JPWO2015136887A1 - 滑膜細胞増殖抑制剤及び滑膜細胞の増殖抑制方法 - Google Patents
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Abstract
滑膜細胞の増殖を適切に抑制できる滑膜細胞増殖抑制剤を提供する。式1を含有することを特徴とする。小胞体ストレス応答を阻害し、小胞体ストレスにて滑膜細胞をアポトーシスに誘導し、滑膜炎を抑制する。関節リウマチは滑膜細胞の異常な増殖により分泌されるサイトカインや蛋白分解酵素によって関節軟骨、ひいては関節を破壊するが、IRE1を抑制することにより、XBP1遺伝子の転写・活性化を阻害(小胞体ストレス応答を阻害)し、ERAD系を抑制することにより滑膜細胞をアポトーシスに導いて、滑膜細胞の増殖を抑制する。
Description
本発明は、滑膜細胞増殖抑制剤及び滑膜細胞の増殖抑制方法に関する。
関節リウマチ(以下「RA」と記載することもある。)は多発性の滑膜関節炎を主病変とする全身性炎症疾患である。30-50歳代の女性に好発するが、小児発症や高齢発症もみられる。日本における患者数は約70万人とされ、そのうち約1割は身障者とされている。倦怠感等の全身症状、朝のこわばりと共に関節の疼痛、腫張、発赤、圧痛を対称性に認める。関節炎による骨・関節破壊の進行は、靱帯の弛緩、腱鞘炎等と共に亜脱臼や種々の関節変形をもたらす。
関節リウマチの進行による病型は3型に分類され、多くは多周期型(70%)であるが、2年以内に寛解をみる単周期型(20%)や進行型(10%)もみられる。また、経過中種々の関節外症状もみられ、血管炎を基盤とする生命予後の不良な臨床病態は、日本では悪性関節リウマチの概念でとらえられている。
何らかの原因によって抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞)が活性化されると、HLAクラスIIと抗原をヘルパーT細胞に提示し、ヘルパーT細胞の活性化をもたらす。その活性化にはcostimulatory signal(CD28/B7)が必要で、これには接着分子が関与する。ヘルパーT細胞からB細胞、形質細胞へ分化し、リウマトイド因子等の自己抗体を産生する系が活性化される。リウマトイド因子を含む可溶性の免疫複合体は好中球により貪食され、活性化した好中球から産生されるプロスタグランジンやリソゾーム酵素、活性酸素等が組織障害をもたらす。また、抗原提示細胞であるマクロファージが活性化されるとIL-1やTNF-α等のサイトカインを産生する(関節リウマチ病理メカニズムの「滑膜炎症」)。そしてこれらは滑膜細胞の増殖、破骨細胞の活性化、線維芽細胞の増殖、軟骨細胞の障害をもたらす(関節リウマチ病理メカニズムの「滑膜増生」)。更に、滑膜細胞の増殖によりPGE2、IL-1、IL-6、IL-8、MCP-1等のプロスタグランジンやサイトカインが産生され、また軟骨細胞と共にコラゲナーゼ等を含むプロテアーゼ産生の亢進をもたらし、これらは骨破壊につながる(関節リウマチ病理メカニズムの「関節破壊」)。これらのサイトカインは全身の免疫や炎症にかかわる細胞の活性化にも関与する。
関節リウマチの早期寛解を目的としては、免疫調節薬、免疫抑制薬、生物学的製剤が提供されている。免疫調節薬には、D-ペニシラミン、ブシラミン、ロベンザリット、アクタリット等が含まれるが、全ての関節リウマチ患者に同等に効果がみられるわけではなく、更には重篤な副作用も存在する。免疫抑制剤には、メトトレキセート、ミゾリビン、レフルノミド等が含まれるが、これらの薬剤には時には重篤な副作用もみられる。
上記のようにIL-1とTNF-αは関節リウマチの滑膜炎と骨関節破壊に関与する重要なサイトカインであり、これらのサイトカインを阻害する生物学的製剤が注目されている。最も効果的な抗サイトカイン療法は、関節リウマチの炎症に中心的に働いているTNF-αに対する阻害薬であり、例えばキメラ型抗TNFモノクローナル抗体(マウス蛋白を25%含有)であるインフリキシマブが挙げられる。この生物学的製剤は全身投与されるものであり、その効果は約2週間目より認められることが多い。しかし、上述の生物学的製剤は投与を継続しているのに治療効果が減少することがある。これをエスケープ減少と呼ぶ。更には全身投与であるため、病初期の手指等の小関節に対し選択的に使用するには副作用を懸念しはばかられる傾向がある。また結核を含む感染症や過敏反応等の副作用も発生することがある。
