JPWO2009081444A1 - 質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

イオンを周回飛行させるための扇形電場を形成する、一般膨張材料から成る一対の内側電極(2a)と外側電極(2b)とを一般膨張材料である支持部材(13)上に取り付け、この支持部材(13)を外側電極(2b)のさらに外方の所定の位置(P)において低膨張材料から成る基台(11)に対し固定する。温度上昇に伴って支持部材(13)及び電極(2a、2b)が伸張すると、電極(2a、2b)は全体的に内方側へと移動し、それによって周回軌道の1周回の距離が短くなる。一方、内側電極(2a)と外側電極(2b)との間隔が広がり、扇形電場の強度が下がることにより、飛行距離が長くなる。そこで、基台(11)への支持部材(13)の固定位置を適宜に選ぶことにより、飛行距離の増減を相殺し、温度変動が生じた場合でも同一質量のイオンの飛行時間の変動を抑制することができる。

Description

本発明は、イオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるためのイオン光学系を備える多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置に関する。
一般に飛行時間型質量分析装置(TOFMS)では、一定のエネルギーで以て加速したイオンが質量に応じた飛行速度を持つことに基づき、一定距離を飛行するのに要する時間を計測することで、その飛行時間からイオンの質量を算出する。したがって、質量分解能を向上させるためには、飛行距離を伸ばすことが特に有効である。しかしながら、直線的に飛行距離を伸ばそうとすると装置が大形化することが避けられず実用的でないため、飛行距離を伸ばすために従来、多重周回飛行時間型質量分析装置と呼ばれる質量分析装置が開発されている(例えば特許文献1など参照)。こうした多重周回飛行時間型質量分析装置では、2乃至4個(又はそれ以上の個数)の扇形電場を用いて8の字状や略円状などの形状の閉じた周回軌道を形成し、この周回軌道に沿ってイオンを多数回繰り返し周回させることで飛行距離を実効的に長くしている。こうした構成によれば、飛行距離は装置サイズの制約を受けず、周回数を増す毎に質量分解能を向上させることができる。
また、こうした多重周回飛行時間型質量分析装置では、リフレクトロン型TOFMSと同様に、扇形電場を形成する電極の曲率、形状などを工夫することにより、大きなエネルギーを持つイオンほど中心軌道よりも外側の、つまり距離の長い軌道を飛行させることで、イオンが持つエネルギーの拡がり(ばらつき)による飛行時間の拡がりを抑制することができる。これにより、イオンが加速される際の初期エネルギーのばらつきの影響を軽減し、質量分解能を一層向上させることができる。
ところで、一般にTOFMSにおいては、イオンの加速エネルギーが同一で且つ同一位置から同時にイオンが出発したと仮定した場合、イオンの質量mと飛行時間Tとの関係は理論的には、T∝m−1/2、となる筈である。しかしながら、実際には、パルス的な加速の際の電場の立ち上がり時間の影響などにより上記関係式からのずれが生じる。そこで、一般的には、様々な既知質量のイオン(標準試料由来のイオン)について飛行時間を予め測定しておき、上記関係式からのずれを求め、これに基づいて飛行時間と質量との関係の校正を行う校正式を作成しておく。そして、未知試料由来の目的イオンの飛行時間を測定した際に、上記関係式及び校正式を利用することで、その目的イオンの質量を算出する。これにより、質量の算出精度を高めることができる。このとき、目的イオンの質量の測定精度は様々な要因で決まるが、主なものとして次のような要因が挙げられる。
(1)校正の基準とした既知質量のイオンの質量精度
(2)校正のための既知質量のイオンの飛行時間の測定精度
(3)校正式の精度(例えば近似の正確性など)
(4)目的イオンの飛行時間の測定精度
(5)校正のための既知質量のイオンの測定時と未知試料由来の目的イオンの測定時とにおける電気的・機械的条件の相違
