率)を算出することで決定される。ここで、「変動値」とは、標準偏差の値、もしくはその倍数とする。図11(a)に示す例では、等価直径の変動値の正常範囲を−20deg〜+20degと決定されていることを示す。この統計データに基づいて決定された基準となる情報(閾値)はこの装置の格納部に格納されており、判定部18は、読み込んだ上記統計データに基づく範囲を基準として、前記計測された形状パラメータから各血管形状に対する血管病変発生リスクの有無を判定する。図11に示す例では、当該直径の変動率が閾値±20degを超えた場合に血管病変発生のリスク有と判定する。図11(b)は、各血管要素における血管中心線走行方向の位置と計測された等価直径との関係を示したものである。この実施形態では、図11(b)に示すように、各計測結果のうち、直径の変動率が正値となり且つ閾値(+20deg以上)を超える領域を血管が拡大型を示す領域として疾患リスク有りと判定する。また、変動率が負値となり且つ閾値を越える領域(−20deg以下)を局所性の強い縮小型を示す領域として疾患リスク有りと判定する。
判定部18は、形状計測部17が出力した結果をもとに血管形状分類を判定する(ステップS4)。判定アルゴリズムは、統計データを基準にする。「(1)等価直径」の場合を例に挙げて説明すると、図11(a)は、等価直径の変化割合を示した統計データである。図11(a)に示すように、等価直径の変化割合の正常範囲が、前記変化割合の平均値をもとに変動値(変動率)を算出することで決定される。ここで、「変動値」とは、標準偏差の値、もしくはその倍数とする。図11(a)に示す例では、等価直径の変動値の正常範囲を−20deg〜+20degと決定されていることを示す。この統計データに基づいて決定された基準となる情報(閾値)はこの装置の格納部に格納されており、判定部18は、読み込んだ上記統計データに基づく範囲を基準として、前記計測された形状パラメータから各血管形状に対する血管病変発生リスクの有無を判定する。図11に示す例では、当該直径の変動率が閾値±20degを超えた場合に血管病変発生のリスク有と判定する。図11(b)は、各血管要素における血管中心線走行方向の位置と計測された等価直径との関係を示したものである。この実施形態では、図11(b)に示すように、各計測結果のうち、直径の変動率が正値となり且つ閾値(+20deg以上)を超える領域を血管が拡大型を示す領域として疾患リスク有りと判定する。また、変動率が負値となり且つ閾値を越える領域(−20deg以下)を局所性の強い縮小型を示す領域として疾患リスク有りと判定する。
前記「(2)凹凸」の場合も、同様にして、測定された血管の凹凸が統計データに基づく凹凸の閾値を超えた場合に、血管病変発生リスク有りの判定をすることができる。この実施形態では、負値であれば狭窄、正値であれば瘤の発生リスク有りと判定する。前記「(3)曲げ」、「(4)捻じり」、「(5)分岐角度」も同様にして、各測定値から血管病変の発生リスクを判定することができる。判定部18は、最終的な血管病変発生リスクの判定を、上記パラメータ(1)〜(5)の測定・判定結果全てを用いて行なうことができるが、代替的に、例えば特定する血管病変の種類や計算負荷等に応じて、上記パラメータ(1)〜(5)のうちの一部のパラメータの測定・判定結果を用いて行なってもよい。
(表示部)
上記判定処理後、血管形状分析装置は判定結果を出力する(ステップ5)。判定結果は、血管形状に重畳してユーザーに3次元的または2次元的に表示される。図12にコンピュータ処理により出力した結果の一例を示す。図12の斜線は、判定結果のうち閾値を超えた箇所を示す。また、形状計測部17で計測されたデータも出力してもよい。
上記判定処理後、血管形状分析装置は判定結果を出力する(ステップ5)。判定結果は、血管形状に重畳してユーザーに3次元的または2次元的に表示される。図12にコンピュータ処理により出力した結果の一例を示す。図12の斜線は、判定結果のうち閾値を超えた箇所を示す。また、形状計測部17で計測されたデータも出力してもよい。
以上により、この装置では、血管形状の局所的形状変化に基づき血管病変の発生リスクまたは発生有無、その種類、程度を判定でき、また、その結果をユーザインターフェースに視覚的に表示することができる。
(第2の実施形態)
上記実施形態では、血管病変の発症・成長の温床となる血管形状を分析する技術について説明した。本実施形態では、当該血管形状の分析において判定される血管病変部と血管正常部との自動分割も行う場合を説明する。
上記実施形態では、血管病変の発症・成長の温床となる血管形状を分析する技術について説明した。本実施形態では、当該血管形状の分析において判定される血管病変部と血管正常部との自動分割も行う場合を説明する。
