JPWO2005001066A1 - 新規分解菌及びそれを用いた有機化合物の分解処理方法 - Google Patents

新規分解菌及びそれを用いた有機化合物の分解処理方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどの殺菌性のある生物難分解性の有機化合物を含有する廃水中のこれらの有機化合物を効率よく分解処理することができる新規微生物を提供し、これらの微生物を用いて、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノール及びクレゾールなどの殺菌性を有する生物難分解性有機化合物を分解処理する方法を提供する。

Description

本発明は、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどの有機化合物の生物的分解処理に関する。
クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールは有用な化学原料であり、樹脂、接着剤、合板、積層板などの製造原料として多くの用途に用いられている。しかし、それらの製造過程においては、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールを含む廃水が生じることが多い。そのような廃水を処理する方法としては、現在のところ、希釈法、焼却法、蒸留回収法、活性汚泥法などが用いられている。
一般には生物的分解処理である活性汚泥法で処理されている。しかしながら、従来の活性汚泥処理で用いられている活性汚泥菌群は、20mg/Lを越えるような高濃度のクレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどの生物難分解性の有機化合物を高濃度で含む廃液を処理しようとすると、汚泥中の有用な微生物を死滅させる危険があるため、上記有機化合物を高濃度で含む廃液の処理には適していない。
そのため、活性汚泥処理に先立って抽出蒸留回収処理を行うか、あるいは廃液を極低濃度まで希釈した後に活性汚泥法によって廃液に含有されている有機化合物を分解処理している。
このような活性汚泥処理の問題点を解決することを目的とした発明として、特許文献1には、フェノール及びクレゾールが混合で含まれる廃液を分解できる、シュードモナス・セパシアKK01株を用いる分解処理方法が開示されている。しかし、さらにホルムアルデヒド、メタノールまでも混合で含む廃液を処理できるものではない。
このような活性汚泥処理の問題点を解決することを目的とした発明として、特許文献2には、高濃度の無機塩を含む条件下においても、フェノール性化合物を分解できる、カンジダ属に属する微生物を用いるフェノール性化合物の分解処理方法が開示されている。この方法で処理できるのはフェノール性化合物のみである。
また、フェノール、クレゾール、ホルムアルデヒド、メタノール等は殺菌性のある生物難分解性有機化合物であり、これらの有機化合物が存在する廃液中で生存でき、なおかつこれらの有機化合物を分解する能力をもつような菌種、現在既知の菌種の範囲では見当たらない。
特開平8−80188号公報 特開平8−24892号公報
そこで、本発明は、高濃度のクレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなど殺菌作用があり、生物難分解性の有機化合物を含有する廃液であっても生存でき、かつ、これらの有機化合物を効率よく分解処理できる新規微生物を提供し、これを用いて殺菌性のある生物難分解性の上記有機化合物を含有する廃水を効率よく分解処理する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどの殺菌性のある生物難分解性の有機化合物を含む廃水を、微生物を利用して浄化する研究の過程において、本発明者らは、土壌や貯水槽の水に棲息する微生物の中から、高濃度の上記有機化合物のうちの1種以上を効率よく分解することができる新規な菌株を見出し、本発明を完成させた。
本発明は、シュードモナス sp.、Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物及びCandida属 maltosaに属する微生物からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を用いて、殺菌性を有する生物難分解性有機化合物を分解する方法を提供する。
本発明は、上記方法に好適な、(1)シュードモナス sp.である、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)、(2)Methylobacterium属 radiotoleransに属し、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)、及び(3)Candida属 maltosaに属し、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有することを特徴とする新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)を提供する。
本発明によれば、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどの殺菌性のある生物難分解性の有機化合物を、それぞれ20mg/Lを超えるような高濃度で含む廃水を、新規な微生物を利用して効率よく分解することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機化合物を分解する方法(以下、本発明の方法という)は、シュードモナス sp.、Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物及びCandida属 maltosaに属する微生物からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を用いて、殺菌性を有する生物難分解性有機化合物を分解処理することを特徴とする。
本発明の方法において、殺菌性を有する生物難分解性有機化合物が、フェノール、クレゾール、サリチル酸及びヒドロキシ安息香酸などのフェノール性化合物、ホルムアルデヒド、メタノール、及びギ酸からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
本発明の方法において用いる微生物は、シュードモナス sp.から選択されることが好ましい。
シュードモナス sp.は、新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)(以下、SB0301菌株という)であることが好ましい。
SB0301菌株を用いて、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールからなる群から選択される有機化合物の1種又は2種以上を分解処理することが好ましい。
本発明の方法において用いる微生物は、Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物から選択されることが好ましい。
Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物としては、新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)(以下、SB0202菌株という)が好ましい。
SB0202菌株を用いて、ホルムアルデヒド及び/又はメタノールを分解処理することが好ましい。
本発明の方法において用いる微生物は、Candida属 maltosaに属する微生物から選択されることが好ましい。
Candida属 maltosaに属する微生物としては、新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)(以下、SB0201菌株という)が好ましい。
