JPWO2005017146A1 - 相互作用阻害剤、相互作用阻害剤検出方法および相互作用阻害剤検出キット - Google Patents

相互作用阻害剤、相互作用阻害剤検出方法および相互作用阻害剤検出キット Download PDF

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Abstract

T細胞の活性調節やIL−2の産生などに関係のある、タンパク質相互作用の阻害剤、相互作用阻害剤の検出方法などを提供することを課題とする。PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤、およびKPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を提供する。相互作用の阻害剤は、それぞれの組み合わせにおいて相互作用可能な条件下で、相互作用する2種のタンパク質と候補化合物とを共存せしめ、相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を阻害剤とする。検出キットには、相互作用する組み合わせのタンパク質を供給する試料が備えられる。

Description

本発明は、T細胞の活性調節などに関係のある伝達経路におけるタンパク質の相互作用阻害剤、相互作用阻害剤の検出方法および相互作用阻害剤の検出キットに関する。
PKC(プロテインキナーゼC)ファミリーは、Caイオン、リン脂質、脂肪酸、ホスボールエステル、ジアシルグリセロールなどの各種脂質メッセンジャーとの特異的結合によって活性化されるセリン/スレオニンキナーゼであり、細胞の成長や増殖を調節している。PKCファミリーは、調節ドメインの違いにより、通常型(ConventionalもしくはClassical)と新規型(Novel)と異型(Atypical)の3種類のファミリーに分類される。通常型としては、α、β、γの3種がある。また、新規型としては、δ、ε、η、θの4種がある。また、異型としては、ζ、ιの2種がある。
PKCファミリーの1種であるPKCθは、Caイオン非依存型の新規型に属するPKCである。PKCθの機能として明らかになっているものの1つに、T細胞の活性化がある。T細胞では他のPKCも発現しているが、PKC類でT細胞に寄与しているのはPKCθのみと考えられている。
抗原を認識したT細胞は、増殖因子であるIL−2(インターロイキン2)を産出し、IL−2受容体を発現し、IL−2依存的に増殖する。PKCθをノックアウトしたマウス由来のT細胞では、上記のような外部刺激に応答したT細胞の活性化が起きず、IL−2の産出が低下する(例えば、非特許文献1)。IL−2遺伝子のノックアウトマウスでは、炎症性腸疾患、溶血性貧血の発生が知られている(例えば、非特許文献2)。
また、IL−2遺伝子の転写活性の調節にはNF−κBなどの転写因子が重要な役割を果たすことが知られている。
Christopher W.A.et al.,(2002)Current Opinion in Immunology 12:323−330 Horak I.,(1995)Clinical Immunology and Immunopathology Sep;76(3 Pt 2):S172−3
T細胞やIL−2などは生体の生理的機能上、特に免疫機構において極めて重要な役割を果たしている。しかし、T細胞の活性調節やIL−2の産生などに関連する具体的な伝達経路については未だに解明されていない点も多い。T細胞の活性調節やIL−2の産生などに関連する伝達経路は多岐にわたり複雑であることが予測される。伝達経路の特定にはどの段階でどのような物質が関与するかということについての知見が求められるが、T細胞の活性調節などに関係する伝達経路には多数の物質が関与していると考えられ、さらには、ごく微量で機能している可能性や物質自体の安定性が低い可能性もあることから、伝達経路に関与する物質を特定することすら容易ではない。
他方、T細胞やIL−2などの何らかの異常に係る疾患の予防や治療、そのための薬剤の開発にあたっては、T細胞やIL−2に関係のある伝達経路を解明することが開発に大きく寄与することとなる。伝達経路を解明することにより、新たな創薬標的(創薬ターゲット)の開拓も期待されるのである。特に伝達経路に係わるタンパク質の相互作用について新たな組み合わせを見いだすことができれば、新たに見いだされたタンパク質の相互作用を阻害する薬剤は、その相互作用の調節を可能ならしめることとなり、その伝達経路に係わる疾患の予防、治療等に利用することが可能となる。すなわち、まずは伝達経路におけるタンパク質の相互作用の新たな組み合わせを見いだすことによって、新たな創薬標的が提供され、従来の作用機序と異なる新薬の開発を促進させることが期待される。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、T細胞の活性調節やIL−2の産生などに関係のある、タンパク質相互作用の阻害剤、相互作用阻害剤の検出方法、相互作用阻害剤の検出キット等を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、T細胞やIL−2との関連が予測される因子について研究を進め、T細胞の活性調節あるいはIL−2産生などの生体情報伝達において重要な因子であるPKCθ、NF−κBなどに係わる因子についての探求を続けた。その結果、本発明者らは、PKCθやNF−κBが係わる相互作用の新たな組み合わせを見いだし、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。本発明は、下記相互作用阻害剤、相互作用阻害剤検出方法および相互作用検出キット、さらには創薬標的を提供するものである。
〔1〕PKCθとKPNA1との相互作用を阻害する、タンパク質の相互作用の阻害剤。
〔2〕KPNA1とNF−κBとの相互作用を阻害する、タンパク質の相互作用の阻害剤。
〔3〕PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を選択して得られた、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤。
〔4〕前記PKCθが、恒常的なリン酸化活性を示すキナーゼである、上記〔3〕に記載の阻害剤。
〔5〕KPNA1とNF−κBとが相互作用可能な条件下で、KPNA1とNF−κBと候補化合物とを共存せしめ、KPNA1とNF−κBとの相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を選択して得られた、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤。
〔6〕PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を阻害剤として検出する、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法。
〔7〕前記PKCθが、恒常的なリン酸化活性を示すキナーゼである、上記〔6〕に記載の阻害剤を検出する方法。
〔8〕KPNA1とNF−κBとが相互作用可能な条件下で、KPNA1とNF−κBと候補化合物とを共存せしめ、KPNA1とNF−κBとの相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を阻害剤として検出する、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出する方法。
〔9〕PKCθ供給試料と、KPNA1供給試料とを含む、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出するキット。
〔10〕前記PKCθ供給試料がPKCθをコードするポリヌクレオチドを含むベクターであり、前記KPNA1供給試料がKPNA1をコードするポリヌクレオチドを含むベクターである、上記〔9〕に記載の阻害剤を検出するキット。
〔11〕前記PKCθが、恒常的なリン酸化活性を有するキナーゼである、上記〔9〕または〔10〕に記載の阻害剤を検出するキット。
〔12〕KPNA1供給試料と、NF−κB供給試料とを含む、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出するキット。
