JPWO2010110318A1 - 核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤 - Google Patents

核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2010110318A1
JPWO2010110318A1 JP2011506086A JP2011506086A JPWO2010110318A1 JP WO2010110318 A1 JPWO2010110318 A1 JP WO2010110318A1 JP 2011506086 A JP2011506086 A JP 2011506086A JP 2011506086 A JP2011506086 A JP 2011506086A JP WO2010110318 A1 JPWO2010110318 A1 JP WO2010110318A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rna
stent restenosis
lipid
lipid bilayer
liposome
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2011506086A
Other languages
English (en)
Inventor
信宏 八木
信宏 八木
寛子 杉下
寛子 杉下
一郎 眞鍋
一郎 眞鍋
永井 良三
良三 永井
克仁 藤生
克仁 藤生
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Tokyo NUC
Kyowa Kirin Co Ltd
Original Assignee
Kyowa Hakko Kirin Co Ltd
University of Tokyo NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyowa Hakko Kirin Co Ltd, University of Tokyo NUC filed Critical Kyowa Hakko Kirin Co Ltd
Publication of JPWO2010110318A1 publication Critical patent/JPWO2010110318A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/70Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
    • A61K31/7088Compounds having three or more nucleosides or nucleotides
    • A61K31/7105Natural ribonucleic acids, i.e. containing only riboses attached to adenine, guanine, cytosine or uracil and having 3'-5' phosphodiester links
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/70Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
    • A61K31/7088Compounds having three or more nucleosides or nucleotides
    • A61K31/713Double-stranded nucleic acids or oligonucleotides
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K48/00Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy
    • A61K48/005Medicinal preparations containing genetic material which is inserted into cells of the living body to treat genetic diseases; Gene therapy characterised by an aspect of the 'active' part of the composition delivered, i.e. the nucleic acid delivered
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/10Drugs for disorders of the cardiovascular system for treating ischaemic or atherosclerotic diseases, e.g. antianginal drugs, coronary vasodilators, drugs for myocardial infarction, retinopathy, cerebrovascula insufficiency, renal arteriosclerosis

Abstract

(i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤等を提供する。RNAを封入したリポソームは、例えば、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、該脂質二重膜は、例えば中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である。