これら要因のうち、(1)については十分な精度で質量が知られているイオンを選択すれば大きな問題はない。(2)及び(4)については、装置における時間計測精度や分解能などを向上させる必要があるものの、一般に時間・周波数の測定は技術的に比較的高精度化が容易であり、また、時間分解能については飛行時間を長くすることができる多重周回飛行時間型質量分析装置では特に有利であると言える。(3)については、校正点の数を増やすことや、目的イオンの質量が或る程度推定できる場合にはこの質量に近い質量を持つ校正用試料を用いて校正式を作成することなどによって、精度の向上が期待できる。
(5)については、最も大きな変動要因となり得るのが周囲の環境温度の変動である。例えば上述のような多重周回飛行時間型質量分析装置において温度が変動した場合、扇形電場を形成する複数の電極の相対位置関係が変化し、それによって飛行距離が変化して飛行時間の変動が生じるおそれがある。特に上記のような位置の変動は、一般に電気回路の温度補償などで行われるようなフィードバックの手法を適用して補償することが困難である。そこで、通常、温度の安定化や、温度変動の影響が相対的に小さい低膨張材料の採用、といった方法で、位置の変動を抑制することが行われている。
温度の安定化のためには、外部の温度変動を遮断するための十分な断熱手段、装置内部(電気回路等)で発生する熱を外部へ排出する排熱手段、装置内部の温度変動を高精度で且つ迅速に検知する温度センサ、温度センサによる検知温度に基づいて温度を一定に維持するように正又は負の熱量を与える加熱・冷却手段などが必要となる。このため、温度の安定性を高めようとすると、装置の大形化・重量化が避けられず、またコストの増加も大きい。
一方、線膨張率の低い低膨張材料を採用する場合、選択できる材料が大きな制約を受ける。上記のようなイオン光学系は高い真空雰囲気中に配置されるため、高真空雰囲気中でも変形等を生じないような十分な剛性が必要であり、また、使用される部位に応じて十分な導電性又は絶縁性が要求され、さらには高い寸法精度を確保するために加工性も良好であることが望ましい。しかしながら、こうした様々な要件を満たす材料を低膨張材料の中からのみ選択することはかなり困難である。また、もちろん、そうした材料は一般的な線膨張率を持つ材料に比べてかなり高価であるため、高コストとなることが避けられない。
なお、上述したような問題は、イオンを周回軌道に沿って所定回数周回させた後に検出する構成のみならず、イオンを周回軌道に沿って周回させながらその途中でイオン非破壊型検出器(又はイオンの一部を分離して検出する検出器)により繰り返しイオン検出を行い、周回毎に得られる検出信号をフーリエ変換に供することでイオンの質量電荷比を算出する構成の、いわゆるフーリエ変換型質量分析装置でも同じである(例えば特許文献2参照)。
特開平11−195398号公報 特開2005−79037号公報
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、低廉なコストで、且つ加工性などの製造上の容易性を確保しつつ、質量と飛行時間との関係の温度依存性を抑制し、高い精度での質量分析を行うことが可能な多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された第1発明は、複数の扇形電場の作用によってイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるイオン光学系を有する多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置において、
a)前記扇形電場を形成するための内側電極と外側電極とを一対とする、所定の線膨張率を有する材料から成る偏向電極と、
b)前記一対の内側電極及び外側電極が一体に取り付けられた、該電極と同一又は異なる線膨張率を有する材料から成る支持部材と、
c)前記偏向電極が取り付けられた前記支持部材を所定の位置で固定するための、前記偏向電極及び前記支持部材のいずれよりも低い線膨張率を有する材料から成る基台と、
を備え、前記基台への前記支持部材の固定位置は該支持部材に取り付けられた前記外側電極のさらに外方の位置であることを特徴としている。