〔13〕前記KPNA1供給試料がKPNA1をコードするポリヌクレオチドを含むベクターであり、前記NF−κB供給試料がNF−κBをコードするポリヌクレオチドを含むベクターである、上記〔12〕に記載の阻害剤を検出するキット。
〔14〕医薬品の開発において、PKCθとKPNA1との相互作用を創薬標的とすることを特徴とする方法。
〔15〕医薬品の開発において、KPNA1とNF−κBとの相互作用を創薬標的とすることを特徴とする方法。
本発明によれば、PKCθ、NF−κBが関連する相互作用の阻害剤、阻害剤の検出方法、検出キットが提供される。また、本発明により創薬標的が提供される。PKCθ、NF−κBはT細胞の活性調節、IL−2産生などの生体情報伝達において重要な因子であり、本発明は製薬などを含むバイオテクノロジー産業に寄与するものである。
図1はPKCθとKPNA1が細胞内で結合していることを示す図である。 図2はPKCθによりKPNA1がリン酸化されたことを示す図である。 図3はKPNA1とNF−κBの構成タンパク質であるp50及びp65が細胞内で結合していることを示す図である。 図4は図1の左側泳動像の一部の模式図である。 図5は図2の泳動像の一部の模式図である。 図6は図3の左側泳動像のレーン1および2の一部の模式図である。 図7は実施例4の実験結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説する。なお、本発明における生物化学的なあるいは遺伝子工学的な手法を実施するにあたっては、例えば、Molecular Cloning:A LABORATORY MANUAL,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,New York(2001)、新遺伝子工学ハンドブック(村松正實ら編、羊土社、実験医学別冊、第3版、1999年)、タンパク質実験の進め方(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第1版、1998年)タンパク質実験ノート(岡田雅人、宮崎香編、羊土社、第2版、1999年)などのような種々の実験マニュアルの記載が参照される。
(1)相互作用阻害剤
本発明の相互作用阻害剤は、T細胞の活性調節またはIL−2産生に関連するタンパク質相互作用を阻害する物質であり、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤と、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤の二形態が含まれる。
(1−1)PKCθとKPNA1との相互作用阻害剤
本発明の相互作用阻害剤の一形態は、PKCθとKPNA1との相互作用を阻害するものである。
PKCθはT細胞の活性化に影響を与える因子であり、IL−2産出に必要である。またIL−2の産出には、NF−κBなどの転写因子によりIL−2遺伝子の転写が誘導されなければならない。しかしながら、如何なる伝達経路によりPKCθが、NF−κBなどの転写因子によるIL−2遺伝子の転写を誘導するのかは不明であった。ここでNF−κBの転写因子としての活性化は、その細胞内局在を細胞質から核内に移行させることにより制御されていることが知られているが、その核移行に関する経路は不明であった。一方KPNA1は、転写因子などの核内で機能するタンパク質を認識し、これを細胞質から核まで輸送するために働くタンパク質である。本発明者らは、PKCθとKPNA1とが相互作用すること、およびPKCθがKPNA1を基質とし、KPNA1をリン酸化すること、さらにKPNA1とNF−κBが相互作用することを確認した。これらのことから、不明であったPKCθからNF−κBの活性化に到る伝達経路に、タンパク質の核内輸送を担うKPNA1が関与していることが明らかになった。
したがって、PKCθとKPNA1との相互作用を阻害する物質は、T細胞の活性調節やIL−2の産生の調節を行うことができる蓋然性が高い物質である。すなわち、PKCθとKPNA1との相互作用を阻害する物質は、T細胞の活性調節やIL−2の産生に係る疾患の予防および/または治療薬の有力な候補物質となる。PKCθやKPNA−1が伝達経路において直接的に関連を有する物質どうしであることについては従来まったく示唆する知見はなかったため、上記のような本形態の阻害剤が、T細胞の活性調節やIL−2の産生に係る疾患の予防および/または治療薬の有力な候補物質となるということは、その初期的着想すら存在しなかった。また、本発明は、PKCθとKPNA1というまったく新しい相互作用の組み合わせを見いだすことにより、まったく新たに具体的な創薬標的を提供するものでもある。
本形態の阻害剤は、PKCθとKPNA1との相互作用を阻害する物質であればよく、他に特に限定されるものではない。例えば、本形態の阻害剤は材質などによって限定されるものではなく、例えばポリヌクレオチド、タンパク質などの生体物質であってもよいし、あるいは無機または有機の化学薬品などでもよい。
本形態の阻害剤としてより具体的には、例えば、PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された化合物が例示される。タンパク質の相互作用が生じたか否かの検定については下記にて別途詳説する。
(1−2)KPNA1とNF−κBとの相互作用阻害剤
本発明の阻害剤の他の一形態は、KPNA1とNF−κBとの相互作用を阻害するものである。
上記のようにKPNA1は、T細胞の活性化に影響を与える因子であるPKCθと相互作用し、PKCθによってリン酸化される基質であることが本発明者らにより明らかにされた。さらにNF−κBと、タンパク質の核内輸送を担うKPNA1と相互作用することが本発明者らにより明らかにされた。NF−κBは核内に移行することによってIL−2遺伝子の転写を活性化する因子である。
したがって、KPNA1とNF−κBとの相互作用を阻害する物質は、IL−2の産生を抑制する蓋然性が極めて高い物質である。すなわち、KPNA1とNF−κBとの相互作用を阻害する物質は、T細胞の活性調節またはIL−2の産生異常などに係る疾患を予防または治療薬の有力な候補化合物である。従来、KPNA1とNF−κBとが伝達経路において直接的に関連を有する物質どうしであることについてはまったく示唆する知見はなかったため、上記のような本形態の阻害剤が、T細胞の活性調節やIL−2の産生に係る疾患の予防および/または治療薬の有力な候補物質となるということは、初期的着想すら存在しなかった。また、本発明は、KPNA1とNF−κBというまったく新しい相互作用の組み合わせを見いだすことにより、まったく新たに具体的な創薬標的を提供するものでもある。
本形態の阻害剤は、KPNA1とNF−κBの相互作用を阻害する物質であればよく、他に特に限定されるものではない。例えば、本形態の阻害剤は材質などによって限定されるものではなく、ポリヌクレオチド、タンパク質などの生体物質であってもよいし、あるいは無機または有機の化学薬品などでもよい。
本形態の阻害剤としてより具体的には、例えば、KPNA1とNF−κBが相互作用可能な条件下で、KPNA1とNF−κBと候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された物質が例示される。タンパク質の相互作用が生じたか否かの検定については下記にて別途詳説する。
(2)相互作用阻害剤検出方法
本発明の相互作用阻害剤検出方法は、T細胞の活性調節またはIL−2産生に関連するタンパク質相互作用を阻害する物質の検出を行うものであり、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法と、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出する方法の二形態が含まれる。
(2−1)PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法
まず、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法を例としつつ、本発明について説明する。