Description

本発明は、動脈硬化性疾患治療剤および動脈硬化性疾患治療用組成物等に関する。
動脈が肥厚し硬化した状態を動脈硬化といい、これによって引き起こされる様々な病態を動脈硬化症といい、動脈硬化症に起因する疾患を動脈硬化性疾患(例えば、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害 (脳卒中、ラクナ梗塞も含む脳梗塞、脳血栓、脳出血、クモ膜下出血)などが該当)という。
動脈硬化の初期病変では、何らかの原因で内皮が障害を受け、細胞表面に単球が接着する。単球が内皮下に侵入してマクロファージに分化しコレステロールを取り込み泡沫細胞となり、脂肪線条(fatty streak)が形成される。更に血管平滑筋細胞が内膜に遊走してコラーゲン等の繊維成分を分泌し、線維性プラーク(fibrous plaque)を形成する(障害反応仮説、Ross,R.:Nature 362:801,1993)。動脈硬化の生じている部位(動脈硬化部位)では、新生血管の増殖、マクロファージの集積および平滑筋細胞の遊走・増殖による新生内膜増殖が認められる。また、動脈硬化に伴い、血管の負荷に反応して血管リモデリングが生じることが知られている。
また、急性心筋梗塞や狭心症等の虚血性心疾患に対する治療として、これまで経皮経管冠動脈形成術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:PTCA)が広く行なわれてきた。しかしPTCA施術後の数ヶ月以内に約30〜40%の患者に再び狭窄が起こることが知られている。これに対し、狭窄部をバルーンカテーテルで拡張した後、金属製のステントを留置する経皮的冠動脈ステント留置術が開発され再狭窄率は軽減されたが、治療後6ヶ月以内に20〜30%でステント内に内皮細胞の過形成により再狭窄が起こるという報告がある(N Engl J Med. 1994 Aug 25;331(8):489-95参照)。更に、ステント内再狭窄部位拡張後の再々狭窄率も高く深刻な問題となっている。なおステント再狭窄部位では、新生血管の増殖、マクロファージの集積および平滑筋細胞の遊走・増殖による新生内膜増殖が認められる。(Circulation.1998;98:224-233参照)
動脈硬化部位やステント再狭窄部位において、動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子として、新生血管の増殖または新生内膜増殖に関連した遺伝子等が発現しており(特許文献1、2および非特許文献1、2、3参照)、新生血管の増殖または新生内膜増殖に関連した遺伝子等の発現を抑制することで、動脈硬化性疾患を治療もしくは予防またはステント再狭窄を抑制することが期待されている。
しかしながら、動脈硬化性疾患やステント再狭窄に関連する遺伝子等の発現を抑制するためには、動脈硬化部位やステント再狭窄部位に薬物を送達させる必要があり、例えば薬物として核酸を用いた場合には、生体内での安定性が極めて低いことから、動脈硬化部位やステント再狭窄部位に高い選択性をもって送達させなければならないが、これまでそのような送達手段の報告はなかった。
一方、核酸の細胞内への送達手段として、核酸封入リポソーム(リポソーム内に核酸を封入したリポソーム)が報告されている(特許文献3〜5および非特許文献4参照)。特許文献3では、核酸等を封入するリポソームの製造方法として、例えば、カチオン性脂質をクロロホルムに予め溶解し、次いでオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の水溶液とメタノールを加えて混合後、遠心分離することでクロロホルム層にカチオン性脂質/ODNの複合体を移行させ、さらにクロロホルム層を取り出し、これにポリエチレングリコール化リン脂質と中性の脂質と水を加えて油中水型(W/O)エマルジョンを形成し、逆相蒸発法で処理してODN内包リポソームを製造する方法が報告され、特許文献4および非特許文献4では、ODNをpH3.8のクエン酸水溶液に溶解し、脂質(エタノール中)を加え、エタノール濃度を20v/v%まで下げてODN内包リポソームを調製し、サイジングろ過し、透析によって、過剰のエタノールを除去した後、試料をさらにpH7.5にて透析してリポソーム表面に付着したODNを除去してODN内包リポソームを製造する方法が報告され、それぞれ核酸等の有効成分を封入したリポソームが製造されている。
これらに対して特許文献5では、液体中で微粒子を脂質二重膜で被覆する方法で核酸等の有効成分を封入したリポソームを製造することが報告されている。該方法においては、微粒子が分散し、かつ脂質が溶解した極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の濃度を減少させることによって、微粒子が脂質二重膜で被覆されており、液体中において被覆が行われ、例えば静脈注射用微粒子等に好適な大きさの脂質二重膜で被覆された微粒子(被覆微粒子)が、すぐれた効率で製造されている。また、特許文献5では微粒子の例として例えば水溶性薬物とカチオン性脂質からなる静電的相互作用により形成される複合体が例示されている。複合粒子を被覆した被覆微粒子の粒子径は、被覆される複合粒子に応じて異なるが、ODN-脂質複合体を被覆して得られた被覆微粒子は、粒子径が小さく、注射剤として使用可能であること、該被覆微粒子は、静脈内に投与した場合、高い血中滞留性を示し、腫瘍組織に多く集積したことが報告されている。
しかしながら、特許文献3〜5および非特許文献4のいずれにも、動脈硬化部位やステント再狭窄部位に対して、選択的に核酸を送達することに関しての報告はない。
特表2003-509427号公報 特表2005-525802号公報 特表2002-508765号公報 特表2002-501511号公報 国際公開第02/28367号パンフレット
サーキュレーション (Circulation), (米国), 2000年, 第102巻, 第20号, p.2528-2534 ネイチャー・メディシン (Nature Medicine), (米国), 2002年, 第8巻, 第8号, p.856-863 アナルズ・オブ・ザ・ニュー・ヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシズ (Annals of the New York Academy of Sciences), (米国), 2001年, 947巻, p.56-66 バイオキミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochemica et Biophysica Acta), 2001年, 第1510巻, p.152-166
本発明の目的は、核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤等を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(60)に関する。
(1) (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、組成物。
(2) リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、(1)記載の組成物。
(3) RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、(1)または(2)記載の組成物。
(4) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子が、血管内皮増殖因子、血管内皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ;MAPK)シグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、クルッペル様因子(KLF)、サバイビン、Ets転写因子、核因子および低酸素誘導因子のいずれかについての遺伝子である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLFについてのmRNAである、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(6) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLF5 mRNAである、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(7) mRNAがヒトのmRNAである、(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物。
(8) RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能である、(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
(9) 極性有機溶媒がアルコールである、(8)記載の組成物。
(10) 極性有機溶媒がエタノールである、(8)記載の組成物。
(11) リード粒子が、カチオン性物質を含むリード粒子であり、脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(8)〜(10)のいずれかに記載の組成物。
(12) RNAを封入したリポソームが、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
(13) カチオン性物質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、(11)または(12)記載の組成物。
(14) 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、(11)〜(13)のいずれかに記載の組成物。
(15) 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、(11)〜(14)のいずれかに記載の組成物。
(16) (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(17) リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、(16)記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(18) RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、(16)または(17)記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(19) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子が、血管内皮増殖因子、血管内皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、MAPキナーゼシグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、KLF、サバイビン、Ets転写因子、核因子および低酸素誘導因子のいずれかについての遺伝子である、(16)〜(18)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(20) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLFについてのmRNAである、(16)〜(18)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(21) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLF5 mRNAである、(16)〜(18)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(22) mRNAがヒトのmRNAである、(16)〜(21)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(23) RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能である、(16)〜(22)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(24) 極性有機溶媒がアルコールである、(23)記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(25) 極性有機溶媒がエタノールである、(23)記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(26) リード粒子が、カチオン性物質を含むリード粒子であり、脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(23)〜(25)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(27) RNAを封入したリポソームが、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(16)〜(22)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(28) カチオン性物質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、(26)または(27)記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(29) 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、(26)〜(28)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(30) 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、(26)〜(29)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
(31) (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、組成物を哺乳動物に投与する動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(32) リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、(31)記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(33) RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、(31)または(32)記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(34) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子が、血管内皮増殖因子、血管内皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、MAPキナーゼシグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、KLF、サバイビン、Ets転写因子、核因子および低酸素誘導因子のいずれかについての遺伝子である、(31)〜(33)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(35) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLFについてのmRNAである、(31)〜(33)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(36) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLF5 mRNAである、(31)〜(33)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(37) mRNAがヒトのmRNAである、(31)〜(36)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(38) RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能である、(31)〜(37)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(39) 極性有機溶媒がアルコールである、(38)記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(40) 極性有機溶媒がエタノールである、(38)記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(41) リード粒子が、カチオン性物質を含むリード粒子であり、脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(38)〜(40)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(42) RNAを封入したリポソームが、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(31)〜(37)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(43) カチオン性物質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、(41)または(42)記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(44) 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、(41)〜(43)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(45) 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、(41)〜(44)のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
(46) (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、組成物の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤の製造のための使用。
(47) リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、(46)記載の使用。
(48) RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、(46)または(47)記載の使用。
(49) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子が、血管内皮増殖因子、血管内皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、MAPキナーゼシグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、KLF、サバイビン、Ets転写因子、核因子および低酸素誘導因子のいずれかについての遺伝子である、(46)〜(48)のいずれかに記載の使用。
(50) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLFについてのmRNAである、(46)〜(48)のいずれかに記載の使用。
(51) 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLF5 mRNAである、(46)〜(48)のいずれかに記載の使用。
(52) mRNAがヒトのmRNAである、(46)〜(51)のいずれかに記載の使用。
(53) RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能である、(46)〜(52)のいずれかに記載の使用。
(54) 極性有機溶媒がアルコールである、(53)記載の使用。
(55) 極性有機溶媒がエタノールである、(53)記載の使用。
(56) リード粒子が、カチオン性物質を含むリード粒子であり、脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(53)〜(55)のいずれかに記載の使用。
(57) RNAを封入したリポソームが、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、(46)〜(52)のいずれかに記載の使用。
(58) カチオン性物質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、(56)または(57)記載の使用。