第1発明に係る質量分析装置において、内側電極及び外側電極が取り付けられた支持部材はその外側電極のさらに外方の位置において基台に固定されているため、温度上昇によって支持部材が膨張すると、内側電極及び外側電極は全体的に内側電極の内方側に移動する。したがって、複数の扇形電場により形成される周回軌道は収縮し、1周回当たりの飛行距離は短くなる。一方、このときの電極の移動量は固定点から離れるほど大きくなるため、内側電極は外側電極よりも移動量が大きい。そのため、対である内側電極と外側電極との間隔が広がり、所定電圧を両電極間に印加したときに形成される扇形電場の強度が低下する。その結果、該扇形電場内でのイオンの飛行経路は外側電極側に近付き、周回軌道に沿った飛行距離は逆に長くなる。即ち、上記構成により、温度上昇に伴って飛行距離が短くなる作用と長くなる作用とが同時に生じるため、両者が相殺されるように適宜にパラメータを決めることにより、温度変動時にも実質的な飛行距離が殆ど変化しないようにすることができる。
また、この場合、電極自体は線膨張率が比較的大きな材料から成るものであっても、それを包含して、温度上昇時の支持部材の熱膨張により実質的な飛行距離の変動を抑えるようにすることができる。即ち、第1発明に係る質量分析装置において、前記基台への前記支持部材の固定位置は、温度変動が生じた際の前記一対の内側電極と外側電極との間隔の変化に伴う扇形電場の強度変化の影響と、前記一対の内側電極及び外側電極の全体的な移動に伴う飛行距離の変化の影響とが相殺されるように定められる構成とするとよい。
これにより、内側電極及び外側電極を低線膨張率の材料から成るものとする必要がなく、材料の選択の自由度が広がるので、例えば導電性や加工性が良好な材料、或いは低価格の材料などを適宜選択することができる。
上記第1発明に係る質量分析装置では、一対の内側電極と外側電極とを1つの支持部材により一体に基台に対し固定していたが、一対の内側電極と外側電極とをそれぞれ独立に基台に固定可能な場合には、次の第2発明の構成とすることができる。
即ち、上記課題を解決するために成された第2発明は、複数の扇形電場の作用によってイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるイオン光学系を有する多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置において、
a)前記扇形電場をそれぞれ形成するための内側電極と外側電極とを一対とする、所定の線膨張率を有する材料から成る偏向電極と、
b)前記一対の内側電極及び外側電極がそれぞれ独立に取り付けられた、該電極と同一又は異なる線膨張率を有する材料から成る一対の支持部材と、
c)前記一対の内側電極及び外側電極が取り付けられた前記一対の支持部材をそれぞれ所定の位置で固定するための、前記偏向電極及び前記支持部材のいずれよりも低い線膨張率を有する材料から成る基台と、
を備え、前記基台への前記一対の支持部材のそれぞれの固定位置は、温度変動が生じた際に生じる前記基台、前記支持部材及び前記偏向電極のそれぞれの膨張又は収縮が内側電極の外面、及び外側電極の内面上の位置で釣り合うように定められることを特徴としている。
この第2発明に係る質量分析装置では、一対の内側電極と外側電極が線膨張率の比較的大きな材料から成るものである場合に、温度変化に伴ってその電極自体の大きさは膨張・収縮により変化するものの、内側電極の外面、及び外側電極の内面の絶対的な位置、及び、内側電極と外側電極との間の間隔、は殆ど変化しない。これにより、内側電極及び外側電極を低線膨張率の材料から成るものとする必要がなく、材料の選択の自由度が広がるので、例えば導電性や加工性が良好な材料、或いは低価格の材料などを適宜選択することができる。
また、第1発明に係る質量分析装置とは逆に、基台の線膨張率が偏向電極及び支持部材の線膨張率よりも高い場合でも、基台への支持部材の固定位置を変えることにより、第1発明に係る質量分析装置と同様に、温度変動が生じた際の一対の内側電極と外側電極との間隔の変化に伴う扇形電場の強度変化の影響と、一対の内側電極及び外側電極の全体的な移動に伴う飛行距離の変化の影響とが相殺されるようにすることができる。
即ち、上記課題を解決するために成された第3発明は、複数の扇形電場の作用によってイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるイオン光学系を有する多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置において、