本発明の一形態では、PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かの検定を行う。PKCθとKPNA1とが相互作用が可能な条件を設けることは、阻害剤の候補化合物によってタンパク質の相互作用が阻害されたことを的確に検知するための前提であり、タンパク質の相互作用が可能な条件であればよく、例えばin vitroでもin vivoでもよい。好ましくは、相互作用に係るそれぞれのタンパク質相互作用における相互接触部位の立体構造が十分に保ち得る条件が好適である。
一例としては、タンパク質を添加することができる液体溶媒などによってタンパク質の相互作用が可能な場が提供される。好ましい液体溶媒としては水溶液があげられ、液体溶媒の温度は、好ましくは常温、より好ましくは30〜37℃で、pHは、好ましくは中性、より好ましくは6.5〜8.5に調整される。このように調製される液体溶媒には、上記のpHを保つ適当な緩衝剤など、他の補助的成分を配合してもよい。
また、PKCθ、KPNA1の遺伝子配列は既に公知のものがあり、これらの遺伝子を遺伝子工学的に形質導入し、所定の宿主細胞内で発現させ、相互作用させてもよい。PKCθやKPNA1の遺伝子の取得は、例えば、配列データベース等に記録された配列に基づきプローブを作成し、cDNAライブラリーからつり出してもよいし、プライマーを作製しcDNAライブラリーからPCR法などにより増幅するなどして得ることができる。PKCθやKPNA1を含有するcDNAライブラリーは市販のライブラリーから入手可能である。
本実験系においては、PKCθとして、恒常的なリン酸化活性を示すものが好適である。恒常的なリン酸化活性を示すとは、外的因子によってリン酸化活性のスイッチがオンになったりオフになったりするようなものではなく、タンパク質の立体構造を保ち得る通常の生化学的条件下において常時リン酸化活性を発揮することをいう。また、ここでいうリン酸化活性とは、リン酸化反応を触媒する活性のことをいう。PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法においては、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたことはKPNA1がリン酸化されたこととして検出できる。したがって、仮に不活性化したPKCθを用いてしまうと偽陰性を生じ得る。そのため、上記のように恒常的なリン酸化活性を示すPKCθを用いることにより、検出方法としての信頼性を向上させることできる。
恒常的なリン酸化活性を示すキナーゼとしては、例えば配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列は、元々はN末端から148番目のアミノ酸残基がアラニンであったところを、グルタミン酸に置換して得られたものである。148番目のアミノ酸残基をグルタミン酸に置換することにより、リン酸化活性のスイッチがオンになった状態が保たれる。また、本発明においては、配列表の配列番号9に示すアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一のタンパク質を用いることもできる。すなわち、配列表の配列番号9に記載のアミノ酸配列において、第148番目がグルタミン酸であり、かつ第148番目のグルタミン酸以外の領域に、置換、欠失、挿入、付加および逆位からなる群より選ばれる1または数個のアミノ酸の変異を含むアミノ酸配列を有し、かつ、恒常的なリン酸化活性を有するタンパク質を用いることもできる。ここで「数個」とは、許容される変異が恒常的なリン酸化活性を大きく損なわない範囲の変異であることを意味し、数値として具体的に例示すると2〜50個、好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜10個である。
第148番目のアミノ酸残基をアラニンからグルタミン酸に置換するような変異の導入は、例えば部位特異的変異法によって、本タンパク質をコードする遺伝子の特定の部位のアミノ酸が置換されるように塩基配列を改変することなどによって得られる。
PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存させる。すなわち、PKCθとKPNA1と候補化合物とを接触させる。具体的には、上記のように調製した液体溶媒に、PKCθ、KPNA1および候補化合物を添加してもよいし、あるいは、PKCθおよびKPNA1を発現させた細胞に候補化合物を取り込ませる若しくは候補化合物を同細胞内で発現させるなどしてもよい。
上記のように相互作用に対する阻害作用を検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤として得る。相互作用を阻害したか否かの識別は、適当なコントロールを設けて対比させることにより容易に識別可能である。適切なコントロールには、実験系が正常に機能していることを確認するための系の他、タンパク質相互作用が生じること又はタンパク質相互作用が生じないことが予め設定された系が例示され、対比することにより、未知の候補化合物がタンパク質の相互作用を阻害するか否かを示すことができるものなどが含まれる。識別のためには、発光物質、蛍光物質、発色物質、放射性物質、マーカー遺伝子などの各種の標識物質を用い、標識物質を定性的または定量的に測定し、その測定結果の差から阻害剤か否かを判断することがきる。
タンパク質相互作用を検定する方法は既にいくつかの方法が知られている。タンパク質の相互作用検定法として具体的には、例えば、免疫沈降法、ファーウエスタン法、ゲルろ過法、ツーハイブリッド法、エネルギートランスファー法、表面プラズモン共鳴を用いた方法などが挙げられる。本発明の検出方法においては、上記のようなタンパク質相互作用の検出方法を用い、適切なコントロール試料を設けて、阻害剤を検出するような実験系を構築すればよい。
(2−2)KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出する方法
KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出する場合には、上記PKCθおよびKPNA1の組み合わせに変えて、KPNA1及びNF−κBを用いればよい。すなわち、KPNA1とNF−κBとが相互作用可能な条件下で、KPNA1とNF−κB候補化合物とを共存せしめ、KPNA1とNF−κBとの相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を阻害剤として検出する。他の好ましい条件等については、上記(2−1)PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法と同様である。
(3)相互作用阻害剤検出キット
本発明の相互作用阻害剤検出方法は、T細胞の活性調節またはIL−2産生に関連するタンパク質相互作用を阻害する物質の検出を行う試験キットであり、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出するキットと、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出するキットの二形態が含まれる。PKCθ、KPNA1、NF−κBの供給試料形態としては精製タンパク質の他に、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。このポリヌクレオチドを適当なベクターに組み込むことにより、これらのタンパク質を遺伝子工学的な手法により容易に実験に供給することができる。また、これらのタンパク質の相互作用および機能が保たれるならば、これらのN末端やC末端に別のタンパク質、例えばβ−ガラクトシダーゼ、グルタチオン、S−トランスフェラーゼや、ペプチドタグ、例えばHisタグ、mycタグ、FLAGタグを付加したものを、実験に供給することができる。
(3−1)PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出するキット
PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出するキットを例としつつ、さらに本発明のキットについて説明する。本発明の一形態の検出キットは、PKCθ供給試料と、KPNA1供給試料とを備える。PKCθ供給試料は、例えば、PKCθの精製タンパク質、PKCθをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。試験キットの好ましい一形態としては、PKCθ供給試料としてPKCθをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを、KPNA1供給試料としてKPNA1をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを採用する形態が挙げられる。