SB0201菌株を用いて、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールからなる群から選択される1種又は2種以上を分解処理することが好ましい。
本発明の方法で用いる微生物として、新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)、新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)及び新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)からなる群から選択される2種以上の菌株を用いることが好ましい。
(I)微生物による有機化合物の分解処理方法
以下、用いる微生物の種類別に、本発明の方法を説明する。
(1)シュードモナス sp.である微生物を用いる方法
シュードモナス sp.である微生物を用いて、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、及びメタノールなどの有機化合物を分解処理する本発明の方法において、シュードモナス sp.の微生物としては、本発明の新規微生物SB0301菌株を用いることが好ましい。
本発明の処理方法の方式には、特に制限はなく、公知の活性汚泥方式によって行ってもよく、あるいはバイオリアクター方式によって行ってもよい。目的に適した方式を適宜に選択することができる。
例えば、活性汚泥法では微生物の棲息する水槽に上記有機化合物を含む水溶液(廃液)を投入し、微生物と接触させることで、有機化合物を分解処理することができる。
また、散水濾床法、浸漬濾床法、菌体固定法においては微生物を固定化し、そこに有機化合物を含む水溶液(廃液)を接触させることにより、上記有機化合物を分解処理することができる。
なお、本発明の処理方法において、新規微生物SB0301菌は、有機化合物の分解処理に当たり、単独で用いてもよいし、従来の活性汚泥法などで用いられている公知の微生物及び/又は本発明の他の新規微生物と組み合わせて用いてもよい。
本発明の処理方法によって処理される対象は、主として化学工業等の製造過程で生じる上記有機化合物を含む廃液であるが、本発明はこれに限定されず、上記有機化合物を含む水性液体であればよい。
上記有機化合物の分解処理温度は、一般に10〜40℃、好ましくは15〜35℃の範囲である。処理時pHは、一般に6.0〜9.0、好ましくは6.5〜8.5の範囲である。分解処理は好気的条件で行うことが好ましい。また、分解処理に先立ち、必要に応じて各種前処理を行ってもよい。
本発明の処理方法によれば、後記する実施例3〜8で示すように、1,400mg/L濃度のm−クレゾールを単独で含有する水性液体中のm−クレゾールを7日で99%以上分解することができ、同様に1,200mg/L濃度のp−クレゾール又はo−クレゾールをそれぞれ単独で含有する水性液体中のこれらの有機化合物を7日で99%以上分解することができる。また、1,600mg/L濃度のフェノールを単独で含有する水性液体中のフェノールを1日で95%以上分解することができ、同様に400mg/L濃度のホルムアルデヒドを単独で含有する水性液体中のホルムアルデヒドを2日で99%以上分解することができ、1,500mg/L濃度のメタノールを単独で含有する水性液体中のメタノールを7日で約55%分解することができる。
さらに、実施例1で示すようにフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々250mg/Lの濃度で含む水性液体中のフェノール及びホルムアルデヒドを、2日で99%以上分解することができ、メタノールを9日で約20%分解することができる。
その上、実施例2で示すようにフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々250mg/L、m,p,o−クレゾールを各々25mg/Lの濃度で含む水性液体中のフェノール及びホルムアルデヒドを、2日で99%以上分解することができ、m,p−クレゾールを2日で90%以上分解することができ、o−クレゾールを7日で約30%分解することができ、メタノールを7日で約10%分解することができる。
(2)Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物を用いる方法
Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物を用いて、ホルムアルデヒド、メタノールなどの有機化合物を分解処理する本発明の方法において、Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物としては、本発明の新規微生物SB0202菌株を用いることが好ましい。
本発明の処理方法の方式は、特に制限されず、公知の活性汚泥方式により行ってもよく、あるいはバイオリアクター方式により行ってもよく、目的に適した方式を適宜に選択することができる。
例えば、活性汚泥法では微生物の生息する水槽に、ホルムアルデヒド、メタノールなどの生物難分解性の有機化合物を含む水性液体(廃液)を投入し、微生物と接触させることで、ホルムアルデヒド、メタノールなどの生物難分解性の有機化合物を分解処理することができる。
また、散水濾床法、浸漬濾床法、菌体固定法においては微生物を担体に固定化し、そこにホルムアルデヒド、メタノールなどの生物難分解性の有機化合物を含む水性液体(廃液)を接触させることにより、分解処理分解することができる。
なお、本発明の処理方法において、新規微生物SB0202菌株は、有機化合物を含む水性液体(廃液)の分解処理に当たり、単独で用いてもよいし、従来の活性汚泥法などで用いられている公知の微生物及び/又は本発明の他の新規微生物と組み合わせて用いてもよい。
本発明の処理方法によって処理される対象は、主として化学工業等の製造過程で生じるホルムアルデヒド、メタノールなどの生物難分解性の有機化合物を含む廃液であるが、本発明はこれに限定されず、上記有機化合物を含む水溶液体であればよい。
上記有機化合物の分解処理時の処理温度は、一般に15〜40℃、好ましくは20〜35℃の範囲とするのがよい。処理時pHは、一般に5.5〜8.0、好ましくは6.0〜7.5の範囲とするのがよい。分解処理は、好気的条件下で行うことが好ましい。
本発明の処理方法によれば、後記する実施例で示すように、6,000mg/L濃度のホルムアルデヒドを単独で含有する水性液体中のホルムアルデヒドを7日間でほぼ87%以上分解することができ、同様に20,000mg/L濃度のメタノールを単独で含有する水性液体中のメタノールを10日間でほぼ99%以上分解することができる。
さらに、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々5000mg/Lの濃度で含む水性液体中のホルムアルデヒド及びメタノールを、3日間でほぼ99%以上分解することができる。
また、本発明の新規微生物SB0202菌株は、フェノールに対する分解能は有していないが、フェノールに対する耐性(抵抗性)を有しているので、フェノールの存在下であってもホルムアルデヒドやメタノールなどの有機化合物を分解することができる。フェノール2000mg/Lの存在下で死滅することなく、ホルムアルデヒド2000mg/Lを10日で98%以上分解することができる。
(3)Candida属 maltosaに属する微生物を用いる方法
Candida属 maltosaに属する微生物を用いて、フェノール、ホルムアルデヒド、及びメタノールなどの有機化合物を分解処理する本発明の方法において、Candida属 maltosaに属する微生物としては、本発明の新規微生物SB0201菌株を用いることが好ましい。
