JPWO2007125982A1 - 高効率でバキュウロウイルス生産及びタンパク質生産が可能な新規カイコ培養細胞 - Google Patents

高効率でバキュウロウイルス生産及びタンパク質生産が可能な新規カイコ培養細胞 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2007125982A1
JPWO2007125982A1 JP2008513250A JP2008513250A JPWO2007125982A1 JP WO2007125982 A1 JPWO2007125982 A1 JP WO2007125982A1 JP 2008513250 A JP2008513250 A JP 2008513250A JP 2008513250 A JP2008513250 A JP 2008513250A JP WO2007125982 A1 JPWO2007125982 A1 JP WO2007125982A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
silkworm
virus
cell line
bmnpv
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008513250A
Other languages
English (en)
Inventor
宜宏 日下部
宜宏 日下部
智佐 青木
智佐 青木
理 蜷木
理 蜷木
在萬 李
在萬 李
和弘 飯山
和弘 飯山
川上 直哉
直哉 川上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyushu University NUC
Original Assignee
Kyushu University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kyushu University NUC filed Critical Kyushu University NUC
Publication of JPWO2007125982A1 publication Critical patent/JPWO2007125982A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P21/00Preparation of peptides or proteins
    • C12P21/02Preparation of peptides or proteins having a known sequence of two or more amino acids, e.g. glutathione
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0601Invertebrate cells or tissues, e.g. insect cells; Culture media therefor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N7/00Viruses; Bacteriophages; Compositions thereof; Preparation or purification thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2510/00Genetically modified cells
    • C12N2510/02Cells for production
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2710/00MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA dsDNA viruses
    • C12N2710/00011Details
    • C12N2710/14011Baculoviridae
    • C12N2710/14111Nucleopolyhedrovirus, e.g. autographa californica nucleopolyhedrovirus
    • C12N2710/14151Methods of production or purification of viral material
    • C12N2710/14152Methods of production or purification of viral material relating to complementing cells and packaging systems for producing virus or viral particles

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

既存のカイコ由来の培養細胞はいずれもBmNPVの増殖効率があまり高くない。そのため、カイコ由来の既存の培養細胞を用いる系では、組換えウイルス作製に時間がかかり、また、高力価のウイルス溶液を作製することが不可能であった。本発明は、カイコ胚由来であり、BmNPV高感受性である細胞株 Bme21(FERM P-20852)又はそれと同一の生物学的特性を有するその変異体を提供する。本発明はまた、細胞株Bme21又はその変異体を用いる、組換えウイルスの生産方法、組換えタンパク質の生産方法、組換えウイルス生産の効率化方法、及び組換えタンパク質生産の効率化方法も提供する。