(59) 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、(56)〜(58)のいずれかに記載の使用。
(60) 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、(56)〜(59)のいずれかに記載の使用。
本発明の動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAを封入したリポソームを含有する組成物を、ほ乳類等に投与することにより、動脈硬化部位やステント再狭窄部位において、動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子、例えば新生血管の増殖または新生内膜増殖に関連した遺伝子等の発現を抑制することができる。また、動脈硬化部位やステント再狭窄部位において、新生血管の増殖または新生内膜増殖に関連した遺伝子等の発現を抑制することで、動脈硬化性疾患を治療もしくは予防またはステント再狭窄を抑制することができる。
実施例1で得られた組成物を投与した場合について、粥状動脈硬化症モデルであるApoE不全マウスにおける、動脈硬化部位の凍結切片の位相差顕微鏡像(左)および共焦点レーザー顕微鏡像(右)を示す。 実施例2で得られた組成物を投与した場合について、総頚動脈結紮モデルのマウスにおける、頚動脈の凍結切片のH/E染色像(左)および共焦点レーザー顕微鏡像(右)を示す。 比較例1で得られた組成物を投与した場合について、総頚動脈結紮モデルのマウスにおける、頚動脈の凍結切片のH/E染色像(左)および共焦点レーザー顕微鏡像(右)を示す。 生理食塩水を投与した場合について、総頚動脈結紮モデルのマウスにおける、頚動脈の凍結切片のH/E染色像(左)および共焦点レーザー顕微鏡像(右)を示す。 実施例3で得られた組成物を投与した場合に、総頚動脈結紮モデルのマウスにおいて、新生内膜形成を抑制することを示した。縦軸は内膜と中膜の面積の和を示した。なお、*は、統計解析(student t テスト)の結果、実施例3で得られた組成物を投与した群と比較例2で得られた組成物を投与した群との間で有意差p値<0.04 の認められたことを示す。
本発明で用いられる動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子としては、動脈硬化部位やステント再狭窄部位においてmRNAを産生して発現する動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連した遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、新生血管の増殖または新生内膜増殖に関連した遺伝子等があげられ、好ましくは、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、以下VEGFと略す)、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor、以下VEGFRと略す)、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、MAPキナーゼシグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、クルッペル様因子(Kruppel-like factor、以下KLFと略す)、サバイビン、Ets転写因子、核因子、低酸素誘導因子等のタンパク質をコードする遺伝子等があげられ、具体的にはVEGF遺伝子、VEGFR遺伝子、線維芽細胞増殖因子遺伝子、線維芽細胞増殖因子受容体遺伝子、上皮成長因子遺伝子、上皮成長因子受容体遺伝子、MAPキナーゼシグナル伝達関連因子遺伝子、血小板由来増殖因子遺伝子、血小板由来増殖因子受容体遺伝子、肝細胞増殖因子遺伝子、肝細胞増殖因子受容体遺伝子、KLF遺伝子、サバイビン遺伝子、Ets転写因子遺伝子、核因子遺伝子、低酸素誘導因子遺伝子等があげられ、好ましくはVEGF遺伝子、VEGFR遺伝子、KLF遺伝子等があげられ、より好ましくはKLF遺伝子があげられ、さらにより好ましくはKLF5遺伝子があげられる。
KLFはKLFファミリーを含む。該ファミリーは、C末端のジンク・フィンガー(zinc finger)モチーフを特徴とする、転写因子のファミリーであり、KLF1、KLF2、KLF3、KLF4、KLF5、KLF6、KLF7、KLF8、KLF9、KLF10、KLF11、KLF12、KLF13、KLF14、KLF15またはKLF16等が含まれる。哺乳類において、KLFファミリーは、様々な組織や細胞、例えば赤血球、血管内皮細胞、平滑筋、皮膚またはリンパ球等の分化に重要であること、また癌、心血管疾患、肝硬変、腎疾患または免疫疾患等の各種疾患の病態形成に重要な役割を果たしていることが報告されている[ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry),2001年,第276巻,第37号,p.34355-34358、ジェノム・バイオロジー(Genome Biology),2003年,第4巻,第2号,p.206]。
KLFファミリーのうちのKLF5は、BTEB2(basic transcriptional element binding protein 2)あるいはIKLF(intestinal-enriched Kruppel-like factor)ともよばれる。血管平滑筋におけるKLF5の発現は、発生段階で制御を受けており、胎児の血管平滑筋では、高い発現を示すのに対し、正常な成人の血管平滑筋では発現が見られなくなる。また、バルーンカテーテルによる削剥後に新生した血管内膜の平滑筋では、KLF5の高い発現がみられ、動脈硬化や再狭窄の病変部の平滑筋でもKLF5の発現がみられる[サーキュレーション(Circulation), 2000年, 第102巻, 第20号, p.2528-2534]。
VEGFは、1983年に、Ferraraらにより発見された血管内皮細胞に特異的な増殖因子である。同年に、Senger、Dvorakらにより血管透過性作用を有する因子が発見されVPF(vascular permeability factor)と名付けられた。タンパク質のアミノ酸配列解析の結果、2つは同一のものであることがわかった。VEGFは血管の内側にある内皮細胞の受容体に結合して増殖を促す。VEGFは胎児期に血管をつくるだけではなく、病的な血管をつくるときにも作用している。例えば癌がある程度大きくなって酸素不足になると、VEGFとその受容体が増加して血管新生が起こる。また血管透過性亢進作用により癌性腹水の原因になるとも考えられている。糖尿病が進行すると網膜に新生血管ができるが、これにもVEGFが働いている。つまり、新しい血管をつくるタンパクである。低酸素状態によりその発現が誘導されることにより血管新生への重要な役割を担っているといえる。また血管新生のみならず、腫瘍または炎症性病変等にみられる浮腫のメカニズムを説明するうえで本因子の関与が強く示唆されている。
一方、VEGFRは血管内皮細胞や癌細胞自身が持っており、VGEFが受容体と結合することにより受容体自身がリン酸化(活性化)され、その結果細胞内に増殖や遊走等様々な命令が伝達される。この受容体のリン酸化を阻害することで細胞内の伝達を阻害し、血管新生を阻害することが知られている。
本発明で用いられるRNAとしては、前記遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含んでいるRNAがあげられる。
本発明で用いられるRNAは、リボースの一部または全部が、デオキシリボースに置換されているもの、すなわちDNAも包含する。さらに、本発明で用いられるRNA中のリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドに修飾を施していてもよく、例えば、糖部修飾ヌクレオチド類似体やリン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体等になっていてもよい。また、本発明で用いられるRNAとしては、該RNA中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等が、例えば硫黄原子等の他の原子に置換された誘導体も包含される。
本発明において、本発明で用いられるRNA中のリボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドとすること、本発明で用いられるRNA中のリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドに修飾を施すこと、本発明で用いられるRNA中のリン酸部、エステル部等に含まれる酸素原子等を、例えば硫黄原子等の他の原子に置換することは、RNAまたはDNAに比べ、ヌクレアーゼ耐性を向上させるため、安定化させるため、相補鎖核酸とのアフィニティーを上げるため、細胞透過性を上げるため、あるいは可視化させるため等のいかなる目的で成されたものであってもよい。
糖部修飾ヌクレオチド類似体とは、ヌクレオチドの糖の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学構造物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、2’-O-メチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-プロピルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-メトキシエトキシリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-メトキシエチルリボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-[2-(グアニジウム)エチル]リボースで置換されたヌクレオチド類似体、2’-O-フルオロリボースで置換されたヌクレオチド類似体、糖部に架橋構造を導入することにより2つの環状構造を有する架橋構造型人工核酸(Bridged Nucleic Acid)(BNA)、より具体的には、2’位の酸素原子と4’位の炭素原子がメチレンを介して架橋したロックト人工核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)、エチレン架橋構造型人工核酸(Ethylene bridged nucleic acid)(ENA)[Nucleic Acid Research, 32, e175(2004)]等があげられ、さらにペプチド核酸(PNA)[Acc. Chem. Res., 32, 624 (1999)]、オキシペプチド核酸(OPNA)[J. Am. Chem. Soc., 123, 4653 (2001)]、ペプチドリボ核酸(PRNA)[J. Am. Chem. Soc., 122, 6900 (2000)]等をあげることができる。
リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド類似体とは、ヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の化学構造の一部あるいは全てに対し、任意の化学物質を付加あるいは置換したものであればいかなるものでもよく、例えば、ホスフォロチオエート結合に置換されたヌクレオチド類似体、N3'-P5'ホスフォアミデート結合に置換されたヌクレオチド類似体等をあげることができる[細胞工学, 16, 1463-1473 (1997)][RNAi法とアンチセンス法、講談社(2005)]。
また、本発明で用いられるRNAとしては、好ましくはRNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAがあげられる。ここではKLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを例にとって、RNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現を抑制するRNAについて説明する。他の遺伝子の場合も同様の構造を有し、また同様の操作で得ることができる。
KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAは、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列(以下配列Xとする)および該配列と相補的な塩基の配列(以下、相補配列X’とする)を含んでいる。RNAとしては、(A)配列Xの鎖(センス鎖)および相補配列X’の鎖(アンチセンス鎖)からなる二本鎖RNA、(B)配列Xの鎖(センス鎖)および相補配列X’の鎖(アンチセンス鎖)からなる二本鎖RNAの配列Xの鎖もしくは相補配列X’の鎖またはそれぞれの鎖の3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドが同一または異なって付加された二本鎖RNAであってKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA(以下、(A)および(B)のような構造のRNAをKLF5siRNAとよぶ)、(C)配列XからなるRNAおよび相補配列X’からなるRNAが、スペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、ヘアピン構造を有するRNAであってKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA、(D)配列XからなるRNAおよび相補配列X’からなるRNAが、スペーサーオリゴヌクレオチドでつながれ、3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドが付加された、ヘアピン構造を有するRNAであってKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA(以下、(C)および(D)のようなRNAをKLF5shRNAとよぶ)等があげられる。これらのRNAに付加されるヌクレオチドの塩基は、グアニン、アデニン、シトシン、チミンおよびウラシルのいずれか1種または複数種でもよく、またRNAでもDNAでもよいが、ウリジル酸(U)およびデオキシチミジル酸(dT)のいずれか1種または2種が好ましい。またスペーサーオリゴヌクレオチドとしては6〜12塩基のRNAが好ましく、その5’端の配列は2個のUであるのが好ましい。スペーサーオリゴヌクレオチドの例として、UUCAAGAGAの配列からなるRNAがあげられる。スペーサーオリゴヌクレオチドによってつながれる2つのRNAの順番はどちらが5’側になってもよい。また、いずれの場合も、相補配列X’の3’端側に隣接して付加されるヌクレオチドの塩基の配列を、mRNA内で配列Xと隣接する塩基の配列と相補的な塩基の配列としてもよく、この構造がより好ましい。配列Xは、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列であれば、いずれの配列でもよいが、遺伝子の発現を抑制したい動物のKLF5 cDNAの塩基配列から、AAではじまる21塩基の部分配列を取り出す。取り出した配列のGC含量を計算し、GC含量が20〜80%、好ましくは30%〜70%、より好ましくは40〜60%の配列を複数個選択して設計した配列がより好ましい。
KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAは、配列XによってKLF5遺伝子の発現の抑制の強さが異なり、抑制が弱い場合もあるので、配列Xとして複数の配列を設計して、それぞれの配列XをもとにしたRNAを調製し、RNAをKLF5遺伝子が発現している細胞に導入してKLF5遺伝子の発現を測定し、KLF5遺伝子の発現をより強く抑制するRNAを選択することより、本発明のRNAを取得できる。
KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAとして、例えば表1に示すNo.1〜No.11のRNAがあげられる。
本発明で用いられるRNAを合成する方法としては、特に限定されず、公知の化学合成を用いる方法、あるいは、酵素的転写法等にて合成することができる。公知の化学合成を用いる方法として、ホスホロアミダイト法、ホスフォロチオエート法、ホスホトリエステル法等をあげることができ、例えば、ABI3900ハイスループット核酸合成機(アプライドバイオシステムズ社製)により合成することができる。酵素的転写法としては、目的の塩基配列を有したプラスミドまたはDNAを鋳型として典型的なファージRNAポリメラーゼ、例えば、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、SP6RNAポリメラーゼ等を用いて転写し、合成することができる。
なお、表1のKLF5siRNA No.1は、例えば株式会社日本バイオサービス等に依頼して化学合成し、アニーリングさせることにより調製できる。表1のKLF5siRNA No.2〜11はサイレンサーsiRNA作製キット(Silencer(登録商標)siRNA Construction Kit、アンビオン社製)を利用したインビトロ転写により調製できる。インビトロ転写の鋳型作製に用いるDNAは、例えば北海道システムサイエンス株式会社等に化学合成を依頼して得ることができる。
本発明の組成物におけるリポソーム(以下リポソームA)としては、本発明で用いられるRNAを内部に封入したリポソームであれば特に限定されないが、例えばカチオン性脂質/RNAの複合体を疎水性の有機溶媒層に分散させ、ポリエチレングリコール化脂質と中性の脂質と水を加えて油中水型(W/O)エマルジョンを形成し、逆相蒸発法で処理して製造されたリポソーム(特許文献3参照)、RNAを、酸性の電解質水溶液に溶解し、脂質(エタノール中)を加え、エタノール濃度を下げてRNA内包リポソームを調製した後、試料のpHを上げて透析してリポソーム表面に付着した前記RNAを除去して製造されたリポソーム(特許文献4および非特許文献4参照)、リード粒子と前記RNAから構成される複合粒子および該複合粒子を封入した脂質二重膜から構成されたリポソーム(特許文献5および国際公開第2006/080118号パンフレット参照)等があげられ、リード粒子と前記RNAから構成される複合粒子および該複合粒子を封入した脂質二重膜から構成されたリポソームが好ましく、該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能であることがより好ましい。また、リポソームAとしては、好ましくはカチオン性物質を含むリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子、および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成され、該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とするリポソームもあげられ、該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能であることがより好ましい。
なお、本発明において、分散とは、溶解せずに分散することを意味する。
本発明におけるリード粒子としては、例えば、脂質集合体、リポソーム(以下リポソームB)、エマルジョン粒子、高分子ミセル、金属コロイド等を構成成分とする微粒子があげられ、好ましくはリポソームBを構成成分とする微粒子があげられる。本発明におけるリード粒子は、脂質集合体、リポソームB、エマルジョン粒子、高分子ミセル、金属コロイド等を2つ以上組み合わせた複合体を構成成分としていてもよく、脂質集合体、リポソームB、エマルジョン粒子、高分子ミセル、金属コロイド等と他の化合物(例えば糖、脂質、無機化合物等)とを組み合わせた複合体を構成成分としていてもよい。
リード粒子の構成成分としての脂質集合体またはリポソームBは、例えば親水性と疎水性の両方の性質を兼ね備えた両親媒性を持つ、水中において脂質二重層構造をとる極性脂質等によって構成されるのが好ましい。該脂質としては、単純脂質、複合脂質または誘導脂質のいかなるものであってもよく、例えばリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴイド、ステロール、カチオン性脂質等があげられるがこれらに限定されない。好ましくはリン脂質またはカチオン性脂質があげられる。
上記リード粒子を構成する脂質におけるリン脂質としては、例えばホスファチジルコリン(具体的には大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(具体的にはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DORE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、1 -ステアロイル- 2 -オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)等)、グリセロリン脂質(具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、パルミトイルオレヨールホスファチジルグリセロール(POPG)、リゾホスファチジルコリン等)、スフィンゴリン脂質(具体的にはスフィンゴミエリン、セラミドホスホエタノールアミン、セラミドホスホグリセロール、セラミドホスホグリセロリン酸等)、グリセロホスホノ脂質、スフィンゴホスホノ脂質、天然レシチン(具体的には卵黄レシチン、大豆レシチン等)または水素添加リン脂質(具体的には水素添加大豆ホスファチジルコリン等)等の天然または合成のリン脂質があげられる。