a)前記扇形電場を形成するための内側電極と外側電極とを一対とする、所定の線膨張率を有する材料から成る偏向電極と、
b)前記一対の内側電極及び外側電極が一体に取り付けられた、該電極と同一又は異なる線膨張率を有する材料から成る支持部材と、
c)前記偏向電極が取り付けられた前記支持部材を所定の位置で固定するための、前記偏向電極及び前記支持部材のいずれよりも高い線膨張率を有する材料から成る基台と、
を備え、前記基台への前記支持部材の固定位置は、該支持部材に取り付けられた一対の電極の位置から前記周回軌道の周回の中心位置を挟んでさらに離れた位置であることを特徴としている。
第1乃至第3発明に係る質量分析装置によれば、周囲環境温度が上昇した場合でもイオンの飛行時間の変動が抑制されるため、質量精度が向上する。また、従来と同程度の質量精度を達成すればよい場合には、従来よりも大きな温度変動を許容できるため、温度の変動を抑えるための温度安定化手段を簡素化することができ、装置のコスト低減や小形・軽量化を容易することができる。また、形状が相対的に複雑で且つ高い加工精度が要求されるイオン偏向用の電極の材料として、線膨張率は或る程度大きくても加工性が良好な材料を選択することができるので、電極の生産性を向上させ、製造コストも低く抑えることができる。
本発明の一実施例による多重周回飛行時間型質量分析装置のイオン光学系の概略上面図。 本実施例の多重周回飛行時間型質量分析装置における1組の扇形電極の取付構造を説明するための上面図(a)及び略断面図(b)。 他の実施例の多重周回飛行時間型質量分析装置における1組の扇形電極の取付構造を説明するための上面図(a)及び略断面図(b)。 他の実施例の多重周回飛行時間型質量分析装置における1組の扇形電極の取付構造を説明するための上面図(a)及び略断面図(b)。
符号の説明
1…イオン源
E1、E2、E3、E4、E5、E6…トロイダル扇形電場
11…基台
13、13a、13b…電極取付板
2、3、4、5…主電極
2a、3a、4a、5a、7a、8a…内側電極
2b、3b、4b、5b、7b、8b…外側電極
7…入射電極
7c、8c…イオン通過開口
8…出射電極
C…周回軌道
Cin…入射軌道
Cout…出射軌道
P、P1、P2…固定点
[第1実施例]
本発明の一実施例(第1実施例)である多重周回飛行時間型質量分析装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は本実施例による質量分析装置においてイオンを多重周回させるためのイオン光学系の概略上面図である。
このイオン光学系では、外側電極と内側電極とを組とする主電極を4個配置し、それら主電極に印加される直流電圧により形成される静電場の作用によって、上面視略矩形状の周回軌道Cを形成する。即ち、第1主電極2の内側電極2aと外側電極2bとの間には第1トロイダル扇形電場E1、第2主電極3の内側電極3aと外側電極3bとの間には第2トロイダル扇形電場E2、第3主電極4の内側電極4aと外側電極4bとの間には第3トロイダル扇形電場E3、第4主電極5の内側電極5aと外側電極5bとの間には第4トロイダル扇形電場E4がそれぞれ形成され、それらトロイダル扇形電場E1〜E4を通過する際にイオンは略円弧状に屈曲され、電場が及ばない自由飛行空間ではイオンはほぼ直進することで、図示したような周回軌道Cが形成される。第1乃至第4主電極2、3、4、5は全て同一形状、同一サイズである。
この周回軌道Cの中で、第4主電極5の出口端面と第1主電極2の入口端面との間には、第1乃至第4主電極2、3、4、5と同一形状、同一サイズであって、イオン通過開口7cが形成された外側電極7bと内側電極7aとから成る入射電極7が配置され、該入射電極7に印加される直流電圧により形成される静電場の作用によって、周回軌道Cから外方に湾曲する入射軌道Cinが形成される。一方、第1主電極2の出口端面と第2主電極3の入口端面との間には、第1乃至第4主電極2、3、4、5と同一形状、同一サイズであって、イオン通過開口8cが形成された外側電極8bと内側電極8aとから成る出射電極8が配置され、該出射電極8に印加される直流電圧により形成される静電場の作用によって、周回軌道Cから外方に湾曲する出射軌道Coutが形成される。入射軌道Cinの入口端にはイオン源1が設置され、出射軌道Coutの出口端にはイオン検出器9が設置されている。