検出キットは、プラスミドなどベクターの母体種類、プロモーター、選択マーカーなどは、発現ベクターとして用いられる種々の構成を採用することができる。具体例を挙げると次の通りである。
ベクターとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、市販品としてpBT Vector、pTRG Vector(Stratagene社製)など)、酵母由来プラスミド(例、YEp24、YCp50など)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。また、枯草菌に好適に用いられるプラスミドとして、例えば、pUB110、pTP5、pC194などが挙げられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主細胞に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが挙げられる。また、宿主細胞が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが挙げられる。宿主細胞が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。また、動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、HIV・LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
発現ベクターは、組換え操作についての扱いやすさの観点からマルチクローニングサイトを有することが好ましい。また、以上の他に、発現ベクターには、所望により選択マーカー、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)、ターミネーターなどを組み込むことができる。選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性遺伝子(カルベニシリン耐性遺伝子でもある。以下、Ampと略称する場合がある)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(以下、Camと略称する場合がある)、テトラサイクリン耐性遺伝子(以下、Tetと略称する場合がある)、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。また、必要に応じて、宿主細胞に合ったシグナル配列を付加する。宿主細胞がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主細胞がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主細胞が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主細胞が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などをそれぞれ利用できる。
また、本発明の検出キットには、発現ベクターを発現させるのに適した宿主細胞を備えてもよい。宿主細胞としては、例えば、連鎖球菌(streptococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia coli)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)および枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌細胞;酵母、アスペルギルス属(Aspergillus)などの真菌細胞;ドロソフィラS2(Drosophila S2)およびスポドプテラSf9(Spodoptera Sf9)などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、ボウズ(Bows)黒色腫細胞および血球系細胞などの動物細胞;ならびに植物細胞が挙げられる。本発明の阻害剤検出方法において用いられる宿主細胞として、より好ましくは、酵母細胞、大腸菌細胞、枯草菌細胞、哺乳動物細胞などが挙げられる。
発現ベクターの宿主細胞への導入は、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986);Sambrookら、Molecular Cloning:A LABORATORY MANUAL,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,New York(2001)のような、多くの標準的な実験マニュアルに記載される方法により行うことができる。より具体的には、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、スクレープ負荷、バリスティック導入または感染等がある。
宿主の培養は、宿主の種類等に応じて調節して行えばよい。宿主の種類は多数に上るが、いくつかの具体例を挙げると次の通りである。例えば、宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地は液体培地でも寒天培地でもよく、その中には形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他を配合する。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。エシェリヒア属菌を培養する際の好適な培地として具体的には、酵母エキス、トリプトン、塩(NaCl)を含むLB培地などが例示される。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドのような誘導剤を添加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行い、必要により通気や撹拌を加える。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、Burkholder最小培地、0.5%カザミノ酸を含有するSD培地などが挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
また、宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace,T.C.C.,Nature、195、788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地(The Journal of the American Medical Association、199巻、519(1967))、199培地(Proceeding ofthe Society for the Biological Medicine、73巻、1(1950))などが用いられる。pHは約6〜8であることが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。また必要に応じて、CO濃度の調節を行う。
また、本発明のキットには、上記本発明の検出方法を実施するために用いられる他の検出手段を備えるようにしてもよい。例えば、本形態のキットには、上記のタンパク質相互作用の阻害を検出するために用いられる試薬類を備えることもできる。試薬類としては、定性的または定量的に測定可能な、発光物質、蛍光物質、発色物質、放射性物質などの標識物質、目的物質を特異的に検出するための抗体試薬類、実験系を適切に調整するためのpH調製剤、緩衝剤、基材などの補助剤などの試薬類を適宜選択して備えることができる。また、さらに本発明のキットには、検出試験に用いる容器、制限酵素、宿主細胞培養のための培地等を備えるようにしてもよい。
(3−2)KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出するキット