上記リード粒子を構成する脂質におけるグリセロ糖脂質としては、例えばスルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリドまたはグリコシルジグリセリド等があげられる。
上記リード粒子を構成する脂質におけるスフィンゴ糖脂質としては、例えばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシドまたはガングリオシド等があげられる。
上記リード粒子を構成する脂質におけるスフィンゴイドとしては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガン、スフィンゴシン等、またはそれらの誘導体等があげられる。誘導体としては、例えばスフィンガン、イコサスフィンガンまたはスフィンゴシン等の-NH2を-NHCO(CH2)xCH3(式中、xは0〜18の整数を表し、中でも6、12または18が好ましい)に変換したもの等があげられる。
上記リード粒子を構成する脂質におけるステロールとしては、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴカステロール、フコステロール等があげられる。
上記リード粒子を構成する脂質におけるカチオン性脂質としては、親水性と疎水性の両方の性質を兼ね備えた両親媒性を持つ、水中において脂質二重層構造をとる極性脂質のうち、親水性部に第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム、窒素原子を含む複素環等を有する構造を持つものであり、例えば、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン(DODAP)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムまたは3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)等があげられる。
リポソームBにおいては、これら脂質は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、好ましくは2種以上組み合わせて用いられる。2種以上組み合わせて用いる場合の組み合わせとしては、例えば水素添加大豆ホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化脂質(後記のポリエチレングリコール化脂質と同義)およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、ジステアロイルホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール化脂質およびコレステロールから選ばれる2成分以上の組み合わせ、EPCおよびDOTAPの組み合わせ、DOTAPおよびポリエチレングリコール化脂質の組み合わせ、EPC、DOTAPおよびポリエチレングリコール化脂質の組み合わせ、EPC、DOTAP、コレステロールおよびポリエチレングリコール化脂質の組み合わせ等があげられる。
また、リポソームBは、必要に応じて、例えばコレステロール等のステロール等の膜安定化剤、例えばトコフェロール等の抗酸化剤等の安定化剤を含有していてもよい。これら安定化剤は1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用し得る。
脂質集合体としては、例えば球状ミセル、球状逆ミセル、ソーセージ状ミセル、ソーセージ状逆ミセル、板状ミセル、板状逆ミセル、ヘキサゴナルI、ヘキサゴナルIIまたは脂質2分子以上からなる会合体等があげられる。
エマルジョン粒子としては、例えば脂肪乳剤、非イオン性界面活性剤と大豆油等の油からなるエマルジョン、リピッドエマルジョン、リピッドナノスフェアー等の水中油型(O/W)エマルジョンまたは水中油中水型(W/O/W)エマルジョン粒子等があげられる。
上記リード粒子を構成するエマルジョン粒子における非イオン性界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸エステル(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)またはグリセリン脂肪酸エステル等があげられる。
高分子ミセルとしては、例えばアルブミン、デキストラン、ポリフェクト(polyfect)、キトサン、デキストラン硫酸またはDNA等の天然高分子、例えばポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド-アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸またはポリエチレングリコール化ポリ乳酸等の高分子あるいはそれらの塩の1以上からなるミセルがあげられる。
ここで、高分子における塩は、例えば金属塩、アンモニウム塩、酸付加塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩または亜鉛塩等があげられる。アンモニウム塩としては、例えばアンモニウムまたはテトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩またはクエン酸塩等の有機酸塩があげられる。有機アミン付加塩としては、例えばモルホリンまたはピペリジン等の付加塩があげられる。アミノ酸付加塩としては、例えばグリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸またはリジン等の付加塩があげられる。
金属コロイドとしては、例えば金、銀、白金、銅、ロジウム、シリカ、カルシウム、アルミニウム、鉄、インジウム、カドミウム、バリウムまたは鉛等を含む金属コロイドがあげられる。
また、本発明におけるリード粒子は、糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤等を含有することが好ましく、糖脂質、または水溶性高分子の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体を含有することがより好ましく、水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体を含有することがさらに好ましい。糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤は、分子の一部がリード粒子の他の構成成分と例えば疎水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質を有し、他の部分がリード粒子の製造時の溶媒と、例えば親水性親和力、静電的相互作用等で結合する性質を有する、2面性をもつ物質であるのが好ましい。糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤は、リード粒子の構成成分として含有されてもよく、リード粒子の構成成分に加えて用いてもよい。
糖、ペプチドおよび核酸から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばショ糖、ソルビトール、乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチド、グルタチオン等のペプチド、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNA、ODN等の核酸と、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられる。
また、糖の脂質誘導体または脂肪酸誘導体には、例えば前記リード粒子の定義の中であげたグリセロ糖脂質またはスフィンゴ糖脂質等も含まれる。
水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、ポリグリセリン、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ-L-リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体と、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質、または例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸もしくはラウリン酸等の脂肪酸とが結合してなるもの等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体、ポリグリセリン誘導体等の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられる。
ポリエチレングリコール誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリエチレングリコール化脂質(具体的にはポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(より具体的には1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-DSPE)等)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、クレモフォアイーエル(CREMOPHOR EL)等)、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル類(具体的にはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)またはポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール化脂質があげられる。
ポリグリセリン誘導体の脂質誘導体または脂肪酸誘導体としては、例えばポリグリセリン化脂質(具体的にはポリグリセリン-ホスファチジルエタノールアミン等)またはポリグリセリン脂肪酸エステル類等があげられ、より好ましくは、ポリグリセリン化脂質があげられる。
界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸エステル(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)、グリセリン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられ、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコールアルキルエーテル等があげられる。
上記したリード粒子は、正電荷をもつものが好ましい。ここで述べる、正電荷とは、本発明で用いられるRNA内の電荷、分子内分極等に対して静電的引力を生じる電荷、表面分極等を包含する。リード粒子が正電荷をもつには、リード粒子は、カチオン性物質を含有するのが好ましく、リード粒子は、カチオン性脂質を含有するのがより好ましい。
リード粒子に含有されるカチオン性物質は、カチオン性を呈する物質であるが、カチオン性の基とアニオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや、他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてカチオン性物質に分類され得るものも含まれる。これらカチオン性物質は、リード粒子の構成成分として含有されてもよく、リード粒子の構成成分に加えて用いてもよい。
カチオン性物質としては、例えば前記のリード粒子の定義で例示したもののうちのカチオン性物質[具体的には、カチオン性脂質(前記と同義)、カチオン性高分子等]、等電点以下の値のpHで複合体の形成を行える蛋白質またはペプチド等があげられ、好ましくはカチオン性脂質があげられる。
カチオン性高分子としては、例えばポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ポリフェクト(polyfect)またはキトサン等があげられる。
等電点以下の値のpHで複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以下の値のpHで複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば特に限定されない。該蛋白質またはペプチドとしては、例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ペプシンまたはリボヌクレアーゼT1等があげられる。
本発明におけるリード粒子は、公知の製造方法またはそれに準じる方法で製造することができ、いかなる製造方法で製造されたものであってよい。例えば、リード粒子の1つであるリポソームBを構成成分とするリード粒子の製造には、公知のリポソームの調製方法が適用できる。公知のリポソームの調製方法としては、例えばバンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[“ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)”,1965年,第13巻,p.238-252参照]、エタノール注入法[“ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell Biol.)”,1975年,第66巻,p.621-634参照]、フレンチプレス法[“エフイービーエス・レターズ(FEBS Lett.)”,1979年,第99巻,p.210-214参照]、凍結融解法[“アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch. Biochem. Biophys.)”,1981年,第212巻,p.186-194参照]、逆相蒸発法[“プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)”,1978年,第75巻, p.4194-4198参照]またはpH勾配法(例えば特許第2572554号公報、特許第2659136号公報等参照)等があげられる。リポソームBの製造の際にリポソームBを分散させる溶液としては、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液またはアミノ酸輸液等を用いることができる。また、リポソームBの製造の際には、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システインまたはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の抗酸化剤、例えばグリセリン、ブドウ糖または塩化ナトリウム等の等張化剤等の添加も可能である。また、脂質等を例えばエタノール等の有機溶媒に溶解し、溶媒を留去した後、生理食塩水等を添加、振とう撹拌し、リポソームを形成させることによってもリポソームBを製造することができる。
また、例えばカチオン性物質、高分子、ポリオキシエチレン誘導体等によるリポソームB等のリード粒子の表面改質も任意に行うことができる[ラジック(D.D.Lasic)、マーティン(F.Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc),1995年,p.93-102参照]。表面改質に使用し得る高分子としては、例えばデキストラン、プルラン、マンナン、アミロペクチンまたはヒドロキシエチルデンプン等があげられる。ポリオキシエチレン誘導体としては、例えばポリソルベート80、プルロニックF68、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコールまたはPEG-DSPE等があげられる。リポソームB等のリード粒子の表面改質は、リード粒子に糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤を含有させる方法の1つである。
リポソームBの平均粒子径は、所望により自由に選択できるが、下記の粒子径とするのが好ましい。リポソームBの平均粒子径を調節する方法としては、例えばエクストルージョン法、大きな多重膜リポソーム(MLV)を機械的に粉砕(具体的にはマントンゴウリン、マイクロフルイダイザー等を使用)する方法[ミュラー(R.H.Muller)、ベニタ(S.Benita)、ボーム(B.Bohm)編著,“エマルジョン・アンド・ナノサスペンジョンズ・フォー・ザ・フォーミュレーション・オブ・ポアリー・ソラブル・ドラッグズ(Emulsion and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs)”,ドイツ,サイエンティフィック・パブリッシャーズ・スチュットガルト(Scientific Publishers Stuttgart),1998年,p.267-294参照]等があげられる。
また、リード粒子を構成する例えば脂質集合体、リポソームB、エマルジョン粒子、高分子ミセル、金属コロイド等から選ばれる2つ以上を組み合わせた複合体の製造方法は、例えば水中で例えば脂質、高分子等を混合するだけでもよく、所望によりさらに整粒工程や無菌化工程等を加えることもできる。また、前記複合体の製造は例えばアセトンまたはエーテル等種々の溶媒中で行うことも可能である。
本発明におけるリード粒子の大きさは、平均粒子径が約10nm〜1000nmであるのが好ましく、約30nm〜300nmであるのがより好ましく、約50nm〜200nmであるのがさらに好ましい。
本発明におけるリード粒子とRNAを含む複合粒子を被覆する脂質二重膜の構成成分としては、例えば前記リード粒子の定義の中であげた脂質または界面活性剤等があげられ、好ましくは、脂質のうちの中性脂質があげられる。ここで、中性脂質とは、脂質のうちの、前記リード粒子が正電荷をもつ場合におけるカチオン性物質の中であげたカチオン性脂質および後記の付着競合剤の中であげたアニオン性脂質を除いたもののことであり、中性脂質としてより好ましくは、リン脂質、グリセロ糖脂質またはスフィンゴ糖脂質等があげられる。より好ましくはリン脂質があげられ、さらに好ましくはEPCがあげられる。これら脂質は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
複合粒子を被覆する脂質二重膜の構成成分は、特定の極性有機溶媒に可溶であることが好ましく、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液中には、分散可能であることが好ましい。特定の濃度で該極性溶媒を含む液中の該極性溶媒の濃度は、該脂質二重膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度が好ましい。該極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールまたはポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール等があげられ、中でも、アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。
本発明における極性有機溶媒を含む液中の、極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば、水、液体二酸化炭素、液体炭化水素、ハロゲン化炭素またはハロゲン化炭化水素等があげられ、好ましくは水があげられる。また、イオンまたは緩衝成分等を含んでいてもよい。溶媒は1種または2種以上を用いることができるが、2種以上用いる場合は、相溶する組み合わせが好ましい。
複合粒子を被覆する脂質二重膜は、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体もしくは脂肪族炭化水素誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステルまたはポリエチレングリコールアルキルエーテルを含有することが好ましく、水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体もしくは脂肪族炭化水素誘導体を含有することがより好ましい。水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体としては、例えば前記の糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体、または糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂肪族炭化水素誘導体があげられ、好ましくは前記水溶性高分子の脂質誘導体または脂肪酸誘導体があげられ、より好ましくは前記ポリエチレングリコール化脂質があげられ、さらに好ましくはポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンがあげられる。なお、本発明における水溶性物質の脂肪族炭化水素誘導体としては、水溶性物質と、例えば長鎖脂肪族アルコール、ポリオキシプロピレンアルキルまたはグリセリン脂肪酸エステルのアルコール性残基等とが結合してなるものもあげられる。