Description

本発明は、昆虫由来の培養細胞に関する。本発明により得られるカイコ胚由来の新規細胞株は、特に、組換えバキュウロウイルスの生産及び検定、並びに組換えタンパク質の生産の分野で有用である。
昆虫を利用した組換えタンパク質の発現系は、哺乳類に近い修飾を受けたタンパク質を比較的大量に得られることから重視されている。昆虫を用いる系では、核多角体病ウイルス(nucleopolyhedrovirus: NPV)、特に、カイコ(Bombyx mori)に感染することができるBmNPV、又はAutographa californica(キンウワバの一種)やハスモンヨトウに感染することができるが、通常はカイコには感染しないAcNPVをベクターとして利用することが検討されてきた。また、昆虫を用いる系は、宿主の面からは、培養細胞を用いる系と昆虫個体を用いる系とに二大別できる。近年では、AcNVP−ハスモンヨトウ培養細胞系が汎用されているが、BmNPV−カイコ個体系が利用されつつある。
昆虫培養細胞を用いる系は、昆虫個体を用いる系に比較して多数の献体の処理が可能であり、人手を省くことができる等のメリットがある。
これまで、カイコ由来の培養細胞としては、蚕品種「黒子」胚子組織片由来のもの(非特許文献1;非特許文献2)、蚕品種「日125号」胚組織由来のもの(非特許文献3、非特許文献4)、蚕品種「支129号」胚組織由来のもの(前掲非特許文献3)、蚕品種「五眠白」胚頭部断片由来のもの(非特許文献5)、蚕品種「紫蚕」、「黒蛾」、「大造」、「黄浮」のそれぞれの胚子組織片由来のもの(非特許文献6)等が報告されきた。
Inoue, H. and Mitsuhashi, J.; A Bombyx mori cell line susceptible to a nuclear polyhedrosis virus; J. Seric.Sci.Jpn. 53: 108-113(1984) 井上 元, 谷合幹代子, 小林 淳(1990); カイコの付着性培養細胞系の樹立とその特性; 蚕糸昆虫研報1: 13-25 日蚕雑57(3), 184-188(1988) JARQ 26,196-202(1992) 今西重雄; カイコ体液に反応して形態変化をおこす培養細胞株の作出; 日蚕関東支部講要50: 40(1999) Imanishi, S., Cho, E.−S., and Tomita, S.; Novel Bombyx mori cell lines cultivable at 37゜C; Appl. Entomol. Zool. 34: 259-266(1999)
しかしながら、実用的な蚕品種のほとんどがウイルス非感受性である。これは、ウイルスに弱い蚕は糸の生産には適していないことから、ウイルス非感受性であることを有用形質として選抜してきたことが背景にある。したがって、そのような系統から樹立された細胞はいずれもBmNPVの増殖効率があまり高くない。そのため、カイコ由来の既存の培養細胞を用いる系では、組換えウイルス作製に時間がかかり、また、高力価のウイルス溶液を作製することが不可能であった。
本発明者らは、豊富な資源のストックを利用して、昆虫の生殖・発生、減数分裂、遺伝子複製・修復・組換え・発現機構を、分子遺伝学、細胞生物学、形態学、分子生物学的手法を用いて解析してきた。また、新規昆虫機能の開発・利用を目的に、バキュロウイルス発現系を用いた有用物質生産についても検討してきたが、今般、特定のカイコ系統から得られた胚から、培養細胞Bme21を樹立した。そして、この培養細胞が、既存のカイコ由来培養細胞と比較して100倍以上のウイルス粒子産生能を示すことを見いだし、本発明を完成した。
本発明はすなわち、カイコ胚由来であり、BmNPV高感受性である細胞株 Bme21(FERM P-20852)又はそれと同一の生物学的特性を有するその変異体;及びカイコ系統e21の胚の初代培養から得られる、BmNPV高感受性細胞株を提供する。
本明細書で「カイコ(蚕)」というときは、特別な場合を除き、カイコガ(Bombyx mori)の個体を指し、幼虫個体のみならず、卵、蛹、繭又は成虫である個体も含む。
本明細書でカイコに関して「系統」というときは、その特性(卵、幼虫、蛹、繭、成虫の形質、遺伝子型)及び起源の全部又は一部によって他の系統の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一のカイコの集合をいう。「系統」は、「品種」と表現されることもある。