本発明の処理方法の方式には、特に制限はなく、公知の活性汚泥方式によって行ってもよく、あるいはバイオリアクター方式によって行ってもよい。目的に適した方式を適宜に選択することができる。
例えば、活性汚泥法では微生物の棲息する水槽に上記有機化合物を含む水溶液(廃液)を投入し、微生物と接触させることで、水性液体(廃液)中に含まれる有機化合物を分解処理することができる。
また、散水濾床法、浸漬濾床法、菌体固定法においては微生物を固定化し、そこに有機化合物を含む水溶液(廃液)を接触させることにより、水性液体(廃液)中の上記有機化合物を分解処理することができる。
なお、本発明の処理方法において、新規微生物SB0201菌は、水性液体(廃液)中に含まれる有機化合物の分解処理に当たり、単独で用いてもよいし、従来の活性汚泥法などで用いられている公知の微生物及び/又は本発明の他の新規微生物と組み合わせて用いてもよい。
本発明の処理方法によって処理される対象は、主として化学工業等の製造過程で生じる上記有機化合物を含む廃液であるが、本発明はこれに限定されず、上記有機化合物を含む水性液体であればよい。
上記有機化合物の分解処理温度は、一般に15〜40℃、好ましくは20〜35℃の範囲である。処理時pHは、一般に5.5〜8.0、好ましくは6.0〜7.5の範囲である。分解処理は好気的条件で行うことが好ましい。
本発明の処理方法によれば、後記する実施例で示すように、2,500mg/L濃度のフェノールを単独で含有する水性液体中のフェノールを8日間でほぼ99%以上分解することができ、同様に2,000mg/L濃度のホルムアルデヒド又はメタノールをそれぞれ単独で含有する水性液体中のこれらの有機化合物を8日間でほぼ99%以上分解することができる。
さらに、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々750mg/Lの濃度で含む水性液体中のフェノール及びホルムアルデヒドを、2日間でほぼ99%以上分解することができ、メタノールを3日間で40%程度分解することができる。
フェノール及びホルムアルデヒドを各々500mg/Lの濃度で含む水性液体中のフェノール及びホルムアルデヒドを1日間でほぼ99%以上分解することができ、フェノール及びホルムアルデヒドを各々750mg/Lの濃度で含む水性液体中のホルムアルデヒドを1日間で、フェノールを2日間でほぼ99%以上分解することができる。
本発明の方法においては、微生物として、SB0301菌株、SB0202菌株及びSB0201菌株から選択された2種以上の菌株を組み合わせて用いてもよい。これらの新規微生物を組み合わせることにより、より効率良く有機化合物を分解処理することができる。
(4)SB0202菌株及びSB0201菌株を合わせて用いる方法
本発明の処理方法によれば、後記する実施例21で示すように、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々1000mg/Lの濃度で含む水性液体中のフェノール及びホルムアルデヒドを、4日で99%以上分解することができ、メタノールを6日で99%以上分解することができる。これらの新規微生物SB0202菌株及びSB0201菌株を単独で用いるよりも組み合わせて用いることで、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを含む水性液体中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを効率よく分解処理することができる。
(5)SB0301菌株、SB0202菌株及びSB0201菌株を合わせて用いる方法
本発明の処理方法によれば、後記する実施例22で示すように、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々250mg/L、m,p,o−クレゾールを各々50mg/Lの濃度で含む水性液体中のフェノール及びホルムアルデヒドを、2日で99%以上分解することができ、m,p−クレゾールを1日で95%以上分解することができ、o−クレゾールを2日で95%以上分解することができ、メタノールを3日で99%以上分解することできる。これらの新規微生物SB0301菌株、SB0202菌株及びSB0201菌株を単独で用いるよりも組み合わせて用いることで、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノール及びm,p,o−クレゾールを含む水性液体中のフェノール、ホルムアルデヒド、メタノール及びm,p,o−クレゾールを効率よく分解処理することができる。
(II)新規微生物
次に、上記本発明の方法において用いるのに好適な、殺菌性のある生物難分解性の有機化合物を高濃度で含む廃液を効率よく分解することができる3種類の新規微生物について説明する。
本発明の第1の新規微生物は、シュードモナス sp.である、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)(以下、SB0301菌株という)である。
本発明の第2の新規微生物は、Methylobacterium属 radiotoleransに属し、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)(以下、SB0202菌株という)である。
本発明の第3の新規微生物は、Candida属 maltosaに属し、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有することを特徴とする新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)(以下、SB0201菌株という)である。
(1)SB0301菌株
本発明の第1の新規微生物であるSB0301菌株は、シュードモナス sp.であり、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有することを特徴とする。
本発明の新規微生物SB0301菌株は、シュードモナス sp.であり、以下のようにして単離されたものである。先ず、土壌や貯水槽の水をサンプリングし、その中に存在している微生物の中から高濃度のクレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールに耐性を有し、かつ、少なくともこれらの化合物1つないし2つ以上を分解資化できる微生物の探索を行った。それにより見出した高濃度のクレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールを分解資化できる微生物を単離した。
前記特許文献1のシュードモナス・セパシアKK01株は、現在の分類ではベータプロテオバクテリア綱(Betaproteobacteria)の中のバークホルデリア属セパシア(Burkholderia cepacia)と分類されている。それに対し上記のように単離した本発明の新規微生物SB0301菌株は、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)の中のシュードモナス sp.(Pseudomonas sp.)であり、両者は細菌分類学上の綱のレベルでまったく異なる分類群に属する異なる細菌である。
本発明の新規微生物は、下記表1及び表2に示す微生物学的性質を有する。出願人はこの新規微生物にSB0301の識別番号を付し、この微生物の菌株を産業技術 総合研究所 特許生物寄託センターに国内寄託した(微生物寄託番号FERM P−19681)。その後、この原寄託をブダペスト条約上の寄託に移管するための申請書を、国際寄託当局である産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に提出し、国際寄託番号FERM BP−10035を付与された。
[表1]
Figure 2005001066
[表2]
Figure 2005001066