糖、ペプチドまたは核酸の脂肪族炭化水素誘導体としては、例えばショ糖、ソルビトールまたは乳糖等の糖、例えばカゼイン由来ペプチド、卵白由来ペプチド、大豆由来ペプチドまたはグルタチオン等のペプチド、あるいは例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNAまたはODN等の核酸の脂肪族炭化水素誘導体があげられる。
水溶性高分子の脂肪族炭化水素誘導体としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、オリゴ糖、デキストリン、水溶性セルロース、デキストラン、コンドロイチン硫酸、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリアスパラギン酸アミド、ポリ-L-リジン、マンナン、プルラン、オリゴグリセロール等またはそれらの誘導体の脂肪族炭化水素誘導体があげられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体またはポリグリセリン誘導体等の脂肪族炭化水素誘導体があげられ、さらに好ましくは、ポリエチレングリコール誘導体の脂肪族炭化水素誘導体があげられる。
リード粒子がリポソームBを構成成分とする微粒子である場合、リポソームBと本発明で用いられるRNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるものがリポソームAとなり、その構成から狭義のリポソームと分類され、リード粒子がリポソームBを構成成分とする微粒子以外である場合でも、脂質二重膜で被覆されているので、広義のリポソームと分類される。本発明において、リード粒子がリポソームBを構成成分とする微粒子であることがより好ましい。
本発明におけるリード粒子と本発明で用いられるRNAを構成成分とする複合粒子は、該リード粒子を製造後または該リード粒子の製造と同時に、本発明で用いられるRNAをリード粒子に付着または封入して複合粒子を製造でき、さらに該複合粒子の製造後または複合粒子の製造と同時に、脂質二重膜で該複合粒子を被覆することによりリポソームAを製造することができる。リポソームAは、例えば、特許文献3、4、5、非特許文献4等に記載の公知の製造方法またはそれに準じる方法で製造するか、例えばリード粒子に本発明で用いられるRNAを付着または封入して複合粒子を製造後、該複合粒子および被覆層成分を、該被覆層成分が可溶な極性有機溶媒を含み、該複合粒子が溶解せず、該被覆層成分が分散状態で存在することが可能な濃度の液中に分散させる工程および該複合粒子を該被覆層成分で被覆する工程を含む製造方法で製造することができる。
本発明の組成物におけるリポソームAの好ましい製造方法としては、以下のリード粒子と本発明で用いられるRNAを構成成分とする複合粒子を製造する工程(工程1)および該複合粒子を脂質二重膜で被覆する工程(工程2または工程3)を含む製造方法があげられる。
工程1) リード粒子と本発明で用いられるRNAを構成成分とする複合粒子を製造する工程
リード粒子を、例えば水等の溶媒中に分散させ、リード粒子が分散した液中に、本発明で用いられるRNAを分散または溶解して含有させて混合し、リード粒子に本発明で用いられるRNAを付着させることが好ましい。工程1において、リード粒子の凝集を抑制するために、リード粒子は凝集抑制物質を含有するリード粒子であることが好ましい。凝集抑制物質としては、前記糖、ペプチド、核酸および水溶性高分子から選ばれる1つ以上の物質の脂質誘導体もしくは脂肪酸誘導体または界面活性剤が好ましくあげられる。また、リード粒子が、正電荷をもつものである場合、リード粒子が分散した液中で、本発明で用いられるRNAと付着競合剤を共存させ、付着競合剤を該RNAとともにリード粒子に付着させてもよく、さらにリード粒子が凝集抑制物質を含有するリード粒子である場合にも、リード粒子の凝集をより抑制させるために付着競合剤を用いてもよい。リード粒子と本発明で用いられるRNAのいずれかの組み合わせとしては、複合粒子が極性有機溶媒を含有する液に分散可能となる組み合わせを選択することが好ましく、極性有機溶媒に対しての複合粒子の溶解度が、工程2または3で用いる脂質二重膜の構成成分のそれよりも低いことがより好ましく、また、該極性有機溶媒を含む液中に、該脂質二重膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能な濃度で該極性有機溶媒を含む液が存在する組み合わせを選択することがより好ましい。
付着競合剤としては、例えばアニオン性物質等があげられる。該アニオン性物質は、分子内の電荷、分子内分極等による静電的引力により、リード粒子の構成成分に静電的に付着する物質を包含する。付着競合剤としてのアニオン性物質は、アニオン性を呈する物質であるが、アニオン性の基とカチオン性の基の両方をもつ両性の物質であっても、pHや他の物質との結合等により相対的な陰性度が変化するので、その時々に応じてアニオン性物質に分類され得る。
アニオン性物質としてはアニオン性脂質、アニオン性界面活性剤、アニオン性高分子等または等電点以上の値のpHで複合体の形成を行える蛋白質、ペプチドもしくは核酸等があげられ、好ましくはデキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸またはデキストランフルオレセインアニオニック等があげられる。これらアニオン性物質は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性脂質としては、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールまたはホスファチジン酸等があげられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。具体的にはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムまたはタウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。
アニオン性高分子としては、例えばポリアスパラギン酸、スチレンマレイン酸共重合体、イソプロピルアクリルアミド-アクリルピロリドン共重合体、ポリエチレングリコール修飾デンドリマー、ポリ乳酸、ポリ乳酸ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール化ポリ乳酸、デキストラン硫酸、デキストラン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸またはデキストランフルオレセインアニオニック等があげられる。
等電点以上の値のpHで複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドとしては、その物質の等電点以上の値のpHで、複合体の形成を行える蛋白質またはペプチドであれば特に限定されない。例えば、アルブミン、オロソムコイド、グロブリン、フィブリノーゲン、ヒストン、プロタミン、リボヌクレアーゼまたはリゾチーム等があげられる。
アニオン性物質としての核酸としては、例えばDNA、RNA、プラスミド、siRNAまたはODN等があげられ、生理活性を示さないものであれば、どのような長さ、配列のものであってもよい。
付着競合剤は、リード粒子の構成成分に静電的に付着することが好ましく、リード粒子の構成成分に付着してもリード粒子の構成成分を凝集させるような架橋を形成しない大きさの物質であるか、分子内に付着する部分と、付着に反発してリード粒子の凝集を抑制する部分をもつ物質であることが好ましい。
工程1は、より具体的には、例えば凝集抑制物質を含有するリード粒子が分散した液を製造する操作および該リード粒子が分散した液中に、本発明で用いられるRNAを分散または溶解して含有させる操作(例えば該リード粒子が分散した液中に、本発明で用いられるRNAを加えて分散または溶解させる操作、該リード粒子が分散した液中に、本発明で用いられるRNAが分散または溶解した液を加える操作等)を含む製造方法において実施することができる。ここで、リード粒子が分散した液中に、本発明で用いられるRNAを分散または溶解して含有させる工程により得られる複合粒子としては、具体的には、例えばカチオン性脂質を含有するリポソームBを構成成分とする微粒子に本発明で用いられるRNAが付着して形成される複合粒子、カチオン性脂質を含有する脂質集合体を構成成分とする微粒子に本発明で用いられるRNAが付着して形成される複合粒子、ポリ-L-リジン等のカチオン性高分子を含有する高分子ミセルを構成成分とする微粒子に本発明で用いられるRNAが付着して形成される複合粒子、カチオン性高分子を含有するリポソームBを構成成分とする微粒子に本発明で用いられるRNAが付着して形成される複合粒子、カチオン性脂質を含有する高分子ミセルを構成成分とする微粒子に本発明で用いられるRNAが付着して形成される複合粒子等があげられる。また、リード粒子が分散した液中に、本発明で用いられるRNAを分散または溶解して含有させる操作が、本発明で用いられるRNAが分散または溶解した液に、さらに付着競合剤を含有させて、これを該リード粒子が分散した液中に加える操作であることが好ましく、この場合、該リード粒子に、本発明で用いられるRNAと該付着競合剤が共に付着して複合粒子が製造され、該複合粒子の製造中におけるリード粒子の凝集も、製造後における複合粒子の凝集もより抑制されて製造できる。
リード粒子のリード粒子が分散する液に対する割合は、リード粒子に本発明で用いられるRNAが付着できれば特に限定されるものではないが、約1μg/mL〜1g/mLであるのが好ましく、約0.1〜500mg/mLであるのがより好ましい。
工程2) 複合粒子を脂質二重膜で被覆する工程(その1)
工程1で得られた複合粒子が分散し、かつ脂質二重膜の構成成分の全部または一部が溶解した極性有機溶媒を含む液(液A)を調製する操作、次いで、液A中の極性有機溶媒の濃度を減少させることによって、複合粒子を脂質二重膜で被覆する操作を含む製造方法によってリポソームAが製造できる。この場合、リポソームAは分散液(液B)の形態で得られる。液Aにおける溶媒は、該脂質二重膜の構成成分が可溶で、該複合粒子が分散可能な極性有機溶媒の濃度の該極性有機溶媒を含む溶媒であり、液A中の極性有機溶媒の濃度を減少させた液Bでは、該脂質二重膜の構成成分が分散可能で、該複合粒子も分散可能であることが好ましい。液A中の溶媒が、極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒との混合液である場合、例えば該極性有機溶媒と混合可能な極性有機溶媒以外の溶媒を含む溶媒(液C)を加えること、および/または、蒸発留去、半透膜分離、分留等によって、選択的に極性有機溶媒を取り除くことで、極性有機溶媒の濃度を減少させることができる。ここで、液Cは、極性有機溶媒以外の溶媒を含む液が好ましいが、極性有機溶媒も液Aにおける極性有機溶媒の濃度より低ければ含んでいてよい。
工程2における極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば、水、液体二酸化炭素、液体炭化水素、ハロゲン化炭素またはハロゲン化炭化水素等があげられ、好ましくは水があげられる。また、液Aおよび液Cは、イオンまたは緩衝成分等を含んでいてもよい。これら溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性有機溶媒と極性有機溶媒以外の溶媒の組み合わせは、相互に混合可能である組み合わせであるのが好ましく、液Aおよび液B中の溶媒ならびに液Cに対する複合粒子および脂質二重膜の構成成分の溶解度等を考慮して選択できる。一方、複合粒子については、液Aおよび液B中の溶媒ならびに液Cのいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、また極性有機溶媒および極性有機溶媒以外の溶媒のいずれに対しての溶解度も低いことが好ましく、脂質二重膜の構成成分は、液B中の溶媒および液Cに対しての溶解度が低いことが好ましく、液A中の溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、また極性有機溶媒に対しての溶解度が高いことが好ましく、極性有機溶媒以外の溶媒に対する溶解度が低いことが好ましい。ここで、「複合粒子の溶解度が低い」とは、複合粒子に含有されるリード粒子、本発明で用いられるRNAおよび付着競合剤等の各成分の、溶媒中における溶出性が小さいことであり、各成分の個々の溶解度が高くても各成分間の結合等によって各成分の溶出性が小さくなっていればよい。例えば、リード粒子に含まれる成分のいずれかの液A中の溶媒に対する溶解度が高い場合でも、リード粒子が正電荷をもつ場合、本発明で用いられるRNA内の電荷、分子内分極等と静電的に結合することで、複合粒子中の成分の溶出が抑制され、複合粒子の液A中の溶媒に対する溶解度を低くすることが可能である。すなわち、リード粒子が正電荷をもつことは、リポソームAの製造において、複合粒子の成分の溶出を抑制し、製造性と歩留まりを向上させる効果も備えている。
液Aにおける極性有機溶媒の濃度は、脂質二重膜の構成成分が可溶で、複合粒子が分散可能であれば特に限定されるものではなく、用いる溶媒や複合粒子、脂質二重膜の構成成分の種類等により異なるが、好ましくは約30v/v%以上、より好ましくは約60〜90v/v%である。また、液Bにおける極性有機溶媒の濃度は、液Aよりも低い濃度で該極性有機溶媒を含み、脂質二重膜の構成成分が分散可能で、複合粒子も分散可能であれば特に限定されるものではないが、好ましくは約50v/v%以下である。
液Aを調製する工程としては、極性有機溶媒、複合粒子および脂質二重膜の構成成分、必要により極性有機溶媒以外の溶媒を混合して液Aを調製する工程があげられる。極性有機溶媒、複合粒子および脂質二重膜の構成成分、必要により極性有機溶媒以外の溶媒は、複合粒子が溶解しなければ、それらを加える順序に特に制限はないが、好ましくは、例えば該複合粒子が分散した極性有機溶媒を含む液(液D)を調製し、液D中の極性有機溶媒と同一または異なった極性有機溶媒を含む溶媒に該脂質二重膜の構成成分を溶解させた液(液E)を調製し、液Dと液Eを混合して調製する工程があげられる。液Dと液Eを混合して液Aを調製する際には、徐々に混合することが好ましい。
工程3) 複合粒子を脂質二重膜で被覆する工程(その2)
工程1で得られた複合粒子および脂質二重膜の構成成分を、該脂質二重膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む、該複合粒子が溶解せず、該脂質二重膜の構成成分が分散状態で存在することが可能な濃度の液中に分散させる操作(得られる液を液Fとする)を含む製造方法でリポソームAが製造でき、この場合、リポソームAは分散液の状態で得られる。液Fにおける溶媒は、該脂質二重膜の構成成分が可溶な極性有機溶媒を含む溶媒であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子がともに分散可能な特定の濃度で液Fに含まれている。
液Fの調製方法はいかなる形態をも取ることができる。例えば複合粒子の分散液と、脂質二重膜の構成成分の溶解液または分散液を調製した後、両液を混合して液Fを調製してもよく、複合粒子または脂質二重膜の構成成分のどちらか一方の分散液を調製し、その分散液に、固体状態の複合粒子または脂質二重膜の構成成分の残る一方を加えて分散させて液Fを調製してもよい。複合粒子の分散液と、脂質二重膜の構成成分の溶解液または分散液を混合する場合には、複合粒子の分散媒は、あらかじめ極性有機溶媒を含んでいてもよく、脂質二重膜の構成成分の溶媒または分散媒は極性有機溶媒を含む液または極性有機溶媒のみで構成される液であってもよい。一方、複合粒子または脂質二重膜の構成成分のどちらか一方の分散液を調製し、該分散液に、固体状態の複合粒子または脂質二重膜の構成成分の残る一方を加える場合には、該分散液は、極性有機溶媒を含む液であることが好ましい。なお、液Fを調製した後に複合粒子が溶解せず、脂質二重膜の構成成分が分散している場合には、複合粒子が溶解せず、脂質二重膜の構成成分が分散する極性有機溶媒濃度の範囲であれば極性有機溶媒を加えてもよく、極性有機溶媒を除去してもよく、または濃度を減少させてもよい。一方、液Fを調製した後に複合粒子は溶解していないが、脂質二重膜の構成成分が溶解している場合には、複合粒子が溶解せず、脂質二重膜の構成成分が分散する極性有機溶媒濃度の範囲で極性有機溶媒を除去するかまたは濃度を減少させればよい。また、複合粒子と脂質二重膜の構成成分をあらかじめ極性有機溶媒以外の溶媒中で混合し、そこに複合粒子が溶解せず、脂質二重膜の構成成分が分散する極性有機溶媒濃度の範囲で極性有機溶媒を加えてもよい。その場合には、複合粒子および脂質二重膜の構成成分のそれぞれを極性有機溶媒以外の溶媒中に分散させ、両分散液を混合した後で、極性有機溶媒を加えてもよく、複合粒子または脂質二重膜の構成成分のどちらか一方を極性有機溶媒以外の溶媒中に分散させ、その分散液に、固体状態の複合粒子または脂質二重膜の構成成分の残る一方を加えて分散させた後で、極性有機溶媒を加えてもよい。また、複合粒子および脂質二重膜の構成成分が分散し、極性有機溶媒を含有する液を、複合粒子が脂質二重膜で被覆されるに充分な時間、静置または混合する操作を含むことが好ましい。複合粒子と脂質二重膜の構成成分を、極性有機溶媒を含有する液中に分散させた後、静置または混合する時間は、複合粒子および脂質二重膜の構成成分を、極性有機溶媒を含有する液中に分散させた後に瞬時に終了させるのでなければ制限はないが、脂質二重膜の構成成分や、極性有機溶媒を含有する液の種類に応じて任意に設定することができ、得られたリポソームAの収率が定常量となる時間を設定することが好ましく、例えば約3秒〜30分である。なお、複合粒子および脂質二重膜の構成成分を、極性有機溶媒を含有する液中に分散させると、複合粒子への脂質二重膜の被覆が開始され、速やかに複合粒子への脂質二重膜の被覆が完了することもあり、例えば、脂質二重膜の構成成分の溶解液を調製した後、複合粒子の分散液と、脂質二重膜の構成成分の溶解液とを混合して液Fを調製する場合において、脂質二重膜の構成成分の液Fへの溶解性が低いと、脂質二重膜の構成成分が極性有機溶媒を含有する液中に分散するのとほぼ同時に、複合粒子への脂質二重膜の被覆が完了することもある。
液Fにおける極性有機溶媒以外の溶媒としては、例えば工程2における極性有機溶媒以外の溶媒で例示した物があげられ、好ましくは水があげられる。
液Fにおける極性有機溶媒の濃度は、複合粒子と、脂質二重膜の構成成分がともに分散されている条件さえ満たしていれば特に限定されるものではなく、用いる溶媒や複合粒子、脂質二重膜の構成成分の種類等により異なるが、好ましくは約1〜80v/v%、より好ましくは約10〜60v/v%、さらに好ましくは約20〜50v/v%、最も好ましくは約30〜40v/v%である。
本発明において、「脂質二重膜の構成成分が極性有機溶媒に対して可溶」とは、脂質二重膜の構成成分が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合、可溶化剤等を用いることにより脂質二重膜の構成成分が極性有機溶媒に溶解する性質をもつ場合、脂質二重膜の構成成分が極性有機溶媒中で凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し得る性質をもつ場合等を包含する。
また、「脂質二重膜の構成成分が分散する」とは、脂質二重膜の構成成分の全部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化している状態、脂質二重膜の構成成分の一部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が溶解している状態、脂質二重膜の構成成分の一部が凝集体またはミセル等を形成して乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が沈殿している状態等を包含し、脂質二重膜の構成成分の全部が溶解している状態を包含しない。
本発明において、「複合粒子が分散する」とは、複合粒子が懸濁または乳濁もしくはエマルジョン化している状態のことであり、複合粒子の一部が懸濁または乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が溶解している状態、複合粒子の一部が乳濁もしくはエマルジョン化し、残る部分が沈殿している状態等を包含し、複合粒子の全部が溶解している状態を包含しない。「複合粒子が溶解しない」とは、前記の「複合粒子が分散する」と同義である。
本発明におけるリポソームAの製造方法において用いられる、極性有機溶媒含有水溶液中の複合粒子の濃度は、複合粒子を脂質二重膜で被覆できれば特に限定されるものではないが、約1μg/mL〜1g/mLであるのが好ましく、約0.1〜500mg/mLであるのがより好ましい。また、用いられる脂質二重膜の構成成分の濃度は、複合粒子を被覆できれば特に限定されるものではないが、約1μg/mL〜1g/mLであるのが好ましく、約0.1〜400mg/mLであるのがより好ましい。