図13は、従来の医療現場で行なわれている血管病変の測定手法を説明するための図であり、脳動脈瘤の場合を例として示している。上述したように、従来の計測は、3次元形状である脳動脈瘤をある視点方向から2次元的に見た状態で行われている。図13に点線で示すような瘤のネック長(n)、最大長さ(l)、高さ(h)などが計測されている。
しかしながら、血管病変は血管の曲げや捩れが著しい箇所に発生する傾向があることが知られており、そのような複雑な血管部位においても形状異常部を自動抽出する技術に関しては、未だ産業応用される精度に至るものはない。
そこで、本発明の第2の実施形態では、標準血管および教師付き機械学習に基づいて血管フラグメントを分析することで、複雑な血管部位においても高精度に血管形態異常の自動検出・分割を行う。正常血管は、血管の進行方向に応じて血管径がある一定の割合で変化していく特性がある。本明細書では、この一定の割合をもとに人為的に構成した血管を「標準血管」と言う。また、入力である医用画像から標準血管を減じた画像を「差分画像」と言う。差分画像には、脳動脈瘤などの血管の一部が特異的に変化した情報とノイズとが含まれ、本実施形態の装置は、これらの情報およびノイズを「フラグメント」として特定する。そして、このフラグメントを教師付き機械学習により分類していくことでフラグメントの形態学的特徴と血管病変との接続点を構築し、この対応関係をもとに、フラグメントを自動分析することで血管異常を検出・分割する。
以下、図14〜19を参照してより具体的に説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態が示す血管異常検出分割装置の概略構成図である。入力は医用画像であり、出力はこの医用画像に基づき分割および属性判別した血管形状異常部、当該形状異常部の形状情報、および当該形状異常部を前記入力医用画像に重畳させたもの等となる。
血管異常検出分割装置100は、前記第1の実施形態と同様に、CPU111、RAM112及び入力/出力IF113が接続されたバス150に、プログラム格納部160とデータ格納部170、171が接続されている。
プログラム格納部160は、入力部114、細線化部115、グラフ化部116、形状計測部117、標準血管生成部118、差分画像計算部119、フラグメント分析部120、血管異常分割部121、及び表示部122を備えている。
データ格納部170は入力された医用画像を格納する。データ格納部171は、血管形状データ123と、血管形状計測データ124と、標準血管形状データ125、フラグメント形状データ126、フラグメント形状計測データ127、リスク判定結果128とを格納する。
前記構成(入力部114、細線化部115、グラフ化部116、形状計測部117、標準血管生成部118、差分画像計算部119、フラグメント分析部120、血管異常分割部121、及び表示部122)は、実際にはハードディスクの記憶領域に格納されたコンピュータソフトウエアによって構成され、前記CPU111によって呼び出されRAM112上に展開され実行されることによって、本実施形態の各構成要素として構成され機能するようになっている。
各部の機能についてそれぞれの受け持つ工程とともに以下に述べる。図15は、本実施形態における装置100の血管形状異常検出分割フローを示す図である。
(細線化部、グラフ化部、形状計測部)
装置100は、第1の実施形態の装置10と同様にして、細線化、グラフ化を行う(ステップS10〜S12)。
装置100は、第1の実施形態の装置10と同様にして、細線化、グラフ化を行う(ステップS10〜S12)。
(形状計測部)
形状計測部117は、第1の実施形態の装置10の形状計測部17と同様にして、グラフ化処理により得られた各血管要素の形状計測を行う(ステップS13)。形状計測部117は各血管の直径(等価直径)を計測する。すなわち、図8に示すように、形状計測部117は、各血管要素において血管中心線走行方向上の異なる位置(p1、p2、p3...)に複数の垂直断面を設定し、その断面積から各位置での血管の直径(等価直径)を算出する。
形状計測部117は、第1の実施形態の装置10の形状計測部17と同様にして、グラフ化処理により得られた各血管要素の形状計測を行う(ステップS13)。形状計測部117は各血管の直径(等価直径)を計測する。すなわち、図8に示すように、形状計測部117は、各血管要素において血管中心線走行方向上の異なる位置(p1、p2、p3...)に複数の垂直断面を設定し、その断面積から各位置での血管の直径(等価直径)を算出する。
(標準血管生成部)