SB0301菌を培養するために用いられる培地の栄養源としては、通常の微生物の生育に必要であって本菌が資化可能な栄養源であればいかなる炭素源、窒素源及び無機塩類等でもよい。
例えば炭素源としては、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどの有機化合物、酵母エキス、さかなエキスなどの天然物などが利用できる。窒素源としては硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、ペプトンなどの天然物が利用できる。無機成分としてはカリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、マンガン塩、りん酸塩などを用いることができる。
SB0301菌株の培養条件は以下の通りである。培養温度は10〜40℃、好ましくは15〜35℃であり、pHは6.0〜9.0、好ましくは6.5〜8.5で、好気的に培養を行う。
本発明の新規微生物SB0301菌株は、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する。特に、クレゾール、及びフェノールに対する分解能に優れている。
SB0301菌株は、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどを単独で含む廃水、又は複数種が混在している廃水でも処理することができる。
SB0301菌株が分解資化できる、水性液体中に含まれる上記有機化合物の濃度は、化合物によって異なるが、一般に2,000mg/L以下、好ましくは200〜1,500mg/Lの範囲である。この濃度範囲は、従来の活性汚泥菌群で処理できる濃度の約10〜75倍に相当する。
(2)SB0202菌株
本発明の第2の新規微生物であるSB0202菌株は、Methylobacterium属 radiotoleransに属し、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有することを特徴とする。
本発明の新規微生物SB0202菌株は、Methylobacterium属 radiotoleransに属する。SB0202菌株は以下のようにして単離されたものである。まず、土壌や貯水槽の水をサンプリングし、その中に存在している微生物の中から高濃度のホルムアルデヒド、メタノールなどの殺菌作用のある生物難分解性の有機化合物を分解資化できる微生物の探索を行い、見出した微生物を単独に分離した。
本発明に有用な微生物は、下記表3及び表4に示す微生物学的性質を有する。本発明出願人はこの微生物に「SB0202」の識別番号を付し、この微生物を産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに国内寄託した(微生物寄託番号 FERM P−19301)。その後、この原寄託をブダペスト条約上の寄託に移管するための申請書を、国際寄託当局である産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に提出し、国際寄託番号FERM BP−10034を付与された。
[表3]
Figure 2005001066
[表4]
Figure 2005001066
本発明のSB0202菌を培養するために用いられる培地の栄養源としては、通常の微生物の生育に必要であって本菌が資化可能な栄養源であればいかなる炭素源、窒素源及び無機塩類等でもよい。
例えば炭素源としては、ホルムアルデヒド、ギ酸、メタノール、p−ヒドロキシ安息香酸などの有機化合物、酵母エキスなどの天然物などが利用できる。窒素源としては硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、ペプトンなどの天然物が利用できる。無機成分としてはカリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、マンガン塩、りん酸塩などを用いることができる。
SB0202菌株の培養条件は以下の通りである。培養温度は15〜40℃、好ましくは20〜35℃であり、pHは5.5〜8.0、好ましくは6.0〜7.5で、好気的に培養を行う。
本発明の新規微生物SB0202菌株は、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する。ここで、これらの有機化合物は殺菌作用のある生物難分解性化合物であり、SB0202菌株は上記化合物の他、例えば、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、ギ酸などを分解することができる。
SB0202菌株は、ホルムアルデヒド及びメタノールなどを単独で含む廃水中、又は複数種が混在している廃水中の有機化合物でも分解処理することができる。
SB0202菌株は、ホルムアルデヒド、メタノールなどの殺菌作用のある生物難分解性の有機化合物が25,000mg/L以下、好ましくは200〜5,000mg/Lの濃度で含まれる水性液体中のホルムアルデヒド、メタノールなどの生物難分解性の有機化合物を分解資化することができる。この濃度範囲は、従来の活性汚泥菌群で処理できる濃度の約5〜500倍に相当する。
なお、SB0202菌株は、フェノールに対する分解能は有していないが、フェノールに対する耐性(抵抗性)を有しているため、フェノールが含まれている、ホルムアルデヒド及び/又はメタノールを含む廃液であっても、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物を効率よく分解処理することができる。
(3)SB0201菌株
本発明の第3の新規微生物であるSB0201菌株は、Candida属 maltosaに属し、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有することを特徴とする。
本発明の新規微生物SB0201菌株は、Candida属 maltosaに属する酵母菌の一種であり、以下のようにして単離されたものである。先ず、土壌や貯水槽の水をサンプリングし、その中に存在している微生物の中から高濃度のホルムアルデヒド、フェノール、メタノールに耐性を有し、かつ、これらの化合物2つないし3つを分解資化できる微生物の探索を行った。それにより見出した高濃度のホルムアルデヒド、フェノール、メタノールを分解資化できる微生物を単独に分離した。
なお、本発明の新規微生物SB0201菌株は、前記特許文献2に記載の微生物が、Candida属 parapsilosisに属するものであるのに対し、Candida属 maltosaに属するものである点で異なっている。
本発明の新規微生物は、下記表5及び表6に示す微生物学的性質を有する。出願人はこの新規微生物にSB0201の識別番号を付し、この微生物の菌株を産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに国内寄託した(微生物寄託番号FERM P−19300)。その後、この原寄託をブダペスト条約上の寄託に移管するための申請書を、国際寄託当局である産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に提出し、国際寄託番号FERM BP−10033を付与された。
[表5]
Figure 2005001066
[表6]
Figure 2005001066
SB0201菌を培養するために用いられる培地の栄養源としては、通常の微生物の生育に必要であって本菌が資化可能な栄養源であればいかなる炭素源、窒素源及び無機塩類等でもよい。
例えば炭素源としては、ホルムアルデヒド、ギ酸、メタノール、フェノール、クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸などの有機化合物、酵母エキスなどの天然物などが利用できる。窒素源としては硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、ペプトンなどの天然物が利用できる。無機成分としてはカリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、マンガン塩、りん酸塩などを用いることができる。