本明細書でウイルスに対して「感受性」というときは、特別な場合を除き、そのウイルスに感染することができ、かつ増殖させることができる能力をいう。BmNPVに対して感受性であるか否かは、例えば、本明細書の実施例に示したように、BmNPVの増殖を容易に評価可能とするようなタンパク質の遺伝子を組み込んだ組換えウイルス(例えば、ルシフェラーゼ組換えBmNPV、GFP組換えBmNPV)を作製し、対象とする細胞に感染させ、適切な時期に該タンパク質量を評価することにより、ウイルスを対象とする細胞に感染させた後、培養上清のウイルス力価をプラークアッセイ法を用いて評価することにより、判断することができる。Sf9細胞(Spodoptera frugiperdaの卵巣由来の培養細胞)及びS2細胞(Drosophila melanogasterの胚由来の細胞)は、BmNPVに感染せず、あるいはBmNPVを増殖させることができず、BmNPVに対して抵抗性であるといえる。
本発明の細胞は、BmNPVに対して高感受性である。「高感受性」とは、従来技術のBmNPV感受性細胞(例えば、BmN4(下記表1及び実施例参照。)又はBm5(下記表1及び実施例参照。)、BM-N(理化学研究所)と比較して、5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上、BmNPVを増殖させることができること;又は本明細書の実施例に示した条件でルシフェラーゼを指標とする場合には、ルシフェラーゼ活性が103RLU/μg、好ましくは104RLU/μgを超えることができること;本明細書の実施例に示した条件でGFPを指標とする用いる場合には、供試細胞の50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上で感染が認められること;若しくは本明細書の実施例に示した条件でプラーク形成を指標とする場合には、50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上の細胞での感染が検出できることをいう。
本発明に係る「細胞株 Bme21」は、本発明者らが、バキュロウイルスに感染しやすい傾向を見いだしたカイコ系統e21から初代培養を経て樹立したものであり、半永久的に継代可能である。なお、e21を含む種々のカイコ系統が、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の中核機関である九州大学・遺伝資源開発研究センター(九州大学大学院農学研究院;〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1;(Tel) 092-621-4991;(Fax) 092-624-1011 HYPERLINK "mailto:fujii@agr.kyushu-u.ac.jp" )から、分譲可能である(http://www.nbrp.jp/report/reportProject.jsp;jsessionid=BE73451C6E54680014762FD194C0F721?project=silkworm参照)。
Bme21の特徴:
動物種:カイコ(silkworm、Bombyx mori)e21系統
組織:卵
形態:付着性で大部分は球状(図1参照)
培地:IPL-41培地+10% FBS
培養温度:27℃
CO2濃度:0%
倍加時間:60時間
継代方法:dilution
継代頻度:4〜5日に一回
細胞寿命:infinite
その他:BmNPVに対しては高感受性であり、AcNPVに対しては非感受性である。
Bme21の特徴に関し、他の昆虫培養細胞と比較して下表に示した。
Figure 2007125982
本発明の範囲には、細胞株e21、及び細胞株e21の上述したような生物学的特性と同一の生物学的特性を有するそ細胞株e21の変異体が含まれる。
細胞株Bme21は、受託番号: FERM P-20852(受領番号: FERM AP-20852)として、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8556 茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に2006年3月24日に寄託されているほか、カイコ系統e21の胚から得ることも可能である。
以下に、カイコ胚から細胞株を樹立するための手順の例を示す:
1.点青〜催青期の卵を台紙からはずし、1%次亜塩素酸ソーダ(NaOCl)で消毒する。2.消毒した卵10個を約1×2cmのプラスチック板に外科手術用アロンアルファを用いて固定する。
3.卵を鋭利なカミソリで切開し、点青〜催青期の胚(幼虫)を取り出す。