KPNA1とNF−κBとの相互作用を検定するキットの場合には、上記PKCθおよびKPNA1の組み合わせに変えて、KPNA1及びNF−κBを用いる。すなわち、本発明の検出キットの他の一形態として、KPNA1供給試料と、NF−κB供給試料と、KPNA1とNF−κBとの相互作用の検定手段とを含む、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出するキットが挙げられる。好ましい一形態としては、KPNA1供給試料がKPNA1をコードするポリヌクレオチドを含むベクターであり、前記NF−κB供給手段がNF−κBをコードするポリヌクレオチドを含むベクターである。他の構成については上記(3−1)PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出するキットと同様である。
以下、下記実施例を示し、本発明について詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
実施例1:PKCθとKPNA1の相互作用の解析
PKCθとKPNA1が相互作用するかどうかについて、実験的に確認するために、インビボ結合試験(in vivo binding assay)を実施した。
1−1)PKCθの哺乳動物細胞発現プラスミドの構築
ヒトPKCθのアミノ酸配列(National Center Biotechnology Information:NCBI;アクセッション番号NP_006248)をコードするcDNAは、ヒト骨格筋cDNAライブラリー(タカラバイオ社製)を鋳型にPCRを行うことにより得た。PCRに用いたプライマー、theta−Nとtheta−Cの配列は、配列表の配列番号1と配列番号2にそれぞれ示す。得られたDNA断片を、哺乳動物細胞発現用ベクター、pcDNA3.1/myc−HisB(Invitrogen社製)に挿入した。これにより、ヒトPKCθを、C末端myc−Hisタグ付加蛋白質(以下、PKCθ−myc−His)として、哺乳動物細胞内で発現可能なプラスミド、PKCθ−myc−His/pcDNA3.1を作製した。
1−2)KPNA1の哺乳動物細胞発現プラスミドの構築
ヒトKPNA1のアミノ酸配列(NCBI;アクセッション番号AAH03009)をコードするcDNAは、ヒト胸腺cDNAライブラリー(タカラバイオ社製)を鋳型にPCRを行うことにより得た。PCRに用いたプライマー、KPNA1−NとKPNA1−Cの配列は、配列表の配列番号3と配列番号4にそれぞれ示す。得られたDNA断片を、哺乳動物細胞発現用ベクター、pCMV Tag2C(Stratagene社製)に挿入した。これにより、ヒトKPNA1を、N末端FLAGタグ付加蛋白質(以下、FLAG−KPNA1)として、哺乳動物細胞内で発現可能なプラスミド、FLAG−KPNA1/pCMVを作製した。
1−3)PKCθとKPNA1のインビボ結合試験(in vivo binding assay)
ヒト胎児腎臓由来の細胞株HEK293T細胞に、上記発現プラスミド、PKCθ−myc−His/pcDNA3.1とFLAG−KPNA1/pCMVをトランスフェクションすることにより実験を行った。
まず、4×10個のHEK293T細胞を6cm dishに散種し、37℃/5%CO存在下にて一晩培養後、FuGENE(Roche Diagnostics社製)を用いてトランスフェクションを行った。その際、2μgずつのPKCθ−myc−His/pcDNA3.1とFLAG−KPNA1/pCMV(組み合わせ1)および、陰性コントロールとして、2μgずつのpcDNA3.1/myc−HisB(ベクターのみ)とFLAG−KPNA1/pCMV(組み合わせ2)の2種類のトランスフェクションを行った。
トランスフェクション後、37℃/5%CO存在下でさらに2日間培養することにより個々の蛋白質を細胞内で一過的に発現させた。次いで、細胞を氷冷したD−PBS(Invitrogen社製)により洗浄後、0.5mlのCell Lysis Buffer(20mM Tris−HCl,pH7.5/150mM NaCl/1mM NaEDTA/1mM EGTA/1% Triton/2.5mM sodium pyrophosphate/1mM β−glycerophosphate/1mM NaVO/1μg/ml Leupeptin/1mM PMSF)に懸濁し、氷中30分間放置した。その後、14krpm、10分間、4℃の遠心により上清を回収し、細胞抽出液を得た。回収した細胞抽出液に10μlのagarose conjugated normal mouse IgG(SantaCruz社製)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心により上清を回収した(Pre−clean)。
この上清に10μlのanti−FLAG M2 agarose affinity gel(Sigma社製)を加え(FLAG−KPNA1の免疫沈降)、4℃にて2時間転倒混和を行い、遠心にてアガロース(agarose)を回収した。さらにagaroseを0.5mlのCell Lysis Bufferにて4回洗浄した後、SDS sample bufferを加え、5分間煮沸後、上清をSDS−PAGEにて分離した。その後、抗FLAG M2 モノクローナル抗体(anti−FLAG M2 Monoclonal Antibody、Sigma社製)を用いたウエスタンブロッティング法(Western blotting)により、FLAG−KPNA1が免疫沈降されていることを検出した。また、c−Mycモノクローナル抗体(c−Myc(9E10)Monoclonal Antibody、SantaCruz社製)を用いたWestern blottingによりPKCθ−myc−Hisが共沈しているかを検出した。なお、検出はECL plus western blotting kit(Amasherm biosciences社製)を使用した。
その結果を図1に示す。図1には左右2つの泳動像を示しており、各泳動像における各レーンM、1、2には以下に示すサンプルを電気泳動した。また、図4は図1の左側泳動像の一部の模式図を示す。
レーンM:分子量マーカー
レーン1:組み合わせ1をトランスフェクションさせた細胞の抽出液から、抗FLAG抗体により免疫沈降したサンプル
レーン2:組み合わせ2をトランスフェクションさせた細胞の抽出液から、抗FLAG抗体により免疫沈降したサンプル
右側泳動像(WB;myc)は、FLAG−KPNA1が免疫沈降されていることを示す(矢印)。左側泳動像(WB;FLAG)は、FLAG−KPNA1を免疫沈降することにより、PKCθ−myc−Hisが共沈したことを示す(レーン1の矢印)。なお、左右の各レーンの左側に示した数値は分子量マーカーの分子量である(単位kDa)。
まず、図1右側泳動像(anti−FLAG M2 Monoclonal AntibodyによるWestern blotting)に示すように、組み合わせ1、2共にFLAG−KPNA1に相当するバンド(分子量約63kDa)が検出されており、免疫沈降実験系の妥当性が示された。そして、図1左側泳動像(c−Myc(9E10)Monoclonal Monoclonal AntibodyによるWestern blotting)に示すように、組み合わせ1においてPKCθ−myc−Hisに相当するバンド(分子量約85kDa、レーン1の矢印部)が検出されている。これは、FLAG−KPNA1が細胞内でPKCθ−myc−Hisと複合体を形成し供沈した事を示している。この結果から、PKCθがKPNA1と細胞内で結合していることが確認された。
実施例2:PKCθによるKPNA1リン酸化の解析
PKCθとKPNA1の相互作用が確認されたことを踏まえ、KPNA1がPKCθのリン酸化基質となるかどうかを確認するため、インビトロリン酸化実験(In vitro kinase assay)を実施した。
2−1)PKCθによるリン酸化実験の陽性コントロールおよび陰性コントロール
PKCθのリン酸化基質としてはMSNが公知である(Salvatore F.P.et al.,(1998)The Journal of Biological Chemistry 273,13:7594−7603)。PKCθによるリン酸化実験の陽性コントロールとして用いるため、ヒトMSN蛋白質の哺乳動物細胞発現プラスミド、MSN−V5−His/pcDNA3.1(Invitrogen社製)を使用した。これにより細胞内で、MSNをC末端V5−Hisタグ付加蛋白質(以下、MSN−V5−His)として発現させることが可能である。