SB0201菌株の培養条件は以下の通りである。培養温度は15〜40℃、好ましくは20〜35℃であり、pHは5.5〜8.0、好ましくは6.0〜7.5で、好気的に培養を行う。
本発明の新規微生物SB0201菌株は、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する。特に、フェノール及びホルムアルデヒドに対する分解能に優れている。ここで、これらの有機化合物は殺菌性のある生物難分解性であり、SB0201菌株は上記化合物の他、例えば、クレゾール、ヒドロキシ安息香酸、ギ酸などを分解することができる。
SB0201菌株は、フェノール、ホルムアルデヒド、メタノールなどを単独で含む廃水、又は複数種が混在している廃水でも処理することができる。
SB0201菌株が分解資化できる、水性液体中に含まれる上記有機化合物の濃度は、化合物によって異なるが、一般に5,000mg/L以下、好ましくは200〜2,000mg/Lの範囲である。この濃度範囲は、従来の活性汚泥菌群で処理できる濃度の約5〜100倍に相当する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
(1)SB0301菌株を用いた実施例
実施例1
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの3種類の有機化合物が混合で含まれる水溶液に対するSB0301菌の分解特性を調査検討した。
下記表7に記載の成分を80mLの蒸留水に溶解し、オートクレーブにて121℃、15分間加圧滅菌を行い、室温に冷却して無機塩基礎培地を作製した。
[表7]
Figure 2005001066
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々2,500mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、上記有機化合物としてフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々2,500mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、無機塩基本培地にフェノールを濃度500mg/Lになるように加えた培地で予め試験管で培養しておいたSB0301の菌液(菌体濃度:5.0×10cfu/mL)10mLを加えた。これら3種を混合することで培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの各々の濃度を250mg/Lとした。それを下記表8に示す処理条件で分解処理を行い、培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を経時的に測定した。その結果を図1に示す。
[表8]
Figure 2005001066
実施例2
フェノール、ホルムアルデヒド、メタノール、及びo,m,p−クレゾールの6種類の有機化合物が混合で含まれる水溶液に対するSB0301菌の分解特性を調査検討した。
実施例1と同様に表7に記載の成分を80mLの蒸留水に溶解し、オートクレーブにて121℃、15分間加圧滅菌を行い、室温に冷却して無機塩基礎培地を作製した。
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々2,500mg/Lの濃度で含み、かつo,m,p−クレゾールを各々250mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、上記有機化合物としてフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノール各々2,500mg/Lの濃度で含み、かつo,m,p−クレゾールを各々250mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、実施例1と同じSB0301菌液10mLを加えた。これら3種を混合することで培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの各々の濃度を250mg/Lに、o,m,p−クレゾールの各々の濃度を25mg/Lとした。上記表8と同じ処理条件で分解処理を行い、培地中のフェノール、ホルムアルデヒド、メタノール及びo,m,p−クレゾール各々の濃度を経時的に測定した。その結果を図2に示す。
実施例3
蒸留水800mL当たり、
MnSO・5HO 10mg
FeSO・7HO 10mg
MgSO・7HO 500mg
HPO 7g
KHPO 2g
(NHSO 3g
酵母エキス 500mg
の組成の基礎培地800mlにm−クレゾールを1,400mg、1,600mg、および1,800mgと蒸留水を加えて、各々合計で900mLとした。それを121℃、15分間オートクレーブ滅菌した。各濃度の液体培地90mLに、実施例1と同じSB0301菌液10mLを接種し、30℃で培養した。その結果を下記表9に示す。SB0301菌は、1,400mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるm−クレゾールを7日で99%以上まで分解した。
[表9]
Figure 2005001066
実施例4
実施例3のm−クレゾールの代わりにp−クレゾールを用いた以外は実施例3と同様にしてp−クレゾール濃度1,200、及び1,400mg/Lの各液体培地を作製し、SB0301菌を接種し、30℃で培養した。その結果を下記表10に示す。SB0301菌は、1,200mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるp−クレゾールを7日で99%以上まで分解した。
[表10]
Figure 2005001066
実施例5
実施例3のm−クレゾールの代わりにo−クレゾールを用いた以外は実施例3と同様にしてo−クレゾール濃度1,200、及び1,400mg/Lの各液体培地を作製し、SB0301菌を接種し、30℃で培養した。その結果を下記表11に示す。SB0301菌は、1,200mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるo−クレゾールを7日で99%以上まで分解した。
[表11]
Figure 2005001066
実施例6
蒸留水800mL当たり、
KHPO 820mg
NHNO 1000mg
MgSO・7HO 200mg
FeCl・7HO 20mg
NaCl 100mg
CaCl・2HO 100mg
NaHPO・12HO 5100mg
酵母エキス 500mg
の組成の基礎培地800mlにフェノールを1,400mg、1,600mg、および1,800mgと蒸留水を加えて、各々合計で900mLとした。それを121℃、15分間オートクレーブ滅菌した。各濃度の液体培地90mLに、実施例1と同じSB0301菌液10mLを接種し、30℃で培養した。その結果を下記表12に示す。SB0301菌は、1,600mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるフェノールを1日で95%以上まで分解した。
[表12]
Figure 2005001066
実施例7
実施例3のm−クレゾールの代わりにホルムアルデヒドを用いた以外は実施例3と同様にしてホルムアルデヒド濃度400、及び500mg/Lの各液体培地を作製し、SB0301菌を接種し、30℃で培養した。その結果を下記表13に示す。SB0301菌は、400mg/Lの濃度で水性液体中に含まれるホルムアルデヒドを2日で99%以上まで分解した。