本発明のリポソームAに対する脂質二重膜の割合は、重量比で約1:0.1〜1:1000が好ましく、約1:1〜1:10がより好ましい。
また、本発明におけるリポソームAの大きさは、例えば注射可能な大きさであることが好ましい。具体的には、平均粒子径が約10nm〜1000nmであるのが好ましく、約50nm〜300nmであるのがより好ましく、約70nm〜200nmであるのがさらに好ましい。
さらに、上記で得られるリポソームAに抗体等の蛋白質、糖類、糖脂質、アミノ酸、核酸、種々の低分子化合物または高分子化合物等の物質による修飾を行うこともでき、これらで得られる被覆複合粒子もリポソームAに包含される。例えば、ターゲッティングに応用するため、上記で得られるリポソームAに対して、さらに抗体等の蛋白質、ペプチドまたは脂肪酸類等による脂質二重膜の表面修飾を行うこともできる[ラジック(D. D. Lasic)、マーティン(F. Martin)編,“ステルス・リポソームズ(Stealth Liposomes)”(米国),シーアールシー・プレス・インク(CRC Press Inc),1995年,p.93-102参照]。また、リポソームAに例えば水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体による表面改質も任意に行うことができ、これら表面改質に用いられる水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体は、前記脂質二重膜の構成成分としての水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体と同義である。
本発明の組成物を、動脈硬化部位やステント再狭窄部位を有する哺乳動物(人を含む)に投与することで、本発明で用いられるRNAを動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子の発現部位である動脈硬化部位やステント再狭窄部位へ送達することができ、該遺伝子の発現が抑制される。動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子の発現が抑制されることで、新生血管の増殖、マクロファージの集積および平滑筋細胞の遊走・増殖による新生内膜増殖や、血管リモデリングが抑制され、動脈硬化性疾患が治療もしくは予防またはステント再狭窄が抑制もしくは予防される。
即ち、本発明は、上記説明した本発明の組成物を哺乳動物に投与する動脈硬化性疾患を治療もしくは予防する方法またはステント再狭窄を抑制する方法も提供する。投与対象は、動脈硬化症に罹患している人またはPTCA施術を施された人であることが好ましく、PTCA施術を施された人がより好ましい。
また、本発明の組成物におけるRNAを、補酵素や抗体等のペプチドおよび蛋白質、オリゴヌクレオチドやプラスミド等の核酸等に換えた組成物も、同様に動脈硬化部位やステント再狭窄部位へ送達することができ、動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤として使用することができる。
また、本発明の組成物、および本発明の組成物におけるRNAを補酵素や抗体等のペプチドおよび蛋白質、オリゴヌクレオチドやプラスミド等の核酸等に換えた組成物は、送達の量を直接または間接的に測定して、動脈硬化症に罹患しているかどうかまたはステント再狭窄が生じているかどうかを診断するための診断薬として使用することもできる。
また、本発明の組成物、および本発明の組成物におけるRNAを補酵素や抗体等のペプチドおよび蛋白質、オリゴヌクレオチドやプラスミド等の核酸等に換えた組成物は、例えば血液成分等の生体成分(例えば血液、消化管等)中での該RNA、ペプチド、蛋白質または核酸の安定化、副作用の低減または動脈硬化部位やステント再狭窄部位への薬剤集積性の増大等を目的とする製剤としても使用できる。
本発明の組成物、および本発明の組成物におけるRNAを補酵素や抗体等のペプチドおよび蛋白質、オリゴヌクレオチドやプラスミド等の核酸等に換えた組成物を、動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤として使用する場合、投与経路としては、治療に際し最も効果的な投与経路を使用するのが望ましく、口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内または静脈内等の非経口投与または経口投与をあげることができ、好ましくは静脈内投与または筋肉内投与をあげることができ、より好ましくは静脈内投与があげられる。
投与量は、投与対象の病状や年齢、投与経路などによって異なるが、例えばRNAに換算した1日投与量が約0.1μg〜1000mgとなるように投与すればよい。
静脈内投与または筋肉内投与に適当な剤形としては、例えば注射剤があげられ、上述の方法により調製したリポソームAの分散液をそのまま例えば注射剤等の形態として用いることも可能であるが、該分散液から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して使用することも、該分散液を凍結乾燥して使用すること、または例えばマンニトール、ラクトース、トレハロース、マルトースまたはグリシン等の賦形剤を加えた分散液を凍結乾燥して使用することもできる。
注射剤の場合、前記のリポソームAの分散液または前記の溶媒を除去または凍結乾燥したリポソームAに、例えば水、酸、アルカリ、種々の緩衝液、生理的食塩液またはアミノ酸輸液等を混合して調製された本発明の組成物を使用することが好ましい。また、例えばクエン酸、アスコルビン酸、システインもしくはEDTA等の抗酸化剤またはグリセリン、ブドウ糖もしくは塩化ナトリウム等の等張化剤等を添加することも可能である。また、例えばグリセリン等の凍結保存剤を加えて凍結保存することもできる。
本発明の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤としては、動脈硬化性疾患またはステント再狭窄の治療または予防に用いることを意図した本発明の組成物があげられるが、例えば、本発明の組成物のうち、リポソームAが、リード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成され、該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能であるリポソーム、またはカチオン性物質を含むリード粒子と前記RNAを構成成分とする複合粒子、および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成され、該脂質二重膜の構成成分が極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能であるリポソームを含有することが好ましい。
また、本発明は、上記説明した本発明の組成物の、動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤の製造のための使用も提供する。
次に、実施例および試験例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例および試験例に限定されるものではない。なお、実施例1において用いたRNAは、前記表1のKLF5siRNAのうちKLF5siRNA No.4の1本鎖RNAのそれぞれの5’端をシアニン5(Cy5)で修飾し、それぞれの3’端に付加していたUUをdTdTに換えたRNA[Cy5-AAGCUCACCUGAGGACUCAdTdT (配列番号23)、Cy5-UGAGUCCUCAGGUGAGCUUdTdT (配列番号24)]を、北海道システムサイエンス社から入手し、アニーリングさせることにより調製した(以下、Cy5標識KLF-5 siRNAという)。また、実施例2および比較例1において用いたRNAは、bcl-2遺伝子のmRNAの連続する19塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAの5’端をCy5で修飾し、それぞれの3’端に付加していたUUをdTdTに換えたRNA[Cy5-GUGAAGUCAACAUGCCUGCdTdT (配列番号25)、Cy5-GCAGGCAUGUUGACUUCACdTdT (配列番号26)]であり(以下、Cy5標識bcl-2 siRNAという)、それぞれ北海道システムサイエンス社から入手し、アニーリングさせることにより調製した。また、比較例2において用いたRNAは、Luciferase(ルシフェラーゼ)[“フォトケミストリー・アンド・フォトバイオロジー(Photochem. Photobiol.)”, 1969年, 第10巻, 第3号, p.153-170参照]遺伝子のmRNAの連続する19塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAのそれぞれの3’端に付加していたUUをdTdTに換えたRNA[5’-CUUACGCUGAGUACUUCGAdTdT-3’(配列番号27)、5’-UCGAAGUACUCAGCGUAAGdTdT-3’(配列番号28)]であり(以下、Luc siRNAという)、それぞれ日本イージーティー社から入手し、アニーリングさせることにより調製した。また、実施例3および比較例3において用いたRNAは、KLF5遺伝子のmRNAの連続する19塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNA[5’-AAGCUCACCUGAGGACUCAdTdT(配列番号29)、5’-UGAGUCCUCAGGUGAGCUUdTdT(配列番号30)]であり(以下、KLF5 siRNAという)、それぞれ北海道システムサイエンス社から入手し、アニーリングさせることにより調製した。
DOTAP(アバンチポーラルリピッズ社製)/PEG-DSPE(日本油脂製、以下同様)/蒸留水を30mg/12mg/1mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた分散液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製)に4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製)に10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルター(ワットマン製)に24回通してリード粒子を調製した。得られたリード粒子の分散液0.5mLに、Cy5標識KLF5siRNAの8mg/mL水溶液0.25mLを添加し、エタノール1mLを加えて複合粒子を調製した。得られた複合粒子の分散液に、脂質二重膜の構成成分のEPC(日本油脂製)/PEG-DSPE/エタノールを120mg/25mg/1mLになるように混合して得られた溶液0.25mLを添加し、次に蒸留水23mLを徐々に加えて、エタノールの濃度が5v/v%以下になるように調整し、リポソームを調製した。得られたリポソームの分散液を超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、生理食塩水を添加して再分散させてリポソーム分散液を得た。EPC 120重量部に対して50重量部のPEG-DSPEを少量(リポソーム分散液の約1/25容量)のエタノールに溶解した(PEG-DSPEエタノール溶液)。リポソーム分散液とPEG-DSPEエタノール溶液をそれぞれ70℃で2分間加熱した。ついで、PEG-DSPEエタノール溶液にリポソーム分散液を添加し、混合後、70℃で2分間の加熱後、水冷し、組成物を得た。
試験例1
ApoE(アポリポ蛋白E)不全による粥状動脈硬化症モデル (Y Nakashima, AS Plump, EW Raines, JL Breslow, and R Ross. ApoE-deficient mice develop lesions of all phases of atherosclerosis throughout the arterial tree. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., Jan 1994; 14: 133 - 140参照) を用い、次の方法により、実施例1で得られた組成物が、動脈硬化部位に集積することを確認した。
ApoE不全マウス(Andrew S. Plump, Jonathan D. Smith, Tony Hayek, Katriina Aalto-Setala, Annemarie Walsh, Judy G. Verstuyft, Edward M. Rubin and Jan L. Breslow. Severe hypercholesterolemia and atherosclerosis in apolipoprotein E-deficient mice created by homologous recombination in ES cells. Cell 1992 71: 343-353参照)に高脂肪食(日本クレア、High Fat Diet 32)を7週間与えた。マウス尾静脈より実施例1で得られた組成物100μL (Cy5標識KLF5 siRNA 150μgに相当)を投与し、組成物投与後24時間後に安楽死させ大動脈を摘出後切開し、または凍結切片を作成し、動脈硬化部位を共焦点レーザー顕微鏡(LSM510 Meta; カールツァイス(Carl Zeiss))による蛍光観察を行った。
図1左に、実施例1で得られた組成物投与後24時間後の凍結切片の位相差顕微鏡による観察写真を示した。また、図1右に凍結切片の共焦点レーザー顕微鏡による観察写真を示した。
図1左より、血管内に動脈硬化部位が観察される。また、図1右より、Cy5標識KLF5 siRNAの赤色(図中の白色部分)が観察でき、動脈硬化部位にCy5標識KLF5 siRNAが分布していることが分かる。
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水を40mg/16mg/1mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた分散液を室温で0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに4回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに24回通してリード粒子を調製した。得られたリード粒子の分散液0.2496mLに、Cy5標識bcl-2siRNAの24mg/mL水溶液0.0832mLを添加し、複合粒子を調製した。得られた複合粒子の分散液0.32mLを、脂質二重膜の構成成分のEPC/PEG-DSPE/エタノール/蒸留水を15mg/3.125mg/0.625mL/0.375mLになるように混合して得られた溶液1.28mL(エタノール濃度はおよそ62.5v/v%)に添加した。次に蒸留水0.4mLを徐々に加え、エタノールの濃度をおよそ40v/v%とした。次に、EPC/PEG-DSPE/エタノール/蒸留水を62.5mg/62.5mg/0.4mL/0.6mLになるように混合して得られた溶液を0.128mL添加し、蒸留水14.896mLを添加してリポソームを調製した。得られたリポソームの分散液を超遠心分離(1時間、110,000×g、25℃)し、上清を除去し、沈殿に生理食塩水を添加して再分散させ、生理食塩水をさらに添加して濃度を調整し、組成物を得た。
比較例1
Cy5標識bcl-2siRNAを生理食塩水に溶解し組成物を得た。
試験例2
総頚動脈結紮モデル(Lindner V, Fingerle J, Reidy M.A. Mouse model of arterial injury. Mouse model of arterial injury. Circ Res (1993) 73:792-796参照)を用い、実施例2で得られた組成物を投与した場合には、血管障害後の新生内膜部位に、RNAが特異的に到達することを確認した。
C57BL/6Jマウスの総頚動脈を結紮し、3週間後に実施例2で得られた組成物および比較例1で得られた組成物をマウス1匹あたり100μL(Cy5標識bcl-2siRNA 150μgに相当)投与した。投与後24時間後にマウスを安楽死させ頚動脈を摘出し、凍結切片を作成しヘマトキシリン・エオシン染色(H/E染色)および共焦点レーザー顕微鏡によりCy5由来の蛍光観察を行なった。対照として生理食塩水をマウス1匹あたり100μL投与して同様に試験した。
図2〜4左に、それぞれ実施例2で得られた組成物、比較例1で得られた組成物および生理食塩水の投与後24時間後の凍結切片のH/E染色像、図2〜4右に共焦点レーザー顕微鏡による蛍光観察像を示した。
図2〜4左に血管の形状が示され、図2右には、Cy5標識siRNAの赤色の蛍光(図中の白色部分)が強く認められ、実施例2で得られた組成物は、RNAが新生内膜部位に集積していることが分かる。一方、図3右には、Cy5標識siRNAの赤色の蛍光(図中の白色部分)が認められず、比較例1で得られた組成物は、RNAが新生内膜部位に集積していないことが分かる。なお、図4右から、自家蛍光がないことが確認された。
DOTAP/PEG-DSPE/蒸留水を40mg/16mg/1mLになるように混合し、ボルテックスミキサーで振とう攪拌した。得られた分散液を70℃で1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに5回、0.4μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、0.2μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、0.1μmのポリカーボネートメンブランフィルターに10回、さらに0.05μmのポリカーボネートメンブランフィルターに18回通してリード粒子を調製した。得られたリード粒子の分散液4.12mLに、KLF5 siRNAの24mg/mL水溶液1.3728mLを加えて複合粒子を調製した。得られた複合粒子の分散液5.28mL を、脂質二重膜の構成成分のEPC/PEG-DSPE/エタノール/蒸留水を15mg/3.125mg/0.625mL/0.375mLになるように混合して得られた溶液21.12mL(エタノール濃度はおよそ62.5v/v%)に添加し、次に蒸留水6.6mLを徐々に加え、EPC/PEG-DSPE/エタノール/蒸留水を62.5mg/62.5mg/0.4mL/0.6mLになるように混合して得られた溶液を添加して、エタノールの濃度をおよそ20v/v%にし、リポソームを調製した。得られたリポソームの分散液をエタノール濃度が1v/v%以下となるまで交換用水として蒸留水を使用したタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)した。TFFはタンクから膜面に対し平行に原液を流し、膜表面の細孔より小さい物質だけがろ過液として排出され、細孔より大きなリポソームと残液はタンクに戻った。タンク中の液体はろ過により徐々に減少するため、同時に交換用水として減少分した液体と同量の蒸留水をサイフォン式に供給した。この方法により、得られたリポソームの分散液の濃度は一定のまま、エタノールだけを除去した。続いて交換用水を生理食塩水として塩濃度を高めた後、交換用水の供給をやめることで濃縮し、組成物を得た。
比較例2
実施例3におけるKLF5 siRNAを、Luc siRNAに換え、同様に組成物を得た。
比較例3
KLF5 siRNAを生理食塩水に溶解し組成物を得た。
試験例3
試験例2と同様に疾患モデルを作成し、次の方法により、実施例3で得られた組成物の血管障害後の新生内膜形成に及ぼす効果を評価した。
C57BL/6Jマウスの総頚動脈から内頚動脈と椎骨動脈が分岐する点から500μm総頚動脈側を結紮し、2日毎に実施例3で得られた組成物を100μL(KLF5 siRNA 150μgに相当)ずつ2週間投与した(n=6)。初回投与後2週間後にマウスを安楽死させ頚動脈を摘出し、凍結切片を作成しH/E染色を行なった。
また、対照として、実施例3で得られた組成物に換えて、比較例3で得られた組成物を100μL(KLF5siRNA 150μgに相当)投与して同様に試験した(n=7)。さらに、実施例3で得られた組成物に換えて、比較例2で得られた組成物を毎回100μL(LucsiRNA 150μgに相当)投与して同様に試験した(n=7)。
実施例3、比較例2および比較例3で得られた組成物を投与後、2週間後の凍結切片のH/E染色像を撮影して観察するとともに、画像解析(ImageJ)により、切片上の内膜と中膜の面積を計測した。
観察の結果、実施例3で得られた組成物を投与した場合、比較例2および比較例3で得られた組成物を投与した場合と比較し、新生内膜による頚動脈の狭窄が小さくなっていることが確認できた。
図5に内膜と中膜の面積の和を表す棒グラフを示した。実施例3で得られた組成物を投与した群は比較例2および比較例3で得られた組成物を投与した群と比較して、内膜と内膜の面積の和が低下し、本願発明の組成物の動脈硬化性疾患における治療剤または予防剤としての可能性が明らかとなった。比較例2および比較例3で得られた組成物を投与した群に対し、実施例3で得られた組成物を投与した群の抑制率はそれぞれ26%および22%、p=0.04および0.30であった。