なお、ここで、イオン源1は分析対象の成分をイオン化するイオン化手段でもよいが、例えば三次元四重極型イオントラップ或いはリニアイオントラップなどのように、イオンをクーリングして一時的に蓄積した状態からイオンに加速エネルギーを与えることでイオンの飛行の出発点となるものであることが好ましい。
この質量分析装置における基本的な質量分析動作を概略的に説明する。イオン源1において各種イオンに一斉に加速エネルギーを与えて入射軌道Cinに沿って飛行を開始させる。このとき、入射電極7には図示しない電源部から所定の電圧が印加され、それにより生成されるトロイダル扇形電場E5の作用により、イオンは図示するように湾曲しつつ飛行し周回軌道Cに乗る。それ以降、入射電極7には電圧が印加されず、入射電極7つまりはトロイダル扇形電場E5は存在しないものとみなすことができる。また、このとき、第1乃至第4主電極2、3、4、5にはそれぞれ所定の電圧が印加され、それによってトロイダル扇形電場E1、E2、E3、E4が形成される。一方、出射電極8には電圧が印加されず、トロイダル扇形電場E6は存在しないものとみなすことができる。
上述のように周回軌道Cに乗ったイオンは、扇形電場E1、E2、E3、E4の作用により、周回軌道Cに沿って飛行する。異なる質量を持つイオンが混在して周回軌道Cに導入された場合には、周回軌道Cを飛行する間に質量が小さなイオンほど先行し、周回軌道C上での相対的な位置がずれてゆく。イオンが所定周回数だけ周回軌道Cに沿って飛行した後に、出射電極8に所定の電圧を印加し、それにより生成されるトロイダル扇形電場E6の作用により、イオンを図示するように湾曲させて周回軌道Cから離脱させる。そして、出射軌道Coutに沿って進むイオンはイオン検出器9に入射し、イオンの量に応じた検出信号が出力される。
なお、図1に示した周回軌道Cはあくまでも中心軌道であり、全てのイオンがこの中心軌道上を通るわけではない。例えば質量が同じイオンであっても、イオン源1を出発する際に、より大きな加速エネルギーを付与されたイオンは外側電極に近い位置を通る。その場合、実質的な飛行距離は若干長くなるが、それによって相対的に小さな加速エネルギーを付与されたイオンとの加速エネルギーの差異に起因する飛行時間のばらつきが縮小するように修正される。これが、このイオン光学系でのエネルギー収束である。
図2において、(a)は第1主電極2のみの上面視平面図、(b)はこの第1主電極2の取付構造を示す概略断面図である。なお、他の3つの主電極3、4、5も同じ構造を有している。
内側電極2aと外側電極2bとはいずれも電極取付板13の上に固着されており、この電極取付板13は主電極2の取付位置とは反対側、つまり周回軌道Cの外方側の端部(図中にPで示す位置)において固定台11に固着されている。ここで、固定台11は線膨張率が低い(例えば2ppm/℃程度)低膨張材料から形成され、電極取付板13、内側電極2a及び外側電極2bは一般的な線膨張率(例えば20ppm/℃程度)の一般膨張材料から形成される。
いま、この電極取付構造全体の温度が上昇した状況を考える。上記低膨張材料と一般膨張材料との線膨張率の差は大きいので、温度上昇に伴う低膨張材料の膨張はないものとみなす。一方、温度上昇に伴って一般膨張材料は膨張するから、電極取付板13は図2(b)の矢印で示すように周回軌道Cの内方に延展する。したがって、この電極取付板13の上に固着されている主電極2も全体的に周回軌道Cの内方に移動する。このような移動は周回軌道Cの1周の飛行距離が短くなることを意味する。
一方、内側電極2aは外側電極2bよりも固定点Pから遠いため、内側電極2aのほうが外側電極2bよりも周回軌道C内方への移動量が大きい。したがって、内側電極2aと外側電極2bとの間隔dは広がる。間隔dが広がると内側電極2aと外側電極2bとの間に作用する電場の強度が下がるため、電場の強度が大きい場合に比べてイオンは外側電極2bに近い位置を通るようになる。これは飛行距離が長くなることを意味する。