4.幼虫を1%次亜塩素酸ソーダに10秒程浸して表面消毒した後、滅菌蒸留水で2回洗浄し、20%FBSを含むIPL-41培地2mlを入れた35cmφプラスチックシャーレに移す。
5.シャーレ内の幼虫を眼科用ハサミで1頭あたり5〜10の断片に切り、幼虫断片を含む培地を50mlプラスチック培養フラスコに移し、新たに1mlの培地を追加する。
6.以後、26℃で培養する。
本発明者らが種々のカイコ系統を用いて培養細胞樹立を試みたところでは、多くの場合、初代培養開始後60日間程度は培養可能であるが、その後、急速に死滅する。したがって、90日以上継代することができれば、株化されていると考えてよい。
使用する培地は、初代培養期間を通じて基本的には同じでよい。培地の交換は、最初の60日間は細胞の増殖具合を見ながら適宜行い、この後は3〜4日に一回程度とすることができる。培地への血清の添加は、最初は20%程度とするのがよいが、細胞が順調に増殖するようになった時点で約10%に減じることができる。初代培養用培地としては、上述のものの他に、例えば、Grace培地、IPL-41培地、Schreider's Drosophila用培地、Sf900II、TC-100培地、Sf-9細胞用培地、Sf-21細胞用培地、Express Five培地、EX-400系培地等を用いることができる場合がある。
本発明の細胞株e21及びそれと同一の生物学的特性を有する変異体の継代、保存のための凍結等の培養上必要な操作は、当業者であれば他の汎用の昆虫細胞の場合に準じて、適宜行うことができる。
本発明はまた、細胞株Bme21又はその変異体を用いる、組換えウイルスの生産方法、組換えタンパク質の生産方法、組換えウイルス生産の効率化方法、及び組換えタンパク質生産の効率化方法も提供する。
本発明の細胞株Bme21を利用すれば、既存のカイコ培養細胞を用いる系と比較して100倍以上の高い効率で組換えタンパク質を生産することができる。そのため、既存のカイコ培養細胞を用いる系では極少量しか得られず、バキュロウイルス−カイコ培養細胞系が現実的な選択肢の一つとはなり得なかったようなタンパク質の生産を目的とする場合にも、本発明を適用することができる。また、本発明のカイコ由来の細胞株Bme21を利用することにより、既存のAcNPV−昆虫培養細胞系とは異なる修飾を受けたタンパク質が生産される可能性もある。一般に、昆虫培養細胞系は、昆虫個体を用いる場合に比較して、同時に多数の検体を扱うことが可能であり、また、昆虫個体を用いる場合に必要な特殊な設備や作業を要さず、哺乳類由来等の汎用の培養細胞のための器具・設備を利用して、簡単に試みることができる点で、メリットが大きいが、本発明により、様々なタンパク質の生産を目的に、バキュロウイルス−カイコ培養細胞系の適用が可能となった。本発明は特に、数Lレベルの培養で、数mgのタンパク生産を生産するような小〜中規模の組換えタンパク質の生産に適している。
本発明はまた、組換えウイルスを検定する目的でも用いることができる。組換えウイルスの作製には生細胞を使用するため、予期しない組み換え等が起こることがある。特に生理活性を有するタンパク質をコードする遺伝子で組換えようとする場合には、意図しない組換え体が大部分となることもある。しかしながら、本発明の、増殖効率がよく、タンパク質生産能力の高いe21細胞を用いることにより、煩雑な検定を要さず、例えば電気泳動と色素染色のみを用いることにより、短時間で目的とするタンパク質を発現する組換えウイルスが作製できているか否かを検定することができる。したがって、本発明は、組換えウイルスの検定及びタンパク質生産の予備実験においても有用である。本発明は特に、大量の検体を同時に取り扱うハイスループット組換えウイルス作製に適している。
図1は、本発明のカイコ胚由来細胞株Bme21の顕微鏡写真である。Bme21は付着性であり、大部分が球状である。 図2は、組換えBmNPVウイルス(ルシフェラーゼを発現する)の増殖を示したグラフである。カイコ由来の他の培養細胞に比較して、Bme21細胞におけるルシフェラーゼ活性曲線の立ち上がりが早く、120時間後には、Bm5やBmN4の100倍以上に達した。 図3は、組換えBmNPVウイルス(GFPを発現する)の増殖を示した写真である。カイコ由来の他の培養細胞に比較して、Bme21細胞が最も強くGFPを発現しており、また、ほとんどの細胞がGFPを発現した。
1. 材料と方法
1.1 カイコ成熟胚初代培養:
カイコ系統e21(九州大学大学院農学研究院所有)の点青〜催青期の卵を25℃下で約9日目経過した後、台紙からはずし、1%次亜塩素酸ソーダ(NaOCl)で消毒した。消毒した卵10個を約1×2cmのプラスチック板に外科手術用アロンアルファを用いて固定した。卵を鋭利なカミソリで切開し、点青〜催青期の胚(幼虫)を取り出した。幼虫を1%次亜塩素酸ソーダに10秒程浸して表面消毒した後、滅菌蒸留水で2回洗浄し、20%FBSを含むIPL-41培地(Gibco BRL)2mlを入れた35cmφプラスチックシャーレに移した。シャーレ内の幼虫を眼科用ハサミで1頭あたり5〜10の断片に切り、幼虫断片を含む培地を50mlプラスチック培養フラスコ(グライナー製 TISSUE CULTURE FLASK 50ML 25 cm2)に移し、新たに1mlの培地を追加した。以後、26℃で培養した。これを細胞株Bme21として、以下の実験で用いた。
1.2 細胞培養と組換えBmNPVウイルスの作製:
カイコ由来の培養細胞BmN4(カイコ由来培養細胞系BmNから前田進博士がクローン化した細胞系。元京都工芸繊維大学繊維学部の橋本義文先生から分与)、Bm5(元果樹試験場の佐藤 威博士から分与)、Bmc140(蚕品種「支140号」蛹卵巣由来。元果樹試験場の佐藤威博士から分与)、Bme21、及びヨトウガ由来の培養細胞Sf9(インビトロジェンより購入)は、10% FBSを含む IPL-41培地(Gibco BRL)を用いて23℃で培養したものを供試した。ショウジョウバエ由来の培養細胞S2(理研細胞バンクより購入)は、10% FBSを含むSchneider's Drosophila medium (Gibco BRL) を用いて27℃で培養したものを供試した。操作はすべてクリーンベンチ内で無菌的に行った。
まず、培養細胞が入っているフラスコから、古い培地を取り除き、新しい培地を8 ml加え、ピペッティングにより細胞を分散させて単一細胞の状態にした。新しいフラスコに培地を7 ml分注し、分散させた細胞を1 ml加えて全体量を8 mlにした。フラスコをインキュベーターに移し、培養を行った。
バックミドDNAの構築には、BmNPV Bac-to-Bacシステムを用いた。まず、pFastBac (Invitrogen) のマルチクローニングサイトにホタルルシフェラーゼ(luciferase)とGFPをコードするcDNAを挿入し、それぞれ pFastBac/LucとpFastBac/GFPを作製した。pFastBacは、バックミドDNAに転移するためのattTn7認識配列と選択マーカーとして、ゲンタマイシン耐性遺伝子を有している。pFastBac/LucとpFastBac/GFP上のルシフェラーゼ及びGFP発現カセットは、BmNPV Bac-to-bac Baculovirus Expression System (Motohashi T, Shimojima T, Fukagawa T, Maenaka K, Park EY; Efficient large-scale protein production of larvae and pupae of silkworm by Bombyx mori nuclear polyhedrosis virus bacmid system. Biochem Biophys Res Commun 326: 564-569(2005)を参照) を用いてBmNPVゲノム上に導入した。まず、pFastBac/LucとpFastBac/GFPをBmDH10Bacに形質転換し、37℃ 4時間インキュベートした後、カナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、Bluo-galならびにIPTGを含むLBプレートに接種した。37℃で1日静置し、白いコロニーを白金棒で採取して、1.5ml LB 培地に培養した。続いてBacmid DNA 抽出を行った。バックミドDNAの抽出は、アルカリ-SDS法を用いて行った。
1.5ml の培養液を14,000×g 1 minで集菌したのち、菌を300 mlの10 mM EDTA, 15 mM tris-HCl (pH 8.0)、100 mg/ml RNase A中で懸濁し、菌を完全に撹拌した。次に300 mlの0.2 N NaOH、1% SDSを加えて、穏やかに混合した後室温で5分間静置した。さらに300 ml の3 M potassium acetate(pH 5.5)を加えて充分に混合した後、氷中に5分間静置した。その後4℃ 14,000 rpmで10分間遠心分離を行い、上清を回収しイソプロパノール沈澱を行った。40 mlの1 M Tris (pH 8.0) 、0.5 M EDTA(pH 8.0)溶液(TE)に溶解し、Bacmidサンプルとした。