標準血管生成部118は、形状計測部117で血管直径をもとに標準血管を生成する(ステップS14)。図16は、この標準血管生成部118における処理を模式的に示したものである。まず、標準血管生成部118は、前工程(ステップS13)で取得した図16(a)に示すような血管要素の各断面(P1〜6)の直径から、図16(b)に示すような、中心線走行方向を軸とするようにマッピングした画像を生成する。次いで、標準血管生成部118は、図16(c)に示すように、マッピングした画像から、横軸を中心線位置、縦軸を等価直径とした血管直径の変化特性を示すグラフを生成し、この離散点に対して近似曲線を当てはめることで血管径変化の特徴量を数式化する。その後、当該特徴量を満たすように新たに標準血管画像を生成する。このように、標準血管生成部118は、血管形状の変化に関する特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて標準血管として人為的に血管モデルを生成する。
標準血管生成部118は、形状計測部117で血管直径をもとに標準血管を生成する(ステップS14)。図16は、この標準血管生成部118における処理を模式的に示したものである。まず、標準血管生成部118は、前工程(ステップS13)で取得した図16(a)に示すような血管要素の各断面(P1〜6)の直径から、図16(b)に示すような、中心線走行方向を軸とするようにマッピングした画像を生成する。次いで、標準血管生成部118は、図16(c)に示すように、マッピングした画像から、横軸を中心線位置、縦軸を等価直径とした血管直径の変化特性を示すグラフを生成し、この離散点に対して近似曲線を当てはめることで血管径変化の特徴量を数式化する。その後、当該特徴量を満たすように新たに標準血管画像を生成する。このように、標準血管生成部118は、血管形状の変化に関する特徴量を算出し、当該特徴量に基づいて標準血管として人為的に血管モデルを生成する。
(差分画像計算部)
差分画像計算部119は、入力された医用画像と標準血管生成部118で得られた標準血管画像の差分画像を計算する(ステップS15)。図17は、この差分画像計算部119における処理を模式的に示したものである。図17において、実線は入力である医用画像、破線は標準血管画像を示す。差分画像計算部119は、図17に斜線で示す二箇所43、44を医用画像と標準血管画像の差分画像として出力する。
差分画像計算部119は、入力された医用画像と標準血管生成部118で得られた標準血管画像の差分画像を計算する(ステップS15)。図17は、この差分画像計算部119における処理を模式的に示したものである。図17において、実線は入力である医用画像、破線は標準血管画像を示す。差分画像計算部119は、図17に斜線で示す二箇所43、44を医用画像と標準血管画像の差分画像として出力する。
この実施形態では、標準血管生成部118が、自由度を制限した近似曲線を当てはめて標準血管画像を生成することで、当該標準血管画像が入力医用画像の局所的な形状変化に追従しないようになっている。例えば前記近似曲線は、低次の多項近似相当であってよい。
差分画像計算部119は、さらに、カットオフフィルタ機能を有し、差分画像中、極端に小さいノイズと認識できる部分を適切に除去する。例えば、差分画像計算部119は各フラグメントの体積で閾値を設けて閾値以下のフラグメントを除去する。
(フラグメント分析部)
フラグメント分析部120は、前工程(ステップS15)で出力された差分画像を分析する(ステップS16)。差分画像は、各血管の標準血管からの逸脱を示すが、本明細書では、この逸脱を「フラグメント」と言う。具体的には、フラグメント分析部120は、図18に示すように、各フラグメントの形状を分析して、各フラグメントを構成する成分が、(1)血管異常、又は(2)ノイズのいずれであるか、また、血管異常がどのような種類の異常であるか、を判定する。この実施形態では、血管異常とは、例えば血管の狭窄化や瘤化などの血管形態異常である。
フラグメント分析部120は、前工程(ステップS15)で出力された差分画像を分析する(ステップS16)。差分画像は、各血管の標準血管からの逸脱を示すが、本明細書では、この逸脱を「フラグメント」と言う。具体的には、フラグメント分析部120は、図18に示すように、各フラグメントの形状を分析して、各フラグメントを構成する成分が、(1)血管異常、又は(2)ノイズのいずれであるか、また、血管異常がどのような種類の異常であるか、を判定する。この実施形態では、血管異常とは、例えば血管の狭窄化や瘤化などの血管形態異常である。
上記フラグメント分析処理の判定アルゴリズムには大規模データベースに対して教師付機械学習から得られた結果を用いる。すなわち、この教師付機械学習では例えば脳動脈瘤の場合、コンピュータが、各フラグメントを脳動脈瘤とノイズのいずれであるかを判別し、当該判別した脳動脈瘤とノイズのそれぞれにタグ付けを行うことでフラグメント形状情報に関するデータベースを構築していく。この実施形態では、フラグメント形状情報とは、フラグメントの体積、表面積、球形度、代表長さ、および、そのフラグメントが位置する血管部位情報等である。その後、これら形状情報の単一ないしは複数の組み合わせによる多変量解析をして、ノイズとの有意差を構成する形状パラメータを決定し、この形状パラメータを用いてノイズと計測対象である血管異常とを識別する幾何学的特徴を取得する。