即ち、上述したような主電極2全体の移動による飛行距離の減少と、両電極2a、2b間の距離が広がることによる飛行距離の増加とが同時に起こる。そのため、その減少と増加とを相殺することで、温度上昇に伴う飛行距離の変化を抑えることができる。前者、つまり飛行距離の減少の程度は固定点Pの位置に依存し、固定点Pを外方にする、つまり主電極2から離すほど、飛行距離の減少量は大きくなる。したがって、各材料の線膨張率の差、内側電極2aと外側電極2bとの初期的な間隔、電極取付板13の大きさ、電極取付板13上の電極2a、2bの固着位置、などの条件に応じて固定点Pの位置を適宜に定めることにより、上述した飛行距離の減少量と増加量とをほぼ同じ程度とし、温度上昇に伴う飛行距離の変化をゼロに近い状態にすることができる。なお、このような適切な固定点Pの位置は実験的に又は計算機シミュレーションにより決めることができる。
主電極2における軌道が単純な円軌道となる場合には、固定点Pの位置は以下のようになる。いま、主電極間の直線的な飛行空間を除き、主電極2、3、4、5の各扇形電場中を円軌道に沿って1周飛行するのに要する時間Tは、電場の強度をEとしたとき、近似的に、T∝E1/2 の関係となる。また、低膨張材料の線膨張率をα、一般膨張材料の線膨張率をβとしたとき、電極間の間隔dは、温度の変動Δτに対し、一次近似では、E’=E・(1−β・Δτ)で広がる。したがって、これにより生じる飛行時間の変化量ΔTは、ΔT∝(−1/2)・β・Δτ、となる。ここで、周回軌道Cに沿って隣接する主電極の距離が狭くなることにより、上記飛行時間の変化量ΔTを相殺する条件は、円軌道の中心(図1中のO’)から固定点Pまでの距離Xが、周回軌道半径(図1中の点Oから内側電極2aの内面までの距離)rに対し、X=2・r・β/(β−α)となる。
以上のように、本実施例の多重周回飛行時間型質量分析装置では、温度が上昇した場合でもイオンの飛行距離が変動することを抑制することができ、それによって高い精度で質量分析を行うことができる。
[第2実施例]
次に、電極取付構造が相違する他の実施例(第2実施例)による多重周回飛行時間型質量分析装置について図3を参照して説明する。この第2実施例では、低膨張材料から成る固定台11に対し、主電極2の内側電極2aと外側電極2bとをそれぞれ独立に電極取付板13a、13bを介して固着する。このとき、各電極2a、2bの外周面よりも少し外方に固定点P1、P2を位置させる。
このように固定点P1、P2を選ぶことにより、温度変化が生じて内側電極2aと外側電極2b、及び電極取付板13a、13bがそれぞれ膨張した場合でも、内側電極2aと外側電極2bとの間隔は殆ど変化しない。また、固定台11はもともと熱膨張が小さいので、固定台11上に設置された主電極2,3、4、5同士の距離の変化も小さい。これにより、温度変化に対する飛行距離の変化を抑制することができる。
この場合、上記と同様に、周回軌道半径をr、円軌道中心から固定点までの距離をx、固定点から電極内面までの距離をy、低膨張材料の線膨張率をα、一般膨張材料の線膨張率をβとすると、r=x−y、y・β=x・α、となる。
[第3実施例]
さらにまた、電極取付構造が相違する他の実施例(第3実施例)による多重周回飛行時間型質量分析装置について図4を参照して説明する。この第3実施例は、温度上昇時の飛行距離の増加と減少とを相殺させて飛行距離の変化を抑制するという基本原理は、上記第1実施例と同じである。異なるのは、固定台11の線膨張率を主電極2及び電極取付板13の線膨張率よりも高いものとし、それに伴い電極取付板13を固定台11に取り付ける固定点Pの位置を変更することである。
この場合、固定点Pは内側電極2aから見てさらに周回軌道Cの内方であり、しかも周回軌道Cの中心点Oよりもさらに遠い位置に設けられる。各主電極2、3、4、5で同様に固定点Pが設定されることで、温度上昇時に固定台11が膨張すると主電極2、3、4、5は全体として近づくように、つまり中心点Oに近付くように移動する。一方、電極取付板13は固定台11ほどではないものの熱膨張するため、それによって各主電極2、3、4、5は中心点Oから離れる。また、各電極取付板13上で例えば内側電極2aと外側電極2bとの間の距離は遠ざかる。このように、飛行距離を短くする要素と長くする要素とが同時に生じるから、固定点Pの位置を適切に定めることにより、第1実施例と同様に、飛行距離の変化を抑えることが可能となる。