[表13]
Figure 2005001066
実施例8
実施例3のm−クレゾールの代わりにメタノールを用いた以外は実施例3と同様にしてメタノール濃度1,500、及び2,000mg/Lの各液体培地を作製し、SB0301菌を接種し、30℃で培養した。その結果を下記表14に示す。SB0301菌は、1,500mg/Lの高濃度で水性液体中に含まれるメタノールを7日で55%分解した。
[表14]
Figure 2005001066
(2)SB0202菌株を用いた実施例
実施例9
SB0202菌のホルムアルデヒド及びメタノールが混合で含まれる水溶液に対する分解特性を調査検討した。
下記表15に記載の成分を80mLの蒸留水に溶解し、オートクレーブにて120℃、15分間加圧滅菌を行い、室温に冷却して無機塩基本培地を作製した。
[表15]
Figure 2005001066
ホルムアルデヒド及びメタノールを各々50,000mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々50,000mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、試験管中の無機塩基本培地で予め培養しておいたSB0202の菌液(菌体濃度:1.4×10cfu/mL)10mLを加え、培地中のホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を各々5,000mg/Lとした。下記表16に示す処理条件で分解処理を行い、培地中のホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を経時的に測定した。このときの培地中のホルムアルデヒド及びメタノール濃度の経時変化を図3に示す。図3の結果から、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々5000mg/Lの濃度で含む水性液体中のホルムアルデヒド及びメタノールを、3日間でほぼ99%以上分解できることがわかる。
[表16]
Figure 2005001066
実施例10
蒸留水800mLあたり、
MnSO・5HO 10mg
FeSO・7HO 10mg
MgSO・7HO 500mg
HPO 17.5g
KHPO 1g
(NHSO 3g
酵母エキス 500mg
の組成を有する基本培地80mLを121℃、15分間オートクレーブ滅菌した。そこに0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した、60,000及び80,000mg/L濃度のホルムアルデヒド10mLと、実施例9と同じSB0202菌液10mLとを加え、最終のホルムアルデヒド濃度をそれぞれ6,000及び8,000mg/Lとし、30℃で培養した。その結果を下記表17に示す。SB0202菌は、6,000mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるホルムアルデヒドを7日間で87%以上分解した。
[表17]
Figure 2005001066
実施例11
実施例9の表15の無機塩基本培地を121℃、15分間オートクレーブ滅菌したもの80mLに、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した150,000、200,000、240,000mg/L濃度のメタノール10mLと、実施例9と同じSB0202菌液10mLとを混合し、最終のメタノール濃度を、それぞれ15,000、20,000及び24,000mg/Lとし、30℃で培養した。その結果を下記表18に示す。SB0202菌は、20,000mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるメタノールを10日間で99%以上分解した。
[表18]
Figure 2005001066
実施例12
SB0202菌のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールが混合で含まれる水溶液に対する分解特性を調査検討した。
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々2,500mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに実施例9で用いた無機塩基本培地80mLを入れ、メンブランフィルターで滅菌した、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々2,500mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに試験管中の無機塩基本培地で予め培養しておいた実施例9と同じSB0202の菌液10mLを加えて、培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を各々250mg/Lとした。上記表16の処理条件で分解処理を行い、培地中のホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を経時的に測定した。このときの培地のホルムアルデヒド、メタノールの濃度の経時変化を図4に示す。図4の結果から、SB0202菌は、フェノールの存在下であっても、ホルムアルデヒド及びメタノールを、それぞれ250mg/L濃度で含む水性液体中に含まれる、ホルムアルデヒドを3日間で95%以上、及びメタノールを3日間で95%以上分解できることがわかる。
実施例13
SB0202菌のフェノール及びホルムアルデヒドが混合で含まれる水溶液に対する分解特性を調査検討した。
500mLの振とうフラスコを用い、実施例9の表15の無機塩基本培地を121℃、15分間オートクレーブ滅菌したもの80mLに、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した20,000mg/Lのフェノール及びホルムアルデヒドを含む水溶液10mLと、実施例9と同じSB0202菌液10mLを混合して100mLとすることで、培地中のフェノール及びホルムアルデヒドの最終濃度を各々2,000mg/Lとした。それを上記表16の処理条件で分解処理を行った。その結果を下記表19に示す。
[表19]
Figure 2005001066
SB0202菌はフェノールを分解する能力は有していないが、フェノールに対する耐性(抵抗性)があり、処理対象の水性液体にフェノールが2,000mg/L含まれていても死滅することなく、2,000mg/Lのホルムアルデヒドを10日で98%以上分解した。
実施例14
実施例9の表15に記載の成分を75mLの蒸留水に溶解し、オートクレーブ滅菌した基本培地に、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した、1,000mg/Lのサリチル酸20mLを加え、最終のサリチル酸濃度が200mg/Lになる液体培地を作製した。また、サリチル酸に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸又はギ酸を加えた液体培地をそれぞれ作製した。これら各液体培地95mLに、実施例9と同じSB0202菌液5mLを接種し、30℃で7日間培養し、その資化性を試験した。その結果を下記表20に示す。SB0202菌は3種の有機化合物(サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、及びギ酸)を資化することを確認した。
[表20]
Figure 2005001066
(3)SB0201菌株を用いた実施例
実施例15
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの3種類の有機化合物が混合で含まれる水溶液に対するSB0201菌の分解特性を調査検討した。