Claims (32)

  1. (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、組成物。
  2. リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、請求項1記載の組成物。
  3. RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、請求項1または2記載の組成物。
  4. 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子が、血管内皮増殖因子、血管内皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ;MAPK)シグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、クルッペル様因子(KLF)、サバイビン、Ets転写因子、核因子および低酸素誘導因子のいずれかについての遺伝子である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLFについてのmRNAである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  6. 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLF5のmRNAである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  7. mRNAがヒトのmRNAである、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
    該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
  9. 極性有機溶媒がアルコールである、請求項8記載の組成物。
  10. 極性有機溶媒がエタノールである、請求項8記載の組成物。
  11. リード粒子が、カチオン性物質を含むリード粒子であり、脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、請求項8〜10のいずれかに記載の組成物。
  12. RNAを封入したリポソームが、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
    該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
  13. カチオン性物質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、請求項11または12記載の組成物。
  14. 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、請求項11〜13のいずれかに記載の組成物。
  15. 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、請求項11〜14のいずれかに記載の組成物。
  16. (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  17. リポソームが、静脈内投与可能な大きさのリポソームである、請求項16記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  18. RNAが、RNA干渉(RNAi)を利用した前記遺伝子の発現抑制作用を有するRNAである、請求項16または17記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  19. 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子が、血管内皮増殖因子、血管内皮増殖因子受容体、線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子受容体、上皮成長因子、上皮成長因子受容体、MAPキナーゼシグナル伝達関連因子、血小板由来増殖因子、血小板由来増殖因子受容体、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、KLF、サバイビン、Ets転写因子、核因子および低酸素誘導因子のいずれかについての遺伝子である、請求項16〜18のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  20. 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLFについてのmRNAである、請求項16〜18のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  21. 動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAがKLF5のmRNAである、請求項16〜18のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  22. mRNAがヒトのmRNAである、請求項16〜21のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  23. RNAを封入したリポソームが、リード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
    該脂質二重膜の構成成分が特定の極性有機溶媒に可溶であり、該脂質二重膜の構成成分および該複合粒子が、特定の濃度で該極性有機溶媒を含む液に分散可能である、請求項16〜22のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  24. 極性有機溶媒がアルコールである、請求項23記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  25. 極性有機溶媒がエタノールである、請求項23記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  26. リード粒子が、カチオン性物質を含むリード粒子であり、脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、請求項23〜25のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  27. RNAを封入したリポソームが、カチオン性物質を含むリード粒子と該RNAを構成成分とする複合粒子および該複合粒子を被覆する脂質二重膜から構成されるリポソームであり、
    該脂質二重膜が、中性脂質および水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体を構成成分とする脂質二重膜である、請求項16〜22のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  28. カチオン性物質がN-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジオレオイルプロピル)]-N,N-ジメチルアミン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシプロピル)]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル臭化アンモニウム、1,2-ジリノレイルオキシ- N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムおよび3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロールから選ばれる一つ以上である、請求項26または27記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  29. 水溶性物質の脂質誘導体、脂肪酸誘導体または脂肪族炭化水素誘導体が、ポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミンである、請求項26〜28のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  30. 中性脂質が卵黄ホスファチジルコリンである、請求項26〜29のいずれかに記載の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤。
  31. (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、組成物を哺乳動物に投与する動脈硬化性疾患治療方法またはステント再狭窄抑制方法。
  32. (i)動脈硬化性疾患またはステント再狭窄に関連する遺伝子のmRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な塩基の配列を含むRNAおよび(ii)該RNAを内部に封入したリポソームを含有する、組成物の動脈硬化性疾患治療またはステント再狭窄抑制剤の製造のための使用。
JP2011506086A 2009-03-27 2010-03-24 核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤 Pending JPWO2010110318A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009079059 2009-03-27
JP2009079059 2009-03-27
PCT/JP2010/055085 WO2010110318A1 (ja) 2009-03-27 2010-03-24 核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2010110318A1 true JPWO2010110318A1 (ja) 2012-10-04