BmNPVの増殖にはBm5細胞を宿主細胞として用いた。Bm5細胞へのトランスフェクションは以下の方法で行った。トランスフェクションの前日に、細胞を分散させ、24-wellプレートに1×105個/wellになるよう播種しておき、23℃で1日培養した。1 well当たり、バックミドDNA 0.5 mgをHBSで10 mlになるように希釈しA液とした。同時に4mlのCellFectin (GIBCO BRL) に16 mlのHBSを加え、氷上で45分間インキュベートした。45分間待機中に細胞を一回SFM (GIBCO BRL) で洗浄した。カチオン脂質とDNAの複合体を形成させるために、さらに氷中で15分間インキュベートした。混合液にSFM 170 mlを加えた後、 wellの培地を抜き、混合液を細胞に添加した。23℃で8時間培養した後、トランスフェクション混合溶液を除き、10% FBSを含むGrace's Insect Medium (Gibco BRL) 1 mlを添加し、培養を継続した。3日間27℃で培養後、培養液を回収してフィルター滅菌し、バキュロウイルス含有液(P1ウイルス液)とした。このP1ウイルス液10 mlを5×105個の宿主細胞に感染し、3日後にウイルス液を回収した(P2ウイルス液)。同様にP2ウイルス液を再増幅したP3ウイルス液接種実験に用いた。
1.3 ルシフェラーゼを指標としたウイルスの増殖:
1×105個/wellの細胞に対して、m.o.i. 0.5となるように ルシフェラーゼを発現するP3ウイルス液を接種した。接種した細胞は、12、24、72、120時間後に回収し、1.5 mlエッペンドルフチューブに移した。これを4℃ 2,000 rpmで1分間遠心し細胞を回収した。培養液を除き、PBSで2回洗浄を行った。100 mlの細胞溶解液を添加し、室温で15分以上放置した。その後、4℃ 10,000 rpmで30秒間遠心を行い、細胞抽出液80 lに発光基質液100mlを加え、ルミノメーターでルシフェラーゼの発光量を測定した。残り20 lの細胞溶解液はタンパク質の定量を行い、ルシフェラーゼ活性を補正した。
1.4 GFPを指標としたウイルスの増殖:
1×105個/wellの細胞に対して、m.o.i. 0.5となるように GFPを発現するP3ウイルス液を接種した。接種した細胞は、48時間後に回収し、蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。
1.5 プラーク形成を指標としたウイルスの増殖:
1×105個/wellの細胞に対して、m.o.i. 0.5となるようにルシフェラーゼを発現するP3ウイルス液を接種した。接種した細胞より、12、24、72、120時間後に培養上清を回収し、1.5 mlエッペンドルフチューブに移した。これを4℃ 2,000 rpmで1分間遠心し沈殿を取り除いた。その後プラークアッセイ法を用いて各培養上清のウイルス力価を測定した。6-wellプレートに、Bm5細胞を1.5×105個/wellとなるように播種しておき、1時間27℃インキュベートした。次に各wellのmediumを除き、用意した各培養上清のウイルス希釈系列を1 mlずつ添加し、27℃で1時間インキュベートした。さらに各ウイルス希釈液を除き、1% low-melt agarose solutionを2 mlずつ添加し27℃で4〜6日インキュベートした。最後に、NR (neutral red) を含む1% low-melt agarose solutionを1 mlずつ重層し、27℃で1晩インキュベートした。形成されたプラークをカウントし、ウイルス力価 (pfu/ml) を算出した。この作業は2回行い、その平均値をデータとして用いた。
2. 結果:
2.1 ルシフェラーゼを指標としたウイルスの増殖:
カイコ由来の他の培養細胞に比較して、Bme21細胞におけるルシフェラーゼ活性曲線の立ち上がりが早く、120時間後には、Bm5やBmN4の100倍以上に達した(図2)。
2.2 GFPを指標としたウイルスの増殖:
カイコ由来の他の培養細胞に比較して、Bme21細胞が最も強くGFPを発現しており、また、ほとんどの細胞がGFPを発現した(図3)。Bme21細胞が組換えBmNPVウイルスの増殖に最も適していることが分かった。
2.3 プラーク形成を指標としたウイルスの増殖:
カイコ由来の他の培養細胞に比較して、Bme21細胞が高いウイルス力価 (pfu/ml)を示した。120時間後には、Bm5やBmN4の1,000倍近くに達した(下表)。
Figure 2007125982