近年、関節リウマチの病態について小胞体ストレスが関与していることが明らかとなってきている。正常な高次構造に折り畳まれなかったタンパク質(unfolded protein)が小胞体に蓄積し、それにより細胞への悪影響(ストレス)が生じることを小胞体ストレス(Endoplasmic reticulum (ER) stress)という。過剰もしくは持続する小胞体ストレスは細胞の正常な生理機能を妨げるため、細胞にはその障害を回避し、恒常性を維持する仕組みが備わっている。この小胞体ストレスに対する細胞の反応を小胞体ストレス応答 (unfolded protein response: UPR)という。小胞体膜上に存在する3つの1回膜貫通型タンパク質(IRE1, PERK, ATF6)が小胞体ストレスセンサーとして異常タンパク質の蓄積を感知し、細胞質あるいは核内にシグナルを伝える。
特許文献1には、B細胞自己免疫疾患を治療する薬剤としてIRE1阻害化合物が記載されており、そのB細胞自己免疫疾患の一具体例として関節リウマチが記載されている。また非特許文献1には、骨髄由来の未分化な細胞をマクロファージに分化させ、そのマクロファージに対する8-formyl-7-hydroxy-4-methylcoumarin(4μ8C)の効果が記載されている。
Toll-like receptor-mediated IRE1α activation as a therapeutic target for inflammatory arthritis The EMBO Journal(2013) 32, 2477-2490
しかし、特許文献1には、当該文献に記載されているIRE1阻害化合物を用いた関節リウマチの治療に関する実施例がなく、当該文献記載のIRE1阻害化合物の関節リウマチへの治療効果が不明である。また、非特許文献1には関節外でのマクロファージの免疫応答が記載されているにすぎない。上記のように関節リウマチの病理メカニズムは滑膜炎症・滑膜増生・関節破壊の3段階に分けられ、言うまでもなく関節リウマチ治療の最終目標は関節破壊の抑制にある。従来の関節リウマチ治療薬の大半は第1段階の炎症の抑制に主眼を置いたものであるが、炎症には非常に多数の因子が関与しているためある因子の経路を抑制しても他の因子の経路が活性化することがあり炎症抑制が継続しない場合がある。そこで第2段階の滑膜細胞の増殖を抑制することにより関節破壊を効果的に抑制する手法が望まれる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、滑膜細胞の増殖を適切に抑制できる滑膜細胞増殖抑制剤及び増殖抑制方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる滑膜細胞増殖抑制剤は、式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有することを特徴とする。
本発明にかかる滑膜細胞の増殖抑制方法は、式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有する薬剤を使用することを特徴とする。
本発明によれば、滑膜細胞の増殖を適切に抑制できる滑膜細胞増殖抑制剤及び増殖抑制方法が得られる。これにより、関節リウマチに対して十分な治療効果を有する関節リウマチ治療剤が得られる。本発明にかかる滑膜細胞増殖抑制剤を関節リウマチの治療に適用すれば、早期治療効果の発揮が期待され、継続した治療効果を有し、従来のごとく全身投与を行うことなく関節リウマチを発症している箇所に投与することができるので、体全体への影響を少なくし、局所のみを治療することができる。即ち、全身投与による生物学的製剤の場合は1回の点滴に時間がかかるが、本発明を用いる関節リウマチ治療剤は局所注射できるため1回の投与が数分で終了する。また全身点滴静注投与による生物学的製剤の場合と比較して、感染症やアレルギー等の副作用の発生を軽減することができる。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
本実施形態にかかる滑膜細胞増殖抑制剤は、式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有する。
式1にかかる化合物は、STF-083010(N-[(2-Hydroxynaphthalen-1-yl)methylidene]thiophene-2-sulfonamide)である。また、式2にかかる化合物は、3′-Formyl-4′-hydroxy-5′-methoxybiphenyl-3-carboxamideである。