Family

ID=42781011

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011506086A Pending JPWO2010110318A1 (ja) 2009-03-27 2010-03-24 核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2010110318A1 (ja)
WO (1) WO2010110318A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB201909680D0 (en) * 2019-07-05 2019-08-21 Malvern Cosmeceutics Ltd Hypercoiling polymer derivatives

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006080118A1 (ja) * 2005-01-28 2006-08-03 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. 標的遺伝子の発現を抑制する組成物
WO2007080902A1 (ja) * 2006-01-11 2007-07-19 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. 眼球において標的遺伝子の発現を抑制する組成物および眼球における疾患の治療剤

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5801055B2 (ja) * 2008-08-01 2015-10-28 協和発酵キリン株式会社 標的遺伝子の発現を抑制する組成物

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006080118A1 (ja) * 2005-01-28 2006-08-03 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. 標的遺伝子の発現を抑制する組成物
WO2007080902A1 (ja) * 2006-01-11 2007-07-19 Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd. 眼球において標的遺伝子の発現を抑制する組成物および眼球における疾患の治療剤

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6010035548; 永井良三: '厚生労働科学研究費補助金(ヒトゲノム、再生医療等研究事業) 分担研究報告書 血管保護療法に関する研究' ,厚生労働科学研究費補助金 ヒトゲノム・再生医療等研究事業 血管新生と血管保護療法の開発に関する研究( , 2004, p.11-14 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2010110318A1 (ja) 2010-09-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6023126B2 (ja) 標的遺伝子の発現を抑制する組成物
JP5977394B2 (ja) 脂質に封入された干渉rna
JP5801055B2 (ja) 標的遺伝子の発現を抑制する組成物
RU2711531C2 (ru) Средство для лечения фиброза почек
EP1970078A1 (en) Composition inhibiting the expression of target gene in eyeball and remedy for disease in eyeball
WO2010110318A1 (ja) 核酸を含有する動脈硬化性疾患治療剤
WO2010110314A1 (ja) 核酸を含有する肺高血圧症治療剤
JP5872898B2 (ja) 標的遺伝子の発現を抑制する組成物
JP5952197B2 (ja) 標的遺伝子の発現を抑制する組成物
WO2018062233A1 (ja) カチオン性脂質としての化合物
US20120244210A1 (en) Composition for suppressing expression of target gene
US20120207818A1 (en) Composition for suppressing expression of target gene
US20150247148A1 (en) Composition for suppressing expression of target gene

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130322

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130322

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20130322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140415

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140819