Claims (6)

  1. カイコ胚由来であり、BmNPV高感受性である細胞株 Bme21(FERM P-20852)又はそれと同一の生物学的特性を有するその変異体。
  2. カイコ系統e21の胚の初代培養から得られる、BmNPV高感受性細胞株。
  3. 請求項1又は2に記載の細胞株又はその変異体を用いる、組換えウイルスの生産方法。
  4. 請求項1又は2に記載の細胞株又はその変異体を用いる、組換えタンパク質の生産方法。
  5. 請求項1又は2に記載の細胞株又はその変異体を用いる、組換えウイルス生産の効率化方法。
  6. 請求項1又は2に記載の細胞株又はその変異体を用いる、組換えタンパク質生産の効率化方法。
JP2008513250A 2006-04-27 2007-04-26 高効率でバキュウロウイルス生産及びタンパク質生産が可能な新規カイコ培養細胞 Pending JPWO2007125982A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006122943 2006-04-27
JP2006122943 2006-04-27
PCT/JP2007/059028 WO2007125982A1 (ja) 2006-04-27 2007-04-26 高効率でバキュウロウイルス生産及びタンパク質生産が可能な新規カイコ培養細胞

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2007125982A1 true JPWO2007125982A1 (ja) 2009-09-10

Family

ID=38655507

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008513250A Pending JPWO2007125982A1 (ja) 2006-04-27 2007-04-26 高効率でバキュウロウイルス生産及びタンパク質生産が可能な新規カイコ培養細胞

Country Status (3)

Country Link
US (1) US7955793B2 (ja)
JP (1) JPWO2007125982A1 (ja)
WO (1) WO2007125982A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20110023154A1 (en) * 2008-12-04 2011-01-27 Sigma-Aldrich Co. Silkworm genome editing with zinc finger nucleases
CN109837236A (zh) * 2019-01-17 2019-06-04 中国计量大学 高产杆状病毒的福寿螺精巢细胞系及其构建方法和用途

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3035616B1 (ja) * 1999-05-19 2000-04-24 農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所長 カイコ培養細胞系

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6012016877; Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.83, No.24, 1986, pp.9522-9526 *
JPN6012016880; 日本蚕糸学会大会・蚕糸・昆虫機能学術講演会講演要旨集 Vol.76, 20060330, p.33 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2007125982A1 (ja) 2007-11-08
US20090305385A1 (en) 2009-12-10
US7955793B2 (en) 2011-06-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JEHLE Basic techniques in insect virology
Mcintosh et al. AcMNPV in permissive, semipermissive, and nonpermissive cell lines from Arthropoda
JPWO2007125982A1 (ja) 高効率でバキュウロウイルス生産及びタンパク質生産が可能な新規カイコ培養細胞
Khurad et al. A new Bombyx mori larval ovarian cell line highly susceptible to nucleopolyhedrovirus
CN101070533B (zh) 高产杆状病毒的棉铃虫幼虫脂肪体细胞系及其构建和用途
Long et al. The establishment of a Colorado potato beetle (Coleoptera: Chrysomelidae) pupal cell line
CN115851574B (zh) 一株甜菜夜蛾细胞系
Harrison et al. New cell lines derived from the black cutworm, Agrotis ipsilon, that support replication of the A. ipsilon multiple nucleopolyhedrovirus and several group I nucleopolyhedroviruses
CN102807969B (zh) 高产杆状病毒的转基因卵巢细胞系及其制备方法和应用
Kamiya et al. Genotypic variation of a wild isolate of Hyphantria cunea nucleopolyhedrovirus
Rodriguez et al. Isolation and characterization of a Nucleopolyhedrovirus from Rachiplusia nu (Guenée)(Lepidoptera: Noctuidae)
Iwanaga et al. Establishment and characterization of the Bombyx mandarina cell line
CN102807968B (zh) 高产杆状病毒的转基因脂肪体细胞系及其制备方法和应用
US20070169208A1 (en) Silkworm strains for enabling production of proteins using various baculovirus
CN100404667C (zh) 一种高产杆状病毒的甜菜夜蛾幼虫脂肪体细胞系
Castro et al. Identification of a new nucleopolyhedrovirus from naturally-infected Condylorrhiza vestigialis (Guenée)(Lepidoptera: Crambidae) larvae on poplar plantations in South Brazil
Ye et al. Construction of the antheraea pernyi (Lepidoptera: Saturniidae) multicapsid nucleopolyhedrovirus bacmid system
Gençer et al. Characterization of a novel baculovirus isolate from Malacosoma neustria (Linnaeus, 1758)(Lepidoptera: Lasiocampidae) in Samsun and its pathogenicity in different hosts
Khurad et al. Development and characterization of a new Bombyx mori cell line for protein expression
CN106047790B (zh) 基于家蚕血淋巴分离的家蚕微孢子虫感染鳞翅目昆虫细胞的方法
Zhang et al. A new Trichoplusia ni cell line for membrane protein expression using a baculovirus expression vector system
Demir et al. Comparative susceptibilities of six insect cell lines to infection by Malacosoma neustria nucleopolyhedrovirus (ManeNPV)
CN116426458A (zh) 高产杆状病毒的草地贪夜蛾蛹卵巢细胞系及其构建和用途
Isobe et al. NISES-AnPe-428 cell line derived from the Chinese oak silkworm Antheraea pernyi is permissive for multiple nucleopolyhedrovirus species from insects of four different families
Obregón-Barboza et al. Infection, transfection, and co-transfection of baculoviruses by microprojectile bombardment of larvae

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100426

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120330

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120529

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20130220