フラグメント分析部120は、前記幾何学的特徴に基づき新たなフラグメント形状を分析し、血管異常であるかどうか、また、どのような種類の異常であるかを判定するが、この実施形態における教師付機械学習では、当該判定結果をデータベース化・分析することで血管異常の判定精度を高めるようになっている。
尚、上記分析処理は、例えばデータベース化の初期段階において、脳外科臨床医等が脳動脈瘤かノイズかを判別し、その判別結果をフラグメント分析部120が分析して前記幾何学的特徴を取得するようにしてもよい。
(血管異常分割部)
血管異常分割部121は、フラグメント分析部120で判定された血管異常に対して異常部を領域分割する(ステップS17)。領域判定はすでに差分画像よりなされているため、属性の判断をタグ付けすることで異常部の領域分割を行う。具体的には、瘤と判定されたものは瘤として、狭窄として判定されたものは狭窄として、ノイズと判定されたものはノイズとしてタグ付ける。
血管異常分割部121は、フラグメント分析部120で判定された血管異常に対して異常部を領域分割する(ステップS17)。領域判定はすでに差分画像よりなされているため、属性の判断をタグ付けすることで異常部の領域分割を行う。具体的には、瘤と判定されたものは瘤として、狭窄として判定されたものは狭窄として、ノイズと判定されたものはノイズとしてタグ付ける。
血管異常分割部121は、異常部(病変部)として領域分割された対象に対して、当該対象の面を始点として周囲を探索し該当部の特徴量を高次元で算出することで分割精度を高めてもよい。より具体的には、脳動脈瘤などの血管異常部は親血管からの曲率の反転を伴うものであり、血管異常分割部121は、曲率反転箇所をトラッキングすることで、当該血管異常部を高精度で分割することができる。すなわち、脳動脈瘤の場合、正常血管である親血管は凸型の曲率となる一方、瘤化した部分は凹型の曲率を伴うものであり、血管異常分割部121は、この境界面をトラッキングすることで高精度な領域分割を行う。分割した結果はラベリングする。
(表示部)
表示部122は、図19に示すように入力医用画像に重畳して表示する(ステップS18)。図19の太実線は、高次元処理により高精度に特定されたネックラインである。さらに、前記重畳画像と共に、形状計測部117で計測された異常部の形状情報を表示してもよい。
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
表示部122は、図19に示すように入力医用画像に重畳して表示する(ステップS18)。図19の太実線は、高次元処理により高精度に特定されたネックラインである。さらに、前記重畳画像と共に、形状計測部117で計測された異常部の形状情報を表示してもよい。
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
Claims (27)
- 医用画像を取得する取得部と、
前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化部と、
前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割部と、
前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測部であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測部と
を有することを特徴とする血管形状分析装置。 - 請求項1に記載の血管形状分析装置において、この装置は、さらに、
前記形状計測データが閾値を超過するか否かに基づいて各血管形状に対する病変発症のリスクを判定する判定部であって、前記閾値は血管の幾何学的形状情報に関する統計データに基づき予め設定されたものである、前記判定部と、
前記判定結果を出力する出力部と
を有することを特徴とする、装置。 - 請求項2に記載の血管形状分析装置において、前記出力部は、前記判定結果を前記血管領域と共に表示することを特徴とする、装置。
- 請求項1に記載の血管形状分析装置において、前記形状計測部は、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面の径、凹凸度、曲げ度、及び捩れ度、並びに、血管要素間の血管分岐部分における分岐角度の少なくとも1つを算出するものである、装置。
- 請求項1に記載の血管形状分析装置において、前記形状計測部は、前記血管中心線の走行方向に沿って血管断面積を計測しその等価直径を算出するものであり、
この装置は、さらに、
前記等価直径に基づいて標準血管モデルを構築する標準血管生成部と、