本発明において関節リウマチの予防及び/又は治療方法は、式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有する薬剤を使用することを特徴とする。
本明細書において「治療」には、症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。「予防」とは症状の発症の防止又は遅延をいう。
細胞が有する蛋白質分泌機能を正常に保つためには、分泌された蛋白質が正常に折りたたまれることと、異常な折り畳み構造となってしまった蛋白質を除去・分解する機構が必要である。これらの作業はともに小胞体内で行われるが、そこには蛋白質の恒常性を維持するための調節機構が存在する。異常な折り畳み構造の蛋白質が小胞体内に蓄積することを小胞体ストレスと呼ぶ。小胞体ストレスは、細胞内外の環境変化によって引き起こされ、例えば細胞への栄養飢餓、ウイルス感染、酸化ストレス刺激等によってタンパク質の正常な折り畳が阻害され、小胞体ストレスとなる。蛋白質の恒常性を維持する調節機構は小胞体ストレスに対応する細胞の生理応答と考えられ、小胞体ストレス応答(UPR)と称されている。小胞体ストレス応答機構は、(i)翻訳抑制、(ii)小胞体分子シャペロンの転写誘導、(iii)小胞体関連分解(ERAD)による異常タンパク質の分解という3つの反応から構成されている(図1)。そして小胞体ストレスを感知する主なセンサーは、小胞体膜上に3つ存在し、それぞれIRE1、PERK、ATF6と言われる。
IRE1は、小胞体膜貫通型キナーゼであり、細胞質側のC-末端にはRNaseドメインがある。異常タンパク質を感知したIRE1は自己リン酸化により立体構造が変化し、その結果、C末端のRNaseドメインが活性化して、基質であるXBP1(X-box binding protein1)mRNAをスプライシングする。26塩基がスプライスアウトされたXBP1 mRNA(spliced form)は読み枠が変化し、このmRNAから転写因子として機能する活性型XBP1タンパク質が産生される。転写活性能を持つようになったXBP1によって転写誘導される分子は、小胞体シャペロン群と、ERADに関わる一連の遺伝子群である。なお、XBP1はイントロンが短いため翻訳抑制作用を持たず、前駆体型XBP1 mRNAも翻訳される。このようにIRE1-XBP1経路は、異常タンパク質を小胞体から排除・分解し、小胞体の恒常性を復元させる働きがある。
本明細書において、IRE1阻害剤とは、IRE1の機能を阻害する薬剤であり、具体的には上記のIRE1-XBP1-EDEM経路の流れを阻害する機能を有する薬剤である。
後述の実施例にて示されるように、本発明者は小胞体ストレスセンサーのうち関節リウマチにおける主たる治療標的がIRE1にあることを突き止めた。関節リウマチは滑膜細胞の増殖により軟骨細胞の障害をもたらすものであるが、本発明者は、小胞体ストレスセンサーであるIRE1を抑制することにより、XBP1遺伝子の活性化を阻害(小胞体ストレス応答を阻害)し、これにより滑膜細胞をアポトーシスに導いて、滑膜細胞の増殖を抑制できることを新知見として見いだし、かかる事実に基づいて本発明を完成させた。
図2には、関節リウマチの病態メカニズムが記載されている。関節リウマチは多因子疾患と考えられており、遺伝的背景・感染・タバコ等を機に発症する。発症すると、自己の何らかの抗原に対し、自己免疫反応を起こし始める。抗原提示細胞が、自己を非自己と認識し、B細胞及びT細胞を活性化させる。B細胞は抗体を産生し、T細胞はマクロファージ(Mφ)を活性化させる。活性化されたMφは腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)αやインターロイキン(IL)-1,6等のさまざまな炎症性サイトカインを産生する(上流での応答)。TNFαやIL-1は、マクロファージ自身を活性化させるばかりでなく、滑膜を形作る線維芽細胞をも活性化して増殖させる。増殖した滑膜線維芽細胞は、IL-6等のサイトカインを大量に放出する他、関節組織を破壊するタンパク分解酵素を産生し、関節内でパンヌスと呼ばれる絨毛のような組織を形成して罹患関節の骨や軟骨を破壊する(下流での応答)。