一方、陰性コントロールとしてはLuciferaseを使用した。Luciferaseの哺乳動物細胞発現プラスミドとしてはpCMV Tag2 control(Stratagene社製)を用いた。これにより細胞内で、LuciferaseをN末端FLAGタグ付加蛋白質(以下、FLAG−Luc)として発現させることが可能である。
2−2)インビトロ リン酸化実験(In vitro kinase assay)
基質となる蛋白質(FLAG−KPNA1、FLAG−Luc、MSN−V5−His)は以下の手順により細胞内で発現後、免疫複合体として回収した。
まず、4×10個のHEK293T細胞を6cm dishに散種し、37℃/5%CO存在下にて一晩培養後、FuGENE(Roche Diagnostics社製)を用いてトランスフェクションを行った。トランスフェクションしたプラスミドDNAは、FLAG−KPNA1/pCMV、pCMV Tag2 control、MSN−V5−His/pcDNA3.1をそれぞれ2μlずつである。
トランスフェクション後、37℃/5%CO存在下でさらに2日間培養することにより個々の蛋白質を細胞内で一過的に発現させた。次いで、細胞を氷冷したD−PBS(Invitrogen社製)により洗浄後、0.5mlのCell Lysis Buffer(20mM Tris−HCl,pH7.5/150mM NaCl/1mM NaEDTA/1mM EGTA/1% Triton/2.5mM sodium pyrophosphate/1mM β−glycerophosphate/1mM NaVO/1μg/ml Leupeptin/1mM PMSF)に懸濁し、氷中30分間放置した。その後、14krpm、10分間、4℃の遠心により上清を回収し、細胞抽出液を得た。回収した細胞抽出液に10μlのagarose conjugated normal mouse IgG(SantaCruz社製)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心により上清を回収した(Pre−clean)。
この上清にFLAG−KPNA1、FLAG−Lucの場合は、10μlのanti−FLAG M2 agarose affinity gel(Sigma社製)を、MSN−V5−Hisの場合は、10μlのanti−V5 agarose affinity gel(Sigma社製)を加え、4℃にて2時間転倒混和を行い、遠心にてagaroseを回収した。さらにAgaroseを0.5mlのCell Lysis Bufferにて2回洗浄した後、kinase buffer(25mM Tris−HCl pH7.5/5mM β−glycerophosphate/2mM DTT/0.1mM NaVO/10mM MgCl)にて2回洗浄した。
以上の操作により回収された基質蛋白質に、上記kinase bufferにATP(最終濃度10μM)、MnCl(最終濃度2mM)、phosphatidyl serine(最終濃度50μg/ml)、diacylglycerol(最終濃度5μg/ml)、phosphatidyl glycerol(最終濃度0.2mg/ml)、および5μCiのγ32P−ATPを加えた反応液24.5μlを加え、更に精製PKCθ(Upstate社製)を0.5μl(約300ngに相当)を加えた。これを30℃にて30分間反応させ、SDS sample bufferを加え5分間煮沸した。このサンプルをSDS PAGEにより分離後、ゲルをX線フィルムに感光しリン酸化された基質特異的なバンドの有無を検出した。
その結果を図2に示す。また図5には、図2の泳動像の一部の模式図を示す。陽性コントロールであるMSNは、PKCθによりリン酸化され(白抜き矢頭)、陰性コントロールであるLuciferaseは、PKCθによりリン酸化されていない。この同一条件下において、KPNA1はPKCθによりリン酸化されている(黒塗り矢頭)。なお、矢印はPKCθの自己リン酸化を示しており、図の左側に示した数値は分子量マーカーの分子量である(単位kDa)。
まず全てのレーンに共通してPKCθの自己リン酸化バンドが確認された(分子量約83kDa)。次いで、陽性コントロールであるMSNではリン酸化バンドが認められ(分子量約71kDa)、陰性コントロールであるLucではリン酸化バンドが認められない(分子量約62kDa)ことから、実験系の妥当性が確認された。この条件下において、KPNA1のリン酸化バンド(分子量約63kDa)が確認された。このことから、KPNA1はPKCθのリン酸化基質であることが確認された。
実施例3:KPNA1とNF−κBの相互作用の解析
本実験では、KPNA1とNF−κBが相互作用するかどうかについて確認するために、インビボ結合試験(in vivo binding assay)を実施した。
3−1)NF−κBを構成するp50及びp65の発現プラスミドの構築
ヒトNF−κBはp50とp65のヘテロ2量体で構成されていることが公知である。またヒトp50は、最初に前駆体であるp105(NCBI;アクセッション番号AAA36361)として発現し、その後細胞内で436番目のメチオニンと437番目アスパラギン酸の間で切断され、p50となることが知られている。
ヒトp50のアミノ酸配列をコードするcDNAは、ヒト骨格筋cDNAライブラリー(タカラバイオ社製)を鋳型にPCRを行うことにより得た。p50取得のためPCRに用いたプライマー、p50−Nとp50−Cの配列は、配列表の配列番号5と配列番号6にそれぞれ示す。なおp50−Cの配列は、p105の436番目のメチオニン(ATG)の後に終止コドンであるTAAが付加されるように設計してある。
ヒトp65のアミノ酸配列(NCBI;アクセッション番号AAA36408)をコードするcDNAは、ヒト骨格筋cDNAライブラリー(タカラバイオ社製)を鋳型にPCRを行うことにより得た。p65取得のためPCRに用いたプライマー、p65−Nとp65−Cの配列は、配列表の配列番号7と配列番号8にそれぞれ示す。得られたDNA断片を、哺乳動物細胞発現用ベクター、pCMV Tag2A(Stratagene社製)にそれぞれ挿入した。これにより、ヒトp50を、N末端mycタグ付加蛋白質(以下、myc−p50)として、またヒトp65を、N末端mycタグ付加蛋白質(以下、myc−p65)として哺乳動物細胞内で発現可能なプラスミド、myc−p50/pCMVとmyc−p65/pCMVを作製した。
3−2)KPNA1とp50およびp65のインビボ結合試験(in vivo binding assay)
4×10個のHEK293T細胞を6cm dishに散種し、37℃/5%CO存在下にて一晩培養後、FuGENE(Roche Diagnostics社製)を用いてトランスフェクションを行った。その際、2μgずつのmyc−p50/pCMVとFLAG−KPNA1/pCMV(組み合わせ1)、2μgずつのmyc−p65/pCMVとFLAG−KPNA1/pCMV(組み合わせ2)および、陰性コントロールとして、2μgずつのpCMV Tag3 control(Stratagene社製)とFLAG−KPNA1/pCMV(組み合わせ3)の3種類のトランスフェクションを行った。
なお、組み合わせ3に使用したpCMV Tag3 controlは、LuciferaseをN末端mycタグ付加蛋白質(以下、myc−Luc)として発現させることが可能な発現プラスミドである。
トランスフェクション後、37℃/5%CO存在下でさらに2日間培養することにより個々の蛋白質を細胞内で一過的に発現させた。次いで、細胞を氷冷したD−PBS(Invitrogen社製)により洗浄後、0.5mlのCell Lysis Buffer(20mM Tris−HCl,pH7.5/150mM NaCl/1mM NaEDTA/1mM EGTA/1%Triton/2.5mM sodium pyrophosphate/1mM β−glycerophosphate/1mM NaVO/1μg/ml Leupeptin/1mM PMSF)に懸濁し、氷中30分間放置した。その後、14krpm,10分間,4℃の遠心により上清を回収し、細胞抽出液を得た。回収した細胞抽出液に10μlのagarose conjugated normal mouse IgG(SantaCruz社製)を加え、4℃にて30分間転倒混和した後、遠心により上清を回収した(Pre−clean)。