前記医用画像と前記標準血管モデルとの差分画像を計算して当該差分画像に含まれるフラグメントをそれぞれ特定する差分画像計算部と、
前記フラグメントそれぞれの形状を計測し、当該計測されたフラグメントの形状から前記フラグメントの属性を教師付き機械学習により得られたフラグメント幾何学的特徴情報に基づいて判別し、当該判別結果を出力するフラグメント分析部であって、このフラグメント分析部は、少なくともフラグメントが血管異常部であるかノイズであるかを判別するものであるフラグメント分析部と
を有することを特徴とする装置。 - 請求項5に記載の血管形状分析装置において、この装置は、さらに、前記フラグメントの属性の判別結果に基づいて血管異常部を分割し表示する血管異常分割部を有することを特徴とする、装置。
- 請求項5に記載の血管形状分析装置において、前記標準血管生成部は、前記血管要素内の複数の離散的位置において算出された等価直径に基づいて血管直径の変化特性データを生成し、当該血管直径の変化特性データに近似曲線をフィッティングすることで前記標準血管モデルを構築することを特徴とする、装置。
- 請求項5に記載の血管形状分析装置において、前記フラグメント分析部は、前記フラグメントの属性として、血管病変の種類を判別することを特徴とする、装置。
- 請求項5に記載の血管形状分析装置において、前記教師付き機械学習は、前記判定結果をデータベース化・分析することにより、前記フラグメント幾何学的特徴情報を更新することを特徴する、装置。
- コンピュータが、医用画像を取得する取得工程と、
コンピュータが、前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化工程と、
コンピュータが、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割工程と、
コンピュータが、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測工程であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測工程と
を有することを特徴とする血管形状分析方法。 - 請求項10に記載の血管形状分析方法において、この方法は、さらに、
コンピュータが、前記形状計測データが閾値を超過するか否かに基づいて各血管形状に対する病変発症のリスクを判定する判定工程であって、前記閾値は血管の幾何学的形状情報に関する統計データに基づき予め設定されたものである、前記判定工程と、
コンピュータが、前記判定結果を出力する出力工程と
を有することを特徴とする、方法。 - 請求項11に記載の血管形状分析方法において、前記出力工程は、前記判定結果を前記血管領域と共に表示することを特徴とする、方法。
- 請求項10に記載の血管形状分析方法において、前記形状計測工程は、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面の径、凹凸度、曲げ度、及び捩れ度、並びに、血管要素間の血管分岐部分における分岐角度の少なくとも1つを算出するものである、方法。
- 請求項10に記載の血管形状分析方法において、前記形状計測工程は、前記血管中心線の走行方向に沿って血管断面積を計測しその等価直径を算出するものであり、
この方法は、さらに、
コンピュータが、前記等価直径に基づいて標準血管モデルを構築する標準血管生成工程と、
コンピュータが、前記医用画像と前記標準血管モデルとの差分画像を計算して当該差分画像に含まれるフラグメントをそれぞれ特定する差分画像計算工程と、
コンピュータが、前記フラグメントそれぞれの形状を計測し、当該計測されたフラグメントの形状から前記フラグメントの属性を教師付き機械学習により得られたフラグメント幾何学的特徴情報に基づいて判別し、当該判別結果を出力するフラグメント分析工程であって、このフラグメント分析工程は、少なくともフラグメントが血管異常部であるかノイズであるかを判別するものであるフラグメント分析工程と
を有することを特徴とする、方法。 - 請求項14に記載の血管形状分析方法において、この方法は、さらに、コンピュータが、前記フラグメントの属性の判別結果に基づいて血管異常部を分割し表示する血管異常分割工程を有することを特徴とする、方法。
- 請求項14に記載の血管形状分析方法において、前記標準血管生成工程は、前記血管要素内の複数の離散的位置において算出された等価直径に基づいて血管直径の変化特性データを生成し、当該血管直径の変化特性データに近似曲線をフィッティングすることで前記標準血管モデルを構築することを特徴とする、方法。
- 請求項14に記載の血管形状分析方法において、前記フラグメント分析工程は、前記フラグメントの属性として、血管病変の種類を判別することを特徴とする、方法。