非特許文献1であるThe EMBO Journalで報告されている内容は、骨髄由来の未分化な細胞をMφに分化させ、4μ8Cを投与した場合におけるMφでのIRE1の働きを報告している。つまり関節外でのMφの免疫応答(上流での応答)を示している。それに対して本願発明では、関節リウマチ患者の膝滑膜組織から分離した滑膜細胞を用いており、式1又は式2にかかる化合物を投与した場合における滑膜細胞でのIRE1の働きを示している(下流での応答)。即ち、本願発明では、関節内における炎症性サイトカインによる滑膜増殖を観察し、式1又は式2にかかる化合物を関節内投与した場合における滑膜細胞のアポトーシス亢進(滑膜炎の抑制)を規定している。抗リウマチ薬の投与を続け関節リウマチがよくコントロールされていても、治療法を変えないのに再び活動性が亢進してくることがあり、この現象はエスケープ現象と呼ばれる。エスケープ現象が現れる場合、服用開始後2-3年で関節リウマチの活動が亢進する。しかしながら本発明においては、式1又は式2にかかる化合物を関節内投与することにより滑膜細胞のアポトーシスを亢進させ、免疫反応を起こすための滑膜細胞が存在しない状況を作出するので、後述の実施例にて示されるように、このようなエスケープ現象を回避することができる。
本実施形態にかかる滑膜細胞増殖抑制剤は、その製剤形態は特に限定されるものではないが、好ましくは注射用製剤である。注射用製剤とすることにより、手指等の小関節に対しても簡便に適用することができる。
注射用製剤は、例えば、液剤、乳濁液、又は懸濁液の形態で調製され、血液に対して等張にされる。液体、乳濁液又は懸濁液の形態の製剤は、例えば、水性媒体、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いて調製される。水性媒体としては、水又は水を含有する媒体が挙げられる。水としては、滅菌水が使用される。水を含有する媒体としては、例えば、生理食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)又は乳酸配合リンゲル液等が挙げられる。
注射用製剤において許容される含有量は、副作用等の障害が生じない限り特に限定されるものではないが、用量として例えば0.01〜10mg/mL、好ましくは0.05〜5mg/mLである。なお、関節リウマチ治療薬として著名なメトトレキサート(MTX)は、原則1週間あたり6mgで経口投与されるが、その用法としては1週間あたりで2-4回に分割して12時間間隔で1-2日間かけて投与される。しかしながら本発明においては免疫反応を起こすための滑膜細胞が存在しない状況を作出するので、従来と比較して薬効の持続性を大幅に向上させることができ、用法として特に限定されるものではないが例えば6週間〜18週間の間隔をおいて投与することが可能である。
注射用製剤において、当技術分野で通常使用されている添加剤を適宜用いることができる。添加剤としては、例えば、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、保存剤、キレート剤、抗酸化剤、又は溶解補助剤等が挙げられる。
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン等が挙げられる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤等が挙げられる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、クロロクレゾール等が挙げられる。キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。注射用製剤にはpH調整剤が含有されていても良い。pH調整剤は、酸類であっても塩基類であってもよい。具体的には、酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸等が挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
(実施例1)
実施例1では、IRE1阻害剤の一種であるSTF-083010を使用したin vivoでの関節リウマチの治療効果実験結果を示す。
実施例1では、IRE1阻害剤の一種であるSTF-083010を使用したin vivoでの関節リウマチの治療効果実験結果を示す。
マウスに抗原としてメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)10μg/bodyを背部尾側皮下投与して1次感作し、その10日後にmBSA 20μg/jointを膝関節内に注入して二次感作し、関節炎を惹起することにより、関節リウマチ(抗原誘導性関節炎:AIA)モデルマウスを作成した。この手法は世界的に広く受け入れられている方法である。図3に示すように、17日目のマウスの膝では、滑膜炎が活発に起っている組織像が確認できた。しかしながら、11日目にマウス膝関節内にSTF-083010を投与した場合は、図4に示すように、劇的にその症状の改善が認められた。