この上清に10μlのanti−myc agarose conjugate(SantaCruz社製)を加え(myc−p50、myc−p65、myc−Lucの免疫沈降)、4℃にて2時間転倒混和を行い、遠心にてagaroseを回収した。さらにAgaroseを0.5mlのCell Lysis Bufferにて4回洗浄した後、SDS sample bufferを加え、5分間煮沸後、上清をSDS−PAGEにて分離した。その後、c−Myc(9E10)Monoclonal Monoclonal Antibody(SantaCruz社製)を用いたWestern blottingにより、myc−p50、myc−p65、myc−Lucが免疫沈降されていることを、またanti−FLAG M2 Monoclonal Antibody(Sigma社)を用いたWestern blottingによりFLAG−KPNA1が共沈しているかを検出した。なお、検出はECL plus western blotting kit(Amasherm biosciences社製)を使用した。
その結果を図3に示す。図3には、左右2つの泳動像を示しており、各泳動像におけるの各レーンM、1、2、3には以下に示すサンプルを電気泳動した。また、図6には図3の左側泳動像のレーン1および2の一部の模式図を示す。
レーンM:分子量マーカー
レーン1:組み合わせ1をトランスフェクションさせた細胞の抽出液から、抗myc抗体により免疫沈降したサンプル
レーン2:組み合わせ2をトランスフェクションさせた細胞の抽出液から、抗myc抗体により免疫沈降したサンプル
レーン3:組み合わせ3をトランスフェクションさせた細胞の抽出液から、抗myc抗体により免疫沈降したサンプル
右側泳動像(WB;myc)は、レーン1でmyc−p50、レーン2でmyc−p65、レーン3でmyc−Lucが免疫沈降されていることを示す(レーン1、2、3における各矢印)。左側泳動像(WB;FLAG)は、レーン1ではmyc−p50を免疫沈降することにより、レーン2ではmyc−p65を免疫沈降することにより、FLAG−KPNA1が共沈したことを示す(レーン1および2における各矢頭)。なお、左右の各レーンの左側に示した数値は分子量マーカーの分子量である(単位kDa)。
まず、図3右側泳動像(c−Myc(9E10)Monoclonal Monoclonal Antibody によるWestern blotting)に示すように、組み合わせ1、2、3にそれぞれmyc−p50(分子量約52kDa)、myc−p65(分子量約65kDa)、myc−Luc(分子量約62kDa)に相当するバンドが検出されており、免疫沈降実験系の妥当性が示された。一方、図3左側泳動像(anti−FLAG M2 Monoclonal AntibodyによるWestern blotting)に示すように、組み合わせ1および2においてKPNA1相当するバンド(分子量約63kDa)が検出されている。また陰性コントロールである組み合わせ3においては、KPNA1相当するバンド(分子量約63kDa)が検出されていない。これはFLAG−KPNA1が細胞内でmyc−p50ならびにmyc−p65と複合体を形成している事を示している。この結果から、KPNA1はNF−κBと細胞内で結合していることが確認された。
実施例4:KPNA1のリン酸化によるNF−κBの転写活性の変動
PKCθによりKPNA1がリン酸化されることで、NF−κBの転写活性が影響をうけるかどうかを、以下のようにルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて検討した。
4−1)実験材料
4−1−1)宿主細胞
レポーターアッセイには、宿主細胞としてJurkat,Clone E6−1(大日本製薬株式会社製、以下Jurkat細胞と記す)を使用した。Jukrkat細胞は、ヒト急性白血病由来のT細胞から樹立された細胞株であり、抗原認識に伴うT細胞活性化、特にIL−2の遺伝子発現の解析のモデル細胞として一般的に使用されているものである。Jurkat細胞で、PKCθ、KPNA1およびNF−κBは発現している。
4−1−2)活性型PKCθおよび不活性型PKCθの哺乳動物細胞発現プラスミドの構築
PKCθは、調節ドメインとキナーゼドメインの2つの領域から構成されている。通常、活性化されていないT細胞内においてPKCθはリン酸化酵素としては不活性化されている。それは、調節ドメインにある偽基質領域(PKCθ自身の基質となる配列に類似した配列を備える領域)がキナーゼドメインの触媒クレフトに入り込み、キナーゼ活性を阻害しているからである。しかし、T細胞活性化に伴い産出されるジアシルグリセロールなどの脂質メッセンジャーが調節ドメインに結合することによりPKCθは構造変化を起こし、調節ドメインがキナーゼドメインから離れる。これによりPKCθはリン酸化酵素として活性化された状態になり、T細胞活性化のシグナルが伝達されて行く。
PKCθは、706アミノ酸残基からなるが、偽基質領域内の148番目のアラニンをグルタミン酸に変異させると先に述べた構造変化と同等の構造変化を起こす。従って、この変異を持つPKCθ(以下、PKCθAEと記す)は、恒常的にリン酸化酵素として活性化されている。また、PKCθAEを過剰発現させたJurkat細胞では、抗原認識などの刺激を加えなくても、IL−2の転写活性化が起きることが知られている(Molecular and Cellular Biology 1996 Apr;16(4):1842−50.)。
また、PKCθのキナーゼドメイン内の409番目のリジンをアルギニンに変異させると、リン酸化酵素として不活性化されることが知られている。このリジンは、結合したATPのγ位のリン酸基を、リン酸化を受ける基質側水酸基に配向する役割を果たしている。このため、この変異を持つPKCθ(以下、PKCθKRと記す)では、基質に対してリン酸基の受け渡しがうまく行われないため、リン酸化酵素として不活性化の状態となり、これを過剰発現させたJurkat細胞では、抗原認識などの刺激を加えても、内在性のPKCθがあるにも関わらず、IL−2の転写活性化が起きないことが知られている(Molecular and Cellular Biology 1996 Apr;16(4):1842−50.)。
本実験では、PKCθによりKPNA1がリン酸化されている状態と、リン酸化されていない状態それぞれについてNF−κBの転写活性を測定する必要があったので、以上の知見からPKCθAEおよびPKCθKRの各発現プラスミドを作製した。
PKCθAEおよびKRの各発現プラスミドの作製には、上記実施例1の「PKCθとKPNA1のインビボ結合試験」に使用したPKCθ−myc−His/pcDNA3.1を利用した。野生型PKC・タンパク質をコードするDNA対し、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社製)を用いて変異を導入し、アミノ酸配列の148番目のアラニンをグルタミン酸にいれたもの(以下、PKCθAE−myc−His/pcDNA3.1と記す)、あるいは409番目のリジンをアルギニンに変換したもの(以下、PKCθKR−myc−His/pcDNA3.1と記す)の2種を作製した。PKCθAEのアミノ酸配列を配列表の配列番号9に、PKCθKRのアミノ酸配列を配列表の配列番号10に示す。
ついで、PKCθAEおよびKRを哺乳動物細胞内でより安定して発現させることを目的として、発現ベクターをpcDNA3.1/myc−HisからpCIベクター(Promega社製)に変更した。このベクターはヒトサイトメガロウィルスのエンハンサー/プロモーターの下流に、人工的に作製したイントロンを組み込んであり、これによりその下流に挿入した遺伝子の発現をより安定かつ高レベルな状態にすることが出来る。PKCθAE−myc−His/pcDNA3.1およびPKCθKR−myc−His/pcDNA3.1を制限酵素Kpn IとPme Iで処理することにより、C末端myc−Hisタグ付きのPKCθAEあるいはKRをコードするDNA断片をそれぞれ調製し、pCIベクターのKpn IサイトとPme Iサイトの間に組み込んだ。これによりPKCθAE−myc−His/pCIならびにPKCθKR−myc−His/pCIを得た。これを用いてC末端にmyc−Hisタグが融合したPKCθAEおよびKRをJurkat細胞内でそれぞれ発現させた。
4−2)トランスフェクションおよびレポーターアッセイ