- 請求項14に記載の血管形状分析方法において、前記教師付き機械学習は、前記判定結果をデータベース化・分析することにより、前記フラグメント幾何学的特徴情報を更新することを特徴する、方法。
- 血管形状を分析するコンピュータソフトウェアプログラムであって、以下の工程:
コンピュータが、医用画像を取得する取得工程と、
コンピュータが、前記医用画像の少なくとも一部に含まれる血管領域を抽出し、当該血管領域おける血管中心線を取得する細線化工程と、
コンピュータが、前記血管中心線に基づいて前記血管領域を血管要素毎に分割する分割工程と、
コンピュータが、前記血管要素それぞれの3次元形状を計測して形状計測データを生成する形状計測工程であって、前記形状計測データは、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面に関する情報、血管表面形状に関する情報、血管中心線の幾何学的特徴に関する情報のうちの少なくとも1つを含むものである、前記形状計測工程と
を実行させる命令を含むことを特徴とするコンピュータソフトウェアプログラム。 - 請求項19に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、さらに、
コンピュータが、前記形状計測データが閾値を超過するか否かに基づいて各血管形状に対する病変発症のリスクを判定する判定工程であって、前記閾値は血管の幾何学的形状情報に関する統計データに基づき予め設定されたものである、前記判定工程と、
コンピュータが、前記判定結果を出力する出力工程と
を実行させる命令を含むことを特徴とする、コンピュータソフトウェアプログラム。 - 請求項20に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、前記出力工程は、前記判定結果を前記血管領域と共に表示することを特徴とする、コンピュータソフトウェアプログラム。
- 請求項19に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、前記形状計測工程は、各血管要素の1若しくはそれ以上の位置における血管断面の径、凹凸度、曲げ度、及び捩れ度、並びに、血管要素間の血管分岐部分における分岐角度の少なくとも1つを算出するものである、コンピュータソフトウェアプログラム。
- 請求項19に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、前記形状計測工程は、前記血管中心線の走行方向に沿って血管断面積を計測しその等価直径を算出するものであり、
このコンピュータソフトウェアプログラムは、さらに、
コンピュータが、前記等価直径に基づいて標準血管モデルを構築する標準血管生成工程と、
コンピュータが、前記医用画像と前記標準血管モデルとの差分画像を計算して当該差分画像に含まれるフラグメントをそれぞれ特定する差分画像計算工程と、
コンピュータが、前記フラグメントそれぞれの形状を計測し、当該計測されたフラグメントの形状から前記フラグメントの属性を教師付き機械学習により得られたフラグメント幾何学的特徴情報に基づいて判別し、当該判別結果を出力するフラグメント分析工程であって、このフラグメント分析工程は、少なくともフラグメントが血管異常部であるかノイズであるかを判別するものであるフラグメント分析工程と
を実行させる命令を含むことを特徴とする、コンピュータソフトウェアプログラム。 - 請求項23に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、さらに、コンピュータが、前記フラグメントの属性の判別結果に基づいて血管異常部を分割し表示する血管異常分割工程を実行させる命令を含むことを特徴とする、コンピュータソフトウェアプログラム。
- 請求項23に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、前記標準血管生成工程は、前記血管要素内の複数の離散的位置において算出された等価直径に基づいて血管直径の変化特性データを生成し、当該血管直径の変化特性データに近似曲線をフィッティングすることで前記標準血管モデルを構築することを特徴とする、コンピュータソフトウェアプログラム。
- 請求項23に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、前記フラグメント分析工程は、前記フラグメントの属性として、血管病変の種類を判別することを特徴とする、コンピュータソフトウェアプログラム。
- 請求項23に記載のコンピュータソフトウェアプログラムにおいて、前記教師付き機械学習は、前記判定結果をデータベース化・分析することにより、前記フラグメント幾何学的特徴情報を更新することを特徴する、コンピュータソフトウェアプログラム。
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