図5は関節炎指数を示すものであり、AIA単独群は、10日後にmBSA 20μg/jointを膝関節内に注入して二次感作させ、17日目における関節炎指数を示したものである。また+STF-083010 10μM群は、10日後にmBSA 20μg/jointを膝関節内に注入して二次感作させ、その翌日である11日目にSTF-083010をマウス膝関節内に10μM注入した場合の関節炎指数を示したものである。また同様に+STF-083010 100μM群は、10日後にmBSA 20μg/jointを膝関節内に注入して二次感作させ、その翌日である11日目にSTF-083010をマウス膝関節内に100μM注入した場合の関節炎指数を示したものである。
なお、関節炎指数は、関節リウマチモデルマウスの膝切片を用いてスコアリングされるものであり、滑膜炎、関節内の炎症性細胞の出現、軟部組織の炎症、軟骨損傷、骨破壊の5つの項目につき、0〜3点でひどければ3点と評価し、合計で15点が最大となるものである。図5に示されるように、STF-083010を10μM用いた場合も100μM用いた場合も、劇的に関節炎指数が減少することが示された。なお、これらのIRE1阻害剤の濃度は、副作用を避けさらに低下させて投与されても良い。
(実施例2)
実施例2では、小胞体ストレスセンサーIRE1、PERK、ATF6のうち、関節リウマチにおける主たる治療標的がIRE1にあることを突き止めた実験結果を示す。
実施例2では、小胞体ストレスセンサーIRE1、PERK、ATF6のうち、関節リウマチにおける主たる治療標的がIRE1にあることを突き止めた実験結果を示す。
リウマチ患者の整形外科関節手術時に、同意が得られたリウマチ患者の膝関節から採取した滑膜組織から滑膜細胞を分離してシャーレ上で培養し、刺激を与えた。細胞は、0時間、3時間、6時間、12時間それぞれの培養液に浸された後に、細胞を回収してPCR法にてATF6、PERK、IRE1の細胞内でのmRNAの発現を測定した。
図6はATF6の場合、図7はPERKの場合、図8はIRE1の場合を示す。DMSOは溶液自体に毒性がないことを示すコントロール群である。+IL-1+TNF-αは、細胞培養液にIL-1及びTNF-αを加えることを示しており、リウマチ患者由来の細胞をより生体に近い炎症状況を作り出している。図6〜図8に示されるように、IRE1の場合はATF6やPERKの場合と異なり、リウマチの炎症がおこることで、IRE1だけがコントロールと違う動きを示した。つまり、関節リウマチ患者の滑膜細胞において、滑膜炎が起っている状態では、IRE1が炎症反応の主な調節因子になっている可能性が示唆された。また、IL-1、TNF-αに更にSTFを加えることで、特にIRE1の発現が低下していることを示し、これはIRE1を選択的に阻害している証拠を示すものと考えられる。
(実施例3)
実施例3では、EDEM及びERdj5の場合において、同様の手法を用いてそれぞれのmRNAの発現を測定した。小胞体内での蛋白分解機構ERAD系を直接制御しているのが、IRE1の下流にあるEDEMと言われている。図9に示されるように、EDEMもIRE1と同調するようにSTF-083010を加えることで、12時間後にはかなり発現が低下していることが示された。
実施例3では、EDEM及びERdj5の場合において、同様の手法を用いてそれぞれのmRNAの発現を測定した。小胞体内での蛋白分解機構ERAD系を直接制御しているのが、IRE1の下流にあるEDEMと言われている。図9に示されるように、EDEMもIRE1と同調するようにSTF-083010を加えることで、12時間後にはかなり発現が低下していることが示された。
ERdj5はEDEM1に結合するタンパク質として同定された小胞体に内在する酸化還元酵素であり、誤ったシステイン残基の間で形成されたジスルフィド結合を還元することで異常タンパク質の小胞体関連分解を促進する。図10に示されるように、ERdj5ではSTF-083010を加えても発現低下は示されなかった。
(実施例4)
実施例4では、TUNEL法陽性アポトーシス細胞を測定した。TUNEL法とは、アポトーシス(プログラムされた細胞の死)の過程で生じる断片化されたDNAを、TUNEL(TdT-mediated dUTP nick end labeling)法により検出する方法である。断片化されたDNAをビオチン標識ヌクレオチドで標識した後、HRP標識ストレプトアビジンを反応させて染色した。図11に示されるように、STF-083010を加えることで、12時間後にはシャーレ内のリウマチ患者由来の滑膜細胞の50%以上が、アポトーシスを起こしていることが示された。