NF−κBの転写活性検出用レポータープラスミドは、pNF−κB−Luc(Stratagene社製)を使用した。これはホタルルシフェラーゼをコードするDNAの上流に、NF−κBが転写活性化因子として働くために必要なエンハンサー配列(5’−TGGGGACTTTCCGC−3’配列番号11)を5回繰り返して挿入されているものである。すなわち、レポータープラスミドpNF−κB−Lucには、NF−κBが結合する配列部位(NF−κB結合領域)と、このNF−κB結合領域の下流にレポーターとなるホタルルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれている。ホタルルシフェラーゼ活性が検出されれば、NF−κBがNF−κB結合領域に結合し、転写活性化因子として作動していることが示される。また、内部標準としてphRL−TK(Promega社製)を使用した。これは単純ヘルペスウィルスのチミジンキナーゼのプロモーター配列の下流にウミシイタケのルシフェラーゼが挿入されているレポータープラスミドである。
KPNA1の哺乳動物細胞内発現プラスミドは、上記「PKCθとKPNA1のインビボ結合試験」に使用したFLAG−KPNA1/pCMVを使用した。
また、トランスフェクションする際の総DNA量を合わせるため、PKCθAEやKRを組み込むのに用いたpCIベクター、あるいはKPNA1をを組み込むのに用いたpCMV Tag2を用いた。なお、NF−κBは細胞に内在するものを利用した。
1x10個のJurkat細胞を12ウェルプレートに散種し、1晩培養後、FuGENE6(Roche Diagnostics社製)3μlを用いてトランスフェクションを行った。トランスフェクションに用いたプラスミドDNAは、pNF−κB−Lucを190ng、phRL−TKを10ng、PKCθAE−myc−His/pCIあるいはPKCθKR−myc−His/pCIを400ng、FLAG−KPNA1/pCMVとpCMV Tag2をあわせて400ngとし、合計1μgとした。FLAG−KPNA1/pCMVは0、100、200、300、400ngと加える量を変動させた。また400ngのFLAG−KPNA1/pCMV単独の効果を見るときは、pCIベクターを400ng加えた。
トランスフェクション後、さらに48時間培養し、Dual−Luciferase Reporter Assay System(Promega社製)を用いて、ホタルルシフェラーゼ活性とウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定した。ついで、ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性で除することで補正値を算出した。さらに、PKCθKR−myc−His/pCIを400ngとpCMV Tag2を400ngトランスフェクションした時の補正値を1として、その他組み合わせにおける補正値の相対値を算出し、NF−κBの転写活性に依存して発現するホタルルシフェラーゼ活性の変動を数値化した。なお、実験は独立に6回行い、平均値と標準偏差も算出した。
結果
平均値に標準偏差もあわせグラフ化した実験結果を図7に示す。
まず、リン酸化酵素として活性化しているPKCθAEを単独で発現させることでNF−κBの転写活性がPKCθAE単独と比較して約6倍にまで上昇しており、系の妥当性が示された。また、PKCθAEとKPNA1を共発現させることにより、KPNA1の発現量の増加に伴いNF−κBの転写活性が上昇していることが示され、PKCθAE単独に比べさらに約6.4倍まで上昇した。さらにこの現象は、リン酸化酵素として不活性化しているPKCθKRとKPNA1の共発現、ならびにKPNA1単独において全く観察されなかった。
以上の結果から、KPNA1はPKCθと結合し、かつPKCθによりリン酸化されることにより、結果としてNF−κBの転写活性因子としての機能が増強されることになることが明らかとなった。
以上の実施例1から4の結果に基づくと、IL−2の発現経路の一つとして、次のような経路が存在すると考えられる。まずPKCθにより、転写因子などを核内へ輸送するタンパク質であるKPNA1がリン酸化される。KPNA1はリン酸化されることにより、より効率的にNF−κBと複合体を形成し、この複合体によってNF−κBが核内へ輸送される。そして、核内に移行したNF−κBがIL−2遺伝子の転写を促進するという経路が存在するものと考えられる。
本発明は、バイオテクノロジー産業などで利用可能である。本発明は、医薬、生物学的試薬などの開発・製造産業において好適である。
配列番号1;プライマー(theta−N)
配列番号2;プライマー(theta−C)
配列番号3;プライマー(KPNA1−N)
配列番号4;プライマー(KPNA1−C)
配列番号5;プライマー(p50−N)
配列番号6;プライマー(p50−C)
配列番号7;プライマー(p65−N)
配列番号8;プライマー(p65−C)
配列番号9;PKCθAEのアミノ酸配列
配列番号10;PKCθKRのアミノ酸配列
配列番号11;NF−κBのエンハンサー配列

Claims (15)

  1. PKCθとKPNA1との相互作用を阻害する、タンパク質の相互作用の阻害剤。
  2. KPNA1とNF−κBとの相互作用を阻害する、タンパク質の相互作用の阻害剤。
  3. PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を選択して得られた、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤。
  4. 前記PKCθが、恒常的なリン酸化活性を示すキナーゼである、請求項3に記載の阻害剤。
  5. KPNA1とNF−κBとが相互作用可能な条件下で、KPNA1とNF−κBと候補化合物とを共存せしめ、KPNA1とNF−κBとの相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を選択して得られた、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤。
  6. PKCθとKPNA1とが相互作用可能な条件下で、PKCθとKPNA1と候補化合物とを共存せしめ、PKCθとKPNA1との相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を阻害剤として検出する、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出する方法。
  7. 前記PKCθが、恒常的なリン酸化活性を示すキナーゼである、請求項6に記載の阻害剤を検出する方法。
  8. KPNA1とNF−κBとが相互作用可能な条件下で、KPNA1とNF−κBと候補化合物とを共存せしめ、KPNA1とNF−κBとの相互作用が生じたか否かを検定し、相互作用を阻害したことが示された候補化合物を阻害剤として検出する、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出する方法。
  9. PKCθ供給試料と、KPNA1供給試料とを含む、PKCθとKPNA1との相互作用の阻害剤を検出するキット。
  10. 前記PKCθ供給試料がPKCθをコードするポリヌクレオチドを含むベクターであり、前記KPNA1供給試料がKPNA1をコードするポリヌクレオチドを含むベクターである、請求項9に記載の阻害剤を検出するキット。
  11. 前記PKCθが、恒常的なリン酸化活性を有するキナーゼである、請求項9または10に記載の阻害剤を検出するキット。
  12. KPNA1供給試料と、NF−κB供給試料とを含む、KPNA1とNF−κBとの相互作用の阻害剤を検出するキット。
  13. 前記KPNA1供給試料がKPNA1をコードするポリヌクレオチドを含むベクターであり、前記NF−κB供給試料がNF−κBをコードするポリヌクレオチドを含むベクターである、請求項12に記載の阻害剤を検出するキット。
  14. 医薬品の開発において、PKCθとKPNA1との相互作用を創薬標的とすることを特徴とする方法。
  15. 医薬品の開発において、KPNA1とNF−κBとの相互作用を創薬標的とすることを特徴とする方法。
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