下記表21に記載の成分を80mLの蒸留水に溶解し、オートクレーブにて120℃、15分間加圧滅菌を行い、室温に冷却して無機塩基礎培地を作製した。
[表21]
Figure 2005001066
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々7,500mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、有機化合物としてフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々7,500mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、試験管中の無機塩基本培地で予め培養しておいたSB0201の菌液(菌体濃度:1.8×10cfu/mL)10mLを加えた。これら3種を混合することで培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの各々の濃度を750mg/Lとした。それを下記表22に示す処理条件で分解処理を行い、培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を経時的に測定した。このときの培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノール濃度の経時変化を図5に示す。
[表22]
Figure 2005001066
実施例16
フェノール及びホルムアルデヒドの2種の化合物が混合で含まれる水溶液に対するSB0201菌の分解特性を調査検討した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、有機化合物としてフェノール及びホルムアルデヒド各々7,500mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、試験管中の無機塩基本培地で予め培養しておいた実施例15と同じSB0201の菌液10mLを加えた。これら3種を混合することで培地中のフェノール及びホルムアルデヒドの各々の濃度を750mg/Lとした。上記表22と同じ処理条件で分解処理を行い、培地中のフェノール及びホルムアルデヒドの濃度を経時的に測定した。このときの培地中のフェノール及びホルムアルデヒド濃度の経時変化を図6に示す。
実施例17
蒸留水800mL当たり、
MnSO・5HO 10mg
FeSO・7HO 10mg
MgSO・7HO 500mg
HPO 7g
KHPO 2g
(NHSO 3g
酵母エキス 500mg
の組成の基礎培地80mLを121℃、15分間オートクレーブ滅菌した。そこに、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した、10,000、15,000、20,000及び25,000mg/L濃度のフェノール10mLと、実施例15と同じSB0201菌液10mLとを加え、最終フェノール濃度を1,000、1,500、2,000及び2,500mg/Lとし、30℃で培養した。その結果を下記表23に示す。SB0201菌は、2,500mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるフェノールを8日間で99%以上まで分解した。
[表23]
Figure 2005001066
実施例18
実施例17のフェノールの代わりにホルムアルデヒドを用いた以外は実施例17と同様にしてホルムアルデヒド濃度1,000、1,500及び2,000mg/Lの各液体培地を作製し、SB0201菌を接種し、30℃で培養した。その結果を下記表24に示す。SB0201菌は、2,000mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるホルムアルデヒドを8日間で99%以上まで分解した。
[表24]
Figure 2005001066
実施例19
実施例17のフェノールの代わりにメタノールを用いた以外は実施例17と同様にしてメタノール濃度1,000、1,500及び2,000mg/Lの各液体培地を作製し、SB0201菌を接種し、30℃で培養した。その結果を下記表25に示す。SB0201菌は、2,000mg/Lもの高濃度で水性液体中に含まれるメタノールを8日間で99%以上まで分解した。
[表25]
Figure 2005001066
実施例20
実施例17で用いたのと同じオートクレーブ滅菌された基礎培地に、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した1000mg/L濃度のm−クレゾール200mLを加え、液体培地を作製した。また、m−クレゾールの代わりに、p−ヒドロキシ安息香酸又はギ酸200mLを加えた液体培地を作製した。各液体培地95mLに、実施例15と同じSB0201菌液5mLを接種し、30℃で7日間培養し、その資化性を試験した。結果を下記表26に示す。SB0201菌は3種の有機化合物(m−クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸及びギ酸)を資化することを確認した。
[表26]
Figure 2005001066
(4)SB0202菌株及びSB0201菌株を用いた実施例
実施例21
SB0202菌株及びSB0201菌株を組み合わせてのフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの3種類の有機化合物が混合で含まれる水溶液に対する分解特性を調査検討した。
実施例15と同様にして表21に記載の成分を含む無機塩基礎培地を作製した。
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々10,000mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、有機化合物としてフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々10,000mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、試験管中の無機塩基本培地で予め培養しておいたSB0202の菌液(菌体濃度:1.9×10cfu/mL)5mL及びSB0201の菌液(菌体濃度:1.8×10cfu/mL)5mLを加えた。これら3種を混合することで培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの各々の濃度を1000mg/Lとした。それを下記表27に示す処理条件で分解処理を行い、培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの濃度を経時的に測定した。このときの培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノール濃度の経時変化を図7に示す。
[表27]
Figure 2005001066
(5)SB0301菌株、SB0202菌株及びSB0201菌株を用いた実施例
実施例22
SB0301菌株、SB0202菌株及びSB0201菌株を組み合わせてのフェノール、ホルムアルデヒド、メタノール及びo,m,p−クレゾールの6種類の有機化合物が混合で含まれる水溶液に対する分解特性を調査検討した。
実施例15と同様にして表21に記載の成分を含む無機塩基礎培地を作製した。
フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々2,500mg/Lの濃度で含み、かつo,m,p−クレゾールを各々500mg/Lの濃度で含む水溶液を作製し、0.45μm孔のメンブランフィルタを用いて滅菌した。