実施例4では、TUNEL法陽性アポトーシス細胞を測定した。TUNEL法とは、アポトーシス(プログラムされた細胞の死)の過程で生じる断片化されたDNAを、TUNEL(TdT-mediated dUTP nick end labeling)法により検出する方法である。断片化されたDNAをビオチン標識ヌクレオチドで標識した後、HRP標識ストレプトアビジンを反応させて染色した。図11に示されるように、STF-083010を加えることで、12時間後にはシャーレ内のリウマチ患者由来の滑膜細胞の50%以上が、アポトーシスを起こしていることが示された。
(実施例5)
実施例5では、再発性AIAモデルマウスでのSTF-083010の有用性を確認した。再発性のAIAモデルマウスとして適切な動物モデルは過去に報告されていないが、再発性AIAモデルマウスについては以下のように作製した。即ち、1日目にマウスに抗原としてmBSA 10μg/bodyを背部尾側皮下投与して1次感作し、その10日後にmBSA 20μg/jointを膝関節内に注入して二次感作し、関節炎を惹起させた。11日目にSTF-083010を用いて、いったん関節炎を抑えた。コントロールモデルは、STF-083010の代わりにDMSOを関節内に投与した。18日目に、再度関節内にmBSA 20μg/jointを投与して関節炎を惹起させた。すると、再発性AIAモデル群では、関節炎や軟骨損傷は認めなかった(図12(A)(B))。図12(A)は、再発性AIAモデルの膝関節内の関節炎の状態を示す免疫染色図であり、図12(B)は、(A)の部分拡大図である。これらの結果を半定量的に判定すると、再発性AIAモデルでは有意に関節炎指数が低かった(図13)。図13は、再発性AIAモデルの関節炎指数を示す図である。これにより、最初のSTF-083010の投与にて、mBSAに対する免疫反応を起こすための滑膜細胞が存在しない可能性が示された。
実施例5では、再発性AIAモデルマウスでのSTF-083010の有用性を確認した。再発性のAIAモデルマウスとして適切な動物モデルは過去に報告されていないが、再発性AIAモデルマウスについては以下のように作製した。即ち、1日目にマウスに抗原としてmBSA 10μg/bodyを背部尾側皮下投与して1次感作し、その10日後にmBSA 20μg/jointを膝関節内に注入して二次感作し、関節炎を惹起させた。11日目にSTF-083010を用いて、いったん関節炎を抑えた。コントロールモデルは、STF-083010の代わりにDMSOを関節内に投与した。18日目に、再度関節内にmBSA 20μg/jointを投与して関節炎を惹起させた。すると、再発性AIAモデル群では、関節炎や軟骨損傷は認めなかった(図12(A)(B))。図12(A)は、再発性AIAモデルの膝関節内の関節炎の状態を示す免疫染色図であり、図12(B)は、(A)の部分拡大図である。これらの結果を半定量的に判定すると、再発性AIAモデルでは有意に関節炎指数が低かった(図13)。図13は、再発性AIAモデルの関節炎指数を示す図である。これにより、最初のSTF-083010の投与にて、mBSAに対する免疫反応を起こすための滑膜細胞が存在しない可能性が示された。
関節リウマチの治療に利用できる。
Claims (6)
- 式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有することを特徴とする滑膜細胞増殖抑制剤。
- 関節リウマチの治療に用いられることを特徴とする請求項1に記載の滑膜細胞増殖抑制剤。
- 関節リウマチ治療薬のエスケープ現象を回避することを特徴とする請求項2に記載の滑膜細胞増殖抑制。
- 式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有する薬剤を使用することを特徴とする滑膜細胞の増殖抑制方法。
- 式1又は式2の少なくとも何れか一方の化合物を含有する薬剤を使用することを特徴とする関節リウマチの予防及び/又は治療方法。
- 0.01〜10mg/mLの前記薬剤を6週間〜18週間の間隔をおいて投与することを特徴とする請求項5に記載の関節リウマチの予防及び/又は治療方法。
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