なお、本発明に係る質量分析装置は、上述したように周回軌道Cの外側にイオン検出器を設ける構成のみならず、周回軌道Cの途中にイオン非破壊型のイオン検出器を設け、周回毎に検出信号を取得するフーリエ変換型質量分析装置にも適用できることは当然である。また、それ以外の点についても、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。

Claims (4)

  1. 複数の扇形電場の作用によってイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるイオン光学系を有する多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置において、
    a)前記扇形電場を形成するための内側電極と外側電極とを一対とする、所定の線膨張率を有する材料から成る偏向電極と、
    b)前記一対の内側電極及び外側電極が一体に取り付けられた、該電極と同一又は異なる線膨張率を有する材料から成る支持部材と、
    c)前記偏向電極が取り付けられた前記支持部材を所定の位置で固定するための、前記偏向電極及び前記支持部材のいずれよりも低い線膨張率を有する材料から成る基台と、
    を備え、前記基台への前記支持部材の固定位置は該支持部材に取り付けられた前記外側電極のさらに外方の位置であることを特徴とする質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の質量分析装置であって、前記基台への前記支持部材の固定位置は、温度変動が生じた際の前記一対の内側電極と外側電極との間隔の変化に伴う扇形電場の強度変化の影響と、前記一対の内側電極及び外側電極の全体的な移動に伴う飛行距離の変化の影響とが相殺されるように定められることを特徴とする質量分析装置。
  3. 複数の扇形電場の作用によってイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるイオン光学系を有する多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置において、
    a)前記扇形電場をそれぞれ形成するための内側電極と外側電極とを一対とする、所定の線膨張率を有する材料から成る偏向電極と、
    b)前記一対の内側電極及び外側電極がそれぞれ独立に取り付けられた、該電極と同一又は異なる線膨張率を有する材料から成る一対の支持部材と、
    c)前記一対の内側電極及び外側電極が取り付けられた前記一対の支持部材をそれぞれ所定の位置で固定するための、前記偏向電極及び前記支持部材のいずれよりも低い線膨張率を有する材料から成る基台と、
    を備え、前記基台への前記一対の支持部材のそれぞれの固定位置は、温度変動が生じた際に生じる前記基台、前記支持部材及び前記偏向電極のそれぞれの膨張又は収縮が内側電極の外面、及び外側電極の内面上の位置で釣り合うように定められることを特徴とする質量分析装置。
  4. 複数の扇形電場の作用によってイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させるイオン光学系を有する多重周回飛行時間型又はフーリエ変換型の質量分析装置において、
    a)前記扇形電場を形成するための内側電極と外側電極とを一対とする、所定の線膨張率を有する材料から成る偏向電極と、
    b)前記一対の内側電極及び外側電極が一体に取り付けられた、該電極と同一又は異なる線膨張率を有する材料から成る支持部材と、
    c)前記偏向電極が取り付けられた前記支持部材を所定の位置で固定するための、前記偏向電極及び前記支持部材のいずれよりも高い線膨張率を有する材料から成る基台と、
    を備え、前記基台への前記支持部材の固定位置は、該支持部材に取り付けられた一対の電極の位置から前記周回軌道の周回の中心位置を挟んでさらに離れた位置であることを特徴とする質量分析装置。
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