500mLの振とうフラスコに上記無機塩基本培地80mLを入れ、上記有機化合物としてフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノール各々2,500mg/Lの濃度で含み、かつo,m,p−クレゾールを各々500mg/Lの濃度で含む水溶液10mLを加えた。そこに、予め無機塩基礎培地で培養しておいたSB0301の菌液(菌体濃度:5.0×10cfu/mL)3.5mL、SB0202の菌液(菌体濃度:1.9×10cfu/mL)3.5mL及びSB0201の菌液(菌体濃度:1.8×10cfu/mL)3.5mLを加えた。これら3種を混合することで培地中のフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールの各々の濃度を250mg/Lに、o,m,p−クレゾールの各々の濃度を50mg/Lとした。上記表27と同じ処理条件で分解処理を行い、培地中のフェノール、ホルムアルデヒド、メタノール及びo,m,p−クレゾール各々の濃度を経時的に測定した。その結果を図8に示す。
本発明の新規微生物を用いる本発明の処理方法によれば、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの殺菌性を有する生物難分解性の有機化合物が混合で含まれるような廃液を効率よく処理することができる。また、従来よりも高濃度の有機化合物を含む廃液であっても希釈等の処理を必要とせずに分解処理できるため処理装置も小規模にでき、ランニングコストも安価にすることができる。それ故、工場や病院からの廃液の処理に非常に有益な処理方法である。
[図1]フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々250mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対するSB0301菌の分解特性を示すグラフである。
[図2]フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々250mg/Lの濃度で含み、o,m,p−クレゾールを各々25mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対するSB0301菌の分解特性を示すグラフである。
[図3]ホルムアルデヒド及びメタノールを各々5,000mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対する本発明の新規微生物SB0202菌の分解特性を示すグラフである。
[図4]ホルムアルデヒド、メタノール及びフェノールを各々250mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対する本発明の新規微生物SB0202菌の分解特性を示すグラフである。
[図5]ホルムアルデヒド、フェノール及びメタノールを各々750mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対するSB0201菌の分解特性を示すグラフである。
[図6]ホルムアルデヒド及びフェノールを各々750mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対するSB0201菌の分解特性を示すグラフである。
[図7]SB0202菌とSB0201菌との組み合わせによるホルムアルデヒド、フェノール及びメタノールを各々1,000mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対する分解特性を示すグラフである。
[図8]SB0301菌、SB0202菌及びSB0201菌の組み合わせによるフェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールを各々250mg/Lの濃度で含み、o,m,p−クレゾールを各々50mg/Lの濃度で含む混合水溶液に対する分解特性を示すグラフである。

Claims (15)

  1. シュードモナス sp.、Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物及びCandida属 maltosaに属する微生物からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を用いて、殺菌性を有する生物難分解性有機化合物を分解処理する方法。
  2. 殺菌性を有する生物難分解性有機化合物が、フェノール、クレゾール、サリチル酸及びヒドロキシ安息香酸などのフェノール性化合物、ホルムアルデヒド、メタノール、及びギ酸からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物である、請求項1に記載の方法。
  3. 微生物が、シュードモナス sp.から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. シュードモナス sp.が、新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)である、請求項3に記載の方法。
  5. クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールからなる群から選択される有機化合物の1種又は2種以上を分解処理する、請求項4に記載の方法。
  6. 微生物が、Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  7. Methylobacterium属 radiotoleransに属する微生物が、新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)である、請求項6に記載の方法。
  8. ホルムアルデヒド及び/又はメタノールを分解処理する、請求項7に記載の方法。
  9. 微生物が、Candida属 maltosaに属する微生物から選択される、請求項1に記載の方法。
  10. Candida属 maltosaに属する微生物が、新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)である、請求項9に記載の方法。
  11. フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールからなる群から選択される1種又は2種以上を分解処理する、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 微生物として、新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)、新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)及び新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)からなる群から選択される2種以上の菌株を用いる、請求項1に記載の方法。
  13. シュードモナス sp.である、クレゾール、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する新規微生物SB0301菌株(FERM P−19681)。
  14. Methylobacterium属 radiotoleransに属し、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有する新規微生物SB0202菌株(FERM P−19301)。
  15. Candida属 maltosaに属し、フェノール、ホルムアルデヒド及びメタノールなどの有機化合物に対して分解能を有することを特徴とする新規微生物SB0201菌株(FERM P−19300)。
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